【旅団】シューティング・ダッチマン
【これは旅団シナリオです。旅団「Para/Bellum」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです】
●フライング・ダッチマン、船倉にて
それなりの人数が入り、なおかつなるべく船さまざまな場所へアクセスするのが容易な場所といえば船の中央部にある船倉だろう。
そこを何に使うのか、といえば――セーフエリアだ。サバイバルゲームにおいて、装備の用意やゲーム間の休憩、ヒットコール後の退出先として機能するスペースである。
「さて、それでは本日のゲームルールを説明しよう」
栄はそこにホワイトボードを持ち込み、大雑把なダッチマン――つまりは戦場の地図を記すとともに、本日のルールについての説明をはじめた。
サバイバルゲームにおける基礎ルールは3つ。
1つ、どのような攻撃であれ、身体に当たった時点で「ヒット」とコールしてセーフエリアへ戻ること。
2つ、ユーベルコードの使用は身体強化系のみ。攻撃・防御への使用は禁止。
3つ、セーフエリアでの攻撃は禁止。
「まぁ、猟兵対猟兵のゲームだからね。それなりに激しい戦闘になることは織り込み済みだ。今日は近接攻撃もOKだから、くれぐれもやりすぎないようにしてね?」
特に、フィールドを壊さないように注意ね――肩を竦め冗談めかして言う栄。
「さて、ヒットについて補足しよう……どんな攻撃でも、身体に当たればヒット。逆を言えば、武器に着弾してもヒットとはならない。だから、近接武器で相手の攻撃を切り払ったりとかもOKさ」
ちなみに、防具は身体に含まれる。盾は「殴れるから近接武器」という裁定だ。
「次にゲームルールについてだけれど」
言って、栄は指を3本立てる。
「本日のゲームルールは3種類。オーソドックスな殲滅戦。互いの本陣を目指すフラッグ戦。タイムを競う攻防戦」
殲滅戦は文字通り。同数に別れて、そのどちらかが全滅するまで戦闘を継続する。メディックの有無でさらに2通りに分かれ、メディックありの場合はヒットされて戦場で倒れた仲間を復活させることが出来る――ヒット後にさらに処刑コールをされて、初めて場外となるのだ。
フラッグ戦は、どちらかの殲滅ではなく本陣に置かれたフラッグベルを鳴らすことで勝利となる。基本的にメディックありの状態でのルール運用となる。攻防のバランス感覚が問われることだろう。
最後に、攻防戦。攻撃チームと防衛チームに別れ、攻撃側は本陣に戻ることで無限に復活が可能。防衛側はヒット即退場。この条件で、攻撃側が防衛側フラッグを鳴らすのにどれくらいの時間を要するのかを競うのだ。
「それぞれのルールでどういう風に戦うのか……実際の戦闘とはさすがに毛色が違うけれど、それでもいい経験になると思うよ?」
それと、と。栄は最後に1つの特殊ルールを付けたす。
「毎回、フィールドのセミランダムな場所に特別な剣が置いてある。その剣を持っている時は、剣を捨てる代わりに1回だけヒットを無効化できるっていう寸法だ。余裕があれば、探して使ってみるといいよ」
それじゃあ、チーム分けが終わったらゲーム開始だ。
そう告げて、栄は参加者に準備を促すのだった。
Reyo
猟兵vs猟兵のサバイバルゲームをお送りいたします、Reyoです。
●フィールドについて
本シナリオにおいてフィールドはPara/Bellum友好旅団「幽霊船 フライングダッチマン号」さま( https://tw6.jp/club?club_id=2218 )に提供していただきました。
●プレイング&リプレイについて
自分が最も興味のあるルール、当日の得物、戦闘スタイルの記載をお願いします。
チーム分けをMS側でランダムに行い、各ゲームでのキャラクターの活躍度を判定します。
その後、リプレイは「それぞれのキャラクターにとってのハイライト」という形で執筆をいたします。
ご了承ください。
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
👑1
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
須野元・参三
サバイバルゲームは紳士の遊び、だからこそ私がキヒンと輝く活躍でサバイバルゲームを盛り上げようじゃないか!
私が選ぶゲームルールは殲滅戦だ!
装備は普段使用してる『マシンピストル参三気品スペシャル』だな
軽量かつ大量に撃てる!凄いだろ
[SPD]作戦はマシンピストルという軽量の装備という利点からフィールド外側から素早く気品的に移動して敵の背後に回り込む裏どりを狙うぞ
マシンピストルで遠距離での撃ち合いは辛いからな、有利に立ち回るためにも接近して射撃する気品的に立ち回るぞ!
