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廃劇場の少女

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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「『逢魔が辻』って聞いたことがありますか?」
 フェリクス・フォルクエイン(人間の天馬聖騎士・f00171)曰く、サクラミラージュの世界で影朧の大量発生により帝都桜學府が対処できず放棄してしまった場所の事を言い、サクラミラージュの世界内のあちこちに存在するのだという。
「その様子は千差万別で、街の一角が夜の帳で覆われていたり、水の腐敗した下水道なんかに変貌したりしてるみたいですけど――」
 君たちにフェリクスが赴いてほしい場所は、かつて劇場のあった場所。
「過去のとある出来事が理由で劇場は廃墟になり、その後取り壊されたはずなのだそうですが」
 逢魔が辻となったことで、今は更地になっていた筈の場所に廃劇場が聳えているという。
「廃劇場の主の力に惹かれてか、もともと大量発生していたモノが居座ったのか、この逢魔が辻は影朧の巣となっています」
 このまま放置しては影朧達が事件を起こすかもしれない。
「周辺の安全の為にも群れる影朧達を駆逐、最奥に居ると思われる主の影朧も倒すか転生させ、廃劇場を制圧してください」
 もし、駆逐について疑問の声を上げたなら、群れている影朧は理性に乏しく転生は望み薄の様なんですとフェリクスから補足の説明が聞けたことだろう。
「群れを成す影朧は影朧化した果実的野菜と絶滅した狼の影朧。先に遭遇するのは果実的野菜の方だと思いますけど――」
 狼の影朧達は果実的野菜と猟兵達との戦いを見て何らかの対処を練ってくる可能性があります、とフェリクスは言う。
「遮蔽物を盾にしているのを見たら、それを真似るとか。上手く逆手にとれれば戦いを有利に進められるかもしれません」
 むろん、どのように戦うかは君たちの自由だ。数を頼みとする影朧達達の戦闘力は個々で戦う者のそれと比べるまでもない。
「いずれにしても、主のところまでたどり着くには群れを撃破する必要があります」
 ただ突破しただけでは挟撃される恐れがある。故に撃破は必須。
「影朧の群れを撃破して舞台にたどり着けば、この廃劇場の主である影朧が居ますから」
 決着をつければ依頼は達成となる。
「サクラミラージュの世界の皆さんの為にも」
 どうかよろしくお願いしますねとフェリクスは頭を下げたのだった。


聖山 葵
 新しい世界、サクラミラージュですか。

 という訳で、今回は影朧の巣となった廃劇場に潜む影朧達を倒すか転生させて逢魔が辻を制圧していただくお話となっております。

 戦場は章が進むごとに「ロビ→客席→舞台」と移行し、ボス戦は舞台の上でとなる模様。

 ではご参加お待ちしておりますね。
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第1章 集団戦 『果実的野菜『すいかぼちゃ』』

POW   :    闇討ち攻撃
技能名「【先制攻撃/2回攻撃/マヒ攻撃/闇に紛れる】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    ゴールデンすいかぼちゃ
【ゴールデンすいかぼちゃ】に変身し、武器「【三叉槍】」の威力増強と、【蝙蝠の翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ   :    癒し蜘蛛
【癒し蜘蛛】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。

イラスト:kamiya jun

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

九十九・静香
※連携・アドリブ可

あらあら、大量の影朧が相手とは……ふふ、筋肉が鳴りますわね♪

車椅子に座った少女の姿から、筋骨隆々の筋肉令嬢の姿に変身し
【怪力】で振り回したアリスランスや拳、蹴りで敵を攻撃していきますわね

UCで背中から蛇を伸ばし、体温検知器官で闇に紛れている個体を探し、
見つけたら振り向きざまの裏拳でカウンターを仕掛けますわ
「いくら姿が見えずとも、蛇の能力ならば体温で見つける事はできますの。ふふ、ゴメンあそばせ?」

敵が固まったなら、アリスランスを構えて大臀部と脚筋肉でのあらん限り猛ダッシュでの【ランスチャージ】で一気に敵を貫きますわ
「そういえばそろそろ南瓜のお祭りの時期だと聞きましたわね?」


ラヴ・フェイタリティ
【アドリブ歓迎】
ラヴ様フルーツっぽい野菜とか言って誤魔化すの許さない宗派なので遠慮なくぶちのめすぜ。野菜は野菜だオラァ!浅漬けにしてパリパリにしてやらァ!

宗教的対立によりヒートアップするソウル…枷を付けずあえて解き放つ!ヒロインオーラを身に纏い、行くぜラヴハイパーモード!ラヴジェットを噴かして空を飛び、破壊光線で敵を薙ぎ払う!
カボチャとかスイカとか頭ベジタブルどもがなーっ!フルーツ面をなーっ!ゆるさーんっ!



