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桜ノ匣庭~幻朧心中

#サクラミラージュ #桜ノ匣庭

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#サクラミラージュ
#桜ノ匣庭


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 ――見せてください、書かせてください。

 貴方が、自らのその手で。
 若しくは、大切な人の刃を受け入れて。
 或いは、かけがいのない人と一緒に。
 命を絶つ、美しいその瞬間を。

 心中を試みても死ねないかもしれぬという、そんな心配や恐怖は無用。
 その時は桜の介添人が、確実に死に切れぬ貴方の首を落としてくれるから。
 そして様々な死に様を見せてくれた御礼に。
 永遠に――桜の匣庭に咲く美しい幻朧の花弁の下で、眠らせてあげるから。

 だから今宵は、最後の晩餐。
 さようならする現し世を忍び、心安らかに贅沢に、どうぞお過ごしください。


「桜ノ匣庭……これは、あの時の」
 ぱらり一冊の小説を捲りながら、そうぽつりと零した筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)であったが。すぐにいつも通り猟兵達を迎え、視た予知を語り始める。
「サクラミラージュの世界で、影朧を匿っている民間人の存在が予知された。影朧は不安定なオブリビオンで、影朧の居場所を見つけ出し退治しなければ、いずれ「世界の崩壊」に繋がる。現場へ赴き、事件の解決を今回皆には頼みたい」

 そして、今回の依頼の概要とは。
「皆には一度、その命を自ら絶って貰いたい」
 清史郎から発せられた一言に、猟兵達は思わずその瞳を見開く。
 そんな皆にぐるりを視線を向けつつも、清史郎は予知の概要を語る。
「サクラミラージュに、櫻居・四狼(さくらい・しろう)という人気作家がいるというが。熱烈なファンがこの作家の小説を模倣した行動を起こし、そのために影朧を匿っているようだ」
 櫻居・四狼は、サクラミラージュに彗星の如き現れた作家で。
 作品の独特な世界観は勿論、整ったその容姿も相まり、たちまち人気作家となって。
 そして急に姿を消したというミステリアスさが、今でも熱烈な信者の心を掴んで離さないのだという。
 そんな櫻居・四狼の代表作が、何篇かの短編小説が収録された『桜ノ匣庭』。
 その中の『幻朧心中』という小説の内容が、今回の事件に関係しているようだ。

「今宵、自殺志願者が集められた『最後の晩餐』というパーティーがサクラミラージュの洋館で開かれるという。『幻朧心中』の小説内での『最後の晩餐』は、自殺志願者にこの世最後の夜を贅沢に過ごして貰うべく開催された社交界のような雰囲気の食事会だ。だがその裏にある思惑は、人の死を描くことにスランプになった作家が、沢山の人の様々な死に様を目にしたいというもので。その思惑通り様々な手段で人が自害し、人の死を目にするという目的を達した作家が、最後はその遺体を幻朧桜の樹の下に埋めてゆく……というのが小説のあらすじなのだが。同じことを行なおうとしている櫻居・四狼のファンがいるようだ。そしてその人物が、その目的を成すべく今回影朧を匿っているという」
 今宵開かれるのは、自殺志願者が集められた『最後の晩餐』。
 まずはこの食事会に自殺志願者を装い参加し、匿われている影朧の情報を得て欲しい。
 とはいえ、これから死にゆく者という設定上、下手に動けば怪しまれる。
 不自然にならない程度に、機会があれば集まった自殺志願者やパーティー主催者と雑談をして情報を得ても良いし、動きをみせずとも洋館の中の様子を窺うだけでも何か得られるかもしれない。
 この『最後の晩餐』は、豪華な料理やスイーツがずらり並ぶ立食スタイル。普段なかなか口にできないような高級食材を使った料理や、色とりどりのスイーツ、美味しい酒類やジュースを、折角だから存分に味わうのも良いだろう。
 舞踏会の如くダンスタイムもあるというので、優雅な音楽に合わせダンスを楽しんでみてもいいのではないか。
 自殺志願者の話を聞き、その心を少しでも軽くしてあげるのも良いかもしれない。
「今回の影朧は、自死を試みた者が死に切れぬ時に現れるということは明らかになっているが、他の詳しいことは分からない。なのでまずは『最後の晩餐』で情報収集をし、影朧を見つけ誘い出し、影朧の救済を行なって欲しい」

 そして『最後の晩餐』後に選ぶ『死に方』は、それぞれの方法で構わないという。
 自らの手で死ぬ場合は、服毒、首つり、飛び降り、切腹など自由だ。
 大切な人に手を下してもらうことも可能であるし。
 同行者と戦闘の末、相打ちになるなどの演出も構わない。
 洋館の屋上からや洋館の庭にある断崖絶壁から、誰かと一緒に身を投げたり。
 とにかく洋館の敷地内で自死を試みれば良い様だ。
 けれど自死とはいえ、猟兵はその程度では死なぬ存在。
 要は、怪しまれぬ様な死に方をみせて欲しい、というわけだ。

「この『最後の晩餐』の主催者は、宝木・京之介(たからぎ・きょうのすけ)という、櫻居・四狼の大ファンである年齢50代の小説執筆が趣味の富豪だ。その他、『最後の晩餐』には一般人の自殺志願者も参加している。宝木や自殺志願者は『最後の晩餐』にて睡眠薬を仕込み眠らせ『帝都桜學府』に後処理は任せるので、皆は眠る前の者達などから情報を仕入れ、影朧の調査や戦闘にあたって欲しい」
 催される『最後の晩餐』にドレスコードは特にないが、この世最後の夜ということで、着飾ってくる者が多いらしい。好きな衣装も貸し出してくれるので、よかったら利用して欲しい。

「幻朧桜と、桜ノ匣庭……か」
 清史郎はそうふと呟いて一瞬何かを考えるように俯くも。
 事件の解決をよろしく頼むと、改めて猟兵達に依頼しながら。
 その掌に満開の桜のグリモアを咲かせ、皆を、幻朧の桜咲く世界へと導く。


志稲愛海
 皆様の死に様を見せてください。
 志稲愛海です、よろしくお願いいたします。

 ※ご連絡※ 第1章のプレイングは、10/13(日)朝8:31~受付します。
 締切等の連絡はMS個別ページやTwitterをご確認下さい。

 今回の内容は以下です。

 第1章:人里離れた館にて、幽世の如き夜を(日常)
 第2章:夜櫻に消えた人々(冒険)
 第3章:辻斬り少女(ボス戦)

 第1章は『最後の晩餐』。
 自殺志願者が参加できる社交界のような雰囲気の食事会です。
 豪華な食事やスイーツ(ご自由にご指定どうぞ!)ダンスタイム等が楽しめます。
 ドレスコードはないですが着飾ってくる人も多いようです。
 お好みの衣装の貸出しもあるので、よかったら利用されてください。
 自殺志願者と話し心を軽くしてあげたり、主催者の宝木から情報を得られます。
 ですが参加するだけで情報は入るので、最後の晩餐をお好きにお過ごし下さい。

 第2章は影朧を誘き出すべく、皆様に『自死』して貰います。
 大まかな概要はOP通りですが、改めて詳細等断章に記載致します。
 皆様の選んだ『死に様』を存分に描かせていただければと。
 第3章は影朧との戦闘になります。此方も断章にて詳細記載いたします。
 各章とも、締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。

 全年齢対象ではないと判断したプレイングは採用いたしません。
 公序良俗に反する事、他の人への迷惑行為、未成年の飲酒厳禁です。
 最後の晩餐には酒類の用意もありますが、勿論飲酒は成人以上の方のみです。

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入お願いします。
 ご記入ない場合、相手と離れてしまうかもしれませんのでお忘れなく。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
 ですが複数人の場合は失効日の関係上、同行者と送信タイミングが離れすぎていたり、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 可能な限り皆様全員書かせていただきたく思っています。
 どの様な死に様を皆様が選ぶのか、ご参加お待ちしております。
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第1章 日常 『人里離れた館にて、幽世の如き夜を』

POW   :    語り明かそう。キミと、朝まで。

SPD   :    舌へ、喉へ、その心へ。香茶と酒精を心行くまで。

WIZ   :    散るがゆえに。藍夜に舞う桜を瞳に映して。

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒鵺・瑞樹
最後の夜だからって着飾ってとか正直言ってばかばかしいと思う。
はじめからそれを生きる糧にしてもいいのに。

エンパイア育ちには社交界とかよくわからんが、和装・着物に羽織でも大丈夫か?
戦闘服はともかく、洋装のしかも礼服のあのかっちり具合はあまり好きじゃないんだよなぁ。
格的に足りないなら袴もつけて準礼装ぐらいにはしとくけど。

当日は壁際でおとなしくしとく。俺には心を軽くする話術とか無理な話。
適当に飲み物を口に運ぶだけにしよう。前よりは食欲戻ってきたとはいえ、謂れない出来事でまだしんどいし。
酒もダメだな。味覚が変わったのか前ほど美味くは感じない。ただ苦いだけの水だ。
取り留めない周囲の話を聞き留めておこう。



 ひらり舞い散る桜花弁の風景は、育ったサムライエンパイアでも、春になればよく見た風景だけれども。
 幻の如く朧に咲くこの世界の桜は、どこか自分の知っている桜とは、違う気がしないでもない。
 けれどサムライエンパイアにはなかった社交界というものは、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)には、正直よくわからない。
「和装・着物に羽織でも大丈夫か?」
 戦闘服はともかく、洋装のしかも礼服のあのかっちり具合はあまり好きじゃないんだよなぁ、なんて少しぼやきながらも。
「格的に足りないなら袴もつけて準礼装ぐらいにはしとくけど」
 今宵催されるという『最後の晩餐』への準備は抜かりない瑞樹。
 そして着物の袖に腕を通しつつ、そっと銀の髪を揺らし、首を横に振る。
「最後の夜だからって着飾ってとか正直言ってばかばかしいと思う」
 瑞樹には、死ぬ直前だから最後は着飾りたい、なんて。
 そんな心境が、共感はおろか理解すらできない。
 それならば――はじめからそれを生きる糧にしてもいいのに、って。
 けれどもこれは、予知を聞き、請け負った依頼。
 宝木という富豪が催す『最後の晩餐』の会場となる彼の館へと足を踏み入れれば。
(「俺には心を軽くする話術とか無理な話」)
 壁際で大人しく、静かに周囲の人の話に耳を傾けることにする。
 並ぶ料理は贅沢で豪華で、酒も高級な銘柄が各種ずらり。
 けれど、適当に飲み物を口に運ぶだけにしよう、とグラスをひとつだけ手に取って。
(「前よりは食欲戻ってきたとはいえ、謂れない出来事でまだしんどいし」)
 酒を勧められても、無難に断りの言葉を告げる瑞樹。
(「酒もダメだな。味覚が変わったのか前ほど美味くは感じない」)
 今は美味くて高価な酒も、ただ苦いだけの水だから。
 瑞樹はふっとひとつ溜息をつくと、再び壁に背を預けて。
 月下に舞う桜の風景を眺め、取り留めない周囲の話を聞き留めるべく耳を澄ませる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

迎・青
(アドリブ歓迎です)
…ここにきた理由?
ボクずっと、おねーちゃんをさがしてたんだ
だけどどこにもいなくて…だから「あっち」にさがしにいかなきゃ、って
…それに、「あっち」でまっていれば
おねーちゃんはいつかきっとくるでしょう?
(姉を探しているのは本当だが、実際は生存を疑ってはいない
恐ろしい事を言っている自覚はある。震えを誤魔化す)

甘いお菓子は好き、綺麗なものも好き
宴を堪能しつつ、自殺志願者達の心を少しでも和らげようと話を聞く
不自然でないよう、相手を動揺させぬよう、言葉は慎重に選ぶ

(どうか、この人たちがこの「後」、「よかった」と思えますように。
悲しみやつらい事が、少しでも減るように)と
声に出さず【祈り】



 死にたいという感情に、老若男女、制限など勿論ないのだが。
 けれどやはり、幼い迎・青(アオイトリ・f01507)が何故死にたいと思うのか。
 それは、他の自殺志願者の興味を惹いて。
 ――何でここにきたの? どうして死にたいの?
 そう訊かれれば、あうあう、と少し慌てつつも、小さく首を傾けながら答える青。
「……ここにきた理由? ボクずっと、おねーちゃんをさがしてたんだ。だけどどこにもいなくて……だから「あっち」にさがしにいかなきゃ、って」
 探している姉が『こっち』にいないのならば、『あっち』にいるはずだと。
 そんな返答に、なるほど、と納得する自殺志願者たち。
 そして青はこう続ける。
「……それに、「あっち」でまっていれば、おねーちゃんはいつかきっとくるでしょう?」
 先に逝っているのか、後で来るのか、それは分からないけれど。
 きっと『あっち』にいけば、いつかは会えるよね、と……そう言いながらも。
 ぐっと、青は密かにその掌を握りしめる。
 対の首飾りである姉を探しているというのは、本当のこと。
 けれど、実際は生存を疑ってはいないし――恐ろしい事を言っている自覚は、あるから。
 震えを誤魔化すように、汗ばむ手を一層、ぎゅっと握り込んでしまうのだ。
 そんな青も、甘いお菓子や綺麗なものが好きな、年頃の少年。
 美味しそうで可愛い見目をしたケーキを皿にいくつか取り、ぱくりと頬張っては笑んで。
 幼い子どもには少し贅沢な、美味しくて高価なスイーツを堪能しつつも。
「おねえさんはどうして死にたいの? なにか悲しいことがあったの?」
 不自然でないよう、相手を動揺させぬよう、言葉を慎重に選びながらも自殺志願者達へと訊ねてみる。
 その心が……少しでも、和らいで欲しいから。
「話を、聞いてくれるの?」
 うん――そうこくりと頷いて。
 心の内を吐き出し始めた自殺志願者の女性の話を聞いてあげながらも、青は思う。
(「どうか、この人たちがこの「後」、「よかった」と思えますように」)
 ――悲しみやつらい事が、少しでも減るように……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
誰かに殺されるのではなく、自ら命を…つまり今回の一件が解決しても、その後命を絶つ可能性があるということですか。

自殺志願者の方達とお話をします。
【和の問い】を使い気持ちを落ち着けてもらった後、彼らの話を聞きます。少しでも心の内にある重たいものを吐き出してもらえたら…
最後の晩餐が終わるまでをそれをくりかえします。

もちろん少し話しただけで全てが解決するなんて思っていません。
けれど…もし命を絶とうとした時に、わずかにでも思い出してくれれば……



 大きな屋敷はいたるところが豪華で、並ぶ飲み物や食事は高級なものばかり。
 集う者たちは煌びやかに着飾り、意気投合し語り合う参加者の様子は一見賑やかだ。
 けれど……これが、富豪の催すただの贅沢な晩餐会であれば、何の憂いもないのだけれど。
(「誰かに殺されるのではなく、自ら命を……」)
 館で催されている『最後の晩餐』に潜入した桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、周囲の者たちをぐるりと見回す。
 今宵、ここに集いし人たちは皆――自殺志願者。
 この世最後の夜を、同じ志を持つ者を楽しく共有し、死を受け入れる直前のひとときを贅沢に過ごしている者たちなのだ。
 その根底にある感情、それは「死にたい」という願望。
(「つまり今回の一件が解決しても、その後命を絶つ可能性があるということですか」)
 今回、自分たち猟兵の介入があったことで自死できなかったとしても。
 その感情が消えない限り、この人たちはまた命を絶とうとするかもしれない。
 いや、かなり高い確率で死を選ぶのではないか。
 けれどだからといって、放ってはおけないから。
「お話を聞いてもいいですか?」
 カイが紡ぎ鳴らすのは、世界でただ一つの清廉な音に合わせた問いかけ。
 その響きは聞く人の心を穏やかにし、その心を強く震わせる程、長く胸の内を落ち着かせる効果を発揮する。
 やはり死にたいと思う人は、自分が抱えているものを吐き出し聞いて欲しいと思っているだろうし。
 そうすることで、少しでも心の内にある重たいものを吐き出してもらえたら……と。
 カイは最後の晩餐が催されている間ずっと、小さな玉が転がる澄んだ音に問いを乗せ、自死を望む者たちの心を癒し、繰り返し話を聞いてあげる。
 勿論、少し話しただけで全てが解決するなどとは思ってはいない。
 自ら死を選ぶほどの重いものが、そう簡単に払拭されるわけはないと。
(「けれど……もし命を絶とうとした時に、わずかにでも思い出してくれれば……」)
 カイはそう望みを捨てず、自殺志願者の話を根気強く聞いてあげつつも、穏やかな癒しを与えることを決してやめない。
 そんなカイが、心の奥底に秘める強い感情は……屋敷が襲われたあの時の、罪悪感。
 そして人を守りたいと、そう思うから――だからこそカイは、此処に赴いたのだ。
 清音珠の清廉な音色が、言の葉を掛けた声が……きっと届くと、届いて欲しいと、そう信じ思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
ドレスを借りて参加しよう
青紫で詰襟のものを

最後の晩餐……参加している一般人は自殺志願者だったか
見かけたら声を掛けたいが今の私にできるだろうか

いや、ちょっとな
カガリ、せっかくのパーティだから踊るか?
(手を差し出そうとしてやっぱり手を引っ込めて目を逸らす)
……悪い。その言葉は忘れたつもりはなかったよ
もう一度手を差し出て、彼とダンスを踊りながら話をしよう

前にカガリを殺してしまったんだ
あの時は幻相手だったが……
だから本物のお前を見るとあの時みたいにしてしまうのではないかと
剣をお前に向けたくない殺したくない
でも愛してるからこそ剣を向けたいんだ

その胸の中で呟く
この矛盾を閉じてくれと


出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

自殺志願者が集まる、晩餐
この世の別れに、と…何だか、寂しいが
でも、華やかなのはいいな

燕尾服、だったかな、あれを借りようかなと
ステラに誘われて、踊ろうと思うが…
…ステラ、ステラ
ステラに避けられて、声もかけてもらえず、見てもらえないのは
カガリはとても、寂しいのだぞ
前にも言ったが、忘れてしまったか?(覗き込むように)

踊りながら、話を聞いて
…ふふふ。怖いのも、痛いのも、カガリは嫌だからなぁ
結構臆病なのだ
ステラは、どうしてそう思う
怖いからか、悲しいからか、
あいして、くれているからか

(腕の内に抱き締め、頭を撫でて)
いくらでも、思い悩むといい
全て、全て
カガリが閉じてやる



 華やかなドレスやタキシード、豪華な食事や飲み物。
 ゆっくりと穏やかな、贅沢なひとときがそこにはあった。
 此処に集う者たちにとって――今宵が、この世で最後の夜だとは思えないくらいに。
(「自殺志願者が集まる、晩餐。この世の別れに、と……何だか、寂しいが。でも、華やかなのはいいな」)
 くるりくるりと手を取り踊り、会話を交わし合い、贅沢な食事に舌鼓を打つ。
 その様は、燕尾服に身を包んだ出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)が感じた様に、華やかな雰囲気だ。
 けれど、青紫の花の如き詰襟のドレスの裾をふわり咲かせながら。
 カガリと共に赴いたステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は、周囲をふと見回してみて。
(「最後の晩餐……参加している一般人は自殺志願者だったか」)
 自ら命を絶たんとしている者を見かけたら声を掛けたい、そう思いもしたのだが。
 ……今の私にできるだろうか。
 ステラはそっと白を飾る紫水晶を揺らし、小さく首を振る――いや、ちょっとな、と。
 そして青き星の様な瞳を、着飾った眼前の彼へと向けるけれど。
「カガリ、せっかくのパーティだから踊るか?」
 しかしそれさえも、一度は差し出そうとした手を引っ込め、瞳逸らしてしまう。
 そして一度紡がれた誘いの声に、踊ろうかとその手を取ろうとしたカガリであったが。
「……ステラ、ステラ」
 ふっと避けられ、声も掛けてもらえず、視線さえも合わせて貰えない。
 けれどカガリは、白き美しい髪に揺れる水晶と同じ、柔い紫の瞳で、ふと俯いた綺麗なその顔を覗き込む。
「カガリはとても、寂しいのだぞ。前にも言ったが、忘れてしまったか?」
 その言の葉と自分だけを映すいろに、ステラはようやく視線を上げて。
「……悪い。その言葉は忘れたつもりはなかったよ」
 もう一度手を差し出すと、音楽に合わせ、彼と踊り始める。
 繋いだ手から感じる温もりと、息の合ったステップ。
 そして、踊りながら交わす会話。
「前にカガリを殺してしまったんだ」
 あの時は幻相手だったが……と、そうぽつりと口を開くステラ。
 そんな彼女の声に、ステップを合わせつつ耳を傾けているカガリ。
 ステラは青紫のドレスと白の髪をふわり靡かせ、そして紡ぐ。
「だから本物のお前を見るとあの時みたいにしてしまうのではないかと。剣をお前に向けたくない殺したくない」
 殺したくない、剣を向けたくない。
 でも――愛してるからこそ剣を向けたいんだ、と。
 そしてまた俯いてしまったステラに、カガリはそっと彼女を見つめたままの瞳を細め、返す。
「……ふふふ。怖いのも、痛いのも、カガリは嫌だからなぁ」
 結構臆病なのだ、とそう笑ってから。
 彼女に、どうしてそう思う、と問う。
 ――怖いからか、悲しいからか。
 ――あいして、くれているからか。
 刹那、ふっとその手を引いて、ステラを腕の内に抱き締めて。
「いくらでも、思い悩むといい」
 耳元で、囁くように告げる。
 そして彼の胸の中に身を委ね、ステラは呟きを落とす。
 ――この矛盾を閉じてくれ、と。
 そんなステラの頭をそっとよしよし、撫でてあげながら。
 カガリは己の温もりで彼女を閉じ込めるように包み込み、そして頷く。
 全て、全て――カガリが閉じてやる、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
ザザと揃いの軍服に袖を通す
俺は単なるコスプレだが、ザザの奴は流石に似合ってンな

「読んで来たよ、だが……」
あんたがそんなに感受性豊かな奴だとは知らなかったな
見た事もねえようなザザの表情が愉快だ
いや、ここは奴の『名演技』に乗っかってやろう

「俺は生きるも死ぬもどっちでも良かったけど
こいつを独りで逝かせるのだけはどうも我慢がならなかったのさ」

自死など選ばなそうな陽気な男はそう笑ってザザの手を取る
自分の生死より譲れぬものがあると

身の上話をしたそうな奴がいたら聞いてやる
おっと、更生させてやる程お節介じゃねえよ
事件解決後も尚死にてえ奴がいたら
好きにさせてやりゃいい

「さて、どんな方法で死んでやろうか」


ザザ・クライスト
【狼鬼】

帝都桜學府軍服を纏い陰鬱な表情
着心地はイイ、職人の仕事だぜ
じゃあなぜ陰鬱かってェと、

「幻朧心中は読んできたか?」

陽気なジャスパーに問いかける
ナニってオマエ、桜ノ匣庭の中の話のひとつだよ
桜の中でも枝垂れ桜は人を狂わせる
情が深すぎる、話題になるワケだぜ

志願者達との会話では、

「……今以上の幸福など考えられない。私はそれが崩れるなど見たくないのです」

幸せの絶頂の中で終焉の幕を引く
美しいままで、醜く堕ちたくはないと憂いの表情
ジャスパーの手を取り指を絡める、決して離れないように

情報収集は程々に作品の美しさに熱弁
気付いて口を噤むナイーブさを見せる

「イイ考えがある」

方法を問う奴にクツクツと喉を鳴らした



 未来を描けぬ者ほど、実はこの場所には不釣り合いなのかもしれない。
 いや、それとも最後の夜だからこそ、刹那に身を投じてきた者には相応しいひとときなのか。
 帝都桜學府の軍服をその身に纏うジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)は、今宵も桜舞う月の下、嗤っていた。
 己の姿はコスプレか何かのようだが、紫とピンク混ざる瞳が映すウマが合う彼は違って。
 流石に軍服が似合っている……そう思っていれば。
「幻朧心中は読んできたか?」
 ふいに訊ねられたそんな問い。
 陽気に嗤うジャスパーとは逆に、ザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)のその表情は陰鬱であった。
 いや、ジャスパーと揃いで着た帝都桜學府の軍服の着心地は良く、仕立ての良い職人の仕事だ。
 けれど何故、影纏ういろを宿しているのか。
 急に投げられた問いに瞬くジャスパーに、ザザは続ける。
「ナニってオマエ、桜ノ匣庭の中の話のひとつだよ」
 ――桜の中でも枝垂れ桜は人を狂わせる。
 情が深すぎる、話題になるワケだぜ……と。
 そんなザザの言葉に、ジャスパーはニッと口角を吊り上げて。
「読んで来たよ、だが……」
 ……あんたがそんなに感受性豊かな奴だとは知らなかったな、と愉し気に返す。
 見た事もないような、目の前のザザの表情が愉快だから。
 けれど……むしろ、だからこそ。
(「いや、ここは奴の『名演技』に乗っかってやろう」)
 くつりと喉の奥で嗤ってから、自殺志願者と会話を始めたザザを見遣る。
 ザザが話しかけたのは、『幻朧心中』の収録された『桜ノ匣庭』を抱えた女性。
「貴方たちは、どうしてこの世に別れを告げようと? 何かお辛い事でも?」
 そう女性に問われれば、ふるりと首を大きく振るザザ。
「……今以上の幸福など考えられない。私はそれが崩れるなど見たくないのです」
 その表情に宿る彩りは、幸せだからこその憂いのいろ。
 幸福の絶頂の中で終焉の幕を引く――美しいままで、醜く堕ちたくはない。
 そう、それは贅沢で愚かな崇高なる死。
 そんな絶頂の幸福に溺れたまま死を選んだ彼に伸ばされるは、悪魔のものか聖者のものか、紅が脈打つ白き腕。
「俺は生きるも死ぬもどっちでも良かったけど、こいつを独りで逝かせるのだけはどうも我慢がならなかったのさ」
 流れる音楽に踊るかの様に、手と手を取り合い、絡め合わせる指と指。
 まるで、決して離れないようにと言わんばかりに。
 自死など選ばなそうな、陽気に笑う男が死ぬ理由――自分の生死より譲れぬものがある、と。
 それに納得したように女性はふふっと笑って。
「貴方たちはお読みになられた? 櫻居先生の『幻朧心中』。私、先生の作品でこの話が一番好きなの」
 主催者の宝木さんや彼のお嬢様も、櫻居先生の大ファンでいらっしゃるのよ、と続ける。
「櫻居先生の『幻朧心中』は、私も感銘を受けました。人を狂わせる桜、深すぎる情の描写が素晴らしい」
 ふと女性の紡ぐ情報は聞き逃さず、けれど程々に、作品の美しさを語るザザ。
 けれど熱弁するだけでなく、口を噤むナイーブさも垣間見せる。
「私、実は不治の病にかかっていますの。このまま死を待つのならば、大好きな『幻朧心中』の世界の中で死にたくて」
 そう身の上を語り始める女性の話を、一応聞いてあげるジャスパーであるが。
(「事件解決後も尚死にてえ奴がいたら、好きにさせてやりゃいい」)
 更生させてあげる程、お節介ではないし。
 事件後それでも死の選択をする輩に物言いをつけるほど、お人好しでも野暮でもない。
 そして自分の世界に入っている女性を後目に、ニヤニヤと享楽的な笑みを宿して零す。
「さて、どんな方法で死んでやろうか」
 そんな愉快ないろを隠せぬ声に、ザザはニッと八重歯を見せて。
「イイ考えがある」
 方法を問うジャスパーの耳元で囁き、クツクツと喉を鳴らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
有/f00133

いい場所にはいい服で
スーツか燕尾服ね
有ちゃんにはちょいと堅苦しいかい?とっても似合ってるけど

人が多く見える場所に座ってさ
のんびり美味い酒が飲めれば満足よ
おや、かわいらしいケーキもあるじゃない
あんまり甘くないやつね
甘いっつったら僕がもーらお

目の前で進む最後の晩餐の数々を眺める瞳は
つとめて朧げで虚ろだ
見方次第じゃうっとりしてみえるかもしれないけどね

ここにいたら自然と疑問が浮かぶ
ねぇ有ちゃん
死にたくなった事はあるかい?
あるの?…そう
君を失いかけたなんて罪な世界だ

実はね、僕にはこの人達の気持ちがよく分からないんだ
確かに全く困りゃしねぇが
理解出来なくても知りたいと思ってね、此処へ来たのさ


芥辺・有
ロカジ/f04128

こういう場はどうも得意じゃないが
服は浮かない程度に適当に
……そう。そりゃどうも

最後の晩餐なんて言って、随分豪華だね
折角だから高そうな酒でも貰っておこう
ケーキはそうだな、……甘くなさそうなやつなら

しかし、世の中死にたい奴の多いことで
自殺志願者達の顔を眺めながら酒を飲む
序でに周囲に耳を欹てたりもして

不意に聞こえた名を呼ぶ声に応えるように視線をやる
顔を一瞥しても何考えてんのかは知れないが
死にたくなったことかい
あるよ
迷いなく呟くように言い切って
まあ、結局ここでこうしてるけど

そんなこと、別にわからなくても困らないだろ
それとも死にたい奴のことなんか理解したいの

ふうん、知りたがりだね



 月光の下を舞う今宵の桜花弁は、現か幻か。
 眼前で繰り広げられる宴は最後の生を彩り、数時間後に迎える死に花を添える。
 実態を掴めぬものは化かせぬけれど、眼前の死を願い集う者達はまだ生身のひと。
 その心模様は如何なるものなのか、それは人の生を長らえる事を生業に選んだ男の興味を少なからず擽った。
 いい場所にはいい服で、と燕尾服を纏ったロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は、スッとその手を差し出して。
「こういう場はどうも得意じゃないが」
「有ちゃんにはちょいと堅苦しいかい? とっても似合ってるけど」
 周囲に浮かぬ程度にと、シンプルな漆黒のドレスに椿の赤を一滴咲かせた芥辺・有(ストレイキャット・f00133)をさり気なくエスコート。
 そんなロカジに、ちらりといつも通りのけだるげな金の瞳を向け、有は返す。
 ……そう。そりゃどうも、と。
 軽快な音楽に人々はくるりと踊り、交わす会話や贅沢な料理を肴に最後の酒を味わっている姿。
 それは言われなければ、もうすぐ死を受け入れる者たちの宴だとは誰も思わないような、華やかな雰囲気。
「最後の晩餐なんて言って、随分豪華だね」
 並ぶ酒はどれも上等で目移りしてしまうけれど。折角だから高そうな酒でも貰っておこう、と有は吟味して。
 有と共に美味そうな酒を見繕ったロカジは、ふと一際鮮やかなトレイへと視線を移す。
「おや、かわいらしいケーキもあるじゃない」
「ケーキはそうだな、……甘くなさそうなやつなら」
 美味しそうなケーキは見目も美しく、種類も豊富。
 ……あんまり甘くないやつね、と。
 高価な酒と共に、ロカジは、有の口に合うかもしれない甘くなさそうなケーキもいくつか皿に取ってから。
 最後の夜を過ごす人々が多く見える場所にふたり、腰を落ち着ける。
 のんびりと美味しい酒を味わうロカジの隣で、自殺志願者達の顔を眺めながら酒を飲む有。
「しかし、世の中死にたい奴の多いことで」
 死を望む者たちの会話にも、ついでに耳を欹てたりもしてみるその横顔。
 ……目の前で進む最後の晩餐の数々を眺める瞳は、つとめて朧げで虚ろだ。
(「見方次第じゃうっとりしてみえるかもしれないけどね」)
 そう感じながらも、この華やかさと憂いと儚さが混在する、異様な晩餐を目をすれば。
 自然とロカジの心に浮かび上がる疑問。
「ねぇ有ちゃん。死にたくなった事はあるかい?」
 不意に聞こえた名を呼ぶ声に応え視線をやり、紡がれた問いにその顔を一瞥するけれど。
 有には、彼が何を考えているのか知れなくて。
 けれど、問われた言の葉には、迷いなく呟くようにこう言い切って返す。
「死にたくなったことかい。あるよ」
 まあ、結局ここでこうしてるけど、と。
 そう言った後、またひとくち、酒を口に運ぶ有。
「あるの? ……そう」
 ――君を失いかけたなんて罪な世界だ。
 ロカジはその横顔を見つめる青の瞳を細めてから。
 最後の晩餐を過ごす者達へと視線を映し、続ける。
「実はね、僕にはこの人達の気持ちがよく分からないんだ」
「そんなこと、別にわからなくても困らないだろ。それとも死にたい奴のことなんか理解したいの」
 自分をふともう一度映したその瞳に、食べる? とケーキを差し出しつつも。
 ロカジは逆に訊かれたことに、こう答えるのだった。
「確かに全く困りゃしねぇが。理解出来なくても知りたいと思ってね、此処へ来たのさ」
 それを聞いて、有はふと思い返す。
 自分に興味がないと告げた時に返ってきた、彼の言の葉を。
 きっとまた、彼が興味を持ってあげているのかもしれない……自分に興味を持てず、死にたいと思っている眼前の奴のことを。
 けれど、返すのはたった一言。
「ふうん、知りたがりだね」
 そして、差し出された椿のように赤いベリーのケーキをひとくち、口に運んでみるけれど。
 瞬間、零れるのは……甘い、という言葉。
 それから酒で口直しする彼女に笑って、ロカジはひょいっと、かわりに赤に飾られたケーキを頬張る。
 ――だったら僕がもーらお、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
将校の格好で晩餐に参加

自死、考えた事はありませんでしたが
己の成れの果てである宿敵と出会った時
私が一人だったのならば、そう考えたのかもしれません
記憶を失い、ただ彷徨うだけの存在として生きるくらいならば、と

人との出会いは良かれ悪かれ影響を与えるのでしょう
倫太郎殿と出会ったからこそ、今の私が居るのですから

周りの者達にとって最後の場所
穏やかながら何処か哀愁を帯びているのは、その所為なのでしょう
そう考えながら、傍に座っていた彼からのダンスの誘い

この世界で踊るのは二度目ですね
倫太郎殿に教えて頂き、潜入先の御婦人に誘われてでしたが
踊りたかったのは貴方とでしたから

差し出された手を握り、踊る
今宵は、共に


篝・倫太郎
【華禱】
若手の将校スタイルで晩餐に参加
夜彦とは階級違いみたいな感じで細部異なる感じに

自死を望む者、か……
まぁ、この人に逢えてなかったら
死に場所探して戦ってた俺も
そっち側の人間だったから判らなくもないけど……
結局は自分と向き合わないと答えは出ない事だから
尤も、向き合う勇気を俺は夜彦から貰ったんだけど

そんな事を思いながら隣の夜彦を見遣って
取り分けたご馳走をもぐもぐ

あ、そうだ
なぁ、夜彦……踊らないか?
ホールで踊る人達を眺めてそう誘う

こんな事でもなきゃ、俺はあんたと踊れないだろ?
だからさ、ダメ……かな?

踊りたかったと言われて自然と嬉しくなる

夜彦、共にあるのは
今宵だけじゃ、ないからな?
今宵からずっと、だ



 今宵、最後の晩餐に参加している者たちは様々で。
 ひとりの者もいれば、皆で死ねば怖くないという心情からか複数人のグループも。
 そして、ペアでいる者たちも少なくはない。
 将校の装いで晩餐に参加する月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の隣にも、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)の姿が在った。
 練者の将校な風格を感じる夜彦とは雰囲気が違い、細部異なる若手の将校スタイルで臨む倫太郎は、ふと周囲の参加者を見遣り呟く。
「自死を望む者、か……」
 その思考が分からない、などとは全く思わない。
 むしろ、自分もそっち側の人間であったのだから、と。
 ……でも。
(「まぁ、この人に逢えてなかったら、死に場所探して戦ってた俺もそっち側の人間だったから判らなくもないけど……結局は自分と向き合わないと答えは出ない事だから」)
 倫太郎に向き合う勇気をくれたのは、誰でもない、すぐ隣にいる人。
 ちらりと隣にいる夜彦を見遣りながら、倫太郎は取り分けたご馳走をもぐもぐと口に運んで。
(「自死、考えた事はありませんでしたが」)
 夜彦もそう思い返してみるけれど……もしかしたら考えたかもしれない可能性が、脳裏によぎる。
 それは、己の成れの果てである宿敵と出会った時。
 もしもその時、一人であったのならば、そう考えたのかもしれない――記憶を失い、ただ彷徨うだけの存在として生きるくらいならば、と。
 けれど、そうは夜彦は思わなかった。
(「人との出会いは良かれ悪かれ影響を与えるのでしょう。倫太郎殿と出会ったからこそ、今の私が居るのですから」)
 あの時自分は、一人ではなかったから。
 けれど眼前にいる人々は、自死を選んだ者たち。
 着飾ったその様は華やかで、並ぶ料理は豪華、流れる時間はゆるやかなのだけれども。
(「周りの者達にとって最後の場所。穏やかながら何処か哀愁を帯びているのは、その所為なのでしょう」)
 何処か影があり、根底に漂う陰鬱さを感じる気がすると。
 そんなことを考えていれば。
「あ、そうだ。なぁ、夜彦……踊らないか?」
 聞こえたのは、くるりひらりとホールに踊る人達を眺めていた倫太郎からの、そんな誘い。
「こんな事でもなきゃ、俺はあんたと踊れないだろ? だからさ、ダメ……かな?」
 続いたその言葉に、夜彦は緑色の瞳を柔く細めて。
「この世界で踊るのは二度目ですね」
 差し出された手を取りながら、こう返すのだった。
「倫太郎殿に教えて頂き、潜入先の御婦人に誘われてでしたが。踊りたかったのは貴方とでしたから」
 だから――今宵は、共に、と。
 そして、踊りたかったと……そう返ってきた言の葉に、倫太郎は自然と嬉しくなって。
 音楽に合わせ、流れるように藍色の髪揺らす彼と足並みを揃えながらも。
 幻朧桜の花弁舞う月下の舞台をくるり巡り、こう紡ぎ返す。
「夜彦、共にあるのは……今宵だけじゃ、ないからな?」
 自分たちにとっては、最後の晩餐なんかじゃ決してない。
 だって、眼前の相手が互いにとって今、生きる理由だから。
 だから……決して、今宵だけではない。
 倫太郎は指絡めたその手をぎゅっと握りしめ、桜の花弁と共に想いを舞わせる。
 ――今宵からずっと、だ……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミンリーシャン・ズォートン
杣友・椋(f19197)と
椋と呼ぶ

綺麗な桜
初めての世界
もう少し見ていたいけど
隣の彼と手を繋ぎ最後の晩餐へ

「こんばんは」
今宵私達は“駆け落ちした男女”
衣装の貸出しがあると聞けばドレスを着たいと申し出て彼と一時離れ案内して貰いつつ館内を確認

部屋に着けば
膝丈長さの白いワンピースドレスを見つけ
わぁっと思わず声を零し折角だからと髪型も変え
長い横髪をサイドポニーに
ふわふわ。髪を巻きおでこも出すの

生まれて初めてのお洒落
鏡に映った自分を見つめ
大好きな彼の元へ
彼の名を呼び
変じゃないかと尋ねたら
彼が抱きしめ囁くから
心臓が壊れそう…
赤面し抱き返すけれどこの感情は演技じゃないの

でも食事は美味しい(もぐもぐ

アドリブ歓迎


杣友・椋
リィ(ミンリーシャン/f06716)と

初めて足を踏み入れる世界
美しい桜を横目に
彼女と手を繋ぎ、最後の晩餐へと

許されぬ恋に絶望した男女の情死――
なかなか絵になる光景じゃねえ?
恋人を演じるリィと一旦離れ
迷ったふりして館の中を探索してみる

あいつが着飾るなら俺も釣り合うように
黒のタキシードでも着ておこうか

再び落ち合った彼女は、装いも髪型もいつもと違う
……別に変じゃねえよ
ま、あんまり他の男に見られたくねえかもな
そう笑い、ぐいと腕を引いて抱き寄せ
「似合ってる」と耳元で囁いた

ほら、リィ。美味そうなもんが沢山あるぞ
"最期"に色々食っとけよ
食事を楽しむ彼女を微笑ましく見守りつつ
他の参加者の会話に聞き耳を立てよう



 月の光に仄かに照り、ひらり夜空を舞うは幻想的で朧げな桜花弁。
 桜はこの世界だけの花ではないはずなのに。
 初めて足を踏み入れたこの世界のいろは美しくて、もう少し見ていたいくらいだけれど。
 ピンクに積もった花弁の絨毯を踏みしめ、きゅっと確り手を繋いで。
 ふたり一緒に、幽玄の夜をこれから過ごす、最後の晩餐へ。
「こんばんは」
 そう優しい響きで紡ぎ、館の中へと通されるミンリーシャン・ズォートン(綻ぶ花人・f06716)。
 今宵の彼女たちは――そう、駆け落ちした男女。
(「許されぬ恋に絶望した男女の情死――なかなか絵になる光景じゃねえ?」)
 杣友・椋(涕々柩・f19197)はミンリーシャンをエスコートしながらも、そうそっと瞳を細めて。
 衣装の貸出しがあると聞き、ドレスを着たいと申し出る彼女と一時離れることに。
 そんな二人が今宵演じるのは、恋人同士。
 やたら豪華な館内を、迷ったふりをしながら探索し、見て回っていた椋であったが。
(「あいつが着飾るなら俺も釣り合うように、黒のタキシードでも着ておこうか」)
 ぐるり一通り巡った後、自身も着替えるべく貸衣装室へ。
 花の様な短くてふんわりしたものや、スリットが深く入った大人っぽいもの。
 舞う桜の様な淡いピンクのものもあれば、夜の漆黒のような濃いものまで。
 そんな沢山あるドレスの中で、ミンリーシャンの青い瞳が見つけたのは――膝丈の長さの白いワンピースドレス。
 純白の綺麗なドレスに、わぁっと思わず零れる声。
 けれど、ドレスだけ着飾っても何だから、折角だしと髪も結って貰うことに。
 長い横髪はすっとサイドポニーにして。髪をくるりと巻けば、空に踊るように、ふわふわ。
 前髪もふんわり上げて、おでこも出して。
 純白のドレスを纏い、鏡に映る自分を見つめては、くるり回ってみるミンリーシャンにとって――これが、生まれて初めてのお洒落。
 そしてひらり、巻かれた青の髪と白のドレスの裾を揺らして、大好きな彼の元へ。
 椋、と彼の名を呼んでから、そっと黒のタキシードを着た姿を見上げ尋ねてみる――変じゃないか、と。
「……別に変じゃねえよ」
 再び落ち合った彼女は、装いも髪型もいつもとは……いや、ついさっきまでとも、全く違っていて。
「ま、あんまり他の男に見られたくねえかもな」
 椋はそう笑い言った刹那、ぐいと細いその腕を引いて、彼女を抱き寄せて。
 ――似合ってる。
 その耳を擽る様に、囁きを落とした。
 そして感じる彼の温もりと吐息の様に響いた声に、思わず胸に手を当てるミンリーシャン。
 彼が抱きしめて囁くから――心臓が壊れそう……って。
 そして頬を染め赤面し、抱き返すけれど。
 でも……この感情は、演技じゃない。
 それからふたり、再び手を繋いで、最後の晩餐の会場へ。
「ほら、リィ。美味そうなもんが沢山あるぞ」
 ――"最期"に色々食っとけよ。
 贅沢な食事並ぶテーブルに目をやり、そう声をかければ。
 美味しい食事を皿に取ってはもぐもぐと、存分に堪能するミンリーシャン。
 そんな食事を楽しむ彼女の様子を、椋は微笑ましく見守りつつも。
「そういえば宝木さんのお嬢さん、最近見かけませんが」
「親子で櫻居先生の大ファンでいらっしゃるので、最後にお会いできるかと思ったんですがね」
 ふと……他の参加者の会話に、聞き耳を立ててみるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
【花の涯】
いやはや、不自然なほど明るく、楽しそうな雰囲気じゃあないか。最後だからこそかな?
さぁさ、女将さんもこの明るい狂気の宴を愉しもうか。喜劇と悲劇、今は前者なのだから。さぁ、お手を女将さん。この盗人とまずは踊り明かしていただきたいからねぇ?(大仰な仕草)

(燕尾服で踊りながら)いやぁそれにしても普段とまた違うそのドレス姿も素敵じゃあないか。そんな美人と踊れるというのは幸せというやつだねぇ?(本当か嘘か分からない事を言う)
それに踊るのも上手いねぇ。ああ、俺?俺は2回目くらいだけど、最初から割と踊れたんだよねぇ

ささ、ダンス終わったらワインで乾杯しようかな。ああ、女将さんはグラスにはジュースさぁ


千桜・エリシャ
【花の涯】

最後だからこそ、ね
確かに
私も最後は愉しい死合の涯に死ねたら本望かしら
ふふ、狂気の宴だなんて言い得て妙ですわね
盗人と過ごす宴なんて狂気以外の何物でもありませんもの
ええ、喜んで
今宵だけはあなたの物よ

あなたに称賛されると
裏があるのではと不安になりますわ
夜桜をイメージしたドレスをふわり翻しターン
そう言う永一さんも
その身なりだと随分とまともに見えますわね?
(…なんて
見惚れたなんて絶対に言ってやりませんから)
舞は元々得意ですから
ダンスもすぐに身に付けましてよ
あなただってお上手ではなくて?
ふーん…私が初めてではありませんのね…
いいえ、何でも

もう!いちいち余計ですわね!
ジュースだって乾杯できますわ!



