アースクライシス2019⑦~迷宮のダーティトリック
●蝙蝠は疾く
「早く、そして……迅速に」
悪事は必ず万全で行うべきこと。
「まあ……付加された能力は腹が立つが!!」
便利使いするには、不快な水質だが文句はいえまい。
本来なら男のプライドは決して首を縦に振らなかった。
「だが、暗殺しがいのある首ばかり……!」
複雑な町並みを、誰の目を気にする事なく。
時折壁をするりと抜ける異能を発揮しながら彼は急ぐ。
――少量では、不測の事態に対応できねえ!
「フェアは破棄しろ、アンフェアこそが、……此処では勝利者だ」
●"雨"を避けろ
「話は少しだけ聞いた。なんか、……お疲れ」
フィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)は投げやりに状況への労いを呟く。
「でも、てめェらの行動で、スカムキングの本拠地であるダストブロンクスへ攻め込む事が決まッたわけだ」
実力も行動のうち、そう言いたげに軽く資料の紙をぺちり、と叩いて先の説明に戻る。
「当然、『肥溜めの王』はおかしな特性を付与されたオブリビオンを配置して、徹底抗戦するつもりらしいぜ?」
おかしな特性、それは、汚れた下水を浴びることによってダメージを回復する能力。
所々に湧き上がる汚水が、ある複雑に入り組んだ……形容し難い町並みでは、定期的に齎される。迷路のように歪で、しかしその在り方を熟知していれば最高の隠れ蓑とされてしまう。汚水を浴びるチャンスを作り出してしまうのだ。だが、それではスカムキングの手のひらの上で踊るようなもの。
「俺様の予知は、大きい円のど真ん中に、噴水があるようなトコを目指して移動中の奴がいるんだが……」
大量の汚れた水を目指して、移動中のヴィランの姿を掴んだ。
このオブリビオンもまた、どこかで人知れず、悪事で善戦してきたのだろう。
「奴は……はじめから、若干手負いだ。不思議なモンだな」
それにより、先を急いで大量の水を目指す。怪我を癒やすために、大きな水場へと移動してるようだ。少量の水での回復より、大量の汚水にドボン、の方が手っ取り早いのは誰の目にも明らか。道中にはマンホールが間欠泉宜しく汚水を吹き上げる可能性のある場所が、高頻度で、実に沢山ある。
「まず、てめェらは攻撃して倒す事を狙うよりも、先におかしな能力を発動させないように挑め。自ら引き離して、それから……蹴散らせ!」
毎ターン、数カ所から汚水は立ち上るが、敵は常に、それを予測して移動を繰り返す。
なんとか阻止、引き離す、等触れさせなければ討伐の勝機は見えるだろう。
「持久戦に決して持ち込むなよ、……てめェらは、そんなことしねェだろうけど」
手負いの鼠に容赦する猟兵が居ると思えないが、とフィッダは言う。
「雨を浴びるイメージを持て。そいつは、そういう回復を行おうとするだろう」
方法は、向かった奴が編みだす事を祈る。
「――お前なら、どうする?」
マスクで表情を隠しながら。
明らかに笑う目で、フィッダは戦地へ君たちを送り飛ばす。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
立ち上る水は、下水道出身の汚れたお水でございます。
清潔ではない水で治るとは、病も気からというやつでしょうか。
この依頼は、【一章で完結する】戦争の依頼です。
瞬時に傷が治る可能性のあるやばい能力をしていますが、猟兵の猛攻があれば、彼の目的、噴水までの到達は至れないことでしょう。
少量でも、水を与える事はおすすめできません。
グリモア猟兵がそれっぽいことを多分告げていると思うので、よく読んでからの参戦をお願い申し上げます。
1ターンとは、あなたが攻撃する、敵が攻撃するの一括。
つまり何がおこるかというと……おそらく想像のとおりです。
この場所は、汚水だらけの水の街に、等しいことでしょう。
第1章 ボス戦
『ヴァンパイアバット』
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POW : ブラッディ・トレイター
【衝動に身を任せた暴走状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : ヴァンプ・シザーズ
【鋭い爪 】による素早い一撃を放つ。また、【六枚の羽で飛翔する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : ゴーストナイト・ボディ
自身の身体部位ひとつを【不可視かつ不可触のエネルギー 】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「クロゥ・クガタチ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シキ・ジルモント
◆SPD
面倒な能力を付与してくれたな…
仕方ない、まずその能力を妨害する
一発『フェイント』として射撃で攻撃し、避けた先を『見切り』、改良型フック付きワイヤーを射出
視界外の為に反応しにくいと予想する翼をワイヤーで絡め取り、マンホール等汚水が噴き出すポイントの無い位置へ、振り回すようにして遠心力で投げ飛ばす
吹き出た汚水を浴びせない為、投げ飛ばす位置は屋根のある場所を選ぶ
汚水から引き離したら攻撃
敵の爪の一撃に合わせ、『カウンター』でユーベルコードを『零距離射撃』の間合いで叩き込む
距離が近い上にこちらを狙う瞬間であれば回避されにくいだろう
高火力での短期決戦を狙う
手負いだろうが容赦も油断もするつもりはない
●captured
ぱたぱた、と追撃の音があると気がついたのは、街に音があまりないからか。
何時の頃からか、正義側の何者かに捕捉を許してしまったらしい。
――……ハハ!そう来なくちゃなあ!
