アースクライシス2019④~華やかなりし悪の淑女
●これまでのあらすじと次回予告
ユタ州南部からアリゾナ州北部――モニュメントバレーに突如現れた幾つもの洞窟より現れた『神鋼の鎧』を装備せしオブリビオン。
奴らのこの鎧は鋼神ウルカヌスの授けたものであり、センターオブジアースから地上に送り込まれた刺客であった。
この聖地において奴らは無敵!
あらゆる攻撃への超耐性は、斬撃打撃魔法を始め、精神攻撃から毒やらガスやら、果ては「ばーか」「でべそ」程度の悪口まで凌ぐのだ!
だがしかし、君達は諦めてはいけない。
絶対無敵な護りなど、この世には存在しない――それが喩え神による加護であったとしてもだ。
負けるな、猟兵。勝つんだ、猟兵。
次週『奴の弱点は、「首飾りの裏にある小さな痣から少し右」だ!!』
「以上、次回予告風味でお送りしたヨー!」
狐耳をぴこぴこさせながら、王・笑鷹(きんぎつね・f17130)が手にしていた紙芝居をしまう。
まあ、つまり、そういう戦いです。
●マダムの優雅な戦場
洞窟の中、美しいダイヤモンドの輝きに守られたマダム・シャーロットが黒い扇を手に微笑む。
ドレスの表面に沿うように作られた鎧は、無骨さを全く感じない。
というか、眩しすぎて正視できない。ぎんぎらと照りつける宝石の輝きで、見えているはずなのに、何も見えないのだ。
なるほど、闇雲に攻撃しても意味が無いわけだ――。
聖地はただの洞窟だが、彼女は自分の居心地が良いように、上質な絨毯(盗品)、美しい猫足のテーブルセット(盗品)、香り豊かな紅茶(当然盗品)が揃って、迎撃に向けた精神状態のセットアップにも余念が無い。
「フフフ……美しい鎧。気に入ったわ。聖地に居れば無敵……さあ、ヒーローたち。わたくしは器が広いもの。弱点くらい教えて差し上げてよ? ――けれど、正義に生きるアナタ方はわたくしの弱点を狙えるのかしら?」
美しき口元に湛えるは、優雅な微笑み。
嗚呼――コレ、盛大なフラグだ。
黒塚婁
どうも黒塚です。
お約束だけが人生さ。
●プレイングボーナス
このシナリオにはプレイングボーナスがあります。
どこかにある「鎧の隙間」を狙うこと、です。
はい。
『神鋼の鎧』は絶対的な防御力を誇りますので、正攻法では攻略出来ません。
そしてマダム・シャーロット自身の能力も大変高く、老若男女問わず屈服させる魅力を持ちます。
あらゆる趣味嗜好を凌駕するとお考えください。
……問題の趣味嗜好がある種、突き抜けてる場合は、まあ、考慮します。
●プレイング受付【11月3日8:31~】
既に必要な説明は終えておりますので、導入追記などはございません。
締め切りはプレイング送付不可になるまで。
描写人数は書ける分だけ。最低限で終わる可能性もあります。
基本的に「このシナリオの対策をしていないな」と感じたプレイングは流れる可能性が高いです。
技能の列挙系も、仕様意図が解らない場合、不採用の可能性が高いです。
ただし、プレイングの全員描写は致しません。ご注意ください。
それでは、皆様の活躍を楽しみにしております!
第1章 ボス戦
『マダム・シャーロット』
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POW : チャーミングフェルモン
【10秒間の集中】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【矢】で攻撃する。
SPD : コールオブマダム
【手枷】【猿轡】【拘束ロープ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ビューティフルマイワールド
全身を【黄金のオーラ】で覆い、自身の【意志の力】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
イラスト:Nekoma
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ビードット・ワイワイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
クロト・ラトキエ
はーい。それではサングラス着けますねー。
僕、正義の心とか、からっきし無縁ですので?
開口一番、尋ねますのは勿論、
「弱点、教えてくーださーいなっ♪」
ところでその首飾り、ロココ調?
鏃の向き、軌道、速度…
持てる戦闘知識を以て矢を見切りつつ、距離を詰め。
眩しさ軽減すれば、或いは大きな挙動の後なら、
目視でも隙間を探れぬか…と思いましたが。
敵の自称弱点、狙った方が早いです?