 幽世の如き夜を彩るのは、ひらり舞う朧の桜。
 現のものとは思えぬほど幻想的な桜踊る中、催されるその宴は、華やかな様をみせているけれど。
「いやはや、不自然なほど明るく、楽しそうな雰囲気じゃあないか」
 ――最後だからこそかな? と。
 そう金の瞳細めた霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)の隣に並ぶのは、舞い散る花弁を纏う桜鬼。
「最後だからこそ、ね。確かに、私も最後は愉しい死合の涯に死ねたら本望かしら」
 咲き乱れる花の如き千桜・エリシャ(春宵・f02565)の双眸は、まるで幻朧桜のような妖艶な彩りを宿して。
 愉しい最後を思い描いては、美しく綻ぶ。
 今宵は、贅沢で愉快で愚かな、この世最後の楽しい夜。
「さぁさ、女将さんもこの明るい狂気の宴を愉しもうか。喜劇と悲劇、今は前者なのだから」
「ふふ、狂気の宴だなんて言い得て妙ですわね」
 ――盗人と過ごす宴なんて狂気以外の何物でもありませんもの。
 エリシャはそう、笑顔をふわりと咲かせて。
「さぁ、お手を女将さん。この盗人とまずは踊り明かしていただきたいからねぇ?」
「ええ、喜んで。今宵だけはあなたの物よ」
 大仰な仕草で差し出されたその手を、喜んで取れば。
 永一のエスコートに身を任せるように、ゆうらり、夜闇に咲く桜の如き髪とドレスの裾を靡かせる。
「いやぁそれにしても普段とまた違うそのドレス姿も素敵じゃあないか。そんな美人と踊れるというのは幸せというやつだねぇ?」
 そうさらりと紡がれる、甘い言の葉。
 けれど、燕尾服纏う眼前の彼は、何せ盗人。
 囁かれる声は本心か、それとも桜鬼の心を盗むための嘘か……その表情からは、決して窺い知れない。
「あなたに称賛されると、裏があるのではと不安になりますわ」
 きゅっと優雅にターンすれば、ふわり翻る、夜桜をイメージしたドレス。
 そして、本当か嘘か、分からぬ誉め言葉を彼が紡ぐのならば。
「そう言う永一さんも、その身なりだと随分とまともに見えますわね?」
 エリシャも、そうくすりと笑って返すけれど。
(「……なんて、見惚れたなんて絶対に言ってやりませんから」)
 心に密かに描いた思いは、盗人にはナイショ。
 音楽に合わせ、踊るふたりの足並みはぴったり。
 ひらりひらりと、華麗にステップを刻みながら。
「それに踊るのも上手いねぇ」
「舞は元々得意ですから、ダンスもすぐに身に付けましてよ」
 ……あなただってお上手ではなくて?
 上手にエスコートされながら、そう笑んで首をそっと傾ければ。
「ああ、俺? 俺は2回目くらいだけど、最初から割と踊れたんだよねぇ」
 返る言葉に、そっと一瞬、細められる桜色の瞳。
 そして、小声でぼそり零れるこんな呟き。
「ふーん……私が初めてではありませんのね……」
 けれどすぐに――いいえ、何でも、と。装うは澄まし顔。
 そんなダンスのひとときを、ふたり楽しんでから。
「ささ、ワインで乾杯しようかな」
 高そうなワイングラスをそう、エリシャにも手渡す永一だけれど。
 大袈裟に、ああ、と首を傾けつつも楽し気に笑う。
「女将さんはグラスにはジュースさぁ」
「もう! いちいち余計ですわね!」
 ワインを注ぎ、似た色の葡萄ジュースを注ぎ返されながらも。
 ――ジュースだって乾杯できますわ!
 そう頬をむぅっと膨らませるけれど……カチンとグラスを合わせ、濃厚ないろをゆらり揺らめかせて。
 狂気に彩られた最後の夜の喜劇に、乾杯を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【神竜】篝(f20484)と

帝國陸軍の将校の礼装に身を包み、篝と連れだって晩餐会の会場へ
女神と崇められる女としがない軍人の許されぬ恋……そんな設定だ
演技力を駆使して真面目で規律正しい軍人が、恋に溺れて破綻した風に見せかけよう

軽く食事と酒を取りながら他の自殺志願者と談話
なるべく二人揃って死にたいが死に損なったらどうしよう
……と、わざと話を振ってみる

ダンスタイムになったら篝と共に踊ろう
一緒に踊るのは初めてだな
ラストダンスをお前と踊ることが出来て嬉しいぞ
俺が送ったドレスもよく似合って女神にふさわしく芳しい
この時が永遠に続けばいいと思う程に

ああ、酒に酔ったのだな
ふらつく彼女が倒れぬよう抱きしめようか


照宮・篝
【神竜】まる(f09171)と

まるから贈られた【紅梅繻子】を纏って
まるは、何を着てもまるだな
ああ…と。今は、女神と軍人の、許されない恋人同士、だったか
私は、取り繕うことは苦手だから…なるべく、まるの傍に寄り添っていよう

まるに合わせて、少しだけ食事と酒を
自ら死ぬために、これだけの人が集まって
…それほど、焦がれるのかな。現世で無い場所に。

まる、まる、踊ろう
私は踊りに慣れていないけれど
まるの足を踏んでしまわないように、少しだけ浮いてみたりして(空中浮遊)
着飾ったまるは、やっぱり何だか、いつもと違う気がする
これが、最後で、永遠に終わらなければ
…とても、幸せ、だな…(酒が回って凭れるようになる)



 幽世の如き夜に舞うは、幻の如く朧に咲き誇る桜の花。
 そして花弁踊る幻想的な風景に咲き誇り香る、神々しさを宿す紅梅の華。
 今宵、帝國陸軍の将校がエスコートするは、光沢のある優美なドレスを纏った女神。
 その女神の装いは将校――いや、将校の衣装を纏ったマレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)が、照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)へと贈ったもの。
「まるは、何を着てもまるだな」
 灯す微笑みと共に、篝はそうマレークを見つめるけれど。
 ああ……と、思い出したようにそっと口を噤み、彼へとぴたり寄り添う。
 ――女神と崇められる女としがない軍人の、許されぬ恋。
 真面目で規律正しい軍人が、恋に溺れて破綻して。
 女神と共に、この『最後の晩餐』へとやって来た――と。
 演技力を駆使し、そう見せかけるべく振舞うマレーク。
(「今は、女神と軍人の、許されない恋人同士、だったか」)
 そして、取り繕うことは苦手だから……と。なるべく彼の傍に寄り添っていようと努める篝。
 足を踏み入れた晩餐会は、知らぬ人が見れば、さぞ華やかな宴にみえるだろう。
 煌びやかな館の装飾に、着飾った参加者、贅沢な食事や酒。
 けれど交わされる会話は、豪華な宴にはそぐわぬようなもの。
「なるべく二人揃って死にたいが、万が一、死に損なったらどうしようか……」
 軽く食事と酒を取りながら、マレークがそう他の自殺志願者へと、わざと話を振ってみれば。
 ぽんっと宥めるように彼の肩を叩きながら、自殺志願者の男は笑ってこう返す。
「それなら心配無用だぜ、将校さん。『幻朧心中』の小説通りに、『桜の介添人』が首を落としてくれるからな」
「……『桜の介添え人』?」
「おや、この晩餐会に参加しているのに、『幻朧心中』を読んでいないのかい? そういえば主催者の宝木さんのお嬢さんが、この『桜の介添人』を随分気に入っていたようだが……最近見かけないなぁ」
 ま、これから死ぬ俺やアンタはどのみち会えないがな、と男は再び笑う。
 この男が……いや、最後の晩餐に参加している者たちが、何故そんなに死にたいのか。
 各々の事情や身の上は分からないけれど。
(「自ら死ぬために、これだけの人が集まって……それほど、焦がれるのかな。現世で無い場所に」)
 マレークに合わせ、少しだけ食事と酒を取りながらも。金の髪を揺らし首を傾けつつ、思う篝。
 そして刹那、会場に流れ始めるのは、優雅な音楽。
 手を取り合い、くるりと踊り始める人々と同じ様に。
 マレークはスマートに、その手をスッと眼前の女神へと差し出して。
「まる、まる、踊ろう」
「一緒に踊るのは初めてだな。ラストダンスをお前と踊ることが出来て嬉しいぞ」
 重ねられた篝の手をそっと取ると、リードするようにステップを踏み始める。
 そんな彼の足を踏んでしまわぬようにと、篝は少しだけ浮いてみたりして。
 音楽に合わせ舞うたび、ふわりと香り花開く、鮮やかな紅梅繻子のいろ。
 俺が送ったドレスもよく似合って女神にふさわしく芳しい――そうマレークは月下に華咲かせ踊る女神の姿に、紫の瞳を細める。
 ……この時が永遠に続けばいいと思う程に、と。
 先程は、どんな格好をしても、まるはまるだと……そう思ったのだけれど。
(「着飾ったまるは、やっぱり何だか、いつもと違う気がする」)
 そう彼を見つめていた篝は、何だか足元がふわふわ、視界もぐるりと揺れて。
「これが、最後で、永遠に終わらなければ……とても、幸せ、だな……」
 瞬間、こてんと倒れるかのように、彼の胸に身を委ねる。
「ああ、酒に酔ったのだな」
 そんなふらつく篝の身体を、危なげなく咄嗟に受け止めて。
 マレークは、酔って染まった女神の頬にかかる金の髪を、優しくそっと払ってあげた後。
 包み込むように、その腕で彼女を支え、抱きしめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネフラ・ノーヴァ
ああ、死は美しい。特に赤い血を伴うものは。
さて、まずは贅沢を楽しもうじゃないか。いつも通り白ドレスだが、より豪奢なものを借りよう。
料理よりは酒を楽しむ。さぞ旨いのが揃っているだろう。
同じく酒を飲む参加者と乾杯して、自殺方法について語らってみようか。どんな方法が聞けるか楽しみだ。
私は腹に刺剣を突き立てての自殺だ。
デモンストレーションしてみせようか。音楽に合わせて踊りながら、薔薇の一輪を手に剣に見立て、それに赤ワインを注いで腹に垂らして見せよう。どうせ死ぬなら、汚してしまってもかまわないだろう?フフッ。



 一見、ただの華やかな社交界のようにみえるのだけれど。
 この場所に集う者たちは皆、死を自ら望み、受け入れんとやって来た者たちだという。
 そんな思い思いに最後の夜を過ごす者たちの多くは、己の命の終焉を美しく飾らんと、豪華な装いに身を包んで。
 並ぶ豪華な食事に舌鼓を打ち、桜舞う月下の夜空に杯をあげて乾杯し合う。
 この中に、心の奥では死を恐れる者もいるかもしれない。
 けれど、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)と同じ様に思っている者もいるだろう。
 ――ああ、死は美しい、と。
 その中でも一等、特に美しいいろの死は、赤い血を伴うもの。
 だがその前に、折角の機会だから。
「さて、まずは贅沢を楽しもうじゃないか」
 ネフラが纏うのは、いつも通りの純白のドレス。
 いや、同じ白でもより豪奢なものを借り、その身に纏って。
 ひらり美しく愉快にその裾を靡かせながら、さぞ旨いのが揃っているだろう、と。
 料理ではなく酒へと羊脂玉の如き色の瞳を向け、より美味しい酒を選んで手にすれば。
 同じく酒を楽しむ自殺志願者たちと、かちりと杯を重ね合わせる。
 ゆるやかに流れる、異様なほどに穏やかな時間。
 けれどそのひとときに交わされる会話は――美しき死を、どうやって迎え入れるか。
「私はやはり、桜舞う中、身を投げようかと」
「僕は妻とともに、入水自殺を」
「首吊りも毒殺も捨てがたく、まだ迷っています」
 そんな各々の考える自殺方法を興味深く聞きながら。
 ネフラがふと手にしたのは、血の様に赤い一輪の薔薇。
「私は腹に刺剣を突き立てての自殺だ」
 ――デモンストレーションしてみせようか。
 そう紡ぐやいなや、ふわりくるり、音楽に合わせて踊りながら。
 握る薔薇の一輪を剣に、そしてその上から注ぐ赤ワインを血に見立て、ネフラは真白のドレスを真紅に染めてゆく。
 ――どうせ死ぬなら、汚してしまってもかまわないだろう? と。
 鮮やかな赤の飛び散ったドレスの裾を躍らせて、フフッとご機嫌に愉悦の笑み宿しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皆城・白露
(他猟兵との連携・アドリブ歓迎です)
普段の服装で参加
(全身絵通りの白尽くめ。死装束に見えなくもない、か)

軽く食事をつまみながら、宝木や周囲の者と話し【情報収集】
(ここにいる「生きられるのに死にたい」奴らの事情は
正直然程興味はないが、不自然でないように振る舞う)
【聞き耳】で館内の状況も探っておく
「この「後」の為に、静かな場所を探している」と説明

ここに来た理由を問われたら、「疲れたから」と答える
獣に己の命を食われる病(人狼病)、それに怯えるのに疲れた
自分はいつ野垂れ死ぬかわからないと思ってたが
ここならあんたが、オレがここに来て逝った事を、「覚えていてくれる」んだろう?
(――嘘は言ってない)



 最後の夜くらい、贅沢に着飾りたいと。
 そう思い正装に身を包む人の多い中、皆城・白露(モノクローム・f00355)の装いは普段通り。
 いやある意味、この最後の晩餐に、一番相応しい格好なのかもしれない。
 白露の装いは、全身白尽くめだから。
(「死装束に見えなくもない、か」)
 そんなことを思いながらも。
 贅沢に並ぶ豪華な食べ物を皿にいくつか見繕い、軽く食事を摘まみつつ。
「今宵は、お越しくださってありがとう。皆さんは、どのような気持ちで此方へ?」
 主催者の宝木やその周辺にいる自殺志願者の話に、不自然にならぬ程度に耳を傾ける。
 いや正直、然程興味はない――「生きられるのに死にたい」奴らの事情などは。
 始まる不幸自慢はさらりと聞き流し、白の耳をぴこり、館内の状況も探りながら。
「そちらの白い貴方は、何故ここへ?」
 そう、ふと宝木に訊ねられれば。白露はこう説明を返しておく。
「この「後」の為に、静かな場所を探している」
「ほう、そう思い至った理由を、差し障りなければ聞かせてくれませんか?」
 再び訊ねてきた宝木に、疲れたから、と一言ぽつりと零した後。
「獣に己の命を食われる病、それに怯えるのに疲れた」
 ふと灰色の瞳をこの晩餐の主催者である彼へと向け、白露は紡ぐのだった。
「自分はいつ野垂れ死ぬかわからないと思ってたが」
 ――ここならあんたが、オレがここに来て逝った事を、「覚えていてくれる」んだろう?
 そんな白露に、ああ勿論だとも、と宝木は調子良く笑って。
 では皆で乾杯でもしましょうか、と周囲の者たちに飲み物を注ぎ、カチンとグラス重ね合わせ始める。
 白露も不自然にならぬよう合わせ、ジュースの入ったグラスを適当に合わせながらも。
 ゆらり、白い尻尾を揺らしながらも思う――嘘は言ってない、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
不思議……
死にたがりだった私が、生きたいと思っている今
これから死にゆく者になりすましているなんて、ね
昔の私だったら縋っちゃったかもしれないな
死っていう、後戻りのできない逃げ場所に

上品な味のケーキ
美味しいはずなのに、あんまり食欲がないや
やっぱり気になるな……自殺を望む、参加者の人達が
思い切って話し掛けてみよう

最後の晩餐だなんて思うと感慨深いよね
何を食べているの?それ、好物?
……私が死んだら、お父さんとお母さんが喜んでくれそう
でも、きっと悲しんでくれるひともいるんだ
君はどうかな
気に掛けてくれるひと、誰か一人はいなかった?

幻朧心中の通りなら
私達も幻朧桜の樹の下で眠れるんだよね
……あの物語、君も好き?



 夜空にはらりと舞い遊ぶのは、まるで幻かのように朧な桜花弁。
 その幻想的なひとひらを、天仰ぐ緑の瞳にも、ひらりひらりと舞わせながら。
 不思議……そうぽつりと呟くのは、オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)。
 周囲を見回せば、一見贅沢な宴に興じている、見目華やかな参加者たち。
 けれども此処にいる人たちは皆、昔のオルハときっと似ている。
(「死にたがりだった私が、生きたいと思っている今。これから死にゆく者になりすましているなんて、ね」)
 そしてどこか影はあるものの、妙に達観しきった清々しささえ感じる者たちの表情を見て思う。
(「昔の私だったら縋っちゃったかもしれないな」)
 ――死っていう、後戻りのできない逃げ場所に、って。
 ふと目に映るのは、可愛くて美味しそうなケーキたち。
 それを皿にとって、はむりとひとくち食べてみるけれど。
「……上品な味のケーキ」
 それは名のあるパティシエが拵えた絶品、美味しいはずなのに。
 あんまり食欲がないや、とそっと小さく首を振るオルハ。
 自分も死にたがりだったから、死にたいという気持ちが分かる部分もあるし。
 だからこそ、やっぱり気になるのだ。
 もうすぐこの世に別れを告げようとそう決意した、自殺を望む、参加者の人達のことが。
「最後の晩餐だなんて思うと感慨深いよね。何を食べているの? それ、好物?」
 オルハがそう思い切って話し掛けてみたのは、同じ年くらいの少女。
「ううん、こんな贅沢なもの、はじめて食べたわ。死ぬ前にこんな美味しいもの食べられて、嬉しい」
 ……貴女も食べる? そう差し出されたスイーツを、私は大丈夫、と遠慮してから。
 死ぬ間際の最後の夜を堪能しているようにみえる少女へと、こう紡いでみる。 
「……私が死んだら、お父さんとお母さんが喜んでくれそう。でも、きっと悲しんでくれるひともいるんだ」
 ――君はどうかな、って。
 その声に、ぴたりとスイーツを頬張っていた手が止まって。
 ぎゅっと掌を握りしめ、ふるふると首を横に振る少女。
「私も……私なんていなくなったら、パパもママも喜ぶと思うから」
 でも、妹は――そう零れ落ちる言の葉。
 そんな少女に優しく微笑んで。
「幻朧心中の通りなら、私達も幻朧桜の樹の下で眠れるんだよね」
 ……あの物語、君も好き?
 そう訊ねてみれば、今度はこくりと頷く少女だけれど。
「幻朧心中は、大好きなお話よ。でも……」
 そして不意に伸ばされ、オルハの服の袖をぎゅっと掴むのは、少女の小さな手。
 そんな手を、オルハは何も言わずに、そっと取ってあげる。
 自分の袖を掴むその手が――微かに、震えていたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

土斬・戎兵衛
まったく、死に行く人を見物するためだけにこんな豪奢なパーチーを開くとは、とんだお金ちゃん持ち様だね
ちょっと分けてもらいたいくらいだけど、お金ちゃんに執着すると自殺志願者か疑われちゃうか
仕方ないので今回は美味しいスイーツでもタダ食らいして満足するよ

スイーツを楽しみつつ行動開始
屋敷の中を探る
拙者の領域、夜の隘路には自棄のままにふらり歩く者も珍しくはなかった
そうした死を望む人々の【演技】をしながら、虚ろに揺れる足取りで迷い込んだ振りをして、洋館の奥地へ潜入しよう
【暗視】も使いつつ情報収集
宝木の背後にいる影朧のことや、自死した者がどのように扱われるのかを調べられたら良いだろう

(絡み・アドリブ歓迎)



 一体、総額どのくらいかかっているのか。
 大きな屋敷は広く豪華で、並べられた食事や酒はどれも上等、まるでその様子は華やかな社交界のよう。
「まったく、死に行く人を見物するためだけにこんな豪奢なパーチーを開くとは、とんだお金ちゃん持ち様だね」
 きっとこれも驚くほど高価なんだろうね、と。
 小さな壺をひょいっと手にし、くるり眺めながらも。
 土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)はそっと肩を竦める。
(「ちょっと分けてもらいたいくらいだけど、お金ちゃんに執着すると自殺志願者か疑われちゃうか」)
 死にゆく者に必要なお金ちゃんといえば、せいぜい、三途の川の渡し賃くらいだろうか。
 普段は拝金主義者な戎兵衛も、今回ばかりは仕方ないと思いつつも。
 やはりタダでは帰らないと、美味しいスイーツでもタダ食らいして、満足することに。
 いや、お金ちゃんの沢山かかっているスイーツの味は、さすが十分に絶品で。
 美味しい甘味を存分に味わい、楽しみつつも……勿論、やるべきことは忘れない。
(「拙者の領域、夜の隘路には自棄のままにふらり歩く者も珍しくはなかった」)
 ふとそう思い返しながら、ふらりゆらり、虚ろに揺れる足取りで。
 死を望む者の演技をしながら、迷い込んだ振りをしつつ、洋館の奥へと潜入を試みる戎兵衛。
 明るく賑やかな晩餐会の会場を離れれば、明かりも灯っていない暗い廊下が続く。
 そんな暗闇の中、暗視の技能も駆使しつつ、かなり広い屋敷をそっと音を立てぬよう、慎重に歩けば。
「……!」
 誰かの話し声が聞こえた気がして、戎兵衛は動きを止める。
「……ああ、首を斬れば、後は好きにさせる……きっと『幻朧桜』の小説と同じように、死体は桜の樹の下に……」
「……小説の、『桜の介添人』が気に入っていたからね……ハルちゃんは……」
 耳を澄ませば聞こえる、そんな会話。
 片方は、どうやら主催者の宝木らしい。
 聞こえてきた言葉は……死体は桜の樹の下に、『桜の介添人』、そしてハルちゃん――。
 戎兵衛はそう、聞いたことを思い返しながら。
 話していたふたりの気配が遠ざかったことを確認し、晩餐会の会場へと、足早に戻りはじめる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・八重
【比華】

背中と足を見せた黒いロングドレス
愛おしい子の隣でヒールの音を鳴らす
ふふっ、ありがとう。
なゆちゃんとても可愛いらしいわぁ
あぁ、私の天使

えぇ、愛おしい者と命を絶つなんてとても美しいわね。
どう散らせようかしら?
ドレスを紅く染める?それとも甘い毒を飲み干して?
あぁ、なんて甘美なひと時かしら
その瞬間に一緒に味わえるなんて幸せで震えてしまうわ
私の紅、誇らしく咲き美麗な一輪の華
ふふっ、なゆちゃんが楽しそう

私の好みは赤い味。それはなゆちゃんの咲き誇る花?それとも流れるモノかしら
なゆちゃんは好みはなぁに?

えぇ、一緒に堕ちましょう
どんな場所でも貴女となら


蘭・七結
【比華】

真白のドレスにあかいリボンを結び
お気に入りのあかい靴の音を鳴らす
嗚呼、ナユのあねさま
普段のあねさまもうつくしいけれど
黒を纏うあなたは、一等うつくしい
とてもステキだわ、あねさま

心中、愛しいものと命を絶つこと
とてもうつくしい響きね
心が踊ってしまうようだわ
愛しいあなたを、この手で――
ナユの黒。艶やかに咲き誇る一華
あかを咲かせるのも、毒に歪ませるのも
どちらもきっと、愉しいわ

その黒があかく滲んだのならば、どんな色を見られるのでしょう
あねさまはどんな〝お味〟がお好きかしら
ナユは、あかくてあまくて
うつくしいものが、すきよ

あねさま、あねさま
あなたと一緒に、堕ちることができるわ
なんて甘美な体験なのかしら



 降り積もった薄紅の絨毯をふわり、もう一度夜空に舞わせながら。
 最後の夜に聞こえる音色は、並んで鳴らす靴の音とふふっと楽し気に漏れる笑み。
 纏う黒は長い裾をゆらり靡かせて、開いた背中と深いスリットから覗く足が美しく上品な色香を解き放つ。 
 そんな、ヒール鳴らし隣を歩く蘭・八重(緋毒薔薇ノ魔女・f02896)のドレス姿に。
「嗚呼、ナユのあねさま。普段のあねさまもうつくしいけれど。黒を纏うあなたは、一等うつくしい」
 ――とてもステキだわ、あねさま。
 そうお気に入りのあかい靴を鳴らし並ぶ、蘭・七結(紅戀・f00421)がうっとり紫の瞳を細めれば。
「ふふっ、ありがとう。なゆちゃんとても可愛いらしいわぁ」
 ――あぁ、私の天使。
 真白のドレスに身を包み、あかい蝶々のように結ばれたリボンをひらり揺らす妹に笑み返す八重。
 今宵は素敵な、ふたりで過ごす最後の夜。
「心中、愛しいものと命を絶つこと。とてもうつくしい響きね。心が踊ってしまうようだわ」
「えぇ、愛おしい者と命を絶つなんてとても美しいわね」
 ……どう散らせようかしら?
 八重は夜色にあかを揺らしながら、首を傾けて愉しそうに思案する。
 ――ドレスを紅く染める? それとも甘い毒を飲み干して?
「あぁ、なんて甘美なひと時かしら。その瞬間に一緒に味わえるなんて幸せで震えてしまうわ」
 私の紅、誇らしく咲き美麗な一輪の華――これから咲かせるいろを思えば、愉悦の彩りが笑み零れて。
 幸福感と高揚感に心が染まり、いっぱいに満たされる。
「愛しいあなたを、この手で――」
 ナユの黒。艶やかに咲き誇る一華――その黒に、なにいろを添えて飾ろうかしら。
「あかを咲かせるのも、毒に歪ませるのも。どちらもきっと、愉しいわ」
「ふふっ、なゆちゃんが楽しそう」
 最後の一瞬を思い胸高鳴らせ七結の姿を、可愛らし気に八重が見つめれば。
「その黒があかく滲んだのならば、どんな色を見られるのでしょう」
 きっとそのいろは、見たことがないくらい刹那の美しさに違いない。
 そして夜を彩るのは、鮮烈に咲く色と。
「あねさまはどんな〝お味〟がお好きかしら」
 痺れるような、蕩ける魅惑のお味。
 七結の問いの声に、八重は艶やかな唇を開き告げ、訊ねる。
「私の好みは赤い味。それはなゆちゃんの咲き誇る花? それとも流れるモノかしら。なゆちゃんは好みはなぁに?」
「ナユは、あかくてあまくて。うつくしいものが、すきよ」
 ふたりが揃って好きなのは、あかいあかいいろ。
 愛しい人がそのいろに染まる、そう考えるだけでも楽しいのに。
「あねさま、あねさま。あなたと一緒に、堕ちることができるわ」
 ――なんて甘美な体験なのかしら。
 愛しい人と一緒に、最後の一瞬を共有できる幸せ。
 そう月の光に照らされ笑み咲かせる七結に、八重は囁くように紡ぐ。
「えぇ、一緒に堕ちましょう」
 ――どんな場所でも貴女となら、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フローリエ・オミネ
クロウ(f01157)と

白のバッスルスタイルのドレスを着て、何時もの硝子の靴を履いてゆくの
天国へ行く時は白を着ると決めていたから

ねえ、クロウ
今夜は楽しみましょうね
永遠にいまが続きますようにと、そう思えるほどに

0時の鐘なんて関係ない
わたくしは何時までも、あなたのお傍に居るわ
…最期の時まで

あなたの為に一つダンスを覚えたの
歩くのが下手なわたくしよ、凄いと思わなくて?
冷たい手を取り合えば、共にあたたかくなるわね

…あなたと出会えて本当に良かった
例えこの先何が起こっても後悔は無いわ

疲れてしまったからダンスはおしまい
でもね、足が辛くても浮遊はしないの

クロウを少しでも多く感じていたいから

嗚呼、あたたかいわね


上城・クロウ
フローリエ(f00047)と参加
最期こそ貞淑にフォーマルスーツに身を包む
自死とは人の完成形かもしれない
野の獣たちは自ら死を選択するようなことはあるまい。しからば…
「人とは死をもって完成するのかもしれませんね」

声がかかる。同行者たる彼女から
その姿、さしずめ童話のサンドリヨンか
楽しむ…最期故に後悔無いように、なるほど納得できる

では、一曲お相手お願いします
冷たい手を取り我らへの鎮魂歌に乗せて
最期へと時計の針を進めましょう

後悔という感情は認識できるかわかりませんが…
ええ、フローリエと出会えたこと、それが得難い幸運だったことは同意します

主の命は果たしきれませんでしたが
たぶんそれが私の定めだったのでしょう



 夜空にひらり舞う桜花弁が、今宵の旅立ちを飾るように朧に閃き散って。
 纏うドレスのそのいろは、天国へ行く時はこれと決めていた彩り。
 ボリュームのある後姿のフリルが印象的な、白のバッスルスタイルのドレス。
 足元には勿論、いつもの薄水色の硝子の靴を履いて。
 桜色の絨毯が導く、晩餐催されし館を訪れたのは、銀の髪を躍らせる魔女。
 そんなフローリエ・オミネ(シソウの魔女・f00047)の隣には、貞淑にフォーマルスーツに身を包んだ上城・クロウ(白紙の設計図・f01157)の姿が。
 クロウは最後の夜を楽しむ者達の姿を見遣り、そして思う――自死とは人の完成形かもしれない、と。
(「野の獣たちは自ら死を選択するようなことはあるまい。しからば……」)
 それからふと、漆黒の夜へと呟きを落とす。
「人とは死をもって完成するのかもしれませんね」
 そんな彼の名を、白き冷気纏う魔女は紡ぎ上げる。
「ねえ、クロウ。今夜は楽しみましょうね」
 ――永遠にいまが続きますようにと、そう思えるほどに、って。
「楽しむ……最期故に後悔無いように、なるほど納得できる」
 きらきら煌めく硝子の靴を履いた魔女の姿は、さしずめ童話のサンドリヨンかと。
 クロウは夜の如き色の瞳に映るフローリエへと、こくりと頷くけれど。
 でも目の前のサンドリヨンには、0時の鐘なんて関係ない。
「わたくしは何時までも、あなたのお傍に居るわ……最期の時まで」
 0時になっても、カボチャの馬車は迎えに来ないから。
 かわりに、ずっと隣に――そう紫の瞳細めるフローリエは、かつんと硝子の靴を鳴らしてふわり笑む。
「あなたの為に一つダンスを覚えたの。歩くのが下手なわたくしよ、凄いと思わなくて?」
「では、一曲お相手お願いします」
 スッと差し出されたクロウの手を彼女が取れば、ひやり感じる氷の冷たさ。
 けれど、それは一瞬。混ざり合う互いの熱が、じわりあたたかくて。
 ――我らへの鎮魂歌に乗せて、最期へと時計の針を進めましょう。
 歩くことが苦手なフローリエを優しくリードするように手を引いて、くるりステップを踏み出すクロウ。
 音楽に乗り、覚えたステップを懸命に踏みながら。
「……あなたと出会えて本当に良かった。例えこの先何が起こっても後悔は無いわ」
 そう紡がれたフローリエの言葉に、後悔という感情は認識できるかわかりませんが……そう、そっとクロウは首を傾けるけれど。
「ええ、フローリエと出会えたこと、それが得難い幸運だったことは同意します」
 また共に一歩、最期の時へとふたりの針を進める。
 白のドレスと銀の髪がふわりと踊り、煌めく靴が刻む足取り。
 けれど音楽が鳴り止んだ頃には疲れてしまったから、ダンスはおしまい。
「でもね、足が辛くても浮遊はしないの。クロウを少しでも多く感じていたいから」
 ――嗚呼、あたたかいわね。
 一緒に刻んだステップの余韻と絡め合った指から伝わる熱は、そのままに。
 そんな彼女の少し乱れた銀の髪をそっと整えて上げながら。
 幻の如く朧に舞う桜を見上げ、クロウは最後の時を前に思う。
 主の命は果たしきれませんでしたが――たぶんそれが私の定めだったのでしょう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セレスタイト・ヴェニット
カディ(f01636)と最後の晩餐をゆっくり楽しみます

淡い桃色のドレスで彼の手に、手を重ね
見上げるとそこに鮮やかな紅玉
きっちりした服をきた彼は王子様みたいでドキリとする……
似合ってます、王子様みたい
否定する彼にくすりとこぼして
こんなにステキなカディと踊ったら思い残すことないです
いつまでも、彼とならどこまでも、と

でも、そう、どうか最期まで今度こそ最期までこの手が離れないようにと願う
どんな終わりでも、ただそれだけが気がかりで

あの、でも
踊り終わったらご飯も食べたいです
堪えてたけど結局盛大にお腹がなってしまって……
恥ずかしい……

笑う彼の笑顔を焼き付けて
握ってくれた手を握り返して
豪華な豪華な最後の晩餐へ


カーディナル・レッド
セレスタ(f01381)と共にパーティーへ
違和感無いよう身なりを整えて
ふふ、王子なんて大袈裟さ
僕のような者には勿体ないほど美しい姫君とご一緒できて光栄だ
佳き最期の為に、一礼して可憐な君の手を取ろう
ダンスなら得意だから、辿々しい彼女をリードしようか

踊り終えても離れない手が不思議で、時折重ねた手を見つめるから
気取った態度は捨てて、しっかり握り返そう
僕は此処にいるよ、大丈夫
そう笑えば君の不安は拭えるだろうか

…と、思ったら可愛らしい音が鳴ったから、安心はしたみたいだ
つい笑ってしまっても許して欲しい
そうだね、せっかくだから君と楽しく美味しい物を食べよう
そっと彼女の手を引いて
それでは姫様、共に最後の晩餐へ



 最後の夜に相応しい、美しい月が光降らす夜。
 けれどカーディナル・レッド(優しい嘘・f01636)が好む夜の漆黒に降るのは月の光だけではなく。
 ひらりと朧に舞う、桜の花弁。
 そしてそんな桜の彩りの様な、淡い桃色のドレスをひらり靡かせながら。
 差し出した彼の掌に手を重ねるのは、セレスタイト・ヴェニット(優翼・f01381)。
 見上げればそこには、自分の姿だけを映す鮮やかな紅玉。
(「きっちりした服をきた彼は王子様みたいでドキリとする……」)
 思わず見惚れるような彼の姿に、舞う花弁や靡くドレスと同じ色の視線を返して。
「似合ってます、王子様みたい」
 そう素直に思った通り伝えれば。
「ふふ、王子なんて大袈裟さ」
 返ってきた否定の言葉に、くすりと零すセレスタイト。
 カーディナルはそんな彼女に笑み返して。
 一礼して可憐な彼女の手をそっと優しく取る――佳き最期の為に。
「僕のような者には勿体ないほど美しい姫君とご一緒できて光栄だ」
「こんなにステキなカディと踊ったら思い残すことないです」
 ――いつまでも、彼とならどこまでも、と。
 そう微笑むセレスタイトに、ダンスなら得意だから、と。
 辿々しい彼女をスマートにリードし、音楽に合わせカーディナルが華麗にステップを踏んでいけば。
 くるり廻るたびに淡いドレスが花開き、青の髪がふわり流れるように夜に踊る。
 そして……踊り終えたはずなのに。
 カーディナルは不思議そうにふと、紅玉の瞳を瞬かせる。
 踊り終えても離れぬ手と、重ねた手を時折見つめる彼女の視線。
 そんなセレスタイトが、気がかりに思い願っているのは、ただひとつだけ。
(「どんな終わりでも……でも、そう、どうか最期まで今度こそ最期までこの手が離れないように」)
 刹那、ぎゅっと握った手を包み込んでくれるのは、彼の大きな手。
 気取った態度は捨てて、確りと彼女の華奢な手を握り返しながら、カーディナルは紡ぐ。
「僕は此処にいるよ、大丈夫」
 ……そう笑えば君の不安は拭えるだろうか、って。
 そして、じわり伝わる温もりを感じながら、改めてセレスタイトが紅の瞳を見上げれば。
「あの、でも、踊り終わったらご飯も食べたいです」
 刹那、くう、とふいに鳴るおなかの音。
 堪えていたけれど、結局盛大に鳴ってしまったセレスタイトのお腹。
 恥ずかしい……そう頬を仄かに染める様子と可愛らしいおなかの音に、安心はしたみたいだ、と瞳細めて。
 つい、今度はカーディナルが、くすりと笑み零してしまうけれど。
 待っているのは、豪華な豪華なご馳走。
「そうだね、せっかくだから君と楽しく美味しい物を食べよう」
 繋いだ手を握り返してきた彼女へと、カーディナルはもう一度微笑んでから。
 ――それでは姫様、共に最後の晩餐へ。
 幻想的な桜舞う中、そっと優しく、彼女の手を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

織銀・有士郎
桜舞う館で、月夜を見上げながら酒を楽しむ。
中々贅沢な酒の楽しみ方だとは思うが……。
「死に際の一杯っていうシチュエーションがなぁ……」

とりあえずいつもの巫女装束だと自殺志願者かあやしまれそうなので、灰色の振袖と袴を借りておくか。
後は主催者か適当な誰かを月見酒に誘いながら、情報を集めるとするかね。
ま、その際に死にたくなった経緯を聞いてやるのも良い。誰にも語れぬよりはマシだろう。

……遠慮なく酒が飲めるっていうのは利点だが、他の旅団メンバーが周囲にいないと少し寂しい気もするな。
まぁ騒ぐわけにもいかないから、丁度良い静けさではあるのだが。
「……やれやれ、本当に自決するような静かさだ」



 幽世の如き夜をより彩り飾るのは、朧に舞う桜花弁。
 その花自体は、他の世界でも春の季節に見ることができるけれども。
 年中咲き誇っているというこの世界の桜は、どこか幻の如き儚さを思わせる。
 そんな、夜空に浮かぶ月と桜を見上げながら酒を楽しんでいるのは、織銀・有士郎(織りなす銀の一振り・f17872)。
 本来ならばこの季節には見られないはずの景色を眺めつつの晩酌は、中々贅沢な酒の楽しみ方だとは思うのだけれど。
「死に際の一杯っていうシチュエーションがなぁ……」
 有士郎は、最後の夜にと振舞われた高級な酒を遠慮なく味わいながらも、そっと苦笑する。
 そんな有士郎の今宵の装いは、いつもの巫女装束だと自殺志願者かあやしまれそうだと、灰色の振袖と袴姿。
 そして幻朧桜舞う館の中を見回してみれば。
 ふと偶然近くにいるのは、主催者の宝木と数人の自殺志願者。
 情報収集も兼ねて、共に月見酒を酌み交わさんと声を掛ける有士郎。
「貴女は何故死のうと? 僕はお恥ずかしながら事業に失敗して家内にも逃げられましてね……」
 ……誰にも語れぬよりはマシだろう、と。
 有士郎は身の上を語り始めた自殺志願者の話を暫く聞いてあげて。
 不意に聞こえてきた主催者の会話に、さり気なく耳を傾ける。
「櫻居先生の『幻朧桜』は素晴らしい。特にラスト、目的を達した作家が『桜の介添人』と、自死した人たちを桜の樹の下に埋めるシーンが」
 つい私も真似したくなりましてね、と続く声。
 それから集団を離れ、有士郎は再びひとり静かに酒を楽しむけれど。
「……遠慮なく酒が飲めるっていうのは利点だが、他の旅団メンバーが周囲にいないと少し寂しい気もするな」
 いつもは賑やかな仲間が一緒だけど、乗り込んだのは今回は単独。
 けれど最後の晩餐には、それが丁度良いのかもしれない。
 有士郎はふと、桜のひとひらがひらり杯の中に浮かんだのを見つめて。
 そしてふっとひとつ、呟きを零すのだった。
「……やれやれ、本当に自決するような静かさだ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

東雲・咲夜
コツン、コツン――
死へと歩むヒールの高鳴りに
硝子桜が抱く泡の簪がしゃらり、謡う
蜜月に華開いた月下美人の旗袍は翼の羽衣を伴い
スリットから覗くシフォンプリーツを淡く靡いて魅せる

ごきげんよう、宝木様
今宵は素敵な時間をおおきに有難う御座います
皆様へ、幽世へのお手土産に
巫女であるうちから一曲、よろしおすか

虹の鱗粉舞う《響蝶》を羽搏かせ
透徹が奏でる想いは『肯定の赦し』
僅かでも、皆さんの心が軽くなりますよう

…ほんまに息絶える訳やあらへんのに
偽りの眠りにさえ憧憬を抱いてしもたうちは今、此処に

喩え世の理に阻まれても
うちらの『愛』は本物やもの
死さえうちらを別てへん、と…
終焉の先の『永遠』へ
総てを委ねてしまいたい



 揺蕩う月の光が静かに降り注ぐ最後の夜、ひらり花弁舞う館へと赴くは桜貴姫。
 コツン、コツン――響くヒールの高鳴りは一歩、また一歩と、死へと歩みを進めて。
 甘香る硝子桜が抱くは、しゃらりと澄んだ音色を謡う泡の簪。
 そんな東雲・咲夜(詠沫の桜巫女・f00865)が纏うは、蜜月に華開いた月下美人の旗袍。
 風にそっと揺れ羽ばたくかの如く、伴う翼の羽衣がひらり、桜夜の空へと流れる様に踊れば。
 旗袍のスリットから覗き、仄かに淡く靡いて魅せるのは、柔らかなシフォンプリーツ。
「ごきげんよう、宝木様。今宵は素敵な時間をおおきに有難う御座います」
 幻かの様に朧に舞う桜を思わせるその姿を宝木は暫し眺めた後、笑顔でこう返す。
「此方こそ、ようこそ『最後の晩餐』へ」
 咲夜はそんな宝木に笑み返すと、彼や周辺にいる参加者たちへと瑞々しい藍眸を向けてから。
「皆様へ、幽世へのお手土産に。巫女であるうちから一曲、よろしおすか」
 そうゆるりたおやかに羽搏かせるは、絡繰に抱く大地の星。
 虹の鱗粉と朧の花弁を舞う夜に、透徹が奏でる想いは――『肯定の赦し』。
 それに馳せるは、密かなる桜巫女の願い。
(「僅かでも、皆さんの心が軽くなりますよう」)
 けれど反面、抱き夢見てしまう心の行方。
(「……ほんまに息絶える訳やあらへんのに」)
 偽りの眠りにさえ憧憬を抱いてしもたうちは今、此処に――と。
 けれど、咲夜はふるりと桜銀糸を揺らし首を振る。
(「喩え世の理に阻まれても、うちらの『愛』は本物やもの。死さえうちらを別てへん、と……」)
 ――終焉の先の『永遠』へ、総てを委ねてしまいたい。
 寄り添う様に重なり合う、円描く月と桜咲く夜に。
 そう想いを馳せながら、咲夜は嫋やかに舞う。
 そして片耳の比翼月揺れ、十字の証が月光に閃くたび、密かに咲夜へと告げる――離れていてもお前の隣は俺のもの、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
物語の模倣、にしても随分豪勢だね
執心される作家には僅か羨望も抱けど
さてはて、此は作家の望む形なのかな
そうでなければ、酷く同情するよ

とは云え、『自死』か――
今を生きている以上、
此程に縁遠い物も無いだろうな
――故に、正直な所、興味はある
僕の作品に活きるかは、解らずともね

自死の末を思案しつ
ささやか乍ら華美に身飾り、
甘味を手にすれば緩む頬を律して
叶うならば、主催者から直接
叶わずとも、他から《情報収集》

素敵な場に御招待、有り難う
僕には追いたいひとが居てね
けれど、恐ろしくて
ずっと、叶わなくて
でも、此だけ仲間が居るなら――

――否、また、駄目だろうか
ねえ、僕の背押す桜の介添人とは
一体どんなひとなんだい……?



 それはまるで、夢か幻か。
 月光に朧に照る桜花弁は、今宵紡がれる幾つもの最後の物語を彩るに相応しく。
 数多に及ぶだろうその結末は、夢の世界に揺蕩い物を書き綴る風変わりな作家の好奇心を擽り、その頁を捲らせんとする。
(「物語の模倣、にしても随分豪勢だね」)
 序章となる『最後の晩餐』に趣き、身を置くライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、ぐるりと周囲の様子を見遣りながら。
 これほどまでの舞台を用意され、その世界の中で死にたいと……そう多くの者に執心される作家に、僅か羨望のいろも抱くけれど。
(「さてはて、此は作家の望む形なのかな」)
 そうでなければ、酷く同情するよ、と――同じ物書きとして、そう微かに白の髪を揺らしつつも首を小さく傾けて。
 そしてふと、呟きを零す。
 とは云え、『自死』か――と。
(「今を生きている以上、此程に縁遠い物も無いだろうな」)
 けれど、だからこそ……正直な所、興味を抱いてしまう。
 それは仕方のない、作家としての性分。
「僕の作品に活きるかは、解らずともね」
 そしていつもの様にプロットを立てるかの如く、自死の末を思案しつつ。
 ささやかながら華美に身飾り、今は、物語の中の人物のひとりとしてこの場に在ろうとするライラック。
 豪華に並ぶ甘味を皿に取り手にすれば、つい、その頬も緩むけれど。
 作家としてだけでなく、猟兵としてこの場に在ることも、忘れてはいない。
 上質な甘味の美味しさに緩んだ表情を律し、ライラックが足を向けたのは、主催者である宝木の元。
「素敵な場に御招待、有り難う」
 そうグラスを掲げた宝木とグラスを合わせてから、ライラックは紡ぐ。
「僕には追いたいひとが居てね。けれど、恐ろしくて……ずっと、叶わなくて」
 でも、此だけ仲間が居るなら――と。
 けれどすぐに俯き、ぽつりとこう零す――否、また、駄目だろうか、と。
 そんな言の葉に、宝木は笑んで首を横に振る。
「櫻居先生の『幻朧心中』はお読みになられましたか? あの物語通り、貴方も確実に死を迎えられますよ」
 その声に、ああ勿論読んでいるよと返しながらも、ライラックはこう訊ねてみる。
「ねえ、僕の背押す桜の介添人とは、一体どんなひとなんだい……?」
 その問いに一瞬、宝木の表情が変化するけれど。
「『幻朧心中』に出てくる桜の介添人の様に、幾つもの死を見たい作家にとって頼もしく……そして、愛しい存在です」
 だから死に損なうなどの心配はいりません、と。
 宝木は朧桜舞う夜空に掲げた深い真紅色のワインを、口に運んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)】と

本来ならば、折角得た人の生を自ら断とうとなど思いもしないのだが
『幻朧心中』、拝読した
此れは…ああ、多くの人々が魅入られる訳だと内心頷きながら
言葉巧みに誘い出したうさみを手招き『最後の晩餐』へと誘おう

何時もお世話になっているな、うさみよ
今此の時は何をどれだけ食べても飲んでも許される
お前の事だ、抹茶尽くしをご所望なのだろうが無論其れも叶う
驚くような高級抹茶を使ったスイーツの数々も並んでいよう

お前が心底美味しそうに抹茶の菓子を食べる様が好きだったよ
…いや、過去形にするにはちと早いか
折角なので『同好の士』達の様子を窺いながら
俺も滅多に飲めぬ高級茶葉の紅茶を嗜もうかな


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
※ニコにたぶらかされてついてきたので
依頼詳細についてよく分かっていない

うおおおお肉が!魚が!スイーツが!いっぱい!
お目目キラキラさせながら飛び回る
そりゃあ今まで数え切れないほど
ニコを世話してきてやったけど
こんなに豪華なパーティに連れてきてくれるなんて
何か悪いものでも食ったか!?
何やかんや言いつつ片っ端から食べまくる
大好きな抹茶スイーツだけでも色んな種類が!
この抹茶わらび餅絶品だぞ!ニコも食ってみろ!

でも何か周りの奴ら微妙な顔してるなー?
こんなに美味しい飯に囲まれてるのによー!

…お、おう?どうした急に!
そんなストレートに言われると照れるじゃんか!
大丈夫?熱でもある?



