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変形外殻採取任務についての報告

#スペースシップワールド #【Q】 #クエーサービースト

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#スペースシップワールド
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#【Q】
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#クエーサービースト


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●未踏領域を行く船
「定期報告、機関に異常なし。我が艦、順調に航行中」
 航行士官が朗らかに報告を読み上げる。未踏領域探査を任務とする艦のひとつ、『クイーンズ・オルファクトリー』の船内は穏やかである。それもそのはず。『キエリビウムJOX』との戦いが優勢に進んだことにより、『未踏宙域』のより深部へと踏み込むことが可能となったのだ。探索船の士気は高い。

 しかし、その束の間の平穏もやがて破られた。

「報告! レーダーに感あり。影は一つ。新手の反応――クエーサービーストです!」
「来やがったな! しかし敵が一体ならこちらだけでも――」
「いえ、二つ、三つ、四つ……まだ増えます! この反応、銀河帝国の哨戒艦隊です」
 割って入るような叫び声。レーダー上の光点が、みるみる内に増えていく。
「莫迦な。奴ら、滅んだだろう。生き残りがこんなところに潜んでいたというのか?」
 報告を受けた士官のひとりが、艦橋で呻く。残存戦力は確かに銀河各所に潜伏しており、その掃討作戦も行われている。しかし、この未踏領域の深部に平気で潜めるとは考えづらかった。おそらく、何か別の原理が存在するとは容易に想像がついた。ここは未踏領域、クエーサー・ビーストの棲み処。何が起きてもおかしくない。
 とはいえ現実は現実である。確かに艦橋に映し出された拡大画像には帝国軍の哨戒艦隊らしき姿が映っている。目前の脅威が、幻の類とは思えない。対処が必要だ。

                      、、、
「――とにかく、この艦単独では手に負えない。彼らに出撃してもらう他あるまい?」
 白髭を撫でて、艦長らしき男は悠然と言い放ち、笑う。

「得体の知れない化け物を打ち倒せるのは、彼ら猟兵だけなのだから」

●作戦計画
「君たちの仕事は、新種のクエーサー・ビーストの制圧だよ」
 殺風景なブリーフィング・ルームで、猟兵たちの前に立ったグリモア猟兵が獣の姿をプロジェクタ上で投影する。大きさは小惑星大。目に相当する器官が見られず、球状の体からは無数の棘――いや、ドリルが生えている。
 天通・ジン(AtoZ・f09859)はちょっとカッコいいよな、なんて冗談めかして笑う。

「こいつは『マインドミナBVA』――って名付けられたらしいね」
 それが獣の名だという。
 先行調査によれば、彼の特徴はなにより変化する外殻。外殻を自在に変形させ、接近するものを攻撃するのだという。現時点で変形に規則性は見られず、予測不能な攻撃への対処は猟兵の技術なしには難しい。

「厄介なのは、敵は外殻を切り離して『別のオブリビオンの姿』にまで変形できるところなんだ。さながら別世界の眷属だね。無数に現れる外殻製のオブリビオン――今回は『銀河帝国の哨戒艦隊』の姿を取っている――を突破しない限り、『マインドミナBVA』には手が出せない。だからまずは、この偽哨戒艦隊を突破して欲しい」
 作戦の第一段階は、つまるところ突破作戦である。

 敵は銀河帝国の哨戒艦隊。哨戒艦隊といっても、威力偵察を任務に含むため戦闘に耐える戦力を保有している。おそらくは過去に未踏地域を探索した哨戒艦隊がこのクエーサービーストに取り込まれ、コピーされたのだろう。そこに生命は存在せず、ただ獣を守るためだけに存在する。

 彼女たちをどう突破するかは、当然各猟兵の裁量に委ねられる。
 猟兵の突破にあわせて、調査船『クイーンズ・オルファクトリー』もクエーサー・ビーストへの接近を試みるという。調査船にも幾らかの砲塔や機銃が備えてあり、積極的な護衛は不要だが、彼女と共に進むのも選択肢の一つだろう。突破後には弾薬の補給も可能だ。

「哨戒艦隊突破後は、当然ながらクエーサー・ビーストとの戦闘になるよ」
 倒してしまって構わない、とジンは言う。
 そもそも手加減できるようなスケールの相手ではない――というのが実情だ。敵の外殻の動きは機敏であり、殺傷力と破壊力に富む。意思疎通などもってのほか。いかにして強力な変形外殻を躱し攻撃するかが重要となる。
「……ああでも、戦闘後にはクエーサー・ビーストの外殻を可能な限り回収したいから、手心は加えてほしいな。敵の中身を上手く攻撃してよ。キミたちならできるさ」
 倒してしまっても構わないんじゃなかったのか――と猟兵たちから苦情の声が上がるのを、ジンは苦笑でごまかした。

「質問はないかな? よし、現時刻を以て作戦を開始する。皆の無事を祈るよ」
 猟兵たちが立ち上がるのに呼応して、星のグリモアが輝いた。


隰桑
 お世話様です。一度出すと、次が出したくなってしまう隰桑です。
 意志薄弱は病気のようなもの。
 本依頼は集団戦闘→ボス戦闘→調査の三本立てとなります。

●注意書き
 (どれだけプレイングをいただけるかわかりませんが)
 一章~二章の採用数は4~6名様程度にしたいと考えています。
 三章は凝ったプレイングでなければ、なるべく採用したいと思っています。
 (凝ったプレイングは好きですが、作業時間と相談になります)

●戦闘
 宇宙空間での戦闘です。極薄宇宙服のおかげで特別な用意がなくとも、皆さんが行動不能に陥ることはありません。しかしそれは動けることを保証するだけに過ぎません。ご注意ください。なお、優れた戦闘計画にはプレイングボーナスを与えます。

●隰桑について
 『星を継ぐもの』ではハント博士よりダンチェッカー博士の方が好みなキャラ。
 アドリブは呼吸のようなもので、連携は好物です。
 ステータスシートや過去依頼や所属旅団の書きこみは見たり見なかったりします。

●プレイングについて
 ご自由にお書きください。
 難しければこちらも躊躇なく却下しますので、お客様のプレイングに遠慮は一切不要です。

 合わせプレ歓迎です。大人数連携もOKですが、連携者間のプレイングの相互矛盾にはお気を付けを。特殊な呼び方や相手によって変わる特殊な口調がある場合、記載がわかりやすいと助かります。把握に努めますが、限界があります。特にグループ内の方同士で口調が変わる場合はご注意ください。

●受付期間について
 承認後に追記します。

 それでは、熱いプレイングをお待ちしています!
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第1章 集団戦 『銀河帝国哨戒艦隊』

POW   :    一斉発射(対艦ミサイル)
【火器管制レーダー照射】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対艦用の反物質ミサイル(一斉発射)】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    一斉発射(対艦ビーム砲)
【対艦用の加粒子ビーム砲(一斉発射)】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    一斉発射(電磁投射砲)
【複数の艦船に搭載された、電磁投射砲の砲身】を向けた対象に、【砲身から超高速で発射された高速徹甲弾】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:Moi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【受付日程】
 第一章は10/26(土)に執筆いたします。
 そのため、受付締め切りは『10/25(金) 23:59まで』とします。
 規定数まで集まらない場合は、順次締め切りを延ばします。

 第二章は10/30(水)、31(木)に。
 第三章は11/2(土)~4(月)のどこかで執筆予定です。(予定は未定)

 皆様奮ってのご参加をお待ちしております。
ミスト・ペルメオス
【SPD】
新たなクエーサービースト、やはり脅威と言うほかありませんね。
…ミスト・ペルメオス、ブラックバード。出撃しますッ!

愛機たる機械鎧を駆り、調査船より出撃。
空間戦闘こそ鎧装騎兵の本分、後れを取るつもりなど無い。
戦闘領域におけるデブリや敵味方の情報を収集・解析しつつ、積極的に攻勢をかける。

敵艦隊と接敵直後から【ヒット&ラン】、超高速での一撃離脱戦法を展開。
スラスターと機械鎧の特性を駆使した三次元的な戦闘機動を取りつつ距離を詰め、可変速ビームキャノン/対艦・対拠点モードによる砲撃を実施。
速度を殺さぬまま離脱してから反転、再び突入して攻撃…を可能な限り繰り返す。

※他の方との共闘等、歓迎です


ミハエラ・ジェシンスカ
かつて帝国に忠誠を誓ったであろう者どもが
形ばかりとは言え斯様な怪物に使われる
哀れむべきか、それとも嘲笑ってやるべきか
どちらにせよ私のやるべき事は変わらんがな

【念動加速】による近接戦闘を仕掛ける
フォースレーダーで敵艦隊の布陣を【情報収集】しつつ強襲
敵のレーダー照射に対しこちらもサイキックエナジーを照射
【念動力】【だまし討ち】で自身とは異なる位置に質量があるように偽装する
必要ならセイバードローン2基をデコイにしても構わん

そうやって攪乱した隙を突いて敵艦の懐に飛び込み
フォールンセイバーによる近接攻撃を仕掛ける
新たなクエーサービーストとやらの外殻がどの程度のものか
貴様らの装甲で試し斬りといこう



●黒鳥と叛逆の騎士
「新たなクエーサー・ビースト。やはり脅威と言うほかありませんね」
 カタパルトの伸びた先、眼前で広がる先行戦闘の光をどこか冷めた目で眺めながら、黒鎧の傭兵は呟いた。ネビュラ・デバイスの念動力回路のスイッチを片手で弄り、戦闘前の最終確認を行う。正常に作動。サイキック・エナジーの制御に問題はない。
 確認終了と同時に、艦橋からの出撃許可を伝える明滅信号を青い瞳が捉えた。
「了解。……ミスト・ペルメオス、ブラックバード。出撃しますッ!」
 どこか威勢の良さの残る若々しい声に続いて、プラズマ・スラスターの閃光がカタパルト・デック上を滑り、黒い鳥が宇宙に踊り出した。

