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ブラック商店に藪入りを取り戻せ

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●グリモアベースにて
「よくぞおいで下された」
 集った猟兵たちに、月殿山・鬼照(羅刹の破戒僧・f03371)は手を合わせ頭を下げた。
「貴殿らは『藪入り』というサムライエンパイアの風習をご存じであろうか」
 藪入りとは、商家などに住み込み奉公している丁稚や女中など奉公人が実家へと帰ることができる休日のことで、正月のそれは旧暦1月15日の小正月にあたる。
「盆と正月の年に2度しか休みのない奉公人達にとっては、とても大事な日でござる。なのに『奉公人に休みなど要らぬ、今年から藪入りは無し』と言い出した大店の主人がおりまして。それが嫌ならば店を出ていけと」
 パワハラ経営者のブラック企業……というか、ブラック商店ではないか!
 その店は、上総のとある町の醤油問屋だ。
「その主人、もとから吝ん坊の気はござったが、商家の主人にはままある程度。されど昨今どうも様子がおかしい、取り憑かれたように吝ん坊が度を越していると」
 取り憑かれたように……?
 猟兵たちを見回して、鬼照は頷いた。
「さよう。オブリビオンに誑かされているのではないかと考えまする」

●1章
 藪入り無しと言われ、店で一番落ち込んでいるのは、波吉という13歳の丁稚だという。
「波吉は近在の魚村生まれの三男坊、祖父様の具合がよくないとの文をもらい、藪入りを心待ちにしておったのです」
 それが帰省できないとなったら、落ち込むのも無理はない。いっそ店を辞めてしまおうかとまで思い詰めているという。
「貴殿らにはまず件の醤油問屋で、主人の変調っぷりと、その原因を調べていただきたい」
 事件というほどの事態ではないが、確かに調べる必要はありそうだ。
 変調はいつから、どのように始まったのか。加えて、主人自身の体調や行動の変化等を調べれば、原因も自ずと見えてくるだろう。
 とはいえ、まだ子供の波吉はともかく、奉公人たちはリストラを怖れ、猟兵相手とはいえそう簡単に口を開いてくれそうもない。
 そこで。
「大きな醤油問屋ゆえ奉公人は大勢おり、その職種も色々でござる」
 商いを預かる番頭や手代たち、醤油を運び届ける人足たち、奥を預かる女中たち等々。
「貴殿らが各自の得意を生かして奉公人の仕事を手伝い、信頼を得れば徐々に重い口も軽くなりましょう」
 また、店に忍び込んだり、後を追けて主人を見張るとか、話術を生かし近在で聞き込みをする等という手もあろう。
 そこで、ひとりの猟兵が不思議そうに尋いた。
「主人に家族はおらぬのか?」
「おりまするが、おかみは箱根で湯治中、娘は江戸に嫁ぎ、跡取り息子は他店で修行中でござる」
 おかみは血の道の病でここ数年ちょくちょく湯治に出ており、今年も三が日明けすぐから留守である。
「藪入りまであまり日がござらん。どうか貴殿らの力で、奉公人共を安堵させてやってくださりませ」
 鬼照はまた頭を下げ、その背後に、江戸ほどではないが田舎なりに賑やかそうな通りが見えてくる……猟兵たちは今からここへ転送されるのだ……。


小鳥遊ちどり
 猟兵の皆様こんにちは。
 今回はブラック企業ならぬ、ブラック商店の謎に迫っていただきます。

●シナリオの最終目的
 醤油問屋の主人を誑かしているオブリビオンの撃退。

●1章の目的
 主人が急に吝嗇家になってしまった原因を探り、オブリビオンとの関わりを突き止める。
 成功以上のプレイング1件につき1つ以上の手がかりを、必ず出させてもらいますので推理もお楽しみください。

●シナリオの構造
 1章:主人が吝嗇家になっちゃった原因を探る(冒険)
 2章:オブリビオンの手下とのバトル(集団戦)
 3章:オブリビオンとのバトル(ボス戦)

 正月早々怪しい事件ですが、どうぞよろしくお願いします!
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第1章 冒険 『平和な村の違和感』

POW   :    体力が続く限り、村人と交流したり、村を歩き回ったりして地道に調べる。

SPD   :    道具の修繕などをし信頼を得たり、剣舞や手品等の芸で人気を得つつ情報収集する。

WIZ   :    村人達にカマをかける。周囲をよく観察し僅かな変化を見逃さない。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

藤野・いろは
醤油問屋の主人が豹変ですか……何か事情があるかもしれません
まだオブリビオンが原因とは断定出来ませんし、少しでも多くの情報が必要そうです
とは言うものの……何か奇を狙った手段で情報を集める事もできませんし、地道に歩き回って情報を集めましょうか
おや?迷子の子供ですか、両親とはぐれてしまったようですね
良かったら僕とご両親を探しながら町を歩きませんか、このあたりは詳しくないので案内をしてくれるとうれしいです
冗談めかして子供を落ち着かせ、[手をつないで]町を歩きながらご両親を探しましょう
ふふ、無事見つかったようで何よりです。いえいえ、お礼は不要です
え?ご両親は醤油問屋の奉公人の方ですか、良ければ少しを話を



「醤油問屋の主人が豹変ですか……何か事情があるかもしれません」
 藤野・いろは(天舞万紅・f01372)は、送り込まれたその町を、思案しながら歩いていた。
「まだオブリビオンが原因とは断定出来ませんし、少しでも多くの情報が必要そうです」
 とは言うものの、今回は情報収集するのに奇を狙った手段も使えなさそうであるし、ここは地道に歩き回って情報を集めるしかなさそう……と、件の醤油問屋の方に足を向けた時。
「……おや?」
 路地の入り口で、泣きべそをかきながら辺りを見回している女の子を発見した。通り掛かる人々はそれぞれの仕事に忙しく、
「おとっちゃん……おっかちゃん……」
 か細い声で親を呼ぶ子供に気づいていない。
 子供は5歳くらいと見える。身なりは質素だが清潔なので、職人や小商いか奉公人の娘であろう。
「迷子ですか?」
 いろはは女の子の前にしゃがみこみ、笑顔で話しかけた。
「良かったら、僕とご両親を探しながら町を歩きませんか、このあたりは詳しくないので案内をしてくれるとうれしいです」
 お家は大体どちらですか、と訊くと、女の子は自信なさげながらも件の醤油問屋の方を指した。
 2人は手をつないで歩き出した。中性的だが綺麗なお姉さんに声をかけてもらえて、女の子も少し安心したようである。ここはおまんじゅうやさん、ここは煮売りやさん、などと、訥々と教えてくれる。
 それほど大きな町ではない。家に近づいていけば、きっと近所の住民などに出会えるだろう……と、のんびり歩いていくと。
「あっ、いたっ」
「お、おあき!」
 がっちりした人足風の男と、前掛けをかけた小柄な女が、前方から駆け寄ってきた。
「おとっちゃん、おっかちゃん!」
 女の子……おあきも、いろはの手を振り切り2人に駆け寄っていく。どうやら両親が見つかったようだ。
「駄目じゃないか、長屋から出ちゃあ!」
「お染婆さんが倒れそうなほど心配してたぞ!」
 2人はひとしきりおあきを抱きしめたり叱ったりした後、
「あんたさんが見つけてくれたんですか、ありがとうございます!」
 いろはにぺこぺこと頭を下げた。
「ふふ、無事見つかったようで何よりです。いえいえ、お礼は不要です」
「あっしらはそこの醤油問屋で共稼ぎさしてもらってまして」
「え、そこの醤油問屋さんの奉公人さんですか!?」
 正に件の醤油問屋だ。
 言い訳のように父親が語ったところによると、父親は醤油運びの人足、母親は奥向きで下働きをしており、近くの長屋に親子3人で暮らしているのだという。
「仕事に出てる間、娘は長屋の染っていう婆さんに見てもらってるんですが、ちょっと目を離した隙に出てっちまったって」
「それはもういいですから、お礼代わりに、良ければ少しを話を聞かせてください!」
 と、いろはは人目の無い路地に親子を引っ張り込んだ。
「何の話ですかい?」
「最近様子がおかしいという、ご主人についてです!」
 と答えると、さすがに父母とも主のことは話し辛いらしく渋った。
 しかし、最終的には主人をも助けることになる(はずだ)し、何しろ迷子の娘を見つけてくれた恩人である。それに、2人共色々溜まっているものもあったのだろう、人目を気にしつつも話してくれた。
 それによると。
「そうですか、ケチがエスカレートしてきたのは、この正月明けから……」
「ええ、いつお暇を出されるかって、店ン連中はみんなビクビクしてまさあ」
「お正月明けってもしかして……おかみさんが湯治に出かけてからのことですか?」
 いろはに問われて夫婦はハッと顔を見合わせた。
「そうかもしれん。おかみさんがいなくなったら急に」
「おかみさんは、ここ数年、ちょくちょく湯治に出ていらっしゃるそうですね」
 ううん、といろはは腕組みして目を細めた。
「これは、主人とおかみさんの関係も調べた方がいいかも……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー
…はぁ
誉高い総州でも下世話なことが起きるもんだな(刀を見ながら)
三方よしとも言うだろ
外聞悪いのは将来に関わるっての
愛刀の恩返しのつもりで話に乗らせてもらいますよ


●方針【SPD】
変装は適宜に行う
得意ですので醤油問屋には掃除の手伝いで敷居を跨ぎます
仕事場を手伝いつつ奉公人の話に聞き耳を立てて事情調査
得た情報を絞れば、あとは信頼を得て確信を聞き出せるまで…
…仕事を頑張りましょう、みなさん(鼓舞)
何者かの接触の有無・一人になった際に奇術で唆されたか…
他に変わったところは?


