アースクライシス2019③〜キャッチ・アンド・キャッチ
●ジェスター・イン・ニューヨーク
子供を攫え。
だがなあジェスター、ただ攫うだけじゃ意味がない。
友人知人、親――知り合いの目の前で攫うんだ。
愛。
夢。
日常。
希望。
未来。
魂。
そういうもんが奪われる瞬間を、DNAにぶち込んでやるのさ。
かつてダストブロンクスを恐怖で支配した『肥溜めの王』スカムキングの指令を、殺戮道化師・ジェスターは快く引き受けた。
「さてさて、ドコがいいでショウねぇ……やはりヒトの多いところがベストでしょうか」
実行するにあたり、最適であろう場所を見つけなくては。
高い高いビルのてっぺんに座り、刺さりそうなほどに鋭い人差し指と親指の先をちょんっ、と付けてマル形に。望遠鏡モドキを覗き、オロロと零しながら北に西、東に南と、風見鶏も顔負けの機敏さでニューヨークの街並みを眺め続ける事、暫し。
「ンン? これはこれは」
ぐいーっと前のめりになって――おっとっと。
落ちそうになる芝居を鳩が見つめる中、隣に置いていた得物を掴んで立ち上がった。
「子供を攫うだけならマァ造作もありませんケド、チョット物足りナイ気もしますねぇ。ですがソレがアナタの指令とあらば、やってさしあげマスヨ。スカムキング」
イッツ・ショウタァーイム!
道化師は愉しげな声を響かせ、地上へと落ちていく。
そして道化師の襲来を受けた小学校は、大勢の悲鳴渦巻く地獄と化した。
●アースクライシス2019
「学校が終わった時間らしくてな」
校舎の外へと溢れていく子供たち。気をつけて帰りなさいと見送る校長。学校正面に停車するスクールバスに、それとは別で迎えに来た保護者の車やバイクが数台。
そこに、ジェスター“たち”が現れた。
イベントか、フラッシュモブかと人々がざわついていられたのは、ジェスターたちが子供を攫うと宣言するまでの僅かな間。
目の前にいた子供がワケの分からないピエロの集団に攫われ始めたら、“あのピエロは自分たちの日常を侵す悪しきモノだ”と、嫌でも思い知らされる。
そして小学校の中も外も、手の付けられないパニック状態に陥るのだ。
友だち。兄弟姉妹。我が子。生徒。
当たり前のようにいた存在が目の前から奪われる――日常の中にあったピースが一つ欠ければ、それは毎日の中で喪失という現実を突きつけてくる。その痛みは想像を絶するものだ。
そうなればアメリカ大陸全域の人々の正義を信じる心は弱まり、いずれは悪に平伏すようになってしまうだろう。
「このままだとスカムキングの狙い通りになる。その前に奴らの計画をぶっ壊してくれ」
敢えて人前で子供を奪う――攫うというスカムキングの考えに、ネライダ・サマーズ(アイギス・f17011)は不快感を露わにしながら続けた。
転移後――現場到着時は、ジェスターが子供攫いを宣言した数秒後。
小学校正面には、子供を二~三名抱えたジェスターが数体と、スクールバスの車内や迎えの車内にいる子供を狙うジェスターが数体。後者は車内への侵入や破壊をした後に子供を攫おうとするだろう。
他の子供たちは校長や警備員の手引きでまずは校舎内へと逃げ込み、教室やロッカー、テーブルの陰など、様々な場所に身を潜めるらしい。そちらにもジェスターたちは向かい、子供だけを攫おうとする。
小学校の外と中。
どちらも戦場となるだろう。
それは日常の中ではそうそう起きない事だ。
「……目の前で戦いが始まれば、戦士じゃない一般人にはどうしたって恐怖が刻まれるかもな。だが、守ってくれる存在が目の前に現れれば少しはマシになる筈だし、立ち上がる力にもなる」
俺はそうだった。
だからみんなも、誰かの力になる筈だ。
そう言ってネライダはグリモアを輝かせ、向かうべき戦場への扉を開いた。
東間
アースクライシス2019のお届けに来ました、東間(あずま)です。
小学校の敷地内を舞台に、子供たちを攫おうとするジェスター“たち”とのバトルです。
タイトルは鬼ごっこ英語版。
●プレイング受付期間など
導入場面公開はありません。
受付期間は、個人ページトップ及びツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)でお知らせしております。プレイング送信前に一度ご確認くださいませ。
受付前に届いたプレイングは公平さを保つ為に流しますが、お気持ちに変わりなければ、再度送っていただけますと幸いに思います。
●このシナリオについて
特別なプレイングボーナスが存在します。
「命令の実行を妨害する」に基づく行動を取れば有利になるでしょう。
「命令の実行を妨害する」だけ書いたり技能を並べるよりも、「どういった行動を取って命令の実行を妨害する」か書くのがオススメです。
●現場について
校舎の外(小学校正面)と校舎内、どちらで行動するかお選びください。
状況についてはオープニングにある通りです。
小学校は一般的なもので、特別な造りや仕掛けはありません。普通の小学校です。
●お願い
複数人参加はキャパシティの関係で三人まで。
同行者がいる方、三人以上での参加の場合は【共通のグループ名もしくは旅団名】の明記をお願い致します。
プレイング送信日=失効日がバラバラだと、納品に間に合わず一度流さざるをえない可能性がある為、送信日の統一をお願い致します。
日付を跨ぎそうな場合は、翌8:31以降の送信だと〆切が少し延びてお得。
以上です。
皆様のご参加、お待ちしております。
第1章 集団戦
『量産型ジェスター』
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POW : 道化の呪い
見えない【呪詛】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : バトルジェスターズ
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【小型ジェスター型使い魔】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : グラビティハンマー
【手にしたハンマー】から【衝撃波】を放ち、【命中した対象を超重力に捕らえること】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
コトノネ・コルニクス
室内では小回りがきかんでなぁ、我は正面に向かうとしよう
UCを使い眷属達を召喚
ほれ、子供を抱えとる不届きな輩がおるじゃろ
あれをな、突き回して気を引いておくれ
間違っても子供らは突くでないぞ?
彼奴がぬしらに気を向けたら、我が頭っから叩き割ってやるでな
【空中戦】は得意じゃ、寸分違わず急降下で飛び掛かるくらい造作もないぞ
近くの車やバスに集る輩を払って解放した子供らを避難させ、あとは防衛じゃ
数が多い使い魔は厄介じゃが、動きが鈍れば切り易かろ
目を狙ってやれ眷属達
戦えぬ子供らを狙うなど、戦士の風上にもおけんなぁ
…いや、道化じゃったな
ほれ、愉快に踊ってみせるが良いぞ
上手に出来たら、優しく眠らせてやるでな。
陽向・理玖
連れてかせやしねぇ
俺みたいなのは…これ以上出させねぇ
小学校正面ざっと眺め
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
UC起動
既に子供抱えてる奴に一気に接敵グラップル
素早く足払い
体勢崩させ子供奪取
大丈夫か?
早く逃げろ!
鼓舞し教師や保護者の方示唆
あんた一人に構ってる暇はねぇんだよッ!
フェイントに残像纏い拳の乱れ撃ち
暗殺で急所も狙い一気に倒す
使い魔は合体される前に衝撃波で吹き飛ばし互いにダメージ与え数を減らす
合体させるか!
優先順位は
既に子供抱えてる奴>子供に手が届きそうな奴>子供に向かう奴
師匠がここにいたら見過ごすはずない
だから代わりに俺がやる
まとめて片付けてやるッ!
ジャンプキックで飛び込み決める
フェルト・ユメノアール
みんなに夢と笑顔を与えるはずの道化師がそれを奪うなんて…
他の誰が許してもボクが絶対に許さない!
『校舎の外』で行動
まずは捕まってる子を取り返さなきゃ!
ハートロッドを鳩の姿に戻し、動物使いで操りジェスターの元へ放つ
そして、ジェスターがそちらに気を取られた隙に一気に接近
攻撃を加えて子供たちを奪還、背後に庇って戦闘開始だ!
ショウマストゴーオン!
変幻自在の魔術師よ!その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!
カモン!【SPクラウンジェスター】!
クラウンには後方で子供の護衛やトリックスター投擲で使い魔を倒したり援護を担当
ボクはジェスターを倒す!
