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『先駆け』どもへの挽歌

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●或る武士の走馬灯
 ――何が故に、我が首、斯様な所で落とされ給う。
 戦さ場に果てるが本懐と、誰もが思っていた。
 我ら『先駆け』、戦さとあらば鎧を鳴らし武器を携え。
 誰よりも疾く、電光石火をも置き去りに早駆ける。
 烏合の衆を散らし行き、強者どもあらば、其れを穿つ針とならん。
 我らをおいて先に、鬨の声をあげる者なし。
 ――嗚呼。それが結末が、ありもしない「謀反の咎」か。
 口惜しや、口惜しや。
 今際の際というに、竹馬の友が名さえ頭に浮かばぬ。
 然り、我が身はとうに畜生道。
 戦さにて敵を斬り屠る、死ばかりが生の甲斐。
 燻る未練はただ一つ。
 ――散るならば、どうか、戦さ場で。

●グリモアベース
「……戦いの道にしか身を置けない、というのは難儀なものですね」
 名も知らぬ将の想いを垣間見たグリモア猟兵、光・天生が、目を伏せたまま告げる。
 此度、オブリビオンによる事件が予知されたのはサムライエンパイアのとある町。
 オブリビオンたる落ち武者の部隊と、その首魁と思しき武将が、そこへ襲来してくる。
「彼らは『先駆け』。とある将に仕えた、戦場の切り込み部隊だったそうです」
 勇猛果敢極まる戦いぶりはいくつかの史書に残されているが、その最期はいわれなき謀反の企てによる処刑であったという。
 謀反の咎を受けねば、次の戦場において死ねていたかもしれない。
 その無念、いかほどのものか。
「……死にたいがために生きるなんて、狂気の沙汰としか思えませんが」
 討ち死にできぬがゆえに、無念。
 それが〝武士〟という生き物だった……斯くなる時代が、確かにあったのだ。
 加えて曰く、今回襲撃を受けようとしているのは、『先駆け』たちが謀反の疑いをかけられねば、次に赴くはずだった戦場に建った町なのだという。
「生前から狂人の域、オブリビオンに成り下がったなら、もう正気なんて保たれていません」
 天生が真剣な表情で顔を上げた。例え無実の罪で死したとて、同情を挟む余地はない。
 放っておけば間違いなく『先駆け』は〝戦場〟へと雪崩れ込み、無辜の民を虐殺する。
 どうあっても、彼らはオブリビオンだ。
「彼らはどうやら、〝戦場で死ねなかった〟という生前の未練を強く引きずっているようです。……それを晴らす手段は、わかり切っていますね」
 その本懐がゆえもあり、『先駆け』たちは強者の気配に敏感だ。
 猟兵たちは町へと続く平野、『先駆け』たちが行軍する眼前に直接転送されることになる。
 到着と同時に、迷うことなく向こうから攻撃を仕掛けてくるだろう。
 よって、誘導や防衛の必要性は皆無。成すべき事柄は至極単純。
 ただ真正面から、『先駆け』との合戦に挑み、勝てばいい。
「まず有象無象を蹴散らしていけば、そのうち親玉が打って出てくるはずです」
 武の道を行く身として天生にも思わぬところがないではない。
 が、グリモア猟兵なればこそ、此度の戦場に立つことは能わず。
 己の猛りを猟兵たちに託すように、天生が拳を自身の掌に打ちつけた。
「兵どもが夢の続き、真正面からブチのめしてきてください」

 遮る物は何も無し。遮る者も此処に無し。
 求むる言辞は、打ちては散りゆく火花のみ。
 屍山を築きて血河を越えよ。
 問答無用、小細工無用。
 『先駆け』どもと斬り結び、首魁なる身を討ち果たせ。


鹿海
 鹿海(かのみ)です。
 はい、ご覧の通りに単純明快。
 戦馬鹿の武士(もののふ)どもと斬り合うだけのシナリオです。

 いささかばかりの傾斜があれど、舞台は基本的に真っ平らな土地。
 日本のどこ、とか考えなくて構いません(鹿海もわかりません)。
 草っ原ばかりが広がり、遮蔽物も逃げ場も何もない戦場。
 あえてもう一度言いましょう。
 武士どもと、ただシンプルに、正面きって、斬り合うだけのシナリオです。
 『先駆け』は死んでるくせに血気盛んなので、転送と同時に襲ってきます。
 直行直戦、考える間もなく即開戦。もう、てんやわんやです。
 事前に罠を仕掛けるとか一切ムリ。小細工無用とはそういう意味。
 権謀術数の類は今は丸めてどこかにポイしといてください。
 この戦場において、正面きっての戦い以外は存在しません。

 豪腕に自信がありますか? ならば突撃し、真正面から叩き伏せましょう。
 疾さに覚えがありますか? ならば翻弄し、華麗に敵を斬り捨てましょう。
 魔法に一家言ありますか? ならば詠唱し、派手に全て薙ぎ払いましょう。

 黙々と屍の山を築くもよし。
 伊達に名乗りをあげるもよし。
 恐れ惑いながら敵に相対するもまたよし。
 単純を極める戦場において、何より際立つあなたの戦い方を見せて下さい。
 鹿海にできうる限り、それをカッコよく描写できればと思います。

 え、戦いの後?
 有り余った気力を鍛錬で発散することになるんじゃないでしょうか。
 猟兵同士で模擬戦とかもいいかもしれませんよ。

●注意
 今回のシナリオは性質上、1章と2章は各キャラ単独の描写が多くなる
 ……と思ってます。
 コンビ描写をご希望の場合、必ずプレイングにその旨お書き添えください。
 逆に3章は二人以上の描写が多くなる可能性が非常に高いです。
 単独描写をご希望の場合、「ソロ希望」とお書き添えくだされば
 採用時は必ず単独での描写をお約束します。
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第1章 集団戦 『落武者』

POW   :    無情なる無念
自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    欠落の決意
【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    妄執の猛撃
【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵どもが平野に立てば、相対するは剣の無道。
 刀の錆を幾たび重ねど、いまだ斬っては足らぬ畜生道。
 片手で数うにゃちと足らぬ。
 両手で数うもまだ足らぬ。
 十や二十、三十四十、そこやかしこに夢の跡。
 ひゅるりひゅるりら、風の声。
 やがて猛るは鬨の声。
 いざや御免と罷り越し、罷り通りて罷り斬れ。
 今宵の月さえ、血に染めよ。
石動・劒
鐘の誼で天生のに付いてくりゃ、なんだお相手はご同輩かい。
戦さ場の栄誉の外で死ぬたぁ気の毒な。さぞ未練だっただろうに。

――なあ天生の。一つだけ正させてくれや。
やつらはきっと死にたいがために生きてるんじゃねえ。自分が武士として生きてきた証を、綺麗な形で残したいと思ったから。名誉のためにあいつらは討ち死にを望んでる。謀反の咎で有終の美なんて飾りゃしねえしな。

拙者、石動の劒と申す者。いざ尋常に勝負せよ。
残像を使い翻弄しながら、2回攻撃で相手の傷口やら弱ってるところを手数重視の華剣終体で攻めるぜ。
これは死合、果たし合い。悪いが誰にも邪魔はさせねえ。
相手の栄誉のために御首獲ったら討ち取った旨を叫ぶぜ。



●剣華、咲く
 広野に一陣の風が吹き渡り、一人の男が其処に立った。
(――なあ天生の。一つだけ正させてくれや)
 グリモアベースで耳にした言葉へ、石動・劒(剣華上刀・f06408)が心のうちに返歌をなす。
(やつらはきっと死にたいがために生きてるんじゃねえ)
 それは、今を生きる武士、侍たる劒なればこそ理解を示すに能う未練。
 戦さ場における、誉れある討ち死ににて、生きてきた証をこそ綺麗に残したい。
 有終の美を是とするサムライエンパイアの生き様に、謀反の咎なる句点など。
「拙者、石動の劒と申す者。いざ尋常に勝負せよ」
 その言葉を聞いてか聞かずか、一人の落ち武者が群れより突出する。
 化鳥を想起させる甲高い声と共に刀を構え、大振り……一刀両断!
 ……ならず、鳴らず、成らず。
 血飛沫は舞うことなく、後に残った劒の残像だけが剣圧に吹かれて消える。
 深紅の羽織をひらめかせ、その姿は既に落ち武者の背後にあった。
「終われ」
 背後へ回り込みざまの一刀にて腱を断ち。
 落ち武者が崩れ落ちる刹那に、身を捻り、続けざまにその首を一閃。
 目にも留まらぬ二撃必殺、『華剣終体』。
 静謐。
「石動の、劒」
 生気を失った落ち武者の口唇が、しかし、確かな生の実感を込めた言の葉を紡ぐ。
「……美事なり」
 ただ一言を証しとして、その首に切れ目が走り、鮮血と共に宙を舞う。
 迷うことなく御髪を掴み取り、掲げてみせたのは劒その人。
「――御首、討ち獲ったり!!」
 戦さ場に響き渡る声に、一人、二人と落ち武者どもが振り返る。
 劒へと集中する視線は、決して戦友を討ち果たされた怨恨のそれではない。
 これより始まる死線に、武者震いを覚ゆ者どもの血走る目。
 嗚呼、何たる歓喜。
 ――この時代にも、武士がいる!
 確信に至れば、我も我もと殺到する剣の畜生。
 気づけば劒の手に収まっていた首は、黒い灰となり、風に散っていた。
「あいわかった。これは死合い、果たし合い」
 手出し無用、手助け不要。
 平素であれば他の猟兵と肩を並べもしようが。
「誰にも邪魔はさせねえ」
 刀を構え直すや否や、土を蹴立てて草を散らし、劒もまた走り出す。
 後に響くは鉄と鉄とが火華を散らす、丁々発止の音ばかり。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
(襲い来る屍人の兵は。群れなして山肌を下る、狼のようだ)

…………狼ではない。
あれは何も産まない。育まない。喰うだけの、病葉だ。
森にはいらない。

(屍人の鬨の声には真正面から【惨喝】の大音声を放ち。それで足を止めるならば他の者の獲物だ)
(森番は境に。前線に立つ。そこを越える者を斬る。彗星の如く疾走する。【2回攻撃】【なぎ払い】、山刀翻して両に断つ。【烙禍】で屍を灰に、地を炭に)

……………土になれ。
森の礎に。



●月下、吼える
 夜半に差し掛かる時刻、なれども雲ひとつない空。
 月明かりは十二分な視界をもたらし、火蓋を切られた戦において支障は無い。
 月光届かぬ森に長く身を置いてきた森番、ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)にとってもまた然り。
(群れなして山肌を下る、狼のようだ)
 猟兵の姿を見つけては斬りかからんとする屍人の群れに、獣たちを想起する。
 だが、あれは何も産まない。育まない。喰うだけの、病葉だ。森にはいらない。
 屍人どもの鬨の声が肌を震わせど、ロクは、身じろぎ一つせず。
「――ああァアアア!!」
 『惨喝』――獰猛な獣にも似た咆哮が、夜を劈いた。
 足を止める群れと、猛り、飛び出す数人の屍人。
 〝境〟を越えるものが、森番の獲物だ。
(おれの相手は、〝あれら〟か)
 這うほど低い姿勢での疾駆は、獣を狩る森番の身でありながら、獣のそれに似る。
 地を駆けども、その速度は夜を征く彗星の如し。
 数多く人を斬れども、屍人は……落ち武者は、〝獣〟の動きを知らない。
 決定的に反応が遅れた者を見定めたなら。
 迷いのない跳躍で、その喉笛に牙を……山刀の切っ先を突き立てる。 
(まず、ひとり)
 得物を抜きざまに朽ちゆく屍体を蹴り、勢いのままに反転しつつの袈裟斬り。
 地に足つければ身を翻し、続け様の薙ぎ払い。
 ひと、ふた、みっつ、返す刀でまた一つ。
 屍ひとつを屠るたび、血化粧ひとつに見目麗しく。
 突出してきた落ち武者も、残すところ一人。いざ、とどめの一刀を。
「――ッ!」
 ロクが目を見開いたのは、落ち武者が振るった刀より放たれた衝撃波のゆえ。
 『無情なる無念』……先に討たれた落ち武者の無念による一撃。
 予想外の一撃に回避は能わず。
 即座に山刀を咥え、両手で地を抉るようにして掴み、吹き飛びそうになる身体を押しとどむる。
 ――だが、そうだ、それでいい。
 危うきものを先んじて屠るのが、森番。
 屍を踏み越え強くなるのは、此方も同じこと。
 屠った屍人はは山刀によって刻まれた烙印により、灰へと帰した。
 その灰一粒ひとつぶが、此処が全てをロクの縄張りへ変ずる。力を、疾さを与う。
 刀を構え直す落ち武者を見据え。
「………………土になれ」
 ――瞬く間。
 彗星さえも置き去りに、ロクは跳ぶ。
 屍は、森の礎に。
 嗄れた声が、落ち武者の耳朶に届く間隙さえ、許されることはなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

八坂・操
【SPD】

戦場で死ねなかった落ち武者降臨! 死者は生者へ刃を向ける! 操ちゃんこれ映画で見た事あるよ♪ 
でも、とーの昔に幕引きは終わってるんだ。イジェクトした映画がまだ流れているのは、ちょーっとおかしいんじゃないかな?