「――思ったほど戦況は悪くない、ですね」
 猟兵の出撃にあわせ、調査船からの敵牽制目的のミサイル弾幕が放たれており、黒い外装騎兵――ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)に戦場を俯瞰する余裕を与えていた。合計5艦。遠目だが、ほとんどの艦影は小さい――当たりもいるだろうが大半が駆逐艦級だろう、とミストは推察する。具体的な武装は、現時点では未知数。
 ――いや。
 ――敵艦名は、Sitz、Platz、Steh、Bleib、Fuss――。
 直後、ヘルム上の戦術ディスプレイにそれら敵艦の情報が表示される。
 それらの情報を直ちに掌握し、自分の直感が正しいことを確信する。
 それから、口を開く。
「――情報提供、感謝します」

「――ブリーフィングで伝えた通り、過去の情報だ。妄信はするな」
 冷徹な合成音声が答える。聞きなれていればわかるだろう、ウォーマシンの声だと。
「――わかっていますよ、ここから検証します」
「――ならば良い」
 プラズマ・スラスターを吹かせた黒鳥が戦場に近づくのを黙って眺めながら、ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)――未だ銀河帝国に悪心を以て忠義を尽くす機械の騎士は、黙って頷いた。
 猟兵たちの布陣が済むまでもう少し。機械的な赤い瞳に、敵駆逐艦の周囲で弾けるミサイルの爆炎が映る。探索船「クイーンズ・オルファクトリー」の支援弾幕が牽制を行っている光だった。今は手出しのしようがない。
「(かつて帝国に忠誠を誓ったであろう者どもが、形ばかりとは言え斯様な怪物に使われる。哀れむべきか、それとも嘲笑ってやるべきか――)」
 駆逐艦のうち一隻が反撃しているのが見えて、心の内に問いかけた。
 心が疼く。彼女の問いに、彼女の在り方が答えを示す。
「――どちらにせよ私のやるべき事は変わらんな」
 鮮血の如き赤が、彼女の周囲を覆った。それはまさしく、悪逆の光だった。

●一撃離脱
「さて、空間戦闘こそ鎧装騎兵の本分、後れを取るつもりなど無い」
 プラズマ・スラスターを再度噴かす。ミストの眼には、二隻の駆逐艦が映る。
 それらの主砲が自分に向けられるのを察知する。
 情報と照合。あれは熱線砲。光の速さとほぼ同義の一撃を、発射を見てから回避するのは不可能。ならば、そもそも当たらなければいいだけのこと。誘い、撃たせ、突撃する。――方針は明快だった。だから、笑う。――事実もまた、明快だった。

「お前たちでは、私を撃ち墜とせない」
 黒鳥がいた場所を閃光が貫く。だが、彼はもういない。
 続けざまに放たれたミサイルが、暗い宇宙を飛翔するミストを追う。赤い瞳が無機質にそれらを眺め、評価する。これならば、携行火器で十分。軽快な音を立ててマシンキャノンが銃弾を放ち、ミサイルを撃ち落とす。
 一瞬だけその弾幕が途切れたのを、鎧装騎兵は見逃さない。
「(今だ――――仕掛ける)」
 スラスターの出力を最大限まで高めて、急速に加速する。
 しかし、哨戒艦隊は無能ではなかった。その変化に目ざとく気づき、砲塔を向ける。
「――もう遅い!」
 体を逸らす。小さな挙動。だが、十分な加速下であればこれで足りる。 放たれた熱線が体を掠め、躱しきれないぶんを受け止めた前腕のビーム・シールドがちりちりと火花を散らす。

「悪いな、一番槍はブラックバードがいただいた」
 肩部のビームライフルが僅かに動き、照準を定める。たったそれだけ。
 駆逐艦が爆散するよりも早く、ブラックバードは飛び去った。
 彼の目には、次の獲物が捉えられていた。

●念動加速
「見事に攪乱された敵前衛。本来空間戦闘は鎧装騎兵の領分だが……これを突破するのは赤子の手をひねるよりも容易い」
 ミストの手によって一隻の軍艦が沈む。それによって列を乱した哨戒艦隊の、統率を失った瞬間をウォーマシンは見逃さない。なぜならば、彼女は戦争を司るために作られた機械なのだから。

「――行くぞ、加速する」
 動脈を掻き切ったかのような勢いで、鮮血色のオーラが噴き出す。それは、悪心によって指向性を与えられた念動力の奔流であり――それは、鎧装騎兵ほどの機動性を瞬間的に獲得するに足るだけのエネルギーを孕んでいた。

「悪いな、それは残像だ」
 ようやく気付いた駆逐艦の一隻が放った砲撃――ビームの一撃が遥か横を飛んでいくのを、平然と見送る。赤い瞳に、セイバードローンが焼き切れていくことすら事象としてしか映らない。
 
「では、その新たなクエーサービーストとやらの外殻がどの程度のものか――」
 迎撃の弾幕を切り抜けて、敵駆逐艦の眼前に至る。
 艦橋にはいくつもの機械的な光が明滅するのみで、中には何も見当たらない。
 かつての忠志を見てもなお、叛逆の騎士の表情は変わらない。
 隠し腕が開く。赤く、黒い光が四本。ミハエラの周囲をぐるりと回る。

「――試し斬りといこう」
 光芒が十字に動く。緑色の装甲にまっすぐ亀裂が走る。
 遅れるようにして、船体が割れていく。それは、敵艦の終わりを意味する。
 それを見てもなお、ミハエラ・ジェシンスカの表情は変わりない。

「所詮は模造品。この程度では何の役にも立たない」
 ただしその声音は、どこか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
【星海】
新型のクエーサービーストに変化する外殻…
えぇ!海賊としては放ってはおけないわよね!

哨戒艦隊、船にまで変形なんて面白いわね
ほら、零。行くわよ!Sky Fish団出撃!!


変形したけどどこまで本物に近いのかしら…?
アベルを起動して【情報収集】
敵の戦術や攻撃パターンを解析して本物との差異があるかを確認
ついでに【ハッキング】できたらいいのだけど…元が外殻だしまぁ無理そうね…

ティターニアをフルブースト!ビーム砲を掻い潜って接敵
ついでに零も運んであげるわ、振り落とされないようにね?

近づいたら零に合わせて
ミスティルテインによる砲撃!
ついでにマイクロミサイルも一斉発射よ!


天星・零
【星海】

『ふふ、僕は団員ではありませんよ。しかし、船が相手というのは海賊団長としてはやはり、楽しいものなのでしょうか?興味深いですね』


敵を牽制し、距離によって使用武器を変え、【戦闘知識+情報収集+追跡+第六感】で観察し敵の弱点などを把握、警戒し戦闘



近接はØ、遠距離は十の死とグレイヴ・ロウで攻撃
グレイヴ・ロウは防御にも使用

ヘスティアさんに弱点部位や属性などを伝え、情報を共有


敵のUCは、指定UCを発動し全対象の敵と敵の砲撃を迎え撃ち

自身も十の死と協力し、Øで敵の弱点を攻撃

以後、死した嘆きの魔女も戦闘参加
臨機応変に立ち回る


UC秘密の設定
常に微笑む

心中の会話や自身のオブリビオンとの会話などでは素の口調



●星海を往く海賊団
「(「哨戒艦隊――敵の外殻も、船にまで変形するなんて面白いわね。さて……どこまで本物に近いのかしら……?)」
 その青いツリ目は好奇心の輝きで、その朗らかな声は期待の響きで満ちている。ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は内心独りごつ。白い四翼で、宇宙の暗闇を切り裂きながら。
 敵艦隊に接近するにつれて、至近弾が増えてきていた。ミサイルを躱し、ビーム砲の未来位置を予測し誘導する。宇宙船における戦闘機動を悠々とこなすヘスティアの姿は、さながら宇宙を飛びまわる妖精の女王と呼ぶに相応しい。
『報告します、お嬢様。敵艦への接続は拒否されました』
 落ち着いた口調は、女王の僕――AI端末から発される。それはヘスティアが視認した情報を解析し終えたティンク・アベルが結果を報告するもの。敵の制御を奪えないか――淡い期待から、試していた。
「そう。……無理だろうと思っていたけれど、やっぱり」
 従者の報告を受けても、さして落胆した風には見えない声で主人は呟いた。
 想定の範囲内だった。もちろん、より具体的な手立てとそれを実現する労力があれば、電脳魔術士たる彼女なら可能だったかもしれない。しかし、彼女はそれを選ばなかった。
 青い瞳は、より好戦的に燃えている。
「つまり、有無を言わさず撃墜するしかない――ってことですね」
 その声は、先ほどよりも近く。ヘスティアの顔の下から聞こえる。
 細い腕に抱きかかえられているのは、金の髪をした少年――天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)。彼の赤の瞳は会話しながらも、油断なく敵を見据えている。
「そうよ、零。今から接近を試みる。ついでにこのままあなたも運んであげるわ、振り落とされないようにね?」
「ありがとうございます――でも、本当に他に捕まれる場所はないんですか?」
 少年は苦言を漏らす。広大な宇宙空間で機動力を発揮する手段を持たない以上、移動の足として味方を頼る他ない。最も頼りになる味方が誰かは当然決まっている。
 問題は自身より少し大きいとはいえ、ほとんど同じ背丈の少女の体に捕まることのできる場所は限られているということ。
 ヘスティアの背はティターニアが占めており、背に掴まろうものなら零の身は丸焦げだ。手を握ったり、片足に掴まるのはバランス制御が困難で、合理性にかける。両足を手で掴むのは一つの手だが、全方位を警戒しなければならない宇宙戦闘でスカート姿の彼女を頻回に見上げるのは避けるべきだった。
「ないわ。ほら、零。行くわよ! Sky Fish団、出撃!!」
 だから、抱きかかえる。零の背には、ヘスティアの胸の感触があった。それがどの程度柔らかだったかはここでは敢えて語るまい。少年の感想も、当人にしか知りえない。
 会話を打ち切るようにして、ティターニアが焔を噴く。
「……まったく、僕は団員ではありませんよ」
 零は小さく首を振り、ため息をつく。ただし、その声の音は不快とは程遠かった。