あと私は気品過ぎて目立ってしまうから、黒っぽい衣装で姿をカモフラージュして狙われにくくしなければな
気品痛いの嫌いだからね
アリスティアー・ツーハンドソード
【フィールドギミック】
今回はフィールドギミック。ということで基本的にはゲーム開始時点で設置された場所から動かないようにしよう
僕のUCは使用すると持ち主の武器やUCと融合し強化ができる。銃であれば射程や威力の上昇、近接武器であれば大型化やスラスターの追加による突撃力の強化と言った感じだね
身体強化のUCと合わせるなら身体の一部を覆う鎧となって、更なる強化を与えることができるよ。ただし持ち主がヒットされたなら僕は【白馬の王子様】によるテレポートで栄の下に移動するから、急な弱体化には注意したまえ
……しかしこう、存外暇になりそうだな。小人放って物音でも立てるか、こういうハプニングもいいスパイスだろう
ミスティ・ミッドナイト
猟兵同士のサバゲー、貴重な体験ですね
勉強させていただきます
ハンドガンで参戦
歴戦の猟兵相手に、なるべく正面から挑むのは避けたいですね
隠密行動を主として、裏取りを狙います
活躍できそうなのは、殲滅戦でしょうか
先ずは船内地図を頭に叩き込み、味方との連絡手段(無線機やハンドサイン等)を確認。情報を味方につけたいところです
暗く、自身の影が投影されないルートを進みます
複数人で行動している敵は隠れてやり過ごし、味方に情報を伝えます。単独の敵に対してのフリーズコールを狙いたいですね
見つかった場合は、近接戦闘に特化した射撃術でお相手を
おっと、ゲーム終了後には皆で清掃しましょうね
痕跡を残さず、が猟兵の基本ですから
キリノ・サーガスラーフ
今回はサーガお休みかな......霧だけ使わせて貰うよ
僕はフラッグ戦希望、だって楽しそうだしね!
いつも使ってるように短剣二本でいこっか
前線で相手を引き付けたらいいんじゃね?
サーガの霧はもしかして身体に入る?だとしても実体持たないし若干視界不良になるだけだから......まあその時はその時、霧にも攻撃を避けて貰おう!
てことで俺は前線に出て囮になる。ナイフ両手に暴れまくるだけ、取れそうだったらフラッグ取るがな
遠距離相手は不利だけども、深追いはせず、あくまで注意を此方へ
殺せねえのがもどかしいけどよ、これはこれで楽しいな!
一一・一一
「スナイパーならばこういう時も目立たざる負えないっすねぇ」
基本的な喋り方は「~っす」他人の呼び方は「名字+さん」
武装は2丁のスナイパーライフルとトラップ用のワイヤー(スパイダー)、各種手榴弾
興味あるルールは「攻防戦」さめるのではなく防衛組に回ってトラップで嫌がらせをします
戦闘スタイルとしてはチームの味方にトラップの有無の見分け方を伝えてから『スナイパープライド』を起動して「第六感」を強化、「罠使い」「ロープワーク」「第六感」による手榴弾+ワイヤートラップ、ワイヤーだけのトラップ、フラッシュボムとワイヤーによるトラップを仕掛けます
敵と遭遇した場合は「クイックドロウ」「スナイパー」で攻撃します
ヴァシリッサ・フロレスク
アドリブ大歓迎!
・殲滅戦、メディック無し
・武装
①プライマリ:ノインテーター
②セカンダリ:スコル
③バックアップ:クルースニク
……スヴァローグはちょっとお留守番だね。
同業者とやり合えるなんてまたと無い機会だ。よーく勉強させて貰うよ?
Hide&Seek――もういいかい?さァ、鬼に喰われンのは誰かな?
『血統覚醒』発動、ジャンプ力・反応速度・暗視力等強化。甲板を主戦場とし、船内の遭遇戦なんて博打は避け、マストやセイルなんか活かして立体機動、優位に位置取りする。
……っても、相手も猟兵だ。常識なんざ通用しないとは思うケドね。さて、どんな出し物を見せてくれンのやら?
――フフッ、目一杯愉しませて貰うとするか。
マリア・フォルトゥナーテ
アドリブ・連携歓迎
船の舵輪の傍にかっこつけて立っていると、何やら甲板の方で動くものを見かけた。
すばやく腰のガンベルトからSAAを抜いてファニングによる六発の弾丸を見舞う!
「私には、弾の気持ちが分かります!」
実際、そんなもの分からない。銃を触った事など過去にたった一度だけ。
ただ言ってみたかっただけだ。
だが、跳弾を操る術こそないが、その早撃ちだけは本物だった。
武術を修めた者故に、身体のコントロールはお手の物。常人を超えた速度で手を動かすことは容易く、速すぎて、六発分の銃声が一発の発砲音に聞こえてしまう程の高速発射!
「わ、私のリロードはレボリューションです!」
慣れぬ手つきで弾を込めるマリアだった。
秋月・信子
@SPD
・本体の信子
ポジションはディフェンダー
メイン:スコープ搭載のエアコッキングライフル
サブ:電動ハンドガン
・二重身(ドッペルゲンガー)の姉さん
ポジションはアタッカー
メイン:サプレッサーを取り付けた電動式SMG
サブ:リアルカート式ガスリボルバー
・戦法
姉さんとは同チームなので、それぞれの役割に徹ながらチームプレイをします
私は【地形の利用】をしながら遮蔽物越しに【スナイパー】で先を見る『目』を
姉さんは私の指示に従い【ダッシュ】で多段マガジンの弾幕を武器に【制圧射撃】を行う『指』を
瓜二つな外見を利用して私が敵チームを【おびき寄せ】、相手はスナイパーと勘違いさせて姉さんでの【だまし討ち】もできますね
茅場・榛名
マリア(f18044)隊として参加
ルール:TDM(殲滅戦) アドリブ大歓迎(むしろ推奨?)
