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人の血をぜんぶ抜く

#UDCアース #【Q】 #UDC-P #テレビ番組

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#テレビ番組


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 ◇

「畑村さーん! ちょっとこっち来てくださーい!」
「何何? 何かあった──うぅわっ! 何これ!?」

 泥の中から現れたのは、何と大量の人形だ。
「不法投棄みたいですねえ……いけませんよ、こういうのは」
「いや本当ですよ! 汚れてはいますけど、見た感じ壊れてないんじゃないかってくらい原型とどめてますし──」
 伊藤教授の言葉に続き、柄にも無く声を荒げる畑村。……すると、突然!

 何と、人形たちが一斉に動き出したのだ!

 ◇

 鼓笛隊のような格好をした人形たちが、困惑する人々の目前で演奏を始めた。
 突如鳴り響いたその音楽に、何だ何だ、と、少し離れた場所にいた民衆が集まり出す。

 ──たららららららら、たん。

 軽快なドラムの音が周囲に鳴り響くと同時に、人形たち、そして露わになった池の底に立つ人々の周辺の汚泥が、もこり、と盛り上がった。
 ……否、それは泥では無い。鎌首を擡げるようにして起き上がったそれは、とてつもなく巨大な体躯を持つ蛭だった。直後、巨大蛭は突然の事態に絶句している紫色のツナギを着た男──畑村へと、素早く襲い掛かる。
 悍ましき環形生物に吸血され、男がみるみる干からびていく。その姿を至近距離で目撃したもう一人の男──伊藤は、しかし悲鳴をあげることは終ぞ無かった。何故なら彼もまた突然現れた鋭い牙を持つ怪物に喉笛を貫かれ、既に息をすることすら叶わぬ状態となってしまっていたからだ。

 軽快な笛と太鼓の音、そして人々の上げる絶叫めいた悲鳴と共に、異形の群れが行進する。
 ……その群れの片隅には、何処か恐る恐るといった様子で怪異たちの行軍に付き従う、一体の人形の姿があった。



「“掻い掘り番組の収録中にオブリビオンが出現する”って予知を見たんだけどさ。ちょっと問題があるっていうか、事情が込み入ってるっていうか……」
 マスク姿の少女──一郷・亞衿(奇譚綴り・f00351)が、軽く頭を掻きつつ話を始める。

「……まず、オブリビオンが出現する場所──もとい、タイミングかな? それが衆人環視の中で起こる、っていうのが問題でね。予知で視た感じ、収録してる人たち以外にも近隣住民の人らが結構な数いるみたいなんだよ」
 予知現場である池付近の地形図を表示させたタブレット端末の画面を示しつつ、彼女は猟兵たちの方へと視線をやった。
「一般人を守って貰うことになる可能性があるっていうのもあるけど、何より番組収録の真っ最中っていうのがマズくて。撮影班が持ってるプロ仕様のカメラがばっちり回っちゃってる上に、野次馬の何人かがスマホでその様子をさらに撮影しちゃったりする状況になるっぽくて……ある程度はUDC組織側に対処して貰う予定ではあるけど、現場の方でもなるべく情報が広まらないよう対応して欲しいんだよね」
 小さく唸りつつ、彼女は再び頭を掻く。
「こう、組織の方から手を回して番組スタッフ全員を猟兵の皆に挿げ替える、って手とかを打てなくも無いとは思うんだけど──今回に関して言えば、ちょっとそういう手段を取りづらい事情があってさ……突然だけど、“UDC-P”って呼ばれる存在について、皆は知ってる?」

 UDC-Pとは、何らかの異常により『破壊の意思』を持たずしてこの世に出現したUDC──オブリビオンを指す用語だ。人類、ひいては世界に対して敵意を持たず友好的であることが特徴で、呼び名に冠するPとはPeace(平和)の意であるらしい。
 世界を滅亡に導く存在たるオブリビオンとしては異端の存在ではあるものの、これまでそのような存在が一切いなかったという訳では無い。例えば、シャーマンズゴースト。実際の所、かつての彼らあるいは彼女らはUDC-Pと呼称されていたそうだ。

「まあ逆に言えば、シャーマンズゴーストの人たちを除けばこれまでそういう存在は広く確認されて無かったみたいなんだけどさ。今回出現するオブリビオンの群れの中に、どうやらそのUDC-Pがいるらしくって──」
 UDC組織にとって、UDC-Pは貴重な研究対象だ。そしてオブリビオンの研究は、猟兵たちにも大きな利益をもたらし得る事柄である。
 是が非でも確保・収容・保護を行いたい所ではあるものの、発生要因が解らない以上は少しでもリスクは避けたい。例えば、予知の内容から外れるような行動を取ることによって何らかの影響が出る可能性も考えられなくはない。
「──といった事情で、流石に人的被害出したりする訳にはいかないけど、それ以外の部分はなるべく予知からズレたことする訳にはいかないって感じでして……」

 皆の様子を伺うような視線を投げかけた後、妙に恭しい態度を取るようにしながら彼女は告げた。
「……話の流れでお分かりだとは存じ上げますけれども、皆様にはそのUDC-Pの保護もして頂きたくてですね……色々やることがあって申し訳ないんですが! 何卒よろしくお願い申しあげます!!」



 程無く後。現場についての詳細説明をし終わった彼女は、猟兵たちの方へと向き直った。
「出現するオブリビオンについてだけど……デビルズナンバー、って聞いたことある? 中には戦ったことがある人もいるかも知んないけど、それの一種で──」

 ──不可思議殺人オブジェクトが一つ、デビルズナンバーにぎやかし。
 顔面にナンバー631が刻まれた人形めいた姿形をしているそのUDC怪物は、個々の直接戦闘力こそほぼ無いに等しいものの、『他のオブリビオンを召喚し、鼓舞することによって支援する』といった類のユーベルコードを使用する。

「ぶっちゃけた話、どんな敵が召喚されるかまでは予知で解んなかったんだよね……これも問題点といえば問題点かもだけど、まあ『にぎやかし”たちを倒せば新手は召喚されなくなるはずだしさ。何とかなる範疇だと思うよ」
 事前に情報あるだけマシかもね、と気休めの言葉を付け足した彼女は、一息置いてから話を続ける。
「で、さっき話したUDC-Pについて。“にぎやかし”たちの中に帽子を被らず手に持った楽器を演奏していない個体がいて、それが件のUDC-P……まあ、基本的には一目見れば“それ”だって判別出来るって話みたいなんで、あんまり気にしなくていいかも。参考程度に覚えておいてね」
 オブリビオンが猟兵を見たら一目でわかるっていう奴の逆バージョンみたいな感じなのかな、と余談を挟んだ後、彼女は再び猟兵たちの方へと視線をやった。

「外見の話はさておき、もう一つ。場の制圧が済んだ後、簡単なやつでいいからUDC-Pについての対処マニュアルを作っておいて欲しいんだ。収容するにあたっての注意点とか、そういう感じの。UDC組織の人に引き渡した後、輸送中に何かあったら困るからさ」
 そう告げつつ、彼女は四角錐型のグリモアを出現させると転送の準備を開始する。

「転送の後、少ししたら番組MCの畑村さんが騒ぎ出すはずだから、それを合図に対処を始めてね。UDC-Pの保護の方も忘れずによろしく!」


生倉かたな
 はじめましての方ははじめまして。そうでない方はご無沙汰しております。生倉かたなと申します。
 オープニングの文字数が足りなくなったのでこちらに書きますが、掻い掘り(かいぼり)とは農業用水目的の溜池等に溜まった水を一時的に排水して堆積した土砂や泥を除去することにより水質改善を行うことを指す用語です。簡単に言うと、外来生物の駆除とかを目的として近年TV番組でよくやってたりするやつです。

 余談はさておき。シナリオ内容についてですが、①カメラを止めた後、②デビルズナンバーにぎやかし(および召喚されたオブリビオン)の群れを倒し、③UDC-Pである同個体を保護&組織への引き渡し前に対処マニュアルを作成する……といった内容となります。
 ②については古今東西の血を吸う系の怪物を召喚させる予定ではありますが、敵についての描写等がプレイング内にあれば対応できる範囲で対応させて頂く所存です。お気軽にご参加ください。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『カメラを止めるんだ!!!』

POW   :    カメラを止めろ!

SPD   :    ネット配信を止めろ!

WIZ   :    魔法や魔術で誤魔化せ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

野次馬を散らしながら戦えって、
一郷さんも無茶言うなよ!
仕方ねぇ、現場に溶け込みながら誘導するしかねぇか……!

全員までは無理だとしても、下っ端程度なら大丈夫だろ?
番組の撮影クルーの下っ端に『変装』し、
畑村さんが騒ぎ始めた頃合いを見て現場へ近寄る。
それこそカメラに被って撮れ高を下げるくらいにね。
怒られたら「新人ですんません!」と謝っとくよ。

で、襲われそうになった瞬間も近くにいれば、
【縁手繰る掌】での超短距離転移も違和感ないだろ?
蛭の一撃を空振りさせつつ、周りが騒いでいる隙に
伊藤教授もそれとなく近くに引き寄せる。

そして最後はダメ押しさ。
「不発弾っぽいのが見えたんすけど…」





 掻い掘り真っ最中の池の中では、防水性のオーバーオールやゴム長靴を身につけた人々が忙しなく行き交っていた。

「おーい! そこの手空いてる奴、バケツ持ってきてー!」
「あっ、はーい! 今行きますんでー!」
 声を掛けられたその女性──数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は生物退避用の大きなバケツを持ち上げながらそう言葉を返すと、作業のため軽く後ろで纏めた焦げ茶色のウェーブヘアを揺らしつつ自身を呼んだスタッフのいる方へと向かう。

 全ての人々と入れ替わることは無理だとしても、ごくごく下っ端のスタッフとして潜入する程度であれば問題は無いだろう──そんな目算の元、多喜は各種アシスタント要員のスタッフに変装して番組クルーの中に紛れ込んでいた……の、だが。彼女が作業に加わってから暫く経つが、今のところ件の“合図”とやらが起こる気配は無い。
 番組の主役たる二人、そして他の守るべき人々に比較的近い場所に陣取れるのは大きな利点ではあったとは言え、即対応出来るよう気を払いつつこの重労働を行うのは色々大変であることも確か。しかも事が起こった後には、人々を守りつつさらに野次馬を散らしながら戦わなければならない。
 結構無茶言うよなあ、と心の中でぼやきつつ、持って行ったバケツと交換するようにしてタモ網を手渡された彼女は改めて周囲の様子を見回す……と、ちょうどタイミングよく、と言うべきか。その視界の片隅に、少し離れた場所でスタッフ数名が何やら話し込んでいる姿が入った。

「……これ、畑村さんにも見て貰った方が良さそうですかね?」
「そうだね、これは放送で取り上げて貰いたい所かな。この量、誰かが意図的に捨てたものとしか思えないし……畑村さーん!ちょっとこっち来てくださーい!」
 番組MCの畑村へと向け大声をあげたのは、技術協力者にして解説役の伊藤教授。
「何何? 何かあったんですかぁー?」
 その声を受け、少し離れた場所で別の作業にあたっていたらしき紫色の服を着た男──畑村は、教授の方へとえっちらおっちらと近づいていく。

「おっと、そろそろ“本番”ってワケか。じゃ、一丁やってやるかねぇ!」
 うしっ、と気合いを入れるようにして呟くと、多喜も教授たちのいる付近へと向かっていった。



「──うぅわっ! 何これ!?」
「不法投棄みたいですねえ……いけませんよ、こういうのは──」
 池の底に堆積していた泥の中から出土した大量の人形の姿を見、畑村が大きくリアクションを取った。それに応じ、教授が言葉を続ける。
 