「おう、なんつーか、本当にボロッボロだなぁ」
 周囲を見回し遠慮なく評したラヴ・フェイタリティ(怪奇!地下世界の落ちものメインヒロイン!・f17338)
は入り口に歩み寄って扉に何とか残った取っ手を掴んで引き。軋む廃劇場の扉が開かれれば、内に潜むモノ達の顔の形に空いた穴が一斉に入口へと向く。
「あらあら、大量の影朧が相手とは……ふふ、筋肉が鳴りますわね♪」
 幾つもの果実的野菜ことすいかぼちゃを視界に入れたまま微笑んだ九十九・静香(怪奇!筋肉令嬢・f22751)が車椅子に座った少女であったのは言葉の途中まで。爆発的に体躯が膨れ上がりつつ筋骨隆々の肉体へと変化する過程で文字通りに肉を鳴らせながら静香は立ち上がると、地を蹴りまだ戸口に居るラヴの横を通り抜けて内部へと飛び込んだ。
「まぁ、ごめんなさい」
 この時、驚きの言葉に謝罪を伴ったのは脆くなっていた扉が静香の力に耐えきれず蝶番部分を建物側に残す形でもげてしまっていたからだろう。手を離された扉が空しく音を立てて倒れ込み。
「ですけれど……ヌゥンッ!」
 それとこれとは別とばかりに振り回した美しき白銀の槍は、三つ積み上げられたすいかぼちゃの実のうち二つを穂先で粉砕し、最も下の一つすら半ばまでかち割る。
「成程、個々は本当に大したことなさそうだな。ラヴ様フルーツっぽい野菜とか言って誤魔化すの許さない宗派なので、遠慮なくぶちのめすぜ」
 先陣を切った静香の一撃である程度相手の力量を知ったラヴもすぐさまこれに続く。
「見えたぜ……水面揺らす一滴! メインヒロインの到達点! ラヴハイパーモード!!」
 宗教的対立により熱く燃え上がる魂に枷など無用、敢て解き放つことでオーラを身にまとい飛翔能力すら得たラヴの動きは新たな侵入者を捉えたすいかぼちゃ達の想像のさらに先を行った。すいかぼちゃ達の一部も身体を金色に変えて浮き上がるが身体ごとぶつかるような形で突く三叉槍の穂先はラヴではなくラヴが来ると予測した何もない空間を空しく貫き。
「野菜は野菜だオラァ! 浅漬けにしてパリパリにしてやらァ!」
 バリバリと放たれた破壊の光線に薙がれると蝙蝠の翼が生えた中央の実を失ったすいかぼちゃは床に落下して砕け散る。
「カボチャとかスイカとか頭ベジタブルどもがなーっ! フルーツ面をなーっ! ゆるさーんっ!」
 屠った相手にはもはや目もくれず、ラヴは憤りを胸に次のすいかぼちゃへと襲い掛かり。
「わたくしも負けていられませんわね。ハアァッ!」
 触発された静香も握りしめた拳をすいかぼちゃへと叩きつける。影朧は徐々に数を減らしていた。とは言え、数に頼るタイプの相手でもある。中には味方が屠られる隙をついて反撃に出ようとする個体も居り。
「いくら姿が見えずとも、蛇の能力ならば体温で見つける事はできますの。ふふ、ゴメンあそばせ?」
 背中から伸ばした蛇で闇討ちを察知した静香は振り向きざまの裏拳で闇の中から先制攻撃を仕掛けようとしたすいかぼちゃを逆に叩き落とす。野菜とはいえ口から舌が出てるし、内部が光ってるので、きっと熱は有しているのだろう。
「そういえばそろそろ南瓜のお祭りの時期だと聞きましたわね?」
 尚も攻撃を続けつつ静香がふいにそんなことを考えたのは、敵の身体の半分がカボチャであるからか。
「それはそれとして」
「数を頼りにするって言うだけのことはあるな」
 ランスチャージで引っ掛けたすいかぼちゃの破片を振り落した静香とヒロインオーラを身にまとったまま空にあるラヴの視界の中、薄暗い廃劇場のロビーの中にはまだまだいくつものすいかぼちゃの顔がほのかにひかりつつ猟兵達を見ているのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

山梨・玄信
もう、この運命からは逃れられんのかのう。そろそろ、飽きられているのではないかと心配しておるんじゃが…。

【POWを使用】
零殿の合図があるまでは、物陰に身を潜めておるぞ。
…何時ものセリフが来たら飛び出して虚空を見つめ、褌一丁になると神々しい女性を召喚するぞい。
そのまま、零殿を中心に暴風で敵を吹き飛ばしてやるのじゃ。
しぶとく生き残る奴が居るなら、見切りと第六感で攻撃を躱しつつ、鎧無視攻撃でとどめを刺して行くぞい。

「頼んだぞい、何時もの人。奴らを骸の海まで吹き飛ばしてやるのじゃ!」

アドリブ、絡み歓迎じゃ。


高柳・零
POW
廃劇場が影朧の巣窟ですか。
…ヌギカル☆玄信の活躍にはピッタリの場所ヌギ。

「この程度なら、自分一人で充分ヌギ。かかってくるヌギ!」
先ずは前に出て挑発し、南瓜をこちらに集めます。
先ずは一体を鎧砕き付き2回攻撃で叩き割り、その後は盾やオーラ で防御に徹します。

敵の攻撃が激しくなって来たら無敵城塞で完全防御して、真打を呼びます。
「さあ、玄信。脱衣だヌギ。ヌギカル☆玄信に変身だヌギ!」

無敵城塞は保ったまま、自分も巻き込んでUCをぶちかましてもらいます。
それでも生き残りが居るなら、範囲攻撃や2回攻撃で掃討します。

「さて、これを見た狼はどうして来るヌギ?」

アドリブ歓迎です。



「もう、この運命からは逃れられんのかのう。そろそろ、飽きられているのではないかと心配しておるんじゃが……」
 物陰で三角座りしたまま潜む山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)は歎息すると、ちらりと盟友である高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)の背へと視線をやった。
「廃劇場が影朧の巣窟ですか。……ヌギカル☆玄信の活躍にはピッタリの場所ヌギ」
 そんな独り言を聞き。
「『これを足掛かりに、劇場版ヌギカル☆玄信へとこぎつけるヌギ』などと化学変化せんじゃろうな?」
 と危惧していたかは定かでないが、ともあれ玄信は待つ。未だ残るすいかぼちゃ達の方へと一人、盾を手に進みゆく零が合図を送ってくれるのを。
「本当にウヨウヨいるヌギ」
 一方で、敵とただ中へと進み出た零は周囲を見回し、呟く。骸の海へ還りかけている果実的野菜の残骸は先陣を切った味方が倒した個体であろうが、それなりの数を討たれて尚、充分な数を残すすいかぼちゃ達は半円形に零を包囲していた。天敵が単独で突っ込んできたのだ。当然と言えば当然の反応であり。
「この程度なら、自分一人で充分ヌギ。かかってくるヌギ!」
 一見すれば窮地にも見えるこの状況に、零は怯まない。むしろ挑発さえして、これに最寄りのすいかぼちゃが応えた。
「ヌギっ!」
 蝙蝠の翼で羽ばたきながら飛び掛かってきた三個セットの果実的野菜は振るわれた零のメイスで叩き落とされ、床にはねたところで返す二撃目を受けて砕けながら吹き飛ぶ。
「どうしたヌギ? こんなモンヌギ? ヌッ?!」
 尚も挑発すれば、今度は複数のすいかぼちゃが一斉に襲い掛かり。
「甘いヌギ! どうしたヌギ? 全然平気ヌギよ!」
 流石に防戦一方になるも、盾と身を包むオーラで凌ぎつつ零は更に影朧達を挑発する。零には切り札があった。
「っ」
 無敵城塞。攻撃がさらに激しくなろうと、超防御モードの身体は闇にまぎれての強襲にも三叉槍を突き刺さんと身体ごとぶつかってくる攻撃にもかすり傷一つつかない。
「さあ、玄信。脱衣だヌギ。ヌギカル☆玄信に変身だヌギ!」
 攻撃を弾きながら叫ぶ声こそが、玄信の待っていた合図。
「待っておったぞ!」
 衣服に手をかけ、その呼びかけを聞いた玄信は飛び出して虚空を見つめ着衣を脱ぎ捨てる。若干自棄になっているような気もするが、それはそれ。
「玄信、わたくしも戦いましょう。さぁ、共に正義をなすのです」
「うむ。頼んだぞい、何時もの人。奴らを骸の海まで吹き飛ばしてやるのじゃ!」
 現れた神々しい女性の幻影に褌一丁で頷き願えば、荒風が吹いた。光を帯びた強い風は零とそれを取り囲むすいかぼちゃ達にぶち当たり、まるで衣服を脱がせるかのように零へ取りつく影朧の群れをはぎ取り、吹き散らしてゆく。
「流石ヌギ」
 超防御モードのまま、風に吹かれる零の視界で吹き飛んだすいかぼちゃ同士がぶつかり砕け、幾体かの影朧は壁に叩きつけられて残骸と化し。
「とは言え、すべてともいかんようじゃの」
 むしろ仲間をクッション代わりに生き残ったすいかぼちゃを見据え、玄信は前に飛ぶ。
「ぬっ」
 闇に紛れて強襲してきた影朧の三叉槍を身体を傾けて避け。
「見切ったのじゃ、せいっ!」
 空しく虚空を貫いた三叉槍を掴みとると、引き寄せてすいかぼちゃ本体へ拳を叩き込む。
「随分数は減らしたはずヌギ」
 零もメイスを振るってフラフラ飛ぶ影朧を叩き落とすが、ほの暗いロビーの中にはまだいくつものすいかぼちゃの顔から光が漏れている。
「元の数が多かった、ということじゃろう、なっ!」
 第六感を頼りに襲いくる影朧を躱しつつ玄信は言う。
「ならもう一息ヌギ! それはそれとして――これを見た狼はどうして来るヌギ?」
 未だ攻防を続けつつ、ちらりと零は廃劇場の奥の方を覗き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