極力目立たないよう、サプレッサー付きのアサルトで静かに戦う。
クルーとして、マップはボクたちの小隊の方がよく知ってるからね。
「エージェント特別訓練開始。チームで最後まで生き残れ。
どんな状況でも最後まで諦めるなよ」
剣がどこにあるのかは気になるな。見つけたら…回収せず潜伏し、
釣られてきた敵を撃つか。伏兵戦法だね。
友軍の兵士や猟兵とも連携を取って着実に倒したい所。
「よし、ここに兵を伏せるよ。射線が通ったら撃ってよし」
それじゃ、細かい所は実戦で伝えよう。作戦開始!
●エレガントに(AM第1ゲーム:殲滅戦にて)
ゲーム開始の合図であるサイレンが鳴り響く。猟兵vs猟兵のサバイバルゲームの幕が切って落とされたのだ。時刻は午前、イベントの開始を告げる第1ゲームは、ともかく簡素なルールである殲滅戦だ。
フィールドは幽霊船フライング・ダッチマン号――須野元・参三(気品の聖者・f04540)の所属するAチームの出撃地点は礼拝堂BARであった。比較的広い礼拝堂は射線も通りやすいが、適度に置かれた信徒席が丁度良い遮蔽物としても扱えた。
「ふふっ、気品的に速攻を掛けさせてもらおうじゃないか! 戦場を盛り上げていくぞ!」
サイレンと同時に信徒席をものともせず駆けだす参三。普段の煌びやかな装いから一転、主たる飾りを深い艶のある黒銀色へと変えたその姿は、意図的に照明の絞られたダッチマン通路をまるで影のようにひた走る。装備を機関拳銃――マシンピストル参三気品スペシャルという名の特注品――1挺に絞ったこともその行動の軽妙さを後押ししていた。
『参三さん、そのペースですとおそらくBチームともう間もなく接敵することになりますよ』
「気品的には問題ないとも! そも、私の装備では接近せんとどうにもならないからな」
ザッ、という空電音の後、参三の耳元で響いたのはチームを同じくするミスティ・ミッドナイト(夜霧のヴィジランテ・f11987)の声。ハンズフリーレシーバーを介した連絡手段は、今のところ問題なく機能していた。
『そうそう、正面戦闘はアタシに任せてればいいのさ! 参三はエレガントな奇襲担当なんだからね』
その通信に横から茶々を入れるのは、シューティングレンジ『GuNs 'N Noobs』店長であるヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)だ。通信越しなのでそ情こそ伝わらないが、いつものようなニヤニヤ笑顔を浮かべていることは声だけでも読み取れるだろう。
『お楽しみ中、失礼します――後部マストの上方を抑えました。今のところ、海賊チームの皆さんは甲板には出てきていないようですね。姉さんのほうはマスト下部を制圧中です』
最後のAチームメンバーの声が通信に乗る。彼女の名は秋月・信子(魔弾の射手・f00732)、Aチームメンバーの中で最大射程を誇るスナイパーライフルを持ち込んでいる、いわばチームの「目」である。
信子が「姉さん」と呼んだのはUCで呼び出されたドッペルゲンガーのことだ。なお、召喚はゲーム開始時の1回のみ、姉本人のヒット判定に加えて信子本人がヒットされた場合は姉も同時ヒット扱い等、身体強化系UCと見做しつつも厳しいルールが課せられている。
「なるほど、敵チームと激突しそうなところにはヴァシリッサが。相手の動きは信子が見ているわけだね? ……これは気品的裏取りのチャンスではないか!」
ポン、と手を打ち参三はゆっくりと主甲板の端へと姿を現わす。ちらりと後方を振り向いてマストの方を見上げれば――ああ、キラリと反射したのがおそらく信子の構えるスナイパーライフル、それのスコープだろう。
――不意に、タァン、という射撃音と共にマストと前部甲板を結ぶ形で火線が走った。ヒットコールは聞こえないことから外したか、あるいは障害物で遮られたか。応じる射撃は2連。ほぼ同期した形で2筋の射線が前部甲板からマストへと飛ぶ。
甲板の制圧権をめぐる狙撃戦が始まったのだ。程なく、最前線を務めるヴァシリッサたちの戦闘も開始されることだろう。
「戦いはエレガントであれ。気品の輝きを見せねばな」
意気込む声は小さく。船内を動いていた時以上に動作に気を使い、仲間たちの戦闘音を隠れ蓑に参三は歩を進めていく。
スナイパーライフル同士の銃撃戦を避け、特に敵側からの射線に身を晒さぬように細心の注意を。黒銀色の飾りは気品を主張しつつも、戦場における視認率を下げるという意味では最適なものであった。
(しかし、これ以上の前進は難しそうだな……遮蔽物がない)
障害物として置かれた樽の陰に身を隠しつつ参三は前方を伺う。船内へと続く通路付近には、信子と狙撃戦を繰り広げているジャージ姿の猟兵。名前は……ブリーフィングで聞いた覚えがあるがさてなんといったか。
「信子、少し弾幕を厚くできるかね? ――狙撃手の目の前まで詰めた。釘付けにしてくれれば気品が対処しよう」
レシーバーに囁く。了承の声は返らなかったが、返事の代わりとでもいうようにマスト方面からの射撃密度が増した。慌てて身を隠す敵狙撃手だったが――その位置は生憎と、マストからの死角ではあっても参三からの死角ではない。
慌てず、騒がず。機関拳銃の銃口を狙撃手へと向け……放つは必中のバースト射撃。