 満開に開いた桜の導きでやって来た世界もまた、夜桜が美しく咲き誇っていた。
 だが年中咲いているというこの世界の桜は、どこか幻の如く朧で、人々の心を惑わすよう。
 舞い降るひとひらをそっと掌に取って、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は最後の夜に思う。
(「本来ならば、折角得た人の生を自ら断とうとなど思いもしないのだが」)
 骨董品屋に売り飛ばされそうになったことなどもまぁ、ありはしたが。
 ヒトとして新たなる生を受け、これまで生きてきたニコだけれども。
 はらり舞う桜を眺め歩きつつ、改めて、内心頷き納得する。
(「『幻朧心中』、此れは……ああ、多くの人々が魅入られる訳だ」)
 幻想的な桜の世界を舞台にした、人々の鮮烈な生と死の色を描いた作品。
 実際に幻朧桜を目の当たりにすれば、この物語に人々が心奪われるのもよく分かる気がする。
 そんなことを思いながら、ふとチタン製アンダーリムフレームの黒縁眼鏡の奥の瞳を細める。
 桜花弁舞う中、ぶーんぶーんと飛ぶのは、桜に似た色をした榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)。
 そんなうさみっちに、常より黒手袋嵌めている手で手招きをしながら。
「何時もお世話になっているな、うさみよ。今此の時は何をどれだけ食べても飲んでも許される」
「何をどれだけ食べても!? うおーっ、本当かニコ!」
 心なしか余計せわしくぶんぶん飛び回るうさみっちに、分厚い眼鏡の奥の赤を細め、こくりと頷くニコ。
 そんな言葉巧みにピンクの妖精を誘いやって来たのは、『最後の晩餐』の会場となる豪華な館。
「うおおおお肉が! 魚が! スイーツが! いっぱい!」
「お前の事だ、抹茶尽くしをご所望なのだろうが無論其れも叶う。驚くような高級抹茶を使ったスイーツの数々も並んでいよう」
 青のお目目をキラキラ、ずらり並ぶご馳走を前に、飛び回りながら。
 うさみっちは見守る様に自分を眺めるニコへとふと視線を向けつつ、首を傾ける。
 確かに、今まで数え切れないほどニコを世話してきてやったし、崇め奉れよと言ってはいるけれど。
「こんなに豪華なパーティに連れてきてくれるなんて、何か悪いものでも食ったか!?」
「うさみよ、遠慮することはない。何、この様な晩餐会もたまには良いと思ってな」
 そう言ったニコの言葉通り遠慮することなど勿論なく。
 何やかんや言いつつも、片っ端から皿に食事やスイーツを乗せていくうさみっち。
 食べ放題というだけでも心躍るのに、並ぶものは全て高級で豪華だ。
「大好きな抹茶スイーツだけでも色んな種類が! この抹茶わらび餅絶品だぞ! ニコも食ってみろ!」
 今まで食べた事がないくらい濃厚でまろやかな味の抹茶わらび餅に、興奮を隠せずテンション上がるうさみっち。
 そんな絶品な抹茶わらび餅のおかわりと、ついでにニコの分も取りに、ぶーんと会場を飛びながら。
 ふと、うさみっちは首を傾ける。
(「でも何か周りの奴ら微妙な顔してるなー? こんなに美味しい飯に囲まれてるのによー!」)
 そう――ニコにたぶらかされてついてきたうさみっちは、まだ知らないのである。
 この『最後の晩餐』に集まった人たちの目的や、今回の依頼の詳細を。
 うきうきと抹茶わらび餅は勿論、抹茶アイスに抹茶ティラミス、抹茶パフェを堪能するうさみっちを見つめ、そしてニコは紡ぐ。
「うさみよ、お前が心底美味しそうに抹茶の菓子を食べる様が好きだったよ」
「……お、おう? どうした急に! そんなストレートに言われると照れるじゃんか!」
 ――大丈夫? 熱でもある?
 ぱちくりと瞳を瞬かせつつ、抹茶スイーツをまたひとくちぱくりと口にしながらも。
 どうだ、俺が取ってきてやった抹茶わらび餅は美味いだろ~と、どや顔のうさみっち。
 そんな眼前の姿に、ああ、と頷きつつも。
 ……いや、過去形にするにはちと早いか、と。
 ニコはふたりで過ごす最後の夜を存分に堪能し、折角なのでと『同好の士』達の様子を窺い見つつも。
 幽世の如き夜に桜舞う中――今は、ふわり香り高い、滅多に飲めぬ高級茶葉の紅茶を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴラディラウス・アルデバラン
黒羽(f10471)と

晩餐会に相応しい男めいた装いを

依頼を案内した縁の彼には
慣れておらぬならばと見繕う
西洋の礼儀作法も
必要であれば教示しよう

外や空から分かる事もあろう
館に入る前に鷲や鷹やらを放ち
外観や周辺を調べさせ
影朧を匿えそうな場所や怪しい所等探す

自殺志願者を激励するなど性に合わん故
己は主催者を狙う
この様な場には慣れている
自然に近付き、それらしい振る舞いを

しかしこの様子ではとても
自害しそうには見えないか
怪しまれたなら
此処へは最高の死合いをしに参ったのだと
序に館や主催者を褒め、
最高の死に場所だと世辞を送る

死合いの誘いに乗ったのと、戦闘狂いは真故
楽しみだと彼に目配せ、杯を掲げる
未成年なのが残念だ


華折・黒羽
ヴラディラウスさん(f13849)

服の見繕いは彼女によるもの
纏う黒色の騎士服は着慣れず動きづらい
落ち着かぬ様子

事前の話し合いにて互いに悩み相談の類は不得手と知る
ならばと流れは調査へ
分かれ会場内を歩く

獣の耳は人より音を拾う
聞き耳併せればさらに広範囲を対象と出来るだろう
主催者へは彼女が探りを入れてくれている様子
ならばと俺は配膳中の関係者と招待客の合間練り歩き
情報収集へ

怪しまれぬ様学んだマナーを確りと
念の為改め呼び出していた影猫も放ち

死望む理由聞かれれば
守れなかった家族と想い人追って
─これは、嘘ではない
許せぬ自分を殺しに来たのだと

不意に拾う彼女の声
己と死合ってくれる相手の掲げた杯に対し
深く一礼を返す



 朧に咲く桜舞う幽世の如き夜に、並び歩くその彩は白と黒。
 悠々たる振る舞いで晩餐会へと赴いたヴラディラウス・アルデバラン(Uranus・f13849)の装いは、男装めいた場に相応しいもの。
 そして逆に、その隣には、何処か落ち着かぬ様子の華折・黒羽(掬折・f10471)の姿が。
 慣れておらぬならばと、依頼を案内した縁の彼にヴラディラウスが見繕った黒色の騎士服。
 それに袖を通し、着慣れず動きづらいと感じつつも。彼女から西洋の礼儀作法も確りと教示され、準備は万端。
 これから死に身を委ねる者たちの集まりとは思えぬほど、穏やかで豪華な宴の会場へと足を運ぶ。
 けれども、自殺志願者の悩みに耳を貸し激励するなど、互いに性に合わない。
 ならばと分かれ会場内を歩くふたりは、それぞれ情報収集を試みる。
 ぴくりと微かに揺らした獣の耳の聴覚は、人より音を拾う。
 感覚を研ぎ澄ませ聞き耳立てながら、黒羽は広範囲を対象に、音や声から調査を。
 ちらりと青の瞳で連れの彼女を見遣れば、主催者の宝木へと向かっている様子。
 黒羽はそれを確認し、ならばと、配膳中の関係者と招待客の合間練り歩いて。
 念の為と改め呼び出していた影猫を桜夜に解き放ち、怪しまれぬ様学んだマナーを確りと遵守しつつも。
 飲み物でも手にしておこうかと、きょろり豪華な飲み物の数々に目をやれば。
「飲み物をお探しかしら? この葡萄ジュースが濃厚でおすすめですわよ」
 ふふ、と笑んで声を掛けてきた女性に少々戸惑いつつも、有難うございます、と勧められたジュースを受け取って。
 ……貴方は何故死を望むの? そう訊ねられれば。
「守れなかった家族と想い人追って」
 許せぬ自分を殺しに来たのだと、理由を紡ぎ返す黒羽。
 いや――これは決して、嘘などではないから。
 ばさり、幻の如く咲いては散る桜花弁の空を旋回する様に飛ぶ鳥たち。
 それは……来たれ、と。
 外観や周辺を調べ、影朧を匿えそうな場所や怪しい所等を探させるべく、事前にヴラディラウスが喚び放った鷲や鷹だ。
「今宵は貴方のおかげで、良き最後の夜となりそうだ」
 この様な場には慣れている……そう彼女が狙い定めるは、主催者である宝木。
 ごく自然に近づき声を掛けると、小さく掲げたグラスをカチンと彼と合わせ、鳴らす。
「此方こそ、楽しんでいただければ何より。それにしても……何故、貴女の様な御方が、今宵死を選ばれたのですか?」
 周囲の何処か陰鬱な影を纏う者たちと違い、高尚でまるで王族かの様な雰囲気纏うその姿に、宝木は興味を惹かれたようで。
 差し障りなければお聞かせ願えますかと、そうヴラディラウスへと問えば。
「此処へは最高の死合いをしに参った。満足いく死合いが叶いそうだ」
 ……此処は最高の死に場所だ、と。
 そう理由を述べ世辞を送れば、ああ成程と納得し、気分良く笑む宝木。
 けれど……死合いの誘いに乗ったのと、戦闘狂いは、真の事。
 楽しみだ――そうふと薄い唇に微かに笑み宿して。
 白き武人は目配せした黒の騎士へと、杯を掲げる。
 そして深く一礼返す最高の死合い相手を映した紫の瞳を細め、愉楽を帯びた声で紡ぐ……未成年なのが残念だ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花川・小町
【朧】
(白のローブ・デコルテとオペラ・グローブで淑女を装い)
思うところは十人十色でしょうけれど、私は常に刹那主義
楽しめる時は楽しむわ
だから、ほら――ヨロシクね、紳士諸君?

(早速美酒も甘味も味わい尽くし)
あら、物思い?
良いじゃない
此処でなくとも何処かに在るのなら
其は貴方もヒトの熱宿す証
冷たくなど――なぁんて喋りすぎたかしら?
ふふ、まあそういう事にしときましょ

(じゃあ私もお仕事を、とそっとする様に離れ、演技と誘惑で宝木の傍へ)
今宵は素敵な想い出を有難う御座います
冥土の土産に旦那様のお話もお聞かせ願えないかしら

(様子見――かねて戻り)
全く、本調子みたいね
喧嘩するぐらいなら二人で仲良く踊ってらっしゃい


佳月・清宵
【朧】
(相応の礼服でさらりと溶込み)
伊達と酔狂も良いところだな、全く
まぁ何であれ折角の酒と肴だ
餞別は有難く頂こう
――仰せの儘に、レディ?
(伊織には目もくれず、浮わつく様な言動も平然と)

(悠々と酌み交わし)
おい辛気臭ぇ面はやめろよ、酒が不味くなんだろ
美酒と美女を前に心此処に在らずとは、失礼なこったな
らしくもねぇ
(否、らしいのか――とは続けず、揶揄う様な笑みで唯しげしげと
いっそ人間臭いと表してやるべきか、とも思うが更に笑うだけに留め、さて仕事だ仕事と流し)

(静かに夜風に当たりつつ、聞き耳立てて暫し――届いた戯言に溜息一つ)
おい最期の最期でそれかよ
こりゃ死んでも治らねぇな
(誰が踊るかと飲直しに戻り)


呉羽・伊織
【朧】
(珍しくきっちり礼服で)
大層な趣味と情熱なコトで
オレは何かに囚われるのも引き込まれるのも御免だ――
そう、今は特に酒盛とか!
…フツーにエスコートさせて?

(桜に失踪に自死に――色々引っ掛かっては食事も閊えかけ)
いやコレは清宵が気味悪ィわ空気に慣れねーわで落ち着かねー所為!
何言ってんの姐サン、酔ってる?
もうムリ休憩、気晴らし!

(襟元緩め詰まる何かを紛らわしつつ、志願者の元へ――
話して多少なり晴れるモノがあるなら、と
その胸中への興味とお節介と半分で声掛け)
…そっか
安らぎを、得られると良いな(――違う形で)

ところで最期の想い出にオレと踊っ…
(戻ってきた気配察し)
…邪魔者
寒気するから勘弁して姐サン!



 朧に舞い踊る桜は、淡く光降らせる月と共に――良い酒の肴。
 桜といえば春の季節を思わせるけれど。
 この世界では、年中桜の花が咲き誇っているのだという。
 けれど、そんな夢か現か、幻の如くひらり耀う花弁を霞ませるのは、夜に咲く白き華。
 襟ぐり開いた真白きローブ・デコルテに長いオペラ・グローブ……今宵の花川・小町(花遊・f03026)は、淑女の装い。
「思うところは十人十色でしょうけれど、私は常に刹那主義。楽しめる時は楽しむわ」
 だから、ほら――ヨロシクね、紳士諸君?
 そうくすりと笑み咲かせた、刹那を存分に楽しむ淑女と共に在るのは、礼服を纏うふたりの殿方。
 ――仰せの儘に、レディ?
 さらりと周囲に溶込みつつも隣の男には目もくれず、浮わつく様な言動も平然とこなしてみせるのは、佳月・清宵(霞・f14015)。
 けれど、そんな気障な台詞を紡いだ後に落とされるは、呟きと溜息。
「伊達と酔狂も良いところだな、全く」
「大層な趣味と情熱なコトで」
 オレは何かに囚われるのも引き込まれるのも御免だ――そう赤の瞳を細め、小さく首をふるり振って。
 珍しくきっちりと礼服纏う呉羽・伊織(翳・f03578)は、不意に聴こえてきた声に、思わず訴えずにはいられない。
「まぁ何であれ折角の酒と肴だ。餞別は有難く頂こう」
「そう、今は特に酒盛とか! ……フツーにエスコートさせて?」
 とはいえ、酒の肴になりそうなものや美味い酒が並んでいれば、華と狐がどう振舞うかは明確。
 伊織はふと、窓の外の景色を支配する薄紅の朧へと視線を向けて。
 滲む剣呑ないろを、映すひとひらで隠しながらも、皿に取った食事に手を付けようとするけれど。
 桜に失踪に自死に――色々引っ掛かっては、それも閊えかける。
 その様を、やはり悠々と酌み交わしつつも見遣って。
「おい辛気臭ぇ面はやめろよ、酒が不味くなんだろ。美酒と美女を前に心此処に在らずとは、失礼なこったな」
「いやコレは清宵が気味悪ィわ空気に慣れねーわで落ち着かねー所為!」
 清宵の言の葉に、伊織は再び首を振るけれど。
「あら、物思い? 良いじゃない」
 心此処に在らず――それもまた愉快で。
「此処でなくとも何処かに在るのなら、其は貴方もヒトの熱宿す証」
 冷たくなど――なぁんて喋りすぎたかしら? って。
 早速美酒も甘味も味わい尽くしながら、小町が月の如きいろの瞳を細めれば。
「何言ってんの姐サン、酔ってる?」
「ふふ、まあそういう事にしときましょ」
 ――もうムリ休憩、気晴らし!
 そうこの場から離れる伊織の背に尚、楽し気に小町は笑んで。
 ……らしくもねぇ、一瞬そうは思うも。
 否、らしいのか――とは続けずに、揶揄う様な笑みで唯しげしげと清宵は眺めるに留める。
 ――いっそ人間臭いと表してやるべきか、そうも思うが……更に笑うだけに留めて流す。
 ……さて、仕事だ仕事と。
 今宵の晩餐は、最後の夜を、贅沢に楽しむこと。
 酒も甘味も食事も、勿論お言葉に甘え、存分に楽しむけれども。
 じゃあ私もお仕事を、と……誘惑のいろを宿し、小町は桜夜に綴られる物語の登場人物を演じる。
「今宵は素敵な想い出を有難う御座います。冥土の土産に旦那様のお話もお聞かせ願えないかしら」
 こう声を掛けたのは、主催者である宝木。
 男は美しい華に声を掛けられ、満更でもないように口を開く。
「『幻朧心中』をお読みになられましたか? 作者の櫻居先生は面白い人でね。酔っていたのか、実はこの世界の出身ではないなどとおっしゃっていたんだ」
 それから暫く、熱を上げている作家の話を夢中でする主催者を後目に。
 話して多少なり晴れるモノがあるなら、と。
 襟元緩め詰まる何かを紛らわしつつ、そう伊織が声を掛けたのは、ひとりの自殺志願者の少年。
 お節介と、そしてその胸中への興味と……半々の気持ちを抱きながら。
「母さんも父さんも妹も、みんな僕を置いて先に逝ったから……だから僕も、同じところに逝くんだ」
 そう話す少年に、……そっか、と返して。
「安らぎを、得られると良いな」
 貴方もね、と歪に笑む少年へと、密かにこう続けて思うのだった――願わくば、違う形での安らぎを、と。
 そして様子見――かねて戻ってきた小町へと、伊織はいつもの様にへらり笑んでみせるけれど。
「ところで最期の想い出にオレと踊っ……」
「おい最期の最期でそれかよ」
 静かに桜舞わせる夜風に当たりつつ、耳に届いた聞き慣れた戯言に、溜息一つ。
 ――こりゃ死んでも治らねぇな。
 そう紡がれる声に……邪魔者、と。
 伊織は戻ったもうひとつの気配、清宵へと零すけれど。
「全く、本調子みたいね。喧嘩するぐらいなら二人で仲良く踊ってらっしゃい」
「寒気するから勘弁して姐サン!」
「誰が踊るか」
 楽し気に笑む小町のそんな提案には、珍しくふたり、同意見。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

※薄桃色のドレス
なんでいつもこうなるかな…
失礼な。僕だって男だぞ

疑われるよりマシでしょ
紫崎君こそちゃんと振舞ってよね

ばっ…は、恥ずかしいからそれはやめて…!

(ここまで小声)

会話が嫌いだったらごめんなさい
せめて最期に…お友達が欲しいと思って

スイーツ片手に他の参加者に話しかけながら
心の中で考える

自殺願望者として話を合わせるくらい簡単な事
表向きは繕えても
本当は僕だってどこまでもネガティブなんだよ
ただ…生きてもいい理由を貰えただけで

辛い話は真摯に聞いて
優しい言葉で語りかけて
説得はしない
自分で決めなきゃ意味が無いから
せめて…本当に後悔しないのか考えられるきっかけを
一滴だけ落としてあげられるように


紫崎・宗田
【狼兎】

※黒タキシード
潜入目的なら服も違和感無ェ方がいいだろ

わかってるとは思うがお前…無理はすんじゃねぇぞ
限度はわきまえろよ

まぁ…見た目的には俺の方が自殺志願者にゃ程遠い自覚はあるんでな
他人との必要以上の会話は避ける

ほら行くぜ、お嬢様
一緒に行動するなら理由も必要だろ(独断設定)

――

会話は主にチビが担当
俺はSPよろしく隣に控え
自然な態度で周囲の声を聞くだけ
もし関係性を問われたら…チビは恥ずかしがるだろうが
「元幼馴染の雇われ執事だ。まぁ…ちと訳ありでな」

濁すような言い回しをすれば
後は勝手に脳内保管するだろ
恋仲になるか、それ以外かは知らねぇが
ここに居る以上俺もまた
死を選ぶ理由を抱えた者、なんだからな



 窓の外にひらり舞う幻朧桜に負けぬように。
 ふわりと薄桃色のドレスを花開かせ歩くのは、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
 そんな澪の口から零れるのは、勿論。
「なんでいつもこうなるかな……」
 纏う装いはまたしても女性もの。しかも違和感なく良く似合っているけれど。
「潜入目的なら服も違和感無ェ方がいいだろ」
「失礼な。僕だって男だぞ」
 黒のタキシード姿の紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)に、上目遣いでむぅっと抗議。
 そんな澪に宗田は視線を遣り、確りと念を押しておく。
「わかってるとは思うがお前……無理はすんじゃねぇぞ」
 ……限度はわきまえろよ、と。
 そう言われ、ちらりともう一度、琥珀の瞳を宗田へと向ければ。
「疑われるよりマシでしょ。紫崎君こそちゃんと振舞ってよね」
「まぁ……見た目的には俺の方が自殺志願者にゃ程遠い自覚はあるんでな」
 他人との必要以上の会話は避けようとそう心思いながら。
 宗田はふっとこう続けるのだった。
「ほら行くぜ、お嬢様」
 その声に、澪は瞳を見開いて。
「一緒に行動するなら理由も必要だろ」
「ばっ……は、恥ずかしいからそれはやめて……!」
 彼の決めた独断設定に、これまで通りに小声ながらも。
 金蓮花咲かせた、瞳と同じいろの髪を揺らし、首をぶんぶんと横に振る。
 けれども此処に赴き、ドレスを着たのも、あくまで猟兵のお仕事のためである。
 澪は気を取り直し、同じ年くらいの少年へと声を掛けてみる。
「会話が嫌いだったらごめんなさい。せめて最期に……お友達が欲しいと思って」
 此処にいるということは、この少年も自殺志願者。
 他者との会話は澪に任せながら、宗田はSPよろしく隣に控え、自然な態度で周囲の声を聞くだけに留めておくけれど。
「あの……おふたりの、関係は?」
 チビは恥ずかしがるだろうが、と思いつつもこう答える。
「元幼馴染の雇われ執事だ。まぁ……ちと訳ありでな」
「ふうん、いいな……羨ましい」
 ひとりが寂しいから死にたいと話した少年は、それだけ言ってふたりを見遣る。
 恋仲になるか、それ以外かはわからないが……濁すような言い回しを敢えてしておけば、後は勝手に脳内補完するだろ、と。
 宗田は真剣に話を聞いてあげている澪を見守りつつも、それからこう思うのだった。
(「ここに居る以上俺もまた、死を選ぶ理由を抱えた者、なんだからな」)
 今宵、此処に集うは皆、永遠の眠りにその身を預けんとする者ばかり。
(「自殺願望者として話を合わせるくらい簡単な事」)
 そしてスイーツ片手に、少年へと話しかけながら、心の中で考える澪。
(「表向きは繕えても、本当は僕だってどこまでもネガティブなんだよ」)
 ――ただ……生きてもいい理由を貰えただけで、と。
「君は寂しかったんだね。でももう僕たち友達だよ」
 辛い身の上話は真摯に聞いてあげて。
 優しい言葉で語りかけはするけれど――説得はしない。
(「自分で決めなきゃ意味が無いから」)
 最終的にどうするかを決めるのは、本人にしかできないこと。
 けれど澪は、うんうんと同意するように頷いてあげつつも、可能な限り手を差し伸べたいと思う。
 せめて……本当に後悔しないのか考えられるきっかけを。
 一滴だけ、落としてあげられるように……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水標・悠里
アドリブ、連携歓迎
私は死にたい、のでしょうか
今の私は生きている事に何かを見出せるとは思えない

晩餐に相応しく着物姿で参りましょうか

最後の晩餐とあれば楽しみませんとね
どれもこれも美味しそうなものばかり。目新しい物ばかりで迷ってしまいます
そういえばまだ苺のショートケーキを食べたことがありませんでした。こちらにありますでしょうか

晩餐に参加している方々を見て、皆一人は心細いのかと考えます
不安そうな方がいれば声をかけましょう
「こんばんは。顔色が優れませんが、どうされましたか」
温かい飲み物があれば一緒に如何でしょうか
身の上話、は面白くないので適当にぼやかして
「私は逝く時は一人がいいと思っています」



 華やかな晩餐会に向かう道すがら、ふと夜空を見上げれば。
 水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)の青き瞳にも、朧に咲く桜花弁がひらりと舞う。
 まるでそれは幻の様で、心惑わされるような気さえする。
 そんな桜色が支配する空に、悠里はふと問う――私は死にたい、のでしょうか、と。
 命を脅かされ、いつ殺されるのかと怯え続けた事だって、忘れはしていないのに。
(「今の私は生きている事に何かを見出せるとは思えない」)
 今生きていることにすら、疑問に感じてしまう。
 そんな揺蕩う心が、悠里を今宵『最後の晩餐』へと誘ったのかもしれない。
 纏うその装いは、晩餐に相応しい着物姿。
「最後の晩餐とあれば楽しみませんとね」
 華やかで煌びやかな刹那の世界に並ぶのは、贅沢なご馳走。
 ――どれもこれも美味しそうなものばかり。
 目新しい物ばかりで迷ってしまいますと、きょろり視線を豪華な料理へと向ければ。
 脳裏にふと思い浮かんだものは、瑞々しい赤のいろ。
「そういえばまだ苺のショートケーキを食べたことがありませんでした」
 こちらにありますでしょうか、と探してみれば。
 ふわふわなスポンジに真白なクリーム、それにふんだんに飾られた真っ赤な苺。
 それをそっと皿に取り、口に運んでみれば……最初で最後の、優しい甘い味。
 悠里はそれから、ふと晩餐会に参加している者たちを見遣り、考える。
 ――皆一人は心細いのか、と。
 そんな中でも気になったのは、不安そうないろをその顔に宿した一人の少女。
「こんばんは。顔色が優れませんが、どうされましたか」
 温かい飲み物を一緒に如何でしょうか……そう、淹れたての深い香り漂わせる緑茶を差し出せば。
「貴方はどうしてここに? ひとりは……こわくない?」
 ぽつりと零れ落ちた少女の複雑な心模様。
 自らの身の上話……は、きっと面白くないと、適当にぼやかしてから。
 悠里はそっと漆黒の髪を揺らし、横に微かに首を振って答える。
 ――「化け物」に相応しい、己が望む最後の一瞬。
「私は逝く時は一人がいいと思っています」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鼠ヶ山・イル
着飾ってパーティーに出席できる機会なんて、そうそうないからさ
嬉しいねえ。……どういう趣旨のパーティーであってもな

衣装の貸出もしてくれるんだって?
じゃあ贅沢させてもらって、旗服を借りようかな
知らない?チャイナドレスだよ。スリットがさあ、なんとも扇情的でいいだろ
そんな格好で飲み食いしながら、適当に自殺志願者にでも絡むかな
「オレたちはどうせこれから死ぬんだからさ、大胆な服を着てもいいんだよ。
アンタはどうだ?いよいよ最期だと思ったら、気が大きくなったかい?」
「気が大きくなるのはいいぜ。結構いろいろとどうでも良くなる」

ま、せっかくだから酒と食事も楽しませてもらうかな
夜桜の花見酒なら美味そうだ



 まるで踊る様に、三つ編みを桜舞う夜空に靡かせながら。
 相変わらず温度のない青の瞳を細め、最後の夜を楽しむべくやって来たのは、鼠ヶ山・イル(アヴァリティアの淵・f00273)。
「着飾ってパーティーに出席できる機会なんて、そうそうないからさ。嬉しいねえ」
 ……どういう趣旨のパーティーであってもな、と。
 刹那の愉悦に身を任せ、華やかで贅沢な晩餐会を、心行くまで堪能するつもりだ。
 そして衣装の貸し出しがあることを知れば、利用しないわけがない。
「じゃあ贅沢させてもらって、旗服を借りようかな」
 ……知らない? チャイナドレスだよ。
 そう、様々ないろやかたちの旗服をいくつも手に取っては吟味して。
「スリットがさあ、なんとも扇情的でいいだろ」
 選んだ一着は、煽るような深いスリットの入った鮮やかな真紅のもの。
 それを身に纏い、晩餐会の会場へと足を向ければ、自然と感じる幾つもの視線。
 けれど、それを特段気にする素振りもみせず、贅沢な食事や豊富な飲み物を見繕ってから。
 イルは適当に傍にいた、自殺志願者の男へと絡んでみる。
「オレたちはどうせこれから死ぬんだからさ、大胆な服を着てもいいんだよ。アンタはどうだ? いよいよ最期だと思ったら、気が大きくなったかい?」
 スリットからひらり見え隠れする色白の肌に、思わず視線を向けた後、慌てて目を逸らしてから。
 おどおどと、男は情けない声で紡ぐ。
「俺は……死にたいけれど、でも少し……不安でもあります」
 そんな男の声にイルは、つまんないなあアンタ、と笑ってから。
 強引に酒を勧め、カチリとグラスを合わせ、瞳を細める。
「気が大きくなるのはいいぜ。結構いろいろとどうでも良くなる」
 それから面白みのない男に絡むのも飽きて、せっかくだからと、酒と食事を楽しむべく視線を映せば。
 窓の外に舞うのは、夜の漆黒を支配するほどの桜色。
 イルは並ぶ酒の中でも一等高価なものを選んで、最後のひとときに乾杯する。
 ――夜桜の花見酒なら美味そうだ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リシェア・リン
…最後の晩餐なんて、何度経験してきたかしら

薄紫と牡丹色のドレスを選んで
髪も夜会巻きにしましょ

…あなたはどうして自殺を?
ふと同席になった参加者の方へ

辛かったのね
苦しかったのね
でも、もう大丈夫よ。きっとあなたは救われる

(私達が助けるんだもの、嘘は言ってないわ)

…私?
心臓と肺の病気なの
お医者様は、いつ死んでもおかしくないって…。

生まれてくる自由はないんだもの
せめて死ぬ時くらい、自由に死なせてほしいと思って…ね

(本当は猟兵になった時に治ってるのだけど、病気だったのは本当)

(死ぬことはないらしいけれど)
(やっぱり痛いのかしら)
(苦しいのかしら)
(…どうして、まだ生きられるのに…自ら命を捨ててしまうの?)



 幽世の如き夜に咲き誇るのは、はらり花弁躍らせる幻朧桜と。
 ふわり歩く度に揺れる、薄紫と牡丹色のドレスの華。
(「……最後の晩餐なんて、何度経験してきたかしら」)
 流れる様な一番星の頃の宵闇のいろは、くるりと上げた豪華な夜会巻きにして。
 異様なくらいに華やかな『最後の晩餐』へと足を運ぶ。
 そしてふと澄んだ紫水晶の瞳を、隣の席へと向けて。
「……あなたはどうして自殺を?」
 同席になった晩餐会の参加者へと訊ねてみる。
 そんな人懐こいリシェアの様子に、少し驚いたような様子をみせながらも。
 同世代くらいに見受けられる少女は、自分の身の上を話し始める。
「どこにも、私の居場所なんて見つからないの。誰も、私を愛してなんかくれてないわ」
 だから死んだ方が、みんなにとっても自分にとっても、幸せなのだと。
 そう紡ぐ少女に、優しい眼差しを向け紡ぐ。
「辛かったのね。苦しかったのね。でも、もう大丈夫よ。きっとあなたは救われる」
「私……救われるかな?」
「ええ、救われるわ」
 そうこくりと、確り頷くリシェア。
 彼女はきっと……いえ、絶対に救われる。
(「私達が助けるんだもの、嘘は言ってないわ」)
 彼女を救うのは、死などではないはず。
 リシェアはそんな思いを心に秘めながらも、何故あなたは此処に? と逆に問われれば。
「……私? 心臓と肺の病気なの。お医者様は、いつ死んでもおかしくないって……」
 ――生まれてくる自由はないんだもの。
「せめて死ぬ時くらい、自由に死なせてほしいと思って……ね」
 そう続ければ、わかる、と零れる少女の共感の声。
 いや、本当は猟兵になった時に病は治っているのだけど。
 けれども、病気だったのは本当であるし……死ぬことはないらしいけれど。
 ――やっぱり痛いのかしら。
 ――苦しいのかしら。
 死というものがすぐ傍にあった故に、巡る思いがある。
 けれどもやはり、だからこそ、リシェアは彼女たち自殺志願者へと密かに問わずにはいられない。
 ……どうして、まだ生きられるのに……自ら命を捨ててしまうの? って。
 桜舞う最後の夜――心の中で、雪白のその手を差し伸べながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
クロト・ラトキエ(f00472)と
親子役ふっかーつ!よろしくね父さんー。

没落貴族で
藤色の和装

行ってきます、父さん
待っててねー

見送られてパーティーへ
沢山の食事、綺麗な女性
取り皿に高級料理を載せていく
空揚げ、炒め物、スープ、炊き込みご飯
一人憂鬱としている女性の席の隣へ
隣いいですか?

あなたはどうして此処…?
……なんて、直ぐに終わっちゃうのにね
でも、貴方の憂鬱も聞かせてほしいな
聞くことで救いになれれば

ダンスに惹かれるが、料理をパックに詰めて戻る
やっぱり僕は
誰よりも家族が大切で
……きっと、前もそうだったはずで

ただいま、父さん
最期の瞬間まで一緒に居させてよ
(死ぬ気はないけど…この人との最期、どうなるのか)


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)と。
今宵は親子役という事で…
さて。如何に世を儚みましょうかね、息子殿?

インバネスの内は、青鈍の和装。
今宵を限りと心決めた、没落貴族の色。

行っておいで。
楽しんでおいで。
唯一人の可愛い家族を宴の場へと送り出して。
――最期の夜。
転がり落ち、食い潰されるだけのこの浮世に、独り置いて逝くのは哀れだから。
幸せな思い出だけを抱いておいで。

姿を目で追い、けれど耳は周囲の声に峙てる。
…正直。
自ら命を絶とうだなんて、気がしれない。
何があればそんな考えに至るのやら。
その点だけは気も惹かれますが…
そんなものより。
おかえり、と微笑み迎える、
この愛らしい子と迎える「最期」なる方が、僕には余程興味深い



 幽世の如き夜に、朧に舞う桜吹雪の中。
 花弁を空へ躍らせる風が、纏うインバネスも一緒に靡かせれば。
 覗く和装のそのいろは、青鈍。
 それはクロト・ラトキエ(TTX・f00472)が今宵を限りと心決めた――没落貴族の色。
「親子役ふっかーつ! よろしくね父さんー」
 そしてそう柔和に笑む霧島・ニュイ(霧雲・f12029)が纏うは藤色の和装。
 そんな没落貴族の親子役を、幻朧桜舞う舞台で今宵演じるふたり。
 クロトは青の瞳を柔く細め、そして紡ぐ。
「さて。如何に世を儚みましょうかね、息子殿?」
 周囲を見遣れば、華やかな晩餐会。
 贅沢な食べ物や飲み物、優雅な音楽、思い思いにひとときを過ごす人々。
 一見すれば穏やかな時間が流れる宴の場に、クロトは息子を送り出す。
「行ってきます、父さん。待っててねー」
「行っておいで。楽しんでおいで」
 唯一人の可愛い家族、そして――最期の夜。
(「転がり落ち、食い潰されるだけのこの浮世に、独り置いて逝くのは哀れだから」)
 ――幸せな思い出だけを抱いておいで。
 息子の背中を見守る様に向けるのは、親としての慈しみの眼差し。
 ひとりになど、決してしない。だから……今宵、共にと。
 そんなクロトに見送られ、ニュイがきょろりと周囲に視線を向けてみれば……沢山の食事に、綺麗な女性。
 今宵はいくら贅沢に過ごしたって構わないのだ。
 何せこれが、この世最後の晩餐なのだから。
 唐揚げに炒め物、スープや炊き込みご飯、取り皿に乗せていくそれらはいずれも高級料理。
「隣いいですか?」
 そしてニュイがそう声を掛けたのは、一人憂鬱気な様子の女性。
 はむりと美味しい料理を楽しみながらも、彼女にこう訊ねてみる。
「あなたはどうして此処に……? ……なんて、直ぐに終わっちゃうのにね。でも、貴方の憂鬱も聞かせてほしいな」
 柔和な顔立ちに、黒渕眼鏡の奥で細められた緑色の瞳。
 そんなニュイを見つめ、女性はぽつりぽつりと口を開く。
「結婚しようと言われていた男が詐欺師で……全部、何もかも、失っちゃたわ。だからもう、この世にいても仕方ないんじゃないかって思って」
 その話を、頷いて聞いてあげるニュイ。
 ――聞くことで救いになれれば、って。
 クロトはその姿を目で追い、けれど耳は周囲の声に峙てつつも。
 波打つ漆黒の髪を揺らし、微かにそっと首を横に振る。
 生き残ることこそ即ち勝利、何事も死ねばそれは無意味であると。
 そう、常々思っているクロトにとって。
(「……正直。自ら命を絶とうだなんて、気がしれない」)
 ……何があればそんな考えに至るのやら、と。
 逆に理解できないからこそ、その点だけは気も惹かれるけれども――そんなものよりも。
 もっともっと、興味深いことがクロトにはあるから。
 改めて向ける視線の先には、可愛い息子の姿が。
 ダンスにも惹かれるけれど、贅沢な料理をパックに詰めてクロトの元へと戻ってくるニュイ。
(「やっぱり僕は、誰よりも家族が大切で……きっと、前もそうだったはずで」)
 そして紡ぐは、この言葉。
 ――ただいま、父さん。
「最期の瞬間まで一緒に居させてよ」
 ……死ぬ気はない。
 けれど……この人との最期、どうなるのかと、そう心に描きながら。
 そして息子を迎えるのは、柔い微笑みと――おかえり、の声。
 クロトが自ら命を絶つ者の思考よりも、余程興味深いこと。
 それは、この愛らしい子と迎える――「最期」なる瞬間。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【KOR】
架空の話を実際に行おうというのはだいぶ頭がおかしい相手だネ
どこまで付き合えるかはわからないけど
可能な限りはやってみますか

パーティに相応しくドレスを着て赴こう
僕は黒をベースに緑のワンポイント
ソヨゴと色違いのお揃いにするよ
お手をどうぞお嬢さん
僕がリードして踊る
習ったことはないから基本的なステップだけ学習してきた
見よう見まねで大丈夫

それにしてもソヨゴが死ぬところなど演技でも見たくないネ
ここまで来てしまったけれど、ここから引き返すのもアリかしら?
楽しげなソヨゴの様子にそんな事を切り出すのも躊躇われ

なし崩しに仕事はこなす
会食をしつつ情報収集するよ

デザート?
ソヨゴの笑顔には和んでしまうネ
あーん


城島・冬青
【KOR】
アヤネさんと色違いの白が基調となったドレスで参加します
えへへ、ドレスはなんだか照れちゃいますね
サクラコちゃんもオクちゃんも可愛いドレスですね、よく似合ってます
アヤネさんは…(赤面)大人っぽいですね
ダンスですか?
お!お手柔らかにお願いしますっ
アヤネさんと手を繋ぎ一緒に踊る
ダンスだなんて緊張しちゃうけど
アヤネさんも何だか少し動きが……
この後のことで緊張しているのかな
フリでも自死は怖いよね
優しく手を握り返しアヤネさんの緊張をほぐしたい
大丈夫
一緒ですから

あ!勿論忘れずに情報収集もしますよ
ところでここのデザート凄く美味しいですね
さすが最後の晩餐
さ、甘い物でも食べてリラックスしましょう(あーん)


日隠・オク
【KOR】
最後の晩餐……
会話をするだけでよくなる気持ちもあります、きっと
楽しい、おいしい、おいしいって素敵です、と会話をかけておきます

アヤネさん、冬青さんの色違いのドレス、とても素敵です
サクラコさんもいつもとまた違った衣装がとても似合ってます
私も簡素な感じのドレスを選んで着てみます
ありがとうございます

色違いのドレスはダンスしてるととても映えますね

と、とても豪華です……
圧倒されつつサクラコさんと一緒につまんでいきますね
おいしい……(味わってる


鏡彌・サクラコ
【KOR】
自殺とか趣味悪いですねい
そういう人が集まったなら陰鬱な感じだったりするでしょうか?
ちょっと慰めの声をかけたりしつつ、お話を聞いてまいりましょう

アヤネさまソヨゴさまはドレス!
お似合いでいす
オクちゃんもドレスかわいー!
サクラコは和装で着飾りましょう
ふわり花の模様の振袖など
ダンスは眺めつつ
オクちゃんいっしょにいろいろ食べちゃいましょうか
甘いものをたくさん並べて片端からいただきます!
果物のジュースでかんぱい!
ちょっとはしゃぎすぎですかねい?
ノリが合いそうな方々から情報収集もするでいす!

自分が死んでしまう光景って
なんかぜんぜん思いつきませんねい?
器物ですし



 美しいこの世界の桜には、人を惑わす何かがあるのだろうか。
 いや、少なくともアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)には理解ができない。
(「架空の話を実際に行おうというのはだいぶ頭がおかしい相手だネ」)
 小説の内容を実際に行おうとするのは、考える余地なく狂気の沙汰以外の何ものでもない。
 けれど、朧の桜がみせる幻に酔っているのか、それとも人気作家の筆力ゆえか。
 ――どこまで付き合えるかはわからないけど、可能な限りはやってみますか。
 アヤネは今宵、そんな狂った夜に付き合ってあげることにする……猟兵としての仕事を成すために。
 そんなアヤネが纏うのは、晩餐会に相応しい、黒に緑のワンポイントが効いたドレス。
「えへへ、ドレスはなんだか照れちゃいますね」
 アヤネさんは……大人っぽいですね、と仄かに頬染めながら。
 微笑む城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の白が基調のドレスは、アヤネのものと色違いのお揃い。
 そして今宵着飾っているのは、そんな並んで歩くふたりだけではなく。
「アヤネさまソヨゴさまはドレス! お似合いでいす」
「アヤネさん、冬青さんの色違いのドレス、とても素敵です」
 揃いのドレスを着たアヤネと冬青を見て、仲良く同時に感嘆を落とすふたり。
「サクラコちゃんもオクちゃんも可愛いドレスですね、よく似合ってます」
 そんなふたりも冬青が言うように、とびきりのお洒落を。
「オクちゃんもドレスかわいー!」
 サクラコの金の瞳に映るのは、シンプル可愛い、雰囲気とぴったりなドレス姿のオク。
 一方、サクラコは和装だけれど。
「サクラコさんもいつもとまた違った衣装がとても似合ってます」
 勿論、ふわり花模様の振袖を纏い、いつもよりもより着飾って。
 互いに仲良く褒め合い、互いに仲良く礼を言い合う。
 けれど、ふとおもむろにオクは周囲を見回して。
(「最後の晩餐……会話をするだけでよくなる気持ちもあります、きっと」)
 楽しい、おいしい、おいしいって素敵です――そう、努めて会話をかけておく。
 そんなオクの隣で、漆黒の髪を揺らし首を傾けるサクラコ。
(「自殺とか趣味悪いですねい。そういう人が集まったなら陰鬱な感じだったりするでしょうか?」)
 けれど、そうそっと心に思いながらも、本心はひらり舞う桜の花に隠して。
「それは大変でいすね、苦労されましたね」
 自殺志願者の話を聞いてあげながら、ちょっぴり慰めの声をかけてあげる。
 そして晩餐会場に流れ始めるのは、優雅で軽快な音楽。
「お手をどうぞお嬢さん」
「ダンスですか? お! お手柔らかにお願いしますっ」
 そうリードしてくれるアヤネの手を冬青が取れば、互いの熱が混ざり合って。
 確りと手を繋ぎ、白と黒のドレスが、揃ってくるりと一緒に踊り始める。
(「習ったことはないから基本的なステップだけ学習してきた」)
 大丈夫、見よう見まねでリードしてみるアヤネだけど、その学習能力は流石だ。
 足が縺れるどころか、難なく踊りつつも冬青のステップを導いてあげる。
「色違いのドレスはダンスしてるととても映えますね」
 そんな姿に、見物しているオクも感嘆の溜息を漏らして。
 サクラコも踊る人たちのダンスを眺めながら甘味をいただくことに。
 けれど――ふとリードされつつ、冬青は気が付く。
(「ダンスだなんて緊張しちゃうけど、アヤネさんも何だか少し動きが……」)
 すぐ眼前にあるアヤネの顔は、何だか浮かぬ表情。
 逆に楽しそうに踊る冬青を見つめ、アヤネは思うのだった。
(「それにしてもソヨゴが死ぬところなど演技でも見たくないネ」)
 ――ここまで来てしまったけれど、ここから引き返すのもアリかしら? って。
 けれどやはり楽しげな冬青の様子に、そんな事を切り出すのも躊躇われてしまう。
 でも冬青はちゃんと、アヤネの胸の内で生じているそんな心理を察する。
(「この後のことで緊張しているのかな。フリでも自死は怖いよね」)
 そう彼女を見つめる琥珀をそっと細めてから、どこか動きが固くなっているアヤネの、その緊張をほぐしたいと。
 混ざり合い同じ体温を共有するその手を優しく握り返し、そして安心させるよう囁きの如く紡ぐ。
 ――大丈夫、一緒ですから、って。
 けれど、勿論猟兵の仕事も忘れてはいないから。
 踊り終え、会食をしつつ、情報収集にも余念がない。
 でも……やはり。
「ところでここのデザート凄く美味しいですね。さすが最後の晩餐。さ、甘い物でも食べてリラックスしましょう」
「デザート?」
 確かに、並ぶデザートはどれも高価そうなものばかりだけれど。
(「ソヨゴの笑顔には和んでしまうネ」)
 アヤネが何より見つめるのは、目の前の冬青の姿。
 そしてアヤネは、差し出されたスイーツにあーんして、ぱくり。
 オクもサクラコと一緒に、そっと色々つまんでみながらも。
「と、とても豪華です……」
 そうちょっぴり圧倒されつつ、ケーキをもぐもぐと口に運べば
「おいしい……」
 思わずじっくり味わってしまうほどの美味しさ。
「オクちゃんいっしょにいろいろ食べちゃいましょうか」
 果物のジュースで乾杯した後、甘いものをたくさんずらり並べて……片端からいただきます!
 ――ちょっとはしゃぎすぎですかねい?
 そう気を取り直し、情報収集しやすそうな、ノリが合いそうな人をきょろりと探してみつつも。 
 サクラコは漆黒の髪を揺らし、ふと首を傾ける。
(「自分が死んでしまう光景って、なんかぜんぜん思いつきませんねい?」)
 器物ですし、と……続けて呟くけれども。
 自ら与える死を迎え入れる時間まで――あと、ほんの少しだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『夜櫻に消えた人々』

POW   :    狭い所であっても気合や、その他の方法で潜入して情報を収集する。

SPD   :    フットワークを駆使して、広範囲に渡って人々への聞き込みに回る。

WIZ   :    人当たりの良さを駆使して、周囲の人々から情報を教えてもらう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 第2章プレイング送信の受付は、【10/22(火)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 追加情報を記載したOPを受付開始前日迄に掲載いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。


●主催者挨拶
 宴もたけなわ――そろそろ、華やかな『最後の晩餐』もお開きの時間。
「どうやって死のうか迷っている? では此方をどうぞご利用ください」
 主催者の宝木がずらりと並べ口にするのは、自死するために使える様々な道具や手段。

 服毒自殺をご所望ならば、確実に死ねる此方の猛毒をどうぞ。
 飛び降りる、おすすめ場所ですか?
 館の屋上か、館の庭の海が臨める断崖絶壁からなんていかがでしょう。
 入水自殺でしたら、最適な池が庭にございます。
 切腹ならば、此方の短剣をお使いください。
 何人もの腹を切ってきた、いわく付きの逸品です。
 自分で刺すのは勿論、誰かの手によって死ぬのもまた良いかと。
 死合いの末の相打ちなども、最期の戯れで楽しいかもしれません。
 手首を切るのでしたら、血が固まらぬよう各客室のバスタブに湯を張って下さいね。
 首吊りでしたら、此方のロープでしたら頑丈なので死に損なわないかと。
 庭で焼身自殺というのもありかと。ガソリンやライターは此方に。

 でも――勿論、これはただの一例。
 ご自身のお好みの手段で、持参されたものをお使いになるのが一番良いでしょう。
 ひとりで死ぬも良し、手を繋ぎ誰かと共に逝くも良し、仲良しグループででも。
 どうぞ、満足いく死に方で最期をお迎えください。
 大丈夫、死に損なうことはありません。
 その時は、櫻居・四狼先生の『幻朧心中』の小説の様に。
 『桜の介添人』が貴方の首を落として、美しい桜の下に埋めてくれますから。

 ――さぁ、貴方の死に様を、どうぞこの私にみせてください。

●幻朧心中
 宴が行われていた会場で今眠っているのは、主催者の宝木や自殺志願者。
 だがその眠りは、自殺志願者たちが求めていた永遠の眠りではなく。
 事前に仕込んでおいた、強烈な睡眠薬によるもの。
 彼等の身は『帝都桜學府』が保護し、その後の対応もしてくれるという。
 なので、猟兵の皆にお願いしたいこと。
 それは宝木が匿っている影朧を誘き出し、滅するか救済するかして欲しい。

 全ての一般人が無事に、『帝都桜學府』によって館の外へと運び出された後。
 猟兵たちは晩餐会で得た情報を共有し合う。
「影朧は、『幻朧心中』の小説にも出てくるらしい、宝木の言う『桜の介添人』で間違いなさそうだ」
「その影朧は、ハルちゃんという名の宝木の娘のようだな。親子で『桜ノ匣庭』の作者である小説家、櫻居・四狼に陶酔していたという」
「広い館で影朧を探すのは時間かかりそうだ。ならば誘き出すのが手っ取り早いか」
「影朧……『桜の介添人』は死に損なった者の前へ現れて斬首するという話ですね」
「自死は、この館内の敷地内で行わないといけないようです」
「自死を行なっていない者がいるところには、出てこないかもしれませんね」
 影朧を誘き出す方法は、『自死』をし、死に損なう事。
 猟兵は宝木が提示した程度の方法では死なないので、結果的に自死を試みれば影朧を誘き出せることができるだろう。
 まずはそれぞれの手段で自ら命を絶たんとし、影朧を引き摺り出して欲しい。
 死ぬ方法はあくまで『自死』。
 死闘の末の相打ちや、他の者に頼んで手を下してもらうのも良いようだ。
 場所は館の敷地内、庭や庭から続く断崖絶壁でも可能らしい。
 自死――自ら命を絶つという、普通に考えれば狂った行為。
 けれどもこれが、影朧を誘き出す手段。
 死に直面した人間の演技をしてみるなども良いし、怪しまれぬ様な死に方を影朧にみせて欲しい。
 猟兵たちは共に頷き合い、そして各々選んだ死に様を影朧へと示すべく、動き出す。

 幻朧桜がはらり、儚く舞う今宵――貴方はどのように、自らの命を絶ちますか。
黒鵺・瑞樹
アドリブOK

死に方は簡単、自分自身(本体)で喉を切り裂く。
エンパイアらしく白の死装束を着て。
本当は短刀で割腹が「らしい」だろうが、この後それなりに戦闘があるいだろうし、それを考えると後始末が楽な方がいいだろう。
それに選んだ短刀を俺の血で汚すのも忍びない。例え芝居だとしてもな。
何より自分で喉を斬るのは二度目だ。後に支障がない程度に切れるはず。

黒い刀身、それに映った自分を見るとあの時を思い出す。
薄暗い蔵で二度目に自分を殺した時の事。あの時はやっと殺す対象が見えたからとっさにやって、蔵の持ち主にかなり怒られたが。
そしてまた自分を殺す。分不相応な感情を殺すために。

そういや躊躇い傷はあった方がらしいか?