一気に接近し、ワンダースモークで視界を塞いでカウンターの一撃を加えるよ
誕生日パーティ。イベント。サーカス劇場。遊園地。
様々な場所で多くの人に夢と笑顔を与える存在。
それが道化師! ――なのに。
火がついたように泣き叫ぶ子供たちを抱えた道化師が、ラララと歌いながら右へ左へと大きなジャンプを繰り返し、その度に子供たちの小さな体は激しく揺さぶられている。
保護者だろうか。それとも教師だろうか。
顔を真っ青にした女が「お願いその子たちを放して」と懇願し、別の男も「やめてくれ、やめてくれ頼む」と涙を流し叫んでいた。
その願いをあの道化師は――ジェスターは、即興の歌にして、踊っている。
「ピエロと一緒に手を振ろう、パパママみんな、サヨウナラ! 今日でずっと、未来永劫お別れです! アッハッハ! 愉しい愉しい!」
「ひどい……他の誰が許してもボクが絶対に許さない!」
フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)の想いと共にハートロッドが鳩へ戻り、翼の音が強く響く中、小学校の正面に広がる光景に陽向・理玖(夏疾風・f22773)が龍珠を弾く。
「連れてかせやしねぇ。俺みたいなのは……これ以上出させねぇ」
攫われた子供が奪われるもの――失うものが何か、自分は知っている。
握り締めた龍珠をドライバーにセットし、ただ一言。
「変身ッ!」
指を鳴らした瞬間理玖のスピードが世界を超え――空翔る鳥の音と圧が増した。
悲鳴上げた子供たちをしっかり避け、ジェスターの頭や足、背中を突き回す鳥の群れ。一羽はフェルトの鳩、それ以外はどこからともなく現れた頭巾烏たち。彼らへとジェスターの意識が向いた瞬間、理玖とフェルトはジェスターを間合いに捉えていた。
「アナタ方は――!」
夢も笑顔も知る道化師――フェルトは手に飛び込んだ鳩、ハートロッドでジェスターの後頭部を思いきり殴り、理玖は返事代わりに足を素早く払う。
ジェスターがぐるんと引っ繰り返って子供たちと大人の悲鳴が重なるが、鳥の群れがざあっと晴れた時、思いきり頭や背中を打っていたのはジェスターだけだった。
「ごめんな、大丈夫か? 早く逃げろ!」
子供たちを守るように抱えた理玖が保護者であろう男女の方を指せば、自由になった子供たちは大きな声で泣きしながら走り出す。ママ! おとうさん! 叫ぶ小さな体を大人たちがしっかりと受け止めて――。
「困りマスねぇ」
被害者一号サン二号サンの予定だったんデスヨ。
立ち上がったジェスターの眼窩から溢れる赤い光が、蝋燭の火のようにぼぼっ、と揺れて。ゆらり、ゆらゆら。不気味に踊るそれをフェルトはしっかり見つめながら、子供たちが走っていった方を背に庇う。
「……マァいいでしょう。ソレでは、お邪魔ナ鳥はぜーーんぶ羽を毟って、美味しい美味しいフライドチキンにシマショウ!」
『オロロロ~~!!』
ぽん、ぽんっ! ぽぽぽんっ!!
手品のように現れた大量の小型ジェスターたちが歓声を上げる。砂糖で固めたようなハンマーを振りかざす邪悪な群れに、標的となった頭巾烏たちが一斉に空へと羽ばたいて。
「未来ある子供を攫おうとは、まこと、不届きな輩じゃな」
その向こう、真っ直ぐ貫くように降下したのは黒き翼持つ白き神。コトノネ・コルニクス(冠鴉のバズヴ・f22112)の一撃がジェスターの脳天を打ち、意識に火花を散らしていく。
ざああと己を包むように舞う眷属たちにようやったとコトノネは微笑んで、何じゃ、とジェスターを見て笑った。
「思ったほど割れておらぬな」
「ン~、残念デシタねえ。生憎と私“タチ”はソコまで柔ではないモノデ」
「そうみたいだな……だから余計、あんた一人に構ってる暇はねぇんだよッ!」
一発、二発。もっと、もっと。
理玖の拳がジェスター本体を激しく撃ち、群がってきた使い魔を数体、衝撃波で吹き飛ばす。コトノネの命令に応えた頭巾烏たちもジェスターたちの目を執拗に狙い、飛び交う色彩は嵐の如く。
「お前のように戦えぬ子供らを狙うなど、戦士の風上にもおけんなぁ。……いや、道化じゃったな」
ほれ、愉快に踊ってみせるが良いぞ。上手に出来たら、優しく眠らせてやるでな。
戦場巡る古き神の微笑みに、頭巾烏とやり合うジェスターは、片手でハンマーを揮いながら小首を傾げる。
「ウーン、悩ましい。愉しいダンス、実ニ魅力的です……が!」
ふいにそこから飛び出した白と赤、本体よりもずっと小さな道化師たちがケタケタ嗤って肩を組み――。
『やっぱり仲良く殺し合いマショウ! アーハハハ!』
一つになってフェルトに掴みかかろうとするが、道化師少女はきらりと笑顔を浮かべそれを躱す。オロロッ、と驚く声にあっかんべーと舌を出し、高らかに響かせた台詞は『ショウマストゴーオン』。
「変幻自在の魔術師よ! その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!」
戦場というステージに招待されたクラウンは、着地するやいなや、目にも鮮やかなダガー捌きを繰り広げた。溢れるほどの小型ジェスターの額に次々とトリックスターを見舞い、コトノネと共に敵の目を惹き付けていく。
そこをフェルトのワンダースモークが華やかに彩った。視界をより深く塞がれた道化師の真っ赤な目が桃色の髪を見失う。それが僅か数秒。しかし、それで十分。振り抜かれたハンマーを踊るように躱し、手にした得物を閃かす。
「さあ、ステージから降りる時間だよ!」
「そこな使い魔も降りるが良い。それとも、お前も我に愉快な踊りを見せてくれるか?」
道化師少女と黒翼の神が舞う度、しゃがれた悲鳴がぼとぼと落ち――それをぴたりと捉え、怒りに燃える双眸ひとつ。
師匠がここにいたらあの道化師を見過ごす筈がない。
いないあの人の代わりに俺がと理玖は心を燃やし、力強く跳ぶ。
「まとめて片付けてやるッ!」
「――!」
飛び込むように繰り出したジャンプキックはジャスターの胴を貫いて。
轟音と共に、大小の道化師がばらばらと散った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
誰ひとり、あなた方の好きにはさせません、人攫い――
※校舎外
主にスクールバスを守る心算ですが
人手が充分ならば個人の迎えの車を
先ずは守護の得意な仲間を増やしましょう
水晶――破魔の石を取り出し
此れを触媒にUCで水晶の騎士を創り出します
バス(又は車)の側で護って下さい
敵は複数です、割り込まれる隙を作らぬよう自分から仕掛けに行かず
向かってきたジェスターに攻撃するように指示
私自身は状況を見ながら
騎士に遠隔攻撃する個体に仕込み刃で斬りかかる、
騎士の手が回らぬ数相手が来れば迎撃する等、妨害に徹する
乗り物にも子供にも指一本触れさせぬよう
…私の故郷は秘術を狙う人攫いによって滅ぼされた
今度は
護り抜きたいと思うのです
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 侵略繁茂する葛蔓】
校舎外の、特に車内にいる子供の保護に回ります。
『侵略繁茂する葛蔓』で車両のドアや窓を植物の蔓で封鎖―――半径40メートル、目視範囲で敵が侵入できそうな箇所を『オーラ防御、呪詛耐性、拠点防御、時間稼ぎ』の葛蔓で塞ぎます…少し、怖がらせてしまうかもしれないけれど…安全になるまで、我慢していて頂戴ね?
私の担当はディフェンス。そしてアフターケアなのよ。『救助活動、奉仕、医術、鼓舞』で、助け出された子たちの怪我の有無確認―――もう大丈夫。他の強いお兄さんとかお姉さんが、みんなを守ってくれるから、だから安心なのよ。ゆっくりでいいから、立ち上がれるかしら? できるだけ優しく話すわ
「オヤオヤァ、どうしました? エンジントラブルですカ?」
来る。道化師がこっちに来る。
わざと体を左右に揺らして、両手はぶらぶら。
引きずられているハンマーがアスファルトをゴリゴリと削っている。
「……、……」
逃げなきゃ。アクセルを踏まなきゃ。
そう思うのに歯がガチガチ鳴るばかり。
ああ、後ろにはあの子がいるのに――!