「――ヒットっす!」
ヒットコール。栄の開いた転移ゲートでセーフエリアに転送される敵チームのスナイパーの姿を見て、参三は今こそが好機と樽の陰から身を躍らせた。セレクターをフルオートへと切り替えつつそのまま船内通路へと雪崩れ込み――狙撃手のカバーについていた1名を機関拳銃の掃射でヒット。
ひーん、ヒットですぅ、という声を残してセーフエリアに退場するこのフィールドの主を一瞥し、参三はさらに敵の後背を刺すべく船内へと踏み込んだ。
――かちり。
「えっ?」
ぱぁん、という景気のいい音と共に参三の足元でグレネードが破裂する。ワイヤートラップと接続されていたそれは、おそらくは狙撃手の置き土産だったのだろう。巻き散らかされるゴム弾は、当然のように参三の全身を叩いた。
「ひ、ヒットだ……」
――第1ゲーム、須野元・参三の成績は2キル。華麗な浸透攻撃のオチとしてトラップを踏んだものの、彼女の活躍により人数的有利を確かにしたAチームが勝利するのにそう時間はかからなかった。
●エレガントに(AM第1ゲーム:殲滅戦にて)
ゲーム開始の合図であるサイレンが鳴り響く。猟兵vs猟兵のサバイバルゲームの幕が切って落とされたのだ。時刻は午前、イベントの開始を告げる第1ゲームは、ともかく簡素なルールである殲滅戦だ。
フィールドは幽霊船フライング・ダッチマン号――須野元・参三(気品の聖者・f04540)の所属するAチームの出撃地点は礼拝堂BARであった。比較的広い礼拝堂は射線も通りやすいが、適度に置かれた信徒席が丁度良い遮蔽物としても扱えた。
「ふふっ、気品的に速攻を掛けさせてもらおうじゃないか! 戦場を盛り上げていくぞ!」
サイレンと同時に信徒席をものともせず駆けだす参三。普段の煌びやかな装いから一転、主たる飾りを深い艶のある黒銀色へと変えたその姿は、意図的に照明の絞られたダッチマン通路をまるで影のようにひた走る。装備を機関拳銃――マシンピストル参三気品スペシャルという名の特注品――1挺に絞ったこともその行動の軽妙さを後押ししていた。
『参三さん、そのペースですとおそらくBチームともう間もなく接敵することになりますよ』
「気品的には問題ないとも! そも、私の装備では接近せんとどうにもならないからな」
ザッ、という空電音の後、参三の耳元で響いたのはチームを同じくするミスティ・ミッドナイト(夜霧のヴィジランテ・f11987)の声。ハンズフリーレシーバーを介した連絡手段は、今のところ問題なく機能していた。
『そうそう、正面戦闘はアタシに任せてればいいのさ! 参三はエレガントな奇襲担当なんだからね』
その通信に横から茶々を入れるのは、シューティングレンジ『GuNs 'N Noobs』店長であるヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)だ。通信越しなのでそ情こそ伝わらないが、いつものようなニヤニヤ笑顔を浮かべていることは声だけでも読み取れるだろう。
『お楽しみ中、失礼します――後部マストの上方を抑えました。今のところ、海賊チームの皆さんは甲板には出てきていないようですね。姉さんのほうはマスト下部を制圧中です』
最後のAチームメンバーの声が通信に乗る。彼女の名は秋月・信子(魔弾の射手・f00732)、Aチームメンバーの中で最大射程を誇るスナイパーライフルを持ち込んでいる、いわばチームの「目」である。
信子が「姉さん」と呼んだのはUCで呼び出されたドッペルゲンガーのことだ。なお、召喚はゲーム開始時の1回のみ、姉本人のヒット判定に加えて信子本人がヒットされた場合は姉も同時ヒット扱い等、身体強化系UCと見做しつつも厳しいルールが課せられている。
「なるほど、敵チームと激突しそうなところにはヴァシリッサが。相手の動きは信子が見ているわけだね? ……これは気品的裏取りのチャンスではないか!」
ポン、と手を打ち参三はゆっくりと主甲板の端へと姿を現わす。ちらりと後方を振り向いてマストの方を見上げれば――ああ、キラリと反射したのがおそらく信子の構えるスナイパーライフル、それのスコープだろう。
――不意に、タァン、という射撃音と共にマストと前部甲板を結ぶ形で火線が走った。ヒットコールは聞こえないことから外したか、あるいは障害物で遮られたか。応じる射撃は2連。ほぼ同期した形で2筋の射線が前部甲板からマストへと飛ぶ。
甲板の制圧権をめぐる狙撃戦が始まったのだ。程なく、最前線を務めるヴァシリッサたちの戦闘も開始されることだろう。
「戦いはエレガントであれ。気品の輝きを見せねばな」
意気込む声は小さく。船内を動いていた時以上に動作に気を使い、仲間たちの戦闘音を隠れ蓑に参三は歩を進めていく。
スナイパーライフル同士の銃撃戦を避け、特に敵側からの射線に身を晒さぬように細心の注意を。黒銀色の飾りは気品を主張しつつも、戦場における視認率を下げるという意味では最適なものであった。
(しかし、これ以上の前進は難しそうだな……遮蔽物がない)
障害物として置かれた樽の陰に身を隠しつつ参三は前方を伺う。船内へと続く通路付近には、信子と狙撃戦を繰り広げているジャージ姿の猟兵。名前は……ブリーフィングで聞いた覚えがあるがさてなんといったか。