 死を抱いた妖精が光芒の中を舞う。
 光の間を、まるで針糸の穴を通るかのような細やかさで進む。
「ヘスティアさん、右からミサイルです」
「了解、ありがと!」
 零が撃ち落としきれないミサイルの群れに警鐘を鳴らす。一挙に加速して、それらを振り払う。二人は密着しており、細やかな迎撃は困難であった。ゆえに一番の目的を優先する。要は、攻撃を当てればいいのだ。

  "ア ン ダ ー ヘ イ ル"
「"嘆きの魔女の効果範囲" は、約3km範囲の視認対象を焼き尽くす技――」
「発動には詠唱が必要で、宇宙空間の敵を狙うにはちょっと狭いわね」
 零を抱えながら、ヘスティアが旋回する。
 彼女が元いた軌道上を、加粒子ビームが撫でる。
「ええ、ですが当たればあの程度の小さな艦ぐらい容易く屠れます」
「ええ、だから安心して。言ったでしょう。あなたも運んであげるって」
 見上げれば、青い瞳がウィンクしているのが見えた。
「――はい、よろしくお願いします」
 墓石で爆炎を防ぎながら、微笑む。いつもの彼らしい表情で。
「良い返事ね。いくわよ、ティターニア! フルブースト!」
 迫る迎撃の雨の焦点を、一挙に駆け抜け突き抜けて、彼女たちはたどり着く。
 二人が見据えるのは一隻の軍艦。
「生命がなくとも、危機を感じることはできるようね」
「興味深いですね。……船らしい船が相手というのは海賊団長としてはやはり、楽しい物なのでしょうか?」
「――当然。船を操り戦うのは海賊の檜舞台よ。そして、沈めるのは何よりも」
 ヘスティアは貪欲に笑う。それは何より、海賊らしい笑み。
 抱きかかえていた零を放つ。それはつまり、準備がととのったということ。

 そして、二人は頷き合った。

「魂よ集え……空は翳り、地は呻く」
「アベル、ミストルティンを展開! マイクロミサイル、準備!」
 零が呟く。ヘスティアが命じる。
「腐敗する血肉……亡者が知るのは癒えぬ苦しみ。今一度の命を得、奈落の底に沈む――」
「風向把握…弾道予測…射軸安定――」
 哀れな軍艦が咆哮する。艦首の砲が二人に向けられるのが見える。
 艦橋の上に備えられたミサイルポッドから発射されたミサイルが迫っている。
 だが。もう遅い。
「――嘆きを解き放て!」
「――今!」
 二人が放つユーベルコードの輝きが、その砲撃ごと軍艦を包む。
 次に聞こえるのは、まさしく命無き者の断末魔に違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
ビースト…獣を狩るのは、猟兵の役目。
そういうことだよね?ふふ。

こないだ、UDCアースのアニメを見てたんだけど…
うん、宇宙での戦いっていうか…ロボットのアニメなんだけど、ね。
それを思い出して…ちょっと、やってみたい事があって。ふふふ。

それじゃあ。九ツ不思議…天狗。
空気がなければ、風は生まれない。
けれど…それは、普通なら、の話。
ユーベルコードに…奇跡の力に、常識は通用しない。

こういう世界の銃火器なら…きっと、誘導ミサイルとか。あるよね。
私を狙ってミサイルが飛んできたら…
そのままミサイルを連れて飛ぶ。
追いかけっこしながら…別の、戦艦の影に隠れる。
名付けて、同士討ちさせちゃおう作戦。なんてね、ふふふ。



●奇跡の成す技
「ええっ、そのまま? ……本当にいいんですか?」
 猟兵付きの整備員のひとりが、今まさに飛び立とうとする彼女に問いかける。彼の手には貸出用のジェットパック(といっても、銀河帝国クローン兵からの鹵獲品)があった。
「うん。……ちょっと、やってみたい事があって。ふふふ」
「は、はあ……。それなら、ええと――いいんですけど」
 桃色の狐の少女は極薄宇宙服のみ――つまり、地上に居る時と変わりない姿のままで微笑む。整備員が少しだけ目線を逸らして頬を明らめたので、余計に微笑が強まった。

「(……別世界のロボットアニメに影響された作戦なんて、ふふ、言えないよね)」
 パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)は狐の尾を広げながら、先刻のやりとりを思い出し、また笑う。別に恥ずかしかったわけではない。逐一説明するには、彼女の発想は大胆すぎた。

「それじゃあ、行くよ。九ツ不思議……《天狗》」
 脳裏に、ほんの一瞬だけ小さな何かが浮かんだ気がした。
 それが何かを彼女自身が理解するよりも早く、パームの体を暴風が包む。

「本当なら、この宇宙で私は貴女たちに追いつけない」
 赤い瞳が見下ろすのは、肩を並べて進む二隻の軍艦。
 その砲塔が、新たな獲物の到来に牙を剥く。
「空気がなければ、風は生まれない――私は無力なはず、普通なら」
 宇宙服の下の、桃色の髪が棚引く。
 何もないはずの、宇宙空間ではありえないはずの動き。
「――けれど、……それは、普通なら、の話」
 過去の遺物たちが放つ熱線が、猟兵の少女を捉えて――歪む。
 赤色に着色された敵駆逐艦のビーム砲は綺麗にパームを避けて過ぎ去っていく。
 それは彼女が口にする通り、普通ならありえないこと。
 だが。

「ユーベルコードに……奇跡の力に、常識は通用しない」
 パーム・アンテルシオはまさしく猟兵――奇跡の体現者だった。

「こういう世界だって――わかってはいたけど、激しいね」
 ビーム砲が効かない――それを察知した敵艦はすぐにミサイル攻撃を主軸に据えた。敵は決して案山子ではない。より有効な戦術を選び、攻撃し、敵撃滅を図るもの。
 小さな、それでいて高速で飛び回る標的を撃滅すべく、高価な(といっても、外殻製の模造品だが)誘導ミサイルを惜しみなく発射してきていた。
「ふふふ、私はこっちだよ――」
 微笑を湛えて少女は跳ぶ。暴風はまるで慈父のように少女を守り、その歩みを支える。
 しかし、ミサイルは決して諦めない。プログラムされた標的を決して逃がすまいと。

「――!!」
 高速で飛翔する妖狐の顔が驚愕で染まる。目の前には巨大な鉄塊。
 おそらく、戦闘で生じた敵艦の破片。既に何隻か破壊されていた。
 高機動の弱点は、急激な転換をする際に小回りが利かないこと。それは停止にせよ、方向転換にせよ。そして、ミサイルはその弱点を逃さない。一挙に距離を詰める。
 万事休す――

 ――ではない。
「……名付けて、同士討ちさせちゃおう作戦」
 赤い瞳が愉悦で歪む。それはまさしく、妖狐のあるべき瞳のかたち。
「――貴方は試す者。そうでしょう?」
 暴風が弾ける。桃色の少女がその風に乗って跳躍する。高速で迫っていたミサイルが、それを追う。向かう先は、一隻の駆逐艦――敵の軍艦。そして高機動の弱点は――。
「……なんてね。ふふふ」
 爆発の衝撃から逃れるように、宇宙を泳ぐ。流し目で見る視線の先には、パームの計略にむざむざ乗せられて、爆散する敵の姿があった。

「狐の瞞着にご用心――なんて、習わないよね。この世界じゃ」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『クエーサービースト・マインドミナBVA』

POW   :    BVAジェノビック
【無限に変化する外殻が超殺戮形態 】に変形し、自身の【防御力】を代償に、自身の【攻撃力と攻撃速度】を強化する。
SPD   :    BVAエクスタリ
いま戦っている対象に有効な【無限に変化する外殻が変形した殺戮兵器 】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    BVAリモーフ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【無限に変化する外殻によって再現し 】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:はるまき

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●進軍せよ、宇宙の道を
「今だ。猟兵が開いた道を見逃すな!」
 猟兵たちの手で、駆逐艦が次々に暗い宇宙へと沈んでいく。ミサイルが爆ぜ、あるいは沈みゆく駆逐艦の爆炎が広がる宇宙空間の間に、小さな道が開いた。

 その隙を逃すまいと探索船「クイーンズ・オルファクトリー」が進む。悠然と進む彼女の中で、一時収容した猟兵たちに、船員たちが補給を行う。それほど多くの時間が残されてはいない。目の前にはすでに、小惑星ほどの大きさの巨大な獣が鎮座している。

「――あれが、次のクエーサー・ビーストか」
 口の無い小惑星大の怪物。交流や対話は不可能。
 黄金の外殻が周辺の宙域に展開され、容易に接近できないことが予想された。

 足場は十分にある――が、ただ走っていくだけで接近できるとは限らない。
 変形するという敵の外殻の実力は未知数だ。
 臨機応変に対応するためには、敵の行動を予測することが重要になるだろう。

 怪物は声を上げない。だが、猟兵たちは察知していた。
 敵の殺意を。決して油断できない相手であるということを。

●雑記
 お世話様です、隰桑です。第一章お疲れ様でした。
 ご参加くださった皆様はありがとうございました!

 『第二章の執筆は10/30(水)の夜』を予定しています。
 つきましては、10/27(日)~10/29(火)の間にプレイングを送っていただけますと幸いです。なお、十分数プレイングが集まらなかった場合は別途アナウンスいたします。

 第二章からの参加も歓迎です。皆様のプレイングをお待ちしております!
ミスト・ペルメオス
【POW】
やるぞ。ブラックバードッ…!