崩れかけた建物の壁を、蹴り、影を疾走るヴァンパイアバットは腕を腕を負傷していた。強欲に首を狙い続け、深追いの結果、重い一撃を受け、このザマなのだ。
今はまだ、再起のため、走っている。それは、次なる殺害を成功に導くため。
犯罪や悪事は、常に完全成功に収めねばならない、それが彼のプライドだ。
一番近い、吹き出すポイントは……。
「!」
ずど、と足を掛けた足場を撃ち抜かれ、慌てて飛び退く。
「面倒な能力を付与してくれたな……その能力を、妨害する」
仕方ない、とは思いながら、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)のハンドガンは吼えていた。煙を挙げるハンドガンには目もくれず、敵が飛び退いた先を冷静に視線で追いかけて、腕輪型射出機をセットと同時に射出。
――的中。……よし、掛かった。
完全に見切られたヴァンパイアバットの一翼にワイヤーが絡まり、ぎりりと抵抗を感じるが、空中と地上の、綱引きに持ち込む。
「妨害目当てで、俺の動きを止めるだけか?あ?俺が捕まったんじゃねぇ、お前を捕まえてんだよ」
勘違いすんな、と吐き捨てて、絡まった一翼を無視して他の翼で羽ばたき、鋭い爪を光らせて、ワイヤー伝いにシキへ迫る。
……フリをして、真下に存在するマンホール目掛けて急降下を図った。
下からゴゴゴと音がする。水が、吹き上がってくる。
「騙し討にしては、予測の範囲内……だ!」
敵の動きを逆に利用し、自身でも走るような動作を加えて遠心力を利用し、背負うような動作とともに、対象物を投げ飛ばす。
「ぐああ……!?」
ぐいん、と視界が弧を描がいてひっくり返るヴァンパイアバットの事など、シキは気にしない。
「汚水はそこから出るんだろう?なら、残念ながら、お預けだ」
間欠泉、と情報で聞いた以上、上に遠く水は伸びるのだろうが、と考え投げ飛ばした先は、建物の屋根の上。
屋根のある建物の上に、ゴシャアという音と共にヴァンパイアバットが顔面着地を行った。狙っていたマンホールから水流が吹き上がる……が、どうやら、この屋根の上にまでは届かないようだ。
「ってぇえな!手負いに向ける優しさはねぇのかよ!!」
瞬時に起き上がるが、彼のプライドは大いに傷ついた。
顔を擦るが、大きな怪我はない様子、と安堵と同時に鋭い爪でまっすぐシキの首を狙う。遮蔽物がない以上、真っ向勝負に持ち込むしか、彼には選択肢が無かった。
「ない」
バッサリと言い切り、可能なレベルでの加速を乗せて向かってきた爪にヴィランに、冷静に銃を抜いて。
シキの鮮血が舞うより疾く、零距離に届く体感時間が、世界が地味に減速していく。アーチャーたるシキの弾倉が撃ち切る速度がゆっくりと聞こえるほど、じわり、じわりと、減速する。
全ての弾丸が放たれた。
現実速度なら、一発の音に何発も乗っている。
瞬間速度は、限界を越えて、ヴァンパイアバットを穿った。
「手負いだろうが、容赦も油断もするつもりはない」
高火力の弾丸を身に受けて、衝撃で屋根から墜落していく。
その先に、マンホールが無いことを願いながら、熱くなりすぎたハンドガンが挙げる煙を、吹いて――散らした。
大成功
🔵🔵🔵
デュナ・ヴァーシャ
元の住人には悪いが、この世界はどうも陰鬱で好かんな。手早く片付けてやろう。
まずはユーベルコードを発動し、奴に追いつこう。この速さなら追いつけぬと言う事はないはずだが、この地は入り組んでいるからな、見失わないようには注意を払う。
接近したらとにかく全力で攻撃を加える。相手は傷ついていようと容赦はせん、ひたすら殴る、蹴る。
狙いは奴に危機感を感じさせ、ブラッディ・トレイターを発動させる事だ。暴走状態に陥らせたら、今度は逆に、相手に見失わせない用に注意しながら、汚染水から遠ざかるように飛ぼう。理性を失えば、我の速さ以外は目に入るまい。
十分引き離したら手加減抜きだ、ハンマーパンチで脳天を殴り砕いてやろう。
●Iron candy
猟兵の銃弾を浴びて、建物から落下の衝撃をモロに受けて。
――クソがあ!
