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カニがアンコウ背負ってきた

#アックス&ウィザーズ


●霜の砂漠
 ――アックス&ウィザーズ。
 猟兵達がそう呼ぶ世界に『霜の砂漠』と呼ばれる地がある。
 日照時間が短くなる秋半ばから冬の終わり頃まで、その名の通り、夜毎、砂漠に霜柱が発生するのだ。
 とは言え、砂漠は砂漠である。
 夜が明けて太陽が昇れば、遮るものなく注ぐ陽光が霜をみるみる溶かして、地表はすぐに乾いた砂地へ戻っていく。
 ――筈であった。
「な……なんだ、こりゃ……」
「砂漠が……凍ってやがる」
 霜の砂漠に生きる人々の大半にとって、それは初めての事だったのである。
 凍りついた砂漠の冷たさで目を覚ますという事は。
「こりゃあ……とんでもない大物がいるみたいだねぇ。まるで言い伝えにある『最初の霜将軍』がいるみたいじゃあないか」
 驚く若者達の後ろで、長たる老婆は目を細めて呟いていた。

●カニ食べツアーへの案内(戦闘もあるよ)
「アースクライシスお疲れ様――という事で、美味しいもの食べたくない?」
 グリモアベースに集まった猟兵達を見回し開口一番、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)はそう話を切り出した。
「向かって欲しい世界は、アックス&ウィザーズ。そこに『霜の砂漠』と呼ばれる、秋から冬に掛けて霜柱が出る砂漠があるんだけど――そこが、なんと凍った」
 砂漠が凍ると言う異常事態。
 猟兵が集められるという事は、それがオブリビオンの仕業という事だ。
「そもそも『霜の砂漠』の中には砂漠に適応した魚介類と言う、まるで海の中を思わせる生態系が作られているんだ」
 何故そんな生態系が出来たのかは、誰も知らない謎である。
「その中で、霜の砂漠を霜の砂漠たらしめる最大の要因とされているのが、霜の砂漠に住む人々に『霜将軍』と言う二つ名で呼ばれる蟹だ」
 砂漠の中にいながら、鋏から水を放つカニ。
 その水がなければ、砂漠の霜柱は生まれないであろう。
 なお、海のカニと比べても大きく、美味だとか。
「とは言え、これまでの冬は霜柱が発生する程度だった。その状況が変わるのは、本当の意味で『霜将軍』と言えるオブリビオンの巨蟹の所為だ」
 巨大な鋏から放たれる水は水の大砲。小山の如き巨体を覆う甲羅は、常に氷点下の冷気を発している。
「お供に『ふくれアンコくん』を引き連れてるし、『真・霜将軍』とでも言おうか」
 で、その『真・霜将軍』、砂漠を凍らせて何してるの?
「何もしてない。砂漠の奥底に潜んでアンコウが多めに引き寄せた餌を食べてるだけ」
 …………。
「差し迫った害はない。だけど、霜の砂漠が凍ると困る人々がいる」
 それは渡守を生業に、霜の砂漠に生きる人々。
「彼らは砂漠を渡るのはお手の物。霜柱が発生した砂漠も慣れたもの。だけど凍った砂漠を渡る術は流石にないみたいだ」
 自分達の手に余る事態だと判っても、助けを呼ぶ道が氷に閉ざされてしまっては、どうしようもない。

「まずは凍った砂漠に穴を開けて、アンコウの夜釣りをして欲しい」
 『真・霜将軍』は砂漠の底から動かない。
「だから先に共生関係と言える『ふくれアンコくん』を釣ってしまえ、と言うわけさ」
 夜釣りなのは、『ふくれアンコくん』の位置が、その光で凡そ判るから。
「糧を集めるアンコウが減ってくれば、『真・霜将軍』も「何すんじゃ」とばかりに動き出す筈だよ。まあ……動き出しても、中々砂の中から出て来ない上に、本体とも限らないんだけどね」
 なんと『真・霜将軍』、実体を持つ分身体を創る力も持っているそうな。
「分身か本体かの区別なんだけど……ごめん。味しか判らなかった」
 ――はい?
「分身体は、恐ろしく不味い。だけど本体はとてもとても美味しい」
 それ、知ってどうしろと?
 戦闘中に齧りつけと?
「……なんとかなるさ!」
 あ、このエルフ丸投げしやがった。
「あと、巨大な鋏には気をつけてくれ」
 大きく発達した鋏の威力は――。
「巨大とは言え鋏の数は限られているからね。誰が食べるかで、揉めないように」
 …………。
「ちなみに『ふくれアンコくん』の方も大変美味らしいね。霜の砂漠の人々も、事が済んだらカニとアンコウを調理して持て成してくれるそうだよ」
 砂漠では、食料は貴重である。
 毒がなければ何でも食う。
 毒があっても毒を抜いて、食う。それが彼らのスタイル。
「保存も出来ない事情があるらしくてね。いやあ、良いよね。美味しいカニとアンコウ。私も少しでいいから食べてみた――あれ? ねえ皆? 聞いてる?」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 アンコウもカニも好きです。
 どちらも中々食べられないのですが。

 今回はA&Wでアンコウとカニを食べに行こう、と言う緩めのシナリオです。

 1章は集団戦と言う名の、凍った砂漠の上での夜釣りです。
 ワカサギ釣りよろしく、氷に穴を開けて『ふくれアンコくん』を釣りましょう。
 ユベコさえ選択しといて貰えれば、プレイングは釣りメインでも大丈夫です。

 2章は巨蟹『真・霜将軍』とのボス戦です。
 ボス戦なので、まあそこそこ戦って下さい。美味なカニゲットのために!

 3章は夜が明けて、翌日の予定です。
 1,2章で倒したアンコウとカニがメインの宴会です。
 なおオブリビオンじゃない砂漠のカニも砂漠の人々が獲ってくれてる事にしますので、『モンスター食すのはちょっと……』という方も気にせずどうぞ。
 あ、お声掛けあったら、ルシルもカニとアンコウ食べに混ざりたいそうです。

 なお1章の執筆開始は12/5(木)夜からの予定ですので、プレイングは12/5(木)8:30以降に送っていただくと助かります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『七色鈴蘭のふくれアンコくん』

POW   :    かみつきっ!
【潜行からの飛び出し噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    もぐるっ!
【体から30cm以内の地形を対象に砂泥状化】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ   :    まるのみっ!
小さな【鈴蘭灯から催眠光を放つ。強烈な眠気と光】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【胃袋で出口に返しの歯が並ぶ。暴れること】で、いつでも外に出られる。

イラスト:Miyu

👑11
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●凍り、輝く砂漠
 霜の砂漠の渡守。
 東西南北、自在に砂漠を渡り人と荷を運ぶ者たち。
 敢えて砂漠と言う土地に生きる彼らは、大抵の物事には動じない方であるという。
「うぉっ!?」
「一体何処から……」
 それでも、街の中に突然現れた猟兵達に若者達が驚きを隠せない。
「まあ良いさね。この状況を打破してくれるんならねぇ」
 ただ1人、長の老婆は猟兵達をあっさりと受け入れていた。

 そして、日が沈み――空に星が見えだした頃。
 猟兵達は砂漠とは思えない、冷え切った氷の上へと進み出す。
 シンと足から伝わる冷気。靴底に感じる硬さ。少なくとも、体重程度で割れるような薄い氷では無さそうだ。
 砂漠の形のままに凍った起伏に富んだ地形は、その下にいる生き物が放つ光で、そこかしこが七色に輝いていた。

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1章の補足です。
マスターよりにも記載しましたが、1章はすごく判定緩めの集団戦です。
集団戦と言う名の釣りパート、くらいの認識でOKです。

プレイングは12/5(木)8:30~だと助かります。
(それ以前の送信でも構いませんが、高確率で再送をお願いする事になります)
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緋神・美麗
アドリブ・絡み歓迎

砂漠に霜が降りるとか食べれて美味しいオブリビオンとか珍しいものが目白押しねぇ。アンコウの夜釣りとか面白そうね。折角だから大漁を狙うわよ。
野生の勘と大第六感も駆使して釣り場を選んでライトニングセイバーで氷に穴を開けて釣りを始めるわ。
釣り上げたアンコウは即座にサイキックブラストで気絶させて無力化、新鮮な状態で保存しておくわね。
「食材は鮮度が命ってね」
ボスの蟹が出てくるまで思う存分釣りを楽しむわね。


櫛灘・常世
蟹とあんこうを一緒に味わえるなんて、これまた大変乙ですなぁ。
どちらもウチの大好物ですよって、張り切って夜釣りと洒落込みましょ。

……いやはやしかし砂漠の海とは。因幡国の砂丘とは比べもんにならん広さですよって、まさしく圧巻やね。
こんな風景の中で冬の味覚求めて夜釣りができるんやから、いぇえがぁ言うんは良い御身分ですえ。

さてさて釣りは不心得ですよって何の道具もあらしまへんけど、つまるところ糸と針と餌があればよろしいんですやろ?
必要なもんは揃えてもらいましたけど、糸はウチの髪で代用しましょ。
尋常の糸とは比べもんにならん張りですよって、これで安心やね。

あ、釣った魚はウチの護符(=UC)でお静かに願いましょ




 乾いて冷たい風に、黒髪と金髪が揺られている。
「いやはや、まさしく砂の海、やね……圧巻や」
 目の前に広がる凍った砂地の光景に、櫛灘・常世(美髪御前・f24132)の口から、ほぅと感嘆の吐息がこぼれた。
「霜が降りる砂漠とか、そこが更に凍るとか――本当なのね」
 下の砂地の中から広がる光に照らされる氷の上で、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)は黄金の瞳を丸くしている。
 砂漠に霜やら凍るだけでも珍しいのに、その中にいるのは美味しいオブリビオン。
「珍しいものが目白押しねぇ」
 美麗の言うように、これだけ珍しい条件が揃っている事がまず珍しい。
「因幡国の砂丘よりも、広いんちゃいます?」
 常世の生まれた世界にも砂の地形はあるが、比較してもこの砂漠の方が広いように思えていた。
 尤も、常世にそれを正確に測る術はなく――そして今、そこは問題ではない。
「こんな風景の中で、冬の味覚求めて夜釣りができるんやから。いぇえがぁ言うんは良い御身分ですえ」
「…………」
 どこか享楽的な笑みを口の端に浮かべる常世を、美麗が横目で見やる。
 猟兵の関与が求められる事件は、世界もその内容も様々だ。こんな『良い身分』と言える仕事ばかりではない。
 だが、今は違う。ならばそれは常世がこの先、自分で知っていけば良いことだ。
(「まぁ、敢えて今言う事もないわねぇ」)
 享楽的だが楽しげな常世の表情を曇らせる事もないと胸中で呟くと、美麗は何も持たずに氷の上を歩き出した。
 滑らないように注意しながら、一歩ずつ確りと歩みを進める。
 時折足を止めては、美麗は目を閉じ氷の下に意識を集中させる。
 それを何度か繰り返し――。
「この辺かな」
 ヴンッ。
 美麗の掌から、雷に変換されたサイキックエナジーが刃と伸びる。
 そのまま美麗が小さな円を描くように手首をぐるりと回せば、ライトニングセイバーの雷刃が音もなく氷を切って穴を空けていた。

「雷の刃かぁ。見事なもんやね」
 美麗が氷に空けた穴を見下ろしていた常世が、その切り口の滑らかさに思わず称賛を口にしていた。
「幾つか穴を空けておいたから、使って貰って良いわよ」
 そう返しながら、美麗は砂漠の人々に駆りた釣り竿一式を手に取ると、穴の1つに糸を垂らし始めた。
 餌が砂の中に潜っていくのを糸の動きで感じながら、美麗は竿を傾け光点から遠ざかるように糸を引く。
 すると、光点がするりするりと動いて――美麗の竿が大きくしなった。
「っ!」
 くんっと美麗が竿を引っ張り上げると、砂の中からスポッと丸いシルエットが飛び出して来て――歯にやられたのか、プツンッと糸が切れた。
 それでも、糸が切れる前に掛かっていた『ふくれアンコくん』は空中に舞い上げられていて、短いヒレをパタ付かせている。
「食材は鮮度が命ってね」
 落下を待たずに美麗が掌から放った高圧電流が、『ふくれアンコくん』を沈黙させた。

「尋常の糸なら、ウチの髪の方が張りがありますなぁ」
 その様子を見ていた常世は、やおら自身の長い黒髪の中に片手を突っ込んだ。2度3度とさっと指で梳いてみれば、長い黒髪が数本、白い指に絡んで抜けた。
「釣りの心得はあらしまへんけど、糸と針と餌があればよろしいんですやろ?」
 呟きながら、常世は借りた竿から糸を外し、引き抜いた自身の黒髪を結びあわせた黒い釣り糸を、釣り竿と釣り針を結ぶ糸と変える。
「これで安心やね」
 一見すると糸よりも細い髪。されど常世は自身の髪に強い自信を持って、糸を髪と変えた釣り竿の先の針を、別の氷の穴から砂の中に落とす。
「……何も特別な道具あらしまへんけど、この後はどうしましょ?」
 知識はあるものの釣りの心得はない常世はどうしたものかと思案しながら、ただ釣り糸を垂らしているだけであった。
 だが――不慣れ故の動きのなさが、逆に魚を警戒させないということもある。
「ふわっ!? 竿がしなって――あ、かかったんやね」
 ぐぐっとしなる竿に一瞬驚いたものの、常世はそれが掛かった兆候だということを思い出し、両手で竿を掴んで一気に引っ張り上げた。
 スポンッ!
 そんな空気の抜ける音を立てて、七色の光を輝かせた小さなアンコウが常世の頭上に舞い上がる。
「お静かに願いましょ」
 落下してくるアンコウに、常世は指先に構えた符を放った。
「思った通り、この辺って良く釣れそうね」
 幸先の良い釣果に、美麗は自身の第六感と野生の勘が当たっていたのを実感して、満足そうな笑みを浮かべる。
 けれど、まだまだだ。
「蟹が出てくるまで、折角だから大漁を狙うわよ」
「ええねぇ。カニもアンコウもウチの大好物ですよって。夜釣りと洒落込みましょ」
 2匹、3匹と釣果を重ねながら、2人は砂漠の夜釣りを楽しんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)】と
…少なくとも俺には分からぬ、ルシルに食した経験があるのか
若しくはそういった特技をお持ちなのかも知れぬ

釣りか、ワカサギ釣りと同じならば俺でも多少は分かるな
うさみよ、案ずるな
きっと今日の釣果は上々だぞ、苦手意識も克服されるだろう
此処に経験者が居るのだ、任せておけ
因みに寒いのでなと二人分のダウンジャケットを用意

ふくれアンコくんのサイズはどれ位だろうか、と考えつつ
氷に穴を開けて釣り糸を垂らす
…この穴、万が一引きが強いとうさみが落ちかねんな…?
いざとなったらすぐ助けに入れるよう心掛けながら引きを待ち
手応えあらば即座に糸を引き…う、うさみ!?

アンコくんは双剣の先でツンツンと突く


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
グリモア猟兵って見るだけじゃなくて
味まで分かるのか!?
すげーな!ニコも出来るのか!?

釣りは…正直ちょっと苦手意識がある
前に無人島で夕方まで何も釣れなかった思い出が…
ニコは釣りのプロフェッショナルとな!?
じゃあ百人力だな!
今日じゃんじゃん釣り上げて
思い出を塗り替えてやるぜ!!
おっ、さすがプロ、事前準備からバッチリだな!
もこもこダウンジャケット着ていざ釣り開始

何やかんやで強い引きが!
少しでも気を抜くと水の中に引きずり込まれそう!
グググッと足元に力を入れてたら
氷でツルッと滑って…
\ぴゃああああ!!/
ニコ助けてー!!

無事釣り上げたらゆたんぽで
ポコッとして大人しくさせる!



●凍った砂漠で共同作業
「炎剣よ」
 ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)の手にした刃に、炎が灯る。
 時刻みの双剣――時計の針を模した二振りの内、ニコは炎の力を宿した片方だけを逆手に構えていた。
「ふくれアンコくんのサイズは……こんなものか?」
 氷の上から見える光点の大きさから『ふくれアンコくん』の大きさを推測し、ニコはそれを釣り上げるに充分であろう穴の大きさを頭の中で描いて、氷に刃を突き立てた。
 炎を纏った細刃が、氷を溶かし吸い込まれるように沈んでいく。
「釣りか……」
 それを横で眺める榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の表情は、珍しく曇っていた。
「どうした、うさみよ?」
「いやー、正直ちょっと苦手意識が、な」
 何事かと問うニコに返しながら、うさみっちが思い出していたのは夏のある日の事。
 宇宙船の中の無人島にて、青空の下、ドラみっちをお供に釣りに挑んで――何も掛からないまま、気がつけば空が夕日でセピア色になっていた。
「釣り堀でも鮭釣れなかったしなー。今度は夜明けとかなったら笑えねーぜ」
 うさみっちはニコが用意したフェアリーサイズのもこもこな青いダウンジャケットを着てはいるけれど、砂漠で一晩を明かすには流石に心許ない。
 砂漠、凍ってるし。
「うさみよ、案ずるな」
 そんなうさみっちに、同じデザインの黒いダウンジャケット姿のニコが、くり抜いた氷を手に声をかけた。
「ワカサギ釣りと同じならば、俺でも多少は分かる。きっと今日の釣果は上々だぞ」
「ニコは釣りのプロフェッショナルとな!?」
 頼もしいニコの言葉に、うさみっちの顔がぱぁっと明るくなった。
「プロフェッショナルとまで言えるかは判らんが……経験者ではある。任せておけ。うさみの苦手意識も克服されるだろう」
「おっしゃー! 今日じゃんじゃん釣り上げて、思い出を塗り替えてやるぜ!!」

 そして、あっさりと1時間ほどが過ぎた。

 意気込んでみた所で、すぐに釣れるとは限らないのが釣りであり、この世の無常な所とも言えるわけで。
「そう言えば、グリモア猟兵って見るだけじゃなくて、味まで分かるのか?」
 氷に空けた穴から砂の中へ垂らした釣り糸から視線を外さぬまま、うさみっちが口を開いてニコに問いかける。
「ん? ああ、この後の蟹の予知の話か」
 分身は不味いが、本体は美味い。
 うさみっちが疑問を感じたその説明は、ニコも聞いた。
「それそれ。ニコも出来るのか?」
 うさみっちの問いに、ニコはこれまで自分がした予知を思い浮かべ――。
「……少なくとも俺には分からぬ」
 味を予知した覚えは、ついぞなかった。
「ルシルに食した経験があるのか、若しくはそういった特技をお持ちなのかも知れぬ」
「すげーな!」
 本人いないから答えられないけど、今頃グリモアベースでくしゃみしてるよ。
「おお?」
「む?」
 なんて話をしていると、2人の竿がほとんど同時に大きくしなり出した。
 まさかのダブルヒットである。
「うおぉ!?」
「うさみ、引いているぞ!」
 慌てて竿を両手で掴むうさみっちを気にしながら、ニコも自分の竿に手を伸ばし、掴んだ拳にぐっと力を込めた。
 糸が張り過ぎないように竿の傾きで調整し、糸を巻いて引き寄せる。
「ぬんっ!」
 ある程度引いた所で、ニコは両手で竿を掴んで一気に引き上げた。
 70cm程はあろうかと言う丸みを帯びた七色に輝く魚体が中空を舞い、ニコが掲げた時刻みの双剣の上に落ちて突き刺さる。
「おっ、さすがプロ。よっしゃ、俺もやるぜ!!」
 それを見ていたうさみっちも、ニコに倣って竿をぐっと握って糸を引き始める。
 だけど悲しいかな、うさみっちの身長17.8cm。
 『ふくれアンコくん』は決して大きな魚ではないけれど、その引きは、うさみっちには気を抜いたら体ごと引っ張られそうな強い引きであった。
 それでも、うさみっちは腕にも足にも力を込めて、少しずつ糸を引いて行き――。

 ツルッ!

「あ!?」
 うさみっちが体重を後ろにかけた瞬間、踏ん張っていた足元が氷の上で滑った。
 滑って踵が上がった勢いと、竿が引かれている勢いとで、17.8cmの身体が放物線を描いて浮かび上がる。
 ぶーんっ!
 だがうさみっちは、咄嗟に背中の羽を動かし落下を免れていた。
「あぶねー、あぶねー。だけど、このまま一気に釣り上げて――あ、あれ?」
 そこから上昇しての釣り上げを試みたうさみっちであったが、釣り上げるどころか、逆に徐々に砂の方へと引っ張られていた。
「まじかー!? 砂の中で使えるうさみっちゆたんぽどれだ!? さむらいっち? まほみっち? バニみっち? セミっち――って、セミっちはゆたんぽじゃねー!」
 うさみっちの脳裏に、ゆたんぽシリーズが浮かんでは消えていく。
 じりじりと迫る砂は、『ふくれアンコくん』の能力で砂泥状化されていた。もしそこに落ちたら、うさみっちも砂の中に引き込まれかねない。
 \ぴゃああああ!!/
「ニコ助けてー!!」
「任せろ」
 うさみっちがヘルプの声を上げるのを待っていたかのように、ニコが後ろからひょいと腕を回して抱きかかえた。
 実際、待っていたのだ。氷に穴を空けた時点で、ニコはうさみっちが落ちかねない穴のサイズだと、ちゃんと気づいていたのだから。
「うさみ、竿を放すなよ。このまま一気に引き上げるぞ」
「お、おお!」
 背中に聞くニコの声にうさみっちも冷静さを取り戻し、両手で竿をぐっと握る。
 そして――砂の中から、七色に輝く魚体が2つ飛び出した。
「脅かしやがってー! でも一気に2匹とか、流石俺様だぜ!」
 3匹の『ふくれアンコくん』をゆたんぽでポコポコ叩きながら、うさみっちはそれはもう鼻高々だったそうである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

七瀬・麗治
砂漠が凍るなんてヘンな話だよな。しかも、その中で生活する生き物がいるなんて。
で、まずはアンコウ釣りだっけ。見えるぞ、砂の中からでも分かる発光器官の光が。
「うーん、オレの腕が悪いのかどうも食いつきが悪いな……」
(ふん、ヘタクソめ。私に代われ)
見かねて闇の人格『ロード』が出現し、選手交代。
「脳筋が……少しは頭を使え。こういう風に」
髪の毛の間から、ニューッと『謎を喰う触手』が出現。それを長く伸ばして凍った地面にズボッと突っ込み、ユラユラと揺らしてあんこう君を誘ってやる。おいでおいでと手招きするように。間抜けがホイホイついてきたら、素早く触手で絡め取ってやろう。
「そら、捕まえたぞ! まずは一匹!」



●謎を喰らう触手でそう来たか
「砂漠が凍るなんてヘンな話だよな」
 誰に言うでもなく、七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)がひとりごちた声が砂漠の夜空に流れていく。
 麗治がいるのは、その『ヘンな話』の上であった。
「しかも、その中で生活するヘンな生き物がいるなんてな」
 そのヘンな生き物を目当てに、氷に空けた穴から釣り糸を垂らしている。
 世界が変われば常識も変わる。
 大学の医学部に籍を置く麗治にしてみれば、凍る砂漠もその砂の中に生きる魚介類というのも、ヘンな話であるのだろう。
 とは言え、それはそれである。
 現実として目の前にあるヘンな光景を、麗治はとっくに受け入れていた。
 ヘンな話だと愚痴るように呟いた理由は、他にある。
「うーん」
 動かないのだ。糸が。
「オレの腕が悪いのか、どうも食いつきが悪いな……」
 麗治の傍らには、しばらく前に1匹釣り上げた『ふくれアンコくん』が転がってはいるのだが、それっきりで続いていなかった。
「発光器官の光は見えているから、いない筈はないんだがな」
 \ぴゃああああ!!/
 溜息混じりに零した麗治の耳に、そんな声が聞こえてきた。
 声が聞こえてきた方に視線を向ければ、麗治も見覚えのある猟兵2人が協力して、一気に2匹を釣り上げたところだった。
「凄いな。何かコツがあるのだろうか」
 話を聞いてみようかと、麗治が腰を上げかけた、その時。

 ――ふん、ヘタクソめ。

 麗治の頭の中に、やけに尊大な声が響いた。
(「ロード!? だが、何故――ここは戦場では無」)
(『私は釣りとは戦いだと感じたぞ。私に代われ』)
 何かを感じたらしい闇人格のロードは、麗治に有無を言わさずに身体の主導権をほとんどぶんどるように奪い取る。
「脳筋が……少しは頭を使え。こういう風に」
 見かねて出てきたロードが穴の前に膝をつくと、色の変わった頭髪の間から、にゅぅっと紫の触手が伸びていった。
 ズボッ!
 触手は穴の中までどんどん伸びて、砂の中でゆらゆらと揺れてみせる。
 おいでおいで、と手招きするかのように。
 すると、砂の中の光の幾つかが、徐々に集まってきた。
(『――今だ!』)
 ロードが胸中で告げた次の瞬間、砂の中に伸びていた触手から新たな触手が一斉に放たれる。未知の触手に『疑問』の感情を抱いた『ふくれアンコくん』を、新たな触手が絡みついて次々と捕らえていく。
「一先ず、こんなものか。存外重いものだな」
 触手の先に重みを感じながら、ロードが氷から膝を上げて立ち上がる。
 ザーッと流れ落ちる砂の中から、触手に絡まれた3匹の『ふくれアンコくん』が姿が現れた。
「そら、捕まえたぞ!」
 頭から伸びた触手の先に七色のアンコウをぶら下げたまま、勝ち誇るロード。
 その姿は、どちらがアンコウか判ったもんじゃなかったそうな。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧島・ニュイ
今度は蟹とアンコウだって
ルシルさんありがとう!グルメツアーで食べていけるよ!!
悪い事してなくても、ほら、美味しそうなのが悪いよねー
僕、蟹もアンコウも食べたことないよ、楽しみー!

初めての夜釣りにどきどき
魚捕る時は網罠だったから、釣りは楽しみ
氷に小さく穴を開けて、レッツ夜釣り
餌は買ってきたイカそうめん、どーんと振舞うよ!
沢山食べて美味しくなってね、あ、もう美味しいんだった

ピカピカとした光にわくわく
ちょこちょこと誘い、掛かったら引いて
スズランのような提灯に、かわいいねー(・×・*)
…なんか親近感湧くねー(よく>△<って表情してる
綺麗綺麗
持ってきたクーラーボックスにぽいっ

UCのロープに、今回は網を追加



●グルメツアー親近感付き
 ガリッ――ゴリッ――ゴッ。
「貫通したー!」
 氷の上に響いていた鈍い音が途絶えた直後、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)の嬉しそうな声が夜の砂漠に響いた。
 続いていた音は、ニュイが『Which?』の中の杭で氷を削っていた音だ。
 杭を打って氷を削り、小さな穴で円を描いて釣りに必要なサイズの穴を空ける。何度も杭を打つ根気の要る作業を終えて、黒渕眼鏡の奥のニュイの瞳は輝いていた。
 初めての夜釣り。
 初めての蟹とアンコウ。
 楽しみでどきどきで、疲れも感じていない。
「後は釣り竿を準備して、と」
 砂漠の人々から借りた釣り竿。
 ニュイはその先にから伸びる糸を慣れた様子で手繰り寄せ釣り針を掴むと、反対の手でつやつやとした白く細長いモノを取った。
「調べたんだよ。アンコウは、イカをよく食べるって」
 やや不慣れな手付きで、ニュイは釣り針にその白いモノを点けていく。
「だから、イカそうめん買ってきたんだ。どーんと振る舞うよ!」
 なんと、餌持参。
 ニュイがそこまでする理由は、ただ1つ。
「沢山食べて美味しくなってね。あ、もう美味しいんだった」
 美味しいアンコウが食べたい。その一心であった。

 イカそうめんを付けた釣り針が、砂の中に沈んでいく。
 更に深く沈めていくと、ニュイの目の前で、砂の中の輝きがすぅっと動いた。
(「来た!」)
 思わず上がりそうになった声を喉元で、動く光にわくわく弾む心も抑えて、ニュイはそっと竿を振ってみる。
 砂中のイカそうめんの動きは見えないが、きっと動いているだろう。
(「前に魚を捕った時は網罠だったから、釣りってこんな感じなんだ」)
 夜の冷たさの中で、竿を握る感覚。
 水とは明らかに違う砂の重さの中、竿を操り糸を動かす感覚。
 初めての夜釣り。初めての砂釣り。
 初めて尽くしなアンコウ釣りに、ニュイの口元に楽しげな笑みが浮かんでいた。
「あ――掛かった!」
 糸の微妙な変化に気づいたニュイが、竿を倒す。それは見えない砂の中で『ふくれアンコくん』がイカそうめんに食いついたのとほぼ同時だった。
 そのまま糸を回して引き上げれば、七色の光が砂の中から現れる。
「本当にスズランみたいな提灯だねー」
 七色の魚体の先に揺れる鈴蘭灯を、ニュイの指がつんと突つく。
 空気中ではその光が眩しいのか、『ふくれアンコくん』は目をしかめる様に『>△<』と言う風に両目を閉じていた。
「……なんか親近感湧くねー」
 良く同じような表情をしているニュイは、思わず表情を綻ばせ――次の瞬間、黒縁眼鏡の奥で、緑の瞳がすっと細められる。
「綺麗綺麗。だけど――リリースはしてあげない」
 針から外した『ふくれアンコくん』を、網を混ぜた【咎人殺し】が雁字搦めにする。
「美味しそうなのが悪いんだよー」
 なんて言いながら、ニュイは動けなくなった『ふくれアンコくんを』持ってきたクーラーボックスにぽいっと放り込んで、再び釣り竿にイカを付け始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

小夜啼・ルイ
飛藍(f16744)に同伴

砂漠が凍る、ねぇ…
常識に囚われちゃいけねーのは、前回の鮭の件で身には染みたが…
ファンタジー系の本も、読んだ方がいいか…?