探索船から再出撃、クエーサービーストとの戦闘に突入。
念動力は最大限に。機体や武装の制御にも活用すると共に【フォースド・アサルト】による限界稼働状態に移行。
機体をサイキック・フィールドとエネルギーバリアで覆い、スラスター最大出力で突撃。
無謀な突撃かもしれない。
だが、一時的に限界以上の性能と高速性を発揮する機体での三次元的な戦闘機動、そう易々と捉えさせるつもりは無い。
損傷か稼働時間が限界に達して離脱するまでは敵の周囲を飛び回り、
可変速ビームキャノンの対艦/対拠点モードと対機動兵器モードを切り替えながら連続砲撃を浴びせかけていく。

※他の方との共闘等、歓迎です


ミハエラ・ジェシンスカ
殺意の塊だなアレは
ふん。随分と無茶を言ってくれる、と思っていたが逆だな
「中身を狙え」というのは良いアドヴァイスかも知れん

【念動変異】の使用による敵体内への侵入を狙う
まずはフォースレーダーによる【情報収集】に専念
その時その時の外殻の特性を可能な限り【見切り】
サイキックエナジーにまで干渉する能力がないとも限らんからな

その後外殻による攻撃を敢えて受け【念動変異】
敵味方共に私が消し飛んだかのように見せかける【だまし討ち】
悪いな、後の事は頼んだぞ

そのまま不可視のサイキックエナジーに変異して体内へと侵入
可能な限り中核で実体化し、攻撃を開始する
その際、可能であれば【対艦魔剣】を起動
体内を撹拌してやる


パーム・アンテルシオ
相変わらず、スケールがすごいよね…
その大きな敵が、私たちを驚異だと認識してる。
光栄、って言ってもいいのかな?ふふふ。
ただ…これを倒す、となると、ね。
単純に壊す手段は、私には思いつかないかも。

じゃあ…狐哭啾々。
生きているのなら。生命があるのなら。
呪ってしまおう。喰らってしまおう。
外が硬いのなら。殻が強いのなら。
それは、中身は…生命は。守る必要がある、っていうこと。
どんなに硬いモノでも。強いモノでも。それが生命である限り。
この子たちは…這い寄る。喰らいつく。
殻が必要なら…中身は要らないよね?

それじゃあ…私は、逃げに徹する、かな?
この子たちがどんなに強くても、私がやられちゃ、意味がないもんね。ふふ。


ヘスティア・イクテュス
【星海】
さぁ!あれがマインドミナBVAね!
あの顔に見えるのって外殻なのよね?零、準備はいい?
さっさと倒してお宝頂くわよ!


敵の中身…下に見えてるあれよね?多分…
零を抱えてティターニアブースト!

わたしに有効な兵器…命中率重視とかそんなのかしら?
アベルで射線の予測
躱しきれなさそうなのはタロスで防いで射線から逃れる方向で【見切り&オーラ防御】

わたしには有効だけど、零には有効とは言えないわよね
零、迎撃よろしく!貴方に有効なのはわたしが対処するわ

攻撃を掻い潜り接近したら下の
見えてる中身部分に対してミスティルテイン、ブラストモード、最大出力で!マイクロミサイルも付けるわよ!【力溜め&一斉発射


天星・零
【星海】

『お宝探しですか…夢があっていいことです。では、僕が敵を分析しますので攻撃はお願いします』

【戦闘知識+情報収集+追跡+第六感】+指定UCで敵の弱点死角を把握警戒分析

ヘスティアさんに弱点や敵の脆い箇所、癖、行動パターンを全て記憶、把握し、それを踏まえて臨機応変にヘスティアさんに指示を出す

自分は武器は近接ならØ、遠距離グレイヴ・ロウで攻撃、対処し
また、星天の書-零-で【オーラ防御】を用いてヘスティアさんをアシスト


また、武器の十の死から敵に合わせ臨機応変に対応した攻撃をし、隙ができるようにする


キャラ口調ステシ
 



●戦闘開始
「―――――――――――」
 物言わぬ巨体。クエーサー・ビーストの一体、『マインドミナBVA』が浮かんでいる。探索船『クイーンズ・オルファクトリー』の発進用甲板から、補給を終えた猟兵たちが次々に飛び立つのを如何なる力でか察知して、彼は――あるいは彼女は狂暴な外殻を励起する。その目的は無遠慮な侵入者を撃退せんとするためか。
 間違いないのはそれがそこに存在するということ。

 そして、猟兵たちの任務はそれの討伐だった。

 ある時は鞭のように、ある時は剣、ある時は槌、ある時は盾。
 動物のように変形することもある。あれはクラゲか、あれはペンギンか。
 無数に飛来する外殻は手を変え品を変え、形を変えて、猟兵たちへと襲い掛かる。

●狐ハ啾々ト哭ク
「相変わらず、スケールがすごい敵……その大きな敵が、私たちを驚異だと認識してる」
 それを前にしても彼女の声は、焦りや怯えとは程遠い香りを放っていた。
「光栄、って言ってもいいのかな? ふふふ」
 暗い宇宙の中でも、ほんのりと輝く桜の花。面白がるように笑う声の主、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)に優しく撫でられると、"それ"は同意するように嘶いた。

「生きているのなら。生命があるのなら」
 "それ"は、一尾ではない。二尾。三尾。四尾。無数の群れ。
「呪ってしまおう。喰らってしまおう」
 それらは、呪いを帯びた亡霊たち。
 ユーベルコード【狐哭啾々】の産み出したもの。

「外が硬いのなら。殻が強いのなら。それは、中身は…生命は。守る必要がある、っていうこと。どんなに硬いモノでも。強いモノでも。それが生命である限り――」
 まるで触手のように細く伸びた外殻の上を妖狐が走り、そして――。

「この子たちは…這い寄る。喰らいつく」
 黄金の外殻が枯れる。それは、物理的な浸食ではない。外殻の概念をそのままに、その生命力だけを食らいつくす。妖狐の霊の瞳が怪しく光る。その視線の先には、柔らかなはずのクエーサー・ビースト『マインドミナBVA』の本体。
「殻が必要なら……中身は要らないよね?」
 問いかけは誰に向けられたものなのか。中身を持ち帰ってくれといったグリモア猟兵に向けられているのか、あるいは殻ばかりを恃みにする負けを知らない巨獣に対するものなのか。
 妖狐の敵意を明確にかぎ取って、クエーサー・ビーストの外殻が波打ってその主に迫る。
「ふふ、そうだね。その子たちを使っているのは私。でも――」
 パーム・アンテルシオは白い頬を柔らかく歪める。
 蛇のように撓る、棍棒様の鈍い外殻が迫っても、彼女は焦らない。

「最大稼働ッ――行くぞッ!」
 パームの頭側から、その黒い影は飛び掛かる。
 ブラックバード――ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377はネビュラ・デバイスのインジケータを確かめながら、一直線に外殻へと突撃する。デバイス上の念動力データは良好。サイキックフィールドに支障はない。戦闘開始。
 桃色の味方と黄金の敵の間に割り込んで、展開したエネルギー・バリアが外殻先端の一撃を弾き返す。それで終わらない。続けざまに、可変速ビームキャノンの狙いをつける。ジェネレータとの接続確認、機動兵器モードで運用中、オール・グリーン。
「――今だ」
 黄金の外殻が熟れた果実のように、柔らかく弾ける。
 至近距離のビームキャノンの一撃は、それに足る火力を有していた。
 敵の撃墜を確認して、青年の青い瞳が守った少女の安否を確かめる。

「……ふふ、平気だよ。ありがとう」
「よかったです。僕は行きます。どうか気を付けて」
 素っ気なく心配の言葉を投げて、プラズマ・スラスターを噴かす。
「やるぞ。ブラックバードッ……!」
 サイキックフィールドの輝きが戦場に一筋の光の流れを作る。
 戦場は無数に広がっていて、戦うべき相手には困らなかった。

「……それじゃあ……私は、逃げに徹する、かな?」
 そんな様子にくすりと笑って、再び業風を纏う。
 先ほどまで黄金色をしていた何かを足場にして、彼女は軽やかに跳んでいく。

「この子たちがどんなに強くても、私がやられちゃ、意味がないもんね。ふふ」
 赤い瞳が優しげに細まった。
 視線の先には、啾々と哭く無敵の存在がいるのだ。

●星海
「もう! これじゃあ近づけないじゃない!」
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が悲鳴を上げる。無限に変形を続ける敵の外殻の攻撃を、文字通り躱すので精いっぱい。まして人を抱えての戦闘行動には限界があり、戦場を縦横無尽に飛び回り、一進一退を繰り返す。
「――アベル、射線予測をもっと早くして!」
 そう叫んで、ティターニアを再び噴かす。巨獣の中身らしき影はすでに視認している。
 飛び掛かった彼女たちを襲う外殻は、無数の螺旋――ドリルの群れ。
 一個や二個なら、ヘスティアは容易く躱しただろう。しかし、追尾するかのように変形する螺旋が何十と襲い掛かってくる中をまっすぐ進むことは難しかった。ゆえに様子を見て、隙をうかがう。勇気と無謀は違うものだから。

 一方零は、迎撃を取りやめ、ユーベルコード【超記憶の叡智と飽くなき探求】の使用に専念している。飾らず言えば、苦戦していた。
「(敵を分析しますので、攻撃はお願いします――と胸を張って言ったはいいものの)」
 天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は、胸の高さで拳を強く握りしめる。
 天星・零の技は死霊と親しむものであり、この広大な宇宙空間の高速戦闘において本領を発揮できぬものだ。攻撃と分析の両方――全てで思い通りに動くためには、より宇宙空間に適応した作戦を練る必要があっただろう。
 先に哨戒艦隊と一戦を交え得たのは、全て零の猟兵としての地力の賜物に他ならない。