赤の軽乗用車の運転席に座っていた女の意識は、今にも切れそうな、か細い糸に似ていた。
ほんの少しでも恐怖が溢れたら、途端にぶつんと切れて暗闇に落ちていきそうな心。それを繋ぎ止めたのは、煌めく騎士の姿とドアや窓を覆い始めた緑のカーテンだった。
――少し、怖がらせてしまうかもしれないけれど。
葛の蔦が車内からの視界を完全に閉ざす直前。呆けた表情でこちらを見る二人を、アリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)は眠たげな目で、じ、と見つめて。こくん。小さく頷いた拍子に、胡桃色の三つ編みが揺れる。
「……安全になるまで、我慢していて頂戴ね?」
そっと告げたお願いは、運転席の女と後部座席で青ざめていた子と共に緑の壁の内。
ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)が破魔秘めた水晶を触媒に創り出した騎士は、緑に守られた車の側に主と共に立つ。
猟兵二人と騎士。
対するは道化師。
互いに無言だったのは、ジェスターが鋭い指先でカリカリと白骨の頬を掻くまでの間。
「ソコ、空けてもらえマス?」
「……いや」
「人攫いの道化に、何を譲れと?」
「アー……では仕方がありマセンね、ハイ!」
――ぶん。
ファルシェは振り上げられるハンマーを静かに見つめ――その視界に入る、他の姿へ僅かに意識を向ける。
倒すべき敵は複数。守るべきものもまた、複数。しかし車両のドアや窓はアリソンのユーベルコードによって守られつつあり、他の道化師に自分たち以外の猟兵が向かっている。
――ならば今は、すぐそこで震える命の為に。
「向かってきた者だけ攻撃するよう」
その指示へ了解と示すように騎士が構えた瞬間、ジェスターの笑い声が響いた。
「ナイト様の強度は如何ほどか! さぁさ、テストプレイと行きマショウ!」
ドォン!
ハンマーから迸った衝撃波はアスファルトを薄氷のように割り、車を守護する水晶騎士を呑み込んだ。超重力という目に見えないものが騎士の足をその場に縫い止め、ぐぐ、とアスファルトに数センチ沈めていく。
「さぁさぁ、ドンドンやりマショウ! 次がつかえてマスからネ!」
次?
「そんなものが存在すると、そう思っておいでで?」
「オぉットォ!」
仕込み杖をひと振り、ふた振り。露わになった怜悧な両刃はジェスターの首を狙い、ギロチンはごめんですと嗤った道化が、ハンマーのボーダー部分で刃を受け止める。
目の前で弾けた火花が白骨の顔面を滑るように跳んだ。そこに映るイミテーション・ジュエルと造花――帽子彩る二つの彩の主、ファルシェの妨害の手は絶えず紡がれている。
何度も響く刃とハンマーのぶつかる音は、車内にも届いているだろうか。
アリソンはそっと車へ駆け寄り、蔓で覆われたそこに触れる。
頑張って。きっともうすぐよ。だって水晶の騎士は不思議なくらい無傷なのよ。だから、騎士を創ったあの人も――。
秘密の会話に車内からコツン、と音がして。それを耳障りな金属音が覆い尽くした。振り返ったアリソンが見たのは、宙に浮いていた小学校の看板がコントロールを失い、アスファルトに落ちる様。
それと、ハンマーを構えたジェスターの懐――ファルシェが手にした仕込み杖の刃が、心臓部分に深く沈んでいく光景だった。
「……ビックリするくらいしつこいですねえ。クローンで良かったと心底思いますヨ」
当たり前の事を。
目を細めたファルシェには決して薄れぬ記憶がある。秘術を狙う人攫いによって滅ぼされた我が故郷。あの時は届かず叶わなかったが、今度は――今は、護り抜きたいという想いを胸に、ここにいる。
「誰ひとり、あなた方の好きにはさせません、人攫い――」
体重を掛ける。
ぶつん。何かが潰れるような音と手応えの後、道化師の体は内から溢れた赤いナニカで弾け、消えた。
しゅるりと蔓が解け、水晶騎士と緑に守られていた車が元の姿に戻っていく。運転席の女は外に出ると急いで後部座席にいた子供を抱え――しかし温もりを抱き締めた瞬間、へたり込んでしまった。抱えられた子供は無言のまま、小さな手でぎゅ、と抱き返すのみ。
「――もう大丈夫」
他の強いお兄さんとかお姉さんが、みんなを守ってくれるから。
だから安心なのよと、アリソンは出来るだけ優しい声をかけ、寄り添った。
「……他、の」
ようやく聞こえた声は掠れていて、ええ、と向けられた青年の声が優しく受け止める。抱えられていた子供も、女の背中越しに顔を覗かせた。泣くのを堪え続けていたのか、目が赤い。
「……おにいさんみたいに、つよい?」
「勿論です」
「ゆっくりでいいから、立ち上がれるかしら?」
「さあ、どうぞ手を。安全な場所までお連れしましょう」
「は、はい……っ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アンテロ・ヴィルスカ
フィッダ君(f18408)と
場所:校舎外
良いところに目をつけたね
バスを襲えば一気に子供が手に入る…中々効率的じゃないか
猟兵がいなければ完璧だったねぇ?
UCを発動
スクールバス・車と敵との間に氷壁を築き、出来る限りその場から逃す
壁といえど氷、その強度に過度の期待はしていない
逃しきれなかったバスを守りつつ戦闘を
応戦は黒剣とaaveの斬撃
残像で翻弄しながら徐々に距離を詰めよう
敵が合体すれば互いを鎖で繋いで、攻撃を受けながらでも懐に飛び込む
作戦を立てるならば、バスに襲われる事もちゃんと想定に入れなくては駄目だな、クローン君?
座標は、停車位置は俺…さぁ定刻だ
おや…ふふ、今日はバス停がガイドをするのかい?
フィッダ・ヨクセム
アンテロ(f03396)と
UCで遅れて不意打ちを狙い、跳ぶ
着地に足場が必要なら、鬣犬の背中を踏み付けて跳ねるだけ
苦情は受け付けない
アンテロの居る座標に、直ぐ側に敵が在るのは分かッてる
……勿論、信用してるからな
タイミングはジャストだと思うが
俺様は怪力の限りに、自分の本体バス停でフルスイングしてかますだけ
その骨顔、砕かんばかりの衝撃与えてやるよ
遊びは他所でやれ!
……え?ガキども怖がッてる?
バスに無線とかねェかよ
無いなら声の限りに、丁寧口調で雑な言葉で励ましてやるさ
「悪の数だけ、正義ありデス。勝てば正義、そうでショウ?」
片言?知るか、ふわりと優しげに微笑んでやるから勘弁しろ
演技だが…おい、笑うなよ
別の自分が倒される様にジェスターは「あーあ」と芝居がかった動きで天を仰いだ。
「あのワタクシとあのワタクシは、ワタクシの癖にしょうもナイ。もっときびきび働かないといけませんヨ」
るんるんとスキップで近寄れば、車内に取り残されていた人間たちが恐怖で顔を引きつらせ、悲鳴を上げて車両後部へと殺到する。
「大人は一人、他は全テ子供……これ一台で結構攫えマスネ!」
「良いところに目をつけたね」
――ぱきん。
スクールバスの停車位置とジェスターを氷壁が鋭く隔て、ジェスターの背後からこつん、こつん、と足音が近付いてくる。
「バスを襲えば一気に子供が手に入る……中々効率的じゃないか。まあ、猟兵がいなければ完璧だったけどねぇ?」
やあ、ピエロ君。
振り返ったジェスターへアンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は口の端だけを上げて笑いかけ――十字架に似た黒剣と氷結晶の刻印煌めく片手剣、二振りを手にアスファルトを蹴った。
壁といえどあれは氷。強度に過度の期待はしていない。あれがある間にバスが逃げてくれればいい。それまでは守りながら戦うだけ。
(「おや」)
氷壁の向こうから聞こえたエンジン音。今だと運転手が腹をくくってくれたようだ。
「アー……マア、バスはもう一台ありますし。子供もまだまだイッパイいますカラネ」
上、下、横。何度も己を捉え、揮われるハンマーを刃で受け止め、弾き、時に残像を見せてとアンテロは徐々に距離を詰めていく。かといってジェスターに焦りは見えず、眼窩から燻る赤い揺らぎは煌々と。
「おやおや、余裕の笑顔デスカ。油断大敵という言葉をご存知デ?」
コレでも笑ってられます? ジェスターの指がパチンと鳴った瞬間、アンテロの後ろを埋めるように無数の小型ジェスターが現れた。ケタケタ笑う小さな道化師たちはまるで壁だ。しかしアンテロの表情はぴくりとも揺らがない。
「その言葉は、君が持っておくべきじゃないかな、ピエロ君」
「何を――」
言ッテ、という言葉は続かなかった。ふいに己に被さってきた影。見上げた先には敵意と戦意、その他諸々をありありと浮かべたフィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)と、鬣犬。それから。
「作戦を立てるならば、バスに襲われる事もちゃんと想定に入れなくては駄目だな、クローン君?」
座標は、停車位置は俺。
――さぁ定刻だ。
男が笑むと同時、フィッダの足場にされた鬣犬がギャンッと抗議の悲鳴を上げるが、残念、フィッダは苦情を受け付けない。その目は座標とした男のすぐ側に“在る”と分かっていた敵へ注がれていた。
「その骨顔ムカつくな。遊びは他所でやれ!」
「ッガ……!」
フィッダは力の限り本体であるバス停を横向きでフルスイングした。面ではなく線で叩き込まれた一撃が、骨顔にどれほどの衝撃を轟かせたか。その結果を見せるように、ジェスターが頭を押さえくらくらフラリ、おっとっと。
「てめェみてぇなのがバスに乗れるワケねえだろ」
「グウッ!」
フィッダはバス停を突きつけ、フルスイング・パートツー。聞こえた音と風船のように膨らんだ腹部へ沈んだバス停に、アンテロは「痛そうだ」と他人事であるが故に笑み――プススン、と聞こえた頼りない音で状況を把握する。
なかなかエンジンが入らないバス車内が、どんな様子になっているか。
あまりにも容易く想像出来た光景に、ちら、とフィッダを見る。今の音はガスガスと容赦なくバス停揮う彼にも聞こえていただろう。
「……あ? ……バスに無線とかねェ……か。ねェのかよ」
“怖がるガキども”の為、マスクをずり下げ深呼吸。
「悪の数だけ、正義ありデス。勝てば正義、そうでショウ?」
声の限りに響かせたのは、丁寧に言うのは慣れていないのだとすぐわかる励ましの声。しかし氷壁の隙間から見せた微笑みは優しげで、一瞬目が合った少女がハッと表情を明るくした。
「おや……ふふ、今日はバス停がガイドをするのかい?」
「演技だが……おい、笑うなよ」
「ガイドするなら誘拐ルートのデスネエ……」
「っざっけんな!」
ゴンッ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルバ・アルフライラ
【外】
ジジ(f00995)と
弱き者を狙う悪鬼共
――誅される覚悟は出来ておろうな?