そんな訳で【咎力封じ】しながら操ちゃん参戦! 動きを封じながら怪糸で『敵を盾にする』よ!
その後は? 勿論貫手で盾にした侍ごと『串刺し』だ☆ 『鎧無視攻撃』と併用して、ある程度は貫けるんじゃないかなー?
「ヒヒヒヒヒヒッ!!」
ついでに哄笑も上げて『恐怖を与える』事も忘れずにね☆ アレだよ、猿叫みたいに気力削げれば良いなーって。
ま、血気盛んな先駆けにそんなのあるか分かんないけどね☆



●笑い、嗤い、哄笑う
 白いワンピースに麦わら帽子に艶やかな黒髪を流す、合戦場に似つかわしくない姿。
 八坂・操(怪異・f04936)は、にこやかな表情で眼前の落ち武者に語りかける。
「操ちゃんこれ映画で見た事あるよ♪ でも、とーの昔に幕引きは終わってるんだ」
 返事はない。『咎力封じ』による拘束は、完璧に成功した。
 猿轡に手枷、ロープで五体を封じられた武者はもはや俎上の鯉。
「イジェクトした映画がまだ流れているのは、ちょーっとおかしいんじゃないかな?」
 落ち武者どもの出で立ちはまさしく陳腐な白黒映画のそれではないかと。
 ぺちぺちと落ち武者の頬を叩きながら語りかけども、此処は戦場。
 がら空きと見えた背中に、猿叫と共に異なる落ち武者が刀を振りかぶる。
「うーん、ちょっと叫びの気合いが足りないゾ☆」
 縦一文字に斬り裂かれるは、されど、操の真白い衣服に非ず。
 猿轡を噛まされ、悲鳴さえ上げず、一刀を受けた落ち武者の身体から血が噴き出す。
 五指に絡めた怪糸で拘束対象を操り人形のごとく手繰り、盾としたのだ。
「不意打ちなんて狙う悪い子は、えいっ☆」
 無邪気に笑みを浮かべ、五指を束ねた右手をずずいと武者の体に〝挿し入れる〟。
 実に容易く、呆気なく。構えていた「盾」ごと、鎧ごと。
 白魚のような指先が、斬りかかってきた武者までを、するりずるりと貫いた。
 凶器を用いずとも、狂気をはらんだ笑みを宿す体が、敵の殺し方を知っている。
「ヒヒッ……」
 柔和な微笑は、愉快な一笑へ。
「ヒヒヒッ……!」
 愉快な一笑は、凄惨たる大笑へ。
「ヒヒヒヒヒヒッ!!」
 凄惨たる大笑は、けたたましき哄笑へ。
 鋭い歯を剥き出しに哄笑いながら、操が〝死んだ〟者どもを放り捨てる。
 足を止めた落ち武者は一人や二人ではない。
 化生の身に堕ちども、ヒトであった者共が、一様にその音に背筋を震わす。
 夜の静謐を覆い尽くす戦さ馬鹿どもの乱痴気を乱雑に引き裂く、絶叫にも似た哄笑。
 とうに役割を終えたはずの汗腺が、体温なき身体に冷や汗を噴出さす。

 ――恐怖。
 戦さ場にあって、『先駆け』どもが忘れて久しい感情。
 迫る〝怪異〟は、幼な子がはしゃぐかのように叫び散らし、命を散らす。
 恐れが畏れへと変じた瞬間、武器を取り落とす者がある。
 戦さを諦めることは、歪なれども未練の成就であり、死の次に来る死。
 恐怖が、戦さ場を支配していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエラ・アルバスティ
「よっしゃあぁぁぁぁ!! 突っ込むよおぉぉぉ!!!!」

こんな戦場来たらもう突っ込むしか無いじゃん?
私突っ込むしか脳が無いし

「【クレイジー・アトモスフィア】(飛翔)!!【穿孔滅牙】(落下)!! 【人狼咆哮】(範囲)!! 【勇者召喚】!!(護衛騎士召喚)」

持てる技を大量に使用し全力攻撃!!

「来たれ雷精! 風精! 暴虐の嵐となりて喰らい尽くせぇーー!!」

大気の羽を飛散させながら『ユピテルマント』『シルフィード』で雷の暴風となり【ダッシュ】【捨て身の一撃】で戦場を貫く

「ほらほらほらほらあぁぁぁ!!!! 神風っていうのはこう表現するんだよーーーー!!!!」 

時折凄く挑発、なんかテンション上がりっ放し!



●吹き荒ぶものの名は
「よっしゃあぁぁぁぁ!! 突っ込むよおぉぉぉ!!!!」
 突っ込むしか能がない。
 己をそう評したのは、シエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)。
 自己評価を固め切り、そこに悔恨なければこそ、彼女の行動に迷いはなかった。
 全速力で助走のち、月まで届かん勢いで空高く跳躍。
 風と雷の魔力を身にまとい、さながら蛍火の如く。
 『クレイジー・アトモスフィア』により、大気の翼が一斉に花開いた。
 中空で強くその存在を主張するシエラの輝きは無論、落ち武者らの視線をに引く。
 叫び、走り出す者がある。武器を構え、落下地点を狙う者がある。
 ……結論から言えば、全て、無駄であった。
「来たれ雷精! 風精! 暴虐の嵐となりて喰らい尽くせぇーー!!」
 身にまとうマントに雷を、構えた愛槍に風の魔力を込めて。
 咆哮を上げながら、瞬きの間。
 稲光の軌跡を後に、大地を突き穿つ。
 着地点で待ち構えていた落ち武者の一人が、塵一つ残さずに霧散した。
 地面へ突き立てた槍を支柱に、もう一飛び。
 再びその身が頂点へ達したなら、再度の急降下、そして炸裂。
 飛んで跳ねての大立ち回り、穿つ地面に足さえつけず。
 風より速くじゃまだ足りず、旋風程度じゃ勝負にならぬ。
 削れる命も何のその。この刻を駆け抜けられねば意味もなし。
 命短し駆けろよ乙女、風の音さえ置き去りに、疾風さえも追いつきゃせぬ!
 一陣の風、などと表現するのも生易しいそれが巻き起こるたび。
 一人ひとりにまたまた一人、ばたんと伏せゆく武士ども。
 何が起こったのか。
 否、そもそも〝何かが起こったのか〟さえ感じ取ることができない。
 シエラはもはや、この戦場にあって、誰にも知覚し得ぬ速度を征く。
「ほらほらほらほらあぁぁぁ!!!! 神風っていうのはこう表現するんだよーーーー!!!!!」
 大気の翼が一枚飛散するたび、道連れに数人の武者が消し飛んでゆく。
 少女が謳うとおり、まさに神風が如しと……否、否、否!
 ああ、そうとも、あえてこれをも否と言おう。
 少女はもはや、神風さえも越えてゆき、天つ世界も目に留めぬ。
 ありはせぬ、ありはせぬ。語るに値う言葉など、謳うに値う言辞など!
 飛ぶ矢を抜かし、荒ぶ嵐を嗤いゆけ。
 快活極まる笑みを響かせ、その軌跡に立つ者、屍一つもなし――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

麗明・月乃
死ぬために再び動くとな…。
男の考える事はよくわからん。浪漫を求め生きる者とは聞いておるが。
…まあ私は偉大なる妖狐。その歪んだ願望を受け止めてやろう。

戦場を悠々と歩く。
魔術で敵を打ち、他の者が倒した敵も【チキン・アゲイン】で鶏へ変え、私の護衛及び敵へとけしかけよう。
「私の名は麗明月乃。謝りはせぬよ。元より死んでも動くなど、反則をしておるのはそなたらであろう」
ならば私も死んでも動かす位は問題あるまい?

向かってくる敵の数が多い等、鶏で対応できぬ時は【妖花演舞】を用いて炎『属性攻撃』を『範囲攻撃』で応じよう。
「戦場の焔がそなたらへ送る火葬じゃ。……満足して逝け」
さ、次の相手じゃな。キリがないのう。


神月・瑞姫
ペア希望対象【f10306】麗明・月乃(師匠

お師匠さまがエンパイアの合戦に行ったって聞いたの
弟子のみぃもお師匠さまと戦うの
(と意気込んで合戦場で

以前みたお師匠さまの術(【妖花演舞】)はすごかったの
邪神の眷属をぼぉぉって燃やしちゃったの
みぃも修行して似たような術覚えたの
お師匠さま、見て欲しいの

いくよ
【月下彼岸花】
(周囲に【手作りのお札】をばら撒くと薙刀を地面に立て【祈り】始める
(周囲を舞う霊符が燃え上がり赤い紅い炎の彼岸花を形作る

…薙ぎ払え!
(地に立てた薙刀を抜き【薙ぎ払い】の一閃
それを合図に舞う炎の彼岸花が戦場を焼き尽くしていく

えへへ
どうかなお師匠さま
上手にできてたらなでて欲しいの



●葬送の彼岸花
 土を蹴立てて血飛沫舞い散り、悲鳴と怒号が飛び交う戦場にて。
 不似合いなほどの繊細な金糸をなびかせて、優雅に歩く少女がある。
 麗明・月乃(夜明けを告げる金狐・f10306)は兵どもが夢の続きを間近で目にして、静かに嘆息するばかり。
「男の考える事はよくわからん……」
 浪漫を求め生きる者がいる、というのは知っているが、死ぬために再び動くとは。
 月乃もまた、化生の代表格たる妖狐の身。
 その歪んだ願望、理解はできねど、受け止めることは能う。
 他の猟兵たちによって彼方此方に屍山が築かれた今こそ、月乃が本領を発揮する時。
「志半ばで倒れし烈士の魂よ。未だ己が理想を求むるなら。闘争に心を馳せるなら。我が名に置いて身を変え形を変え、その願いを叶えん」
 唱う言葉に呼応するようにして、倒れた落ち武者が、あるいはその灰が。
 三度生を与えられたかの如く動き、毛羽立ち……そして、にわとりとなった。
 ……比喩の類ではない。
 戦闘不能となった落ち武者どもが、悉く、にわとりになった。
 こけこっこう、こけこっこう!
 月下にふさわしくない甲高い鬨の鳴き声が、ひいふうみい、さらに無数。
 白い羽を散らしながら羽ばたき、爪や嘴で落ち武者どもへ襲いかかる!
 およそ戦場らしからぬ光景に呆気に取られてか、動揺のままに多くの武者が怯んでいた。
 冗談めいた光景が広がると共に、月乃の存在も生き残った落ち武者に認知されてゆく。
「何奴ぞ! 面妖な術を使いおって……!」
 落ち武者の言葉に、月乃も思わず噴き出しそうになる。
 面妖などと、死の淵から舞い戻った屍人の宣う言葉ではなかろうに。
「私の名は麗明月乃。謝りはせぬよ。元より死んでも動くなど、反則をしておるのはそなたらであろう」
「抜かせ! 女狐め、叩き斬ってくれる!」
 優雅に金の尾を揺らめかす月乃に、落ち武者の一人が激昂し、刀を振り上げる。
 されど、切っ先は薄桃色の着物、その衣の先にも届くことはない。

 月ばかりが標となる宵闇の下。
 煌々と、赤く、紅く、赫々たるその花は、我ここに在りと生を謳い、死出を唄う。
「月下に燃ゆる狐花……舞いて開きて咲き誇れ」
 身の丈よりも長い薙刀を地面に突き立て、神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)もまた唱え詠う。
「其は道標……旧きは彼岸へ新しきは此岸へ……」
 にわとり達を召喚しての攻撃は敵への妨害であり、また、時間稼ぎでもあった。
 長き詠唱を必要とする瑞姫の術は、既に発動のお膳立てを為されている。
 月乃を師と仰ぐ、さらに小さな妖狐。
 記憶に浮かぶのは、邪なる神の眷属を焼き払う、花の演舞、炎舞。
 あの日見とれた炎の花弁を、次は自分が、みぃが。
「神月の名の下に天理を正さん!」
 懐より自作の破魔符を抜き摘み、穢れの清めにも似た所作でそれらを撒く。
 『月下彼岸花』。
 霊符はたちまちのうちに、そう……赤く、紅く、赫々たる炎の花に。
 在るべき彼岸への道標たる、燃ゆる彼岸花へと変じゆく!
 落ち武者の群れが振り返ったのは、焼け付くような温度のためでもなく。
 また、武士の本能でもって、危機を感じ取ったためでもない。
 紡ぐにふさわしい言葉を彼らが持っていたなら、詠嘆の声さえ漏れたに違いない。
 月乃に刀を向けようとしていた武者でさえ、その動きを止めてしまっていた。
 有り体に言えば。魅入ったのだ。
 宵闇に咲き誇る、赤く紅い花に。
 その最中で舞い踊るように、薙刀を抜き払う、瑞姫の姿に。
 ――ああ。
 ――あれなるは、未練に囚われし我らが終ぞ行き着けなんだ、彼岸の……。
「……薙ぎ払え!」
 瑞姫の一閃を号令として、花弁は風に乗り、業火を運んでゆく。
 一人、二人……次々に炎に呑まれ、灰燼へ還ってゆく落ち武者どもは。
 しかし誰一人として、悲鳴も、怨嗟の声さえ、あげることはなく。
 月下に咲き誇る彼岸花に誘われ、彼の川の向こうへ、浚われていった。

「戦場の焔がそなたらへ送る火葬じゃ。……満足して逝け」
 手が足りなければ自身も火を貸す心算の月乃だったが。
 幸いにして、実に出来の良い弟子が、その手間を取らせはしなかった。
「えへへ、どうかなお師匠さま。上手にできた? できてたらなでて欲しいの」
「これ、今はまだ戦場じゃ。そういうのはまた後での」
 先ほどまでの神秘の披露はどこへやら、無邪気に懐こい笑顔で駆け寄ってくる瑞姫に、月乃は静かに嘆息するばかり。
 然り、されどもそこに、死者へ向けた呆れの類はなく。
 小さな妖狐の師弟は、後に狐にも似た花びらの残火を残し。
 次なる敵を討たんと、金銀の尻尾を揺らしながら、共に駆け出していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
死なない様に戦うのではなく、死ぬ為に戦場に赴く――
本機の知る兵士の心構えとは違う物だ。

(ザザッ)
SPD使用。
使用UC:『Mode: Couger』。
右腕の巨砲をパージ、高速戦闘形態へ移行。
技能『ダッシュ』『早業』使用。
獲物を刈る豹の様に、四足を地に着け伏す――レーザーブレードは一本で十分。
鋼の獣と亡人の武士。どちらの刃が先に敵を裂くか、一騎討ちの勝負を望む。

(ザザッ)
最期の相手が人ではなく鉄の獣である事を、対峙者はどう思うのか。
此処で散るのが彼らの『本当の幸』だったのか。

本機には何れも分からないが――
命を賭け挑む者の強さは、理解した。

作戦指針は以上、実行に移る。
オーヴァ。
(ザザッ)