 そして不幸なことに、今回のクエーサー・ビーストと彼の作戦は相性が悪かった。

「(参ったな。敵の能力を――分析が終わる目途が立たない)」
 敵の行動パターンを全て把握すれば、敵の行動は予測できる。その考え方は全く正しい。しかし、それには弱点があった。
 すなわち、敵の攻撃行動を全て把握できない場合。
「(無限の攻撃軌道を持つ――なんてのも、ありえない話ではないか)」
 内心歯噛みする。結論から言えば、その【BVAエクスタリ】に対する推測は正解であるが、未だ無限であると確証を掴んだわけですらなかった。ゆえに判断を下せずにいる。有限であることに期待して情報収集を続けても、収集が終わる前に味方が全滅しては元も子もない。赤い瞳が油断なく輝く刃となった外殻を見つめる。金の瞳が愁いの色を帯びてすぐ真上の青い少女の表情を捉える。
 四枚羽の天使は怪獣の刃を翻弄しているが、戦場観察に長けた零だからこそわかる。
 時間は残されていないのだと。

●邪道の剣
「殺意の塊だなアレは」
 ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は吐き捨てるように呟いた。
 戦場で留まって見下ろす先には、当然巨獣――クエーサー・ビーストがいる。

「……ふん。随分と無茶を言ってくれる、と思っていたが逆だな」
「どういうことです?」
 そんな彼女の様子を訝しんで、ミスト・ペルメオスが相対速度をあわせ接触を試みる。
 既に何十と小規模な戦闘を繰り返しているミストだが、息切れは見られない。

「『中身を狙え』というのは良いアドヴァイスかも知れん」
「戦闘中ですよ、端的に願います」
「ああ、つまりだな――」
「――なるほど、そういうことですか」
 ミハエラが小さく耳打つと、ミストは小さく頷いた。それで十分だった。
「ならば私は、このまま敵の外殻を相手取ります」

 トラバサミのように無数の牙が生えた咢の形をとった黄金の外殻が迫る。
 ブラックバードはプラズマスラスターを噴かし、それを容易く躱す。
 続けざまにビームキャノンで牽制射を加える。敵の追撃は許さない。
     、、、、
「悪いな、後の事は頼んだぞ」
 一方、彼女は躱さない。
 ミハエラ・ジェシンスカの身体が、打ち砕かれるのをミストは目撃した。青い瞳は冷静沈着なまま動じない。勝ち誇るかのように、マインドミナBVAが外殻を躍らせる。

 誰かが、ミハエラの喪失を知らせる信号に叫び声をあげる。
 巨獣を前に、弔う余裕はない。
「――ああ、任せろ」
 黒い鳥はただ一言そう嘶き、再び翼を広げる。
 たかが一局面の劣勢ごときで、クエーサー・ビーストに負けを認めることはできない。
 彼には彼の戦場があった。それが、彼の義務なのだから。

●逆転の時     、、、、
「(――ああ、いた。見つけた。君たちは、未だ、ここにいたんだね)」
 赤い瞳に魔力の火が灯る。
 万物が霧散する無重力の宙で、未だ漂う亡霊の影。ドリルのように尖った外殻に、刃のように振り下ろされたそれに、べったりとついた血のような思念。それらが誰か、天星・零は――いや、この場にいる猟兵は皆知っている。
 【超記憶の叡智と飽くなき探求】がそれを見つければ、後は為すべきことを為すのみ。

「しまっ――」
 ヘスティアが叫ぶ。黄金の螺旋が少女を貫かんと迫る。
 青い瞳が恐怖で閉じかけるのを、彼女は必死に堪える。
「――いいえ、もう平気です。残りし力よ、彼女を守れ!」
 それは命令であり、同時に激励の言葉である。
            、、、、
 墓守の言葉に呼応して、彼女たちは再び目覚める。

「……零?」
 青い瞳がまんまるに広がる。敵の攻撃を阻むグレイヴ・ロウには力が満ちている。
 明らかに、何かで強化されている。
「お待たせしました。ここからは、支援に戻ります」
「解析はできたの?」
「……残念ながら、難しいですね。『無限に変化する』外殻の動きを分析しきるのは、戦闘が終わってからにします。代わりに、頼もしい味方を得ました」
「それが、この障壁の源ってわけね」
「ええ。力の源は――」

「――ふふふ、私達がさっき戦った、帝国軍の艦隊でしょう?」
 割り込むような念話。凛としながら、どこか楽しむような声が響く。
 パーム・アンテルシオは戦場を司る天秤が傾いたことを察知していた。

「あはは、正解を言われてしまいましたね。正確には、その亡霊を僕の星天の書で使役しているんです」
 後半は正すためにではない。ヘスティアに補足するために付け足して、零は朗らかに笑った。彼女たちを守るように、未踏領域で人知れず散り忘れ去られるはずだった亡霊船が陣形を組みだす。まぎれもない、反撃の狼煙だった。

●猟兵は進む
「何でもいい、準備が整ったなら行くわよ!零! 覚悟しなさい、マインドミナBVA!」
 明るく気楽な声で宣言し、ヘスティア・イクテュスはティターニアの出力を最大まで上げる。傍らには妖狐の群れ。【狐哭啾々】は今だ健在だ。
 外殻が鞭のように撓って、そんな彼女に迫る。
 刹那、火花が散る。外殻が再びオーラの障壁に阻まれる。ヘスティアを守っていた哨戒艦隊の1艦がマインドミナBVAの攻撃を正面から受け、真っ二つに裂かれる。
 だが、猟兵たちを追い詰めるための大掛かりな一撃は、逆に進撃の隙を産む。
 歴戦の猟兵はそれを決して見逃さない。

「ブラックバード、もう少しだ! もう少しだけ頑張ってくれよ!」
 サイキック・フィールドで、さながら槌のように迫る外殻を歪める。外殻との間に生じた斥力がミストの身体を弾き飛ばし、崩れた体勢をプラズマスラスターの噴射が立て直す。燃料の残量は多くない。しかし、闘志はまだ枯れていない。
「……うん、あとちょっとだよ。だから、頑張って」
 主たるパームの声が妖狐を励ます。猟兵たちは、隙を突いて突破を試みる。
 それでもなお。近づけば近づくほど激しくなる攻撃。
「ここまで来て、まだ躱すのに精一杯だなんて!」
 翻る。胸に零を抱えたヘスティアは、攻撃に移れない。
 至近の一撃を、霊的な加護を得たグレイヴ・ロウが防ぐ。
「……あと一歩、あと一歩なんだ」
 零の力を以て敵の攻撃を阻んでもなお、クエーサー・ビーストの巨体に近づくには距離があった。
 ――あと一撃、何か決定打があれば。

「――つまり、私の出番というわけだ」

●決定打は叛逆の声
「物質と非物質の境界を見極め、それを行き来する――」
 その声は、忠義に満ちている。
 その声は、まぎれもなく見知ったものである。
 その声は、マインドミナBVAの中心部から放たれていた。

「――容易いとまでは言わないが不可能と言う程の芸当でもない」
 ミハエラ・ジェシンスカはマインドミナBVAのコアにあって、魔剣を構える。
 彼女は宇宙に散ったのではなかったか。いや、それは違う。
 それは、ユーベルコード【念動変異】がなし得る大芝居。
 自らの体をサイキックエナジーに変え、消し飛んだかのようにみせ、零たちの反撃にあわせて一挙に中枢へと侵入を果たした。敵がサイキックエナジーに干渉しないとも限らず、その場合は全く無力となるさながら諸刃の剣のごとき作戦。そのリスクを飲み込み、慎重に慎重を重ねて得た奇跡。
 ミハエラ・ジェシンスカという猟兵が猟兵のなんたるを示す。
 だからこそ、ここにいる。

「外の気配――なんだか知らんが気にくわん、気にくわんぞ。そいつらに美味しいところをくれてやるのは気にくわない。その前に、私がお前に引導を渡してやる」
 得体の知れない確信を胸に、ウォーマシンが牙を剥く。
「怖いか、マインドミナBVA! 心配いらないぞ。今からお前は死ぬのだから!」
 ミハエラ・ジェシンスカは今だ怪物の体内で魔剣となって、自らを振るう。
 四本の光があわさる。ユーベルコード【対艦魔剣】の生み出した鮮血のごとき赤が、マインドミナBVAの腸を満たした。

 クエーサー・ビーストの体が震える。痛みに耐えきれず、その外殻が動きを止める。

「――ヘスティアさん、今です!」
 待ちに待った、予測できる敵の動きを前にして零が叫ぶ。
 それを聞いたヘスティアが彼の身体を手放し、銃を手に取る。
「ミスティルテイン――ブラストモード、最大出力で! ――アベル!」
 ヘスティアの忠実なるサポートAI・アベルがミスティルティンの着弾位置を予測・補正して、主に放つべき場所を伝える。可変型ビームライフルのエナジ・リミッタが解放される。この戦場で放つべき最後の一撃に、余力はいらない。
「――そこよ!」
 ライフルから青の光条が放たれる。
「――おまけ! マイクロミサイルも付けるわ!」
 まさしく、容赦のない必殺の一撃だった。

「(計略、お見事。いいでしょう、僕も――)」
 ブラックバード――ミストの青い瞳に、ヘスティアのライフル光線とミサイルが飛来する様が映った。サイキッカーとして、鎧装騎兵として負けていられない――そう思った。

「(とはいえ、撃ち尽くすのは軍人のやることじゃないな)」
 弾丸をいくら汲んでも尽きない魔法の甕があるわけでもなければ、これで戦いが終わるとも限らない。だからこそ最低限の武装で最大限の効果を得る。そのためにはどうすべきか。一呼吸。無言でビームキャノンを操作し、対拠点モードに切り替える。

 プラズマ・スラスター、最大出力。衝撃は全てサイキックフィールドが受け止める。
 さながら漆黒の流星。まっすぐ、まっすぐ、鳥が飛ぶ。
 彼のビームキャノンが狙うのは、ただまっすぐ敵の中央部。

「――ブラックバード、攻撃開始!」
 ただ一言。そう命じる。砲門が開かれ、熱線を放たれる。
 それこそが、ミスト・ペルメオスが自らに許した最大の贅沢だった。
 それこそが、ミスト・ペルメオスが冷静沈着なる軍人たる証左だった。