何より優先すべきは囚われた童の確保
【眠れる花園】にて化物共を眠りの淵へ落とす
…ジジ
今の内に童を引き離せ、良いな?
ハンマーの一撃は見切りを試み
何があっても、我が身が砕けようと
童の身を守ると誓おう
…後でジジに咎められようと些事だ
寧ろ奴こそ酷い怪我をしてなければ良いが
刹那、車内より悲鳴が聞こえたならば
嫌でも振り向く事だろう
視界に映る様子に蘇るのは幼き頃の記憶
引き摺り出される童の姿が弟と重なる
――救わねばならない
高速詠唱による魔術で敵を眠らせ
童の手を引き寄せ、腕の中へ
…怪我はないか?
さぞ切羽詰った顔をしているだろうよ、私は
ジャハル・アルムリフ
*外
師父(f00123)と
外道の手本だな、道化師ども
数が多い上に幼子
あまり時間はかけられぬ
【封牙】用い
子供を抱えた、あるいは追う道化師の進路を塞ぐ
救う手は在る、絶望などさせぬよう
…子らを放せ
気を引いているうちに
後方より放たれる師の術により
動きが鈍ったところを殴り付ける
…首や手足を飛ばしては、幼子らが怯えよう
焦った様子で駆けてゆく師の、急ぎ壁となり
…無茶をされる
飛び来る呪詛は第六感にて回避試み
受ける反撃とて今はただの衝撃に過ぎぬと捨て置いて
――あとで怒られような、これは
子が放されれば害が及ばぬよう抱え
大丈夫だ、見ていただろう
俺達は…その――強いぞ
ああ、しかし
我が姿とて道化師と大差なかろうが
「ワタクシであるのなら、バスジャックの一つや二つこなせると思いマセンか? ワタクシなんて、ホラ。可愛いお子様を三人も!」
子供たちはジェスターの腕の中、ぶら下げられた猫のように抱えられ――いや。奪われていた。どの子供も散々泣いた後なのか疲れた様子でいて、時折、ひっく、ひっくとしゃくり上げる。
その様子を「オ~、可愛い」と嗤うのは外道の手本といってもいい。
「……子らを放せ」
そう呟いたジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)の眼差しは刃のように鋭く、手足は竜のそれ。ぁ、とか細い声を漏らした子供の目が、のろのろとジャハルを見ようとして。
「オォ、怖い怖イ」
ジェスターに抱え直され、う、と呻いた視線はアスファルトへ。くたりとした小さな身にはもう、顔を上げる元気もないのだろう。しかし、言葉は届いている。自分たちを救う手は、すぐそこに在る――それが、幼い心を絶望から遠ざける。
そして救いに来た手は黒き半竜のみに非ず。
ふわり。
視界に儚い白が降った。雪ではない。花だ。一つ二つ――溢れていく白の雛罌粟が視界だけでなく意識を埋めていく。そう気付いたジェスターが鋭い牙の隙間から悔しげな声を漏らし、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の眉間にしわが寄る。
「弱き者を狙う悪鬼共――誅される覚悟は出来ておろうな?」
「ソン、ナ……もの……」
ずるり。その場に膝を突いたジェスターをジャハルは無言で殴りつけた。竜の拳はさぞ痛かろう。しかしアルバの術によって昏睡状態に陥った今では、呻く事すら出来ない。
早い撃破を考えれば首や足を飛ばす所だが、アルバもジャハルも、子供たちの記憶にそれを刻みたくはなかった。
「……ジジ。今の内に童を引き離せ、良いな?」
「無論だ、師父」
邪悪な腕を解き、小さい体を支える。大きな目は涙に濡れ、腫れていて。しかし黎明と黒と星、宝石と竜――初めて見るのだろう姿と彩に、目に残っていた恐れはどんどん薄れた。
名を呼び駆けてきた大人たちへ子供らを託した二人は、ようやく“呻く”という行動が可能になった道化師を見下ろし――飛び退いた。ついさっきまでいた場所にめり込む白銀の塊。ハンマーの先端がゆっくりと上げられ、パラパラとアスファルトの欠片が降る。
「アァ、残念。この腕に抱いていた子供たちが消えてシマッタ。ワタクシの数も減っているじゃあナイデスか! これは困りしたねえ! ええ、本当に!」
わあっと嘆くように両手で顔を覆う。
「――ですが、ワタクシはまだまだおりますからねえ」
赤と黒、指の隙間から覗いた骨が嗤い、ハンマーを掴むまで一瞬。それでもアルバは僅かに捉えていた。そして道化師が狙う先を瞬間で感じ取り、動く。
必死に走る大人に抱かれた、小さな体。恐怖と絶望を浴びせられた幼い心。
何があっても、我が身が砕けようと、あの子供らを守る。その誓いは欠片も揺らがず――故に、後で弟子に咎められるだろう予感が湧くが、些事だと笑んで体を捻る。
ハンマーの先端が鼻先を掠めた。煌めく髪が数本散るが、体の一部が砕けるのと比べればそれも些事に過ぎず。
(「寧ろ――」)
翻る髪の向こう、ヒトより一歩離れた姿を取ったジャハルの拳が一瞬でジェスターの頭を掴み、アスファルトに叩き付けた。轟音と共に深く沈んだ頭部がひしゃげ、沈黙する。
「……ジジ、」
怪我は。言いかけた刹那、悲鳴がした。
弾かれるように振り向いた先。スクールバスのタラップに足をかけた道化師が、ほっそりとした両腕を掴んでいた。赤毛の子が泣き叫びながらバタバタ暴れる。
「いや、いやだいやだ放してッ、助けて……!」
兄さん!
視界に映った全てが幼い頃の記憶を蘇らせる。あの姿が弟と重なる。攫われる。奪われる。駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ。――救わねばならない。
一瞬で編み上げた魔術が宙を駆け、気付いたジェスターから膨れ上がった呪詛が飛ぶ。それでも駆けるアルバの傍へジャハルは竜脚で駆け付け壁となり――焦り滲む横顔を、見送った。
(「……無茶をされる」)
ならば己は師に降りかかる火の粉を払おう。飛来した呪詛は正面から捉えて躱し、受ける反撃はただの衝撃に過ぎないと捨て置いて。ああ、しかし。
(「――あとで怒られような、これは」)
だが、今は。
魔術を浴びた道化師が意識を手放し、後ろへ倒れる。突然自由になった赤毛の子は必死で抵抗していた為に転げ落ちそうになり――ぐい、と白い手が引き寄せ、抱き留める。
「……怪我はないか?」
笑えて――いるだろうか。鏡はないが、今自分は、さぞ切羽詰まった顔をしているだろう。大丈夫だと、震える背を撫でる。
赤毛の子は目を見開いたままアルバを見つめ、それから、消えゆく道化師を見ないよう抱えてきたジャハルを見た。潤んだ目から滴は零れていないものの、小さな体で緊張を押しとどめようと気を張っている。
「大丈夫だ、見ていただろう。俺達は……その――強いぞ」
ああ、しかし。幼子からすれば、己の姿は道化師と大差なく恐ろしいものだろう。
そっと手を放し、後は師父にと下ろそうとする。
しかしどうした事か。細い両腕は二人の服を掴んで放さない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鎧坂・灯理
校舎内を希望
UC発動、来い執事共 仕事だ
戦わず潜め 見つかりそうな子供が居たら代わりに見つかって気を引け
そして逃げろ 引きつけろ 私のところまで連れてこい
弱い使い魔は念動力で潰し、カルラに火炎放射で燃やさせよう
合体したなら『金烏』で首をなぐ
大太刀だから廊下では取り回しに制限が掛かる
だが念動力で動かせば勢いをつけずとも加速できるからな
私の念動力は海を割り、衛星を引き落とす
使い魔の首を落とすくらいは簡単なことだ
さあ、次だ 行け執事共
――ドコですかあ?