「ちょっとキミ! 被ってるからそこ退いて!」
 声量こそ小さいものの鋭い語気で放たれた撮影担当スタッフのそんな呼びかけを受け、畑村たちの至近へ近付かんとしていた多喜は、すんません、と軽く頭を下げた──無論、カメラに映りこんでいるのは計算のうちだ。ぬかるみに足を取られて上手く動けない体を装いつつ、彼女はそれとなく撮影の妨害を行い続ける。
 カメラマンは少し苛つく様子を見せた後、カメラを担いだまま横へと移動しつつズーム倍率を上げ、画角を狭めた。畑村たちと人形の映像を同時に撮影するのを一旦諦め、多喜の姿が見切れないよう主役陣の姿を抜く目論みだ。そして、そうさせることが多喜の狙いでもあった。

 ──てててってん、どんどん、てんてん。てけてけてん、どん、てててってん。
 てーってってー、てってーてーん。てってけてってー、てーってててーってーん──

 人形たちが動き出し、手に持った鼓笛を演奏し始める。
 突然の事態に、ごく狭い範囲を表示するビューファインダーを覗いていたカメラマンはその姿勢を保ったまま慌てて人形たちの方へとレンズを向けようとする……が、いかんせん足元が悪いのもあり少しふらついてしまった。一瞬、カメラがあらぬ方を向く。
「……今だっ!」
 多喜はそう小さく言い放つと、片手のタモ網をカメラマンたちの方へと向かって投げ捨てた。そして唖然とした表情を浮かべながら様子を眺めている畑村へと向け、彼女は掌をかざすような姿勢を取り──直後、彼女の姿が掻き消えた。そして、畑村の姿までもがその場から消失する。それからほとんど間を置かずして、先程まで多喜が立っていた所から数メートル程度離れた場所──先程の畑村や今他のスタッフたちが立っている場所からすれば人形たちから遠ざかるような場所に位置する地点に、消えた両名が出現した。
 一体何が起こったのか全く理解できずぱちくりと目を瞬かせる畑村を余所に、多喜は自身の足元にあった大きな石を踏み台にして伊藤教授がいる方へ跳躍すると、教授の近くでむくりと起き上がりつつあった蛭の化物の巨躯を狙って飛び蹴りを放つ。そしてそのまま、彼女は倒れ伏す怪物蛭を横目に空中で腕を振るった。

 彼女が先程使用した、そして再び発動せんとしているその技──『縁手繰る掌(アポート・アンド・テレポート)』という名を持つそれは、その名の通りアポート(引き寄せ)とテレポート(転移)を同時に行うユーベルコードだ。
 今まさに尻餅をつき泥を跳ね上げんとしていた教授と共に、彼女は先程とほぼ同じ地点、畑村のいる付近へと再び短距離転移を行う。

「えっ、何!? 何が起きたん!? あれ!?」
 突然自分の立っている場所が変わっていたことにようやく気付いたらしき畑村が、素っ頓狂な声を上げた。一連の騒ぎで完全に体勢を崩してしまっていたらしき撮影班の面々も、何だ何だ、とばかりに泥の付いた撮影機材を抱えて三人のもとへと群がり始める。
 ひとまずメインパーソナリティ二人を初撃から守ることに成功した多喜はほんの少しだけ胸を撫で下ろしつつ、助け出した二人と近付いてくる人々に声をかけた。

「怪我とか無いっすか? ……何かこう、爆発でもしたんすかね?」
「ば、爆発……?」
「いや、実はですね。あっちの方に不発弾っぽいのがあって、アタシそれについて話をしに来たんすけど……」
「えっ……はあ!?」
「何かここヤバげですし、一旦離れて対応とか考えた方が──」

 いかにも下っ端の新人スタッフです、といった口調を装いながら、多喜は素早く周囲へと視線を飛ばす。どうやら、他の猟兵たちも表立って行動を開始したようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

波狼・拓哉
…掻い掘り自体は悪いことじゃないから文句言えないけどこれ池の底に封印されてた奴では???他のUDCに目をつけられる前で良かったと捉えるのか一般人が巻き込まれたのを嘆く方どちらがいいのだろう…?
まあそういうのは終わってからでいいや。ミミック、化け透かしなっと。透明化して戦闘知識から後遺症の残らない当身を一般人にあてて気絶させて護りやすい用に一か所に集めておこう。…きっとUDC組織が何かしらのシナリオ立ててくれるだろうしね!
狙うのはスマホ撮影してる人からかなぁ。TVカメラならデータ回収も出来るだろうけどスマホは個人個人だし迅速に止めたい。落とした後にデータ消すのもやっておこうか
(アドリブ絡み歓迎)





 池の中で騒ぎが起こる、少し前のこと。

「……掻い掘り自体は悪いことじゃないから文句言えないけど、あれ、池の底に封印されてた奴では……?」
 池の周囲を取り囲む見物人たちに紛れて様子を伺っていた青年猟兵、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は、泥の中から掘り起こされつつある人形の姿を眺めてそうぼやいた。

 話に聞くところによれば、件の人形たち──デビルズナンバーにぎやかしは、支援することに特化した能力を持つUDC怪物らしい。
 他のオブリビオンに目をつけられる前に発見出来て良かったと捉えるべきか、それとも一般人が大勢巻き込まれかねないこの状況下でオブリビオンが出現したことを嘆くべきか。複雑な心境をそのまま表すようにして、彼は眉を顰める。

「……まあ、そういうのは終わってからでいいや」
 気を取り直すようにしてそう独りごちつつ、彼は数歩後ずさりするようにして一旦群衆の中から脱すると、ユーベルコード『偽正・非実恐怖(ドレッド・シナスタジア)』を発動した。
「それじゃ、ミミック。化け透かしな、っと」
 そう誰かに呼びかけた彼の体が、見る間に朧げになっていく──相棒たる箱型生命体“ミミック”の力を借りて透明化した彼は、池の状況へと気を配りつつも周囲の人々の様子を注意深く観察する。

「さて、狙うのはスマホ撮影してる人からかな」
 背の低い柵の近く、スマートフォン端末を池の方に向け構えるようにして持っている女性の姿を発見した拓哉は、まばらに人が集まっているその一角に立つ女性の背後へと静かに、しかし素早く駆け寄った。そして即座に当身を食らわせ、呻き声を上げる間も無くして彼女を気絶させる。
 外傷、そして後遺症が残らないよう、倒れこむ女性の体を介助するべく拓哉は彼女の体を支え、肩を組むような体勢を取った。念のため、とばかりに気を失った女性の顔にミミックが化けた仮面を装着させることにより、彼は彼女の姿をも透明な状態へと変化させる。
「適当に転がしておく訳にもいかないよなぁ……あー、あの辺でいいか」

 池側からは丁度生垣を挟んで見え辛くなっている場所にあった藤棚の下、長いベンチの上に女性を横たわらせて彼女の透明化を解くと、拓哉は再び群集の方へと向かった。そしてスマホを持つ人を発見し次第近寄って当身、その後運搬することを何度か繰り返す。
「騒ぎが起こる前から撮ってる人はなるべく減らしておきたいけど……時間、まだ大丈夫そうかな?」
 当然のことながら、拓哉のそんな独り言に気を向ける者は誰もいない。そしてそれは、彼の存在に気付いている者が誰もいない、ということと同義でもある。
 本来であればそんな状態で人の群れの中を歩むことはそう容易では無いはずだが、しかし彼は池の方へと意識を向けている人々を上手く避け、時にはごく軽く押しのけながら、てきぱきと己に課せられた任務を遂行していく。先の当身と言い、この辺りは彼の持つ戦闘知識のなせる技、といったところだろうか。
 気絶させた人々の中には、撮影した映像を動画投稿サイト上で生中継していた者も数名いたようだ。うわ危ねぇ、等と呟きながら、彼は目に付いた分の撮影していた人々を概ね拉致──もとい、保護し終えると、彼らが持っていた端末内の撮影データがちゃんと消去されていること等を確認した後に自身の透明化を解いた。かなり疲れはしたものの、成果は上々と言える。

「いや、思ったより集められたのはいいけど……」
 UDC組織に現在位置情報を送信し終えた拓哉は、自身の特別製スマートフォンを仕舞いつつ改めて周囲の様子を見やる。
 ……ぐったりと倒れ伏した人々が大量に集められているこの一角には、既にもう何らかの事件が発生したっぽい感じの雰囲気が漂っていた。

 隠蔽用のシナリオとかどうするんだろうこれ、と半ば他人事のように考えていた彼の耳に、池の方から響く複数の悲鳴が届いた。一瞬身構えるも、声音の雰囲気的にそこまで差し迫った状況って訳でも無いかな、と直感した拓哉は、先程仕舞ったスマートフォンを取り出す。
 推察するに、他の猟兵が“避難誘導”でも行い始めたのだろう。UDC組織へ作戦開始の旨を連絡すると共に、彼は避難の補佐をするべく再び池の方へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アンテロ・ヴィルスカ
カメラ…あぁ、あの黒いのかな?それにスマートフォンなら知っている
故郷にはないがUDCアースで幾度か仕事をしていれば流石にね
さて、撮影はご遠慮願おう。

野次馬に紛れつつ、UCを発動
俺が捉えられる範囲全てのカメラ内の無機物製部品を雪に変えるよ
あくまで一部、一時的に故障させる程度で構わない
あまり派手にやると、後処理をする彼らが可哀想だからね

しかしUDC-Pか…
直感で敵でないと分かるオブリビオンだなんて、どんなものか楽しみだねぇ。

アドリブ等、ご自由に


黒木・摩那
【WIZ】
一般参加者を避難させる時間を稼ぎつつ、情報も止めろ、とはなかなかに難しい依頼ですね。UDCも人が悪いです。
ですが、やらないと後で色々と面倒なことになめのは確実ですし。
頑張ります。

始まりが音楽というのでは突然避難を呼びかけても、足が鈍るというもの。

そこでUC【虎蜂旋風】で周辺の土を変換してスズメバチの群れを出します。
さすがにスズメバチなら皆、撮影も放って、逃げるでしょう。
スズメバチには脅すだけで刺すのは厳禁にします。

それでも、撮影を試みるならば【念動力】でスマホを回収します。





 池の周りを取り巻く遊歩道にて。

 何やら騒がしくなった池の様子を柵越しに見つめる人々の傍ら、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はその顔に掛けた赤い眼鏡──高性能ウェアラブル端末であるそれに、軽く手を添えるようにしながら呟く。
「一般の方々を避難させる時間を稼ぎつつ、情報も止めろ、とは……なかなかに難しい依頼ですね」
 とは言え、やらないと後々余計な面倒が発生することは必死。UDCも人が悪いです、とほんの軽い溜息を吐くと、摩那は人形たちがいる付近、そして先程敵の奇襲を防いだらしき他の猟兵がいる場所を、眼鏡越しに確認した。
 レンズに表示された情報を見るに、どちらの地点も自身から50メートル程度離れた位置であるようだ。一応“届く”範囲内ではあるものの、あちらの避難に関しては仲間に任せても問題は無いだろう。そう判断を下し、彼女は周囲の状況を今一度確認する。

 テレビ番組の収録中だったということもあるのだろうか。この明らかな異常事態を受けて多少騒ぐそぶりこそ見せてはいるものの、池の様子を眺める人々の様子は未だ呑気そのものといった調子だ。それどころか、演奏を聞きつけた人々がさらに近付いて来てすらいる始末。
 周囲に響く少し楽しげな調子の音楽のせいで避難の呼びかけの声が通りづらい上、こんな状態では仮に避難を促したところですんなりそれに従って貰えるとも限らない。ならば、と、摩那は汚泥が除去されて露わになった池の底を横目で見やった。
 目に見えて判りやすい異常が発生していないなら、発生させてしまえばいい──彼女は静かに、言葉を紡ぎ始める。