ザザッ。
 砂嵐に似た音を走らせ、闇に溶ける黒豹の機械鎧を疾駆らせ。
 ジャガーノート・ジャック(OVERKILL・f02381)は、部隊の中でも桁違いの気迫を放つ落ち武者を見定め、咆哮と共に飛び掛かる。
 生前は『先駆け』の中でも、頭目に次ぐほどの実力者であったに違いない。
 異形とも見える鎧の急襲に対し、落ち武者も即座に刀で応戦。
 されど腕部に展開されたレーザーブレードによる苛烈な攻め立てに、僅かずつの後退を余儀なくされる。
 右腕に備え付けた巨砲を切り離したことにより、攻撃速度は平時の比ではない。
 ザザッ。
(死なない様に戦うのではなく、死ぬ為に戦場に赴く――)
 心中を押し隠すように響く砂嵐の音の中、声なくして、ジャガーノートは思考する。
(本機の知る兵士の心構えとは違う物だ)
 生き残るためにこそ、人は……否、生きとし生けるものは戦うはずだと。
 ヴン、と、虫の羽音を低く反響させるような音と共に光の刃を振るい続け。
 幾度目かの鍔競合いのうち、気づけば、両者は主戦場を遠く離れていた。
「誘うたな、獣め」 
 憎々しげに、武者が唸る。
 ジャガーノートの狙いをひとことで言えば〝各個撃破〟。
 首級を孤立させる、演算の上においても至極当然の戦術。
 だが、あえて浪漫をまじえた表現をするならば。
 ザザッ。
「一騎討ちの勝負を申し込む」
 砂嵐混じりの黒豹の宣告に、武者は言葉なく、刀を構え直すことで応じる。
 黒豹もまた、獲物を狩らんとするように、四足を地に着け、高速形態へ移行。
 ……本来であれば四肢全てに展開するレーザーブレードは、依然、一本のみ。
 この真剣勝負の場においては、これで〝十分〟と判断した。

 相対するは豹と兵。
 道理無用、情けも容赦も皆無用。
 賭しては散りゆく命を秤に、殺めるばかりの剣の道。
 結実も、決着も、刹那のうち。
 すれ違い様、光の一閃。
 月光に照らされ浮かぶ、二つの影。
「黒き者よ」
 背中を向けたまま、武者が掠れた声を漏らす。
「〝獣〟と呼んだことを、詫びる」
 それを最期の言葉に、武者が、灰となって崩れ落ちてゆく。
 刃を交わした相手に何ぞ思うところがあったか。
 或いは、〝獣〟以上の猛りを見出しての畏れか。
 或いは、黒豹の鎧の下に隠れし、その心のうちを感じ取ったか。
 真意を知る術はない。
 砂嵐の音だけを響かせ、黒豹の戦士はおもむろに立つ。
 鎧の内なる顔を、心を覗く者は、何処にも無く。
 鬨の声をよそに、風に吹かれ、芒ばかりが啼く。

成功 🔵​🔵​🔴​

雷陣・通
父ちゃんが言っていた「人にはちゃんとした終わりが必要だって」
彼等はそうじゃなかったんだろう。だから……俺が終わらせるよ

「実戦空手、紫電会初段。雷陣・通。来い、ライトニングに決めてやる」

【SPD判定】
スカイステッパーと残像、スライディングを駆使して、徹底的に相手を翻弄
動かなければ、先制攻撃で飛び込んで正拳を叩きこみ
待ちの相手には二回攻撃とカウンターを組み合わせて、軽く足を蹴ってからの顔面正拳。
スピード勝負に持ち込まれれば、スカイステッパーにジャンプして縦の動きを入れてから飛び膝蹴り、そこから更に空を蹴って飛び蹴り
徹底的なヒット&ウェイの手数重視で攻め立てる

「アンタらの戦場はここにある。こい!!」



●雷霆、罷り通る
 深呼吸と共に、ひりつくような戦場の空気を肺へと送りながら。
 雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)は、父の言葉を思い出す。
 ――人には、ちゃんとした終わりが必要だ。
 〝彼ら〟はきっと、そうではなかったのだ。
 だから。
「俺が終わらせるよ」
 不意打ちなど、この少年の性には合わない。
 故にこそ、亡者たちを真っ直ぐに見据え、通は名乗りをあげる。
「実戦空手、紫電会初段。雷陣通」
 稲光がその音を轟かす直前を思わせる、静謐なる構え。
「来い、ライトニングに決めてやる」

 十人十色の猟兵が駆け巡る戦場。
 事ここにおいて、今更「たかが子供」と侮ってかかる落ち武者はいなかった。
 その上でなお、通の動きに追いつける者がない。
 刀が残像を捉えれば、背後に回り込んだ小躯が、即座に上段回し蹴りを叩き込む。
 一瞬でも動きを止めれば、迷いなく肉薄しての正拳が落ち武者の正中を捉える。
 通の発電体質が拳に雷を纏わせ、鎧をものともせず、痺れるような衝撃をもたらす。
 ならばと後の先を狙わば、迷いなく小柄さを活かした足払いが落ち武者を襲う。
 続けざまの顔面正拳は、屍人さえ昏倒させるに足る威力。
 落ち武者どもを見上げるは子供の体躯、歳もまた同じく。
 されど叩きつける一撃一撃は、徹底的なまでに合理的だった。
「猪口才な!」
 戦いの最中に片腕を取り落とした落ち武者の一人が、迅速なる斬撃を見舞う。
 四肢の欠損による速度上昇。
 これには即座には対応しきれず、通の肩に袈裟懸けの傷が走る。
 したり、と落ち武者が手応えを感ずるより前に、少年は跳んだ。
 拳一つで戦場に立つのなら。
 最後の武器は、心の中に宿るに決まっている。
 即ち、それは覚悟。
 不退転、一度地に落ちた雷が巻き戻らぬように、突き進み続ける決意。
 故にこそ、通は怯まない。
 地を蹴り、空を蹴り、虚をつかれた武者の頭部へ膝蹴りの一撃。
 『スカイステッパー』により、更に宙へ舞い踊ったなら。
「エイッ!!」
 急降下と共に放たれた稲妻の如き飛び蹴りが、眼下の武者を薙ぎ倒す!
 滴一つ降らぬ空の下であっても、しかし、雷神の鉄槌は下るのだ。
「アンタらの戦場はここにある。こい!!」
 感情と共に雷を迸らせ、少年……雷神通は、轟くような雄叫びをあげた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ミルフィ・リンドブラッド
勇猛果敢に戦い、数々の戦功を上げてきた勇者たちの結末が免罪での処刑とはちょっと同情するです。その無念フィーが晴らしてやる、です。

巨大な大槌「天竜殺し」を構え落ち武者を一瞥。フィーはミルフィ。異世界のダンピールです。おまえらが腑抜けでなければどこからでもかかってきやがるといいです。死に場所を用意してやるです。と『挑発』。

POW
落ち武者達に敬意を払って【禁忌・血流覚醒】を使用。
全力で正面から叩き潰してもう一度殺してやる、です。

「天竜殺し」で攻撃を真っ向から『怪力+武器受け+オーラ防御』で受け止め『カウンター』で『怪力』を込めた一撃を落ち武者に叩き込むです。



●月影は紅く
 ミルフィ・リンドブラッド(ちみっこい力持ち・f07740)が『先駆け』どもへと向ける視線には、憐憫と同情が込められている。
 優しさのゆえか、戦士として思うところがあったか。
「その無念フィーが晴らしてやる、です」
 決意のように呟き、少女は巨大な槌『天竜砕き』を構えて戦場に躍り出る。
「フィーはミルフィ。異世界のダンピールです」
 銀の髪をなびかせながら、少女は真っ直ぐに名乗りをあげた。
 勇ましき戦士の登場に、我も我もと刀を構え、いざ愚直に戦さの構え。
 それは誇りであり、矜持とも呼ばれるもの。
 決して退かず、命を賭して戦い続けたからこその未練。
 故に、斯く心を刺激する術もまた至極単純。
「おまえらが腑抜けでなければどこからでもかかってきやがるといいです。死に場所を用意してやるです」
 あとは野にも山にもならぬ、怒号と殺意の嵐が少女へ向けられる。
 戦いに対するその真摯さを認めればこそ、ミルフィもまた、敬意を示す。
 偉大なる幻想を掛け合わせた、全身全霊の、暴力という形でもって。
「……血流覚醒。すぐ片をつけてやるです。」
 竜と、吸血鬼……本来ひとつの体に宿り得ぬ血が一つの体に流れ、滾る。
 『禁忌・血流覚醒』……暴虐的なまでの力の奔流は、小さき体の命さえ削る。
 だが命を投げ捨てて挑み来る猛者どもを前に、どうして躊躇う理由があろう。
 両手足を竜の鱗で覆われゆく夜の王としての姿に、落ち武者どもも足を止めない。
 次から次へ、硬く澄んだ音が響く。
 ……巨大さは、力である。
 単純を極める正面きっての打ち合いなればこそ。
 巨なる武器と怪力でもって、刀の一撃二撃。
 力の差で全てを受け止めてから反撃に転じる戦法は、残酷なまでに理に適っていた。
「なかなかの勢いです。嫌いじゃねぇですよ」
 輩へと語りかけるような、ほんの一時の柔らかい言葉も。
「じゃあ。今度は、こっちの番です」
 自身の血が成す大槌の柄を握りなおさば、鬼神の叫びへ変じる。
 勢い任せに振りかぶった槌が、一人を砕き、二人を巻き込み、群がる武者を完膚なきまでに叩き伏せてゆく。
 一振り一振りが、戦の海に逆巻く大渦が如し。
 天つ竜を砕く槌の前に、鎧など何の障害になろう!
「さあ、ここより先は、絶対に通さねぇですよ!!」
 高らかに宣べられし覚悟が、果たされたか否か。
 疑問を投げかける必要性ごと薙ぎ払い、竜の血が、月影をも染めてゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノノ・スメラギ
やぁやぁ、我こそは銃斧の騎士、ノノ・スメって、おっと!(敵の攻撃にシールドデバイスが自動防御で反応し) 人の名乗りを妨害するとは、落武者になって武士道もどこかに落としてきたのかい? 全くなってない連中だ!
(ガンナーズとスライサー、シールドデバイスを展開し、VMAXランチャーを連射モードにして構え)
改めて、ボクの名はノノ・スメラギ! キミ達の無念とやらを根こそぎ薙ぎ払って無に帰す者の名だ!

というわけで、もてる武器全部で一斉射撃に二回攻撃だ! ひたすら連射して一切合切、薙ぎ払うとしよう!
敵の攻撃はシールドデバイスの盾受けでいなして、ナノメタルコートの防具改造で受けきって見せるよ!



●月下の武士、星の騎士
「やぁやぁ、我こそは銃斧の騎士、ノノ・スメって、おっと!」
 乱戦の只中、ノノ・スメラギ(銃斧の騎士・f07170)が堂々と名乗りをあげんとした途端、横薙ぎの一閃が割り込んでくる。
 浮遊装甲によって軽く攻撃をいなすも、これにはノノも御冠。
「全くなってない連中だ! 落武者になって武士道もどこかに落としてきたのかい?」
 『先駆け』もまた一丸ならず、武士道精神を重んずる武士もいるが。
 大半は戦場において選ぶ手段など持たぬ畜生どもであり、なればこその勇猛。
 一筋縄でいかぬのも道理とノノが判断を下すが早く。
 複合魔導デバイス『VMAXランチャー』をはじめとする武装を一斉に展開する。
「改めて、ボクの名はノノ・スメラギ! キミ達の無念とやらを根こそぎ薙ぎ払って無に帰す者だ!」
 恐らく、理由が何であったとて、結果は変わるまい。
 名乗りをあげ、敵に武士道なきを嘆くは、彼女自身がそれに類するものを持つ証。
 眼前に立ちはだかる者どもの未練を晴らしたもう、敢然たる騎士道。
 鎧装騎兵……遥か遠き星の海の騎士が生き様。
「狙いはいち、に、さん……とにかくたくさん!」
 今更、数を数える必要もなし。VMAXマンチャー、連射モード。
 現代をも超越せし未来兵器の前に、落ち武者など物の数ではない!
 見慣れぬ兵装に戸惑う一人を照準に捉え、猿叫と共に走る寄る者も捉え。
 その隣もついでに捉えて、あれよあれよと狙いは無数、降って注ぐは銃火の驟雨!
 蹂躙。一人二人と地に伏し、黒き灰へと帰してゆく。
 ……ノノが彼らに与えられる騎士道があるとすれば。
 全身全霊、最大火力、持てる限りの力でもって、目を逸らさずに渡り合うこと。
 真紅の瞳は、銃火に沈みゆく一人ひとりの落ち武者の表情を、決して見逃さない。
「――面白い!」
 心意気が通じたかは定かではない。
 だが、好戦的な笑みを浮かべ、銃弾の嵐を掻い潜ってノノに肉薄する武者があった。
 一刀の下、銃火に屈した同胞の怨念を乗せた衝撃波を放つ!
「じゃあ、もっと面白いものを見せてあげようか」
 上空に待機させていた浮遊装甲により、衝撃波を防ぎきったノノもまた。
 負けじと笑みを返し、VMAXランチャーを大斧形態へと変じさせる。
 一刀両断。
 それが、怯むことなく迫ってきた猛々しき武者への返礼。
 己が武器を地に突き立てれば、再びあげるべきは勝ち名乗り。
 ――騎士道、完遂。

成功 🔵​🔵​🔴​

美墨・ヨウ
【POW】

"先駆け"だ?
くだらねぇ、安い命だ。

「死んだ後まで世間様に迷惑掛けてんじゃねぇよ未練たらしい!!」

……なんつって啖呵の一つでも切っておきゃあ、キレた奴の一人くれぇは釣れるだろ。

武器は十字槍……つうより十字型の馬鹿でけぇ盾に剣先が付いたみてぇな俺の相方、【銀閣】ひとつ。

こっちに向かってきた攻撃を、遠距離攻撃は【戦闘知識】を使って銀閣で捌きつつ
近づいてきた所の斬撃を【武器受け】、そのまま【矛盾交叉】の【カウンター】でぶっ飛ばす。

