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\パイ投げ!/

#アルダワ魔法学園 #恋は盲目 #\おいしい!/

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#アルダワ魔法学園
#恋は盲目
#\おいしい!/


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●狂い咲き
 晩秋は跡形もなく消え去って、冬はもうすっかり、みなに寄り添っている。
 だのに、桜が咲いたという。
 迷宮の奥で、神秘に包まれた桜が満開に狂い咲いた。
 その万花の下で誓った言葉は永久に違うことのない、たしかなものとなると専ら噂だ。
 なら、恋人と一緒に見に行きたいと思うのは、乙女心か、ただのミーハーか。
 それでも、友人が「彼氏と見てきた! すっごくキレイだった!」なんて話を聞くと、どうしても羨ましく思ってしまう。
 聖夜へのカウントダウンも始まった。
「この先にあるんだな?」
「そうだよ、レーニャ。カーチャが見たんだって」
 恋人の腕を抱きしめて、一緒に扉を開ける――瞬間、鼻腔をくすぐるのは、甘い甘いバニラの香り。

「いらっしゃーい! んまぁ! とってもアマアマーなお二人さんね! あら? アナタ、とってもキュート! わたくしと、どちらがデリッシュゥ! かしら!?」

 迫りくるのは、桜花纏う――まさかの生クリーム。
「アーシャ、逃」
「レーニャ!」
 彼の背に庇われたが、最愛の人は――甘ったるいバニラの香りを撒き散らす魅惑の生クリームにまみれて、倒れ伏した。

「シュエット! その心意気は立派ねえ! さぁて、アナタもおいしくなーれ!」

 最愛の少年の真っ白けになった顔と、眼前の災魔を見比べてアーシャと呼ばれた少女は、その場に立ち尽くしてしまった。

●盛大なため息は、
 ふわりと白く凍って、霧散した。
 クセのない短髪は時折吹く寒風に揺れ、それが飾る鋭い紺色の眼光は、
 鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)は、白いスマホの画面に指を滑らせて写真をめくる。
「よォ、ちょっと頼みてえことがあンだけどォ」
 ズボンのポケットにスマホを突っ込み、猟兵に向き直る。
「アルダワで、桜が狂い咲いた。それを見てえって言い出したバカップルがいてさァ」
 珍しいから見たいという気持ちも分からんでもないが――誉人はうんざりと嘆息した。
 春になればわんさか見れるのだ。なにも冬に見ずともと否定しかけたが、誉人は首を振った。そうじゃあない――なんでもいいのだ。らびらびきゅるーんとイチャつきたいとかで、迷宮に入っていった。
 イチャつく口実になれば、なんでもいい。二人で仲良く楽しめるならそれでいいのだ。
 誉人は心の底からため息をついた。
「勝手にやってろってね。俺も、思うのォ」
 けれど視えた。グリモアの予知にかかった――災魔との事件に巻き込まれることが確定したわけだ。
「今はまだ、二人の身に危険はない。けど放っておくと、問題の部屋に行きつく――そこにいくまでに、今、ちょうど、ぷにぷにに足止めされてる」
 ぷにぷに――ユキウサギウミウシの大群と遊んでいるという。いくら可愛くておとなしく、ぷにぷにでもちもちでも災魔は災魔だ。
 ユキウサギウミウシのいる回廊の奥が、問題の狂い咲きの桜のあるフロアになる。
「ここを根城にする災魔がいるンだが、桜吹雪すごくて、あんまし姿は見えなかったンだよォ、でもめっちゃ甘いニオイは感じた。
 すっげえバニラのニオイ。あとハチミツ? とにかく甘ったるいニオイだったからァ、こう、甘えの苦手なヤツは大変かも。
 とにかく、このフロアに行くまでにユキウサギウミウシをなんとかして、あのバ……二人を追い返さねえとダメだ。見つけちまったからここで討っとかねえと、コイツらだけじゃねえ犠牲者が出るかもしんねえだろ、頼まれてくれ」
 誉人の言葉に猟兵は頷く。
「あと、へんなの視えたんだ――すっげえ、生クリームまみれになんの。パイ投げの皿がいっぱい」
「は?」
「うん、わかんねえ」
「あんたでわかんなかったら……」
「でも、楽しそうじゃねえ? パイ投げ!」
「……お、おう」
「桜の下で戦うことになるんだけど、いっぱいあるんだよねェ、パイ皿――でも、こう、あぶねえもんって感じもしねえし、あのレフの感じからして、パイ投げつけられてんじゃねえかなァ」
 ユーベルコードにプラスして、パイを投げつけてくる――と誉人。
「レフ?」
「ああ、襲われるバカップルの名前ェ。レフとアリーサ。イチャこいてっから、レーニャ、アーシャって呼び合ってる。愛称だよォ」
 あとは、分かったら都度おめえらに伝えっからァ、と誉人。
「俺もいろいろ頑張るからさ、気晴らししようぜ」
「……なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「災魔倒し終わったら、パイ投げつけて、おめえらの顔、真ッ白にできんだろ?」
 これが楽しくないとでも?
「なにを言ってる? もしかしてあんたも行くのか?」
「遊ぼォぜ! どーせ、べったべったになるんだから、こう、遊ばなきゃもったいねえだろォ?」
 やや言葉を詰まらせ、笑い声を堪えながら、遊び倒そうと誉人は続ける。
「あのバッ――じゃなくって……二人ンことはとっとと追い返して、よくわかんねえ災魔やっつけて、めいっぱい笑って遊ぼォぜ」
 誉人の掌の上のグリモアが、青く輝く。
 だって、幾度の危機を脱してきた猟兵なら、これくらいの事件はちょちょいのちょいだろう。
「じゃ、サクっとな。頼んだぜ」


藤野キワミ
\パイ投げ!/
どろっとべたっとついでに、パイ投げして遊びませんか。藤野キワミです。

シナリオ概要
一章:集団戦・ユキウサギウミウシとバカップル
二章:ボス戦・???(バレてるかもしれませんがね!)
三章:日常・「伝説の桜の樹の下で」友との絆を深めながら、永遠の愛を誓いながら、学業成就、健康を祈念しつつ、パイを投げ合ってください。

なおNPCのレフとアリーサですが、「甘く凍ったアナタを食べたい/https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=10047」にて登場しておりますが、続いたものではないです。
あいもかわらずラブラブのイチャイチャです。

三章のみ、お声がかかれば鳴北誉人がパイを持って、リプレイに現れます。
どうしても顔にべったりパイを投げつけられたい時(嬉々として容赦なくべったりしにいきます)もしくは投げつけたい時(そこそこの抵抗があるかもしれませんが、おおむねべったりできます)、一人じゃちょっと…というときにでも使ってやってください。話しかけてくれれば、応じます。
呼ばれないかぎりリプレイ内に登場することはありません。

全章通して、途中参加、特定の章のみなど、どんな参加の仕方をいただいても歓迎いたします!
楽しい一時を過ごしいて頂けるように尽力いたします!
お連れさまがいらっしゃる場合、ソロ描写希望の方、マスターページを一読ください。

プレイング受付日時、執筆状況はマスターページおよびツイッター(@kFujino_tw6)にてお知らせいたします。
一章プレイング受付は、【12/4(水)8:31〜】となりますの、ご注意ください。

それではみなさまのプレイングをお待ちしています!
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第1章 集団戦 『ユキウサギウミウシ』

POW   :    あそんで
【ミニぷにぷに】【ミニもちもち】【ミニつるつる】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    ともだち
自身の身長の2倍の【めっちゃ移動が早いシロイルカ】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    ぶんしん
レベル×1体の、【背中】に1と刻印された戦闘用【自分の分身】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ユキちゃんとバカップル
「レーニャ、レーニャ! 見て!」
 回廊に埋め尽くされる、もっちもち、つるっつるの可愛い災魔――無害であると有名な種だ。
 無邪気にはしゃぎ、くるくると回って喜ぶアリーサを笑んで見つめる。
 ああ、可愛い。その金髪も。きらっきらの碧眼も。
「うん、可愛いよ――お前が」
「きゅ」
 ユキウサギウミウシが鳴いた。
「きゅん」
 アリーサがときめいたわけでも、レフがときめいたわけでもなくて。
 ユキウサギウミウシがツンツン突かれるたびに、きゅ、きゅ、きゅんっと高く小さく鳴く。
「かわいい!! ユキちゃんかわいい!」
 レフの言葉は届いているだろうが、彼女は足元に溢れかえるユキウサギウミウシ――ユキちゃんに首ったけになっている。
「レーニャも触ってみて!」
「おう……、っ!」
 言葉なくなる。初めて触ったが、なんだこの、ツルッとしながらも、押せばむにっとやわやかで――

「きゅん」

 なんて控え目に鳴くユキちゃん。
「ユキちゃん、可愛いな!」
「ね! 可愛いよね!」
「でも、そうやって笑うアーシャの方が可愛いよ」
「っ、レーニャ!」
 ユキちゃんを触るためにしゃがんでいたアリーサが立ち上がって、レフの胸に飛び込んできた。
「きゅ」
 そのときに蹴っ飛ばしてしまったユキちゃんが鳴いた。
 もっこもっこと増えて、きゅんきゅん鳴くユキちゃんは回廊を埋め尽くして。
 白いむにむにの中心でいちゃこく二人を邪魔する者はいない。
「ユキちゃんもぷにぷにだけど、アーシャのほっぺも白くてやわらかい」
「きゅん」
「やだー! うれしー! ふふっ」
「きゅん」
 頰を赤くして喜ぶアーシャの足元には、溢れるユキちゃん。
香神乃・饗
最初にバカップルって言ってるっすから取り繕ってもダメっす

またっすか!
あの2人出禁に出来ないんっすか?

当選通知おにいさん、再び登場っす!

おめでとうっす!この区画の3963939!さくらさくさく番目の入場者っす!
魔法を使ってさまざまな花が咲き乱れるイリュージョンフラワーショー!
ペアチケットが賞品っす!実は、本日最終日っす!
今なら一緒にご案内してあげるっす!さ、一緒に行くっす!
行かなきゃ損っす!
2人の背をぐいぐい押し案内避難させる

トドメに一押し
桜は人を浚うって言うんっす
カレシ・カノジョが浚われてもいいんっすか?
嫌なら早く避難するっす!安全地帯はこっちっす!

なんか踏み荒らされて災魔のほうが被害者っす




(「最初にバカップルって言ってるっすから、いまさら取り繕ってもダメっす」)
 胸中で友へ優しくツッコミをいれて、くすくす笑んだ香神乃・饗(東風・f00169)は、追加で毒づきそうな彼を思い出す。
 それでも饗の漆黒の瞳はユキウサギウミウシこと、ユキちゃんの大群にまみれてなお、喜色満面に、いちゃいちゃとラブラブと、周りの視線なんぞ気にしない大胆さを忘れない二人を捉えている。
 さすがの饗でも、ため息を禁じ得なかった。
(「もう……! またっすか!」)
 うんざりと。それでも、やや感心しながら、饗はふんと鼻を鳴らす。
 夏ぶりに彼らを見たが、二人とも実に元気そうだ――今も元気にイチャこいてる。
「ほらあ、アーシャのほっぺの方がやわらかい」
「レーニャのほっぺただってやわらかいよう」
(「ほっぺは誰でもやわらかいもんっす」)
 思わず口をついて出そうになった言葉を飲み込んだ。
 二人の足元のユキちゃんは、きゅん、きゅんと小さく鳴いた。
 これが災魔であることは間違いないのだが、こうも無体に踏み荒らされているのを見ると、なんだか――どちらかといえば、ユキちゃんの方が被害を受けているように思えてしまうのだ。
 こんなところに出てきたユキちゃんが悪いのか。それとも、こんなところでいまだに蜜月を続ける二人が悪いのか。
 饗はこっそりと二人の背後へと回り込む。
 そして、大声を出すためにすうっと息を吸う――

「おめでとうっす!!」

「ひゃああ!?」
「うわあ!?」
 二度あることは三度ある――の前哨戦。
 仏の顔も三度まで――に王手がかかった。
「この区画の3963939! さくらさくさく番目の入場者っす!」
「キ、あ!?」
 レフの方が声を荒げた。饗の顔を覚えていたのだろう。それもそうか――あの夏の出会いは実に強烈だった。
「わああ! あのときの封筒のおにいさん!」
「ふうとう? ああ、そうっす! 当選通知おにいさん、再び登場っす!」
「で、何番って?」
「3,963,939番っす!」
 さんびゃく、きゅうじゅう、ろくまん、さんぜん、きゅうひゃく、さんじゅう、きゅう。
 アリーサはぽかんと口をあける。
 それのどこがめでたい数字だというのか――ツッコミかけたアリーサの言葉を遮ったレフは、
「さくら、さくさく番!?」
「そっす!」
 饗も大きく頷く。ずいぶんと下にあるアリーサの碧眼を見返して、ぱっと両手を広げてみせた。
「魔法を使ってさまざまな花が咲き乱れるイリュージョンフラワーショー!」
 花火じゃないっすよ? お花っす! と付け加える。
「ペアチケットが賞品っす! ほしいっすか? 今回は、自分たちじゃあ作れないっすよ?」
 巨大パフェ作戦は失敗したのだ、ならばもっと特別感があって、代替がきかなそうなものを考えてみた。
(「これならどうっすか!」)
 用意周到に懐に忍ばせてた白い封筒をとりだす。
「チケットはココっす! もう一度聞くっすね、ほしいひとー!」
「イリュージョン、フラワー、ショー……!」
 言いながら、アリーサの顔が明るくなって、しゅばっと手が上がる。
 こうして、感情を全開にして楽しそうに笑ってくれるなら――この笑顔のために、なにかやってやりたいという気持ちは、分からんことはないと、饗もつられて笑う。
「アーシャ、でもキミ、俺と桜の下でナニ、したいんだっけ? 季節外れなんだ、いつ枯れるか分からないよ?」
「そっか! いつ桜なくなっちゃうかわかんないもんね!」
「実はこのショー、本日最終日っす! 今なら会場までご案内してあげるっす! さ、一緒に行くっす! 行かなきゃ損っす!」
 ここで引いてたまるか。
 二人の背を強引に押して、問題のフロアとは反対方向へと歩を進める。
 足元で、きゅんきゅん、きゅっ、とユキちゃんが小さく鳴く。足に当たるユキちゃんのむにむに感に少し心惹かれながらも、饗は、架空のイベントより、この先の桜に未練がある二人に、嘆息した。
 トドメに真剣な声音で話し始める。
「桜は人を攫うって言うんっす」
 溌剌と笑う饗が姿を隠し、彼の黒瞳は二人の学生を交互に見つめる。
 桜の妖しいほどの美しさはヒトを惑わす――桜吹雪はヒトの姿を容易に隠して、儚さを纏う美しさで心をかどわかす。
「カレシ・カノジョが攫われてもいいんっすか?」
 迷宮に咲いた季節外れの桜。立てた誓いは破られることはないという伝説まである桜だ。その美しさは、いまだ見たことのない饗であっても、想像に難くない。
 桜に心を奪われてしまうかもしれない。恋人よりも、桜に恋をしてしまったらどうする。
「そんなこと、」
「どうして否定できるんっすか? そんなの、わかんないっす」
「だって、カーチャはそのまま戻って、」
「誓い合うなら、桜なんかなくたってできるっす」
 互いが向き合っているなら。
 そこがたとえ道端だろうが、日々の食卓を挟んだ最中でも、なんの特別もない日常の最中に、二人で向き合っているなら契りを交わすことは、容易なはずだ。
「違うっすか? そんな儀式が必要なんっすか?」
 レフはしっかと饗の言葉を聞く――されどアリーサは、
「でも、特別な中でレーニャから聞きたいもん!」
「アーシャ。この人、間違ってないよ。俺、いつでも、どこでもキミに好きだって伝えられる。桜なんかなくたって。だって、本当に、アーシャが好きで、愛してるから」
「っ!! レーニャぁ!」
 二人の間にハートが飛び交う。
(「その心変わりの早さ! なんなんっすか!」)
 饗は、ぐうううっと奥歯を噛み締める。
 我慢だ。
 ここで水をさしてみろ、この二人はまたここで立ち止まっていちゃこき始めるに決まっている!
 なんだって、こう、歯の根が浮くようなセリフを恥ずかしげもなく吐くことができるのか。
 饗とて、のろける場所ぐらいは考える。言ってもよさそうなところと、ダメそうなところの分別はできている――つもりだ。
「嫌なら早く避難するっす! 安全地帯はこっちっす!」
 二人の背を押して、ユキちゃんをちらっと一瞥――まあ、なんとかなるだろう、(バ)カップルへと意識を戻した。