「信子、少し弾幕を厚くできるかね? ――狙撃手の目の前まで詰めた。釘付けにしてくれれば気品が対処しよう」
レシーバーに囁く。了承の声は返らなかったが、返事の代わりとでもいうようにマスト方面からの射撃密度が増した。慌てて身を隠す敵狙撃手だったが――その位置は生憎と、マストからの死角ではあっても参三からの死角ではない。
慌てず、騒がず。機関拳銃の銃口を狙撃手へと向け……放つは必中のバースト射撃。
「――ヒットっす!」
ヒットコール。栄の開いた転移ゲートでセーフエリアに転送される敵チームのスナイパーの姿を見て、参三は今こそが好機と樽の陰から身を躍らせた。セレクターをフルオートへと切り替えつつそのまま船内通路へと雪崩れ込み――狙撃手のカバーについていた1名を機関拳銃の掃射でヒット。
ひーん、ヒットですぅ、という声を残してセーフエリアに退場するこのフィールドの主を一瞥し、参三はさらに敵の後背を刺すべく船内へと踏み込んだ。
――かちり。
「えっ?」
ぱぁん、という景気のいい音と共に参三の足元でグレネードが破裂する。ワイヤートラップと接続されていたそれは、おそらくは狙撃手の置き土産だったのだろう。巻き散らかされるゴム弾は、当然のように参三の全身を叩いた。
「ひ、ヒットだ……」
――第1ゲーム、須野元・参三の成績は2キル。華麗な浸透攻撃のオチとしてトラップを踏んだものの、彼女の活躍により人数的有利を確かにしたAチームが勝利するのにそう時間はかからなかった。
●影の攻防(AMラストゲーム:殲滅戦にて)
そのゲームにおいて、マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)はようやく甲板上に設けられた舵輪付近へと辿り着くことが出来ていた。
「ふぅ、ふぅ……ようやく到着しましたよ!」
ここに至るまで、巧みに交戦を避けられたのはさすがは船長というべきか。船内構造を熟知しているマリアだからこそ、相手チーム本陣のほぼ真上である舵輪へと辿り着けたのだ。船内通路だけに及ばず、船のちょっとした張り出しを伝ったり、整備用の隙間を苦労して通ったりとその道中の苦労は筆舌に尽くしがたいものがあったのだが。
「不意を撃たれて退場したり、そもそも見せ場が少なかったりしましたが……とりあえず目標を1つ達成です!」
舵輪にもたれかかり、マリアはポーズを決める。彼女がこのゲームに協力した理由として、そもそもフライング・ダッチマン号上で戦ってみたかったという動機がある。それに加えて「戦場と化した船上、しかもできれば舵輪の近くでポーズを決める」というのがプレイ中の目標だったのだ。それが満たされ、マリアは非常に満足そうな表情で鼻息を漏らした。
――そうやってご満悦であったマリアの視界に、ちらりと「違和感」が映った。普段からこのダッチマンで暮らし、その光景が焼き付いているマリアだからこそ感じる程度の、本当に些細な違和感。
「そこに居るのは誰ですか!」
船内へと続く通路、奇しくも本日の第1試合でマリアがヒットされたその場所に見えたのは影に溶け込みそうな深い紫。誰何の声とともに腰のガンベルトから引き抜いたSAA――シングルアクションアーミーをガンマン顔向けの速度で引き抜き構えるまで一瞬。誰何をかけるのは、万が一にもそこに隠れている相手が味方だった時のことを考慮してだが……マリアの問いに返答はなかった。
故に。
「弾の気持ちになれば――跳弾の操作もお手の物です!」
長くこだまする銃声が1つ。厳密に言えば6連リボルバーの弾丸全てを吐き出した超高速ファニングショット。通路内で跳ね返るような角度に1発ごとに微妙に入射角が変わるように撃ち込まれたそれらが、甲高い音を立てて数度の跳弾を果たす。
――とはいえ跳弾操作や弾の気持ちになるといった特技がマリアにあったわけではなく、鍛え抜かれた身体能力がもたらしたいわゆるビギナーズラックの類ではあったが。
「決まった……!」
ヒットコールこそ聞こえないが、運よく跳弾したのも含めてマリアにとっては超が付く程満足のできる一撃。ファニングの反動でやや痺れの残る腕の感触さえも、その充足感を補強する甘美なものでしかなく。
「ええと、それと――私のリロードはレボリューション!」
かの有名なスパイアクションゲームに触発されたのであろう。本家とは比べ物にならない速度とはいえ、雰囲気は出る。慣れぬ手つきで排莢・装填をこなしつつ、マリアは1発ずつ丁寧に再装填を済ませていく。
――が、再装填に手間取って銃に集中しすぎたのは痛恨であった。
「フリーズコール。自主的なヒットコールと退場をお願いします」
「あ、いつの間に!?」
マリアが弾丸を撃ち込んだのとは別の通路から音もなく滑り出し、再装填に手間取るマリアの背後を取ったのはミスティであった。携行性に優れた小振りなハンドガンをマリアの腰に押し付けてのフリーズコールもまた、暗殺者めいた非常に手馴れたもの。
「気付かれたときには驚きましたけれど……そちらが確認の声を挙げている間に、ここに繋がる別の通路へ」
「うわーん、カッコつけてたのが台無しです!」