「さあさ、可愛い子たち。どこも、大盛り上がり……みたいだよ。もたもたしていたら、御馳走がなくなっちゃうよ……なんてね。ふふ」
 赤い瞳が怪しく歪む。いつしか風を纏うことすらやめて、探索船の装甲の上に座ったまま、桃色の妖狐は笑う。空気の無い宙では、妖狐の霊の叫び声が何かは伝わらない。外殻を潜り抜けた先の、柔らかな肉に呪い食らいつかんとする彼女たちの望みなど、想像に容易い。
「あの子に教えてあげて? ――私たちの世界を」
 ゆえにパーム・アンテルシオは確信していた。勝利を。

 赤い光が暗い宇宙に十字を描き、青いビームが十字の中心を貫き、妖狐の霊が逃れようとする獣の肉を食らっていく。引きちぎられ、むさぼられ、悶える。痙攣するかのように、外殻が震える。そして、全ての動きを停止する。

 それが巨獣の最期だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『マインドミナBVAの外殻を剥ぎ取ろう!』

POW   :    腕力と体力を活かして大量の外殻を剥ぎ取り、運搬する

SPD   :    巨大な外殻を器用に解体し、運搬効率を高める

WIZ   :    思念によって形を変える外殻の特性を利用し、変形させた外殻を運搬する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章
「艦長、この外殻――我々の装備単独じゃ採取できませんよ」
 戦闘直後から慌ただしくなった探査船『クイーンズ・オルファクトリー』の艦橋で、ギュンター艦長が報告を受けている。
「それは収容の問題か、それとも剥がせないのか」
「どっちもですね。粉々になった外殻なら運べますが、太く長く伸びたのとか、槌みたいにひらべったい形状のものをそのまま収容するのは困難です。でも、加工できるような装備はありません。クエーサー・ビースト……の、まあ、バラバラ死体にもたくさん外殻が残っていて、それを切り出す作業も手持ちの装備じゃ火力が足りなくて難しいですな」
「……お宝の山だというのに」
 艦長は嘆息を漏らす。紛れもない大戦果――それを持ち帰ることがもたらす影響は計り知れない。取りうる手段は明らかだった。ゆえに、帽子を被り直し立ち上がる。

「仕方ない。戦闘の直後だが、猟兵に頼んでみよう」

●ますこめ
 お世話様です、結局文章が長くなってしまう隰桑です。
 戦闘お疲れ様でした。ご参加くださった皆様、楽しんでいただけたでしょうか。

 ここからは冒険パートです。

●状況説明
 作戦の舞台は、『クエーサー・ビーストとの戦場跡』。
 猟兵の攻撃によってばらばらに砕かれたクエーサー・ビースト『マインドミナBVA』の死体(惑星大)があります。

 クエーサービーストの死体に残った外殻を剥ぎ取る、戦闘宙域を漂う戦闘で千切られた外殻を探す――などで、外殻を集めてください。

 探査船『クイーンズ・オルファクトリー』は猟兵の皆様への支援を惜しみませんが、彼女の装備は堅牢ながら自在に変形する外殻を自力で回収できるものではなく、最低限のことしかできないでしょう。
 それでも、要望があれば何とかしてかなえようとしてくれるはずです。

 グリモア猟兵の天通・ジンは冒険フラグメントなので登場しません。

 プレイングは「外殻をどう集めるか」あるいは「どう運搬するか」に焦点を絞って書いてもらえれば間違いないです。
 皆様の得意な方法を書いてもらえれば、いい感じに描写します。

●採用関連
 「執筆は11/4(月)中に行います」

 締切は『11/3 23:59』を予定しています。
 再送をお願いすることは無い予定です。
 プレイングが集まらなかった場合は、順次締め切りを延ばします。

 なお、採用数はなるべく多くしたいと考えています。
 どなた様も奮ってご参加ください。
龍泉寺・雷華(サポート)
くっくっく……漸くこの時が来ましたね……
我が力が必要とあらば、何時でも何処でも即参上!
如何な困難であろうと、知略と究極魔術にて解決して見せましょう!


ってー感じで颯爽と駆けつけて頑張っちゃいますよー!
ユベコも動きも全部お任せ!
何でも出来ちゃうのが我の凄い所ですねー
あ、でもえっちぃのだけは勘弁です!


よくポジティブ厨二娘って言われますが、きっと凄い褒め言葉なんでしょうね!
肝心な所が抜けてるとも良く言われますが……それは気のせいです、うん
戦いでは派手な究極魔術をメインに、詠唱の隙を魔術障壁と護身剣術でカバーするスタイルです!
ふふふー華麗なる我の活躍、ご覧に入れましょう!


クリストファー・レヴェック(サポート)
『さあ、ビジネスの時間だ。しっかりやってきてくれよ。』
 多重人格者の電脳魔術士×破戒僧、35歳の男です。
 普段の口調は「男性的(俺、お前、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、時々「丁寧(俺、お前さん、だ、だぜ、だな、だよな?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




●発破と後処理
「破壊されたとはいえ、惑星級の図体を持つ敵から外殻採取する――ねぇ?」
 太い指で禿頭を掻こうとして、宇宙服が頭を覆っていたのだとクリストファー・レヴェック(千の人格を持つ男・f04828)は思い出した。煙草の一つも吸えやしない宇宙空間では、寂しくて堪らない口が一人でに動くのも仕方ない。
「先の戦闘で粉々になったのと、本体に取り付いて剥がれていないのと……より取り見取りとは聞こえがいいが――果てさてどうして回収したものかな」
 確かに『マインドミナBVA』は倒され、外殻は回収可能な状態にある。しかし、可能と容易は別物だ。探索船『クイーンズ・オルファクトリー』の調査隊が諦めたように、頑強な外殻――それも相応の量を回収するのは簡単ではない。誰かが何か少し試せばすぐ解決とはいかないだろう。ゆえに、分析に長ける電脳魔術士たるクリストファーは冷静に呼吸する。
 果たして何から手をつけるべきか――。

 誤算があるとすれば、当然。常識外れの存在こそが猟兵だということ。
 常識という言葉の中には、後先だとか計画性という意味が含まれるということ。
 それらを考えない存在もまた、猟兵だということ。

「くっくっく……漸くこの時が来ましたね……」
 その声は、後ろから聞こえた。

「我が力が必要とあらば、何時でも何処でも即参上!」
 自信満々な声。自らの思考を一寸たりとも疑っていないと確信できる声。赤と金の二色の瞳はそれを裏付けるような期待の光で満ちている。龍泉寺・雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)の両手は既に魔力で満ちている。
「要は、その外殻を回収できるよう砕いちゃえばいいんでしょう!」
「いや、そんな簡単な話ではなくだな……」
「心配無用!如何な困難であろうと、知略と究極魔術にて解決して見せましょう!」
「いやだから……」
「ふふふー、華麗なる我の活躍をご覧に入れましょう! いきますよ!」
「こっちの話を聞け!」
 タフガイですら思わずつっこむ。厨二魔術師にはどこ吹く風よ。
 金色の瞳が、眩さを増す。
 それを反射して、クリストファーの禿頭も暗い宇宙の中でひと際輝く。

「我が究極魔術、その力を見せてあげましょう!」
「待っ――」
 唱える。それは、四元素の魔力を帯びた必殺の一撃。
     エレメンタル  デストラクション
 ――【元素変質・天地蹂躙】は四色の渦となって、まっすぐ死体に向かっていく。
 人はこれを、オーバーキルという。或いは、死者に鞭打つとも。
 爆発の光。死肉が砕け散るのが見える。
 外殻が――ある程度常識的な大きさで砕け、剥がれている様子も見える。

「よーし! ふふふーん、どんなもんでしょう!」
「……まあ、結果オーライだな」
 良くも悪くも、結果オーライ。外殻が飛び散ってしまったため、回収の手間は増えただろうが、クエーサー・ビーストの死骸から素材を剥がす手間は大幅に短縮された。功績は決して小さくない。クリストファーの焦茶色の瞳は、それらを冷静に観察しきる。
 観察の途中で一片の肉片――といっても、人間の二倍ほどは背丈のある――が飛んできたので、自慢の拳で弾き飛ばす。息はまったく乱れない。

「お見事。……って、どうしたんです、タブレットなんて取り出して。あれ?二人?」
 きょとんとした顔で、二色の瞳をまんまるにした雷華が尋ねる。いまさら何をするのかと不思議そうに。彼女の中では、もう外殻回収任務は終わったようなものらしい。
「当然。子供が遊んだら後片付けをするのが大人の仕事ですから」
 とはいえ目の前で筋骨隆々の男が二人に増えていたら、そんな反応になるのも無理はない。【オルタナティブ・ダブル】――ユーベルコードの奇跡のひとつ。クリストファー・レヴェックという、多重人格者のもう一人の自分。
「ふーん。そういうのは楽しくなさそうなので、我はお任せしちゃいます!」
 興味なさそうに、雷華は投げるように言う。
 それを聞いて、二人のクリストファーは苦笑しあった。
「……お前さん、ポジティブって言われないか?」
「はい、よく褒められますよ。ポジティブ厨二娘って!」
「そうやって褒めてくれる友達を、大事にした方がいいですよ」
 きょとんとし続ける雷華を後目に、クリストファーたちはタブレットを弄りだす。
 ひとりは、共有情報網に外殻の欠片の位置をプロットしていく。
 もうひとりは、端末上で他の猟兵の位置を確認し、連絡経路を確保する。
 二人の電脳魔術師が成し遂げる、芸術的な指揮系統の確立。