舌打ちを何度しても足りないと苛立ちが勝つのをギリギリで飲み込み、翼を広げて華麗に着地する。
ヴァンパイアバットは諦めない。この負傷でさえも、大量の水があればまだ、なんとかなるからだ。羽ばたく力も、未だ衰えては居ない。
痛みこそ、今耐え続ければいいだけだ。
「次に、吹くのは……向こう!急がねえとなあ!!」
ぽたぽたと、血を残して翼で走りに速度を付けて、先を急ぐ。
少し、時間を開けて猟兵がこの地へ一人、また訪れる。
――元の住人には悪いが、この世界はどうも陰鬱で好かんな。
デュナ・ヴァーシャ(極躰の女神・f16786)はダストブロンクスの有り様に眉根を寄せた。いかにヒーローズアースの女神と伝えられたデュナにも、この汚水ばかりが広がる街は美的センスの琴線が拒むのだ。
「なに。不届き者を討てば早々に立ち去ろう」
点々と残される足痕。それに気が付かないデュナではなかった。
真新しい邪悪の痕跡。悪意の逃走。
そのようなものを、神が果たして見過ごせるだろうか?
心に灯るは神で在るが故、絶対に信じる『正義』の灯火。
黄金のオーラは正義の心と共に体を多い、まるで空を走るようにその足に跳ねる力を齎し、翔んだ。
――この速さなら、追い付けぬと言う事はないはずだが。
一つの走りが道の角まで到達し、もう一歩で更に先へ。
入り組む道を、血痕が走り逃げている。
――向こうはこの街を知っていると聞く。罠の可能性も考えるべき、だな。
そう多くの時間を掛けることはなく、真新しい足痕は更に新鮮なモノへと痕跡を変えていた。
「見つけたぞ」
敵の背中を捉えた瞬間、デュナは更に強く地面を蹴って全力で加速し、激しく蹴り飛ばす。
「ぶはぁああ!?」
誰か来た、と思った瞬間には蹴り上げられ地面に激突していたヴァンパイアバットの素っ頓狂な声があがる。
デュナの全力で、踏み砕かれた反動は周囲に及び、周辺の建物が勢いよく割れ砕け、マンホールが幾つも瓦礫に埋もれた。
「そのまま殴りを重ねて意識を完全に消すことも出来るが?」
加速の威力も足してダイナミックな蹴りを打ち込んだ為、デュナの返答には時間差で返答が来る。
「あぁ!?てめえ、不意打ちするたあどういう了見だ!?」
「女神が不意打ちしない、というのは誰が決めたことだろうな」
スーパーヒーローは怪力で敵を物理的にねじ伏せて、存在感のある言葉で危機感を煽った。
「喧嘩なら買うぞ、わりぃけど跳ね飛ばした代は高く貰うからなあ!!」
力任せに崩れた建物の壁を割砕き、衝動に身を任せたヴァンパイアバットの目の色が変わる。蒼を放つ視線が、紅く染まり、言語として聞き取れない言葉を吐きながら、大きく翼を広げて、威嚇した。
「本物の蝙蝠の方が、まだ威嚇をするだろうに」
無意味な威嚇、と思うデュナだったが、無差別な破壊行動で埋もれたマンホールを露出させられては堪らないと思考する。
しかし、理性がないのであれば、ただ獣と見たほうが早い。
「我の速さ、その目でしかと見るが良い」
空へと華麗に飛び上がり右へ、左へ、加速して飛び回ればヴァンパイアバットの視線はソレを追いかけ、地面を蹴って翼を広げ迎撃にと爪を伸ばす。
「手加減はせぬぞ、その身を持って女神の鉄槌を存分に噛みしめるがいい!」
更に更にと加速するデュナは両手を組んで、身を反らすほどに力を溜めて。
ヴァンパイアバットがその怪力にも向こう見ずに挑もうとする姿に、哀れ、とすら思いながら。
女神のハンマーパンチは、脳天に炸裂し――派手に地面を割り砕いて、蝙蝠を空から叩き落とした。
成功
🔵🔵🔴
樹神・桜雪
【WIZ】※連携・アドリブ歓迎
下水で元気になるの…いろんなオブリビオンがいるね
とはいえ、瞬時に元気になりすぎるのはよろしくないか
吹き上げて来る水はUCを『2回攻撃』で可能な限り凍りつかせよう
回復なんてさせてあげないんだから
…この凍らせた水、あいつに当てたら回復しちゃうのかな?