光る場所を目安にして穴を開けて、釣りの準備
ワカサギ釣りをした事ねーけど、こんな感じなのかね
…あ?今何言いかけた?
つーかフェイも穴開けろ。穴が無きゃ釣りが出来ねぇだろが

フェイの話は釣りをしながら黙って聞く
心の中で、その鳥多分ササゴイだよなとか呟きはするけど
フェイの過去には色々あったのは理解している心算だが…山の件はツッコミどころが多すぎる

釣ったオブリビオンはぶん殴る
なるべくはそのままの状態の方がいいんだろ
…って、フェイこっちに投げんなコラ!!


黎・飛藍
ルイ(f18236)が同伴

冷えるが、ルイが本気でキレた時程じゃ…いや何も
光で凡その位置が判るのは、探すのが随分と楽になる

釣りをしながらふと、思い出したことを語る
釣りと言えば、山に居た時にだ
虫を銜えた一羽の鳥が、川辺にやってきた
そいつは虫を水面に投げてじっと眺めて、また銜えて水面に投げるを繰り返していた
最初は何をしているのか理解できなかったが…不意に鳥が嘴を川に突っ込んだ
引き上げられたその嘴には、魚が銜えられていた。虫を餌に魚を捕まえていたんだよ
それを見て俺は釣りの概念を覚えた

釣り上げたアンコウはルイ目掛けて放る
釣ったなら睡蓮香で眠らせるから多分、暴れる心配は無いと…思うが
まぁ何とかなるだろう



●常識が行方不明
「砂漠が凍る、ねぇ……」
 グリモアベースで聞いたその言葉を、小夜啼・ルイ(xeno・f18236)は目の当たりにした光景でようやく飲み込めた気がしていた。
 言葉で聞いただけでは、何処か真実味を感じきれていないような感じだったのだ。
(「常識に囚われちゃいけねーのは、前回の鮭の件で身には染みたつもりだが……」)
 まだ常識の殻を破れていないか?
 ファンタジー系の本も、読んだ方がいいか?
 などと胸中で葛藤するルイの後ろで、黎・飛藍(視界はまだらに世界を映す・f16744)は、くぁ――と欠伸を噛み殺していた。
「……なんか余裕だな?」
「まあな」
 それを気配で察してルイが振り向けば、飛藍は軽く肩を竦めて気楽に口を開く。
「砂漠は冷えるが、ルイが本気でキレた時程じゃ」
「――あ?」
 飛藍がうっかり口走った次の瞬間、2人の間の空気が一気に冷え込んだ。
「今何言いかけた?」
 ジトリと睨むルイの周りが、キラキラと輝く。ルイの身体から漏れ出た冷気で、空気中の僅かな水分が凍りついていた。
「……いや何も。光で凡その位置が判るのは、探すのが随分と楽になるからな」
 未だ見えない表情ではなくその冷気でルイの怒りを察しながら、飛藍はさして慌てた風もなく淡々と返す。
 実際、そう思っていたのは事実だ。人の顔でない光は、よく見える。
「ま、いいけどな。つーか、フェイも穴開けろ。穴が無きゃ釣りが出来ねぇから、いくら光が見えても楽にならねえだろうが」
 ジトリと睨んでルイが差し出してきた街で借りたドリルを、飛藍は溜息混じりに受け取った。

「…………」
「…………」
 氷に穴を空けてしまえば、後は砂漠の中で光を放っている存在を釣るだけである。
 口数が少ない飛藍と、多いと言うほどでもないルイが釣りに勤しめば、畢竟、そこは無言になろうというもの。
(「ワカサギ釣りをした事ねーけど、こんな感じなのかね」)
 砂の奥に見える光を目で追いながらそちらに竿を向け、ルイが胸中で呟く。
「釣りと言えば、ふと思い出したんだが――」
 そんな沈黙を破ったのは、珍しく飛藍からだった。
「以前、山に居た時にだ。虫を銜えた一羽の鳥が、川辺にやってきた」
「…………山?」
 唐突に始まった昔の話に、ルイが怪訝そうな顔で聞き返す。
「その鳥は銜えた虫を水面に投げてじっと眺めて、しばらく経ったらまた銜えて水面に投げる――ってのを繰り返していた」
 ルイの表情が見えていない飛藍は、構わず話を続ける。
「最初は何をしているのか理解できなかったんだが……ある時、不意に鳥が嘴を川に突っ込んだ」
 ぱしゃんっと、飛藍の脳裏に水の跳ねる音が思い起こされる。
「そして引き上げられたその嘴には、魚が銜えられていた」
(「その鳥、多分……ササゴイ、だよな」)
 水面に物を落として獲物を引き寄せ捕食する。飛藍が話す鳥に思い当たって、ルイは胸中で呟いていた。
「それを見て俺は釣りの概念を覚えたんだ」
「いやいや待て待て」
 話始め以上に唐突に釣りに戻ってきた飛藍に、思わずルイがツッコミをいれていた。
 飛藍が見たササゴイと思われる鳥の行動は、確かに漁と言えよう。
 釣りの概念、という意味でも間違ってはいないだろう。
 ――相手は鳥である。
 鳥は、釣り竿は使うまい。ササゴイの場合、どちらかというと、ふくれアンコくんの方に似ているのではないだろうか。
(「フェイの過去には色々あったのは理解している心算だが……山の件は、ツッコミどころが多すぎる」)
 何処からツッコむべきだろうか――なんて考えていたルイの竿が、大きくしなった。
 飛藍の竿も、少し遅れてぐぐぐっとしなり出す。
「話は後だ。まずは釣るぞ、こいつら」
「――ああ」
 ルイも飛藍の手にした竿にぐっと力を込めて握り直した。

 糸が引かれればその方向に合わせて竿を傾け、糸を出す。
 糸が止まればその隙を突いて、糸を張りすぎない様に引いていく。
 飛藍にとって、その作業はさほど難しい事ではなかった。パターンと呼べるものはないにせよ、魚の動き方はそこまで多くはない。
「そろそろ良いか」
 次第に勢いが弱まったのを感じて、飛藍は一気に竿を引き上げた。砂の中から引っ張り出された七色の魚体が、放物線を描いて舞い上がる。
「……面倒だな。寝とけ」
 少し勢いを付けすぎたかと思いつつ、飛藍は竿から片手を離して、掌から睡蓮の香を漂わせはじめた。

 その頃、ルイの眼の前の砂は眩い輝きを放っていた。掛かった『ふくれアンコくん』を引き上げる直前まで来た証である。
「なるべく、そのままの状態の方がいいんだよな?」
 後は引き上げるだけ。そう確信して、ルイは片手を竿から放した。
「よっと」
 砂の中から引き上げた七色の魚体を、冷気を纏ったルイの拳が叩いた。
 Mors inevitabilis――シハシズカニシノビヨル。
 肉体を傷つけずにあらゆる内臓を凍らせるルイの一撃は、ふくれアンコくんの心臓をあっさりと凍りつかせて止めていた。
「ま、こんなもっ!?」
 言いかけたルイの声が、予想外の衝撃に上ずる。
 ぽよんっとルイに降ってきたのは、飛藍が釣り上げ、空中で睡蓮香で眠らせたふくれアンコくんだった。
「フェイこっちに投げんなコラ!!」
「眠らせてるから、暴れる心配もない。多分。まぁ何とかなるだろう」
 ルイの抗議に、しかし飛藍はしれっと返す。
「…………」
 何か言い返そうとしたルイだが、結局言葉を飲み込んで。
 数分後。
 ルイが釣り上げ、冷たく凍らせるついでに殴り飛ばしたふくれアンコくんが、飛藍の顔面を直撃した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒・烏鵠
生浦サン(f00276)、ダンチョ(f09037)と//
五行神宴扇で火ノ気を交えた風で全員を包む。暖房みたいなモンだな。
キョーソー?ならサイズ測定は任せな!オレも釣るけどな!
イヤー釣り竿使うンはヒサシブリだわ。飛び込んで捕まえンのメインなンよねーオレ。キツネだから。
穴から糸たらしてじっと待つ。けけ、こー見えて静かにも出来ンだぜ?
釣れたアンコーの鈴蘭灯をユベコでただの提灯に変えてェ、ボックスにポイ!
明らかちッちぇーノはお伺い立ててシナトにやろ。ウマイ?
ハーイお二方、釣り勝負は終わりかい?なーらー……ダラララッ!勝者は(MSサマにオマカセ!)
ところでダンチョ、その耳当てカワイない?撮っていい?


桜田・鳥獣戯画
栴(f00276)、ファン(f14500)と蟹を食いに来た!
その前にアンコ君釣りだな!!
防寒は完璧だ。服の下には極暖ババシャツに極暖スパッツ! 釣り人っぽくポケットだらけのダウンベストに、腹回りには爆弾の如くカイロを巻いている! あとうさぎさんの耳当てな!!
まずは氷に穴を空けねばならん。このドリルの如き拳に任せろ!!フォォォ…(多分止められる)
さてお分かりの通り私は頭脳戦が苦手だ。故にこう、釣り糸を何本か適当に垂らす!
そして待つ!!
フフフ貴様らには負け……え? 量より質?
釣果は速やかにクーラーボックスへ納品! 抵抗するようならUCを使っても構わん!!
以上全部小声。詳細はお任せしたい!!


生浦・栴
赤狐の(f14500)、団長(f09037)と

靴の底敷きにカイロを仕込む防寒仕様、他省略
赤狐ののお陰で随分と暖かく助かるな

氷下の光を参考に穴を……っと、団長を止める
俺は飛べるから良いが、氷が割れたら団長は確実に落ちるぞ?
(片手で肩を叩いて止め、反対の手で専用ドリルを渡す

さて、気合を入れて釣り尽くすか
誰が一番多く釣るか…ん?量より質で大きさで競うか?

光の傍まで餌を下ろしたら細かい動きで擬態を
喰い付いたらUCで動きを止めて釣り上げる
暴れるなら衝撃波でクーラーボックスへ叩き込んで置こう
まあ味に影響するまい
小さいのを喰うのは構わぬがナマで良いのか?

然ういえば勝利の特典を決めてなかったな?
(結果お任せ



●ザ・ウォールの3人
 ビュォウッ。
 風を遮るものない砂漠では、冷たい風が容赦なく吹き抜ける。
「やっぱ冷えるね」
 狐耳をぶるりと震わせた荒・烏鵠(古い狐・f14500)が広げるは、一見古びた竹扇。その実は五行の力を操る仙具――五行神宴扇。
 お香の香りに乗せて、五行の火ノ気が広がっていく。
「シナト、手伝ってくれん?」
 烏鵠のお伺いに、肩の小狐がきゅうと鳴けば、周りで緩やかに風が渦巻いた。
「お……おお! 暖かくなってきた!」
 辺りの空気が次第に暖まるのを感じて、桜田・鳥獣戯画(デスメンタル・f09037)の血のように紅い左目が輝いた。
「空間を温めつつ、気流を操って熱を留めたか。赤狐の、細かいな」
 生浦・栴(calling・f00276)が見抜いた通り、風を操る狐精による気流操作が、火ノ気の拡散を一定範囲に留める壁となっていた。
「暖房みたいなモンだよ」
 烏鵠の言う通り火ノ気が齎した空気の暖まりは、氷を溶かす程ではない。
 つまりは行使した力もその程度という事だ。目の前で見ていたとは言え、それを一目で見抜いたのは、栴もまた魔法魔術の類を操る者故であろう。
「2人とも着込んでるけど、暖かい方がイイだろ?」
「そうだな。防寒対策はしてきたが、赤狐のお陰で随分と暖かく助かる」
 烏鵠の言葉に頷く栴の靴の底敷きには、カイロが仕込んである。他にも栴は色々と、衣類の中などにカイロを仕込んでいた。
「……まあ、団長には暑いくらいかもしれんが」
 栴が呟いて視線を横に向ければ、烏鵠も釣られて視線を向ける。
「ん?」
 2人の視線の先は鳥獣戯画――のお腹。
 そこには、ベルト状に連なったカイロがピタリと巻かれていた。
「ふっ……2人とも、この爆弾の如く巻いたカイロに言葉もないようだな!」
 釣りと言う事で配慮しているのか、いつもの声だがいつもよりも随分と小声で、鳥獣戯画はドヤった笑みを浮かべる。
「それだけではないぞ。この釣り人っぽいポケットだらけのダウンベストの下は、極めて暖かいシャツとスパッツだ!」
 極めて暖かいやつです。
「あとうさぎさんの耳当て!! 顔までは隠せなかったが、顔隠したら釣りは出来ないからな。だからファンの暖房術、有難いぞ! これで防寒は完璧!」
「そりゃ良かった。ところでダンチョ」
 鳥獣戯画自身が暑いと思っていないのなら問題はないだろうと、烏鵠はその耳元に視線を向けながら声をかける。
「その耳当てカワイない? 撮っていい?」
「うさぎさんか。構わないが、氷を砕いてからでもいいか?」
 撮影許可を求める烏鵠に、鳥獣戯画は何故かぐっと拳を固めながら返していた。
「ン? 砕く?」
 鳥獣戯画の言葉にイヤな予感の類を感じながら、烏鵠が聞き返してみる。
「氷に穴を空けねばならんのだろう? このドリルの如き拳に任せろ!!」
 フォォォ――!
 答えを告げた直後、鳥獣戯画の口が呼気を放った。
 固めた拳で狙うのは、砂漠を覆う足元の氷。
「やめておけ」
 そんな鳥獣戯画の背中に一声掛けて、栴がその肩を叩く。
「俺は飛べるから良いが、氷が割れたら団長は確実に落ちるぞ?」
「……」
 栴の淡々とした一言に、ギシリと鳥獣戯画の動きが止まった。
「氷が溶けていないことから、砂の中はおそらく氷点下に冷え切っている。まあ、そんな苦行を望むのなら止めはしないが」
 ゆっくりと鳥獣戯画が振り向くと、栴が氷を削る為の専用ドリルを差し出していた。
「オレの火ノ気も砂の中には及ばねーと思うよ?」
 烏鵠の一言に同意する様に、きゅぅと小狐の鳴き声が響く。
「穴を空けるなら、もう少しこっちの方がいい。光が多いぞ」
「……」
 鳥獣戯画は、無言で栴が差し出すドリルを手にとった。

●レギュレーションは先に決めよ?
「さあ、気を取り直して――勝負だ!」
 氷に空いた程良いサイズの穴の前で、鳥獣戯画が栴をビシッと指差し小声で告げる。
「いいだろう。気合を入れて釣り尽くすか」
 栴もその勝負には乗り気である。
「キョーソー? なら審判はオレに任せな!」
 自ら判定役を買って出た烏鵠が、早々に釣り竿を構えて砂に糸を垂らす。
 まさかのトップバッター、審判。
「ほう! ファン、慣れてるな?」
「イヤー、釣り竿使うンはヒサシブリなんだけどねー。飛び込んで捕まえンのメインなンよねーオレ。キツネだから」
 手際の良さに感心する鳥獣戯画に、烏鵠はケラリと笑って返す。
「それよかダンチョ。オレを気にしてる場合じゃねーよ?」
 烏鵠が指差した方を見れば、栴も既に無言で釣り竿を構えていた。その先から伸びた糸は、砂の中の光の近くにピタリと寄せている。
「成程、成程。貴様らもお判りの通り、私は頭脳戦が苦手だ。だが――そんな私でも、策はあるのだよ!」
 2人に先行されても、鳥獣戯画は余裕の表情だった。
 その根拠は、幾つも抱えた釣り竿にある。
「釣り糸を何本かまとめて垂らす! そして待つ!」
 所謂、数撃ちゃ当たる戦法的なやつのようだ。
「フフフ貴様らには負け――」
「ところで、勝負は数? サイズ?」
「そうだな。量より質で大きさで競うか?」
 勝ち誇る鳥獣戯画の声を遮って、烏鵠と栴がそんな相談をしていた。
「え? ――量より質?」
 流石にそれは聞き流す事をせず、鳥獣戯画の左目が丸くなった。

●勝負の行方
「……」
「……」
「……」
 本格的に釣りが始まり、無言になる3人。
 ――きゅ?
 首を傾げた小狐が小さく鳴いた直後、烏鵠の竿が大きくしなる。
(「ン、中々の引きじゃんか――っと!」)
 胸中で呟いて、烏鵠は竿を一気に引いて砂の中から『ふくれアンコくん』を引っ張り上げる。サイズは60cm程だろうか。
「眩しーのは勘弁ナ」
 抵抗のつもりか、何処か怪しく明滅する『ふくれアンコくん』の鈴蘭灯。それに烏鵠が触れた瞬間、鈴蘭灯は仄かに光る小さな提灯に変わっていた。
 無機物も有機物も、想像力の範囲ないなら如何様にも変化させる妖狐の嗜み。十三術式が一つ、九羽狐――クワギツネ。
『!?』
 突然の変化に驚くふくれアンコくんが、そのままクーラーボックスにしまわれる。

「……。……」
 栴は餌を生き餌に見せようと、右に左に、小刻みに竿を動かす。
 グンッ!
 やがて、その竿が強く引かれて一気にしなった。
「っと――あれには存分に縋るが良い」
 その勢いに一瞬つんのめった栴だが、慌てずに【Curse's bondage】を放つ。
 呪詛から染み出た荊棘の蔓が釣り糸に沿って砂の中へと伸びていく。絡めた念を巻き上げる歯車が、リールとなって荊棘の蔓を巻き上げる。
 そして引き上げられた七色の魚体を、黒羽の吹雪が受け止めた。

(「どれだ――次はどれだ!?」)
 鳥獣戯画の左目が、左右に忙しなく動く。
 竿を増やしたは良いが、どの釣り糸にかかるかは判らない。船釣りで人数以上の竿を用意する事もあるが、それは複数で見るからである。
 1人で手の数以上の釣り竿を扱おうというのは、むしろ鳥獣戯画に必要とされる集中力は他の2人よりも強いと言えよう。
(「来た――!」)
 くんっと竿がしなった瞬間、鳥獣戯画は片手で竿を掴んで、力強く振り上げた。普段、鉄の塊を振り回す膂力が、あっさりと砂の中の魚体を空中に引っ張り上げる。
「……やめだ。生命力を奪わん方が、後がきっと美味い!」
 喰い専の食欲でそう察した鳥獣戯画は、鰐に変化させていた腕を元に戻して、素手で七色の魚体の尾を掴むと、クーラーボックスに放り投げた。

 そして――決着の時。
「ハーイお二方、釣り勝負は終わりかい? 終わるよ?」
 烏鵠の前に、鳥獣戯画と栴がそれぞれ釣った2体のふくれアンコくんが並んでいる。片方は70cmくらいだろうか。決して小さくはないが、中堅所。対してもう片方は、この種のほぼ最大サイズの1m近く。
 サイズで競うなら、どちらを釣ったものが勝者であるかは、一目瞭然。
「――ダラララッ! 勝者は、生浦サン!」
「まあ、当然だな」
 烏鵠に勝者として名を告げられ、栴は涼しい顔で頷いていた。
 その口元には、少しだけ小さな笑みが浮かんでいたかもしれない。
「くっそおおお! 負けた!!!!!!」
 敗者となった鳥獣戯画の拳が、足元の氷を叩く。
「ダンチョも頑張ったけどねー。数増やした分、明らかちッちぇーノも多かったね」
 その『明らかちっちぇーノ』をシナトに分け与えながら、烏鵠が鳥獣戯画の肩をぽんと叩いた。
 釣れる機会を増やせば、その分小物の確率も増えるというもの。
 一方の栴は、氷の上から見える光を観察し、大物に狙いを定めていた。栴の作戦勝ちと言えよう。
「然ういえば勝利の特典を決めてなかったな?」
「フ……蟹を食った後なら、煮るなり焼くなり好きにするがいい!」
 どうしてやろうかと腕を組み思案する栴の後ろで、鳥獣戯画が観念したように氷の上に座り込んでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

木常野・都月
【KOR】

先輩達と一緒に、カニとアンコウを食べにきた。

俺は、実は釣りもアンコウも初めて。
どんな味だろう。
先輩達の顔を見る限り、期待大だ。

え…池の水、全部抜く…?

とりあえず池の底の地の精霊にお願いをしましょうか?

むしろ、池そのものを釣るとか…
池を全部凍らせて…
あ…違うんですね。

尻尾はすっかり冬毛。
腰辺りに尻尾を巻きつけて暖を取ろう。

美味しいミネストローネとホッカイロもあるし…
氷と風の精霊様に頼んで、周辺の寒さを少し和らげて貰えば寒さ対策は完璧だな。

先輩を見習って、釣り糸を垂らして…
釣り糸にかかったらUC【雷の足止め】を使用、動きを鈍らせて釣り上げたい。


城島・冬青
【KOR】
釣りは楽しみだし
防寒もしてるけどこの寒さは堪える!
幽兵さ〜ん
この極寒で搔い掘り作業なんてやめましょうよ
というか正しくはここ砂漠なんで砂漠の砂全部取る…かな?

家から持ってきたホッカイロを配ります
アヤネさん…
えーと
人目もありますし遠慮してオキマス

シホさんの温かいスープと都月さんの精霊頼みで寒さもだいぶ和いできました
よっしゃー
釣るぞー!誰がボウズかな?
ちなみに釣りは初めてなので優しくて下さいね❤️





釣れない…だと
うわ
私、釣りの才能なさすぎ…?
アヤネさ〜ん
泣きついてウロボロスでアンコウをガンガン釣ってもらう
すごい!こんなに沢山…!
え、このアンコウと私が似てる…?
そんなことないです><

アドリブ◎


シホ・エーデルワイス
【KOR】
アドリブ歓迎

まだ入団して間もない身
一緒に依頼を受けるのは初めてで少々緊張気味
釣りの経験はありませんが頑張ります!

私も蟹や鮟鱇を食べるのはたぶん初めてなので楽しみです


防寒対策で事前に
温かい野菜たっぷりミネストローネを料理して持ち込み
皆さんへ振舞う

だ、ダメですよ幽兵さん
池が無くなったら
魚を糧にしている人々が困ります
え!冗談ですか

冬青さん
懐炉ありがとうございます
便利ですね

なるほど…都月さんの精霊術は交信でこんな事もできるのですね


釣りは動物と話すで歌唱し誘惑しておびき寄せる事で
皆さんも含めて釣れ易くする


サクラコさんとオクさんは手慣れていますね

アヤネさんは釣りというより掴み取りでしょうか?


アヤネ・ラグランジェ
【KOR】
きっと数々のオブリビオンを料理してきたソヨゴが
よい具合に調理してくれるだろう
僕は狩るだけだネ

凍りついた砂漠というのは初めて見た
綺麗

防寒はインナーを竜騎士並みにしっかりきめて
その上に薄手のダウン
見た目より防寒はばっちり
もこもこしたのはファッショナブルじゃない

ソヨゴからホッカイロを受け取り
寒くなったら僕が温めてあげるネ❤️
と冗談半分本気半分

シホには温かいスープのお礼を
ツヅキのおかげか風が止んだネ

ユーヘイ
池じゃないからやめて
モーゼ並みの力があれば別だけど

さて狩ろうか
UC発動
ウロボロスふくれアンコを拘束せよ!
氷の穴に触手を突っ込み
片っ端から氷の上に放り出す
捌くのは任せた
そーれ入れ食いだ!


日隠・オク
【KOR】
氷の砂漠……さ、寒いです(マフラーまきまき厚着して
頑張ってアンコウ、捕まえましょう
ふくれアンコくんを捕まえて、食べましょう……!
私たちは美味しいアンコウを食べにきた……
あれ……?

あたたかいスープありがたいです
ほっかいろもにぎにぎしながら

二刀流……!
かっこいい!気がします……!

サクラコさんの近くで釣り糸垂らしながら
ゆっくりアンコさんが釣れるのを待ちたいと思います
ゆれる釣り糸を見逃さない、ように見てますね
ときおり見える魚の影にそわそわ


花屋敷・幽兵
【KOR】 幽兵、世界を釣る。そんな感じでやるンだわ。 マスクとマントで防寒もばっちり(?) あのふくれソヨ…アンコウを釣ればいいんだな。よし、池の水全部抜くぞ! でかいストローで吸う…?え?砂漠?そりゃ無理だな。 仕方ない、釣りキチ幽兵モード!二刀流で釣りまくるぜぇ~、ワイルドだろぉ? どうだいオクさん。ちなみに釣れる気はしない。 ホッカイロとか気が利くな。アヤネと冬青は直にも温めあうのか、。 シホはスープとか凄いな。ミヤネ屋…ローネ? 都月は色々やってくれるが…精霊忙しいな。労っておいてくれ。 アヤネのアレ便利だな。実は一番ワイルドな釣りしてないか? いや…ヒグマの鮭狩りに近いな(考察)


鏡彌・サクラコ
【KOR】
凍りついた砂漠なんて
砂漠の凹凸が残っていて不思議な光景ですねい

あんこうってあまり食べたことがありません
お寿司であん肝とかですねい
どうやって食べるのでしょう
お鍋?

都月さまシホさまはご一緒初めてですねい
よろしくでいす

わあ、スープありがとうございます!
心なしか寒さがおさまったような?