「……さあ、あとは他の猟兵がやってくれます。一緒に帰りましょう」
「え? もうちょっと肉片を爆破したりとかお手伝いできるかも……」
「いいから、帰りましょう」
「あっちょっと! ひとりで帰れますから! ちょっと!?」
 あなたが余計なことをする前に――という言葉をぐっと飲み込んで、二人のクリストファーは両脇からばたばた抵抗する雷華を拘束し帰還を始める。
 ここまですべて。間違いなく、必要な仕事だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミスト・ペルメオス
【WIZ】
まずは試す。ダメならその時だッ。

念動力を最大限に発揮。(必要なら)【サイキック・フィールドシューター】を行使。
残骸として散らばる外殻(ある程度大きなもの)に対し、自らの思念を乗せ、かつ破壊効果は抑えたサイキック・エナジー波を外殻にぶつける。
それによって外殻に干渉し、自身による外殻の操作・形態や性質の変化等が可能になるか試す。
試みが成功した場合、残骸や本体の外殻に片っ端からサイキック・エナジー波を投射。
自身の制御が追い付く限りの量を1か所に、または1つの巨大な塊に変形させ、まとめて輸送していく。

なお、試みが失敗した場合は物理的な手段で外殻を回収・輸送する。

※他の方との共闘等、歓迎です


ミハエラ・ジェシンスカ
(シャワーシーンを終えて登場)
(体内で暴れまわって浴びた得体の知れない体液やらを洗浄しただけ)
……再出撃か、構わん

外殻を改めてフォースレーダーで走査して【情報収集】
アレの思考形態なんぞはわからんが、この外殻がある種の思念によって形を変えていた事は間違いあるまい
であれば……やはりな
精神干渉【催眠術】が可能なようだ

ならば話は簡単だ
異なるオブリビオンにまで変化する外殻の特性を利用し
「自ずから移動するようにすれば良い」
なに、似たようなユーベルコードは心得がある

形状は……そうだな
私もデータでしか知らないが、アレがいいだろう
彷徨する災厄、巨鯨メルビレイ
尤もオブリビオンそのものではない、形状だけの模倣だがな



●黒き二機と、泳ぐ鯨
「……状況はどうなっている?」
 フォース・レーダーを起動させながら、黒き機械兵――ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)はもう一機の黒い機体に問いかける。
「味方が大掛かりな発破を仕掛けて、回収しやすくなったところですよ」
 端的に、一層破壊が進んだクエーサー・ビーストの死骸を視線で示しながら、ブラックバード――ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)は答える。
「それは結構。折角の風呂上がりだが、また臭いが付きそうだ」
 平坦な声で、面白くなさそうに冗談めかす。
「ウォーマシンもお風呂に入るんですね」
「……言葉の綾というものを知らんのか」
「冗談だったんですか」
「洗浄はした。――いや、もういい。それより仕事だ」
 そんな機械的な反応に、ウォーマシンがため息をつく。もちろんこれも言葉の綾だ。

「とにかく、この飛び散った外殻を回収しないことには始まりません」
「手はあるのか?」
「やってみます」
「了解した」
 色気の全くない事務的な会話をこなす。下手をすれば戦闘時以上に無機質なそれを終えて、まず輝いたのはブラックバードのプラズマ・スラスターの噴炎だった。より俯瞰しやすい位置を見定め、静止する。
 機体の内で目を閉じ、思念に集中する。宙に散らばる無数の外殻。すべてを捉えることはできない。しかし、近くにあるもの、大きなものは捕まえられる。集中する。その輪郭のひとつひとつを、その肌触りのひとつひとつを感じる。イメージができあがる。

「(――まずは試す。ダメならその時だッ)」
 不可視の波動が宇宙空間を満たす。黒い海に浮かぶ無数の外殻を通ると、まるで生きものように動き出す。それがやがて波動の中心部――ミストの眼前に集まりだす。ユーベルコード【サイキック・フィールドシューター】の応用技。制御が及ぶ限りめいっぱいの外殻を集めきる。がしゃりがしゃりと音を立てて外殻が重なり、その境界は次第と曖昧になり球状の核ができあがった。短時間で、見事な回収。そう思われた。
        、、、、、、
「……困ったな。集まりすぎた」
 しかし、彼はそう呟く。
 理由は単純。
 舞台が宇宙だろうと、物質は慣性質量を持つということ。
 かみ砕いて言えば、念動力で集めて一つの巨大な塊を作ることには成功したが、大きすぎて輸送する術がないということ。
 無重力空間であっても、物を運ぶには相応のエネルギーが必要だ。集めれば集めるほど、さらには彼が熟練の猟兵であるがゆえに集まりすぎるほど、運ぶために必要なエネルギーは増す、一人では賄いきれないほどに。
 現状装備のブラックバードの推力は人間一人を運ぶのには十分だが、惑星級の敵の外殻を運ぶのに用いるには出力不足だった。一方、無限の念波を放ち続け移動させ続けるのも現実的ではなかった。打つ手に窮し、思案気に唸る。

「ここまで集めたのか、見事なものだ」
 その懸念に割り込むような平坦な賞賛の声。ミハエラの声。
「ありがとう。だけど、ここまでだな。もう少し試してみるけど、最悪、もう一度砕いてもらわないといけないかもしれない」
「いや、そこまでお膳立てが整ったならば――話は簡単だ」
「……へぇ?」
「さっきお前がやっていたことと同じだ。――自ずから移動するようにすれば良い」
「それほど有力なサイキッカーだなんて、知らなかったな」
「いや、私はサイキッカーではない。お前と同じことはできないとも。私には私のやり方がある。……外殻は思念によって形を変える。本質的に異なるオブリビオンを模倣してしまうほどに」
「その口ぶり、条件付きの操作能力ってとこか」
「なに、そのようなユーベルコードは心得がある」
 だから、こうする。そう言わんばかりに、ミストが集めた外殻塊に触れる。

「形状は……そうだな。私もデータでしか知らないが、アレがいいだろう」
 思い浮かべるのは、宇宙を自由に泳ぐもの。
 球体が胚ならば。分裂を繰り返し、神経溝が管構造を作り、やがて尾が伸び、三つに分かれたヒレが生える。同時に原始脳幹から眼胞が生まれ、目ができる。それは――。
「――なるほど、彷徨する災厄、巨鯨メルビレイ」
 ミストも直接相対したわけではないが、その存在は知っていた。
「……尤もオブリビオンそのものではない、形状だけの模倣だがな」
 ミハエラが小さく頷く。
 主の合図に応じるかのように、模倣の鯨は大きくその身体を捻り、動き出す。

「誘導を行う。もう少し付き合え、ブラックバード」
「了解、任せろ」
 二機と一頭が泳ぎ出す。暗い海を、帰る場所へ向かって。
 彼らには帰るべき場所があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
【星海】
さぁ!マインドミナBVAは倒した!後はお宝を集めるだけね!
じゃんじゃん集めるわよ!零!

アベルで周辺の【情報収集】
比較的小さい物を狙っていくわよ

プチヘス!さぁ!キリキリ働いて!
無重力ならまだ比較的楽に押せるはず、ミニプラズマジェット装着のプチヘス達で押したり引いたり船の中に

零が艦隊も動かせるなら運べる外殻は一気に増えるわね…
零、この大きいのもお願い!
うちのプチヘスをこっちが終わったら手伝わさせるから!
船の外壁、新しい装備の数々、余った欠片は普通に売れるでしょうし、ここまで来た甲斐あったわね!


天星・零
【星海】

『この大きなものを運搬どうしますかね…』

常に【世界知識+情報収集+追跡+第六感】で辺りを見渡し外殻を集める際の有効な手段を探す

また、前章の『銀河帝国哨戒艦隊』が残っているのならば手伝ってもらう

『ディミオス、君に頼むのは申し訳ないけど手伝ってもらえるかい?』

指定UCを発動し、ディミオスに鎖で艦隊に一緒に運ぶようにお願いしつつ、また、大きめの外殻が鎌で小さくできるならなるべく小さくして多く運べるようにしてもらう

また、十の死を使いもし形状変化や加工などができればそれも試みます

一連の作業が終わり、運べたら手伝ってくれた艦隊の功績と勇敢さに敬意と感謝を込めて祈ります

UC口調秘密の設定参照



●星海は広く
「プチヘス! さぁ! キリキリ働いて!」
 威勢良く叫ぶ。その声が直接届いて伝わっての指示かは定かではないが、二頭身にデフォルメされた青い髪のロボットの群れがめいめい小さく切り整えられた外殻を押して運んでいく。60体近くいる彼女たちの中心で、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は四枚羽のティターニアを穏やかに噴かせている。
「こら!そこ手を休めるな! あなた達でも運べるものを割り当てているんだから!」
 びしりと指を突きたてた先には、ちょっと手を抜いて気の抜けた顔をしていたプチヘスの一体。指摘され慌てて急加速、バランスを崩してくるくる回り、やがて落ち着き安定軌道を取り戻す。そんな様子にスペースノイドの少女は頭を抱え、やがて気分を取り戻す。
 何より、クエーサー・ビーストの外殻という新素材は冒険心をくすぐるものだった。
 沸き立つ心で、海賊船長は宇宙を飛ぶ。
「(船の外壁、新しい装備の数々、余った欠片は普通に売れるでしょうし、ここまで来た甲斐あったわね!)」
 ――もちろんそれは、大きな打算に満ちていた。

 ところで、物理学の話をしよう。いわゆる無重力空間、特に(居住可能)惑星が存在しないスペースシップワールドでは重力はある程度無視できる存在と考えられる。しかし、物体はそれぞれ固有の質量を持つ。質量――俗に言うおもさが存在する以上物体には慣性が働くため、それを移動させるためには相応の加速度をもたらさなければならない。別世界の話だが、人間が地球の上に立つことができるのもこれが理由だ。
 すなわち、小さな体のプチヘス部隊で運べるのは、彼女たちのミニプラズマジェットが運べるぶんでしかない。スペースノイドであるヘスティアは、当然それを経験的に理解しており、無理はさせなかった。
 ヘスティアと共に運び終えたプチヘスたちは、探索船の付近で押したり引いたり、小さな外殻塊を探査船の船員と共に手際良く回収していく。