「天に集いし精霊よ、物に宿りて我に従え。姿さずけよ──」

 ──直後。
 摩那や見物人たちの足元、そして池の底から這い上がって来るかのようにして、突如大量のスズメバチが出現した。



 スズメバチの群れが、カチカチ、と音を鳴らす。大顎を噛み合わせることによって発されるその警戒音は、言わば最後の警告──これ以上近づくと攻撃するぞ、という、明確な敵意の表明だ。
 ……実際のところ、その事実を正しく認識出来ている者がこの場にどれだけいるのかは判らない。だが、何か良からぬことが起ころうとしているのでは、と人々が認識するに至るには、それは十分過ぎる程の予兆であったと言えるだろう。
「う、うわぁああっ──!!」
 誰かが悲鳴を上げたのを皮切りに、池の周囲で見物していた群衆は蜘蛛の子を散らすようにして一斉に逃げ出した。

 混乱の最中、摩那は脇目も振らずに走る他の人々に衝突しないよう道の端に寄ると、自身のユーベルコードである『虎蜂旋風(ミストラル・ホーネット)』によって生み出された蜂の群れへと意識を向け、逃げる人々を追わせ始める。
 脅すような真似こそしているが、当然ながら人々に危害を加えるつもりは無い。蜂たちがその腹端に備え持つ毒針で人を刺すことの無いよう十分注意を払いつつも、彼女は周辺の様子を改めて確認するべく鋭い視線を四方へ飛ばした。

 遊歩道の外縁に植えられている生垣に誰かが落としたらしきスマートフォンが半ば突き刺さるような状態で取り残されていたのを発見し、念のため確認しておきましょう、とばかりに摩那は自身から少し離れた場所にあったそれを念道力を用いて手元へと引き寄せる。
「……あら?」
 ひゅん、ぱしり、と飛ばした携帯電話を片手で受け止めた摩那は、ほんの少しだけ違和感を覚えた。何となく、といった程度ではあるものの、濡れたような感触があったからだ。
 端末の画面は暗く、試しに電源ボタンを押してみたものの点灯する様子は無い。一連の騒ぎの中で池の水か何かが掛かり、故障でもしてしまったのだろうか?



 時をほぼ同じくして、こちらも池の外周付近。

「ほう、派手にやってるねぇ」
 逃げ惑う人々の様子をほんの少し離れた場所から眺め、アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は何処か愉快そうな声音で言葉を紡いだ。

 野次馬に紛れて一連の様子を眺めていた彼は、この騒ぎの発端──摩那の姿こそ視認出来ていなかったものの、その誰か不明な猟兵が使用したらしきユーベルコードの効果についてはある程度予測をつけていた。というのも、彼が発動しようとしていた“それ”も、先程この騒動を起こす際に用いられたものと類する点を持っていたからだ。
「……さて、俺も動くとしよう」
 彼の立つ付近にも、逃げる民衆と蜂の群れがやって来つつあった。しかしそれを意に介する様子も無く、アンテロは混乱を余所に池の方へと視線を飛ばす。

 視線の先、アンテロから数十メートル程離れた場所。ばちゃばちゃと泥飛沫を上げる一団の姿がそこに在ることを認めると、彼は高い背を少し屈めるようにしながら目を凝らした。
 池の外へと退避を始めた撮影スタッフと思しき人々のうち数人が肩に抱えている、何やらごちゃごちゃと部品の付いた黒っぽい機材。恐らくはあれが、転送前の話にあった“プロ仕様のカメラ”というやつだろうか──そう当たりを付けつつ、彼はユーベルコードを使用する。

 ひゅう、と、アンテロの周囲に冷たい風が吹いた。

 変化としては極々僅か、傍目に見れば何かが起こったようにも思えない……いや。改めてよくよく観察してみれば、カメラの上部にマウントされていたガンマイクが脱落してしまったらしき様子。
 突然落下したマイクをスタッフたちが慌てて泥中から引き抜いているのを眺め、あの辺りまでなら問題無く届くようだ、と一人頷くようにすると、アンテロは半ば狂乱状態に陥っている野次馬の方へと視線を向ける。逃げる人々の姿を撮影しているらしき人物が周囲に数名いることに気づき、彼は再び先と同じユーベルコード──『不香の花』を発動した。
「おっと、君らにも撮影はご遠慮願おうか」
 再びアンテロの周囲に冷気が舞い、それと共に見えざる異変が発生する。

 間も無くして、騒動を録画せんとしてスマートフォンを構えていた一人の少年が、あれー? と声を上げた。片手に持った端末を何やら操作し、しきりにぶんぶんと振ったりしている姿を見るに、携帯電話が運悪く故障でもしてしまったのだろうか?
 ……自身の手中にある精密機械、その内部の電子回路が突然ショートしたということに、少年は気付く由も無い。それが偶然でも何でもなく、少し離れた場所に立っている色黒肌の男──アンテロによって意図的に引き起こされたものである等とは、想像することすら出来ないだろう。

 摩那とアンテロの使用したユーベルコードに共通する事柄。それは即ち、“無機物を変換して操作する”、という点だ。
 摩那は土壌に含まれている粘土や砂といった無機成分をスズメバチへ、アンテロは電子機器の金属・ガラス部品や機器内部に存在する無機半導体──シリコンや珪素等を使用したそれを雪へと変換して操作することにより、前者は目に見えて分かり易い形で人避けを、後者は非常に目立ちづらい形で撮影の妨害を行ったのだ。
 全く以って、ユーベルコードとは多種多様で興味深い。アンテロはそんなことを考えながら、ほんの小さく笑う。

 興味と言えば──と、彼は頭を振るようにして再び池の方へと向き直った。
 周囲の状況を気にしているのかいないのか、いまいち判然としない様子で演奏を続ける人形の群れ。未だ泥中から新たに姿を現し続けるそれらを見やり、ふむ、と彼は顎に手をあてる。
「……UDC-P、か。直感で敵でないと分かるオブリビオンだなんて、どんなものか楽しみだねぇ」
 飄々とした調子でそう呟き、アンテロは薄く笑みをこぼした。

 純粋な興味本位か、あるいはそれ以外に何か思うところがあるのか──彼の浮かべる捉えどころのないその表情を見る者は、民衆が散り散りになりつつある今、誰もいない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

玖篠・迅
スマホの対策も畑村さんに伊藤さんも大丈夫みたいだし、撮影班とか見物の人たちの避難が終わるまで、にぎやかしと呼ばれた怪物たちが騒がないよう「時間稼ぎ」やってみるな

「目立たない」ように小さくした霊符をたくさん用意して「破魔」と「麻痺攻撃」で金縛りの呪い込めたのを飛ばすな
太鼓の棒に叩くとことか、笛は音が出るとこ霊符で覆って演奏の邪魔も狙っとく
呼ばれた怪物は胡蝶に幻で泥を獲物に見えるように頼んでみようか
幻があんまり効かないなら、こっちも霊符で動きとめるようにする

UDC-Pに霊符が当たっても効果が出ないように気をつけるな
他のにぎやかしから怪しまれないよう、動けない演技してくれると助かるけど伝わるかなあ…





 スタッフたちが一時避難を始め、そして見物人たちも池の周囲から退散し始めた。その傍ら、ひょい、と池の畔にあった茂みから一人の少年が顔を覗かせる。
「カメラ対策と避難の方は大丈夫みたいだし、俺は時間稼ぎに回るかな……っと!」
 手毬のヤドリガミにして陰陽師であるその少年猟兵、玖篠・迅(白龍爪花・f03758)は小さな紙束のようなものを取り出して構えると、それらを人形たち、もとい“デビルズナンバーにぎやかし”たちの方へ向かって投げ放った。

 紙たちはまるで意思を持っているかのようにして地面すれすれを飛び、鼓笛を奏でながら行進を始めようとしていた一団のもとへと到達する──にぎやかしたちの体や楽器へと瞬時に張り付いたそれの正体は、金縛りの呪いが込められた霊符だ。楽器にへばりついた符を剥がし取ろうとしていたにぎやかしたちの数体が、痙攣するかのようにして動きを止める。
 符を脅威と感じ取ったのか、先程畑村たちを襲おうとしていた巨大蛭、そしていつの間にか新たに召喚されていたらしき牙持つ二足歩行生物が、周囲を飛び交う小さな霊符の群れを払い除けんとするべく身を捩らせたり腕をぶんぶんと振るったりし始めた。無論、迅がそれを黙って見ている道理はない。
「おっと、そうは行くかっ!」
 彼は『胡蝶』の発動により蝶々の式を召喚すると、それらを再び池の方へと飛ばす。
 飛来する新手の姿に気づき、怪物たちが蝶へと視線を向ける──かかったな、とばかりに、迅が不敵に笑った。

 瞬間。ぶわっ、と蝶たちが一斉に展開し、周囲に鱗粉めいた煌めきを撒き散らす。すると一体どうしたことだろうか、怪物たちは突如あらぬ方向へと攻撃を行い始めた。
 足元のにぎやかしたちを含む同胞の姿には目もくれず、それどころか同士討ちすらしかねない勢いで足元の泥を踏み荒らすかのようにして暴れる怪異たち。突然の事態に、さしものにぎやかしたちも演奏を止め右往左往をし始める──これは迅が放った蝶の式たちが怪物たちにのみ幻覚を見せるよう働きかけていたためであったのだが、無論そんなことは人形たちが知り及ぶべくも無い。

「……さて、UDC-Pっていうのはどいつのことなのかな?」
 迅は少し息を吐くようにした後、自身の意識を蝶たちの方へと向け、五感を蝶と一体化させる。慌てた様子の人形たちの一群を蝶の視界で見渡し、程無くして彼は隊列の後方付近に帽子を被っていない個体がいるのを発見した。
 敵意が感じられないというか何というか、少し不思議な感覚。何となく頼りなさげな雰囲気を漂わせるその小さな人形型UDCの姿を見やり、迅は直感する。間違いなく、あれが件のUDC-P──今回の主目的、保護対象だろう、と。

 瞬時に迅は懐から新たな霊符を取り出し、それをまた投げ放った。
「あれで“伝わる”といいけどっ……!」
 彼のそんな願いと共に符は飛び、暴れる怪物の間隙をすり抜け、UDC-Pのもとへと辿り着き──しかし先程放たれたそれとは異なり、符はにぎやかしに張り付くことは無く、その眼前でふわり、と浮かんだ。
 怯えるようにして顔を背けていたUDC-Pが、恐る恐る、といった様子で目前の符を見やる。すると、その表面にはこんな文字が書かれていた。
 
『助けにきた。少し動かないふりしててな』

 直後、ぺん、と符がUDC-Pの顔、おでこの辺りに張り付いた。それからほんの少しだけ遅れるようにして、こてん、べしゃ、と、人形がその場に倒れる。
 若干不自然な動きではあったものの、金縛りの霊符、そして蝶の飛び交うこの混乱の最中、その様子に注意を向ける者が周囲にいるはずも無い。

「……ひとまず、これでよし。もう少し時間稼ぎしとくかな」
 周辺の様子を軽く見やって確認しつつ、迅は引き続き霊符と式を用いて妨害工作を行い始めた。
 直近の人避けはほぼ完了しつつある。そろそろ、他の猟兵たちも池の付近へ集まってくる頃合だろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

レッグ・ワート
そんじゃ逃がすか。

事前手配アリならバスと運転手役他手数と催眠ガスと記憶消去銃、後は中で流す映画と安眠グッズ類宜しく。駐車場か近場に停めておいた車内に一般人乗せて、外が落ち着くまでカーテン引いて映画観て貰う感じで。俺らの仕事の時間がかかりそうだったり音でかそうな時はじわじわ催眠ガスしといて。……壊れ物で騒ぐ奴いたら、後日お届けで交換受付やったりできたら頑張れ。

俺は近くに局のバスが来て停まってる体で、バスまでの道を局の連中に口頭で伝えて誘導させる。そんで転げてるのを回収するぜ、寝違えそうだし。こっちはそれぞれ地元の公園やらどこかやらで、風邪ひきますよって起こしてとっとと退くくらいでよくない?だめ?