 最後の夜だからって着飾る思考も、ばかばかしいと思ったけれど。
 そんな晩餐会も終わり――やってくる、死の時間。
 黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)の自ら命を絶つ死に方は、簡単。
 元暗殺者が愛用したナイフ……そう、本体である自分自身で喉を切り裂くのだ。
 サムライエンパイアに倣った死に際らしく、纏うは白の死装束。
 そうなれば、本当は短刀で割腹の方が「らしい」のだろうが。
(「この後それなりに戦闘があるいだろうし、それを考えると後始末が楽な方がいいだろう」)
 とはいえ、まずは影朧を誘き出さねばならない。
 そのためには、それなりに本気で自死しなければ、演技だとばれると敵が出現しない可能性もある。
 それに用意された短刀を使ったのならば自分の血で汚れるだろう。
 それも、忍びない……例え芝居だとしても。
 何より、己を斬ることは、これがはじめてではない。
(「何より自分で喉を斬るのは二度目だ。後に支障がない程度に切れるはず」)
 ふと、そう黒き大振りのナイフに青い瞳を向ければ。
 そこに映るは――己の姿。
(「映った自分を見ると、あの時を思い出す」)
 あの時――薄暗い蔵で二度目に自分を殺した時の事。
(「あの時はやっと殺す対象が見えたからとっさにやって、蔵の持ち主にかなり怒られたが」)
 そう思い返しながらも、瑞樹は黒鵺を握る。
「そういや躊躇い傷はあった方がらしいか?」
 そうふと銀の髪を微かに揺らし、首をふと傾けるも。
 自分自身である漆黒の刃を、喉へと、振るうのだった。
 ――そしてまた自分を殺す。
 分不相応な感情を殺すために……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
さっきの子、死を躊躇ってた……
妹さんに再会できたらきっと大丈夫だよね

そろそろ誘き寄せる頃合いかな
あの日、本気で死にたかった私は
確実に命を落とすために
暗殺者――先生を頼ったわけだけれど
今回はさすがに、誰も頼れなかったな
ヨハンを巻き込むわけにもいかなかったし
……ちゃんとひとりで、やらないと

受け取った猛毒を紅茶に溶かして
少し躊躇ってから、カップに口をつける

猟兵はこの程度では死なない存在
そうわかってはいても、苦しくて、くるしくて――
いくら咳き込んでも毒は吐き出せない
口元に当てていた手が赤く染まるだけ
私って勝手だな
こんな時なのに、幸せな思い出ばかりが思い起こされて

やっぱり、今の私は昔とは違う
生きたいんだ



 不意に自分の服の袖を掴んだ、小さな掌。
 その手は、小刻みに震えていた。
 死にたい、そう望んで此処に赴いたはずだっただろうのに。
(「さっきの子、死を躊躇ってた……」)
 死を目前にしたあの時、感じてくれた恐怖。
 命を絶つことが怖いと躊躇う心と大切な存在がいれば、きっと大丈夫。
(「妹さんに再会できたらきっと大丈夫だよね」)
 オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は桜空にそう願いを馳せ、信じながらも。
 ――そろそろ誘き寄せる頃合いかな。
 死を迎えるべく貰った小さな小瓶を、そっと月光降る花霞へと翳してみる。
 あの日――本気で死にたかったあの時は。
(「確実に命を落とすために、暗殺者――先生を頼ったわけだけれど。今回はさすがに、誰も頼れなかったな」)
 巻き込むわけにもいかなかったし、と愛情抱く彼を想いながらも。
 こくりとひとつ、決意したように頷いて呟きを零す。
「……ちゃんとひとりで、やらないと」
 かちゃりと音を鳴らし手にしたのは、深い琥珀の色と香りが鼻をくすぐる紅茶。
 とろりと小瓶の猛毒を注ぎ、ゆっくりとくるりかきまぜて溶かしてから。
 口元へと、一度持っていくも……一瞬、その動きをとめてしまうオルハ。
 猟兵はこの程度では死なない存在、そんなことは分かっているのだけれど。
 少し躊躇ってから、そっとカップに口をつければ。
 ……そうわかってはいても、苦しくて、くるしくて――。
 ごほごほっと激しく咳き込んで、ガチャリと派手にカップを床へと落としてしまうけれど。
 いくら咳き込んでも、吐き出せない猛毒。
 駆け巡る毒に視界が回り、焼け付くようにひりつく喉や胸。
 口元にあてていた掌が――赤くあかく、ただひたすら深く、染まっていくだけ。
(「――私って勝手だな」)
 あの時は、死を願っていたというのに。
 いざもうすぐ死ぬという、こんな時なのに……今は、幸せな思い出ばかりが思い起こされて。
 オルハは口から赤に飛沫く華を咲かせながら、霞む視界の中、改めて思うのだった。
 ――やっぱり、今の私は昔とは違う。
 生きたいんだ……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネフラ・ノーヴァ
ワインで染めたドレスから普段の装束に着替える。幻朧桜のあるところで行おう。
自死に用いるは愛用の血を繰る刺剣。仮初めの死といえど、美しく振る舞おうではないか。
刺剣を抱き、腹から背まで貫き通す。振り上げ、仰け反るように引き抜けば、大輪の血の花を咲き散らし、ドレスに幻朧桜を赤に染めて倒れ伏せる。
...さて、これで影朧にはご満足いただけたかな?



 桜という花は、何もこの世界のものだけではないが。
 ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)は眼前の幻朧桜を見上げ思う。
 成程、死を飾るに相応しい舞台だ、と。
 血に見立てワイン注いだドレスかから、普段の装束へと着替えてから。
 ネフラが選んだ死に場所は、人を惑わすように朧に裂く、この世界の桜の下。
 自死に用いるべくその手に握るは、愛用の血を繰る血棘の刺剣。
 その先端が刺さればきっと、沢山止めどなく溢れ流れる、心躍る赤のいろ。
 ――仮初めの死といえど、美しく振る舞おうではないか。
 晩餐会でデモンストレーションしてみせた時の様に。
 いや、あの時よりももっとご機嫌に笑み湛えながら、ネフラは満を持して刺剣を抱く。
 刹那――その躊躇なき鋭き刃が、腹から背まで貫き通って。
 さらに己の身を貫いた刃を再び桜舞う天へと振り上げ、身体がびくんと思わず仰け反るように、思い切り引き抜けば。
 静かな桜の夜空へと大輪撒き散らされ咲き乱れるのは、大輪の血の花。
 その赤のいろは、舞う幻朧桜すらも、真っ赤に染めあげて。
 ドレスにその鮮烈な真紅の花弁を飾りながら、ネフラは倒れ伏せる。
 じわり広がる己の血の海に溺れながら。
 ……さて、これで影朧にはご満足いただけたかな? って、そう嗤って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リシェア・リン
刃物の必要はないわ、自前のがあるから
(―父様ごめんなさい。折角の贈り物をこんな事に使うなんて)

いいえ、切腹じゃない
そんな力、普通の女性には無いもの
私の国では、女性はこうやって命を絶ってきたの

―首に刃を当て、思い切り引く
―私の首なら、ごろりと落ちてしまいそうな程

大きな
あかい



はな が

―嗚呼、こんなに大きな花…初めて見たわ
小さな花なら、今まで何度も咲かせてきたけど

喉から赤い花が咲く
口からも真っ赤な花が咲く
―みっともなくごぼごぼ音を立てるのは、綺麗じゃないかな

あの子は大丈夫かな
絶望してないかな
分かってほしい
貴女は家族や友人には愛してもらえなかったかも知れないけど
私達が、きっと貴女を愛してあげるって



 桜舞う静かな夜は、旅立ちにはうってつけなのかもしれない。
 そして死ぬために使う刃は、リシェア・リン(薫衣草・f00073)には、用意して貰う必要はない。
「刃物の必要はないわ、自前のがあるから」
 それから、そっと澄んだ紫水晶を細め密かに思う。
(「――父様ごめんなさい。折角の贈り物をこんな事に使うなんて」)
 そんなリシェアが、己の命を絶つべく選んだ手段。
 刃握るその姿をみれば、切腹か――。
「いいえ、切腹じゃない。そんな力、普通の女性には無いもの」
 ――私の国では、女性はこうやって命を絶ってきたの。
 そうぴたりと首に刃を当て……告げた瞬間。
 リシェアの首ならば、ごろりと落ちてしまいそうな程に。
 思い切り引かれた一閃と同時に溢れ飛沫く、鮮やかな赤のいろ。

 それは、大きな、あかい。
 ……花。
 はな、が――。

 ――嗚呼、こんなに大きな花……初めて見たわ。
 声に紡げぬ思い紡ぎ、リシェアは艶やかな深い紺桔梗色の髪を躍らせる。
 ……小さな花なら、今まで何度も咲かせてきたけど、と。
 こほっと喉から、零れるような赤い花を咲かせながら。
 けれど、それは喉だけに飽き足らず。
 口からも溢れ、咲き誇らんとするけれど。
 ――みっともなくごぼごぼ音を立てるのは、綺麗じゃないかな。
 朧に霞む景色の中、そう思いながらも、ふとリシェアは思い出す。
(「あの子は大丈夫かな、絶望してないかな」)
 望む死こそ、少女には与えてあげられなかったけれど。
 でも――分かってほしい、と。
 彼女のかわりに死を受け入れながら、リシェアは最期に微笑む。
(「貴女は家族や友人には愛してもらえなかったかも知れないけど」)
 私達が、きっと貴女を愛してあげる、って――鮮烈な赤き華を、満開に咲かせながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローリエ・オミネ
クロウ(f01157)と

0時は過ぎた
もう…帰れなくなってしまったわ
今宵、あなただけのサンドリヨンに…

死への恐怖で震える身体
どうか、強く手を握っていて
勇気を頂戴

先にグラスの中身を口にすれば――視界が歪んで
目眩と胸の痛みをおぼえ、その場に崩れ落ちたの

苦しい…痛い!
嫌、死ぬのは嫌…!

息苦しさで意識が遠のいてゆく
…クロウ、たすけて…

彼がわたくしを胸に抱く
嗚呼、あなたの心臓はこんなにも生を叫んでいるのね

…顔を見ようとしたけれど、もう目が霞んでいるの

死が間近に迫っている
クロウ、あなたも苦しい? …ならば耐えるわ、耐えてみせるわ

美しい死を…果たしましょう

お願い
どうかこのまま、あなたの腕の中で逝かせて――


上城・クロウ
フローリエ(f00047)と参加
最期の時だが、思ったより最期を迎える恐怖も無い。
自分が死の恐怖を知らぬが故だろうか
グラフは一つ、口にするのは二人。自分と、0時を超えたサンドリヨン
…共に朽ちる人がいる、それ故だろうか?
「最後の晩餐…とするなら、このグラスはさしずめ聖杯ですね」
彼女が半分ほど飲んだ後、自分が残りを飲み干し…
毒は速やかに五感と体の力を奪ってゆく
これが喪失感…それでも恐怖を感じぬのは
フローリエ…
…彼女がいるからだろうか?
最期の願い、そっと彼女を支えて…
…もはや、視界が欠け始め距離感も定かではないが…彼女はいつもより彼女の表情が近い気がした…
彼の最期は彼が思うより安らかなものと―



 時計の針がぴたりと重なり、0時の鐘を鳴らすけれど。
 鐘の音が鳴り終わった後も、南瓜の馬車はサンドリヨンを迎えに来ない。
(「0時は過ぎた。もう……帰れなくなってしまったわ」)
 ――今宵、あなただけのサンドリヨンに……。
 フローリエ・オミネ(シソウの魔女・f00047)の傍に在るのは、上城・クロウ(白紙の設計図・f01157)。
 帰れなくなったサンドリヨンと共に迎えるのは……最期の時。
 けれども、思ったより恐怖という感情がこの胸中にないのは。
(「自分が死の恐怖を知らぬが故だろうか」)
 いや、それとも――。
 ふと視線を落とせば、夜の如き色の瞳に揺らめくグラスの中の液体。
 けれども、乾杯はできない。だって、そのグラスはひとつしかないのだから。
 口にするのは二人――自分と、0時を超えたサンドリヨン。
 思ったより最期を迎える恐怖が無いのは、死の恐怖を知らぬからか。
 それとも……共に朽ちる人がいる、それ故だろうか?
「最後の晩餐……とするなら、このグラスはさしずめ聖杯ですね」
 そう紡ぐクロウの手をきゅっと握り締めるのは、フローリエの細い指。
 その手は……いや、その身体は震えていた。目前に迫った、死の恐怖に。
「どうか、強く手を握っていて」
 ――勇気を頂戴。
 彼の手を握り締めたまま、震える逆手でグラスを手にして。
 くいっと、フローリエの喉に注がれる液体。
 瞬間、ぐらり視界が歪んで……ふわり浮遊感の様な目眩と焼けつくような喉や胸の痛み。
 桜舞う夜に崩れ落ち、流れる様に踊る、冷気を纏ったような銀の髪。
 ――苦しい……痛い! 嫌、死ぬのは嫌……!
 けれども、容赦なく迫りくる死の瞬間。
 呼吸が荒くなり、意識遠のく虚ろな瞳のサンドリヨンが伸ばした手は、宙を彷徨う。
「……クロウ、たすけて……」
 そんな彼女を、勿論ひとりになんてさせやしない。
 グラスに残った液体をクロウは飲み干して。
「! は……」
 速やかに身体を駆け巡る毒が、五感と体の力を確実に奪ってゆく。
 そしてクロウの心に生じるもの……それは、喪失感。
 ――けれど。
(「……それでも恐怖を感じぬのは、フローリエ……彼女がいるからだろうか?」)
 彷徨うしなやかな手を取り、その華奢な身体をそっと、クロウが己の胸へと引き寄せれば。
 ――嗚呼、あなたの心臓はこんなにも生を叫んでいるのね。
 どくんと刻み感じる音色のぬくもりに、身体を預けるフローリエ。
 その顔を見ようとしたけれど……もう廻る視界に目も霞んで。
 花霞の如き朧の中、悟る――死が間近に迫っている、と。
「クロウ、あなたも苦しい? ……ならば耐えるわ、耐えてみせるわ」
 ……不思議。
 先程まで、あんなに恐怖で震えていたというのに。
 ――美しい死を……果たしましょう。
 受け入れれば最期にひとつ、彼にお願いを。
 ……どうかこのまま、あなたの腕の中で逝かせて――。
 その最期の願いを叶えるように、そっと彼女を支えるクロウだけれど。
 刹那、抱きしめていた彼女の身体が、ふっとその重みを増して。
 クロウ自身も……もはや、視界が欠け始め、廻る世界に距離感も定かではないけれど。
 ――いつもより、彼女の表情が近い気がした……。
 そう思ったのが、最期。
 けれども、それは彼が思うよりも、安らかなものと――。
 そんな重なり合う様に崩れ落ちたふたりの上に、ひらり舞い散るは……餞の如きひとひら。
 そしてふたりが刻んでいた時計は――重なり合って、その針を止めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザザ・クライスト
【狼鬼】

ジャスパーに微笑みかける
コイツなりの気遣いが今のオレには心地イイ

「運命は等価交換、幸福があれば不幸もまた訪れる」

緩くかぶりを振り決意を固める
ジャスパーの言葉に幸せを感じる
イヤ、そうじゃない……

「──あなたとしあわせになりたい。あなたのしあわせになりたい。連れてって、此処じゃない何処かへ」

名を奪われた少女とあるシンガーの詩を口ずさむ
オマエを幸せにしたいンじゃない
オマエのしあわせになりたい
咥えた煙草に火が灯る
穏やかな気分は悪くねェ

指を絡めるように手を重ねて、互いを抱き締めてその身を踊らせる

「オマエとならこういうのもアリだと思った。本当だぜ?」

耳に唇を押し付けて囁く
衝撃、世界が暗転する


ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
海の見える崖に立つ
浮かぬ表情のザザを気遣うように
「退くなら今のうちだぜ
なァに、そしたら俺が今より幸せにしてやるだけさ」
自信満々に言うが
それが奴の決心を固める事になったようだ

奴の最後の煙草に火を灯してやる
「手が震えてるぜ」
俺もかな
「あんたの目指す先がどこでも、俺はついていく」
それが幸せさ、知っているだろ?
離れないように震える手を強く握って
地を蹴り虚空へと身を躍らせる

ザザを抱きしめ続く衝撃を『期待』してると
奴はなかなかに興味深い事を言った

「なァ、どこまでが嘘なんだ?」
笑いながら耳打ちし返す

普段のこいつは
死にたいなんて弱音を吐く男じゃない
等価交換なんて言い訳する男じゃない

――じゃあ、これは?



 未来なんて、そんなもの知ったこっちゃないし。
 誰よりも、どんな手段を使ってでも、ただひたすら生きたいと――貪欲なほどそう思っていたはずなのに。
 ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)が今立っているのは、夜の海が見える崖の上。
 ふと隣を見遣れば、浮かぬ表情。
「退くなら今のうちだぜ。なァに、そしたら俺が今より幸せにしてやるだけさ」
 それは、ザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)への気遣い。
 けれども、自信満々に紡がれたその言葉に返るは、浮かぬものであったはずの顔に宿る微笑み。
 ――コイツなりの気遣いが今のオレには心地イイ。
「運命は等価交換、幸福があれば不幸もまた訪れる」
 ふるり、緩くかぶりを振ったザザは決意を固めながらも。
 ジャスパーの言葉に感じるのは……幸せ?
(「イヤ、そうじゃない……」)
 そしてふと刻み口遊み始めるのは、名を奪われた少女とあるシンガーの詩。
「──あなたとしあわせになりたい。あなたのしあわせになりたい。連れてって、此処じゃない何処かへ」
 ……オマエを幸せにしたいンじゃない、オマエのしあわせになりたい。
「手が震えてるぜ」
 刹那、ジャスパーが差し出した炎のいろがゆらりと揺れて。
 穏やかな気分は悪くねェ――そう、ザザの咥えた煙草に火が灯る。
 いや、震えているのは、ザザの手だけではないのかもしれない。
 俺もかな――そういつもの様に嗤い、ジャスパーは紫とピンク混ざるその瞳を細めながらも紡ぐ。
「あんたの目指す先がどこでも、俺はついていく」
 ――それが幸せさ、知っているだろ? って。
 そして、静かに桜舞う空から光降らせる月が、ふたりに来たるその時を見守って。
 絡め合うのは、互いの指と指。
 決して離れぬよう、ぎゅっと互いの手を強く握り合えば。
 思っていたよりも高い相手の生の温もりが、じわりと掌から伝わって。すぐに混ざり合い、一つになる。
 そして同時に地を蹴った、刹那――桜吹雪巻きあがる虚空へと、互いに抱きしめ合ったその身を躍らせた。
 ふわり一瞬の浮遊感の後は、ただ、ひたすら堕ちてゆくだけ。
 待っているのは、身体を砕くような衝撃――それをジャスパーがその『痛み』に期待していれば。
 思いがけず与えられた言の葉のは、なかなかに興味をそそるもの。
「……オマエとならこういうのもアリだと思った。本当だぜ?」
 ふいに耳に押し付けられたザザの唇が、そう囁けば。
「――なァ、どこまでが嘘なんだ?」
 笑いながら返すは、そんな耳打ち。
 けれど、いまかいまかと待ち侘びる衝撃を目前に、ジャスパーは思う。
(「普段のこいつは、死にたいなんて弱音を吐く男じゃない。等価交換なんて言い訳する男じゃない」)
 ――じゃあ、これは? って。
 瞬間、容赦なく叩きつけられるは、身体を粉砕する激しい衝撃。
 そして……はらりと、朧に霞む薄紅のいろを最期に。
 ふたりの世界は、暗転する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

迎・青
【白露おにーさん(f00355)と】(アドリブ歓迎)
(自殺志願者の心を和らげたい一心で飛び込み
自死の手段は深く考えておらず
他の猟兵が「死んでいく」のを見て怖くなってしまった所で
顔見知りに声を掛けられる)

…どうしよう。痛いのも、苦しいのも、コワいよぅ

白露に毒入りのジュースを貰い飲み干す。あまくておいしい
「本当に死ぬ事は無い」と頭では理解しているが
急速に冷たくなる体と混濁する意識に怯え
首飾り(自分の本体)を握りしめ、白露に縋りつく

…さむいし、コワい
おねがい、ひとりに、しないで

――こんなのは、きらきらじゃないって
あの、キレイな色のおにーさんは、おこるかなあ
(誰かの名前と、ごめんね、と呟き意識を失う)


皆城・白露
【迎(f01507)と】(アドリブ歓迎)
(見覚えのある姿を見かけて、つい声をかけてしまった)
そんなガラじゃないだろお前
なんでここに来た

事情を聞き、持参した小瓶の毒物を、甘いジュースに溶かして迎に渡す
「苦しまずに逝けるらしい。
そう言ってた奴も、自分で試したわけじゃないだろうから、本当かは知らないが」

動かなくなった迎を、寝心地の良さそうな場所へ運び横たえ
自分の上着をかけてやり、その場を去る
「…ちゃんと返せよ。じゃあ、また後でな」

一人で静かに苦しまず、のつもりだったが、用意した毒はもうない
やっぱり声なんてかけなきゃよかった、と独り言ちるも
表情はどこか穏やか
静かな場所を見つけ、黒剣で自分の首を掻っ切る



 自死の手段など、深くは考えていなかった。
 そして、他の猟兵がひとり、またひとりと自らの命を絶っていく……「死んでいく」のを見て。
 怖くなってしまっていた、迎・青(アオイトリ・f01507)へと向けられた声。
「そんなガラじゃないだろお前。なんでここに来た」
 見覚えのある姿をみかけ、つい声を掛けてしまったのは、皆城・白露(モノクローム・f00355)。
 その問いに、青は答える――自殺志願者の心を和らげたい一心だった、だと。
 けれども、次に待っている自らの人生の幕引きを思えば、ぶるりと震えて。
「……どうしよう。痛いのも、苦しいのも、コワいよぅ」
 そう事情を聞いた白露が青へと手渡したのは、甘いジュース。
 それにとろりと溶かしたのは、持参した小瓶の毒物。
「苦しまずに逝けるらしい。そう言ってた奴も、自分で試したわけじゃないだろうから、本当かは知らないが」
 そっとそれを手に取って、ごくりと口にしてみれば――あまくておいしい。
 青も頭では理解しているのだ……「本当に死ぬ事は無い」と。
 けれど、ごくごくと貰った毒入りジュースを飲み干せば。
「……か、はっ」
 スウッと寒いほど下がる体温と、ぐるり立っていられぬほどに廻る視界。
 ぶるりまた震えたのは、急速に冷たくなる体と混濁する意識に、怯えてしまったから。
「……さむいし、コワい」
 ――おねがい、ひとりに、しないで。
 しゃらり、己自身でもある首飾りを小さなその手で握りしめ、青はそう、白露に縋りつくけれど。
(「――こんなのは、きらきらじゃないって。あの、キレイな色のおにーさんは、おこるかなあ……」)
 最期に思ったのは――誰かの名前と、ごめんね、という言の葉。
 刹那、ブラウンの瞳に光がなくなり、ずるり地に崩れ落ちて動かなくなる。
 そんな青を寝心地の良さそうな場所へと運び、そっと横たえてから。
「……ちゃんと返せよ。じゃあ、また後でな」
 ふわり、小さなその身体に上着をかけてやり、その場を去る白露。
 一人で静かに苦しまず……のつもりで用意した毒、それはもうない。
 ……やっぱり声なんてかけなきゃよかった、なんて。
 そう、白露は独り言ちるも。けれど、その表情はどこか穏やかで。
 月光が差し込み、ひらひら花弁降らせる朧げな満開桜見える静かなバルコニーで、黒剣を握れば。
 刹那咲かせるは、飛沫き咲き誇る、鮮やかな赤の華――自分の首を、掻っ切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
【花の涯】
楽しい事には終わりが来るもの。いいや、これからが本当に楽しい事かもしれないねぇ?
女将……いいや、エリシャ。君とは今まで勉強からゲーム、様々なもので勝負したけど、最後の勝負は愛の強さはどうだい?
先に殺した方が愛が強いってことにしよう。勝ったら後を追ってドヤ顔晒してあげるよ

――それじゃあ、勝負だ!(ダガーを出す)

いやぁ、大振りな刀の割に中々鋭いねぇ。でも小回りや手数でなら負けないさぁ
くっ……危なかったよ。そら受け取ってよ(腹に刺突)

…ちょっと躱したりなかったかな。引き分け…かぁ……。次の勝…負は、あの世で……エリ、シャ…愛し……(倒れる)

(バッチリだよ女将さん。危うく首飛びかけたけど)


千桜・エリシャ
【花の涯】

(あら、もう演技は始まっていますのね
ならば私も合わせて…)

永一さん…いえ、永一
愛の強さで私に勝てると思って?
あなたを殺して首を落として
血肉をすべて肚に納めて一緒に死んで差し上げますわ
(…演技に見えない?
だってこれは本音ですもの
私、ずっとあなたを殺してみたかったの!)

――ええ、喜んで
ダンスの誘いを受けるかの如く
墨染の太刀を抜いて
あなたの間合いへ飛び込みましょう
さすがの手合ですわね
返り血をこれ見よがしに舐める
なんて甘美な味なのかしら…
でも私はもっと欲しい!
こちらも負けじと首を斬りつけて

肚を穿つ刃が熱い
嗚呼…これが愛ですのね…!
ええ、私も…あなたのことを…

(まったく…お互い無茶しますわね)



 さくら、さくら、その薄紅がくるりくるりと踊り舞うように。
 月下に遊ぶのは、ふたつの影。
「楽しい事には終わりが来るもの。いいや、これからが本当に楽しい事かもしれないねぇ?」
 ――女将……いいや、エリシャ。
 そう名を呼んで、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は互いの最期に、こう提案を。
「君とは今まで勉強からゲーム、様々なもので勝負したけど、最後の勝負は愛の強さはどうだい?」
 今までのように、そして最期まで……持ちかけるのは、やはり勝負事。
「先に殺した方が愛が強いってことにしよう。勝ったら後を追ってドヤ顔晒してあげるよ」
 千桜・エリシャ(春宵・f02565)はその声に、桜を思わせるようないろの瞳をそっと細める。
(「あら、もう演技は始まっていますのね。ならば私も合わせて……」)
 ――永一さん……いえ、永一。
 同じ様に名を呼び、蠱惑に咲かせた双眸の桜を歪ませる。
「愛の強さで私に勝てると思って? あなたを殺して首を落として、血肉をすべて肚に納めて一緒に死んで差し上げますわ」
 桜鬼の娘がどこまでも求め続けるは、心昂ぶらせる甘美なる御首。
 微笑みに狂気を綻ばせるその様は、演技とは到底見えぬけれど――でも、それは当然。
(「……だってこれは本音ですもの。私、ずっとあなたを殺してみたかったの!」)
 滾る感情、満開に咲き誇る殺意、首を刈らんと見開かれる桜鬼の双眸。
 そんなエリシャを映す金の瞳を楽し気に細めて。
 ――それじゃあ、勝負だ!
 月光に閃くダガーを、素早く永一が手にすれば。
 ――ええ、喜んで。
 まるでダンスの誘いを受けるかのように、彼の間合いへと飛び込むエリシャ。
 すらり抜かれた墨染の太刀で、その魅力的な首を落とさんと。
「いやぁ、大振りな刀の割に中々鋭いねぇ。でも小回りや手数でなら負けないさぁ」
「さすがの手合ですわね」
 致命傷には至らないまでも、桜舞う世界に飛沫き咲く互いの赤き華。
 踊る様にステップを踏んでは斬りつけ、相手と己の赤が混ざる。
 エリシャは、浴びた返り血をこれ見よがしにぺろりと舐めて。
「なんて甘美な味なのかしら……」
 ――でも私はもっと欲しい!
 最後の勝負事に勝つべく、飛沫く赤をもっともっと咲き誇らせ散らせるべく。
 桜花模す鍔の大太刀を振るい、負けじと彼の首を狙い斬りつければ。
「くっ……危なかったよ。そら受け取ってよ」
 傷を負いつつも何とか首への一太刀を躱した永一が握るダガーが、エリシャの腹へと容赦なく突き立てられる。
 流れ落ちる互いの血が、降り積もった薄紅をあっという間に赤のいろへと染め上げて。
 ――肚を穿つ刃が熱い。
「嗚呼……これが愛ですのね……!
「……ちょっと躱したりなかったかな」
 最後の勝負は、引き分けの相打ち。
 いや、ふたりにとっては最後のつもりは毛頭ない。
「次の勝……負は、あの世で……エリ、シャ……愛し……」
「ええ、私も……あなたのことを……」
 同時に寄り添うように地へと崩れ落ち、赤に染まった花弁を巻き上げる。
 そして、互いの赤が混ざった血の海に溺れながら。
(「バッチリだよ女将さん。危うく首飛びかけたけど」)
(「まったく……お互い無茶しますわね」)
 薄れゆく意識の中、さり気なく視線をあわせ合い、そっと笑み合うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
有/f00133

さぁ有ちゃん
やっとメインイベントの時間だ
心中ごっこ、付き合ってもらうよ

死にたいと思った時、どうやって死のうと思った?
僕はさ、どうせなら盛大に派手な方がいいと思うわけ
ナイフで頸動脈をザックリ…とかね
ちょうど酒も回っていい具合に脈打ってるし

折角だし殺してみるかい?殺したい男とかいないの?
あ、殺されたい?了解

細い首に手とナイフを添える
血管やらには詳しいから
ここを優しく引けば君は絶命する
そしたら僕の番、同じようにして死のう
ハハハ!まるで心中だ

誰かが言ってたな
桜の色は血の色なんだって

ありがとうねぇ、有ちゃん
僕は今死を願ってる
この世に生きてる場合じゃない
早く行かなきゃ置いてかれちまうってさ


芥辺・有
ロカジ/f04128

もう死ぬ時間か
はいはい、やってやろうじゃないか

ナイフでざっくりとは、まったく派手好きだね
私が死にたいと思ったときは……まあとにかく死ねればよかったからね
拘りもなかったし
好きにするといい。付き合うさ

うん?
殺したい男は……さて
まあ、充分かな、殺すのは
どっちかといや殺されてれば良かったかもしれないが
なんて、何言ってんだか。戯言だ

……ま、でも、折角だし戯言に付き合ってもらおうか
そう言って狙いやすいよう首を傾けて
お前にゃ要らない世話かもしれないけど
心中か。は、きっといい餌になるんじゃない

本当はこんな死に様晒せやしないが
そういうごっこ遊びだからね
さ。心中ってんなら、後追っておいでよ



 静かな夜に舞い降る薄紅が、その漆黒の髪をひとひら、ふたひらと飾るけれども。
 それをそっと払ってあげながら、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は青の瞳を細める。
「さぁ有ちゃん。やっとメインイベントの時間だ」
 ――心中ごっこ、付き合ってもらうよ、って。
 芥辺・有(ストレイキャット・f00133)はそんなロカジへと、相変わらずけだるげな調子で返す。
「もう死ぬ時間か。はいはい、やってやろうじゃないか」
 そんな有へと、ロカジは訊ねる。
「死にたいと思った時、どうやって死のうと思った?」
 ……死にたくなった事はあるかい?
 そう先程問えば、迷いなく呟くように言い切った彼女のその答えは――あるよ、と。
 けれどそれはどのような方法で死のうとしたのか。首吊り? 服毒? それとも飛び降り?
 ロカジはふっと、その首を傾けてみせて。
「僕はさ、どうせなら盛大に派手な方がいいと思うわけ。ナイフで頸動脈をザックリ……とかね」
 ……ちょうど酒も回っていい具合に脈打ってるし、と。
 己の頸動脈を見せつける様に晒し、そして横に指をふっと滑らせる。
「ナイフでざっくりとは、まったく派手好きだね」
 微かに隣の、趣向も見目も華やかな男へと言えば。
「私が死にたいと思ったときは……まあとにかく死ねればよかったからね。拘りもなかったし」
 そして紡ぐ――好きにするといい。付き合うさ、と。
 そんな彼女へとさらに問いを重ねるロカジ。
「折角だし殺してみるかい? 殺したい男とかいないの?」
「うん? 殺したい男は……さて。まあ、充分かな、殺すのは。どっちかといや殺されてれば良かったかもしれないが」
 ――なんて、何言ってんだか。戯言だ。
 そう思いはするけれど、桜咲く世界に今宵、散らせなければいけない。
 ぽとりと潔い、赤い赤い椿のように――この世に咲いた、命の華を。
「あ、殺されたい? 了解」
 ひたり、細いその首筋にあてられる冷たい感触。
 同時に添えられた大きな掌は、逆にじわりとあかかたくて。
 ……ここを優しく引けば君は絶命する。
 ふっと口角を上げ、ロカジは笑う。
「そしたら僕の番、同じようにして死のう」
 ――ハハハ! まるで心中だ、と。
 そして、有と満開に咲く朧桜を見上げながらも、思い返す。 
「誰かが言ってたな。桜の色は血の色なんだって」
 眼前の幻朧桜も、もしかしたらそうなのかな……なんて、零れた言の葉を聞きながら。
(「本当はこんな死に様晒せやしないが、そういうごっこ遊びだからね」)
 有はナイフ握る彼の手を両手で包み込む様に握りしめて紡ぐ。
「――さ。心中ってんなら、後追っておいでよ」
 そんな彼女に、柔く微笑んでから。
「ありがとうねぇ、有ちゃん」
 刹那――真横に引かれた刃の軌道に、赤の華が咲き誇り、零れ落ちる。
 そんな鮮やかな赤の華を青の瞳に映し咲かせながら、崩れるその身体を支えて。
「――僕は今死を願ってる。この世に生きてる場合じゃない」
 ロカジもその後を追うべく、彼女と心中するのだった。
 ――早く行かなきゃ置いてかれちまうってさ、って。
 同じ様に躊躇なく刃を引き、ご所望通りの派手な赤に塗れながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カーディナル・レッド
セレスタ(f01381)と死の旅路へ
(アドリブ・関係進展歓迎、衣装詳細お任せします)

幸せそうに最後の晩餐を楽しむ彼女を見ていたら、
それだけでお腹一杯になってしまった
結局自分で食べるより、彼女に勧めるばかりだったね

彼女の瞳と、先程までは僕が引いていた彼女の手を見つめる
今度は君が冥界へと誘おうと言うのだね
それは愛の告白の様で、思わず微笑む

「君が寂しくないように、一緒に連れて行ってあげよう」
これはこの場限りの演技ではなく、そう、本音
彼女は命の恩人だが僕にはきっとそれ以上の気持ちもある
共に死んでもいいと思える程には

落ち行く時は、彼女をしっかり抱きしめておこう
せめて安らかに…いや、二度と離さぬように、だ


セレスタイト・ヴェニット
カディ(f01636)と死にに

最期の晩餐があまりにもおいしくて幸せいっぱい
お肉も甘いものも、カディが差し出してくれるからつい食べ過ぎました…

甘やかしてくれるカディ
でもまだ出会ってそんなに経ってない
けど
優しいキミにボクはこれから酷いお願いをします

一緒に崖から飛び降りて死んでください
どうか、また手を握っていて欲しいです


死に別れた愛しい人がいたの
その人は「ボク」を置いていってしまったけど
カディ、キミに逢えた
今度は一緒に死んでくれる?
一緒に連れてってくれる?

差し出された手に満面の笑顔を
幸せすぎて泣きそう
さっきと同じ
ホールの真ん中へ行くように
引かれるまま崖の下へ

カディ
好きです

伝えたかった気持ちは死の先に



 ふわり桜咲く夜空に、踊るように青を湛える髪を靡かせて。
 舞う桜の様ないろをした瞳を細めるセレスタイト・ヴェニット(優翼・f01381)。
 思い返すのは、あまりにもおいしくて幸せいっぱいだった最期の晩餐のこと。
「お肉も甘いものも、カディが差し出してくれるからつい食べ過ぎました……」
 そうはにかむように笑み宿すセレスタイトを見つめるカーディナル・レッド(優しい嘘・f01636)も、お腹一杯に。
(「結局自分で食べるより、彼女に勧めるばかりだったね」)
 幸せそうに最後の晩餐を楽しむ彼女を見ていたら……それだけで。
 そして、あれほど賑やかだった晩餐のひとときとは打って変わって。
 静かな桜夜に微かに聞こえ始めてきた海の音を耳にしながら――セレスタイトはカーディナルを見上げ、告げる。
「甘やかしてくれるカディ。でもまだ出会ってそんなに経ってないけど、優しいキミにボクはこれから酷いお願いをします」
 ――一緒に崖から飛び降りて死んでください。どうか、また手を握っていて欲しいです。
 自分だけを映す、美しい桜のようないろを咲かせる双眸。華奢でしなやかな、色白の細い掌。
 カーディナルは、向けられる瞳と先程まで引いていた彼女の手を見つめて。
「今度は君が冥界へと誘おうと言うのだね」
 彼女の酷いお願い――いや彼にとっては、それは愛の告白の様。
 愛し気に柔く赤の瞳を細め、思わず微笑む。
 そんな彼に、改めてセレスタイトはお願いする。
「死に別れた愛しい人がいたの。その人は「ボク」を置いていってしまったけど……カディ、キミに逢えた」
 ――今度は一緒に死んでくれる? 一緒に連れてってくれる?
 もう……置いて行かれるのは、いや。
 だから今度こそ、一緒に。
 そう願う彼女へと、カーディナルは再びその手を差し出して。
「君が寂しくないように、一緒に連れて行ってあげよう」
 彼女の願いを喜んで叶えてあげるべく、エスコートする。
 これは、この場限りの演技ではなく――そう、本音。
(「彼女は命の恩人だが、僕にはきっとそれ以上の気持ちもある」)
 ――共に死んでもいいと思える程には、と。
 満面の笑顔で重ねられたその掌を、大事に包み込む。
 ……幸せすぎて泣きそう。
 そう、王子様のように素敵だった彼のリードで踊った、先程のダンスと同じように。
 ホールの真ん中へ行く様に引かれるまま――セレスタイトの身体が、夜空へと舞い踊る。
 全てにおいて解放されたような、一瞬の浮遊感。
 そして確りとその身を抱きしめ、彼女と共に崖の下へと落ちてゆくカーディナル。
 ――せめて安らかに……いや、二度と離さぬように、だ。
 朧に霞む桜いろの、花吹雪に導かれながら。
 そして彼の腕の中で、幸せそうにセレスタイトは笑み咲かせる。
 ――カディ、好きです。
 伝えたかった、仄かに花開くその気持ちは……願った通りの幸せな、死の先に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

照宮・篝
【神竜】まる(f09171)と

楽しい晩餐も、終わって
仮初の演技とは言え…死ぬ、のだな

まるが痛くないのがいい、血が出ないのがいい
まるが私の後を追うのも、まるを先に黄泉路へ放り出すのも、私は嫌だ
私は、まるの黄泉路を照らす泉照(よみてらす)だぞ?
振りでも、まるを独りにするようなことはしたくない

まるに抱き上げられて、私も彼の背を抱いて
少しずつ水の中へ
怖くはないぞ、寂しくもない
まるの命が終わってしまうかと思うと、それだけが無念だが
現世の一番最後と、黄泉路の一番最初に、一番近くにまるがいるなら
篝に残るのは、愛しい気持ちだけだ

沈む直前に、まると最後の口付けを
これだけ近ければ、離れなくていいな――


マレーク・グランシャール
【神竜】篝(f20484)と

自死を演じるのは容易い
いつか来る日の予行練習だと思えばいい

だが例え真似でも篝が嫌がる
置いて行かれるのも置いて行くのも嫌だ、一緒がいいと
俺も愛する者に刃を向けるのは気が引ける
ならば一緒に入水するさ

離れないようしっかり捕まっていろ
この世で添い遂げられぬなら、せめて死ぬときは同じ場所で、同じ瞬間に

愛しているぞ、篝

頭まで水に浸かる直前、深く口付けて口唇を塞ぐ
お互いの呼吸を分け合い、息が途切れても官能のうち
口付けを交わし、愛に溺れる間に死ぬなら本望

その身が決して離れぬよう、強く強く抱きしめながら誰も届かぬ愛の底まで沈んで行こう

さあ来い影朧、演技でも篝を悲しませた罪は重いぞ



 満開に咲く幻朧桜が、儚くはらりとその花弁を散らせるように。
 女神と崇められる女としがない軍人の許されぬ恋も、終焉を迎えようとしていた。
 華やかな晩餐会に、楽しいダンスタイム。先程までは、あれほど賑やかであったのに。
 やってきた桜花弁舞う庭は今、怖いほどの静寂に包まれている。
 そんな中、庭にある大きな池の前へとやって来た照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)はふと俯く。
(「楽しい晩餐も、終わって。仮初の演技とは言え……死ぬ、のだな」)
 それから見上げた視線のすぐ先――マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)を見つめる。
(「自死を演じるのは容易い。いつか来る日の予行練習だと思えばいい」)
 マレークにとって、己を殺す演技をすることに何の躊躇もない。
 ――けれど。
「まるが痛くないのがいい、血が出ないのがいい。まるが私の後を追うのも、まるを先に黄泉路へ放り出すのも、私は嫌だ」
 ……私は、まるの黄泉路を照らす泉照だぞ? と。
 例え真似事でも、マレークを独りにするようなことはしたくない。
 置いて行かれるのも置いて行くのも嫌だ、一緒がいいと……そう告げた篝へと。
「俺も愛する者に刃を向けるのは気が引ける」
 ――ならば一緒に入水するさ。
 刹那、ふわり夜空に揺れる、女神の美しい金の髪。
 マレークに抱き上げられ、篝もそれに応えるように彼の背を抱いて。
「離れないようしっかり捕まっていろ」
 花筏揺らめく池の中へとふたり、ゆっくり少しずつ歩みを進める。
「怖くはないぞ、寂しくもない」
 だって今、すぐ近くに彼がいて。これから共に、死ねるのだから。
 でも……マレークの命が終わってしまうかと思うと、それだけが無念だと篝は思うけれど。
「現世の一番最後と、黄泉路の一番最初に、一番近くにまるがいるなら。篝に残るのは、愛しい気持ちだけだ」
 そんな腕に抱いた篝に、マレークも告げる。
「この世で添い遂げられぬなら、せめて死ぬときは同じ場所で、同じ瞬間に」
 ――愛しているぞ、篝……と。
 ひやりとした水の冷たさは、死へと向かい進むたび、ふたりの混ざり合う体温まで奪おうとするけれど。
 互いに交わし合う、最後の熱。
 池の最深部へと踏み込み、沈む直前――篝の口唇を塞ぐ、マレークの口付け。
 ……これだけ近ければ、離れなくていいな――。
 瞬間、ふたりの姿が、池の中へと完全に消える。
 こうやって深く口付けていれば、お互いの呼吸を分け合えるから……息が途切れても、官能のうち。
 ――愛に溺れる間に死ぬなら本望。
 マレークは互いのその身が決して離れぬよう、腕の中にいる篝を強く強く抱きしめながら。
(「さあ来い影朧、演技でも篝を悲しませた罪は重いぞ」)
 先程、手を取り合って興じたダンスのように。ゆらり、女神の美しい金の髪が水中を踊る様を見つめつつ。
 ずぶり、深い深い池の底へと――誰も届かぬ愛の底まで、沈んで行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
クロトさん(f00472)と

僕も演技には自信あるよー
じゃあ遠慮なく♪
獲物は小さな銃
一発だけ実弾、残り空砲

……最後の晩餐だったんだよね
ちゃんと分かってるよ
ぎゅっと抱き締めて
さあ……逝こう

ぼろぼろと涙がこぼれる
背中に回した腕と銃
やはり躊躇い、肩を撃つ
次は躊躇わずに頭を
っ………。
嗚呼……父さんは、僕を殺せなかった
……貴方も僕を置いていくの?

たまらなくなって、流れるいとおしい血を啜る
とても美味しいはず、なのに
…涙で味が分からないや

自らの頭に銃を当てて、引き金を引く
愛しているよ

……
……クロトさん演技派だよね…
感情移入しすぎたよ…なんか過去を思い出したよね…
あと御馳走様♪
このまま動かないの体力勝負だよね…


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)と。

大切なのはリアリティ。
短刀は勿論本物。
迫真の名演、期待してます。遠慮なくやっちゃってくださいね?
なぁに。僕は――死にやしませんから♪

愛深く、力無く、守れもしない、父親。
演技は本気。それは自己をも騙す程。

共に逝こうといって握った刃は、
けれどあの子の膚を僅かに傷付ける事しか出来ずに。
…ごめんね。
けれど、愛しているよ。
先に逝ってしまうけれど、幻朧桜の下でまた逢える…
私は、ずっと、傍に――

……
昔取った何とやら。過去の一端。
演技、変装…騙し付け入る為の術を、友人に披露ってのは聊か複雑ではありますが。
…いえ、実弾はね?実際痛いですけど!
誘き出すまで動きませんとも。
えぇ、意地でもね



 はらり咲き誇る桜も、まるで人々を誑かす幻かのように、朧に咲いているけれど。
 猟兵たちの今宵、仮初の死を騙る。
 ――大切なのはリアリティ。
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)が握る短剣は、勿論本物。
「迫真の名演、期待してます。遠慮なくやっちゃってくださいね?」
 ……なぁに。僕は――死にやしませんから♪
 そう柔く笑んで見せるクロトに、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)も、こくり頷いて。
「僕も演技には自信あるよー。じゃあ遠慮なく♪」
 かちゃりと、小さな銃に弾をこめる。
 けれど、こめた実弾は一発だけ、残りは空砲。
「……最後の晩餐だったんだよね」
 沢山の食事に綺麗な女性、楽しかったひととき。けれどそれは、現世最後の宴。
 ニュイは名残惜し気にそう呟くも、すぐに気を取り直して。
「ちゃんと分かってるよ。さあ……逝こう」
 ぎゅっとクロトを抱き締めて、死を受け入れ与えんと得物を改めて握りしめる。
 ――愛深く、力無く、守れもしない、父親。
 いや、これは確かに演技ではあるけれど。
 本気でもあるのだ……それは、自己をも騙す程に。
 共に逝こう――そう言って握った刃の、はずだったのに。
「……ッ」
 ニュイを貫かんと振るったはずのクロトの短剣は、ただ息子の膚を僅かに傷付ける事しか出来ない。
 そしてじわり浅く走った傷からは、鮮やかな赤が滲み出るけれど。
 ぼろぼろとニュイは涙零し、ふいに背中へと回したのは腕と銃。
 けれどもいざという時になれば、やはり躊躇いが生じて
 引き金が引かれ、クロトの肩へと撃たれれば。それは実弾無き一発。
 そんなニュイの耳元で、父……クロトは紡ぐ。
「……ごめんね。けれど、愛しているよ。先に逝ってしまうけれど、幻朧桜の下でまた逢える……」
 私は、ずっと、傍に――。
 刹那、次は躊躇わずに頭へとあてられた銃の引き金が再び引かれれば。
「っ………。嗚呼……父さんは、僕を殺せなかった……貴方も僕を置いていくの?」
 こめた一発の銃弾が、クロトの頭を撃ち抜いた。
 その頭部からどくんと脈打つように流れ出る赤。
 たまらなくなって、流れるいとおしい血を啜るニュイだけれど。
 それはとても美味しいはず、なのに。
「……涙で味が分からないや」
 流れ出る血と涙で、その顔を濡らしながら。
 自らの頭に銃を当てて、引き金を引く――愛しているよ、と。
 そして父を追い、どさりと地に沈んだ。
 けれど……昔取った何とやら。これは、過去の一端。
(「演技、変装……騙し付け入る為の術を、友人に披露ってのは聊か複雑ではありますが」)
 ……いえ、実弾はね? 実際痛いですけど!
 そう声を出すわけにはいかずとも訴えるクロトに。
(「……クロトさん演技派だよね……感情移入しすぎたよ……なんか過去を思い出したよね……」)
 そしてそっと――御馳走様♪ と。
 口元をぺろりと舐めて以来、今度は逆に。
(「誘き出すまで動きませんとも。えぇ、意地でもね」)
(「このまま動かないの体力勝負だよね……」)
 はらり、ひらり、己に舞い降る桜花弁を積もらせたまま。
 今度はふたり、じっと動かずに我慢。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】
心中 一緒に死ぬ事
独り残されるのは嫌 独り残して逝くのも嫌
どこまでも一緒に
それは、きっと幸せ

ブラッドと手を繋ぎ庭を行く
綺麗な桜 いつもなら燥いでしまうけど
今はただあなたの横顔を、花色の瞳を見詰めてる

ねえ、ブラッド
以前僕に話してくれたでしょ?
食べたものは、食べた人の体の一部になって
そのまま、その人の中で生き続けるって

僕はあなたに食べられたい
僕を食べて
どこまでも、ずっと一緒に

黒の中に呑み込まれていく
抵抗なんてしない


ブラッドが海に飛び込んで沈んだらUC発動【透明化】
強く愛おしく彼を抱きしめ静かに浮上
波音に紛れて耳打ちを

僕は死なないよ……!
だってブラッド泣いちゃうからッ
ずっと、ずっと、傍にいる!