「うーん……後に残ったこの欠片、どうしようかしら」
 プチヘスが十体ほど、押し合いへし合い頑張って運ぼうとするのは外殻の欠片。誰かが戦闘で斬り落としたのだろう。断端は鋭利なまま、宙に浮かんでいる。プチヘスたちに怪我をさせないよう、安全なところを持たせながら、何か妙案がないかと青い瞳はあたりを見回す。
 騎兵隊がやってきた。

「――零、この大きいのもお願い!」
 それは亡霊と首狩り女王を引き連れた、もちろん見知った彼の姿。亡霊と言っても、ほとんど消えかけの銀河帝国哨戒艦隊の怨念。天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は、艦の外で、彼に傅く首狩り女王――ディミオスと共に座っている。
 首狩り女王の手繰る鎖は比較的大きな塊に繋がれ、曳航の助けとなっている。
「――わかりました。これもいいかな、ディミオス?」
「うちのプチヘスをこっちが終わったら手伝わせるから! お願い、ディミオス!」
 無線越しに零の微笑が伝わる。それを感じて、ヘスティアが明るくねだる。
 髑髏の女王は落ち窪んだ暗い眼窩を僅かに動かし、その声に耳を傾けた。
 それは一瞬、されど永遠にも似た緩慢な動作を経て、ディミオスは口を開く。
「――命じられたならば、いいだろう」
 鎖をプチヘスが引いていき、外殻に巻き付ける。
 固定されたことを確認して、少年少女の合図に応じ、艦隊の亡霊が宇宙の海を進む。亡霊ゆえ、軍艦の艦隊が崩れるようなことはない。しかし、その存在が次第に薄れていくのを彼は感じた。それでもなお、彼の命に従うのは――。
「(それが、君たちが本来受けた、成し遂げたかった想いなんだね)」
 その思いを利用したと解釈するのは悪意だろう。零はより純粋だった。

 だからこそ。

「(――ありがとう、銀河帝国の名も知らぬ艦隊。君たちの勇戦に感謝するよ)」
 やがて消えゆく残滓に、零は心の内で目前に迫った彼女たちの冥福を祈る。
 それが一時の戦友にできる最大限の餞だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レッグ・ワート
手数要るかい。

切り出し易そうなトコ見繕って、1カ所ずつドローンでざっくり情報収集といこう。切りとるのに向いてなかったらほっとくか、向いた手段持ってる奴に連絡入れてから次だ。効率良くいけそうな場所を見つけたら、被膜置換で触れてサンプルに良いサイズに切り出すか切り込んで怪力で剥がすぜ。とれたのは多少形変わってもいけるよう糸編んで宇宙バイクに固定する。
もしでかい板状に切り出せるなら、補修用の接着材あたりでコンテナモドキ作ってまたそこに積んでくか?流石に船の外装にするには物体X過ぎるしなあ。

変わるのは形であって性質丸じゃねえよな。それとも大本からか。……コアマシンになあれとかは。いややらないやらない。


パーム・アンテルシオ
行きはよいよい、帰りは怖い…っていうのとは、ちょっと違うかな。
ふふふ。倒した後にも、問題が待ってるなんて。厳しいね、この世界は。
そうだね…それじゃあ。私にできる事も、考えてみようかな。

うぅん…細かく砕いて持って帰るのも、いいけど…
そのまま持って帰りたいものとかも、きっと、あるよね。
その方が…研究?とか。できるかもだし。

普通に持って帰るのが、難しいなら…
自発的に、ついてきてもらう。とか、どうかな?
ユーベルコード…山茶禍。
「あなたはこれから、私のあとを付いてくる。私がいいって言うまで」。
ふふ。死んじゃったあとのものなら、呪詛に抵抗するもなにもないよね。
…ところで、どこまで持って帰ればいいのかな…?



●山茶禍の呪詛
「(うぅん……細かく砕いて持って帰るのも、いいけど……)」
 宇宙に吹き荒れる暴風の中心で、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)は静かに思考を重ねる。切り刻むことは、相応の手段が必要であろうが、猟兵の力なら可能である。たとえば、炎の扱いに長けるパームならば様々な手段で焼き、溶かし変形させることもできただろう。他にも、火蘭蕉や鎌鼬で切り裂くことも可能だったと考えられる。さらに言えば、まだ明らかにしていない奥の手がないとも限らない。
 でも。

「(……そのまま持って帰りたいものとかも、きっと、あるよね)」
 その方が研究に役立つはず。そう考えた。折角の新素材、ただ回収して終わりではない。誰かが解析し、それを役立てる方法を探すはず。そのためには、なるべく損耗の少ないサンプルがあるに越したことは無い。
 だから彼女は考える。
「(……自発的に、ついてきてもらう。とか、どうかな?)」
 普通に持って帰るのは難しい。ならば、発想を逆転させる。
 赤い瞳がゆらりと揺れて、宇宙に散らばる無数の外殻を眺めきる。
 妖狐の視線は呪いの視線。その対象は、何も生命だけとは限らない。

「……あなたはこれから、私のあとを付いてくる。私がいいって言うまで」
 小さく呟く。無線にすらのらないような声。だが、はっきりと届く。
 九尾の狐が風に吹かれる、視線を受けたそれらも一斉に同じ方向を向く。
「ふふ。死んじゃったあとのものなら、呪詛に抵抗するもなにもないよね」
 それはユーベルコード――【山茶禍】の呪詛。
 一たび発されたパームの命令は、そのまま外殻たちの運命となる。
 もはや手足と変わりない。回収作戦は成功した――――かにみえた。

 パームは何かに気づいて、はたと立ち止まる。
 
「――ところで、どこまで持って帰ればいいのかな……?」
 ここまで言及を避けていたが、実は彼女は迷子だった。

●撤退支援型3LG
「よお、お疲れさん。手助け、いるかい?」
 そんな迷子のパームの耳――正確には無線に、ぶっきらぼうな声が響く。彼にとって、宇宙の数百キロメートルは大した距離ではない。大型の宇宙バイクが唸りをあげて、見知った姿の傍に駆け寄る。
「レグさん、だったよね。久しぶり。……えっと、UDCアースで会って以来?」
「だったかな。俺の認識範囲ではそのはずだ」
 地上の街で会ったときとは異なる姿に、赤い瞳がくりくり動く。
 青い瞳の機械兵――レッグ・ワート(脚・f02517)は答えるだけ答えて、じっと動かない。それは、適切な入力を待つ機械的な動きに見えた。あるいは分かりづらい彼流の冗談なのかもしれない。
「……あ、えっと、そう。手助け、欲しいな」
「道案内でいいか? それとも、乗ってくかい?」
「ん、乗せてくれるの?」
「白騎士とも、得体の知れないドラム缶とも一緒に戦ったんだ。知らぬ仲じゃないだろ」
 ぶっきらぼうな言い方が彼の流儀。だが、戦友を笑顔にするには十分だった。
「ふふ、ちゃんと覚えていてくれたんだ。……じゃあ、お願い。この子たちもついてくるけど、いいかな?」
「この子たち? ……ああ、なるほど。お前と周辺の外殻との間に厳密に認識、定義困難な何らかのエネルギー経路接続を僅かに感知している。ユーベルコードだな。下僕にするとか、操作するとか、そういう能力とみた。速度を出すと不都合があるか?」
「ユーベルコードというのは、あたり。それ以上は……そうだね、企業秘密。――あ、速度は出しても大丈夫。この子たちは、一生懸命付いてきてくれるはずだから」
「そうかい。お互いのために、詮索はしないさ。変わるのは形であって性質丸じゃねえだろうからな。」
 口を出す理由がない、とレグは口をつぐむ。ユーベルコードで性質が変わって、コアマシンとか量産できないかな――なんて考えたとは、ちょっと言いづらかった。
「レグさんさ、モテないよって言われない?」
 目を少し細めて、からかうような声でパームは口を尖らせる。
「ウォーマシンには不要な考え方だ」
「それ答えになってない――いや、なってるのかな?」
「乗るのか、乗らないのか?」
「乗るよ、乗せてください」
「りょーかい」
 淡々と、だがどこか人間味のある催促をしてレッグは少女を後ろに乗せた。

 座席に座ったパームが、後ろを見て首をかしげる。彼女の視線の先には細い糸。伸びた先には、立方体形の――見慣れた色のクエーサー・ビーストの外殻。
「……ところで、この後ろにある四角いのって、外殻?」
「探査船の連中が、収納スペースがないって愚痴ってたからな。収納スペースが足りないなら、作ってしまえばいい。単純だ」
「それで、このコンテナモドキなんだね。剥がして組み立てるなんて、力持ちなんだ」
「それが俺の仕様だからな。持ち帰る量を増やすのも一つの発想ってね」
 美少女に褒められても、奪還支援型3LGは平然としたままである。彼にとって、実現可能な着想を実現することは演算がもたらした妥当な帰結であって、それ以上でも以下でもないのだ。

「(私は質の維持を意識した。けど、量を増やすことを重視するひともいた。……ふふ、多様性って、こういうことを言うのかな)」
 そんな様子を狐の少女はどこか面白がって、内心独り言つ。 
「……パーム?」
「ううん、なんでもない。大丈夫、出発してもらって構わないよ」
 少女の柔らかな体が無機質な機械殻に密着したのを確認して、レグはアクセルを踏んだ。地上であれば遥か彼方でも、宇宙であれば一瞬のこと。クエーサービースト発、探査船行きの小さな旅路を、二人はまっすぐに進んでいった。
 探査船の船員が大いに喜んだことは、言うまでもない。

 多くの成果を携えて、猟兵たちは進んでいく。
 如何なる脅威をも、その歩みを妨げることはできない。彼らが猟兵である限り。
 宇宙の果てで得たものは、誰かの未来を拓くに違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月07日


挿絵イラスト