葛籠雄・九雀
SPD

池の底に、何ぞ沈んでおれば良かったのであるがなあ。
吸血蛭では興も乗らん…まあ、UDC-Pは気にならんわけではない。
一体どういう理屈なのであろうな? オレにも触らせて欲しいものである。

さてネット配信…ふむ。
池なのであろう? 遊歩道周りに木々はないか? もしあれば、そこへ【忍び足】で近寄り、オキザリス・パルマで飛び登りたいが。難しそうであれば物陰で良い。
そこから、民衆のスマホ目掛けてフック付きワイヤーを【投擲】。【武器落とし】で回収できるか試してみるである。
面倒そうであれば、眠り薬でも塗布した投げ針を【投擲】して黙らせ、回収。
配信か人か、どちらかが止まれば良いのであろうしな。

アドリブ連携歓迎





「ふぅむ、そろそろ頃合であるかな」
 遊歩道からほんの少し離れた場所に立つメタセコイアの木の上。混乱する敵の様子をその高い場所から見下ろしつつ、仮面の男──葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)はそう呟いた。
 池の周囲には先の蜂騒ぎの影響を受けなかったらしき見物人たちがまだ若干名残ってはいたが、被害を蒙る可能性が最も高かった番組スタッフたちは既にその大多数が池の中から脱していた。そして遠くを見れば、どうやらUDC組織の一般エージェントらしき人々も現場に到着しつつある様子だ。
「しかし、これまた妙なものが沈んでいたものであるなあ。吸血蛭程度では興も乗らんが……」
 雑多の敵共についてはともかく、UDC-Pには多少なりとも興味がある。破壊の意思を持たないオブリビオンとは一体どういう理屈なのであろう、と思いを馳せつつ、彼は眼下を見やった。

 当然ながら、この高い木の上に気を払っているものは誰もいない。一応、とばかりにそれを確認した上で、九雀は太い幹を足の底で蹴って木の上から跳躍した。そしてそのまま宙を“蹴り”、数度空中を跳ねるようにして隣の木の上へと移動を果たす。
「おっとっと、落とすと面倒である。気をつけねば」
 不安定な樹上で姿勢を整えつつ、彼はベルトに挟むようにして保持していた数台のスマートフォン──先の騒ぎの際に見物人たちから掠め取っていた、それらの位置を正す。
 彼はそのままベルトの横へと手を伸ばし、そこに取り付けられていたフック付きワイヤーを片手で掴んだ。先程機器を回収する際に用いたそれを半ば手持ち無沙汰といった様子でひゅんひゅんと振り回しつつ、彼は再び眼下を眺める。

「……おや?」
 池の周囲にある遊歩道のさらに向こう、幅の広い道路がある付近を眺め、ふと何かに気付いたらしき九雀が声を上げた。
 彼は少し思案してから再びベルトに挟んだ携帯端末の位置を確かめた後、この高い木々の上に登る際、そして先程空中を移動する際に使用したユーベルコード『オキザリス・パルマ』を用い、少しずつ高度を下げるようにしながら何処かへ移動を始めた。



 それより少し前のこと。

 車道の傍らに、大きなバスが停まっていた。乗降口付近に何やら乗務員らしき人が立っている様子を見るに、誰かの乗車待ちかあるいは休憩中か何かだろうか。
「お、そろそろか」
 池の方から響いてきた喧騒を耳にし、バスの傍らに立つそのやたらと背の高い男は顔を上げ、池の方へと歩いて行く。

 カメラや機材を抱えたスタッフたちが池の土手から歩道へと抜け出してきたのを見、先程バスの近くに立っていた男はどうも、と挨拶した。
「撮影班の方、お疲れさんです……ってあれ? もう休憩時間になってたっけ?」
 見慣れぬ巨漢から突然そう話しかけられたスタッフたちは一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、件の男がTV局の職員証らしきものを首から提げているのを認めると戸惑いつつも軽く会釈を返す。
 何せ人手が必要な撮影であるのだし、知らない顔のスタッフがいても当然だろう──少し違和感を残す心にそう折り合いをつけつつ、いや実は予定が変わって、と、スタッフの一人が事情を話し始めた。
「あ、ああ……いやその、いきなり爆発が起こっただの、不発弾が見つかっただのって話で……」
「そりゃあ大変だ。ひとまずあっちの方に局のバスがあるんで、そこで待機して貰えます?」
 そう言いつつ、男は少し離れた場所に停車しているバス──通常の撮影時に使用するロケ用マイクロバスより一回り大きなそれを指差し、作業員の送迎用の奴ですけど、と補足する。

 自分たちが使っているロケバスの駐車場所までは少し距離があるし、今後の対応について話し合いもしなければならない。ある程度人数を乗せられるのなら特に問題も無いだろう──そう判断を下したスタッフたちは再び男へと会釈すると、周囲の人々に声を掛けつつががやがやとバスのある方へ向かい始めた。

 シートに泥つけないよう気をつけてくださいねー、等と言葉をかけながらスタッフたちの背を見送った後、背の高い男はほんの少しだけ項垂れた。
「……ま、これも救助活動のうち、ってもんだ」
 小さな声でそう独りごちた後、彼は続々とやってくる他の人々にも声をかけ、大きなバスの中へと誘導していく──



 ──数分後。
 スタッフたちを誘導していた背の高い男──こと、ウォーマシンのレッグ・ワート(脚・f02517)は一旦バスが停まっている場所まで戻ってくると、2メートル半を越すその巨体を少し屈めて車窓越しに車内の様子を伺った。

 先程までの様子とは一変して、窓に薄いカーテンが掛けられた車内は不気味なほど静まり返っていた。話し合うどころかひそひそ声を上げるものすら一人もいない。
 ……まあ、ごく低濃度ながらも催眠ガスを知らぬうちに吸入させられてしまったのだ。無理もないことだろう。ガスマスクを装面した運転手の姿を何の気無しに眺めた後、彼は微睡む人々の身体状態をカーテンの隙間越しにスキャンし始めた。
 移動中に転倒でもしたのかごく軽度の負傷を有しているらしき者が数名いたものの、感染症の恐れは無さそうだしひとまず放っとこう、と判断し、彼は引き続き解析を続ける。その過程でスタッフの所持する撮影機材等の幾つかが故障しているらしきことに気付き、これ全部交換対応とかするんだろうか、色々大変そうだな、等と彼が考えていると、その傍らにしゅたっと音を立てて誰かが降り立った。

「おお、誰かと思えばレグちゃんではないか。こんなところで奇遇であるなあ、テレビ局の社員に転職していたとは知らなんだ」
「……それ、解ってて言ってるよな?」
 冗談めかした陽気な口調で話しかけてきた仮面の男──九雀の姿を見やり、レグはやれやれといった様子で軽く頭を振る。
「俺の仕事はいつもと変わらず、今も絶賛救助活動中だよ。とりま、ここは大丈夫そうか」

 レグは近くを通りかかった一般UDCエージェント──未だ池の周囲に残る人々の避難誘導を行っていたらしきその人物を呼び止め、数十秒程話し合った。手早く話を纏め終わると、彼は池の方、遊歩道の辺りへと視線を向ける。
「じゃ、後はよろしく。眠らされてる人がいるのってあっちの方だったっけ?」
「待った。残りの避難誘導やら救助やらは職員ちゃんたちに任せるのである」
 九雀は掌をかざすような格好を取りつつそうレグを制止すると、先程樹上から見た一連の状況を、レグ、そしてエージェントへ簡素に告げる。

「……今は他の猟兵ちゃんが敵を抑えておるようではあるが、ずっとそうしていられる訳でも無かろうしな」
「なるほどね。そんじゃ、俺たちはUDC-Pとやらを“逃がし”に行くとするか」
 頭を下げて見送るエージェントに軽く手を上げて応じ、二人の猟兵はこの事件の発生現場たる池の底へと急行するべく走り出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『六三一『デビルズナンバーにぎやかし』』

POW   :    悪魔の召喚(デビルサモン)
いま戦っている対象に有効な【強化をされたオブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    悪魔の応援(デビルチアリング)
【応援の力で強化されたオブリビオン】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    悪魔の救援(デビルリリーフ)
【オブリビオンにしか理解出来ない行進曲】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アンテロ・ヴィルスカ
あの泥の中に彼らを押し留めた方が楽にやれそうかな
しかし足元は汚したくないねぇ……絶対に。

先ずはUCで抜け切っていない池の水を凍らせよう
土手からぐるりと囲むように氷柱を突き刺し、池の中心部分は凍らせず敵の出現位置を絞るよ

氷上に上がってくれば【輸血瓶】の血を撒き、巨大蛭を【おびき寄せ】UCで凍らせ斬り砕く
混戦を避ければ多少、UDC-Pも探しやすくなるかな?

人形への応戦には二本の剣と【念動力】を伝わせ泥に忍ばせた銀鎖を
大技でUDC-Pを巻き込まないよう一体一体、足を狙う

もしUDC-P君を見つけたら……うん。とりあえず、銀鎖で完全な位置に吊り下げておこうか。

アドリブ等、ご自由に…



 周囲の人影は消え、ひとまず被害と情報の拡散については防ぐことに成功した猟兵たち。
 だが、この事件の発生要因たるオブリビオン、デビルズナンバーにぎやかしたちは未だ健在だ。そして、UDC-Pは尚も騒動の渦中にその身を置いている。

「ふむ。あの泥の中に彼らを押し留めた方が楽にやれそうかな」
 背の低い柵をひらりと乗り越えて土手に降り立ち、池の中心付近に集まり体勢を整えつつあるにぎやかしたちの姿を眺めながら、アンテロが呟く。
 先の撮影班の姿、そして今現在の池の状態を見るに、池の底は所々が酷くぬかるんでいる様子。現在敵が陣取っている辺りでこのまま事を構えるのであれば、召喚されるオブリビオンを含めた敵の動きを大きく阻害出来るのは間違いないだろう。
 とは言え、動き辛いという不利があるのは猟兵たちにとっても同じこと。単純に近接戦闘を行おうとすれば、文字通りの泥仕合を演ずることになるのは必至だ。

 少々不潔な印象すら感じられる池の底の様子を見やり、アンテロは小さく溜息を吐いた。
「……足元は汚したくないねぇ、絶対に」
 ほんの少し顔を歪めて嫌悪の表情を浮かべた後、彼は腰の鞘から十字架を模した双剣を抜く──その瞬間、彼の周囲に冷気が発生した。先程とは比ぶべくも無く、明確かつ強大に。

 突如、にぎやかしたちが群れを成す池の中心部を取り囲むようにして数多の氷柱が出現した。土手付近の空中に出現し瞬時に地面に突き刺さった“それ”は、まるで周囲を侵蝕するかのようにぱきぱきと地面を凍らせていく。
 湖底が凍結していくのに合わせ、アンテロは一切の淀みない華麗な足さばきでにぎやかしたちへと接近する。その左手には黒い剣、右手には赤い剣──と、いつの間に取り出していたのだろうか、白銀に輝くロザリオが握られていた。