ともかく集めた話から怪しい場所や時間にアタリをつけ、乗り込む
他の猟兵の情報交換は望むところです


…ず、頭脳労働は苦手ですので… 



「……はぁ」
 ベルベナ・ラウンドディー(ドラゴニアンの剣豪・f07708)は、愛刀を見ながら溜息をついた。
「誉高い総州でも下世話なことが起きるもんだな。三方よしとも言うだろ。外聞悪いのは将来に関わるっての……」
 ひとしきりぶつぶつ呟いてから、しっかりと腰に差し直し。
「よし。愛刀の恩返しのつもりで話に乗らせてもらいますよ!」

 ――というわけで、ベルベナは気合いをいれて変装し、掃除を手伝う触れ込みで醤油問屋に入り込んだ。
 なにしろ吝嗇に取り憑かれている主人がいる店だから、ただ働き、しかも猟兵となれば大歓迎なのだ。
 掃除といえば丁稚小僧の仕事である。ベルベナはまず、鬼照も事前に話を聞くことができた波吉と仲良くなった。
「正月が明けたと思ったら、奉公人の飯には雑穀が入るようになったし、おかずが出る回数も少なくなったし」
 仲良く庭の落ち葉を掃き集めながら波吉は愚痴る。
「止めに藪入り無しとかもう勘弁して欲しいよ……」
 波吉は本来素直な働き者のようだが、祖父様に会えないのがよっぽど哀しいらしい。
 庭に面した廊下を拭き掃除していた女中が聞きとがめて、こら贅沢言うんじゃないの、と波吉をたしなめたが、その彼女も、
「あたしみたいな下働きはいつお暇を出されるかしれません。そうでなくともお給料を下げられるのは時間の問題でしょうね」
 と、不安を漏らす。
「ふうむ……」
 と、ベルベナは一応難しそうな顔で唸ってみせたが、頭脳労働はあまり得意でないので、とりあえず情報を片っ端から集めたいところ。
「店表の人の話も聞きたいです」
「わかった。そんなら」
 と、波吉が口を利いてくれたのが、日頃から彼に読み書きなどを教えてくれている若手の手代だった。
 彼が蔵に帳簿つけに出たタイミングで、ついでに掃除と言って、ハタキを持って入り込む。
 手代によると、奥向きの極端な倹約だけでなく、取引先にも影響が出てきているという。
「旦那様の倹約っぷりが取引先でも噂になってまして、商いの方は去年と同様にやってるのに、出先で『値上げなんかしないだろうね!?』なんて念を押されたりして」
 やりにくいったら、と手代は溜息を吐く。
 大変そうですね、と同情してからベルベナは。
「旦那様の変調に何か心当たりはないですか? 何者かの接触や、奇術などで誑かされたりするような機会とか無かったでしょうか?」
「いやあ、そんなことはなかったと思うんですけどねえ。旦那様はとにかく仕事一筋の堅物で、花街にも組合の会合くらいしかお出かけになりません。よもや奇術をするような寄席なんて」
 いや、寄席の奇術とも限らないんだが。
 もっと主人に近い人たち、番頭や女中頭等に話を聞きたいところだが、それには更に一生懸命掃除するしかないか……とか考えていると。
「あ、旦那様のお部屋に、夜中に女の人が来てたみたいだよ」
 黙って掃除していた波吉が、突然爆弾を落とした。
「え、女の人って……おかみさんじゃなく?」
 うん、と浪吉は邪気なく頷き。
「おかみさんが湯治にお出かけになった次の日の夜だったもん」
 便所に起きた浪吉は、主人の部屋の方から妙に冷たい風が入ってくるのに気づき、どこか雨戸の閉め忘れでもあるのではないかと、奥の方へ廊下を忍び足で進んでいったのだという。
「そしたら、雨戸はきっちり閉まっててさ。風がどこから来てるのかと思ったら」
 主人の部屋の閉められた襖の隙間からだったという。つまり部屋の中から。
「窓を閉め忘れたんだと思ってさ。真冬だから、放っとけば旦那様、風邪ひいちまうだろ」
 失礼とは思ったが波吉は主人を起こそうと襖を拳で叩きかけた……その時。
「部屋の中から、女の人の声がしたんだ。何て言ってるかはわかんなかったけど」
 ほんの微かな囁き声だったが、確かに女性の声だったという。
「旦那様のうなされてるみたいな声もしてさ……どうしようかと思ったけど、こういうのって知らんぷりするトコなんだろ?」
「う、まあな……うん……いやしかし、あの旦那様がおかみさんの留守に、ねぇ」
 手代と波吉は、主人が女房の居ない隙に商売女でも窓から連れ込んだのだろうと思ったようだが、ベルベナは真剣な顔で。
「夜更けの女……こりゃあ詳しく調べてみた方がいいですね……そうだ、まずは猟兵仲間と情報をすりあわせて……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルベル・ノウフィル
アレンジ・アドリブ・連携歓迎
POW
コミュ力、礼儀作法 追跡


心情:おじい様の具合がよろしくないとはご心痛お察します
おのれブラック
ご主人ももし元に戻るのであれば、それに越したことはありますまい

村を歩き回り、人々の様子を見たり目立たない場所に忍び込んで調べます
僕は根気と元気が取り柄のワンコでございますゆえ、倒れるまで働きましょう

「このお菓子ですか? 金平糖でございます」
甘菓子は喜ばれるでしょうか?

「ふんふん、此処はどうも可笑しな臭いがします」
臭いとかでなんかいい感じにほらっ、見つかるはずで

「最後はKIAIでございます。成し遂げるコツは、成し遂げるまで休まない事でございます」
あれ、なんだかブラック……



「おじい様の具合がよろしくないとは……ご心痛お察します」
 ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)は、波吉に同情しながら、そして、
「おのれブラック……ご主人ももし元に戻るのであれば、それに越したことはありますまい」
 醤油問屋をブラック商店と化した謎のターゲットを呪いながら、町を根気良く歩きまわっていた。
「ふんふん、此処はどうも可笑しな臭いがします」
 根気と元気が自慢のワンコの鼻が嗅ぎつけたのは、件の店の裏手にあたる桶屋のご隠居であった。
 ご隠居といっても六十絡みの威勢のいいオッチャンで、大旦那と呼ぶ方が相応しいかもしれない。それでも商いの一線から引いて暇をもてあましているのか、礼儀正しく可愛らしいノベルの訪問を大層歓迎してくれた。持参した好物の金平糖も大いに喜んで、お茶を手ずから入れてくれる。
「ほら、こっから醤油問屋さんの裏口が見えるだろ」
 桶屋の廊下から生け垣と裏路地を挟み、人の背丈ほどの板塀が見え、そこには小振りな木戸が填め込まれている。塀の向こうには醤油問屋の蔵がある。
「昨今の乾き具合で、町内の旦那集は火の用心の夜回りをしてンだよ」
 桶屋からはご隠居の息子である旦那が参加していたが、数日前、よりによって当番の夜に風邪をひき、代わりにご隠居が出ることになった。
 ちなみに、波吉が主人の部屋で女の声を聞いたのとは違う夜の出来事である。
「んで、情けねェ倅の代わりに夜回りを終えてさ、帰ってきたのは正に丑三つ時よ」
 女中をたたき起こして裏口から入れてもらい、便所に寄って、さあ寝るか……と、この廊下を通り掛かった時。
 ご隠居は醤油問屋の裏口を指して。
「あっこに、どっからともなく、女が現れたんだよ」
 夜更けの女か?
「そんでさ、その女、スウッと裏口に入ってったんだよ」
「戸締まりしてなかったんでしょうか?」
「いやまさか、してあったろうよ。だからさ、扉開けもせずスウッと通り抜けてったんだよ。しかも丑三つ時だよ、カラスみたいに真っ暗さ。なのに、提灯も持ってないってのに、女だってのが解る程度にこっからも見えたってのは、尋常じゃあねえわな」
「え……それって……」
 幽霊の類いか?
「だからさ、わしも何かの見間違いか、酔っ払ってるせいかと思って……番屋で一杯引っかけたからな……かかあにも言わなかったんだけどよ」
 ぶるりとご隠居は身震いして。
「醤油問屋の旦那がおかしいってのも噂になってるし、あんたら猟兵がこうして聞き込みをしてるってことは……何かあるんだろ?」
「それを調べているところなのでございます」
 と、あくまで礼儀正しく応えながら、ノベルは裏口に夜まで張り込む決意を固めていた。
「最後はKIAIでございます。成し遂げるコツは、成し遂げるまで休まない事でございます」
 あれ、なんだかノベルがブラック企業の管理職みたいなこと口走ってる……?
 それはともかく、夜更けの女は、夜に店の外からやってくる人外の存在であるようだという情報を得ることができた。
 裏口はもちろん、店内、できれば主人の部屋の近くで、女の来訪を待ち伏せできると更によさそうだが……。