でも、魅力、魅了かぁ…怖いですねぇ。
…僕。好きなモノ程、壊したくなっちゃうんで。
UCの炎の魔力を攻撃力に。
只の金剛石なら燃やせもしましょうが…
点ならナイフ、線なら鋼糸を用いて、隙間を穿ちたく。
こちとらワルでして?
正義とか、本っ当無いんで♪
ジャスパー・ドゥルジー
趣味趣向が突き抜けてりゃ可能性はあるって笑鷹が言ってた!!!!!(幻聴)
色白のエレガント美女?
正直めっっっちゃタイプだ!それがどーーーした!!
魅力で屈服させてぇならするがいいぜバーカバーカ!
屈服して棒立ちになってる無防備なとこ狙って黄金のオーラとかで狙ってきやがるがいい!!
俺ドMなんでー!!気持ちいいんでー!!ご褒美なんでー!!!
ホラホラホラさっさとしやがれ遠慮はいらねェぞ!!
…あ、ちなみにこれ全部戦術なんで
引っかかったやつの動き封じるっつー立派な技なんで
あれ、弱点なんだっけ
ロココ調の右…?じゃなくて
まあいいや、俺の類稀なる戦闘センスでなんとか割り出してそこをナイフでブチ抜くぜ!!!!!!!!
●加虐者
洞窟の入口に立ったクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、小さく「わぁ」と零した。
何せ、そこにいるぞとばかりに輝きが放たれている。互いに目視できる位置ではないが――まあ、折角強くなったのに無視されては堪えるだろう。
「はーい。それではサングラス着けますねー」
誰にでも無く宣言し、クロトはささっと目を守る。
そのすぐ近くで、クックックッ、と肩を揺らすはジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)だ。
(「趣味趣向が突き抜けてりゃ可能性はあるって笑鷹が言ってた!!!!!」)
親指を立ててウインクする狐娘の幻覚――いや、多分、転送前に実際見た。
何を目論んでるんだろうなーと思いつつ、クロトはさくさくと進む。
そこには優雅に椅子に腰掛けた淑女がいた。
煌びやかというよりは、もはや発光している。宝石を全身に纏い微笑むマダム・シャーロットは奇麗に口紅で染めた唇を、笑みで歪める。
「あら、いらっしゃいな――ヒーローさんたち」
音も立てずソーサーにカップを降ろす姿は、堂に入ったものである。
「弱点、教えてくーださーいなっ♪」
対し、クロトは柔和に声音弾ませ、真っ直ぐ尋ねる。
いやまさか本当に答えるわけは――マダムはゆっくり深々肯いてみせた。
「いいでしょう、ご覧なさい――!」
え、本気で。
「この耳飾りからやや下の、この辺りですわ」
ここですわ、と指まで差して教えてくれる。
それが馬鹿正直な情報なのか――はたまた、猟兵たちを惑わす虚言か。
「正義の味方たるもの、弱点を知らされたとして。果たして狙えるかしらね……!」
ホホホと高笑いを浮かべながら、彼女は立ち上がる。
眩しさに目が眩む――サングラス越しでも、眩しかった。
頭痛すら誘発されそうな相手が指さし視線を送れば(ちゃんと見えないのに)眩暈でくらくらする。コレが魅了の力なのだろうか。
それでも何とか耐えてクロトが地を蹴る。相手の腕の動き、放たれる矢の軌道――諸々を見極め、距離を詰めようと鋼糸を繰ったが。
「ひれ伏しなさい――」
居丈高に言い放つマダムは、ぴしゃりとそれを扇で払い落とした。すかさず重ねた黒きスローイングナイフは、キンと高い音を立てて弾かれ、地面に転がった。
なるほど、絶対防御。
冗談みたいな話であるが、その力は本物だ。
「大きな挙動の後なら、目視でも隙間を探れぬか……と思いましたが」
フフ、と妖しい微笑を向けられると、全く興味がないはずなのに心がざわめくのは何故だろう。
(「魅力、魅了かぁ……怖いですねぇ」)
困ったような笑みを浮かべ、うーんと唸るクロトを押しのけ、ジャスパーが前に出た。