釣りキチ幽兵って魚神さんは誰ですか?
カイロほかほか

釣り用の折り畳み椅子を置いて
せっせと穴を開けて
オクちゃんと並んで釣り糸を垂らします
氷の上からでも下で光っている魚影が見えますねい

アヤネさまは釣りをする気がまったく無さそうですねい

UC展開
アヤネさまが放り出したふくれアンコを銅鏡でごんごんごん
と倒します



●砂漠の夜は冷えるので
「砂漠の凹凸がそのまま凍った砂漠なんて、不思議な光景ですねい」
 雪でもなく砂でもなく、凍った砂漠。
 或いは砂漠を覆う氷。
 砂漠が凍るという非常識が起こったからこその風景に、鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)が黄金の瞳を細める。
「氷の砂漠……きれいですね」
 その隣で、日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)も、隙間から見る氷の景色に目を細めていた。
 何の隙間か?
 すっぽり被った毛糸の帽子と、襟元から口元にかけてぐるぐると巻いたマフラーの隙間である。
「オクちゃん、厚着ですねい」
「だって……さ、寒いです」
 胴体もモコモコ着込んでいつもより膨らんだオクに、サクラコが苦笑する。
 とは言え、【KOR】――『Knights of Rabbit』の面々の中で、着込んでいるのはオクだけではなかった。

(「釣りに備えてある程度動ける上着にしたけど、この寒さは堪える!」)
 いつもよりは厚みのあるセーターにやや薄手のダウンジャケットを重ねた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)が、寒そうに首をすぼめる。
「ソヨゴ、寒い?」
「そりゃ寒いですよー! 防寒はしてますけど」
 聞こえた声に冬青が振り向けば、アヤネ・ラグランジェ(災魔・f00432)がいつもと変わらぬ笑顔で佇んでいた。
 ダウンを着てはいるが、冬青のより更に薄手で、どちらかというと軽装に見える。
「アヤネさんはなんだか平気そうですね?」
「ん。防寒のインナーを来てるからネ。見た目より防寒はばっちりだよ」
 もこもこと着膨れれば、それだけ外気を遮断し易くなる。だが、それは動き易さを犠牲にすることと同義である。
(「それに、ファッショナブルじゃないからネ」)
「でも見てて寒そうですよ!」
 胸中で呟くアヤネに、冬青が使い捨てタイプのカイロを押し付けた。
「ありがたく。ソヨゴが寒くなったら僕が温めてあげるネ❤」
 カイロを内ポケットに入れながら、アヤネはずいっと冬青に顔を近づけ、冗談と本気が半々に入り混じった表情で告げる。
「えーと……」
 翡翠の瞳と琥珀の瞳が、互いにその中に相手を映す。

「アヤネと冬青は直にも温めあうのか」

 すわ2人の世界に入り込むのかという所で、傍で見ていた花屋敷・幽兵(粗忽なダークヒーロー・f20301)が遠慮の欠片もなく声をかけた。
「人目もありますし遠慮してオキマス」
 それを機会に、冬青はアヤネの前からするりと抜け出す。
「幽兵さんも、カイロどうぞ。寒そうですよ」
「そうか? マスクとマントで防寒ばっちりだぜ」
 幽兵にも使い捨てカイロを渡すと、冬青はサクラコとオクの方へと駆けていった。
(「ふぅん? 人目がなければいいって聞こえるけどネ?」)
 ――なんて過ぎった事は流石に口に出さずに飲み込んで、アヤネはカイロを渡して回る冬青の背中を黙って見送る。
「シホさんも都月さんも、カイロどうぞ。服の中に入れとくと暖かいですよ」
「やあ、これは助かる。ありがとう」
 冬青から受け取った使い捨てカイロを、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は、早速懐にしまい込む。
 あまり顔には出ていなかったが、都月はすっかり冬毛になった黒い尻尾をピタリと腰に寄せて巻きつけていたので、寒いんだろうな、と皆思っていたそうな。
「懐炉ありがとうございます。振るだけで暖かくなるなんて、便利ですね」
 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)も熱を持ち始めた使い捨てカイロを両手で挟むようにして、その熱が冷えた指先を温めるのを感じる。
「では、私からもこちらを」
 すっかり指が暖かくなったところで、シホの袖が淡い輝きを放ち出した。
 するりと袖口から取り出したのは、魔法瓶。開けば、砂漠に暖かな湯気が昇る。
「凍った砂漠と言う事でしたので、温かいミネストローネを用意してきました」
 口に合えば良いのですが、とシホが少し緊張した面持ちでいるのは、『Knights of Rabbit』に加わってまだ日が浅いからか。
 とは言え、カブやニンジン、ゴボウと言った冬の時期が旬の根菜を中心に細かく刻んだ野菜をじっくり煮込んだトマトベースのスープの香りは、他の6人をあっという間に引き寄せる。
「カイロはホカホカで、このスープも美味しいですねい」
 スープの入った容器を両手で持って、サクラコがほぅと息を吐く。
「……あたたかいスープも、かいろもありがたいです」
 片手でカイロにぎにぎしながら、オクは反対の手でスープの入ったカップを傾けた。2人の吐く息が白くなって、湯気と混ざって夜空に昇って消えていく。
「ソヨゴもシホも、カイロだったりミネストローネ作ってきたり、気が利いて凄いな」
 マスクで表情は判らないが、幽兵も感心しているようだ。
「うん。美味しいミネストローネとホッカイロ。あとは、寒さを少し和らげられれば、寒さ対策は完璧だな」
 スープを飲み干し、ポツリと呟いた都月に視線が集まる。
「そんなこと、出来るんでいす?」
「多分出来るよ」
 問うサクラコに頷き返し、都月は精霊の石を手に瞳を閉じた。
「――氷と風の精霊様、ご助力下さい」
 都月の精霊へのお願いの効果は、すぐに訪れた。
「心なしか寒さがおさまったような?」
「うん。ツヅキのおかげで、風が変わったネ」
 サクラコとアヤネが真っ先に気づく。7人の周りの風の勢いが和らいで、足元に広がる氷から伝わる冷気も抑えられていた。
「なるほど……都月さんの精霊術は交信でこんな事もできるのですね」
「精霊忙しそうだな。労っておいてくれ」
 派手ではないが堅実な効果に、シホと幽兵が感心したように呟く。
「都月さまもシホさまも、ご一緒初めてですが、頼もしいですねい。よろしくでいす」
 新たな仲間の性格と能力の一端に、サクラコが笑顔を向ける。
「よっしゃー! 寒さもだいぶ和らいで来ましたし! そろそろ釣りましょう」
「そうだネ。そろそろ狩ろうか」
 指先まで暖かくなった拳を掲げた冬青に、アヤネが頷く。
「誰がボウズかな? ちなみに釣りは初めてなので、優しくて下さいね」
「あ、俺も。実は釣りもアンコウも初めて」
「私も釣りの経験はありませんが頑張ります!」
 冬青の初心者宣言に、都月とシホが同じく初めてだと声を上げる。
「釣り初心者が多いのか。ならば方針は決まったも同然」
 それを聞いた幽兵が、何故かバサリとマントを翻す。
「池の水全部抜くぞ!」
 そして、そんな事を力強く告げたのだった。

●だから砂漠ですよ?
「池の水全部抜くぞ!」
 声高に告げる幽兵に、6人の視線が集まる。
「……」
 シホなど、声もなく驚いて半ば固まっていた。
「え……池の水、全部抜く……? ……池?」
 都月は表情こそ動かさなかったが、咄嗟に飲み込めていない様子で瞳をぱちくり。
「全部って、本気なんでしょうか?」
「どうでしょ? まあ、きっと大丈夫ですねい」
 こちらも目を丸くしているオクの隣で、サクラコは平然と、釣り用の折り畳み椅子をチャカチャカ組み立てている。
「幽兵さ~ん。和らいだとは言え、この極寒で搔い掘り作業なんてやめましょうよ」
「いや。幽兵、世界を釣る――そんな感じでやるンだわ」
 冬青の一言に、しかし幽兵は力強く首を横に振る。マスクに隠れた表情は判らないが、その声には本気の色がある――ような響きだった。
「世界を釣る勢い……池そのものを釣るとか……? 池を全部凍らせて……」
「ん? でかいストローで吸えね?」
 精霊術士らしい都月の発想は、幽兵の中にはなかったようだ。
 見守っていたオクもこれは無理だと思ったのか、サクラコが差し出したドリルを無言で受け取り、2人でキリキリ氷に穴を空け始める。
「だ、ダメですよ幽兵さん」
 そこで我に返ったシホが、幽兵を止めようと声を上げた。
「池が無くなったら、魚を糧にしている人々が困ります」
「うん。困る人もいると思う。というか正しくはここ砂漠なんで、砂漠の砂、全部取る……かな?」
 シホの隣で頷きながら、冬青が足元を指差す。
「え? 砂漠?」
 それを聞いた幽兵が、驚いたようにぐりんっと2人に顔を向けた。
「そ、砂漠。池じゃないからやめて、ユーヘイ。モーゼ並みの力があれば別だけど」
 冬青の後ろから、アヤネが淡々と告げる。
「大体ユーヘイ、そんなストロー持ってないよネ?」
「それもそうだ。無理だな」
 アヤネの鋭いツッコミに、幽兵はあっさりと頷いた。

●それぞれの釣り方
「……」
 氷に空いた穴の手前に膝をついたシホが、目を閉じて砂の上に手をつく。
(「アンコウさん――」)
 胸中で呼びかけながら、シホは深い呼吸を何度か繰り返す。
「捧げるものシホ。感謝を込めておもてなし致します」
 【供宴】もてなし捧げるもの。
 ふっと短く息を吐いてから告げると、シホは砂に手をついたまま、歌い出した。
 ――♪
 ――♫ ――♪
 澄んだ歌声が、氷に覆われた砂漠の夜に響き渡る。
 歌唱力を高めたシホの歌声は、氷に空いた穴から砂の中にまで届いていた。むしろ聞かせたいのは砂の中。ふくれアンコくんを誘惑し、誘き寄せる為の歌声。
 シホの歌は自らが釣る為だけのものではなく、旅団の仲間が少しでも釣り易くするためのものであった。

「釣りキチ幽兵モード!」
 またまたバサリと翻った幽兵のマントの下から、2つの釣り竿が現れる。
「二刀流で釣りまくるぜぇ~、ワイルドだろぉ? どうだいオクさん」
「二刀流……! かっこいい!気がします……!」
 向けられている視線に気づいて幽兵が話を振れば、釣り用椅子の上で釣り竿の準備をしていたオクが目を輝かせて返す。
「釣りキチ幽兵って――それ、どうやってリール巻くんでいす?」
「フ……釣れる気はしないぜ」
 隣のサクラコの指摘に、幽兵は夜空の星を見上げて、無駄にシリアスに返す。
「さて、オクちゃん。氷の上からでも見える光と、その中の魚影が狙い目ですねい」
「魚影? ……あ、本当だ。よーく見ると時々見えますね」
 そんな幽兵をスルーして、サクラコとオクは砂の中に見える光を狙って、氷に空けた穴から釣り針を落としていく。
「後は、糸の動きを見逃さないように待つ、ですね?」
「竿がしなるのも掛かった合図ですねい」
 サクラコとオクの釣りの様子を見て、幽兵も素直に釣り竿を一本で釣り始めた。

「あまり動かさずに、待つ方が良いのか」
 釣り初心者な都月も、サクラコとオクのように釣り経験のありそうな仲間の動きを観察し、見様見真似で釣りを始めていた。
(「アンコウか……どんな味なんでしょうね」)
 まだ見ぬ魚介の味への期待を胸中で呟きながら、都月の注意は砂の中よりも、砂の上の周りの仲間に向いていた。
 だからこそ、手付きが覚束なくとも、むしろ『ふくれアンコくん』に警戒心を抱かせない結果になっていた。
 響くシホの歌声の効果もあっただろう。
「ん? これは、引いてるのか?」
 大きくしなりだした竿に気づいて、都月が竿を引き上げる。
 ヒット第一号。この先は、都月にとってはまだ見たことがない領域。
「ええと……精霊様、お願いします」
 だから都月は、素直に自身の持てる力を使い、精霊に頼る事にした。
 砂の中に伸びた釣り糸を中心に、ざぁっと砂が開いて七色の魚体を露わにする。
「雷の精霊様、足止めを!」
『!?』
 自身を隠していた周りの砂がなくなり驚く『ふくれアンコくん』を、都月が放った雷が如き電流が打ち据えた。

 次第に、氷の上に釣り上げられた魚体が増えていく。
(「サクラコさんとオクさんは手慣れていますね」)
 誘う歌声を響かせながら、シホも2人を参考に1匹釣り上げていた。
 その歌の恩恵もビギナーズラックにも。全くと言っていい程、恵まれない者が1人。
「釣れない……だと」
 構えた釣り竿がわなわなと震えている冬青は、ボウズ――所謂1匹も釣れていない状況であった。
「え、まじ? うわ。私、釣りの才能なさすぎ……?」
 餌を付けてなかったとか、釣り針を仲間に引っ掛けたとか、冬青がそういうベタなミスを続けているわけではない。
 ただ単に、純粋に――釣れないのだ。
 釣りは自然を相手にしている。そう言う事もまあ、あるにはあるだろう。
「……。アヤネさ~ん」
「誰がボウズかな? なんてフラグ立てるから」
 泣きついてきた冬青の頭をぽんぽんと叩いて、アヤネは氷の穴に向き直る。
「それじゃ、ソヨゴの分まで狩るか――ウロボロス、術式起動」
 アヤネの影から蛇に似た異界の触手が幾つも飛び出して、砂の中へ群れを為して突っ込んでいく。
「ふくれアンコを拘束せよ!」
 アヤネの喚び出した触手の群れは、ふくれアンコくんを見つけた端から巻き付いては、氷の上に放り投げていく。
「……釣りと言うより、掴み取りでしょうか?」
「あれは精霊様でも真似できそうにないな」
「アヤネのアレ便利だな」
 入れ食い状態な釣りっぷりに、シホと都月と幽兵が感心したように呟く。
「実は一番ワイルドな釣りしてないか? イヤ……ヒグマの鮭狩りに近いな」
「誰がクマか!」
 考察を続ける幽兵に、アヤネが触手を操りふくれアンコくんを投げ付けた。
「でも実際、アヤネさまは、釣りをする気がまったく無さそうですねい」
 アヤネがふくれアンコくんを次々放り投げるのを眺めるサクラコの周囲には、自身の本体である銅鏡の分裂したものが幾つも浮かび上がっていた。
「そうかナ? 多分UDCの触手使ってる人、さっき向こうにいたよ?」
 サクラコの意図を察して、アヤネがふくれアンコくんを投げる先を、サクラコのいる方へと変えていく。
「UDCの方は、それでいいんでいす?」
 飛んでくるふくれアンコくんを銅鏡でゴンゴン叩き落としながら、サクラコは思わずそんな事を呟いていた。

 そんなこんなで、『Knights of Rabbit』の7人の前にはふくれアンコくんが山と積み上げられていた。
「何故、私はこのくらいの魚も釣れなかった……!」
 その大きさを改めて見て、冬青が悔しさを露わにする。
 大小は様々だが、小振りなものは50cm程度。決して釣れない大きさではない。
(「やっぱ似てる気が。ふくれソヨ――」)
 そんな冬青の表情とふくれアンコくんを見比べて、幽兵が胸中で呟いていた。
「ふくれアンコくんが、大漁です。食べましょう……!」
 七色の魚体の山を前に、オクが釣り以上にそわそわした様子で、背中の翼をパタつかせていた。
「私も楽しみです。鮟鱇は多分初めて食べるので」
 オクの翼の動きに釣られてか、シホも微笑みを浮かべて告げて――。
「ところで、どうやって調理するのでしょう?」
 ふと気づいた様子で、首を傾げた。
 ミネストローネを作って来るくらいだからシホは料理は得意なのだろうが、食べた事がないということは調理もしたことがないという事である。
「私もあまり食べたことがありませんが、お寿司であん肝とかですねい」
 思案するシホに、サクラコが食べた事のあるアンコウ料理を思い浮かべて返す。
「あとは……お鍋くらいでいす?」
「なぁに。そこは、数々のオブリビオンを料理してきたソヨゴが、きっとよい具合に調理してくれるだろう。捌けるよネ?」
 サクラコも調理方法があまり浮かばないのを見て、アヤネが冬青に話を向けた。
「任せて下さい! こんなに沢山……腕が鳴ります!」
 釣りでボウズだった分を挽回しようと、冬青がふんすと拳を握る。
「たのしみ、です……! 私たちは美味しいアンコウを食べにきた……あれ……?」
 何か忘れてるような気がして、オクが首を傾げたその時。
 ゴゴゴゴゴッと凍った砂漠が地震の様に揺れ始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『二つ名持ちの巨蟹』

POW   :    二つ名特性
自身の身体部位ひとつを【常時】自身の二つ名に由来する【特性】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
SPD   :    戦闘行動
【常時発動】砂の中を自由に行動できる【潜行】【自身の特性による攻撃】【水鉄砲】【大跳躍】【鋏】のいずれかで攻撃し、負傷による【怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    狩猟生活
自身が【砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配】を感じると、レベル×1体の【実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」】が召喚される。実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」は砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配を与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:撒菱.R

👑11
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●真・霜将軍
 ゴゴゴゴゴッ!
 凍りついた砂漠が揺れる。
 氷の下は、暗い砂漠が広がっている。
 砂漠の中にあれほどあった鈴蘭灯の光はなくなっていた。猟兵達によって『ふくれアンコくん』もほぼ獲り尽くされたという事だ。
 それはつまり、『ふくれアンコくん』と共生関係にあった生き物にとっては、由々しき事態ということである。

 \ドガシャーンッ!/
 \ドガシャーンッ!/
 \ドガシャーンッ!/

 砂漠のあちこちで氷の砕ける音が響く。
 巨大な鋏が氷を砕いて、大量の砂が巻き上げられる。
 やがて巻き上げられた砂が降り尽くすと、小さな家よりも大きな巨蟹が数体が、月明かりに照らし出されていた。
「凍った……蟹?」
 ポツリと溢れた声は、誰のものだったか。
 凍っていると見紛うのも無理もない。いずれの巨蟹の全身も、高く掲げて威嚇する様に打ち鳴らしている鋏も、キレイな氷に包まれキラキラと輝いていた。
 元々、霜が降りる土壌であったとは言え、砂漠を凍らせる程の冷気を放つ巨蟹だ。
 その冷気で氷を鎧と変えて、甲羅の周りに纏っているのだろう。本体が出現しているのか、全て分身体なのかは判らないが、分身体も同じ能力を持っているようだ。
 接近戦を挑むのなら、あの冷気を浴びる覚悟が必要になるかもしれない。

 だが。そんな冷気に怯んではいられない。
 一般的に、冬に獲れる魚は身に脂が乗っていると言う。
 水温が下がる冬の海を生き抜く為だ。
 であるならば、自ら冷気を放ち氷を纏うこの巨蟹はどれほどか。きっと甲羅の中は身がぎっしり詰まっていて、旨味が凝縮されている筈である。

 つまり――冷気と氷は美味の予感!

 後は如何にして不味い分身体ではなく、美味なる本体を仕留めるか。
 まさに弱肉強食の戦いが、始まろうとしていた。

====================
2章、ボス戦と言う名の美味しい巨蟹ゲットする戦いです。

幾つか補足となります。
二つ名は『真・霜将軍』。
二つ名特性は『甲羅から冷気を放ち時に氷を纏う』となります。

敵の能力に、常時、常時発動、と書かれているものがあります。
この場合『基本的に同じ能力値で反撃』のルールはどうなるの?と思われるかもしれませんが、あまり気にせず好きなように行動かけて頂いて大丈夫です。こちらで良きようにします。

分身体と本体について。
このシナリオでは『本体を先に倒せれば、その時点で残っている分身体も消滅する』ものとします。
この点は予想が付いているとしてプレイングかけて頂いて構いません。
また、不味い美味い以外に、この特性ならこんな違いもあるに違いない、というプレイングをかけて頂いても構いません。採用できるかは内容次第ではありますが!
====================
櫛灘・常世
ついに本命のお出ましですなぁ。
これまた随分大身の蟹ですよって、こんな砂地に自分から凍りつくとは……ほんに奇々怪々ですえ。

はてさてどうしたもんやろか……ふぅむ、この大蟹は常に砂の中を行き来しはるんやね?
となるとどないして地上を把握しとるのか……完全に身は隠れとるし、音かいね?
しからばお仲間さんにも協力してもらって、大音声を一発お見舞いしてやりましょ。
音でウチらを把握しとるんなら、突然の大音声には堪らず飛び出すはずですえ。
もしウチの目論見通り飛び出しはったなら、【守護明神】にお出まし願って縛ってもらいましょ。
髪を梳かして神と化す櫛灘の秘術……霊威宿りしウチの髪で降ろした守護明神は強力ですえ?


七瀬・麗治
出たな、あれが砂漠の主! アンコくんをオレ達に盗られて、怒り心頭というわけか。だが、地表に出てきたならこちらのもの。
……狩り、開始だ!

「ディープブルー・インベイジョン」
黒のカードの〈封印を解き〉、ダークブルーの全身甲冑を装着。
同時に【黒風鎧装】を発動させ、周囲に烈風を発生させて
〈オーラ防御〉。これでヤツの冷気を弾いてやるぞ。
攻撃面では〈武器改造〉で黒剣の表面に寄生体の細かい刃を
生やし、ノコギリ状にカスタムして外骨格を斬りやすくするぞ。
「カニ足はオレのものだあっ!」
吹き付ける冷気に耐えつつ、〈怪力〉で黒剣を振りおろす。
やはり、足は焼いて食うのが一番かな!!!
※アドリブなんでも歓迎です。


霧島・ニュイ
お待ちかね蟹だよー
どんな味がするんだろ、楽しみだねー
身がぎっしり凝縮されているというし!

分身は所詮分身で倒されても本体は痛くない…
危機に扮すると、分身に隠れるように行動するんじゃないかな?
戦闘しながら全体の蟹の動きは確認
逃げるように動く蟹や距離の遠い蟹を集中的に攻撃
戦闘中でも食べるよー、食らいついて味確認
美味しくても不味くても叫んじゃうかもー

右にマスケット銃、左に小型銃
クイックドロウで速さを上げて、スナイパーで命中率を上げながら早撃ち
一体に狙いを定めて集中攻撃
大きな鋏の威力に気を付け、大跳躍と攻撃は見切りで避けて
避けきれないときは銃で受けて、流し、離れ

出来るだけ貫通狙いで撃つ(不味くならない様



●黒風と弾丸と髪と神
 砂の中から現れた巨大な蟹。
「出たな、あれが砂漠の主!」
「ついに本命のお出ましですなぁ」
 その姿を見ながら七瀬・麗治はスーツの内側に手を入れて、櫛灘・常世は長い黒髪を夜風に揺らしている。
「うんうん。お待ちかね蟹だねー」
 並び立つ2人の横から霧島・ニュイもひょこりと顔を出し――。
「……で、美味しいのどれだろね?」
「どれもこれも、随分大身の蟹ですよって。見分けがつきませんなぁ」
 首を傾げたニュイの言葉に、常世も同じく首を傾げる。
 砕けた氷と砂をかき分け進んでくる蟹は、1匹や2匹じゃない。沢山いる。
 そして本体は1体のみの筈なので、その大半は分身体という事になるのだが、見た目の区別は付けられそうになかった。
「おまけに、こんな砂地に自分から凍りつくとは……ほんに奇々怪々ですえ。はてさてどうしたもんやろか」
 溜息こそ零しながら、常世の黒瞳は迫る巨蟹の動きをじっと見据えてい。
 気になっている事があるのだ。
 その答えを見つけようと、常世は蟹の動きをまずは見る事に徹していた。
「アンコくんをオレ達に盗られて、怒り心頭というわけか。あの数も、その怒りの現れという事なのかもしれんな」
「それか、先に分身だして様子見とかー? 危機に瀕したら、分身に隠れるように行動するんじゃないかな?」
 一方、麗治とニュイは、それぞれ脳裏に過ぎった考えを口に出す。
 3人とも、自分よりも遥かに大きな巨蟹を前にしても怯えの色はまるでない。
「まあ、何でも構わん。地表に出てきたならこちらのものだ!」
 麗治は1人前に出ながら、スーツの内側から取り出した黒のカードを掲げた。
「ディープブルー・インベイジョン」
 黒のカードから放たれた黒と青の混ざった昏い輝きが、麗治の全身へ広がっていく。
 その光が消えた時、麗治は悪魔のような意匠がそこかしこに施されたダークブルーの全身甲冑をその身に纏っていた。
 更に甲冑の上から黒い風を纏って、ふわりと砂と氷の上に浮き上がる。

 黒風鎧装――漆黒の風で、真の姿を強化する業。

 先程掲げた、何の変哲もなさそうな黒のカードは、闇人格『ロード』を封じたキーアイテム。その封印を解いた今の姿こそが、麗治の真の姿という事だ。
「さて……狩り、開始だ!」
 ヒュゴォォォゥッ!
 告げた言葉を、風の音が掻き消す。フルフェイスヘルムのバイザーがカシャンと閉まって麗治の顔を覆い隠すと同時に、漆黒の風が烈風の如く吹き出す。
「わっぷ」
「ふわぁ」
 離れていたとは言え後ろにいたニュイと常世にまで多少の砂が飛んで行くほどの強い風の勢いに乗って、黒騎士が巨蟹に向かって飛び出した。

「ちょっとびっくりしたー。お姉さん大丈夫?」
「ん。平気ですえ」
 常世が涼しい顔で乱れた髪を直しているのを確認すると、ニュイは愛用の黒縁眼鏡に付いた砂を落として、巨蟹に向かって駆け出していく。
「どの程度の冷気か知らんが、この風で弾いてやろう!」
 その頃には、麗治は蟹の前に立っていた。
 纏う烈風で蟹の放つ冷気を押し流す事で、自身に届かせない。それが、麗治の巨蟹の冷気の対抗策である。
「まずは脚の一本でも貰うとするか」
 悠々と巨蟹に向かって距離を詰め、麗治が黒剣を振り下ろそうとしたその刹那。足元の砂の中から、別の蟹の鋏が突如飛び出してきた。
「――なにっ!?」
 咄嗟に構え直した黒剣で鋏を受け止めたものの、麗治の身体は巨大な鋏で夜空に押し上げられていた。
「ちっ! 邪魔だ!」
 その鋏を麗治が黒剣で打ち据え、怪力で押しのける。だがその間に、最初に狙われた巨蟹は砂に潜って逃げようとしていた。
 パァンッ!
 そこに響く乾いた銃声。潜りかけていた方の巨蟹を、弾丸が撃ち砕く。
『――!』
「おっと」
 巨蟹が振り上げた鋏を、まだ硝煙を燻ぶらせるマスケット銃『Nuage』の硬く冷たい銃身で受け流し、ニュイは左手を掲げる。
「逃げようったってそうは行かないよー」
 ニュイの左の袖口から飛び出したのは、小型拳銃『Mistral』。氷か霧の様な白と青の色合いの銃身を持つがニュイの掌に収まり、次の銃声を響かせた。

「ああ――やっぱ音、かいね?」
 離れて見ていた常世が、ぽんと手を打つ。
「ずっと砂の中におって完全に身を隠しとった大蟹が、どないして地上を把握しとったんやろと気ぃになっとったんやけど」
 常世が感じていた疑問。
 それは『巨蟹が砂の中から地上の様子を把握』している手段であった。
 巨蟹は、ふくれアンコくんを猟兵達が釣り上げているのを察して出てきた。その光が消えたからというのもあるだろうが、砂の中では光が届く距離は限られる。
 だが、視覚以外に音――外から砂に伝わる振動を感じている、と考えれば辻褄が合うように思えた。
 常世の中でその推測が確証に変わった理由は、麗治の風だ。
 冷気を押し流す程の烈風の音は、吹き荒れ始めた時に聞いた。あの風の音、気配を砂の中から感じて、別の巨蟹が出てきたのではないか。
 ニュイの銃撃にすぐに反撃してみせたのも、音で気配を察したと考えられる。
「しからば、一発お見舞いしてやりましょ」
 悪戯っぽいと言うか誂うような笑みを浮かべて、常世が霊符を一枚引き抜いた。
 そしてその符を唇の前に当てて――。
『わっ!』
 霊符の呪で増幅された常世の声は、人1人のものとは思えない大音声となって、砂漠に向けて放たれる。
『『!?!?!?』』
 突然の大音声に驚いた様に、巨蟹が2体、砂の中から飛び出した。

(「かかった――!」)
 胸中で喝采を上げながら、常世の指が長い黒髪を梳く。
 それは、神を呼ぶ動作。
 髪を梳かして神と化す。同じ韻を絡めた櫛灘の秘術。
「……霊威宿りしウチの髪で降ろした守護明神は強力ですえ?」
 守護明神と化して常世の手を離れた黒髪が、巨蟹の脚に絡みついていく。それは巨蟹に取って余分なものであり、砂に潜る妨げになっていた。

『!?』
 潜れなくなったと悟ったか、巨蟹の甲羅からシュゥシュゥと白い煙が上がり出す。
「無駄なあがきだな。そんな冷気、オレには効かん」
 冷気を強める巨蟹の前に立った麗治の黒剣に、寄生体の青がまとわりつく。黒い刃の周りに細かい刃が幾つも並び、黒剣を鋸のような形に変えていく。
「カニ足はオレのものだあっ!」
 麗治が鋸状の黒剣を振り下ろす度に、巨蟹の脚が一本、また一本と、根本から斬り飛ばされていった。

「動けないのにごめんねー、僕両利きなんだ」
 思うように砂に潜れなくなった巨蟹に、ニュイが2つの銃口をピタリと向ける。
 右に『Nuage』、左に『Mistral』。タイプの違う2つの銃を左右同時に構えて、ニュイはブレる事なく同時に引鉄を引いて2つの銃から弾丸を蟹に浴びせた。
 放たれた弾丸が氷を砕いて、氷が砕けたあとで甲羅を撃ち抜いていく。そうやってニュイが数発も撃ち込めば、巨大な鋏が力なく砂の上に落ちた。
「どんな味がするんだろ、楽しみだねー」
 完全に動きを止めた巨蟹に近づくと、ニュイはその脚を叩いてみる。中が空洞であるような軽い手応えではなく、重いものを叩いた時の様な鈍い感触が返ってきた。
「身がぎっしり凝縮されているのは、間違い無さそうだね!」
 期待に、ニュイの口元ににんまりとした笑みが浮かぶ。
 そしてニュイは大きくを開けて、倒したばかりの巨蟹に食いついて――。

 同じ頃。
「やはり、足は焼いて食うのが一番か……いや、しかし新鮮な蟹は生でも行けると聞いたことがあるな」
 自ら斬り飛ばした脚の味が気になってしまった麗治も、今しがた斬ったばかりの脚の端を落として、その切り口を近づけ――。

「不っっっっっっ味ぅぅぅぅぅぅぅぅぅい!!!!」
 砂漠にニュイの悲痛な声が響き渡り、その不味さに麗治の甲冑も解除される。
(「好奇心は身を滅ぼす――まさにですえ」)
 そんな2人の様子を眺め、常世は思わず胸中でそう呟いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小夜啼・ルイ
飛藍(f16744)に同伴

コイツ懲りてねぇな。絶対懲りてねぇ
つーか、またオブリビオンを食い物認定してるし…もう仕方無いか

は…?冷気で仲間認識される訳ねーだろ!!
てめぇ後で憶えてろ!
…つまりフェイは蟹の冷気に当たりたくないんだな?
全く感情篭ってない喋り方だぞ

腑に落ちねぇが仕方ない
冬将軍だか蟹将軍だか知ったこっちゃないが【Mors certa,Vitae incerta】で、可能な範囲で蟹を凍らす
べっつに冷気被りでムキになってねぇし?
凍って動きが鈍ったトコで、関節を狙って氷柱を打ち込む
仮に殻が硬かろうが、関節部分は動かす以上は脆い筈だろ

あ?オレは食わねぇぞ?
蟹の味見は他の奴に任せる


黎・飛藍
ルイ(f18236)が同伴

顔面に当たった冷凍アンコウは、求肥で包んだ凍った餡子の様な感触だった
まぁいい
蟹だ。天麩羅か、鍋だな
しかし冷気を扱えると来たか
ルイかと思ったら蟹だった。なんて事に、ならなければいいが

あまり近付きたくないな。俺は強い冷気の耐性は持っていない
だから蟹から離れた位置で【彼岸への誘い】を使う
蛍がひょっこり突き出た蟹の目に当たるかもしれない。それで視界を奪えれば上々
…数撃ちゃ当たるだろう

で、だ。ルイ、お前が蟹を穿て。その冷気で仲間だと勘違いするかもしれない
直にその身を食えないのは非常に残念だが、ある程度は冷気に耐えられるお前にしか、この大役は出来ない(全く感情篭ってない)



●蟹の冷凍には-30度もあれば充分らしいです
「蟹だ――天麩羅か、鍋だな」
 ぼんやりと巨蟹を見上げる黎・飛藍の口から出た言葉に、横に並んで巨蟹を注視していた小夜啼・ルイの口から盛大な溜息が溢れた。
(「フェイのやつ、またオブリビオンを食い物認定してるし……」)
 それを飛藍に言っても仕方ないだろうと、ルイは声に出さず胸中で呟く。
「そんな事より先にやることあるだろうが。どうするか考えろ」
「そうだな。冷気を扱えると来た」
 せめて巨蟹に集中させようとルイが変えた話題に、飛藍も頷き、真面目な顔になって巨蟹を一瞥する。
「……よし。俺は離れた位置から蟹を撃つ。で、だ。ルイ、お前が蟹を氷で穿て」
 で、真顔のまま、飛藍はそんな作戦を発案した。
「何が、よし、だ! なんでオレだけ――」
「理由はあるぞ。2人で突っ込んだら『ルイかと思ったら蟹だった』なんて事にならないとも限らないからな」
 抗議の声を遮って淡々と告げる飛藍に、ルイが流石に閉口する。
 どうせ顔が判らないからと、飛藍は気配に頼る癖がある。流石にそれでも、人と蟹を間違えるとは思えないが――。
「それに、お前ならその冷気で仲間だと勘違いして貰えるかもしれないし」
「は……? いや、冷気で仲間認識される訳ねーだろ!!」
 更に真顔で飛藍が淡々と続けた言葉に、ルイは一瞬目を丸くしたものの、次の瞬間には食って掛かっていた。
「やってみないとわから――」
「オレの冷気は、あんなもんじゃねえぞ」
 飛藍が言いかけたの遮って、ルイがぶっきらぼうに告げる。
「……対抗心か?」
「は?? いや? べっつに冷気被りでムキになってねぇし?」
 飛藍の返しに、ルイは思わず視線を逸らしていた。
「そうか。なら任せる」
 ルイの表情が見えていないが故に、それ以上追求せず、飛藍は淡々と続ける。
「俺としても直に蟹の身を食えないのは非常に残念だが、ある程度は冷気に耐えられるお前にしか、この大役は出来ないからな」
 語る言葉とは裏腹に、飛藍の口調は残念さの欠片もない、全く感情が籠もっていないものだ。所謂棒読みである。
 それでは、ルイでなくても言いくるめられる筈もない。
「…………本音は?」
「俺は強い冷気の耐性は持っていないからな」
「……つまりフェイは蟹の冷気に当たりたくないんだな?」
「そうとも言うな」
 ルイの追求を躱しきれないと踏んで、飛藍があっさり頷いた、その時だった。

 ――不っっっっっっ味ぅぅぅぅぅぅぅぅぅい!!!!