成功 🔵​🔵​🔴​

マルガ・ヴァイツェネガー
【猟兵商業組合】の方と連携を希望
POW判定

組合の人達と旅芸人に扮して聞き込みと屋敷の調査をします!
お二人の準備が出来るまで町で呼び込みをしますよ!手先の器用さと【早業】には自信がありますので簡単な手品で人を集めて芸の宣伝をしますね!
ついでに服も購入して調達しておきましょう
呼び込みの時点で何か情報を手に入れたら他の御二人にも伝えます!
この格好は目立つので三人揃う前に町娘の格好に扮しておきます!人々が芸に目が入っている内に屋敷内に入りご主人の周辺を調べますよ!
【怪力】を生かして屋敷内の皆さんの力仕事を手伝いながらお話が聞けたらなと思います
怪しまれないように笑顔で頑張りますね!


佐藤・くおん
※モルツクルス、マルガと協力希望
二人が仕込みしている間に街中で宣伝しよう。その時に噂を聞けたら聞いておこう
「旅の芸人が世にも珍しい一芸を見せてくれるよー!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
頃合いを見て【パフォーマンス】開始するよー。瓦屋根に【ジャンプ】して【ダッシュ】、くるくるとパフォーマンスジャンプしながら登場!
【ガチキマイラ】で大きめの石を噛み砕いたり、【残像】を使った一人的当てを披露して注目を集めるよ!
なるべく屋敷の近くでやって賑わいを大きくしておいて、中で他の猟兵が動きやすいようサポート!
あとは軽く門番さんと話し込んで(そっと門番におひねりを渡す)ここ最近の出入りを調べてみよう


モルツクルス・ゼーレヴェックス
【WIZ】
くおん殿、マルガ殿と協力っす

サムライエンパイアの
【世界知識】に沿った【礼儀作法】に則って身形を整え店に入って
店の前、出来れば中で芸をやる許可を求めるっす

主人、或いはそれに近い重鎮が対応してくれるよう【存在感】を醸すっす

【コミュ力】を発揮して会話から【情報収集】

「旦那とおかみの関係」
「夜の旦那の様子」

を特に入念に、でも然り気無く探るっすよ

許可を得れたら(得れなくても)二人に情報を共有するっす

口八丁でマルガ殿をお手伝いとして屋敷内へ手引きして、自分はくおん殿の芸の司会進行っす!

バッチリ客を【鼓舞】するっす!

「寄ってらっしゃいみてらっしゃいっ!兎の旦那の軽業を!見なきゃ一生の損っすよ!」


榛・琴莉
POWで判定。

ブラック企業は何処にでもありますね…困ったものです。

問屋さん周辺で【コミュ力】を活かして【情報収集】。
私くらいの歳の娘さんやお孫さんがいそうな方がいれば、そちらに。
もしくは取り引きしているお店の方ですね。
問屋さんのケチに困った方がいるかもしれません。
愚痴混じりにでも、何か聞き出せれば。
「お忙しいところすみません。ちょっとお聞きしたいことがあるのですが…」
愛想に自信はないので、せめて真摯に。

いつ頃から酷くなったのか。あとは…
酷くなった頃、問屋さんに何か変わった事がなかったかを聞いてみます。
変わった物を手に入れた、新しい奉公人が来た…なんて話が出れば、足掛かりになるかと。



「今夜、お店の前で芸を披露させて頂けないでしょうか」
 旅芸人一座の座長に相応しい出で立ちと礼儀作法で頭を下げたモルツクルス・ゼーレヴェックス(近眼の鷹・f10673)の前には、件の醤油問屋の大番頭と女中頭がいた。
「あら、いいお話じゃないですか」
 と、ポンと手を叩いて喜んだのは女中頭。
「正月からうちの店、雰囲気悪くてねえ、景気づけに丁度いいわ」
 こら滅多なことを言うんじゃない、あんたは口が軽くていけない、と大番頭は女中頭をたしなめたが、
「でも確かに、旦那様の気分転換にもなるかもしれないし、店の前ならいいんじゃないかな」
 モルツクルスらが芸を披露するのは賛成らしい。
「ありがとう存じます。精一杯演じさせていただきます」
 モルツクルスは丁寧に頭を下げ、そしてさりげない風に。
「気分転換というと、こちらの旦那様はお加減でも悪いので?」
「いや、そうじゃないんだけどね」
 大番頭は顔の前で手を振って、
「おかみが湯治で留守なもんだから、ちょっとばかり気鬱でいらっしゃるのさ。なんたって、惚れ抜いてやっと一緒になった恋女房だからねえ」
「ほう、らぶろまんすというヤツですな」
 モルツクルスが身を乗り出すと、大番頭と女中頭は代わる代わる主人とおかみのラブロマンスについて語ってくれた。
「――だから今でも旦那様はおかみさんにベタ惚れでね」
「でも、おかみさんはお留守なんですよね?」
「仕方ないんだよう」
 女中頭は顔をしかめ、
「血の道の病は人それぞれだけど、おかみのはそれはそれはキツくてねえ」
 店にいても薬を飲んで寝たり起きたり。そんな状態では精神状態にも、店の奉公人の手前もよろしくないので、いっそ湯治に……ということらしい。
 いわゆる更年期障害の症状であろうか。
「旦那様も納得して送り出しているわけだがね。でもやっぱりお寂しいんだろう。急に吝くなっちまったのも、八つ当たりかもしれないよ」
 と、大番頭は懐手でしんみり頷いたが、
「あら、それだけじゃないと思いますよ。旦那様、ここ数日でぐっとお窶れになったと思いませんか?」
 女中頭がしかめっ面のまま言った。
「ああ、確かにお顔の色はよろしくないねえ」
「食も細いし、夜もあんまり眠れてないんじゃないかしら」
「給仕の時にでも、訊いてみりゃいいじゃないか。具合悪いんですかって」
「やだわ、大番頭さん、ここ数日の旦那様、あたしらの言うことなんて耳に入らないじゃないですか。始終口の中でブツブツ呟いて、帳簿ばっかりめくってさ」
「ああ、確かにねえ……だからそれは、おかみさんのいない寂しさからかと……違うのかねえ?」
 大番頭も顔をしかめ、首を傾げた。
「あたしゃ心配ですよ……まるで旦那様、何かに取り憑かれてるみたいで」
 女中頭は自分の台詞にぶるっと身震いしたが、モルツクルスは眼鏡の奥の瞳を、キラーンと光らせた。

 その頃、【猟兵商業組合】旅芸人一座のひとり、佐藤・くおん(スマイルジャンキー・f02218)は、町の木戸番を尋ねていた。何か変わったことや、変わった人の通行がなかったか、きいておきたい。
「やあ、気を遣ってもらって悪ィねえ」
 木戸番は、佐藤・くおん(スマイルジャンキー・f02218)が忍ばせたおひねりを、袂の奥深くに仕舞い込み、
「いやちょうどよかったよ。実はね今ちょうど、お役人にでも聞いてもらわなきゃって、木戸番仲間で相談してた奇妙な話があってね」
「ふおお、きかせてください!」
 くおんはうさ耳をぴくっとさせて前のめりになった。
 その奇妙な話とは――。
 この町の木戸は、江戸ほど厳密ではないが、やはり夜間は大扉を閉めてしまう。閉門中は横手にある小さな潜り戸をノックして開けてもらい、木戸番に確認を得て通行しなけれならない決まりだ。
 なのに。
「夜中、番小屋の中にいて、ふっと気配を感じて振り向くと」
 木戸番は番小屋の中から窓越しに木戸の方を指して。
「女がふわあって、通るのが見えてさ。大扉はもちろん、潜り戸だって閂降ろしてンのに」
「女!」
 また夜更けの女だ。
「慌てて外に出てみると、女の姿は見えないし、木戸を開けられた様子もなくて」
 木戸番は幾分青ざめて。
「俺1人きりが見たんなら、夢かと思うさ。でも、別の晩の当番でも見たってヤツがいて……ってかさ、正月明けてから、毎晩のように通ってるみたいなんだよ」
「!!」
 夜更けの女は、毎晩のように醤油問屋に通っているということか?
「だからさ、幽霊か物の怪かわからんけど、お役人様に一応話しといた方がいいかねえって」
「そ、その女って、町に入ってくるだけですか!?」
「俺が見たのは入るとこだったけど、出ていくの見たヤツもいるよ」
「そうですか……」
 つまり夜更けの女は、毎晩醤油問屋にやってきて、そして主人になんやかやした後、町の外へと帰っていっているということになる……?