「じゃ、一度交代な」
何をするんだろうと見守られながら、俯き加減にふらふらとマダムの前に立った彼は。
「色白のエレガント美女? 正直めっっっちゃタイプだ! それがどーーーした!! 魅力で屈服させてぇならするがいいぜバーカバーカ!」
顔を上げるなり、叫んだ。
えええ、と困惑するところだが、あらあらとマダム・シャーロットは受け止めた。
「良い心構えだこと」
気を良くしている。心なしか扇の往復が早くなっているのは、たぶんちょっと嬉しいやつだ。
「屈服して棒立ちになってる無防備なとこ狙って黄金のオーラとかで狙ってきやがるがいい!!」
食い気味に言い、両脚を突っ張り、両腕広げ。
さあ来いと身体でも示す。
「俺ドMなんでー!! 気持ちいいんでー!! ご褒美なんでー!!! ホラホラホラさっさとしやがれ遠慮はいらねェぞ!!」
普通のレディならちょっと引くところだが、此処はヴィランとして名を馳せたマダム・シャーロット、むしろ興が乗る。
「あら、わたくしは素直でないヒーローを力でねじ伏せ屈服させるのが好きなのだけれど――」
ヲホホ、とそれらしい高笑いを見せて、黄金のオーラを放つ。口では生意気なこといって、正直なコトを仰いなさいな、みたいな台詞と共に、強烈なビンタを食らわせてくる。
字面はシンプルだが、その拳もまた宝石の鎧で守られているわけで――あっという間に、お見せ出来ない状態だ。
何せジャスパーはピアスもつけていて、薄いところの肉は弾け――詳細は以下略。
あらゆる拷問を平然と眺められるクロトも、いちおう「うわぁ」と軽く引く程度には。ただ、マダムは気付かない。
どうしてそこまで夢中に、ジャスパーを痛めつけているのかと――。
その仕掛けに気付いたクロトが不意に駆ける。炎の魔力を全身に巡らせると、一心不乱にジャスパーへ向き合う彼女の背後へ、一気に詰めた。
「ところでその首飾り、ロココ調?」
クロトが身体を捩るようにして、勢いを加速させたナイフが、首飾りを捉える。
がつん、と鈍い音がした。
「な、なんですって!」
驚いたマダムは我に返ると、思い切り扇を薙いだ。身体能力がいくら向上していようと、余裕のあるクロトは悠々と見切り、間合いの外へと素早く逃れる。
「あなたたち本当にヒーローですの!?」
吼えるマダムの輝きが増す。
「こちとらワルでして? 正義とか、本っ当無いんで♪」
明るく笑うクロトはナイフをもつ手をひらひら振った。
言葉を失うマダム背後では、ジャスパーがにやりと笑って見せた。裂けた唇と血染めの貌は、壮絶である。
「……あ、ちなみにこれ全部戦術なんで。引っかかったやつの動き封じるっつー立派な技なんで」
趣味と実益を兼ね備えた立派な戦術です。
くらくらしながら、鼻を元に戻しつつ、血をぺっと吐き出した。
「あれ、弱点なんだっけ。ロココ調の右……? じゃなくて――まあいいや」
悪魔的な笑みを浮かべたジャスパーが、そのまま跳びかかる。
逆手に握った平凡なナイフが、禍々しく閃いて、彼女を襲う。さきほどクロトが刻んだ傷痕が何気なく目印だが、眩しくて目が働かない。
「滅茶苦茶好かったぜ……! まだまだ遊んでくれよ」
構う物かと無茶苦茶にナイフを振るえば、堪らずマダムは二人を遠ざけようと飛翔した。
その身体が、びんと留まる。先程の一刀と同時、首飾りに巻き付けた鋼糸を手繰りながら、クロトが目を細め――微笑んだ。
「それと……僕。好きなモノ程、壊したくなっちゃうんで」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
須野元・参三
借り物の力で無敵を誇るだと……?
ふざけるな!絶対の無敵とはそんなことで得るものではない!!
真なる絶対無敵な気品力を誇る私が、こんなことは下品だということ教えてやる!