回復されても困るし、この氷は少し離れたところに『なぎ払い』でポイしちゃおう
敵の攻撃は『第六感』で避けながら『カウンター』狙ってみる
直感だから狙ってカウンター出来るかは賭けかな
多少失敗しても気にせずに反撃は試みるよ
手負いの今がチャンスだもの
君もどこかで頑張って戦ってきたんだね
でも、それもここでおしまい
ゆっくり休むといいよ
●優しい氷
意識を少しの間手放して、瓦礫の中で覚醒する。
――万全な俺なら、悶え苦しむまで楽しめるってえのに。
しかし、それは高く望めない。
翼の感覚こそあるものの、体のいたる所に感覚がない。
――俺が死ぬか、奴らを全員出し抜いて皆殺しか。
猟兵の視線をくぐり抜けるのは不可能、追手には必ず衝突する。
――……なら、このまま、すり抜け疾走り、ギリギリで浮上すれば…………!!
ヴァンパイアバットがノイズを抱える電子な姿へ体を溶かして動きの鈍った体で逃げ出す。犯罪は常に、誰も気づかぬ場所から秘密裏に動き出すのだ。
「下水で元気になるんだ……ふぅん、色んなオブリビオンがいるね」
樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)はポツリ、と呟く反面、違和感を覚える。
――瞬時に回復する様を見てみたい気もするけど、それにしては出てこない?
気絶してるならば、そうおかしなことはない。
ただ、それが本当にそうならば、だ。音も声も、怒号もない。
「水の音は……うん。所々にあるね」
その時、がしゃあん、とマンホールの蓋が桜雪の後ろで幾つか吹き飛ぶのを聞く。
汚水を求めて、という話なのに敵の反応がない。これは、異変だ。
「……へぇ。逃げ足は早いんだ?」
背後に反応がないのなら、既に先へ先へと逃げたのだろう。
――このまま凍らせて走れば、袋の鼠だよ。回復なんて、させてあげないから。
装備武器を無数の氷と散らして舞わせて、桜雪は追跡を開始した。
吹き上がる音はなんとなく事前に遠鳴りがするので、二度氷で囲えば水流の姿をそのままに凍りついてしまうだろう。
――……く、そろそろ限界か!
手負いのせいで、不可視かつ不可触のエネルギーに綻びが生じている。
逃走したことは既に気付かれているようだと、確信のようなものがあるのだ。
――しかし、間近の水源ポイントはこの、上!
電子化を解いて浮上した地上、マンホールから吹き上がる水は手の届く距離に迫っていた。
「……みぃーつけた」
伸ばされた手に氷の華が吹雪いて邪魔をする。
第六感のようなモノで"この場に現れる"気がしていたのだ。
「チィ!小賢しい真似を!!」
伸ばした手だけを、不可視かつ不可触のエネルギーへと変換し、攻撃を無視してただ伸ばす。
ゴゴゴと水が登ってくる。
がこ、とマンホールの蓋を吹き飛ばし、汚水が……凍結した。
「それが欲しい?でも、あげないよ」
氷へと変えた花びらを手に集めて刀を引き抜くように持ち手を握り、刃までをすぅうと花びらからもとに戻す。桜雪の手に華桜が戻った事で薄桃色の刃が煌めき、凍った柱をそのまま勢いに任せて薙ぎ払い、吹き飛ばすように破壊した。
「ねぇ、君もどこかで頑張ってきたんだよね?」
「……」
それでも、と凍った汚水に手をしつこく伸ばす手を払い、薙刀の長い持ち手で敵の体を絡めて張り倒す。
首もこのままなら刎ねられるだろうが、言葉を紡ぐことをやめられなかった。
「でも、それもここでおしまい」
――ゆっくり、休むといいよ。
「……ハハッ!甘えなあ!そこは悪に染まって得物は踏み付けねえと逃しちまうんだよ!」
確実なダメージとして血を吐きながら、強引な羽ばたきで桜雪を蹴り飛ばし、ヴァンパイアバットはその場から離脱した。
成功
🔵🔵🔴
アイシス・リデル
確かに複雑、だけど
下水道には慣れてるもん、ね
スチームドローンに掴まって、急いで、飛んで追いかけるね
けどできるだけ、わたしは噴水の近くで戦うよ
戦いながら、汚染水を【犠牲者】の力でわたしの中に取り込んで
敵が回復に使えないよう、きれいな水にお【掃除】しちゃうから
わたしには【毒耐性】があるから大丈夫、だよ
敵の速さには、やっぱりスチームドローンと協力して対抗する、よ
捕まって飛び回って、ちょっとずつでもダメージを与えて
そのダメージを敵が回復しようとして、汚染水に浴びに行ったら、早い動きにもきっと、隙ができるよね?