ミスティに淡々と告げられて、マリアがその場に崩れ落ちる。見ていた通路とは逆側にもう1本の通路があることは、マリアにとってその通路を見ずとも思い出せることだ。
しかし、普段の暮らしでは通路同士がどのようにつながっているかを意識することなどそうそうない……そういう意味では、この場に最も慣れ親しんでいるマリアだからこそ、今のように隙を晒してしまったのだろう。
「うう、ヒットです……退場しますぅー」
ヒットコールすると同時に開いたゲートを通り、セーフエリアへと。
とぼとぼとゲート内へと歩いていくその背中に若干の罪悪感を覚えつつも、ミスティはハンズフリーレシーバーを通じて「敵1名撃破」の報告を入れるのであった。
●護るもの、攻めるもの(PM第2ゲーム:フラッグ戦にて)
午前中を通して行われた殲滅戦で、このダッチマンを訪れた回数の少ない者もおおよそこのフィールドに慣れた頃。昼食休憩を挟み、午後のゲームはフラッグ戦が行われていた。
フラッグの設置場所は船首と船尾にそれぞれ置かれた酒樽の上。フィールド出撃位置の違いを公平化するため、2ゲーム1セットとし1ゲームごとに出撃位置を入れ替えながら進行する。
その、出撃場所を入れ替えての2ゲーム目――己に宿るオウガ「サーガ」に由来する霧を纏ったキリノ・サーガスラーフ(戯れの衝動・f19569)は、先の1ゲーム目と同じようにフラッグを強奪するべく主甲板を駆けていた。
装備に由来するその霧は、最前線での攪乱戦法にもってこい。狙撃手がキリノを狙うには霧のせいでその位置が特定しきれず、かといって至近距離での戦闘を挑めば霧に呑まれて視野が利かない。午前中の殲滅戦では仲間が退場した後に飽和射撃でヒットを取られたりしたものだが、勝利条件の異なるフラッグ戦において「どのような位置でもヒットされにくい」というキリノの性質は攻め込むのに最適だ。
「最初は殺せなくてもどかしかったけど――これはこれで楽しいからなぁ! ほらほら、モタモタしてると、さっきみたいに僕がフラッグを取っちゃうよぉ!」
大声を出し、目立っても問題はない。この声に釣られてAチームの面々が釣り出されればそれでよし、フラッグは他の味方が確保してくれるだろう。この声を無視して守りを固めるのならば、それもまたよし、敵陣を駆けて混乱を振りまくとともに、1ゲーム目のようにフラッグを奪えばいい。
「あら、そう簡単にフラッグを取らせると思ってるのかしら?」
キャァン、というギアとギアが噛み合い鋼を鳴らす独特な駆動音。消音された発射音よりも駆動音の方が聞こえやすいほどの至近距離ということだ。
それらの音を伴い放たれるのは、キリノの潜む霧目掛けた弾幕射撃――射手はAチームの1人、信子である。
「先の試合では見事にやられましたけれど……今回のゲームでもそう上手くいくとは思わないでください」
「狙撃手のお姉さんと、そのお守りのお姉さんだね!」
いわゆるソフトエアガンで武装した2人を前に、キリノは侵攻を止める。1vs1ならまだしも、抜群のコンビネーションを誇る信子姉妹(といっても姉はUCだが)を相手に近接戦闘による乱戦は利が少ない。そもそも、前衛・後衛を明確に分担した信子は、本来であればAチームフラッグの防衛手であってもおかしくないメンバーだ。
であればこそ。
「確かに君らを相手にしていたらフラッグは遠いけれど……だからこそ、僕を通せないよね、2人ともさ!」
霧を広げる。己の姿が影として視認できる程度に薄く。しかし、狙撃できるほどの距離に離れてしまえば見えないほどに濃く。目の前に現れた信子姉妹をこの場所に釘付けにするべく、キリノは攪乱を主とした戦法を選ぶ。
「ええ、だからこそ対策はしてきました!」
しかし、信子姉妹が選んだのは霧中への突入。それと同時に、姉の方は構えたサブマシンガンに取り付けたフラッシュライトを点灯。妹(本人)は片手にハンドガン、片手にスティックライトという装備で霧の中を照らす。
「本来は夜間フィールドで使うような装備ですけど……霧の中も似たようなものよ?」
「くっ……!」
キュパンっ! という独特な音と共に姉のSMGがバイオプラスチック弾を放つ。反動の無さからくる狙いの精確さとトイガン特有の超多弾マガジンから繰り出される弾幕量は、霧による隠形を加味してもキリノに容易な行動を許さなかった。
2本の短剣を操り、殺人鬼としての本能から「殺気」をアテにした防御行動を取るキリノ。信子姉妹の持つライトも手掛かりに防御を固めるが、しかし攻勢に出る切っ掛けもつかめずにいた。
「……かくれんぼ、ということですか?」
しかし、攻勢に出れないのは信子の側も同様。ライトで照らす事により霧による影響はかなり軽減しているものの、ライトで霧を切り裂いているが故にキリノへと位置が伝わっていることも信子たちは深く理解している。元から甲板上に置かれている障害物と霧、その2つを組み合わせて防御に徹するキリノを探し出すことはかなりの困難が伴っているのだ。
「――信子、プランBで行くわよ」
「ええ、姉さん。通信送ります」
故に、作戦を切り替える。信子たちにとっての最善はこの場でキリノを仕留めること――しかし、それが達成できない今、次善の策を選ぶより他に手はない。
(プランB? ……わざわざ僕に聞こえるように言ったのか?)