 そんな声が、遠くに聞こえたのは。
 2人とも、聞き覚えのある気がする猟兵の声だ。この砂漠でもそうだが、以前、ここではない何処かの河原で聞いたことがあるような。
 言い合っている間に、他の場所では他の猟兵達が既に一戦終えていて、2人の前には2体の巨蟹がノソノソと迫って来ていた。
 敵が黙って待ってくれる筈もない。
「――食っていいぞ?」
「オレは食わねぇぞ! 蟹の味見は他の奴に任せる」
 そんな事を言い合いながら、飛藍とルイが地を蹴って別々の方向に跳んだ直後、2つの巨大な蟹鋏が振り下ろされた。

「腑に落ちねぇが仕方ない」
 吐き捨てるように呟いて、ルイは巨蟹達に向かって踏み出した。
 現実問題としてサイズで勝る相手に2人で挑むのならば、前衛と後衛に分かれるのは悪くない戦術と言えよう。
 そして、強力な冷気を放つ敵に対し、『冷気に強い者』が前に出る、というのも理に適っていると言えよう。
 飛藍の案は悪くないのだ。動機を別にすれば。
 それが判ってしまっていたから、ルイは釈然としないものを感じながら、自ら巨蟹との距離を詰めて行く。
 その頭上を、幾つもの青白い小さな光が通り過ぎる。
「蛍は死者の魂だと――蟹相手だしいいか」
 ――彼岸への誘い。
 いつもの文句を途中で止めて、飛藍は掌から青白い光を放ち続けていた。
 蛍の群れは次々と巨蟹へ向かって飛んでいき、氷も甲羅も物ともせずに撃ち抜いて、巨蟹の身体に小さな傷を刻み込んで――やがて、突き出した巨蟹の両目を撃ち抜いた。
「数撃ちゃ当たるにしちゃあ、良い狙いじゃないか!」
「任せたぞ」
 振り向きもせずに言い当てるルイに、飛藍は表情を変えずに淡々と返していた。

『――!!』
「冬将軍だか蟹将軍だか知ったこっちゃないが、凍らせてやる」
 視覚を失った巨蟹が、無茶苦茶に振り回す鋏の範囲のギリギリ外で、ルイは手袋を外した掌を巨蟹に向ける。
 あと少しでも巨蟹が前に出れば、鋏はルイの身体に届いてしまう。
 だが――届くよりも前に、巨蟹は鋏を振り回せなくなっていた。纏っていた氷の上から凍りついて。
 ルイの掌より放たれる冷気は絶対零度。氷点下の最低点。冷気の到達点。
 巨蟹の纏う氷ごと凍らされた現実が、巨蟹の纏う氷が絶対零度の域の業で創られたものではないという証。
『!?』
 それほどの冷気を感じた巨蟹が、脚をばたつかせはじめる。
「逃さねえよ」
 Mors certa,Vitae incerta――その業は絶対零度を放つのみに非ず。
 ルイの指先から放たれた鋭い氷柱が、砕けた氷と砂をかき分け潜ろうとする巨蟹の脚に突き刺さった。
「殻が硬かろうが、関節部分は動かす以上は脆い筈だろ」
 巨蟹の脚の節という節を、ルイの氷柱が撃ち抜いていく。それを見た飛藍も少し距離を詰めて、蛍を確実に当てていく。

 ――ややあって。
 2人の前には、凍らされて、撃ち抜かれピクリとも動かなくなった巨蟹だったもの、が鎮座していた。
 周囲には、まだ元気に動いている巨蟹の影が幾つも見える。
 という事はつまり、分身体だったということだ。
「……見てたら思い出したんだが」
「?」
 そんな蟹を見上げて、飛藍がぽつりと口を開く。
「さっきの冷凍アンコウな。顔面に当たった感触は、求肥で包んだ凍った餡子みたいだったぞ」
「てめぇ、懲りてねぇな。絶対懲りてねぇだろ!」
 思わず叫んだルイの後方で、新たな巨蟹の鋏が砂の中から飛び出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)】と

普通のサイズの蟹でも、お前にとっては充分な量であろうに…
連れの欲深さに恐れおののくが、美味なる蟹は確かに魅力的だ
上手に本体を見極めて、至福の一時を迎えようではないか

先に動いたうさみの、デビみっちへの指示の真意を察して恐れ戦く
悪魔を使役するというのは、其れ以上の鬼畜になると言う事なのか…!?

いやいや、俺も呆けている場合ではない、戦わねば
氷の短針を向けて【精霊狂想曲】を発動
蟹の旨味成分を逃さぬように氷柱を生みだし遠距離から刺し貫く

俺とて本体と分身体との見分けはつかぬ
よって「範囲攻撃」で纏めて倒してしまうしか手が無いのだ
デビみっちを巻き込まぬように気を付けるが
せ、制御が…


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
うっひょーでっかい蟹がいっぱい!
蟹鍋!蟹ステーキ!蟹クリームコロッケ!
夢が膨らむぜウヘヘ

でも美味しいのは本体だけか
正直俺には区別がつかない!
…そうだ!実際に食えば良いのだ!
【よにもおそろしきデビみっちサモン】!
お前ら、頑張って働いたら
そこの蟹をその場で食べてもいいぜ!

俺は安全地帯からデビみっち達に指示
三叉槍で一点集中攻撃して氷と甲羅に穴を開ける!
すかさず踊り食いするデビみっち!
(反応を見る)…チッ、コイツは外れか
さぁ張り切って次行ってみよー!

ニコの氷柱で蟹の動きを止めたとこに
すかさず攻撃という連携プレーも!
って、あー!デビみっちが巻き込まれた!
ニコひどい!あくまー!



●あくまのしょぎょう
「うっひょー!」
 砂漠の空に舞い上がった榎・うさみっちが、そんな声を上げる。
「見ろよ、ニコ! でっかい蟹がいっぱい!」
 ニコ・ベルクシュタインに告げるその声は、とても嬉しそうだった。
「……うさみよ、珍しく乗り気だな?」
 そんなうさみっちの様子を訝しみ、ニコが眉間を寄せる。そう楽観視出来る状況とも思えないものだが――。
 勿論、うさみっちのテンションには理由がある。
「だってよ。これだけ蟹がいれば、何でも作れそうじゃないか。蟹鍋! 蟹ステーキ! 蟹クリームコロッケ!」
 ふわりとニコの顔の前に降りてきたうさみっちが告げたものは、食い気だった。
 フェアリーだって、カニ食べたい。
「お前と言うやつは……! 普通のサイズの蟹でも、充分な量であろうに……!」
 うさみっちの欲深さに思わず顔を覆いたくなったものの、ニコはその衝動をなんとか抑え込む。
「まあ、美味なる蟹は確かに魅力的だ」
 ニコにも頷ける話ではあるのだ。ヤドリガミだってカニは美味。
「だろだろ! 夢が膨らむぜ! ウヘヘ」
「そうだな。上手に本体を見極めて、至福の一時を迎えようではないか」
 すっかり口元が緩んでいるうさみっちを引き締めるように、ニコがきりりと告げる。
「そっか。美味しいのは本体だけだっけか」
 その言葉で思い出したうさみっちは、腕を組んで辺りを見回し――。
「正直俺には区別がつかない!」
 あっさりと、考えるのをやめた。
「うさみよ、もう少し頑張って――」
「……そうだ! 不味いんなら、実際に食えば良いのだ!」
 言いかけたニコを遮ったうさみっちが、ぽんと手を打つ。
 ニコはそんなうさみっちの頭上に電球がピコーンと見えたような錯覚と――何故か嫌な予感を感じていた。

「いでよ! 極悪軍団デビみっち!」
 うさみっちの掲げたうさみっちゆたんぽが、何やら邪悪っぽいダークな輝きを放つ。ダークな光の中から現れたのは、悪魔の様な角と翼、三叉槍を持つデビみっち。
『極悪軍団デビみっち様に何の用だー!』
『うわ寒!? 何だここ! 砂漠か?』
『はぁーーー?? こんな環境で働けとーー???』
『なめてるんですかぁーー?? 労働環境の改善を要求する!!!』
 悪魔らしく(?)ガラが悪いデビみっち達。その数、58体。
「よく聞け、お前ら! ターゲットは、あの蟹だ! 頑張って働いたら、蟹をその場で食べてもいいぜ!」
 ブラック賑やかなデビみっち軍団に、うさみっちが交渉に報酬として示したのは、何とまさかのカニ現物支給。
『『おっしゃー! 乗ったぜー!』』
「おい待て、良いのかそれで!?」
 うさみっちの真意を察して思わずツッコむニコの声を置き去りに、あっさり釣られたデビみっち軍団が、巨蟹に向かって一斉に飛んでいく。
 巨蟹が振るう鋏を潜り抜け、跳躍してもブーンと飛んで追いかけて。
「よし、まずは三叉槍で一点集中攻撃! 氷と甲羅に穴を開けろ!」
『『『カニー! 食わせろー!』』』
 いつの間にか、巨蟹の鋏の届かない高さまでちゃっかり上昇していたうさみっちの指示で、巨蟹に取り付いたデビみっち軍団が三叉槍を構える。
 ツンツンと突いている様にしか見えない槍捌きで、巨蟹の纏う氷が、その下の甲羅までもが砕けていく。
「甲羅まで砕けたら、手の空いているデビみっちが踊り食いだ!」
『おっしゃ! デビみっち55番様がいただくぜ―』
 続く指示通り、甲羅が砕けたそこにデビみっちの一体が蟹に齧りついて――。
『ぶーっ!? おいこらー!!! クソ不味いじゃねーかーーー!!!!』
 デビみっちの怒声が、砂漠に響き渡った。

「うさみ……何という恐ろしい所業を」
 仮にも召喚悪魔を毒味役に使う。
 うさみっちがやってのけたその光景に、ニコは戦慄を覚えずにはいられなかった。
「悪魔を使役するというのは、其れ以上の鬼畜になると言う事なのか……!?」
 とは言え、ニコもいつまでも恐れ慄いてはいられない。
 デビみっち達は、不味いと判った巨蟹から、既に離れだしている。このままだと、手負いの巨蟹が増えるばかりだ。
「いやいや、俺も呆けている場合ではない。戦わねば」
 己に言い聞かせるように声に出し、ニコは時刻みの双剣の片方、氷のルーンを宿した短針の剣の方を引き抜いた。
 巨蟹の本体と分身体の見分けは付かないのならば――範囲攻撃で目につく巨蟹、全てを攻撃する他あるまい。
『荒れ狂え精霊よ。氷のルーンの示す先、汝らは今こそ解き放たれん!』
 精霊狂想曲――エレメンタル・カプリッチオ。
 精霊を喚びその力を解放する業を、ニコは少し唱える言葉を変えて、意識して氷の精霊を喚び出していた。
「炎では蟹の旨味成分が逃げてしまうからな。ここは冷凍。氷柱を頼む」
 得意な炎よりも氷を選んだのは、巨蟹を美味しくいただく為。何だかんだ言って、ニコも食い気に左右されているようだ。
『!?』
 ニコに応えた精霊の力で作られた氷柱が、次々と巨蟹に飛来し刺し貫いていく。
「よし、次は――あちらだ」
 デビみっちが試食を終えた巨蟹の沈黙を確認すると、ニコは別の巨蟹へと、短針をもした剣の切っ先を向ける。
 そこには巨蟹のみならず、デビみっち軍団も群がっていた。
「デビみっち軍団! ニコの攻撃が来るぞ! 蟹の動きが止まったら、すかさず攻撃するのだ!」
 上から見ていたうさみっちもニコの動きに気づいて、デビみっちに指示を飛ばす。
 だが――精霊狂想曲は制御が難しい術である。
「なるべくデビみっちを巻き込まぬように……っ……せ、制御が」
『――ん? のわぁぁっ!?』
「あー! デビみっちが!」
 巨蟹に向かって撃ち出された氷柱の幾つかが、デビみっちを貫き巨蟹に貼り付ける。
 ニコだって努力はしたのだが、58体もいるデビみっちの隙間を縫って氷柱を撃ち込むのは、流石に無理だった。
「ニコひどい! あくまー! デビルシュタインー!」
『おうおう、いしゃりょうだせやーーー!!!』
「……」
 うさみっちとデビみっち。双方からブーイングを浴びながら、ニコは対うさみっち最終兵器の使用を検討していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋神・美麗
さて、本命が掛かったようね。さっさと倒して美味しく頂こうかしらね。

本体と分身体、見た目は全くそっくりなんでしょうけど二つ名特性の『甲羅から冷気を放ち時に氷を纏う』までは持ってない気がするわね。その辺を見極めてみようかしら。
出力可変式極光砲を攻撃回数重視で使用して牽制しつつ蟹の冷気攻撃を誘って分身体と本体を見極めようとする
出てくる蟹全てが冷気攻撃をしてくるようなら諦め皆まとめて吹き飛ばす
倒しきったら相棒のシルヴィアに分身体か本体か見極めを手伝ってもらう
「野生の勘とか第六感とか美味しそうなものセンサーとかで分からない?」



●蒼雷
「さてと。さっさと倒して美味しく頂きたいだけど……」
 緋神・美麗の目にも、巨蟹は食料としか映っていなかった。
「本命はどれなのかしらね?」
 まだ氷が残る砂漠を見渡せば、あちらこちらに見える巨蟹。その幾つかは他の猟兵達が戦っていたり、既に半ば解体までされているのもいるのだが。

 ――不っっっっっっ味ぅぅぅぅぅぅぅぅぅい!!!!
 ――クソ不味いじゃねーかーーー!!!!

 そんな声が聞こえる辺り、まだ本命の本命は見つかっていないようだ。
「ホントに見た目はそっくりだし、どれも氷を纏ってるし……」
 そう言葉に出してみて、美麗が感じるある種の違和感。
「真・霜将軍……甲羅から冷気を放つっていう特性まで、本体と分身体が同じ様に持っているものかしらね?」
 美麗が見ているのは、あくまで『氷を纏った巨蟹』の姿だ。
 それは、砂の中から出てきた時点で既にその状態だったものでしかない。巨蟹が氷を纏う、その瞬間を見たわけではない。
「その辺を見極めてみようかしら」
 それなりの格好をして黙っていれば、天使の様、と形容されても不思議ではない、整った容姿を持つ美麗であるが、その内面は所謂、直情型であった。
 要するに――考察を続けるよりも、行動に出るタイプだ。

「全力で行くわよ」
 美麗が広げた掌から、サイキックの輝きが放たれる。
 ――バチリッ。
 乾いた夜風に、電撃が爆ぜる音が流される。
 出力可変式極光砲――ヴァリアブル・ハイメガキャノン。
 サイキックエナジーを電撃に変換しつつ出力調整し、電球として放つ業。
 出力可変式、と言うだけあって様々な調整が効くのだが――美麗の周りには、幾つもの電球が作り出されていた。
 電撃の収束点を増やすことで、手数を増やす方向に調整したのだ。
「氷を砕けば、冷気攻撃してくるんじゃない?」
 美麗が軽く手を振る度に、幾つもの電球が蒼白い輝きを尾と引いて放たれる。
 電球は巨蟹に当たると、蒼雷と爆ぜて纏う氷を砕き、夜の砂漠を照らしていた。
「冷気を放ってみなさい! じゃなきゃ、甲羅ごと雷で焼くわよ!」
 電球を放ち続ける美麗の吐く息が、白くなってる。
 服の表面には薄っすらと霜が降りて、指先が冷えて来ているのを美麗は感じていた。纏う氷を砕かれた巨蟹の甲羅から放たれる冷気が、周囲の気温を休息に下げている。
「うーん。全てが冷気を放っているわね――ん?」
 全部まとめて吹き飛ばそうと、サイキックの出力を高めようとした時だ。
 遠くにいる巨蟹の中で1体だけ、砕けた氷を再生して纏い直している巨蟹に、美麗は気づいた。
「もしかして――どきなさい!」
 目の前の巨蟹に、出力を上げた電球をぶつけて吹き飛ばす。
 だが、前が開けた時には、氷を纏った巨蟹は砂の中に潜っていくところだった。追撃で電球を放つも、届く前に、その姿は完全に砂の中に消えていった。
「あれが本体だったのかしら。シルヴィア、野生の勘とか第六感とか美味しそうなものセンサーとかで分からない?」
 美麗の問いかけに、相棒の白い仔竜は困った様に『ガルルゥ』と短く鳴いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【KOR】

アヤネさんの母国ではカニは足だけ食べてミソは捨てるのも珍しくないそうですね
勿体無い!とはいえ珍味扱いだからなぁ
まぁ私はハサミとか部位には拘らないんで…(大量の釣り上げられたアンコウをチラリと見て)あん肝が楽しみですね!

UC廃園の鬼発動
愛刀・花髑髏を抜き
ダッシュでカニに接近
本体か分身かは……わかんないな、ここはまぁ勘で!(第六感)
は?氷を纏うとかずるい!
なるべく攻撃を喰らわないよう残像を駆使してカニの死角に回り込み間接部に刀を突き立てて攻撃
避けられずどうしても防御するは武器受けで…ってなんかめっちゃ刀がミシミシする?!刀が折れそう!なる早で援護下さーい!

アドリブ諸々好きにして下さい!


日隠・オク
【KOR】
ゲットです!
いえっカニ退治ですね、頑張りますね

大きいカニです……、身がつまって、いるのでしょうか……
カニは全部おいしいと思います

シホさん、詳しい……
ふむふむと聞き入り

みんなで鍋を囲んだら、とても楽しそうです
つまりこれは、お鍋前の料理!
いえ、これは敵なので退治なのですが

UCはシーブズ・ギャンビットで斬り込みます
うまく切れるでしょうか、その、できれば関節などを狙って……

はい、狙ったら一点目指して突っ込んでというスタイルでがんばります


シホ・エーデルワイス
【KOR】
アドリブ歓迎


ついにいらっしゃいましたね真・霜将軍

ふと
とてもリラックスしている自分に気付く

ああ
戦争の時から沢山戦い続けていましたから
依頼でこの感覚は久しぶりです

でも油断しない様に気を引き締めます


後方から皆さんを【祝音】で癒しつつ

事前に世界知識で情報収集した見分け方を仲間とも共有
第六感で本体を見切ります

蟹が一番美味しいのは脱皮直前
脱皮直後は柔らかく運動量が減ってスカスカ
分身も現れたばかりで同じ条件なら

動きが良い
甲羅が硬く付着したブツブツや傷が多い
腹の色が黄ばんでいる

が多分本体

食紅を元に作っておいたペイントの誘導弾を
本体に当て目印にする事で援護射撃

ありがとうです
当たっていると良いのですが…


鏡彌・サクラコ
【KOR】
カニ大き過ぎい?!
あれなら食べるところいっぱいありますねい
サクラコも蟹味噌はあまり得意ではないですねい
舌がお子様なのでいす

なるほどー
シホさまの見分け方を覚えておきます

蟹の調理法は詳しくないのですけど
茹でるのが普通でいすね
雷はいい感じだと思いますねい
電子レンジっぽくて

アヤネさまはハイテクな感じで
やる気がすごいですねい

サクラコの銅鏡は鍋ぶたじゃなくて本体でいす

あん肝はサクラコも楽しみなのでいす
でもまずは目の前の敵からですねい

鍋ぶたもといUC発動
前衛の皆さまの盾として守りましょう
オクちゃんも遠慮無くどーんといっちゃってくださいませ!
手が空いたらぶつけたりしますねい

さあ本体はどれでしょうか?


アヤネ・ラグランジェ
【KOR】
僕からすると日本人は海で取れる物ならなんでも食べるっていう印象なんだけど?
蟹はハサミをいただきたい
そして美味しい蟹を狙い撃ちしたい
電子ゴーグル展開
シホが付けてくれたアナログマーキングに上書きする形で
全ての蟹にマーキングを付ける
戦闘最後に倒れた蟹が本体ってことだネ
記録しておこう
戦闘後に素早く目当ての蟹を手に入れよう

ユーヘイは僕をカニにしないで

中距離ライフルで狩りを開始
UCは前衛メンバーの戦闘補助で敵を拘束する
蟹にうっかり手で触れないでネ
凍傷になったり皮膚が剥がれたりするよ
潜行する蟹は動きをセンサーで追って浮上タイミングを察知
次はソヨゴの右後ろ!
などと指示を出しつつ的確に射撃して行く


木常野・都月
【KOR】

野生の狐時代に、川でサワガニを丸ごと食べた事はあるけど…砂漠の蟹は…大きいな…

これは、牙…歯で甲羅を砕けるのだろうか。

先輩達は(多分)鍋の達人…

野生の狐では分からないスペシャルな技があるのかもしれない。

あとでどうやって食べるのか、聞いてみたい。

とはいえ…

「蟹は…焼いていいんですか?
鍋にするなら焼かない方がいいですか?」

鍋料理を見た事がないけど、鍋というからには、茹でる…はず?

焼いてしまったら、鍋が焦げ臭くなるかも…

とりあえず…火は避けておこう…

UC【雷の足止め】を使用、砂の中に潜られないように、動けなくしたい。

あとは雷の[属性攻撃]で蟹を倒したい。

敵の攻撃は[オーラ防御]で防ぎたい。


花屋敷・幽兵
【KOR】 え…カニ、喰うの?そういやカニ(冬青)とアンコウ(アヤネ)鍋だっけな。 サクラコが鍋の蓋持ってるから色々捗るな。 カニの特徴は氷から冷気を放ち時に冷気を…ふむ、分からん。 冷凍のカニを倉庫から出したみたいな感じか?分身するのは厄介だが便利なアヤネもんがいるから大丈夫か。 いいアイデアが無い以上出てくる指示に全て従う私はあなたのお人形☆ 攻撃は前衛で、槍でチクチク行くぜ。耐久性重視でUCは粘液治療だ!これなら凍らないんじゃない?そうだろオクさん。 お前がカニなら俺は蛙だ!ゲコー! なんかシホや都月、アヤネたちが色々やってくれてるから 乗っかって美味しい所を持って行ってやるぜ!



●大きいことは良いことだ
 7人で固まっていたから、だろうか。
 【KOR】の7人の周囲には、最も多くの巨蟹が現れていた。
「砂漠の蟹は……大きいな……」
 その巨体に、木常野・都月は流石に驚きに黒い瞳を大きく見開いていた。尻尾もぶわっと膨らんでいる。
(「野生の狐時代に川で獲って丸ごと食べてたサワガニみたいに、牙……歯で甲羅を砕けるのだろうか」)
 多分無理ではないかと感じつつ、都月が胸中で自問する。
「カニ多過ぎで大き過ぎい?!」
 この巨蟹の群れには、鏡彌・サクラコもさすがに驚き目を見開いて――。
「食べるところいっぱいありますねい」
 あ、そっちですか。
「大きいカニです……、身がつまって、いるのでしょうか……」
「きっと詰まってますねい」
 心なし普段より弾んだような日隠・オクの声に、サクラコはすぐに頷いていた。
「え……カニ、喰うの?」
 一方、本当に驚いているのが花屋敷・幽兵である。巨蟹の大きさやその数ではなく、蟹を食材とみなしている2人の発言にだが。
「ユーヘイは蟹食べない文化の人? 僕はハサミをいただきたいネ」
「そう言うアヤネさんの母国でも、カニは足だけ食べてミソは捨てるのも珍しくないそうですね?」
 そんな幽兵に中距離ライフル『Phantom Pain』の準備をしながらアヤネ・ラグランジェが告げれば、城島・冬青はそんなアヤネに笑顔で問いかける。
「一般的には、そうだネ。まあ僕からすると、日本人は海で捕れる生き物ならなんでも食べるっていう印象なんだけど?」
「え、だって勿体無いじゃないですか」
 見た目は殆ど日本人なアメリカ人のアヤネの言葉に、髪や目の色はむしろアメリカ人っぽい日本人な冬青が平然と返す。
「サクラコも蟹味噌はあまり得意ではないですねい」
「カニは全部おいしいと思います」
 何故か始まった日米カニミソ談義に、サクラコとオクも口を挟む。
「オクちゃん、蟹味噌もいけますか。そこはサクラコより舌が大人ですねい」
「そう、でしょうか……」
 サクラコに大人と言われ、オクの尾がゆらゆら揺れる。
「まぁカニミソは日本でも珍味扱いだからなぁ……」
「珍味と言えば、あれじゃないアンコウも『何故食べようと思った』なんて思ってるアメリカ人、結構いるらしいネ」
 判らなくもないとしみじみ頷く冬青が口にした『珍味』の一言で、アヤネが思い出した様に後ろを指差す。そこには、皆で釣りまくったふくれアンコくんの山が。
「あん肝が楽しみですね!」
 冬青の目が、このあとのお楽しみを想像してキラリと輝く。
「そうか。そういやカニ(アヤネ)とアンコウ(冬青)鍋だっけ」
 そんなカニとアンコウ談義が弾むアヤネと冬青を、幽兵がこれまた遠慮の欠片もなく指差して、そんなことを口走る。
「クマの次はカニって。ユーヘイ、僕を何だと思ってるのかナ?」
「だから私はアンコウとは似てないですって!」
 アヤネのジト目と『><』な顔の冬青の視線が、幽兵に突き刺さる。
「俺も、カニ食べた事ありますよ」
 追い詰められる幽兵の背中に、都月が声をかけた。
「野生の狐時代に、川でサワガニを丸ごと、ですけど」
 それは、都月が自分が妖狐と知らずに、森で狐として暮らしていた頃の経験。
「カニの踊り食いは流石に……」
「もしかして一番ワイルド?」
 都月の話を聞いて、冬青とアヤネが思わず顔を見合わせる。
「だから、鍋料理は見たことないんですよ」
 初鍋への期待に黒い尾をゆらりと揺らす都月に、追求が止んだ幽兵がグッジョブと親指立てていた。

 ――ぱんっ。

 そこに小さく響いた手を打つ音。
「皆さん」
 それ続く声に、シホ・エーデルワイスに視線が集まる。
「敵は真・霜将軍の二つ名持ちです。油断せずに参りましょう」
 向けられた6人の視線に、シホは微笑みを浮かべながら、『Adonis』の袖口から取り出した二丁の聖銃、白の『Pea』と黒の『Tulip』のグリップを握って告げる。
 とは言え、油断しないようにと言いながらも――シホは自分が、とてもリラックスしている事にも気づいていた。
(「ああ……この感覚は久しぶりです」)
 少し前に別の世界であった戦争。そこで戦い続けたシホの身体の中の何処かに残っていた熱のようなものが、程よくほぐされていくような感覚。
(「皆さんのお陰――なのでしょうね。きっと」)
 そのお礼に、というわけでもないけれど。
「そして蟹なのですが、一番美味しいのは脱皮直前。逆に脱皮直後は柔らかく運動量が減って身がスカスカだそうです」
 シホは世界知識で得たカニ情報を真顔でスラスラと並べ立てる。
「分身は現れたばかり。つまり脱皮直後と同じと仮定すると、動きが良く甲羅が硬く付着したブツブツや傷が多い、腹の色が黄ばんでいる個体が多分本体ではないかと」
 更にシホは、そこから本体の特徴まで推理していた。
「シホさん、詳しい……」
「なるほどー。シホさまの見分け方、覚えておきます」
 こくこくと、頷くオクとサクラコ。
 他の誰もシホの推理に異論は上がらず、方針は決まった。
 あとは――狩るだけだ。