「ありがとう、昼は年寄りの留守番だけだから助かるよ」
「お安い御用です。むしろ、お忙しいところお話をせがんですみません」
「いやいや、この通り、年寄りがのんびり店番してるだけだからね、話し相手は、ありがたいばっかりだよ」
 榛・琴莉(ブライニクル・f01205)は、醤油問屋の裏通りにある、小さな八百屋へとお邪魔していた。お爺さんと孫息子が2人でやっている店で、昼間は孫は振り売りの商いに出ているので、お爺さんひとりで店番なのだ。琴莉は力仕事や掃除を手伝いながら、話を聞いている。
「醤油問屋の旦那は、流行病で死んだ息子が幼なじみだったからねえ、通りがかると今でも挨拶や立ち話くらいはしてってくれるよ。真面目でいい男……のはずなんだけど」
 お爺さんの表情が曇った。
「お正月明けから、急に変調をきたしているらしいんですが、ご存じですか?」
「ああ、なんか急に吝嗇になったらしいねえ。何となく体調も悪そうだし」
「その頃、何か変わったことはありませんでしたか? 変わった物を手に入れたとか、新しい奉公人が来たとか……」
 琴莉は店先に立派なカボチャを並べている。
「うーん」
 古くなった大根の葉をむしりながら、八百屋は首を傾げた。
「そういうのは無かったと思うけどねえ……ああ、一昨日、その旦那がふらりと通り掛かってさ」
「どんな様子でした?」
「妙にボーっとして顔色も悪いから、旦那、風邪でもひきましたかって声をかけたんだ。そしたら、そうじゃない、寝不足なんだ。毎晩、お狐様のお使いが来てくださるものだから……なんて、わけのわからないことを言ってね」
「お狐様のお使い……?」
 夜更けの女は、狐の使いだというのか?

 ――日が暮れて。
「これから旅芸人の軽業が始まりますよ~!」
 町娘の格好をしたマルガ・ヴァイツェネガー(絶望を砕き生を掴む者・f11395)が、醤油問屋の店の前の通りに立ち、手先の器用さと【早業】を生かし、手品で客引きをしている。
 提灯や松明の灯りに照らされて、中々の雰囲気だ。
 呼び込みの甲斐あり、寒空の下にも関わらず近所の人などが集まってきたが、肝心の問屋の奉公人たちは、中々店の前に出てこない。主が結局奥の座敷から動こうとしないので、遠慮しているらしい。
 その頃にはしっかり店の人と親しくなっていたモルツクルスは、客引きは充分とマルガを店内に呼び寄せて、女中頭に紹介する。
「芸を披露している間は、自分らの仲間のこの娘が留守番をしますから、皆さんもどうぞご覧になってください」
「はい、旦那様のご用は私が務めますっ」
 愛想はあまり自身のないマルガだが、真摯に頭を下げた。彼女は昼間仲間たちが聞き込みをしている間に、町と店に馴染む着物等を調達していたのだが、これからが調査の本番だ。
「そうかい、じゃちょっとだけ見せてもらおうかね。留守番頼むよ」
 女中頭は他の女中たちも連れて、いそいそと表へ出、男の奉公人たちも続く。何やかんや言って、奉公人たちもパワハラからの気晴らしを求めていたのだろう。皆嬉しそうだ。
 そしていよいよ、店の前では。
「旅の芸人が世にも珍しい一芸を見せるよー! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
【パフォーマンス】の開始だ!
 くおんは手始めに瓦屋根に軽々と【ジャンプ】し、隣家の屋根まで【ダッシュ】した後、くるくると宙返りしながら着地を決めた。
「寄ってらっしゃいみてらっしゃいっ! 兎の旦那の軽業を! 見なきゃ一生の損っすよ!」
 モルツクルスの口上も観客のテンションを上げ、拍手喝采。
 くおんのパフォーマンスは【ガチキマイラ】を使った大石噛み砕き、はたまた【残像】を使っての1人的当てと、客の気を逸らすことがない。
 店の前は大いに賑わっている……この隙に、とマルガが動き出す。
「旦那様、お茶はいかがですか」
 奥の座敷に閉じこもって日がな帳簿をめくっているという主人の元へと、お茶を持っていってみる。
 閉じられた襖の中から返事はないが、
「失礼します……」
 そっと開いて室内に目をやる。
 猟兵が間近で主人に会うのは初めてなので、さすがにちょっとドキドキする……。
「……うっ」
 主人の姿を目の当たりにして、マルガの背筋にゾッと怖気が走った。
 ここ数日で急にやつれたと聞いてはいたが、予想以上である。頬はこけ、顔は土気色でカサカサと乾いている。髷に艶もなく、着物も妙に肩が落ちて見えるのは、急に痩せてしまったからだろうか。まだ四十路と聞いていたが、もっとずっと老けて見える。
 そして血走った目は、マルガの方を一顧だにせず、一心に帳簿を見つめ、
「ここも……ここも削れる……金……金だ……金しか信用できるものはないのだ……奉公人など……女房など……いざという時信用できるものか……」
 鬼気迫った様子で呟いている。
 正に何者かに取り憑かれ、生気を奪われつつある者の姿である。
 まるで、牡丹灯籠だ……!
 マルガは、ここまでに仲間たちが集めてくれた情報を、脳内で急いでおさらいした。

 主の極端な吝嗇は、おかみが出かけたすぐ後から始まったこと。
 主はおかみにラブラブなので、実は相当寂しがっていること。
 夜更けに通ってくる女に誑かされているようであること。
 女はおかみがいなくなってから毎晩のように通ってきているらしいこと。
 女は町の外から通っているらしいこと。そして幽霊の類いらしいこと。
 そして女は主人曰く『お狐様』の使いである。

「夜更けの女は、きっと今夜も現れるよね……」
 マルガはひとつの決意を胸に、そっと襖を閉めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『怨霊女武者』

POW   :    局流薙刀術
【薙刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    局流早射ち
レベル分の1秒で【矢】を発射できる。
WIZ   :    落武者呼び
【鎧武者】の霊を召喚する。これは【槍】や【弓】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●2章
 集めた手がかりから、今夜も女は通ってくると予測した猟兵たちは、醤油問屋の周囲で、あるいは内で、その時を待つことにした。
 そして予想通り、星も凍りそうな冬の丑三つ時、女は忽然と店の裏口に現れた。
 ぼんやりと透けて微かに発光した姿は、確かに一般人が一瞥しただけならば女であるようだ、というくらいしか判別できないだろう。
 だが、猟兵たちはその正体をしっかりと確かめた。
 ――怨霊女武者であると。