ブラッド・ブラック
【森】サンと庭へ
(落ち零れと皆が嗤った
奴隷の生活は死よりも辛い日々だった
しかし何より辛かったのは
人を喰わねば生きられぬ体になった事

誰も傷付けたくは無かった
何度も死のうとした
だが死に切る事が出来なかった)

「……お前が其れを望むなら」

人型を解き、本来の姿―サン以外には見せたくない
黒く巨大な肉塊同然の姿で向かい合う
腹を割く様縦に巨大な口を作り
多量の空気と共にサンを抱く様呑み込んだ

――サンを喰ってしまった
演技だ
しかしもし本当にサンを失ったら
サンが居ない世界に生きる価値等無い

慟哭を上げた怪物は
腹を護り断崖絶壁から海へ身を投げる

沈んだ後人型へ戻り
解放したサンと共に海面を目指す
「嗚呼、嗚呼……傍にいてくれ」



 夜空を飾る桜吹雪の中、ふわりと揺れるは、羽根の如き白い髪と翼のような羽織。
 サン・ダイヤモンド(甘い夢・f01974)はブラッド・ブラック(VULTURE・f01805)と手を繋ぎ、庭を行きながら物思いに耽る。
(「心中、一緒に死ぬ事。独り残されるのは嫌、独り残して逝くのも嫌」)
 ――どこまでも一緒に……それは、きっと幸せ。
 そんなサンの白くしなやかな手を握りながら、ブラッドも思い返していた。
 ……落ち零れと皆が嗤った奴隷の生活は死よりも辛い日々で。
(「しかし、何より辛かったのは、人を喰わねば生きられぬ体になった事」)
 ……誰も傷付けたくは無かった。だから、何度も死のうとした。
 だが――死に切る事が、出来なかった。
 そして、今宵は死ねるのだろうか。隣に在る、寵愛する彼と共に。
 ……綺麗な桜、と。
 サンは夜の庭を歩きながら、その景色に金の瞳を細める。
 いや、いつもなら燥いでしまうところだけど――今ただ見つめるのは、すぐ傍に在るその横顔と、花色の瞳。
「ねえ、ブラッド。以前僕に話してくれたでしょ? 食べたものは、食べた人の体の一部になって。そのまま、その人の中で生き続けるって」
 ふいに、静寂の夜に紡がれた言の葉。
 そして自分の姿だけが映った花色の瞳を見ながら、サンは続ける。
 ――僕はあなたに食べられたい。
「僕を食べて。どこまでも、ずっと一緒に」
「……お前が其れを望むなら」
 それに応え、ブラッドは人型の姿を解く。
 本来の姿――サン以外には見せたくないもの。
 黒く巨大な肉塊同然の姿で、ブラッドは改めてサンと向かい合って。
 腹を割く様、縦に作られるは、巨大な口を。
 そしてその口が――多量の空気と共に、サンを呑み込んだ。まるで、彼を抱く様に。
 黒の中に呑み込まれていく白。
 けれど、サンは抵抗なんてしない。喰われることを望み、受け入れる。
 ――サンを喰ってしまった。
 いや、これは自死を装う演技なのだと。そう心の内ではわかってはいるのだけれど。
 しかし、もし本当にサンを失ったら……サンが居ない世界に生きる価値等無い。
 刹那、ウオオオオォォッと怪物から上がる慟哭。
 そして腹を護るように抱えながら――怪物は、断崖絶壁から海へとその身を投げる。
 一瞬の浮遊感の後、真っ逆さまに落ちてゆく。腹の中のサンと共に――。
 瞬間、大きな衝撃と水飛沫が海面に生じて。
 発動し展開するのは、光がその姿と抱きしめた者を隠す――『秘密のveil』。
 強く愛おし気にブラッドを抱きしめ、静かに海上へと浮上すれば。
 波音に紛れ、擽るように耳打ちを。
「――僕は死なないよ……! だってブラッド泣いちゃうからッ」
 ……ずっと、ずっと、傍にいる!
 そして人型へと戻ったブラッドも、解放したサンと共に在る真暗な海を行きながら、そっと紡ぐ。
 今望むのは、以前のような死などではない。
「嗚呼、嗚呼……傍にいてくれ」
 薄紅色の桜花弁がゆらりと浮かぶ――揺蕩う漆黒の只中で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杣友・椋
リィ/f06716

自死の手段を悠々語る宝木
――ちっ、馬鹿じゃねえの
自分で命を絶って良い訳無えだろ――胸の内で言ちる
ま、影朧を誘き寄せる為なら仕方ねえ

リィの手を引き訪れたのは庭園内の池
彼女と向かい合い
愛おしげに頬を撫で、こつんと額同士を触れさせる

……リィと出逢えて本当に良かった
手を繋いで行けば、きっと来世でも逢える
この世界では許されなかったけれど、
来世では必ず君と結ばれる

演技であり台詞なのに
こんなにも心が痛いのはどうしてだろうな

そのまま彼女と手を繋ぎ、池の中へ
絡み付く水の感覚
彼女が少しでも早く逝けるよう、
もがくその身を押さえ付け
眥から溢れた涙は無限の水底へ融けた

己に谺するのは、おまえの最期の言葉


ミンリーシャン・ズォートン
椋(f19197)と

彼に手を引かれ赴いた庭の池
頬を撫でてくれる優しい手も近づく彼の顔も
涙が出るほどに愛おしい

椋が紡ぐ言葉にそっと頷き
――うん、また来世でね
涙を浮かべ微笑む
彼と飛び込む寸前
体が浮かぶ一瞬に

――椋、愛してる

恋人同士のありふれた台詞
でも私が彼に紡いだ初めての言葉と引き換えに息を溜める事が出来なくて
池に落ちた直後から苦しい
空気を代償に紡いだ言葉
それでも、言葉に出してしまったの

本能で呼吸しようともがく身体を彼が押さえてくれてる
水を飲み、遠のく意識の中であなたの悲しそうな顔が見えた

椋、泣いてるの……?
泣かないで……

最後に紡いだ私の言葉が彼にとって苦じゃないと、いいな――
そう願い
意識を手放す



 賑やかな宴の締めに、雄弁に語っていた主催者の宝木。
 自死するための手段を、さも得意げに。
(「――ちっ、馬鹿じゃねえの。自分で命を絶って良い訳無えだろ」)
 杣友・椋(涕々柩・f19197)はそう胸の内で言ちるけれど。
 ……ま、影朧を誘き寄せる為なら仕方ねえ、と。
 華やかな晩餐会が終わりを告げた後、ミンリーシャン・ズォートン(綻ぶ花人・f06716)の小さな手を引いて。
 辿り着いたのは――庭園内の池。
 舞う幻朧桜の景色の中、ふたり、向かい合って。
 そっと大きな掌が、柔らかい彼女の頬を愛おしげに撫でれば。
 こつん、と――触れさせる額同士。
 そんな彼に手を引かれ赴いた、桜花弁浮かぶ中庭の池。
 そっと優しく頬を撫でてくれる優しい手も、ぐんと近づく彼の顔も……涙が出るほどに、愛おしい。
 ミンリーシャンがそう胸に紡ぐと同時に、耳元で響く声。
「……リィと出逢えて本当に良かった」
 ――手を繋いで行けば、きっと来世でも逢える。
 そうぎゅっと改めて、その手を握りしめて。抱く想いを告げる。
「この世界では許されなかったけれど、来世では必ず君と結ばれる」
 ひらり舞い降る幻想的な桜花弁は、幻の如く朧で。
 その言葉も行動も、演技であり台詞なはずなのに。
 緑色の瞳にミンリーシャンの姿だけを映しながら、椋は思う――こんなにも心が痛いのはどうしてだろうな、って。
 来世では必ず君と結ばれる、そう椋が紡いだ言葉に、そっと頷いて。
「――うん、また来世でね」
 じわり涙で滲む視界の中、微笑んで。
 彼と飛び込む寸前、体が浮かぶ一瞬紡がれる言の葉。
 ――椋、愛してる。
 それは、恋人同士のありふれた台詞。
 でもミンリーシャンが彼へと紡いだ初めての言葉と引き換えに……息を溜める事が、出来なくて。
 ……池に落ちた直後から、苦しい。
 告げた想いの言葉は空気を代償に、そっと紡がれたけれども。
 例え、呼吸が出来なくて、苦しくても――。
(「それでも、言葉に出してしまったの」)
 そして絡み付く水の感覚が、静かに身体を引き摺り込み、死へと誘ってくれるのだけれど。
 それでも……彼女が少しでも早く逝けるようにと。
 確りと手を繋いだまま、椋はもがくミンリーシャンの身を押さえ付ける。
 本能で呼吸しようともがく身体を、押さえてくれてる彼。
 沢山の水を飲み、遠のく意識の中で彼女が見たもの――それは、自分を見つめる、悲しそうな顔。
「――椋、泣いてるの……?」
 彼の眥からふいに溢れた雫。
 それは零れ落ち、漆黒の無限の水底へと融けてゆく。
 そしてミンリーシャンが彼へと紡いだ、最後の言葉。
 ――泣かないで……。
 それが、彼にとって苦じゃないと、いいな――そう願うと同時にふっと、暗闇へと落ちてゆく意識。
 椋も、先に逝った彼女の後に続きながら。
 その心に響き何度も谺するのは――ミンリーシャンが己へと告げた、最期の言葉。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴラディラウス・アルデバラン
剣イスティルをすらりと抜き
ゆるり瞬き目礼とする
嗚呼、互いにな。黒羽(f10471)

先ずは出方を待ち
相手の動きや剣捌きをじっくり味わう防戦気味

充分に味わったならば
ある瞬間から攻撃も織り交ぜ
苛烈に
容赦なく斬り、突く

此処で死ぬ気は更々なくとも
手合わせ死合いは愉しいもの
心は昂り、
怒涛の連続攻撃など仕掛けもするが
表に出るのは薄らと笑う程度のそれ
判断力や観察眼を失うわけでもなく
寧ろより一層冴えてゆく剣で

――嗚呼、
お前、もしや

終盤
闘気の、僅かな色の違い
眼の色の、僅かな…
嘗て駆けた戦場、幾つも渡った死線
幾人も見てきた、戦士達
稀に居たなと思い出す

そういう類いか
細める紫

利用されていい気はしないが
剣振るうは最後まで


華折・黒羽
自分を殺したい
大切な人達を目の前で死なせ
想い人も救えず
何故自分だけが生きているのかと
だからこそ

良い死合いにしましょう
ヴラディラウス(f13849)さん

一礼の後に剣と成した屠構え
相手も構えたのを見れば
強く地を蹴り一気に間合いへ飛びこもうと

駆けた勢いのまま横薙ぎ
様子見と気付くも剣戟防がれようと攻撃は止めず
一転防戦へと変われば武器で受けながらカウンター
己の命より優先する一撃を重ね
然し礼を持って相手の命も本気で狙う

呆れか怒りか細められた視線に苦笑を隠し浮かべ
切り替え打ち込む渾身の一閃

彼女にのみ見える眸に垣間見せたのは生への灯
“死へ至るまで力の限り”は今宵限り

──生きると約束したから
俺は死を、選ばない



 夜空に満開に咲き誇る幻朧桜と、淡く降り注ぐ月光が見守る下で。
 ――自分を殺したい。
 華折・黒羽(掬折・f10471)は微かに首を横に振る。
 ……大切な人達を目の前で死なせ、想い人も救えず――何故自分だけが生きているのか、と。
 でも、だからこそ。
「良い死合いにしましょう、ヴラディラウスさん」
「嗚呼、互いにな。黒羽」
 刹那すらりと抜かれるのは、刀身の彫刻が美しい細身の剣。
 黒羽も一礼の後、黒剣と成した屠を構えれば。
 ゆるり瞬いたヴラディラウス・アルデバラン(Uranus・f13849)も、それを目礼とし刃を構える。
 瞬間、一気に間合いへと飛びこもうと、強く地を蹴る黒羽。
 逆にヴラディラウスは、先ずは出方を待ち、黒羽の動きや剣捌きをじっくり味わうべく防戦気味に立ち回る。
 横薙ぎに放たれた黒の斬撃を、灼熱感さえ感じる氷雪の白が弾き返し。
 相手が様子見と気付くも、ぐっと前へと踏み込み、さらに攻撃を重ねる黒羽。
 その重さを確かめるかのように、ヴラディラウスは真っ向から、掲げたイスティルで向けられた剣戟を受け止めて。
 防戦から一変、その刃を今度は黒羽へと向けた。
 苛烈に――容赦なく斬り、突く。
 そんな防戦へと展開が変われば、繰り出される鋭撃を屠で受け止め、反撃の刃を返して。
 己の命より優先する一撃を重ねんと黒剣を振るう黒羽。
 然し礼を持って――本気で狙うは、相手の命。
 けれど、ヴラディラウスは此処で死ぬ気は更々ない。
 それでも――手合わせ死合いは愉しいもの。
 心の昂りのまま、怒涛の連撃を仕掛けもするけれど。
 表に出るのは、薄らと笑う程度のそれ。
 心躍り、血が沸き騒いでも、判断力や観察眼を失うわけでもなく……いや寧ろ、より一層冴えてゆく剣筋。
 そんな愉しい死合いのさなか。
 ――嗚呼、お前、もしや。
 ヴラディラウスから零れ落ちたのは、そんな呟き。
 向かってくる黒羽のその、闘気の僅かな色の違い。眼の色の、僅かな……。
(「嗚呼、稀に居たな」)
 嘗て駆けた戦場、幾つも渡った死線……幾人も見てきた戦士達の中に、眼前の黒羽と同じものを宿す者がいたことを思い出す。
 そういう類いか、と――呆れか怒りか。
 そんな自分を映す紫の瞳を細めた彼女に、黒羽は苦笑を隠し浮かべて。
 ふっと切り替え打ち込むは、渾身の一閃。
 彼女にのみ見える眸に垣間見せたのは――生への灯。
 “死へ至るまで力の限り”は今宵限り。
 ──生きると約束したから。
 だから……俺は死を、選ばない。
 そして、利用されるのはいい気はしないが。
 ヴラディラウスも黒羽と同時に、冴えた一撃を繰り出す。
 刹那――白と黒の閃きが交わり合い、桜舞う夜空に上がった赤のいろは……果たして、誰のものか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
彼が手を引くままに歩いていく
楽しげに笑う姿は、いつも出掛ける時と変わらない
着いた先が美しい桜の下なのだから尚更で

おかしくはないですよ
現に私も貴方に釣られてしまっています
これからは共に居られるのですから、何を恐れるものがあるのか
私も、後悔はありませんよ

これは本心
自死で無かったとしても共に居られるのならば
他に望むもの等、きっと無いのでしょう

着いた先に彼が差し出したのは小さな瓶
此処に着いてやる事は決まっていましたが
楽な死の方が少ないのでしょうな

怯みませんよ
ただ……貴方が苦しむのではと思うと少し辛いです
だから、私が先に飲みます
苦しむような毒では無いと証明を

……お待ちしておりますよ、倫太郎殿


篝・倫太郎
【華禱】
夜彦、夜彦
こっちこっち

そんな風に笑って繋いだ手を引いて
庭に咲く桜の中でも見事に咲いてる樹の許へ

これから自死するってのに笑ってちゃおかしいか?
でも、これからあんたとずっと一緒に居られるんだ
嬉しくなっても仕方ないだろ?

装っての言葉だけど
装ってるのは最初だけ
それ以外は全部本当の事だし本当の気持ちだから

樹へと辿り着いたら
掌に載せた小瓶を差し出して

猛毒、だって

……ちょっと、怯んだ?
なんて嘘だよ
多分、怯んでるのは俺の方――

夜彦の言葉に嬉しくなって笑う

ぅん……すぐに逝くから
先に服毒した夜彦の身体を抱き留めて、抱きしめて
残った毒を呷る

樹の根元に腰を落として
繋いだ手は離さないで

一緒に生きたかったな、夜彦



 いつも通り繋いだ手は、混ざり合う体温であたたかくて。
 夜彦、夜彦、こっちこっち――そう手を引く篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、楽し気に笑っていた。
 見上げれば、夜空に見事に咲く幻朧桜。
 まるで共に花見を楽しみにきたかのような、何らいつも出掛ける時と変わらぬ様子の倫太郎。
 着いた先が美しい桜の下なのだから――尚更。
 そう彼に手を引かれながら思う月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に、倫太郎は向けた琥珀を細め紡ぐ。
「これから自死するってのに笑ってちゃおかしいか?」
 ふたりがやって来たのは、共に自ら命を絶つための死に場所。
 けれど、倫太郎は笑み絶やさず続ける。
「でも、これからあんたとずっと一緒に居られるんだ。嬉しくなっても仕方ないだろ?」
 これは……演技、装っての言葉なのだけれど。
 装ってるのは最初だけ。それ以外は全部本当の事だし、本当の気持ちだから。
 そう言った倫太郎に、藍色の髪をふわり揺らして。
 小さく首を横に降り、夜彦は倫太郎を見つめる。
「おかしくはないですよ。現に私も貴方に釣られてしまっています」
 彼と同じ様に、柔い笑みをその端正な顔に浮かべながら。
 夜彦も勿論、その胸に抱くは、倫太郎と同じ気持ち。
 ――これからは共に居られるのですから、何を恐れるものがあるのか。
「私も、後悔はありませんよ」
 紡いだ言葉は、芝居の台詞などではなく――本心。
「自死で無かったとしても、共に居られるのならば……他に望むもの等、きっと無いのでしょう」
 そして辿り着いたふたりの死地は、庭に咲き誇る桜の中でも一等見事に咲き誇る大樹の下。
 桜舞う中、倫太郎が差し出すのは、掌に乗せた小瓶。
 ――猛毒、だって……と。
 けれども此処に辿り着いてやる事は、決まっているから。
「楽な死の方が少ないのでしょうな」
「……ちょっと、怯んだ?」
 そうちらりと倫太郎は夜彦に探る様な視線を向けるけれど。
 なんて嘘だよ、って小さく笑って続ける。
 ……多分、怯んでるのは俺の方――って。
 そんな倫太郎を見つめる緑色の瞳を、今度は夜彦が柔く細めて。
「怯みませんよ。ただ……貴方が苦しむのではと思うと少し辛いです」
 ――だから、私が先に飲みます。
 そう彼の掌の上の小瓶を、そっと手に取る。
 苦しむような毒では無いと……彼へとこの身をもって、証明するために。
「……お待ちしておりますよ、倫太郎殿」
「ぅん……すぐに逝くから」
 最後に紡がれた夜彦の言葉に、倫太郎は嬉しくなって。
 先に旅立つ彼を、笑顔で送る。
 刹那、くいっと小瓶の半分の量をまずは夜彦が口にすれば――桜舞う夜空にしなやかに踊る、藍色の髪。
 倫太郎は崩れ落ちるその身に手を伸ばし、大切に抱き留めて、抱きしめて。
 彼が待つ場所へ共に――今いくから、と。
 小瓶に揺れる、残った毒を呷った。
 霞む視線は、この世界に咲き誇る幻のような朧の桜の花霞のせいか。
 いや……それは、死出の時を告げる合図。
 樹の根元に腰を落とし、膝上に流れ広がる藍色の髪をそっと撫でてから。
 繋いだ手は離さないまま――寄り添うように、ずるりと倫太郎の身体がその上に重なって。
 桜花弁のいろを降り積もらせながら、最後の一瞬、倫太郎はいつも通り笑う。
 ……一緒に生きたかったな、夜彦、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
刻(f06028)と

……いっぺん死んでみる?
などと首を傾げて至極真面目に
彼の姿を眺めて
俺が先か、お前が先か
いい機会だから実力勝負と
洒落こもうぜ

得物は燿夜のみ
彼の手札を識るからこそ
俺をどう殺してくれるのか
……ぞくぞくする

地を蹴り一気に間合い詰め
刻の喉笛目掛けて切っ先突き刺し
首の赤紐を指先で引く
なあ、此処に本物の赫色、刻む?
きっと綺麗
雪に鮮血が飛沫くようで
反撃の首を絞める力の強さに
苦痛は隠さずとも
口元は弧を描く
…絞め痕似合う?

終わりは一瞬、少しの静寂
互いにすれ違った先、身体がぐらりと傾き血に染まるのが解る

しぬのはこわくない
けれど、こんなに愉しい殺し合いが終わる虚無感
落ちゆく前、手を伸ばしたまま


飛白・刻
千鶴(f00683)と

何の枷なく殺り合えるとは
それは愉しい機会ではなかろうか
加減知らずの真剣勝負といこうか

お前が死ぬんだろ?
煽り言葉にはままを返し

こちらもひとつ朧月を
その刀でさえもこの場おいては
いい相手でなかろうか

お子様相手だ、そんくらい付けさせてやるよ
喉元への挑発を物ともせず
二筋目の赫い雫を首に這わせたまま

代わりといっちゃなんだが
お前も痕付けたら似合うんじゃねえか?
態と間合いを詰めては刀無き手で首絞め
適当な所で離す
その人形のような顔が歪むを愉しもうかと

そこからは刀交えの斬り合いと
既にどちらの赫かもわからずに
何度目かもわからぬ対峙の末に、

憎悪でも復讐でもなく
純粋な興味を味わいながら意識は朧へと



 桜の花は、此処だけでなく別の世界でも咲き誇っているけれど。
 夜の空を舞う幻の如き朧気なこの世界の桜花は、どこか人を誑かすような、蠱惑ないろを孕んでいるような気がして。
 降り注ぐ月光が、最期に舞うに相応しい舞台を、柔らかく静かに照らしている。
「……いっぺん死んでみる?」
 昏い夜空の如き髪をそっと揺らし首を傾げて。
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)が紡いだその言の葉は、至極真面目。
 そして昏い紫を湛える瞳で、眼前の飛白・刻(if・f06028)の姿を眺めて。
「俺が先か、お前が先か。いい機会だから実力勝負と洒落こもうぜ」
「加減知らずの真剣勝負といこうか」
 ――お前が死ぬんだろ?
 煽る様に投げられれば、刻が返すはままな言葉。
 でもやはり、千鶴と同じで。
 何の枷なく殺り合えるとは、それは愉しい機会ではなかろうか――そう藍色の瞳を細める。
 千鶴が握る得物は今宵に似合いの、月冴ゆる錵が耀く血染め桜の打刀。
 こちらもひとつ、と刻が構えるは朧月。
 その刀でさえもこの場おいてはいい相手でなかろうか、とそう瞳細める刻を見遣り、千鶴は思う。
(「彼の手札を識るからこそ、俺をどう殺してくれるのか」)
 ……ぞくぞくする、と。
 そしてぐっと燿夜握り地を蹴って、一気に間合いを詰めれば。
 その白き喉笛目掛け切っ先を突き刺し、首の赤紐を伸ばした指先でくいっと引いて千鶴は笑う。
「なあ、此処に本物の赫色、刻む?」
 ……きっと綺麗、雪に鮮血が飛沫くようで。
 冷え色の首筋に引かれた赫色に飛沫くは、狂い咲く鮮やかな華。
「お子様相手だ、そんくらい付けさせてやるよ」
 刻はそんな喉元への挑発を物ともせず、二筋目の赫い雫を首に這わせたまま、ふっと微かに笑み咲かせて。
「代わりといっちゃなんだが、お前も痕付けたら似合うんじゃねえか?」
「……ッ!」
 態と間合いを詰めて伸ばされたのは、白く細い首を粗暴に掴む刀無き手。
 ぎりっと両手で握るその手に力込め、人形のようなその顔に宿るいろを刻は愉しんで。
 苦痛のいろは隠さずとも、口元に弧を描いて。
 かはっと小さく咽るも、適当な所で手を離した彼へと紡ぐ千鶴。
「……絞め痕似合う?」
 そんなふたりの加減知らずの真剣勝負は、刀交えの斬り合いへと変わって。
 夜空に舞うのは桜花弁の薄紅と、もうどちらのものかも知れぬ赫の飛沫。
 そして――何度に渡り刃交わらせたか、それすらもわからぬ対峙の末。
 終わりは、一瞬。
 互いにすれ違った先、訪れるは少しの静寂。
 刹那、同時にぐらりと大きく傾き、じわりと血に染まりゆく身体。
 そんな己の熱く脈打つ赫のいろを感じながら、花霞に攫われるように視界が歪んで。
 憎悪でも復讐でもなく、純粋な興味を味わいながら――刻の意識は朧へと。
 ……しぬのはこわくない。
 けれど、千鶴の心に生じる感情は、こんなに愉しい殺し合いが終わるという虚無感。
 そしてぐるりと桜色の世界が廻り、薄紅の絨毯敷かれた地へと崩れ落ちる。
 落ちゆく前、桜空に照る月へと揺蕩わせたその手を、伸ばしたまま。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
姿はドレスのままで

二人きりになれる部屋へ
貰ってきた酒はブランデーか?
星明かりに翳したら輝いていて綺麗だと思う
ふふ、一緒に飲むのは初めてだったな
でもこれ以上ないほどに思い出として忘れられない、最後に相応しいと思わないか?

そんな綺麗な酒に毒の薬を入れてかき混ぜて
殺してしまうなら剣で、とも思うが痛くない方がいいんだろう?

毒の酒を飲んでから、カガリにも口移しで飲ませて
口の端から零れるのも構わずに与え続けてそのままベッドに押し倒して
舌が痺れるのは度数があるからか薬のせいか
抱きしめる彼が可愛いと、愛おしいと思いながら頭を撫でて
うわ言のように言葉を交わしながら眠ってしまおう


出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

洋館の一室、窓から桜が見える部屋がいい
灯りは付けずに、星明りへ酒瓶を翳せば、蜜色にきらきらと
誕生日を迎えて初めて、二人で一緒に飲む酒が、こうなるとは
(思わず苦笑)
…死を前に、最初で最後の、か
最後でない方がいいが。これ以上特別な酒も無い、かな

ステラの口から直接、薬の入った酒を飲む
飲み切れず零しても、気にせずベッドへ倒れ込んで
とてもきつい、痺れるような酒だが
ベッドもステラも、ふわふわとしていて、とても心地がいい

腕に閉じ込めて、眠ってしまうまでの間
名前を呼んで、置いて行くなよ、とか、まだ起きてるか、とか
他愛のない話をして
窓から桜が舞い込む頃には、二人でおやすみ、してしまおう



 月の輝く夜空に、その幻の如き朧の咲く桜は良く映えていて。
 ふたりがいる洋館の一室から臨む景色も、満開の桜が美しい。
 いや、窓から桜が見える部屋がいいと所望したのは、出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)。
 詰襟の青紫のドレスを纏ったままのステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)と、最期は二人きりになれる場所へ。
「貰ってきた酒はブランデーか?」
 ゆらり揺れるその蜜色を星明かりに翳せば――キラキラと深い琥珀に耀く数多の星々。
「ふふ、一緒に飲むのは初めてだったな」
「誕生日を迎えて初めて、二人で一緒に飲む酒が、こうなるとは」
 青星の瞳にも星の煌めき纏う蜜色を宿し笑むステラに、カガリは思わず苦笑するけれど。
「でもこれ以上ないほどに思い出として忘れられない、最後に相応しいと思わないか?」
「……死を前に、最初で最後の、か」
 やはり、最後でない方がいいけれど。カガリは紫の瞳をふと細める。
 だが……これ以上特別な酒も無い、かな、と。
 そんな綺麗な酒の中に、毒があるという薬を入れてくるりかき混ぜてから。
 ステラはカガリを見上げ、そして訊ねる。
「殺してしまうなら剣で、とも思うが痛くない方がいいんだろう?」
 怖いのも痛いのも嫌だなぁと、自分は結構臆病なのだと、そう言っていた彼の言の葉を思い返しながら。
 揺れる毒入りのブランデーをステラは口に含んで。
「ん、ステラ……っ」
 飲みきれずカガリの唇の端から、つうっと蜜色の毒が零れ落ちるけれど。
 それも構わずに、ステラは彼へと甘美なる味を与え続けて。
 どさりと、ベッドへと倒れ込む。
 ――とてもきつい、痺れるような酒。
 けれど……ベッドもステラも、ふわふわとしていて、とても心地がいい……。
 カガリはぐるりと回る世界に身を委ねて。
 舌が痺れるのは度数があるからか薬のせいか――毒入りブランデーを同じ様に呷るステラ。
「……ステラ、ステラ……まだ、起きてるか?」
「ああ……此処にいるよ、カガリ」
「カガリを……置いて、いくなよ……」
 朧に揺れる意識の中、最期まで、他愛のない会話を交わしながら。
 ぎゅっとステラを抱きしめ、その腕に閉じ込めるカガリ。
 そんな彼を可愛いと……愛おしいと、そう思いながら。
 そっとステラが頭を撫でてあげれば、うわ言のように、ステラ、ステラ……と夢見心地に名を呼ぶカガリ。
 そして――窓からひらり舞い込んできた桜のひとひらが、寄り添うように眠るふたりの上に、そっと重なる。
 桜夜に降る月光に照らされながら……二人でおやすみ、した後に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
望む物でも、愛しい存在にと
随分と惨い事をさせる物だ
それ程の陶酔、なのか
――最早、羨望も抱けないし
活かしたくもないなあ、此は

プロットから選ぶ手段
手に取るのは、短剣
前に前に、ダークセイヴァーで
救えぬ人の臓を刺して
命ひとつ、この手で終えたから
“後追う”ならば、此が良いだろう

贖罪の心算では無いさ
唯々本当に、僕の願う通り
苦しませずにと出来たのか
気になって、しまって

躊躇わない様、一気に
腹へと深く、刃を埋めてゆく
耐性を以てしても、抉る痛みに
――ああ、と嘆く様に呻いて

矢張り、至らなかったかも、な

胸に滲み出す罪悪感に、
『自死』が近い物となる様で苦く笑う
けれど、結局、追えも終えもしないから
墓前へまた、謝りに――、



 窓の外を見遣れば、そこには満開に咲く幻朧桜が。
 そして、最後の晩餐で耳にしたこの物語の今後の展開に、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、そっと首を横に振る。
「望む物でも、愛しい存在にと。随分と惨い事をさせる物だ」
 それ程の陶酔、なのか。そうも思うけれど。
 でも――最早、羨望も抱けないし、活かしたくもないなあ、此は、と。
 そう独り言ちながらも、ライラックは己の物語のプロットから選ぶ――己が死ぬための手段を。
 そしてふと手に取ったのは、短剣。
 同時に蘇るは、前に見た、ダークセイヴァーの世界の風景。
「――“後追う”ならば、此が良いだろう」
 前に前に、救えぬ人の臓を刺して――命ひとつ、この手で終えたから。
(「贖罪の心算では無いさ。唯々本当に、僕の願う通り、苦しませずにと出来たのか」」)
 ……気になって、しまって、と。
 己の身をもってして、それを試してみるライラック。
 降り注ぐ月光が、ひらり幽玄の夜へと舞う桜花弁と握る刃を閃き照らして。
 躊躇わない様、一気に……腹へと深く深く、刃を埋めてゆく。
「……っ」
 じわりと急速に広がる赤のいろ。
 そして耐性を以てしても、抉るような痛みに――ああ、と。
 呻き落とされた呟きに宿るその彩りは、嘆き。
「――矢張り、至らなかったかも、な」
 みるみる己の身を染めていく、赤のいろなんかよりも。
 ライラックの胸に滲み出すのは、罪悪感。
 そして苦く笑う――『自死』が近い物となる様で、と。
 けれど、結局、追えも終えもしないから。
 ……墓前へまた、謝りに――、
 刹那、くらりと桜色の世界が廻った後、今度は一気に暗転する。
 己から溢れる赤に溺れて、そう言の葉を紡いだのを、最期に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

織銀・有士郎
自殺志願者たちの理由を聞く限り、まだやり直しできる者が大半だったからな……死に損なった事で生きる希望に繋がってくれれば良いが。
ふむ、敷地内なら問題ないという事だから場所を桜の木がありそうな中庭に移すか。

「さて、と」
取り出したるは一本の酒。
無論ただの酒ではない。常人が飲めば死に至る強烈すぎる奴だ。
まぁ化物に近い猟兵なら耐えられると思うが……。
「桜の下、一杯の酒を楽しみながら死に至る……我ながら贅沢な死に際だ」
実際死ぬ時もこう静かであれば良いが……猟兵である以上、難しいか。

――意識が沈む間際、懐かしいような記憶の断片を見た気がする。
昔、親しい誰かとこうして一緒に酒を飲んでいたような……?



 夜桜舞う広い庭をゆっくりと歩きながら。
 織銀・有士郎(織りなす銀の一振り・f17872)が思い返すは、先程の最後の晩餐。
 あの晩餐会に参加していた一般人は皆、自殺志願者だという。
「自殺志願者たちの理由を聞く限り、まだやり直しできる者が大半だったからな……」
 けれど猟兵たちの介入によって、そんな志願者たちの死への願いは叶わなかったけれど。
 話を聞けば、まだ十分やり直しできるような境遇や心境の者たちが多かったから。
「死に損なった事で生きる希望に繋がってくれれば良いが」
 死ねなかったことで、もう一度よく考え直して。
 死ではなく、生きることを選択して欲しいと……そう願う。
 それからふときょろり、周囲を見回して。
「ふむ、敷地内なら問題ないという事だから場所を桜の木がありそうな中庭に移すか」
 その足を、桜咲き誇る中庭へと向ける有士郎。
 そして満開に咲いた桜の樹の下に、腰を下ろして。
「さて、と」
 取り出したるは、一本の酒。
 月と桜を見ながら酒盛りと洒落込もう……というのも、強ち間違ってはいないが。
 注ぐ酒は、無論ただの酒ではない。常人が飲めば死に至るほど強烈すぎるものだ。
 ――まぁ化物に近い猟兵なら耐えられると思うが……。
 有士郎はそう思いはするものの、今回の目的は『自死』を装うこと。
 いや、本気でやらなければ敵も出現しないかもしれないから。
 ゆらりおもむろに杯に振ってきた花弁を乗せた水面を揺らしながらも。
 ふともう一度幻朧桜を見上げれば、映す赤い瞳にも舞う桜吹雪が。
「桜の下、一杯の酒を楽しみながら死に至る……我ながら贅沢な死に際だ」
 実際死ぬ時もこう静かであれば良いが……そう有士郎は呟くけれど。
 ……猟兵である以上、難しいか。
 そう思うと同時に、くいっと酒を口にすれば。
 まるで花霞に包まれたかのように、大きく揺らぐ風景。
 そして――意識が沈む間際、有士郎が見たような気がするのは、懐かしいような記憶の断片。
(「昔、親しい誰かとこうして一緒に酒を飲んでいたような……?」)
 けれど、それを思い出す前に……桜の絨毯敷かれた地へとどさり、崩れ落ちる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水標・悠里
用意されたものには手を着けず、自らの持つ短刀で
一人で逝きましょう

最期は一人がいい
誰かに悟られるでも無く、忘れ去られてるまで見つからないように
そんな我が儘を通せる程ではありませんので、せめて一息に死ねればと
崖の上に立ち、一気に喉を引裂いて
最期は海に落ちて藻屑となれればそれでいい
元の形が分からない程、変わってしまえば良い

ああでも今回は
私はまた死に損なうのですね

きっと穏やかだろうと思っていました
思い残すことが無ければ、ただ静かに凪いだ心のまま逝けるのだと
でもどうして、今の私には未練がある
繋いでしまった縁が
涙が出る程断ち切れない思いがある

全てを捨てきれなかった
どうして、出来なかった。それが悲しいのです



 華やかな晩餐会の余韻に似合わぬ、ずらりと並んだ道具。
 それは参加者が臨む『自死』を叶えるべく集められたもの。
 けれど、水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)は、用意されたものには手を着けずに。
 切れ味鋭き鬼の血で打ったという自らの短刀で、一人逝かんとしていた。
 今の悠里は、生きている事に何かを見出せるとは思えない。
 では死ねば、満たされる何かがあるのだろうか。
 そもそも、自分は死にたいのか――。
 ただ、これだけははっきりと決めている――最期は一人がいい。
「誰かに悟られるでも無く、忘れ去られてるまで見つからないように……そんな我が儘を通せる程ではありませんので、せめて一息に死ねればと」
 吹き付ける海風がまるでその背中を押すかのように、舞う桜花弁と漆黒の髪を大きく揺らして。
 海を眼下に臨む崖の上に立ち、一気に喉を引裂く。
 そして鮮やかな赤を飛沫かせながら、こう願ってやまない。
 ――最期は海に落ちて藻屑となれればそれでいい。
 ――元の形が分からない程、変わってしまえば良い……。
 けれど……ああ、と零れる声。
(「ああでも今回は……私はまた死に損なうのですね」)
 そして一瞬の浮遊感の後、真っ暗な海へと落ちていきながらも思う。
(「きっと穏やかだろうと思っていました。思い残すことが無ければ、ただ静かに凪いだ心のまま逝けるのだと」)
 ――でもどうして、今の私には未練がある、と。
 その未練は、繋いでしまった縁。
 繋いで、そして涙が出る程、断ち切れない思いがある……。
 それがなければ安らかに未練なく、死に損なうこともなく、逝けたかもしれないのに。
 けれど――自分は、全てを捨てきれなかった。
 桜花弁と共に散る様に、赤を咲かせ海へと落ちていきながら、悠里は最後に思う。
 ――どうして、出来なかった。それが悲しいのです……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鼠ヶ山・イル
酒も食事も花見もいい経験だったなァ
そして最期は自分で始末を付けてってな
あーあ、オレもこういう終り方がいいね
総てが自分の望み通り、欲の通りなら本当に気分が善いだろうよ

な、オレも覚悟はできてるんだ
短剣を借りて己の喉笛を掻き切る
気管に達するまで念入りに引き裂いたら、血飛沫が水芸のように飛ぶだろう
そしてドレスを血に染めて、ひゅうひゅう間抜けに鳴る喉の中身が見えるだろ

──嗚呼それは、いつかのあの子のように

こうまですればオレはきっと死ぬ
死なない?ならきちんと、殺してくれよ。介添人
オレの欲望に最期まで沿ってくれ



 どのような趣旨のものかなんて、些細な話。
「酒も食事も花見もいい経験だったなァ」
 賑やかで華やかだった晩餐会も、もう終わりを告げたけれど。
 目一杯満喫した余韻を楽しむように、鼠ヶ山・イル(アヴァリティアの淵・f00273)は青い瞳を細め笑って。
「そして最期は自分で始末を付けてってな」
 次は、これから迎えるひとときに、興味を移す。
 己の人生の幕引きをどんな方法で行うか。
 それを、自分の好きなように決めて死ねるというのだから。
「あーあ、オレもこういう終り方がいいね」
 ――総てが自分の望み通り、欲の通りなら本当に気分が善いだろうよ、と。
 イルは並べられた沢山の道具の中から、短剣を選んで手にして。
「な、オレも覚悟はできてるんだ」
 そう紡ぎ笑んだ刹那――借りた刃で躊躇なく、己の喉笛を掻き切った。
 血飛沫を派手に上げ、大輪の赤の華を大胆なドレスに咲かせている今の自分は、どうなのか。
 それは、自分では見ることはできないけれど――イルは、脳裏に蘇る姿と今の己を重ねる。
 ……気管に達するまで念入りに引き裂いたら、血飛沫が水芸のように飛ぶだろう。
 ……そしてドレスを血に染めて、ひゅうひゅう間抜けに鳴る喉の中身が見えるだろう。

 ──嗚呼それは、いつかのあの子のように。

 こうまですればオレはきっと死ぬ――そう、一瞬だけ思うけれど。
(「死なない? ならきちんと、殺してくれよ。介添人」)
 イルは己の飛沫かせた赤に染まりながら、地へと倒れ落ちつつも所望せずにはいられない。
 総てが自分の望み通り、欲の通りに……オレの欲望に最期まで沿ってくれ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
※高い所からの墜落
窓枠に腰掛けて暗い室内を見ている

……先程話を聞いていたときに
死にたいんじゃない、楽になりたいんだ
と言っていた人がいました。

死にたいくらい辛い…自分が思い出すのはやはり主一家の事
もし…ここから落ちたら考える事もなくなるんでしょうか…?
そのまま何も無い空間へ寄りかかるように窓の外へ

※精霊達が助けようと風で救助
えっ、何が!?…わあっ!
受け身を取り損ねて痛い上に、局地的に嵐なんですが落ちついてください!(慌てふためく精霊達がおぼろげながら見える)
…もしかして本当に私が自殺すると想いましたか?
ごめんなさい心配掛けましたね。大丈夫ですよ

辛くても、やっぱり消してしまいたくないんです…



 はらりひらりと、月の照る夜空を舞う幻朧桜を、まるで背負うかのように。
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は窓枠に腰掛け、暗い室内を見ていた。
 そして思い返すは、先程まで催されていた、華やかな晩餐会。
 いや……華やかで賑やかな宴は、死を望む者たちに用意された最後の晩餐。
 勿論、参加していた者は皆、自殺志願者であったのだけれど。
(「……先程話を聞いていたときに、死にたいんじゃない、楽になりたいんだ、と言っていた人がいました」)
 ――死にたいくらい辛い。
 そう聞いてカイが思い出してしまうのは……やはり、主一家の事。
 妻と息子亡き後、姿を消した主。
 脳裏に焼き付いたその姿を追うかの様に、夜に散る桜のひとひらへと視線を巡らせてから。
 カイは、その心に思う。
 ――もし……ここから落ちたら考える事もなくなるんでしょうか……?
 刹那、ふっとその身を寄りかからせるは、何も無い空間――窓の外の、桜舞う虚空。
 このまま真っ逆さまに落ちていけば、きっと――。
 そう一瞬感じた浮遊感に身を委ね、桜花弁と一緒に、漆黒の髪を夜空へと舞わせ躍らせるけれど。
「えっ、何が!? ……わあっ!」
 突如吹き荒れたのは、桜吹雪舞い上がらせる風。
 精霊たちが慌てたように吹かせた嵐の如き風が、カイの身体を、花弁もろとも舞い上げて。
 思わぬ風の救助に受け身を取り損ね、豪快に地に叩きつけられながら。
(「……局地的に嵐なんですが、落ちついてください!」)
 心の中で叫びつつも、カイはわたわたと慌てふためく精霊たちを朧げながらに見つめ、青の瞳を細める。
(「……もしかして本当に私が自殺すると想いましたか?」)
 ……ごめんなさい心配掛けましたね。大丈夫ですよ、と。
 降り積もる桜色に溺れる様に埋もれ、薄れゆく意識の中を揺蕩いつつも、カイは思うのだった。
 ――辛くても、やっぱり消してしまいたくないんです……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

僕と紫崎君は客室で服毒を
提案理由が危ないからじゃなく痛いから
なのがなんとなく彼らしい

ベッドに腰掛け
小瓶の毒を口元に近づけ…

うぅ…覚悟はしてたけど
いざ死を目の前にすると怖いものがあるね…
わ、わかってるよぅ
紫崎君も同じ物飲むんだから、覚悟するなら今のうちに

え…

反転する視界
背中に感じる柔らかな布の感触
口内に流し込まれるとろりとした苦味
間近に感じる彼の視線に、状況を理解して
普通恋人でもない相手にそういう事するか馬鹿宗田
なんて事を考える間にも意識は朧げになっていくけれど

そのたった一瞬で
僕の震えが止まったのは
恐怖が安堵に変わったのは
どうしてだろうか

彼になら…殺されてもいいと
僕は確かに、そう思った


紫崎・宗田
【狼兎】

死に場所くらい選んでもいいだろ
床に倒れると痛ェからな
個室行くぞ、お嬢様

それぞれ毒瓶を持って個室へ
チビが服毒チャレンジしてる間
俺は横で小瓶を片手で弄びながら様子観察

おい、怖いのは分かったが時間かけ過ぎだろ
余計に決意が揺らぐだけだぞ
あぁ…つかこれ猛毒なら
わざわざ一人一本飲まんでもいいのか

自分の分は横に置き、チビの毒を奪う
半分は自分で飲み干し
残りの半分を口に含んでからチビをベッドに押し倒し
口移しで飲ませてやる

一人で死のうとするから怖ェんだろ
テメェの寂しがりな性格くらいもうわかってんだよ
これなら確実に一緒だろ
安心して死んどけ

後で説教来るだろうとは思いつつ
意識を保てる間は髪を梳くように撫でてやる



 窓の外をふと見れば、夜空にはらりと舞い散る幻朧桜。
 ――死に場所くらい選んでもいいだろ。
「床に倒れると痛ェからな。個室行くぞ、お嬢様」
 そう言った紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)が選んだ場所は、館にいくつかある客室のひとつ。
 その場所を選んだ理由が、危ないからじゃなく痛いから、というのがなんとなく彼らしい……と。
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はそう思いながら、やって来た客室のベッドの上に腰掛けた。
 ぎし、と座れば微かに軋む柔らかなベッドの上で、澪が手にしたのは毒の入った小瓶。
 同じものが、宗田の手にも握られている。
 そう、ふたりが選択した死の手段は――服毒。
 澪が小瓶の蓋を開け、口元へと近づけんとする間、その隣で毒の小瓶を片手で弄び観察する宗田。
「うぅ……覚悟はしてたけど、いざ死を目の前にすると怖いものがあるね……」
 本当に死ぬわけではないし覚悟は決めているのだけれど、やはり死を迎えるという瞬間に生じる恐怖。
 そう少し躊躇する澪に、宗田は漆黒の瞳を向け、ふっと嘆息して。
「おい、怖いのは分かったが時間かけ過ぎだろ。余計に決意が揺らぐだけだぞ」
「わ、わかってるよぅ」
 ……紫崎君も同じ物飲むんだから、覚悟するなら今のうちに。
 澪は彼を見上げていた琥珀の視線を、再び毒の小瓶へと戻すけれど。
「あぁ……つかこれ猛毒なら、わざわざ一人一本飲まんでもいいのか」
 そうふと声が降って来たと思った――瞬間。
 ことりと、自分の持っていた毒をサイドテーブルへ置いた宗田は、ひょいっと澪の手から小瓶を奪い取って。
「え……」
 ぱちくりと視線を上げれば、ぐっと小瓶の毒を半分呷る宗田の姿。
 そして、宗田が残りの半分もその口へと含んだ瞬間。
「……!」
 澪の視界は反転し、柔らかな感触を与えられた背中が、ぎしりと沈み込む。
 眼前には、宗田の顔と客室の天井。
 ベッドの上に押し倒された……そう理解したその時、覆いかぶさるように宗田の顔が近づいて。
「! ……っ」
 口の中に注ぎ込まれる、とろりとした液体の感触。
 間近に感じる彼の視線と、口移しで流し込まれた毒の苦み。
 ――普通恋人でもない相手にそういう事するか馬鹿宗田。
 何をされたか……それを把握した澪は、そう眼前の彼を見遣り思うけれども。
「一人で死のうとするから怖ェんだろ、テメェの寂しがりな性格くらいもうわかってんだよ」
 ――これなら確実に一緒だろ、安心して死んどけ。
 そう聞こえたのが、最期。
 夜空に舞う幻朧桜がみせる花霞に包まれたかのように、澪の意識は朧げになってゆくけれど。
 ……そのたった一瞬で――震えが止まったのは、恐怖が安堵に変わったのは……どうしてだろうか。
 ――彼になら……殺されてもいい。
 そんなことを考えている間に、澪の世界は暗転して。
 どさりとその隣に倒れ込みながら、やはり倒れても痛くないベッドの上を選んで正解だったと。
 そして、後で説教来るだろう、なんて思いつつも。
 柔らかなベッドに広がった金蓮花咲く琥珀色の髪へと、宗田は大きなその手を伸ばして。
 意識を保てる間ずっと、梳くように撫でてやる――決してひとりではないのだと、そう寂しがらないように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・八重
【比華】