●美味しいお鍋の為に
「花髑髏の本当の姿を見せますね」
 花と髑髏の彫りが入った刀の鍔を冬青の指が押し上げ、刃が鞘走る。
 スラリと引き抜かれたその刃は、漆黒に染まっていた。
 ――廃園の鬼。
 自身の武器を、漆黒の吸血武器へと変える冬青の業。
 その代償は『1日分のカロリー』である。
「カニとアンコウの為なら!」
 カニもアンコウも美味しく食べるその為に、冬青はカロリーを犠牲に巨蟹の1体に斬りかかった。
 関節を狙った一太刀が、纏う氷ごとスパッと蟹の脚を斬り落とす。

「冷凍のカニを倉庫から出したみたいな感じかと思っていたら――寒いな!」
 別の巨蟹と対峙する幽兵は、その甲羅から漂う冷気に思わず声を上げていた。
 マスクの下では、どんな表情になっているのか。
「お前は本体か? ふむ、分からん。分からんから、叩きのめす!」
 予想以上の冷気を物ともせずに、幽兵は果敢に間合いを詰めと、良く磨き込まれた鋼鉄の槍『ダイタク=ヘリオス』で巨蟹の脚の一つを払い、関節を貫き破壊する。
 良く見れば、その身体は黒くぬらぬらとしたものに塗れていた。
 【ダーク・ヴェンジャンス】の漆黒の粘液である。
「これなら凍らないんじゃない? そうだろオクさん」
 別の脚に狙いを定めながら幽兵が上げた声に――オクからの返事はなかった。

 そこが砂でも氷でも、殆ど足音を立てずにオクは駆ける。
 手にしているのは、シンプルな諸刃の短剣。
 昔から使い続けて手に馴染んだオク愛用の得物ではあるが、巨蟹のサイズと比べてしまうとあまりに小さく、どうしても誰よりも距離を詰めなければならない。
 とは言え、巨蟹も黙って近寄らせてくれるわけもなく。オクが幽兵に返事を返さなかったのは、放たれる水鉄砲を掻い潜り間合いを詰めるのに忙しかったからだ。
(「みんなで鍋を囲んだら、とても楽しそうです」)
 そんな危険の中、オクの背中を押すのは、美味しいお鍋への期待。
(「つまりこれは、お鍋前の料理!」)
 またの名を下拵え。
 膝を沈めてから一気に駆け出したオクが振るった短剣の素早い一撃、狙った関節から巨蟹の脚を斬り落とした。

「主よ、この方にどうか慈悲と祝福をお与え下さい」
 ――♪
 祈りの言葉を唱えたシホの口から、歌声が紡がれる。
 【祝音】苦難を乗り越えて響く福音。
 それは、前で巨蟹と接敵して戦う3人を支え、癒やす歌。
(「お腹さえ見えれば、目印をつける準備はあるのですが」)
 そのチャンスを得る為に危険に飛び込む仲間を支える為ならば。シホは自身が疲弊する歌を歌うのに迷いはなかった。

「氷を纏ってるとかずるいですよ! 折角シホさんが教えてくれた情報、甲羅が硬いとかブツブツが多いとかお腹の色とか、近づかないと判りにくいじゃないですか!」
 シホの歌でカロリーの幾らかを取り戻せた冬青が、元気に巨蟹に斬りつける。
「ん? じゃあソヨゴは何でその個体選んだの?」
「勘です!」
 背中に聞こえた『Phantom Pain』の銃声とアヤネの声に迷わず返して、冬青は『花髑髏』を振り上げた。
 振り下ろされた鋏を、漆黒の刃が受け止める。
「っ……さすがに重! ってなんかめっちゃ刀がミシミシする?!」
 冬青の耳に届く、軋むような音。
「刀が折れそう!? なる早で、援護くださーい!」
 嫌な予感しかしない音に、冬青が焦った声を上げるが、幽兵もオクも、自分の目の前の巨蟹に手一杯。
「サクラコ。頼む。2――いや、3かな」
「了解でいす」
 だが。アヤネは慌てず告げて、サクラコがそれに頷く。
 ゴンッ! ガンッ! ゴヅッ!
「どれも重たいですねい」
 立て続けに3つ響いた鈍く低い音は、サクラコが複製した、本体である銅鏡が、冬青が斬り結んでいた鋏を横から叩いてふっ飛ばした音だ。
「オクちゃんも遠慮無くどーんといっちゃってくださいませ!」
 サクラコが同時に飛ばした銅鏡は、別の巨蟹の鋏も受け止めていた。
「わかりました」
 サクラコの銅鏡が鋏を受け止めている間に、腹の下から飛び出したオクが、その鋏を根本から斬り飛ばす。
「前衛の皆さま。盾役はお任せでいす!」
 複製された銅鏡の数は57個。サクラコはそれらをバラバラに操り、幽兵の前の蟹には上から幾つか降り注がせて上から押し潰すように巨蟹を押し倒す。
「成程。サクラコが鍋の蓋持っていたか。色々捗るな」
「って、サクラコのは銅鏡でいす! 鍋ぶたじゃなくて本体でいす!」
 それを見た幽兵が口走った一言に、サクラコが言い返す。
 とは言え、サクラコの銅鏡で巨蟹の攻撃を止められると判ったのは収穫である。

 だが巨蟹は3体で終わりではない。
「砂の中にもまだいるネ」
 電脳ゴーグルのセンサーで地中に巨蟹がまだ潜んでいるのが見えるアヤネが、眉根を寄せてそう告げた。倒れた巨蟹の向こうにも、別の巨蟹の影が見える。
「美味しい蟹を狙い撃ちしたいところだけど、最後に倒れた蟹が本体ってことで端から倒した方が早いかもしれないネ」
「あの……蟹は……焼いていいんですか?」
 アヤネの言葉を聞いた都月が、おずおずと片手を上げた。
 都月は迷っていた。
 攻撃方法――喚ぶ精霊の属性に。
「鍋というからには、茹でる……んですよね? そうすると、鍋が焦げ臭くなるから先に焼かない方がいいですか?」
 その迷いは、都月が鍋料理を未だ知らないから、であろう。
(「先輩達は鍋の達人……その調理の妨げになることはしたくない」)
 だがそれは人としての調理を気にしている事であり――都月が妖狐として、人に近づいている証でもあった。
(「それに野生の狐では分からないスペシャルな鍋技が、あるのかもしれない」)
 川でサワガニを踊り食いしていた頃の都月だったら、気にしなかったであろう事だ。
「そうですね……あの蟹の甲羅は、全て黒っぽいです。という事は、茹でると赤くなる可能性があります」
 胸中でちょっとぐるぐる考えちゃってた都月の疑問に、シホが歌を止めて堪える。
 ミネストローネ作って来たくらいだ。料理は詳しいのだろう。
「甲羅の色が変わらない範囲の熱なら、おそらく大丈夫です。甲羅が少し焦げたくらいなら、香ばしさになりますから」
「成程……なら、火は避けておいて……」
 シホの説明にこくりと頷き、都月は喚ぶべき精霊の属性を決めて精霊の石を握った。
「雷の精霊様、足止めを!」
 精霊の石を掲げた都月が声を上げた直後、高圧電流が雷の様に迸る。
 そしてこの時――巨蟹の周りには、サクラコの銅鏡が飛び交っていた。
 銅と言う金属は、電気を通し易い。
 バヂヂヂヂッ!
 都月の雷の精霊の雷撃は銅鏡を介して拡散し、3体の巨蟹全てに降り注いだ。
 特に冬青とオクに脚を切り落とされていた巨蟹は、氷に覆われていない箇所が出来ていた事でことさら電流がよく効いたようで、泡吹いて固まっていた。
「……やり過ぎて、ないですか? 大丈夫ですか?」
「これはいい感じだと思いますねい。電子レンジっぽくて」
 思わぬ効果に尻尾をぶわっと膨らませてしまっている都月を落ち着かせる様に、サクラコは銅鏡を操り続けながら笑いかける。
「ソヨゴー! 補足ある?」
「ありませーん!!」
 アヤネから話を振られ、麻痺した巨蟹を斬り倒した冬青も振り向きサムズアップ。

「あ」
 別の巨蟹に向かっていたオクが声を上げた。
「これ! このカニ……お腹、白くない、かも」
 告げた言葉は、本体の可能性。
「! オクちゃんナイスでいす!」
 サクラコが咄嗟に飛ばした銅鏡が、巨蟹が纏う氷にぶつかりカンッと弾かれる。
「氷が、硬い……」
 斬りつけたオクも、今までとは違う手応えを感じていた。
 ズザザザザッ!
 本体と思しき巨蟹は、攻撃を受けると砂を掻き分け出した。
 いきなり逃げようと言うのか。他の巨蟹と、行動パターンが違う。
「砂の中には……逃しません」
 それを見た都月の手の中で、精霊の石が再び輝きを放つ。
 直前、今度はサクラコが意図的に銅鏡を遠ざける。放たれた高圧電流は、今度は一筋の雷条となって、氷を纏う巨蟹を打ち据えた。
 バヂッと雷撃が爆ぜ、衝撃で砂をかき分ける足が止まる。
 ――パンッ!
 響く銃声。シホが再び歌いながら向けた聖銃が、十字の銃火を瞬かせた。
 シホが撃ったのは、ペイント弾だ。氷に当たって弾けた紅い塗料は、すぐに熱を奪われ凍りつく。これならば、砂に潜られてもそう簡単には消えまい。
「オク、そこ離れて! 砂の中から来る! ソヨゴも右後ろから!」
 そこに、アヤネが少し緊迫した声を上げる。
 ゴーグルのセンサーには、マーキングを付けられた巨蟹の周りに、新手の巨蟹が現れる前兆の警告が出ていた。
 オクと冬青が動いた直後、2人が立っていた場所に砂の中から鋏が突き出る。
「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動。かの者の自由を奪え」
 鋏を振り下ろしながら出てきた分身と思しき巨蟹に、アヤネが蛇に似た異界の触手を影から放ち、絡みつかせて動きを封じる。
「アヤネさまはハイテクな感じで、やる気がすごいですねい」
「全くだ。便利なものだな」
 感心するサクラコに、頷いたのは、一旦下がってきた幽兵だ。
「俺はどうすればいい? いいアイデアが無い以上出てくる指示に全て従うぞ」
 本体か分身体かの判別。
 巨蟹の行動予想。
 どれも自分には出来ないと、幽兵は指示を求め下がってきていた。
「ユーヘイ、今の内に突っ込んで攻撃! 縛った蟹にうっかり手で触れないでネ」
「いいだろう。私はあなたのお人形☆」
 アヤネの指示に頷く幽兵の言い方は何ともアレだが、自ら他人の指示を求めると言う行為は、その人の性格にもよるが実は容易な事でもない。特に、実力があればあるほど。
「お前らがカニなら俺は蛙だ! ゲコー!」
 蛙と言い出しているのは、粘液を纏っているからだろうか。
 奇声を上げつつ飛び掛かった幽兵が振り下ろした鋼の槍が、氷を砕いて貫き、鋏の付け根に突き刺さった。
「逃しません。アヤネさんご所望のハサミだけは!」
 残像を残しながら死角から潜り込んだ冬青が、花髑髏を振り上げる。漆黒の刃が下から氷と甲羅を斬り裂いて――巨大なハサミを斬り落とした。
 直後、ハサミを失った巨蟹が跳び上がる。
 大跳躍。
 砂に潜るように姿は隠せないが、砂に潜るよりも素早く距離を取れる。
 そして、本体と思しき巨蟹が遥か遠くに着地して――バシャンッ、と何故か水の音が響いた。
 追いかけようとした7人の視線の先で、ぐわんぐわんと、砂がうねり出す。
 そして数分後、別のチームの猟兵の手でその巨蟹は泡を吹いて倒されると、まだ残っていた他の巨蟹が、忽然と姿を消していった。
「ああ、良かった。当たっていたのですね……」
 目印を付けた個体が本体であったと判明し、シホがほっと安堵の息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜田・鳥獣戯画
栴(f00276)、ファン(f14500)と引き続き同行だ!
前回までのあらすじ:
「蟹を食った後なら、煮るなり焼くなり好きにするがいい!」
つまり今回は蟹を食う!!
第一陣が大変なこと(不味ぅぅぅいデバフ)になっている以上本体を判別するのが先決だろうが、分身体も捌かねばならんな!!
ファンが砂から連中を炙り出せたら端から殴っていくゆえ、その間に本体の見極めを頼む。私まで美味しく灼かれないよう注意する!
(二人の連携に留意し、見極めに必要なら攻撃を中断するなどその都度対応したい)
目星がついたらUCにて一斉攻撃といこう!!
甲羅に氷で大層硬くはあろうが、栴の雷で多少は緩和されていることを祈る!
あと、喰う!


生浦・栴
赤狐の(f14500)、団長(f09037)と

腹が白く綺麗なもの、甲羅が柔らかいもの、身がスカスカしたものは不味いそうだが(オーブに記録してきたアンチョコを見)
一々齧って判別…するのか?(団長見る
まあ数が数だ、赤狐のUCで舞い上がってる連中を纏めてUCで灼こう

灼いた後の反応が同じ者は分身体であろうから様子の違う蟹を探すか
あの矢鱈と冷気を放っているのは怪しそうだな

本ボシがついたら分身体は範囲攻撃の衝撃波で適当にいなして
あとは適当にオーラ防御で防いでおくか

タイミングを計り二人に目配せしたら俺から全力魔法を叩き込んでやろう
風を刃に砂上の氷をはぎ取り氷粒と風刃の嵐として本体に叩きつける
次を任せたぞ?


荒・烏鵠
生浦サン(f00276)、ダンチョ(f09037)と
カニオイシイヤッター!!分身体マズインすかヤダー!!
ンで、エーット。砂ン中潜るッてンなら水でも流し込んで持ち上げちゃいましょーかネ。
濡女の姐サン、水出して!
牛鬼のダーンナ!流し込んで巻き込んで、そのまま砂の上まで巻き上げちゃってー!
ココでいったんオレサマの出番はオヤスミ!
生浦サンが焼いてダンチョが殴っ……カジッて?のアト、ドーンと生浦サンが氷ぶつけンジャン?
ソコにオレサマが炎の属性攻撃を全力魔法で風に乗せてゴー!
茹だっちまいなァ!
さーてトドメよろしく、ダーンチョ!



●食べる前に倒そう
 ――不っっっっっっ味ぅぅぅぅぅぅぅぅぅい!!!!
 ――クソ不味いじゃねーかーーー!!!!
 あっちもこっちも巨蟹。そして聞こえる不味いという声。
「なんだか大変なことになっているが、蟹を食うぞ!!」
「カニオイシイ、ヤッター!!」
 あちこちから聞こえる不味いと言う声をさらっと聞き流した桜田・鳥獣戯画の蟹食う宣言に、荒・烏鵠の喝采が続く。
「待て待て、団長も赤狐のも。大半が不味い分身体という事だぞ。真逆、一々齧って判別するのか?」
(「――赤狐のはともかく、団長ならやりかねないが」)
 喉元まで出かかった一言を飲み込んで、生浦・栴が鳥獣戯画と烏鵠に視線を向ける。
 が、そんな栴の心配は杞憂であった。
「いや。さすがに本体を判別するのが先決だろうし、分身体も捌かねばならんな!!」
 戦闘意欲と食欲がイコールの喰い専である鳥獣戯画にとって、敵と食材がイコールのこの戦場は、まあ何と言うか向いているのだ。
「では、本体の見極めの立案を頼む。その間に私は――肉を喰う!!」
 鳥獣戯画がバサッとマントを翻すと、何処からともなく取り出した『生肉』に、ガブリと勢いよく齧りついた。
 それは、どこからどう見ても生肉である。赤々とした身に程よくサシが入っている新鮮な生肉である。
 だが――何処にも売っていないらしい。
 何故生肉売っていないのか。入手した鳥獣戯画自身にもわからない。
 どういう事なのだろう。これは本当に生肉なのだろうか。
 ――まあ少なくとも、鳥獣戯画にとっては『生肉』なのである。
「…………」
「…………」
 砂漠のど真ん中で生肉食い出した鳥獣戯画を、烏鵠と栴は無言で一瞥し、やはり無言のままお互い顔を見合わせて――。
「どーしよっか? 生浦サン、何かある?」
「そうだな。一般に、蟹は腹が白く綺麗なもの、甲羅が柔らかいもの、身がスカスカしたものは不味いそうだ」
 烏鵠の問いに、栴は紅闇いオーブを取り出し、そこに記録しておいた(一般的な)蟹の情報を読み上げる。
 ――オォォォォォ
 そんな怨嗟じみた声のような音が、夜風に流れて消えていった。
「だが数が数だし、砂の中に隠れてられては腹の色は確認のしようがない」
 栴の視線の先では、蒼い電球を放つ別の猟兵の近くで、逃げるように巨蟹が砂の中に潜っていくところだった。
 それでなくても、今はまだ夜である。
 月明かりで充分見えているとは言え、巨蟹の下は月明かりの陰である。色を正確に判別するのは、少々難しい。
 だが――。
「砂ン中潜ッてるンが問題なら、水でも流し込んで持ち上げちゃいましょーかネ」
 そこまで聞いた烏鵠は、口元に笑みを浮かべていた。

●水妖、呪雷、そして肉isパワー
 広げるは仙具、五行神宴扇。
 それを軽く一扇ぎし、烏鵠が自身の周りに僅かな水の気を漂わせる。
「暝神に帰依し奉る。浮石を踏みて木葉を沈め、辿りて来たれ老椿」
 唱えた言葉は十三術式が一つ――牛ノ淵。
 僅かな水の気を呼び水として、烏鵠の後ろに2体の影が現れる。
「濡女の姐サン、水出して!」
 妖怪・濡女は、自在に水を生み出す力を持つ。
 烏鵠が指示を出した直後、砂漠のど真ん中に水の塊が現れた。
 水の塊から、小さな滝の様に絶え間なく流れる水が、砂に染み込み、濡らして、湿らせていく。
「牛鬼のダーンナ! 流し込んで巻き込んで」
 そしてもう一体。妖怪・牛鬼は、自在に水を操る力を持つ。
 ただ深く染み込んでいくだけの筈だった水の流れを牛鬼が変えて、砂を巻き込みながら広げていく。
「そのまま砂の上まで巻き上げちゃってー!」
 烏鵠の指示で、砂漠が畝る。
 湿った砂の中から、巨蟹が砂の上に押し上げられていく。
 流れる水は凍りにくい。
 濡女の水を生む力に牛鬼の水操の力をあわせれば、潟のような状態に変わった砂漠の一角から、巨蟹を水で押し出す事も可能であった。
「ま、こんなもんでオレサマの出番は一旦オヤスミだ」
 そこまでの力を持つ水妖を喚ぶ代償として、烏鵠は他の術を使えない状態である。

「上出来だ、赤狐の」
 故に、ここからは栴が動く。
「こうなれば、纏めて灼くのも造作もない」
 砂の上――見上げる頭上まで水に押し上げられた巨蟹を見上げて、栴が紅闇いオーブを掲げる。
 ――オォォォォォ!
 オーブから上がる怨嗟のような音が強くなり、紅い縛魔の呪が立ち昇る。
『!!』
 攻撃の気配を察した巨蟹が鋏から水を放つが、その全てが物理法則を無視したあさっての方向へと捻じ曲がった。
 烏鵠の牛鬼の水操だ。
「逃ること能わず」
 悠々と栴が告げた直後、呪詛から放たれた紅い雷が地上から空へ向かって迸る。
 【Curse of Thunder】の呪詛の雷が、押し上げられた巨蟹――その全ての腹を撃ち、覆っていた氷を灼き砕く。
 とは言え、その下の腹部には僅かに焦げ目を付けた程度。
「――あれだな」
 だが、栴の目的は氷を砕く事ではない。
 氷を灼かれ砕かれたあとの反応――それを見る為だ。
「あの矢鱈と冷気を放っているのが怪しそうだ。あれだけ氷を纏い直しているし、あの鋏は氷で作った物か? 腹の色も幾らか濃い」
 多くの巨蟹の中から、栴がホンボシと思われる個体を特定し指で示す。良く見れば、氷の一部が紅い塗料に染まってもいた。
 それが他のチームが付けた本体候補の証とは知らなかったが――。
「では、一斉攻撃といこう!!」
 生肉を食べ終えた鳥獣戯画は、栴の言葉に迷わず攻撃の判断を下した。

「私まで美味しく灼いてくれるなよ!」
 言うなり、鳥獣戯画が駆け出す。
 栴が本体と目星を付けた個体の真下へ向かって。
「蟹を食った後なら、煮るなり焼くなり好きにするがいいとは言ったが――まだ蟹を食ってないからな!」
「ああ、判った。灼かないでおいてやる」
 鳥獣戯画が残した声に頷いて、栴が魔導書を構える。
 古き言語で書かれた、その文言ひとつ一つが力を持つとされる書の頁がひとりでに捲れ出し、風を空へと吹き上げた。
 栴の風の術は、渦を巻きながら砂の上に残った氷を削り取り、氷粒と風刃の嵐となって巨蟹が纏い直そうとしていた氷を砕いていく。
 その端っこが頭上を掠めた鳥獣戯画が、走りながらなにか言いたそうに振り向くが、栴も黙って小さな笑みを浮かべているだけだった。

 ――灼いてくれるなと!
 ――ああ、だから風と氷の術だ。

「生浦サン! 風、そのまま頼むぜ!」
 2人のそんな無言のやり取りをよそに、水妖達を戻した烏鵠が五行神宴扇を広げる。
 放つ火の気は、先の釣りに放ったものとはまるで違う。
「茹だっちまいなァ!」
 火と言うよりは炎の気を風に合わせて、烏鵠が灼熱の熱風と化す。
 その熱が、巨蟹が纏う氷を完全に溶かして、放つ冷気も抑え込んでいた。
「さーてトドメよろしく、ダーンチョ!」
「うむ、任せろ!」
 促す烏鵠に自信たっぷりに頷いて、鳥獣戯画が拳を固める。
「貴様は只今より私の肉だ」
 そして、打ち上げられた巨蟹を真下から見上げて、鳥獣戯画が跳び上がった。
「私以外への供給は禁じられる!!」
『!』
 食われてたまるかとでも言うように、巨蟹が氷の鋏を振るう。
「中々じゃないか」
 だが、その鋏は――鳥獣戯画が翳した片腕に、あっさりと砕かれていた。
 弱肉狂喰――生肉を喰らい、体の生肉を強化する業。
 筋肉もまた、生肉。鳥獣戯画の全身には、力が漲っている。
「氷と甲羅が重なっていれば大層硬くもあっただろうが、栴とファンのおかげで、今や貴様は丸裸」
 生肉を食って強化された生肉が強化された鳥獣戯画の拳。その一打が砲弾の如き衝撃で巨蟹を打ち据え、ぐるんと裏返す。
「大人しく――食われるが良い!!」
 鳥獣戯画も空中でぐるんと回転し――振り下ろした踵の一撃が、巨蟹の甲羅を叩いてその巨体を砂漠に叩き落とした。
『…………』
 砂漠に叩きつけられた巨蟹の口から、ブクブクと泡が吹き出していた。
 周りを見渡せば、未だ動いていた巨蟹が次々と消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『モンスターを平らげろ!』

POW   :    素材の味を楽しむシンプルな調理!

SPD   :    味付けや下ごしらえに工夫を凝らして食べやすく!

WIZ   :    他の食材と組み合わせればもっと美味しくできるかも!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●霜の砂漠の集落にて
 七色に輝く『ふくれアンコくん』を大量に釣り上げ、大量の分身体を生む巨蟹『真・霜将軍』との戦いから、一夜が明けた。
 霜の砂漠を覆っていた氷は、冷気の源であった巨蟹が消えた事で、夜明けと共に急速に溶け出している。
「この分なら、明日には砂漠を渡られるようになるだろうねぇ……本当に、良くやってくれたよ。大した持て成しは出来ぬが、今夜宴にするからね。是非残っとくれ」
 霜の砂漠の渡守。
 その長である老婆は、嗄れ声で猟兵達に礼を述べる。
「もうすぐ、ワシらは年に一度の解散の時期だったからねぇ……砂漠を通れなけりゃ、どうしたもんかと困っていたところさ」
 年に一度の解散?
 何の事かと首を傾げる猟兵達に、老婆は話を続けた。

「新しい年に変わる前後の凡そ一月の間。ワシらは皆揃ってこの砂漠を離れて、各々好きなところで暮らすのさ」
 砂漠を離れて向かう先は様々だ。
 何らかの事情で砂漠を離れて暮らす家族の元。
 砂漠の外から縁を繋いだ家族の――謂わば義理の家族の元。
 或いは、仕事で縁を得た友人。
 はたまた、新たな縁を求め気ままに旅に出る者も。
「いつの頃からだったのかねぇ。砂漠の外と縁を持つ者が増えてねぇ」
 縁が増えれば、たまには会いたくなるものだ。
 それでなくても、砂漠で生きると言うのは、決して楽な事ではない。砂漠を渡る術に長け、渡守として生計を立てる者達でも例外ではなかった。
「船乗りだって、帰れる港があるから船に乗る――と良く言うだろう?」
 だから、渡守達も年に一度、砂漠を離れる風習が生まれたのだと言う。

「でもって、離れる前には宴を開くのさ」」
 砂漠での1年を無事に過ごせたお祝いと。
 年が明けたらまた会おうと言う誓いを兼ねて。
「今宵、主らの感謝の宴を開く。ワシらのそれも便乗させて貰おうと思う。ああ、勿論、巨蟹も七色の魚も、獲った主らのもんじゃ」
 どうせ開くなら、宴は盛大な方が良い。
「それに調理の場も道具も、必要なら手伝いの人手も貸せるしねぇ。――そうそう。魔物じゃない砂漠の魚の蓄えもあるよ」
 砂漠を離れる際、彼らは蓄えの殆どを食べて飲んでしまうのだという。
 持って出られる荷物も限られているからだ。
「それじゃあ、また夜にでも。何かあったら、この老婆でもそこらの者でも、何でも言っておくれ」

 霜の砂漠の中の街。
 砂漠の街とか、砂漠の集落とか、砂漠の里とか、決まった名前を持たないそこは、閉ざされていた道が開けた事と、今宵の宴の気配に――朝から湧いていた。

====================
3章です。
『真・霜将軍』と『ふくれアンコくん』を美味しく調理して、頂きましょう。
形式としては、霜の砂漠の民による、感謝の宴、と言う体になります。

『真・霜将軍』はサイズを意図的にサイズを明記していません。
が、5mより小さいということはないです。
『ふくれアンコくん』は人数分以上、釣れています。
要するに、カニとアンコウ、全員分以上あります! という事です。
(なお鋏については2章の結果で、ほんのり優先権あります)

モンスター食はちょっと、という方は、砂漠の民提供の砂漠の魚をどうぞ。
どんなのがいるか? 砂漠ウナギとか適当言ってOKです! 何故ならファンタジー!

というわけで、食材たっぷりあるので、ここからの参加も勿論OKです。
なお、お声掛け頂いた場合のみ、その方のパートにルシルが登場します。

描写は調理と食事中心の予定。
フラグメントの例は調理寄りですが、プレイングはどちらかに寄せるのでも両方書いてみるのでも。いつも通り、自由にお好きにどうぞ。
期間については、別途旅団とTwitterで告知しますので、お手数ですがそちらをご確認下さい。とりあえず、もう送って頂いて大丈夫です。
====================
花屋敷・幽兵
【KOR】 なぜだろう、いまおれのむねに…あついものが…こみあげている…! 冬青先生の愛のエプロンか…ま、やばかったらシホとアヤネが止めてくれるだろう(信用していない) 火が通っていれば大抵何とかなる。都月、君が頼りだ。最大火力で頼む。 所で鍋は何味なんだ?俺味噌がいいと思うが…まあ調理は不得手なので何でも美味しく頂くぜ! うさぎ団は好き嫌いをしないんだ。なぁサクラコ?それ鍋蓋じゃなくて皿だったのか。 食べれない人がいない様にこっそり取っておく俺は粋なマスクメン。 男はタフでなければいけない、優しくなければ生きる資格もない(決め顔) どうかねオクさん。カッコいいだろう? 俺は少しだけでいい。


シホ・エーデルワイス
【KOR】アドリブ歓迎

事前に各種野菜や焼き豆腐に調味料を用意
冬青さんから調理方法などの指示を受けてお手伝い

みそ味ですか?
冬青さん
鮟鱇鍋でみそ仕立てはできるでしょうか?

お!お嫁さんだなんてそんな…でもありがとうございます
(ちょっと恐縮して照れる)

都月さんの狐火
火おこしの手間が省けて便利ですね

オクさん
アヤネさん
味見してみますか?

サクラコさん
配膳に鏡を貸して頂きありがとうです

蟹は塩、醤油、三杯酢等に付けて食べる他
バター焼きやもちろん鍋にしても美味しいそうです

他チームの猟兵さん達も鋏が食べられるように気配り
でも分量を間違えて私の分が無くなって…
幽兵さんありがとうです
皆で分け合って食べると美味しいです


木常野・都月
【KOR】

鍋アンコウ鍋!蟹鍋! 尻尾が止まらない!

早く鍋食べたい。

アンコウのヌトヌトはどうするんだろう…って城島先輩、吊るしながら捌くんですか!?

おお…見事だ… よく刃が入りますね…

俺も何か手伝いを… そうだ、俺、火出せます!
なんなら蟹も焼きますよ!

というわけで、UC【狐火】を使用、指示された火加減で、火元を見てる当番やります!