 醤油問屋で発見した時点で、怨霊女武者を倒してしまうこともできた。
 だが、猟兵たちはそうはしなかった。
 主が『お狐様』と呼ぶ、女武者を使役している存在がいるはずだからだ。
『お狐様』を倒さねば、再び醤油問屋の主人や、他の者が誑かされてしまうかもしれないし、女武者とて通ってきた1体のみとも限らない。
 主には、申し訳ないがもう1晩だけ怨霊との逢瀬を味わってもらうことにして、猟兵たちは店の外で女武者が出てくるのを待った。
 思いの他短時間で、女武者は同じ裏口から出てきた。そしてそのまま滑るようにして町の外へと向かう。
 塀や垣根くらいならすり抜けられるようで、木戸番の言っていた通りに、町境の頑丈な木戸もスウッと通り抜けてしまった。
 猟兵たちは予め頼んでおいたように木戸番に素早く扉を開けてもらい、つかず離れずで尾行する。
 ――着いたのは。
 森の中の廃墟と化した小さな社。
 鳥居脇の崩れかけた石像から見て、稲荷神社のようだ。
 長く荒れた参道奥に朽ちかけたお堂が残っていて、女武者はそこに入っていった。
 森に身を隠して様子を見ていた猟兵たちは、視線で合図を交わすと慎重に鳥居を潜った――その途端。
 ザアッ。
 冷たく乾いた冬の夜の空気よりもなお冷たく、氷気が彼らを包み。
 大勢の女武者が突然現れ、参道を塞ぐように立ちふさがった。
 その数は20体ほどもいるだろうか。
 猟兵たちは女武者と対峙し、武器を抜く。
 今こそ、戦いの時。
 この怨霊共を成仏させねば、『お狐様』とやらにはお目もじ敵わぬのだろうから――。
ベルベナ・ラウンドディー
枕辺の 去り行く人の 踏む路に
我らは見たり 狐火の陰 

…辞世の句にならぬよう務めます


●戦術展開:戦陣の分断と混乱誘発
バイクで走れる広さがあれば騎兵戦で臨みたいが…。
薙刀の射程を【見切り】その外周を【殺気】を残した【残像】を伴いつつ走り抜けること
…つまりは攻撃手段を矢に限定させる。早打ちとは言え乱戦で放てば味方に当たりますよ?
被包囲警戒につき突出は避け、道を塞がれるなら【吹き飛ばし】て突破する


攻撃手はユーベルコードを仕様
繋げた鎖はそのまま相手に絡みつけるよう放り投げ、足止めを狙う
私の役割は戦陣分断
消耗覚悟の無理な仕掛けは"今は"控えます

とっかかりはつくりますので決定打はみなさんにお任せしますね



「枕辺の 去り行く人の 踏む路に
 我らは見たり 狐火の陰」
 そこまで詠んだベルベナ・ラウンドディー(ドラゴニアンの剣豪・f07708)は、仲間たちの方に、クイッと唇を歪めて薄く笑みを見せ、
「……辞世の句にならぬよう務めます」
 そう言って愛機をブルンとひとつふかし、
「とっかかりはつくります!」
 勢いよく境内に……怨霊女武者の群れの中へと突っ込んでいった。
 一見無謀とも思える先陣だが、ハリネズミのように突き出された薙刀の射程ギリギリを【見切り】を使って測り、挑発するように外周を回る。
「どうやら怨霊なだけあって、素早く戦況を判断できるほどの思考力はないようですね……」
 参道の貧弱な並木をかわしつつ、膝が地面に着きそうなほど体を斜めに倒してスピードを上げると、ベルベナの【残像】が女武者たちを取り囲んでいく。残像はまた【殺気】をも残しており、女武者たちは背中合わせにひと塊になると、やっきになって矢を射始めた。しかし、人数が多いせいもあって混乱をきたし狙いは甘く、矢はベルベナを掠ることはあっても、射貫くことはない。
 だが、攪乱は長くは通用しない。女武者たちは一斉に不気味な呪文を唱えて落武者を出現させ、数に任せてベルベナを逆に包囲しようとしてきた。一気に倍に膨れ上がった敵が、悍ましい気を放ちながらベルベナをとりこもうとする……!
「そのくらい、予測してましたよ!」
 ベルベナは敵の戦法が変化したのを見てとると、咄嗟に【吹き飛ばし】で敵軍を強引に突破しつつ、
「ドラゴニアン・チェインをくらいやがれ!」
 突破により2つに分かれた怨霊の群れの、仲間に近い方に向け、ドラゴンオーラの鎖を思い切りよく放り投げた。
 輝くオーラの鎖は蛇のようにのたうち、闇を切り裂き宙を走った。眩く火花を散らして敵軍に絡みつき、そこかしこで小爆発を起こす。
 女武者たちは再び混乱をきたし、落武者も消えた。しかも鎖に動きを妨げられている。
 陣を乱した敵を後目に、ベルベナは『今は』自分の役目はここまで、と一旦最前線から退いて戦友たちに声をかける。
「さあ、今です。決定打は皆さんにお願いしますよ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

榛・琴莉
※真の姿:背の翼が巨大化、腕のように扱う事も可能な構造になる。飛行能力は保持

敵の数が多くて厄介ですね…本命の前に削られるのはよろしくありません。
押し切られてしまう危険性がある場合は仲間に攻撃を任せ、私は防御に徹します。

敵の攻撃に合わせて【エレメンタル・ファンタジア】。
氷の津波で相殺を。
【2回攻撃】は、攻撃するのであればすかさず怨霊狙い。
防御するなら仲間を巻き込まないよう注意しつつ、次の敵の攻撃に合わせて使用。
どちらも【全力魔法】。

津波を抜けて来た攻撃は、魔力を集中させた翼で受け止めて【オーラ防御】。



 榛・琴莉は、思った以上に多い敵の数に自らの出方を熟慮せざるを得なかった。
「敵の数が多くて厄介ですね……本命の前に削られるのはよろしくありません。押し切られてしまう危険性がある場合は仲間に攻撃を任せ、私は防御に徹しましょう」
 だが、先陣を切ったベルベナが、敵を鳥居側と奥のお堂側に二分してくれたのを見てとると、次手は自分の出番であると即座に判断し、
「エレメンタル・ファンタジア!」
 ありったけの魔力を込めたユーベルコードにより、真冬の空気より尚冷たい氷の津波を引き起こした。
 ゴオオォォォ!
 津波は、鳥居側の群の女武者を飲み込んでいく。巨大な氷山のような津波は細い参道を覆い隠すように迫り、オーラの鎖から脱出しかけていた女武者も、再び動けなくなってしまった。
 琴莉の好判断な足止めにより、手前の一群が動けないうちにと、仲間たちの何人かが空から、または参道の並木を伝って、氷の津波を眼下にやり過ごしながら移動しはじめる。参道の奥にいる一群を背後から攻撃し、挟み撃ちにするためだ。
 氷の津波は多くの女武者の体力を奪い、動きを妨げている。しかしそれでも、その氷の壁を突き抜けて向かってくる猛者もいる。
 傷つき闇が透けるほどに薄らいだ幽体は、敵であっても悲壮感を誘うが、それでも女武者が弓を自分めがけて構えるのを見て、琴莉は。
「ここは守り切ります……!」
 魔力を集中させ、オーラの光を纏った翼を広げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

モルツクルス・ゼーレヴェックス
くおん殿、マルガ殿、エミリー殿と協力
灯りを携行

「所詮、敵は烏合の衆っす!負ける要素はないっすよ!」
事実を叫んで【鼓舞】して

背中の翼で飛んで【空中戦】っす!
地上の敵に弾幕を叩き込むことこそ王道と【戦闘知識】が教えてくれるっす

弓矢で攻撃されたら【オーラ防御】

「近眼の鷹ことモルツクルス!対地爆撃開始っす!」

【ウィザード・ミサイル】今や一回につき95本の炎の矢は【範囲攻撃】と言える規模っす
コイツを【属性攻撃】で強化して【高速詠唱】で間断なく絨毯爆撃!

それで戦場が明るくなると思うっす
よく観察して【情報収集】して味方有利になる位置を攻撃したいっす!
【コミュ力】あるっすから、皆のやりたいこと分かるっす!


エミリー・ローレライ
モルツクルス、マルガ、くおんと協力希望互いの位置確認も兼ねて照明を持って行動。「敵は雑魚しかいない、…けど油断しない。」そう呟いて翼で飛行し【起動、殲滅せよ機械の僕たち】を発動。「まだ50機しか呼べないけど、今はこれで十分。…殲滅…開始…」そう言って50機の砲台で【一斉射撃】、弾幕を張る。弓矢が飛んで来たら【盾受け】で防御。


佐藤・くおん
※モルツクルス、マルガ、エミリーと協力希望
互いの位置確認も兼ねて照明を携帯して行動【地形の利用】により屋根を【ジャンプ】しつつ索敵、接近する。途中で瓦を拾って【投擲】してけん制するよ
敵の攻撃は【野生の勘】で【見切り】つつ敵の一体を【マヒ攻撃】して【敵を盾にする】。盾を持って敵の攻撃を受けつつしばらく注意を引きつけるよ
盾が死んだら新しい【敵を盾にする】
敵が逃げ出したら【ダッシュ】で追いかけ掴み【投擲】して空中に放り出す、一斉射撃、範囲攻撃に合わせて素早く行おう。民家に攻撃が当たる前に敵や瓦をぽいぽい投げて弾幕が被害を出さないようにしておこう
UCはボス戦に備えて温存


マルガ・ヴァイツェネガー
【猟兵商業組合】と連携が取れればお願い致します

さぁ戦いの時です!張り切って行きましょう!
相手は女武者の亡霊、長柄の得物はリーチの長さと攻防に優れた武器が特徴ですが隙が出来るとその長さが弱点にもなるのです!
辺りが暗いので事前に照明を持って視界を確保、味方の位置も把握出来るようにしておきましょう!
撹乱と攻勢をメインにして敵の隊列を崩しながら一体一体仕留めに行きたいと思います!
斧を【怪力】で横薙ぎしながら陣形を崩し、【グラップル】の拳で相手の鎧を砕き【クイックドロウ】と【早業】で撃ち抜きます!
味方の攻撃も邪魔しないように【見切り】で避けながら攻めますのでボクのご心配はしないで攻めちゃってください!