私の気品力こそが無敵だということ教えてやる
『眩しき気品力(エレガンザ・アッバリャンテ)』で貴様の守り破らせてもらう
だが、無策な攻撃はしないぞ
要は弱点を狙えばいいならこれだ
飛翔能力で勢いよく接近と周囲への乱射などによる風圧で首飾りの裏の露出させる
その一瞬を『見切り』『第六感』『見切り』で狙わせてもらうぞ
小さな痣から少し右というところをな
絶対の無敵の力などは、私の気品力だと世に決まっている!!
パウル・ブラフマン
どもー!
エイリアンツアーズの
運転手兼営業兼たまに広報のパウルでっす♪
朗らかにGlanzで乗り付けご挨拶。
その間に他猟兵さんがピンチなら車体を盾にして【かばう】よ!
今日は噂の聖地に…ってやべー超ゴージャス☆
おねーさんが屈指の美貌を誇ると名高きMs.シャーロット!
お逢い出来て光栄ですっ!
10秒間の集中を妨げる【コミュ力】全開トークで接近。
紳士的に礼をしつつ
触手でむにっと首飾りを持ち上げ
鎧の隙間…首飾りの裏にある
小さな痣から少し右を狙ってUC発動!!
アッアッごめんなさい違うんです!胸おっきい…違うんです!!
ゆでだこ状態でも狙いは澄ませ
手錠に刻まれた文字は『avaritia』。
※絡み&アドリブ大歓迎!
●VS気品(提供:エイツア)
「どもー! エイリアンツアーズの運転手兼営業兼たまに広報のパウルでっす♪」
パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)が斜め上、何処かへ片手をあげて挨拶する。
今日も今日とて相棒Glanzに身を任せ、優雅なツーリング――ではなく、聖地のリポートにやってきた。
洞窟の影の中鮮やかに宇宙バイクで蒼き流線を描きながら、光の中に飛び込んだ。
「今日は噂の聖地に……ってやべー超ゴージャス☆ おねーさんが屈指の美貌を誇ると名高きMs.シャーロット! お逢い出来て光栄ですっ!」
「あら。ありがとう。けれど少し待っていてね――この子の相手をしているから」
滑り込んできた彼が見たのは、きりりとマダム・シャーロットと睨みあう須野元・参三(気品の聖者・f04540)だった。
「借り物の力で無敵を誇るだと……? ふざけるな! 絶対の無敵とはそんなことで得るものではない!!」
目が眩む輝きを前に、全く退かず、彼女はきらきらと輝く前髪をさっと払うと、マダムに強く宣言する。
「真なる絶対無敵な気品力を誇る私が、こんなことは下品だということ教えてやる!」
ばっと手を振り下ろす様は絵になるが、何故だろう、周囲に漂う残念そうな気配は……。
参三は己が気品を輝きに変えて纏うと、軽やかに地を蹴った。
「ハハハ!これが絶対の気品力だ!さぁ、抗って見せろ!」
おおーっと、パウルがぐっと身を乗り出す。
輝きを纏った彼女は凄まじい加速でマダムの横を擦り抜けた。爆発的な加速はインラインスケートも相まって、叩きつける風圧は身じろぎを許さぬ――。
ただ、マダムは悠然としている。さっき普通にピンチに陥ったのに、喉元すぎれば何とやら(苦戦したのは自分の所為だが、彼女はそれを棚に上げる性格である)――次なる挑戦者へ、しれっと優雅に振る舞う面の皮の厚さ――もとい、器の大きさ。
気品力なる参三独自の、さりとて絶対的な基準をもって、彼女は飛翔した。マシンピストルを乱射しながらハハハと笑う様に気品があるのかどうかは兎も角、速さは本物。