やっと…あの子を殺す事が出来るのね

ここの猛毒?
誰が作ったわからないモノであの子を穢すなんて許さないわ
そう、毒は私が作った毒でなければ
甘い甘い
その毒が彼女の血、肉、内なる場所に流れ侵していく
嗚呼、なんて素敵な事でしょう
身が震えるほど嬉しいわ
だって愛おしい子が私の毒に満たされるもの

あの子の毒はどんな味かしら?
飲み干し一滴も逃さず唇を舐める
ふふっ、今まで飲んだどんな毒よりも美味しいわ

さぁ、眠りましょう
貴女に相応しいベットを用意したの
赤いアネモネと赤い薔薇を敷き詰めた華のベッド
そっと彼女の手を握り横たわる
あぁ、死に逝く姿もなんて美しいのかしら
私のいとおしい妹
何処までも一緒よ


蘭・七結
【比華】

嗚呼、やっと
この時を迎えることが出来るのね

あなたへと送る餞は、もう決めてあるの
ねえ、ナユのあねさま
ナユからの毒(あい)を、受け取ってくださるかしら

この時を迎えるために用意した特別品
とっておきの毒に、赤薔薇を調合したもの
美しいあなたに相応しい紅を送るわ

ナユから、あねさまへ
あねさまから、ナユへ
あねさまの毒はどんなお味でしょう
予め毒耐性を緩和する薬を摂取して
あなたの愛(どく)を、一気に煽るわ
――嗚呼、なんて甘美なのかしら

誘われるままにあかいベッドへ
繊細な白い指さきへと、指を絡めて
あなたとの絆を結んで、重ねて
ねえ、あねさま。だいすきよ

ナユとあねさまを分かつことなんて
誰にも、出来ないことでしょう



 幻の如き桜が朧に咲く、幽玄の夜。
 そして満開に笑み綻ばせ戯れ合うふたつの華。
 咲かせる想いは、一緒。
 ――嗚呼、やっと。この時を迎えることが出来るのね。
 ――やっと……あの子を殺す事が出来るのね。
 蘭・八重(緋毒薔薇ノ魔女・f02896)は、嬉しそうに自分を見つめる蘭・七結(戀紅・f00421)の愛おしい姿を映した薄紅の瞳を、そっと細める。
(「……ここの猛毒? 誰が作ったわからないモノであの子を穢すなんて許さないわ」)
 ……そう、愛おしく美しいあの子の全身を侵す毒は、私が作った毒でなければ。
 そう微笑む八重に、七結は紡ぐ。
「ねえ、ナユのあねさま。ナユからの毒――あいを、受け取ってくださるかしら」
 ――あなたへと送る餞は、もう決めてあるの、と。
 取り出したのは、この時を迎えるために用意した特別品。
 ……美しいあなたに相応しい紅を送るわ。
 大好きなあねさまのために赤薔薇を咲かせた、とっておきの毒。
 ――ナユから、あねさまへ。
 ――あねさまから、ナユへ
「あねさまの毒はどんなお味でしょう」
 互いの毒を受け入れるために、予め毒耐性を緩和する薬を飲んでから。
 七結は艶やかな唇に喜びを咲かせながら呷る。
 あなたの愛――どくを、一気に煽るわ……って。
 そして自分の身体の中をじわり侵していく熱い感覚に酔いしれる――嗚呼、なんて甘美なのかしら、と。
 甘い甘い……その毒が彼女の血、肉、内なる場所に流れ侵していく。
「嗚呼、なんて素敵な事でしょう」
 ……身が震えるほど嬉しいわ、と。
 八重の瞳に咲くいろは、歓喜と興奮。
「だって愛おしい子が私の毒に満たされるもの」
 愛くるしく美しいその身を侵し、死へと堕としていいのは、自分のあいだけ。
 ……そして。
「あの子の毒はどんな味かしら?」
 嬉々と八重が飲み干すのは、赤薔薇咲いた七結のあい。
 一滴も逃さぬようにと、赤く艶やかな唇を舐めとって。
「ふふっ、今まで飲んだどんな毒よりも美味しいわ」
 絶頂の興奮と幸せを感じ咲かせるは、より一等の微笑み。
 それからふたり、仲良く手と手を取り合って。
「貴女に相応しいベットを用意したの」
 ――さぁ、眠りましょう。
 踊るように誘うは、死を迎え入れるに相応しい、あかいベッド。
 赤いアネモネと赤い薔薇を敷き詰めた華のベッド――互いに大好きなあかいいろにい包まれて迎える、永遠の眠り。
 その一瞬を心待ちにしながらそっと七結の手を握り、八重があかに横たわれば。
 繊細な白い指さき同士、戯れる様に指を絡め合って。
(「あなたとの絆を結んで、重ねて――」)
「ねえ、あねさま」
 ――だいすきよ。
 駆け巡るあいと眼前に迫った死に、七結は身を委ねる。
 そんな互いのあいとどくで、美しき死を咲かせ、いまにも散らんとするその瞬間に酔いしれながら。
「あぁ、死に逝く姿もなんて美しいのかしら」
 ――私のいとおしい妹。何処までも一緒よ。
 ――ナユとあねさまを分かつことなんて。誰にも、出来ないことでしょう。
 繋がれる白い指先から伝わるあいの証と、流れるようにふわり広がる赤の灰の髪。
 刹那、寄り添うふたつの華が、今までで一番鮮やかなあかを咲かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)】と

誰も居ない、幻朧桜の仄かな光だけが差し込む部屋で
窓辺に立ってうさみに改まった体で語り掛けよう

お前は常より「ニコ、ちねー!」と悪態を吐いていたな
ならば問おう、若し本当に俺が死んだら、お前はどうする?
泣いてくれるか?清々するか?お前の反応が知りたくて堪らない

情念とは、斯くなるものを言うのか
絶妙な加減で俺の本体である懐中時計を床に叩き付け
片手で胸を押さえながらもう片手でうさみをガッと掴んで倒れ込む

其れこそまさに、花を手折るように
握った此の手に力を籠めれば、小さな体躯は拉げて無残にも…
という筋書きだ
上手いこと加減をしつつうさみに
「気絶攻撃」をして眠らせ『無理心中』を装う


榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】

夜桜綺麗だなー!とはしゃいでいたら

え!そんなの改まって聞かれても…
ニコが死んだら…みっち家の稼ぎが減るし…
もうちょっかいかけられなくなるし…
色んな所に一緒に遊びに行くこともできなくなるし…
うぅ、何だか頭がぐるぐるしてきた
そんなこと聞くなばかー!ちねー!

!? ニ、ニコー!?
何やってんだ!それお前の本体だろうが!
そんなことしたらお前が死…死…ニコちぬなー!!
ピィーと泣きじゃくる

…ぴゃっ!?(ガッと掴まれ
ちょっ、何のつもりだ!
ペチペチするも馬鹿力で抜け出せず
おいばかやめろー!それ以上やっ――

~ここで意識が途絶えた~

※最後までうさみっち本人は訳が分かってません



 おなかいっぱい存分に、極上の美味しいものを食べたり飲んだりして。
 誰も居ないふたりだけの部屋にやってくれば仄かに光る窓の外には、朧に咲き誇る満開の夜桜。
「夜桜綺麗だなー!」
 月光に仄かに照る桜灯の中、ぶーんとはしゃいだように飛んでは窓の外を眺める、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)。
 そんなうさみっちの姿を見つめた、眼鏡の奥の赤き瞳を柔く細めて。
 ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は窓辺に立ち、改まった様子で言の葉を紡ぎ始める。
「お前は常より「ニコ、ちねー!」と悪態を吐いていたな」
 あんな時もこんな時も、あの時だって。
 ちねー! と言われては、冗談でどつき合うことも常であったけれども。
 ニコはきょとんとした様子で振り返ったうさみっちへと、こう続ける。
「ならば問おう、若し本当に俺が死んだら、お前はどうする?」
 ――泣いてくれるか? それとも、清々するか?
 ……知りたくて堪らない、と。
 ニコの胸の内に生じるのは、自分亡き後のうさみっちの反応。
 そんな投げかけられた問いに、驚いた様にぱちぱちと瞳を瞬かせて。
「え! そんなの改まって聞かれても……」
 ニコがいなくなったら――そうなった場合のことを、ふと考えてみれば。
 答えを待つ彼からふいっと視線を逸らすと、ぽつりぽつりと口を開くうさみっち。
「ニコが死んだら……みっち家の稼ぎが減るし……もうちょっかいかけられなくなるし……色んな所に一緒に遊びに行くこともできなくなるし……」
 確かに、骨董品店にニコの本体を売り飛ばしそうになったこともあったりしたけれど。
 今は、こうやって一緒にいることが、当たり前のようになっていて。
 でももしも、もしも……ニコがいなくなったら――。
 ……うぅ、何だか頭がぐるぐるしてきた、と。
 ぶんぶんピンク色の髪を揺らし、首を横に振りながらも言い放つうさみっち。
「そんなこと聞くなばかー! ちねー!」
 ニコはいつも通りの言の葉に、ふっと笑んでから。
 ――情念とは、斯くなるものを言うのか。
「!? ニ、ニコー!? 何やってんだ! それお前の本体だろうが!」
 ニコ自身――己の本体たる懐中時計を、床へと叩きつけた。
 そんなニコの行動に声を上げつつ、うさみっちは慌てて、床に無造作に転がる懐中時計へと飛んで。
「そんなことしたらお前が死……死……」
 ――ニコちぬなー!!
 青い瞳からぽろぽろ涙を零し、ピィーと泣きじゃくる。
 そして片手で苦し気に胸を押さえながらも、ニコはふっと逆手を泣きじゃくるうさみっちへと伸ばして。
「……ぴゃっ!?」
 ガッとその小さな身体を掴み、捕まえれば。
 其れこそまさに、薄紅に咲く小花を手折るように。
 握った手に力を籠めれば……きっと、この小さな体躯は拉げて無残にも――。
「ちょっ、何のつもりだ!」
 ぐぐぐっと手袋嵌めたその手で握り込まれ、ぺちぺちっとうさみっちも抵抗するも。
 確りと逃がさぬようにと捕まえられ、鍛え上げられた馬鹿力で握られては、抜けるに抜け出せない。
 そう――ニコが選んだ死に様は、うさみっちとの無理心中。
「おいばかやめろー! それ以上やっ――」
 刹那、最期まで結局、訳が分かっていないまま。
 意識が途絶え、くってりと力失ったうさみっちに、ニコは微かに笑って。
 仄かな薄紅のいろがはらり差し込む中……共に逝かんと、後を追う様に崩れ落ちたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
アヤネさん(f00432)と

貰ってきた2つの小瓶を見せる
この薬は眠るように死ねるそうです
眠くなって目を閉じたらそれで終わりですよ
大丈夫
これはフリです
ずっと手を握ってますから

…アヤネさんが泣いてるのを初めて見た
子供のように泣いてる
大丈夫大丈夫
優しく抱きしめ背中をあやすように軽くたたく
でも困ったな
これじゃ薬が飲めない
アヤネさんが薬を飲んでくれる方法が1つだけあるけど
恥ずかしい
えーい、ままよ!(毒薬をぐいー)
泣き止まないアヤネさんに口移しで飲ませます
薬を飲んだのを確認したら唇を離す

最期は笑っておやすみなさい
私も薬を飲んで追いかけます




そういえば前に
アヤネさんが死んだ幻を見て大泣きしたっけ…
…懐かしいな


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
苦しい悲しい痛い
そんな感情は五年前に捨てた
だから僕は強い
そう思い込んでいた

花が咲き乱れる硝子の温室に二人きり
服毒自殺

ソヨゴが取り出した小瓶を見て動揺を隠せない
心の中の壁が崩れる
こんな感情が残っていたなんて

演技なら大丈夫と思っていたのに
苦しい
愛する人が目の前で死ぬなんてイヤ
痛い
感情が溢れて両目から零れ落ちる
イヤだよう

座り込む
抱きしめられても止まらない
体に力が入らない

ソヨゴに何をされたのか一瞬理解できずに
目を見開く
与えられた毒をこくりと飲み下す

ソヨゴ?
と目で問いかける

感情が乱れて行き場を失うけど
心の奥は安らかだ
彼女に微笑んでその手を握り
そっと目を瞑ろう



 辿り着いたそこは、まるで時間が止まった様で。
 四季の花が色鮮やかに咲き誇り、キラキラと硝子に反射する月の光が生み出す満天の星空。
 花が咲き乱れるふたりきりの硝子の温室、此処がふたりの死に場所。
(「苦しい悲しい痛い、そんな感情は五年前に捨てた」)
 ――だから僕は強い。
 アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)は、そう思い込んでいたのだけれども。
「この薬は眠るように死ねるそうです。眠くなって目を閉じたらそれで終わりですよ」
 そう城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の掌に転がるふたつの小瓶を見て――動揺が、隠せない。
 貰ってきたのは、猛毒の小瓶。
「大丈夫、これはフリです。ずっと手を握ってますから」
 冬青はそう、アヤネへと声を掛ける。
 ――でも。
「……イヤだよう」
 心の中の壁は、脆くもあっさりと崩れて。
 溢れた感情が、ぽろぽろとアヤネの両目から流れ落ちる。
 ……こんな感情が残っていたなんて。演技なら大丈夫と思っていたのに。
 ――苦しい。
 ……愛する人が目の前で死ぬなんてイヤ。
 ――痛い。
 そんな感情は捨てたはずなのに。僕は強いはずなのに。
 痛くて苦しくて――涙が、止まらない。
(「……アヤネさんが泣いてるのを初めて見た」)
 子供のように泣いてるアヤネを、大丈夫大丈夫、と優しく抱きしめて。
 トントンとあやすように、冬青はその背中を軽くたたいてあげるけれど。
 抱きしめられても、それでも涙は止まらずに。
 ぺたんと座り込み、体に力が入らないアヤネ。
 そんなアヤネを抱きしめ宥めながら、冬青は思う。
(「でも困ったな。これじゃ薬が飲めない」)
 けれど……アヤネが薬を飲んでくれる、ただ1つの方法。
 冬青はその方法に、恥ずかしい、と仄かに顔を赤くするけれど。
 ――えーい、ままよ!
 刹那、握る小瓶の毒を、ぐいっと口に含んで。
「……っ、!?」
 泣き止まないアヤネに、口移しで飲ませたのだった。
 一瞬、冬青に何をされたのか……理解できずに。
 重なった唇の柔らかさを感じながらも、アヤネは大きく目を見開いて。
 こくりと、与えられた毒を飲み下す。
 そして薬を飲んだのを確認して、離れていく唇の感触を覚えながら。
 ――ソヨゴ?
 驚きの色を隠せない、緑色の瞳で問いかける。
 そんなアヤネに、琥珀色の瞳を柔く細めて。
 ――最期は笑っておやすみなさい。
 冬青も追いかけるように、手の中にあるもうひとつの小瓶の毒を、呷った。
 感情が乱れて行き場を失って。ぐらりと、世界が廻るけれど。
 でも――心の奥は、安らかだ。
 花霞の如く朧げな視界の中、アヤネも冬青へと微笑んで。
 ぎゅっとその手を握り、そっと目を瞑る。
 もう間もなく訪れる、死の瞬間。
 霞む意識の中、ふと……冬青の脳裏に浮かんだ彩りは、美しい二藍。
(「そういえば前に、アヤネさんが死んだ幻を見て大泣きしたっけ……」)
 あの時はアヤネが死ぬ幻影に惑わされまくって、あんなに泣いたのに。
 今は不思議とその心は冷静で、終始凪いでいて。
 ……懐かしいな。
 色鮮やかな花たちに見守られながら――先に逝ったアヤネに、寄り添うかのように。
 橙色の髪をふわり躍らせ、折り重なる様に、冬青も後を追ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東雲・咲夜
ほんまなら、愛しい彼の手で…

御勤めの戦法と違て
実は痛いのは苦手やの
せやからうちは、水に抱かれて眠りたい

断崖絶壁にて波の囁きを背に
夜穹より花の霊が遣わした一輪の曼殊沙華を手にし
白く、穢れ一つ無い花弁を食んだ
桜唇が寄り添い柔く滑る舌が這う
ひとつ、またひとつ…

次第に手指が痺れ、呼吸が詰まり、咽喉に込上げる激熱
視界が燻るように暗澹へ呑まれゆく
崩れた身体を包む波音に混じり
遠くで、耳元で、甘いノイズが謳う
冷めた血色の貌が見上げた先
嗚呼、愛しいあなた…

立ち上がろうとよろめいては足場を踏み外し
刹那、宵海へ吸い込まれる
常闇と苦寒、猛毒の中わたしを抱きしめる片翼の腕
どうか苦患の果て迄、放さないで
永遠の其の先へ――



 はらりと、朧に揺れては廻り落ちる泡沫の桜花弁。
 その美しくも儚い薄紅を柔く照らすのは、降り注ぐ優しい月の光。
 そんな桜灯に照らされた幽玄の夜、東雲・咲夜(詠沫の桜巫女・f00865)がその背に聞くのは波の囁き。
(「――ほんまなら、愛しい彼の手で……」)
 けれど、それは最早叶わぬ願い。
 それに、御勤めの戦法と違って、実は痛いのは苦手だから。
 ――せやからうちは、水に抱かれて眠りたい。
 咲夜が立つその場所は、漆黒に煌めき秘める海を臨んだ断崖絶壁。
 そしてふわり、夜穹より花の霊が遣わしたのは……一輪の曼殊沙華。
 それは薄紅の世界に燃ゆる真白の炎の様に、凛と静かに花開いていて。
 白く、穢れ一つ無い花弁を、咲夜は食んだ。
 まるで口付けをするように、艶やかな桜の彩りが白に寄り添い。
 柔く滑る舌が、反り返る花被片を這う……ひとつ、またひとつ。
 そして白き炎を失った一輪が、痺れる手指から、ほろりと零れ落ちる。
 刹那、食んだ炎が身体の中で燃え狂うか様に、呼吸が詰まり、激熱が咽喉に込み上げてきて。
 花霞に溺れるように視界が燻り、やがてそのいろは暗澹へと呑まれてゆく。
 夜の漆黒に踊る、美しき桜銀糸の美髪。崩れ落ちた身体を波の音が包み込んで。
 その漣の囁きに混じり――遠くで、耳元で、謳われる甘いノイズ。
 澄んだ雪肌はより白く、美しき儚さを孕んで。冷めた血色の貌が見上げた藍眸の先。
 ――嗚呼、愛しいあなた……。
 ふいに伸ばした手は桜の虚空を彷徨い、立ち上がろうとしたその足は震えよろめいて。
「……!」
 一瞬の浮遊感の後、舞い散る桜花弁と戯れるかの様に。
 片耳に三日月の閃きを宿したまま、宵海へと落ち吸い込まれる。
 そして常闇と苦寒、猛毒の中――その身をを抱きしめる片翼の腕。
 泡沫に溺れ逝く桜貴姫は、優しく円描く月へと最後まで想い焦がしながら。
(「どうか苦患の果て迄、放さないで」)
 望み通り、水に抱かれ沈みゆく。永遠の、其の先へ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

土斬・戎兵衛
侍の自死といえばやはり切腹と
相場が決まっているものよ
……とはいえ俺ちゃん、元は死に誇りなど寄り添わせない人斬り、作法には拘らずサクッと逝こうか

小太刀・定切で切腹自殺の【演技】
UCによる最適角度の斬撃で、"自らの死なない角度"を【見切り】腹に刃を通す

嗚呼、こうして死に近づいてみると、かつて斬り殺してきた人々の怨嗟怨念が拙者をあちらに引き摺り込もうとしているのを感じるでござる
逃れられるぬ罪業、許しを請うならばこのまま拙者も彼方へと……
などと殊勝な心持ちはなく
自己の精神の中で襲い来る怨念を斬り払いながら、ハル嬢が来るまで時間を潰すとしよう

あまりやっていると昔の拙者に戻りそうだし、早く来てくれぬものか



 舞い降る夜桜を背に、自ら刀を突き立て命を散らせる。
(「侍の自死といえばやはり切腹と、相場が決まっているものよ」)
 切腹――それは武士にのみ許された名誉な死に方。
 だが、ただ腹を切れば良いというものではない。
 切腹は複雑な数多の作法に則って行う、神聖な儀式であるのだ。
(「……とはいえ俺ちゃん、元は死に誇りなど寄り添わせない人斬り」)
 ……作法には拘らずサクッと逝こうか、と。
 土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)がその手に握るは、峰の側に目盛りが付いた黒鉄色の直刀。
 そして刹那、展開するのは――『"適角一閃、金剛石ヲモ断ツ"』。
「……ッ」
 瞬間、戎兵衛は月光に閃く小太刀・定切を、己の腹へと突き立てる。
 ……"角度"こそ斬撃の要訣。
 それさえ解すれば、金剛石も豆腐も同じように断てる。
 故に、確りと見切り戎兵衛が己の腹に通した刃は……"自らの死なない"最適の角度。
 切腹自殺は、影朧を誘き出す演技なのだから。
 けれども、刃突き立てた傷口からは、鮮烈な赤が噴き出し滲んで。
 どくどくと熱く流れ落ちる赤と脈打つ鼓動の中、戎兵衛は感じる。
(「嗚呼、こうして死に近づいてみると、かつて斬り殺してきた人々の怨嗟怨念が拙者をあちらに引き摺り込もうとしているのを感じるでござる」)
 ――逃れられるぬ罪業、許しを請うならばこのまま拙者も彼方へと……。
 いや……そんな思いの色など、その橙の帯びた瞳には皆無。
 そのような殊勝な心持ちは、元は人斬り人形であった戎兵衛にはない。
 だから、時間潰しにでもと。
 あちらに引き摺り込まんと襲い来る怨念を、自己の精神の中で斬り払っていく戎兵衛。
 けれど、あまりそう長いことこうやっているのも考えもの。
(「昔の拙者に戻りそうだし、早く来てくれぬものか」)
 死と生の狭間を揺蕩い、次々と迫りくる怨嗟を斬り伏せていきながら。
 桜の介添人――聞いたハルという名の娘が斬首しに来るのを、戎兵衛はいまかと待ち侘びるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『辻斬り少女』

POW   :    【先制攻撃型UC】血桜開花~満開~
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    【先制攻撃型UC】絶対殺人刀
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、殺意】を籠めた【斬撃】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【急所、又はそれに類する部位】のみを攻撃する。
WIZ   :    【先制攻撃型UC】ガール・ザ・リッパー
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、斬撃】が命中した対象を切断する。

イラスト:久蒼穹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 第3章プレイング送信の受付は、【10/31(木)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 追加情報を記載したOPを受付開始前日迄に掲載いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。


●桜の介添人
「私、死にたいの」
 それが、いつの頃からか、私の口癖になっていた。
 幼い頃から心臓が弱くて、入退院を繰り返す日々。
 病院はあまり好きではなかったけれど。
 でも――たったひとつだけ、すごく楽しみにしていたのは。
 お父さんが、大好きな櫻居・四狼先生の小説を持ってきてくれること。
 お母さんが病気で早くに亡くなっているから、いつもお父さんには迷惑ばかりかけて。
 なのに、この病気が治ることはないって、それも知っているから。
 どうせ自由に生きられないなら、迷惑をかけるなら……早く死にたいって、そう思ってた。
 病気だって、じわじわ進行して、一思いに私を殺してくれない。
 だから、死に損ないな私は――小説『幻朧心中』に出てくる、桜の介添人に憧れた。
 死にたいのに死ねないのって辛いって、よく知っているから。
 死ねない人の首を斬ってあげて、早く楽にしてあげる、そんな桜の介添人が大好きだったし。
 私のことも殺しに来てくれないかなって、いつも思っていたし。
 もしもなれるなら――私も、死にたい人を一思いに殺せるような、桜の介添人になりたい。
 そして、お父さんも私も大好きな、櫻居・四狼先生の美しくも儚い世界で、華々しく咲き誇って死にたい。

 心中を試みた者たち全ての脳裏に流れ込んでくるのは、影朧の残留思念のようなものか。
 所謂、『死に損ない』な猟兵たちは、それぞれが命を絶たんとした場所で、影朧――宝木が匿っていた、彼の娘であるというハルが来るのを待つ。
 死に損ないの首を斬り落としにくる――『桜の介添人』を。
 心中を試みた猟兵たちの居場所はバラバラ。
 だが確実に、全ての死に損ないの前に、ハルは現れるだろう。
 なので、いつどの順番でハルが襲ってくるかはわからない。
 時間が許す限り回復や体勢を整えるも良し、もしかしたら傷を癒せぬまま戦闘になるかもしれない。
 入水した者や断崖前壁に飛び降りた者は、死に損なったと影朧が認知できる、陸地に上がった後に現れるだろう。
 また、影朧は不安定な存在故に、説得の末に転生させることができるかもしれない。
 勿論、普通に倒しても何ら問題はない。
 猟兵たちの成すべきこと、それは桜の介添人として斬首しにくる影朧……ハルの救済。
 躯の海へと還すのも、その魂を癒し転生へと導くのも、それは猟兵たちの判断に委ねられる。

 櫻居・四狼の著書『桜ノ匣庭』に収録されている『幻朧心中』。
 そのラストは、心中を果たした者たちを幻朧桜の下へと埋め、桜のその美しさの糧にしたという。
 だが、猟兵たちの心中物語のラストは、まだ紡がれてはいない。
 それを今から綴り、そしてこの狂気を終わらせるべく――各々の得物を手に。
 桜の介添人が来るのを、猟兵たちは待つのだった。
ジャスパー・ドゥルジー
【狼鬼】
ひゃは、は!
身体がバラバラになりそうだ

最初の一撃はザザには通さねえ
身を呈して庇う
流れた血が燃え上がり【ゲヘナの紅】

それにしても俺らマジ名演技じゃん?
万一ザザが自殺だなんてナマ言い出したら
半殺しにボコしたって引き留めてやるわ
あーおかしい!

そうだよ
生きてぇんだ
どんなに苦しくても
死ぬほど辛くとも
俺は生きる

だから説得はしねえ
俺らは分かり合えっこねェからな
……でも、さ

身体を覆う炎で女を焼く
桜の介添人みてぇに
綺麗には、殺さねえぞ

苦しいだろ
抗えよ
あんたは転生するんだ
どっかの誰かがそう願ってる筈だから
猟兵ってなァお人好しばっかだからな

あんたもだぜ、ザザ

今日は嘘ばっか吐いたが
幸せは嘘じゃねェかもな


ザザ・クライスト
【狼鬼】

「クソが……死にそォだぜ」

悪態を吐き、煙草に火を点けて【ドーピング】

【鉄血の騎士】を発動
銃が紅く染まり凍りつくような音で哭く

「自分一人殺せねェ奴が誰かを殺せンのか?」

バラライカを【乱れ撃ち】
それが善意でも血に塗れたら人は変わる
死に様が美しいのは物語の中だけさ
名演技はオレ様、ジャスパーは刺身のツマだと嘯く

「……だいたい介添人自身は誰が看取ってくれるンだ?」

ジャスパー、オマエさんも"誰かが"とかヌルいぜ
徹底的に痛めつけて理解らせる
綺麗にナンて殺してやらねェ
痛み、苦しみ、ソイツが生きてる証だ
生きてりゃ本も読み放題だ、忘れたか?
迷い出てくンなよ

「アリーヴェデルチ」

再会を意味する別れの言葉を送る



 ぎしぎしと軋む身体。けほっと咽返れば、滲む鉄臭い味。
 何せ、断崖絶壁から身を投げたのだ。
 この調子だと脊椎や肋も大胆にやっちまって、内臓も破裂しているに違いない。
 けれど、彼――ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)は、薄紅舞う天を仰ぎ笑っていた。
「ひゃは、は! 身体がバラバラになりそうだ」
 ――痛い、痛い痛い痛い痛い。
 死にそうなほどに苦しくて、痛くて痛くて、堪らないのに。
 だがそれは今、間違いなく生きているという証で。むしろ、求め続けて止まない感覚。
 そして高揚し見開かれたその瞳にただギラつき滾るのは、生への執着。
 そんなジャスパーとは逆に。
「クソが……死にそォだぜ」
 は、と何とか息をつき、悪態を吐きながらも。
 ザザ・クライスト(人狼騎士第六席・f07677)がいつもの様に、火を点けた煙草を咥えれば。
 損傷した肺の中を、苦い煙が満たしていく。
 けれど、丁度ザザが一服し終えたその時――死に損ないを屠らんと巻き起こるは、一陣の桜吹雪。
『……ああ、可哀想に。死にきれなかったのね』
 今――楽にしてあげる。
 現れたその存在に気付いた瞬間、夜空に閃くは、首を狙った先制の斬撃。
「……!」
 同時に赤の飛沫が夜空に舞い、鮮やかに咲き乱れる。
 ザザの首を落とさんと放たれた刀の一撃。
 それは、咄嗟に割って入ったジャスパーの肩へと、ぎちり、深く鋭く食い込んで。
 ――全部燃やし尽くしてやる。動くんじゃねえ。
 刹那、流れ伝う血が、桜吹雪をも巻き込んで燃え上がり、生命力を奪う程の超高熱を帯びた紅き業火と化す。
 そして、鉄と血が混ざり合えば、まるでジャスパーの業火のいろに共鳴し燃えるかの如く。
「自分一人殺せねェ奴が誰かを殺せンのか?」
 紅に染まった愛銃が、逆に凍りつくような音で漆黒の空に哭いて。
「それが善意でも血に塗れたら人は変わる」
 ――死に様が美しいのは物語の中だけさ。  
 標的……桜の介添人目掛け、バラライカを乱れ撃ちするザザ。
『く……!』
 桜の介添人ことハルはその色に瞳を見開き、一旦距離を取る様に背後に飛んで。
 流れる赤を深いカーマインへと彩らせ燃やしながら、ジャスパーは一層愉快に笑う。
「それにしても俺らマジ名演技じゃん? 万一ザザが自殺だなんてナマ言い出したら、半殺しにボコしたって引き留めてやるわ」
 ――あーおかしい!
 そうケラケラと嗤うジャスパーに、ニッと口角上げ、ザザも嘯く。
「名演技はオレ様、ジャスパーは刺身のツマだろ」
 ハルはそんなふたりの様子にふるふると首を振り、独り言の様に紡ぐ。
『……死にたいんでしょ? 私が、殺してあげるのに』
 そんな影朧の言葉を訊いて、鼻で笑うジャスパー。
 ――死にたい? は、冗談じゃない、と。
「そうだよ、生きてぇんだ。どんなに苦しくても、死ぬほど辛くとも――俺は生きる」
 何としてでも、誰がどうなったって知ったこっちゃない。
 死にたくない――ただひたすら、生きたいのだ。
「だから説得はしねえ。俺らは分かり合えっこねェからな」
 ……でも、さ。
 そう、呟くように落とされた刹那。
『!』
 模った背中のタトゥーが翼と成り、首を狙った素早い一撃を、夜空へとばさり飛んで躱して。
「桜の介添人みてぇに、綺麗には殺さねえぞ」
 ……ひと思いになんて、楽には殺さない。
 惨たらしく敵を焼かんと猛り狂うは、ジャスパーの全身を覆う超高熱を帯びた炎。
「苦しいだろ、抗えよ。あんたは転生するんだ。どっかの誰かがそう願ってる筈だから」
 ……猟兵ってなァお人好しばっかだからな。
 そうニヤニヤと嗤い、紫とピンクの混ざる瞳を愉しそうに細め、続ける。
「あんたもだぜ、ザザ」
「……だいたい介添人自身は誰が看取ってくれるンだ?」
 じわじわとその身を蝕む炎に顔を歪めるハルへと、ザザは改めて視線を向けて。
「ジャスパー、オマエさんも"誰かが"とかヌルいぜ。徹底的に痛めつけて理解らせる」
 ――綺麗にナンて殺してやらねェ。
 ザザのバラライカが再び、独特の射撃音を激しく響かせれば。
『!! ぐっ』
「痛み、苦しみ、ソイツが生きてる証だ。生きてりゃ本も読み放題だ、忘れたか?」
 ――迷い出てくンなよ。
 ふっと、桜の介添人に憧れ、生きたかった少女であった影朧を映した瞳を細める。
 躯の海へと、楽になんて還さない。
 痛み苦しみに抗って、生きたいと足掻いて……そして、転生するようにと。
 影朧へと再び銃口を向けながら、ザザはハルへと送る。
「アリーヴェデルチ」
 再会を意味する、別れの言葉を。
 そしてジャスパーも、少女の身体をより焼かんと魔炎を滾らせながらも、ふと思う。
 ――今日は嘘ばっか吐いたが、幸せは嘘じゃねェかもな、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミンリーシャン・ズォートン
椋(f19197)と

うん、大丈夫

頷き、そう答えるけれど
頭は痛く
とても寒い
すると、ぎゅって彼が包んでくれる

椋、椋。
ねぇ、まだ来世にはなってない?

なんて、小さく笑いながら
束の間の温もりに身を預け耳を澄ませる

桜の介添人
貴女がハルさんですね
私の名はミンリーシャン、彼は椋
私達は貴女に会う為に此処へ来たんです

彼が説得を試みても
もしも彼女が私達に刃を向けるのなら
私が彼女の刃を受け止めるわ

――どうやって死ぬのかでは、無いわ
どう生きたのか、よ

貴女を愛して守ってくれたお父様も愛しい人達を遺し亡くなったお母様も、此処で自死を望んでいた人達も、貴女も、死ぬ為に生まれてきた訳じゃないもの

私達の言葉が貴女に届きますように


杣友・椋
リィ(f06716)と

身を投げた池から陸地へ這い上がり
ッ寒、この時期の入水って最悪だな
リィ、大丈夫か
……バカ。まだ死んじゃいねえよ
彼女の身体を摩りつつ、震えているようなら抱き締める
少しでも体温を分けてやれれば良い

現れた桜の介添人
出来るなら俺はこの娘の魂を癒したい
リィと共に説得を試みる

死にたいなんて、死に損ないなんて
そんな言葉、俺は許したくない
父さんがおまえを迷惑って思ってた訳ねえだろ
自由じゃなくても、面倒をかけたとしても、
生きてるだけで良いんだ
……大切な奴の命があるだけで、充分なんだよ
真直ぐに娘を見据え語りかける

俺たちはおまえを助けたい
人々の命の燈火に止めを刺すようなことは
もう、やめるんだ



 ざぶり、と雫を滴らせながら。
 身を投げた池から陸地へ這い上がってきた杣友・椋(涕々柩・f19197)は、苦笑せずにはいられない。
「……ッ寒、この時期の入水って最悪だな」
 そして、すぐ隣で同じ様にずぶ濡れになっているミンリーシャン・ズォートン(綻ぶ花人・f06716)へと声を掛ける。
「リィ、大丈夫か」
「……うん、大丈夫」
 掛けられた声に頷き、そう答えるミンリーシャンだけれど。
 いくら猟兵は死なないとはいえ――頭は痛く、とても寒い。
 思わずふるりと、その寒さに震えてしまう。
 だが刹那――ぎゅっと包み込んでくれたのは、優しい温もり。
 震える身体を摩りつつ抱き締めてくれた彼を、ふと見上げて。
「椋、椋。ねぇ、まだ来世にはなってない?」
 そう小さく笑いながら、束の間の温もりに身を預け耳を澄ませる彼女に。
「……バカ。まだ死んじゃいねえよ」
 少しでも体温を分けてやれれば良い……そう椋は一層、華奢なその身体を引き寄せる。
 ――その時だった。
『……可哀想。ふたりで、死に損なったのね』
 桜吹雪と共に現れたのは、桜の介添人。
 そんな自分たちの首を落とさんと現れた影朧……ハルへと、ミンリーシャンは紡ぐ。
「桜の介添人……貴女がハルさんですね。私の名はミンリーシャン、彼は椋」
 ――私達は貴女に会う為に此処へ来たんです、と。
 眼前の敵を倒し、躯の海へと還すことだってできる。それが手っ取り早くもある。
 けれども、ふたりはそれを選ばない。
(「出来るならリィと共に、俺はこの娘の魂を癒したい」)
 そう、椋が試みるのは、説得。
「死にたいなんて、死に損ないなんて。そんな言葉、俺は許したくない」
 自死しても死に切れぬ者も、そして生前病魔に侵されていた自分のことも、『死に損ない』だと彼女は言った。
 死にたい、それが口癖になるほど辛かったのかもしれないけれども。
「父さんがおまえを迷惑って思ってた訳ねえだろ。自由じゃなくても、面倒をかけたとしても、生きてるだけで良いんだ……大切な奴の命があるだけで、充分なんだよ」
 真直ぐにハルを見据え、語りかける椋。
 『幻朧心中』を書いた小説家、櫻居・四狼に陶酔していたということもあるだろうが。
 自由に生きられなかった娘の夢――憧れの『桜の介添人』になりたいという思いを、小説を模して、宝木は叶えてやろうとしたのだろう。
 それは間違っていて、狂っている歪んだ思いだけれど……娘に対する、彼の愛情故の狂気だったのかもしれない。
『……お父さん』
 椋が掛ける声に、そうぽつり、ハルは呟きを落とすけれども。
 血桜を満開に開花させて――桜の介添人として、死に損ないの首を斬らんと斬撃を放ってくるけれど。
「……!」
 説得にあたる椋へと向けられた一撃を、咄嗟に抜剣した結晶纏い冷気包む仕込み杖で、ミンリーシャンは受け止めて。
 彼に続き、言葉を掛ける。
「――どうやって死ぬのかでは、無いわ。どう生きたのか、よ」
 見つめる澄んだ青の瞳に宿すのは、強さと優しさ。
「貴女を愛して守ってくれたお父様も愛しい人達を遺し亡くなったお母様も、此処で自死を望んでいた人達も、貴女も、死ぬ為に生まれてきた訳じゃないもの」
『う、うう……でも私は、死にたい人を楽に……』
「人々の命の燈火に止めを刺すようなことは、もう、やめるんだ」
 そして迷いが生じ、不安定に心揺れ動いている様子のハルへと。
 椋はミンリーシャンと共に、こうはっきりと告げる。
 ――俺たちはおまえを助けたい、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロカジ・ミナイ
有/f00133

止血して、包帯を巻く
応急処置はお手の物よ
君の傷跡、残らないといいけど
わーかってるよ、自分には興味ないんでしょ

介添人ごっこは楽しんでるかい?
ゴメンね、実は僕ら死にに来たわけじゃないんだ
生者を殺したがる死者を消す仕事ってのがあってさ
だって死人が殺しをしたら生者の数が合わなくなっちゃう

さて、有ちゃん
何か言ってやりたい事とかある?
僕は特にないな
死にたいって言ってんだもの
叶えてあげたいじゃない
…おや、気が合うね
それじゃお仕事といこうか

美少女を斬るのは辛いなぁ
でもね、君を失った世界が、僕の現実なんだ
手のひらに着いた血液を妖刀に吸わせりゃ準備完了
どっちの血か分かりゃしないけど、美味いだろう?


芥辺・有
ロカジ/f04128

服もべっとりだな、こりゃ
まあ私のじゃないけど
しかし、手慣れたもんだね、流石に
応急処置する動きを眺めつつ
傷なんてどうでもいいけどね
私のより自分の方の心配しときなよ

ん、ああ、あれか。介添人とかいうやつ
首落としに来たのかい
悪いが自殺志願者でもないんでね、大人しく差し出しはしないよ

言ってやりたいことねえ
さあ……別に
転生だっけ、ああいうのも正直どっちでもいいし
死んだ奴のために割く分の容量はもういっぱいだ

腕を伝う血を拭って、雫を弾き飛ばしたら杭へと変えて
刀をそれで防ぎつつ
目線の先に捉えた女へ作り出した杭を差し向ける
殺しに来てもらいたかったんだろ
こちとら介添人じゃあないけどさ



 派手にざっくり、次々と椿の花がぽとりぽとり落ちたかのように。
「服もべっとりだな、こりゃ。まあ私のじゃないけど」
 すっかり血の色に染まった漆黒のドレスを、芥辺・有(ストレイキャット・f00133)はそう見遣るけれど。
 止血してくるり、包帯を巻いてくれているロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)の動きを眺めつつ、口を開く。
「しかし、手慣れたもんだね、流石に」
 何て言ったってロカジは、あなたのまちの薬屋さん。
 応急処置はお手の物よと、そう紡いだ後。
「……君の傷跡、残らないといいけど」
 そっと傷に触れぬよう、その細い首を指でなぞりつつ、青の瞳を細めるけれど。
「傷なんてどうでもいいけどね。私のより自分の方の心配しときなよ」
「わーかってるよ、自分には興味ないんでしょ」
 返ってきた予想通りの有の言葉に小さく笑みながらも、丁寧に応急処置を続ける。
 速やかに治すことができれば……傷は、痕が残りにくくなるから。
 そして自らの処置もロカジが終わらせた――その時だった。
 桜吹雪と共に姿を現したのは、刀を携えた娘。
「ん、ああ、あれか。介添人とかいうやつ」
 だが、来るのは最初から分かっている。
 有は全く動じることなく、相変わらずけだるげな金の瞳を向けて。
『死に損なっちゃったのね……今、殺してあげるね』
「首落としに来たのかい。悪いが自殺志願者でもないんでね、大人しく差し出しはしないよ」
 心中ごっこは、もう終わり。
 今度は猟兵の仕事を成すべく、影朧へと視線を投げれば。
「介添人ごっこは楽しんでるかい?」
 心中ごっこの次は、介添人ごっこ。
 ……けれども。
「ゴメンね、実は僕ら死にに来たわけじゃないんだ。生者を殺したがる死者を消す仕事ってのがあってさ」
 ――だって死人が殺しをしたら、生者の数が合わなくなっちゃう。
 そう構えるは、妖しくも窈窕たる湿った抜き身。
 生憎、介添人ごっこには付き合ってあげられないけれど。
「さて、有ちゃん。何か言ってやりたい事とかある?」
 ロカジは有へとそう問いつつも、首を傾け続ける。
「僕は特にないな。死にたいって言ってんだもの、叶えてあげたいじゃない」
「言ってやりたいことねえ。さあ……別に。転生だっけ、ああいうのも正直どっちでもいいし」
 ――死んだ奴のために割く分の容量はもういっぱいだ。
 そんな彼女の返答を聞きながら、その横顔を見つめる瞳を細めた後。
「……おや、気が合うね。それじゃお仕事といこうか」
 ロカジがそう改めて、敵へと視線を遣った瞬間。
 最初に動きを見せたのは、死に損なったふたりの首を落とさんと刀を振るう、桜の介添人。
 素早く急接近し、殺意を籠めた斬撃を有へと放つけれども。
 咲かせた椿の数は、おかげさまで十分。
 腕を伝う血を拭い、弾き飛ばした雫で有が列々と成すは、赤のいろが咲いた無数の杭。
 狙いが分かっている首への斬撃を、その赤き杭で防いで。
「殺しに来てもらいたかったんだろ。こちとら介添人じゃあないけどさ」
『……!』
 ――逃がさない。
 金の瞳で捉えた少女の身体に、成した赤を差し向ければ。
「美少女を斬るのは辛いなぁ。でもね、君を失った世界が、僕の現実なんだ」
 妖刀の糧は、掌に纏わりついた血液。鮮やかな赤は、雷血を誘ういろ。
 その赤が己のものなのか、咲かせ落とした椿のものか、それとも仲良く混ざり合った彩なのか。
「どっちの血か分かりゃしないけど、美味いだろう?」
『……ぐぅ、っ!』
 刹那、戦場を走り轟くは――雷電纏いし嫋やかなる刃の、容赦なき斬撃。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK

本体の黒鵺を持ったまま、影朧がいつ現れてもいいように警戒をしつつ傷の修復に努める。
回復手段が無いが幸い本体が無事ならなんとかなる、はず。

「急所への一撃」という先制攻撃ならまだ対処のしようがある。
首を落としに来るというのならその一撃をしのげばいい。
【第六感】で感知し【見切り】で回避。回避しきれなければ黒鵺で【武器受け】して受け流す。それでも喰らうものは【激痛耐性】【オーラ防御】で耐える。
【存在感】を消し【目立たない】様に死角に回り、可能な限り奇襲をかけ【マヒ攻撃】【暗殺】を乗せたUC五月雨で攻撃する。

知ってるか。
介添人は死にたくても死ねないんだ。あんたはそれでいいのか?



 黒の刃が映すのは、降り注ぐ月光の柔い輝きと舞い降る桜吹雪。
(「回復手段が無いが幸い本体が無事ならなんとかなる、はず」)
 切り裂いた喉は、赤のいろに染まってはいるけれど。
 黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)はヤドリガミ、握る本体の黒鵺に傷がついていないのならば、問題はないはず。
 首を落としにくるという桜の介添人……影朧がいつ現れてもいいように。
 瑞樹は警戒を怠らず、傷の修復に努める。
 けれども――静かに舞い散っていた桜花弁が、瞬間、吹雪となって。
『またここにも死に損ないが……私が楽に、死なせてあげるね』
 傷の修復を行なっていた瑞樹へと向けられる、殺気。
 素早く急接近し振るわれた『絶対殺人刀』の斬撃が唸りを上げ、放たれる。
 瑞樹のその首を、落とさんと。
 けれど、先手を取られるその一撃も「急所への一撃」――首を狙ってくるということは分かっている。
 首へと向けられた先制の斬撃を第六感で感知し、見切り回避を試みて。
『……くっ!』
 完全には躱せぬその衝撃を、巨大な戦槌とも打ち合えるほどに丈夫だという黒鵺で確りと受け、そして流す。
 そして、強烈な殺気を解き放つ敵とは逆に、存在感を消した瑞樹が、目立たぬ様にと死角に回りこめば。
『ぐ、っ!』
 影朧目掛け降り注ぐ雨は、漆黒に閃く大振りの刃。
 複製されし黒鵺に痺れる様な衝撃を乗せ、五月雨の如く奇襲をかけながらも。
 瑞樹は眼前のハルを見据え、そして問う。
「知ってるか。介添人は死にたくても死ねないんだ」
 ――あんたはそれでいいのか? って。

成功 🔵​🔵​🔴​

リシェア・リン
馬鹿!馬鹿!貴女は本当に馬鹿だわ!

私も貴女と同じだった
苦しくて辛くて、何度楽になりたいと思ったか

でも私は大切な人を失う悲しみを知らない
母様が亡くなるなんて、どんなに辛い事かなんて分からない

それでも、貴女が死んだら

残された父様はどれだけ苦しむか分かってるの!?

愛した人を失って
大切な宝物も失って
何もかも失った父様の苦しみを考えた事があるの!?


私は生きたかった
生きて、陽の光の下で…「恋」をしたかった
一度だって死にたいなんて思わなかった

死は決して救いじゃない
残された人に悲しみと絶望を与えるだけよ…!