 その時、
「ボクに任せて!」
 鳥居の陰から飛び出したのは、マルガ・ヴァイツェネガーであった。闇に慣れた目が眩むほど、明るい照明を灯しながら。
 目映い灯りは怨霊の目をも一瞬眩ませたようで、射られた矢は味方から逸れてあらぬ方向へと飛んで行く。
 マルガは破壊力を増した拳で、
「たあっ!」
 次の弓を放とうとしていた怨霊の鎧ごと腹をぶち抜いた。
 そして、敵群を越えて参道の奥を目指す【猟兵商業組合】の仲間たちの背中に、
「ボクのことは心配せずに、攻めて下さい!」
 声をかけると、つかの間も休むことなく、弱った敵陣へと突進した。斧を怪力で力強く横薙ぎして、敵群の混乱を更に高めていく。
「おっ……と」
 横から突き出された薙刀は、見切って体を反らして避け、
「リーチの長い武器は、その長さが弱点にもなるものです!」
 左手の肘で長柄を弾き、同時に右手の見事なクイックドロウで、マグナムを抜いてぶっ放す。
 ズ、ギューン……!
 夜更けの境内に銃声が響き渡る。
 至近から放たれた破壊力の大きな弾丸は、女武者の額に黒々と穴を開けた。

 ズ、ギューン……!

 背中でマルガの放った銃弾の音を聞きながら、モルツクルス・ゼーレヴェックスは背中の翼を使い、佐藤・くおんは並木を伝って、参道の奥へと向かっていた。
 モルツクルスの【戦闘知識】が、ここは空中戦こそ王道である、と教えてくれるが、仲間たちとの連携は大切だ。
 女武者共に悟られることなく、2人は参道最奥のお堂までたどり着いた。くおんは屋根の上に身を伏せ、モルツクルスはその上空にいる。
 鳥居の方の敵群とは、マルガはじめ戦友たちが派手に交戦している。既にかなりのダメージを与えることができているだろう。
 一方、お堂側にいる敵群は、鳥居側ほどダメージを被ってはいないし、先陣に与えられた混乱からも立ち直りかけているようだ。鳥居側を援助すべく移動を始めた女武者もいる。
「そろそろこちらからも攻撃せねば……」
 お堂側の敵群まで鳥居の方に殺到しては、残った猟兵だけでは抑えきれないかもしれない。そうなる前にこちらからも……。
 と、思った瞬間、鳥居の上からピカッと光が差した。
 エミリー・ローレライ(銀翼の守護者・f05348)からの位置確認の合図だ。
「よし、いくよ!」
 くおんはお堂の屋根瓦を片っ端からひっぺがし、女武者に向かって投擲しはじめた。
 瓦が当たったくらいで怨霊にダメージは与えられないが、それでも注意を引くことはできる。
 思惑通り、背後にも敵がいることに気づいた女武者たちが、今度はお堂に向けて殺到してきた――今だ!

「敵は雑魚しかいない……けど油断しない」
 エミリーは奥の敵群がまたお堂側に向けて動き出したのを見てとると、目映い照明に銀髪と白い翼を輝かせ、鳥居の上から飛び立った。
 そして、
「起動、殲滅せよ機械の僕たち」
【自律式浮遊砲台ALICE】を召還して、敵群の上空へと解き放つ。その数50機。
 砲台は手前の鳥居側から、女武者を舐めるようにビーム砲を一斉射撃しはじめる。激しい弾幕に、敵群は奥のお堂の方……2人の仲間が待ち受けている方へと追いやられていく。
 退却しつつ苦し紛れのように、上空のエミリーに向けて矢を射込んでくる敵もいるが、守護者の大盾で跳ね返し、砲台を操り続ける。
「まだ50機しか呼べないけど……今はこれで充分」
 役目を終えた砲台は次々と消滅していくが、エミリーは殲滅されていく敵群を見下ろし、満足げに呟いた。

「よし……来たっすね……!」
 エミリーの砲台にみるみる押し込まれてきた敵群の様子に、モルツクルスは舌なめずりした。
「近眼の鷹ことモルツクルス! 対地爆撃開始っす!」
 満を持して、渾身の魔力と技を込めたウィザードミサイルを、ひと塊にもつれ合っている敵群の上空へと展開した。
 ドドドドオォォッ!!
 95本もの火の柱が、範囲攻撃とも言えるような規模で、敵群を包み込む。
 まるで地中から火柱が噴き上がったかのような勢いだ。
 その絨毯爆撃から逃げられた敵は少ないが、
「所詮、敵は烏合の衆っす! 負ける要素はないっすよ!」
 モルツクルスの鼓舞を受けて、
「おうっ、任せといて!」
 くおんが屋根から身軽に飛び降りた。弱った敵を捕まえると、それを盾にして攻撃を避け、逃げだそうとした女武者を、マヒ攻撃で捕まえて火柱へと放り込む。
 燃えさかる火柱のおかげで、鳥居側でもマルガが仁王像のように立ちふさがって斧を振るっているのが見える。
 また、闇に沈んでいた境内の様子も見えるようになった。『お狐様』とやらの戦いに向けてよく観察しておこう、とモルツクルスは上空から目を凝らす。
 猟兵たちの次々と畳みかける攻撃に、怨霊女武者はろくな反撃もできないまま壊滅寸前だ。
 ここまできたら、全て綺麗に成仏させてやろう。それがせめてもの慈悲――猟兵たちが、全員で掃討に入ろうとした、その時。

 ギイィィィ――……。

 耳障りな軋み音を立てて、お堂の扉が開いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『傾国の白仙狐』

POW   :    その精、喰ろうてやろうぞ
【全身】から【魅了の術】を放ち、【幻惑】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    出でよ我が僕、死ぬまで遊んでおやり
【自身に従属する妖狐】の霊を召喚する。これは【剣】や【電撃】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    妾の炎に焼かれて死ぬがよい
レベル×1個の【狐火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は御狐・稲見之守です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「妾の僕を滅ぼそうとしている者は誰じゃ」
 お堂から出てきたのは、年古りた……けれど大層美しい妖狐であった。
 ――なるほど、これが『お狐様』か。
 残った数少ない女武者たちが、今にも消え入りそうな様子で、それでも首領である妖狐を守ろうと集まっていく。その数はもはや3体のみ。
 妖狐は妖艶な瞳で、お堂の前に集まった灼滅者たちを睨めつけ。
「……お主ら、妾の企みも邪魔してくれたようじゃのう……」
 怒りを滾らす妖狐の周囲に、ぽっ、ぽっ、と狐火が浮かびだす。
「許さぬ! 妾の妖力で焼き尽くしてくれるわ!!」
ベルベナ・ラウンドディー
「私の炎に焼かれて死ぬがよい」
挑発を兼ね、冒頭の狐火は【鏡技】で制して交戦に突入


●方針:機を見切り、被弾覚悟の突破

直線的な機動力は今は無用
バイクの騎兵戦は控え歩兵戦術に移行します


攻撃…殺気・恐怖を与える・ダッシュ・串刺し
回避…見切り・残像
反撃…カウンター・串刺し・吹き飛ばし・ダッシュ

で展開
女武者は眼中にありません
背に隠れたなら貫通させて狙うオマケ程度の認識です


「化け狐 朽ちし社に 浮かぶ火は
  羽虫のごとく 飛ぶに能わず」



もともと火炎耐性はあります
好機と見切れば【鏡技】は狙わず勇気で被弾覚悟の強硬突破!
この展開に持ち込むための挑発
必死に狙ってほしいものです

後続の勢いがつけばいいのですが(鼓舞)