花屋敷さん!
承知!業火いきます!

グツグツしてる… 香りが…凄くイイ… きっとこれは、凄くイイ鍋料理だ…

つまみ食いしたらバレるかな…ダメかな…(そっと手を引っ込める)

出来上がったら、食べたい、早く、鍋、蟹、アンコウぅ… それでは、いただきます!


アヤネ・ラグランジェ
【KOR】
鋏はいただいた!
食べたかったと言うより狩りの本能みたいな
都月さんのしっぽがすごく気になる

ん?猫型オブリビオン?
(先日食べさせられたつちねこは頭部だけ猫だし
カウントに入れなくていい?
でも言わぬが花だネ)
ソヨゴはオブリビオン料理のスペシャリストだよ
と爽やかに返し
ユーヘイは心配無用だよ

吊るし切り
グロいけどソヨゴはカッコいい!

カニ一つとっても色々な味付けがある物だね?とシホさんに感心しつつ
よし全部試させてもらおう!
ああ、やっぱり蟹は鋏だネ!
自分で狩った生き物は格別に旨い

アンコウ鍋はなかなか味が濃いネ
魚のスープとは思えない
ソヨゴがもじもじしててかわいい
とても美味しいネ
良い笑顔でいただきます


城島・冬青
【KOR】

吊るし切りでアンコウを捌く
大丈夫
以前も調理したし吊るし切りはマスターしてます

シホさんは手際がいいですね
スープも美味しかったし
良いお嫁さんになれますよ

えーと
オブリビオンは何度か調理した事があるけど
魚とかイカ等の普通に食べられそうな物でしたね
中には何でも調理して食べる猛者もいるようですが私はちょっと…
てか可愛い犬や猫型の敵を食べるとか…絶許!(魚が一瞬で細切れに)
?アヤネさん
どうしました?

はい
お鍋の出来上がり
あん肝も沢山ありますよ

鋏は欲しい人でどうぞ
アヤネさん食べたかったんでしょう
あの…味の方はどうですかね?(もじもじ)
味噌味にしたんですけど…
褒めてもらえたら凄く…嬉しいですね

アドリブ◎


鏡彌・サクラコ
【KOR】
オブリビオン料理もジビエって言うんですかねい?

アヤネさまは鋏に執念燃やしてましたものね

ふつうに美味しそうで楽しみでいす
サクラコは食べる人なので
みなさまが作っているのをオクちゃんと一緒に眺めながら応援しますよ

シホさまは細やかなお気遣いありがとうございます
都月さまの火力すごい
サクラコもちょっとつまみ食いしちゃおうかな?
幽兵さまがかわいい?オクちゃんがそう言うならそうなのかしら??

出来上がったらUC発動
銅鏡の上にお皿を置いて
配膳のお手伝いをいたしましょう
さあ召し上がれ!

カニの食べ方っていろいろあるのですねい?
すごいいろいろ準備していただいてありがとうでいす
わあ、良い香り
いただきまーす!


日隠・オク
【KOR】で参加

冬青さんの捌きが鮮やかです(みとれ
シホさんも、はい手際がいいです(みとれ

味噌鍋は食べたことがないけど美味しそうです
火がつくとお鍋感がとてもしてきますね
最近は幽兵さんがか…かわいく見えてきました

いろんな蟹の食べ方があるみたいで、どれもおいしそう、食べたいです……

お鍋ができたらおいしくいただきたいです!
とても嬉し気



●Knights of Rabbitの料理事情
「鋏はいただいた!」
 ててーん!
 アヤネ・ラグランジェが頭上に掲げた巨蟹の鋏に、【KOR】の面々から拍手が上がる。
「でもこれ、どう食べようか? 大き過ぎて、鍋に入らないよネ?」
 掲げてみたものの、アヤネは思わず首を傾げていた。
「切り分けても良いでしょうか?」
 そこに、シホ・エーデルワイスが提案する。
「蟹はお鍋以外にも、色々な食べ方が出来ます。蟹は塩、醤油、三杯酢等に付けて食べる他、バター焼きにしても美味しいそうで……」
「カニ一つとっても色々な味付けがある物だね?」
「カニの食べ方っていろいろあるのですねい?」
 シホが上げた蟹の調理法の数に、アヤネと鏡彌・サクラコが感心したように頷く。
「どれもおいしそう、食べたいです……」
 聞いていた日隠・オクが、おずおずと手を上げる。
「と言うご意見もありますし。私も折角だから色々作ってみたくて」
「うん。僕も聞いたら全部試したくなった。それで行こう!」
 美味しく食べられるなら、それに越したことはない。
 アヤネは蟹の鋏を、シホに委ねる事にした。

「アヤネさまは、鋏に執念燃やしてましたものね」
「執念ネ――食べたかったと言うより、狩りの本能みたいな」
 サクラコの言葉に、昨夜の自分を思い出してアヤネが少し首を撚る。
「本能とな。やはりアヤネはクマに近かったか」
「おい、ユーヘイ。砂に埋めるぞ」
 思い出さないで良い事を思い出して口走った花屋敷・幽兵を黙らせようと、アヤネが袖から覗かせた触手を見せつける。
(「都月さんのしっぽもすごく気になるんだけど……今は言わない方がいいネ」)
 その実、アヤネは胸中でそんな事を呟いていたりした。
 そんな気にされていた木常野・都月の尻尾がどうなっているのと言えば、期待に膨らんで左右に動くのが止まらないでいた。
「え? 城島先輩、吊るしながら捌くんですか!?」
「吊るし切りって言うんですけど。アンコウってヌメヌメしてて、まな板に置いても、滑って上手く切れないですから」
 ぷらーんと宙吊りになったアンコウに目を丸くする都月に、エプロン姿の城島・冬青が脇差『不死蝶』を抜きながら返す。
「俺も、アンコウのヌトヌトはどうするんだろうって気になってて」
「だから吊るして――あ、サクラコさん。もうちょっとだけ下げてください」
 都月の疑問に返しながら、冬青がサクラコに呼びかける。
「このくらいですかねい?」
「OKでーす!」
 吊っているのは針と糸だが、糸の先はサクラコの本体の分身である銅鏡だった。
 サクラコ自身は、食べる専門に周るつもりでいたのだが、吊るす場所に苦慮する様子を見て、こうなった。
「サクラコは、オクちゃんと一緒に眺めて応援してるつもりだったのですがねい」
「サクラコさん、頑張って」
 思わずぼやくサクラコを、オクが応援する。
 着々と進むアンコウを捌く準備。
 その後ろでは、シホが両手を組んで祈りを捧げている。

「私の慈愛をここに、私の献身をここに、私の祈りをここに、主に感謝し捧げます」

 【供宴】もてなし捧げるもの。
 昨夜、砂中のアンコウを誘き寄せる為の歌をより響かせる為に捧げた祈りだが、この【供宴】が高めるものは、シホの歌唱力だけではない。
「冬青さん。準備できました。いつでもいけます」
「それじゃあ、吊るし切り。始めます!」
 背中に聞こえたシホの声に頷いて、冬青は『不死蝶』をアンコウへと向けた。
 先ずヒレを落とし、口元から皮と身の間に刃を入れて、皮を剥いでいく。
 皮を剥いだら刃を突き立てて、腹を掻っ捌く。
「シホさん。これがアン肝です」
「血抜きですね」
 薄いピンク色の肝を冬青から受け取ると、シホは軽く切れ込みを入れて水を張った容器に漬けて、崩さないようにそっと揉み始めた。
 肝の中に溜まった血を抜いているのだ。これをするとしないとでは、生臭さが全然違うのだという。
 赤い筋の様な血の跡が消えたら、水から上げて塩を振っておく。
 シホがアンコウの肝の下処理を終える頃には、冬青がアンコウを身をバラす所まで終わっていた。
 内臓を取った後は、骨に沿って身を落としていくだけ。
 とは言え、吊るした魚をきれいに捌くのは、言うほど簡単な事ではない。
「おお……見事だ……よく刃が入りますね……」
「ええ。冬青さんのさばき方、鮮やかです」
 冬青は吊るし切りも慣れた様子で、包丁代わりの脇差の運びに迷いがない。傍で見ていた都月とオクが、その手際に感心する程だ。
 都月の黒い尻尾とオクの縞々の尻尾が、興味津々と膨らんで左右に揺れている。
「シホさーん。アンコウの身も捌けたので、湯引きお願いします」
「お任せ下さい」
 骨から切り落とされたアンコウの身を冬青から受け取ると、シホはそれを湯を沸かした鍋に入れて、数十秒で上げては冷水で締めていく。
 他の猟兵達も行っていたが、アンコウに湯引きは欠かせない。
 ――と言うのは、全て冬青から聞いたばかりなのだが、それでシホがついていけているのが【供宴】の効果であった。高めるものは、料理の技能も含まれていた。
「よし。サクラコさん、次のアンコウお願いします!」
「任せるでいす」
 切った後のことはシホに任せても大丈夫だと確信して、冬青はサクラコが入れ替えた新しいアンコウを捌きにかかった。

●食材の定義
「何故だろう」
 吊るし切りを遠巻きに眺め、幽兵がポツリと呟く。
「いまおれのむねに……あついものが……こみあげている……!」
 幽兵の片手が、かきむしる様に胸元の外套を握りしめる。
「このあつさは……冬青先生の愛のエプロンに当てられた? いや……」
 そうではないと、幽兵がかぶりを振って。
「……グロくない? あの捌き方」
 意外と冷静な声が、幽兵のマスクの奥から発せられた。
「うん。グロいっちゃグロいけど、ソヨゴはカッコいい!」
 アヤネの声が聞こえたのか、冬青の解体速度が当者比約1.2倍に上がる。
「まあ、これジビエみたいなものですしねい」
 捌き終わったアンコウと未解体のアンコウを入れ替えながら、サクラコがぽつり。
「オブリビオン料理もジビエって言うんですかねい?」
「ジビエと言うのは確か、食材として狩られた獣、と言うような意味だネ。だから、オブリビオンもジビエで良いんじゃないかな?」
 サクラコがふと思いついた疑問に、アヤネが記憶を探りながら返す。
「あああ、そうだ!」
 2人のそのやり取りを聞いた幽兵が、思わず拳を握って声を上げていた。
「すっかり忘れていたが、あれもオブリビオンだよな? 本当に食えるのか?」
「心配無用だよ、ユーヘイ」
 オブリビオンを食材とすることに不安がありそうな幽兵に、アヤネが爽やかに笑って告げる。
「ソヨゴはオブリビオン料理のスペシャリストだよ」
「ス、スペシャリストだなんて、そんな凄くないですよ。ただオブリビオンは何度か調理した事があるだけです」
 アヤネの声を聞き逃さず、冬青が振り向かずに声を上げる。
「え? いや、そもそも調理するものか?」
「魚とかイカ等の普通に食べられそうな物でしたね」
 驚く幽兵に、冬青がこれまで調理した経験を思い浮かべて返す。
「魚なら、サクラコとオクちゃんもありますねい」
「あ、いわしですね。もうちょっとで串焼きにできたのに」
「なん……だと……」
 それを聞いたサクラコとオクがいつかの鰯雲を思い出し、幽兵を更に驚かせる。
「まあ、上には上と言いますか。中には何でも調理して食べる猛者もいるようです」
 告げた言葉で幽兵が固まったのに気づかず、冬青が言葉を続ける。
「でも私はちょっと……てか可愛い犬や猫型の敵を食べるとか……絶許!」
 自分で口にした言葉で怒りを燃やしてしまった冬青の手がちょっと滑って、その時捌いていたアンコウの身が一瞬で細切れになっていた。
「「「おおお~!」」」
 その剣捌きに、サクラコとオクと都月から感嘆の声が上がる。
「んっ? 猫型オブリビオン?」
 ただ1人、アヤネだけ、一瞬変な声を上げていた。
「? アヤネさん、どうしました?」
「いや。何でもないよ。ソヨゴは、アンコウに専念して」
 これまた聞き逃さなかった冬青に、アヤネは手を振って返す。
(「先日食べさせられたつちねこは……猫なのは頭部だけだし、カウントに入れなくていいよネ?」)
 内心、穏やかではなかったけれど。
(「ま、言わぬが花だネ」)
 あれの肉とマヨネーズが意外と合ってて美味しかったなんて事は心の奥底にしまっておこうと、アヤネは密かに決意を固めた。

●イイお鍋の予感
 丁寧に捌かれ、しっかり湯引きされたアンコウの身。
 血抜きし、余分な水分も抜かれたアン肝。
 そして、切り分けられた蟹の鋏。
 そこにシホが準備した、いい感じに切り分けられた白菜やネギと言った野菜に、焼き豆腐が加わる。
「鍋、ですね! アンコウ鍋! 蟹鍋!」
 鍋の予感しかしない光景に、都月の尻尾がますます期待に膨らんでいた。
「俺も何か手伝いを……そうだ! 俺、火出せます!」
 手伝いを申し出た都月が『燃えてしまえ』と短く告げる。
 するとその周りに、60以上の狐火が一瞬で作り出された。
「個別に火力調節が出来ます。なんなら蟹も焼きますよ!」
「まあ。火おこしの手間が省けて便利ですね。確かに、蟹も焼けそうです」
 都月の炎を見たシホが、その便利さに目を輝かせた。
「火が付くと、お鍋感がとてもして来ますね」
 こちらは狐火にお鍋が始まる予感を感じて、オクは目を瞬かせる。
「それだ」
 そんな2人の後ろで、幽兵が手をポンと打っていた。
「都月、君が頼りだ。最大火力で頼む」
「承知! 業火いきます!」
「そうだ。火が通っていれば大抵何とかな――うわ、何をする!?」
 言われるままに狐火の火力を一気に高めようと都月の前で、幽兵が触手に縛られ銅鏡に膝をカクンと倒される。
「だから心配ないって言ってるのに」
「都月さま、幽兵さまの事は気になさらずでいす」
 アヤネとサクラコが、揃って溜息を吐いていた。
「ええと……」
「弱火でお願いします」
「わかりました!」
 結局どうすれば、と固まった都月に冬青が火力の指示を出す。
「ところで鍋は何味なんだ? 俺味噌がいいと思うが……」
 鍋の下に入る狐火を転がされたまま眺め、幽兵が口を開く。
「みそ味ですか? アンコウ鍋で、みそ仕立ては出来るのでしょうか……?」
「出来ますよ。丁度、味噌味にしようと思っていたんです」
 首を傾げるシホの前で、冬青がすり潰したアン肝を鍋で炒めながら伸ばしていく。アン肝は上手く使えば、鍋の出汁にも使えるのだ。
 ジュウジュウとバターが焦げる様な音が鍋から鳴り出したところで、アン肝と1:1くらいの味噌を入れ、アンコウの骨も使った出汁で伸ばしていく。
 後はアンコウの身、蒸したアン肝、カニの鋏、野菜や焼き豆腐と具材を入れて、コトコト煮込むだけ。
「グツグツしてる……香りが……凄くイイ……きっとこれは、凄くイイ鍋料理だ」
 鍋から漂い出した香りに、都月が鼻をすんと鳴らす。
「つまみ食いしたらバレるかな……ダメかな……」
「サクラコも、ちょっとつまみ食いしたくなってきたですねい」
 狐耳をぴくぴく、箸を伸ばしてしまおうかどうしようかと視線と手を彷徨わせる都月に釣られる様に、サクラコも視線が鍋に釘付けになりかかっていた。
「つまみ食いなどされなくても……味見してみますか? オクさんも、アヤネさんも如何でしょう?」
 待ちきれない様子に苦笑しつつ、シホは味見用の小皿を手に取った。

●そして、宴の時
 日が暮れて、砂漠に再び夜が来る。
 丸ごと焼かれた巨蟹の胴体を中心に、思い思いの場所に猟兵達が集まっていた。
 その一角。車座になった【KOR】の面々の中心には、大きな鍋。更に各自の前に、様々な香りを漂わせるカニが、サクラコの銅鏡に乗って運ばれて来る。
「サクラコさん。配膳に鏡を貸して頂きありがとうです」
「寧ろこっちが、いろいろ準備していただいてありがとうでいす」
 鍋とは別に、蒸したり焼いたり。色んな味付け、調理法でシホが作ったカニは、気がついたら結構な種類になっていた。
「なぁサクラコ? それ鍋蓋じゃなくて皿だったのか」
「幽兵さまは、後で覚えてやがれでいす」
 どうしても銅鏡を銅鏡と扱わない幽兵に、サクラコはいつかのように気軽に銅鏡をぶつけたくなった衝動をぐっと押さえる。
 今日は宴だ。それに――。
「鍋、蟹、アンコウぅ……食べたい、早く」
 都月がもう、我慢の限界だった。
「良い香りですし、いただきましょう!」
「いただきます!」
 サクラコの合図で、都月が真っ先にカニに齧り付いた。もぐもぐと咀嚼し、次に鍋を取った呑水を取って、はふはふとアンコウの身を口に入れる。
「……♪」
 鍋の熱さに無言になった都月だったが、味に満足しているのは尻尾で明らかだった。
(「いろんなカニの食べ方、合ったんですね。どれもおいしいです」)
(「オクちゃん、嬉しそうですねい」)
 オクも翼と尾が動いているのを横目で確かめながら、サクラコもアンコウ鍋の中のカニの身を口に放り込む。
 オクはあまり表情に出る方ではないけれど、今回ばかりは嬉し気であった。
 肉の様な、カニとは思えない厚みの身は、口の中でホロリと崩れて旨味が広がる。
 味付けと調理方法によって、甘みが強かったり香ばしくなっていたりと、カニだけでも様々な味わいだった。
「ああ、やっぱり蟹は鋏だネ! 自分で狩った生き物は格別に旨い」
 鋏の部分を持って齧りながら、アヤネも笑みを浮かべていた。
「そして、アンコウ鍋は、と……」
 アヤネの手がカニの鋏を置いて呑水を取った瞬間、隣の冬青の背筋がぴんと伸びる。
「あの……味の方はどうですかね? 味噌味にしたんですけど……」
 かと思えば、一転、冬青はもじもじし出してアヤネの横顔をじっと見つめていた。
(「もじもじするソヨゴ、かわいいなぁ、もう」)
 内心デレつつも口には出さず(と言うか口の中がいっぱいで喋れなかったのだが)、アヤネはゆっくりと鍋を味わって――。
「魚のスープとは思えない濃厚な味だネ。うん、とても美味しい」
「やったー! アヤネさんに褒められたー!」
 アヤネが向けた笑顔と賛辞に、冬青がバンザイしそうな勢いで喜びを露わにする。
「良かったですね、冬青さん」
 その喜び様に、手伝ったシホも釣られる様に微笑みを浮かべる。
「シホさんのお陰でもあります。下拵えも手際が良かったから捌く方に専念出来たし」
「いえ、冬青さんの指示が的確だったからですよ」
「ううん。シホさんの手際、良かったです。みとれてました」
 冬青の賛辞に頭を振ったシホに、傍で見ていた調理中を思い出してオクも口を開く。
「スープも美味しかったし、シホさん、良いお嫁さんになれますよ」
「お! お嫁さんだなんてそんな……でもありがとうございます」
 冬青が更に続けた賛辞の中の『お嫁さん』の一言に、恐縮するやら気恥ずかしいやら嬉しいやらで、シホの頬が熱くなる。
「……」
 と、そこに幽兵が無言でカニの乗った皿を差し出した。
「幽兵さん……?」
「カニ、食べてなかっただろう?」
 キョトンとしたシホが、その一言で少し驚き、次に苦笑を浮かべる。
「え、ええ。その、他のグループの方もカニの鋏食べられるようにと思って……分量を間違えて私の分が無くなってしまい……」
「ほら。隠しても誰かが気づくと言った通りになったでいす」
 銅鏡で配膳を手伝った時点で、サクラコも知ってはいたのだ。シホに頼まれて誤魔化していたけれど。それでも、気づく者はいた。
「食べられない人がいない様にするべきだろう。俺も少しは食べたからそれでいい」
「幽兵さん、ありがとうです」
 予想外の好意に、シホが声の平静を意識して礼を述べ、カニを口に入れ――。
「皆で分け合って食べると美味しいですね」
 声が少し震えそうになるのを堪えて、シホは嬉しそうな微笑みを浮かべた。

 ここで終わっていれば、とてもいい話なのだが。

「うむ。皆で分け合うのは良い事だ。そしてこっそり取っておく俺は粋なマスクメン」
 急にスクっと立った幽兵が、夜空の月を見上げて自画自賛していた。
「あ、自分で言っちゃうんですね」
「折角、本当に粋だったのに……」
 自分で言い出した幽兵に、都月と冬青が小さく溜息を溢す。
「結局、カニもアンコウも食べたんだネ?」
「普通に美味かった。まあ調理は不得手なのでな。何でも美味しく頂くぜ!」
 アヤネの指摘にも、幽兵はしれっと返す。
「うさぎ団は好き嫌いをしないんだ。それに男はタフでなければいけない、優しくなければ生きる資格もない」
 この時、幽兵は所謂決め顔をしていたのだが、見えていなかった。決め顔するなら、なるべくマスク取ってからにして頂きたい。
「どうかねオクさん。カッコいいだろう?」
「何だか段々、幽兵さんが、か……かわいく見えてきました」
 今回だけで3度、このパターンで話を振られたからだろうか。オクは見えない決め顔を決める幽兵に、妙な慣れと感覚が生まれたようだ。
「幽兵さまが、かわいい? オクちゃんがそう言うならそうなのかしら??」
 流石にサクラコも、オクのその評価には首を大きく傾げる。
 そんな仲間達の様子に、シホはくすくすと肩を震わせて。
「皆で分け合って食べると美味しいですね」
 珍しく、はっきりと笑顔を見せて、そう告げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)】と
エプロン姿でうさみと二人、街の厨房をお借りして料理をしよう
しかし此の光景、何やら既視感が…?

成程、獲った蟹と鮟鱇を鍋にするのか
身体も内から温まるし良いことずくめだな
今回もうさみ先生の助手として、指示に従いながら頑張ろう
デビみっち達も来てくれたか、今度こそまっとうな報酬が
与えられる故に少しだけ頑張って欲しいと声を掛け

良い感じに完成した鍋は、皆で仲良く分け合って…
ま、待て!うさみやデビみっちが一気に持って行き過ぎだ!
俺の分は!?なあ、共に頑張った俺の分は!?

ああもう、うさみよ!口の周りがあん肝でベタベタだぞ!
口を出せ!(ハンカチを準備しながら)拭いてやる!


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
ニコと!うさみの!3分クッキング~!

いやー寒いですねー!
こんな日は温かい料理でぬくもりたいですね!
なので本日のメニューはこちらの
新鮮な蟹とアンコウを沢山使ったお鍋!

蟹とアンコウと野菜類を食べやすいサイズに切る!
アンコウは先にサッと加熱しておく!
ニコだけじゃ大変だろうから
【デビみっち】達にも手伝ってもらう!
…眉をひそめるなってお前ら!
今回は本当に美味しい鍋を食わせてやんよ!
土鍋に水・醤油・他調味料を入れ沸騰したら
切った材料をぶち込んでグツグツ!

皆で鍋を囲んで頂きます!
実はアンコウ食べるの初めて!うめぇうめぇ!
蟹もプリプリでたまらん!
味噌も肝も全部食い尽くすぜー!



●3分で終わるわけがないクッキング~withデビみっち
「ニコと!」
「うさみの!」
「「3分クッキング~!」」
 そんな声を重ねたニコ・ベルクシュタインと榎・うさみっちが、ぱちんと掌を合わせて打ち鳴らした。
「ニコもだいぶ慣れてきたじゃねーか」
「うさみに鍛えられたからな」
 今回は、テイク2の必要は無さそうだ。
「いやー寒いですねー!」
(「しかし此の光景、何やら既視感を感じるような……」)
 砂漠を背景に冬の挨拶から入るうさみっちを眺め、ニコが胸中で呟く。
「こんな日は温かい料理でぬくもりたいですね! なので本日のメニューはこちらの『新鮮な蟹とアンコウ』を沢山使ったお鍋!」
 しかし、ニコが感じた既視感に思い至るより早く、うさみっちが料理番組のノリでどんどん話を進めていた。
「成程、蟹と鮟鱇を一緒に鍋にするんですね。鍋なら身体も内から温まるし良いこと尽くめですね、うさみ先生」
 ニコも気を取り直して、アシスタント役として話に乗っていく。
「なおアンコウはここまで捌くのに『吊るし切り』って方法があるんだが、それは動画を見ろ! 以上!」
 いきなり説明ぶん投げたうさみっちに、ニコが思わず眉間を抑える。
「うさみ先生。そこ、大事なところでは」
「吊るし切りやってたら、3分じゃ終わらねーからな!」
 時間のかかるその行程は、他の猟兵が頑張ってくれました。
「気を取り直して材料の処理だ。と言っても簡単。食べやすいサイズに切る!」
 またしても一行で終わる、うさみっちの解説。
 まあ、間違ってはいないのだが。
「うさみ。もう少し詳しい説明を――」
「おう。アンコウは鍋に入れる前に、先にサッと加熱しておく!」
 ニコに促されてうさみっちが追加した説明は、霜降りと呼ばれる行程。
 さっと湯がいて、冷水で締める。
 魚の臭みを取るのに加えて、アンコウの場合はぬめりを落とす効果もある。これをやっておかないとアクが強く、鍋がブクブクになってしまうのだ。
「これは大切な行程ですね。しかし、1人で材料を切って湯がいて、となると中々に忙しいですよ」
 包丁片手に、ニコがうさみっちに視線を送る。
 何故かエプロンをしているのは、ニコ1人だけだった。
「そう言うと思って、喚んでおいたぜ! 極悪軍団デビみっち、カモン!」
 うさみっちが指を鳴らすと、デビみっち58体、再登場。
『今度はなんだーー!!!』
『二日連勤じゃねーか!!! 働かせすぎだぞー!!!』
『ざんぎょー代はたっぷり弾んで貰うぜーーー!!!』
 出てくるなり、眉を潜めて言いたい放題なデビみっち達。
「デビみっち達も来てくれたか。頼もしい……のか?」
 相変わらずのブラック喧しさに、ニコの眉間に皺が寄る。
「眉をひそめるなってお前ら! 今回は本当に美味しい鍋を食わせてやんよ! だからニコを手伝え!」
「今度こそまっとうな報酬になると、俺も保証しよう。故に少しだけ頑張って欲しい」
『『『本当の本当に本当だろうなー????』』』
 疑うような事を言いながら、うさみっちとニコの言葉を信じたデビみっち達は、三叉槍を器用に使って材料を切り分け始めた。
 お陰で、ニコはアンコウの下処理に専念出来る。
「……あの多秘邱の時を思い出すな」
 そして、デビみっち達の賑やかさが、ニコに懐かしさの様なものを感じさせていた。
 数ヶ月前の別の世界。
 あの時も、此の様に電気を使った調理器具などない調理場で。
 あの時は、やきゅみっち達が手伝い役だった。
(「他にも、今年は色々な世界でうさみと料理をしてきたな」)
 それが、既視感の正体だったのだろう。
 別々に料理を作った事もあれば、同じものを作って食べた事もあった。同じ年の事だけれど、懐かしさとしか言いようがないものを感じながら、ニコはアンコウの切り身を沸騰した鍋に潜らせ――。
『おい、槍を強く入れ過ぎだーーー』
『ちゃんと押さえてね―のが悪いだろうがー!』
『そこのお前! サボってんじゃねーーー!』
『あー? 手は足りてんだろうがーーー!!!』
 デビみっち達の喧しさが、物思いに耽るのを許さない。
『ケケケ、つまみ食いしてやるぜっ!?』
「――歯を食い縛れ」
「…………デビみっちは、料理に向いてねーかもな」
 つまみ食いを企んだデビみっちが、ニコが無言の内に取り出したハエ叩き的な道具で叩き落とされるのを半眼で眺めて、うさみっちは小さく溜息を吐いていた。


●悪魔との晩餐
 下処理が終わったら、あとはお鍋は煮込むだけだ。
 水を魚醤と塩、砂糖。あとはアンコウの骨とカニの殻から取った出汁で割って、沸騰したら具材を煮込むだけ。
「これがアンコウか! 初めてだが、うめぇうめぇ!」
「うむ。さっぱりしつつも、脂が乗っていて旨みがあるな」
 うさみっちとニコは出来たてのカニとアンコウの鍋に舌鼓を打っていた。並んだ2人の前にある鍋は、2人前には明らかに大きい。
『何だこれ、うめーーーー!!!』
『そんなわけ――うっめぇぇぇぇ!』
『なんだと、俺にも食わせろーー!!』
 だが、そのくらい大きくないと、デビみっち達が鍋をひっくり返しそうだった。
「カニもプリプリでたまらん!」
「噛む毎にカニの旨味が溢れて……まるで、肉を食べている様だ」
 巨蟹の身はカニとは思えない迫力で、されど噛めば不思議な弾力のある歯ごたえを返しつつ身が崩れて、肉汁のように旨味が溢れる。
「蟹味噌もアン肝も全部食い尽くすぜー!」
 蟹の身の次は、厚く切り分けられたアン肝にうさみっちがかぶり付く。仄かな苦味の後に、独特の美味みが口の中に広がる。
「こ、これもうめぇ! ニコも食ってみろよ!」
 そう言って隣のニコを見上げたうさみっちの顔――というか口の周りは、主にアン肝でベタベタになっていた。
「ああもう、うさみよ!口の周りがあん肝でベタベタだぞ!」
「おぉ? そーか?」
 ニコに告げられても、うさみっちは構わず次の具を取ろうとお玉を取る。
「待て、うさみ。少し手を止めて口を出せ! 拭いてやるから!」
 見かねたニコが、ハンカチを取り出して――。
「いや、後でいーぜ。っていうか、後じゃねーとなくなるぞ?」
 大きなアン肝を取りながら、うさみっちが視線で鍋の向かいを示す。
「ん……?」
 ハンカチを構えたまま、ニコがそちらを見ると――。
『うめー! うめー!』
『ろーどーの後の一杯はたまらねーぜ!!』
『まーまーの報酬じゃねーか!』
 デビみっち達が、情けも遠慮も容赦もなく鍋から具材を取っていた。鍋の方に視線を移してみれば、あれほど沢山あった具が、もう3分の1以下になっている。
「ま、待て! デビみっち! 一気に持って行き過ぎだ! 俺の分は!? なあ、共に頑張った俺の分は!?」
『『『知るか』』』
 流石に慌てたニコの言葉に返ってきたのは、実に無情な悪魔の声×58。
「うさみよ。此の悪魔どもに、食い物の恨みは恐ろしいと教えてやって良いな?」
 立ち上がったニコの全身から、滲み出る怒気。
 いつかの『めちゃくちゃしばかれた時』を彷彿とさせるそれに、うさみっちは無言でコクコク頷いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーザリア・シン
【壁】で呑んで食って踊る//宴会に呼ばれてテンションあがっておるゆえズンチャズンチャ踊りながら料理を待つぞ。そなたらが守り抜いた今を、こうして妾も共に祝うことが出来て、まこと喜ばしい事よ。宴には歌と踊りと酒と料理、賑やかに楽しもうではないか。うむ、素材がよいから料理も良い。香り芳しければそれだけで酒も進むというものであるなあ(酒瓶抱えて鍋の周りでワイワイ踊ってる/妾は食う専門であるからの、口開けて待っておるゆえガンガン突っ込むが良いぞ。ウマイ!何もかもがウマイ!なぜこんなにもそなたらが作ったものはウマイのだ…妾が尊いからか…そうか…テンションあがってきたゆえ踊るか。ジャカジャカ賑やかにゆくぞ。


神羽・リオン
【壁】 のみんなと食事

皆の話を楽しく聞きながら、女王様の踊りを眺めつつカニを堪能。
彼女、我が社の忘年会にも呼びたいわね。

『好みの異性のタイプ』を聞かれればスイッチが入り
たとえ桜田さんがもう聞いていなくても、目とか閉じて語り続ける。

まずは、そうね。自分より背は高い方がいいわ。壁ドン状態で顔を見上げるって定番でしょ?それに体を鍛えている人じゃなくちゃダメ。お姫様抱っこもできない筋力ではちょっとね。あっ、リードしてくれる大人っぽい人というのも外せないわね。紳士も良いけれど紳士過ぎると何もイベントが発生しないのよ……だから多少はなんていうか……

ゲームや少女漫画の妄想力で磨かれた理想の男性像を熱弁


荒・烏鵠
【壁】で宴会だァ!
呼び方・洋名は名前+サン、和名は名字+サン。

アンコをサクサクさばいてタレつけて蒲焼きにしたり、ササッと衣つけてカラアゲにしたり!食感プニプニしてンね、アンコウって。
あとはゆでカニの足ほぐして山にしとこ。好きにとって食べてくンな!
ヤー今年もモー数日かァ。光陰矢の如し、はえーンだよなァ。
好みのタイプ?そらモー笑顔がカワイー子よ!マ、恋愛はタクサンしたし今はもーイイかなッて。
オレは過去は振り返らネー主義ってコトで、ヨシ流せた。

イエーイ女王サマー!ナイスダンス!フラメンコ!タンバリン叩こ!
あー楽しいなァ。ア!アンキモ欲しいでっす!
ういウイ、では来年もヨロシク!カンパーイ!