やり直したいと思うなら、私は協力を惜しまない

それでももし、自殺を肯定するのなら
――渾沌。彼女に、”無”を



 月光が見守る中、たくさん咲いた赤くて大きな花。
 けれど……まだリシェア・リン(薫衣草・f00073)のその首は、繋がったままだから。
『……死にたい? 大丈夫、あっという間に殺してあげるわ』
 死に損なった彼女の前に、巻き起こる桜吹雪と共にやって来たのは、桜の介添人。
 リシェアは現れた影朧……ハルを見据え、ぐっと拳を握りしめて。
「馬鹿! 馬鹿! 貴女は本当に馬鹿だわ!」
 一番星の頃の宵闇のいろを纏う長い髪を揺らし、大きく首を横に振る。
「私も貴女と同じだった。苦しくて辛くて、何度楽になりたいと思ったか」
 自分も、同じだったから。
 だからこそ……ハルが馬鹿だって、リシェアはそう言えるのだ。
「でも私は大切な人を失う悲しみを知らない。母様が亡くなるなんて、どんなに辛い事かなんて分からない。それでも、貴女が死んだら、残された父様はどれだけ苦しむか分かってるの!?」
 ――愛した人を失って。
 ――大切な宝物も失って。
「何もかも失った父様の苦しみを考えた事があるの!?」
『……お父、さん』
 ぴくりと、ハルが反応を示す。
 そんな彼女を真っ直ぐに見つめたまま、リシェアは言の葉を投げるのを止めない。
「私は生きたかった。生きて、陽の光の下で……『恋』をしたかった。一度だって死にたいなんて思わなかった」
 楽になりたいって、同じ様に思ったけれど。
 でも、リシェアは死にたいなんて、死に損ないだなんて、思わなかった。
 死んでしまったらリシェアの憧れた『恋』だってできなくなるし、ハルの大好きだった本を読むこともできないのだから。
「死は決して救いじゃない。残された人に悲しみと絶望を与えるだけよ……!」
 現に、生前自由に生きられなかった娘を思い、宝木が催した今回の『最後の晩餐』。
 これも愛する娘を失った悲しみが生んだ、狂気の賜物だろう。
『恋……?』
 ハルはそうぽつりと呟くけれど……鋭い刀は、いまだ構えられたまま。
 不安定な存在であるという影朧の心に、猟兵たちの言葉は少しずつではあるが、届いてはいるようであるけれど。
「やり直したいと思うなら、私は協力を惜しまない」
『でも……私は、死にたい人を、楽に……!』
 素早く地を蹴って急接近したハルの斬撃が、死に損ないの首を刎ねんと、鋭く繰り出されるけれど。
「それでももし、自殺を肯定するのなら」
 刹那……ずるりと戦場に喚んだ怪物に、リシェアは告げる。
 ――渾沌。彼女に、”無”を、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

【指定UC】で互いの治癒を
多少の【毒耐性】はあるとはいえ流石にキツイし

まぁ…そもそも、室内だしね
多少は仕方ないんじゃない?

大丈夫、ギリギリまでは頑張るよ

ハルさんが来たら【激痛耐性+オーラ防御】を纏い
氷の【高速詠唱、属性魔法】で
壁作りや足の凍結で足止め

気持ちはわかるつもりだよ、ハルさん
僕も…心臓、患ってるから
いつまで生きられるか、正直わからない

でもさ、じゃあ…
死にたくないって言ったらやめるの?
本心じゃなかったらどうするの?
病気だから自由が無い…迷惑だって、誰が決めたの?

僕が親なら
貴方の幸せを願いたい
やりなおそうよ
転生してさ
健康でも不幸な人はいる
全ては自分次第だよ

自由に生きようよ
今度こそ


紫崎・宗田
【狼兎】

窓くらいは…ぶっ壊しても問題無ェかね
お前も適度なとこでやめとけよ

チビを見守りつつ
脳裏に過ぎるのは先程見た影朧の残留思念

心臓、か…

敵が現れたら俺が前衛
チビを背後に【庇い】全ての攻撃を引き受ける
斬撃は【武器受け】と【盾受け】を使い分け
受け止めている間にチビの足止め魔法が当たるのを待って
【2回攻撃のカウンター】で、【怪力】で武器を弾いてから【薙ぎ払い】

テメェの人生だろ、好きにすりゃいい

親父さんがテメェに死んでくれとでも願ったか?
親父さん自身の気持ちを、考えたことがあったか?

自分を正当化して逃げんじゃねぇよ

説得がきかねぇなら【指定UC】で敵を掴み
窓叩き割って自分ごと飛び出しながら庭に叩きつける



 死んでいない、死なないのだけど……やはり、頭や身体は何だか重いから。
「多少の毒耐性はあるとはいえ流石にキツイし」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が生み出すのは、癒しの力宿る聖なる光。
 紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)と己を同時に高速治療し、大きく肩で息をする。
「窓くらいは……ぶっ壊しても問題無ェかね」
 宗田は月明かりに照る幻朧桜の風景みえる窓をちらりと見つつも。
 澪へと視線を向け、声を掛ける。
「お前も適度なとこでやめとけよ」
 自分を先程まで蝕んでいた毒によるダメージは随分軽くなっているが、それはその分、澪の体力に負担がかかっているということだから。
 澪はそんな宗田を見上げ、琥珀色の視線を返して。
「まぁ……そもそも、室内だしね。多少は仕方ないんじゃない?」
 ――大丈夫、ギリギリまでは頑張るよ。
 何気に自分を心配している彼へと、そう瞳を細める。
 そんな様子を見守りつつ……宗田の脳裏に過ぎるのは、先程見た残留思念の様な映像。
(「心臓、か……」)
 それからふと顔を上げると、澪を背後に庇う様な位置取りをする。
 ふたりがいる部屋に巻き起こったのは――死に損ないを死へと誘う、桜吹雪。
『此処にも死に損ないが……今、首を落として楽にしてあげるね』
「……!」
 瞬間、先制の血桜が開花し満開に咲き誇って……閃く刃が、無差別にふたりへと襲い掛かる。
 その全ての攻撃を肩代わりし、得物で確りと宗田が受け止めている間に。
『!』
 高速詠唱により編み出された氷の魔力が壁を作り出し、澪が桜の介添人の動きを封じんと足元の凍結を試みれば。
 怪力で刀を弾き、薙ぎ払う宗田。
 そんな息の合った連携を見せた後、守りの気をその身に纏いつつ、影朧……澪はハルへと声を掛ける。
「気持ちはわかるつもりだよ、ハルさん。僕も……心臓、患ってるから」
 ――いつまで生きられるか、正直わからない。
 敵襲に備えながらも、そう告げる澪を何も言わず宗田は見守っている。
 澪はそれから、ハルへと問う。
「でもさ、じゃあ……死にたくないって言ったらやめるの? 本心じゃなかったらどうするの? 病気だから自由が無い……迷惑だって、誰が決めたの?」
『私は……何にも、好きなこと……できなかった。お父さんも、いつも病院と家を行ったりきたりで……』
 ぽつりとそう呟くように紡ぐハルに、宗田は澪を守る位置取りをしつつも言葉を投げる。
「テメェの人生だろ、好きにすりゃいい。親父さんがテメェに死んでくれとでも願ったか? 親父さん自身の気持ちを、考えたことがあったか?」
 ……自分を正当化して逃げんじゃねぇよ、と。
 死にたい、そう口にする娘を、宝木はどんな気持ちで看病していたのか。
 影朧になった娘を匿い、狂気の沙汰としか思えぬ晩餐会を開いたのも、娘への過ぎた愛情故ではないだろうか。
 それが、親というものだから。
「僕が親なら、貴方の幸せを願いたい。やりなおそうよ、転生してさ。健康でも不幸な人はいる」
 ――全ては自分次第だよ。
 そう澪はハルへと微笑んで、こう続ける。
「自由に生きようよ、今度こそ」
 ハルの人生は病魔との戦いの日々だったかもしれないけれど。
 次に迎える来世は、きっと自由に――だから願うのは、ハルの転生。
『うぅ……でも私は、桜の介添人に……』
 ハルは掛けられる言葉に、明らかに動揺し揺れているようであるが。
 くっと顔を上げると、再び刃をふたりへと向けんとして。
『……っ』
 そんな苦悩の表情を浮かべながらも襲ってきたハルを掴んだ宗田は、窓を叩き割って。
 朧の桜舞う窓の外へと飛び出し、影朧を庭へと叩きつけんと――『秘めた力』を、開放する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マレーク・グランシャール
【神竜】篝(f20484)と

来たな桜の介添人
例え俺の腕が切断されようが篝にその刃は触れさせない

接近する敵の一太刀を【白檀手套】(カウンター+武器落とし)の迎撃で凌ぐ
俺の腕が落ちるのが先か、敵の武器が落ちるのが先か
武器を落とせば刀を拾う間に敵から離れる時間が稼げよう
篝よ、今のうちに離れるんだ

俺自身も敵と間合いを取ったら【大地晩鐘】を発動
敵は飛べない
無数の槍を地中から生やして接近を阻止
槍を檻代わりにして囲ったら俺は地面から、篝は頭上から攻撃して挟み撃ちだ

もし槍を切断して脱出しようとしてもその先に俺は待ち構えている
敵が矛先を向けるより早く【碧血竜槍】を槍投げて手元の刀の破壊を試みよう


照宮・篝
【神竜】まる(f09171)と

本当に、死んでしまうかと…思って…
死ぬ時は、連れていってほしいが
やはり、まるとは一緒に生きていたいな

介添え人の初撃には、私では対応が間に合わなくて
大丈夫かまる、まる!
【黒竜鈴慕】でまるを助けるぞ

攻撃の手を退けられたら、介添え人の説得をしたい(慰め、優しさ)

ハル。君がここへ来たのは、私達を早く楽にしたかったから。
生前の君が、それを誰より強く、望んでいたから…だったのだな。
早く死にたいひとも、いるかもしれないが
死ねなかった事も、何かの縁、と
もしここから、生き直せるなら、何がしたい?

桜の精の真似はできないが、【泉照魂籠】で、彼女の迷いを照らすことができれば…(祈り)



 はらりと桜花弁舞う庭に、金の髪を伝い落ちる雫。
「本当に、死んでしまうかと……思って……」
 池の底の深淵から陸地へとあがった照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)は、そうふるりと、感じる寒さに身体を震わせながら。
 そっとそんな自分を気遣うように、その腕で包んでくれるマレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)へと視線を上げ、改めて思う。
 ……死ぬ時は、連れていってほしいが――やはり、まるとは一緒に生きていたいな、と。
 けれど、死に損ないの元に、彼女はやって来る。
 その首を斬り落とし、死にたい者に望む死を与える……桜の介添人が。
『死に損なっちゃったのね、可哀想に……でも今、楽にしてあげるね』
 舞い上がる桜吹雪と共に姿を現した影朧はそう、ふたりを見つめ薄く笑み咲かせて。
「!」
 躊躇なく首を切断するべく放たれた素早い斬撃が、桜空を裂く様に鋭利に閃けば。
「来たな桜の介添人」
 ――例え俺の腕が切断されようが篝にその刃は触れさせない。
 刹那、キュッと上げた白き手袋から成されたのは、清廉な白檀の香を思わせ耀く盾。
(「俺の腕が落ちるのが先か、敵の武器が落ちるのが先か」)
 影朧の放つ一太刀を、成した白檀手套で迎撃するマレーク。
 だが事前に聞かされた予知で、その刃が狙う先は、分かりきっているから。
『……ッ!』
「篝よ、今のうちに離れるんだ」
 桜の介添人の刀を弾き落とし、僅かに生じたその隙にマレークがそう声を掛ければ。
「大丈夫かまる、まる!」
 初撃に対応が間に合わなかった篝は、そう彼へと声を上げるけれど。
 今度は、自分が助ける番。
 ――顕現せよ。我が楽園の門を守りし蒼き槍、我が門の女神に侍る黒き竜。
 幻の如き朧の桜が舞う庭に篝が喚んだのは、片角の黒曜飢竜。
 刹那、蒼き槍や雷が、桜の介添人へと襲い掛かって。
『く……!』
「ハル。君がここへ来たのは、私達を早く楽にしたかったから。生前の君が、それを誰より強く、望んでいたから……だったのだな」
 その衝撃に一旦距離を取ったハルへと、篝は慰めや優しさを込めた声で語り掛ける。
「早く死にたいひとも、いるかもしれないが。死ねなかった事も、何かの縁、と」
 ――もしここから、生き直せるなら、何がしたい?
 篝が導かんとするのは、ハルの新しい未来の可能性……転生への道。
『何がしたい……私は、わたしは……』
 不安定な存在であるという影朧。その心も、不安定に揺れていて定まらない様子で。
 だからこそ、転生という選択が生まれているのだ。
 けれど猟兵は導くことしかできない。あとは……ハル次第。
 篝を下がらせた後、マレーク自身も間合いを取ってから。
 発動するは、死したる地竜の王の霊を戦場へと喚ぶ――『大地晩鐘』。
 敵は飛べない、地に足がついた存在。
 その素早い動きを封じるべく、地竜の王は槍を以って、地に立つ敵を地下へと招き閉じ込める。
『……っ!』
 瞬間、地竜王の無数の槍が檻の如く地中から突き出で、頭上からは黒曜飢竜の槍や雷の衝撃が降り注ぐ。
 桜の介添人は、咄嗟に己の周囲を囲む槍を、握る刀で薙ぎ払いにかかるけれど。
 檻を脱出した先に待ち構えるは……主に忠義を、敵には容赦なき凶暴さをみせる、碧眼の小竜。
 敵の得物を破壊せんと、そんな碧眼の小竜が姿変えし優美な長槍を、マレークは狙い定め投擲して。
 篝は、女神の魂籠で照らし導き続ける――彷徨える魂に寄り添う篝火で、ハルがもう、その道を迷わぬように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
私も毒には耐性がありますので戦いに支障は無いかと
戦う為に此処まで来たのですから
倫太郎殿、援護をお願いします

死を望む者の介添人、それは憧れでもある
ですが、死は綺麗なものではない
華々しく散る、言葉では良いように思えますが
生きる事や貴女を想う者への放棄に等しい
自分さえ居なければと自己完結の末
貴女の御父上様は「美しい死だった」と喜ぶはずはない
貴女の楽しみである本を届け続けたのですから

もし今度は丈夫な体で生まれたのならやりたい事はありますか?
それは命を摘み取るよりも、きっとずっと楽しい事です

話す間に攻撃が来ても残像・見切りにて躱し
話し終え、変化を見届けてから刃を構え
早業の抜刀術『静風』にて一断ち


篝・倫太郎
【華禱】
毒耐性でどうにか出来てるけど
大丈夫か?

腕の中の夜彦を気遣いながら
指先に触れる自分の武器に安堵する

夜彦、あんたが影朧に言いたい事があるなら
それが終わるまで、俺は手を出さない

気の迷いみたいな「死にたい」は
裏返せば「生きたい」なんだと思うし
永くこびりつく「死にたい」も
やっぱり、「生きたい」なんだと思うから……

それでも、どうしても……
「死にたい」は「死にたい」のままだって言うなら
判り合えるコトはないぜ……多分、きっと

拘束術使用

初撃はオーラ防御で防いでカウンター
夜彦を狙う場合もオーラ防御を使用して庇う

敵が攻撃を仕掛けて来たら射程内なのを確認して鎖で攻撃
俺も華焔刀で2回攻撃
敵の意識をこちらに向ける



 立派な庭の中でも、一等咲き誇る幻朧桜の下で。
「毒耐性でどうにか出来てるけど、大丈夫か?」
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はそう、腕の中の月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)を気遣いながらも。
 そっと安堵を覚えるのは、指先に触れる己の武器の感触。
「私も毒には耐性がありますので戦いに支障は無いかと」
 そしてふと夜彦は立ち上がり、刹那巻き起こった桜吹雪へと緑を帯びる視線を向け、続ける。
 ――戦う為に此処まで来たのですから、と。
「倫太郎殿、援護をお願いします」
 そんな夜彦の横顔を琥珀の瞳で見つめ、倫太郎は告げる。
「夜彦、あんたが影朧に言いたい事があるなら、それが終わるまで、俺は手を出さない」
 その言葉に、夜彦は小さく笑んで返し頷いてから。
 真っ直ぐに影朧……ハルを見て、彼女へと言葉を掛ける。
「死を望む者の介添人、それは憧れでもある。ですが、死は綺麗なものではない。華々しく散る、言葉では良いように思えますが、生きる事や貴女を想う者への放棄に等しい」
 身体を蝕む病魔に怯え過ごす生前の彼女にとっては、死は、楽になれる理想の境地の様に思うものだったのかもしれない。
 けれど。
「自分さえ居なければと自己完結の末、貴女の御父上様は「美しい死だった」と喜ぶはずはない」
 ――貴女の楽しみである本を届け続けたのですから、と。
 自由に好きな事をできない娘に、少しでも楽しみをと……生きて楽しんで欲しいからこそ、宝木は娘に、自分の好きな作家である櫻居・四狼の小説を与えていたのだろう。
『! お父さん……櫻居先生……』
 ぴくりと反応を示したハルに、夜彦は優しい色を宿す声で続ける。
「もし今度は丈夫な体で生まれたのならやりたい事はありますか? それは命を摘み取るよりも、きっとずっと楽しい事です」
『やりたい、こと……私の、やりたいこと』
 これまでの仲間の説得もあってか、大きく揺れ動く影朧の心。
 そんなハルの様子を見つつ、倫太郎は思う。
(「気の迷いみたいな「死にたい」は、裏返せば「生きたい」なんだと思うし。永くこびりつく「死にたい」もやっぱり、「生きたい」なんだと思うから……」)
 自由に生きたい、やりたいことがある。
 だからこそ辛くて、死にたいと。それは裏を返せば、生きたいということなんだと。
 そう倫太郎は思うのだけれど。
(「それでも、どうしても……「死にたい」は「死にたい」のままだって言うなら」)
 ――判り合えるコトはないぜ……多分、きっと、と。
 刹那、影朧へと放つのは、災いを縛る見えない鎖。
 心揺れながらも、素早く刀を振るうその姿を目にしたから。
『! っ、私は……大好きな、櫻居先生の美しい世界で、死にたいの……』
 それが本心かどうか、分からない。本心であれば、判り合えないだろうし。
 まだ気の迷いからくる「死にたい」であれば、救えるかもしれない。
 猟兵たちの言葉も、彼女の心には届いている。
 だから、きっと――あともう少し。
 先制の初撃から夜彦を咄嗟に庇い拘束術を展開し、華焔刀振るう倫太郎と共に地を蹴って。
 ――狙うは、刹那。
 納刀し精神を集中させた夜彦は、早業の抜刀術『静風』を以って影朧へと一断ちを繰り出す。
 掛けた言葉に反応を示してくれたハルの、その心の変化を見届けてから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・八重
【比華】
敵の一振りに瞳を開け避ける
あらあら、可愛いらしい処刑人さんね
美しい妹の安らかな顔を見れないのは残念だわ

その攻撃が愛おしい人、妹へと向ければ【紅薔薇荊棘】で攻撃
あら?ダメよ
この子に傷をつけるのは

敵の身体が動かなくなれば
両手で敵の彼女の顔を包み語り掛ける
可哀想な子
貴女では『桜の介添人』にはなれないわ
だって貴女の花は美しくないモノ
あの物語は望み美しく死に逝かせる
貴女は花をただ切り刻む愚かな人殺し

そっと『紅薔薇のキス』を与えて
さぁ、咲き誇りなさい
貴女なら凛と進み美しい花を咲かせる事が出来るわ

愛おしい人へ帰り微笑む
私だけの赤き介添人
私を殺し私に殺されるのは貴女だけ
あのひと時は幸せな時間だったわ


蘭・七結
【比華】
嗚呼、目覚めの時間ね
とてもステキな夢を視ていたわ
しあわせな死から目覚めましょう
“おはよう”あねさま

首狩りの一閃を見切り躱し
切り裂かれた薔薇とアネモネが舞う
心を奪う鮮明な色
あねさまの“あか” は奪わせないわ

影朧……ハルさんと、おっしゃるのね
じわりと沈んでゆく猛毒のように
滲んでゆく苦しみはお辛かったでしょう
あなたの憧憬を否定はしない
けれど、
ナユとあねさまの命は、あげないわ

両の手にふたつの残華を咲かせ
殺意の斬撃を薙払う
一途な憧憬に、羨望を感じるわ
“天からの奪略”
ナユからの贈物よ
受け取ってちょうだい

あなたを毒し歪ませて
あなたを殺めるのは
ナユだけよ、あねさま
あなたと死を味わえて、しあわせだったわ



 安らかに眠りについている、ふたつの美しい華。
 その綺麗な華たちが望む死を、確実なものに――突如巻き起こる桜吹雪が、鋭い閃きをみせれば。
『……!?』
 ふっと咲いたのは、開かれるはずのない薄紅の瞳。
 蘭・八重(緋毒薔薇ノ魔女・f02896)は細く白いその首目掛け振り下ろされた斬撃を咄嗟に避けてから。
「あらあら、可愛いらしい処刑人さんね」
 現れた桜の介添人……ハルへとそう笑んでから。
 そっと、夕日の如き紅く煌く長い髪を揺らし続ける。
 ――美しい妹の安らかな顔を見れないのは残念だわ、と。
「嗚呼、目覚めの時間ね。とてもステキな夢を視ていたわ。しあわせな死から目覚めましょう」
 ――“おはよう”あねさま。
 そう幸福感に包まれた死から覚醒した蘭・七結(戀紅・f00421)だけれど。
『しあわせな死……私がそれを、確実なものに、してあげるね』
 今度は七結へと向けられる、素早い斬撃。
 だがその一閃は、敷き詰められた薔薇とアネモネの花弁を天へと舞わせるだけ。
「心を奪う鮮明な色。あねさまの“あか” は奪わせないわ」
 首を落とさんとする首狩りの一閃を見切り、ひらり七結が躱せば。
「あら? ダメよ。この子に傷をつけるのは」
 艶やかな華の輪郭にスッと、くれないの線を引く八重。
 そして向けられた衝撃に距離を取った彼女に、七結は言の葉を紡ぐ。
「影朧……ハルさんと、おっしゃるのね。じわりと沈んでゆく猛毒のように、滲んでゆく苦しみはお辛かったでしょう」
 ――あなたの憧憬を否定はしない、と。
 瞬間、彼岸と此岸、七結の両の手に残華を咲いたふたつの残華が、殺意と共に放たれた首狩りの斬撃を薙払う。
 いや、否定どころか……その一途な憧憬に、羨望すら感じるが。
「けれど、ナユとあねさまの命は、あげないわ」
 ……ナユからの贈物よ、受け取ってちょうだい。
『――!』
 贈られ乱れ舞うのは……渇望、羨望、焦燥に彩られた牡丹一花――『天からの奪略』。
 そして瞳見開き動きを止めたハルの顔をしなやかな両の掌で包み込み、語り掛ける八重。
「可哀想な子。貴女では『桜の介添人』にはなれないわ。だって貴女の花は美しくないモノ」
 少女が憧れた桜の介添人……それは、小説『幻朧心中』の世界の中で美しく気高く咲き誇る華。 
 だけど、眼前のハルはそうではない。
「あの物語は望み美しく死に逝かせる。貴女は花をただ切り刻む愚かな人殺し」
 だから、八重は少女にそっと与えてあげる――ふわり咲かせた微笑みと、毒に彩られた『紅薔薇のキス』を。
『……! ぐ、はぁっ』
「さぁ、咲き誇りなさい。貴女なら凛と進み美しい花を咲かせる事が出来るわ」
 花を無粋に散らす首狩りではなく……彼女が来世に、綺麗な花を咲かせられるように。
 そして八重は振り返り、愛おしい人へと、一層美しい微笑みを咲かせる。
 ――私だけの赤き介添人。私を殺し私に殺されるのは貴女だけ、と。
「あのひと時は幸せな時間だったわ」
「あなたと死を味わえて、しあわせだったわ」
 七結もそう、薔薇とアネモネ、そして桜花弁が舞う中……姉へと、咲かせた微笑みを返す。
 ――あなたを毒し歪ませて、あなたを殺めるのはナユだけよ、あねさま、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネフラ・ノーヴァ
幻朧桜の下、仰向けに倒れたまま。
介添人が死を確かめるために触れようとすればその手を掴む。
フフ、死体漁りとは関心しないな。
起き上がれば自身の血に塗れた刺剣をUC瀉血剣晶で赤刃の長剣と成し、介添人に向かい合う。

言葉での説得など不要。躯の海へ還ろうが、転生しようが知ったことではない。だが、望み通り美しき死を授けよう。闘いの中で、刃を交え、血を散らし合おう。死の際には葬送の口づけを贈ろうか。

嗚呼、闘いの高揚と美しさが私をまだ死なせないのだ。



 幻朧桜の下、美しい大輪の赤を咲き散らし、染めた花弁で纏う装束を飾りながら。
 仰向けに倒れ、命を散らしたネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)……であったが。
『ちゃんと……死ねたのかしら?』
 ふいに巻き起こった桜吹雪と共に現れたのは、桜の介添人。
 自死を行なった者がきちんとその望みを叶えられたのか、確かめにきたのだ。
 そして美しくも無残な赤に塗れたその身に触れようとした……瞬間。
『……!』
「フフ、死体漁りとは関心しないな」
 閉じられていた瞳が開かれ、ガッとその手を掴むネフラ。
 影朧は一瞬虚を衝かれたような表情を浮かべたが。
 その首を落とさんと、すぐにその手を振り払い、ネフラの頸部を狙った鋭い斬撃を放つ。
 そして夜空に再び上がるは、赤の飛沫。
 けれど……それは躱された桜の介添人の刃によるものではなく。
 ――我が血の刃、受けるがいい。
 刹那、その手に握られるは、自らの腹に剣を刺し成した、赤刃の長剣。
 それから一気に地を蹴り、桜の介添人へと向かうネフラ。
「言葉での説得など不要。躯の海へ還ろうが、転生しようが知ったことではない」
 ――だが、望み通り美しき死を授けよう。
 ――闘いの中で、刃を交え、血を散らし合おう。
 そして死の際には、葬送の口づけを贈ろう……そう、互いに刃を振るい、斬り込んでいく。
 その首を賭けて、存分に殺り合おう。
 もうどちらが飛沫かせているいろか、わからぬままに。
 ネフラは昂る気持ちそのまま、赤き長剣を振るい続ける。
 これこそ、今生きているのだという証。
 ……嗚呼、闘いの高揚と美しさが私をまだ死なせないのだ、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧島・ニュイ
【クロトさん(f00472)と】

クロトさんの傷の手当て
ごめん、うっかり頭撃っちゃった★良かった生きてて
自分でやっておいて何だけど、置いて行かれるのちょっとトラウマなんだってば
って対価言えば許してくれるかなー、なんて

樹の下に埋める気かい?綺麗な櫻に?
…自殺するとか、正直気が知れないや

死にたいのに死ねない人を手伝ってあげるとか優しいね?
手伝う限り君は成仏出来ない
君は自由に生きたかったんだよね?
今度は自由に生きなよ…またお父さんの傍でさ

急所を切りつけられない様刃の向きに気を付けて見切り
銃で刃を受けて流し、カウンターの零距離射撃
銃を勿忘草に変え、少女のみを攻撃

気を引いてるうちに
期待してるよ?お父さん♪


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)と。

はははウッカリで済んだら官憲は要りません☆
…ま、いいですけど。
手当には感謝を。
言ったでしょう?
僕は、死なないって。

本日の仕込みは扇に鋼糸。
UCで防御力強化。
刃を扇で受け、返す手で鋼糸を手足へ絡げ、機動力を奪い。

数多の戦場。
幾度死の淵に立とうと、死んで楽になんて考えやしなかった。
己に真っ当な人間性を求めるなど無理な話。
説得など何を言ったものか…。

死ねない辛さが解るなら。
死にたい辛さも知っていたでしょう。
殺してあげる影朧では無く、
癒してあげる人間に、なりたいとは思いません?
病を、治す側。
まだなれますよ。

指を引く。張れば、糸の刃。
青鈍は今宵、手向けの色。
次の生迄、おやすみを



 大切なのはリアリティ――そして、迫真の演技には間違いなかったのだけれど。
「ごめん、うっかり頭撃っちゃった★ 良かった生きてて」
 一発だけこめた実弾が、頭に大当たり。
「はははウッカリで済んだら官憲は要りません☆」
 そう笑み宿すけれど、目は笑っていない気がするクロト・ラトキエ(TTX・f00472)の傷の手当てをしながら。
 霧島・ニュイ(霧雲・f12029)は、そっと言葉を続ける。
「自分でやっておいて何だけど、置いて行かれるのちょっとトラウマなんだってば」
 ……って対価言えば許してくれるかなー、なんて思いながら。
 そんなニュイに、ふっとひとつ息をつきつつも。
「……ま、いいですけど」
 手当には感謝を、と紡いだ後。
 クロトは改めて眼前の彼の姿を映した、青の瞳を柔く細める。
「言ったでしょう? 僕は、死なないって」
 そして刹那、二藍の蜻蛉玉揺れる扇と閃く鋼の糸を手にし、魔力を以って防御力を強化しつつ。
『死にたいのでしょう? その首……落としてあげるね』
 桜吹雪が生じたと同時に放たれた素早い斬撃を、鋼の骨を持つ紫餞で確りと受けて。
 機動力を奪わんと、返す手で鋼糸を放ち、現れた桜の介添人の手足を絡め取らんとする。
 そんな影朧へと、黒渕眼鏡の奥の緑色の瞳を向けつつも、首を傾けるニュイ。
「樹の下に埋める気かい? 綺麗な櫻に?」
 ……自殺するとか、正直気が知れないや、って。
 それは、クロトも同じ。
 数多の戦場――幾度死の淵に立とうと、死んで楽になんて考えやしなかった。
(「己に真っ当な人間性を求めるなど無理な話。説得など何を言ったものか……」)
 自死をする者の気持ちが全く分からないふたりだけど。
 だからこそ、死にたい感情が分からない立場から、それぞれ言の葉を紡ぐ。
「死にたいのに死ねない人を手伝ってあげるとか優しいね? 手伝う限り君は成仏出来ない」
 死にたいと願い、死にたい者の望みを叶え、そしてまた死ねないハル。
 そんな影朧へと、ニュイは問う。
「君は自由に生きたかったんだよね?」
 彼女は死にたかったのではない。生きたかったんだと、そう思うから。
 ニュイは柔和な顔に微笑み宿し、諭すように続ける。
 ――今度は自由に生きなよ……またお父さんの傍でさ、って。
 そしてクロトも、ハルへと教えてあげる。
「死ねない辛さが解るなら。死にたい辛さも知っていたでしょう。殺してあげる影朧では無く、癒してあげる人間に、なりたいとは思いません?」
 ――病を、治す側。まだなれますよ、と。
 新たな、彼女の可能性を。
『私は欲しかった、自由が……今度は、病気を、治す側……?』
 ふたりの言葉を、ぽつりぽつりと口にするハル。
 その不安定な存在の心は、大きく揺れ動いているのは間違いないけれど。
『私は……櫻居先生の小説の、『幻朧心中』の桜の介添人に、なりたいの……』
 そう急所目掛け繰り出された刃の軌道に注意を払い、見切って。
 それままさに、蜃気楼の様な……透明と黒、鏡を思わせる機関銃で刀の斬撃を受け流してからの、零距離射撃。
 ――僕の一等好きなこの花はさー、どんどん増えてくんだよ♪
 はらりひらりと、銃を勿忘草の花弁に変え、少女へと、桜花弁に負けないくらい沢山舞わせれば。
「気を引いてるうちに、期待してるよ? お父さん♪」
 そう向けられた視線と言の葉に応えるかの様に、クロトは指を引く。
 張れば、糸の刃。そして。
「次の生迄、おやすみを」
 青鈍は今宵――手向けの色に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
…目が覚めたら顔をのぞきこまれていました。
大丈夫です、心配をおかけしま…い、いや違いますね(あたふた)あなたに会いに来ました。

ハルさんは優しい人なんですね
死の辛さを知っていて、自分だけではなく他の人からも
その辛さを裁ち切りたいと思っている。

ですがハルさん、あなたは死の辛さから解放されたんです。
これからは…転生をして「生きる」事を考えていいんですよ。

攻撃は【見切り】で躱します
あなたの望むように、苦しまぬよう、一撃で。
桜を美しく舞わせるのは「遺体」ではなくて、転生への「願い」
祈りを込めて【花嵐】で攻撃します。

少しは桜の介添人のようには近づけてたら良いんですが
今度は好きなように自由に生きてくださいね



 ひらりと舞い降る薄紅の花弁を、その身体に積もらせながら。
 ふと、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)がその瞳を開けば――。
『まだ、生きてるの……?』
 ひょこりと顔を覗き込んでいる、少女の姿。
「大丈夫です、心配をおかけしま……い、いや違いますね」
 そんな彼女……ハルに、カイはあたふたとそう言いながら身を起こして。
『じゃあ……首を落として楽にしてあげるね』
「あ、待ってください。私は、あなたに会いに来ました」
 そう言ってから、思いの言の葉を紡ぎ始めるカイ。
「ハルさんは優しい人なんですね、死の辛さを知っていて、自分だけではなく他の人からも、その辛さを裁ち切りたいと思っている」
 自分が死ねなくて辛かったから、早く同じような苦しみを持つ人を開放してあげたい。
 その気持ちは、歪んでしまってはいるけれど、ハルの優しさからくるに違いない。
 けれども。
「ですがハルさん、あなたは死の辛さから解放されたんです。これからは……転生をして「生きる」事を考えていいんですよ」
 もう――死に縛られなくてもいいのだから。
 転生して、再び来世を生きて欲しい。
『生き、る……でも、私は……!』
 揺れ動くハルのその心。ぐっと刀を握り、そして。
「!」
 カイの首を落とさんと放たれる、鋭き影朧の斬撃。
 けれど、首を狙ってくることは想定内。
「あなたの望むように、苦しまぬよう、一撃で」
 ――桜のように舞い散らします。
 桜を美しく舞わせるのは「遺体」ではなく、転生への「願い」。
 見切り躱したカイが逆に影朧へと放つは――祈りを込めた『花嵐』。
『……っ!』
「少しは桜の介添人のようには近づけてたら良いんですが」
 それからカイは、桜花弁舞う青の瞳を優しく細め紡ぐ。
 ――今度は好きなように自由に生きてくださいね、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上城・クロウ
フローリエ(f00047)と参加
…結果として、自身は死んでいない。
致死毒であり身体機能の低下はあったが、我が終焉は此処ではなかった。そういうことなのだろう。
「フローリエ…大丈夫ですか…?」
最期ではなかった…あるいは、最期のその先。
よぎった感情は安堵か、或いは後悔か。

向けられる敵意に対して、静かに意識が戦闘モードへ切り替わっていく
「戦闘モードへ移行―私が前衛を受け持ちます。」
対象の一挙一動を注視しつつ「学習」光二刀を抜き接近。
純粋剣術ならば遅れを取りはしない。
超速であろうと学習し模倣、因果のぶつけ合いに持ち込んで打ち消す。
少なくとも、自分が相手を釘付けにすれば、彼女が動ける

―観察・解析・検証


フローリエ・オミネ
クロウ(f01157)と

毒は未だ身体を蝕みしつこく付き纏ってくる
けれどもわたくしには義務がある

大丈夫
そう笑って彼に微笑む
真っ青な顔は隠せないでしょうけれど

そう…戦いは避けられないのね
ならば

乱れた髪は解き、毒の抜けぬ身体を起こす

援護は任せて

クロウの手から離れ【空中戦】を行う
先制攻撃に少しでも対抗するため【高速詠唱】で陶器人形と沢山の針を手の元に

ごめんね、クロウ
盾にさせていただくわ

避けられぬのなら【全力魔法】もうどうなってもいい、めった刺しに

淡々と刺す
臓腑を抉り腕を足を縫い止めて
敵が弱れば針を引き抜く
出血多量で死期が近付きますようにと

クロウ、お見事よ
…何故かしら、笑いが止まらないのよね、



 止まったはずの時計の針が、再びカチコチと時を刻み始める。
(「……結果として、自身は死んでいない」)
 飲んだのは確かに致死毒。
 身体は多少だるく、頭痛も微かに伴っていたりはするけれど。
 ――我が終焉は此処ではなかった。そういうことなのだろう。
 上城・クロウ(白紙の設計図・f01157)はそう心に思いながらも。
「フローリエ……大丈夫ですか……?」
 腕の中にいるフローリエ・オミネ(シソウの魔女・f00047)へと声を掛ける。
 ……脳裏に過ぎるは、仮初の死の瞬間。
 最期ではなかった……あるいは、最期のその先。
 ――よぎった感情は安堵か、或いは後悔か、と。
「……大丈夫」
 向けられた彼の声に、フローリエはそう微笑みとともに返すけれど。
 その真っ青になった顔は、どうしても隠せない。
 体内を駆け巡った毒は、未だ身体を蝕みしつこく付き纏ってくる。
(「けれどもわたくしには義務がある」)
 だから、きらきら薄水色の硝子の靴を履いたこの足で……立ち上がらなきゃ、って。
 ――その時だった。
 突如吹き荒れるのは、桜吹雪。
 死に損ないを冥府に確実に送るべく……やって来たのは、桜の介添人。
『首を落として……死なせてあげるね』
「そう……戦いは避けられないのね」
 ……ならば、と。
 はらり桜花弁の間を縫うかの如く、乱れた銀の髪を、夜空へと流れるように解いて。
「援護は任せて」
 そう紡ぎ、毒の抜けぬ身体を起こすフローリエ。
 桜の介添人の現れた目的は、死に損ないである自分たちの斬首。
 向けられる殺意や敵意に対して、静かに切り替わっていくクロウの意識。
「戦闘モードへ移行――私が前衛を受け持ちます」
 ゆらり刀構える敵の一挙一動を注視しつつ……「学習」する。
(「純粋剣術ならば遅れを取りはしない」)
 すらり抜きその手に握るは、光二刀。
 一瞬早く動いた相手を迎え撃つように接近し、その動きを確りと見極める。
 敵の素早い先制の斬撃。
 それがたとえ超速であろうと、学習し模倣して。
『……!』
 因果のぶつけ合いに持ち込んで――打ち消す。
 首を切断せんと躊躇なく放たれた斬撃を学習し、同じ秒速の斬撃で相殺して。
 クロウは敵を引き付ける様に光り輝く剣を振るい、立ち回る。
(「少なくとも、自分が相手を釘付けにすれば、彼女が動ける」)
 己の腕の中から空へと解き放たれた、冷気纏いし美しき魔女へと託して。
 少しでもその素早い動きに対抗しようと、光速で紡がれる詠唱。
 そして手元に取り出すは、陶器人形と沢山の針。
「ごめんね、クロウ。盾にさせていただくわ」
 前に出て影朧を引き付けてくれているクロウへとそう紡いでから。
 ――そのいのち、頂くわ。
 紫の瞳に映る敵へと宿すそのいろのは、殺意。
『……ッ!』
 瞬間、クロウへと刃を向けていた影朧の身体が、ビクンッと跳ねる。
 淡々と無数の針を、刺す、刺す刺す。
 フローリエは、敵と痛覚を共有する陶器人形へと、手にした沢山の針をひたすらに刺して。
 臓腑を抉り腕を足を縫い止め、よろりとその状態が揺らめけば、針を引き抜く。
 ――出血多量で死期が近付きますように、と。
「クロウ、お見事よ」
 観察・解析・検証……敵を完全に目論見通り引き受けてくれた彼へと、そう紡ぎながら。
 フローリエは、艶やかで冷たい唇の端を薄く上げつつも、陶器人形を苛め続ける。
 だって、これはとっておき。
 ……何故かしら、笑いが止まらないのよね、って。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霑国・永一
【花の涯】
やれやれ、死なないとは言っても血は出たし、痛いんだけどなぁ。あーあ、服が台無しだねぇ
ま、敵が来るまで軽くひと休憩を…女将さん?
いやぁ、くすぐったいなぁこれは。でも演技はもう必要ないんだよ、女将さん
さては俺の血舐めてあの衝動誤魔化したかっただけだねぇ?

さて、俺は説得興味無いけど女将さんが何か言いたいらしいしサポートするか。女将さんに通じるものあるんだろうなぁ
基本的には狂気の転移で女将さんを中心とした近場を転移しまくって回避兼相手の体力と意識奪いしまくるか
敵の先制UCは俺に来たら女将さんが、女将さんに来たら俺がUCで邪魔してやるとしよう
「だとさ介錯人とやら。女将さんがああ言ってるけど?」


千桜・エリシャ
【花の涯】
もう名前では呼んでくれませんのね
背伸びして
己が傷つけた彼の首筋をぺろり
これが愛の味なのかしら…なんて
私ったら演技に熱が入ってしまいましたわ
何の話かしら?
私は欲望に素直に生きるだけですわ
(食人鬼の衝動は抑えて
今は人の間で生きる鬼だから)

言葉を掛けましょう
死人を糧に美しく咲く桜に御首
興味が湧いてしまいまして

あなた
桜の介添人に憧れていたのでしょう
ならば首を斬り落として差し上げますわ
私達との死闘の涯に
どちらの夢も叶えた魂は桜に導かれる
こういう筋書きはいかが?