「ああ!! まって、おにいさん!」
「なんっすか?」
「俺、まだユキちゃんを触りたい!」
「なに言ってるんっすか!?」
「私もまだユキちゃんと遊びたい!」
「ダメっす、ちょ、」

 饗の制止を振り切って、二人はせっかく戻ってきた道を引き返す。
「おにいさん! 桜なくても、イイけど! 桜、あってもイイよな!」
 とても良い笑顔のレフ。
「だから、それは! イリュージョンはいらないっすか!?」
「見たいけど! でも! あんまりお花に興味ないー!」
 そして、キャハっと笑ったアリーサ。
「ええええ!?」
 あんなに食いついたのに!? こンのわからずやめー!!
 こんな厄介な事件を予知したあの男に、本日の文句をぶちまけてやると心に決めた饗だった。
「もー! あのふたり! 出禁にできないんっすか!」
 ここにはいない友の名を呼び、饗は一度だけ、どんっとじだんだを踏んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

うわ。
話聞いただけで苦い顔、顔見りゃ尚の不機嫌さを隠しもせず引き摺られ
だぁれが人参じゃ!とたぬちゃんの後頭部ぺしり
あーバカップルの説得は任せるし
オレその間ウミウシちゃんと遊ンでるからぁ
とぷにぷにもにもに

ふん、たぬちゃん一匹手懐けれないようじゃ災魔のいるダンジョンなんてムリムリ
(謎理論)
つうか何度もホイホイされてンじゃないよ、終わったら呼んだげるから戻った戻った

二人を追い払ってから、必要ならウサウミウシを相手するねぇ
あー練きりみたい……(思わず口開ける)(閉じる)
いけない、食べちゃいそーだわ
悪いケドそろそろ、と【虹渡】広げ
おウチにお帰り、ダンジョンじゃなく骸の海へネ


火狸・さつま
コノf03130と

あー!あんときの…!
名前聞いた時から、そうかなって!ね!コノちゃ……あれ?もう不機嫌???
嫌そうなコノちゃんの手掴み連行しつつ
もう片方のおててぶんぶか振り振り
二人のイチャつきっぷり気にせずずかずか近寄る
久し振りだ、ね!
あれ?覚えてない?人参だ、よ!
不機嫌増したコノにぺしられつつ
あの後、氷室は行けた?
相変わらず災魔に突撃しそうになってる、けど…腕は上がったの、かな?
見切りで躱し、肩をぽんぽんっと
んーんー、少しは?
でも、まだ、彼女を護り切るには足りない、かな
だから、今回も、安全な場所でデートして、ね?


説得後ぷにぷに!
お饅頭みたい…美味しそな見た目してる、よ、ね!
少し遊んでから送る


ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ歓迎
メボンゴ=絡繰り人形

見て、メボンゴ
ユキちゃんは白くて兎みたいでメボンゴに似てるね
『仲間だねー!』(裏声でメボンゴの台詞)
一匹手に取り
ぷるぷるつるつるで可愛いなぁ
『水まんじゅうにも似てる!』
食べちゃダメだよ
『食べないよー』

などと一人芝居しながら触れ合いを楽しんだ後、白薔薇舞刃
ごめんね、ユキちゃん!
災魔じゃなかったらお友達になりたかったよ

ラブラブカップルは微笑ましい
うんうん、幸せそうだね
ラブって素敵
でもここから先には行っちゃだめだよ
災魔がいるからね
あなた達なら桜の下で愛を誓わなくてもずっとラブラブでしょ?
大事な人を危険な目に合わせては本末転倒
この場所でのデートはここまでにしておこうね




 なんとなく嫌な予感はしていたのだ。説明を聞いたときから。学生の名を聞いたときから――コノハ・ライゼ(空々・f03130)は心中、穏やかではなかった。
「あー! あんときの……!」
 ぱああっと明るく弾けさせて、声を上げたのは、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)だ。
「うわ」
 心底うんざりして、目を閉じて軽く天を仰ぐ――瞼を持ち上げれば、抜けるような空ではなく、ヘンテコな模様の描かれた天井しか見えなかったが。
「名前聞いた時から、そうかなって! ね! コノちゃ……あれ? もう不機嫌???」
 喉が潰れたように唸るコノハは、心の奥底から「関わりたくない」という態度を爆発させたが、お構いなし。さつまはコノハの手を掴み、ユキちゃんにまみれる二人へと近づいていく。
 苦い顔。渋い顔。地獄を思い出した顔――コノハの今のこの表情を説明するには、どう表現すべきか。
 とにかく不機嫌さを露呈して、イヤイヤさつまに引き摺られていく。
 あの暑かった夏の日が蘇る――それでも、彼は特段気にした様子もなく、あいているもう片方の手をぶんぶん振る。
 そうすれば、さつまの心を表すように、ふっかふかの尾も楽しげにふらふら揺れた。
「もう、なんで、そんなに嬉しそうなの……」
「だって、ふたりとも、すっごく元気そうだ、よ!」
「……人様にメーワクかけるのを元気って言わないの」
 はああ。
 コノハ持ち前の美貌が無残に崩れる――蘇るのは、散々な記憶だ。それでもさつまの手を振りほどくことはせず、イヤイヤながらも彼に連行される。
 だんだん近づいてくる、(バ)カップルのレフとアリーサ。
(「あー、覚えてるわ、そのハラ立つ顔……」)
「おーい! わあ! やっぱりそう、だ!」
 青い目はきらんきらんと輝いて、弾ける笑顔のさつまを見上げたレフの碧眼が、驚きに瞠られる。
「レーニャ、このひと!」
 レフの手を握るアリーサも目をぱちくり。
「久し振りだ、ね! あれ? 覚えてる? 人参だ、よ!」
「だぁれが人参じゃ!」
 そんな思い出させ方があるか!――すかさずさつまの後頭部をぺしりとはたく。
 ここでこの二人に忘れられたなんて言われたら、コノハはどうなっていただろう。
 仕返ししてやろうか。お前はトマトだとでも言ってやろうか。それか、ラディッシュにしてやろうか――いや、こんな子供と同じところまでレベルを落としてやることもあるまい。
 大人になれ。大人になれ――しかしだ! あんな仕打ち、早々忘れるわけもあるまいて。
 初対面で、なおかつ年下の小娘に、まさか人参呼ばわりされるなんぞ思いもしなかったのだ。しかも出会いがしらだ!
「あのときの! キレイなおにいさん!」
「っ」
 言いかけた文句が空中で霧散する。
 きょとんと目を丸めたコノハは、思わずさつまを見る。
 彼も目を瞬いていたが、すぐに、へらりと破顔した。
「よかった、コノちゃん、覚えててくれた、ね!」
「……ふん」
 キレイという褒め言葉は素直に受け取っておいても構わないけれど――
「アーシャ……、やっぱり、ああいう人が、」
「どうしたのレーニャ? そんな悲しそうな声、出さないで? 私、レーニャ以外の人なんて、みんな人参に見えるって言ったでしょう? キレイな、形のいい人参さんだよ?」
「ぶっ飛ばす……!」
「まあまあ、コノ、ほら、落ち着いて、ね!」
 くつくつ笑うさつまのしっぽも震えている。
「もう、笑ってんじゃないわヨ! 人参呼ばわりされてるのオレだけじゃないからね!?」
 それでもさつまはにこにこと笑う。文句を言いながらもその声に怒気がないのは、ちゃんと分かっている。
「たぬちゃん、パス。頑張ってね――オレ、ウミウシちゃんと遊ンでるからぁ」
 ぎろりとアリーサを一瞥したコノハは、回廊に溢れるユキウサギウミウシこと、ユキちゃんの背をひと撫で。
 薄氷が輝くような瞳がきらんと光った。ぷにぷに、もにもに。この柔らかさはクセになる!
 そんな姿に、さつまも一笑。
「あの後、氷室は行けた?」
 レフに向き直り、さつまは問う。予知されたオブリビオンはすべて排除した夏のあの日を思い返す――ふわりと蘇るのは、花蜜と桃の甘い爽やかな香り。
 レフはこくりと頷き、氷室を堪能したことを教えてくれる。それは、嬉しい報告だった。
「でも、相変わらず災魔に突撃しそうになってる、けど……腕は上がったの、かな?」
 安全になった迷宮を堪能することは、好きにすればいい。彼も彼でアルダワ魔法学校の生徒だ――無力ではない。
 さつまはとんと足を踏み鳴らす。きゅん。ユキちゃんが鳴いた。
「あら、鳴くのもかわいいじゃナイ」
「きゅん」
 もにもにもに。
「俺だって、あれから強くなった……と、思う!」
 さつまに向かって拳を握り、臨戦態勢をとり、だっと駆けてくる――が。
 その速度は、脅威でもなんでもない。床のユキちゃんに足をとられるというヘマを踏むこともなく、さつまは力強くそれらを蹴散らし、冷静にレフの足捌きを見、彼の振り上げられた手の外へ――素早く躱してしまう。
 目標たるさつまが目の前から消えて、レフは前傾につんのめった。その先にユキちゃん。
「きゅ?」
「うわああっ!?」
 きゅううっ!
 ユキちゃんの群れの上に倒れてしまう――前に、その腕を掴みぐっと踏ん張ってやる。
「あ、」
「んーんー、少しだけは?」
 強くなったと思うと、言ったレフへの返答だったが、当の少年は転びそうになっただけでなく、それを支えられてしまったことに、言葉をなくしてしまっていた。
「でも、まだ、彼女を護り切るには足りない、かな」
「でも! でもレーニャ、とっても頑張ってたもん!」
「ふん、たぬちゃん一匹手懐けれないようじゃ災魔のいるダンジョンなんてムリムリ」
 もにもにもに。きゅうん。あら、ココ? ぷにぷに。きゅきゅきゅ。
 なんてユキちゃんと戯れながらコノハ。レフがどれほど努力しようが、群を成す災魔に対抗する手立てはない。
 前回といい、今回といい――それほど危険な災魔でなかったから、運よく命拾いをしているにすぎないのだ。
 これほどの、床一面にひしめく災魔の群れに囲まれて、二人でなかよしこよしできる状況が特殊なのだ。
「謎理論かしら? でも、言い返せないでショ?」
「レーニャ、」
「けど、俺はまだなーんもしてない!」
「はい?」
「ユキちゃんをむにむに揉んだだけだし!」
 開いた口がふさがらなくなったさつまは、助けを求めるようにコノハを見る。同じようにぽかんと口を開けていたが、口の端がひくりと引き攣っていた。
「なんて、なんてわからずや……!!」
 夏はこんなことなかったのに。さつまとの実力差を見せつければ引き下がっていったというのに。

「ラブって素敵」

 そこに声が割り込んできた。
「コノさん! さつまさん! 困ってる?」
『こまってる? たぬちゃ、こまってる?』
「ジュジュちゃんじゃない!」
 ふふっと笑うのは、ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)だ。
「ジュジュ! メボちゃん!」
 きらんと目を輝かせ、尻尾をふっさふっさと振るさつまは、レフからジュジュへと視線をやった。
 よく知った少女だ。彼女の手にいるからくり人形も、よく知っている――メボンゴだ。
「ラブラブカップル、うんうん、幸せそうだね」
『幸せそうだねー!』
 白いドレスを纏う赤眼の白兎は、こくこく頷く。
「でも、あぶないことするのはだめだよ」
 美しい翠色の瞳がレフを映し、次いでアーシャを見る。
「コノさんもさつまさんも、言ってたでしょ? 災魔がいるからこの先は行っちゃだめだって」
「……あ、言って、なかった、ね」
「ちゃんと言ってなかったかも」
「えっ?……でも、迷宮は災魔がたくさんいるのは、あなた達なら知ってるよね?」
 学園にいるかぎり迷宮の噂は絶えず聞こえてくるはずだ。ジュジュは二人に視線を移して、
『知ってるー!』
 ジュジュの裏声――否、メボンゴが手を振る。迷宮には災魔が溢れていることは、誰だって知っている。
 人目を気にせずに仲睦まじく過ごせるなら、それに越したことはないだろう。しかし、場所が。こうも危険に溢れた場所であるから。
 それに――とジュジュは付け足す。メボンゴがドレスを揺らす。
「あなた達なら桜の下で愛を誓わなくても、ずっとラブラブでしょ?」
 レフとアリーサは目を合わせる。三秒沈黙。ただただ見つめ合うその時間、ジュジュは微笑ましく眺めていられたが、コノハはじたばたしている。彼の手にはユキちゃん。
「コノさんが荒ぶってる……」
「ちょっと、元気、あり余ってる、だけ、だ、よ」
 コソっとさつま。
「聞こえてるっての!」
 案外地獄耳のコノハに、ジュジュは苦笑を洩らした。
「あなたが敵わなかったさつまさんも、そこで爪を隠してるコノさんも、いくつもの死線をくぐってきたの。この二人だから、こんなに飄々としてられるんだよ」
 無害な災魔と名高いユキウサギウミウシとはいえ、ここまで増殖している――これがもし、なにかの拍子に凶暴化でもしたら、学生なんぞひとたまりもないだろうに。
 しかも、この先にはグリモア猟兵の予知にかかるほどの災魔が待ち構えてるのだ。
「大事な人を危険な目に合わせては、本末転倒だよね?」
 桜の木の下で愛を誓う? 結構。それはとてもロマンチックだ。しかしだ。それを差し引いたところで危険が大きすぎる。
 ジュジュは懇切丁寧に、メボンゴと共に二人に語りかける。
「ふたりだけ、じゃない、でしょ。ほかにも、友達だっている」
 危険な目にあって、悲しい思いをするのは、レフとアリーサのふたりだけではないはずだ――さつまの目が、少し伏せられる。
「失うのは、つらいって、前に、言った、よ――だから、今回も、安全な場所でデートして、ね?」
「この場所でのデートは、ここまでにしておこうね」
 二人の言葉に、アリーサはレフを見上げる。
「つうか何度もホイホイされてンじゃないよ、終わったら呼んだげるから戻った戻った」
 腰を上げて、尻を二度ほど叩いて埃をおとすのは、コノハ。
「春になったら、たくさん、桜を見に行こう」
「レーニャ……」
 きゅん。
「キミを失うのは、本当にイヤなんだ」
 きゅん。きゅ。
 アリーサの頬を撫でて、恋人の額に口づけたレフは、有無を言わさず彼女の手を引いて、ユキちゃんの群れの中から出てくる。
「アーシャ、キミは俺の大事な人なんだ――キミを失いたくない」
 そのまっすぐな言葉に、傍目にもアリーサが悶え苦しんでいるのが分かる。
 砂糖吐きそう。
 この甘ったるい雰囲気を一掃するのは、
『早く帰るんだよー!』
 メボンゴの声だった。両腕をぶんぶん振りまわす、白兎は先刻から表情は変わらないが、それがなおのこと、しっかりと二人の耳に届いた。


 はああ。
 やっと帰った――コノハは嘆息を隠しきれず。
「見て、メボンゴ!」
 (バ)カップルの背を見送ったジュジュは、彼女を労ってから回廊を埋め尽くすユキちゃんたちを示す。
 きゅん。
 小さくも高い声で鳴くユキちゃん。
「ユキちゃんは白くて兎みたいでメボンゴに似てるね」
『仲間だねー!』
 メボンゴの声も高くてかわいい。
 ジュジュは、ひょいとユキちゃんを一匹抱き上げる。
 思った以上に冷たい。ぷるぷるで瑞々しく、程よい弾力でもって、ジュジュの手のひらの上できゅんと鳴いた。
「ぷるぷるつるつるで可愛いなぁ」
『水まんじゅうにも似てる!』
「食べちゃダメだよ」
『食べないよー』
「でも、おいしそうでしょう?」
「うん、おいしい、か、な?」
「あー練きりみたい……」
 さきほどから思っていたが、とてもおいしそうに感じるユキちゃんを見つめて、思わず口を開け、何事もなかったように口を閉じた。
「コノさん、食べちゃだめだよ」
 くすくす笑いを零してジュジュ。
「いけない、食べちゃいそーだわ」
「お饅頭みたい……美味しそな見た目してる、よ、ね!」
「え、さつまさんも?」
「ジュジュは? 美味しそ、じゃ?」
 水まんじゅうみたいだと思ったのは、本当だ。練りきりや、饅頭にも見えるし、なんなら、ゼリーのようにも感じる。この冷たさは手のひらに心地よい。
 たくさんいるユキちゃんは、きゅんきゅん鳴きながら、人の手にすり寄ってくる。
 美味しそうだし、子犬や子猫のように可愛いし。
 しかし、これはオブリビオンだ。このまま増えられ、回廊を占拠されてしまってはいけない。
 ジュジュの手にすり寄るユキちゃんをひと撫で、もにもに揉んで。
 その感触はしっかり覚えた。
「ごめんね、ユキちゃん!」
 未練はない。ぷるぷるも、もちもちも、つるつるも、全部堪能した!
「お見せします! とくとご覧あれ!」
 芝居じみたセリフとともに現れたのは、無数の白薔薇の濁流――濃いバラの香りがむせ返るほどに立ち昇る。
「ユキちゃんが、災魔じゃなかったら――お友達になりたかったよ」
 【白薔薇舞刃】の奔流がユキちゃんを飲み込んでいく。
「悪いケドそろそろ――」
 誰よりも一番ユキちゃんを堪能したコノハは、大空に架かるはずの虹の帯を広げた。
「おウチにお帰り、ダンジョンじゃなく骸の海へネ」
 壮観な虹の束に包まれていくユキちゃんの間を、浄化の炎が駆け抜けていく。
「おやすみ」
 さつまの静かな声とともに。
 きゅんきゅんと小さな声を上げて、震えて消えていく姿にジュジュは、それでも白薔薇の花弁を操る。
 多くのユキちゃんが骸の海へと堕ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
迷宮は厳しいところです。
今までに何人の若い学生たちがアダ輪の迷宮に挑み、
そして帰って来なかったことか。

そんなところにわざわざ入って行って、桜見物とか……
もうすぐクリスマスですものね。

リア充、爆発しろ!

おっと本音が出ました。

ともかくオブリビオンと遭遇して被害にあうのはいけませんね。
その前にカップルを引き裂く……ではなく、引き離さないと。

襲ってくるユキちゃんは【敵を盾にする】したり、
ヨーヨーで撃退しつつ、カップルを部屋から追い出します。

それでもユキちゃんが追いかけてくるようならば、
UC【風舞雷花】でバリッと一掃します。




 迷宮は厳しいところだ――それは周知の事実だ。
 時折無害な――まさに眼前に広がるユキちゃんのような災魔も現れるだろうが、極悪で凶悪で凶暴な災魔の宝庫だ。
 今までに何人の若い学生たちがアルダワの迷宮に挑み、そして帰って来なかったことか。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が説明してやらずとも、レフもアリーサも心得ていただろう。
 それでも、わざわざ迷宮に入り込んで、いちゃつくとか。
 ロマンチックな噂を聞きつけて、めいっぱい謳歌しようとか。
(「まったく、なにを考えているのでしょうね」)
 この話を聞いたときに、摩那は眼鏡の奥のブラウンの瞳をそっと閉じたことを思い出す。小さくかぶりを振る。
 名状しがたくも、暗澹と沈殿するような感情がどろりと湧いた。
 季節外れの――狂い咲いた桜は、確かに心惹かれるものがある。
 カレンダーを見れば、年末恒例のクリスマスが目前に迫っている。
(「恋人がいれば、とっても、楽しいでしょう……!」)
 摩那の思いの強さに呼応するように、戛然たる靴音は高くなる。
 桜見物も!
 クリスマスの煌びやかで甘い夜も!

「リア充、爆発しろ!!」

 ユキちゃんと戯れたいと、恋人といちゃつきたいと駄々をこね、説得にやや手間取っていたが、あのカップルは帰っていった。
 それでも、摩那の本音は隙を見て、弾け出す。
 いけない、いけない。
 すっと口を噤んで、それ以上漏れ出てこないように、気を抜くとまだまだ漏れてきそうな本音のかわりに【風舞雷花】を迸らせる。
 黒く艶やかな長い髪が、花吹雪に俄かになびいた。
「カップルを引き裂く……ではなく、引き離す必要はなくなったのだから、」
 あとはこの、どうしようもなく溢れかえるユキちゃんを一掃するだけなのだ。
 こんなにも可愛らしく、ぷるぷるで、むにむにしてて、儚げにきゅんきゅん鳴いていようとも――ちょっと触ってみようかとも思ったが。
「……こんなのでも、他の学生が遭遇して被害にあわないとは限らないものね」
 きゅ。
 きゅん。
 ユキちゃんは鳴く。つぶらな瞳で摩那を見上げて、もっちもっちと分身を作りだし、わんさか増えていく。
 きゅん。
 きゅん。
「可愛いのよ。ええ、とても、可愛いですけどね!」
 もっちもっちと増える。
 ぷるぷると体を震わせて、七色の雷花に焼かれていく。その数多の姿は憐憫を誘い、実に心苦しいが、そんな甘言に酔うつもりはなくて。
 彼女の手に舞い戻ってくる花弁は、雷花を纏い素早く形を作っていく。幾重もの花びらの奥から顕れるのは、《エクリプス》――先の戦争で手に入れた謎金属製で超頑丈なヨーヨーだ。
 ユキちゃんは、まだひしめき、白で回廊を埋める。
 摩那の足元にいる群をヨーヨーが横薙ぎに舐めて、押し返す。もっこもっこと増えるが速いか、摩那がもう一度花弁の嵐を巻き起こすが速いか――
 激しく雷花が閃き輝き、煌然と燦然と、赤く蒼く、黄金に。
「散開!」
 散れ。
 花弁となって。
 骸の海へ。
 摩那のこのもやもやした思いも一緒に。
 高電圧を纏い、バチバチと雷花は虹を放ち、花弁は舞い踊る。
 放出されるプラズマは、聖夜に煌めくイルミネーションのように迷宮を彩った。
 きゅん、きゅ。きゅん。
 儚く鳴くユキちゃんの声は、だんだん少なくなる――消えていく。
 赤縁の眼鏡のブリッジを押し上げて、摩那は、最後のユキちゃんを見つめた。
 ぷるぷると震えて、じっとこちらを見上げてくる。
「そんな目で見たって、ダメですよ」
 だって、あなたは、災魔だから。
 美麗に、苛烈に、雷電が奔り迸り――そうして、最後のユキちゃんが回廊から姿を消した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マダム・プディング』

POW   :    ア・ラ・モード!
【焼きプリンの魅力】【生クリームの魅力】【新鮮フルーツの魅力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    おやつの時間よ!
【巨大なフルーツやプリンの塊】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ほぅら、いい香りね?
【勢いよく開いた日傘】から【抗えぬバニラの芳香】を放ち、【香りに陶酔させること】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサヴァー・リェスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●マダムと生クリーム
 ユキウサギウミウシのユキちゃんの大群は失せた――この先のフロアが、問題の狂い咲いた桜がある場所だ。
 無駄に重厚な彫りものがされた観音開きのドア。そのど真ん中に、巨大な円の中に『甘』という字が象られていた。
 このドアの奥にいるのが、グリモア猟兵が視て感じた――桜吹雪を纏い、甘ったるいバニラの匂いを撒き散らすオブリビオン。そして、なぜが大量の生クリーム。
 行き着いた猟兵は、その扉を押し開けた。
 果たしてそこは、春に満ちていた。
 言葉を失うほどに咲き誇った桜の大樹が一本、フロアに生えている。
 はらりはらりと舞い散る桜色の雪は、筵を広げる。そうして点在するのは、場違いな生クリームが盛られた皿がひしめくテーブル。
 彼が「へんなの」と称した意味は、よくわかった。変であることが、よくわかった。

「いらっしゃーい!」

 桜の樹の蔭から現れたのは、インパクト抜群な、美味しそうなプリン。
 頭のプリン、色とりどりの季節のフルーツ――今はイチゴに加えてカキやミカンの襟巻が豪華に飾り立てている。
 可憐なレースの日傘をとんと地につけて、もう片方の手には、最大の違和感たる、パイ皿。
「さあさあ、みなさーん! わたくしとスウィートでシュエットな時間をすごしましょう!」
 おほほほ!
 上品を気取った笑い方をする彼女は、手始めにその手のパイ皿を投げてきた。
「そぉれ!」
 猟兵にひょいと躱されてしまったパイ皿は、地にべちゃあっと広がる。
「そのパイ、とってもおいしかったのよ?」
「食うわけないだろ!」
「まあ! 辛辣! なら次はあなたのお顔にべっちゃりと」
 甘味で魅惑な夫人は新たな皿を持つ。
 ファニーでデリッシュゥな時間が始まった。

「さあさあ、たーんと召し上がれ!」



▼マスターより
大変お待たせいたしました。
当シナリオにおいて、『マダム・プディング』はマダムと名称を短く描写します。プリン頭とも呼ばれるかもしれません。
使用ユーベルコードを発動しながら、パイ皿を投げてきます。ユーベルコードを使わないときも投げてきます。常時投げる準備はあります。
テーブルの上には、投げても投げてもなくならないほどの大量のパイの用意があります。
これらは三章にて使用しますので、破壊しないでください。お願いします。
また、パイを投げるだけではマダムは倒せません。今はまだパイを投げる時ではありません。
温存しておいてください。
でも投げたくなったら投げていただいて構いません。活性ユーベルコードを使いながらパイを投げる感じに描写します。
パイだけ当たっても特になにもないです。ちょっと楽しくなるだけです。

プレイングは、【12/13(金)8:31~】受付を開始いたします。
のんびりペースで大変申し訳なく思いますが、なにとぞご容赦ください。
みなさまのプレイングを心待ちにしております。
護堂・結城
え?投げてもいい?じゃあ遠慮なく

俺は今からこのパイを『全力で投擲する』
つまり、もはやこれは、武装だ(断言)
……イイネ?

【POW】

戦闘開始とともに【ダッシュ・早業】で両手にパイを取り指定UC発動
複製増殖させたパイに雷撃を纏わせ【属性攻撃】

そのまま【怪力・念動力】でプリン頭目掛けて全力の【投擲・一斉射撃】

雪見九尾の獣皇咆哮、改め、白泡崩攻(ホイップシャウト)とでもいったところか
合計290個のパイ(とついでに雷撃)を存分に 召 し や が れ !!

よし、すっきりした
……から【目立たない・迷彩・忍び足・ダッシュ】で一気に近づき氷牙の大槌を叩きつける【暗殺】

色気より食い気、食い気より遊び心だ




 甘い香りは桜の香りを打ち消す。
 せっかく見事の狂い咲いた桜が台無しだ。
 そんな中を駆け抜けて、いち早くテーブルの前まで移動、尾をふらふらと揺らした護堂・結城(雪見九尾・f00944)は、たんまり並べられ、こんもり盛られた生クリームの皿を眺める。
「ンまあ! そんなにソレが気になるのね!? 投げてみても良くってよ!」
「え? 投げてもいい?」
「おほほ! わたくしに当てる自信がおありなのね!? わたくし、こう見えて逃げ」
「じゃあ遠慮なく」
 最後までマダムの言葉は聞いてやらん。オブリビオンの言葉に意味はない――そう、このパイ皿の前では、どんな言葉も意味を成さない。
 さっと一皿ずつ両手に持ってマダムと対峙。
「俺は今からこのパイを『全力で投擲する』!」
「シュエット! ではわたくしも、そんなあなたにお応えしないといけませんわね!」
 いやに好戦的にノッてきたマダムの手には、日傘とパイ。
 対する結城は、パイ皿二枚。
「つまり、もはやこれは、武装だ」
 この場における、正式な装備だ。これがなければ始まらないし、終わらない。
 
「……イイネ?」

 美味しそうにテカリだすプリン頭。
 なるほど、美味しそうなるというのは、プリンの攻撃力が増したと言っても過言ではない――か?
 よくわからんが、きっとなんやかんやでプリンのおいしさがアップしたのだろう。
 あの頭、今食ったらきっとうまいだろうな――つやつやのみかんも、ぴかぴかのいちごも、旬でない桃(きっと缶詰)すらも、うまいだろうな。
 花より団子。食い気が勝る結城は、マダムの投げたパイ皿をひょいと躱す。
 べしゃあっ。
 花筵を白く染めて、生クリームが派手に散った。
「そんなもんか」
 ふんと鼻を鳴らして結城は、にやあっと笑う。
 手の中の皿がもこん、もこんと増えていく。合わせ鏡に映されたように。結城の生み出す力場に支えられて空中に浮くパイ皿。
「おまちなさいな、なっ、ええ!? なんですか、」
「白泡崩攻(ホイップシャウト)とでもいったところか」
 にっこりと、邪気満点に笑む結城は、一皿一皿すべてに雷花を纏わせる。
 【雪見九尾の獣皇咆哮】改め、白泡崩攻(本日に限り)はマダムの反応を無視して、容赦なく展開した。
 その数、実に290個。
 圧巻のパイ皿! しかもぜんぶビリビリしている!

「存分に 召 し や が れ !!」

 響き渡るのはマダムの悲鳴と、愉快でたまらんと結城の笑い声。
「ずるいわよ!」
「知らーん!」
「ひっ! ヒトデナシ!」
「外道に何を言われても知らんな!」
 わははっ、さあ味わえ――マダムに降り注ぐ大量のパイ!
 真っ白になっていくマダム。
 クリームにクリームが重ねられて、ビリビリと感電していく。
「よし、すっきりした」
 ホイップの塊になったマダムから、上品さとあかけ離れた悲鳴が上がった。
「いたたたたっひゃあああ、あ、ああ? あ! ううん! デリッシュゥ!!」
「食ったのか」
 思わずツッコミがもれてしまった。が、結城の声をマダムは聞いていなかったようで返答はない。
 どべしゃあっとホイップを落として、再び姿を現したマダムはうっすらと生クリームを纏って、やや白くなっていた。
(「牛乳プリン……」)
 ふと思ってしまった結城だったが、今は、食うより遊びたい。
 あの真っ白になったマダムの姿はなかなかに痛快だった。
 食い気に走るのはもう少し遊んだ後でも良いだろう。
「うふっ、わたくしもしたいわぁ! あなたのお顔にべっちゃりと!」
 びゅんっと飛んできたパイ皿が眼前に迫る――が、それを結城はパイを投げて相殺!
 飛び散る生クリーム、そして自由落下。
 べちゃ。
「甘い……甘い!」
 ホイップも! そして結城の顔にパイを投げつけようという考えすら!
 しかし、あの、ホイップ怪人となったマダムの姿を思い出し、くふっと喉の奥で笑いが溢れる。
「甘い? それってとってもデリッシュゥじゃなくって!? そぉれ!」
 マダムから再投擲されたパイを難なく避け、降り続く桜の花びらを巻き込んで、結城は駆ける。
 その手には、いつの間にやら握られた、凶悪な大槌と、パイ皿。
 上体を屈めて背後へと回り込む――その瞬間、すれ違いざまにプリン頭へとパイを押しつける!
「へぷぁ!?」
 へんてこな声が漏れたマダムの背へ、渾身の力を込めて槌を振り抜く!
 吹っ飛んでいったマダムから注意を逸らすことなく、それでも彼の頬には笑みが刻まれたままだ。
「まだまだ真っ白にしてやる」
 言った結城は、テーブルに戻りパイを補充。
 色気より食い気、食い気より遊び心に満ち満ちている結城は、討つ気はあるものの、あの爽快で愉快な一瞬をもう一度味わうべく、手のひらに皿を乗せた。
「もう少し付き合ってもらうぞ!」
「おほほほ! のぞむところですわ! でもさっきのビリビリは遠慮するわ!」
「問答無用!」
「ひっ」
 そうして、マダムを覆い尽くすは、二度目のパイの大雨。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
たーんと召し上がれ、とは言うものの、その意味は絶対に違いますよね。

メガネにパイが当たるとか、マジ最悪です。
当たるわけにはいきません。

投げられたパイは【第六感】とスマートグラスのセンサーで全力回避。
さらに【念動力】で軌道を逸らして避けます。

投げられっぱなしでは、せっかくのパイも無くなってしまいます。

ルーンソードで反撃します。
UC【トリニティ・エンハンス】の【水の魔力】で刀身を冷やして、攻撃力を高めます。

フルーツやプリンは冷やした方がよりおいしいと思うんですよね。
ソードに付いたクリームをひと舐めして味わいます。




(「コレと戦うより、さっきのリア充をどうにかする方が、簡単だったんじゃないでしょうか」)
 なんとなく。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)的に。
 なんとなくだ。
 大量のホイップにまみれてなお楽しそうに、すごくウキウキと、軽やかにドレスの裾を翻しているマダムは、腕に日傘をかけて、いよいよ両の手のひらにパイ皿をのせている。
「おほほほ! あなた見て! にとーりゅー! たんと召し上がってねえ!」
「たーんと召し上がれ、とは言うものの」
 ぼやく摩那。
「その意味って、絶対に違いますよね」
「あら、そんなことはなくってよ!」
 お上品に口を窄めて笑ったマダム――口がどこかはさておく――は、さっそく左のパイ皿を掲げる。
「さあさあ、よぅくご覧なさい! とぉっても、おいしそうでしょう!?」
「冷やしたらもっと美味しくなると思いますよ」
「シュエット! それもとってもデリッシュゥな予感ね!」
「だったら、大人しく斬られなさいな!」
 魔水の力を纏った刀身は、キンと霜が降りるほどに凍えていく。
 メガネにパイが当たって真っ白になるとか、本気で勘弁してほしい。
 絶対に嫌だ。
 マジで最悪。
 考えただけでもぞっとする。
 なんとしても当たるわけにはいかないのだ。
 マダムは【ア・ラ・モード!】のせいで、とっても魅力的に――美味しそうに輝きを増し艶めく。
 食欲を刺激するような芳しいバニラの香りは強くなり、ぴかぴかに光る。
 ものすごくおいしそうに見える。
 雑誌に掲載される物撮りレベルの、写真映え必至な完璧なプリンだ。
「……それは、固くなったのでしょうか、それか、攻撃力が高くなったのですか?」
「ふふふ! デリッシュゥになったのよ! おほほほほ!」
 だからどうなったんだ!?
 圧倒的にマダムへのツッコミが足りない中、摩那はきゅっと唇を引き結び、《緋月絢爛》の柄を握り締める。よく手になじむ。摩那の魔力が伝播して、ルーン文字は煌めく。
「……まあ、答えがなくてもいいです。メガネが無事で、あなたを葬ることが出来れば」
 桜が吹雪く中で飛んでくるパイの軌跡が視える――摩那のメガネがきらんと光る。
 第六感が冴えわたる――そうして、振り上げた細剣によって両断された。その飛沫さえ摩那にかからないよう、魔力の磁場で軌道が歪められる。
「んもう! 楽しみましょう! おいしくなーれ!」
 ちょっとオコなマダムは、ドレスをひらり、まさかの隙のない投擲フォームで、右のパイをぶん投げる!
 白の軌道――それを摩那は横っ跳びにして躱し、その勢いを殺さず駆けだす。
 なくなりはしないだろう量のパイ皿がテーブルに並べられているとはいえ、マダムに投げられて、数が減っていくというのもまた事実。
 今、確実に二枚のパイが、べしゃあっと花筵を汚しただけの、少しもったいないことになっている――先の戦いの分はノーカウントだ。
 しかして、摩那には、パイを有効に使ってやる――摩那の顔で受け止めてやる義理はない。
 せっかくのパイがなくなることも、数を減らすこともごめんだ。
 こんな、ワケのわからん状況を楽しむオブリビオンなんぞ、さっさと退治するに限る。
 霜が降りるほどに凍てつく刀身は、その温度をぐんぐん下げ、魔水はやがて魔氷へと変じていく。
 両手がからっぽになったマダムへ肉薄。
 しっかと握っていた《緋月絢爛》で斬り上げ、転瞬、縦一文字に斬り下ろす!
 斬られた空気は凍りついて、煌めく軌道を描き、マダムの傷も凍りつき、俄かにプリンが震えるのをやめる。
「ひゃむい……」
 かちかちと震える――プリンのあの弾力のある柔さは姿を変え、ぷるぷるではなく、凍えてかちかちだ。
「さっきも言いましたが、」
 ブリッジを押し上げ、刀身を見る。
 そこには生クリームがついていた。鎬地に指を這わせ、すくい取った。
「フルーツやプリンは冷やした方が、よりおいしいと思うんですよね」
 ぱくり。
 みかんといちごの切れ端が、生クリームと一緒になって味わえた。
「――!!」
 なんだ、この甘いながらも優しくあっさりした味わいは――摩那は目を瞠った。
 絶妙な甘みではないか、これを投げまくっているというのか、このバカタレめ!
「どうかしら、とってもデリッシュゥなお味でしょう!?」
「ええ、とても。そう……これは、本当に、なんで、投げつける必要があるのでしょうか」
「それはね、パイだからよ!」
「答えになってませんが!」
「それじゃあ……当たれば天国! 当てられても天国! それって、とぉぉぉっても! シュエットでしょう!?」
「なんでどっちも天国なんですか!」
 ああ、なんて不毛な会話…!
 ぐううっと喉の奥で唸る。摩那の苦悩を意に介さず、マダムは、冷えた体はとけてきたのか、ぷるぷると頭を揺らす。
「それってとっても、シュエット……どうして普通に食べるという選択肢を用意しなかったのですか!」
「面白くないじゃないの、あなた、なにも分かってないわね!」
「頭がプリンのあなたに言われる筋合いありません!」
 反射的にツッコミ返して、摩那の凍れる一刀が、飛来するパイを退け、その奥のマダムの柿を斬り落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
【人参】
チーム人参結成ー!
なんかどつかれたけど気にしない!

わわ、凄く、あまぁいにおい!!
でも、押し付け良く無い!
俺達人参が相手になr(どつかれた)
ハッ!そか!綺麗なにんj……(どつk)

コノのプリン?!
絶対美味し、よ!!
一緒、食べよ、ね!
楽しみ!!!

じゃ、ちゃっちゃと片付けなきゃ!
美味しく焼いたげる!

【燐火】の炎の仔狐達わらわら嗾けて
パイは見切り躱すかオーラ防御で弾く

こんがりとフランベして、ね!
コノのフライパンへ炎の仔狐群がらせ
<雷火>の雷撃範囲攻撃で援護射撃

メボちゃんがキャッチ出来る分のパイのみ通し後は叩っ斬る!
淑女達に傷一つ、クリームひと匙たりとも付けさせやしない、よ!
邪魔しない範囲でかばう


ジュジュ・ブランロジエ
【人参】
どつき漫才に笑って拍手
人参、可愛くていいと思うよ

わあ、美味しそう!
なんだかプリンが食べたくなっちゃった
コノさんの作ったプリンも美味しいんだろうな~(チラッ)
わーい、楽しみ!コノさんのプリンはきっと世界一だよ!
『コノちゃのプリン!たぬちゃ一緒に食べようね!』(裏声でメボンゴの台詞)

じゃ、マダムにはご退場願おうか
学生さんが犠牲になったら困るからね
ワンダートリート二回攻撃
楽しい空間に相応しい楽しいショーを

投げられたパイは見切り&武器受け活用しメボンゴでキャッチ
投げられたら投げ返す……パイ返しだ!

はっ、焼きプリン……!
『メボンゴも焼くー!』
衝撃波(メボンゴから出る)に炎属性付与

庇われたらお礼を


コノハ・ライゼ
【人参】
人参と聞く度にたぬちゃの頭どついとく、とりあえず

わ~~あ、(美味し……そう……?)
え、やだオレの作るプリンはもっと美味いし綺麗だって!
帰ったら違いってヤツを見せたげる

【震呈】発動
飛んでくるパイは『見切り』避けてから呼び出したフライパンで受けるヨ
たぬちゃんちょっと火ィかして、と火力に炎を足してもらって
しっかり熱してからお返しするヨ
あっつ~い(そしてでろでろの)パイを召し上がれ!ってネ
『2回攻撃』で『傷口をえぐる』よう熱いフライパンをもう一度お見舞い

恨みはないケド……あ、いやあるかな
テメェがいなけりゃあのバ……生徒も危険な目に遭わねぇ訳で
つまり許すまじ!




 桜は時雨れる。それでも樹は裸になることはない。
 その中で、なんとシュールな出で立ちか。
 頭がプリンで、首には季節のフルーツとホイップ、ロングドレスの裾にすらホイップのようなフリルをあしらう力の入れ様。そして手には、可憐な日傘――なのに、もう片手には、クリームがこんもり盛られた皿。
 扉を開けて、まず目についたのは、そんなマダムの姿と桜だ。
 しかし。
 その姿は、あっという間にホイップにまみれたし、ざっくりと斬られてしまっている。
 それでも、フロアに充満するバニラの香りは衰えることを知らない。
「わわ、凄く、あまぁいにおい!!」
 火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は、紺碧の瞳を丸めて、改めて深呼吸。
 甘くておいしそうなオブリビオン――マダム・プディングは実に甘いにおいで、実に愉快な姿で、さつまの尾は楽しげに揺れている。
「でも、押し付け良く無い!」
「どうして? 楽しいことはなんでもシェアする時代なんでしょう? わたくし、知ってるわ!」
「楽しいことは、シェア……」
 それは、そうかもしれないが――と思いかけて、さつまははっとした。
「楽しい、こと!」
 ちらと視線を送る先は、コノハ・ライゼ(空々・f03130)。そして、彼の隣で、メボンゴ(からくり人形たる白兎)のスカートの裾の皺を気にするジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)だ。
 楽しいことは、シェア!
 さっき楽しかったことも、仲間とシェア!
 なんてステキなアイデア――頭の中にあるのは、形がきれいな人参。

「チーム人参結成ー! いてっ」

 振り返れば遠くを見るコノハ。
 くすくすと笑い声を我慢するジュジュ。
 どつかれたらしい後頭部をなでなで、気を取り直して、大きな耳をぴんと立てる。
「俺達人参が相手になr、いてっ」
 またどつかれた。
 振り返れば、目を合わそうとしないコノハ。
 いよいよ酸欠になりかけてるジュジュ。
「ハッ! そか!」
 配慮が足りなかった。そう、ただの人参ではないのだ。あの子が言ったのは――
「綺麗なにんj、いてっ」
 またまたどつかれた。
「あははははっ」
 我慢できずにジュジュは吹き出し、声を上げ笑って、拍手を送る。
「おもしろーい!」
『コノちゃも、たぬちゃも、じょーず!』
 裏声で話すはメボンゴ。彼女もまた手を叩く。
「とりあえずね。とりあえず、なんか、いくらたぬちゃんとはいえ、どついとかないといけないじゃナイ?」
 しらーっとした目で、明後日の方を向いて、さつまとは目を合わせてやらないコノハの手には、ぎらんと輝く大きめのフライパンがすでに握られている。
 しかし、そんなこと気にも留めないさつまは、にこにこと笑み、ふっかふかの尾は変わらず楽しげに揺れていた。
「あー! 笑った! 人参、可愛くていいと思うよ」
「ジュジュちゃーん?」
「はーい!」
 おどけて返事をしたジュジュににっこり笑んでコノハ。
 もういいわヨ、好きに遊んでなさいよ――別に拗ねたわけではないが、二人が楽しそうにしてるなら、いや、でもチーム人参はやめてほしい。なんで結成したし!? オレ、同意したかね!? 怒涛のツッコミが渦巻くコノハの脳内に鮮烈だったのは、唐突に投げられたパイ皿。
「うふふふ! わたくしとも遊んでちょうだい!」
 ひゅんっと飛来、しかし誰に当たるでもなく、べしゃあっと飛散した。
 いつの間にやらぴっかぴっかの、てっかてっかで、きらっきらにパワーアップしたプリン頭を見て、
「わ~~あ、」
「わあ、美味しそう!」
(「美味し……そう……?」)
 げんなりして、思わず声が漏れてしまったコノハを遮って、ジュジュの嬉々とした歓声が上がった。
 美味しそうか。
 まあ、美味しそうか。
 それでも、アレはオブリビオンで、なんだかとっても面倒くさそうな性格をしているように見受けられる。
「なんだかプリンが食べたくなっちゃった。コノさんの作ったプリンも美味しいんだろうな~」
 チラッとコノハを仰ぎ見るジュジュの翠の視線に、彼はふふんっと笑って見せる。
「オレの作るプリンはもっと美味いし綺麗だって!」
「コノのプリン?!」
 盛大に反応したのはさつま――の尾。
 びびびっと電気が走ったように力強く震えて、ぼわんと膨れた。
「絶対美味し、よ!!」
 料理上手な彼の手から生み出されるプリンを想像するだけで、垂涎ものだ。
「わーい、楽しみ!」
「……帰ったら違いってヤツを見せたげる。帰ったらよ、帰ってから!」
 はーい!
 なんて良い返事をしたジュジュとさつま。
「コノさんのプリンはきっと世界一だよ!」
『コノちゃのプリン! たぬちゃ一緒に食べようね!』
「一緒、食べよ、ね!」
 はわわわっと心を躍らせるさつまは、「楽しみ!!!」と気合を入れた。


「コノちゃん! こんがりとフランベして、ね!」
「はいはい、わかってるわよ」
「はっ、焼きプリン……!」
 なにそれ、その発想ステキ!
『メボンゴも焼くー!』
 かたかたっと操られるメボンゴは、可憐な両手をマダムに向かって突き出す。
『やーきーぷーりーんー!』
 カッっと撃ち出された衝撃波は灼熱を纏ってマダムに吸い込まれていけども、彼女の放った高速の投擲パイが真っ黒に焦げただけに終わり、あまつさえ時間差でもう一投してくる!
 もりもりに盛られた生クリームの皿だ。ヒットしたところでダメージにならないらしいが、それでも、それはジュジュの心を大きく削り取る攻撃に違いなくて。

『そうならないためにキャッチー!』

 しゅぱ!
 くりくりくるんとメボンゴの腕が回ったかと思えば、そのパイの勢いは失せて彼女の腕の中でおとなしくなった。
『コノちゃ、つかまえた!』
 メボンゴはそっとコノハへとその皿を進呈。
 コノハはコノハで【震呈】にて召喚済みのフライパンへ、そのパイを入れた。
 さらに美味しそうなフルーツやプリンの塊が飛んでくるが、それはさつまの《彩霞》によって叩き斬られ、どれもが地に落ちた。
「淑女たち傷ひとつ、クリームひと匙たりともつけさせやしないよ」
「さつまさん、ありがとうございます」
 礼を述べたジュジュへさつまは一笑。これくらい朝飯――否、デザート前だ。
「んんん! シュエット!」
 しびびと痺れたように身震いしたマダムは、テーブルからさらにパイ皿を補充。
 その隙に、
「たぬちゃんちょっと火ィかして」
「わかった、よ――」
 愛らしい仔狐たちがひょこひょこ跳ねながら、コノハのフライパンの周りを飛び回り、フライパンを温め、《雷火》の追加の火力によってぐいぐい温度はあがっていく。
 そこへ取り出だしたるは、やっすいブランデー!
「なにをしているの?」
「んー? フランベ?」
 ごわぉっと炎が上がる――バニラに負けず劣らずの芳醇な香りが立ち昇る。
「しっかり熱してからお返しするヨ」
「わあっ! コノちゃ、すごい!」
「コノさん、カッコいいです!」
 ふふんと鼻を鳴らすコノハは少し上機嫌になって、めいっぱい熱されたフライパン(鈍器)を振りかぶる。
「あっつ~い! むしろでろでろのパイを召し上がれ!」
「え、え、え!? ぎゅえあ!?」
 ヘンテコな悲鳴を上げて、頭からフライパンの中のでろでろに溶けた元パイをぶちまけ、さらにその上からフライパンを押しつけじゅわっと焼く。
 焼かれたプリン。
「おおお! コノさんの焼きプリン!」
「違うって! もっとちゃんとしたプリンだから!」
 どつきあうことはないが、笑いあって。
「じゃ、そろそろ、マダムにはご退場願おうか! 学生さんが犠牲になったら困るからね」
 このボケツッコミが支配する楽しい空間をさらに盛り上げるのは、マダムがテーブルに近づくのを阻止したナイフ、そうしてマダムの頭上から山盛り落とされる紙吹雪は視界を奪い、とどめの菓子がぐさぐさとフルーツやらプリン頭に突き刺さる!
 大きくよろめいて、大量の紙吹雪に驚きもんどりうって倒れ込んだところへ、ぶすっぐさっと、容赦なく菓子の襲撃によって、雑なパフェのようになったマダム。
「……なんか、ほんと、おいしくなさそうね」
「さっきはすっごく美味しそうだったのに」
 コノハはため息を隠せず、ジュジュは首をひねる。
「プリンだから、おいしいと、つよいの、か、な?」
 自信なさげにさつまも首をひねってみたが、もう考察してやるのも面倒だ。
「恨みはないケド……あ、いやあるかな」
 コノハは即座に否定。
「テメェがいなけりゃあのバ……生徒も危険な目に遭わねぇ訳で――」
 つまりはコノハがもう一度人参なんて呼ばれることもなかったし、人参を冠するチームを結成することもなかった。
 チームを組むことに不満はない。名前は心底気に入らない。
 もっとあるだろう、たぬこのじゅ、とか? ウサギとタヌキとオオカミ……――なんか、イイ感じのチーム名を考えるには、やや時間が足りないが、人参よりももっとイイ名前があるはずだ!
 なにが気に入らないって、トラウマだし!
「なんのお話かしらぁ?」
「とどのつまり、許すまじってこと!」
「んまあ! なんだかヤツアタリ!? リフジン!」
「黙ってなさい!」
 高温に達したフライパンを思いきり振り抜いて、そのプリン頭をじゅううっと焼いてやった。
「あちゃちゃ! わたくしを焼いてどうするおつもりー!?」
「あなたは食べられるの?」
 ジュジュの真剣な声に、マダムは押し黙った。
「あ、もう一回パイを投げるのかな? もう一回メボンゴがキャッチできたら、今度は――投げられたら投げ返す……パイ返しだ! ってやりたい! あのちょっと独特な感じで!」
「わたくしとパイを投げ合ってくれるのね!? おほほほ!」
 マダムにはパロディが伝わらなかった!――少ししゅんとしてジュジュ。
「投げあわない、よ」
 さつまの意のままに動きまわる仔狐たちが、マダムのまわりをわらわら駆けまわる。そうすれば――青き炎が猛然と踊り、マダムの悲鳴は火勢の奥から細く聞こえた。
「だって、ちゃっちゃと片付けなきゃ! パイ投げてる、ひま、ない! 俺も、美味しく焼いだける!」
 黒い雷が奔る――【燐火】の青い炎は勢いを弱めない。
「コノちゃんの! プリン! 食べたい!」
 さつまに同意を表明するジュジュとメボンゴは大きく頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

香神乃・饗
たーんと召し上がれ!じゃないっす!
俺、顔を汚したら怒られるんっすよ。
ふきふきして貰える場所まで行かなきゃならなくなるんっすから!
当てないで欲しいっす!
香神写しで武器増やし、
苦無を盾にして逃げ回るっす!

巨大なフルーツやプリンの塊って食べられないんっすか?
美味しかったりするんっすか?
良い感じに切り刻んでタッパーで受け止めておくっす!
豪華なおやつが出来たっす!後で一緒に食べるっす!

桜の花びらという地形を利用してフェイントをかけ隠れて死角から近づき
剛糸で締め、苦無で暗殺を狙うっす

テーブルは荒らさないように気をつけるっす
後で誉人と遊ぶんっす!
剛糸で縛って投げられないように出来ないっすか?




「ううっ、わたくし、召し上がれと言ったけれど、まさかわたくしを食べにくるなん……ハっ! 通じていなかったのね!」
 焦げたカラメルの甘い香りを撒いて、肩を震わせたマダムは香神乃・饗(東風・f00169)へとびしっと指をつきたてる。

「おほほっ! そこのあなた! あなたこそ、わたくしのパイを! たーんと召し上が、」

「たーんと召し上がれ! じゃないっす! それと指差すなっす!」
 挨拶がわりに苦無が奔る。突き刺したのは柿。剛糸に括られてあるソレは、あるじを見失うことなく戻ってくる。
 そこここに備え付けられているテーブルには掠らないように、巧みに操る。
「わたくしの柿を! 柿泥棒さんね!?」
 ぷるるんと頭のプリンが揺れた。
 魅惑のバニラが香り立つ。
「人をコソドロみたいに言わないでほしいっす!」
 柿なんぞうちに帰れば山ほどあるが、饗はそれを一口食う。しゃくっと小気味よい歯応えに、「あれ、なかなか美味いっすね」と舌を巻いた。
 違う違う、そうではなくて。
「俺、顔を汚したら怒られるんっすよ」
「あら、そうなの? たまには汚れて帰ってもわんぱく坊やに思われるだけでしょう?」
「イヤっす」
「まあ! オトシゴロね!?」
 おほほ、うふふと笑うマダムに、話は通じている気配はなくて。
「ふきふきして貰える場所まで行かなきゃならなくなるんっすから!」
 汚して帰ってみろ。どんなふうに怒られるだろう――あ、それはそれで面白いかもしれない。
「いやいや、やっぱり当てないで欲しいっす!」
 饗は即座に考え直す。怒られるのは勘弁だ。
 それにしてもと、黒瞳はきらんきらんと輝いて、マダムの頭や首元のフルーツに釘づけだ。
「ふふふ、だったらちょっとだけ、味見だったらどうかしら?」
 ひゅんっと投げつけられるフルーツとプリンの塊に隠れるように、隙なく仕込まれたのは、むろん白い皿。饗の顔を狙って飛来する。
「味見もなんも、さっきのと一緒じゃないっすか!」
 苦無をずらっと並べて盾のように展開、そうして迫りくる生クリームのパイごとフルーツを防ぐ――サクサクっと苦無に果物が刺さっていく。
 べしゃあっ。
「ンまあ! もったいない!」
「ならなんで投げるんっすか!」
「おほほほほほ! あなた、とってもシュエット!」
「意味がわかんないっす」
 もー! ツッコミがおいつかないっす!
 よく分からん言葉を使ってくるプリン頭へ、六十に近い苦無が飛び交う。
 問答無用でマダムを切り刻み、こちらへ放たれる美味しそうなものを受け止めていくが、饗の目には、どうしたって、これがただの攻撃には見えなくって。
「このフルーツとか、プリンの塊って食べられないんっすか? こっちも美味しかったりするんっすか?」
「とーっても、デリッシュゥよ! ふっふっふっふっ! こっちのパイも、とーっても、」
「あ、ちょっと待つっす、もうちょっとっす」
 またもやパイを投げつけてきそうだったマダムへ向かって、待て、と手のひらを向ける。
 苦無に突き刺さっている、いちごやみかん、柿にバナナ――それを丁寧にタッパーに詰めていく。
 彼に素直に従うマダムもまた、テーブルから皿を補充する。今投げてしまったから、手は空っぽなのだ。
(「剛糸で縛って、投げられないように出来ないっすか?」)
 テーブルと皿を剛糸で縛り上げることができれば、アレを投げられずに済むかもしれない。
 このフルーツ盛り合わせ(お土産)の準備が終わったらやってみよう――なんて饗が考えてるのを知ってか知らずか。
「ほほ! あなた、ご覧になって!? 増やしてみたの!」
「楽しそうっすね!?」
 皿にもりもりっと生クリームを追加して山にしたマダムのご機嫌な声音に、饗のツッコミは加速する。
 普段のおとぼけも顔を出せないほどの、ツッコミどころ満載なマダムに、饗もぐうっと唸った。
 そうして解き放たれた果物とプリンと生クリームの波状攻撃。
「くうっ、惑わされたっす!」
「ほほほ! 楽しんでいるのね!? わたくしも楽し、」
 しかし、考えようによってはこの攻撃、おやつが増えるだけなのでは?
 美味そうなフルーツとプリンの塊が遠慮なく押し寄せてくる!
 饗を護るように展開する苦無によってまたもや、良きサイズにカットされていくフルーツは、饗の念動力に操られ、タッパーへ飛び込んでくる。

「ふおおおお!! 豪華なおやつが出来たっす!」

 見ろ! この超絶豪華なフルーツ盛り合わせと、カラメルがたっぷりと絡んだプリンの切れ端がずっしりと詰まったもう一つのタッパーを!
「後で一緒に食べるっす!」
 ほくほくと蓋を閉めて、テーブルの上に置いておく。後ほどここに生クリームを垂らして、食ってやるのだ。
「誰と? ねえねえ、誰と食べるのかしら?」
「ええ? 教えないっすー」
 そのかわりに――
 精悍な頬に刻んでいた笑みがふっと消え、黒瞳の鋭さが増す。
 瞬間。
 視界を覆い尽くすほどの桜の花びらが降り注ぐ。その桜花に紛れ、一足のうちにマダムの背後へと回りこむ。
 舞い散る花が隠すのは、饗の剛糸だ。
「お前を討つっす」
 マダムの首という首を締め上げ、背を蹴倒し、自由を奪う。彼女が動けば、新たなる魅惑のバニラの香りが鼻腔をくすぐった。
 たまに香る分には気にならないが、こうも頻回にバニラを撒き散らさせると、さすがに辟易する。
「後で誉人と遊ぶんっす」
「それよりわたくしと遊んでちょうだ、ぎええ」
「御免被るっす!」
 やたら嬉しそうに、「パイ、投げて遊ぼォぜ」とウキウキしていた相棒と一緒に遊ぶためには、このプリンおばけを骸の海にまで突き返さなければならない。
 おやつも出来た。テーブルの上のパイ皿はまだまだ十分すぎるほどにあるし、壊れたテーブルはひとつもない。
 桜が吹雪く。
 【香神写し】で増えた剛糸は、一本の綱のように、蛇のように巻き付き、締め上げ――やがて、マダムは弾けて消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『伝説の桜の樹の下で』

POW   :    愛を誓う

SPD   :    友情を誓う

WIZ   :    永遠を誓う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●生クリームと桜
 年の瀬が差し迫ったこんな時期に、満開を迎えて花吹雪を散らし、凄まじい花筵を広げている。
 狂い咲いた、伝説の桜。

 この桜の下で誓い合ったことは、未来永劫、破られることはない。――とかなんとか。

 ステキな伝説だ。実にロンマンチックで、おまじないの類が好きな者には、たまらないだろう。
 この樹の周りに、パイ皿さえなければ。
 バニラの残り香さえなければ。
 そうすれば、もしかすると、その伝説はもっと本来の力を発揮したかもしれない。
 きっと、今まで多くの願いを――誓いを聞き届けてきたのだろう。
 わけのわからんテーブルが並んでいても、今回も聞いてはくれそうだが、聞き流される可能性の方が高いに違いない。
 無病息災。学業成就。縁故採用。あ、間違えた。恋愛、友情、親子、夫婦――とにかくありとあらゆる絆を確かめ、いまよりもっと強くするのも良いだろう。
 普段は言えない言葉も、パイと一緒にぶつければいい。言わなくてもいい。聞きたくないとパイを投げつけられても文句はナシだ。
 生クリームで汚れた地は滑りやすくなっているし、たまに降る桜で視界が悪くなる。
 そんなハプニングで、べっちゃりされても、文句はナシ。
 そう、いまからのひととき、無礼講だ。

 皿を持て! いまこそパイを投げるときだ!
 遊ぼう!




無礼講ですが、エロいのはいけませんよ!
お待たせしました。全身全霊で遊び倒す時間です。
フラグメントのPOW・SPD・WIZは参考行動です。誓っても誓わなくても大丈夫です。自由になさってください。
パイ皿の生クリームは甘さ控えめのアッサリ味です。飽きがこないので、食べててもいいです。
投げなくていいの?とやや心配にはなりますが、どうぞ、ご自由にお過ごしください。

今回「希望の汚れ具合」に短縮記号を導入します。アドリブ時の描写の参考にいたします。よろしければ、ご活用ください。

★・顔が見えなくなるくらいのべっちゃり大歓迎
☆・顔半分くらいなら大丈夫
▲・鼻先くらいなら許す
△・飛沫すら許さん

現場にはグリモア猟兵の鳴北・誉人がいます。超絶ゴキゲンです。最初の「マスターより」を参照に、一人ではちょっと…というときにでも使ってやってください。
なお、プレイングで呼ばれない限り、鳴北はリプレイに登場することはありません。

プレイングの受付は【12/20(金)8:31~】開始いたします。
受付締切日時・その他連絡事項はマスターページおよびツイッター(@kFujino_tw6)にてアナウンスいたします。
それでは、引き続いてのご縁、新たなるご縁がありますように。
楽しいプレイングをお待ちしております!
香神乃・饗

誉人おやつ貰ってきたっす!休憩しないっすか?
マダムの差入れっす!
一緒にプリン食べる
生クリームも
なかなか美味しいっす!

誉人は誓う事あるっすか

何でも同意

桜は人をさらうって言うっす
でも俺は梅っす
梅は好きな人の所にびゅーんって飛んでいくんっす!
だから相棒の俺の事
ちゃんと呼ぶっす!
いいっすか?

テーブルという地形を利用しパイ皿を隠し言葉で注意をそらすフェイント
「か?」辺りで誉人に隙あれば
そっと優しくパイ皿を顔にぺた
へへへ、隙ありっす!笑顔
くるっすか!しゃき!構え

お返しは幾らでも!罠にもはまる
食らっても笑顔

投げる練習一杯したんっす
しゅわー!
にゃー当たらないっす

揃ってパイにまみれ
めっちゃんこ楽しく笑いあおう




「たーかと!」
 見慣れた背中に向かって、香神乃・饗(東風・f00169)は彼の名を呼ぶ。
 青みがかった黒髪の男は、ここまで導いたグリモア猟兵――遊びたくて仕方なさそうにしていた饗の相棒――鳴北・誉人だ。
 こちらを向いた紺色の三白眼は、しかし安心したようにすぐに優しく細くなる。
「饗! お疲れさん」
「おやつ貰ってきたっす! 休憩しないっすか?」
 先ほどタッパーに詰めて置いておいたフルーツの盛り合わせと、ぎっしりプリンを見せる。
「おおお! すげえ!」
 紺瞳はタッパーに釘付け、そして、饗を見上げてくる。
「いっぱい入ってる……すっげえうまそう!」
「マダムの差入れっす! 一緒に食べるっす」
「いいのォ!? やった、食う!」
 破顔一笑。その笑みに、饗もつられて笑んだ。
「どこで食う? 桜の下? あはっ、待って! みかんだ!」
「そっす! マダム、いいみかん持ってたっす!」
 あと、イチゴもいるし、柿もある。バナナだって詰めてある。キラキラに目を輝かせている誉人に、
「立ち食いで良いんじゃないっすか? お尻に根っこ生えそうっす。あ! プリンも食べるっす。そうそう! 誉人、プリン、すごかったんっす!」
 話せども話せども言葉は尽きない。饗はここを根城にしていたマダムのことをしっかりと相棒に伝えた。
「んで、こーんなプリン投げつけてきたんっすけど――」
 誉人は相槌を打って話を聞いてくれたが、「きょーお、」と窘めるような、間延びした呼び方。
「食わねえのォ?」
「はっ! 食べるっす」
 たははと、頭をほりほり掻いて、誉人にスプーンを渡せば彼は、生クリームをプリンにぽてっと乗せてひと匙掬って食う。
 それを真似て饗も一口。
「美味しいっす!」
 ふわんと香るバニラは鼻を抜けて、舌に広がる優しい甘み、カラメルの焦げたほろ苦い甘みは絶妙なアクセントになる。
 誉人を見れば、彼も彼でその美味さに解けていた。その幸せに緩んだ頬を膨らませて、一意専心に食う姿に、饗の黒瞳もまたやわく細る。
 時雨れる桜の花弁が、誉人の頭に積もる。それを指摘しながら、
「誉人は、桜に誓う事あるっすか?」
 頭の桜を払いながら、「桜?」と、聞き返す彼に首肯。
「んー、来年も、再来年も、その先も、こうしてお前と一緒に美味いもん食いてえ、かな」
「そんなんでいいっすか?」
 それは誉人にとって誓う必要があることなのか。誉人が望めば、いくらでも隣で食事くらいとってやるし、甘味だってつついてやるというのに。
「そんなんしかねえンだよォ」
「そうっすか、誉人がソレでいいなら良いっす。俺、ずっと誉人の隣でうまいもん食べるっす!」
「あはっ、っとに……お前は、」
 なにかを言いかけてやめた誉人の耳が赤くなっているのに気づいた。
「桜は人をさらうって言うっす――でも俺は梅っす」
 視線は上がってこない。照れ屋なのは今に始まったことでない。出会ってまだ一年も経っていないが、聞いていないようで、ちゃんと耳を傾けてくれているとわかるほどに、ずいぶんと長い時間を共に過ごしてきた。
「梅は、好きな人のところにびゅーんって飛んでいくんっす!」
 しゅっと腕を伸ばして、にっかと笑う。
「だから誉人、相棒の俺の事、ちゃんと呼ぶっす!」
「……ん、」
 そばで守ってやる。一人で傷ついてくることがあっても、手当てしてやる。だから呼べ――俺を。
 それは、俺の役目だ。
 なんて思いも込めて、隠し持ったパイをチラっと確認。
「いいっすか?」
 やや視線を落として、耳まで赤くして照れる誉人に饗の魔の手は迫る。

「お、っ」
 ぺたぁっ。

 小さく頷いた誉人の顔面へ、優しくそれでも容赦なくべったりとパイ皿をなすりつけた。
「ぷぁっ」
 鼻にクリームが入らないよう口で息をする誉人の無残な真っ白い――のっぺらぼうに、饗は込み上げてくる笑いを爆発させる。
「先手必勝! あそぼうって言ったの、誉人っす! へへへ、隙ありっす!」
「……饗」
(「わはっ、声、低くなったっすね!」)
 饗の頭の上にあるはずのない犬の耳が見える。ぴんと立って、誉人の一挙手一投足を見逃さないし、予兆を聴き逃さないようにしているようだ。
「きょーおー」
「なーんっすか、たーかと!」
 ズボンからシャツを引き出した彼は、その裾で顔を拭い、ぎろんと睨みあげてくる。
 その視線に怒気が含まれていないのは一目瞭然、こうして誉人に睨まれることはたまにある。慣れた。
 饗の手にはすでにふた皿の生クリームがのっている。
「お前が不意打ちとか上手なの、知ってるつもりだったンだけどォ……ンな大事な話っぽいのしてるときに仕掛けてくるとか、マジで……」
 そばのパイ皿に手が伸びるはまる見えだ。誉人は隠すつもりもないのだろうが。
「俺も誓わねえとなァ……」
「なに誓ってくれるんっすか?」
「お前の顔、これから真っ白にしてやる!!」
「それは誓いっていうか、宣戦布告っす!」
「どっちでもイイわ!」
「くるっすか!」
 しゃき! パイ皿を構えて弾ける笑顔のまま、投げられたパイ皿を避ける。
「くらえっす!」
 ひゅんっと投げつければ、誉人の頬を掠めて飛んでいった。
「あっぶね」
 その一投は囮――上体を流して躱す先へ饗は駆ける――未来を視るユーベルコードを使わずとも、近くで彼の戦うサマを見てきた。誉人のクセを見抜けない饗ではない。
 一歩引いた先へ、僅かな時間差で投げたパイが迫っているはずだ。
「来るって分かってりゃあ躱せるわなァ!」
 くるりと反転、踏みこんで一足跳びに饗との距離を詰める誉人は、「ゥらっ!」なんて舌を巻いて饗へと皿を投げつける!
「わぷ」
 ぺちゃ。
 頬にべったりと張り付く。
「あはっ、当たったァ!」
 嬉しそうに笑う誉人は、もうひと皿、補充。
 饗は甘いホイップをぺろりと舐めて、皿を落とす。瞼をこすりクリームを拭って、笑った。
「投げる練習、一杯したんっす」
 ふんっふんっ! と素振りをして饗。
「しゅわー!」
「ンだ、そのかけ声!」
 けらけら笑いながら、饗の一投を躱して、誉人は饗へと肉薄――次は俺の番!
「、ォら!」
 饗の顔を狙って投げられた皿は、
「にゃー!」
「ネコチャンか!」
 誉人の好きなネコの掛け声とともに躱し、
「へっへーん! 二度も当たらないっすー!」
 瞬時に飛ぶのは饗の練習しまくった一投!
「んが」
 誉人の額にヒット。視界の確保にクリームは拭って、張り付いて邪魔な前髪をかきあげ後ろへ流し、頬には笑みを刻んだまま、指についたクリームを舐めた。
「やっぱうめえ!」
「そっすね、もっと食べてていいっす!」
 その顔にべったりとまたつけてやる――そうすればもっと食べられるだろう。
 しゅわー!
 小細工なし、一直線に放たれたそれは誉人の肩に当たって、擦れ違うように彼からも投げつけられるが、それは饗の足元にべしゃあっと無残に飛散。
 花びらがさあっと降ってくる――その奥に饗の姿が隠れる。
「饗っ」
 隠れるのは得意だ。誉人の視界から消えることは、造作もない――しかし、
「ふあ!?」
 踏ん張った足がずるっと滑る――崩れたバランス、立て直す間もなく饗は、素っ頓狂な声を上げて転げた。

「あはっ、捕まえたァ」

 一瞬だった。くるりと世界が回ったかと思ったときには、桜との間に誉人。
 満面に笑みを浮かべる相棒が馬乗りになっていると理解するのに、数瞬。
 迫るのは真っ白のパイ皿。
「わ、たか、まっ、待つっす!」
「待たねえよ、さっきのお返し、したげるねェ」
「うぷ」
 ぺたぁっ。
 皿が饗の顔に張り付いた。
「饗、くふっ、まっしろ……!」
「たかとがやったんっす」
 のっそりと上体を起こして、張り付いたままの皿を取る。
「あはっ、くく……ダメ、あはははっ」
「ぷっ、へへへ、はははっ」
 高らかに声を上げて笑い合えば、甘い香りすら楽しくて。
 この最高にろくでもない時間が続く限り、共に笑い合いたい――だから、饗は、笑う誉人の顔にもう一度ぺったりとパイ皿を塗りつけた。
「………………きょーおー…」
「誉人も真っ白っす!」
 べったべったに汚れても、真っ白に塗られても、なにをされても、二人から笑みがなくなることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那

マダムとの戦いのときはお預けでしたからね。
やっとおいしいパイを食べられますよ。

においも質感も最高でしたからね。

ここは花より団子。桜よりパイです。
パイをパイ投げの材料にするなんて全くもったいないです。


よくもメガネをパイまみれにしましたね!
倍返しです。

【念動力】でパイ乱舞します。




 眼前のテーブルには、生クリームの山。
 先刻、ぺろりと味見したときに知ったのは、このクリームが絶品だったということ。
 フルーツと合わさって絶妙な甘さであった。
「さっきのマダムとの戦いのときは、お預けでしたからね」
 実は食べたかった。
 だってものすごくおいしそうだったから。
 それはそうだろう。あのプリン。そして、あのきらめくフルーツの山。そして、なぜが投げつけてくる生クリーム。
 それは、ぜひにクリームをつけて(私を)召し上がれと言っているようにしか聞こえなかった。
 適度に冷やしてやったクリームは、もう、何度でも言うが美味しかったのだ。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、腰に手を当てて、生クリームの山の前に立つ。
 さあ食ってやろう!
 今すぐ食ってやろう!
「やっとおいしいパイを食べられますよ」
 ひと皿持ち上げて、取り出したのは、スプーン!
 ひと匙掬って、ぱくり。
「~!!」
 摩那はブラウンの瞳を丸めて、すぐにうっとりと瞼を下ろす。
 お待ちかねのデザートタイムに、摩那の心はゆっくりとほどけていく。
 この瞬間、いっぺんに今までの苦労が報われた気がする。
 さきほど舐めた、あのちょっとだけでも、幸せだった。
 香りも、質感も、最高だった。
 バニラの移り香はほの優しくて、ちょうどいいかたさのホイップも、しかし口の中でふわりとなくなる軽さで。
 いくらでも食べられる。
 ぱくっと、ぺろっと。
「はああっ、幸せ!」
 こんな美味しい生クリームをパイ投げの材料にするなんて、もったくもって! もったいない!
 一体あのマダムは何を考えていたのだろう――否、オブリビオンが何を考えていても不思議ではない。
 だが!
 こんなに美味しいのだ!
 食べないという選択肢は、もはや存在しない。
 空になった皿が一枚。
 眼前には食べても食べてもなくならない気しかしないパイの山。
 摩那の瞳はきらんと輝く。桜は確かに見頃を迎えて、壮観な花吹雪を散らして、ピンクの雪は降り積もる。
 降る桜は確かにきれいだし、ずっと見ていられそうに儚い。
 それでも。
 そんなことよりも。
(「今は、花より団子。桜よりパイです!」)
 食べて憂さを晴らしてやる。
 二皿目、いただきます!

「あぁー、ぅぷ」

 大きな口を開けて、スプーンにこんもり盛られたパイを食べようとした瞬間、顔面に冷たい衝撃。
 そうして、沸き起こる歓声と笑い声。
 視界は驚くほどに白。メガネがあったおかげで、瞬きは出来るが、世界は白。
「………………」
 復讐せねばなるまい。
 粛々とメガネを外してレンズからクリームを拭い取り、かちゃっとかけ直す。
 良好と言えない視界で、笑い転げているやつがいる。
「よくもメガネをパイまみれにしましたね!」
 せっかく、せっかく!
 あのプリン頭のマダムから守り抜いたメガネを!
 こんな、最後の最後で!
 誰が投擲したかも分からぬ流れ玉――否、流れ皿にやられてしまうとは!
 摩那は不覚をとってしまい、かたんと皿を持ち上げる。
「倍返しです」
 よっしゃー! やる気になったー!
 なんて聞こえてくる声。
 あれ? もしかして、摩那は最初から狙われていた?
 パイを食べて油断した瞬間を狙われたというのか。
「許しません――!」
 摩那の念動力に操られたテーブルが、ふわりふわりと空中に浮かび、摩那にパイを投じたらしいその影へと、パイが乱舞。
「あなたもパイまみれにしてあげます!」
 覚悟!
 ひゅんひゅんと飛び交うパイの中で、こちらに飛んでくる皿が摩那の美しい黒髪を白く白く汚していくし、頬にも腹にも皿がくっつく。それを煩わしげに剥がし捨てる。
 それでも摩那の操るパイ皿の数は圧倒的で、情け容赦なくクリームがべったべったと塗り重なっていく。
 それで溜飲を下げてやろう――とした。
 このひと皿がなければ。
 もう一度迫りくるのは、摩那の顔面を狙ってくる、いただけないパイ皿。
 今度はそのパイを躱して、ソレに肉薄。
 烈声とともに、パイをその顔へとべしゃあっと投げつける!
「あ! これ、楽しいかも……」
 マダムが天国しかないといった意味を体感する。
 非現実的な――生命を脅かされることのない、平和な興奮は、爽快だった。
「そこのあなた、ちょっと付き合ってください。楽しいですね、この遊び……!」
 乱戦を巻き起こす摩那の頬にも、溌剌とした笑みが刻まれた瞬間――
「へぷ」
 またパイまみれになった。
 当たったー! なんて喜び笑い声が弾ける。
 許さん! 摩那もまた本気でパイを投げるスイッチが入った。
「そこになおりなさい! べっちゃりしてあげます!」
 メガネを拭き拭き、声を張り上げる摩那の頬には、それでも笑みが浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

護堂・結城

リン(f03275)と参加

終わった?じゃあ甘いものでも食べながらイチャイチャしよう

膝にお嫁様を載せながらパイをあーんとかして癒しを補充せねば…
バカップルに負けてなるものか!

飛んできたパイから尻尾でリンを死守しつつ(※自身への直撃は可)

「うちの嫁様が汚れたら怒るからネ?」

にっこり笑って【殺気・存在感・恫喝】を飛ばし指定UC発動

「ほーら皆ーあっちのにーさんねーさんが遊んでくれるよー」

氷の【属性攻撃】を纏った狐の群れを召喚して程よく冷やした美味しいパイを運搬
【動物と話す・動物使い】を用いて尻尾で投擲させ乱戦に持ち込もう

はっはっは、誉人、逃がさんぞ

よし、後任せた、俺はイチャイチャに戻る


狐宮・リン
△(気にしませんが彼氏さんが守ってくれるようなので)

結城(f00944)と参加

旦那様に呼ばれて来てみましたけれど…、なんだか賑やかですね?
ちょっと楽しそう?

愛する旦那様にされるのならなんでもされるがまま!
たくさん甘えて愛でられなくてはですっ♪

皆さんの様子を眺めながら、ユーベルコード「私の気持ち」を旦那様に使用してドキドキを加速です!

誘惑23で抱きつきながらあーんって食べさせてあげたいですね♪
あっ、旦那様にパイが当たってしまったなら頬のクリームとかは舐めとってあげます!
らぶらぶ狐ですもの♪えへへ♥️




 舞い散る桜は綺麗だ。美しい。この儚さはいつ見ても壮観だ。しかし、その下で繰り広げられるのは、阿鼻叫喚――否、楽しい楽しいパイ投げ合戦。
「ふふっ」
 みな良い笑顔で、白く甘い皿を投げ合って、汚れていく。
 護堂・結城(f00944)に呼ばれるままについてきた狐宮・リン(f03275)は、にこにことその様子を見て微笑む。
「なんだか賑やかですね、ちょっと楽しそう?」
「けど、リンを汚させないからな」
 あのうっとうしいプリン頭も、ウザったいだけのバカップルもいなくなったのだ。
 ようやく結城の癒しの時間がやってきたというのに。
 騒がしくパイが乱舞している。
「……甘いパイ食べながら、イチャイチャしようと思ったんだが……」
「なんでもしますよ、旦那様に甘えさせてください」
 えへ、と笑ったリンの可愛いこと!!
 心が、心がしんどい!
 彼女の青い瞳は綺麗に笑んで結城を映す。
 この癒しがあるからこそ頑張れるというもの。
(「はああ、足りん!」)
 いや、十分かわいいから、心は満たされていくのだが、やや小腹も空いた。
 こうなったら!
 あのバカップルのイチャイチャに負けないくらいの、仲良しっぷりを発揮してやる。
 膝にお嫁様を載せながら、パイをあーんとかして癒しと甘味を補充してやる。
「お気に召すまま、私も旦那様、だーいすきです!」

 ――――……べしゃあっ!

 無言で飛来したのは、やけにクリームの多いひと皿。
 結城の尾がべったりと汚れるも、大事なリンは汚れていない。
「……誰が投げた?」
「あはっ、ちょっと手元が狂ったァ!」
 無邪気を装っているのがバレバレな、紺瞳の彼へ結城はオッドアイを細めた。
 くいっとブリッジに指を当てて押し上げ、上機嫌に笑っている年下の彼へ、
「うちの嫁様が汚れたら、本気で怒るからネ?」
 にっこりと笑むが、笑顔が昏い――誉人は気づかないフリをして、笑い飛ばす。
 だって、こんなところでイチャこいてる方が悪い。投げられてパイまみれになっても文句は言えんだろう。
「え、ていうか、護堂サンは投げねえの? 楽しいよォ?」
 両手にパイ皿を持って、背を伸ばしたり縮めたり、遊んでほしそうに誉人。
「護堂サン! ね! 護堂サン!!」
「うっさいぞ、誉人!」
「イチャこくのはどこだって出来るからァ!」
 でもパイを投げつけるなんぞ、今しかできない!――という持論を展開、今やんなきゃもったいねえと叫ぶ彼に、リンは思わず笑ってしまう。
「リン、笑ってないで」
「遊んであげたら?」
 くすくすと笑むリンへ、困ったように唇を尖らせた結城だったが、ちらと誉人を見やれば、「ごどーサーン!」とまだ名を呼ぶ。
 仕方ない。
 結城の喚び声に応えて、無数の狐の群れが現れる。ふわもこの毛玉たちの息は白く凍って、蒸気機関のように白煙を上げる。
 それだけで、その狐たちが氷の力を纏っていると想像できた。
「毛玉!?」
 きらんと紺瞳が輝く――いや、今はもふもふよりもパイだ。
「はっはっは、誉人、逃がさんぞ」
「……っ! 受けて立つ!」
 どうして凍れる狐を召喚したのか分かっていなさそうな誉人は、ようようやる気になってくれたと喜んでいたが、結城は、今は遊ぶ気にはなれん。
「ほーら皆ーあっちのにーさんねーさんが遊んでくれるよー」
 凍る狐たちが器用にパイを尾に乗せて、とてとてと誉人へ走っていく。
「護堂サン! これは、ずっこい!」
 うんうん、そのまま悶えてクリームまみれになればいい。
「よし、後任せた、俺はイチャイチャに戻る」
 なにやら不満そうな声が聞こえたが、そのあと、「あっ、ちょっと冷えててうめえ! や、でも、まっ、へぐっ」なんて元気な叫び声がした――そのまま遊んでいろ、邪魔をするな。
 結城は満足げに頷いて、リンへと向き直る。
「いいの?」
「いいんだ、放っておこう」
 こうして満開の桜がここにあって、愛おしい人が目の前にいて、どうしてパイを投げて遊ぶことができる。
 そうしてリンを優先してくれる結城に、彼女もまた笑みをこぼす。
 ホイップも甘かった――くどい甘さではなく、あっさりした甘さだった。飽きのこない優しい甘さだ。
 リンの愛情はそれよりももっと甘くて、やわらかで、温かく、そのくせ永久に続く幸せに満ち満ちていて。
「あっ、クリームついてますよ」
 リンは、結城の頬についたクリームをひと舐め。まさか舐められるとは思っていなかった結城を存分に照れさせる。
 大好きで大好きで、仕方ない。そりゃ頬くらい舐めたくなる。
「せっかくです、パイ、食べましょうっ、ね?」
 リンの青瞳に結城の目が映る。
「桜の下で、あーんってします」
 彼女は皿を一枚持って、結城のもとへと戻ってくる。
 桜の樹に凭れて座り込めば、リンは結城の膝の上に座る――このすっぽり収まるサイズ感! いつものことながら、嬉しくなる。
(「せっかくなのですから! たくさん甘えて愛でられなくてはですっ♪」)
「あんたら十分ラブラブだからァ!」
 見せつけてンじゃねえ! と白く汚れた誉人の嫌がらせのような一投が、結城に飛来!
 それを尾で叩き落して、「あっちで遊んでろ、邪魔するな!」と一蹴。
 そんな様子すら楽しくて、リンはご機嫌に魅力を爆発させる。
 結城への止め処なく溢れる情愛はとろりと溶ける。すり寄って、今のひと皿でまた汚れた頬をぺろりとひと舐め。
「えへへ」
「………………!」
 声を大にして叫んでやる。
 俺のお嫁様! 可 愛 す ぎ か よ!!
 そんな声なき声で叫んだ結城は、リンの愛に囚われていた。
「はいっ、旦那様、あーん」
「あー」
 スプーンを差し出され、それにぱくりと食らいつく。
 あのプリン、外道のくせにいい仕事をしやがる――これほどイチャこきながら、なかなかにうまいパイを食えるとか。
「おいしいですか?」
 小首を傾げて見上げてくるリンは、可愛い。
 頷いて返事をすれば、彼女はぎゅうと結城へ抱きついた。
「イチャイチャと……!」
 苦虫を噛み潰したような、すごい顔をする誉人の手にはパイ皿。
 これを馬鹿正直に投げたところで、リンを守るために結城は汚れることを厭わないで、あの自在にあるじを守る尾に叩き落とされるのが関の山だ。
 あの涼しい顔にべったりと、べっちゃっりと――そんな悪巧みをしていることを知ってか知らずか。
「羨ましいか、誉人」
 にったりと口の端を吊り上げてみせる結城。
「ぜんッぜん!! これっぽっちも!!」
 言葉と態度が一致していない誉人へ、リンは惜しげもなく結城にしなだれて、ふかふかの尾を揺らす。
「らぶらぶ狐ですもの♪ 旦那様、だーいすきー❤︎」
 えへへと頬を染めて笑んだ。
 正直、どこでだってイチャこけるのだが、せっかく結城が誘ってくれたのだ。
 こんな満開の桜の下で、二人でパイを食べさせ合いながらラブラブできるなんて、そうそうない。
 だから、今のこの瞬間を楽しまないと損をする。
 楽しそうに笑う結城を見ることも、リンの肩を抱き寄せて、しっかりと守ってもらえているという安心感も、幸せの一つだ。
 リンは知らんだろう。
 この迷宮へ、イチャこくために侵入したバカップルも、結城とリンのような、周りに砂糖を吐かせるほどの蜜月っぷりを見せつけていたことを。
 当人たちは気づかないだろうが、その微笑ましさは学生だから許されるんだぞ、わかっているか、この仲良し夫婦め!
 ああ、言いたい! めちゃくちゃ言いたい! 誉人はそこまで出かかった言葉を無理やり飲み込んだ。

 見たか、俺のお嫁様の可愛さ! 最高だろう! ん!?

 結城は、ふふんと鼻を鳴らし、言外に自慢してやった。
「っせ! 俺だって、っぷ」
 ごにょごにょと言葉を濁した彼へ、狐のひんやりしたパイが投げつけられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
【人参】☆
ふ、どうやら決着の時が来たようだネ……
ってナンの誓いヨそれ!(パイ手にツッコミ)

ええい人参の恨み!
当たってなるものかという第六感と鍛えた攻撃見切る目でパイを避けつつ
防戦に回ると見せかけた残像残しカウンターでだまし討ち
スナイパーで標的(たぬ)だけを確と狙い当て、傷口をえぐる2回攻撃!
……おとなげ?なにソレ美味しいの
全技能フル活用で八つ当たるわよ

ケド負傷気にしない日頃の癖でつい自らパイに手を突っ込んじゃったり
のんびりパイ食べるジュジュちゃんに
味変にコレ足す?とカットフルーツ放ったり
なんやかんやくだらない戦いを思いきり楽しんでる

あ~甘……
戻ったらプリンじゃなくてしょっぱいゴハンにしなぁい?


ジュジュ・ブランロジエ
【人参】

パイ投げする二人を観戦
『』は裏声でメボンゴの台詞

メボンゴを操り胸の前で手を組む乙女の動作をさせ
『私のために争わないで……!』
うんうん、一度は言ってみたい台詞だね、ってメボンゴが言うんかーい!
などとノリツッコミ

ヒートアップする戦いにわくわく
漂う甘い匂いにだんだん食べたくなってくる
帰ったらコノさんにプリン作ってもらえるし我慢しようかな
でも一皿くらいならいいよね
『いいよ!』
だよねー!
どこからかスプーンを取り出しぱくり
うん、美味しい!

飛んでくるカットフルーツをパイ皿でキャッチ
わーい、ありがとう!
もっと美味しくなったよ!

あっ、いいね。ごはん食べたい!
でもプリンも食べたーい!
ねー、楽しみだねー!


火狸・さつま
【人参】


気分は、チーム『綺麗な』人参!
ちゃんと強調!完璧!


美味しパイ、投げながら、誓い合う!なるほど!
じゃ、俺、美味しく食べるの、誓うから!
コノちゃん、美味しく作るの、誓って!!
いっくよー!

念の為、流れ弾クリームが飛んでいかないように、淑女達から距離を取り

パイ軌道見切り躱すか
早業!パイ皿で受け二段盛にしてカウンター投擲!
くるりらダンスの如く避けつつ
連続投擲な範囲攻撃!

口周りクリームぺろりっ♪
え?料理もプリンも!両方!食べるー!
楽しみ、だよ、ね!
ジュジュとメボちゃんとニコニコ!




「美味しパイ、投げながら、誓い合う! なるほど!」
 火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)のテンションは最高潮。
 それを見つめるジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)も、彼女の手にいるメボンゴだって、もう楽しくて楽しくて仕方ないと笑顔を弾けさせる。
 気分は、チーム『綺麗な』人参! これから生クリームで汚れようと、『綺麗』は『綺麗』なのだ。
 ここを間違えると、また頭をはたかれるかもしれない。
 ちゃんと強調しておかなければ!
「さつまさん、なにかを誓うの?」
 訊けば彼はこくりと頷く。
「じゃ、俺、美味しく食べるの、誓うから! コノちゃん、美味しく作るの、誓って!!」
「ってナンの誓いヨ、それ!」
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)の手にはすでにパイ皿。なんの掛け声もないまま、無防備なさつまの顔を狙ってぶん投げる!
「ぷ」
 クリーンヒット。
 べったりと顔に皿がはりついて、ぼとりと皿が落ちる。
「人参の恨みよ」
 正確には、このオレを――チーム人参とひとくくりに混ぜたことだ。
「コノちゃん!」
 ぷーっと頬を膨らませて、コノハに分かりやすく不満を伝える。
 断じて、不意打ち気味にパイを投げつけられたことに対する怒りとかではなくて、「おいしいプリンを作る」と誓わないことへの不満だ。
「コノちゃ、誓って!」
「わーったわヨ、作る作る、美味しいのね、ハイハイ」
「私はそれを美味しく食べることを誓います!」
 ハイハイっ! と手を上げてジュジュ。
『誓います!』
 メボンゴも同じく挙手。
「すごい宣誓ね……」
「いっくよー!」
「ふ、どうやら決着の時が来たようだネ……」
 ジュジュを巻き込まないようにさつまは、走りだす――素早くテーブルから皿を補充。
 その皿を持って、コノハへと突撃!
 今こそ、いつも涼しげな顔をべったりとクリームまみれにしてやる。
 しかして、それはコノハに見切られ躱される。彼の動体視力と予測の前では、それはもはやまる見えで。
「ええい人参の恨み!」
 ひゅっと投げられる皿は、さつまの顔へと迫る――息を詰めて上体を反らして躱す。軽やかにステップを踏んで、くるりと反転、その回転の勢いのままに皿を投げる返す、もうひと皿!
 空中で相殺される。皿同士がぶつかり落ちて、べしゃあっと花筵を白く染め上げる。
「やるわね!」
「コノちゃん、こそ!」
 息つく間もなくコノハの一投。一直線に放たれたそれは、さつまの顔に当たる前に防がれる――盾のように構えられたパイが特盛り状態になった。
 二倍になったもりもりの皿を持って、さつまはにっこりと笑う――瞬間、目にも止まらない早業でもって投擲――コノハの美貌へ迫る、その本命を守るようにぽいぽいぽいぽい! と投げられた皿が飛び交う。
 これほどの波状攻撃、逃げ場はあるまい!
「コノちゃ、覚悟ー!」
「なめるな!」
 薄氷のごとき双眸が、熱を帯びる――第六感が冴え渡る。息がとまるほどの集中力から見出される、たった一つの進路――ひと皿分の被弾で済む、一番犠牲が少ない進路だ。
 体は低く沈み込む、駆ける、踏みこんで右へ跳ぶ、コノハのこめかみを掠めていく皿、視界の端が白くなる、しかしテーブルに近寄れた、皿を掴みとる。
(「げっ」)
 勢い余って手を生クリームへと突っ込んでしまい汚れたが瑣末なこと――、それを素早く掴み投げ、さつまの投げたソレへ当たる、相殺、もう一投、さつまの反射で避けられる、否、それは囮、もうひと皿を持って今度こそさつまへと肉薄――
「ははっ」
 笑いが思わず込み上げる。
 さつまの青い双眸がコノハを映す。容赦はしない。人参の恨みがある。
『おおお! コノちゃ、いけー!』
 メボンゴの声援。
「さつまさーん! 負けるなー!」
 ジュジュの声を背に受けて、コノハは彼の顔にパイをぬりつける。
「うぷ」
『おとなげなーい!』
「……おとなげ? なにソレ美味しいの?」
 すぐそこにあるテーブルに手を伸ばして、さつまが皿を引っぺがした瞬間、もう一度べったりと押しつけた。
「ふへゃ」
 変な音がさつまからした。
 しかし、こんなものではコノハの八つ当たりたい衝動は収まらない。
「コノちゃ……」
「なァに?」
「……おとなげ、ない、ぷえ」
 べったり。
 クリームにクリームを塗り込む所業!
 まさにおとなげない!
「そんなの、クリームといっしょに投げとるわ。たぬちゃん、もうちょっと付き合ってもらうわよ」
 顔からクリームを拭いとって、さつまはこくこく頷く。彼のふわふわの尾が嬉しげに揺れていた。

 ふたりのイケメンが目の前でパイを投げ合っているという奇妙な光景も、見方を変えれば面白いもので。
『私のために争わないで……!』
 きゅるん。
 白兎の手は胸の前で組まれて、その目の輝きは変わらないというのに、降り続く桜のせいでいやに輝いて見える。
 それは、ただの可憐な乙女だ。
「うんうん、一度は言ってみたい台詞だね」
 そう、女の子なら一度は憧れるシチュエーションではないだろうか。ふたつの愛を受け入れたいけど、そんな人道に反することはできないから――
『コノちゃ、たぬちゃ! 私を取り合っちゃダメー』
「ってメボンゴが言うんかーい! ていうか取り合ってないわーい!」
 なんて華麗なノリツッコミが完成したところで、ジュジュは涼しい顔をして、手品の要領でスプーンを取り出してひと匙掬って食べた。
「美味しい!」
「……ジュジュちゃん、」
 なにかを言いかけたコノハから顔をそむけて、桜を見上げる。調子っぱずれな鼻歌付きで。
「すきありー!!」
「見えてる!」
 ひゅんと飛んでくる皿を反射的に躱す――が、頬を掠めていく。躱した先に飛んでくる、白い悪魔。無理やり倒れ込んで、ごろりと地を転がる。
 汚れた桜の花びらが体に張り付いて、コノハは小さく舌を打った。
「ンもう、汚れたし!」
「俺は真っ白、だ、よ!」
「比べンじゃないヨ!」
 起き上がって落とせるものだけでもはたいて落とす――その隙を狙ってこないさつまは甘いのか、優しいのか。
 その僅かな時間に、さつまは口周りのクリームを舐めてみる。
「んん!」
 瞠目し、ぴこんと耳が立つ。ふらふらとボリュームたっぷりの尾が揺れた。
「あまーい! 甘い、奇麗な、人参……ハッ! グラッセ!」
「違うって!!」
 もういつまで引っ張るの、その人参ネタ!
 ツッコミという名前のついた生クリームを投げつける!
 ひょいと躱す。
 それがコノハに火をつける。
 だんだんヒートアップしてきた。
 本気で躱して、本気で投げて、さつまはにっこにっこ笑いながら、コノハも頬に笑みを刻んだまま、この心底くだらなくも楽しい戦いをやめない。
 漂う甘い匂いは、ジュジュの食欲をくすぐる。
「はあ、本当に、食べたくなってきた……帰ったらコノさんにプリン作ってもらえるし、我慢しようかな」
 でも、もうさっき一口食べちゃったし、一皿くらいならいいよね? なんてメボンゴに同意を求める。
 白兎はくりくりと腕を振りまわし、深く考え込むポーズをとる。
『んー……いいよ!』
「だよねー!」
 ぱあっと笑顔を咲かせたジュジュは、先ほどのスプーンを持って、一口。
「うん! やっぱり美味しい!」
 もう一口。
 さらに一口。
 飽きないこのあっさり味! 甘さ一辺倒でない優しさ! 軽い口どけ!
「ジュジュちゃん、コレ足す?」
 綺麗な髪がクリームで少し汚れたコノハが、カットフルーツを山なりの軌道を描いて放り投げてくる。
「わーい! コノさんありがとうー!」
 優しい軌道は皿でキャッチしやすくて。すぽっすぽっすぽぽぽぽっと生クリームの中にフルーツが飛び込んでくるようだった。
 イチゴ、オレンジ、パイナップル、そしておまけのマカロン!
 一気に皿が華やいだ。
「わああ! すごーい!」
 クリームがコーティングされた、イチゴをひとくち。
 甘酸っぱい爽やかな味と一緒になって、舌の上で溶けていく。
 ほどけていく。
「もっと美味しくなったよ!」
 ジュジュの喜ぶ声に、コノハとさつまは笑い合った。
 
「あ~甘……」
 直撃はからくも避け続けたが、コノハの頬にも、躱しきれなかった生クリームがぺっとりとついているし、口元のそれを何度か舐めて味わっても見た。
 というか、そろそろさすがに匂いに酔う。
 甘い匂いが立ち込めている――いや、鼻にこびり付いている。
 しかしここまで投げ合ってもまだなくならない皿の数に、辟易した。
 さすがオブリビオン、なにを考えているのかさっぱり分からない。
 それでも、まあ、クリームの味は悪くなかった。さつまを真っ白のべったべたにすることが出来た。
「たぬちゃ、……」
「んん?」
 彼の姿を見れば、笑いがこみあげてくる。
 我ながら容赦なく汚してやったものだ――クリームに桜の花びらがくっついて、彼を桜色に染めている。いや、それは自分の姿を見てもそれは言えることで。
 さつまほど汚れていないにしろ、桜の花びらも、クリームもついている。
 ジュジュですら、口の端にクリームがついているのだ。
 あのフルーツ盛りは美味しかった!
 おまけにつけてくれたマカロンはベリー味だった。酸味が鮮烈でいくらでも食えそうだった。
「ねえ、戻ったらプリンじゃなくてしょっぱいゴハンにしなぁい?」
「え?」
「え? 聞こえなかったの? この距離で?」
 まさか、耳にクリームが詰まっちゃったのかと、半分マジで心配しかけたコノハだった――それくらいにさつまはクリームにまみれていたのだ――が、ふるふるっと首を振った彼は、
「料理も! プリンも!」
「あっ、いいね。ごはん食べたい! でもプリンも食べたーい!」
「両方! 食べるー!」
(「この子たちは、ほんっと……」)
 思わず吹き出してしまった。
 コノハの用意する食事ならいくらでも食えると豪語するさつま。
 手を叩いて喜ぶのは、ジュジュなのか、メボンゴなのか。ともあれ、彼女も喜色満面で翠の双眸をきらんきらんと輝かせて、さつまを見上げた。
「楽しみ、だよ、ね!」
『楽しみ、楽しみ!』
 全身で喜びを表現するメボンゴはドレスの裾を翻して、
「ねー、楽しみだねー!」
 ジュジュはさつまと笑い合う。そして、じっとふたり――否、三人でコノハを見つめた。
 じー。
 しょっぱいご飯ってナニ?
 カレー? 焼きカレー? 唐揚げのっかってる? それともビビンバ? もやしは豆つきですかね?
 あ、しょっぱい? チャーハン!? ラーメン!?
 それともミートソースのパスタですか? デミグラスソースのかかったハンバーグ? ちょっと変わったとこなら、オムライスですか? 骨付きカルビ? チーズフォンデュ? 
 しょっぱい――塩魚か! 寒ブリの塩焼き! あああ! しょっぱいご飯の選択肢が多すぎて決まらない!
 ごくり……と喉が鳴る。
 しかし、ご飯は決まらずとも、絶品のプリンは確定しているわけで。
「はいはい、わかったわヨ、いくらでも作ったげるから――」
 だから、帰ったらまずはシャワーよ。風呂でもいいわ。
 とにもかくにも、この汚れを落としてから食事だ。
 それでも、この汚れも、こびりついた匂いも、なかなか楽しい一時となった。
 笑みがこぼれる。
「はー! 満足! ジュジュ、たのしかった?」
「とっても!」
 さつまに問われて、ジュジュは大きく頷いた。
 それは、三人の頬に刻まれたままの幸せが、物語っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ジャンブルジョルト
★×1000

パイ食い放題のパーティーか。楽しそうじゃん。(ベタな勘違い)
おい、誉人。そのパイを俺にく……うにゃ!?(べちゃ)
乱暴な渡し方すんじゃねえよ、まったくもう。(猫が顔を洗う要領で、顔についたパイを舐め取る)
よし、おかわりく……うにゃ!?(べちゃ)
だから、乱暴に渡すなって言っ……うにゃ!?(べちゃ)
ちょ、待っ……うにゃ!?(べちゃ)
……って、これ、食い放題じゃなくて投げ放題だったのか! そうと判りゃあ、反撃だ!(パイを構えて投げようとするが)
ダ、ダメだ。食い物を投げるなんて、俺にはできねえ!(構えていたパイに自分から顔を突っ込んで貪り始める)

※煮るな焼くなとご自由に扱ってください。




 見上げた桜。
 冬に狂い咲いた桜の下でパーティーなんて、粋なことを企画したものだ。
 ふふんとヒゲを揺らしてジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)。
「パイ食い放題のパーティーか。楽しそうじゃん」
 にしても、なぜこんなに地面が汚れてるのだろう。
 ジャスパーは、しかしそんな瑣末なことに囚われないで、なぜか懐かれている誉人の名を呼んだ。
 が――
「うおっ、なんで、そんなに汚れてんだ?」
 あまりのドロドロぐあいに驚いてしまった。彼の髪はべったりとオールバックに後ろに撫でつけられている。
 おかげでよく表情が分かる。
「ん? JJサンもするゥ?」
「する? なにをだ?」
 にこにこと上機嫌な誉人に首を傾げながらも、彼の手にあるのは、こんもりと盛られた白いパイ。
 そうそう、それを食いに来たのだ!
 ふらふらと尾を揺らして、美味そうなパイへと両手を広げる。
「お! おい、誉人。そのパイを」
「これェ?」
「そう、それ俺にく、」
 いいよォ!――気色満面に紺瞳を輝かせて、誉人はジャスパーへパイを投げつける!
「うにゃ!?」
 べしょっ!
 驚きで毛が逆立った。
 自慢のふかふかの尾が膨れ上がる。
 ほの冷たくて、甘い幸せがぶち当たってきた衝撃たるや――あれ、なかなか美味いじゃあないか。ちろりと舌を出して舐めてみて、いまだ貼りつく皿を引っぺがす。
「あーあー、もう、なんで投げたんだ」
 ぶつくさボヤキながら、顔を撫でた。
 まるでネコが顔を洗うように! 手で顔のクリームを! 取って舐める!!
(「JJサン……! それだとあんた、マジのネコチャンだからァ!」)
 しかしそんなことを言える誉人ではなくて。
 だって、こんなにもっふもっふで、もっこもっこしていても、彼は年上の男性だ。
 口が裂けても「かァいい」なんて言えない。
「うにゃぁ、乱暴な渡し方すんじゃねえよ、まったく――誉人! 聞いてんのか!」
 スミマセン、聞いてませんでした。そのまんま猫の仕草に打ちのめされています。ちょっとあなたの仕草がツボったようで動けません。
 顔を両手で覆って、背を丸め、その背を肩を震わせる誉人を見上げて、ジャスパーのヒゲは怪訝そうに歪む。
「おい、どうした?」
「どォもねえ……! JJサン、美味かったァ?」
 気を取り直した誉人はもう一皿持ってくる。いや、もう片方の手にも持っている。
 顔を洗い終わったジャスパーは、手についたクリームもきちんとひと舐め、上機嫌ににゃははと笑う。
「まあまあだな! よし、おかわりくっ、ぶにゃ!?」
 おかわりの一言に誉人が即座に反応、パイを投げつけてきた。
 ぺっちゃあっと自慢の毛並みが、また汚れる。
 ごしごし、ぺろり。
「だから、乱暴に渡すなって言っ、」
「JJサン! もっと食べてェ!」
 美味しい。確かに美味しい。が、なぜ顔に投げつけてくる。もっと食ってやるさ。いくらでも食ってやるが、なぜ投げる。
 ジャスパーはしっかりと顔をごしごし、汚れた手もぺろり。ごしごし、ぺろり。
 ようやくキレイになって、ちらりと誉人を見れば、彼はすでにパイを投げつけるフォーム――
「ちょ、待っ……ふにゃ!?」
 容赦なく投げつけられた。
 べったりとやや冷たいクリームは、やっぱり優しい甘さで。
「あはっ!」
 楽しげに笑う誉人は、その笑顔とは裏腹にびゅんびゅんパイを投げつけてくるではないか。
「うら!」
「にゃっ!?」
 べしゃ。
「だりゃっ!」
「ふにゃん!」
 べちょ。
「せゃっ」
 あ、手元が狂った。
 ジャスパーの足元に落ちかけたパイの落下点に入り込んで、顔で受ける!
 ぺっちょ。
「……いま、わざと当たった?」
「気のせいだ」
 顔に貼りついている皿を剥がして、猫式洗顔でクリームを舐めとる。
「ていうか、JJサン、投げなくっていいのォ? さっきから当たってばっか」
「ん?」
「やるンでしょォ? パイ投げ」
「……って、これ、投げ放題だったのか!」
「なんだと思ってたのォ!?」
「食い放題」
 ごしごしして、ぺろり。
 いやしかし、これは、こすって舐めるだけではキレイにクリームを落とすことは難しい。
(「俺の毛並みが……」)
 銀色の美しくも凛々しい毛が! 残念なことにクリームでべたべたになって、ぺったんこになっている。
 それもこれも、キチンと説明しなかった誉人のせいだ。
 いきなり、事情も知らないジャスパーに向かってパイを投げつけてきたあの悪ガキのせいだ。
「そうと判りゃあ、反撃だ! 覚悟しろよ!」
 その顔に一発べっちゃりしてやらねば気が済まない。
 テーブルからひと皿取り、誉人を振り返る。
 紺と琥珀の視線がぶつかりあう。
 かくして、第一回ジャスパーVSたかとのパイ投げ合戦が――

「ダ、ダメだ……」

 始まらなかった。
 首をゆっくり降って、崩れ落ちたのはジャスパー。そんな様子に驚く誉人はパイを手に駆け寄る。
「どォしたの、JJサン? ハラ痛くなった? まだ全然食ってねえけど、調子わりいの?」
「違う……そうじゃない」
 見ろ、このふわふわで魅惑の香りを放つ、甘くて白い、生クリームを!
「食い物を投げるなんて、俺にはできねえ!」
 できるわけがないのだ!
 この、食べ物のあるとこにジャスパーありと知られる――かどうかは、この際さておく――彼に、その食べ物を投げつけることなんぞ、できるわけがないのだ!!
 でも誉人にやられた借りはある。でも投げられない。でも仕返ししたい!
 勢いよくパイに自ら顔を突っ込んで、貪りながら考える。
「じぇ、えええ?!」
 まって、コレ、この食べ方、ちょっと、イイかもしれない。
 この野性味あふれる食べ方! ここまでワイルドでクレイジーな食べ方はそうそうない。
 愉快になって夢中になって、うっかり周りが見えなくなる。
 物理的にも、いまジャスパーはクリームで視界を奪われている。
 だから、誉人がこっそり彼の背後に回っていることにも気付かない。
(「JJサンの、しっぽ……掴んだら、叱られるかな」)
 嬉しそうにぶんぶん振り回されている、ふっさふさのしっぽ。
 きっと冬毛に違いない。たぶん冬毛だ。夏よりももっこもこになっているはずだ。
「……これ、うみゃ、かふ、んん!」
 パイに夢中のジャスパーのしっぽへ手を伸ばす。指先に毛が触れた。
「たかと! おかわりは!?」
「うあ!? う、うん、あるよォ。あ、さっき、みかんももらってェ」
 しどろもどろで、彼のしっぽから退いた誉人だったが、その距離をずいっと詰めてくるのは、むろんのっぺらぼう――あ、違う、ジャスパー。
「それ、くれんのか!?」
 クリームまみれの白の中で、光る琥珀色の双眸が、やけに大きく鮮烈に見えた。
「ちょ、JJサン……! それは、反則……!」
「なにがだ?」
 んっ! とクリームまみれの手を差し出せば、その上に彼は、剥かれたみかんを乗せた。
「おお!」
 にぱっと笑顔を弾けさせた――瞬間、その顔にクリームがべったりと塗りつけられた。
「ふにゃんっ」
「あはっ、いっぱい食べてほしくってェ!」
 クリームにクリームを塗りたくったような様相に、噛み殺せなくなった笑い声が誉人から溢れてくる。
「JJサン、まっしろ……!」
 自慢の銀色の毛が――なんてチラと思ってもみたが、この口の周りの甘さに免じて許してやろう。
 みかんももらったことだし。


 桜は散るのか、このさきも咲き続くだろうか――それは分からないが。
 その下で弾ける笑顔は、甘く甘く白い幸せとともに降り続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月25日


挿絵イラスト