サンディ・ノックス
【壁】で忘年会(参加8人)
呼び方:名+さん、荒はファンさん

料理中は料理できるヒト多いんだねと手際や食べやすさの工夫に感心しつつ
のんびり賑やかな場を眺めながらお茶飲んで待つ

料理を食べる前には指を組んでいただきますと挨拶
箸は使えないので自前のカトラリーでいただくよ
うん、美味しい!

反省も抱負も考えないし決めるつもりもないんだよね
なら好みの異性のタイプ?
んー、性別関係なく他の人のことを思いやるヒトが好きだよ
あと…意識して合わせなくても考えが合うヒトは一緒にいて居心地がいい

美味しい料理と素敵なダンスと賑やかな雰囲気
たまにはこういうのもいい
壁のメンバーとだからこそできるのかもしれないな
来年もまたよろしくね


桜田・鳥獣戯画
【壁】メンバーに声をかけようとは栴の提案だ。折角の海鮮三昧、皆で味わわせて頂きたい。つまり忘年会だ!!
ファーストネームで呼ぶ。苗字呼びの者もいるが宴席だ、ちと距離を縮めてしまっても良かろう?

さて下準備は任せた! 手伝うことはあるか!? ない? ないよね?
では海鮮を鍋に投入しつつ、カニを皆にぐいぐい食わせて回る!
もし手持無沙汰なメンバーがいたら!
今年の反省か、
来年の抱負か、
特になければ好みの異性or同性のタイプなどを聞いていくぞ!
返答に窮したら即座に追いカニを口に押し込む。

女王はすぐ踊るな!! 女王ファンサしてー!! いよっ遊去屋!!
はっはっはっは!!今年もおつかれ!!
来年も皆息災でゆこう!!


明石・鷲穂
【壁】
ギガ、栴、烏鵠が頑張ってくれたからな。 美味しいとこ取りで食いにだけに来たぞ。 いやあ、ご馳走になっちまって悪いな
大人はアルコール消毒しなくて大丈夫か?(両手に大吟醸)
料理上手な奴多いなあ…俺もからっきしだから口を開けて待とう。バレッタ、俺にも一口くれ。

今年の反省……栴やサンディを見てると未成年が一番大人に思えるな…大人になることを目標にするかあ。
好みのタイプは…リオンの熱気が凄いな!
参考になるなあ。俺は振り回してくる美人が好みだな(若干酔って浮かれ)
ユーザリアの踊りは…見てると癖になるな。これが女王の踊り…深いな…。
ともあれ、来年も馬鹿騒ぎ出来たら良いなあ。


生浦・栴
【壁】で忘年会だ

保険で茹でるのみの鍋を作って置く
下拵えされて無ければ風魔法で適宜切り放り込む
火が通ればなんでも何とかなる
つけ汁は市販品を用意済み
後は各自で頼む

面白い予知を呉れたフューラーのもどうだ?
この場に抵抗が無ければだが(カスタネット差し出し
無論喰うだけでも構わぬよ

女王の踊りに適宜手拍子を交えつつ適当に鍋の面倒を見る
今年一年か
騒がしい内の瞬く間、等と思い返す間にもう質問が変わっておるな
というか質問と語りが既にカオスに満ちているような
とりあえず団長、甲羅付きで突っ込むのは危険では
云うてる間にアンコの肝も煮えたな
さて、誰が?
幾つかあるから急がずとも大丈夫だが
その蒲焼きは美味そうだな
交換でどうだ


バレッタ・カノン
【壁】の皆とごはんだ

今日は食べ放題らしいな。腹ペコにしてきたから覚悟しろ。私はジュースで乾杯だ。


料理はよくわからないが手伝えることはなんでもいってくれ。むしろやってみたい

騒ぐのは得意じゃないと思ってたけどなんだか陽気な気持ちだ。女王の踊りを見てるとこっちもなんだかマントをひらひら踊りたくなる。飲んだのはお酒じゃなかったよな…?

来年の目標か…身長を伸ばす。絶対伸ばす。私も早く大人になりたいものだ/まてまて、出来立てはあつあつだからちゃんとふーふーしてからだぞ。よし、かわりにふーふーしてやろう

初めて食べるものばかりだけどどれもおいしい!

すごく楽しい会だった。皆とこんな風にまた食べて踊って笑いたいな



●呼ばれた人達
 冬の昼が短いのは、大抵の世界で同じ事だ。
 日が沈みかけ、空が黄昏に暮れだした頃、何処からともなく『霜の砂漠』にやってきた猟兵達が、砂漠の街の中を歩いていた。
「これが砂漠の街か。豪奢な建造物こそないが、活気に満ちた良い街ではないか」
 行き交う砂漠の民の表情から、ユーザリア・シン(伽藍の女王・f03153)が、まるで統治者のような評価を口にする。
 事実、ユーザリアはこことは別の世界で、小国の女王であった。
 故あって今は納める領地と民を失った身であれど、その心は未だ女王である。
「砂漠に合わせて軽装なだけね。着ているものも、良いものだわ」
 一方、神羽・リオン(OLIM・f02043)の目は、砂漠の民の衣服に行っていた。
 それは社長令嬢として、染み付いた目線。扱うものは対オブリビオン兵器。さらにその実践を任とする部署であるが、リオンはそこを統括する立場にある。
 自然、そう言う目も鍛えられるというものだ。
 その種類もそこに至った経緯も違えど、ユーザリアもリオンも、他人の上に立つ立場にある者。初めての街を、そう言う目で視てしまうのも仕方ない。
「二人とも、何だか難しい事を考えてそうだな。今日はあれだろ、無礼講だろ?」
 そんな2人の頭上から、明石・鷲穂(真朱に祈り・f02320)の声が降る。
「観光も良いが、早くご馳走になりに行こうぜ」
 にっと笑って言いながら、鷲穂が掲げて見せた両手には、大吟醸の一升瓶。
 さらにキマイラである鷲穂はアイベックスと呼ばれる山羊の一種に似た四足の下半身にも大吟醸の酒瓶を括り付けていた。2つじゃきっと足りないから。
「うん。わたしも早くごはんにしたい」
 法衣姿で堂々と酒持ち歩く破戒僧な鷲穂の腰の辺りで、バレッタ・カノン(バレットガール・f11818)がこくんと頷く。
「今日は食べ放題らしいからな。腹ペコにしてきた」
 その言葉が偽りでない事を示すかのように、バレッタのお腹がきゅぅと鳴る。
(「あれ? 食べ放題なんて、栴さん言ってたっけ?」)
 酒と食に意識が行っている鷲穂とバレッタの様子に、サンディ・ノックス(調和した白黒・f03274)が胸中で首を傾げる。
 目印にしろと言われた巨蟹(只今絶賛焼かれてる)は遠目にも見える。
 成程、あのサイズであれば食べ放題と遜色ない量だろうが――あれは戦った他の猟兵全員にも食べる権利がある筈だろう。
(「まあ、蟹だけじゃないらしいし、そちらも大漁なのかな?」)
 そう結論づけて、サンディは結局何も言わずに着いていった。

 そして、待ち合わせ場所――。

「こっちだこっち!! 良く来た!!!」
 魚の骨をぶんぶんと振る桜田・鳥獣戯画と。
「来たか。思ったよりも早く着いたな」
 いい匂いを漂わせる鍋をかき混ぜている生浦・栴と。
「ン? モー来ちゃった?」
 何か返り血と臓物とヌトヌトに塗れた荒・烏鵠が、5人を出迎えた。

●八人寄っても料理技能がなかった件
 遡る事、数時間前――。
「ファン! 下準備は任せた!」
「頼んだぞ、赤狐の」
 鳥獣戯画と栴によって、烏鵠が吊るしたアンコウ――ふくれアンコくんの前に、押し出されていた。
「え? アンコーの担当、オレなン?」
 流れるように押し付けられて、烏鵠が思わず2人を見やる。
「味見以外で手伝うことはあるか!? ない? ないよね?」
 あると言わないでくれ。
 鳥獣戯画の左目は、言葉以上に雄弁だった。
「俺は術士だぞ。真っ当な刃物なんぞ持ち合わせていない」
 栴は軽く肩を竦めながらも、さして悪びれもせずに告げる。
 風魔法で切るくらいならば栴も可能だが、魚を捌くとなると話は別だ。鍋の面倒を見ている方が、まだどうにかなると言うものである。
 技術と道具の点から、消去法で烏鵠がやるしかないのが現実だった。
「仕方ネーな。サクサクさばいてやるとしますかァ!」
 髪の中に隠し持っている棒苦無を引き抜くと、烏鵠は『九羽狐』でそれを包丁サイズに変化させて、吊るしたアンコウに向き直った。
 だが――。
 吊るし切りは、それ自体がパフォーマンスになり得る程の技術である。誰でも出来る簡単なクッキングではない。
「あれ? えーと、こっちか?」
 吊るし切りは、それがパフォーマンスになり得る程の技術だ。この時点での烏鵠の料理の技術では、サクサクと言うほど簡単にはいかなかった。
 血や臓物が飛び散ってしまうのは仕方がないというもの。それでも野生の勘と学習力で次第に習熟し、一匹も無駄にしていないだけで、大したものと言える。
 まあ、そうこうしている内に、忘年会に集まった面子が着いてしまったのだが。

 そして現在。
「ってことでー。今からでも手伝ってくれっと、オレがとても嬉しいなーって」
 合流した5人の顔を、烏鵠は順に見回して――。
「え、いやよ?」
 リオン、一蹴。
「女王である妾は食う専門であるからの」
 ユーザリア、その気なし。
「俺も料理はからっきしだからなぁ」
 鷲穂は、美味しいとこ取りで食いにだけに来た。
「へえ。ファンさん、アンコウを捌けるヒトだったんだね」
 感心した風に言いつつ、サンディはいつの間にかお茶入れて待つ態勢。
「わたしは手伝うぞ! 料理はよくわからないが、むしろやってみたい!」
 最年少、バレッタ。興味津々で手伝い内定。
「よーし。そんじゃ、バレッタサン。一緒にがんばろっか」
 『九羽狐』で砂の一部を踏み台へと変化させながら、烏鵠がバレッタを手招き。
「こっちのお鍋はまだなの?」
「出来ていると言えば、出来ているが。茹でているのみ鍋だ。しかもまだ蟹のみ」
 リオンに問われ、栴が鍋をかき回す手を止めて告げる。
「味の好みはそれぞれだろうしな。市販のつけ汁を幾つか用意しておいたから、後は各自で頼む、という事だ」
「成程。敢えての無味が、好みに合わせる工夫と」
 栴の説明に、サンディが感心したように頷く。
 だが――。
「工夫と言うか――保険だ。火が通ればなんでも何とかなるからな」
「「……」」
 栴の言葉に、リオンとサンディが揃って沈黙する。
 その後ろでは――。
「む……銃火器や、マンホールの蓋とバランスが違う……むずかしい」
「バレッタサン、待った。ストップ。力み過ぎ!」
 緊張した様子のバレッタの声と、慌てた烏鵠の声の間に、ビュンビュンと刃物が風を切る音が聞こえていた。
 とても、そんな保険なくても、とは2人とも言えなかった。

 一方その頃。
「ギガと栴と烏鵠が、倒してくれたんだろ。いやあ、ご馳走になっちまって悪いな!」
「なに。鷲穂こそ、美味い酒ではないか!!」
 いつの間にやら、鷲穂と鳥獣戯画は大吟醸を開けて飲み始めていた。
「そなたらが守り抜いた今を、こうして妾も共に祝う事が出来て、まこと喜ばしい事よ」
 酒の席に加わっていたユーザリアが、飲み干した酒盃を置いてが立ち上がる。
「興が乗ってきた。妾が舞ってやろう!」
 茹で鍋と吊るし切りの間に立つと、ユーザリアの脚が砂を蹴って跳ね上がる。赤いドレスを翻し踊り始めた女王の後ろに、舞手の霊が現れ始めた。

●忘年会――ザ・ウォール
 特に乾杯の音頭もなく、何だかなし崩しに始まった【壁】の忘年会。
 空が夜空に変わって月が昇る頃になると、その宴は砂漠の民も巻き込んで、大いに盛り上がっていた。
 巻き込んで、と言うか、ユーザリアの舞を見た砂漠の民の一部が、楽器を手に集まって来て音楽を奏で始めたのだ。
「ははっ! 良い音色ぞ!」
 ズンチャズンチャと響く音にユーザリアの舞も勢いを増し、その熱に比例して後ろに舞う舞手の霊も増えていく。
 狐と踊れ――ダンシング・マハラニ。

「やあ、ここはとても賑やかだね」
「フューラーのか」
 舞を中心に広がる音と声に誘われ顔を出したエルフを一瞥し、栴が片手を差し出す。
「面白い予知を呉れた代わりに、少しどうだ? この場に抵抗が無ければだが」
 栴の掌の上には、カスタネットが乗せられていた。
「用意が良いね」
「まあ、こうなると思っていたからな」
 ユーザリアの舞のリズムに合わせて反対の手でカスタネットを鳴らしながら、栴が小声で告げる。
 そも、他のメンバーも呼んで忘年会をしようと提案したのは、実は栴である。
「無論喰うだけでも構わぬよ。丁度、踊りが一段落して食事が出来た様だ」
 栴が告げた直後、鳴り響いていた音楽が『ドーンッ!』と大きく響いた太鼓の音で締められて、暖かく香ばしい湯気が漂い始めた。

「出来たよ。アンコウの蒲焼きと、唐揚げ。好きにとって食べてくンな!」
 どぶ汁の要領で伸ばして甘辛く味付けたアン肝のタレを絡めて焼いた蒲焼きに、大ぶりに切った身をカラっと上げた唐揚げ。
 それぞれを乗せた大皿が、宴席の真ん中に並べられる。
 吊るし切りを終えてから、烏鵠の牛ノ淵で作った流水に晒したりして、バレッタも手伝って急ピッチで頑張りました。
「これは、匂いがそそられるな」
 鼻孔をくすぐる匂いに誘われ、サンディがどちらも自分の皿に取る。
 そして両手の指を組んで「いただきます」と小さく告げてから、サンディは箸より使い慣れた自前のカトラリーを手に取る。
 アンコウの蒲焼きにナイフを入れると、押し戻される様な身の弾力が伝わる。構わず押し込むと、ぷつっと刃が入っていく。
 口に運べばアン肝の独特の苦味と合わさったタレが、脂が乗りながらもやや淡白なアンコウの身に絡んで良く合っていた。
「うん、美味しい!」
「こりゃまた、酒に合うなぁ。烏鵠とバレッタ、こんなに料理上手だったのか」
 微笑を浮かべるサンディの横で、鷲穂も同じくアンコウの蒲焼きの味に舌鼓を打ち、笑みを浮かべる。
 タレの中に僅かに残るアン肝独特の苦味が、大吟醸に良く合っていた。
「手伝ったのも、食べるのも、初めてばかり。だけど、どれもおいしい!」
 自ら調理に関わった事で得られた満足感の様なものと、アンコウ料理の味に、バレッタが少し興奮した様子で頷く。
「アンコウの蒲焼きかぁ。これは私も知らない味だよ」
 促されるまま混ざったルシルも、アンコウの蒲焼きは初体験。
「アンコの肝も煮えたぞ」
「! アンキモ欲しいでっす!」
 栴が鍋から上げて切り分けたアン肝に、烏鵠が真っ先に反応する。
「赤狐のの、蒲焼きも美味そうだな」
 烏鵠がアン肝を、栴が唐揚げを。交換するような形で、互いに料理を口に入れる。
「これが魚の身なの?」
 衣で旨味が閉じ込められた唐揚げは、リアンには鶏のそれと遜色がない様に思えた。
「うむ、素材の良さを活かした良い料理だ。香り芳しければ、それだけで酒も進むというものであるなあ」
 一踊り終えて頬を上気させたままのユーザリアなど、ちゃっかり酒瓶1つ片手に抱えながら唐揚げパク付いていた。

「皆、食べてるな! アンコウも美味で良いことだ!」

 そこに、鳥獣戯画の声が響く。
「さて、今日は忘年会だ。折角の宴席だ。ちと、距離を縮めてしまっても良かろう?」
 何事かと視線を向ける【壁】の仲間達に、鳥獣戯画は満面の笑みで続けた。
「という事で、今年の反省か、来年の抱負か、特になければ好みの異性or同性のタイプを1人ずつ答えて貰おうと思う! 拒否権はない!」
 唐突に何を言い出すんだ、この人は――そんな視線が幾つか向けられる。
「返答に窮するようなら、熱々のカニを口に押し込む! 答えてくれたら、ありがとうという意味で、カニをグイグイ食わせる!」
 鳥獣戯画は、どうあっても皆にカニを食べさせたいらしい。
「トドメ入れたって事で、胴体の身も少し多めに貰えたからな!」
「やめろと言ってもやめんだろうが、これだけは言わせて貰うぞ、団長。甲羅付きで突っ込むのは危険だ」
「ダーンチョ。茹でたカニと焼いたカニをほぐして山にしといたの、そこにあっから」
 鳥獣戯画を止めるのは無理だと、栴と烏鵠はせめて軌道修正を計る。
 2人が指差したのは、こんもり盛られたカニの山。
 まだ熱々なのは、立ち昇る湯気で判る。メガネ曇りそう。
「まてまて、出来立てはあつあつだ。ちゃんとふーふーしてからだぞ。よし、かわりにふーふーしてやろう」
 熱々は美味しいけれど、舌を火傷しては大変と、バレッタが腰を上げる。
「よし、そんな優しいバレッタからだ!」
 それを見た鳥獣戯画が、何とも爽やかに告げた。

●バレッタ・カノンの場合
「ええと、今年の反省か、来年の抱負か、好みの……じゃあ、来年の目標で」
 有無を言わさずトップバッターにされてしまったバレッタだが、困惑しながらもぐるぐる思考を巡らせ、答えを思いつく。
「わたしの、来年の目標は。身長を伸ばす」
 バレッタの身長。ただいま、102.1cm。
「――絶対、伸ばす。私も早く大人になりたいものだ」
 大人になりたい。バレッタに取ってそれは、ただ大人への憧れだけではないだろう。
 齢13にして、幾つもの戦場を知ってしまった。
 その胸の内には、未だ復讐の炎が燻り続けている。
「そうか。では沢山食べるべきだ! 食べなければ大きくならんぞ、多分!」
 ちゃんと答えたので、鳥獣戯画はふーふーする時間を与えてから、バレッタの口がいっぱいになるまでカニを突っ込んだ。

●神羽・リオンの場合
「私の好みの異性のタイプ? そうね――」
 次に矛先を向けられたリオンは、他の選択肢など目もくれずにそれを選ぶ。
「まずは……自分よりは背が高い人がいいわね。壁ドン状態で顔を見上げるって、定番でしょ?」
 想像しているのか、リオンは目を閉じて続けている。
「それに体を鍛えている人じゃなくちゃダメ。お姫様抱っこもできない筋力では、ちょっとね。子供っぽい人より大人っぽい人の方が好き。リードしてくれる紳士も良いけれど、紳士過ぎると何もイベントが発生しないのよ……」
 理想の男性像の熱弁を振るうリオンであるが、これ全部、妄想の産物だったりする。
 言うほどないのだ、男性経験。
 リオンの通ってた教育機関、所謂女の園だったから。
 その辺りを悟らせまいとして熱が入っているというのもあるが、内容は全て、ゲームや少女漫画で得た妄想力で磨いてしまった結果である。
「やっぱりある程度の欲も必要だと思うのよね。あとそれから――」
「リオンの理想が壁より高いってのはよーく判った! がんばれ!」
 リオンの話が終わる前に、鳥獣戯画がその口に熱々のカニ突っ込んだ。

●サンディ・ノックスの場合
「俺、反省も抱負も考えないし決めるつもりもないんだよね」
「そうなると、選択肢は1つだな!」
 その答えは、一歩引いた立ち位置を好むサンディらしいものであったが、それで熱々のカニの身が迫ってこなくなるわけではない。
「んー、性別関係なく他の人のことを思いやるヒトが好きだよ」
 少し考えて言葉を選びながら、サンディは答えを口にする。
「あと……意識して合わせなくても、考えが合うヒトは一緒にいて居心地がいい」
「リオンの後だからか? とても普通に聞こえるな」
「良いじゃないですか、普通でも」
 ギャップに首を捻りながら鳥獣戯画が差し出したカニの身を、サンディは普通にお皿で受け取った。

●生浦・栴の場合
「む。ここで俺か」
 次に問われた栴は、まだ答えを思いついていなかった。
「今年一年か。騒がしい内の瞬く間――………」
 騒がしいのは現在進行形だし、色々あった。
 栴はその辺りを思い返そうとしたのだが。
「ずっと鍋を見てて、栴はあまり食べてないだろ。だからカニだ!」
 好意――と言い切るにはちょっと疑問の余地がある理由で、鳥獣戯画は栴の口にカニを突っ込んだ。

●明石・鷲穂の場合
「俺の番かぁ……じゃ、今年の反省だ」
 ついに回ってきた番に、鷲穂が大吟醸をぐいっと煽る。
「栴やサンディを見てると未成年が一番大人に思えるんだよな。だから、大人になることを目標にするかあ、と」
 鷲穂のこの目標、間接的に他の大人組も――となるのだが、目の前の鳥獣戯画の耳には右から左に抜けていた。
「それはそうと、好みのタイプはこっちを振り回してくる美人です」
「さらっと言ったな。流石、破戒僧!」
 若干の酔いに任せて浮かれた鷲穂の口に、鳥獣戯画がカニ突っ込んだ。

●荒・烏鵠の場合
「オレの好みのタイプはネ。そらモー笑顔がカワイー子よ!」
 普通、と言うか、ものすごく漠然とした答えである。
「ファンよ。それは、ものすごい数の女性が該当せんか?」
「マ、恋愛はタクサンしたし今はもーイイかなッて」
 流石に首を傾げた鳥獣戯画のツッコミに、烏鵠は笑って返す。
「ほう。その沢山した、のあたりを突っ込んでみたいとこではあるが――」
「オレは過去は振り返らネー主義なのよ」
「ああ、なんとなくそう言うであろうと思ったぞ! というわけで、カニだ!」
(「ヨシ流せた」)
 甘んじてカニを食べながら、烏鵠は密かに拳を握っていた。

●ユーザリア・シン
「ラスト、女王」
「ようやっと妾の番か」
 鳥獣戯画がカニを手に近づくと、ユーザリアは悠然とした笑みを浮かべ――。
「さあ、早く妾にカニを食わせるが良い」
 あ、この女王、答える気ない。
「ガンガン突っ込むが良いぞ」
「お、おう。そう来たか……」
 完っ全に食べる気しかないユーザリアに、流石に鳥獣戯画もちょっと驚きながら、まだホカホカのカニをたっぷり差し出した。
「カニもウマイ! 何もかもがウマイ!」
 カニの味を噛み締めて、ユーザリアが満足そうに飲み込んで。
「なぜこんなにも、そなたらが作ったものはウマイのだ……妾が尊いからか……」
 何故か、自分の尊さに話が飛んだ。
「テンションあがってきた故、また踊るとするか」
 さらにまた踊りたくなったらしく、すくっと立ち上がる。
 何故か――酒瓶抱えたまま。と言うか、既に結構飲んでいた筈だが、砂を蹴って踊りだしたユーザリアの足取りは変わらず軽やかだ。
 そしてその背後に現れる、舞手達。ダンシング・マハラニ――再び。
「女王はすぐ踊るな!! 女王、ファンサしてー!!」
「イエーイ女王サマー! ナイスダンス! フラメンコ!」
「よかろう。砂漠の民よ! 賑やかにゆくぞ!」
 鳥獣戯画と烏鵠の声に応えて高らかにユーザリアが告げれば、少し遅れてジャカジャカと楽器の音が返ってくる。
「これが女王の踊り……深いな……」
「彼女、我が社の忘年会にも呼びたいわね」
 初めて会った筈の砂漠の民を、即興でこれだけ己の舞に巻き込める技量に、鷲穂とリオンが内心舌を巻く。
「美味しい料理と素敵なダンス。そして賑やかな雰囲気」
 たまにはこういうのもいいと、サンディも笑みを浮かべる。
「んん? 飲んだのはお酒じゃなかったよな?」
 踊りを見ている内に湧き上がる陽気な気持ちに、バレッタが首を傾げる。
 騒ぐのは得意じゃない――そう思っていたけれど。
「女王の踊りを見てると、こっちもなんだかマントをひらひら踊りたくなる」
「踊りたいなら混ざっても良かろう。女王なら、拒まんだろうさ」
 マントを掴んで少しだけ裾をひらりと振ったりするバレッタに気づいて、栴が後ろから声をかける。
「ん、いい。充分。すごく楽しい会」
 だけどバレッタは、首を左右に振ってその場に座り直す。
「皆とこんな風に、また食べて踊って笑いたいな。パンがあったら、完璧」
「だな。来年も馬鹿騒ぎ出来たら良いなあ」
 バレッタの零した呟きに、鷲穂がしみじみと頷く。
「はっはっはっは!! では来年も皆、息災でゆこう!! 今年もおつかれ!!」
「ういウイ、では来年もヨロシク! カンパーイ!」
「来年もまたよろしく」
 破顔した鳥獣戯画の合図に、烏鵠とサンディも合わせて杯を掲げる。
「おい、もう来年の年末の話か?」
「まあ、いいんじゃない?」
 気が早いと少し呆れた様な顔で栴がそれでも杯を合わせれば、リオンも微笑を浮かべて軽く杯を掲げる。
 精一杯背伸びをして乾杯に混ざろうとしたバレッタを、鷲穂が軽々と抱えて高さを合わせて、7人の杯がぶつかり打ち鳴らす。
 ユーザリアは踊りながら、酒瓶を掲げていた。
 今宵の宴は、まだ続く。
 そしてきっと――また続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黎・飛藍
ルイ(f18236)が同伴

今回は蟹と鮟鱇か。それにしても大漁だな
割と普通に食材を手に入れることが出来たと思う
魚釣って蟹〆て。至って普通だっただろう?