「っひ……!」
遠くから聞こえた声に、眼鏡の少女はハンカチで口を押さえた。
いきなり現れて、さらうと言われて。恐ろしさのあまりみんなと一緒に校舎へ逃げて――それから、ここにいた。
下から覗かれてもバレないよう、蓋をした便座の上に座っているけれど、ここは二階。
窓は小さくて出られない。もしここがバレたらどうしよう。
「あんな怖い爪、トイレのドアなんてあっという間に壊しちゃう……ッ」
――もっといい子にしてたら、こんな目に遭わなかったのかな。
勉強も宿題もして。ワガママを言わないで。パパとママのいう事を聞いて、ペットにクラスメイトの嫌な所を言ったりしないで、誰よりもいい子にしていたら、こんな――。
――コッチですかあ?
「!」
さっきより近い。
心臓が跳ね上がる。体が震える。やめて、震えないで。音でバレちゃう!
怖い。こわいこわいこわい。
上手く、息が出来ない。つばを飲もうとしたら信じられないくらい喉が渇いていた。
どうしようどうしよう。足音と引きずる音がする。きいぃ、って壁を引っ掻く音も。
もうだめ。
――そう、思っていたら別の足音がした。廊下を急いで行く足音。誰。
「オヤオヤア、ドコへ行くんデス!」
愉しそうな声が引きずる音と一緒に遠くなる。
眼鏡の少女が“助けられた”と気付くのは、全てが終わった後。
「よくやった」
鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)はくくっと笑い、執事がやってきた道――廊下の先をる。
“戦わず潜め。見つかりそうな子供が居たら代わりに見つかって気を引け”。
“そして逃げろ、引きつけろ。私のところまで連れてこい”。
灯理は執事たちにそう命令を下し、そして向かわせた執事の一人がここへ戻って来た。という事は、そういう事になる。
真っ直ぐ伸びる廊下に通じるのは前方数メートル先にある階段だけ。
そして釣られた道化師が顔を出した瞬間、戦いは始まった。
「オヤッ、オヤオヤ? 子供をいっぱい匿っているかと期待シマシタが、大人一人ぽっちじゃアリマセンカ! 何という不作!」
嘆くような身振り手振りで、指をパチンッ。何もない所から弾けるポップコーンのように現れた小型ジェスターたちが、執事従えた灯理へと殺到する――が。
「邪魔だ」
ブチブチブチブチッ!
灯理から見て、手前から奥へ。わらわらと溢れた小型ジェスターが一気に潰れ、それを焔槍から小竜へと転じたカルラの火炎が呑み込んでいく。ごうごうと燃え盛る火炎は廊下を赤と金に染め、烈しい熱が広がった。
「あーあー、せっかく召喚したのにヒドイですねえ。ほら皆さん、合体デスヨ合体」
頑張って殺して、頑張って子供を攫いに行きマスヨ!
パンパンッと手を叩くジェスターの音頭に合わせ、小型ジェスターが一つにかなっていく。額の数字が加算され、体は大きくなり、一歩踏み出せばズウン、と大きな足音。
対する灯理はカルラを傍に魔導太刀『金鳥』を携えたのみ。直立不動の姿は、ひとたび掴まれてしまえば窮地に陥っただろう。
ただし――掴めればの話だ。
「生憎だが道化師。私の念動力は海を割り、衛星を引き落とす」
果てのない力が金鳥を包む。唇が三日月を描き――一瞬。金鳥が空を薙いで、一秒後。使い魔の首が、ごとんと落ちた。そして制限というものを彼方に置いた刃は、召喚主であった量産型ジェスターの首までも綺麗に落としていて。
「――……ア、」
カルラの炎が落としたばかりの首を黒塵に変える。
ぼろりと崩れたそれに灯理は目もくれず。
「さあ、次だ。行け執事共」
そして、新たな首がそこに落とされる。
大成功
🔵🔵🔵
ミスティ・ミッドナイト
白昼堂々、人攫いですか。それも子供を。ジェネシス・エイトなる存在が何者なのかは分かりませんが、ろくでもない連中だということは分かりました。私達の手が届く範囲で悲劇は起こさせません。
外はお任せします。私は校舎内へ。
まずは、敵より先に子供達を探し出します。避難経路を確認し、物音に耳を澄ませながら隠れていそうな場所へ。見つけたら優しく接し、私が出ていった後にドアに鍵を掛け、机や椅子でバリケードを作るように指示。私は通路で量産型ジェスターを向かい討ちます。
敵を確認次第、設置されている消火器に向けてハンドガンで速射(UC)。破裂させ目潰しを。そして一気に近づき零距離射撃を食らわせてやりましょう。
鎹・たから
校舎内
こども達に、絶望を与えてはいけません
そんなことはたからが許しません
敵よりも先にこども達を見つけ
荒雪で机や家具を操作し教室にバリケードを作ります
間に合わなければ敵を突き飛ばしてこどもをかばいます
【早業、念動力、ダッシュ、かばう、オーラ防御】
敵が彼らを奪わぬよう
絶対にその場から動かないでほしいと言い含め
たからはあなたを必ず守ります
どうかたからを信じてください
【優しさ、勇気、覚悟】
猟兵と連携優先
戦闘時もバリケードやこどもの前に立ち塞がり常に敵の動きに注意
荒雪の攻撃範囲よりも敵が接近すれば手裏剣とセイバーで攻撃
【衝撃波、2回攻撃、気絶攻撃、暗殺】
誰かを傷つけるピエロは
たからがほろぼします
「白昼堂々、人攫いですか。それも子供を」
ジェネシス・エイト――何者かは分からないが、ろくでもない連中だという事は分かった。迷わず歩くミスティ・ミッドナイト(夜霧のヴィジランテ・f11987)の隣、鎹・たから(雪氣硝・f01148)もまた、表情らしい表情はない。しかしその眼差しはミスティと同様、しっかり前へと注がれていた。
「こども達に、絶望を与えてはいけません。そんなことはたからが許しません」
「ええ。――……向こうへ」
避難経路と一般人が隠れていそうな場所はミスティの頭の中。
正面入り口から近い所は恐怖の鮮度が高い。恐ろしい道化師から逃れる為、校内に入った後はより遠く、より安心出来る場所を選ぶ筈。
元特殊工作員の感覚と判断は鋭く研ぎ澄まされ――予測を立てた場所で僅かな音を拾い上げた。
正面入り口からそれなりの距離があり、出口は複数。小さな体を隠せる机と椅子の多いそこで、ふっくらとした教師の背にしがみついていた子供たちは今、ミスティとたからが創り上げたバリーケードの内側にいた。
二人の優しさに触れた事で、彼らの表情はある程度落ち着きを取り戻していた。
複雑に組まれ、触れればひんやりと冷気を零すバリケード。その最後のピースは、二人が出ていった後に鍵を掛けた教師が内側へ戻るついでにはめ込んだ椅子一脚だ。
このバリケードと、ミスティと、たから。二人の猟兵が彼らを守る守護となる。
でも。
サム先生、とかけられた小さな声に、なに、とひそひそ声が返る。
「……あの猟兵さんたち、大丈夫かな。怪我、しないかな」
「大丈夫。優しくて強い人は、悪人が思う以上に凄いから」
だから――。
続く言葉は、響いた衝撃と爆破音でヒョエッと閉じられた。
「オロロロ、何を考えてるのかサッパリです!!」
「量産型ジェスターの殲滅ですが」
さらりと言ったミスティの姿は――もうもうと視界を埋める煙の中。すらりとしたシルエットは欠片も浮かばず、ジェスターからはどこにいるのかわからない。
煙の元は消化器だった。煙の切っ掛けはハンドガンによる速射だった。
破裂した消化器は一瞬で強烈な目潰しとなり、小型ジェスターを喚んでミスティを叩き潰そうにも姿が捉えられなければ意味がない。そして悲しい事に、見つかるより先にジェスターを捉えていたミスティには、敵がどこにいるかハッキリと見えていた。
「こちらをどうぞ」
まるで新作カクテルをすすめるようだが、お見舞いしたのは零距離射撃。避けようのない一発はジェスターの腹を深く貫きながら裂き、響いた悲鳴を不可視となった雪風の渦が呑み込んでいく。
「なんというコト! 他のワタクシと一緒に別ルートを行くべきデシタ!」