ドドドドド、と洞窟を揺らすような爆音にも、マダム(の鎧)は揺るがない。
「そんな闇雲な攻撃は通らなくってよ」
ホホホ、と笑うマダム。
「わかっているとも! そこだ!!」
首飾りが風圧で浮かぶように狙いを定めて滑空する。気品を靡かせ、彼女は全力で突撃するが――。
「フフ、残念ね」
手にした矢が迎撃してくる。ああ――加速した参三は急には止まれない。
そこへ、白銀の車体が割り込んで、マダムが放った一矢を受け止める。パウルが巧みなハンドル捌きで、双方の間でターンを決めると、矢を弾いて参三を庇う。
彼女は再び宙に逃れるが、マダム・シャーロットは再び微笑んだ。
「今の流れるような一撃! 痺れました!!」
此処でパウルは友好的な姿勢を崩さず、営業トークを続ける。
なんか、さも、感動してつい思わず飛び出してきたかのように。
「貴方、なんだか新聞記者のようですわね」
戦いの腰を折られても、彼女は気にせずゆっくりと扇をあおいで、涼やかに彼を見た。
へへへ、と頬を掻き、パウルは輝くマダムに素直に照れる。
「敵なのにフレンドリー――こ、これが伝説のヴィランのカリスマオーラ……! 是非、握手をお願いしまっす!」
よろしくってよ――眩しくて全く見えないが、元々パウルは(性格上)彼女を正視するのが難しいので、あんまり関係ない。
Glanzを降り、握手の名目でするりと手の届く範囲に近づいた彼は、紳士的な礼を彼女に向け――。
にゅるり、タコ触手が伸びた。
触手はあまりにも自然にシャーロットの首飾りを持ち上げた。
「アッアッごめんなさい違うんです! 胸おっきい……違うんです!!」
ゆでだこ状態というに相応しい真っ赤に染まった貌であたふた手を伸ばし――首輪から伸びた鎖が、マダムにぶつかると、双方の間で爆ぜた。
「――!!!」
彼女は小さく悲鳴をあげる。
鎧の弱点を至近距離から再び攻撃され、衝撃のあまりに咄嗟と彼を突き放そうとした。
だが、その身体は浮上することも叶わず、パウルから一定以上離れられぬ。
「へっへ、捕まえたぜ」
その白く豊かな胸元に刻まれたのは、『avaritia』――なお、それを確認したパウルのゆでだこ状態は継続中で、視線はあらぬ処に向いている。
「さあ! おねーさん!! 華麗にキメちゃって☆」
ハハハ――高らかな笑いがパウルの後ろから響く。
きらきらと光を振りまきながら、参三が銃を正面に構えて勝利を確信した笑みを湛えている。
「絶対の無敵の力などは、私の気品力だと世に決まっている!!」
そして洞窟に、ドドドド、容赦の無い銃撃音が轟き、女の悲鳴が混ざったのだった――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エルザ・ヴェンジェンス
あまりに美しい鎧。貴方様のように強大な敵の相手など…私には
弱点を知ることもできないまま私は敗北するのでございましょう
…と少しばかり持ち上げさせていただきます
えぇ、既に弱点も分かっている気がいたしますが、そこはそこ
煽てて落とすのが流儀でございましょう
では、弱点を狙いましょう
正義に生きる方もおりましょう
ですが、不肖メイドエルザ、手を悪に染めることなど恐れは致しません
えぇ、要は台所の汚れのようなものでございましょう
必要であれば手を汚します
では、速度を上げて参りましょう
芝居に時間もかけましたし
相手の手枷はサイキックで対応を
弱点を拳で穿ち攻撃を
私の速度、如何でございますか?