その隙に思いっきり攻撃する、ね
回復なんてさせない、よ
もう、そのお水はきれいなただのお水、だもん
アマルガム・デルタ
「おせんすい ぜったいふれさせない」
「ぼくが ぜんぶたべてやる」
汚染水の噴き出るマンホールなどに取りついてUCを発動し原子レベルに分解して自分に吸収します。
相手が目指す円状の場所を自分も目指して半液体の体を動かしていきます。
相手より早くたどり着いたならその場所の汚染水を全部平らげる勢いで食いついて分解吸収を、相手が速かった場合も同じく先に汚染水を吸収しつくしてから攻撃を開始します。
相手に組み付いたら技能:怪力を使用してガッチリつかんで離さずに相手を食べていきます。
一人称は「ぼく」と「わたし」でごちゃまぜでしゃべる言葉は全部ひらがなです。
絡み、アドリブOKです。
セプテンバー・トリル
あまり不衛生な場所は入りたくはないのですけど…仕方ありませんわね。
【WIZ】連携・アドリブ歓迎
要するに、水として浴びさせなければ良いのでしょう?
ならばUC【桜花絢爛】を発動させて周囲の水分を全て凍結させながら追跡しましょう。
私は【氷結耐性】と【オーラ防御】の組み合わせで寒さには強いですから、容赦しません。
氷の【誘導弾】を【高速詠唱】の【全力魔法】でばら撒くように【範囲攻撃】して逃げ道も塞いでいきます。
【ガイドロッド】で召喚した【ディビジョンズ】で道そのものも物理的に潰しますわ。
不本意ではありますが、この地下を私の領域へと作り変えます。
氷の世界に水は一滴たりとも残しません!
アンテロ・ヴィルスカ
…とても汚い。何故よりにもよって汚水なのかな?
敵の考えには感心させられるものもあるが、彼らだけは相容れないねぇ…
極力汚水には触れないよう、敵から離れすぎない程度のやや高い位置を駆け、敵と汚水が噴き出す場所を探し把握する
見つければ敵>噴水の優先度でUCを使用、部分的に凍結を狙うよ
蝙蝠君を目掛け放つ氷柱は死角から、身軽さ重視で鎧は纏わない
aaveの冷気を上乗せした斬撃と【残像】を交え、羽を狙い削いでいこう
素早いね、でも飛ぶのは体力を使うだろう?
猟兵を倒してから、のんびり汚水で疲れを癒すといいよ……倒せたらの話だけれど。
アドリブ等、ご自由に
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
汚水で回復できるとは…原理を知りたいところですが、実験するわけにもいきませんね
UC触手式魔導兵器を発動
金属属性でマンホールの蓋が外れないよう接着
周辺に水溜まりや水源などがあれば水属性の触手を汚水に浸けて干渉し"汚物"と"純水"に分離させます
汚物が再び水溶しないよう、金属属性の触手で覆いを作っておきます
綺麗な水なら回復出来ませんからね
自分の手足に風属性の触手を巻き付け、高速移動で相手の攻撃を回避しつつ、突風を起こして相手の飛翔に干渉します
動きが阻害できたら袖口から大量の触手を出し、UC暗く玉虫色に光る名状し難き触手の乱撃で高速の連続打撃を加えます
●汚泥
ヴィランの男は誰かの悲鳴や苦しむ姿を、好んでいたが。
――あああクソがあ!!
男が誰よりも、苦しむ姿を露呈していた。心身ともに、全く穏やかではない。
「水場はもう近くだってのに!なんつーしつこさ!!」
鋭い爪で腕を引き裂き掻き毟り、不快感と苛立ちを発散しようとして、思い留まる。
「これ以上の手負いは死傷の可能性が跳ね上がる」
――手段はもう、選べない。
最悪全てを無視してでも、回復を狙わねば、楽しい暗殺など夢のまた夢だ。
――せめて、俺を殺しに来る連中に一矢報いなければプライドが赦さねぇ!!