別ルート。他の道を行って――あのこたちではない、別のこを、さらうのか。
渦の中心から羅刹が駆け、放たれた得物がぐるぐる、ざくり。ジェスターの足から腹、腹から顔を抉って斬った。
「ギ、ア――!」
「誰かを傷つけるピエロは、たからたちがほろぼします」
「私達の手が届く範囲で悲劇は起こさせません」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【竜と凪】
◆校舎内
鳴宮(f01612)と
そう?子供ほどグロテスクが好きだけどね
知らないほうがいい刺激なのは確かだわ
此処をどこだと思ってるのかしら――健全な学び舎なのに
そうね。全力で、ついてきて。
基本は鳴宮が牽制、私がメインのアタックという具合
集中。
――こんにちは、ピエロ
私は「ダークヒーロー・ウロボロス」
憶えなくて構いませんよ。お前はここで死ね
まず私が声をかけて、注意を惹いてから鳴宮に狙撃させます
そちらはサイドキック「ヴィジランテ・シャドウ」です。ミスター
いい腕をしているでしょう
憶えなくて結構。貴方に覚えられると泥がつく
【殺竜殺剣】――永縁刀「紫衣紗」にて放つ一閃で
怪力込めて一刀両断させてもらう
鳴宮・匡
◆校舎内
ヘンリエッタ(f07026)と
血腥い奇術は、ちょっと子供向けとは言い難いな
全力でやっていいよ、ヘンリエッタ
……全力でついていくからさ
向けた銃から放つ牽制の射撃は
第一に相手の生み出した使い魔を散らす
合体される前に数を減らしておきたい
第二に相手の動きの起点を抑える
回避を狙っているなら、動き出す瞬間の脚を削り
攻撃の心算なら、武器を振り上げようとした手を穿つ
膨れ上がる呪詛の気配も【見切り】その発動を妨害するように胴や頭を狙撃
僅かな間でも稼げばいい――それで十分だ
仕損じるはずなんてないと信じてる
思うままに救うことが許されるなら
俺は、“これ”でいい
救いをもたらす誰かを助ける
影であれれば、それでいい
「血腥い奇術は、ちょっと子供向けとは言い難いな」
「そう? 子供ほどグロテスクが好きだけどね」
虫、蛙――まだ幼く知らないからか、子供は自分以外の生き物で無邪気に弄ぶ傾向がある。
「ああ、けれど」
ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)の持つ銀の双眸が、静かに周りを見た。
映るものは鳴宮・匡(凪の海・f01612)と同じ、アメリカでは一般的な小学校の風景だ。しかしおおよその人が気づけぬものを彼女は拾う。それを知る匡はただ口を閉じ、凪いだ眼差しを同じ場所に向けた。
「知らないほうがいい刺激なのは確かだわ。此処をどこだと思ってるのかしら――健全な学び舎なのに」
いくつもの足跡に混じるそれ。
生徒や教師、一般人では決して履いていないだろう靴の痕が、点々と続いている。
「全力でやっていいよ、ヘンリエッタ。……全力でついていくからさ」
「そうね。全力で、ついてきて」
元・犯罪王であるヘンリエッタの全力と、数多の戦場を知る匡の全力。
常人では計れないだろう互いのそれを、常人ではないからこそ計れる二人が歩き出す。
そして。
「――こんにちは、ピエロ。私は『ダークヒーロー・ウロボロス』」
「オロロロロ。なぜかさっくり見つかってしまいマシタが、これはこれはご丁寧に! 初めマシテ、ダークヒー……」
「ああ、いいえ。憶えなくて構いませんよ」
くるくるっと踊らせた右手を胸元に添え、礼をしようとした所で止めさせる。
こちらの名を覚える事も、挨拶も礼も、不要だ。
必要なものは、たったひとつだけ。
「お前はここで死ね」
静寂を破ったのは銃声の幕だった。
近くにいたら耳を塞ぐだろうそれを、匡はただ呼吸をするような表情で撃ち続ける。的確な銃撃はジェスターがすぐさま召喚した使い魔の額や足の関節を砕き、召喚主であるジェスターの動きまでも抑え込んだ。
「ああっ、ッグ……何という暴力的なご挨拶! 痺れてしまいソウですよ!」
先端に丸い砂糖菓子を付けたようなハンマーを揮い、銃弾の何発かを防いだのは流石というべきか。しかし回避を狙う者の動きを知る匡は、脚がその表情を見せた瞬間に一発で脚を撃ち、攻撃に転じようとハンマー振り上げた手までも穿つ。
「そちらはサイドキック『ヴィジランテ・シャドウ』です。ミスター。いい腕をしているでしょう。憶えなくて結構。貴方に覚えられると泥がつく」
響く銃声の中、匡の眼差しとヘンリエッタだけが常の静けさを保っていた。
嗤っていた道化は今、食いしばった牙の隙間からぼたぼたと血にまみれた唾液を零していて。
「――そう言われると、汚したくなるものデスヨ」
音もなく膨れ上がったどす黒い赤。骨の髄までひりひりとさせるようなそれが、ジェスターの全身から溢れる。その、寸前。一発、二発。匡の銃弾が頭と胴を撃ち、ジェスターの大きな体が踊るように仰け反った。
「――……」
たった二発。僅かな間だ。
しかしたった二発分、稼げればいい。彼女が全力を揮うにはそれで十分。
(「仕損じるはずなんてない。そうだろう、ヘンリエッタ」)
「十分よ」
ほら、な。
白い指が黒刀に触れて。一閃。
黒い軌跡が視界に生まれた刹那、ジェスターの体が――右と、左に別れた。
左右に別たれた体は恐らくほぼ同時に床へ倒れ、びちゃりと濡れた音を立てて赤を広げていく。しかしその色は、形と共にぼろぼろと崩れだした。
匡の目が消えゆくジェスターの骸に向いていたのは僅か。
視線を余所へやるついでに、歩き出したヘンリエッタが映る。
(「……俺は、“これ”でいい」)
思うままに救う事が許されるのなら、自分は、救いをもたらす誰かを助けるその影であれれば。それで、いい。
光の中には、光を。
闇の中には、闇を。
ただ、それだけだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
わァ。たいへんたーいへん。
賢い君、賢い君。
相棒の拷問器具の賢い君に話かけながら行こう行こう。
君は喋らないケド、コレには分かるンだ
子供を助けたいンだろ?それならやろうやろう。
妨害は得意サ。
そうだなァ、校舎の中に行こう。
ソコにずーっといても袋の鼠サ。
机や椅子の障害物を効率よく使いたいなァ。
バリケード代わりにした所で賢い君を敵サンに結ぶ。
その隙に子供たちを逃して、アァ……反対側からくるかもしれないなァ。
誰かと協力しておきたい。
敵サンがどこから来ても大丈夫なように警戒しとこー
窓は危ないからなァ……近付かないように声掛けもしておくサ。
袋の鼠にならないようにネェ。ネー。
コノハ・ライゼ
ナルホド、効果的だ
なら尚の事見過ごせねぇよネ
子供は、その未来は、幸せじゃなくちゃいけないンだから
校内へ
先ず逃げ遅れている子の確認
同時に【黒管】で既に隠れている子達の居場所を探る
追われてる子がいれば間に割って入るヨ
子が隠れてる場所からは出来るだけ離れ
「誰も隠れていない隠れられそうな場所」を背に守る様にして敵を誘き寄せるわネ
敵と対峙したら【彩雨】を壁のように降らせ視界の遮断
すぐに『2回攻撃』で針に『マヒ攻撃』乗せ敵を指し縫い止める
敵の衝撃波はハンマーの動きから軌道読み『見切り』避けるネ
攻撃の隙も逃さず『カウンター』狙い懐飛び込んで『傷口をえぐって』やるわ
喰らう価値もねぇの、そのまま消えな
「わァ。たいへんたーいへん。賢い君、賢い君、聞いたかい?」
悪いピエロが子供をさらうンだってサ!
エンジ・カラカ(六月・f06959)は、相棒である拷問器具『賢い君』に話しかけながら小学校内部を歩いていた。当然、物である賢い君は喋ったりしないけれど――分かるンだ。
「あァ、子供を助けたいンだろ? それならやろうやろう。妨害は得意サ」
一番の妨害はきっと、子供を先に見つけるコト!