あぁくそ、良い一撃じゃねえかクソッタレ、俺の拳よりよっぽど上等だ。
だからそっくりそのまま返してやるよ。
せいぜいてめぇの剣の重み知ってから楽土に行きな。



●ぬばたまの激憤
 夜のとばりに融和するかのような漆黒が、冷たい風に揺れる。
 女のそれと見まごう滑らかな髪を辿ってゆけば。
 しかし、そこには眉間に皺を寄せて、苛立ったような表情を浮かべる長身の少年。
「"先駆け"だ? くだらねぇ、安い命だ」
 刀を構えた武者どもを前にしてなお、美墨・ヨウ(怒髪天・f03063)は威圧感に満ちた視線を一時たりとも外すことなく。
「死んだ後まで世間様に迷惑掛けてんじゃねぇよ未練たらしい!!」
 そしてまた、指の先ほども臆することもなく、高らかに啖呵を切る。
 『先駆け』どもも、これには心中穏やかならず。
 残すところ僅かの兵力が、せきを切ったようにヨウへと押し寄せてゆく。
「行くぜ、銀閣」
 巨大な大盾に銀の切っ先を据えたかのような得物の名を呼び。
 次々に襲い来る刀の一撃、衝撃波、一つひとつを丁寧に捌いてゆく。
 荒々しい言葉遣いとは裏腹に、護りに徹した戦いこそがヨウの本分だ。
 ……が。
「痛っ……!?」
 『先駆け』どもも全滅を前にして、今や必死。
 殺到する武者のうちの一人がヨウの至近へ踏み込み、怨念を込めた斬撃を見舞う。
 屍人ならぬ身から噴き出す紅は、まさしく鮮血と呼ぶにふさわしく。
 ……そして斯なる生の色は、また、怒りの色にも似る。
「……っでぇなこの野郎!!」
 痛みをかき消す怒声と共に、踏み込んできた落ち武者の禿頭へ頭突きの一撃。
 不意の反撃は、敵に目眩を起こさせるに足る打撃力。
「あぁくそ、良い一撃じゃねえかクソッタレ……俺の拳よりよっぽど上等だ」
 怒りを誇示するかの如く銀閣を回転させ、両手で構え直す。
 昏迷のままに落ち武者が我武者羅の一刀を繰り出せば、それが好機。
 穂先を跳ね上げるようにして敵の得物を弾き飛ばし、間髪入れずの袈裟懸け。
「てめぇの剣の重み……」
 得物を引き、噛み締めた牙の隙間から空気を吐き出せば。
 その音は獲物を見据えた蛇の……否、龍の唸りにも似る。
「そのままそっくり返してやらぁ!!」
 重々しい踏み込みと共に繰り出される、豪然たる刺突。
 『矛盾交叉』……ヨウの言葉通り、自らが受けた斬撃の威力をも乗せた一撃。
 鎧さえひとたまりもなく串刺しとすれど、攻め立てはまだ終わらない。
 貫いた落ち武者の体を力任せに持ち上げ、振り回し、群がる兵さえ薙ぎ倒す!
「まとめて楽土に行きやがれッ!!」
 瞳を燃やし、命を燃やし、張り上げられたヨウの怒声と共に。
 最後の落ち武者が、地に叩きつけられた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『戦国武将』

POW   :    合戦具足
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の城の一部もしくは武者鎧】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    乱世斬
【日本刀による衝撃波を伴う斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    戦国兵団
【自分に従う兵士達】の霊を召喚する。これは【火縄銃】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 その部隊は、『先駆け』と謳われた。
 だが、元を辿れば、『先駆け』とは一人の男の二つ名であった。
 躊躇うことなく先陣を切り、敵兵を蹴散らす勇猛の将。
 彼が率いる部隊に、やがて同じ名が分け与えられる。

 ……戦場を遠巻きに眺めながら。
 『先駆け』と呼ばれたその男が。
 死の淵より舞い戻ってまで、戦さを望んだその男が、戦列に加わらなかったのは。
 怯懦のためでもなければ、慢心のためでもない。
 奇妙奇天烈極まることに、死後にあって初めて、『先駆け』の魂に灯る火があった。

 ――あの強者どもを、俺が、独占したい。
 実に子供じみた我欲。
 されど、猟兵どもの戦いぶりを前にして、熱を失った血が滾るのだ。
 我が力のみで、彼奴らと渡り合いたいと。
 共に戦場を駆けた仲間が果敢に散りゆく様を、勝手極まる心地で見届け終えたなら。
 最早、言葉は要らず。

 此方を征くは剣の奴婢。
 彼岸に背を向け彼方を捨てて、恋い焦がれるは遥かな戦さ。
 誰彼抜かして走り出で、血煙巻き上げ拓く道。
 ひと、ふた、みっつ、返す刀でざんばらり。
 耳朶打ちして止まぬは死の残響。
 双眸視るは骸ばかりの戦さ道。
 教えたもうか、『先駆け』なる名。
 刻みたもうか、『先駆け』の意味。
 いざ、いざ、いざや今。
 死合うに事足る言も無し。
 死合うに見合う詩句ぞ無し!

 ただ二振りを両手に構え。
 『先駆け』なる身が、疾走す。
ジン・エラー
死から戻って斬るお前
生を引き戻し救うオレ
正反対だ
綺麗にな

絶対に相容れねェし、到底付き合う気にもなれねェが
それがお前の救いなら、仕方ねェ

そもそも
お前らの生き様も
お前らの死に方も
オレはどれ一つだって気に入らねェンだがな

"戦場で死ねなかった"?
その未練を晴らすため?
自分たちが満足して死ぬため?
いいや違うさ
お前らが今生き返った理由はただ一つ

オレに救われるためだ

【オレの救い】も
オレの【光】も
絶対に消えねェーからよ

試してみるか?

お前が死ぬまで、付き合ってやる



●救いあれ
 死のために永らえる。死ぬために舞い戻る。
 ああ、全く。ああ、実に。
 ああ、嗚呼、何と唾棄すべき信念!
 叩き潰さずにはいられない! されど救わずにもいられない!
 徹頭徹尾、ジン・エラー(救いあり・f08098)は傲慢であった。
 殺意に満ちた敵相手であれ、その生き様は狂ったままに寸分の狂いもない。
 生者を死の淵より連れ戻すジン。
 死に名誉を求め生を投げ打つ『先駆け』。
 此岸と彼岸、決して交わり得ぬ正反対の両者が対峙する。
 言葉なくして、『先駆け』の一閃が空を切った。
「生きて戦うのは、楽しいかァ!?」
 身を翻して躱し、言葉を交わす。
 付き合う気になれるはずもない信念。
 だが、向き合うためにこそ、ジンはここに居るのだ。
「ああ楽しいとも! お主らのような強者に巡り会い、刃を交えらるが故に!」
 死地のための戦い。
 ジンからすれば、何もかもが気に入らないが。
「それがお前の救いなら仕方ねェ……オレが相手してやる!」
 二刀による連撃をすんでのところで回避し続けながら、ジンは笑う。
「やれるというのか!? お主に!」
「やるんだよ! それがお前の生き返った理由だからな!」
「抜かしおる! お主に討たれるが我が本懐と!?」
「いいや違うさ! 理由はただ一つ!」
 後方へ飛び退いたジンがやはり不敵に笑い、己を指差してみせた。
「オレに、救われるためだ」
 数秒の、静寂。
 乾いた風が吹き、芒を揺らす。
「フッ……」
「くはッ……」
「フハッ」
「カカッ」
「フハハハハハハッ!!」
「カァーッハッハッハッハ!!」
 意地でも戦さ場で死ぬ。 
 何がなんでも生かす。
 まるで正反対の理念を抱きながら、両者はしかし、共に狂気めいた高笑いを重ねた。
 それが、火蓋。
 武者鎧と一体化し、巨大化してゆく『先駆け』を前にしたとて、ジンに竦む理由などない。
 もっと恐ろしい、怖気の走る光景も声も、いくらでも知っている。
 天地が転覆しようとも相容れぬ思考回路だからこそ、あとは、ぶつかり合うのみ。
 相容れぬ者であろうと、断固として救わんとする、傲慢、驕傲、不遜。 
「どんな手を使おうと、『オレの救い』も、オレの『光』も、絶対に消えねェーからよ」
 その在り方を狂人と譏る者もあれば、聖者と讃う者もある。
 いずれにせよ、ジンの体から放たれる輝きこそが、〝それ〟だ。
「お前が死ぬまで、付き合ってやる」
 月光すらも呑み込んで、聖者が駆ける。
 救いあれかしと、疼く傷跡を輝かせながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

八坂・操
【SPD】

後から出て来て“先駆け”とはこれ如何に? ただ名乗りを上げる前に斬り掛かって来そうなのは、流石“先駆け”ってトコだね☆
でも、もう終わったんだ……そうだろう? 【狐狗狸さん】。
「狐狗狸さん、狐狗狸さん、どうぞおいでください」
……だから、本気で相手しよう。

先手を譲り、二刀の刃を転がっている落武者で『敵を盾にする』。
一瞬で良い。隙をつき『目立たない』よう気配を消し、『忍び足』で背後より『鎧無視攻撃』しつつ貫手で『串刺し』だ。
「駆け抜けた先は既に彼岸、踵を返せば三途の川。此岸に戻るは道理が通らぬ」
伊邪那岐命でさえ許されなかった事が、どうして“先駆け”程度に許されると思ったんだ?



●後ろの正面、 ███
「ねえ、後から出てきたのに『先駆け』って……きゃあ!」
 八坂・操が疑問符を投げかけるより前に、『先駆け』が動く。
 両の刀を縦一文字に振り下ろすと同時に、縦横無尽に舞い飛ぶ衝撃波。
「前言撤回、さすが『先駆け』、せっかちさんなんだからー☆」
 戦場全体を覆わんばかりの広範囲攻撃を、しかし操も凌ぎきる。
 多くは黒い灰となって崩れ落ちたが、それでもそこかしこに落ち武者の亡骸。
 戦いの中で供養は存分に果たしたがゆえ、盾として構えるのに躊躇う理由なし。
 そうとも。この落ち武者ども同様、『先駆け』も、既に終わった身なれば。
「狐狗狸さん、狐狗狸さん、どうぞおいでください」
 本気で相手をするには、十分な理由だ。
 衝撃波に切り刻まれ巻き上げられてゆく草の断片に、砂埃。
 刹那の死角を見極め、大柄な死体を蹴り飛ばすと同時に、操が身を潜めた。
 気配を殺し忍び寄るなど、〝怪異〟の十八番。
 『狐狗狸さん』をその身に宿し、俊敏さを増せば尚のこと。
 程なくして、鬨の声を失った戦場に、静謐が取り戻される。

(あの女、何処へ消えた)
 猟兵に身を隠す異能があって不思議もないと『先駆け』とて理解していた。
 そしてまた、もっとも警戒すべき方向もまた。
 ――ぞくり。
 背筋を、悪寒が、伝う。
 わかり切っている。たった今、自身に戒めた通り。予想通り。
 あの女が、真後ろに立っている。
 構えも何もしない、隙だらけ、無防備な姿勢で。
 気配に従い、振り返りざまの一刀を見舞わば、確実に渾身の一撃となろう。
「駆け抜けた先は既に彼岸、踵を返せば三途の川。此岸に戻るは道理が通らぬ」
 だのに、振り返れぬ。
 鉄で塗り固められたかのように、首元が一寸たりとも動かない。
 幾十人もの落ち武者を支配したそれが、『先駆け』ただ一人の背を伝う。
 冷や汗一筋ひと筋を通して、体の芯にまで沁み入ってくる。
 それはいかなる戦場をも恐れることのなかった男が。
 皮肉にも、死して後にこそ、生まれて初めて覚えた感情。
「――後ろの正面、だあれ?」
 耳朶をくすぐるかのような囁きの後。
 後ろに立つ女の真白い指先が己の胴部を貫き、真紅に染まる。
 振り返れねばこそ、それが様を目の当たりにしながら、『先駆け』は知る。
 彼の道を振り返りし伊邪那岐の好奇が、また、〝勇〟をも宿していたのだと。
 人の身を逸脱しきれぬ己は、故にこそ、この感情に。
 〝恐怖〟に、抗えぬのだと。

成功 🔵​🔵​🔴​

犬曇・猫晴
先駆け。軍の勝利の為に死を顧みない斬り込み隊。
最っ高にかっこいいね。
それじゃあぼくも後に続いてくれる猟兵の手助けを出来る様に路を切り拓こうじゃないか。

【SPD】
彼を確認すれば速やかに突撃。
飛び交う斬撃とその衝撃波を躱して我の射程範囲内へ。

足の腱を狙って夜鳥で【二回攻撃】
体勢が崩れないならば【グラップル】。
敵の攻撃をギリギリで躱して、勢いを活用して投げたり、転ばしたり。

悪いけど、ぼくは君を倒す決定的な力なんてもの持ち合わせてないからね。
後から来る人たちの為の消耗戦に付き合ってもらうよ。
ぼくの仲間が来るのが先か、ぼくが斃れるのが先か、ぞくぞくしない?