山梨・玄信
倒しきれんかったか。
じゃが、もう一押しじゃ。行くぞ、お供の妖精!

【SPDを使用】
折角脱いでるんじゃから、最初から最高速でUCを使うぞい。
オーラを全身に纏い、見切りと第六感とUCのスピードで敵をかき回すのじゃ。

目や口の空いている部分に2回攻撃を乗せて攻撃し、敵が密集していたら気の放出で纏めて倒すのじゃ。
飛んでも衝撃波で撃ち落とすぞい。

攻撃範囲外の敵はお供の妖精に任せるのじゃ。

「(虚空を見て頷き)このまま一気に押し切るぞい」
「武器の威力を上げても、当たらなければ意味は無いのじゃ!」
「落ちろ!カト…南瓜頭!」

アドリブ、絡み歓迎じゃ。


高柳・零
WIZ
数が多いのは厄介ヌギね。
狼戦の事を考えると、あんまり手の内は見せたくないヌギが…。

「玄信が前に出るなら、今度はこっちが遠距離攻撃するヌギよ」
オーラと盾で守りを固めつつ、全体の様子を見ます。
ヌギカル☆玄信の攻撃範囲に入っていない、又は背後から狙ってる敵を優先して光を落とします。

癒し蜘蛛には全ての指を使って広範囲に光を落とし、すべて片付けます。
撃ち漏らしたらオーラで身を守って、噛まれないようにします。
「ヌギヌギランドの住民は布団やベッドでしか寝ないヌギ。裸で寝ると風邪をひくヌギからね」

アドリブ、絡み歓迎ヌギ!



「倒しきれんかったか。じゃが、もう一押しじゃ。行くぞ、お供の妖精!」
 そんな盟友に一声かけて玄信が痛んだロビーの床を蹴る。女性の幻影を喚んだ時、衣服は脱ぎ捨てていた。
(「数が多いのは厄介ヌギね。狼戦の事を考えると、あんまり手の内は見せたくないヌギが……」)
 すぐさま最高速に達す玄信へ、それでも影朧がすぐさま迎撃に移れたのは、数が居るという強みがあってか。
「武器の威力を上げても、当たらなければ意味は無いのじゃ!」
 だが、鋭利な穂先が玄信の肌を捉えきれず空しく闇を貫く。
「玄信が前に出るなら、今度はこっちが遠距離攻撃するヌギよ」
 褌一丁の身軽さからくる高速に翻弄され、盟友に三叉槍を掠らせることすらできぬ有様のすいかぼちゃ達を見て思案をやめた零は片手で持った盾を構え、身に纏うオーラと共に見の守りを固めつつ、空いた手の指先を影朧へと向けた。
「天よ邪なる力を封じたまえ」
 玄信に気を取られていたすいかぼちゃは天から差し込む光に貫かれ、蝙蝠の翼を震わせると力尽きた様に落下し、床と激突して砕け。
「その調子です、玄信」
 女性の幻影の声に顔を上げ虚空を見て頷いた玄信は闇にまぎれて強襲してきた影朧の口に拳による二連撃を叩き込むと、薄い暗がりを目と口の形に切り取りぼんやり光る一角へ視線を向ける。
「このまま一気に押し切るぞい」
「了解ヌギ!」
 零からしても、異論はない
。視界の端に妙な蜘蛛を見つけた瞬間、盾を手放し。つい先ほどまで盾の持ち手を握っていた指さえも蜘蛛の方をさし。
「天よ――」
 再び降ってきた光がすいかぼちゃ諸共翼から糸でぶら下がる蜘蛛を呑み込み、消失させた。
「ヌギヌギランドの住民は布団やベッドでしか寝ないヌギ。裸で寝ると風邪をひくヌギからね」
「わしはどこからツッコむべきなんじゃろうな」
 さらっと事実確認が不明なことを言ってのける零に玄信は微妙そうな顔をしつつも、やるべきことは忘れていなかった。未だ群れる影朧の方へと衝撃波を放ったのだ。
「落ちろ! カト……南瓜頭!」
 纏めて衝撃波に巻き込まれたすいかぼちゃ達は各々同士でぶつかり合い、幾つかの欠片を零しながら壁に激突、言葉通り落下して既に残骸と化した仲間の後を追う。
「これであらかた片付いたかの?」
「おおよそはヌギ」
 周囲を見回し確認を取る玄信に頷いた零はただ一本指を立て。
「これで仕上げヌギ」
 頭上から闇にまぎれて一矢報いんと強襲する最後のすいかぼちゃを天からの光で撃ち落したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『影狼』

POW   :    シャドーウルフ
【影から影に移動して、奇襲攻撃する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    復讐の狼影
自身の身体部位ひとつを【代償に、対象の影が自身の影】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    ラビッドファング
【噛み付き攻撃(病)】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「グルルル」
 唸り声が漏れたのは、ロビーと客席を隔てた壁の隙間から。幾つもの赤い光点は、猟兵達の戦いを見ていた影朧たちのモノ。あちこちに散らばって纏まりがないのは、最後の最後ですいかぼちゃ達が範囲攻撃に巻き込まれていたのを見て、学習し、散開したからか。猟兵達が舞台までたどり着くには、この影の狼達の撃破も必須であった。
九十九・静香
※連携アドリブ可

成程、散会の手で来ましたか
中々に頭の良い事です。ならば、筋肉で真正面から破るのみですね

断部流を【怪力】で振るい攻撃していきます
影に潜ったようならUCで体の一部を超音波発生器官と受信器官に変え
周囲に超音波を発射
奇襲してきた敵に跳ね返って来た音波を受信したならばそこをすかさず【カウンター】で攻撃
怯んだ所を尻尾を掴み、別UC『びったんびったん』で巨大振撃(ジャイアントスイング)の形でぐるぐる周囲向けて振り回し
周囲に展開している敵を掴んでいる敵の体や牙や爪で攻撃
刺さったり引っかかったりしたらそのまま更にぶん回して攻撃しましょう
最後は思い切り地面に叩きつけて【吹き飛ばし】ましょう


山梨・玄信
よし、ここまでの戦いで脱ぎ力は充分に溜まったのう。
ここはわしの真の力を見せる時じゃな。
………本当にこれでいいんじゃろうか、わし。

【POWを使用】
UCで強化された能力で敵の攻撃に真っ向から立ち向かうのじゃ。
敵が影から来るなら、聞き耳と第六感で位置を見切り、攻撃を躱すのじゃ。必要なら空中にも回避するぞい。
オーラは常に全身に展開しておき、脱ぎ力と二重のオーラで受けるのじゃ。

気の放出は見せているから敵は一箇所には集まらないじゃろうし、鎧無視の2回攻撃で一頭ずつ確実に仕留めて行くのじゃ。

「ヌギカル☆玄信参上じゃ!」
「さっきのはスピードのみの強化じゃったが、今度は全体強化じゃ!甘く見たな」

アドリブ歓迎じゃ



「成程、散開の手で来ましたか。中々に頭の良い事です」
 どことなく感心した態で評した静香は、壁に出来た裂け目ではなく客席への入口へと視線を向け歩み寄ると、外の扉同様かなりボロボロになった扉へ手をかける。
「ならば、筋肉で真正面から破るのみですね」
「ここまでの戦いで脱ぎ力は充分に溜まったのう。ここはわしの真の力を見せる時じゃな」
 有言実行とばかりに扉を開けて踏み込もうとする一方、一つ頷いた玄信も静香に続こうとし。
「……本当にこれでいいんじゃろうか、わし」
 足を止め、呟いた。誰かに答えを求めたわけではない。迷いと疑問が言葉の形となって口からもれただけのモノ。
「……玄信」
 だが、それでも聞こえた。
「わたくしは、信じております。時に迷い、進むべき方向が分からなくなったとしても――」
 玄信ならばきっと道を見つけ出すと続けた玄信自身にしか聞こえない神々しい女性の幻影の声が。
「ああ、やっぱりこういうオチか!」
 至極真っ当な事を言っているようなのだが、相手は脱衣の国の人っぽいのだ。
「やればいいのじゃろう、やれば! わしの真の力を見るがいい!」
 いつもの様に自棄になると露出した肌の映える輝きで全身を包み、ふわりと微かに浮かぶと滑るように前に進み出て。
「ヌギカル☆玄信参上じゃ!」
 今にも影の狼へ挑みかかろうとしていた静香の横まで進み出て名乗りを上げる。
「まあ」
「これも何かの縁、加勢するぞ」
 驚きの声を上げる静香に告げると床すれすれを飛翔しながら前に進み出て。
「フウゥゥン! わたくしも負けていられませんわね」
 肩に担ぐかのように断部流を持ち上げた静香もたわむ筋骨隆々の身体で床を踏み抜かん程に足へ力を籠め前に飛ぶ。
「「ギャウンッ」」
 玄信の拳と静香の断部流、それぞれに粉砕された影朧の悲鳴が重なる。小柄なドワーフと筋肉で膨張した身体の令嬢、体格差もあれば性別も違えど、強靭な筋肉を有し力任せの戦いを得意とする点は同じ。だからこそ、最初の一撃も真正面からの粉砕で重なったのであろう。
「ウウゥッ」
「影に潜ったか」
 馬鹿正直にぶつかっても返り討ちに合うだけと見たのか、唸り声を残して影狼達の身体が影へと沈み。
「ですけれど――」
「影から来るのは想定済みじゃ!」
 あえてそう来るであろうと踏んでいた玄信は耳を澄まし。
「闇夜を舞い血を啜り、音無き音で惑わす宵の獣。怪奇においでませ」
 静香が体の一部を吸血蝙蝠に変えることで放った超音波により周辺の異変を探る。
「ガウウッ」
「そこじゃ!」
 第六感の助けも借りて奇襲を見切り身体を低くした玄信の上を飛び掛かってきた影朧の身体が通り過ぎ。
「ガ」
「ヌゥウウン!」
 飛び出して来ようとした影目掛けてカウンターで掴みかかりに行った静香は影狼の顔面を捕まえる。
「あら、失礼」
 想定外の展開に一瞬動きが止まった影朧の尻尾を掴むと静香は頭を掴んでいた方の手を離し、即席の武器へと変えた。
「ガアッ、ギャ」
「ギャンッ」
 駒の様に回転しながら振り回した影狼が後に続くべく飛び掛かってきた影朧達を打ち返し、情けない悲鳴を残して影狼が吹っ飛びゆく中、玄信は静香へと影朧達の気がそれたのを好機と、一匹一匹に拳を叩き込んで各個撃破してゆく。
「さっきのはスピードのみの強化じゃったが、今度は全体強化じゃ! 甘く見たな」
「ギャ」
 輝きながら飛翔しているのだ。お世辞にも目立たないとは言い難いが、影朧達にとって敵はも一人いて、その上で玄信の実力についても見誤っていた。小柄な玄信ならば組み付いて押し倒してしまえばどうとでもなると思った影狼は思い違いごと頭部を拳による二連撃で叩き割られ。
「しかし、この狼も数が多いの」
 散開していることもあり、纏めてごっそりともいかない。ポツリと漏らす玄信の視界の中には、二人で倒した影朧よりまだ更に多い影狼の赤い目の光点が殺意を込めて闇に浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

高柳・零
POW
南瓜の次は狼ヌギ。
2つほど手の内を見せたヌギが、まだまだ手はあるヌギ!

ここから影朧が溢れ出すと一般人を危険に晒すという想いと共にUCを発動させます。
「こっちも脱衣して強化するヌギ!」
ヌギヌギランドの設定に合わせ、上着を脱いで空中に浮かびます。

オーラと盾で防御を固めつつ、敵のど真ん中に飛び込み範囲攻撃をぶち込みます。こちらは防御役と思って油断しているでしょうから。
「お供の妖精も戦えるのが、ヌギヌギランドの特長ヌギ」

影からの奇襲は空中に浮いて対処します。
空中に影は無いので、距離があれば察知しやすいので。
天井や壁にも注意して見切りつつ、盾とオーラで攻撃を受け止めます。

アドリブ歓迎ヌギ!


鳩麦・灰色(サポート)
「ウチ、やなくて私も手伝わせてもらうよ」
「アンタ(敵)はそこで黙ってて」

◆特徴
独り言は関西弁
話言葉はほぼ標準語
脱力した口調
『敵さん』の行動の意図を考える傾向があるが内容に関わらず容赦しない

◆行動
【ダッシュ】【クライミング】【地形の利用】で場所を問わず速く動く事が得意

戦闘は速さで回避重視
味方が居れば武器の音で【存在感】を出し率先して狙われにいく

攻撃は主に【衝撃波】を込めた鉄パイプを使用、空砲銃は場合に合わせて使用

◆UC
索敵、回避特化ではUC『三番』
集団戦では『四番』
敵単体では『一番』か『二番』を使用する

◆日常
日常は何かしつつ寝落ちる事が多い


協力絡みセリフ自由
他おまかせ。よろしくおねがいします!



「南瓜の次は狼、数が多いところは同じヌギ」
 故にいまだかなりの数が残る影朧達を前にしつつも零が怯むことはなかった。
「2つほど手の内を見せたヌギが、まだまだ手はあるヌギ!」
 微かに仄めかすそれこそが怯まぬ理由でもあるのだろう。だが、零が行動に移るよりも早く後方で足音がして。
「ウチ、やなくて私も手伝わせてもらうよ」
 宣言と共に鳩麦・灰色(音使いおおかみ・f04170)はお手製の改造鉄パイプを片手に飛び出した。
「よっ、はっ、ふっ、とっ」
 駆ける。客席の中を真っ直ぐに走る通路ではなく、等間隔に固定押されて座席の並ぶ地形を利用し、背もたれを足場に。
「ま、こんなとこやろ?」
 虚を突かれ、反応の遅れた影狼達を眺めつつ、灰色は振動させた鉄パイプを振り上げる。
「広がれ、『四番』!」
「ギャウッ」
「ギャン」
「グギャウッ」
 振り向いたもの、飛び掛かろうと身体をたわめるもの、影から影に移動しようとするもの。衝撃波と化した音はいずれの影朧をも等しく薙ぎ払う。「お見事ヌギ」
 いかに散開でお互いの距離を広く持とうとも、半径50m近い円の中にただ一匹のみが存在する間隔で分散できるほど客席は広くなく、同じ相手を狙おうとしたならどうしてもある程度距離は縮まる。
「こっちも脱衣して強化するヌギ!」
 上着を脱ぎ捨てつつ零が抱くのは何としてもここで影朧達をとどめねばと言う思い。廃劇場から影朧が溢れ出せば無辜の人々に害をなす。空中に浮かび上がる零の他人を護る想いは影狼達の存在を許容しえなかった。
「ギャイン」
「ガッ」
 灰色へ気を取られていたこともある。だが、先の影朧との時と戦い方を変えたのが大きい。なまじ、すいかぼちゃとの戦いを見ていたが為に、零が守りに徹したり遠距離攻撃を行うことなく空を飛び突撃してくるとは思わなかったのだ。
「お供の妖精も戦えるのが、ヌギヌギランドの特長ヌギ」
 盾を構え空を飛びながら敵のただ中に突っ込むと、広い範囲に向けて放った一撃で複数の影狼達をぶっ飛ばした零は床から離れる様上昇しつつ言ってのけ。
「ガアッ!」
「遅いヌギ」
 床にあった影から飛び出して奇襲してきた影朧の牙をあっさり躱す。床と距離を取ったのはこれが理由だろう。
「グルル」
「どこ見てる?」
 攻めあぐね、浮かぶ零を仰ぎ唸った影狼は、灰色の声を知覚した直後、視界の外から放たれた衝撃波に吹き飛ばされて壁のシミと化し。
「アンタはそこで黙ってて。さてと――」
 影朧の名残に一言くれた灰色は鉄パイプで床を叩いて音を出し。
「アンタ達の相手はこっちだよ」
 存在感と共に影狼達の目を引き付け。
「ナイスヌギ!」
 気を逸らされたところを再び零が狩る。
「ギャウッ」
「ギャンッ」
 悲鳴を上げた影朧の骸が観客の据わらなくなって久しい、いや既に失われたはずの座席に降る。
「それなりに数は減った筈やけど」
 全滅にはもう一息といったところだろうか。
「ガルルルル……」
 ずいぶん数を減じた影狼達はそれでも戦意をなえさせはせず牙をむいて唸るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

山梨・玄信
割と順調に行っているか…?
じゃが、油断はせんぞ。

【SPDを使用】
再び距離を取って、腰を低く構えるぞい。もちろん、褌一丁のままじゃ。着てる暇が無いせいじゃが。
真っ直ぐ突っ込むと見せかけその場で止まり、狼がこちらに向かって来た所に気弾を2回攻撃で撃ち込むのじゃ。

今度は見切りと第六感を頼りに攻撃を回避し、カウンターの2回攻撃の気弾で狼を確実に倒して行くぞい。回復する隙なぞ与えんのじゃ。

躱しそこなった時は、オーラと激痛耐性で耐えるぞい。

「体の一部を代償にか…自らを傷つける戦法は長持ちせんぞ」
「再生なら封じられるんじゃが…まあ仕方あるまい。回復させなければ良いのじゃ」

アドリブ歓迎じゃ。


高柳・零
POW
普通のオオカミならそろそろ尻尾を巻いて逃げるとことヌギが…影朧じゃ逃げないヌギね。

「残り少ないなら、積極的に攻めるヌギ」
引き続き盾とオーラで防御を固めつつ、武器受けに天斬りを仕込んでおきます。
そして、敵の攻撃を剣で受けた時、序でにダメージを与えます。
「防御技でも工夫次第で攻撃出来るヌギよ」
その後は剣で牽制しつつ、盾で攻撃を受け止めます。
敵の攻撃パターンは先程の攻防である程度見切ったので、それを応用します。それでも読みきれない時は、オーラで弾きます。

攻撃は相手が固まってる所に飛び込み、2回攻撃の天斬りで2体ずつ倒します。
「1体ずつ倒すよりは時間が半分で済むヌギ」

アドリブ歓迎です。



「割と順調に行っているか……?」
 残る影朧の数を見れば、玄信の見解は間違いではない。だが、隙あらば襲い掛かってくることも矢易く予想できるからこそ、玄信は油断しない。後方に下がって距離を取り。
「普通のオオカミならそろそろ尻尾を巻いて逃げるとことヌギが……影朧じゃ逃げないヌギね」
 冷静に観察しつつ零は盾を構え直す。玄信が距離を取ったなら、影狼達が狙ってくるのは、残った自分に他ならない。
「ガウッ」
「天に変わって悪を斬る!」
「ギャ」
 だが、防戦一方に甘んじるつもりは、欠片もなかった。影から影へと移動し、奇襲を仕掛けてきた影朧の爪を盾ではなく刃渡りの長いロングソードで受け止めると、そのまま振るい、触れた影狼の身体を両断してのけたのだ。
「残り少ないなら、積極的に攻めるヌギ」
「うむ、そうじゃの」
 骸と化した影朧の残骸が落ちる中、盟友の言葉に頷いた玄信は褌一丁のまま腰を落とし身構える。
「ガアッ」
「ほう、ならば――」
 攻撃に出るなら先んじようとしたのか、仲間を両断した零を避けたのか。影狼が向かってくるのを見た玄信は迎えうつべく身体を前に傾け。
「かかったの」
「ガウッ?!」
 口元を緩めた。影朧は床を蹴って真っ直ぐ突っ込んでくると踏んだのだろう。だが、実際は一歩として前には進んでおらず。
「はっ!」
「ギャウッ」
 放たれた気弾が二つ。一発目が飛びかかってくるところだった影狼を撃ち落し。
「ギャン」
「む、くっ」
 二発目に触れた後続の足が消し飛ぶのを確認するが、違和感を感じた玄信はとっさに横に飛ぶ。
「玄信?!」
「無事じゃ」
 盟友にすぐさま応答しつつ足もとを見れば、狼の頭部となった影の一部が獲物を捉え損ね空しく牙を鳴らしたところだった。
「しかし影が噛む、か」
 ちらりと先ほどの影朧を見れば消し飛んだかに見えた片前足は失われたまま。
「体の一部を代償にか……自らを傷つける戦法は長持ちせんぞ」
 呟くように声に出してみるが、恐らく影狼が忠告として受け取ることはあるまい。影朧達は追い込まれ、数も減らしている。全滅も時間の問題であってそもそもが長く持たなかったのだから。
「ガアッ」
 だから片前足のない影狼は躊躇わず更に体の一部を消失させた。
「案の定か。再生なら封じられるんじゃが……まあ仕方あるまい。回復させなければ良いのじゃ」
 再び影から生えてきた頭部に黙って噛まれる玄信ではない。回避に移りながらもカウンターの形で再び気弾を放つ。
「ギャア」
 今度こそ捉えんと影の噛み付きで玄信を補足することを優先した影朧は足が少ないこともあり、気弾を避け損ねて消滅し。
「さてと、あとは」
 身を包んだオーラによる減退と激痛耐性で牙が掠ったことを無視しつつ首を巡らせた。
「……ほう」
 その視線がとまったのは、盟友と影狼が向き合うところ。つまり残敵の居る場所だった。
「防御技でも工夫次第で攻撃出来るヌギよ。かかってくるヌギ?」
「「ガルルル」」
 唸るだけで零の誘いに影朧達は乗らない。仲間がそれで両断されているのを見ているからだ。とは言え、唸っているだけではどうにもならない。
「ガアッ!」
 焦れた一匹が影に潜って別の陰から現れ、奇襲に出たが、それは失敗だった。
「それはもうだいたい見切ってるヌギ」
 同じような攻撃を何度も見せられれば、盾で受け止めるぐらいはできる。翳した盾へ影朧のぶち当たる衝撃を感じつつが視線を向けた先は、今攻撃を仕掛けた敵ではなく、気弾を放つ姿勢を作った盟友の方であり。
「今ヌギ!」
「ギャン」
 盾に半ば乗っかる形だった影狼を跳ね飛ばせば、宙に浮かんだ影朧を気弾が打ち抜き。零は軌道を変えて落下してゆく敵を追うように前方に飛び込む。残る影狼達の居るその場所へと。
「1体ずつ倒すよりは時間が半分で済むヌギ」
 敵が密集する形になったのは偶然だ。だが、討つべき敵がまとまったなら利用しない手はない。
「天に変わって悪を斬るヌギ!」
 着地と同時にバスタードソードを一閃。さらにそこから跳ね上げるように斬り上げてもう一匹。
「ガ」
 残った一匹は玄信の二発目の気弾に頭部を砕かれ、仲間の後を追うように骸の海へと還ってゆく。
「これであとは」
「ここの主、だけじゃの」
 盟友の後を継ぎ、言葉を発した玄信が視線を向ける先、舞台の上では一人の少女がポツンと佇み、二人を眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『蝶子』

POW   :    蝶が群れ成し満員御礼
【真紅の蝶の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    悲劇舞台の始まり始まり
戦闘用の、自身と同じ強さの【主演男優】と【主演女優】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    あゝ悲哀芝居
【悲哀に満ちた歌と踊り】を披露した指定の全対象に【過去手に入らなかった者等に対する悲しみの】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:つかさ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠氷長・霰です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あゝ、漸く――」
 役者が揃いましたと少女は口元を微かに綻ばせる。廃劇場に居たのは果実的野菜と影の狼、役を振るには無理があったということか、それとも。倒すか転生させるか、いずれにしてもこの少女と決着をつけねば、ここは逢魔が辻のまま。
「どのような劇が良いでしょう? 悲劇? それとも悲劇かしら?」
 少女は一組の男性と女性を喚ぶと、首をかしげるのだった。
グロリア・グルッグ(サポート)
『パソコンから宇宙戦艦まで! 電脳ハックのことなら何でもお気軽にご相談ください!(相談無料)』

私は星船に乗る軍人ではありますが性格は柔軟かつ適当ですよ。
こと電脳魔術とハッキングの腕には自信がありますし。
凄腕のサイバーウィザードとしてお役に立って見せましょう!

使用するのは主にもう一人の自分を召喚する金色魔女。
冒険や探索であれば二人分の電脳魔術で解決方法を探りましょう。
賢さにも自信はあるので積極的に頭を使います。

戦闘となれば片方が敵の行動を計算。
もう片方と電脳魔術でリンクしつつ、戦場を走りながら攻撃しましょう。
主に飛び道具の二翼の鳥や、雷の精霊杖から雷の属性攻撃を放つことで攻め立てます。


アルディンツ・セバロス(サポート)
 はい、お手伝いにきたよ。
 まぁ僕なんかが居なくても、きっと他の猟兵達が上手くやってくれるだろうけどね。
 僕はお茶でも飲みながら、ひとまず様子見だ。
 見ての通り、あまり体力仕事には向いてないんでね。荒っぽい仕事も、ちょっと苦手だ。
 おしゃべりなら得意だから、口先勝負でも良いかな?
 ほめ殺しでも挑発でも応援でも、何だってするよ。
 ああでも、どうしても手が足りなくなったら、頑張って戦うからね。その時は遠慮なく呼んで欲しい。でもあまり、期待はしないで欲しいな。僕の専門は、あくまで詐欺師だからね。
 やばそうなら、いってね。誰よりも先に、いの一番で逃げるから。


九十九・静香
※連携アドリブ可

悲劇だけというのは楽しくはありませんよ?
悲劇も悪くはありませんが喜劇を知らないというのも寂しいものです

筋肉令嬢の姿に変異し、【怪力】拳や蹴りでの【グラップル】で攻撃を仕掛けます
『わたくしも本来は悲劇と言われる形で死を迎える所でしたがこうして悲劇とは言えぬであろう姿と人生を新たに迎えています。貴方もきっと悲哀を踊り悲劇を楽しむだけでは終わらないはずです』

真紅の蝶が来たならば逃げに転じると見せ、UCで蜘蛛の糸の巣を張り、追ってきた蝶を捕縛します
『蝶は蜘蛛に捕食される。もしこの悲劇を貴方が何かしらの方法で打ち破るなら』
それはそれで彼女の在り方の変化に繋がるなら結果オヲライというもの


高柳・零
POW

UCを発動して能力を高め、オーラと盾で防御を固めてから説得します。
蝶の群で攻撃して来た時は味方も庇います。

「ひょっとして、劇場にお客さんを呼びたいヌギか?緊張する時は客席は南瓜畑だと思えとは言うヌギが、本当に南瓜で埋めても意味ないと思うヌギよ?後、狼は警備員さんヌギ?凶暴過ぎると思うヌギ」

「きっと蝶子さんはこの劇場が大好きだったんだと思うヌギが…影朧を集めた結果、誰も近付けない危険な場所になってるヌギよ。それじゃあ、逆だと思うヌギ」
「蝶子さん。この世界は生まれ変わってやり直す事が出来るヌギ。ここに留まるより、転生してもう一度劇場を立て直した方がいいヌギよ」

アドリブ、絡み歓迎ヌギ!


山梨・玄信
説得しようにも、相手の事が全く分からんからのう。
先ずはそこからじゃな。

【POWを使用】
基本的には、防御に徹し説得を優先するのじゃ。
真紅の蝶は見切りで少しでもダメージを減らすように構え、オーラ全開で耐えるのじゃ。

説得で敵の邪心や迷いが見えたら、ここまで溜まった脱ぎ力を拳に込めてUCを使うぞい。

「お主、何故この劇場に住んでおるんじゃ?そして、何故影朧を集めた?」
「お主がやりたい事は、今の状態では出来んぞい。生まれ変わってやり直すのじゃ。邪魔する悪い心はわしが協力して払ってやるぞ」
「少し我慢しておれ。偽りの心を脱がすのじゃ!」

アドリブ、絡み歓迎じゃ。



「はい、お手伝いにきたよ。さてと」
 転送され廃劇場に現れたアルディンツ・セバロス(ダンピールの死霊術士・f21934)は周囲を見回し、状態が出来るだけマシな客席に歩み寄り、腰を下ろした。
「まぁ僕なんかが居なくても、きっと他の猟兵達が上手くやってくれるだろうけどね」
 しかし丁度いいところに椅子があってよかったと呟きつつどこからかお茶を取り出したアルディンツは湯気を顎に当てつつ視線を舞台の方に投げる。
「遠く離れた脱衣の国、ヌギヌギランドからやって来た脱衣の使者。平和を守る正義の戦士。さあ、今こそ――」
 丁度、少女の無駄な程の悲劇押しには敢て触れず、それどころか唐突に誰かを応援する歌を零が口ずさみ始めているところだった。
「悲劇だけというのは楽しくはありませんよ?」
 静香が少女の瞳を真っ直ぐ見つめ返して指摘し。
「ふむ」
 微かな反応も見逃さぬよう玄信は少女の様子をつぶさに観察していた。
「説得しようにも、相手の事が全く分からんからのう」
 理由はほぼそれに尽きる。
「ひょっとして、劇場にお客さんを呼びたいヌギか? 緊張する時は客席は南瓜畑だと思えとは言うヌギが、本当に南瓜で埋めても意味ないと思うヌギよ? 後、狼は警備員さんヌギ? 凶暴過ぎると思うヌギ」
 少しでも影朧の少女を集めようとする中、次に口を開いたのは、周囲を見回した零。
「いいえ、それはただの成り行き」
「お主、何故この劇場に住んでおるんじゃ? そして、何故影朧を集めた?」
 深い意味があるわけではないと頭を振った少女は、口を挟んできた玄信を一瞥すると、更に続ける。
「私は、悲劇しか知らないから――」
 スタァに憧れて舞台に通い、いつか舞台の上で歌い踊る事を夢に見ながらも少女は散った。ただ、悲劇を押すのは、自身を悲劇が襲ったが故なのかもしれない。
「けれど、ただセリフをしゃべるだけでは駄目です。劇には動きも必要でしょう?」
 猟兵達の言葉に耳を傾け、答えていた少女は喚び出していた一組の男女を自身の前に進み出させ。
「始めましょう」
 役者が二人、少女の声を合図に床を蹴った。
「やはり、戦闘なしでは終わりませんか」
 問答の間に超高速演算へ特化したもう一人の自分を喚んでいたグロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)は客席から舞台へ向けて走り出していた。
「そちらに行くことは計算済みです」
 ステッキを振りかぶる男優の行く手を遮るように電脳魔術と連携して大空を飛ぶ電子の猛禽達が飛来し、けん制となって足を止め。
「ヌゥゥン!」
 踊るような足取りで跳躍しそこから蹴りかかってきた女優の足首を筋肉令嬢の姿に変異した静香が筋肉の隆起した腕を前に突き出して掴み、受け止める。
「わたくしも本来は悲劇と言われる形で死を迎える所でしたがこうして悲劇とは言えぬであろう姿と人生を新たに迎えています。貴方もきっと悲哀を踊り悲劇を楽しむだけでは終わらないはずです」
 蹴りを止めたまま、首から上だけを少女に向け、自身の過去を語った静香は訴え。
「きっと蝶子さんはこの劇場が大好きだったんだと、この劇場の舞台にスタァとして立ちたかったんだと思うヌギが……影朧を集めた結果、誰も近付けない危険な場所になってるヌギよ。それじゃあ、逆だと思うヌギ」
 従えた二人が抑えられ、自身は戦うことのできぬ少女へと零は歩み寄る。
「そうそう、観客が大勢来てくれなければ舞台に立っても残念なんじゃないですか? それとも、観客は僕一人で充分です?」
 荒事は苦手と成り行きを見守りつつお茶のカップを乾かしていたアルディンツは、席から立ち上がると少女に尋ね。
「私は――」
「お主がやりたい事は、今の状態では出来んぞい。生まれ変わってやり直すのじゃ。邪魔する悪い心はわしが協力して払ってやるぞ」
「蝶子さん。この世界は生まれ変わってやり直す事が出来るヌギ。ここに留まるより、転生してもう一度劇場を立て直した方がいいヌギよ」
 迷いが生じたのか、瞳を揺らす少女へ玄信と零、が畳み掛けるように訴え。
「あちらはもう一息ですね」
 説得する仲間の姿を一瞥したグロリアは、先ほどから押さえこんでいるステッキを持った男性に雷の精霊杖を向ける。
「こちらはお任せください! 電脳魔術の腕にも自信があります!」
 説得を行う味方が多いならその邪魔はさせませんとばかりに杖から雷光が迸り、少女の使役する男優に全身を許さず後方に飛び退かせる。
「なるほどね。あの二人を戦わせてる間は、あの御嬢さんは戦えない、と。荒っぽい仕事でないなら――」
 それこそ僕の出番とばかりにアルディンツは舞台に歩み寄る。
「僕達を信じてもらえませんか? ここに居る誰もがあなたを助けたいんです」
「っ」
 少女の瞳を見つめ、アルディンツが示したのは少女へ声をかけた他の猟兵達。
「ハァァン!」
 静香のみが少女の喚び出した女優を抑え込むため筋肉で膨れ上がった身体で格闘戦を仕掛けていたが、他の猟兵達は皆、少女を見ていて。
「ありがとう」
 少女の口が例の言葉を紡ぎ。
「けれど、一度舞台に立ったのだもの……最後まで、歌って演じたい」
 頭を振ってつづけたのは、スタァを目指した少女のプライドなのか、それとも。
「少し我慢しておれ。偽りの心を脱がすのじゃ!」
 ただ、それでも少女が迷っていたことを見ていた玄信は己の脱ぎ力を握り固めた拳一点に集中して床を蹴る。
「お主の心を丸裸にしてみせるぞい」
「きゃあ」
 繰り出す拳が少女へ命中するも、傷つけるのは相手の邪心のみ。
「流石ヌギ」
 少女がよろめきつつも少女に召喚された男女がそのままであることを視界に入れ零は盟友を称賛する。少女が傷を追えば消えてしまう二人がそのままということは、玄信が打ち据えたのはそれ以外のものだったということなのだから。
「ヌゥン! 悲劇も悪くはありませんが喜劇を知らないというのも寂しいものです。どうか、わたくし達の手を――」
 少女の喚んだ女優に蹴り勝ちながら静香は呼びかけ。
「そう、ですね」
 ようやく首を縦に振った少女は、それでも言った。舞台は最後まで続けさせてくださいと。
「皆さんの悲劇以外の何かで」
「あなたをを超えて見せてくれと言うことですか?」
 男優から目を離さず立ち回るグロリアの確認に少女は短く、はいと答えた。
「何かで蝶子さんを上回ればいい、つまりこのまま戦って倒してもいいし、別の何かで可能性を見せてもいいってことヌギ?」
 そこまで言ってから、零は玄信を見る。
「ふむ、戦って倒すのがシンプルで手っ取り早いかの」
 玄信はさらりと流し。
「そういうことでしたら、わたくしの筋肉芸の見せ所かもしれませんね」
 静香も考え込む。ともあれ、猟兵達の言葉は少女に届いたのだろう。少女を転生と言う形で救い、逢魔が辻を消滅させるまであと一歩であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