今回も調理はルイに任せた。俺は食い専
そうか鍋か。身体が温まるし、最後の一滴まで食えるな
何となく。砂漠に魚介類が暮らしているのなら、砂漠昆布とかあるんじゃないかと思い至った
けれど調達諸々はルイに全部任せる。ルイの声以外の奴が砂漠民なのか、猟兵なのか判らない
だから序でに訊ねてみてくれと頼む

ルイの奴。何だかんだ言っていたが、獲った食材をきちんと食っている
ルイが捕まえた奴…声に何度か聞き覚えがある、ような
…チサンチショー…?って、何だ?


小夜啼・ルイ
飛藍(f16744)に同伴

既視感を感じるのは気のせいじゃないよな…
あー、そうだな。普通だったかは置いて、前もそうだったもんな(遠い目しながら)

今回も調理役。少なくとも調理役になっていれば、色々と忘れられる
揚げ物は後始末考えて…やめた。寄せ鍋にする
鍋物の方が片付けが楽だ。それに色々煮込めるからバランスもいいし
長のばーさんに葉物類…と昆布っぽいやつが無いか聞いてみて、有ればそれも一緒に鍋に入れる
流石に魚だけ食って暮らしていることは無いだろ
集まったらさっさと調理する

あ?調理した以上はきちんと食うのが礼儀だろうが
食い物は粗末にしねぇぞ
あと通りがかったルシルを捕まえて、地産地消に協力しろ名目で鍋食わせる



●砂漠の常識、新常識
「蟹と鮟鱇か。大漁だな」
「大漁って言うけどな、フェイ。これ普通の食材じゃねぇぞ」
 ――この台詞を言うのは何度目だろう。
 小夜啼・ルイは既視感を覚えた側から、それが気のせいではないと確信していた。
「今回は、至って普通だっただろう?」
 その既視感の原因たる黎・飛藍は、平然と告げてきた。
「魚釣って蟹〆て。普通じゃないか」
 確かに、飛藍が切り取ったそこだけなら、普通の言葉であるのだが。
「あー、そうだな。魚が光ってたとか蟹がでかかったとか、その辺を置いておけば。と言うか、でかいのは前もそうだったもんな……」
 細かい事を気にしない飛藍の言葉に、既視感からそのまま諦めの境地に移行して、ルイは遠い目で空を見上げる。

 良く晴れていた。

(「あの丸っこい雲、唐揚げみたいだな……いや。揚げ物は油の始末が面倒だ」)
 青い空を流れる雲を眺めながら、ルイは頭の中で調理方法を思案し――。
「……よし。寄せ鍋にする」
「そうか鍋か。身体が温まるし、最後の一滴まで食えるな」
 調理方法を決めたルイの一言に、黙って待っていた飛藍が頷き同意を示した。
 色々考えないで済むから調理役に回りたいルイと、面倒だから食べ専でいたい飛藍の利害は、今回も見事に一致している。
「鍋物は後始末も楽だし。色々煮込めるからバランスもいい……と言っても、蟹と鮟鱇だけじゃバランスも何もないな」
 鍋ならば野菜も欲しいと、ルイが腕を組んで考え込む。
「……思ったんだが」
 腕を組んだ仕草と放たれる冷気の変化で、ルイが鍋について考え込んでいると察して、飛藍が口を開く。
「砂漠に魚介類が暮らしているのなら、砂漠昆布とかあるんじゃないか?」
「は? 砂漠に昆布なんて、あるわけが――」
 飛藍が勘で告げた言葉を否定しかけて、ルイが口籠った。
 ルイの中の常識で言えば、砂漠に昆布なんてある筈がない。ある筈がないのだが――常識に囚われてはいけないのだと、改めて思い知らされたばかりではないか。
「そうだな。長のばーさんに葉物類……と昆布っぽいやつが無いか聞いてみるか。流石に魚だけ食って暮らしていることは無いだろうし」
「任せた。俺はここで食材見張ってるから、序に訊ねてみてくれ」
 誰が砂漠の民かも判らないし、と長い袖に隠れた手を振る飛藍に見送られ、ルイは砂漠の街の中へと繰り出した。

 そして、数分後――。
「砂漠昆布かい? よく知ってるねぇ」
「あるのかよ!?」
 長の老婆を見つけたルイは、その口から砂漠昆布が実在する事を告げられていた。
「後は食用サボテンだろう? ああ、砂漠ダイコンもまだあったかねぇ」
 食べられるサボテンに、砂漠のダイコン。
 老婆の声を聞きながら、ルイは自分の常識がガラガラと音を立てて崩れていく様な錯覚を感じずにはいられなかった。

●地産地消なお鍋と邂逅
 多くの場合、鮟鱇は吊るして捌く。
 その理由の1つが、皮のぬめりだ。まな板に乗せても滑ってしまって、調理するのは難しい――と言うか危ない。
 だが、滑らない様に出来るのならば、別に吊るさなければ捌けないこともない。
 そして、ルイには滑らない様にする手段があった。
「凍ってろ」
 【Congelatio】の冷気で、まな板の上に寝かせた鮟鱇をその皮のぬめりごと凍らせてしまえば、滑る心配もなく捌けるというもの。
 まあ、些か過剰な冷気ではあるのだが。
「仕方ない。吊るし切りなんか、そう簡単に出来ないからな。仕方ないんだ」
 こんな事に、自分の能力を使ってしまう。
 自ら非常識に踏み込んだ様な気分を仕方ないと自分に言い聞かせて押し殺し、ルイは凍らせたアンコウを手早く開いて捌いていく。
 やたらとでかい蟹の脚も、適当な大きさに。
 食べられるサボテンも一口大にして、砂漠ダイコンは皮を剥いて厚めに輪切り。
 後は水を張って昆布を入れておいた鍋を火にかけて、沸騰直前に昆布を取り出し、大根から順に具材を入れて、魚醤で味を整えながら煮込むだけ。

「そろそろか?」
 鍋が沸騰した頃合いで、また匂いを嗅ぎつけた飛藍が鍋の前にやってきた。
「蟹なのか、鮟鱇なのか。どっちか良く分からんが、いい匂いだ」
「ああ、出来たぞ」
(「やっぱり犬か……」)
 今回も喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、ルイは飛藍に呑水を差し出す。
 それからしばらくは、グツグツと鍋が煮込まれる音と、2人が熱々の具を食べる僅かな音だけが続いていた。
「……上手く作るもんだな」
 半分ほど食べたところで、飛藍がポツリと呟く。
「そうか?」
 言われたルイは、少し意外そうな顔で箸を止め――。
「ああ。何だかんだ言っていたが、獲った食材をきちん作るし、食っているなと」
「あ? 調理した以上はきちんと食うのが礼儀だろうが」
 飛藍の物言いに、若干苛立ちを強めてルイが言い返す。
「つっても、ちと作りすぎたな」
 まだ半分ほど鍋に残っているが、腹の空きはそこまででもない。
「確かに……2人前の量ではなかったかも」
 飛藍も頷くが、さりとて、食材を粗末にするのはルイの性分に反する。
 どうしたものかとルイが周りを見ていたそこに、見覚えのあるエルフが向こうから歩いてきていた。
「やあ。2人とも食べてるね」
 声をかけてきたルシルの袖を、ルイの手がガシッと掴む。
「おや?」
「ちょっと食っていけ。地産地消に協力しろ」
「え? いいの?」
 いきなりルイに捕まえられても、ルシルは驚きつつも目を輝かせて足を止めた。
「……。………チサンチショー……? って、何だ?」
 誰か判らない声と、聞き慣れない単語。どちらから問うか、飛藍は少し考えてから、後者の方を訊ねる言葉を口にしていた。
「土地のものをその土地で消費しようって事だよ」
 答えたルシルの声を聞いて、飛藍が2,3度目を瞬かせる。
「その声。ルイが捕まえた奴……声に何度か聞き覚えがある、ような」
「……あれ?」
 飛藍は、他人の表情を認識できない。ルシルはまだ、それを知らなかった。
 飛藍もあまりそう言う素振りは見せてないし、ルシルも詮索する方ではない。故に、まるで見えていないかの様な飛藍の言葉に首を傾げて、ルシルはルイを見やる。
「あー……こう言うやつだから。気にしないで鍋、食っていけ」
 なんとなく察したルイは、とりあえず鍋で誤魔化そうと鍋に誘い。
「そうだな。ルイが認めたならいい。食っていけ」
 まあ座れ、と飛藍も空いてる椅子をぺしぺし叩いて告げる。
「それじゃあ、少し相伴になるよ。その方が、声を覚えて貰えそうだし。それに、他でも分けて貰ったけど、もう少し食べたかったんだ」
 促す2人に素直に頷いて、ルシルは鍋の前に腰を下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
素敵な宴だねー
それぞれが思い思いに過ごして、その先に約束された再会がある…。
僕にもそんな約束された未来あるのかな……なんてね

これが蟹…これがアンコウ…
鍋にして貰って食べる
一口食べて、んん!?新感覚…!
これは…イケる……
ポン酢を付けて、もぐもぐもぐ
蟹ってこんなに美味しいんだ!!?んー!
ほくほくガツガツとお腹いっぱい食べる

僕、大好きな二人にお土産も用意したいんだよ
そんなわけで、グルメガイド・ルシルさんを召喚しよう
ねえねえルシルさん。お土産には何がいいかな?
鍋の具材に出来るように持って帰ったらいいの?
それとも料理とか作ってもらえる?
UDC食とノーマル食でタッパー分けるから宜しく(真顔)

*任せた


緋神・美麗
さて、真・霜将軍も倒したし後は祝勝会ね。食材は豊富にあるし腕によりをかけて料理するわよ。

世界知識・情報収集・料理技能を使ってアンコウ鍋を作る。
アンコウは鍋が良いかしらね。まずはアンコウを捌いて身とアン肝を分ける。アンコウは湯引きしたら氷水でしめて水気をきる。アン肝は蒸しておく。野菜や豆腐も刻んでおく。鍋を火にかけアン肝を炒りながら味噌を加えてさらに炒って水と調味料を加えて味を調える。アンコウと野菜を加えて強火で煮てアン肝を加えてアクを取りながらさらに煮て完成っと。
「まぁ場所が場所だけに色々と物足りないけど、まぁこんなものでしょう。さぁ、召し上がれ」
鍋が完成したら存分に食事を楽しむ。


七瀬・麗治
※『』内は、闇人格ロードのセリフです
※アドリブ、絡み歓迎
※大食漢

さて、どうやって食おうかな。あんこうなんて調理したことないしなぁ。とりあえず砂漠の民に美味い食べ方を聞いてみるか。

あんこうに手を付けようとすると、自動で【オルタナティブ・ダブル】が発動し、ロードが姿を表す。
『この魚は私の獲物だ。貴様は蟹でもゆがいておれ』と
あんこ君を掻っ攫っていくロード。
なんだとぉ……と文句を言いたくなるが、事実アンコ君に関してはこいつの功績なので、致し方ない。
「手出し無用ってか? わかったよ。その代わり、カニ味噌はオレがいただくからな!」
などとあっさり引き下がるはずもなく。あとでコッソリルシルに分けてもらおう。


櫛灘・常世
ンフフ、無事獲物を仕留められてよかったわぁ。
蟹も鮟鱇もウチが知ってるのとはちぃと毛色が違うけど、まぁ食うたらどれも同じですえ。
早速堪能させてもらいましょ。

はてさて蟹に鮟鱇言うたらミソとキモが大変乙やけど、そうなると当然酒も欲しくなりますなぁ?
旅人はん、なんぞお持ちでないやろか……はぁん、乳の酒? 砂漠渡りの家畜の乳を発酵させた……ええねぇ、ウチも知らん酒ですよって、ぜひいただきましょ。
……ンフフ、こらまたクセの強い、米酒とは違う趣やけど、ええねぇ。ウチは嫌いやないえ、これ。まったりとしたミソとキモと合わせれば舌が躍るわぁ。
珍味に珍酒、珍風景……格別ですなぁ。
ささ、そこのあんさんも相伴しましょ?



●グルメガイド召喚
「僕、大好きな二人にお土産も用意したいんだよ」
 砂漠の街の中心部。
 そこに呼び出した相手を見ながら、霧島・ニュイは続ける。
「そんなわけで、グルメガイド・ルシルさんに来て貰ったのはね。土産にするのは何がいいかな? って聞こうと思って」
 ニュイにそう話を振られ、ルシルは青い目を丸くしていた。
(「グルメガイド? いつの間に?」)
 そう思ったのだが、ルシルはそれを追求する事はしなかった。
 よく考えたら、心当たりがないわけでもない。
「鍋の具材に出来るように、持って帰ったらいいかな? それとも料理とか、作ってもらえるかな?」
 そんなルシルの胸中に気づいた風はなく、ニュイは自分の悩みを話している。
「作って貰って持ち帰るのは可能だと思うよ。彼らも、持ち運べる食事を作る事はあるだろうからね」
「じゃあ、作ってもらうとして――何が良いかな? オブリビオン食とノーマル食で分けるから、よろしく!」
「オブリビオンの方は、後で私が冷凍してあげるよ。普通の方は、ここはやはり砂漠の民に聞いてみようか」
 そしてルシルをお供に、ニュイは砂漠の民の長の老婆の元へ向かう。途中、昆布と大きな蕪か大根にしか見えない物を抱えた、見覚えのある猟兵とすれ違った。
「――というわけで、彼に何か砂漠のお土産を頂けないかと」
「そう言う事なら――これでどうだい?」
 老婆が出してきたのは、白くて楕円形のなにか。
 触って見るとザラザラしていて、軽いが、とても硬い。
「なにこれ。卵?」
「乾燥させたヨーグルトさ」
 首を傾げたニュイを、老婆は一言で目を丸くさせた。

●酒飲みは、酒飲みを知る
 一方その頃――砂漠の街の一角のとある建物で。
「旅人はん、ちとええです?」
「ん? ああ、霜将軍倒した冒険者さんじゃないですか」
 背中からかけられた声に振り向いた男は、櫛灘・常世の姿を認めて目を瞬かせた。
「どうぞ、散らかってますが」
 実際、男の周りは大きな鞄がいくつも開かれて、その中にこれからしまうのであろう荷物が散らばっていた。移動に備えての荷造り中だろう。
「忙しい時にすまんなぁ。なんぞ酒をお持ちでないやろか、と思って」
 それを踏まない様に歩幅を大きくして、常世は建物の中へと入って告げる。
「お酒、ですか」
「そや。蟹に鮟鱇、と言うたらミソとキモが大変乙やけど、そうなると当然酒も欲しくなりますやろ?」
「ははぁ、成程。いける口ですな」
 にんまりと享楽的な笑みを浮かべた常世の表情と言葉に、男は得心が言った様子で同じ種類の笑みを返して頷いた。
「折角やから、ウチも知らん酒をいただけたら思いまして」
「それだったら、良いものがありますよ――ここで作ってるお酒でして」
 そして広げっぱなしの荷物をゴソゴソと漁った男は、常世に大きな酒瓶を手渡した。

●それぞれの主張
「ううむ……」
 砂漠の街の一角で、黒ずくめの男――七瀬・麗治が腕を組んで唸っていた。
 アンコウとカニ。
 後者はともかく、アンコウを調理した経験は麗治にはない。
 だから、聞いて回ったのだ。砂漠の民達に。
 アンコウの美味しい食べ方を教えて欲しい――と。

 ――アンコくんの食べ方? ガッツリ行くなら唐揚げが良いんじゃないか?
 ――オリーブオイルとガーリックで煮込むのも美味しいよ。
 ――昨夜釣ったばかりなんだろう? それなら、生でも大丈夫。

「……何でも食べられるのは判ったが。結局、何がお勧めなんだ?」
 聞いて回った結果、寧ろ選択肢が増えてしまい麗治は迷っていた。
「まあ、とりあえず捌いてから考えるか」
 共通していたのは、砂漠のアンコウも吊るして捌くと言う事。
 そうでもしないと、やはり皮のぬめりが邪魔をして上手く捌けないらしい。
「吊るす場所……物陰で、またロードに頼むか」
 おそらくは洗濯物を干す為のものだろう。砂漠の街の中にも、アンコウを吊るせそうなロープが張られている。
 だが、アンコくんを釣った時と同じ触手を使えば、麗治にとって丁度いい高さにアンコウを吊るす事が可能だ。
 そう考えながら、麗治が1匹のアンコくんの尻尾に手を伸ばし――。

 ドクンッ。

「ぐっ……!」
 己の中で何かが蠢く予期せぬ感覚が、麗治を襲う。思わず片膝をついた麗治の全身がダークブルーに覆われて――その青が分離した。
『ふん。片腹痛いぞ』
「ロード。何のつもりだ」
 自らの前に現れた甲冑姿の騎士然とした存在を、立ち上がった麗治が睨みつける。
 オルタナティブ・ダブル、と言うユーベルコードがある。
 多重人格者が使う、もう1人の自分を現界させる業だ。
 今回は、麗治が闇人格と呼ぶもう1人の自分――ロードの方からその業を使って、勝手に麗治の中から現れたのだ。
『頼むも何も、この魚は私の獲物だ』
 勝手に出てきたロードは麗治の視線を気にした風もなく、当然だと言わんばかりにアンコくんを次々と掴み上げていく。
「なっ……!」
 ロードを静止しようと咄嗟に伸びかけた麗治の腕が、ぴたりと止まる。
(「確かにオレが釣ったアンコくんは1匹のみ。あとは全部、こいつの釣果だ」)
 砂漠で釣りをしたのは、つい半日ほど前の事だ。麗治もよく覚えている。ロードの主張は道理があると、認めざるを得ない。
「……わかったよ。その代わり、カニ味噌はオレがいただくからな!」
『よかろう。貴様は蟹でもゆがいておれ』
 不承不承ながら、と言った様子で語気を荒げた麗治に、両手いっぱいにアンコウを持ったロードが鷹揚に頷いて背中を向ける。
 遠ざかるロードの背中を見ながら――何故か、麗治は笑みを浮かべていた。

●鍋奉行はお人好し
「さて。無事に真・霜将軍も倒したし、今夜は祝勝会ね」
 袖を上げる緋神・美麗の前には、いくつもの『ふくれアンコくん』が、洗濯物みたいにぷらーんと吊り下げられていた。
 その向こうには、ひっくり返った巨大なカニもある。
 食材は豊富だ。
「それじゃ、今回も腕によりをかけるとしますか」
 美麗は吊るされたままのアンコウに向かうと、まずはヒレを切り落とす。
 続いて開いた口元に刃を入れて、皮を剥ぎ、腹を掻っ捌く。
「これだけの肝があるなら、アンコウは鍋が良いかしらね」
 開いた腹から肝を取り出しながら、美麗はメニューを思案する。
 世界知識で得た情報の中には、唐揚げやアヒージョと言った調理方法もあったが、やはり肝を使った鍋が良いだろう。
 そう考えながら卵巣や胃も取り出し、骨から身を削ぎ落とす。
 同じ行程で数匹のアンコウを捌き終えると、美麗は竈のある水場の方へ向かう。

「おお、戻ったか。頼まれていた鍋、これでいいかい?」
 そこでは、砂漠の街の住人が2つの大きな鍋とともに美麗を待っていた。
「ええ。それで良いわ。ありがとう」
 美麗は住人に礼を述べると、2つの鍋のそれぞれ半ばまで水を張る。
 砂漠で水は貴重である。
 されどこの街は、霜の砂漠と呼ばれる砂漠の中の街。霜は地面に水分がなければ発生しないもの。オアシスと呼ぶには小規模な水場が、街中に点在していた。
 潤沢とまでは言えないにせよ、水に困った事は無いという。
 そうでなければ、1年の大半を砂漠で過ごすと言うのは厳しいだろう。
 それでも、限られている事には変わりない。
 美麗はまず1つの鍋を火にかけると、もう片方には、砂漠から拾ってきたまだ溶けきっていなかった氷を入れた。
 火にかけた鍋がポコポコと軽く沸騰し始めたら、切り分けたアンコウの身をさっと潜らせて湯引きし、すぐに隣の鍋の氷水で締める。
 身の下処理を終えれば、次はあん肝。同じ氷水でさっと洗いでから、湯引きに使った鍋をそのまま利用し、蒸しておく。
 肝が蒸し上がるのを待つ間に、野菜と豆腐を切り分けて。
「場所が場所だけに色々と物足りないけど……まぁこんなものでしょう」
 下拵えを終えて、美麗はまず一息つけた心持ちで頷いた。
「鍋の準備と行きますか」
 美麗は空の鍋を火にかけると、そこにあん肝を投入して空炒りにしていく。
 アンコウの肝はかなりの脂分を含んでおり、空炒りしてもそれだけで焦げる心配はあまりないのだ。
 美麗は空炒りしながらあん肝を少しずつ崩して、味噌を加えて混ぜながら、鍋全体に延ばすようにしていく。
 充分に肝を炒ったら、水を入れ、塩と砂糖と魚醤で味を整える。
 美麗が作ろうとしているのは、アン肝を溶かしたどろりと濁ったスープが特徴の、アンコウのどぶ汁であった。

●そして、夜――宴にて
 アン肝を溶かして作った、独特の濁りスープ。
 その中に、美麗が砂漠の野菜に、殻付きのまま小さく切り分けたカニの脚、一口サイズに切り分けたアンコウの身と、残しておいたアン肝を次々入れていく。
(「そう言えば、夏も焼いてる方が忙しかったっけ」)
 ふと、美麗はそんな事を思い出す。
 今回は、いつの間にやら鍋奉行。

 とは言え、皆が皆、美麗の様に料理が出来るわけではない。

 別人格に食材奪われたり、早々にお酒を楽しんでいたり。
 あるいは、料理があまり得意ではない者もいる。
 そんな状況を垣間見て、ついつい、鍋奉行の役に回ってしまうのは、美麗の性分と言えるだろう。言ってしまえば、お人好し。
 とは言え、食べるのを遠慮する気まではない。
「――出来たわ。さぁ、召し上がれ」
 そう呼びかけると同時に、美麗は鍋奉行の特権と、一番大きなアンコウの身を自分の器にさっと取り分けた。

「これが蟹……これがアンコウ……」
 ニュイの目の前には、ぐつぐつ煮込まれた大きな鍋から取り分けた具材の数々。
 中のスープはアンコウの肝と蟹味噌が溶け込んで、独特の濁りを生んでいる。お陰で奥の具材は見えないが、立ち昇る香りはとても食欲を誘うものだった。
「いただきまーす」
 取り分けた器から、まずはアンコウの白身を一口。
「んん!?」
 箸で持ったプリプリとした感触とは裏腹に、口に入れればホロリと崩れる。予想を裏切る食感に、ニュイの緑の瞳が大きく見開かれる。
 驚きのままにカニとは思えない肉厚の身をかじれば、こちらもカニの甘みと共にホロリと身が崩れて広がった。
「なにこれ、新感覚……!」
 歯応えがあるのに、肉のように噛みしめる必要はない。
 けれども、旨味はしっかりと感じる。
「蟹もアンコウも、こんなに美味しいんだ!!? んー!」
 初体験の感動も相まって、ほくほく顔のニュイの箸が止まらない。
「はい、これ」
「ん? なにこれ」
 そんなニュイの前に、ルシルが急須の様な食器を置いた。
「魚醤と柑橘系の果実酢を合わせたもの。お好みで入れると、味わいが変わるよ」
「あ、成程! ポン酢みたいなものだね!」
 それがどういう調味料かすぐに理解し、ニュイはカニとアンコウ、それぞれの身に数滴ずつちょんと垂らしてみる。
「これは……イケる……」
 一口齧って、ニュイは思わず呟いていた。
 身本来の持つ甘みを、酸味が引き締めている。魚醤――魚で作った醤油をベースにしているので、カニにもアンコウにも合うのだろう。
「不味い思いした甲斐があったよー!」
 偽物齧ったのも、報われた。
 ニュイの箸は、お腹いっぱいになるまで止まる事はなかった。

「ンフフ♪」
 常世の口元が、緩んでいた。
 時に享楽的に、時に妖艶に笑っていたが、今の常世が浮かべている笑みはそう言う類ではない。言うならば、無邪気な――とつけるのが最も適当だろうか。
「無事獲物を仕留められて、よかったわぁ」
 常世にそんな笑みを浮かべさせているのは、目の前に並んだアンコウとカニだ。
 お鍋でグツグツ煮込まれて、カニの甲羅は真っ赤に茹で上がっている。
 その大きさは、脚の一部だけでも常世の知るカニに匹敵する。
 甲羅を割ってカニとは思えない厚い身を頬張れば、常世の口の中でホロリと崩れた。
 次は、アンコウ。
 こちらは常世が知るアンコウよりも身がプリッと弾力を持っていて、その上、しっかりと脂も乗っていた。
「蟹も鮟鱇も、ウチが知ってるのとはちぃと毛色が違うけど、こうして食うたらどれも同じですえ」
 異界の砂漠の生き物の味を堪能しながら、常世は酒器に手を伸ばす。
 並々注がれた乳白色の液体をぐいと煽る。
「……ンフフ、こらまたクセの強い」
 するりと喉を通り抜けた未知の味に、常世の瞳が輝き享楽的な笑みが浮かぶ。
 それは昼間、砂漠の民から貰ったもの。
「砂漠渡りの家畜の乳を発酵させた酒……ええねぇ。ウチは嫌いやないえ、これ」
 常世の飲み慣れた米の酒とは、趣が違う。
 甘みが強く、喉越しもどこかネットリとしている。他の世界で馬乳酒と呼ばれるものに近いだろう。これが、砂漠の食材に良く合っていた。
「これにまったりとしたミソとキモと合わせれば――」
 酒器を置いて、箸を取る。
 これまた厚く切り分けられたアンコウの肝を口に入れて、砂漠の乳酒を一口。
 次にこんもりと盛られたカニの味噌を口に運び、またまた砂漠の乳酒を一口。
「はぁ――舌が躍るわぁ」
 ほぅと常世の口から、吐息が溢れる。
 カニの味噌と言っても、あれは内臓の類。
 つまりどちらも臓物であり、どちらも砂漠の酒とよくあっていた。
「珍味に珍酒、珍風景」
 視線を横に向ければ、昨夜は氷に覆われていた砂漠は、薄っすらと霜が降りていた。そこに降り注ぐ月明かりが、砂漠を輝かせる。
「……。……格別ですなぁ」
 もっと他の言葉が適当な気もするが見つからず、常世は再び酒器に手を伸ばした。

「美味い――鍋、美味いな」
 宴の一角で、麗治がその味を噛み締めているのは、同じ鍋である。
 アンコウの身も、勿論入っている。
「助かったぞ、ルシル。鍋の方に混ぜてくれて」
 そう。
 ふくれアンコくんは沢山釣れた。1人一匹以上。
 何も、ロードから奪い返す事に拘る必要は無いと、麗治はあの時、背中を見送りながら既に気づいていたのだ。そして頼ったのが、此のエルフというわけである。
「ロードを説得するより、他から分けて貰う方が楽だからな」
 ロードはロードで、まだオルタナティブ・ダブルで現出したまま、あっちで触手使ってアンコウの踊り食いをしている。
「主張が激しい別人格持ってると、大変だねぇ。あ、これも美味しいよ」
 溜息を溢す麗治に、ルシルが別の料理を差し出す。
 アンコウとカニをオリーブオイルとガーリックで炒めたものだ。UDCアースで言う、アヒージョに似ている。
「うむ。これも美味いが……まだ足りない。俺はもう少し、カニの胴体部分の身を貰ってくるとするよ」
 結局纏めて焼いて、皆で分ける事にしたカニの胴体。
 見た目よりも大食いな麗治は、2回目のカニおかわりを求めに行った。

●またいつか
 砂漠の街の、宴は続く。
 夜半過ぎには解散になった宴席もあれば、夜明け近くまで続いた宴もあった。
 それでも、宴はいつか終わる。
 夜が明ける。
 砂漠に残っていた僅かな氷も、新たな朝日を浴びて急速に溶けていく。
 早く起きた砂漠の民達は、テントの様に畳める住居の片付けを始めていた。
 全ての建物がそうではないが、彼らの住居の中には大きなテントの様な、畳んで運べる類のものもあるようだ。
 それが終われば――いよいよ、砂漠の民の旅立ちの、そして一時の別れの時。

 ――それじゃあ、一ヶ月後に。
 ――ああ、また会おう。
 ――良い年末を。また来年。

 砂漠の民達は、口々に言葉を交わしながら、それぞれの荷物を手に、思い思いの方へと砂漠の中へ進み出ていく。
「素敵な宴だったねー」
 1人、此の場に残って彼らの別れと旅立ちを眺めるニュイが、ポツリと呟いた。
「それぞれが思い思いに過ごして、その先に約束された再会がある……か」
(「僕にもそんな約束された未来あるのかな……なんてね」)
 続く言葉を胸中で呟いて、ニュイは砂漠の民達が砂漠を離れていくのを、最後の1人までただ黙って見送って――転移の光の中に飛び込んだ。

 誰もいなくなった砂漠に、乾いた風が吹く。
 今はまだ、宴の跡も僅かに残っているが――砂漠の民達が、再びここに戻る頃には。
 そこは何の跡もない、少し生態が不思議なだけの砂漠になっているだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月31日


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 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花巻・里香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト