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WHY DID YOU KILL THEM ALL?

#ダークセイヴァー #同族殺し #狂える『同族殺し』

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し
#狂える『同族殺し』


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「ゆ……るさ、ん……! 許さんぞ……あの忌々しき男め……っ!」
 頭上には血色の花、その背には無数の純白の羽根で着飾った吸血鬼が怒りに震えて発狂していた。吸血鬼の名は『くたかけ公』……元は、近隣の地域を支配していた領主であった。
 だが、今や領地外の辺境に追いやられた挙げ句、信じがたい知らせが彼の耳に飛び込んできた。それは、とある村が一晩で焼かれ、住民は全て皆殺しにされたという内容だった。
「私が“保護”していたあの村をっ! あの男は……っ! 戯れなどと称して、焼き払っただとっ!? 私を領地から追いやるに事足らず、私の“蒐集品”まで蹂躙するのか……っ! おのれ、『渇きの王』……っ!!」
 憤怒に身も心も滾らせた『くたかけ公』は、あばら家を飛び出して馬を疾走らせた。
「待っていろ……、残忍なる吸血鬼の王よっ! この身、同族殺しにやつしたとしても、必ずや貴様は、我が手で葬ってやる……っ!」
 数刻後、領主の館である古城に、戦火が広がっていったのだった……。

「ダークセイヴァーで、狂える『同族殺し』が事件を起こす予知を見たよっ!」
 グリモアベースに集まった猟兵達へ、グリモア猟兵である蛇塚・レモン(黄金に輝く白き蛇神オロチヒメの愛娘・f05152)が今回の任務の内容について解説を始めた。
「吸血鬼『くたかけ公』が、何らかの理由で怒り狂いながら領主の館を襲撃するよっ! 猟兵の皆は、この混乱に乗じて領主の館を強襲して、強大な領主を討伐してねっ!」
 領主は非常に強力な上に、館の警備も厳重なのだとか。配下のオブリビオンが敷地内に大勢集結しているらしい。正面突破では猟兵たちでも厳しい戦いとなるはずだ。
 しかし、怒り狂う『くたかけ公』の強襲により、その警備の一部に穴が生じる。そこから猟兵たちは突撃してゆき、混乱に乗じて配下を一掃してもらいたい。

「その後は『くたかけ公』が領主に襲い掛かるから、皆も三つ巴になりつつも領主の討伐を最優先に動いてねっ! 領主の吸血鬼は、2つの勢力を同時に相手取っても簡単に倒れないくらいに強力だから、みんな、気を付けてねッ!」
 ちなみに、猟兵たちが先に『くたかけ公』を攻撃するとどうなるのか、という質問に対し、レモンは渋い顔のまま首を横に振った。
「あたいはお勧めしないなぁ……。そもそも、元領主である『くたかけ公』の怒り任せの強襲があってこその今回の任務、みんなが攻撃しても返り討ちに遭うと思う……。まぁ、『くたかけ公』もいずれ消耗するし、どのみち討伐するけどね……?」
 つまり、あくまでも漁夫の利を目指して行動するべき、ということか。
「それが安全だと思うよっ! あとね、『くたかけ公』が怒り狂う理由が分かれば、あとあと状況を有利に進められるかも……?」

 レモンはそんな助言をしながら、ダークセイヴァーへの転送を開始する。
「今回の任務、敵を利用する事になるけど……領主討伐のためだと思って、みんな、心して取り掛かってね……っ!」


七転 十五起
 ご覧頂きまして、誠にありがとうございます。
 七転十五起、なぎてんはねおきです。

 今回のシナリオは、ダークセイヴァーにて、狂える『同族殺し』の吸血鬼が巻き起こす事件を皆様に解決していただきたいと思います。討伐目標は【領主の配下たち】【強大な領主】【狂える『同族殺し』】です。

 怒り狂う『くたかけ公』自身も元領主……つまり強大な吸血鬼であるため、現在の領主を討伐するまでは敢えて生かして消耗を待ちましょう。現在の領主を倒した時点でようやく、消耗した『くたかけ公』はギリギリ猟兵と互角に渡り合うレベルまでパワーダウンします。

 また【特定の種族の猟兵】の方が参加すると、とある理由で『くたかけ公』の戦意が向上、第一章と第二章の難易度が低下します。ヒントは『くたかけ』という呼称とオープニングの予知内容にあります。

 それでは、皆様の挑戦を、心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『魔術師の亡骸』

POW   :    炸裂魔弾
単純で重い【爆発性の魔術弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    事象転回
対象のユーベルコードに対し【事象の流れを巻き戻す魔術】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    邪刻禁呪
自身に【想像を絶する苦痛と引き換えに力を齎す障気】をまとい、高速移動と【命中した対象を崩壊させる暗号魔力の渦】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 狂える同族殺しと成り果てた『くたかけ公』は馬から降りると、昔の古巣……領主の館である古城へ到着した。
「……殺して、やる……っ! 私の愛する『あの種族』の村を、単なる娯楽目的で滅ぼした愚行、命を持って償わせてやる……っ!」
 彼は正門から堂々と突撃してゆくと、城内を守護する数多の配下――魔術師の亡骸たちと激突し始めた。襲撃者の登場に、魔術師の亡骸たちは一斉に正門へと駆け付け始める。
「退けっ! 退かぬならば、貴様たちも殺す……っ!」
 怒り狂う『くたかけ公』は、次々と魔術師の亡骸たちを粉砕してゆくのだった。

 ……そのおかげで裏門の警備が手薄になった。
 今が強襲の好機だ!
佐倉・理仁
いやー豪快に暴れてんなァ。ありゃ近づくのは賢明とは言えねーな。


どっちにせよ俺は接近しないけどな?
そうだな、敵をアイツのトコに集めてやっつけてもらおうか。どうせ最後にぶん殴るんだし、遠慮する事ないよな。
【剛力封陣】
そうら出番だ力持ち達。
アレだ、あのおっかねーヤツの近くに放り込むんだよ、俺じゃねぇわらわら居んだろ敵がよ!
『目立たない』ように……目立ってしょうがねーな!

連中の魔術がゴーストにどれ程効果を持つのかわからねぇが、こっちは手数減らすつもりは無いぜ。潰されたら喚び直す、『2階攻撃』『高速詠唱』やられた分はバシッと(くたかけ公の方に吹っ飛ばして)お返しだ。


アドリブ絡み歓迎!


龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎

【POW】

「あれが"同族殺し"…後々のためにいまは手を出さないのがいいんだけど…」

…消耗させるためにできるだけ配下たちを"同族殺し"に戦わせるのがベストだけど
やっぱり"死してなお操られているタイプのオブリビオン"が"純粋なオブリビオン"に殺されてほしくない…
だから、戦闘中に割り込んで"同族殺し"を焼かない程度に『煉獄猛焔波動』をはなつ
あとはこの人たちに「黒焔竜剣」を使いたくないから今回はホムラと連携しながら、「ロックブレイカー」を使っていくよ

…それにしても、あの姿…"オラトリオ"のマネをしているのかな…?
もしかして、あの時言ってた"蒐集品"って…



 領主の館である古城の裏門から侵入した猟兵たち。
 軽く互いに自己紹介を済ませたあと、警備が薄くなった敷地内を忍び込んでゆけば、正門で繰り広げられている狂える『くたかけ公』と配下たちの戦闘を目撃してしまう。
「いやー豪快に暴れてんなァ。ありゃ近づくのは賢明とは言えねーな」
 サイボーグの佐倉・理仁(死霊使い・f14517)は顔をひきつらせて、小さく乾いた笑いを零した。
 その隣で身を屈めるのは、銀髪紅眼のドラゴニアン少女の龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)と相棒の白銀の槍竜ホムラだ。
「あれが“同族殺し”……後々のためにいまは手を出さないのがいいんだけど……」
「そういうことだ。間違っても手出しすんなよ、紅音?」
「……」
 龍ヶ崎は押し黙ってしまう。彼女には何やら思うところがあるようだ。
「……消耗させるためにできるだけ配下たちを“同族殺し”に戦わせるのがベストだけど……やっぱり“死してなお操られているタイプのオブリビオン”が“純粋なオブリビオン”に殺されてほしくない……」
 ほぼ独り言のように呟く龍ヶ崎の言葉に、佐倉は眉をひそめた。
 そして次の瞬間、龍ヶ崎は物陰から飛び出して武装収納用魔宝石を懐から取り出した。
「やっぱり、こんなのダメだよ……!! 理仁、ごめん! 私、行ってくる! ホムラ!!」
 唸る白銀の槍竜の返事に、龍ヶ崎は力強く頷いた。
 そのまま魔宝石から巨大な岩砕斧『ロックブレイカー』を召喚すると、上段に振り上げたまま『くたかけ公』と魔術師の亡骸たちの乱戦の輪に突っ込んでいった!

「おいおいおいマジかよ……!? どっちにせよ俺は接近しないけどな?」
 とはいえ、仲間があのまま『くたかけ公』と接触してしまったら大惨事になるだろう。それだけは是が非でも避けなければならない。
「そうだな、敵をアイツのトコに集めてやっつけてもらおうか。どうせ最後にぶん殴るんだし、遠慮する事ないよな。そうすりゃ紅音に手を出す余裕なんてねーだろうしなァ」
 善は急げと、佐倉はユーベルコード『死霊召喚・剛力封陣(マッスルゴーストカーニバル)』を発動させた。
 すると佐倉の周囲に無数に開いた死者の門から、マッスルなゴーストたちが次々と飛び出てきた。
「そうら出番だ力持ち達。行け、しがみつく者共。押し倒し、捻じ伏せろ」
 しかし、筋肉自慢のゴーストたちは佐倉の命令を無視すると、一斉に佐倉の前で整列して、一糸乱れぬ動きで背中を見せ付けてきた。
「バックダブルバイセップ……だと?」
 後ろから上腕二頭筋を強調しながら、背中から腕に掛けての筋肉の発達具合をアピールしていくボディビルのポーズだ!
 更に幽霊たちは振り向くざまに白い歯を剥き出しにしながら、胸を反って背中越しに腕を伸ばし始めると、横から上腕三頭を中心にアピールしつつ、体の横からの筋肉の仕上がりを見せ付けてくるではないか。
「流れるようにサイドトライセップスをキメてきたがった!? 脚がゴリラ! 三角チョコパイ! そこまで絞るには眠れない夜もあったろうに!?」
 裏門に集結する総勢215名の筋肉ゴーストたちのポージングに、佐倉は思わず掛け声をかけてしまい、次の瞬間には冷静になっていた。
「ってちげーよ!? アレだ、あのおっかねーヤツの近くに放り込むんだよ」
 佐倉の指示に、なんだ最初から言ってくれよブラザーと言わんばかりにサムズアップする筋肉ゴーストたち。
 おもむろに佐倉の身体を担いだではないか。
「だからそうじゃねーって! 俺じゃねぇ、わらわら居んだろ敵がよ! ほら、早くお前らの周りで怯えて……ゾンビでも怯えるのも無理はねーか……うん、まぁ、周りで動けなくなってる敵を担いで、あの乱戦の輪の中へ目立たないようにしれっと混ざるんだ。そして黒い服着たアイツに向けて、担いでるヤツを放り投げろ、いいな?」
 佐倉を降ろした筋肉ゴーストたちは、筋肉の圧で動けなくなった魔術師の亡骸たちをそれぞれ担ぎ出すと、そろりそろりと乱戦の輪に近付いてゆく。
「よーし、目立たないように行けよ……目立たない、ように……」
 暑苦しい筋肉の行列が裏門から正門に続く光景を、佐倉は冷静に眺めて思わず言葉が飛び出した。
「目立ってしょうがねーな!?」
 だが、幸いにも『くたかけ公』は怒りの余り、周囲に目が届かないようだ。
 215体の筋肉大移動に気が付いたのは、他でもない配下の魔術師の亡骸たちだった。
 筋肉ゴーストたちは『くたかけ公』に硬直した魔術師の亡骸たちを放り投げると、瘴気を纏った配下たちと交戦に突入するのだった。

「あれは理仁のユーベルコード? なんか凄いね、ホムラ!?」
 大戦斧を怪力で振り回して配下を薙ぎ払う龍ヶ崎。普段なら愛用の黒焔竜剣で敵を屠ってゆくのだが、今回は思うところもあり封印している。
 その連携に合わせて相棒のホムラが火炎ブレスで爆発性の魔力弾を相殺してゆく。
 1人と1匹による連携により、死角をなくして集団戦でも優位に立ち回ることが出来ていた。
「ありがとう、ホムラ!! よし、“同族殺し”を焼かないように気を付けて……」
 龍ヶ崎は背中に焔の翼を顕現させると、半径50m内の指定した配下たちを一気に地獄の炎で焼き払った!
「みんなまとめて燃えちゃえ!!」
 ユーベルコード『煉獄猛焔波動』!
「私の邪魔をするか、猟兵……!」
 目の前の敵を焼き払われた『くたかけ公』が龍ヶ崎へ向かおうとしたその時だった。
「く……っ! しつこい輩だ!!」
 投げ付けられるように吹っ飛んでくる魔術師の亡骸たちに行く手を阻まれ、彼は再び虐殺を開始し始めた。
 佐倉の放った筋肉ゴーストたちが、ぶん殴った配下たちを『くたかけ公』へ向けてふっ飛ばしているのだ。
「助かったよ、理仁! って、押されてるよね!?」
 龍ヶ崎は筋肉ゴーストたちが高速移動する魔術師の亡骸たちが放つ暗号魔術の渦に呑み込まれて崩壊してく様を目撃してしまう。
「このままじゃ筋肉の人達が全滅しちゃう! 助けなきゃ!!」
 龍ヶ崎が再び焔の翼を広げた時、四方八方から魔術弾が放り込まれて周囲で爆発!
「きゃあっ!?」
 咄嗟で身を翻して直撃を免れたものの、筋肉ゴーストたちとの距離は開くばかり。
「どうしよう、このままだと……!」
 焦る龍ヶ崎。
 だが、彼女の背中から佐倉の声が聞こえてきた。

「安心しろ。こっちは手数減らすつもりは無いぜ」
 物陰から顔を出す佐倉はユーベルコードをリキャスト、瞬時に鉄火場のど真ん中で死者の門が開き、新たな筋肉ゴーストたちが押し寄せてきた。
 それを目の当たりにした魔術師の亡骸たちは、高速移動していた足を止め、目を見開いて硬直したまま仁王立ちしてしまった。中には恐怖で逃げようとする亡骸たちを、ヘッドロックで身動きを止めるなどの力技を発揮していた。
「嘘!? 筋肉を見た瞬間、オブリビオンたちの動きが止まった!?」
「筋肉は全てを解決するらしいからなァ? 潰されたら喚び直す、やられた分はバシッとお返しだ」
 佐倉が合図を送ると、筋肉ゴーストたちは動きを止めた亡骸たちを肉弾戦で『くたかけ公』へぶっ飛ばしてゆく。
 束縛が解けた亡骸たちは、龍ヶ崎とホムラのダブル火炎で焼き付きしてゆけば、徐々に城内の配下の数は目減りしてゆくのだった。

「それにしても……、あの姿……。“オラトリオ”のマネをしているのかな……?」
 龍ヶ崎は暴れる『くたかけ公』を遠巻きに眺めながら疑問を口にした。
「もしかして、あの時言ってた“蒐集品”って……」
「だろうなァ。ヤツの名前の『くたかけ公』って時点で、大方は察しが付くぜ?」
 龍ヶ崎と佐倉は、この事件の構造が単純ではないことをなんとなく推し量るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

枸橘・水織
「やっぱりそうよね…」
だって…『くたかけ公』だもの…

あの剣幕で暴れてくれるなら十分だと思うので、オラトリオという事は隠しておく
あの『くたかけ公』は聞いた噂以上に『歪んだ愛情表現』をしてきそうだから…(生理的嫌悪が上回った)
【目立たない】【迷彩】…使えるなら【変装】も…


戦闘
くたかけ公が道を作ってくれている感じなので、先行している二人を間に挟み距離を置いて進む

指定ユーベルコードで自己強化して、グラビティメイスとウィザードロッドによる、打撃攻撃と魔力弾攻撃で、地味に亡骸を減らしていく

とにかく【目立たない】w


それでも気づかれた場合
「何で分かったの…かな?」
『そういう領域の人』…と、最終的には納得する



 さながら暴力の嵐だ、と流水を織ったような青髪を揺らす枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)はひとり呟く。
 今の枸橘は、物陰に隠れながらオラトリオの種族特徴である頭の花々と背中の翼を引っ込め、代わりに変装として犬耳カチューシャを装着して人狼っぽい感じをアピールしていた。そんな事をする必要があるのかと問われれば、彼女は大きく頷くだろう。
「やっぱりそうよね……。だって……『くたかけ公』だもの……」
 くたかけ……鶏と称される吸血鬼の頭には血の花、そして背中にはオラトリオの翼から毟ったであろう羽毛のマントが、あからさまに彼の趣向を体現していた。
「あの『くたかけ公』は聞いた噂以上に『歪んだ愛情表現』をしてきそうだから……」
 枸橘は吸血鬼の装束から、彼のオラトリオに対する接し方を想像してしまい、生理的嫌悪で思わず青ざめてしまった。
「絶対に、見付かりたくない……!」
 枸橘は『くたかけ公』が敵集団に突撃してゆくのを追尾するように、こっそりと身を潜めながらも配下を撲殺して前進する。
(あの勢いなら、みおの正体を明かして『くたかけ公』を煽るような真似をしなくていいよね……?)
 もし自分がオラトリオだと明かせば、あの吸血鬼は狂喜乱舞しながら敵を蹴散らして近寄ってくるかもしれない。
 ――それは、恐怖以外の何物でもなかった。
 だが、配下の亡骸たちは枸橘の事情などお構いなしに襲い掛かってくる。
 爆発性の魔術弾を枸橘へ弾幕として放ってくる亡骸に、彼女はギリギリのところで身を翻して直撃を免れた。敷地内の木の陰に飛び込んで難を逃れたが、そこまでに吹き飛ぶ床の破片が背中に当たる。更に、このまま木の陰に立ち止まっていては、今度こそ弾幕の集中砲火で身体が粉々に吹き飛ばされてしまうはずだ。
「もう、目立ちたくないのに……」
 枸橘は退避した物陰から飛び出すと同時に、ユーベルコード『ENERGY・ALCHEMY(エナジー・アルケミィ)』を行使。
「さっきの魔法弾……どんな術式なのか、理解したよ」
 グラビティメイスを構えて突進しながら、ウィザードロッドを配下の亡骸たちの中へ放り込む枸橘。すると、ウィザードロッドがたちまち光を帯びだし、膨大な魔力を発現させた。
「理解できたのなら…すべてはみおの力になるんだから!!!!」
 錬金術師たる枸橘にとって、読み解き終わった事象をエナジーに変え、調合・組み替える事で再現することなど容易いのだ。生命の埒外である猟兵であるならば、尚の事だ。彼女の魔力が増大する!
「爆発魔術弾、全方位発射だよ……!」
 ウィザードロッドから360度全方位に魔力弾が拡散されてゆく。吹き飛ばされた亡骸は木っ端微塵になるか、枸橘の目の前に転がってくる。そこへ枸橘が担いでいたグラビティメイスを敵の正中線目掛けて振り下ろせば、49kgの打撃武器として脳天を破砕して次々に撃破してゆく!
 だが後方で発生したこの爆発に対して、反射的に『くたかけ公』は振り返った。枸橘と目が合ってしまった!
「は、早く隠れないと……!」
 すぐに枸橘はロッドとメイスで亡骸たちの集団の中を掻き分け、自身の気配を周囲に溶け込ませながら、どうにか『くたかけ公』から距離を置くことに成功した。
 一方、目が合った『くたかけ公』はというと……?
「うおおおおおおおおっ!!」
 なんだか勝手に盛り上がっていた。
「今!! 風に乗ってオラトリオの匂いがしたぞッッッ!! あの王めッ!! 村を滅ぼすだけではなく、オラトリオをここへ連れ込んでいるのか!! でなければこのオラトリオ特有の匂いが城内に漂うはずがないッ!!」
 城の門へ向かって、怒り狂う『くたかけ公』の怒気が更に増してゆく。
(何で分かったの……かな?)
 よもやオラトリオの体臭を嗅ぎ分けてくるとは、枸橘は想像だにしていなかった。
(もう、そういう領域の吸血鬼なんだね……)
 枸橘は身震いしながら、強化された魔力を継続させながら乱戦の中を目立たないように配下を殴り付けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
この世界の領主はヤバイって聞くけどアレは確かに危ねーな
言葉だけなら領地愛っぽいけど悲しむ素振りもないしなんか違う…
まァ慈悲より偏執愛って感じか?
で、アレに見つからねーように配下を減らして
って配下ってあの傷だらけの姉ちゃん達かよ…死んだ後も手駒に使われるなんてなァ(躊躇う前に片手拝みして
死体なら指やそこら落とした痛みで動き止める訳でなし…動けなくして確実に、かな…

くたかけの死角から潜入【忍び足/地形の利用】
近い敵の背後からクナイで斬り付ける&距離のある敵には念動で操作したクナイを投擲
止めに至らなければUCで動けなくして仕留めていく【暗殺/投擲/念動力】

赤いトサカに白い羽、つーと鶏って気もするが…



『くたかけ公』の怒りが頂点に達しつつある中、鹿村・トーゴ(鄙村の忍者見習い・f14519)は、忍者らしく影から影へと移り渡っていた。
 暴れまわる『くたかけ公』の様子に、鹿村は何か違和感を覚えていた。
「この世界の領主はヤバイって聞くけどアレは確かに危ねーな。言葉だけなら領地愛っぽいけど、悲しむ素振りもないしなんか違う……」
 目の前の吸血鬼の荒ぶる感情に名前を付けるならば何であろうか。
 鹿村は数瞬だけ考えると、自然とその名前が口から出てきた。
「まァ慈悲より偏執愛って感じか? で、アレに見つからねーように配下を減らして、って配下ってあの傷だらけの姉ちゃん達かよ……しかも死骸とか、ここの領主とやらは趣味悪りーな……」
 物陰からオブリビオンの集団を観察した鹿村が顔をしかめた。
「……死んだ後も手駒に使われるなんてなァ。南無三……」
 躊躇う前に片手拝みして、鹿村は討伐の決意を固めた。
「死体なら指やそこら落とした痛みで動き止める訳でなし……、動けなくして確実に、かな……」
 討伐方法を頭の中で組み立て終えると、鹿村は苦無の柄を握りしめて『くたかけ公』の死角で暴れる魔術師の亡骸たちの背後へ飛び掛かっていった。

 鹿村の両掌から、雷光めいた高圧電流が放出される。敵集団に高圧電流が突き刺されば、たちまち感電して身動きが止まる。
「亡骸とはいえ、感電すれば動きは止まるもんなァ……」
 電流を浴びれば、生物の筋肉は生理現象で収縮する。
 感電で足を止めた亡骸の頚椎を苦無で断ち切る。腐乱しかけた肉体は容易く刃を通すので、首の骨さえ斬ってしまえば配下たちは死に絶える。……もっとも、既に死んでいるのだが。
「おっと、危ねェ……!」
 命中した対象を崩壊させる暗号魔力の渦が、あちら此方から鹿村へ放たれてくる。彼は何とか乱戦を利用して亡骸たちを肉壁として活用しつつ、回避しながら常に死角からの奇襲と暗殺に徹していた。おかげで、配下の数が減りつつある現状でも、暴れる『くたかけ公』に鹿村の存在は気取られていない。
「よっと、これで14人目。あとは瘴気を纏った亡骸だけだなァ……」
 肉体を崩壊させながら瘴気を纏う亡骸たちが、魔力の渦を放出してゆく。自身の攻撃の余波もさることながら、瘴気の代償は毎秒ごとに配下たちを蝕んでゆく。亡骸でなければ、激痛で敵は発狂してたであろう。
「本当、何があったかは知らねーけど、いい加減にゆっくりさせてやれよ……。待ってろ、すぐ楽にしてやるからな?」
 念動力で苦無を浮遊させ、高速移動する亡骸たちを向かって射出する。
 その軌道は容易く避けられてしまうが、それすら織り込み済みで鹿村は苦無を放ったのだ。誘い出された亡骸たちに高圧電流が直撃。焼け焦げた腐肉の異臭を漂わせながら、飛来する鹿村の苦無によって次々と抉り貫かれてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『渇きの王』

POW   :    『高貴なる赤』
単純で重い【先制 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    『夜を歩くもの』
無敵の【影の従魔 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
WIZ   :    『渇きの王』
対象のユーベルコードを防御すると、それを【略奪】する。【自身の力を上乗せして 】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:なつみか

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ギド・スプートニクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 気が付けば、先程まで暴れていた『くたかけ公』は、もうここには居なかった。
 その代わり、城内に通じる鉄の扉が、無理矢理にこじ開けられている形跡を発見する。
 猟兵たちは慎重に城内へ侵入すると、血痕が階段を伝って道標となっていた。
 これは『くたかけ公』の負傷した際に流れた血液だろうか?

 と、その時、頭上からとてつもない衝撃音が轟いた。
 既に『くたかけ公』と領主の戦闘が始まっているようだ!

「うがあああああああああああっ! 『渇きの王』よ、死ねぇぇぇッ!!」

 怒りに満ちた『くたかけ公』の絶叫ッ!!
 今すぐに猟兵たちも領主の部屋に押し入り、戦闘に参加するのだ!
鹿村・トーゴ
配下の姉ちゃん達の扱い見るに…ここの領主も大概ワルなんだろうが
あのくたかけって奴の異常さばっか目に付いちまうね
あいつが暴れて進んだから標的まではあんま苦労無さそうだけど警戒に越したこたァない【追跡/忍び足/地形の利用】
奴らが互いに潰し合って貰うように領主には勿論くたかけにも気付かれずやつに助力する形になるわけね
見つからない為にも遠距離で対応する
まずの標的は領主だ
標的の位置を確認したら死角からUCの蜂はくたかけの攻撃を隠れ蓑にしながら攻撃するよう仕掛け
同時に蜂に合わせて操ったクナイで重ねて攻撃【暗殺/念動力/投擲】
くたかけに当てない様に気を付ける
あのイカレた状態で加減なしに攻撃されたらあぶねーし


佐倉・理仁
今でも充分ではあるんだが……くたかけ公には、トサカまで真っ赤になってもらうとしようか。


村人らの最期の時を再現しよう。
かつてあった命の終わり、世界に刻まれた死の記憶。領主サマは記憶に新しいハズだがね……そうさこいつは、テメェのお楽しみの【災厄の日】だ。『高速詠唱』

領主を基点に、村の住人達の亡霊を召喚。『第六感』
術にもう一つ手ェ入れて……領主の攻撃と彼らの最期、死の因果を連結する。領主の攻撃は死霊の死の再演の為に消費され、現在を傷つける事は出来ない。

我ながら趣味の悪ィ術だね。たがまあ、躊躇ってられるほど俺も強くないからよ。
……嫌われないよう、隠れてねーと。


アドリブ絡み歓迎


龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎

【POW】

「"くたかけ公"のダメージがたまってきているけど、ここが正念場…油断せずにいかなきゃね」

あっ、ちなみに部屋に入る前に「ロックブレイカー」を「黒焔竜剣 肆式」に持ち替えておくよ

戦闘開始と同時に"渇きの王"は"先制攻撃"を放ってくると思うけど、今まで戦ったあの強敵たちほど脅威ではないはず
【属性攻撃】の『黒焔一閃』をすれ違いざまに放ったあとは、ホムラの【槍投げ】で【串刺し】にするよ



 領主の『渇きの王』が待つ玉座の間の扉を蹴破って突撃する『くたかけ公』!
「うがあああああああああああっ! 『渇きの王』よ、死ねぇぇぇッ!!」
 怒り狂う『くたかけ公』が鉤付きの鎖を振り回しながら怒号を撒き散らす。
 それを嘆かわしいと言わんばかりに顔をしかめる『渇きの王』は、追い出した元領主が同族殺しに成り下がった現実に、酷く落胆していた。
「……くたかけ公、領地を追われて己の矜持すら見失ったようだな?」
「黙れぇいっ! 貴様は我がコレクションの……あの、オラトリオの村を! 娯楽として……単なる暇潰しとして焼き払った! 許さん……断じて許さないぃぃっ!! その罪、その生命で償えぇぇっ!!」
「……くだらぬ」
 次の瞬間、2体の吸血鬼が激突した。

 それを玉座の間の入口から、こっそりと覗き見ている猟兵3名がいた。
「配下の姉ちゃん達の扱い見るに……ここの領主も大概ワルなんだろうが、あのくたかけって奴の異常さばっか目に付いちまうね」
 鹿村・トーゴ(鄙村の忍者見習い・f14519)は右手を顎に添えて目を細めた。
「あいつが暴れて進んだから標的まではあんま苦労無さそうだけど、警戒に越したこたァない」
「だな、今でも充分ではあるんだが……この際、くたかけ公には、トサカまで真っ赤になってもらうとしようか」
 佐倉・理仁(死霊使い・f14517)は魔本『あなたのための道標』を片手に吸血鬼同士の激しい戦闘を見守っていた。
「つーか、くたかけ公、押されてねーか?」
「領主が先制攻撃を放ってるんだよ……!」
 佐倉の気付きに対して、小声で龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)が戦闘を素早く分析して仲間に判ったことを伝達する。確かに領主の『渇きの王』は影から呼び付けた馬に跨り、馬の後ろ足で『くたかけ公』を蹴り飛ばしていた。
「すごいパワー……! 蹴りの衝撃で床が抉れてるよ? お陰で着実に“くたかけ公”のダメージがたまってきているけど、ここが正念場……油断せずにいかなきゃね」
 龍ヶ崎は巨大戦斧ロックブレイカーを武装収納用魔宝石に格納すると、代わりに自身の胸元の黒龍焔の呪印から黒焔竜剣の肆式――妖刀形態の『黒乃村正』を顕在化させて柄を握りしめた。
 鹿村は今までの会話をまとめると、ひとつの結論を口にした。
「つまり、奴らが互いに潰し合って貰うように領主には勿論、くたかけにも気付かれずやつに助力する形になるわけね。見付からないためにも、遠距離から領主を攻撃してみるか」
「俺も真正面から斬り合うのは御免だ。隠れてくたかけ公の怒りを増長させつつ領主を攻撃してやろう」
 鹿村も佐倉も、物陰から隠れて『渇きの王』への攻撃を試みるつもりだ。
 これに対して、龍ヶ崎はいきなり扉の影から飛び出し、自身の姿を曝け出した。
「ふたりとも、私が囮になっている間に、早く……!」
 龍ヶ崎は玉座の前でぶつかり合う吸血鬼2体に向かって走り出した!
「おいおい……紅音のヤツ、肝が座ってるなァ?」
 呆気にとられる佐倉の肩を、鹿村がポンと叩いた。
「さぁて、オレたちも行動開始するかね……準備はいいか?」
「ああ、問題ねーな。お互いにしくじらないような?」
 鹿村と佐倉は互いの拳をぶつけ合って健闘を祈ると、鹿村は左へ、佐倉は右へと分かれて玉座の間へ侵入していった。

「おとなしく骸の海へ帰ってもらうよ……“渇きの王”!」
 黒焔の妖刀を鞘に収めたまま見得を切る龍ヶ崎。
 それに王はあからさまな不快感と殺意を彼女へ向けてきた。
「ここが何処か知っての狼藉か? 不敬罪だ、手ずから処刑してくれようぞ」
 影の馬にまたがった王が龍ヶ崎へ飛び掛かってくる!
 だが、龍ヶ崎は微動だにしない。むしろこれは、攻撃が来るのを待ち構えているかのようで……。
「今まで先制攻撃をしてくるオブリビオンとは何度も戦ってきたけど……」
 龍ヶ崎は半歩左足を踏み込むと、妖刀の柄と鞘を握りしめた!
「あなたの攻撃は、あの強敵たちほどの脅威ではないよ!」
 なんと、龍ヶ崎は自ら飛び掛かる影の馬へとぶつかってゆく!
 あわや正面衝突かと思いきや、龍ヶ崎は馬の蹄をサイドステップで左へ回避!
 そのまま、すれ違いざまに妖刀を居合の要領で抜き払った!
「不用意に近づいたのが仇になったね!!」
 斬撃の軌道は黒焔の尾となり、影の馬ごと王の脇腹を焼き刻んだ!
「ぐぬ……っ!?」
 唯の居合斬りだと踏んでいた王は、その威力の大きさに驚愕する。
 このユーベルコード……『黒焔一閃』の待機中は常に力溜め状態なのだ。つまり、待機中の溜めが大きければ大きいほど、斬撃の黒焔の火力が上昇するのだ!
「何処を見ているッ!? 逃げられると思うなよ!?」
 そこへ『くたかけ公』の鉤付きの鎖が王を強打!
 王は猟兵と同族殺しの双方を相手取ることになり、どちらかを相手取ればどちらかの攻撃が直撃する状況に陥ってしまった。
「ならば、やはり、まずはそこの小娘から殺す」
 王は傷を押して再び先制攻撃をしかけんと態勢を立て直した。
 だが、急に玉座の間の光景が別の光景に変化してゆくではないか!
 吸血鬼2体は、猟兵の攻撃だと悟ってその場で一瞬だけ動きを止めた。
 すかさず龍ヶ崎は相棒の槍銀龍のホムラへ告げた。
「来て、ホムラ!」
 すかさず槍の形態へ変身したホムラを、周囲を伺う王へ目掛けて投擲!
 ホムラは王の右肺を貫き、串刺しにしてしまった。
「ごふ……ッ!? この、小娘が……!?」
「ホムラ、戻って!」
 龍ヶ崎の合図で仔竜にホムラが戻り、龍ヶ崎は相棒とともに部屋の外へ一旦退避した。
 そうこうしている合間に、玉座の間は燃え盛る村の光景に変貌を遂げていた。
 佐倉の高速詠唱により、短時間で高い再現度を実現させたのだ。
(かつてあった命の終わり、世界に刻まれた死の記憶。領主サマは記憶に新しいハズだがね……そうさこいつは、テメェのお楽しみの【災厄の日】だ)
 ユーベルコード『死霊召喚・災厄の日(サイアクノヒ)』。
(死が、お前を攫いに来る。そいつが奴らと、お前の最期の光景だ)
 見せるのは惨劇・災害を再現した過去の幻影、溢れ出すのは惨劇の犠牲者である亡霊たち。
 この亡霊たちの顔に『くたかけ公』は見覚えがあった。
「こ……この者達は、私の『コレクション』……ここは、あのオラトリオの村なのか!?」
「幻惑系のユーベルコード……猟兵の仕業か?」
 王はさまようオラトリオの亡霊の攻撃を鬱陶しそうに払い除けた。亡霊の攻撃を防御したのだ。
「だが、こうして防御してしまえば、このユーベルコードは略奪が可能だ」
 それこそが『渇きの王』の真の能力。満たされない渇きが、相手のユーベルコードを奪い、逆に持ち主へぶつけてゆくことこそ彼の信条だ。
(そうはさせねーよ)
 しかし、佐倉はユーベルコードに更に細工を加える。
(……領主の攻撃と彼らの最期、死の因果を連結する)
 ユーベルコードを自己の物とした領主が亡霊を払い除けた瞬間、亡霊オラトリオの羽がもがれてしまった。
 亡霊は断末魔を上げながら消滅し、王の所業を目の当たりにした『くたかけ公』は更に激怒した。
「貴様……あの日も、このようにオラトリオたちを虐殺したのか!!」
「なんだ、このユーベルコードは……? こんなはずではなかったのだが? ええい、攻撃をしようにも亡霊が邪魔だ……! 何故、こっちに押し寄せるのだ!?」
「答えろ、この外道!!」
「知るか! そなたに構っている暇などない!」
 2体の吸血鬼の噛み合わない会話とともに、戦闘が再び勃発。
 だが、王は亡霊に妨害されて『くたかけ公』へ攻撃することが出来ず、反対に『くたかけ公』は頭の花から飛ばした花弁で王を切り刻み始めた。
「我が血で育てた花の花弁を喰らえ!」
「ぐぬっ!?」
 全身を刻まれる痛みとは別に、王は突然に襲われた背中の激痛にたたらを踏む。
 明らかに花弁の斬撃とは違う、抉られるような痛みだった。
 その正体は、鹿村のユーベルコード『虚蜂(ウロバチ)』で飛ばした7匹の大型蜂に持たせた苦無だった。
(でかしたぞ、七針……!)
 大型蜂自体も古い針に使役霊を降ろした式神のようなモノである。鹿村の念動力を駆使して操作し、見事に暗殺攻撃を成功させた。
 佐倉がユーベルコードを発動させてる間に、鹿村は最新の注意を払って忍び足で玉座の裏側へ回り込むと、蜂たちを天井へ飛ばして機会を伺っていたのだ。
 好機は『くたかけ公』が放つ範囲攻撃のユーベルコード。そこへ文鳥程の大きさの蜂たちを紛れ込ませて、奇襲を行ったのだ。
(此方が隠れて攻撃すれば先制攻撃も何処へ打てばいいか分からねーし、かと言って、あのイカレたくたかけに当たって加減なしに攻撃されたらあぶねーし……)
 ちらり、と鹿村は佐倉が顔を覗かせているほうへ目配せする。
(なんにせよ、あとは頼んだ)
 鹿村は残りの6匹の蜂を巧みに操作しつつ、王を苦無でズブズブと刺突してゆく。
 その隙に前線から彼は退いてゆく。
 佐倉もアイコンタクトを受けて、仕上げに入るようだ。
(領主の攻撃は死霊の死の再演の為に消費され、現在を傷つける事は出来ない。ユーベルコードを奪って俺にぶつけようにも、現在を攻撃できなきゃ意味がねーよなァ?)
 王は自身に群がるオラトリオの死霊が破壊される度に、激昂する『くたかけ公』の攻撃をダイレクトに浴びてしまう。
「く……っ! 邪魔だ、オラトリオめ! おのれ、あの日の再現などしている暇はないのだが……!」
「死を以って償えぇぇーっ!!」
 ここに来て『渇きの王』と『くたかけ公』の形勢が逆転した。
(我ながら趣味の悪ィ術だね。たがまあ、躊躇ってられるほど俺も強くないからよ。……嫌われないよう、さっさと隠れてねーと)
 戦闘の流れを誘導した佐倉は、ユーベルコードを維持したまま安全圏まで撤退していった。

 3人の猟兵の活躍により、領主の『渇きの王』はもはや死に体だ。
 トドメを刺すなら今しかない!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

枸橘・水織
渇きの王が倒れた後、何してくるか分からないので天井裏にいた子
(あまりの異常さに『嫌悪感』の方が上回った


…とはいえ、様子見・静観してた訳ではない


「貴方達の魔力…使わせてもらったよ…」
 階下で戦闘している(主に)二人のヴァンパイアの戦闘によって戦場に漂っている魔力を収集し、天井裏に作り上げたもの

『無数の剣や槍や金平糖(鋼鉄製)…の物騒な品々の数々』

本来なら対象に至近距離で発動させて攻撃するUCだが…『渇きの王(UC』の効果を考え、天井で発動させ『武器の重みで天井裏を突き破って自然落下で攻撃』…と、UCにより『派生した結果』で攻撃 水織自身も攻撃のタイミングは分からない

【武器落とし】←使えたらw


カシム・ディーン(サポート)
口調
基本丁寧なですます唇を

一人称

二人称
呼び捨て、君、あなた、お前(敵には


女好きの盗賊少年だが
サポート参加の場合では基本戦闘やそれ以外の補助をメインとした立ち回りに従事する

本当はもう少し楽しい事をしたいんですけどね

【情報収集】
戦う場所や敵について
その他有用な情報を集め仲間に伝え

戦闘
【属性攻撃】で風を全身に纏いスピード強化
基本攻撃は【盗み攻撃】で敵の武装の強奪による戦力低下を狙う
敵集団には一度【溜め攻撃】で魔力を収束させウィザードミサイル

単体相手にはシーブズギャンビットで服を脱ぎつつ猛攻を仕掛ける

一人で行動はせずにメイン参加者と息を合わせて攻撃を行う

今日の僕は盗賊として少し頑張ってみるとしますよ



 先程の一連の流れを、俯瞰して見守る猟兵が居た。
 オラトリオの枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)である。
 彼女は天井に釣る下がる巨大なシャンデリアの上――本来ならば屋根裏部屋へ潜入したかったが、玉座の間はそんな潜伏者を排除するため、教会の聖堂の如く吹き抜けになっていたのだ――にこっそりと乗っかり、身を潜めていたのだ。
 幸いにも激化する戦闘のお陰でオブリビオンたちも猟兵たちも頭上を気にする様子はなかったため、枸橘の存在を発見されることはなかった。
(み、見付かったら何をされるかわからないから……)
 なにせ『くたかけ公』は匂いだけでオラトリオの存在を察知できるほど、オラトリオを偏愛しているのだ。
 枸橘が目の前に現れたら、どうなってしまうか、いささか想像するも恐ろしい。
(はやく決着が付かないかな……)
 枸橘はシャンデリアの隙間から、じっと足元の戦闘を見守っていた。

 そこへ、新手の猟兵が駆け付けてきた。
 サポートで駆け付けたカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)、その人である。
「あれ、おかしいですね……? さっき、オラトリオの女の子がこの部屋に入ったはずなんだけど……」
 先行する猟兵と連携を取ろうと話を持ちかけようとしたのだが、どうやら見失ってしまったようだ。
「まぁ、そのうち出てくるでしょう。今日の僕は盗賊として少し頑張ってみるとしますよ」
 カシムはおもむろに羽織っていたローブを脱ぐと、ナイフを構えて『渇きの王』へと駆けてゆく。
 ユーベルコード『シーブズギャンビット』だ!
 カシムのユーベルコードに反応した『渇きの王』は、自身の足元の影から無敵の影の従魔を想像から創造して身を守らせる。
「……やれ」
 命令を受けた影の従魔はカシムに飛びかかった!
「おっと!」
 反射的に風魔法を展開したカシムは、影の従魔の攻撃をジェット気流めいた風の壁で弾き返した。
「どんなに強力な攻撃でも、風属性魔法で吹き飛ばせば当たりませんからね?」
 更に襲ってくる従魔の攻撃を、衣服を脱ぎ捨てることで身軽になり、いとも軽々と避けまくる!
 これに王は眉を潜めて呟いた。
「馬鹿な、無敵の影の従者だぞ? 何故に攻撃が弾かれる?」
 少しでも自身のユーベルコードに疑念を抱いてしまった王の従魔は、あっという間に弱体化してしまう。
「従魔が弱くなりましたね、今がチャンス!」
 残像を残しながら、カシムは王の懐へ潜り込み、何度もナイフで王の胴体を滅多刺し!
 そこへ、翼を舞わせて王へと攻撃を仕掛ける『くたかけ公』が突っ込んでくる!
 カシムは緊急退避!
「くたばれえぇっ!!」
「ぐうっ!?」
 痛烈な一撃が王に直撃、そのまま王の巨体が玉座の前までぶっ飛ばされていった。

 その時、玉座の間の床に叩き付けられた『渇きの王』の頭上へ、唐突に降り注ぐ鋼鉄製の拷問器具や武器の数々!
「なにぃ!?」
 ここで初めて『渇きの王』は頭上を視認する。
 そこには、シャンデリアからバランスを崩して転げ落ちるモーニングスターやら刀剣類を空間から生成しまくる枸橘の姿が!
「貴方達の魔力……使わせてもらったよ……」
 枸橘はただ単に傍観していたわけではなかった。
 吸血鬼2体の戦闘で発生した魔力を吸い上げ、ユーベルコード『錬金魔法・処刑道具創生(アルケミィ・クリエイト・エクスキューションツール)』を用いて、その魔力で創造した武器や道具を利用することが出来るのだ。
「この戦場一帯の魔力はみおが捕捉したよ……わっ!?」
 シャンデリアを吊るす鎖が、創造した武器の重みに耐えきれずに引き千切れてしまった!
 落下する巨大シャンデリアと枸橘!
 理解が追い付けずに身動きできない『渇きの王』!
 鉄の塊と数多の水晶の重量が王の顔にのしかかってきたのだ!
 そして、これが王の見た最後の光景であった……。

「え……? みおが、やっつけちゃったの?」
 巨大シャンデリアと数多の武器に圧殺された『渇きの王』の血塗れた片手が力なく巨大重量の塊からはみ出していた。
 枸橘なりに『敵が先制攻撃を仕掛けてくるから、いつ此方が攻撃してくるか分からないような方法で攻撃をしよう』と考えて試みたのがこの作戦だった。
 故に枸橘自身も上手くいくか分からなかったし、創造した武器の自重で落下する事は想定はしていても、それが何時なのかはまさに運であった。
 天井裏に潜んでいたら、トドメは刺せなかったであろう。
 だが枸橘が喜びを噛みしめるまもなく、彼女の存在は『くたかけ公』の目に留まってしまった。
「おおおお……! オラトリオ、オラトリオではないか!!」
「ひっ!?」
 枸橘が生理的嫌悪で顔が引きつる。逃げたくても恐怖で身体が硬直する!
 そこへ、カシムが枸橘の盾となって立ちはだかった。
「早く逃げてください! 態勢を立て直しましょう!」
「う、うん……!」
「逃がすかぁぁぁっ!!」
 理性を完全に放棄した『くたかけ公』の攻撃を、限界まで衣服を脱ぎ去って高速化したカシムのナイフさばきでパリング防御!
「僕は盗賊だけど、たまにはお姫様を護る騎士の役割をしても罰は当たらないですよね!」
 消耗している『くたかけ公』の攻撃ならば、パワーアップしたカシムのナイフ一本で凌ぎ切ることが可能だ。
 何とか彼は枸橘を連れて、玉座の間から脱出することに成功するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『くたかけ公』

POW   :    容易く逃げられるとは思わないことだな
【数多のオラトリオの翼を吊り続けたこと】から【墜落の呪詛を帯びるに至った鉤付きの鎖】を放ち、【攻撃する。飛行する対象を追尾可能で、呪詛】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    選りすぐりを蒐めた至高の一品、称美するがよい
【オラトリオの羽根外套で空気の動きを読んで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    我が血で育てた天使たちの花だ
自身の装備武器を無数の【自身の頭に移植し瘴気を孕ませたオラトリオ】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:ヤマトイヌル

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレナータ・バルダーヌです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 領主を殺した『くたかけ公』は、満身創痍ながらも復讐を果たすことに成功した。
 目的を果たした本来の彼は、この地を去って朽ち果てるのを待つ身であった。
 しかし、突如として現れたオラトリオの姿に狂喜乱舞してしまう。
「どこだ……!? オラトリオは何処だ!?」
 もはや原初の目的すら忘れているようだ。

 猟兵たちよ、此処は選択の時だ。
 今の満身創痍の『くたかけ公』ならば、撃滅してこの地を解放することができる。
 だが、戦うだけが正解ではない。
 狂喜する『くたかけ公』をなだめ、もしも彼の目的を思い出させることができたのならば……もしかすると、別の答えが見つかるかもしれない。
 決戦の舞台は、領主の古城の最上階――巨大なオラトリオ像が立つ広大なテラスだ。

 君たちは吸血鬼を殺してもいいし、話を持ちかけてもいい。
ウォーヘッド・ラムダ(サポート)
一人称、二人称、性格等はプロフィールを参照。

■戦闘行動
敵への接近、または敵からの攻撃回避は装備『フライトブースター』『ダッシュブースター』を使用しての回避行動。
防御に関しては装備『アサルトヴェール』>『重厚シールド』>『超重装甲』の優先順位での防御行動。
攻撃に関しては『ASMー7』『LLS-3』をメインにしつつ、他装備も使用。

強襲用ってことで自分への多少の被害が承知済み。

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は無し。
また、"本目的に関係ない"NPC民間人への攻撃行動は無し。(やむを得ない牽制・威嚇射撃は有り)
あとはおまかせです。
アドリブ歓迎


龍泉寺・雷華(サポート)
くっくっく……漸くこの時が来ましたね……
我が力が必要とあらば、何時でも何処でも即参上!
如何な困難であろうと、知略と究極魔術にて解決して見せましょう!


ってー感じで颯爽と駆けつけて頑張っちゃいますよー!
ユベコも動きも全部お任せ!
何でも出来ちゃうのが我の凄い所ですねー
あ、でもえっちぃのだけは勘弁です!


よくポジティブ厨二娘って言われますが、きっと凄い褒め言葉なんでしょうね!
肝心な所が抜けてるとも良く言われますが……それは気のせいです、うん
戦いでは派手な究極魔術をメインに、詠唱の隙を魔術障壁と護身剣術でカバーするスタイルです!
ふふふー華麗なる我の活躍、ご覧に入れましょう!



 傷だらけの『くたかけ公』の前に、新手の猟兵たちが救援として駆け付けてきてくれた。
「メインシステム100%稼働。当機はこれよりエンカウントする」
 ウォーマシンのウォーヘッド・ラムダ(強襲用試作実験機・f18372)は、駆けつけるやいなや対重装甲用サブマシンガン『ASM-7』の銃口を吸血鬼に向けた。
 これに『くたかけ公』はオラトリオの羽根外套を翻して言い放った。
「選りすぐりを蒐めた至高の一品、称美するがよい!」
 これは外套に縫い付けられたオラトリオの羽の一枚一枚が空気の流れを読み取り、攻撃の軌道を先読みして回避することが出来るユーベルコードなのだ。つまり、ラムダの銃撃がこのままでは回避されてしまいかねない。
 しかし、ラムダは構わず『ASM-7』のセーフティを解除して照準を合わせた。
「セーフティ解除。対重装甲用サブマシンガン、発射」
 ラムダの銃撃性能は、もはやユーベルコードに到達していた。50分の1秒で乱射される対重装甲用銃弾は、どんなに『くたかけ公』が空気の流れを読んだところで次々と命中してゆき、吸血鬼の全身に鮮血の花が咲き乱れる!
「ぐっ!? な、何だ、あの武器は!? 嵐のように……何かが私の身体を、撃ち抜いてきたぞ……!?」
 戸惑う『くたかけ公』。ダークセイヴァーにはマシンガンがないので、ラムダの銃撃は吸血鬼にとって未知の脅威であった。当然、対策のしようがないのだ。
「敵性対象に銃撃は効果絶大と判断。当機は射撃を継続する。次弾装填。……発射」
 ラムダは容赦なく吸血鬼へ徹甲弾の嵐を浴びせてゆき、更に深手を追わせてゆく。
 遂に銃撃で倒れ伏す『くたかけ公』の姿を、高みの見物で眺めていた魔術師の少女がくぐもった声で嘲笑い出した。
「くっくっく……。無様、無様ですね、吸血鬼!」
 右目を抑えながら龍泉寺・雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)がニタリと微笑む。
「漸くこの時が来ましたね……? 我が名は龍泉寺・雷華! 覇天超級の魔力、今こそ此の暗黒の世界で本領発揮ですよー!」
 吸血鬼はよろよろと膝を付きながら立ち上がろうと試みる。
「貴様、メイガスか……! 確かに見かけによらず膨大な魔力を秘めているようだが……!?」
「見かけによらずって失礼ですねー!? 確かによく肝心な所が抜けてるとも良く言われますが……それは気のせいです! それによくポジティブ厨二娘って周りからすっごく褒められるんですよ! 当然ですよね、我は究極で最強の魔術師なんですから! ふんすっ!」
 雷華は誇らしげに胸を張って腰に手を当てて仰け反った。だが、彼女はポジティブ厨二娘という呼称が決して褒め言葉ではないことに気が付いていない。
 ブッダは時折やさしさから真実を口つぐむのだ。
「ええい、訳の分からん小娘が! 我が血で育てた天使たちの花をその身に刻め!」
 危うく雷華のペースに飲まれかけた『くたかけ公』が攻撃を開始!
 自身の頭に移植し瘴気を孕ませたオラトリオの花が、辺り一面に吹き荒れる!
「脅威を感知。当機は回避と防御に専念する」
 ラムダはフライトブースターで空中へ逃れ、アサルトヴェールと重厚シールドで瘴気混じりの花弁の嵐を弾き返してゆく。
 一方、雷華は、なんと呪われた花嵐の中を剣舞で斬り込んでいるはないか!
「何でも出来てしまう、それが究極たる我の凄い所ですねー!」
 赤雷を迸らせる雷冥剣クルシェラとこの世に切れぬものはない(という設定の)黒銀刀の二振りの刃を踊るように振り乱し、花弁を切り払いながら徐々に『くたかけ公』へと近付いてゆく!
 そんな雷華は何かを口ずさんでいるようだ。
「魔の理は我が手の内に――! 連なる魔術が奏でるは破滅の協奏曲――!」
 おお、これは! ユーベルコードの詠唱だ!
 彼女は先程まで抑えていた左目を閉じたまま詠唱を行うと、その言葉が次第に何重にも音声がブレてゆき、多重詠唱と化してゆくではないか!
「――今こそ、汝の敗北を告げる我が瞳を、見よ!」
 カッと見開かれた左の金の瞳が『くたかけ公』を見据えた次の瞬間!
 目の前の吸血鬼へ火・氷・雷・風・地・闇・光・聖の8属性の魔術が一斉に放たれた!
 これぞ覇天超級の究極魔術がひとつ!
『多重魔術・連魔唱(マルチスペル・コンビネーションマジック)』!
「――ッ!?」
 あまりの威力に『くたかけ公』は声すら上げられずに吹き飛んでいった。
「敵性対象、損傷甚大と判断。連携に感謝する」
 ラムダの言葉に雷華はテンション高く言葉を返した。
「いえいえー、それほどでも……ありますけどー! そちらこそズバババーってすごかったですねー!」
「称賛、感謝」
 救援組の猛攻が成功し、狂える『くたかけ公』にかなりの傷を追わせることが出来た。
 もうひと押しで討伐が叶うやもしれないだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木常野・都月
出遅れて申し訳ないけれど参戦する。
状況はざっくり聴いている。

俺にも…俺より歳若いオラトリオの先輩友人がいるけれど…
このヒトには合わせたくない。

ヒトを好きという感情は、良い事だと思う。
きっとくたかけ公にも好きなオラトリオがいたはずで。

でも…合わせたらダメだと思う。
だって、少なくともオラトリオは幸せになれる気がしない。

狐の求愛ダンスだって、オスにもメスにも拒否権がある。
ましてや蒐集品…
ヒトは…難しいな。

せめて、彼を猟兵としてを骸の海に戻すよう、尽力したい。

UC【精霊の矢】を火の精霊様の助力で攻撃したい。

相手のUCは[カウンター、火の属性攻撃]で相殺を。
無理なら[逃げ足、オーラ防御]で対処したい。


鹿村・トーゴ
くたかけがオラトリオの保護者になる、って可能性はゼロじゃねーけど良くてコレクターじゃね?
ってもオレまともな時の性格知らねーし…
今は頭も体もガタガタみたいだけど万全なら凄い強い奴なんだろ?
仕留めるなら好機は今、オレは討伐を推すよ

くたかけから少し離れた人が隠れそうな瓦礫幾つかにクナイ・手裏剣を2~3ずつ設置
自分は隠れて接近しつつ設置した武器を念動力で敵に投擲し気を逸らす
相棒のユキエは上空を羽ばたかせ戦場離脱させる…大型のユキエの羽音や羽根に気を取られる事があればツイてるが
敵に接近したらUCで攻撃
or
陽動が失敗・敵の反撃が先と感じたら囮クナイにUC威力を乗せ投げる
【暗殺/念動力/だまし討ち/忍び足】


佐倉・理仁
散々好き勝手やっちまったし、怒ってるだろうなぁ……まあ、どちらにせよ隠れてもいられねえ。

●殺すつもりも赦すつもりもないが……
邪魔に使った死霊をちらつかせつつ(非UC)姿を見せて
「お疲れさん。後はアンタだけだぜ、オブリビオン
……相手の攻撃はあえて受ける。
それで効果を発揮するモンもあってね。……頼むぜ、死神。
(被ダメージに関わらず〈機械喉〉による自動詠唱【死を振り払う神】発動、機械喉から下が無傷のUDCへと変異)

敵がつくる「全ての傷」を奪い去り、蓄積したダメージを鎌の形に収束させる。
俺たちも無傷とはいかんが、そいつは覚悟の上、かき集めた『呪詛』の鎌、お返しするぜっ。

言い残す事ァあるか。聞いとくぜ?


龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎

【POW】

「さて、このまま逃してもろくなことにならないだろうしここで倒れてもらうね!!」

囮として、焔翼を使って飛行
そうすれば、鎖が飛行している対象を優先的に追尾してくるはずだから【武器受け】で対処
そしたら、鎖を【怪力】で引っ張ってこちらに引き寄せたら尻尾で地面に叩き伏せて、追撃でホムラを【槍投げ】で足を地面と一緒に【串刺し】することで動きを封じ、焔【属性攻撃】の『地裂岩断撃』を放つよ

"呪詛"は…耐性はないけどとりあえず【気合い】でどうにかするよ


枸橘・水織
今回の一件で(少なくともこのくたかけ公は)話に聞く以上に『オラトリオの敵』と認識

まずは指定UCを使用して、枷つきの鉄球を創生…くたかけ公の両手両足に装着し自由を奪う(拘束の道具・方法にもっといいものがあるなら、変更・追加可)

本来なら【二回攻撃】…ここで追撃をするのだが、くたかけ公に…(あまり話したくもないのだが…)
「…みおを捕まえたら…どうするつもりだったの?」

答えを聞いた後
「…(神秘体験で覚醒する種ゆえに)仲間意識とか無いけど…でもみおもオラトリオだから…」
翼に対する想いはそれぞれだが…翼を奪われる苦しみ・悲しみは理解できる

錬金魔法で台座を崩すなどして、巨大なオラトリオ像の下敷きにします



 テラスの床に叩き付けられた『くたかけ公』が、怒りに身を震わせながらゆっくりと立ち上がる。
「猟兵ども……鬱陶しいぞ! 隠れていないで出てこいっ!!」
「ああ、散々好き勝手やっちまったし、やっぱ怒ってるよなあ……まあ、どちらにせよ隠れてもいられねえ」
 佐倉・理仁(死霊使い・f14517)は観念して物陰から姿を現した。
 それがきっかけとなり、潜伏していた他の猟兵も『くたかけ公』の前へと飛び出す。
「さて、このまま逃してもろくなことにならないだろうし、ここで倒れてもらうね!!」
 龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)は黒焔竜剣 壱式『禍焔の大剣』を正眼に構え、相棒の槍竜のホムラが眼前の敵を威嚇する。
「仕留めるなら好機は今、オレも討伐を推すよ」
 鹿村・トーゴ(鄙村の忍者見習い・f14519)も此の場の討伐を提言した。
「くたかけがオラトリオの保護者になる、って可能性はゼロじゃねーけど良くてコレクターじゃね? ってもオレまともな時の性格知らねーし……」
 露骨に顔をしかめつつ、すぐに周囲で身を隠せそうな場所を鹿村は見当をつけていた。言葉を紡ぎ、それを『くたかけ公』に勘付かれないように。
「まともであっても紅音の言う通りろくなことにならないだろうなァ。今は頭も体もガタガタみたいだけど万全なら凄い強い奴なんだろ? だったら新たなここの領主に返り咲く前に討滅しちまうべきだ」
「……みおも、あのオブリビオンを倒すの、賛成……」
 生理的嫌悪感からか、顔色が優れない枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)が、鹿村の言葉に強く頷いた。
「とにかく、気持ち悪い……目つき、怖い……!」
 枸橘が身震いするのも無理はない。
 今この瞬間でも、オラトリオを目の当たりにした『くたかけ公』は、歓喜と狂気の眼差しを静かに――しかし執拗に凝視しながら舌なめずりをしているのだ。
「はぁ……はぁ……オ、オラトリオ! 天使がいるぞ……! ああ……美しい!」
(く、くたかけ公は……オラトリオの敵……。みお、憶えた……)
 今回の件で『くたかけ公』に対する枸橘の認識が深海の底まで低く最低な認識へ上書きされた瞬間である。
 と、そこへ遅れて決戦の舞台へ駆けつける猟兵がいた。
「出遅れて申し訳ないけれど参戦する。状況はざっくりだが、そこで聞いて把握した」
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)はゆっくりとテラスへ入ると、狂乱している『くたかけ公』へ語り掛けるように独りごちる。
「俺にも……俺より歳若いオラトリオの先輩友人がいるけれど……。このヒトには会わせたくない」
 枸橘を舐めるようにして見詰める『くたかけ公』の様子に、木常野は初見からわずか数十秒で結論付けた。
「ヒトを好きという感情は、良い事だと思う。きっとくたかけ公にも好きなオラトリオがいたはずで。その村とやらに、きっといたのだろう」
 狂喜のあまりに奇声を発する『くたかけ公』を一瞥すると、木常野は今回の復讐劇に憐憫の感情を示す。
「好きなヒトやモノを、第三者に壊されたら……オブリビオンでなくても怒る。きっと、俺も悲しくて、許せない気持ちになるかもしれない。でも……」
 彼は『先輩』の顔を思い浮かべると、首を横に振った。
「復讐を果たしたとしても、このヒトにオラトリオを会わせたらダメだと思う。だって、少なくともオラトリオは幸せになれる気がしない。狐の求愛ダンスだって、オスにもメスにも拒否権がある。ましてや蒐集品……」
 きゅっと木常野は口を真一文字に閉ざしてしまった。
(ヒトは……難しいな。好きな相手を好きすぎて、傷付けたり縛り付けてしまう……)
 木常野はヒトの感情の機微にまだまだ疎い部分がある。
 それでも『くたかけ公』のオラトリオへの『愛情表現』の歪みは、木常野にも理解出来た。
(せめて、彼を猟兵としてを骸の海に戻すよう、尽力したい……)
 エレメンタルロッドを両手に掲げ、全身の魔力を増幅し始める。
 他の猟兵も、各々の得物を携えて身構えた。
「私のオラトリオの楽園を……邪魔するなぁぁッ!!」
 遂に、最終決戦が始まった!