エリカ・グランドール(サポート)
 サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。

※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」

 冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
 あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。

 ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。


ボーリャ・コータス(サポート)
『さて……二度寝しなきゃ』
ミレナリィドールのシンフォニア × 死霊術士
ものぐさの引きこもり気質。ちょっとえっちなお姉さんぽく振る舞っている。
戦闘時には火力にものを言わせるタイプ。
特にNGとかはありません。



「さて……応援に来たけど」
 逢魔が辻の主である少女に言葉は届き、自身の代わりに戦う一組の男女は他の猟兵に対処され、他の猟兵の行動の阻害に手が回らない。
「本当にあと一歩の状況なのね。応援はわたしだけじゃないし」
 もう一人、転送されてきていたことだけは確認していたダメ人げ、もといボーリャ・コータス(極光の17番・f02027)がその猟兵に任せておけばいいわよねと思ったとしても、きっと無理はなかったのだと思う。太ももや二の腕を惜しげもなくさらしながら周囲を見回し、目を止めたのは観客席に並ぶ椅子。
「これだけあるなら、状態の良さそうなモノもありそうね」
 映画館で居眠りする人よろしく、椅子に座って寝るつもりなのか。
「でしたら、あの椅子など良いのでは……」
「あら、本当。それじゃ、さっそ」
 歩き出そうとしたボーリャの足が止まったのは、唐突に聞こえた助言に示された椅子を見て、そそくさと向かおうとした直後の事。声に、聞き覚えがあったのだ。油の切れたブリキ人形よろしく、ギギギと音でもしそうな程ゆっくりと振り返った先に居たのは、エリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)。
「どうかしたの?」
 聞き覚えもあるはず、自身の所属する旅団の長がどこかおかしなところでもあったでしょうかと首をかしげていたのだから。
「い、いえ、何でもない……のよ。それじゃ、始めましょうか」
 流石に所属する旅団の長に全部任せて昼寝、という訳にはいかなかったのだと思う。エリカが戦闘はあまり得意では無いということを知っていて、丸投げするのは心苦しいと思ったとか、きっと深い意味なんてないだろう。
「悪いけれど、さっさと終わらせて貰うわ」
「では援護しましょう」
 急にやる気になったボーリャの後方で、エリカは無数の小型の戦闘用機械兵器を召喚し、包囲網を形成する。ボーリャにではなく、当然舞台に立つ少女を包囲するためのものだ。
「あゝ、これが私の――」
 一組の男女を戦わせる代償として自身が戦えない今の少女に、ボーリャの一撃を防ぐ術はない。雷の元素が具象化した蛇を杖に変え最大火力を乗せた一撃が少女を呑み込み、機械兵器が包囲網を狭めて襲い掛かれば、舞台上に居た一組の男女が消えうせる。
「終わりました。これで蝶子さんも――」
 猟兵達の声は届いていたのだ。少女はきっと新たな人生を歩み始めたことだろう。エリカの視界のなか、少女の撃破によって偽りの廃劇場はその姿を徐々に薄れさせ始め。
「ふぅ……さて、帰って二度寝しなきゃ」
 どことなく熱っぽい吐息と安堵の息を同時に吐くと、どこかアンニュイにここではないどこかへと視線をやり。こうして近隣へ被害を出すことなく一つの逢魔が辻は消え去ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年10月23日
宿敵 『蝶子』 を撃破!


挿絵イラスト