負傷、アドリブ歓迎



●『先駆け』と『先駆け』
 新たな敵を確認すれば、やはり足を止めることなく駆け出す。
 推参こそ遅れども、敵を前にすれば正面突破あるのみが『先駆け』の所以。
「最っ高にかっこいいね」
 鬼気迫る『先駆け』を前にして、対照的に、犬曇・猫晴(亡郷・f01003)は飄々と戦場に佇んでいた。
 中距離から『先駆け』が刀を振るえば、立ち込めゆくは無数の斬撃。
 猫晴はただ『培った経験』をよすがとして、軌道を読み、掻い潜り、敵へ迫り。
 屈んだ姿勢から、握りしめた剣鉈『夜鳥』で先駆けの腱を払う。
「浅いわ!」
 それでもなお体勢を崩さぬのは、さすが歴戦の猛者と言うべきか。
 閃耀、一刀により即座の反撃が光の軌跡を成し、猫晴を襲う。
 肩から胸部にかけて灼けるような熱と痛み。
 だが、これもまた好機。歯を食いしばり、『先駆け』の腕に取り付く。
 続けざまに身を捻りながらその腕を引き、流水にも似た動きで一歩、二歩。
 力の流れに任せて後方へ回り込めば、猫晴れの目論見通りに重々しい鎧が姿勢を崩す。
「ぬうッ……!?」
 オブリビオンの怪力あればこそ、それが仇となった格好だ。
 機を見るに敏、即座に猫晴の足払いが泣き所を襲い、『先駆け』を転倒せしめる。
 ここで決定打を見舞えれば良いのだが、猫晴はそれをしない。
「お主、何のつもりだ……!」
 手心を加えられたかと『先駆け』が憤る。
 他方、猫晴は己が傷の切り口を荒っぽく縛りながら、嘆息するのみ。
 何のことはない。
 端から、決定打など用意していないだけなのだ。
「別に、手を抜いたつもりはないよ」
 そう。自分が勝つ必要は、ないのだ。
「ただ悪いけど、ぼくは君を倒す決定的な力なんて持ち合わせてないからね」
「……何?」
「消耗戦に付き合ってもらうよ。ぼくが、後に続くみんなの『先駆け』になる」
 後から来る猟兵たちの一助となるべく、敵を消耗させるもまた兵法。
「ふ……ははッ!」
 猫晴の言葉に一笑せざるを得ぬは、まさしく当の『先駆け』だ。
 まさか、遥か未来の戦さで、己らと同じ役割を背負う戦士に出会うとは!
「うわっ、何急に」
「いや、なに。『先駆け』なるお主と共に駆ける戦場を、刹那の間に夢見ただけよ」
「光栄だね。じゃあ、親近感ついでに手加減とかしてくれない?」
「笑止」
「だよね」 
 短い言葉を交わせば、火蓋は再び切って落とされる。
 泥臭いほどに飾り気なく、されど欠伸を漏らす暇なき長時間。
 先に地に伏するは、何方か。
 二人の『先駆け』が、火花を散らし続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

美墨・ヨウ
テメェか親玉は
こちとらてめぇの手下に良いの貰ってキレてんだよ。

【POW】
本気でぶっ潰してや……
え、何これ髪青くなってんだけど

……くそったれ何だって良い!!
ロボだか武者だかしらねぇが尋常に勝負だ!!
(真の姿解放及び魔鬣覚醒使用、髪が氷に青く変生する。
【氷】の力を付与し【防御力】を増強。)

へ、衝撃波も弓矢も鉛玉もどんと来いってんだ。
おい危ねぇぞ、俺の後ろにいろ。
(周囲にいる味方への攻撃を氷を帯びて盾の様になった【銀閣】で【武器受け】、【庇い】ながら敵に肉薄。)

何だそりゃ、武者がロボとかちぐはぐにも程があんぞ。
……まぁ関係ねぇ、一撃くらい貰っとけ!!
(【串刺し】での一撃。)

(※誰かとのタッグ歓迎)



●怒髪、天をも凍てつかす
 激しい金属音を立てながら、美墨・ヨウは相棒『銀閣』と共に二刀を受け続ける。
 猛烈、熾烈……再び巨大化した『先駆け』の攻め立ては一切休む手を見せない。
「敵陣突破は戦さが華……実に崩し甲斐のある護りよな!」
「武者かロボかはっきりしろちぐはぐ野郎が! ……だったらこっちも本気でぶっ潰してやる!」
「吼えよるわ、美しき青髪の戦士よ!」
「は、青髪? 何ほざいて……え、何これ」
 戦いの最中になびくヨウの髪は、ぬばたまの黒から透き通るような青へと変じていた。
 当人は気づきもしなんだが、然り、これこそが猟兵としてのヨウの『真の姿』。
 慣れぬ状況が容赦なく脳を引っ掻き回し続けるが、変化の意味は本能で理解できた。
 青き頭髪に宿るのは、氷の魔力……それを迸らす方法。
 ただいつもどおり、思うさま、感情を爆発させればいい。
「くそったれ、ワケがわからねぇが戦えるなら何だっていい! ロボだか武者だか知らねえが、尋常に勝負だ!!」
「応!」
 怒りが、怒髪が燃えたぎる程、反発するように戦さ場に漂う空気がしんと冷えゆく。
 氷の魔力がヨウの肉体を、防具を固めれば、それが凍てつく戦化粧。
 全力で得物を振りかぶる『先駆け』を前にしたとて、臆しはしない。
 真正面から二刀を受け止めれば、火花の代わりに結晶を散らし。
 されどヨウの、銀閣の護りはただの一歩も揺るがない。
 絶対不落、氷の城郭。
 『先駆け』がこれまで斬り込んだ、いかなる戦場より堅牢なる護り。
「フ……ハハハッ! 良いぞ、好いぞ、快いぞ! 名も知らぬ戦士よ、お主もまた武士というわけだ! 我が未練にかけても、その守り必ずや……」
「知るかバカ!!」
 興奮のままに謳う『先駆け』の言葉はしかし、怒号と氷の刺突によって阻まれた。
 巨体の正中を捉えた突き。決して攻め手が緩まっていたわけではない。
 ただ、すっぱり切れたヨウの堪忍袋の緒が。
 怒りに任せた勢いからなる一撃が、『先駆け』の猛攻をも突き抜けたのだ。
「こちとらてめぇの手下にいいの貰ってキレてんだよ! 勝手にイイ気に浸ってんじゃねぇぞコラ!!」
 武士の矜持なぞ何のその、感情のままヨウの怒髪が天を衝く。
 これにはさしもの『先駆け』も面食らうばかり。
 ――この男、単なる戦士ならず……猛り狂う修羅であったか!
「……推して通るぞ、修羅ッ!」
「誰が通すか、くそったれ!!」
 赫怒に燃えども、掲げる氷は溶けることなし。
 暴怒を受けども、構える盾は砕けることなし。

成功 🔵​🔵​🔴​

多々羅・赤銅
梅の芳香と【殺気】色濃く、この身が持つのはたった一振りの刀のみ
勝敗は五分五分か。ーー命を賭けるにゃ、分が良いぜ。

動きさえ【見切】れりゃあ、赤銅鬼に斬れねぇモンは無え
巨大化するなら、ゼロ距離まで【捨て身】で踏み込んで、結合する部品も本体も、片っ端から斬りて落として鋼の花。
この剣刃一閃、斬るは有形にすら拘らねえ。後ろを【かばう】ように、斬撃波も斬り伏せてみせようご覧あれ。

時には転がる【落ち武者を盾にして】、【二回攻撃】の初撃を【フェイント】し、荒くも舞うように賢しく立ち回る。無茶な動きだ、血みどろかもな。【激痛耐性】【鎧無視】。
私が満足できないような戦さ場で、落ちるタマじゃあねえよな先駆けェ!!!



●『不屈の精神』、興がり生かん
 此処に、此の季節に梅花は咲かない。
 だが、むせ返るほどの殺気に彩られ、確かにその香りは、『先駆け』の鼻腔をくすぐったのだ。
「よっ。殺ろうか」
 十年来の知己に向けるかのような気安い声音に伴うはずもない、斬撃。
 それを引き連れて、多々羅・赤銅が巨大化した『先駆け』へと捨て身で肉薄する。
 倍以上もあろうという身の丈から繰り出されれば、棒振りとて脅威。
 直感で軌道を見切り、屈んで跳んでの大立ち回り。
 一太刀振るえば『先駆け』纏う殻剥がし、梅の香気に鋼の花ぞ咲く。
「フハッ……愉快痛快!」
 肉体にも等しい鎧を削り落とされながらも、返礼とばかりに『先駆け』が破顔う。
 これを避けるか。これなら如何か。見事! ならば次は……!
 戦さ場だというのに、好奇心のまま遊ぶ童のように次々繰り出す一刀二刀。
 梅の香りに血のそれが混ざれば、したりと拳を握る。
 喧々囂々、丁々発止、打ちては鳴らして斬り合うばかり。
 赤銅が斬り傷に塗れるのも、遂に『先駆け』の巨大化が崩されるも、また道理。
 荒い呼吸を繰り返しながら、身の丈揃えた二人が視線を交わす。
「名は」
「多々羅、赤銅」
 問いかける意味も、応える意味も、論ずるだけ野暮。
 一呼吸の間を置いて、再び両者が駆け出す。
 先手打つは『先駆け』、力任せに二刀交叉の大振り!
 鮮血の代わりに、赤銅が拾い上げ盾とした落ち武者の亡骸から黒灰が散る。
「悪いな、仲間を盾にして」
「好い。俺とお主の仲だ」
 大業物を握り直し、赤銅もまた反撃の一閃……を、見せかける。
 防御の構えを取ったなら、それが『先駆け』の隙。
 舞うように柔軟な動きで身体を捻り、しかし繰り出すのは、荒々しい蹴り。
 得物ばかりを警戒していた『先駆け』の胴部を、強烈な一撃が捉える。
 ――嗚呼、楽しい!
 心中にそう思い浮かべたのは、どちらであったか。
 そうとも、好き勝手、我が儘放題に生きずして、何が一度きりの人生か!
 全身を苛む激痛など、口の中で化合した血と泥もろとも吐き出してしまえ。
 まだ、まだ、まだ……未だ痛みは〝この程度〟!
「私が満足できないような戦さ場で、落ちるタマじゃねえよな先駆けェ!!」
「愚問よな、多々羅赤銅ォ!!」
 腹の底から絞り出る叫声、怒声。
 なれどかんばせは、呵々大笑に耽るが如し。
 二人の鬼が、遊び戯れ、命を獲り合う。
 ……戦さの華とは、よく云うが。
 それが香りは、どうやら梅と血を混ぜ合わすに似ているらしい。
 黄泉より還り、初めて、『先駆け』は知った。

成功 🔵​🔵​🔴​

アマラ・ミュー
群れの"頭"が漸くご登場か。

なんとも、まあ。
余程無念だったんだね。
残したいものがあったんだろうさ。

でもね。
満たされないままに土へ返る者なんて、世界にごまんといるんだよ。
キミらだけ特別にもう一度チャンスを貰えるって?

寝言は寝て言いな。


狙うは群れの"頭"ただひとつ。
真正面から撃ち合うつもりはないよ。
太刀筋を「学習」し、「見切り」
奴の脚に【手を伸ばし】、一気に引き戻して股下に飛び込む。

真下から攻撃を受けたことはある?
私からの餞別。『木枯らし』の全弾、持って逝きなよ。



●射るは、冥府の死者さえも
 死者が蘇り、都合よく未練を成就せんとする様に、冷淡な一瞥をくれる者もある。
 アマラ・ミュー(天のカミサマを射るように・f03823)もその一人だ。
「次に俺の未練と斬り結ぶは、お主か?」
「寝言は寝て言いな。満たされないまま土に還る者が、どれだけいると思ってる」
 『先駆け』どもにだけ機会が与えられるなど、道理が通らない。
 死してなお未練を果たすが正義なら、世界は今ごろ死者の国だ。
 アマラの狙いはただ一つ……故にこそ、手の内は隠し通す。
 ひたすら回避に専念し、『先駆け』の太刀筋を観察するうちに得た気づきがある。
(こいつ、二刀を振るうのに慣れてない)
 おそらく、『先駆け』の二刀流はオブリビオンとして蘇る際に付与された性質。
 言ってしまえば、『先駆け』の戦い方は力任せのチャンバラに近い。
(なら、付け入る隙は必ずある)
 古のサムライには及ばずとも、アマラとて場数を踏んできた身。
 動作の癖、予兆、法則性……そういったものから生まれる隙。
 見出すべきは、一瞬でいい。
「茶番は終いだ」
 ……が、『先駆け』とて見切られたままではいない。
 不意を縫って繰り出された衝撃波が、アマラの全身を容赦なく切り刻む。
「しまッ……!」
 次々生まれる切り傷は、その髪色に似た血を淋漓と流れ落ちさす。
 なれどアマラは倒れず。眼前の敵を、威嚇するように見据えた。
「ほう、良い顔をする」
「そりゃどうも。ちっとも嬉しくないよ、色男」
 互いに皮肉を飛ばす余裕を見せながらも、両者の間の緊張が止むことはない。
 だがアマラも、狙うべき機は見極めた。
 衝撃波、大技は連続しては繰り出せないはず。
 再び、愚直な剣戟が襲い来る。
 横薙ぎ。違う。
 突きからの斬り払い。これも違う。
 右上段からの袈裟斬り。
 ――ここだ!
 両の手で太刀を振るえば、必ず動作に制限が生まれる。
 袈裟懸けに刀を振り下ろせば、残る一刀の軌道はおのずと限られる。
 アマラの読み通り、続いて繰り出されたのは、突き。
 身を屈めて躱し、武者鎧の脚へと『手を伸ばす』。
 より正確に言うならば、ユーベルコードにより、蔓状の異形へ変化した右腕を、だ。
「何と……!?」
 『先駆け』の一驚も構わず伸縮自在の蔓を自身の体ごと引き戻し、一気に股下へ。
 能ある鷹が隠し続けた爪、今こそ披露の時。
「渡し賃、ないだろ。餞別に全弾持って逝きな」
 懐から取り出した愛銃『木枯らし』……全弾、装填済み。
 銀の毒が貫くは、首魁、頭目、そのまた頭。
 真下、『先駆け』も知らぬ死角からの銃撃が、余すところなくその脳天を貫いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
…ハッ!前時代的な生き方だ。強者と戦いたい?戦場で死にたい?死人には贅沢な願いだ。悪ィが俺は合理主義者だ。テメェと斬り結ぶ役目は、花形がやるさ。俺には俺のやり方がある。しっかり見とけよ?これが未来の戦い方だ。

SPD重視。俺が狙うのは「戦国兵団」に対するカウンターだ。【見切り】で召喚の予備動作を見切って、【早業】でユーベルコードの準備をして、巻き込まないように味方を下がらせる。
【ダッシュ】で召喚された兵団の中に一気に飛び込み、ユーベルコードの範囲攻撃をぶちかましてやる。

テメェの考えは古臭ェが…一つだけ共感できることはあらぁ。
「意味のある死」
せめて最期くらいは…悔いのないように、しっかり逝けよ。



●八艘飛びゆくが如く
 遥か未来に生まれ育ったサイボーグの身。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)から見れば、『先駆け』の生き方も考え方も前時代的に過ぎた。
 強者との戦い、戦場での死。
 死者の身にあっては過ぎたその願いを叶えてやろうと正面から挑むほど、ヴィクティムはロマンチストではない。
「戦場を独占できぬは惜しいが……致し方なし!」
 『先駆け』が唸り、ここまで隠し通されたオブリビオンとしての大技を発動する。
 全軍突撃すべしと命ずるかのように刀を突きつければ、召喚される兵ども。
 銃と弓とを構え、一斉にヴィクティムを狙うが。
「待ってたぜ、そういうの」
 当のヴィクティムはといえば、造作ないと笑みを浮かべるばかり。
「悪ィが俺は合理主義者だ……潰すだけ、潰させてもらうぜ」
 銃火、弓矢を掻い潜り、猛然たる速度で兵団の中へ。
 狙うは兵団の中心、全てを巻き込める位置。
 障害物や足がかりに満ちた戦場こそ、ヴィクティムの独擅場。
 今この時において、丁度いい〝足がかり〟はそこら中に突っ立っている。
 地を蹴り、壁がなければ兵の鎧を蹴っての横っ飛び。
 着地の間も無く前へ跳び、敵の両肩掴めば、塀を越えるが如くにひとっ飛び!
「パルクールっつーんだ。未来の戦い方、覚えときな」
 もっとも、兵団の中心にあたる位置へ軽やかに着地した以上。
 その知識は、冥土の土産となるのみ。
「NO.008ヴォイド、フューミゲイション……まとめて消えやがれ!」
 機械化した両腕を掲げると同時に、古き時代の者共が知り得ぬ演算処理。
 物質を、そして害なす者ども皆すべからく消え失せよという絶対命令。
 『Vanish Program『Void』』。
 その発動が、瞬く間に兵団を塵一つ残さず消滅せしめた。
「面妖なり……されど見事!」
 間髪入れずにヴィクティムへ斬り込んできたのは『先駆け』だ。
「ウィズ! 悪くない速さだぜ?」
 ヴィムティムによる賞賛の言葉は、余裕の裏返しだ。
 後方宙返り、夜空の月を足場とするにも似た流麗なる回転。
 『先駆け』がいくら刀を振るえど、その切っ先はヴィクティムを掠めもしない。
「悪ィが、テメェと斬り結ぶ役目は、花形がやるさ」
 次なる猟兵へ渡されるバトンが、すなわち『先駆け』の終焉。
 ただ一つ、ヴィクティムがこの武士に共感し得る面があるとすれば。
「……意味のある死、か」
 誰にも聞こえぬ声量で呟き、『先駆け』より遥か距離を置いての着地。
 敵の消耗も時間稼ぎも、十分。万全以上の仕事が果たされた。
「せめて悔いのないように、しっかり逝けよ」
 果たしてその言葉は、風に乗り最期の戦場に立つ『先駆け』へ届いたろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​


●独白
 ――詫びはせんぞ。
 猟兵どもと斬り結びながら、独り想う。
 数々の戦場を共に駆けた、輩だった。戦友だった。
 最初から己が戦列に加わっていれば、戦況が覆った可能性もある。
 だのに、ただ独りで戦い抜きたいという、この我欲を抑えられなかった。
 許せとも言うまい。
 我が儘を貫き通す身勝手さがなければ、死の淵からわざわざ這い上がりもせぬ。
 『先駆け』なんぞ、誰より早く斬り合うための手段に後からついてきた名だ。

 思えば今際の際にあっても、俺は〝そう〟だった。
 生前には、誰より先を駆けて戦さ場に躍り出た身。
 故に、散りゆく戦友は、常に後ろを倒れゆく。
 誰の名も思い出せぬも、当然。
 俺は、仲間の死に顔というものを、見たことがなかった。
 誰一人のそれも、俺の記憶には残っておらなんだ。

 死後になって初めて、お主らの逝き様を見届けるとは皮肉極まるものよ。
 此度の戦さにて、俺に助太刀を求むる機会など幾らでもあったろうに。
 それほどまでに、血湧き肉躍る戦さだったか?
 理解る、嗚呼、今ここに立っていれば理解るとも。
 まこと斬り合いしか頭にない、俺に負けじと我の強い者共だった。
 然り、この戦さ場はきっと、我らが全ての未練を晴らすために在る。
 お主らの……ああ、気取るのも疲れた。

 お前らの未練など、俺は、背負えねえ。
 資格が無いなんて格好のついた理由じゃあねえさ。
 ……そんなもの、どうせ此処には残っちゃいねえんだろう?
 むかっ腹の立つ話だ。この戦さ場に、きっと俺だけが未練を残す。
 これだけの猛者どもを相手に独り立ち回る幸福を享受するばっかりに。
 ――俺の逝き様をお前らに見せられんのが、悔しくて仕方ねえ。
 冥土に馳せ参じるは誰より遅れるが、許せよ。
 土産話は、飽きるほど聞かせてやれそうだ。
麗明・月乃
神月・瑞姫と参加。

ただ者ではない気配じゃな。
戦に生き戦に死ぬ武士(もののふ)か。
…ふむ。使えるな。
「行くぞ、みぃ。気を引き締めてかかれよ」

真の姿によって私の、そして指輪の『封印を解く』
同時に舞いながら『高速詠唱』で【九破天狐の舞】を使用。
「存分に戦って来るのじゃ。後ろは任せろ」
みぃが主体で私が援護。
あの手の戦闘狂との立会いは良い経験になるじゃろう。
たまにはこういう形も良かろうて。

『野生の勘』を発揮してみぃの攻撃の隙間を埋めるように、敵の攻撃を妨害するように。
『全力魔法』で風の刃や氷の吐息などの各『属性攻撃』を飛ばして敵の腕や足を攻撃しよう。
「見るべきは流れ。先を読め、機を逃すな。……そこじゃ」


神月・瑞姫
麗明・月乃お師匠さまと参加なの


はいなの

これはお師匠さまの試練なの
神様には…頼っちゃだめだよね
みぃが
みぃの力で勝たないとなの
大丈夫
今のみぃなら…仮面なしでも…
神様
今日は見守っててなの
(真の姿を現す
青白い九尾のオーラを纏い
愛用の薙刀【狐月】を構え突撃する

【フォックスファイア】
19の狐火による
遠距離攻撃を織り交ぜた薙刀と刀の応酬
夜闇に炎と剣閃の花が咲く
お師匠さまの援護を受け
戦国兵団を全滅させたら

狐火を一点に集中
薙刀の刃先に纏わせ
大将への終の一撃

名付けて
月天劫火(げってんごうか
紅観月(くれないみづき
…なの!
(炎纏う薙刀で【鎧無視攻撃】の【薙ぎ払い】
その軌跡が紅く輝く月を描く

えへへ
どうかな
お師匠さまー



●狐花の彼岸へ
 猟兵を見据えるや否や、『先駆け』が再び戦国の兵団を召喚する。
 数もさらに増し、いよいよもって最後の大盤振る舞いというところか。
「行くぞ、みぃ。気を引き締めてかかれよ」
「はいなの。行ってくるの、お師匠さま!」
 それを見据え、小さな妖狐の師弟が、時を揃えて『真の姿』を解放する。
 いくつもの尾に朧げな光を纏い、薙刀を手に迷いなく突撃するは神月・瑞姫。
 小さな背を見送りながら、舞いて詠うは麗明・月乃。
「我は偉大なる守護者。怒りは猛き焔に。悲しみは白き凍気に……」
 流麗な所作、澄んだ声音で言祝ぐように詩句を唱えてゆく。
 やがて小さな体より生える尾は、一つ二つ三つ……やがては九つに。
「……我が全霊を持って愛し子の敵を滅ぼさん」
 舞の締め括りとばかりに、爪先立ちにその場で旋廻をしてみせたなら。
 身につけた指輪が光を放つと共に、九つの尾が月乃の小さな体を包み込み。
 ……やがて開いたその内側からは、人ならぬ姿が舞い降りる。
 化生の王が一角を担うもの……九尾の狐が、月明かりに縁取られ、其処に在った。
「存分に戦ってくるのじゃ。後ろは任せろ」

 仮面に……『神様』に頼ることも、ほんの一瞬、頭を過ぎりはした。
 だが、これは師が与えたもうた試練。
 神仏は万に宿り、人々を見守るものなれば。
 今はただ、戦さに赴く背を見届け給へと祈りを捧ぐ。
 眼前には、『先駆け』が最後の力を振り絞って呼び出した兵団。
 番えた矢が、わずかに硝煙の香りを風に乗せる鉄砲が容赦なく瑞姫を狙う。
「みぃは、退かないの」
 ここで退くことは即ち、後方に立つ、愛する師を銃弾と矢の雨に晒すこと。
 戦さの先を駆ける者でなくとも。
 信を置く誰かが見てくれているだけで、平素を遥かに上回る力を出せる事もある。
 つまりは、今の瑞姫が、それだ。
 自身を狙って振り注ぐ形ある殺意の中を駆け、無数の狐火を放つ。
 纏わりつく狐火に先陣が怯まば、ごく小さな体躯を活かして懐へと潜り込む。
 絶好の位置。
 手に握った薙刀を振るうたび炎の剣閃が咲き、周囲の兵が次々に散りゆく。
「雑兵ばかりと思ってくれるなよ!」
「……!」
 兵団二度目の危機とあっては、『先駆け』も悠長に立ち尽くしてはいない。
 周囲の兵に気を割いていた瑞姫へと迫り、二刀を振り上げる!
 ――転瞬。
「弟子の背中を預かっているでな。させぬよ」
 瑞姫を守るように躍り出たのは、炎と氷、相克を衣とする巨大な九尾の狐。
 大地を隆起させ生み出した岩の槍が、『先駆け』の剣閃を真正面から受け止める。
 肉体が獣の姿に変じ、危険を察知する野生の勘はいっそう研ぎ澄まされていた。
「お師匠さま!」
「大詰めはすぐそこじゃ。気を抜くでないぞ」
 無邪気に喜びの声をあげる弟子を律するもまた、師の役割。
 大将首が切り込んできた以上、残りの兵団は自身が相手をする。
 月乃の眼差しを解し、瑞姫もまっすぐ首肯で応じた。
「戦に生き、戦さに死ぬ武士どもよ! 私が、麗明月乃が相手をしてくれる!」
 風の刃が銃を矢を切り裂き、氷の吐息が混乱する兵たちを凍てつかせてゆく。
 化生の王を前にして、雑兵など物の数ではない。
「見るべきは流れ。先を読め、機を逃すな!」
 大立ち回りを演じながらも、大将首と対峙せんとする弟子へ激励を飛ばす。
 長き戦さが、終わろうとしていた。


 ――童。未来ある者の象徴、か。
 なんと輝かしく、眩しいものか。
 だが、童であったとて、並の武士より遥か上を行く。
 この戦さ場において、喜ばしい程に学んできた事実だ。
 攻め手を緩める道理は皆無……最後の最期まで、駆けるのみ。


「名を」
「瑞姫、なの」
 己の最期を与えたもう小さな戦士との、短いやり取り。
 『先駆け』に残された手も、もはや、生前と同様の棒振り程度。
 だが、それで良い。それが好い。
「あなたのお名前は、何なの」
 命のやり取りを行おうという瞬間なのに。
 瑞姫もまた、好奇心のままに問いかけた。
 戦さに生き戦さに死ぬ、戦さに狂いしかつての人。
 師が、自分の成長のために相対させた武士の、その名を。
「『先駆け』」
「本当のお名前は……?」
「……さあな。ほかの名は、冥府に置いてきた」
「……じゃあ。みぃが、あなたをそこに帰してあげなきゃなの」
 音もなく、双方が得物を構えた。
 やはりと言うべきか、先に動いたのは『先駆け』だ。
 瑞姫の頭の中で、師の教えが反響する。
 ――見るべきは、流れ。
 その言葉を思うだけで、不思議と、『先駆け』の動きが読める。
 ――そこじゃ。
 師の……月乃の声が、聞こえた気がした。
 薙刀の刃先に全ての狐火を纏わせ、紅き一閃。
 名付けて『月天劫火 紅観月』。
 空の月は蒼く……そしてまた地には、赫々たる月が煌めく。
「まったく」
 チリチリと燻る傷跡に、しかし痛みはなく。
 『先駆け』は、ただ、笑う。
「良き、戦さであった」
 黒い霧が、吹き抜ける風にさらわれたかと思えば。
 『先駆け』であった、がらんどうの鎧兜が、音を立てて崩れていった。


 
 一帯は静寂を取り戻し、ただ風の音と虫の声、芒の揺れる音が響くばかり。
 瑞姫と共に並び立ち、元の姿に戻った月乃が目を細め、遠き時代を想う。
 『先駆け』と呼ばれた、武士ども。
 あれらが地を、空気を震わし。
 溢れんばかりの活力で、鬨の声で、戦場を揺るがした時代があったのだ。
 鶏のそれと思しき羽が、月乃の視界でひらりと風に乗り、夜の空へと消えていった。
「盛者必衰……偏に風の前の塵に同じ、か……」
 どうかなお師匠さま、と無邪気に差し出された弟子の頭をかいぐりながら、誰に言うとでもなく、月乃が漏らす。
 たけき者も、遂には滅びぬ。
 遥かより謳われた理に、月乃が、瑞姫が……猟兵たちが、句を結んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『目指せ剣豪!木刀勝負!』

POW   :    とにかく気合いだ!勢いと筋力でブチのめせ!

SPD   :    剣の威力はすなわち速さ。素早く切れるようにカラクリ燕に挑む

WIZ   :    剣の道は心の修練が大事。心静かに瞑想に励む

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 翌朝。
 『先駆けより』守り切った町で一夜を明かし、猟兵たちがおのおの目覚めてゆく。
 ……先の戦いの昂り冷めやらずか、他に思うところあってか。
 あるいは、単に日々の習慣か。
 理由は多々あったろうが、誰かの提案を切欠に、皆で鍛錬を行う運びとなった。
 オブリビオンから町を守り切った猟兵たちへの感謝を示す町人も多い。
 道場や寺の敷地など、訓練場所は快く貸してもらえる。
 町に住むカラクリ人形師も、訓練用のカラクリなるものを使わせてくれるそうだ。
 猟兵同士の模擬戦であれ、一人での特訓であれ、環境に困ることはない。
 ……とはいえ、町中なので実戦形式は控えた方が良さそうだ。
 木刀や木製の薙刀、苦無ほか模造武器を用いての鍛錬となるだろう。
 そもそも鍛錬など興味がない、あるいは見て学びたいのであればそれも良し。
 日柄もよく、団子と茶でもいただきながら観戦に勤しむのも過ごし方の一つだ。
 
●補足・注意事項●
「木刀や模造刀などを使っての鍛錬」となります。
実際の武器で戦うと町に被害が出かねないので控えましょう。
ユーベルコードは使用可能ですが、同様の理由でかなり出力を抑えた描写となります。
訓練場所はプレイングで指定がなければ鹿海が勝手に決めます。

猟兵同士の模擬戦をご希望の場合、その旨をプレイングにお書き添えください。
合わせプレイングでない場合、模擬戦希望の方同士をこちらでマッチングします。
基本的に一対一での試合となります。
石動・劒
正味な話、少し調子に乗り過ぎた。
益荒男どもと殺り合っている内に負った傷を癒している間に『先駆け』が討伐されたのだから悔しいなんてもんじゃねえ。奴は間違いなく俺の未知で、とびっきりの強敵を逃したんだ。己の未熟さと不明がまったく恨めしくなる。

そういうわけで悔しさをバネに鍛錬だ。適当な誰か捕まえて木刀で野試合と洒落込もう。誰もいなかったら天生の、お前付き合え。八つ当たり?はははまさか。ちょっと不完全燃焼食った欲求が暴走してるだけだって。大丈夫ちゃんと寸止めにはするからさ。

体力が足りねえのか技量が足りねえのか、頭が足りねえのか。今回の鍛錬で足りねえものってのがわかりゃ良いんだけどな。


ロク・ザイオン
(ずっと一人で刀を振るってきた。先程の乱戦では思わぬ反撃もあった)
(ひとの技を見たいと思うし、叶うならば手合わせもしてみたい)

……鍛錬をする。

(木刀を握る)
(己の刀は獣の牙同然、地の利を活かし疾さに任せて振るうが定石。体格や技の不利は咎力封じや惨喝で埋めてきた。……烙禍は、あれは病を灼くものだ。ひとに向けるものではない)

……誰かが手合わせしてくれるなら嬉しいが。
ひとりならカラクリを折る。

ひとの技を真似るのも。
面白そうだ。

(終わったらお団子を食べたい。動いたあとの甘いものは、おいしい)



●剣華疾走
 寺の敷地内に鬱蒼と茂る林を借りての模擬戦闘と相成ったのは、石動・劒とロク・ザイオン、双方の提案あってのことだ。
 劒としては、相手の本領が発揮される場での戦いでなければ鍛錬の意味はなし。
 ならばとロクが選んだのが、故郷たる森に近い感覚でやりあえる場所というわけだ。
 木剣同士のぶつかり合う音が、林の中に響き渡り。
 また地を踏みしめるたび、敷き詰められた落ち葉の絨毯が乾いた音を立てる。
「――アアァァッ!!」
「ッ!?」
 続いて響くのは、縄張りに踏み込んだものを威圧する獣にも似た、咆哮。
 模擬戦闘ゆえに全力全開とはゆかずも、『惨喝』は威嚇ならず、己を鼓舞する叫び。
 劒が身を竦ませたのは咆哮のためばかりではなく、それを境に、明確にロクの一撃が重さを増していったためだ。
 時に居合抜刀にも似た動きさえ織り交ぜるのは、戦いの中での学習か。
 さらに厄介を極めるのは、ロクが持つ、それこそ獣に似た俊敏さ。
 一刀入れては横へ飛び、浅いと見えれば瞬く間に距離を取る。
 これを薙ぎ払わんとしても、今度は跳躍と共に頭上の木枝を掴んで一回転、曲芸と見まごう動きで劒の背後へ。
 縦横無尽、四方八方から襲い来る攻撃に意識が追いつかない。
 着地際、姿勢を整え直す一瞬の隙を狙って繰り出される突きをも、ロクが躱す。
 さらに飛びのきざま、横合いに立つ木の幹を蹴り、三角飛びに劒へ襲いかかる!
「何でもありかよッ……!?」
 劒も負けじと真正面からこれを受け止めるも、三角飛びの勢いに惨喝による強化。
 両要素が掛け合わされば、勢いのまま突き倒し、また倒されるのが結果。
 馬乗りの格好となったロクが、劒の喉元へ木剣を突きつける。
「……もう一番だ」
「ああ」
 一本を取られれば、潔く負けを認むるもまた侍。
 劒の言葉にロクもすぐさま飛びのき、おのおの居住まいを正す。

 枯葉を蹴り飛ばして先陣を切るのは、やはりロクだ。
 当然ながら、打ち込まれるままでいる劒でもない。
 二番目の勝負ともなれば、ロクの一振り一振りの癖や軌道をある程度は見切れる。
 刀で受ければ体力を消耗する一方。最小限の身の振りで小技をいなしてゆく。
 同時に、劒の剣閃もロクの身のこなしを捉え切れていないのが実情。
 動体視力……あるいは野生の勘、とでも呼ぶべきか。
 劒の握る木剣にじとりと纏わりつくような視線。
 お前の動きを読んでいるぞと、言葉もなく告げてくる。
 『先駆け』どもと斬り結んだ戦場において目にした、ロクの姿を思い出す。
 地面を抉り、炭化させることで地の利を作り上げた山刀の一撃。
(……そうだ。地の利は得るんじゃねえ。作るもんだ)
 数々の益荒男と斬り合い負った傷がため、『先駆け』本人と斬り結べなんだ。
 その焦りが背を伝えばこそ、〝次〟を見出し、戦さの中で己を磨く必要がある。
 恨めしさも欲求の暴走も、愚直に上を目指す向上心あればこそ。
 今一度、先の戦場におけるロクの姿が劒の脳裏に浮かんだ。
 大地を抉る、刃の軌跡。
 相対する者から技術を盗まんと貪欲な姿勢を見せるのは、劒も同じこと。
 無論、劒には地面を炭化させる術など持ち合わせていない。
 だが……今この枯葉の山が積もる林にあってこそ、適う手があると気づく。
 機は一瞬。
 劒より向かって後方へとロクが飛びのきざま、木剣を地へ突き立て、逆袈裟懸け。
 剣圧によって舞い飛んだ枯葉が、分厚い帳を作る。
 葉が落ちるもわずか一秒の間、ロクのように素早く身を隠すはままならない。
(どう、来る)
 跳ねあげられた枯葉に視界を塞がれ、転瞬、ロクの判断が遅れる。
 然り。間髪入れず繰り出す知覚外の一閃、『薄斬一重』。
 その構えと軌跡を覆い隠さば、それで十分。
 枯葉の帳を切り裂き、木剣でありながら薄皮に切り傷を作らんばかりの鋭い一刀。
 先の意趣返しとばかりに、その剣先がロクの喉元を捉える。
「……一本、だな」
 乾いた音を立てて枯葉が落ちると共に、快活な笑みを浮かべた劒の姿が晒された。

 さて、勝負の結果は一対一。
 これでは収まりがつかぬと三番目の勝負を提案……するより前に。
「……腹が、減った」
 嗄れ、若干しょぼくれた声でロクが漏らした。
 寒さの中でも、腹の虫ばかりは威勢よく鳴く。
「みてえだな……」
「お団子を食べたい」
「ああ。体動かした後の甘いもんって沁みるもんなあ……」
 確か寺への道中、目抜き通りにかぐわしい香りを漂わす茶屋があったはずだ。
 劒がその情報をくれてやると、先ほどまで纏っていた狂暴な雰囲気が嘘のように、ロクの瞳があどけない輝きを帯びる。
 腹が減っては戦さはできぬ。
 いかなる時代、いかなる世界にあっても、こればかりは共通の合言葉らしい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

麗明・月乃
【瑞姫と】
師と呼んだから弟子にした。
…その程度だったのじゃが、なぁ。
昨日みぃは確かに見せた。
弟子としての覚悟の強さを。

「みぃ、月神様を頼む。一度話してみたくての」
私とみぃの力は離れておらぬ。
獲物だけの勝負では私が不利じゃろう。ましてや月神を宿した状態ではな。
「勝負じゃ、月神。その目で私が師として相応しいか見極めろ」
…なら、私は何を持ってこの子の師を名乗れば良い。
答えは出ぬ。が…。

薙刀を手に踏み込む。
『野生の勘』頼りに受け流し、甘い一撃は当たる覚悟で更に前。
嵐の指輪の『封印を解く』、風を足裏へ。自爆覚悟の加速で渾身の一撃を。
「同じ「みぃ」であるお主に認められずに、師を名乗れるわけないじゃろう!」


神月・瑞姫
【月乃】と

(木製薙刀を振り回し
わーい
お師匠さまと修行なの
う?
うん、いいよ
どんなお話するのかな
(狐面を被り真の姿を現す
青白い九尾のオーラを纏い
体も3歳成長
月乃と同じ年齢に
口調と雰囲気が変化する
【巫覡載霊の舞】
不利を承知で我に挑むか…
主の術に我が巫女が見惚れ憧れた
それでは納得できぬか?
…焦っておるのか
急速に力をつける瑞姫の姿に
己の価値とは何ぞやと
よかろう
かかってくるがよい

師でなくただ一匹の妖狐として神に挑む
月乃と薙刀の応酬
青白い九尾の【オーラ防御】を薙刀に纏わせ
飛び込んでくる攻撃を中段の構えから弾き
怒涛の八方振り
それでも倒れぬ月乃からの反撃

…見事じゃ
主なら任せられよう
神月の最後の生き残り
我が巫女を



●ある師弟の物語
 町中、とある道場。
 無邪気に木製の薙刀を構えるのは、神月・瑞姫。
 対し、自分より幾分小柄な彼女を見つめながら麗明・月乃も覚悟を決める。
 昨日、『先駆け』との戦いにおいて弟子が……瑞姫が、それを見せたのだから。
 自分もまた、それに報いる必要があると、心に決めたためだ。
「みぃ、月神様を頼む。一度話してみたくての」
「う? うん、いいよ」
 師の言葉に素直に応え、瑞姫が肌身離さず携えていた仮面を被る。
 さすれば、瑞姫の姿がたちまちのうち、月乃と同じ年頃まで成長してゆく。
 青白い光を放ち、その尾は九つ……『先駆け』の戦場に赴いた時に似るが。
「……何用だ」
 その身を包む空気も、口調も、まるで別人。
 ぴりぴりと月乃の肌を刺激する不可思議な感触は、神気の類か。
「勝負じゃ、月神。その目で私が師として相応しいか見極めろ」
 月乃の用件は端的にして真剣。
 月神を宿した現在の瑞姫は、猟兵としての『真の姿』をも解放した状態に近い。
 これに対する、真正面からの挑戦。確かな勝算など持ち得ない。
「不利を承知で我に挑むか……良いだろう」
 そして月乃が内に秘めた覚悟を見抜けばこそ、月神もその挑戦を否まない。
 審判なき試合。互いに薙刀を構え、片手で数う静謐を開始の合図とする。

 師と呼ばれた。だから、弟子にした。始まりは、切欠は、その程度のものだ。
 傍らで見守るうち、瑞姫は目覚しい速度で成長を見せていった。
 そして昨日、自らの力で『先駆け』と一騎打ち、勝利を収める覚悟と実力をも。
 ……あそこに立っていたのが自分だったとして。
 果たして、あの一騎打ちに勝利することは出来たろうか。
 自問自答に対する明確な解答は、今や誰も持ち合わせていない。
 今や月乃と瑞姫の力に、大きな隔たりと呼べるものはないのが実情だ。
 ――なら、私は何を以てこの子の師を名乗れば良い。

 現実的な問題として、町の道場を借りている以上、猟兵としての全力は出しきれない。
 ゆえに月神が薙刀に九尾の守りを纏わせたのは、残酷なほど合理的な一手。
 術士としての本領を封じられた月乃が、これに打ち合って勝つ術はない。
 初手の踏み込みもあえなく弾かれ、空を切る音さえ立てぬ八方振りが打つ手を塞ぐ。
 間合いを測ろうものなら、じわじわと距離を詰められ、壁際が近づく。
「主の術に我が巫女が見惚れ憧れた。それでは納得できぬか?」
「…………」
「焦っておるのか。急速に力をつける瑞姫の姿に、己の価値とは何ぞやと」
 仮面を通して、月神がつとめて泰然とした声音で語りかけてくる。
 言う通り、瑞姫はここにおける勝敗など気にはすまい。
 何があったとて、変わらず月乃を慕ってくるのだろう。
 だが……それでも。
 あの殺傷力に欠ける木製の薙刀に倒されれば、師としての月乃は〝死ぬ〟のだ。
 なればこそ、文字通り、月乃は決死の覚悟だ。
 あの戦さ場を……『先駆け』どもを、見習うわけではないが。
(今、ここで死する覚悟で……恐れず、踏み込め!)
 地力での勝ち目は皆無。
 だから。だからこそ、心でだけは、負けてはならない。
 退いた瞬間、あらゆる勝ち筋が泡沫と消える。
 ただ前へ、前へ、先駆けよ。身を掠める攻撃など諸共に受け止めよ。
 頼れるのは、己の勘のみ。
 ――見るべきは流れ。先を読め、機を逃すな。
 弟子に与えた教えを、師が実践できずして何とする。
 狙うべきは針の穴を穿つにも似た、僅かな間隙。
 ならば用いるべきは、嵐の指輪……風の魔力を一点特化、足裏へ。
「同じ『みぃ』であるお主に認められずに、師を名乗れるわけないじゃろう!」
 摺り足による僅かな移動を、足裏に宿る風が刹那の縮地へと化かす!