「私の炎に焼かれて死ぬがよい――さあ、驚け!」
 挑発的に叫びながら愛機を飛び降りたベルベナ・ラウンドディーの周囲に、妖狐の狐火と同様の炎が浮かんだ。【鏡技】だ。
「妖狐族でもないのに、同じ技を持っているとは……?」
 敵が一瞬驚いた隙に、
「直線的な機動力は今は無用……!」
 見切りや残像を駆使し、飛んでくる狐火と矢を躱して、お堂の階段を駆け上る。それでも敵の矢や炎が彼の体を幾度も掠るが、火炎耐性には自信があるし、少々の被弾は覚悟の上。
 近づいてくるベルベナから主を護ろうと、今や薄い影のようになった女武者たちが階段に立ちはだかるが、その動きも彼にはしっかり見えている。
「化け狐 朽ちし社に 浮かぶ火は
 羽虫のごとく 飛ぶに能わず」
 口の中で敵を揶揄する一首を呟くと、ベルベナは敵の技である狐火を、
「お前らなんて眼中にないんだよ」
 女武者にぶつける。
 ボッ、と小さいながらも火勢を増す炎に怯んだ女武者の壁をすりぬけ、ベルベナは。
「でやあっ!」
 串刺しを狙い、妖狐の細い胴目がけ愛刀を思いっきり突き出した。
 しかし同時に 
「その精、喰ろうてやろうぞ!」
 妖狐が魅了の術を唱えた。
「……うっ」
 力が漲っていたベルベナの全身が、一瞬にして萎えた。
 しかしその腕には、オブリビオンの肉を抉った感触が確かに伝わってくる――。
 目的は果たした、とベルベナは深追いせず、敵から素早く刀を引き、飛び退いた。
「(自分の挑発が、仲間の攻めに役立つとよいのだが……)」

成功 🔵​🔵​🔴​

佐藤・くおん
※マルガ、モルツクルス、エミリーと協力希望
「悪いけど、僕おばさんには興味ないから」
うちのがっちゃん(マルガ)の方がよっぽどエロい恰好だし!【毒耐性】も合わせれば魅了の術なんのそのってやつだよね
挨拶代わりに【敵を盾にする】で残った雑魚を捕まえて【投擲】、すかさず【ダッシュ】し【喝采の一撃】を叩きつける
反動で【ジャンプ】し攻撃は【見切り】をつけて回避。相手に暇を与えないためドラゴンランスを【投擲】、【ドラゴニック・エンド】を発動!空中にいるエミリちゃんに回収してもらい、その盾を思いっきり【踏みつけ】て全力の【捨て身の一撃】を叩きつける!


マルガ・ヴァイツェネガー
猟兵商業組合のメンバーと連携を希望します

ボクはモルツクルスさんが情報収集を完了させるまで敵の牽制と囮を務めましょう!
武者と狐を引き離し過ぎると話を聞き出すのも困難になるかもしれません!武者達の攻撃を【見切り】、回避しながら【クイックドロウ】で攻めず攻めさせずの時間稼ぎをします!
情報収集が終わったと同時、斧撃による速攻を掛け、鎧ごと【グラップル】して敵の攻勢を削ぎます!
妖狐に何らかの隙が生まれ次第、斧で斬り上げ、拳で打ち砕き、零距離から撃ち貫く…【Jagdhund・Beschiesung(ヤクトフンドベシースング)】で一息に攻めさせて頂きます!
戦場にて猟犬としての矜持、お見せしましょう!!


モルツクルス・ゼーレヴェックス
どうして旦那を狙ったか?
具体的に何を狙って何を吹き込んだか?
その辺のことを戦いながら聞き出したいっすね

必要なら【礼儀作法】で煽てたり、【コミュ力】でご機嫌をとるのも厭わないっす
【情報収集】は得意っす

情報収集が「終わった」ら遠慮なく戦闘っす

「冥土に行くのに置き土産、ありがとうございましたっす!」

【高速詠唱】で【属性攻撃】を次々撃つ
負傷者は【生まれながらの光で癒す】後方支援

アフターケアで旦那を癒す
手にした情報を【学習力】で活かしてカウンセリング

心身ともに元気になって、おかみに会ってもらうっす

「どうっすかね、ここらで一つ、休みをとって、家族水入らずっていうのは」
……従業員にも、頼むっすよ!


エミリー・ローレライ
※マルガ、モルツクルス、くおんと協力希望。空中で【起動、殲滅せよ機械の僕たち】を再発動。10機は目を狙って【目つぶし】【一斉射撃】、【二回攻撃】で攻撃。残りの50機は全身を狙って【一斉発射】、【二回攻撃】で攻撃、それを倒れるまで繰り返し。途中で盾を構えてくおんを回収。



 ベルベナの狙いはしっかり仲間たちに伝わっていた。
 間髪入れず、
「悪いけど、僕おばさんには興味ないから!」
 と、魅惑の術なんのそので佐藤・くおんが飛び出した。挨拶代わりに弱り切った女武者を1体捕まえて、盾にしながら妖狐に近づいていく。
「うちのがっちゃんの方がよっぽどエロい恰好だし!」
「お主のような小僧に興味を持たれずとも全く構わぬわ――妾の炎に焼かれて死ぬがよい!」
 大きな狐火を出現させたが、そこまでくおんは読んでいた。
「でえいっ!」
 盾にしていた女武者を投擲して炎の中に放り込み、それによって出来た動線を一直線に進み【喝采の一撃】を繰り出した。
「食らってくたばれ!」
 単純で重い捨て身の一撃の力は、槍へと確実に伝わった。
「ぐああっ!」
 深々と槍の穂先が、妖狐の豊かな胸に突き刺さる。
 くおんは反撃される前にと、助走の反動を利用してジャンプしようとしたが……。
「ああっ!?」
 ズボリとお堂の床が抜けた。朽ちかけたお堂の床は、ユーベルコードの威力にに耐えられなかったのだ。
「オホホホホ、いい格好だこと!」
 片足が根元までずっぽり嵌まってしまったくおんに、妖狐は血へどを吐きながらも嘲笑を浴びせかけた。
「しまった……!」
 苦し紛れに投げたドラゴンランスは躱され、妖狐は呪文を唱え始める……そこに。
「……起動」
 バサ、バサ……。
 力強い羽ばたきと共にやってきたのは、エミリー・ローレライであった。
 エミリーは盾を構えながらくおんの片手を掴み、小さな体に力を込め、そのまま浮上して救出する。
 同時に頭上からは、彼女が召喚した自律式浮遊砲台の、援護の射撃が雨あられと降り注ぎはじめる。
「ぐわっ」
 妖狐が右目を押さえて蹲った。
 統率された射撃で、10機の砲台は妖狐の目を、残りの50機は全身を狙い、的確に反撃を封じ込めている。
「ありがとう! 助かった」
 くおんの礼にエミリーは僅かに微笑んだような表情で頷く。
 無事に脱出した2人は、次の機会を窺いながら、仲間の攻撃を空から見守ることにした。
 