だから死合ましょう
あなたが満足するまで

先制攻撃対策は永一さんに任せて
見切りカウンター
隙を突いて斬撃を
舞うは血桜
手向けの花を咲かせましょう



 熱くてあかい、愛の強さを競った最後の勝負。
 その勝負の行方は、相打ち――そのままふたり、美しい桜の礎に……。
「やれやれ、死なないとは言っても血は出たし、痛いんだけどなぁ」
 ……あーあ、服が台無しだねぇ、と。
 むくり起き上がり言ったのは、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)。
 同じく身体を起こす千桜・エリシャ(春宵・f02565)へとふと視線を向ければ。
「ま、敵が来るまで軽くひと休憩を……女将さん?」
「もう名前では呼んでくれませんのね」
 背伸びしたエリシャは、彼の首筋をぺろり。
 己が傷つけた赤を、つうっと舌でなぞって。
「これが愛の味なのかしら……なんて」
 ――私ったら演技に熱が入ってしまいましたわ。
 そう、どこか蠱惑に歪む、桜の彩りを細めながら。
「いやぁ、くすぐったいなぁこれは。でも演技はもう必要ないんだよ、女将さん」
 ――さては俺の血舐めてあの衝動誤魔化したかっただけだねぇ?
 そんな突然の感触に、永一はくすり笑むけれど。
「何の話かしら? 私は欲望に素直に生きるだけですわ」
 夜闇に咲く桜のような髪をゆるりと揺らして、素知らぬ顔。
 何が演技で、どれが真なのか――。
(「食人鬼の衝動は抑えて、今は人の間で生きる鬼だから」)
 そして……静かに散り振っていた幻朧桜の花弁が、吹雪の如く舞い上がった瞬間。
『ここにもまた、死に損ないが……今、楽にしてあげるね』
「さて、俺は説得興味無いけど女将さんが何か言いたいらしいしサポートするか」
 現れた影朧……桜の介添人へと、永一は一瞬視線を向けた後。
(「女将さんに通じるものあるんだろうなぁ」)
 ――言葉を掛けましょう。
 そう一歩前に出るエリシャへ金の瞳をちらりと移し、そっと細める。
「死人を糧に美しく咲く桜に御首。興味が湧いてしまいまして」
 さらりとそう紡ぐエリシャは、御首に昂ぶる、舞い散る花弁纏いし桜鬼の娘だから。
 桜の首狩りのその所業……興味を擽らないわけがない。
「あなた、桜の介添人に憧れていたのでしょう。ならば首を斬り落として差し上げますわ」
 ――私達との死闘の涯に、どちらの夢も叶えた魂は桜に導かれる……こういう筋書きはいかが?
 エリシャはそう花咲かせるように笑って。
 桜花模す鍔の大太刀を構え、影朧へと紡ぐ。
「だから死合ましょう。あなたが満足するまで」
「だとさ介錯人とやら。女将さんがああ言ってるけど?」
 そうふたりが言った瞬間……素早く刃閃かせ、先制の斬撃を放つ影朧。
 敵がその首をまず狙うは、満足するまで死合おうと……そう告げたエリシャ。
 けれども、躊躇なく放たれた斬撃が彼女に届くことは、なかった。
『……!』
 まるで、介添人が狙った標的を横から掻っ攫って盗むかの様に。
 盗み去る狂気の転移を展開し、瞳に映したエリシャを引き寄せ、そして斬首の邪魔をする永一。
 さらに、相手の体力や意識をも奪わんと動いて。
 生じた影朧の隙をつき、桜舞う戦場を駆ければ。
「散り際に、手向けの花を咲かせましょう」
 咲き誇れ、散華繚乱――夜空に舞うは、鮮やかな血桜。
『ぐ、ぅ……っ!』
 エリシャが振るう桜花模す鍔の大太刀が、舞い散る桜のいろを赤へと染め上げる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴラディラウス・アルデバラン
死に損なった、か
その点では彼女と同じか
望んでのことではないとはいえ

黒羽(f10471)の表情を、瞳を見遣り
声色を聞く
嗚呼、付き合ってやろう
生きる覚悟に、燃える闘志に
良い顔だと口角上げ
これは貸しだと
寧ろ、私が満足するまで付き合ってもらおうかと
何処まで本気か分からぬ態度
勝敗には言及しない。今は、な

彼が死なぬと言ったなら
死なせてやるわけにもいかぬ
敵からの攻撃は見切り回避
避けられぬならば剣で防ぎ
防ぎきれずとも涼しい顔で
隙を見て反撃を

桜は未だ見慣れない
雪深い故郷こそが、冬こそが
私にとっての死だ
馴染み深いという意味では
生とも言えるだろうか、否か

何にせよ、私は花を散らす側だ
過去は等しく還すのみ
首を狙い、一閃


華折・黒羽
桜は死と繋げられる事が多い
けれど俺の知っている桜は違う
記憶に息づく桜は強く美しく
命に満ち溢れた、あの子の桜

ヴラディラウスさん(f13849)と並び立ち
介添人と対峙する

どちらが勝ったのかは分からない
彼女は知っているのだろうか
でも楽しかった、熱くなった
生きていると感じた
後悔から死を願っていた事も確かにあったけど
今の俺には守りたい約束も
沢山の生きたい理由もある
だから俺は死にませんよ、ヴラディラウスさん

また手合わせしてくれますか
次は高め合う為
生き抜く為

野生の勘で意識より先に腕が動かせる様
激痛耐性でもって隠を前に
先制攻撃を城塞で受けて立つ
動けなくても彼女がいるから

桜の命は儚くとも、その命は次へと巡るんだ



 これが真白な雪であれば、嫌というほど見慣れているが。
 刹那巻き起こった吹雪のいろは、薄紅。
『……死に損なったのね。でも、私が首を斬り落としてあげる』
 現れた影朧……桜の介添人の言の葉を耳に、ヴラディラウス・アルデバラン(Uranus・f13849)は思う。
(「死に損なった、か。その点では彼女と同じか」)
 ……望んでのことではないとはいえ、と。
 現れた敵への警戒は怠らず、けれどそんなヴラディラウスに一瞬視線を向けて。
(「どちらが勝ったのかは分からない。彼女は知っているのだろうか」)
 華折・黒羽(掬折・f10471)はやはり、勝敗の行方こそ気にはなるものの。
 ――でも楽しかった、熱くなった。生きていると感じた。
 刃交え本気で死合った時の心の高揚を思い返す。
 それこそ生きている証、生きていたいと思う理由のひとつ。
 改めて黒羽にはそれが分かったから……彼女へと、こうはっきりと告げる。
「後悔から死を願っていた事も確かにあったけど。今の俺には守りたい約束も、沢山の生きたい理由もある。だから俺は死にませんよ、ヴラディラウスさん」
 そして、青の瞳を真っ直ぐに向け、こう続ける。
 ――また手合わせしてくれますか。
 互いに殺し合い相打ちになって、心中して死ぬためなどではない。
 次は高め合う為、生き抜く為に。
 そんな純粋ないろを宿す瞳と表情を見遣り、思い紡ぐ声色を聞いて。
 ヴラディラウスは口角上げ、応える。
「嗚呼、付き合ってやろう」
 その生きる覚悟に、燃える闘志に――良い顔だと。
 そして黒羽に返す、これは貸しだと。
「寧ろ、私が満足するまで付き合ってもらおうか」
 それは、何処まで本気か分からぬ態度。
 そんなヴラディラウスは、敢えて先程の勝敗には言及しない……今は、まだ。
『……あなたたちも、本当は死にたいんでしょ?』
 戦場に舞う桜花弁の隙間に閃く、鋭い斬撃。
 その素早い動きは、どうしても先に刃を振るうことを許してしまうほどの剣技であるけれど。
 その狙いは明白、首を落とさんとする一撃。
 本能的に動きをみせた黒羽が己の前に翳すは、漆黒の盾。
 それはまた、命の青の篝火を燻らせ、確実に首を捉えたはずの一太刀を受け付けない。
 隠構える黒羽が展開するは、自身の動きを犠牲にした鉄壁の守り。
 けれど、動けなくても何の問題もない……共に戦場に在る、彼女がいるのだから。
 ――彼が死なぬと言ったなら、死なせてやるわけにもいかぬ。
 黒羽へと攻撃を仕掛けた影朧に生じた隙を、決して見逃さずに。
 ヴラディラウスは颯爽と銀の髪と外套を靡かせ、美しい細身の片手剣を抜く。
 戦場にはらりと舞うは、朧に咲く桜花弁。
(「桜は未だ見慣れない。雪深い故郷こそが、冬こそが私にとっての死だ」)
 ……馴染み深いという意味では生とも言えるだろうか、否か。
 ヴラディラウスは動けぬ彼の分まで戦場を駆け、そして躊躇なくその剣を振るう。
「何にせよ、私は花を散らす側だ」
 ――過去は等しく還すのみ。
 繰り出される鋭き一閃の狙いは、敵の首。
『……!』
 桜の花は、何処か儚さを感じるけれど。
 黒羽は、刹那ひらり舞い上がった花弁に彩られた夜空を見上げる。
 ――桜の命は儚くとも、その命は次へと巡るんだ、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

皆城・白露
(他猟兵との連携・アドリブ歓迎)
(出血は止まっているが、首筋の傷は残っているし服も血塗れ)

いつ死ぬかわからないならいっそ一思いに…か
気持ちはわからなくもない、オレだってそう考えたことが無いとは言わない
だから、受け止めてやるよ

先制攻撃を受け止め、負傷は【激痛耐性】で耐える
【捕食者の守護】使用
(現れた狼の幻影が、「お前の命を食い尽くすのは俺だ、他の奴には渡さない」と笑っている気がする)
…ああ、そうだな
オレの命の使いどころは、ここじゃない
お綺麗な花にも、「救ってやった」なんて満足にも、くれてやるわけにはいかない
勝手な奴だ、って?…否定はしないさ
文句はオレが逝ったら聞いてやる。先に逝って待ってろ



 流れ出ていた赤き色こそ、今はもう止まっているけれど。
 白の印象が強い皆城・白露(モノクローム・f00355)をべとりと染めているのは、血の色。
 勿論まだ、首筋の傷も残っている。
 その姿はある意味、自死を試みても死ねなかった、死に損ないというに相応しいものかもしれない。
 そんな死の香りがする彩りに誘われてか。
 巻き起こった桜吹雪と共に現れたのは――桜の介添人。
『……可哀想、死ねなかったのね。私が今、殺してあげる』
「いつ死ぬかわからないならいっそ一思いに……か」
 白露は、桜の介添人――ハルの紡いだ言の葉に、ふっとひとつ息をつき呟きを落としてから。
 閃く刀構える影朧へと、こう返す。
「気持ちはわからなくもない、オレだってそう考えたことが無いとは言わない」
 ――だから、受け止めてやるよ、と。
 刹那、首を狙い繰り出された斬撃を、黒き剣で受け止めて。
 まともにくらえば本当に首を刎ねられかねぬ重い衝撃と首の負傷による痛みに耐える。
 そして桜舞う戦場に白露が喚び出すは、黒き捕食者――黒狼の幻影。
 そんな喚んだ狼の幻影は、こう笑っている気がする……お前の命を食い尽くすのは俺だ、他の奴には渡さない、と。
「……ああ、そうだな。オレの命の使いどころは、ここじゃない」
 眼前に咲くお綺麗な花にも、「救ってやった」なんて満足にも、くれてやるわけにはいかない。
『……どうして? 死のうとしていたんじゃ、ないの?』
 私が救ってあげるのに……そう、ふるふる首を横に振るハルへと。
 白露は狼の幻影と共に、桜の花を逆に狩り取らんと大きく地を蹴る。
「勝手な奴だ、って? ……否定はしないさ」
 刹那、再び白に咲き誇り飛び散るは、赤のいろ。
 ――文句はオレが逝ったら聞いてやる。先に逝って待ってろ……って。

成功 🔵​🔵​🔴​

水標・悠里
ああ、介添人が来たのですね
ですが私は迎えに来る人を選ぶ性質なので、申し訳ないのですがハルさんのお誘いは断らせていただきます

私も死にたいと願い、理想の最期を迎えられればと祈っています
そうですね、化け物らしい最期がよいので――誰からも恐れられるのがいい

さあ、今宵もひとり現れた
私を満たし、その魂を愛でるために――食らいましょう

私の輪郭すら分からなくなるまで隠してしまいなさい

ひとつ貴方に申し上げるとするならば
ハルさんは介添人の心をご存知でしょうか
望まれるままに首を断ち、その先にはもう人ではない
人の娘としての最期を望むのならば、夢の続きを見たいのならば
私が介添いたしましょう

ここから先は鬼の領分ですので



 分かってはいたのだけれども――また、死に損なった。
 喉を引裂き、海の藻屑となって、何の形も残らなければいいと。
 そう願って死ねねば、いっそ楽だったかもしれないのに。
 死の淵で垣間見えてしまった、生への未練。
 そして……己が死に損なった証拠に。
『死に損ねても、大丈夫……私が介錯してあげるね』
 巻き起こる桜吹雪と共に現れた、桜の介添人。
「ああ、介添人が来たのですね」
 水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)は、やって来た影朧……ハルへと視線を向けるけれど。
「ですが私は迎えに来る人を選ぶ性質なので、申し訳ないのですがハルさんのお誘いは断らせていただきます」
 彼女が握る刀で首を落とされることを、拒否する。
 それは、死にたくないからではない。死を迎える時にそこに在る人のは、ハルではないから。
 死にたいと生前願ったというハル。それは、悠里も同じだけれど。
「私も死にたいと願い、理想の最期を迎えられればと祈っています。そうですね、化け物らしい最期がよいので――誰からも恐れられるのがいい」
 違うのは、自分は化け物だということ。
 だから、それに相応しい最期を望むために。
「さあ、今宵もひとり現れた、私を満たし、その魂を愛でるために――食らいましょう」
 ――私の輪郭すら分からなくなるまで隠してしまいなさい。
 痛みも、恐怖も……全てすべて。
『……!』
 食べつくさんと解き放たれるは、夥しい黒い蝶の群れ。
 触れれば激痛をきたし、生命力をも奪う羽ばたき。
「ひとつ貴方に申し上げるとするならば、ハルさんは介添人の心をご存知でしょうか」
 悠里は、ハルに教えてあげる。
 介添人という者の成れの果てを。
 そして、ハルが望むのならば、引導を渡そうと。
「望まれるままに首を断ち、その先にはもう人ではない。人の娘としての最期を望むのならば、夢の続きを見たいのならば、私が介添いたしましょう」
 だって、自分は化け物であるのだから。
 黒き蝶の群れを侍らせ、穏やかに笑い悠里は告げる――ここから先は鬼の領分ですので、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

土斬・戎兵衛
嗚呼、嗚呼……、色々と斬っていたら、そしてハル嬢の姿を見たら、拙者、高ぶりに溺れてしまったよ
辻斬りにして処刑人、拙者とそなたはまるで兄妹のよう
人を斬るのは楽しいか? 拙者は楽しい
同士を見て思い出した、斬ることを愉しむこの心地
なんて久方ぶりだろうか

風一陣の如き歩法、接近を妨ぐことは叶わんか
ならば踏み込もう、斬き合うために踏み込もう
切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、踏みこみ見れば後は極楽
内側に飛び込めば受ける刃は減らせよう
こちらも【早業】で抜刀
近間なら小太刀が振るうに馴染む、定切で攻撃
だいぶ体も傷んだ、その血(いのち)啜らせてもらおう【生命力吸収】
夜は血風、この刻に拙者に斬れぬ骨肉はなし(UC効果)



 此処を訪れたのも、猟兵業という仕事の……つまりは金のため。
 そういうつもりで請け負ったはずだったのに。
『死に損なっちゃったのね……じゃあ、殺してあげるね』
 眼前で巻き起こった桜吹雪と共に現れた少女に、土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)は親近感さえ覚える。
(「嗚呼、嗚呼……、色々と斬っていたら、そしてハル嬢の姿を見たら、拙者、高ぶりに溺れてしまったよ」)
 それは昔、殺刃人形として人斬りであった頃の、懐かしい感覚。
「辻斬りにして処刑人、拙者とそなたはまるで兄妹のよう」
 ――人を斬るのは楽しいか? 拙者は楽しい。
 そうハルに訊ねながら、戎兵衛は眼前のハルと昔の自分を重ね、思い出す。
 ……斬ることを愉しむこの心地。なんて久方ぶりだろうか、と。
 そして今度は、人斬り同士の斬り合い。
 ひゅっと風が鳴り、はらり落ちるばかりであった桜花弁が夜空へと舞い上がった刹那。
(「風一陣の如き歩法、接近を妨ぐことは叶わんか」)
 素早さを誇る動きから繰り出された先制の斬撃に対し、戎兵衛は避けることを選択せず。
 逆にぐっと踏み込み、斬り合うべく迎え討つ。
(「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、踏みこみ見れば後は極楽」)
 ……内側に飛び込めば受ける刃は減らせよう。
 そう早業を駆使し抜く刀は、黒鉄色の直刀――『定切』。
 間合いが近いのであれば、小太刀は振るうにうってつけ。
 振るわれた桜の介添人の刃は戎兵衛の身体に傷をつけるも、首を斬ることは叶わずに。
『く……!』
「だいぶ体も傷んだ、その血、啜らせてもらおう」
 逆に、その血を……いのちを、戎兵衛へと吸い取られ奪われる。
 そして今の時は、深き闇満つる夜。
 ――夜は血風、この刻に拙者に斬れぬ骨肉はなし。
 深淵の闇に紛れ斬るのは人斬りの専売特許。
 桜吹雪舞う夜闇の中――次の一手を研ぎ澄まし、戎兵衛はただ純粋に、同士との斬り合いに興じる。

成功 🔵​🔵​🔴​

鼠ヶ山・イル
あーーいててて……
血が、いのちが流れ出てる

吃驚するくらい痛い。あの子はこんなの体験したの
痛い、痛い、痛い、

助けてくれよ介添人
痛いんだよ、早く終わらせてくれよ
助けてくれ

横たわったオレのひゅうひゅう鳴る喉、あんまりにも哀れだろ?
介添人が目の前に立って、いざ首を落としてくれるって時に──

そいつの足首を掴む
そしてオレのとっときの魔法で、串刺しにする

「昼顔の笑み」をアンタに届けてやるよ
その花は嫣然と咲き誇り、お前を抱き締めるだろう
ああほんと痛かった!アンタも死ぬような痛み味わってみようぜ
華々しい死に様、体感したかよ?

先に斬られちゃうかな?ま、しょうがねーか
一度自分で自分を斬っちまってるからノーカンだろ



 噴き出す赤を飛沫かせて、ドレスをべとりとそのいろで染めて。
 どくどくと流れ出すのは……いのち。
「あーーいててて……血が、いのちが流れ出てる」
 けれども、分かっていたけれど、それでも鼠ヶ山・イル(アヴァリティアの淵・f00273)は死んではいなくて。
 確かに、死にはしないのだけれど。
「吃驚するくらい痛い。あの子はこんなの体験したの」
 ……痛い、痛い、痛い。
 そして桜吹雪と共に現れた介添人へと縋る様にイルに、こうお願いする。
「助けてくれよ介添人。痛いんだよ、早く終わらせてくれよ」
 ――助けてくれ、って。
「横たわったオレのひゅうひゅう鳴る喉、あんまりにも哀れだろ?」
 そんなイルを見下ろし、桜の介添人は、華の様に笑顔を咲かせる。
『ええ、いいわ……それが私、桜の介添人がやるべきだもの……』
 ――今、楽にしてあげる。
 そうごろりと横になったまま、最期の時を望む言葉を紡ぐイルの首を落とさんと、刀を振り上げるハル。
 だが……その時だった。
『!!』
 ふいに伸ばされた手が、ガシッと影朧のその足を掴んで。
 桜の介添人の身体を串刺しにせんと放たれるは、イルのとっときの魔法――『昼顔の朝露』で成した花の劔。
 それよりも早く、刀の斬撃を受けたイルの肩に、鮮やかな赤が飛沫くけれど。
「一度自分で自分を斬っちまってるからノーカンだろ」
 首さえ落とされなきゃ、もうひとつやふたつぱっくりいったって、きっと変わらない。
 嫣然と咲き誇る花が容赦なくハルを抱きしめ、その身を貫いて。
『……ぐ、ッ!』
「ああほんと痛かった! アンタも死ぬような痛み味わってみようぜ」
 共に飛沫く赤を纏いながら、イルは桜の介添人……ハルへと、こう訊ねてみる。
 ――華々しい死に様、体感したかよ? って。

成功 🔵​🔵​🔴​

城島・冬青
【KOR】
刀を手に立ち上がる
アヤネさん、立てますか?
手を貸し
未だ不安な彼女を抱きしめ返す
ハルさんの気配を感じたら臨戦態勢に

先ずは転生を勧める
好きな小説に出てくるキャラクターに憧れを持つのはわかりますが
桜の介添人になるのは阻止させて貰います
人の命を奪うよりもう一度生まれ変わって沢山の本を読むのも素敵ですよ
今のままでは大好きだった本も読めないでしょう?
それに…首を落とすのはとても重労働ですよ

UC廃園の鬼を展開しつつハルさんに声が届くまで武器受け中心に応戦
転生させたいですが声が届かず
こちらが危険な場合は方針転換
容赦なく花髑髏でぶった斬ります
すみません
心中しましたけど
私、まだ死ぬつもりは全然ないんです


鏡彌・サクラコ
【KOR】
死に損なったでいす…
オクちゃんといろいろ心中しようとしたのですけど
なんか怖くて無理でした!
というわけで死に損ないですが
あー、やっぱり影朧さんは来ませんねい
ここは他の皆さまを助けに向かいましょう!

探し回って見つけました!
みなさまおまたせでいす!
サクラコ颯爽と登場!

なかなかの強敵とお見受けしました
言葉は果たして届くのでしょうか?
物語の人物として刃を振るうよりも
もっとたくさんの物語を読みたいと思いませんか?

戦闘は防御主体
UCでメンバーの守りを固めます
オクちゃんの戦闘はタイミングまでわかります
反撃に合わせましょう

願わくば良い結末を


アヤネ・ラグランジェ
【KOR】
敵の気配?
立ち上がれない
ソヨゴ手を貸して
立ってソヨゴを強く抱きしめて
「よかった」
ソヨゴに言われるまでしばらくそのままで

涙で汚れた目の周りを拭い去る
説得はする気は毛頭無い
よくも僕にこんな苦しい手順を踏ませてくれたな!
手で宙空に弧を描き
袖口からずるりと巨大な両手鎌を取り出す
叩っ斬ってやる!
こうして怒りの感情を抱くのは何年ぶりだろうか
八つ当たり?関係ないネ

敵の先制攻撃は鎌で受け流す
絶対先制されると分かっていれば守るくらいはできる

鎌を振るううちに怒りは醒める
言葉なんてかけてやらないけど
終わったらせめて祈ろう
アーメン


日隠・オク
【KOR】

見送ってしまいました……
こちらには……来ないんでしょう
サクラコさんと一緒に敵を倒しに向かいます

UCはガチキマイラで
片腕をライオン化
しっかり狙って、きます
ですが……!
敵が狙ってきそうな部分を想定しつつ
もし攻撃を受けてもそのまま反撃する意思で攻撃しにいきます
喰らいつきます

そうですね私にはあなたの気持ちが分からない
私には死を選ぶことができなかった
迷惑をかけない死なんてないからです
あなたは自分の好きな人が死んだら、嬉しいですか
その人が死を望んでいるからと、手助けするんですか
そうして亡くなって、悲しむ人がいることは考えないんですか
こんなことはやめてください


織銀・有士郎
【KOR】
「……生きてる、か」
走馬灯みたいなのが見えたからヤバいかと思ったが、どうやら無事に目覚める事ができたようだ。
さて、『桜の介添人』が来る前に仲間と合流するとしよう。
……まぁオクとサクラコに自決は似合わんだろ。気にすることは無い。
そいや、パーティの時に飲んで、死ぬ前にキツいの飲んだけど酒の臭い大丈夫かね?

敵が死を、殺意を乗せて攻撃してくるというなら、それを【見切って】回避、もしくは【武器で受けて】攻撃をいなす。
「憧れの存在になれて嬉しいだろうが、結局大事なものに迷惑かけているだけだぞ?」
『銀楼破罪剣』を使い、逆に自分が介錯しよう。
生まれ変わって今度こそ幸せな人生を歩めるように。



 幻朧桜の花弁が舞う中、他の皆を探して。
 鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)と日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)は館の敷地内を足早に歩く。
「あー、やっぱり影朧さんは来ませんねい」
「こちらには……来ないんでしょう」
 ふたりも皆のように、心中を試みようとしたけれど……やはり何だか怖くて、できなかった。
 ある意味、ふたりも死に損ない、ということにはなるのだけれど。
「ここは他の皆さまを助けに向かいましょう!」
 最後の晩餐の時に一緒だったり見かけた仲間達の助太刀にと、向かっていれば。
「あ……!」
 見知った姿を見つけ、進む速度を上げた。
「……生きてる、か」
 ……走馬灯みたいなのが見えたから、ヤバいかと思ったが、と。
 織銀・有士郎(織りなす銀の一振り・f17872)は、己に降り積もった桜花弁を払いながら、その身を起こす。
 どうやら無事に目覚める事ができたようだ、と。
「さて、『桜の介添人』が来る前に仲間と合流するとしよう」
 ひとりで迎え撃つのではなく、皆と桜の介添人と対峙することを選び、自死を演じた中庭をあとにした有士郎であったが。
「有士郎さま! ご無事で何よりでいす」
「サクラコに、オク。ふたりとも大丈夫か?」
 同じ様に、皆を探していたサクラコとオクと、無事に合流することができて。
「見送ってしまいました……」
「死に損なったでいす……」
 そう揃って返すふたりに、赤の瞳を柔く細めてから。
「……まぁオクとサクラコに自決は似合わんだろ。気にすることは無い」
 ……そいや、パーティの時に飲んで、死ぬ前にキツいの飲んだけど酒の臭い大丈夫かね? と。
 ふたりと共に、影朧と対峙しているかもしれない仲間の元へと急ぐ。
 同じ頃――花が咲き乱れる硝子の温室で。
「アヤネさん、立てますか?」
 愛刀『花髑髏』を手に立ち上がった城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は、そうアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)へと声を掛けるけれど。
「……立ち上がれない。ソヨゴ手を貸して」
 差し伸べられた手を取り、アヤネはようやく立ち上がって。
 ぎゅっと強く、冬青の身体を抱きしめ、耳元で紡ぐ。
「よかった」
 そんな、未だ不安そうなアヤネを抱きしめ返して。
 少しでも落ち着けばと、背中を軽く撫でてあげながら、暫くそのまま抱きしめてあげる。
 けれど、やはり……自死し損ねた、死に損ないのふたりの元にも。
 ふいに桜吹雪が巻き起こり、閃く刀を持った少女はやって来る。
 影朧……桜の介添人が。
「……アヤネさん、敵が来ました」
 その気配を感じ取り、いち早く臨戦態勢に入る冬青に続いて。
「敵の気配?」
 アヤネも、現れた影朧へと視線を向けるけれど。
 涙で汚れた目の周りを拭い去ると同時に露わにするのは、怒りの感情。
『死に損なっちゃったのね……大丈夫、死なせてあげるからね』
「よくも僕にこんな苦しい手順を踏ませてくれたな!」
 ……説得はする気は毛頭無い。
 刹那、掲げた手が宙空に弧を描けば、アヤネの袖口からずるりと現れる巨大な両手鎌。
 そしてアヤネは感情のままに声を上げる。
「叩っ斬ってやる!」
 けれど、湧き上がる怒りの中でも、先制の斬撃を放たんとする相手の動きは確りと見極めて。
 閃く斬撃を、巨大な鎌で受け流すアヤネ。
 首を落とさんと先制攻撃を仕掛けてくる、そう予知され分かっていれば、守るくらいはこうやってできるから。
 そして影朧を叩き斬るべく、怒りの一撃を返しながらも思う。
(「こうして怒りの感情を抱くのは何年ぶりだろうか」)
 苦しい悲しい痛い……そして、今感じている怒りも。
 心の中にかわるがわる渦巻くのは、とうに捨てたと思っていた感情。
 けれど今のアヤネは、そんな感情に忠実に動く。
「八つ当たり? 関係ないネ」
 そんなアヤネと刃交わす影朧へと、まずは説得を試みる冬青。
「好きな小説に出てくるキャラクターに憧れを持つのはわかりますが、桜の介添人になるのは阻止させて貰います」
 影朧……ハルへと勧めるのは勿論、転生という道。
「人の命を奪うよりもう一度生まれ変わって沢山の本を読むのも素敵ですよ。今のままでは大好きだった本も読めないでしょう?」
『……本……櫻居先生の、小説……』
 そうぴくりと反応を示したハルに、冬青は続ける。
「それに……首を落とすのはとても重労働ですよ」
 小説では美しく優美に表現されているかもしれないけれど、実際はそう簡単に綺麗にはいかない。
 けれど、掛けられる言葉にその心は大きく揺れつつも、ハルはまだ、刃を振るうのを止めるには至らない。
 ――その時だった。
「探し回って見つけました! みなさまおまたせでいす!」
 ……サクラコ颯爽と登場! と。
 硝子の温室へとやって来たのは、ふたりを探していたサクラコとオクと有士郎。
 皆の無事にそれぞれホッとするのも一瞬、影朧へと向き合って。
(「なかなかの強敵とお見受けしました。言葉は果たして届くのでしょうか?」)
 届くかはわからないけれど、届かせたいから。
 冬青と共に、皆もハルへと説得の言葉を掛ける。
「そうですね、私にはあなたの気持ちが分からない」
 死にたいと、そう口癖の様に生前言い続けていたというハル。
 オクには正直、死にたいと思う気持ち自体、分からなかった。
 死なないと分かっていても……それでもサクラコとふたり、自死を選ぶことができなかったから。
 それに、実際に自ら命を絶ったその後のことを考えれば、到底そんなことできない。
「迷惑をかけない死なんてないからです」
 残された人たちのことを思えば、余計にそういう行為には及べないし。
「あなたは自分の好きな人が死んだら、嬉しいですか。その人が死を望んでいるからと、手助けするんですか。そうして亡くなって、悲しむ人がいることは考えないんですか」
 ……こんなことはやめてください。
 そう、真っ直ぐに緑を帯びた瞳でハルを見つめ、言って。
 ふるふると、藍色の髪を揺らしながら、横に首を振るオク。
 そんなオクに、サクラコと有士郎も言葉を重ねる。
「物語の人物として刃を振るうよりも、もっとたくさんの物語を読みたいと思いませんか?」
「憧れの存在になれて嬉しいだろうが、結局大事なものに迷惑かけているだけだぞ?」
『……でも、私は……私は、桜の介添人みたいに……』
 揺れ動き、葛藤している様子のハル。
 きっともう少しで導けそうだけど……影朧になるほどの怨念は、まだ振り払えずに。
「!」
 苦悩の表情を宿しながらも、再び猟兵たちへと刀を振るってくるハル。
(「しっかり狙って、きます。ですが……!」)
 敵が狙ってくるのは首の部分だと、判り切っているから。
 オクの片腕がライオンと化し、繰り出される斬撃へと喰らいつき反撃せんと構えれば。
(「オクちゃんの戦闘はタイミングまでわかります」)
 皆へと狙い放たれた鋭い攻撃をサクラコは複製し成した円形の銅鏡で防ぎ、オクが攻勢へと転じれるよう立ち回れば。
 漆黒の吸血武器と化した、本当の姿の花髑髏を握りながら、冬青も鎌を振るうアヤネと共に、影朧へと斬りかかる。
 声は届いている、けれどもまだ、その刀を振るうというのならば――容赦なく花髑髏で、ぶった斬る。
「すみません。心中しましたけど私、まだ死ぬつもりは全然ないんです」
 そうすぐ傍で聞こえた冬青の言の葉。
 そして駆けつけた皆の姿をみれば、鎌を振るううちに、抱いていた怒りも醒めて。
(「言葉なんてかけてやらないけど」)
 でも、アヤネは眼前のハルへと、こうは思ってあげる。
 ……終わったらせめて祈ろう、って。
 そして、分かりやすいくらいの、死や殺意を乗せて攻撃してくるというのならばと。
 有士郎はその斬撃の軌道を見切って咄嗟に回避し、スッと銀誓刀『涼鳴』を構えて。
 ――逆に自分が介錯しよう。
『……!』
 明鏡止水の心を籠めた一撃……『銀楼破罪剣』を以って両断する。
 肉体ではなく、ハルが抱く憎しみや悲しみを。
 ――生まれ変わって今度こそ幸せな人生を歩めるように、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
(唯一人で静かに花影に紛れ――いわく付き同士仲良くするかー、と何とも言えぬ笑顔で短剣を胸元に突き立てたのが少し前
何となく花を己の血で染めるのは忍びなく思い最低限の止血だけは済ませ)

第六感と暗殺の勘で娘の気配に注意
敢えて急所に隙見せ――かけ、見切り易い所に初撃誘い、カウンターで武器落としを

殺意全開で急所狙いにくるとか、分かり易過ぎるぜお嬢サン

此処からの言葉は全部エゴだが――暗殺だの自死だのに使われてきたモノの一つとしては、キミみたいな子にこんな事を続けて欲しくない
このまま続けて、自分自身は本当に楽になれる?

…心まで血で塗り潰されて消える前に
違う形で桜の下に還り、そしていつか帰ってくる途を、どうか



 年中咲き誇っているのだという朧の如き桜は、見事な花を開かせていて。
 見上げる夜空に、はらりとその花弁を舞い散らせている。
 そんな花影に、唯一人静かに紛れ……いわく付き同士仲良くするかー、と。
 そう何とも言えぬ笑顔で短剣を胸元に突き立てた、呉羽・伊織(翳・f03578)であったが。
 けれども何となく、咲き乱れ舞い降るその薄紅を己の血で染めるのは、忍びなくて。
 止血だけは済ませながらも、ただならぬ気配にその顔を上げる。
 刹那――巻き起こるは、桜吹雪。
『ここにも、可哀想な死に損ないが……楽にしてあげるね』
 刹那、隙を見せた伊織の急所へと正確に放たれるは、殺意乗せた桜の介添人の一太刀。
 死に損ないの首を苦しむ間もなく落とさんと、躊躇なく繰り出されるけれども。
『……!』
「殺意全開で急所狙いにくるとか、分かり易過ぎるぜお嬢サン」
 隙を見せたような動きは、より見切り易い部位に初撃を誘うためのもの。
 冷ややかなる黒刀が一切の音すらも立てず、介添人の握る刀を叩き落として。
 そして伊織は眼前の影朧……いや、ハルへと、言の葉を紡ぐ。
「此処からの言葉は全部エゴだが――暗殺だの自死だのに使われてきたモノの一つとしては、キミみたいな子にこんな事を続けて欲しくない」
 ――このまま続けて、自分自身は本当に楽になれる?
 そう問う声に、ハルは微かに動揺をみせ、呟きを落とす。
『……私は、死にたい人を楽に……でも、自分は……』
 人のいのちを奪うという事。それがどういうことなのか、伊織は知っているからこそ。
 怨恨と暗翳を纏いし黒刀で、音も光も心すらも一切殺して――少女が転生へと道を歩めるよう、ただ静かにその刃を振るう。
 ――心まで血で塗り潰されて消える前に。
 違う形で桜の下に還り、そしていつか帰ってくる途を、どうか……。
 儚く舞い降る幻朧桜の下、そう密かに、願うように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
(今回は単独参加です、他PC様との絡みは歓迎です)

懐中時計を拾い上げ、具合を確かめる
絶妙な力加減で床に叩き付けたつもりではあるが
後でメンテナンスをしないといけないな
…眼前の介添人をどうにかしてから、だが

どう足掻いても先手を取られるのか、仕方が無いな
敢えて其の斬撃を此の身に受けよう――「肉体」でだ
肝心要の懐中時計は後ろ手で隠したまま
此れさえ無事なら痛みはすれど死にはしない

良き、物語であったな
登場人物に己を重ねるのも理解出来る
だが、かの小説は虚構であるが故に美しい物語だ
現実に持ち込んではならないよ

望み通り「死なせてやろう」、乙女よ
そうして「次」の生を得るのだ
かの作家が紡ぐ世界も、君を待っている



 ――少し力の加減を誤ってしまったか、と。
 まだ目が覚めぬ様子のピンク色の妖精を見遣り、そっととりあえず彼には大きすぎるベッドへと寝かせておいて。
 ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は床に転がる懐中時計を拾い上げ、具合を確かめる。
「絶妙な力加減で床に叩き付けたつもりではあるが、後でメンテナンスをしないといけないな」
 けれどその前に……やるべきことが、ある。
 突如吹き上がった桜吹雪とともに現れた、刀握る少女。
『……ふたりとも、死に損なったのね。可哀想……今楽にしてあげる』
 懐中時計のメンテナンスは、もう少し後……眼前の介添人をどうにかしてから。
 そしてニコは聞いた予知を思い出す。
(「どう足掻いても先手を取られるのか、仕方が無いな」)
 一思いに斬首する介添人の素早さは厄介で、どうしても先制を許してしまうのだという。
 だとしたら敢えて――と。
「……!」
 放たれた斬撃を受け止めるのは、その身……鍛え上げられた「肉体」。
 首を斬られぬよう肩で、その刃を敢えて受けるニコ。
 けれど抜かりなく、肝心要の懐中時計は、後ろ手で隠したまま。
(「此れさえ無事なら痛みはすれど死にはしない」)
 ぎちりと刃の喰い込む感触と噴き出す赤の色に耐えながらも、ニコはハルへ声掛けを試みる。
「良き、物語であったな。登場人物に己を重ねるのも理解出来る」
 眼前のハルや最後の晩餐の主催者である宝木が心奪われた、『幻朧心中』という物語。
 それは間違いなく、美しき至高の世界であったけれども。
「だが、かの小説は虚構であるが故に美しい物語だ。現実に持ち込んではならないよ」
 ハルは、小説の中の桜の介添人にはなれない。
 彼女は影朧という、不安定な存在だから。
 ニコは、炎と氷のルーンを宿す大小二振りの双剣を構えて。
 ――望み通り「死なせてやろう」、乙女よ。そうして「次」の生を得るのだ。
『……!!』
 刹那、その誤った影朧の時間を止め、来世への時を新たに刻むべく。
 ――かの作家が紡ぐ世界も、君を待っている。
 そうニコは長針と短針を思わせるその切っ先を、ハルへと向ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
痛む腹を押さえながら、
流れ込む思念に吐く息は重い
嘗ての救えぬ人は病魔の末に、
殺して欲しいと請うた人だったから

けれど、だからと云って
貴方を桜の介添人とする事が、
救いになるとは思えないな

だから、少女の刀は見切って
後ろへと避けると共に詠唱、
手にした魔導書を花弁へ
説得を優先するが故に、
腕や手を狙い武器落としや
行動を妨害する意思以て放つ

陶酔するのは良い、けれど
貴方達は都合の良い脚本として、
『幻朧心中』の物語を選んだだけだ
本当は、他に、往く路はある筈だ
他にも終わりが、ある筈なんだ
貴方にも、集まる人にも、確実に

だから、これはね、ハルさん
無理心中でしか、ない
貴方の救いにすら、ならない
だから、――止めてみせるよ



 ――死にたい、殺して欲しい、楽になりたい……。
 流れ込んでくる影朧の生前の思い。
 それに吐く息重いのは、痛む腹を押さえるライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)。
 嘗ての救えぬ人と、同じ。
 病魔の末に、殺して欲しいと――そう請うた人だったから。
 瞬間、ライラックの目の前で巻き起こるのは、無数の桜吹雪。
 そして刀握る眼前のその姿は、小説の中に出て来る桜の介添人を確かに思わせるものではある。
「けれど、だからと云って貴方を桜の介添人とする事が、救いになるとは思えないな」
 だからライラックは、その刃に首を刎ねられるわけにはいかない。
『楽に、なりたいでしょう? 私は……なりたかったの』
 刹那放たれるは、死に損ないの首を切断するほど鋭い斬撃。
 けれどその一撃は、ライラックの首を落とすことはできない。
 咄嗟に後ろへと飛んで避けるとともに詠唱し、春色の魔法を編みだして。
 ――どうか届きますように。
 手にした魔導書が、はらりほろりと綻んでいく。
 そしてライラックの手を離れたリラの花弁が、少女を介添人なんかにしないと。
 行動を妨害するかの様に舞い踊れば。
 紡がれるのは、説得の言の葉。
「陶酔するのは良い、けれど。貴方達は都合の良い脚本として、『幻朧心中』の物語を選んだだけだ」
 確かに『幻朧心中』という小説が好きで、心奪われたのかもしれない。
 けれどハルが今やらんとしていることは、都合よくそれを利用しているだけ。
 そして登場人物たちが迎える結末は、小説の通りなんかでは、決してない。
「本当は、他に、往く路はある筈だ。他にも終わりが、ある筈なんだ」
 ――貴方にも、集まる人にも、確実に。
『……櫻居先生が書いたものとは、別の……結末?』
 そうふと呟いたハルに、ライラックははっきりと言って聞かせる。
「だから、これはね、ハルさん。無理心中でしか、ない。貴方の救いにすら、ならない」
 これは小説の様な、美しい作り話ではないと。
 そして朧に咲く桜と混ざり合い、再び数多のリラの花弁が戦場に舞い踊る中、ライラックは続ける。
 ――だから……止めてみせるよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

迎・青
(他猟兵との連携・アドリブ歓迎)
(怖い夢と、哀しい夢を見た気がする。涙を流して目を覚ます
自分が何をしたか思い出し軽く震える
身体にかけられていた白い上着は預かっておく)

…おねーさんは、つらかったんだね
みんなを助けたかったのなら
ボクがジャマしちゃいけないのかもしれない
…でもボクは、みんなつらくないのがいい
おねーさんも、パーティーであったひとたちも
「よかった」っておもえたら
またどこかで…さむくないところで会えたら、ボクすごくうれしい

影朧の説得を試みる
【第六感】で隙を見つけ【P.P.P.】使用
相手に触れ、その殺意を消しにかかる
(結果を問わず)ハルおねーさんが「これでよかった」と思えるようにと【祈り】



 夜空に散る桜花弁の様に、はらり止めどなく。
 その幼い瞳から流れ落ちていたのは、涙。
 ――怖い夢と、哀しい夢を見た気がする。
 ぶるりと迎・青(アオイトリ・f01507)が震えているのは、寒いだけではない。
 自分が何をしたかを、思い出したから。
 けれども、少しその寒さを和らげてくれたのは、きゅっと小さなその手で握る白い上着。
 そしてまだ震えは止まらないけれど。
 どうして此処に来たのか……青はそれを思い出して、頑張って顔を上げる。
 そこには……桜吹雪と共にやって来た、桜の介添人の姿。
『そんなに震えて……今、楽にしてあげるね』
 鋭く冷えた刃の閃きを見れば、またあうあうと足が竦んでしまいそうになるけれど。
「……おねーさんは、つらかったんだね」
 でも青は逃げずに、ハルを説得するべく声を掛ける。
「みんなを助けたかったのなら、ボクがジャマしちゃいけないのかもしれない。……でもボクは、みんなつらくないのがいい。おねーさんも、パーティーであったひとたちも、「よかった」っておもえたら」
 ――またどこかで……さむくないところで会えたら、ボクすごくうれしい、って。
 自殺志願者たちの心が少しでも和らぐようにと、悲しみやつらい事が少しでも減るようにとー―そう願った気持ちは、ハルに対しても同じだから。
『つらくない……ほうが……私は、つらくて……でも……』
 青がかけた言の葉に反応するように、ぽつりぽつりと、そう零し呟くハル。
 そして、ほわり和むオーラを纏う小さなその手を、頑張って伸ばして。
 ――……だいじょうぶ、ほわほわだよ。
『……っ!?』
 刹那、驚き見開かれるハルの瞳。
 触れたその手で影朧の殺気を消してみようと試み、そして青は祈る。
 ――ハルが「これでよかった」と、そう思えるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレスタイト・ヴェニット
カディ(f01636)と
☆アドリブ歓迎

抱きしめられた温もりは何よりも力になったの
だからハルさんにも知って欲しい
癒しに力を尽くしたい

陸地に着いたらお互いの傷をできるだけ癒して体勢を整え
カディを守るため周囲に警戒
接敵したら無敵城塞と説得を

ボクは過去に死にたいと願ったことも
自由がなく生きるのが苦しいこともあったけど

生きる力になる出会いがあったの
ハルさんにも手を握ってくれるあったかい光があるよ
ううん、そばにずっとあったんだと思う
お父さんはきっとハルさんを迷惑だなんて思ってなかったよ
少しでも長く一緒にいたいと願ったよ

…カディの光がハルさんにも希望に見えたらと
次に繋がるようにと
優しいキミに次の生をと願うよ


カーディナル・レッド
セレスタ(f01381)と共に
(アドリブ・関係進展歓迎)

死の淵より生還し次第
生まれながらの光でセレスタを優先し回復
疲労でより死に損ないに相応しい呼吸になりそうだが
それでハル嬢が現れるのならある意味正しいか

セレスタは救おうとしているから
僕は上手く行くよう祈りながら回復をし続けよう

僕も過去に一度死にかけた事がある
それでも今セレスタのお陰で此処にいるのだから
容易く介錯される気は無いな
落ちる瞬間に死んでも構わないと思ったのは君のためではないんだ

桜の介添人は孤独だろう
苦しむ者の顔を見ながら、自分独り取り残されるのだから
美しいお嬢さんにそんな想いはさせたくないものだ
…僕が君を助けたい理由なんてそんなものさ



 一緒にだったら、死んでもいい――なんて。
 一瞬思ってしまったのはきっと、相手がきみだったから。
 けれどそれ以上に、傍にいたい……一緒に生きたいってそう思ったから、再び共に還ってきたんだ。
 死の淵から生還したばかりにも関わらず、自身が疲労することにも厭わずに。
 セレスタイト・ヴェニット(優翼・f01381)を癒すことを優先し、優しく輝く光を放ち彼女へと与えるのは、カーディナル・レッド(優しい嘘・f01636)。
 そして、まるでより死に損ないのようだと。
 大きく荒く肩で呼吸をしながらも、赤の瞳を細める。
(「それでハル嬢が現れるのならある意味正しいか」)
 死に損ないの元へと現れるという、桜の介添人。
「……!」
 刹那、桜吹雪が嵐の様に巻き起こり――思惑通り、刀を携えた影朧が姿をみせる。
 自分たちの首を斬り落とし、死へと導くために。
『死にたいっていう願い……今、叶えてあげるね』
 瞬間、先制の刃がセレスタイトの首を狙い、繰り出されるけれど。
 その衝撃は、無敵城塞を展開した彼女には、届かない。
 そしてセレスタイトはハルを見つめ、改めて心に思う。
(「抱きしめられた温もりは何よりも力になったの」)
 包み込まれる温もりは、不安や恐怖に打ち勝つ勇気をくれた。
 それはきっと誰のものでもよかったわけではない、彼が与えてくれたものだったからだと。
 だからハルにも知って欲しいと……その身を挺し、彼女の前に立つ。
 ――癒しに力を尽くしたい、と。
 そんなセレスタイトが、ハルを救おうとしているから。
 カーディナルは上手く行くよう祈りつつ回復をし続けようと、再びその身に光を宿し、彼女を支援する。
 そして彼の優しくあたたかな光を背負いながら、セレスタイトは言の葉を紡ぐ。
「ボクは過去に死にたいと願ったことも、自由がなく生きるのが苦しいこともあったけど。生きる力になる出会いがあったの」
『……いきる、力……?』
 ぼつりとそう零れた声に、こくりと頷いて。
 さらに思いを紡いでいくセレスタイト。
「ハルさんにも手を握ってくれるあったかい光があるよ。ううん、そばにずっとあったんだと思う。お父さんはきっとハルさんを迷惑だなんて思ってなかったよ。少しでも長く一緒にいたいと願ったよ」
『……お父さん』
 影朧は不安定な存在。今、掛けられる言葉に、大きくその心は揺れて。
 だからこそ……転生という道も、拓かれているのだ。
 は、と息を大きくつきながらも、カーディナルは癒しの光を尚も輝かせつつ口を開く。
「僕も過去に一度死にかけた事がある。それでも今セレスタのお陰で此処にいるのだから、容易く介錯される気は無いな」
 ――落ちる瞬間に死んでも構わないと思ったのは君のためではないんだ、と。
 カーディナルの耳に今もなお残るのは、まるで愛の告白の様だった、彼女の言の葉。
 そしてそれを、自分は受け入れたのだ。
 この心に生じている、彼女に対する正直な想いのままに。
 けれど、死んでも構わないと思ったのは、影朧……ハルのためではないとはいえ。
「桜の介添人は孤独だろう。苦しむ者の顔を見ながら、自分独り取り残されるのだから。美しいお嬢さんにそんな想いはさせたくないものだ」
 ……僕が君を助けたい理由なんてそんなものさ、って。
 本人は否定していたけれど、優しい王子様の如き微笑みを宿してから。
 カーディナルは纏う聖なる光で癒しを施すべく、後ろからそっと、セレスタイトの身体をその腕で包み込む。
 そして、そんな己の身体いっぱいに満ちる愛しきその光が、ハルにも希望に視えたらと。
 セレスタイトは彼女に願う……次に繋がるようにと。
 ――優しいキミに次の生を、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

ん…よく寝た
ステラがまだ、寝ていたら
起きるまで見ていよう
…息をしている。よかった。
介添え人に取られてしまわないように、【籠絡の鉄柵】を部屋の入口に待機、させておこう
だめ、だぞ。やらない。
元より我らは、器物が壊れぬ限りは死ねないからな。

鉄柵が切断されたら、カガリもちょっと痛いが
残る柵ではるを拘束して、【追想城壁】を

死にたいという願い。それを叶える存在。
苦しみが続かないように、というのは。有情なのだと思いたいが
…それは、架空のひとや、ものが、背負うべきで
お前自身が、なってはいけなかった
でも…ひとつだけ、叶うかもな
新たに生き直すことを、願うと。桜吹雪が、導いてくれるようだぞ。


ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

毒と酒のせいで少し頭が重い
起きる気分になれない
それに視線を感じるからしばらくは寝たふりをしておこう
この状況をもう少しだけと思うんだ

流石にハルが現れたら起きる
ドレスの裾を動きやすいようにたくし上げて

私の首を撥ねられるなら撥ねてみろ
刃が門に阻まれることなく届くならば

彼が余計に傷つく前に終わらせるとも
彼女の願いは叶えるべきでない
死にたいという願いを他者に願う者、それを叶える者
私はそういった者とは相容れない
死にたい願いは叶えたくないからその者が生きる道を示す方だ

…ハル殿、貴女の過去はもうどうしようもない過去だ
だがこれからの未来ならばまだ作れるだろう
桜に願う、貴女に次の幸せを



 薄っすらと開かれる紫の瞳が映したのは、まずは見慣れぬ天井。
 そして――ふと隣でまだ眠っている、ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)の姿。
「ん……よく寝た」
 まだ寝ている様子のステラを起こさぬよう、そっと身を起こしつつも。
 出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)は、起きるまでと、ステラの寝顔を見つめて。
「……息をしている。よかった」
 スウッと感じた寝息に、ホッと安堵するように瞳を細める。
 そして部屋の入口へと待機させるは、城門の一部――宙を泳ぐ頭の無い黒い魚骨が変化した鉄柵。
 健やかに眠る愛しい人を、介添え人に取られてしまわないように。
 そうカガリが『籠絡の鉄柵』を成している間に。
(「毒と酒のせいで少し頭が重い」)
 ……起きる気分になれない、と。
 二人で一緒に飲んだ初めての酒は、ある意味忘れられないものになってしまった。
 それに自分を見つめる視線を感じるから……しばらくは、寝たふりをしておくステラ。
 この状況をもう少しだけと――そう、思うから。
 ……その時だった。
「――!」
 青の瞳を開き、素早く身を起こしたステラは、ドレスの裾を動きやすいようにたくし上げる。
 同時に、カガリはふるりと金の髪を揺らし首を振り、突如巻き起こった桜吹雪へと言葉を投げる。
『……殺してあげる、死にたいんでしょ……?』
「だめ、だぞ。やらない。元より我らは、器物が壊れぬ限りは死ねないからな」
 張り巡らせた鉄柵は切断された感触は、ちょっと痛いけれど。
 そう簡単には死んでやれないし、絶対に死なせたりはしない。
 これまで首を落とさんとした猟兵と対峙してきたからだろうか。
 桜の介添人の表情には迷いの色による苦悩がみてとれ、その身にはいくつもの傷がある。
 けれど、握る刀を振り上げ、先制の斬撃を繰り出してくる桜の介添人。
『……!』
 しかし、首を斬り落とさんと放たれた一太刀は相殺される――『追想城壁』、カガリの放った城壁の幻影によって。
「私の首を撥ねられるなら撥ねてみろ、刃が門に阻まれることなく届くならば」
 ステラはよく知っている、城門の守りを破るのは容易な事ではないと。
 それに何よりも。
(「彼が余計に傷つく前に終わらせるとも」)
 いくら器物が破壊されなければ死なないとはいえ、痛いものは痛いし。
 痛いのは嫌だと、そう彼は言っていたから。
 ステラ自身、人々の願いと想いに寄り添ってきた――白銀の流星にして希望の星。
 だからこそ、ハルの思いには賛同できないのだ。
(「彼女の願いは叶えるべきでない。死にたいという願いを他者に願う者、それを叶える者。私はそういった者とは相容れない」)
 ――死にたい願いは叶えたくないから、その者が生きる道を示す方だ、と。
 そしてステラは眼前の少女へと、青き希望の煌めき纏う瞳を向け紡いで。
「……ハル殿、貴女の過去はもうどうしようもない過去だ。だがこれからの未来ならばまだ作れるだろう」
 桜に願う――ハルの次の幸せを。
『……私の、未来……?』
 ぐらり、その心がまた大きく揺らぐ。
 そんなハルの様子に、カガリも言葉を重ねる。
「死にたいという願い。それを叶える存在。苦しみが続かないように、というのは。有情なのだと思いたいが……それは、架空のひとや、ものが、背負うべきで。お前自身が、なってはいけなかった」
 そしてカガリは、ハルの姿を映した紫の瞳を細め、続ける。
「でも……ひとつだけ、叶うかもな」
 ――新たに生き直すことを、願うと。
『……新たに……私、今度は……今度こそ、自由に生きれるの、かな……?』
 生きたい――そう零れた言の葉に頷いて。
 死ではなく、生を望んだ、その願いを叶えてあげるべく。
 天駆ける一筋の流星が、影朧……ハルの迷いを、断ち切ってあげて。
「桜吹雪が、導いてくれるようだぞ」
 まるで癒しを得て安らかに消えゆくハルを、来世へと導かんと。
 刹那、ふわりと舞い上がるは――月光に輝く、無数の幻想的な桜花弁であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月06日


挿絵イラスト