メイドの仕事ご堪能くださいませ
●メイドのお仕事
紆余曲折を経て――マダム・シャーロットが周囲を見渡すと、自慢のテーブルセット(盗品)は横倒しに、絨毯は紅茶で染まり、散々な状態であった。
「!?」
彼女は不意に息を呑む。
それを楚々と片付ける――メイドがいた。
貴方は一体……、思わず問い掛けたマダムに答え、青髪のメイドは顔を上げた。
エルザ・ヴェンジェンス(ライカンスロープ・f17139)のオッドアイがひとたびマダムを眩しそうに見上げ――自信を失ったかのようにしおしおと貌を伏せた。
「あまりに美しい鎧。貴方様のように強大な敵の相手など……弱点を知ることもできないまま私は敗北するのでございましょう」
こんな弱々しい娘が何故こんなところに、と思わないでもないが、褒められるとちょっぴり増長してしまうのは、ヴィランの嗜みというものである。
あれさっきも同じ事があったような、なんて振り返るのはヴィランらしからぬことなのである。
(「えぇ、既に弱点も分かっている気がいたしますが、そこはそこ」)
まさかこのメイドが悪魔的な悪辣さを(当然の如く)持ち合わせているなど、(当然ながら)考えてはいけないのである。
「あらあら――ええ、教えてあげてもよくってよ。わたくしの弱点は……――」
「では、弱点を狙いましょう」
くるっと振り返り、しゅたっと構える。その俊敏さたるや、裡に迷いが全く無いことを示す。
「おまえも……!」
流石にマダムもお約束の繰り返しに、ちょっと嫌な気配がしたのだろう。
どこから取り出したのか、拘束用のロープを放つ。
エルザは素早い跳躍で躱すと、踵を合わせたぴりっとした姿勢で彼女を向き合う。
「正義に生きる方もおりましょう……ですが、不肖メイドエルザ、手を悪に染めることなど恐れは致しません」
にっこりと。
花も恥じらうような美少女の笑みを向けて、エルザはさらりと告げる。
「えぇ、要は台所の汚れのようなものでございましょう。必要であれば手を汚します」
「喩えが害悪ではなくて!?」
苦情をスルーしながらパチンと指をひと鳴らし、
「では、速度を上げて参りましょう――芝居に時間もかけましたし」
微笑はそのままに、エルザは弾丸のように爆ぜた。
裾の長いクラシカルなメイド服を纏いながら、目では追いきれぬ速度で迫ってくる――鎧の力を信じるマダムは、タイミングを合わせて枷を放つ。
「メイドはメイドらしく、隅っこで縮こまっていなさいな!」
片腕が、捕らわれた。サイキックエナジーで進路を曲げようとしたが、マダム・シャーロットの輝きに目が眩んでしまった。
何事も彼女に引き寄せられるかのように、巧くいくのも、鎧が由来する自信からだろう。
ホホ、と笑いを滲ませた彼女に、エルザは小首を傾げて見せた。
「時に奥様。肩は凝っておられませんか?」
拳をぐっと握って、増幅器で力を増幅させる。
僅かに膝曲げ、溜めた力を解き放ち、縄を引き、辿るように跳ね上がった。
「ああ、電撃のサービスは今日はございません。その代わり、拘束の乱打を披露いたします」
一気に距離が縮まる。宝石に輝きに瞳を細め、エルザは首飾りの右略を狙って、拳を放つ。
渾身の右ストレートから、畳み掛ける左フック。更に、踏み込んだ右を起点とした超高速の乱撃を、凝りを解すというよりは骨を砕く勢いで撃ち込んだ。
「私の速度、如何でございますか? メイドの仕事ご堪能くださいませ」
速度のままに再び距離をとり――スカートを摘んで、メイドは押し売りサービスの続行を告げたのだった。
成功
🔵🔵🔴
アルバ・アルフライラ
く…っ、私ともあろうものが気圧されているだと…?
私の魅力がオブリビオンに負けるなぞ…
何たる、何たる無様…!
と云うか本当に眩しいな!?
玉体を持つ私が到底辿り着けぬ頂に彼奴は居るというのか…?
…私の負けだ
宝石でも何でも持っていくが良い…!
自暴自棄に彼奴の好みそうな豪奢な首飾りを投げつける
気に入り、身に付けたならば僥倖
――ふふん、解説しよう
その首飾りには細工を施しておいたのだ!
予め魔力を籠めた宝石――【妖精の戯れ】で
首に在る弱点を狙ってくれる!
拘束具に反応出来るよう距離を取り
動きを見切り、宝石の爆発でそれ等を逸らす
拘束されようと腕一本使えたならば魔術を扱うのは容易
ふふん、無様に倒れるのは貴様の方だ!