 新たな敵襲に気付き隊列を組み始めたにぎやかしたちの様子を素早く見やった彼は、その群れの片隅にて半ば泥に倒れ込むようにして動かなくなっている人形の存在を視認する。帽子を被っていない、そして何やら顔に符のようなものが張り付いているそれの姿を一目見て、理由は解らないながらもアンテロは直感する。あれが件の“敵でない”と分かるオブリビオン、UDC-Pなのだろう、と。
 接敵前に発見出来たのは幸運だったな、等と考えつつ、彼はロザリオを握っている方の腕を軽く振るった。八端十字架のロザリオから伸びる銀鎖がしゃらん、と鳴る──すると、それはまるで植物の蔓の如くしゅるしゅると伸び、見る間にUDC-Pのもとへと到達した。鎖はそのまま蛇の如くUDC-Pの片腕、泥で汚れていない辺りに巻き付くと、巻尺の如くするするとアンテロの手元まで戻っていく。

 アンテロは一瞬足を止めて戻ってくる鎖を念動力で巧みに操ると、自身の膝程も無い身の丈のUDC-Pを中空に吊り下げ目線を合わせるようにした。人形の彼がほんの少しだけ怯える様子を見せているのに気付き、アンテロは物腰柔らかに、しかし短く言葉を投げ掛ける。
「手荒ですまないね。少しだけ待っていてくれるかい?」
 目前の人形がこくこくと頷きを返したのを見、アンテロは再び銀鎖を伸ばしてUDC-Pを戦場から離れた方向へと退避させる。先の氷柱辺りにでも吊り下げておけば安全だろう、と考えつつ、彼は剣のみを持つもう片方の手で器用に管のようなものを取り出すと、それの中身──身体強化を行う際の媒介として普段用いている血液を、氷上に撒いた。

 彼の前方、あえて凍らされていない池の中心部にてにぎやかしたちが笛や太鼓を打ち鳴らし始めた。それに応じるようにして、未だぬかるんだ状態の泥の中から巨大な蛭が出現する。
 血の臭いに誘われたらしきその怪物は、のたうつようにして氷上へと身を躍らせるとそのままアンテロに襲い掛からんとするべく発条の如く跳ねた……が。
「まあ、この程度の相手なら、ね」
 直後、瞬く間も無く再び出現した氷柱が突き刺さり、化物蛭は巨大な氷塊と化した。事も無げにそれを見やり、アンテロは再び敵影、そして戦場の様子を素早く確認する。

 UDC-Pは既に保護済み。周囲の猟兵たちを巻き込まないようある程度気を配る必要こそあるにせよ、大技を出し渋る必要はほとんど無い。
「……再び、泥の中で静かな眠りにつくといい」
 アンテロは構え直した両手の剣で氷塊を斬り砕くと、口の端を吊り上げるようにして笑った。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

あー……そっか。
そういやにぎやかしはあくまで呼び水で、
他の連中も呼び寄せるんだったか。
あの黒くて牙持ってるっぽいのは……
なんだったっけ、南米のえーっと、チュパカブラだったっけ?
実在したのかよ……信じられねぇ。

……ん?そうか、奴らじゃなくて
周囲のやじ馬たちの「信じられない」を利用するかね。
瓢箪から駒、嘘から出た実。
アタシのセリフからスタッフややじ馬が思い浮かべた
「不発弾」のイメージを【弱点特攻作成】で固めて、
実体化させる。
飛び掛かってくるチュパカブラを『グラップル』の要領で投げ飛ばし、
一緒に不発弾も投げ込んでやる!
後は周囲に被害を出さないよう気を付けながら起爆!





 スタッフたちの誘導を終え、多喜も池の付近へと急ぎ戻ってきた。
 半ば凍結した池の中心付近で盛大に演奏を始めたにぎやかしたちの様子を見、彼女も戦いに赴くべく氷上へと歩を進め──ようとした、丁度その時。
 にぎやかしたちが立つ周辺の風景がぐにゃりと歪曲し、突如虚空に穴が空いた。そして、そこから何やら怪物らしきものがわらわらと出現し始める。

「あー……そっか。あいつら、何か他の連中を呼び寄せるんだったか……」
 多喜は先程番組MC二人を助ける際、にぎやかしが召喚したと思しき巨大な蛭に蹴りを入れたりはしていた。ただ、それが召喚される瞬間を見ていた訳では無い。
 こと此度の戦闘に至っては、にぎやかしたちだけでは無く召喚される不明な怪物への対策も行わなければならない。そんな説明を受けていたような記憶を思い起こしつつ、彼女は召喚されゆく怪異の姿を注視する。

 巨大な頭と膨れた腹を持つ異形の怪物や空飛ぶ人頭、巨大なコウモリやムササビのような生き物、謎の青い光球、等々、その姿形は多種多様。
 よくよく見れば、何処かで見たことがあるような存在もちらほらいるのが見受けられる。あの何やら黒くて背中に棘のようのものが生えた、牙持つ二足歩行の生物は──確か、チュパカブラとかいう奴だっただろうか。
「うわ、初めて見た。つーか、実在したのかよ……」
 半ば唖然、そして半ば感心した様子で、信じられねぇ、と呟く多喜。
 数秒後、いやぼーっと見てる場合じゃねぇわ、と気を取り直した彼女は戦闘態勢に入ろうとし──突然、ふと何かに気付いたようにして顔を上げた。

「そうか、“信じられない”と言えば……」
 敵が集まっている付近へと視線を飛ばし、彼女は考えを巡らす。最大の懸念は、UDC-Pをその被害に巻き込んでしまわないかどうか──逡巡していたまさにその時、他の猟兵が何かしたのだろうか、池の外周部に向かって何やら小さな塊が移動していく様子が多喜の視界の片隅に入った。確証は無いものの、もしかしたらあれが保護対象のUDC-Pなのかも知れない。
 そうこうしているうちに、怪物はじわじわとその数を増やしつつある。決断するなら今しかない。
「……よし、あれの出番かねぇ!」

 自らに気合いを入れるようにしてそう言い放つと、今度こそ多喜は氷結した池の底へと躍り出た。そのまま池の中央、異変の渦中へと向かって全力疾走しながら、彼女はサイキッカーたる己の異能──テレパス能力を駆使することにより、周囲に漂う残留思念を読み取っていく。
 数体のにぎやかしたちが走り来る新手の姿に気付き、号令のように鼓笛を鳴らす。それに応じるようにして、氷上に歩を進めつつあったチュパカブラはだん、と大きく踏み込んで跳躍すると、そのままの勢いで多喜へと飛び掛った。しかし多喜もそれに合わせて負けじと空中へ跳び、襲い掛かる人型UMAを空中で掴むとそれをクッションにしながら氷上へと着地、そしてその勢いを生かして巴投げの要領でチュパカブラを元いた方向へと投げ飛ばす。
 素早く起き上がり、多喜は敵の姿を見やった。少なくとも“範囲内”には、帽子を被っていない個体は存在しない──瞬時にそう判断すると共に、彼女は『弱点特攻作成(カニングクラフト)』で生成した“先程周囲の人々が思い浮かべた不安”の姿形をしたその物体を、腕の中に出現させる。

 それは先程多喜自身が吐いた嘘に端を発する、恐怖の象徴。即ち、不発弾であった。

 念動力を併用して敵の群れの中へと不発弾を投げ込み、多喜は掌から紫電を飛ばす。
「まとめて、吹っ飛べぇっ!」
 彼女がそう叫んだのとほぼ同時に、怪異たち、そしてにぎやかしたちの一団は、爆炎に包み込まれた。
 
 ……一陣の風が吹き、周囲にもうもうと立ち込めていた煙が吹き飛ばされる。

「さすがに、これくらいじゃ終わらねーか……!」
 召喚された怪物は、ほとんどがその姿を消していた。ただ、それらが盾の役割を果たしたのか、にぎやかしたちはまだ半数以上が残存している。
 にぎやかしたちが旗や楽器を振り翳す。再び何かが召喚されようとしている不穏な気配を感じ取り、多喜は気を引き締めるようにして構えをとった。

成功 🔵​🔵​🔴​

波狼・拓哉
さてUDC-P…だっけ?それ以外は何とかしないとね。対処対処と。
んじゃ…数が多いなぁ。本体と呼び出された奴とだし単純計算でいつも二倍くらいか。ま、どうとでもなりますが。化け侵しな、ミミック。数が多いのなら同士討ちしてもらえるとありがたいよね。まあ、阿鼻叫喚になりそうですが。
自分は衝撃波込めた弾で適当に撃ちつつ保護対象を探しましょう。明確な仲間意識無いと同士討ち対象にならんとはいえ何があるかわからんし…見ただけで分かるしね。地形の利用で見やすい位置から全体パッと自前の視力で見落とさないように探し出してっと…危なさそうならロープで引っ掛けて回収、もしくは護衛に駆けつて守っとこ。
(アドリブ絡み歓迎)


黒木・摩那
UDC-Pも保護したようですし。
参加者たちも避難してもらったし。
あとはオブリビオンの掃除だけですね。

巨大ヒルとか気持ちの悪いのもいますが、綺麗に片づけたいです。
ここは火を使って浄化しましょう。

UDC-Pに気を付けながら、戦います。

ルーンソードにUC【トリニティ・エンハンス】で【火の魔力】を付与します
【破魔】【属性攻撃】。
刃に炎を乗せることで攻撃力を高めて【なぎ払い】ます【先制攻撃】。
防御はスマートグラスのAIと【第六感】で対応して、回避します。
飛び道具は【念動力】で軌道を逸らします。



 にぎやかしたちが再び演奏を始め、その周囲に新たな怪異が出現し始める。

「現状把握はよし、と……しかし、どうにも数が多いなぁ」
 銀鎖に運ばれ戦闘区域から脱していくUDC-Pの姿を視界の端に認めつつ、カラフルな銃を構えながら拓哉が呟いた。
 相手が支援特化型のUDCであると話には聞いていたし、また以前他の場所で実際に戦ったこともあったものの、やはりこの手の敵は面倒極まりない。
 あと相変わらずこいつらうるせぇ、と内心毒づきながら、彼は自身の方へと飛来してきた野衾──大きなムササビめいた外見を持つその妖怪を、衝撃波を籠めた弾丸で撃ち落とす。

 拓哉は先程周囲の様子をざっと確認し、現状敵がほぼ纏まっている状態にあるということを把握していた。ならば、彼──そしてその“相棒”にとって、対策を講じることは比較的容易ではある。
 ただ一点問題として、ある種乱雑にも思えるようにして怪異の召喚を行っていた先程とは異なり、にぎやかしたちは泥地を得意とするモノやそもそも地に足をつけない空飛ぶ化物を多く召喚し始めた様子。一網打尽を狙うならば、戦域が広がるのは避けたい。

 と、丁度その時。彼の少し前方、虚空から何かが出現しかけていた辺りを、その歪んだ空間ごと薙ぎ払うかのようにして炎の波が襲った。
「……させませんっ!」
 流れるような黒髪を揺らし凛とした声でそう言い放ったのは、赤い眼鏡と髪飾りが印象的な少女猟兵──摩那だ。
 炎の魔力撃を放って召喚を阻止した彼女は続けて敵の群れに追撃を放とうとし──しかし途中で何かを察知したかのようにして動きを止めると、即座にその場から飛びずさる。
 直後、彼女が立っていた付近の氷の間隙を割り砕き、巨大蛭が出現した。奇襲の回避を果たした摩那は拓哉の程近くに着地すると、複雑にルーン文字が刻まれた直刀を斜に構え直し、その刀身に炎の魔力を纏わせる。