エンジは閉じられたドアの小窓からひょこひょこと中を覗いては先へと進み――入り口のすぐ横、原子記号やサイエンスの文字が躍る壁の掲示板に目をやって、再び小窓から中を見る。
「見ーつけた」
あらら、見つかっちゃった。
とても小さな声でそう言ったのは、二人の生徒と向かい合っていたコノハ・ライゼ(空々・f03130)だった。向かいにいる小さな男子は、黒管を片腕に抱いてもう一人の上級生らしき生徒にくっついている。
「逃げ遅れサン?」
「そ。先に見つけられて良かったわ。くーちゃんお手柄ネ」
「……あ、ありがとう、ございます」
ぺこりと頭をさげた上級生に続いて、もう一人も小さくぺこっ。
後者はかなり泣いた後のようで、赤い目と全く喋れない状態は、スカムキングとジェスターの企みが効果覿面という何よりの証。それは、非常に腹の具合がむかむかするもので。
(「見過ごせねぇよネ。子供は、その未来は、幸せじゃなくちゃいけないンだから」)
美味しいもの食べて、遊んで、寝て。大抵の子供は、それを繰り返すものだ。
「さて、それじゃ始めちゃいましょーか」
「え、な、何を」
戸惑う上級生に、エンジは何をって、と首を傾げて。ニヤァ。賢い君を抱え、笑う。
「悪いピエロを捕まえるのサ。なァ、賢い君」
机。椅子。
積み上げて組み合わせたそれ。奥をしっかりと隠すその手前には、己を強い眼差しで見据えるコノハの姿。まるで何かあると匂わすような――そしてそれは、正しかった。
「鬼さんワタクシ! ですよ!! アーハハハ!!」
びょいんっとジャンプしながら振りかぶったハンマーを叩き付ければ、ただの机と椅子は悲しいまでに破壊され――。
「オロロロ? スカ?」
「それはどうだろうネェ」
「!」
しゅるり。鱗片、毒性の宝石、赤い糸。バリケードと結ばれていた賢い君がエンジと共に顔を覗かせて――翔た。そこにいたと思わせた子供たちはもう、逃がした後。ドコに行ったって? それはネェ、秘密。
放たれた賢い君はジェスターを熱く抱き締めて、その上にキラキラ眩しい雨が降る。それは一度では止まず、痺れる心地と共にジェスターをその場に縫い付けた。
「ソッチからすればハズレなんだろうけど、コッチからすれば大当たり」
引っかかってくれてドーモ?
ニヤリ笑ったコノハが駆ける。察したジェスターがハンマーを揮うが、教室中を震わせた一撃の軌道は、冷たい青色にしっかりと捉えられていた。
あっという間に懐に飛び込まれたジェスターの動きが、一瞬止まる。その光景にエンジは月色の目をにんまりと細めて――キラリと光った何かに、おや、と目を輝かせた。それの行き先は――白と赤の、道化師の腹。ざくりと沈んだキラキラが、体から迸る赤とは別の赤を咲かせていく。
「袋の鼠ってやつだネェ。ネー」
始めは自分が追い詰めているつもりだったのだろう。
無力な人々。幼い子供。校舎という籠。
けれど世界というものをもっと見るべきだ。ここはヒーローズアース。人々とヒーローとヴィランがいて――猟兵が、いる。
「なァ、賢い君。賢い君はもちろん知ってたろう?」
くすくす、くす。
「ア、アア、ガッ……」
「肉付きは随分イイみたいだね……ケド喰らう価値もねぇの、そのまま消えな」
旨味なんて欠片もない。
ぶつ切りになって――いずこへと還れ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チガヤ・シフレット
ルカ(f22085)と参戦だ
子供が怯えて震えてるなんてのは我慢ならんからな。ジェスターどもを吹き飛ばしてやるとしようか。
ルカも派手にやってくれよ。カッコいいところ、期待してるからな。
私たちは校舎内のジェスターを掃除するか。
袋小路で逃げられない、なんてのはまずいからな。
ダッシュで一気に校内へ。屋上へ向かいつつ子供たちを救出だ。
戦闘では私がガッツリ攻撃主体になろう。兵装をフルオープンして鉛玉を叩き込んで敵の追撃を食い止めよう。
「私を仕留めないとガキどもには手が届かないぞ?」
いざとなったら、悪いが校舎の一部を破壊してでも通路や障害物を作ってやるさ。
「ルカ、派手にかっこよくだ! ガキどもが見てるぞ!」
ルカ・メグロ
チガヤ(f04538)と参戦
気が合うな、チガヤ。
子供の未来や希望を奪うなんて、許せない!
二人でヒーローらしく、カッコよくカマしてやろうぜ!!
俺たちは校舎内に入り込んだジェスターたちをぶっ飛ばす。
屋上に向かいながら、道中逃げ遅れた子供を助けてくぜ!
校舎に入ったら「ギータ」に声をかけて臨戦態勢!
教室を確認しつつ、袋小路は「竜の抱擁」で壁をぶち破って脱出路を作ってやる。
ジェスターとの直接戦闘では俺はサポートに回る。
子供の避難を優先で、ジェスターの動きを牽制してチガヤを助けてやる。
「任せな、チガヤ。ドラゴンの戦士ルカ、派手に行くぜ!」
とにかく派手にかっこよく、子供たちの希望になるような戦い方をするぜ!
時々、どこかから音が響いてくる。
それは誰かの悲鳴ではなく戦いの中で生まれる音だった。ならば全力で走っている今聞こえているこの音は、校舎のどこかで別の猟兵がジェスターと戦っているのだろう。
――それを、逃げ込んだ人々は。子供たちは。どんな思いで聞いているんだろうか。
「子供が怯えて震えてるなんてのは我慢ならんからな。ジェスターどもを吹き飛ばしてやるとしようか」
「気が合うな、チガヤ」
チガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)の隣、ルカ・メグロ(ヴァージャ・コン・ギータ・f22085)の眼差しはどこまでも真っ直ぐで、動けなくなっている一般人は、子供はいないかと廊下を素早くチェックしていた。
「子供の未来や希望を奪うなんて、許せない!」
その言葉にチガヤはぎざぎざの歯を覗かせて笑う。ドアを開けた先、教室内は机と椅子が綺麗に並んでおり、誰も居ない。よし次だと、チカと共に手分けして教室を確認していく。
「派手にやってくれよチカ。カッコいいところ、期待してるからな」
「おう! 二人でヒーローらしく、カッコよくカマしてやろうぜ!! ギータ、お前もだ!」
ルカは心身共に臨戦態勢。ジェスターが潜んでいないかドアの小窓から教室内を覗き、影も形も見えない事を確認してから開ける。
「誰もいないみたいだな」
「こっちもだ。別の教室に隠れているのか、それとも屋上に――」
カチャ。
『!』
かすかな音に二人は同時に身構え、はっと目を見開いた。廊下の奥、袋小路となっているそこ。ほんの少しだけ開いたドアの隙間から、警戒心を露わにした少年が顔を覗かせていた。
「だ、誰。ヒーロー? それかヴィラン? ……待ってそこにいて。あのピエロが化けてる可能性だって――」
「最後の言葉は聞かなかった事にしておこう。無事で良かった。私たちは猟兵だ」
「え」
「りょうへいさんだって!」
「マジで!?」
「こら、いきなり出てくるなよ……!」
少年の後ろから下級生がぴょこぴょこ顔を覗かせた。互いに面識はなかったらしいが、たまたま近くにいたので一緒に隠れていたという。
まだ子供ながら年下を守っていた少年をルカは「すごいな!」と褒めて――ぴくっ。自分たちが来た道を勢いよく振り返り、身構える。
鼻歌だ。それと、重い何かを引きずる音。近付いてくるそれにチガヤも気付いているが、子供たちはまだだ。どうしたの、と不思議そうな彼らに耳を塞げと言い、壁と向かい合う。
「ここが一階でよかったぜ。行くぜ、ギータ!!」
袋小路で逃げ場がないのなら、壁を破壊して脱出路を作ってしまえばいい。
ぽかんとする子供たちを外へ逃がせば、校舎内の元・袋小路にいるのは二人の猟兵と――。
「おやおや、可愛い可愛いお子様がいるじゃありマセんか! ワタクシを殺す気満々の猟兵サンもいるのは困りマシタが」
二人の奥、怯えて顔を引きつらせた子供をじっとりと見つめる道化師・ジェスター。
チガヤは子供たちを邪悪な視線から守るように立ち、フン、と笑って長いポニーテールを揺らす。
「何、そういうな。たっぷり相手をしてやるさ。行くぞルカ!」
「ああ!!」
チガヤの両腕両足が“開き”、兵装から鉛玉の雨が降り注ぐ刹那をルカが駆けた。フルオープンしたチガヤの銃撃は一切の遠慮が無く、凄まじい音が響き渡る。
「どうした、私を仕留めないとガキどもには手が届かないぞ?」
「オロロロ。デハ、おもてなしにはおもてなし。お返しすると致シマショウ!」
「そうはいくか!」
ずるりと呪詛が溢れかけた瞬間、ルカはメインアタッカーであるチガヤの攻撃が存分に通るよう、左腕にいるギータと共にジェスターへと拳を叩き込んだ。ジェスターを中心に床が砕け、盛り上がる。
「っ、く……コレは……!」
「ルカ、派手にかっこよくだ! ガキどもが見てるぞ!」
「任せな、チガヤ。ドラゴンの戦士ルカ、派手に行くぜ!」
出遭ってしまった道化師への恐れが自分たち猟兵という希望で塗り替えられるよう、ルカは普段よりも大きな動きで立ち回る。
避難の為に離れる直前。縦横無尽に戦う二人の姿は、子供たちの心に確かな光となって焼き付いた。
大成功
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クロト・ラトキエ
子供を攫う。
――知り合いの目の前で。
それはまた…
『正義はここにあり』と示す、何と絶好のシチュエーション!