●EX装備:首飾り
体中をイイ感じにマッサージしてもらったマダム・シャーロットは、些か草臥れた様子で、悔しいことに再び美しく整ったテーブルセットに舌打ちした。
だが素晴らしきは聖地のと鎧の力――未だその護りは健在で、美しさも健在だ。
宝石を並べた輝きは、何度眺めてもうっとりとする。そしてそれが自分の美貌を引き立ててくれているだろうということに、笑みがこぼれる。
がたり、と。
入口で音がした。
「く……っ、私ともあろうものが気圧されているだと……?」
眩さに目許を手で隠しつつ、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は歯噛みする。耀く光は、宝石の双眸にも強く差し込む。
「私の魅力がオブリビオンに負けるなぞ……何たる、何たる無様……!」
仕込み杖を握りしめ、ぐぬぬという。
スターサファイアの澄んだ美しい青が、負けじと彼女を睨めつけようとして、
「と云うか本当に眩しいな!?」
思わず目を逸らしたのは、演技でもなんでもない行動のような気がする。
実はさっきメイドがさり気なくお手入れしていったから、かなりピカピカだった。
「フフフ、そう、いるところにはいると聴いていたけど、宝石の種族――美しいですわね、生意気な口をきかなければ、コレクションしたいくらい」
扇で口元を隠し、フフフと笑う。
これはまた慢心している。間違いない。
悔しそうに眉を顰め、アルバはマダムを横目で見やる。
「玉体を持つ私が到底辿り着けぬ頂に彼奴は居るというのか……? ……私の負けだ。宝石でも何でも持っていくが良い……!」
自暴自棄に言い放つと、彼は豪奢な首飾りを投げつけた。
「あら――」
足元に落ちた美しい首飾り。大振りな宝石が色鮮やかに艶を競い合うようだ。それでいて、不思議な調和性があり――思わず手に取りたくなる魅力を放っている。
マダムが息を呑み、仮面でわからないが目の色を変えるのが解った。
「いいのかしら? まあ、わたくし程この首飾りが似合うものもないでしょうけれど……」
何の疑いも無く絨毯の上に投げ出された首飾りをマダムは拾い、首元に当ててみせる。
そうすると身につけてみたくなるのがサガ。
実際、彼女の白い肌には良く馴染む素晴らしい意匠だった。
――眩しくて見えないけど。
「そうか、そうか。気に入ったか」
ご機嫌で首に回す姿を確認すると、くく、とアルバが肩を揺らす。
すると突如、首飾りが爆発した!
「な、なんですって!」
もうもうと煙がたつ向こうでマダムが狼狽える。
「――ふふん、解説しよう。その首飾りには細工を施しておいたのだ!」
蒼く輝く髪を払い、靡かせ――びしりと仕込み杖で指さし誇る。
予め魔力を籠めた宝石――【妖精の戯れ】で首の弱点をダイレクトに狙うという知能犯。
これなら相手が眩しかろうが、魅力に屈しようが、まーったく関係ない。
ついでに魔力でロックをかけてしまえば、呪いの装備よろしく外せないのだ。
この、と怒り任せに枷を放ってくるのを悠々と躱し、魔力を再充填すれば首輪が爆ぜる。それが鎧の宝石を揺さぶり輝き、憎らしいほどに眩しいが、アルバは勝ち誇った笑みを湛えてマダムに冷ややかな視線を送る。
「ふふん、無様に倒れるのは貴様の方だ!」
首元を幾度となく爆破されながら、枷を持って追い回してくるマダム・シャーロットに、しかし、この女、つくづく頑丈だな――、と惘れながら。
大成功
🔵🔵🔵
神埜・常盤
あァ、とても眩しいなァ……
僕はこういう光が苦手なんだ
だが彼女は魅力的に見える
一芝居打つ価値はありそうだ
ダンピールの容貌を活かして誘惑を試みよう
あァ、なんという美しさ
その鎧だけじゃない、その白肌の美しさ
あなたこそ僕の理想だ
此処で散る僕の願いを聞いてほしい
マダム、あなたの輝くその肌を
――どうか、もっと近くで
心奪われた演技とともに、零す賛辞の言葉に催眠術を潜ませて
彼女を地上に引き戻そう
近づいてきてくれたら、ダメ押し不意打ちの紅月遊戯を
――さァ、その首筋を見せておくれ
吸血鬼の成り損ないは酷く喉が渇くのさ
……なァんてね