「――どういう作戦か知らないけど、僕を甘く見ないでよね!」
吶喊。霧の濃度を自在に操り、己と信子姉妹の周辺を濃い霧で覆うことによって視界を塞ぐ。いかに強力なフラッシュライトがあろうと、濃密な霧の中では光が散乱して広範囲を照らすことは難しい。
「ちっ!」
「まずは、1人……!」
短剣による十字斬撃。先ほどの会話、その源へと踏み込んだキリノの両腕に確かな感触が返る。
「ヒット――私は消えるけど、頑張りなさいよ、信子」
「本体じゃなかったか……けど!」
ゲートによるセーフエリア復帰ではなく、その場で溶けて消える信子姉。その言葉に未だ信子本人が残っていることを確信し、キリノは敢えて「霧を晴らす」ことを選択。
「サーガ!」
凝集した霧は頭上へ。急激に晴れた霧の向こう、キリノの視界に映るのは姉を囮に霧から離脱しスナイパーライフルを再装備した信子の姿。姉の位置を手掛かりに狙撃で不意を討つつもりでいた目論見が外れ、その表情には驚愕が隠せず。
「気付かれた!? けど、この距離なら!」
スコープを覗き込む必要もないとでもいうように、信子はキリノへと射撃を敢行。エアコッキングスナイパーライフルの引き金を絞ると同時に、次弾装填のコッキング動作へと入るが――
「殺る気でバレバレだよ!」
キリノの振るった短剣が、信子の狙撃弾を切り払う。その切り払いから滑らかに繋げて、キリノは踊るように信子の懐へと踏み込んだ。
――Aチーム、フラッグ確保! 勝利!
短剣が信子の喉元に迫るのと、そのアナウンスが入るのはほぼ同時であった。信子の側から見れば、むしろヒットコールがアナウンスに掻き消されたようにも思えるようなタイミング。
「ちぇ――あと少しだったのに」
しかし、ゲームが終わってしまえばキルスコアに意味はない。己のチームが敗北したという連絡を聞いて、キリノは素直に短剣を引いた。
「ねぇ、狙撃手のお姉さん。もしかしてプランBって――フラッグを確保する能力のある僕を君たちで足止めして、残る人は全力攻勢とか、そんな感じ?」
「ええ、だいたいそんな感じです。正確には、こちらのチームで一番隠密が得意なミスティさんがフラッグ奪取に走った形ですけどね」
キリノの問いに、信子は素直に応じる。スナイパーライフルからハンドガンへのスイッチング――距離に応じた武器の切り替えよりも早く踏み込み勝負を決めに来たキリノへの敬意故だろう。
「霧の操作、お見事でした。けど」
次のゲームでは、霧ごと撃ちぬいてみせます。朗らかな笑みを浮かべつつも、信子がキリノへと投げる言葉には戦意が漲っていた。
「じゃあ僕のほうは、その目を欺いてフラッグを取ってみせるよ……で、いいのかな?」
フィールドに残るメンバーをセーフエリアに迎えるべく開かれたゲートへと踏み込みつつ、キリノは全く得物の異なるライバルへと微笑みかけるのであった。
●スナイプ・トラッパー(PMラストゲーム:攻防戦防衛側)
フライングダッチマンの所属メンバーで作られたBチーム――通称、海賊チーム。フィールドに慣れ親しんでいる者で構成されたそのチームの中で、その「慣れ」を最も上手く使っていたのが一一・一一(都市伝説と歩む者・f12570)であることに異論を呈するものは今日の参加者に1人として居ないことだろう。
第1試合の狙撃合戦から始まり、船内の様々な場所にトラップを設置。試合毎に回収はしていたものの、逆にそうやって回収し新しく設置しなおすことによりAチームからすれば「何処に罠があるかの判断がし辛い」という状況。しかも、ワイヤーを軸とした各種トラップは様々なバリエーションがあり、発見しても解除が難しいものも少なくない。
試合によってはトラップ設置中に不意を打たれたりといった場面もあったが、そういった試合を除けばどの試合でもトラップによるキルを1回は取っている。ちなみに、最もトラップデスが多かったのは参三だ。
そして、1日の〆として「気持ちよくキルし、気持ちよくデスできる」というルールである攻防戦ラストゲーム――その防衛側において一一のトラップはこれまでにない暴威を振るっていた。
「ふっ、先ほどこの通路で私はトラップで爆死した……故に、この通路のトラップはもうないだろう!」
「いやぁ、もう再設置が終わってるっす」
「な、何だとぉ!?」
チュドン。フラッグへと続く通路に防衛目標を絞った一一は、せっせとワイヤートラップを設置し続けることで既にこの試合だけで3キルを稼いでいる。
ある通路にはゴム弾を弾きだすフラググレネード。ある部屋には閃光で一時的に視野を奪うフラッシュボム。またある階段には、通るのに絶妙に邪魔になる位置に単純なワイヤーを設置。
攻撃側であるAチームは、いっそ「トラップを発動させたうえで復活」することでごり押ししようとするメンツも居たが、その方法でも復活のためには本陣に戻らなければならないというタイムロスがある。簡素なワイヤートラップであればその間に再設置することも可能であり……単純な話、一種の詰みゲーに近い状態を作り出しているのだ。