無論、貴方の完全敗北によってね。
己は校内へ向かう者対応。
子供側へ向かう敵を追走、或いは室外で迎撃。
但し、敵に子供発見の特殊技が無いかは気を付け、
無いなら態と子の居ない辺りで相対する等ブラフも。
視線、体勢、武器の動き等、攻撃動作を見切り、
不可視だろうと大きく避ける事で呪詛は躱し。
操作品を回避しつつ隙をみてナイフ投擲。
決定打が無い?
いいえ。『正義は必ず勝つ』んです。
子供が聞くかもしれぬ声は殊更明るく。
…本命は、
投擲に交え2回攻撃で張った鋼糸。UC、
拾式。
(生憎、ワル具合じゃ負けてやれないんですよ
パウル・ブラフマン
ったく…一刻の猶予もないってね!
ハナっからフルスロットルで行こうぜ、Glanz―UC発動!
▼交戦場所:校舎内
持ち前の高機動力を活かして校舎内へ特攻。
避難中の生徒さんの保護&奪還に尽力するよ!
取り乱している教員や学校スタッフさんには
【優しさ】を以て励ましたい。
同時に、敵がどちらへ向かったか
捕まった生徒はいないか等の【情報収集】を。
襲われそうな子供達が居たら
速攻展開させたKrakeでジェスターをヘッドショット。
間に【スライディング】で割り込み、子供達を【かばう】よ。
ハァイ、ピエロ野郎!
同じ道化でもコッチはキッズの味方だぜ。
【制圧射撃】→【一斉発射】で追手を振り切りたい。
※絡み&同乗&アドリブ歓迎!
「――あ、どっかで派手にやってるみたいだ」
「これは僕らも負けてられませんね」
クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は自分の前――白銀に輝く宇宙バイクを駆るパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)へ笑いかける。
柔和な見目に反し、実にやる気で満ちた言葉だ。パウルは頷きながら笑い、ハナからフルスロットルだったスピードのまま廊下を駆け抜ける。
全てのジェスターを倒すまで子供たちの安全は保証されない。校舎内を風のように駆ける間も、誰かに危険が及んでいるかもしれない。そう思うと一刻の猶予もなく――その胸に、道中で見つけた傷だらけの清掃員の言葉が浮かぶ。
あの子たちが食堂へ逃げるまでの時間を稼げればって、囮になったんだ……。
でもあの××ピエロ、俺を簡単に放り投げてっ……!
曲がり角で鮮やかなカーブを決めた『Glanz』に失速の二文字はない。周りがびゅうびゅうと過ぎる中、パウルの口がにかっと笑い、クロトもまた青い双眸を静かに細めた。
たてがみめいた真紅を揺らす大きな体が食堂目指してスキップの真っ最中。あのまま行かれれば、淡いイエローのスライド式ドアが開けられてしまうだろう。しかし、パウルがずるんと出した鮮やかなブルーの触手には砲台『Krake』が固定されていて。
「ハァイ、ピエロ野郎!」
ッパァン!
ジェスターがこちらを見た瞬間、頭にとっておきの挨拶を一発ぶち込んだ。
ジェスターの体は水面跳ねる小石のように吹っ飛び、食堂のドアからあっという間に遠ざかって空いたそこは当然『Glanz』の停車位置。
といってもそれは“一時”停車だ。クロトが飛び降りてすぐパウルは片手でドアを掴み、『Glanz』のパワーを活かして開けるとすぐに飛び込んだ。
食堂の中から驚きと困惑の悲鳴が湧く。
それがすぐに喜びへと変わる様にクロトは静かに笑み、子供を攫う、ですかと呟いた。
「――知り合いの目の前で。それはまた……」
『正義はここにあり』と示す、何と絶好のシチュエーション!
きらり。不敵な輝きを走らせた眼差しに、むくりと起き上がったジェスターが「おやおや」と言いながら、今度はぴょんっ。立ったその足元から大量の小型ジェスターが湧き始め、カタカタケタケタ、牙を鳴らして嗤う道化の群れがクロトへと殺到する。
「どうやら一癖二癖もある正義の味方のようデスネエ。ですが、簡単に示せるモノだと思わない方がヨロシイかと!」
濁流めいた勢いで迫る小さなジェスターたちと、刃を手に応戦するクロト。騒々しく賑やかだというのに、眼鏡の下にある双眸は常の落ち着きをたたえて――へえ、と笑む。
「そうですか?」
「エエ、エエ。でないと、叶わなかッタ時の辛さは海よりも深くなるデショウ」
「成る程」
クロトはにこり笑って――さくっ。横から飛びつこうとしてきた小型ジェスターの脇に刃を沈めた。量産型と比べ小さいハンマーの一撃は軽くターンをして躱し――着地した瞬間、どう、と突っ込んできた量産型ジェスターのハンマーは強めに床を蹴って躱し、敵が動いている隙を突いてナイフを放つ。
「おっと、危ない危ない! ではでは、正義の在処など示せないと、それヲ証明してさしあげマショウカ」
ずるり。
赤く輝く眼窩が、棘のように巡る何かが、不気味な脈動を奏でて呪詛を解き放つ。カタチというものを持たない呪詛を見る事は出来ない。しかし確かな呪いを孕んだそれを、クロトは相手の動きと大きく避ける事で躱してみせた。
「なんとッ!!」
驚き上ずった声にクロトはニッコリ笑った。
「『正義はここにあり』と、示してあげますよ。無論、貴方の完全敗北によってね」
「ホホゥ! 決定打らしきものは見当たりませんケド?」
「“決定打が無い”? いいえ」
『正義は必ず勝つ』んです。
殊更明るく紡いだ声が空間に響いたのと同時、食堂のドアが吹っ飛び、『Glanz』に跨ったパウルが飛び出した。
いや、パウルだけではない。変形した宇宙バイクには、中に隠れていた生徒たちも乗っていた。
あ、と大きく口を開けたジェスターへ、スローモーションになった視界で四つの砲口が向けられて。宇宙バイクを駆る猟兵がきししと笑い、青い目が不敵に輝く。
「悪いな、同じ道化でもコッチはキッズの味方だぜ!」
パウルは足元目がけ一斉掃射。
凄まじい音に重なるエンジン音と、「また後でー!」と遠ざかる明るい声。
嗚呼、殺戮道化師は一切の成果無く置いていかれてしまった。
そんな道化師を包み込むのは、遍く張り巡らされた鋼糸。きりきり、きりきり。ほんの一瞬だけ煌めいた鋼糸の世界は、鼓動一回分の直後、ばづんっとジェスターを抱き締めた。
ぼとぼとと落ちていく、ジェスターだったもの。その一部、赤い眼窩が崩れ落ちながらクロトを見た。なぜ、と語るようなそれにクロトはただ、にこりと笑うだけ。
(「生憎、ワル具合じゃ負けてやれないんですよ」)
●夕方のニュースにて
『※※※州の小学校がオブリビオン集団の襲撃を受けました。下校時刻という事もあり大勢の児童と保護者、職員が巻き込まれましたが、駆け付けた猟兵(イェーガー)によってオブリビオンは全て倒され、誘拐寸前だった児童は全員救出されたとの事です。では、校長のインタビュー映像をご覧ください』
……今日、私たちは悪魔を見ました。
身をもって感じた恐ろしさは、目に見える怪我とは違い、なかなか拭えないものでしょう。
ですが、私たちは知っています。
隣にいた人へ向ける親愛。礼節。家族や友人への愛。
そして、名も知らぬ人の為に戦う誰かがいるという事を。
生徒や職員のメンタルケアの為、専門家の手配を頼みました。校舎の修繕も。
我々は一人ではなく、故に我々は悪には屈しません。
我々も、彼らのようにスーパーパワーがなくとも、悪に立ち向かえるのです。
『それでは、次のニュースです。現在行われている――……』
大成功
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