牙を覗かせ吸血すると見せかけて
影縫で弱点を串刺しにして騙し討ち
あァ、目がチカチカする
●エスコート
さて――マダム・シャーロットが疲労の吐息を零す。
猟兵達を凌いで凌いで、随分と疲れてしまった。聖域は鎧の力を高めてくれるが、傷を癒やしてくれるわけではない。
追い込まれても鏡を覗き、髪を整え、紅を引き直す。
さすれば、傷が確認出来ぬ宝石煌めく鎧を眺めて、悦に浸れる。そんな彼女を密かに観察するひとりの影がある。
「あァ、とても眩しいなァ……僕はこういう光が苦手なんだ」
掌で視線を半ば隠しながら、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)が嘆息する。
陰を愛し影に潜む性質の彼は、どうにもギンギラと輝くそれを趣味が好いとは認められないが――。
(「だが彼女は魅力的に見える。一芝居打つ価値はありそうだ」)
琥珀色の髪をさっと整えると、気付かれぬような咳払いをひとつ。
マダム、と甘い声で呼び掛ける。
「あァ、なんという美しさ――その鎧だけじゃない、その白肌の美しさ……あなたこそ僕の理想だ」
「……まあ」
振り返ったマダムは妖美に笑んだ。
やはり幾度となく猟兵達の甘言に痛い目を見ても、褒め言葉は蜜の味。
或いは結局、猟兵達を下に見ているのかもしれない。
「此処で散る僕の願いを聞いてほしい……マダム、あなたの輝くその肌を――どうか、もっと近くで」
美貌の青年が情熱的な視線を向けて、己に慈悲を請うてくる。
マダム・シャーロットは純粋にそのシチュエーションに喜んだ。黄金のオーラが溢れ、その輝きがますます強くなる。
一歩踏みしめる足取りも優雅な淑女のものであるが、容赦なく放たれる圧へ常磐は目を細めた。
(「あァ、目論みが暴露たら、捻り殺されそうじゃないか」)
「坊や、わたくしに跪くならば、そのお願い聴いてあげてもよくてよ?」
――催眠術やら都合の良い甘言やらは、鎧が防ぐ。
ならば魅了されているのは常磐の方で、状況はマダム優位で運んでいるのだと――確信させた方が良い。
「そんなことで宜しいのなら」
絨毯の上、あっさりと片膝をついて、彼は招くように手を伸ばす。
すると満足そうに頷きを返したマダムは、彼へと近づいてきた――彼女は甘い囁きを疑わぬ。今までに幾度となく様々な男から囁かれてきたのだ。
だが――もしもマダム、そして常磐にも予期せぬことがあるとするならば。此処まで猟兵たちの総攻撃をうけた鎧は、マダムも知らぬ綻びを生じていたということだ。
――明らかに、弱点を重点的に狙った首飾り爆破がトドメを刺している。
常磐は紅に輝く双つの眸で彼女を見つめ、ゆっくりと囁く。
彼はゆっくりと後ろに後退りながら、マダムが距離を詰めるのを待った。
過信はせず、その腕の裡に収めるのは、息の根を止めてから、等と言われる事も頭の片隅に置き――最期の領域を、彼は踏み越える。
「――さァ、その首筋を見せておくれ。吸血鬼の成り損ないは酷く喉が渇くのさ……なァんてね」
「フフ、都合の良いこと――」
態と牙を覗かせ、首元へ唇を寄せながら――指先で閃いたのは、黒き鉄のクロックハンド――艶麗たる曲線を描く針が、マダムの矢よりも早く、彼女の胸元を貫いた。
女の吐血が、彼の胸を染める。
「な……何故……」
常磐の首筋に寄せられた矢がからりと落ちる。騙し合いはどちらも同じ、ならば、その疑問の答えはシンプルだ。
「僕はあなたより悪党で――ここはもう聖域ではない、ということさ」
招かれて踏み越えた聖域の外。弱点を真っ直ぐに貫かれ、鎧は機能せず、蓄積したダメージもそのままに、彼女は敗北した――。
力なく崩れ落ちるマダム・シャーロットを冷たく突き放し、常磐は目頭を押さえた。
――当然乍ら、それは哀しみゆえでは無い。
「あァ、目がチカチカする」
そう言い残すと、インバネスの裾を翻し彼は去る。
そして、マダムの亡骸は、きらきらと淡い光を帯びた砂となり、消えていったのだった――。
成功
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