「――どうして、醤油問屋の旦那を狙ったんすか?」
 モルツクルス・ゼーレヴェックスは礼儀正しくにこやかに、しかし絶妙な距離を保ちながら、傷ついた妖狐に疑問を投げかけてた。
 傍らにはマルガ・ヴァイツェネガーがいて、いつでも発射できる態勢で拳銃を構え、敵を牽制している。
「彼奴にはつけいりやすい心の隙間があったからの」
「隙間とは?」
 呪文を唱えるタイミングを窺っているようだが、それでも疑問には答えてくる。会話によって隙を生み出し、且つ少しでも負傷から立ち直ろうとでもいう狙いか。
 妖狐は片眼が潰れ、腹や胸にも深手を負っているが、それでも妖艶な笑みを浮かべて。
「おかみの留守が、彼奴を荒ませたのじゃ」
「ああ……」
 やはりおかみがいないことが相当寂しかったのだろう。体調不良という点も不安であったろうし。
「そこに妾は僕を差し向けて、囁かせたのじゃ――お主の妻がこれほど頻繁に湯治に出かけるのは、箱根の湯で若い男と会っているからではないか、と。それとも同行の下男と出来ているのではないか、とな」
「………」
 モルツクルスとマルガは思わず顔をしかめた。
 何てゲスな発想だ。
「一度疑心暗鬼に陥れば人など弱いもの。おかみが信用できぬのなら、奉公人など信用できるはずもない」
 ホホホホ、と妖狐は耳障りな高笑いを響かせた。
「信用できるのは金だけだ、そうお狐様が申しておる……と吹き込ませたら、涙ながらに僕にすがってきよったわ」
 おそらく主と接触した女武者を通じて、幻惑の術も使ったのであろうが、主の寂しさにつけこんだのは間違いなさそうだ。
「藪入りを止めるほどの吝嗇に走らせたのも、あなたっすか?」
 妖狐は嗤ったまま首を振り、
「それは違う。だが、彼奴の中にそういう素地があったという表れであろう。元々彼奴は奉公人にかかる金や、休暇を無駄だとどこかで思っておったのじゃろうな。おかみが止めていたかもしれぬ」
 なるほど、主の吝嗇のストッパーたるおかみが留守で、しかも信用できなくなり、一気にタガが外れたのかもしれない。
「お陰で醤油問屋では、奉公人の不満が高まってますし、商い先からも不信感を抱かれ始めてるっすよ?」
「ふふん、妾はあの店が潰れても構わぬのじゃ。それはそれで楽しいからの」
「悪趣味っすね、何が楽しいんっすか」
 妖狐は血塗れの顔で、物凄い笑顔を作り。
「人間の心を操ることがじゃ。心を操ることにより、僕は彼奴の精を吸いとり、その精はわらわの力となった――だから、お主らなどには負けぬのじゃ! ――出でよ我が僕、死ぬまで遊んでおやり!!」
 妖狐は、数十匹もになる狐の霊を召還した。それら一匹一匹が電撃や剣の力を持ち、猟兵たちに飛びかかってくる――!
 だが。
「冥土に行かれる前の置き土産、ありがとうございましたっす!」
 素早く飛び退いたモルツクルスが、高速詠唱で次々と属性攻撃を撃って狐を牽制し、
「さぁ行くよ!! Jagdhund・Beschiesung!」
 マルガは群がってくる狐を振り払いながら、一気に妖狐の懐に踏み込み、斧で肩口を斬り上げ、豪華な着物が筋肉にめり込む勢いで、腹の傷を狙って拳を叩き込んだ。
「うぐぅ!」
 妖狐は呻き声を上げてのけぞり、白い喉を露わにしたが、狐の霊に群がられたマルガの傷も浅くはない。畳みかけて攻撃を加えるのは難しい……。
 その時。
「でえええいっ!」
 真上から猛烈なスピードで落ちてきて、そのまま体当たりをかましたのはくおん。エミリーにジャストな位置とタイミングで落としてもらったのだ。
 バキッ。
 骨が折れた音がした。
 くおんの捨て身の一撃に、さしもの妖狐も、折れたらしい左肩を抱え、よろめき跪く。
 後方からは、モルツクルスは自らの体力を削りつつ、仲間たちに【生まれながらの光】を浴びせ、回復を図っている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネレム・クロックワーク
ごきげんよう、おばさ……いえ、妖艶な妖狐、さん?
申し訳ないけれど、貴方の『時間』は此処まで
速やかに、ご退場願いましょうか

【SPD】
【先制攻撃】で最初から全力でお相手する、わ
【全力魔法】と氷属性の【属性攻撃】を【高速詠唱】で愛用の魔導銃に装填
狙うは妖狐の凍結
避けてもいいけれど、それらは貴方に当たるまで追い続けて、貴方の時に鍵をかける
凍結後は【全力魔法】を【高速詠唱】で魔導銃に装填した通常攻撃の魔法弾の連射にて氷ごと破壊を

悪趣味な貴方に相応しい最後をあげる
人の心を弄ぶ貴方への慈悲なんて、最初から何処にも存在しない、わ


青葉・颯夏
ルーナ(f01357)と同行

まったく、悪趣味にも程がある
あなたにふさわしい場所に帰ってもらうわ

ふだんは《雪紐》に預けている《黒紅》を逆手に持つ
花風を撃ったら花びらに紛れて妖孤へ接近
《黒紅》で斬りつける
ダメージを受けていれば【生命力吸収】で回復
敵からの攻撃は【なぎ払い】で落としたり
最悪【耐性】で耐えてからの【カウンター】
いつもなら援護だけれど今日はそういう気分じゃない
引導を渡すわ


ルーナ・リェナ
颯夏(f00027)と同行

うー、難しいことはよくわからないけど
あいつを倒したらみんなにとってはいいことになるんだよね
なら、やることは決まったよ

珍しく前に出る気の颯夏が動きやすいようにソルでフェイントをかける
狐火が出てきたら右足の紋様から水を呼び出して、少しでも勢いを和らげる
あとは颯夏に合わせてイエロで攻撃

妖孤がいなくなって商家の主人に会えたらしっかりお説教しなきゃ
ふだん働いてもらってるみんながいなかったら何にもできないんだよ
だからちゃんと、わかるように感謝しなきゃね



 ネレム・クロックワーク(夢時計・f00966)は、果敢に戦った仲間を背に庇うように最前線へと踏み出した。
「ごきげんよう、おばさ……いえ、妖艶な妖狐、さん?」
 チョコレート色の冷ややかなまなざしが、よろめき跪いた妖狐を見下ろす。
「申し訳ないけれど、貴方の『時間』は此処まで。速やかに、ご退場願いましょうか」
 青葉・颯夏(悪魔の申し子・f00027)も、クールな顔立ちに、嫌悪感を隠さない。
「まったく、悪趣味にも程がある。あなたにふさわしい場所に帰ってもらうわ」
 ルーナ・リェナ(アルコイーリス・f01357)は、怒れる2人の間でぱたぱたと飛びながら、ちょっと困ったように首を傾げ。
「うー、難しいことはよくわからないけど、あいつを倒したらみんなにとってはいいことになるんだよね?」
 理屈はわからなくても、目の前のターゲットが悪者だということはわかる。
「なら、やることは決まったよ!」
 ソルを槍からドラゴンに突然変身させて、妖狐に跳びかからせた。
「く……っ」
 妖狐は一瞬怯んだが、
「生意気な小娘共め……ッ!」
 腕を伸ばしてソルを捕まえようとした。
 だが、弱った妖狐に、すばしこいソルを捕まえることはできない。ソルは妖狐をからかうように、その手の間をすり抜けた。
 しかも、ルーナとソルの仕掛けたフェイントの間に、ネレムと颯夏は絶妙な位置へと移動して戦闘態勢を整えていた。
 悪辣な敵に、いつになく戦意をむき出しにした颯夏が、妖狐を指して叫ぶ。
「逃がさないわ――タンペット・フルール!」
 無数のラナンキュラスの花びらの竜巻が妖狐を包み込んだ。妖艶な妖狐に、鮮やかな花びらの舞い……美しい光景だが、妖狐の全身は花びらに切り刻まれ、血が飛沫く。
 そして、
「冱てる、時の歯車――クロノステイシス!」
 ダダダダダダダ……!
 ネレムの高速詠唱で魔道銃に充填された氷の弾丸が、竜巻の中へと吸い込まれていく。
「この弾丸は、逃すことなく貴女の時に鍵をかける」
 もがき動くターゲットを弾丸は追尾し、確実に凍り付かせていく。
 それでも妖狐は苦し紛れながら、激しい攻撃のさなかから狐火を放った。
 しかし、すかさずルーナが、
「わたしが消すよ!」
 右足の紋章から水を呼び出しながら飛び回って火消しに勤めたので、猟兵たちのダメージは軽微だ。
 花びらの竜巻が止み、氷の銃撃が途切れても、血と氷にまみれた妖狐は、膝と手を床についたまま立ち上がれない。
 ――ただ、両の眼だけが炯々と猟兵たちを睨みつけ、しわがれた声が。
「い……出でよ……わ、我が」
「させないわ!」
 召還呪文を唱えようとした血塗れた唇を塞ぐように、
「悪趣味な貴方に相応しい最後をあげる。人の心を弄ぶ貴方への慈悲なんて、最初から何処にも存在しない、わ!」
 ネレムの魔導銃が再び火を噴いた。今度は通常弾ではあるが、妖狐の呪文を封じ、氷ごとダメージを与えるには充分だ。
「グギャアッ!」
 獣魔の本性を露わにした耳障りな悲鳴を上げた敵に、颯夏とルーナは短く視線を交わした。
 颯夏は普段は人形の雪紐に預けている愛刀・黒紅を逆手に持ち。
「引導を渡すわ」
 続いてルーナは右腕を凍竜の頭部に変形し。
「イエロ、そいつを喰らいつくして!」
 援護の銃撃と、まだ散り残る花びらの中、同時に飛びかかった2人の刃と、牙が、妖狐の細い首を捉えた。
 ギャアアアアァァァァ!
 怖気を振るう断末魔の悲鳴と共に、首が飛んだその瞬間、怪しいほど美しかった妖狐の顔と肢体は、年古りた獣に戻り……。

 ――そして塵となり、骸の海へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月21日


挿絵イラスト