「さ、一一さん、メンテナンス通路がこっちにあります。ショートカットはこちらからどうぞ」
「あざっす!」
そして、その立ち回りを陰から支えるのがマリアの船内知識だ。メンテナンス通路や隠し通路、その他様々なダッチマンに関わる知識でもって一一をサポートすれば、ゲーム時間が長引けば長引く程に海賊チームにとって有利な、Aチームにとって不利な防御陣地が着々と形成されていく。
「さて、そろそろ10分が過ぎるっすね……さっき、こっちのチームでは13分と少しでフラッグダウンが取れたっすから、もうあと5分ほど堪えれば勝ちっす」
フラッグへと続く通路で時計を確認する一一。2挺持ち込んだスナイパーライフルは今のところ屋内での取り回しが楽な軽量型である「ライトニング」を抱え、長距離狙撃に適した狙撃強化型である「イーグレット」は背負う形だ。
殲滅戦やフラッグ戦では2丁同時に持ち出して弾幕狙撃、といった遊び方もしたものだが、狙撃手よりもトラッパーとしての役割の方が重いこの防衛戦においては、いざというときに即席トラップを仕掛けられるよう片手が空いている方が都合良く動ける。
「っと、そういえばアリスティアーさんは攻防戦でも配置されてたっすね――回収できそうな位置にあれば回収しに行くのも……」
船内地図を参照しつつ、どこからなら「攻撃的防御」を行えるかを考える一一。
しかし、一一にはこの瞬間まで1つ失念していることがあった。
Aチームのメンバーに、簡易トラップであれば解除するだけの手腕を持ったプレイヤーがいることを。今日1度もトラップでキルできたことのない「ライバル」が居たことを。
「……待てよ?」
パァン、というハンドガンの射撃音が響くのと、ライバルの存在を思い出し咄嗟の機転で一一が近くの部屋へと身を隠すのはほぼ同時。
「嫌な予感がしたけど、まさか当たるとは……っすよ!」
「外しましたか……しかし、追い詰めましたよ!」
そう、ワイヤートラップの心得ならば彼女――ミスティにもあるのだ。猟兵となるまでの来歴から、彼女が精通している戦術の中には諜報・ゲリラ用のトラップの扱いも確かに含まれている。
「しかし、結構トラップは張り巡らせたつもりっすけど、よくここまで浸透できたものっすよ!」
「数を置くのに注力しすぎです、幾つか解除せずとも乗り越えられるものがありましたので」
扉を挟んでの攻防。海賊チームの誰かが一一の窮地に気付けばミスティを追い込むのも容易だろうが、無限復活が可能な攻撃側Aチームの面々と海賊チームが戦闘中ではない、と考えるのは流石に楽観が過ぎる。
「まったく、このまま罠を作り続ければ楽勝かなって思ってたっすよ、僕は!」
トラップ用とは別に持ち込んでいたグレネードを投擲。通路に居るであろうミスティを目掛けたその攻撃で時間を稼ぎ、一一はどうにか活路を探る――咄嗟に思いついたのは、己の装備を利用したあるトラップ。超簡易ながらも、それを即座に設置にかかる。
が。
「ええ、ですので私が止めに参りました」
コン、という音と共にその手榴弾を蹴り返すミスティ。投擲用ということで時限信管であったことが一一にとって災いした。
「マジっすかぁ!?」
派手な炸裂音と共に、一一の潜む室内でグレネードが破裂する。派手に巻き散らかされた非殺傷ゴム弾の雨に、一一はたまらずヒットコールを宣言。
「……ミスティからAチーム各員へ。敵トラッパーを排除しました。一気に攻めましょう」
ヒットコールが聞こえて一息。ハンズフリーレシーバーで連絡を取りつつ、ミスティはフラッグの置かれた方向へと歩みを進める。
――パシュッ!
「えっ――ヒット……」
ミスティが何より驚いたのは、一一がヒットコールをして退場したはずの部屋からの射撃でヒットされたが故。驚きと共にその部屋を見れば、ワイヤーをトリガー部に引っ掛ける形でセットされた簡易式無人砲に仕立て上げられた強化型スナイパーライフル「イーグレット」の姿。
本来であればミスティを誘い込み、そのイーグレットで仕留めるのが一一の狙いだったのだろう。その罠を回収せずに残したのは、万が一にもミスティをヒットできる可能性に賭けてか――結果としてその賭けに一一が勝利したのは、優秀なトラッパーを排除したことにミスティが僅かながら気を緩ませたというのも一因だろう。
「ミスティからAチーム各員へ――ヒットされました、復帰のため本陣へと戻ります」
一一とミスティの勝負は、個人間の勝負で言えば引き分けに終わった。
しかし、ここで一一がミスティを討ち取ったことにより、浸透戦術の使い手であるミスティは本陣での復活により大きく時間を消費。結果として、そこで稼いだ時間がフラッグダウンの時間に影響し、海賊チームは僅差で攻防戦の勝者となったのであった。
大成功
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