荒ぶる信条の震えを翼の羽ばたきに変えて、急ぐ。
噴水まで、もうそんなに遠くないのだ。まだ、チャンスは……。
――汚水で回復できるとは……原理を知りたいところですが、実験するわけにもいきませんね。
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)……いや、人格は果たして誰であるだろう。緑の瞳で、見据える先に、ヴァンパイアバットの姿を見た。
丁度、その姿を見かける場所に彼は足を運んでいたのだ。
「死傷の可能性もあるのに、戦いはやめない、と」
物腰柔らかそうな口調な、ロキと呼称される人格は興味を抱いてふむふむ、とひとり頷く。
「悪事に享受出来ずして、何がヴィランだこの野郎!」
敵意あり、と睨み、一人でもいいから暗殺できないかと爪を光らせ、動向を探る。
ロキは出会い頭に罵倒を受けたが、無視して視線の先を詮索に移った。
「はぁ。そんな知らないですよ」
「じゃあいいやてめえとりあえず死ねよ」
首の血管を狙い、軽く息を吐き翼の動きも合わせて、瞬間的速さで、飛ぶ。
その理由をロキは目ざとく見つけ、その速さの先を金属属性と設定した力を取り込んだ触手が先に穿つ。
マンホールの上に敵より疾くたどり着いた触手が、蓋がはずれないように粘着を齎した。
ガコガコ、とその後すぐに音が聞こえたが、開きもせず、飛沫すら出る穴がなくなったマンホールからは、何も飛び出すことはなかった。
「不意打ちの下手さ、誰かに指摘されたことはないんですか?」
無礼な事、と思うことはなく、そう言い切ると、ヴァンパイアバットはロキを睨んだ。
「周辺に水たまりや水源などがあれば、……」
水属性の触手を伸ばし、更にその先へと足を運ばれる前に恐れる事なく汚染に干渉した。水質情報を、その在り方を、属性を書き換える、分離させる事等、実は容易いものだ。それを成し遂げる方法がアレば、誰にでも出来るだろう。
手段が、あれば、だが。
「あぁ、成程です。こういう属性を持ってるんですね」
「先回りしてんじゃねえぞ!!」
「そうですか?コレはもう、汚物が水溶されたものですから……覆いもして、隔離しましょう」
ヴァンパイアバットの話をのらりくらりと流しながら、キッ、と一度だけキツめに睨む。
「"綺麗な水"なら回復できないということでしょう?」
「回復は出来ないが、別にここだけということもねえんだよ!!」
二度三度羽ばたいて、首を、何度も、何度も狙い飛びかかるヴァンパイアバットを、ロキは自分の手足に風属性の触手を巻きつけて高速移動を駆使して躱した。
動きが、単調だ。暗殺が得意、とはとてもじゃないが、思えない。
「ほら、風向きが代わりますよ」
突風を起こし、飛翔に干渉し、バランスを崩した一瞬の隙を見逃さず、袖口から一気に大量の触手を発生させる。
出した、が正しいだろう。
わらわらと、玉虫色に光る名状し難き触手の乱撃が、右から左からと、勢いよく蝙蝠を攻める。
高速で叩き込まれた打撃に耐えきれず、吹き飛ばされたヴァンパイアバットに、……明日を見る機会事など、おそらく出来やしないだろう。
何度目かの衝撃を身に受けて、それでも尚、ゴールを目指す。
血反吐等、何度吐いてももう口の中は血の味しかしなかった。
建物に紛れ、壁を掴み、飛んで撹乱しながら逃走する蝙蝠を、猟兵は逃げ道を断ちながら追いかける。
半ば、逃げ道のない迷宮に逃げ込んだ追い込み漁のようなレベルであるが、追われた者へのプレッシャーは計り知れない。
――うん、とても汚い。何故よりにもよって汚水なのかな?
敵あるところでも、無いところでも吹き上がる水の音に、アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は内心そう思った。
そもそも、下水のニオイが街に染み付いていて、掃除したところでどうにかなるレベルではないと漠然と分かるのだ。
知られざる文明であるダストブロンクスでは、綺麗な水、という物自体が貴重な可能性がある。
公害に汚染された街、そう考えればこの状況は合理的なのかも知れなかった。
何処にでも沸くほどの大量の汚水を考えれば、だが。
――敵の考えには感心させられるものもあるが、彼らだけは相容れないねぇ……。
街の在り方は大体汚水に塗れている、"もうそれでいいか"、と思考を打ち切り、極力飛沫が来ないだろう、建物の上を走る。
屋上の手すりに手をかけて、飛んで跳ねて目的地に進むという六枚羽が、前方にちらりと見えた気もしたのだ。
こんな時のこんな場所に、六枚羽の他人の空似が居るわけがない。
「チッ!こんな所にも追手か!何処にでも居るなあ!!」
「どこにでもはいないよ。君がそんなところに現れたのがいけない」
アンテロを振り切るように、突然止まって屋根の上からフリーダイブで最寄りのマンホールを目指す。
今度こそ、少量でも、手が、届く……!
「おせんすい ぜったいふれさせない」
ずるりずるりと半液体状の、大きな体積でありながら不定形な姿のアマルガム・デルタ(バイオモンスターのダークヒーロー・f16424)がマンホールを下敷きに佇んだ。
汚染水が飛び出す可能性のあるマンホール事原子レベルで消失させながら、追いかけて来たのだ。
アマルガムにとっては汚水が吹き上がっても、吹き上がらなくても関係ない。
「わたし おなか ずっと すいている いっぱい もぐもぐ ごくり」
ジュウウとマンホールの存在が原子の海に溶けて消えていく。
触れる汚水なんて、アマルガムは気にかけない。おいしい。おなかが、みたされる……気はした。
存在そのものが消失したら、汚染水が飛び出す入り口すら掻き消えなかったことになるのだ。
門が掻き消えた水の行き先は、蛇口から出る水と同じだろう。全て飲み込み飛沫さえ、外に漏れ出さない。
「ぼくが ぜんぶ たべてやる そう あなたも」
這い寄る深淵は確かに、存在感を膨大なほどに広げながら、一つの手負いの小さな者を、お腹に収める夢を見る。
「溶かされてたまるかよ!」
どが、と壁に鋭い爪を突き立てて、急激に方向を変え、身の危険を回避するように建物の上の更に上、上空へと逃げた。
――確かに複雑だけど。下水道には、慣れてるもん、ね。
アイシス・リデル(下水の国の・f00300)は得意な世界、とふへへ、と頬を緩めて笑った。
スチームドローンに掴まって、彼女は先程からずっと、上空よりヴァンパイアバットを見ていた。
だからこそ、空に逃げても視界良好でよく見えている。
「あ、いらっしゃい。やっと来たんだね」
あえて噴水の近くに待ち伏せていたアイシスをみて、ヴァンパイアバットの沸点が限界を越えた。
「てめえらが邪魔ばかりするからだろうが!!!」
理不尽にキレて、次の間欠泉目掛けて飛ぶ。
噴水のある場所の、丁度少しばかり手前。目的地はもう目の前だが、苛立ちで血管が千切れんばかりの気分なのだ。
――マンホールが破られるのを待つのもヌルい、突き立てて直に浴びれば……!
「そんなにわかり易く次の場所を明かしてよろしいのですか?」
セプテンバー・トリル(ゼネコンのお姫様・f16535)がどうどうと、胸を張って待ち構えて問いかける。
――あまり、不衛生な場所は入りたくはないのですけど……仕方ありませんわね。
「……要するに、水として浴びさせなければよいのでしょう」
螺旋剣を携えて行う、詠唱を高速化して破棄。
シュピラーレカイザーが先端から花びらのように解けて、セプテンバーの周辺水分から徐々に凍らせて温度を下げていく。
飛び出さんばかりであった水量も、急激に冷え切ったマンホールの冷気に充てられ凍りつき、飛び出せない。
「大気中の水分ではあなたの回復は望めないと聞きましたの」
どうでして?と、周辺の温度を下げ続けた事で発生した氷の礫を、ばら撒き叩きつける用に差し向けて逃げ道を、それこそ意図する方向へと誘導し塞ぐ。
「汚水でなければならない、それを俺もおかしいとは思うが!!」
氷の礫を、すり抜けると確信した部分を的確に不可視かつ不可触のエネルギーえと変異させて透過して威力を感触を無視して、大本の汚水の噴水へ走る。
「あら。あなた、上司を上司と思っておられませんのね」
意外、と。しかし、それとこれとは、話が違う。
セプテンバーが放った氷の誘導弾の通り、彼は走っていこうとしなかった。
――折角道を、示してさしあげましたのに。
誘導灯型のロッドをばっ、と振りかざし、振るいながら強硬手段に出る。
「そちらの道は、不出来ですので物理的に潰すように言われてますわ」
――勿論、私の独断ですの。解体なら、全て私にお任せ下さいませ。
召喚契約を結んだディビジョンズが、わらわらと喚び出されてセプテンバーの理想のままに、道を砕き、工事現場と穴を開けまくった。
「路面凍結にも耐えられる、素敵な道にしませんといけませんわね」
――さぁ、私の領域へと作り変えましょう。氷の世界に水は一滴たりとも残しません!
ふふふ、と笑いながらのセプテンバーに著しい恐怖を感じたのか、ヴァンパイアバットは道無き道から、誘導された道へ軌道を修正する。
――やべぇ奴に関わるだけ損だ……。
「死角はここかな」
ずど、と氷柱が翼の一対を貫通し、開けた穴から氷が広がっていく。
「あ!?」
身軽さを重視し、鎧を纏わずに現れたアンテロは、どこまでも汚水の無い場所を選んで歩いている。
この場所であれば、まず飛沫ですら被ることはないだろう。
「回復を望めない純水の氷柱では、痛いだけだね。あぁ斬り落とそうか?」
セプテンバーが周辺温度を下げていた事でaaveの冷気が目に見えて氷点下で心すら凍らせるほどの美しさで煌めく。
残像を残し、踏み出す初速に頭を下げて、振り抜いた時には、ヴァンパイアバットの翼は6から、4に減っていた。
本来は全て落とさん速度で切りかかっていたが、アンテロの敵対意志を読み取って、羽ばたきギリギリを回避。
切り落とされている時点で、逃げ切れてもいない。疲労が、流血が、怪我が、彼を大いに襲っていた。
「素早いね、でも飛ぶのも体力を使うだろう?」
ヴァンパイアバットは答えない。その代わり、凍れる刃に爪を突き立てる。
「此処までの逃避行でも、派手に飛んでいたそうじゃないか」
全てを見ていないはずなのに、見ていたような言葉でアンテロは語った。
「猟兵を倒してから、のんびり汚水で疲れを癒すといいよ……倒せたらの話だけれど」
空中に念動力を用いて留め置いた氷柱を口元だけ緩く微笑んで、更に一対の翼を鋭く撃ち抜き、威力の限り吹き飛ばし、その部分を凍らせる。
「そうそう。凍傷にも、効くといいよね」
撃ち抜かれた翼が全部で四枚。それら全てが凍りつき、それでも飛翔を、行えて。
落された翼の痛みに耐えられたら、ヴィランの中の、ヴィランと言えるだろう。
吹き飛ばされた先で、なにかをしていた少女の視線が合った。
「あ、ごめんね。こっちは先客がいてあげられないよ」
先客、とアイシスは自分をそう表現してヴァンパイアバットに再び笑いかける。
彼女は別の場所で吹き上がっていた汚染水を急速に自身に取り込んで、環境の毒成分を抜いていた。
特に、人体に害がでそうな所を。
もしくは、敵が回復に用いるために必要な要素を根こそぎ浄化し、ただ只管に綺麗な水へと変換していく。
「わたしはいくら汚れても、大丈夫だから。毒にはなれてるから、ね」
――……きっとわたしは、そのために…………なんだもんね。
耐えられる毒だ、耐えられる汚染の味だ。
浄化でなんとか変えられる濃度だ、これならば。
アイシスの力で環境から、汚染の色が著しく消えていく。
心做しか、ニオイすら、質量を軽くした気がした。
「あああああ折角の水が!てめえ、ぜってぇー許さねえぞ!!」
「そろそろ回復しないと危ないのかなぁ?回復なんてさせない、よ?」
爪を閃かせ、アイシスの首を狙うが、アイシスはスチームドローンに掴まってその爪を回避する。
悪戯っぽくそう言って、彼女は微笑んだ。
「もう、このあたりのお水はきれいなただのお水、だもん」
「てめえだけが飛べると思ってんなら飛ぶ鳥宜しく落としてやるよ!お望み通りになあ!!」
翼を広げて、ドローンを追いかけ飛翔する。
「がああああああああ!!!」
彼にはもう、広げた翼は血塗れ過ぎて、凍傷のせいもあり背中にあるかも認識出来なかった。
飛べない鳥、となったのはアイシスではなく、ヴァンパイアバットだ。
……噴水は視界の隅に見えているが、あれは水を吹き上げない。
ただ、そこにあって大量の水がそこにある。あれは、どうにかできるものではない。
「しかし!!しかしだ!!!あれの汚染が微量でもあれば、俺の……勝ちだ!!!!!」
もう翼があるとか、ないとか、それすらもどうでも良くなった男が居た。
目の前の、ゴールに、痛みすら、忘れて足を動かす男が居た。
「いらっしゃい ぼくの なかへ」
水が浄化されるより前から、アマルガムは、噴水の中で蠢いていたらしい。
全部平らげる勢いで、どころではなく、噴水の中で汚染水は全て、喰らい付くされていた。
雫の一滴ですら、見て取れない。アマルガムの赤い瞳が煌々と輝くばかりだ。
「わたしは はなして あげないよ」
不定形の体を伸ばして、足を、手を部分的に縛り上げて、組み付く。
呑み込んだ汚染水の分だけ、アマルガムは強かった。
全身の細胞分裂が異常な速度で行われ速度が尋常ではなかったのだ。
重症の蝙蝠など、蜘蛛の巣に飛び込んだ羽虫のごとしである。
「離せああああああああああ」
衝動のままに、爪を振るおうとした……がその手は何にも届かない。
掴まれた手が、超攻撃力を許されても、アマルガムの怪力は更にその上を行ったのだ。
「りせい ないない」
「ぼくね おなか すいちゃった」
「もうね がまん できないや」
――ぱくり、ごくん。
黒い闇の中に、ヴァンパイアバットは消えてしまった。
もう一度怒号を、この場に響かせることはないだろう。
アマルガムの腹の中が、どうなっているかなど……――誰にも。
そう、誰にも、確かめる術など、ないのだから。
大成功
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