 テラスに数多の亡霊の姿が溢れ返っていた。
「殺すつもりも赦すつもりもないが……」
 佐倉が先程の領主との戦闘で見せた幻影……ではなく、此方は本物のオラトリオの亡霊たちを魔本『あなたのための道標』によって現世に呼び寄せたのだ。
「お疲れさん。後はアンタだけだぜ、オブリビオン。……アンタの攻撃はあえて受ける。ほら、掛かってこい」
 亡霊の正体に『くたかけ公』は怒りの眼差しを佐倉へ向けている。
 これに龍ヶ崎が目を見開いて驚いた。
「理仁!? ダメだよ、そんな事!!」
 とっさに龍ヶ崎は、背中から三対の黒焔の竜翼を噴き上げると、一気に『くたかけ公』の頭上を取ってみせる。
「ほら、くたかけ公! 飛べるのは何もオラトリオだけじゃないって事、見せてあげるよ!」
「ほざけェッ!! よくも邪魔してくれたなァ!?」
 オラトリオを貶されたと思い込んだ『くたかけ公』が吠えた。
 頭の瘴気を孕ませたオラトリオの花弁が佐倉に、呪われた鉤付きの鎖が龍ヶ崎を追尾し始める!
(やっぱり! あの鎖は飛行する敵を追尾する!)
 龍ヶ崎は自身に攻撃を集中させ、他の猟兵が動きやすくなるように誘導したのだ。
 事実、この隙に鹿村は相棒の白い雌オウムのユキエとともにベランダに建立する巨大なオラトリオの石像の影に隠れた。これから不意打ちを狙うのだろう。
 枸橘も『くたかけ公』の視線に入らないように、瓦礫の影に身を潜めた。
 そして花弁と鎖を黒焔の大剣でなぎ払って身を守りながら、ホムラとアイコンタクト。反撃のチャンスを窺う。
 一方、佐倉は宣言通り、瘴気を孕ませた花弁に全身を刻まれ続けていた。
「本当に攻撃に身を晒すなんて!」
 龍ヶ崎が愕然としていると、佐倉の後方から炎の魔法矢が前方へすり抜けてゆく!
 そのまま呪われた花弁を焼き貫き、290本もの炎の魔法矢が『くたかけ公』に突き刺さった。
「炎の精霊様、ご助力感謝します」
 木常野の援護射撃で佐倉の身の安全は確保された。
 しかし、佐倉は複雑な表情を浮かべていた。
「助けてくれたのはありがてーけど、それで効果を発揮するモンもあってね」
 佐倉の首から下は切り傷でズタズタになっていた。
 しかし、彼は機械喉を押さえると、その身体がたちまち変化し始める。機械喉の高速詠唱!
「今、この手は死さえも奪う奇跡を叶える。ライフ、俺たちは全てのキズをさらう風!」
 佐倉の首から下が黒衣に包まれる。傷だらけの全身は無傷の肢体に挿げ替えるように変化した。
「……頼むぜ、死神」
 ユーベルコード『魔身・死を振り払う神(ライフ)』は、佐倉が体に宿すUDCのひとつである『病狩りの死神』による侵食変異だ。
「アンタが作る『全ての傷』を奪い去る。だから俺の身体は無傷だ。追撃しても無駄だぜ? 全部、全部、一切合切、アンタの攻撃で刻まれた分だけ、その傷を奪い尽くしてやるよ」
「そんな事ができるなら早く言ってほしいの……!」
 空中戦で鉤付きの鎖を避けた龍ヶ崎が安堵の声を漏らす。
「だったら私も反撃開始だよ!」
 かつてオラトリオを吊し上げた呪われた鈎付き鎖を怪力任せに掴み、逆に龍ヶ崎自身へと宙へ引き寄せた!
「何だと!?」
「吸血鬼の一本釣り! みんな――今だよ!」
 龍ヶ崎の合図で、鹿村と枸橘が攻撃を仕掛けた。
「ユキエ、離れてろよ?」
 鹿村が相棒の雌オウムを上空へ逃がす。その時、空中に引き寄せられて滞空する『くたかけ公』とユキエの目が合った。
「おお、天使ではないが、やはり鳥は美しい……!」
 なんと手を伸ばそうとする『くたかけ公』に、鹿村が焦る!
「あいつ、鳥なら何でもいいのかよ!? ユキエ、真上へ飛べ!」
 鹿村の叫び声と同時にユキエが急速に上空へ飛翔してゆく。ほぼ同時に、テラスのあちこちから――龍ヶ崎と佐倉の戦闘中にこっそり仕込んでおいたクナイと手裏剣が念動力によって天空へ飛び出した!
 そのまま『くたかけ公』を捉えると、四方八方から刃が穿ち、傷を抉り抜く!
 鹿村の暗殺と念動力の技能並びに、地形を利用して瞬時に死角へ武器を仕込む優れた判断力が為せる業だ。
 空中で剣山と化した『くたかけ公』は血反吐をぶちまける。
 そこへ龍ヶ崎が鎖を振り回しだせば、所持者である『くたかけ公』は必死にテラスから落下しないように鎖にしがみつく。しがみつかざるを得ない。もしも離せば、古城のテラスから地面へ落下し、オブリビオンと言えども無事では済まされないからだ。
「これでどう!?」
 力任せに龍ヶ崎は『くたかけ公』をテラスの床に叩きつけた。
「ホムラ!」
 相棒の名を呼ぶと、白銀の仔竜はたちまち黒焔を纏う長槍へと変化、穂先を標的に向けると全力で『くたかけ公』の腹目掛けて投擲!
 怒涛の連撃に『くたかけ公』は昆虫標本めいてテラスの床に縫い付けられてしまう。
 更に、ずっと様子を窺っていた枸橘がユーベルコード『錬金魔法・処刑道具創生(アルケミィ・クリエイト・エクスキューションツール)』を発動させる。
「あなたはこの魔法から逃げ切る事は出来ないから……」
 出現したのは磔刑台、すかさず『くたかけ公』の手足を拘束して磔(はりつけ)にして身体を拘束してしまう。
「腹に槍が刺さって、十字架に掛けられて……。でも吸血鬼なんだよね……」
 伝説の聖人の如き有様の再現だが、モチーフが吸血鬼では枸橘でなくても微妙な気分になるのはやむを得ないだろう。
「……みおを捕まえたら……どうするつもりだったの?」
 唐突に枸橘が『くたかけ公』へ尋ねた。本当は口も聞きたくないほどの嫌悪感が胸の奥から湧き上がっている。それでも、彼女は好奇心を押さえることが出来なかった。
「それ、聞かないほうがいいと思うんだがなー?」
 鹿村は枸橘をやんわり静止する。だが、枸橘はじっと『くたかけ公』を見詰めて話すように無言の圧力を掛け続けた。
 すると、大きく喀血した後に『くたかけ公』が答えた。
「まずはその翼を直に頬擦りし……羽根を数枚拝借して外套に加え……最後は片翼を捧げてもらえれば最高だ……!」
「な……? アレはああいう奴なんだ。偏愛が歪んで後戻りができねーところまできちまってる」
 鹿村が胸糞悪そうに嘆息を吐くと、クナイを握り直した。
 枸橘は想定した通りの答えが帰ってきたのだろう、沈痛な面持ちで『くたかけ公』を見詰めていた。
「ここの世界のオラトリオと仲間意識とか無いけど……でも、みおもオラトリオだから……」
 神秘体験を経た者がオラトリオとして覚醒する。故に、枸橘には全くの他人事でしかない。それでも、同族が受けた苦しみは理解できる。
「だから……許さないよ」
 磔刑台が突然、足元から発火しだした!
「今からあなたを、火刑に処すね……。罪状は、殺人罪……拉致監禁罪……脅迫、暴行、傷害、オラトリオへの侮辱……!」
「こ、こんな拘束……!」
 オラトリオの羽根外套が逆立つ! 満身創痍とはいえ、力押しでは『くたかけ公』が俄然有利。枸橘の実力では長い間は押し止められない!
 その時、2名の猟兵が燃え盛る十字架へ向けて弾丸めいて駆け出していった!
「一瞬あれば充分だ。“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” ……穿て、大鉄嘴――」
「かき集めた『呪詛』の鎌、お返しするぜっ!」
 鹿村のクナイに集められたツルハシ状の超圧縮空気と、佐倉の右手から具現化する『蓄積したダメージ収束させた鎌の刃』が、『くたかけ公』の真横を素早く通過してゆく。すると、吸血鬼の胸元がX字に深々と切り裂かれ、辺り一面に散水機めいて呪われた血液を撒き散らしていった。
「あ、クナイが砕けちまった……!」
「今までの過程、俺たちも無傷とはいかんが、そいつは覚悟の上の攻撃だ、痛てぇだろ? って、トーゴはドンマイな?」
「仕方がねーよ、予備はまだあるし。つーか、もう終わりだろ。ほら」
 鹿村が空へ顎を向けた。
 佐倉が空を見上げると、漆黒の焔を噴き上げながら急降下してくる竜神の少女の姿があった。
「鎖から伝わった呪詛は気合いで跳ね除けたよ! さあ、その歪んだ愛情、叩き割ってあげる!」
 ユーベルコード『地裂岩断撃』!
 漆黒の呪炎を纏った無骨な大剣が『くたかけ公』を文字通り叩き斬った。
 すると直後、古城が突然、地鳴りを上げて崩れ始めたではないか!
 鹿村の一撃でテラス全体の耐久度を大幅に削った後に龍ヶ崎の一撃で、テラスはおろか古城全体が崩壊し始めたのだ。
「まずい、このままだと吸血鬼諸共、俺たちは生き埋めだ」
 木常野がテラスを飛び降りようとするも、これはヒトの身で飛び降りれる高さではないとすぐに悟った。
 その時、枸橘が木常野に向かって叫んだ。
「あの……! 魔法の矢で、あの石像の足元を撃って……!」
 瞬時に木常野は言われるがままに火の精霊様に祈りを捧げた。
 すると290本の矢の弾幕が、テラスに建立しているオラトリオ石像の足元を穿つ!
 鹿村もすかさず石像の足元へ駆け寄った。
「こいつを倒して、地面へ降りる架け橋にするつもりか。『くたかけ公』も潰せて一石二鳥だなァ」
 再度、鹿村はユーベルコード『空嘴(カラバシ)』を石像へ叩き込んだ。
 足元が砕け、遂に倒壊するオラトリオ石像!
 倒れ込むまでの僅かな時間、佐倉は燃え盛る『くたかけ公』へ尋ねた。
「言い残す事ァあるか。聞いとくぜ?」
「……かった、と」
「あ? 聞こえねーよ?」
 佐倉が問い返すと、吸血鬼は安らかな笑顔でこう告げた。
「すまなかった、と。彼女たちに……伝えてくれ」
「……へぇ?」
 佐倉が十字架から飛び退くと、直後にオラトリオ石像が目の前を押し潰し、破砕していった。
 猟兵たちは倒壊したオラトリオ像の背中から滑るように古城の中庭へ降り立つと、正門から全員で脱出する。
 佐倉が振り返ると、古城はたちまち煌々と赤い炎に包まれていく光景を目の当たりにした。
「最期の最期で『すまなかった』とか、どんだけ不器用なんだ、アンタ……?」
 思わず肩を竦めて呆れてしまう佐倉。その反応に、木常野と鹿村が『くたかけ公』の最後の言葉を察した。
「ヒトの好きという感情は、難しいな。傷付けることでしか愛せない。そんなこともあるのか」
「だなー。……俺も、よく分からねーな」
 鹿村の手に、とある少女の肉と骨を斬った感触が蘇った。だが、すぐに首を思い切り横に振って振り払う。
「本当、色恋沙汰は、難しいよなァ……」
 燃え崩れる古城に、猟兵たちはそれぞれの想いを抱くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月05日
宿敵 『くたかけ公』 を撃破!


挿絵イラスト