 恐らくは先程もこうやって魔力を剣に付与していたのだろう、と推測しつつ、拓哉は好奇心半分で彼女に声を掛けた。
「やりますね。初動の速さ的に出現場所を予測してるっぽい感じですけど、何かコツでも?」
「熱源や呪詛が“視え”ますから。……ところで、UDC-Pを見かけましたか?」
 各種情報を表示する眼鏡を示すようにしつつ、摩那も拓哉へと問いかけを投げ掛ける。
「さっき誰かが保護したみたいです。返答ついでで悪いんですけど、少しの間あいつらを押し止めて貰えます?」
「わかりました。範囲攻撃するおつもりですか?」
「そんなところかな。合図したら退避を!」
 そう段取りを告げた後、拓哉は再び戦線へと飛び出していった摩那の背を見送りつつ、探索の際に用いるゴーグルを装着した。

 走る勢いをそのまま乗せ、摩那は炎を乗せた斬撃を先程出現した巨大蛭へと見舞う。
 彼女はそのまま氷上を滑るようにしながら剣を振るってその周囲に炎を舞わせ、内臓をぶら下げ襲い来るグロテスクな姿の飛ぶ人頭を、浄化するようにして焼き払った。そしてさらに飛来するウィスプめいた容貌をした青い光球へと意識を向け、念動力を用いてそれを地面に叩きつける。
「次々と、気持ちの悪い……っ!」
 召喚の気配を感じ取り、彼女は再び炎波を飛ばして虚空を、そして地上で演奏を続けるにぎやかしたちを纏めて灼滅する。しかしいかんせん数が多いのもあり、今度は彼女の攻撃がぎりぎり届かない程度に離れた地点から新たな怪異がその姿を現さんとしていた。

 ゴーグル越しにその召喚を察知した拓哉が、今だ、とばかりに左腕を掲げる。
「……化け侵しな、ミミック!」
 瞬間、彼の左腕に付けられた黒水晶のブレスレットが暗く光り、敵集団の付近に突如としてミミックが出現した。間髪入れずにミミックはその口を開き、箱の内部で生成した武器を化物たちに向かって一斉に発射する。
 にぎやかしたち、そして今しがた召喚された巨大な異形に、どすどすと武器が突き刺さった──が、突き刺さると同時に武器はその姿を消す。そして攻撃を受けたにも関わらず、何故か怪物たちの体表には傷跡の一つも生じてはいなかった。人形たちも少々困惑したのか、数体が首を傾げる──

 ──すると、突然。
 先程召喚された巨頭の怪物が、突如その腕を激しく振り回しながら周囲を攻撃し始めた。それも、足元に立つにぎやかしたちを明確に狙うようにして。

 己の目論見が上手くいったことを確信し、拓哉はにやりと笑う。
「まあ、数が多いのなら同士討ちして貰えるとありがたいよね」
 彼が先程用いたユーベルコード、『偽正・平界空音(ハッシュ・ホテップ)』によって放たれる武器は直接の外傷こそ与えないが、それに籠められた狂気により対象の精神を汚染する。あの巨怪、そして武器をその身で受けた一部のにぎやかしたちは、周囲にいる怪物たちを己の敵だと認識してしまっていることだろう。

 阿鼻叫喚の様相を呈しつつある敵の群れ。その暴威に巻き込まれぬよう、二人の猟兵は少し距離を取って体勢を整える。
 そろそろ、決着の時も近いかも知れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛籠雄・九雀
SPD

意思持ち、動く人形。
そうか、そうであるな、彼奴等のUDC-Pとなれば、必然そうなるのである。
ぐ…む。すまぬ、興味が抑えられん。
保護されたUDC-Pに近付いて観察し、うむ、まあ、触って調べたい。
…持ち帰っては、いかんな…うむ…わかっているであるぞ…。

く、もっと調べたいものであるが致し方あるまい。後は片付けてからであるな。
程々で切り上げて戦うとしようぞ…【毒使い】+ペルシカムを【2回攻撃】で【投擲】。動かなくなったものを拷問具『針』で【串刺し】にしていきたいものである。
攻撃は【見切り、逃げ足、ジャンプ、ダッシュ】で出来る限り回避。この肉体の血を吸われたらかなわぬであるからな。

アドリブ連携歓迎


レッグ・ワート
いつから沈んでたのかは知らないが、物騒なのは還ってくれってな。

迷彩起こしたドローンで戦闘域の情報収集。後の動きは対象の様子によりけりだ。保護の上注意が逸れてるなら、鉄骨で敵ぶん殴りに行くぜ。怪力付で。その時は糸でつり上げたり、複製した鉄骨操作して攻守の他にも足場や遮蔽物に使うかな。攻撃は武器受けか見切り避けれたら上等。
対象が戦場気にする場合は、見てくかどうか屈んできいてみるわ。伸されてくの外見近似型だし。見るなら危うい時のフォロー以外はほっとくよ。違ければ複製鉄骨で万一避けの壁でも作るか。何にせよ、そっちが生きてる奴に蛭とかけしかけずにすむように話に来たって、……言って伝わんのかこれ。わかる?


玖篠・迅
他のオブリビオンを召喚するって聞いてたけど、ほんとに色々喚べるんだなあ
あのにぎやかし達に縁があったオブリビオンだったりするのかな

式符・朱鳥で空飛んでるオブリビオンが違うとこ行かないように、朱鳥たちに警戒してもらう
召喚され続けるのもしんどいし、にぎやかしたちの演奏邪魔するために「破魔」を込めた霊符を手とか楽器狙って投げてみるな
朱鳥たちに余裕があるなら上から炎で攻撃頼むな

UDC-Pは…大丈夫そうだけど、何かあったら大変だし2体くらいの朱鳥に向かっといてもらう
驚かさないようにと、寒そうだったら暖かくするの頼むな





 戦場から少し離れた場所、氷柱の立つ土手の付近。
 先程戦場から遠ざけられ、そして今は尖った氷塊の先端から鎖に吊られぶら下がっているにぎやかしの一個体──UDC-Pの近くに、三人の猟兵が近付いてきた。

「おお、これがUDC-Pであるか! 少し触っていいであるかな、興味が抑えられん……」
「ちょっと待たせちゃってごめんなー。大丈夫? 寒くないか?」
 言うが早いかUDC-Pの身体を触り始めた九雀の背後から、赤い鳥の式神を召喚しながら迅が問いかける。
「……二人とも普通に話しかけてるけど、伝わってんのかそれ。言葉わかる?」
 突然のことに少し困惑するようにしているUDC-Pの姿を二人の後ろから覗き込み、レグも人形へと質問を投げ掛けた。ようやく状況を飲み込んだらしき様子のUDC-Pはそれに頷きを何度か返すと、鎖の先が引っかかった氷柱の方を見上げた後ほんの少しだけ身を捩らせる。

「ん、解いて欲しいのかな?」
 迅は先程召喚した式神、朱鳥を二匹飛ばし、火の呪力を用いて氷の先端を少しだけ溶かした。程無くして吊り下がった状態からは解放された人形の身体を、引き続きそれをぺたぺたと触っていた九雀がしっかりと受け止める。
「見れば見るほど興味深い……ううむ、持ち帰っては──いかんよな、やはり。わかっている、わかっているであるぞ……」
「色々気が早いだろ、そもそも敵まだ残ってるし。……そうだ、あっち気になるなら様子見てく?」
 軽く巻かれた鎖をしゃがみこんで解きつつ何やらぶつぶつと呟いている九雀の隣に立ち、レグは池の中央の方を示しながら小さな人形に再び訊ねた。

 拘束から解放されつつあるUDC-Pは一瞬示された方向をちらっと見やる。が、何やら一際大きな戦闘音が響いてきたのを耳にし、びくっ、と怯えるようにして身を縮こめた。
「興味無さそうだな、了解。そんじゃ、俺たちだけで行くかね」
「くっ、致し方あるまい……後は片付けてからであるな」
 レグの言葉を受け、拘束を解いた人形の横に鎖を置きつつ名残惜しげにしながら九雀が立ち上がる。
「また悪いけど、もう少しだけ待っててな! 護衛も置いておくから!」
 そう声を掛けつつ先程の朱鳥をUDC-Pの近くに舞い降りさせると、迅も戦場の方へと向き直った。

 三人は短く言葉を交わし各々の戦法を示し合わせると、共に池の中央へと向かう。



 鳥の式を数十体飛ばし、迅は改めて戦場の様子を見やった。
 錯乱したようにして暴れるにぎやかしと召喚された怪物たちの姿を少し遠くに眺め、彼は呟く。
「他のオブリビオンを召喚するって聞いてたけど、ほんとに色々喚べるんだなあ……っと、ちょっとぶつかりそうになってたな。危ない危ない」
 先程装着した電脳ゴーグルへと送られてくる情報──レグが事前に放っていた迷彩機能付きドローンの位置や戦闘域の状況を確認しつつ、迅は霊符を取り出した。

 先程から朱鳥たちに空中を警戒させていた彼であったが、幸い今は空飛ぶ怪異はあの場所にいない様子。とは言えそれは単に“今はいない”というだけの話であって、にぎやかしが健在である以上いつ新手が召喚されたものか解ったものではないのも確か。この機に一掃したいところだ。
 迅は一体の朱鳥──レグ、そして九雀に併走させていた式へと意識を向け、それを中継に使う形で二人に念話を送る。
「符と目くらまし、今からやるからな! タイミング合わせて!」
 そう告げると同時に、迅は小さな霊符を投げ放った。

 霊符は敵集団のもとへと到達すると、召喚された怪物には構わずにぎやかしたちの四肢や楽器へと次々に貼り付いていく。
 破魔の力を籠められた符によって演奏を封じられ、それに気付いたのか正気か否かに関わらず人形たちが慌てる様子を見せた。それを好機と見たらしき巨頭の怪物は足元のにぎやかしたちを腕で薙ぎ払い、続けて宙を舞う残りの霊符を散らすべく再び長い腕を構え──その瞬間、それを妨害するようにして急降下してきた朱鳥たちが一斉に炎を放った。
 頭上に炎が舞い、怪物とにぎやかしたちが顔を覆う──



 ──その隙をつき、空中と泥中に大量の鉄骨が出現した。

 レグの持つ武器の複製たるその強化鉄骨を足場にし、たたんっ、と九雀が宙に舞う。
「これだけ的が大きいなら、当たらぬ道理も無いのである!」
 空中で身を翻して姿勢を整えると、彼は巨怪へと向け幾本もの針を投げ放った。巨頭の怪物の腕や身体にそれらはどすどすと突き刺さり──直後、怪物は痙攣したかのようにして身を震わせると、血混じりの吐瀉物を撒き散らしながらその場へと倒れ伏した。

 泥に突き刺さった鉄骨の先に着地し、身体の各所を爛れさせ動かなくなった怪物を九雀は見やる。
「わざわざ止めを刺す必要も無さそうであるな……他愛のない」
 怪物が吐き出した血の臭いに誘われたのか、まだ泥中に隠れていたらしき巨大蛭が身を起こしたのに応じ、彼は宙を舞う鉄骨の上へと飛び乗った。そこから彼は再び三種の毒針──嘔吐、麻痺、糜爛作用のあるそれらを一斉に投げ放ち、隠れ潜んでいた蛭の生命活動を終わらせていく。

「まあ、万が一ということもあるやも知れん。この肉体の血を吸われたらかなわぬであるからな」
 まだ敵が潜んでいるかも知れない、と、彼は鉄骨の上を飛び移りながら地面へと特殊加工の為された針を投げ、そして泥に身を隠していた他の怪物を次々と串刺しにしていく。
 小さく狙い辛いにぎやかしの対処は任せても大丈夫である。そう、心の中で考えながら。



 そして地上では、泥の上に敷いた鉄骨を足場にしてレグが小さな人形たち相手に大立ち回りを演じていた。

「そらよっ!」
 ぶぉん、とまるで野球のバッティングのように強化鉄骨が猛烈な速さで幾度も振り抜かれ、その度ににぎやかしたちが駆逐されていく。
 元々混乱状態にあったところを強襲され、今や敵は総崩れとなっていた。霊符がぺたぺたと貼り付きもはや用を成さなくなってしまった楽器を振り翳し、半ば破れかぶれといった様子で数体のにぎやかしたちがレグへと襲い掛かる──が、レグは自身の周辺に突き刺さっていた複製鉄骨を素早く手に取るとそれで攻撃を受け止め、そしてそのまま射出したカーボン糸で敵を鉄骨に縛り付けてしまう。
「いつから沈んでたのかは知らないが、物騒なのはさっさと還ってくれ……ってな!」
 数体の人形を括り付けた鉄骨をレグはそのまま力任せに振り回し、泥地に立つにぎやかしたちの群れを文字通りに薙ぎ払い──

 ──数分もしないうちに、戦場たる池の中央付近で動く存在は猟兵たちだけと相成った。

 戦闘前に飛ばしたドローンを回収しつつ、念のため、といった様子でレグは周辺の状態を再確認する。
 先程別れた場所から文字通り一歩も動かず、ちょこん、と体育座りをしているUDC-Pの姿が空撮映像に映っているのを見、ひとまずレグは胸を撫で下ろすと周囲の猟兵たちの方を軽く眺めた。皆それぞれ誰かから話を聞いたのか、UDC-Pのいる方へと向かって歩き出した様子だ。

「さて、あとは……引き渡す前に対処マニュアルの作成、だっけか」
 気弱そうな雰囲気であったUDC-Pとのやり取りを思い返し、あんなのでも何か問題抱えてたりするもんかね、と小さく独りごちた後、彼もまたこの池の中から脱するべく凍結が解除されつつある氷上へと歩を進めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『UDC-P対処マニュアル』

POW   :    UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す

SPD   :    超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す

WIZ   :    UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




(※お知らせ:11/11 08:30以降のタイミングで、導入の文章を書かせて頂く予定です。少々お待ち下さい)


 
 池の外周付近、土手の辺りにて。

 安全が確保されたことを理解したのか、UDC-Pたるその小さな人形は自身の付近に集まってきた猟兵たちにぺこぺことお辞儀をして見せた。その様子を見るに、この個体はこちらの話す言葉や見せる文字、ボディランゲージの意図等を理解してはいるものの、少なくとも声を発して皆と意思疎通をし合うことは出来ないようだ。

 何度か頭を下げた後、彼──そもそも性別があるのかどうかもいまいち判然としないのだが、ともかくその帽子を被っていない少年鼓笛隊風の容貌をしたUDC-Pはとても嬉しそうにしながら、何やら気をつけをするような姿勢を取る。すると、ぽん、と、彼の懐に小太鼓が出現した。
 同じく突然出現したらしき小さな撥を両手に構え、彼は喜びを表すようにして軽やかに音を奏で始める──

 ──直後、ざわり、と、奇妙な風が辺りに渦巻いた。

 先程にぎやかしたちが怪異を召喚する様を実際に見ていた者や、また魔力感知に長けている者はすぐさまその異変に気付く。今まさに何かがこの場に喚ばれようとしている、そんな圧迫感のある空気。
 数人の猟兵が慌ててUDC-Pを制止すると、魔力の高まりは程無くして収まった。何故演奏を妨げられたのかよくわからない、といった様子で首を傾げた人形の彼に、猟兵たちは簡単に事情を説明する。
 この瞬間までUDC-P自身も知り得ぬことだったようだが、どうやらここに出現したにぎやかしたちは“召喚やオブリビオン的存在の強化をその意図の有無に関わらず半ば自動的に行う”といった性質を持っていたらしい。

 事後処理にあたっていたエージェントを適当に呼び止め、情報共有を兼ねて確認したところ、UDC組織はあくまでも人道的な範囲でUDC-Pの研究を行う予定らしい。協力者たるUDC-Pに嫌われてしまえばせっかくの“友好的な”UDCを満足に研究することも叶わなくなってしまうため、例えばがちがちに拘束して自由を奪う、等の方法を取ることは出来る限り避けたいとの話だ。
 とは言え、輸送中等にうっかり何かが喚び出されてしまえば惨事に繋がりかねない。輸送に関してのみなら猟兵たちが付き添えば一時対応することは可能であるにせよ、収容後もずっとそうし続けている訳にもいかない。UDC組織に所属する一般エージェントでも施行可能な、何らかの収容プロトコル的な方策が必要となるだろう。

 恐らくはその手元に現れた楽器が能力の発動に関連しているものと推測されるが、召喚の条件をより詳しく探ってみれば何かいい対応策が見つかる可能性は高い。幸い、ここには猟兵たちがいる。もし新手の怪物が召喚されるようなことがあったとしても、対処は容易だろう。
 あるいは、演奏を行わせないという方法で対応することも出来るかも知れない。楽器の演奏を我慢して貰う代わりに何か他の気晴らしになるようなものを与えてみる、だとか。

 ともあれ、このままでは収容することも儘ならない状態であるということは確かだ。思いついたことは何でも試してみるといいだろう──もちろん、人道的な範囲内で、という制限付きではあるが。
葛籠雄・九雀
SPD

…見るに、どうも幼い子供と近いのであるかな。
ならば、絵本でも読んで聞かせてやればよいのではないか。自由を縛るはいかんと言えど、本当に『自由』とするわけにはいくまい。事実、楽器の演奏は間違いなく禁じねばならんのであるからな。
閉じ込めた子供の無聊を慰める方法など、オレはそれしか知らん。

話せずとも、言葉がわかるのならば、読み聞かせておるうちに文字の一つも覚えよう。さすれば、文字列を指し示しての意思疎通などができるようになるやもしれん。
太鼓を叩くことが彼奴の意思表示なのだとしたら、それで事足りるであろう。

そうしたら、もっと話をすればよい。
まだ、オレたちは話ができるのであるからな。

アドリブ連携歓迎


アンテロ・ヴィルスカ
さて、怖がらせてしまったのならフォローをしなくては
人真似で通用するかは分からないが、やってみる価値はあるかな。

喋れないなら食べられもしないだろうが【花籠】の中の小さなお菓子は見るのも楽しいよ?多分。
他に彼の興味を引けそうなもの…
俺の本体は……鎖で怖がりそうだから、やめておこう。
煙草でも香水でも、持っているものはとりあえず彼の好きに触らせてみようか。

UDC職員にヒトの仲直りの仕方も聞いてみて【手を繋ぐ】
相手に向き合うなら、汚れている方の手を避けては駄目なんだね?
……了解、複雑なやり方は他の猟兵に委ねるとしようかな。

これから宜しくね、UDC-P君?

アドリブ等、ご自由に


黒木・摩那
【WIZ】
今回保護できた、にぎやかしのUDC-Pは召喚や強化を自動的に行ってしまうらしい、ということ。
ならば、猟兵がいる間の内にあえて、にぎやかしの好きに演奏させて、何が出てくるかを確認しておくのは良いと考えます。
何が出てくるかわかれば、対処の仕方もありますし。

召喚にもプロセスやパワーを使うでしょうから、ひとりでは、強力なオブリビオンも出てこないとは思います。
楽器や演奏を変えて、数回程度試して、どんなオブリビオンが出てくるか、確認してみましょう。

出てきたオブリビオンはUC【トリニティ・エンハンス】を使ったルーンソードでそのまま骸の海に返します。


波狼・拓哉
んー…ユーベルコード使わない様に演奏ってのは出来ると思いますが…やっぱり自前の楽器ってのがネックか…
取り敢えず彼に合うサイズの…間に合わせでおもちゃの楽器をプレゼントかな。大きさのあったちゃんとした楽器はそのうちUDC組織が作るでしょう。…後で組織の方を言いくるめておこう。
あーとーはー…こちらが理解出来る応援ではない楽曲なら効果が低減する事が出来るのでは…?つまり人の作った楽譜通りに演奏すればいいのでは。あ、セッションとかも強化対象がセッションしてる人とかにいけそう?…こうして考えてみると結構どうとでもなりそうな気がしてきた。後は実践あるのみ。なんか出たら頼むね、ミミック。
(アドリブ絡み歓迎)


数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】

うーん。
楽器を呼び出して演奏すると因果律を捻じ曲げて召喚する?
厄介だけど色々試せることはあるね。
もちろん、"彼"には危害を加えないさ。
念の為、アタシの思念波でその性質がどういう条件を
トリガーにしてるか探査してみるけど……
まずは楽器を呼び出させずに、
アタシらが用意してみたらどうなるかねぇ?
ってクラフトしちゃダメだよ?
ちゃんと店で買える奴とか。
楽器の種類によっても違いが出るかもしれないから、
色々買い揃えてみるのもいいかもね。
その中で"彼"が気に入って、
なおかつ被害が出そない物があれば一番だよ。

残った楽器?
UDC組織で楽団でも作ればいいんじゃね?
"彼"もメンバーにしてさ。


玖篠・迅
とりあえずUDC-Pが無事で一安心だな
最初ので泥ついたままだったりしたら、蛟たちに水出してもらって落としていこっか

…嬉しい時とかについしちゃうなら、演奏しても大丈夫な方法見つけたいな
ちょっと楽器とか見せてもらって、召喚とかの力のもとがどこにあるか探ってみるな
俺が鳴らしてみても何か変化起きるのかとか、UDC-Pに違う曲を演奏してもらったりして
その間にUDC職員さんに、似たような楽器とかUDC-Pが持てそうな大きさの楽器がないか探すのお願いするな
持ち運ぶのが手間になるかもだけど、普通の楽器で影響なく演奏ができればいいんだけどな

あと、名前ってあったりする?
ないなら、こう呼んでほしいとか希望あるかな


レッグ・ワート
あー、こいつは物……。まあいいか。元いた場所に還してこいとか、強化先変更できたらまだ話早いんだが。仮にそういうもんなら、ただ止めろはキツイわな。

基本呼び放しの時たま強化と。召喚傾向が元連中と同じか、強化幅諸々の確認頼むなら俺あたろうか。装甲類や耐性に怪力、無敵城塞のオンオフあるし。多少盛られても程々に武器受けしつつ情報収集や検証の時間稼ぐわ。……数出されたら逃がさない余裕出るまで糸で絡めと鉄骨ぶん殴りで減らしにかかるけども。と、ドローン経由とかで色んな曲調流してみたら手止めて聴いたりしないもんか。楽器使うからって安易かね。逆にのったら厄介か。何にせよ他にいなかったら引き渡し用の情報纏めとくぜ。





 迅の召喚した蛟がUDC-Pの体についた泥を洗い流している間、まず手始めに猟兵たちはUDC-Pが先程出現させた小太鼓について調べてみることにした。

「単に鳴らしてみたりする分には特に問題無さそうな感じだなー……」
 小さな撥を摘まむようにして持ち、てんてん、と小太鼓を叩きつつ、迅は周囲の猟兵たちと顔を見合わせる。
 先程スマートグラス越しに小太鼓の状態を隅々まで見、それが何かしらの力を有する異常物品であるらしきことを突き止めた摩那が、小首を傾げた。
「物品そのものに直接の原因が無いのであれば……召喚や強化を自動的に行ってしまう、というのは、ユーベルコードが勝手に発動してしまう、ということなんでしょうか?」
「自分自身の意思で元いた場所に還したりとか、強化先変更したりできるんなら話が早いんだが……仮にそういうもんなら、ただ止めろって言われてもキツいわな」
 どうしたもんかね、と、レグも腕を組み小さな楽器を眺める。

「さっきのを見た感じ、まず楽器を呼び出して、それを演奏すると因果律が捻じ曲がって怪物が召喚される、って感じかねぇ?」
「ユーベルコードが発動しないように演奏させる、ってのも出来そうな気はしますが……ひとまず、自前の楽器ってのがネックになってる可能性は高そうですね」
 多喜の言葉に拓哉がそう応じつつ、補佐役として付近で待機していたUDC職員を呼んだ。
 比較的近辺に楽器店やおもちゃ屋等があることを確認し、猟兵たちはその職員に楽器類の買い出しを頼むことにする。

「取り急ぎ、代わりの楽器を調達する、ということかな。なら、俺はそっちを手伝わせて貰うとしよう。職員のヒトも、色々と忙しそうな様子だしね」
「オレもそちらへついていくのである。最終的に楽器の演奏を禁じねばならぬという結論になるやも知れんが、もしそうなれば無聊を慰めるものが必要になるであろうからな。ついでに買ってくるのである」
 少し離れた場所で話し合いの様子を眺めていたアンテロ、そして話の輪に加わらず水浴びをしていたUDC-Pの姿を観察していた九雀が、それぞれ別の方向から一同に声を掛けた。



 暫く後、池周辺の広場にて。

「──念のため、防御をお願いします!」
「了解、攻撃は任せた!」
「化け喰らいな、ミミック! ……んー、最初のよりちょっとだけ頑丈になってるっぽいか……?」

 楽器類の調達が為されるまでただ待っているだけというのも勿体無いのではないか──ということで、猟兵たちは摩那とレグの提案をもとに“UDC-Pがどの程度の力を持っているのか”を調査していた。最初はUDC-Pの好きに演奏させてみて、そこから少しずつ“何かを召喚しようとする意識”を強めて貰う……という、実戦を交えた形式だ。

 『無敵城砦』を使用したレグの腕に包み込まれるようにして防護されていたUDC-Pが、腕の隙間から様子を伺うようにして顔を覗かせる。
 最初は猟兵たちの提案に対し気後れする様子を見せていた“彼”も次第に慣れてきたらしく、時折レグや拓哉のミミックに守られつつもある程度自由に演奏を行うに至っていた。

「……あ。彼、ちょっと疲れてきてるっぽいよ? ここらで一旦休憩しといた方がいいかもね」
 UDC-Pへと思念波を送り精神探査を行っていた多喜が顔を上げ、猟兵たちへ呼びかけた。確認してみれば、レグが周囲に放ったドローンから流れる行進曲、そしてUDC-Pが叩く小太鼓の音色をBGMとし、猟兵たちが次々に召喚されるオブリビオンと戦い始めてから早十数分程経っていたようだ。
「始めは少し遠慮が感じられたけど、最後の方はそれなりに本気で“演奏”してたみたいだよ」
 アタシらを信頼してくれてるってことかねえ、と呟きつつ、多喜は戦っていた猟兵たちの方へと近付いていく。UDC-Pを気遣いながら、猟兵たちは先程の戦闘を振り返ることにした。

「あの程度であれば、猟兵が一、二名いればほぼ問題なく対応出来そうではありますね」
 召喚時に何らかの力が使われているのであれば限界もあるだろうし、そもそも一体では強力なオブリビオンが出てくることも無いだろう──事前に摩那が立てていたその推論は、実際のところ当たってはいた。
 だが、それはあくまでも猟兵基準で考えた場合の話。実地検証を経て尚オブリビオンの召喚傾向はいまいち判然としておらず、異能力を持たない一般エージェントで対応し切れるかどうかはまだ解らない状態にあると言える。
 少し思い悩んだ様子を見せる彼女に対し、拓哉が励ますようにして声を掛けた。
「まあ、強化する効果を減らす方法は見つかりましたし。俺としては、結構どうとでもなりそうな気がしてきましたよ?」

 デビルズナンバーにぎやかしは、“オブリビオンにしか理解出来ない行進曲を演奏し、それを聞いて共感した対象全てを治療する”、というユーベルコードを持つ。
 仮に応援の力で強化する異能力にもそれに通ずるところがあるとすれば、“こちらが理解出来る楽曲なら効果が低減する”のではないか──猟兵にして探偵でもある拓哉のその推理は、見事に的中していた。ドローン経由で流した様々な楽曲に合わせるようにして演奏を行った場合とそうでない場合では明確に敵の強さに違いが生じたのだ。

「気分が乗ったらそれはそれで強い奴が召喚されたりする原因になりそうではあるが……まあ、強化幅のこと考えなくて済むようになっただけましか。まだ本命は残ってる訳だしな」
 レグが伸びをするようにしながらそう言ったのと、UDC職員と共に買出しに行った三人の猟兵たちが現場へと戻ってきたのは、ほぼ同時だった。



 プラスチック製の笛、玩具の太鼓、小さなリコーダー、カラフルな手持ち式鉄琴、鍵盤ハーモニカ──等々。
 色々な楽器やら何やらがレジャーシートの上にずらりと並べられたその光景は、フリーマーケットを彷彿とさせるような様相を呈していた。

「色々買ってはきたけど……とりあえず、この太鼓から試して貰うことにしよっか」
 迅が軽く手招きし、楽器類を興味深げに眺めていたUDC-Pは彼の傍に近寄っていく。
 元々持っていた小太鼓と撥とを交換する形で新品の楽器を手渡され、UDC-Pは周囲で見守る猟兵たちの方をちらりと振り返る。

 人形めいたその顔の表情は先程までとは変わらない。だが心を読んだりするまでもなく、その立ち振る舞いから彼の感情が如実に伝わってくる。
 ──演奏して、本当に大丈夫? これでもし駄目だったら、どうしよう?
 遠慮半分、不安半分。そんな様子を見せる彼に向け、大丈夫、と猟兵たちは頷きを返して見せた。恐る恐る、彼は太鼓を鳴らす。

 たん。……たたん。……たったん、たったん。
 ……何も、起こらない。

 たったん、たったん、たらららら、たったん。
 軽やかなリズムで太鼓が打ち鳴らされても、やはり何も起こらない──そのまま十数秒経っても、意図しない召喚が行われることは終ぞ無かった。

 UDC-Pの顔が、ぱあっ、と明るくなったように猟兵たちが感じたのは、単なる錯覚という訳でも無いだろう。恐らく、きっと。



 UDC-Pが使用した楽器を詳しく調べてみたところ、演奏に使用された後の楽器にはごく微量の魔力が生じていることが判明した。
 継続して同じ楽器を使い続けた場合については何かしらの異常が発生する可能性も考えられるが、そうと解っていれば対策の立てようはある。
 後々の研究で詳しく調べる必要はあるにせよ、輸送の障害になり得る“不意の召喚”を防ぐ、という大目的は、ひとまず達成されたのだ。

「後々使えるのかも知れないけど、何かすごい楽器余っちゃったなー……」
「折角だし、残った楽器使って楽団でも作ればいいんじゃね? UDC組織の人集めて、彼もメンバーにしてさ」
「はは、いい考えかも知れませんね──後で組織の方を言いくるめておこう……」

 組織に伝えるべき情報を先に戦闘を行っていた猟兵たちが取り纏めたりしている間、UDC-Pは無邪気に様々な楽器を手に取り、時折それを打ったり吹いたりして鳴らしながら過ごしていた。その様子を再び観察するようにして眺め、九雀が呟く。
「……見るに、どうも幼い子供と近いのであるかな」
「子供、か。言われてみれば、確かにそんな印象もあるねぇ……おや、それは?」
 九雀がごそごそと懐から何か取り出したのを見、同じく少し離れた場所で様子を伺っていたアンテロが訊ねた。見たところ本のようだが、先程買ってきたのだろうか。
「なに、絵本でも読んでやろうかと思ってな」
 そう返答しつつ、九雀は何冊かの本──幾つかの絵本と、裏表紙に平仮名表が書かれた幼児用教材らしき本を示すようにして持った。
「子供のことなどよくは知らんが……話せずとも言葉がわかるのならば、読み聞かせておるうちに文字の一つも覚えよう。さすれば、意思疎通なども出来るようになるやも知れん」
「なるほど、小さな子供には相応の接し方がある、という訳か。ふむ……」

 少し思案した後、アンテロは先程買出しの際に行動を共にしたUDC職員を呼び、何やら話を始めた。程無くして後、彼は絵本を読み聞かせられているUDC-Pの傍へと近付いていく。
 しゃがみ込むようにして目線を合わせ、ゆっくりと話す──先程職員に訊ねて聞き出した“子供への接し方”に倣うようにして、彼は小さな人形へと語りかけた。
「さっきは、怖がらせてしまってすまなかったね。お詫びと言っては何だけれど……」
 そう言いつつ、彼は小さな籠を差し出す。蓋を開けると、その中には色とりどりの砂糖菓子が籠められていた。これは一体何だろう、と首を傾げたUDC-Pに示すようにしてアンテロは干菓子を手に取ると、それをほんの少し齧ってみせる。
 喋れはしないが笛を吹く。それなら、彼は物を食べられるかも知れない──味がわかるかどうかまでは知らないが。
 果たして小さなUDC-Pはアンテロの差し出した和三盆を手に取ると、先程のアンテロに倣うようにしてそれを少しずつ齧り始めた。味わっているのかどうかはやはり解らなかったものの、アンテロは彼が何処となく嬉しそうにしているように見えた。

 砂糖菓子を齧り終え、UDC-Pはふと何かを思いついたようにして傍らの本を手に取った。裏面の平仮名表を示すようにして持つと、彼はぴょこぴょこと腕を動かし一文字ずつ平仮名を指し示していく。
 ……あ、り、が、と、う。
 誰の目にも疑うべくは無く、彼は自分の意思を表明していた。

「おお、覚えが早いであるな! 用意した甲斐があったというものである」
 何やら活気付いたのを察して様子を伺いつつ二人のもとへと近付いてきた迅が、UDC-Pの持つ表に気付く。
「いいもの貰えてよかったな! ……そうだ、名前ってあったりするのかな?」
 ふと疑問に思った彼はそうUDC-Pに問いかけてみたものの、UDC-Pは一体何のことだろう、と首を傾げるばかり。その様子は、そもそも名前という概念をよく理解していないようにも見えた。
「さっき、幼い子供と近い、と話していたけれど……実際のところ、彼は生まれたばかりなのかな? 暫く時間が経てば、あるいは喋り出したりするのかも知れないねぇ……」

 興味深げにアンテロが呟いていると、概ねの情報を伝え終わったらしき猟兵たちもUDC-Pの近くに集い始めた。

「名前かー……そうだ、アタシらが名前付けてあげてもいいんじゃね? ほら、呼ぶ時に不便だしさ」
「もし付けるのなら、男の子風の名前が良いでしょうか……」
「そもそもそいつ、性別とかあるの? まあ別にいいけど」
「他にもUDC-Pはいる訳だし、どうせなら彼っぽい名前を考えますかね」
「名は体を表す、というやつであるな。ふむ……にぎやかし、演奏、楽器……」
「太鼓、小太鼓──鼓太郎、とかどうだろう。ちょっと古い感じするかな?」

 わいわいと話し始めた一同を軽く制するように、アンテロが軽く咳払いする。一呼吸置いた後、彼は再びしゃがみ込んで人形の彼と目線を合わせると、そっと右手を差し出した。
「何にせよ、これで君も俺たちの仲間だ。これから宜しくね、“鼓太郎”君?」
 そう呼んでも構わなかったかな、と、アンテロが微笑んで見せる。

 デビルズナンバーにぎやかしの一体にしてオブリビオンの異端たるUDC-P──そして新たに名前を得た人形の彼、鼓太郎は、差し出された手に応じるようにして小さな右腕を伸ばし、固い握手を交わした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月15日


挿絵イラスト