 試合開始を告げたのと同じ静謐が、両者の間を包む。
 月乃の構える薙刀……その切っ先が、月神の。
 瑞姫の肉体が被る仮面の、目と鼻の先にあった。
「……見事じゃ。主なら任せられよう。神月の最後の生き残り、我が巫女を」
 月乃の覚悟に、月神より贈られた祝福と。
「……うらやましき事よ」
 最後に、ぽつりと月神が漏らした言葉の真意を問うより前に。
 からんと音を立てて、仮面が瑞姫の顔より剥がれ落ちた。
 身を包んでいた青い白い光が霧散するのと、瑞姫が元の体格に戻るのは同時のこと。
「お師匠さま……月神さまに勝つなんて、やっぱり、すごいの!」
 間を置かず、小さな体が月乃の胸へと飛び込んでくる。
 彼女もまた試合の趨勢を見守っていたのか。
 月乃と月神が交わした言葉の、試合の真意までを悟ったかはあえて語るまい。
「……みぃ。そこな茶屋で団子でもいただきながら、ゆっくり話すかの」
「うん!」
 白く染まる吐息がある。共に揺れる尾がある。
 繋げる手が、抱きしめられる両腕がある。
 そればかりは、姿なき神には持ち得ぬ、ここに在る師弟の特権なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

多々羅・赤銅
【犬曇・猫晴と模擬戦】
※打ち合わせ無しにつき齟齬と勝敗はお任せ

お前の出番ちょいと見たけど、ねちっこいやつだろアレ。嫌われるタイプじゃね?

いや。今思うとちょいと羨ましいわ。長いこと睦まじくしたろ?あの消耗
買った方が団子奢りな。

ーー刀一振りに捧げた身
木刀となれども、鈍ること無く。

初動は迅速、先撃頂戴
されど【見切り】【勘】【感】、あらゆる回避手段を持って攻撃を避け、受け流し。力強さは鉄、身軽さは揺らぐ炎。
【殺気】で【フェイント】、【恫喝】で脅かす。加え、てめえが私の速さを知った頃にーーもう一段。【残像】残すほどの瞬間速度持つ一閃が、その木刀を打ち上げんとす。

もし私が負けたら?
クソ悔しいから酒奢れよ。


犬曇・猫晴
対峙者:多々羅・赤銅(f01007)
※打ち合わせ無しにつき齟齬と勝敗はお任せ
あっははぁ、木刀握ったのなんていつぶりだろ?
赤銅ちゃん、模擬戦ってなっちゃあ女の子じゃなく1人の剣士として見るから手加減なんて出来ないよ?
それでも良いなら……って、それは剣士には失礼な問いかけだったね。
──亡郷の犬曇猫晴。いざ、尋常に。
【SPD】
ぼくの得手は後の先。
相手の攻撃を受けて、躱して、逸らして、時にはこちらから仕掛けて。
相手が決定的な隙を見せるまで粘るよ。
もし見せたなら、それが誘いだったとしてもそれに乗ろう。
ここまで楽しく打ち合えたんだ、勝っても負けても悔いは一切ない!


雷陣・通
先駆けとやりたかったなー、残念
でも、こうやって平和になって鍛錬が出来るから、良しとするか!

たのもー! どなたかお相手願えるか!

(模擬戦希望、お相手自由、アドリブOKです)
【POW判定】
基本的には模擬刀を防御にしつつ、足への蹴りや鍔迫り合いでの膝蹴り、相手の武器を打ち払っての格闘を中心に行動
意識を格闘へ向かせたところでユーベルコードの雷刃の手加減した一撃

様は格闘で引きつけて剣戟で決めるって感じかな。
勿論、格闘で行けるならそのままラッシュしちゃうけどね!


ヴィクティム・ウィンターミュート
模擬戦ねぇ…俺ぁ後方支援と妨害工作専門なんだがなぁ。そりゃ、出来たほうがいいのはその通りなんだが。バリバリのアデプト(達人)相手に、俺みたいな端役じゃ釣り合わないんじゃねーの?まぁ、やるってんなら断りはしねーよ。

使うのは短刀。つまりはナイフを用いた高機動戦闘だ。まず重要なのが、素手以外の大体の武器にリーチで負けること。そして威力も劣ること。
ナイフ戦の基本はまず、大きく振らないことだ。小さく、隙間なく、斬りつけて傷をつけて…致命的な隙を作り出して急所を狙う。もちろん脚も使って変幻自在に攻めるのを忘れない。武器を持つ手を狙うのもいいな。
端役は小賢しく堅実に、ってな

(模擬戦希望。お相手は自由)


八坂・操
はいはーい! 操ちゃんは観戦希望でーす☆
やっぱりねー、映画もそうだけど、こういうのは見る立場ってのが一番楽しいんだよね♪
ちょーっとばかし血糊が足りないのはご愛敬かな? 映画というより殺陣の見学が近いからねー♪
「いけいけー! ごーごー!」

……戦なんてものは、本当は血生臭くて、あの“先駆け”達同様、決して綺麗なものなんかじゃあない。
誰でも命は一回こっきり。花火のように散らすか、道端の花のようにそっと花実を咲かすか……そこに優劣をつけるつもりはないけれど、こういう賑やかな光景は後者でなければ見られないだろう。

「夏草や 兵どもが 夢の跡 然れどその血は 未だ途絶えず」
……なーんてね♪


ジン・エラー
おーおーおーおー
やってるやってる
お前らも好きだねェ〜〜こういうの
オレ?オレはとォーぜン見学
茶ァでもしばくか

あ?マスク?
外さねェーよジッパー開けるだけだ
誰かサンにゃこの前オブリビオンみたいって言われたぜ
団子と茶が美味ェ

オイオイそれで終わりかァ?
つまンねェーなもっとやれよ
ほら、【光】をくれてやる

好きに眺めて好きに話して好きに食って
平和だねェ〜〜〜



●曇りのち晴れ、ときどき灼熱、ところによって救いあり
「おーおーおー、やってるやってる」
 町外れのとある広場。
 木剣を打ち鳴らし合う鬼と戦士を見つけ、ジン・エラーが漏らす。
 普段は旅芸人などが活用する場なのか、おあつらえ向きに長椅子もある。
 どっかと腰掛け、どこから用意したのやら、茶菓子を傍に。
「好きだねェ~~こういうの。死にゃしねェならいいけどよォ」
 口元を覆うマスクのジッパーだけを外し、団子や茶をいただく。
 外し際も当の唇は団子やで綺麗に隠れ、素顔が垣間見えることはない。
 その些細な所作はいっそ鮮やかなほどだ。
 『先駆け』どものように死を目指しての戦さなれば見過ごしてはおけぬが。
 木剣を用いての練習試合なれば、適度に野次を飛ばして見守る性根とてある。
 見世物としての試合なら結構けっこう、大いに楽しむがいい!
 猟兵同士であれば、どんな打ち所が悪くても死ぬことはあるまい。
「なンせ、オレもここにいるんだからなァ~~? かハッ!」
 眼前でどんな怪我をされようが、救う準備は万全というわけである。


 少し時を遡って、打ち合いの始まる直前。
 鬼こと多々羅赤銅に戦士こと犬曇・猫晴が木剣を手に向かい合う。
「お前の出番ちょい見たけどさぁ」
「うん?」
「ねちっこいやつだろアレ。嫌われるタイプじゃね?」
「酷いな。手加減しなかったからこその戦法なんだけど」
「いや。今思うとちょい羨ましいわ」
「と言うと?」
「長いこと睦まじくしたろ。私も体力温存したらもっとやれたかなぁ」
「柄にもないでしょ、そんな戦い方」
「だよなーー。じゃ、買った方が団子奢りな」
 それこそ長椅子に並んで腰掛けるかのような気だるい会話を繰り広げながら。
 両者、構えに入れば、一分の油断も隙もなく。
「緋緋色金の多々羅赤銅――」
 灼けるように笑うは、刃振りの鬼。
「――亡郷の犬曇猫晴」
 相対するは、泰然たる空模様。
「「いざ、尋常に」」

 互いに交わった視線を合図とし、烈火の如く先に踏み出したのは赤銅だ。
 一切の迷いなく相手が木剣の根元を打ち据え、取り落とさせに行かんとす。
 受け止められれば、隙間なく次の一撃。
 折々放たれる反撃とて何のその。
 揺らめくように躱し、流れるように体勢を整え、次の一撃。
 振り下ろすにあっては、木剣なれど鉄よりも重く空を切る。
 休む間など与えるものか。
 上段通らねば身を屈めて下段の打ち込み、ならば中段、見せかけてまた下段。
 羅刹にして猟兵の身なればこそ可能にする身のこなしが、とめどない攻めを作る。
 突き、振り、払い、返す刀でまた一閃。
 打ち付けるにあたっては牽制の一撃などない。全てが全身全霊。
 一呼吸の間があるかと、殺気に満ちた視線で脅かす。
 木刀振るえど、一刀一振りに捧げた身も心も衰えることなし!

 対して、猫晴は徹底して後の先を貫く。
 苛烈にして猛烈、赤銅の戦い方は心得ている。
 真正面からやり合ったら競り負けるのは目に見えているというもの。
 もっとも、この戦法を取ったのは単純に猫晴自身が得手としているからだが。
 ひたすら受け続ければ、羅刹特有の怪力で腕の痺れが増すばかり。
 猪武者戦法ならまだいいが、殺気ばかり向けてのはったりまで織り交ぜてくる始末。
 先にへばるのはこちらと、目に見えている。
 ――だからこその、後の先だ。
 適度に反撃を挟み、相手の調子を崩す。
 牽制の一撃は揺らぐ炎を捉えようとするかのように外れるが、問題ない。
 やり方こそ違うが、目指すところは『先駆け』との戦いに似ている。
 〝本命〟の隙を晒け出すまで、ただひたすらに、粘るべし。
 秒を数えるほども絶え間なく打撃音が響き、響き、響く。

 丁々発止のやり合いは数分あまりも続きゆく。
 遠巻きに観戦する男も、野次に乾いた喉を茶で潤し出す出す頃。
「いい加減へばってもいいんじゃねーか?」
「こうやって喋る余裕があるから、まだ」
 軽口をたたき合う間であれ、木剣を灼き焦がさんばかりの赤銅の攻めも。
 そしてまた、猫晴が為す、光差すを許さぬ分厚い雲が如き守りも崩れはしない。
 実際のとこを言えば、既にお互い少なからぬ体力を消耗している。
 全力の斬り込みと一心不乱の防勢を寸断なく続ければ至極当然のこと。
 先に決めにかかったのは、赤銅だ。
 砂埃を巻き上げて後方へ跳ぶのは、挑発的なまでの予備動作。
 痺れを切らしたわけではない。ただ、いっそう愉しむためだ。
 更に前のめりへと転じるは、必殺の一撃を見舞う自信があればこそ。
 ――見切れるものなら、見切ってみろ。
 瞬き一つの間に、砂埃の中から赤銅鬼の姿は消え失せ。
 ぎらつく瞳の残火、残像を後に、剣を振るうは猫晴の目と鼻の先。
 赤銅の絶え間ない攻めに、速度に慣れきればこそ、命取りとなる緩急。
 ……の、はずだった。
 猫晴もまた、徹頭徹尾に後の先を貫いていたからこそ。
 誘うような赤銅の予備動作、後方へのひと跳びに身構えることができた。
 決定的な隙を狙うための戦略。ここで決めにゆかずして何とする。
 ――いいよ、誘いに乗ってあげる。
 もっとも、それは賭けでもあった。
 どうせここまで楽しく打ち合えたのだ、今更勝ち負けなど拘るまい。
 その思い切りの良さあればこその決断が、明暗を分けた。
「――隙あり」
 猫晴の言葉とは裏腹に、赤銅の踏み込みは完璧だ。隙などありはしなかった。
 決め手は、勘だ。
 或いは兼ねてよりの付き合いあればこその「あ、こっちかな」という、些細な直感。
 結論から言えば、猫晴の反撃が、下方より振り上げられた赤銅の手首を綺麗に打ち据え。
 宙へ舞い飛んだのは、赤銅の木刀だった。

「クソ悔しい」
 大の字に寝転がりながら、赤銅が露骨に不貞腐れた声を上げる。
「あっははぁ。そう思わせることができたなら光栄だ」
「酒奢れよ」
「はいはい」
 猫晴もまた深呼吸ひとつふたつ。
 さすがに体力を使いすぎたと、疲労回復に勤し……まんとするが。
 程近くから光が降り注いだかと思うと。
 模擬戦による二人の疲弊が、たちどころに回復してゆく。
 体勢を直し、光の元を辿っていってみれば。
「オイオイそれで終わりかァ?」
 長椅子で見学していたジンの仕業であった。
 『生まれながらの光』……聖者としてのユーベルコードの働きだ。
 ふてぶてしく脚を組んで座る様は、聖者とかそういう謙虚さから程遠いのだが。
「ィヒヒッ、どうしたァ? まだまだやれンだろォ~~~~?」
 もっとも、体力が回復したとて、当の赤銅と猫晴は完全燃焼済み。
 根っから善意でやっているというのに、この男、他者に寄り添う気が皆無である。
「もう十分やったよ……」
「器用に食うよなーお前」
 ため息をつく猫晴と、視界の端々に映っていたジンの食事風景に感心する赤銅。
 好きに話し、好きに眺め、好きに食らう。何と素晴らしき人生の謳歌!
 ……本当に好き勝手、相手の都合などお構いなしにやるのが或いはジンらしさか。
 というか、本人も『生まれながらの光』によって多少なりとも疲労するはずだが。
 見れば微塵も調子を崩さず、下品な笑い声で両者を囃し立て続けている。
 やりたいように生きる、という意味では、赤銅は波長の合う部分もあるのだが。
「はァ~~? つれねェなァ~? もっと見せつけろよ、なァ~~?」
「うっせ。あ、そうだジン、どうせならお前も一杯付き合え」
「はァ~~~~? 見ての通り団子と茶で腹ァ満たしたばっかだぜェ?」
「猫晴の奢りだぞ」
「ブヒャハハッ、それを先に言えよ!」
「ちょっと?」
 出費がいきなり二人分に嵩みそうな猫晴が突っ込みを挟む。
 だのに異論を挟む余地はなく、ジンともども近場の店へ強制連行。
「ぃヒッ、クヒャヒャッ……平和だねェ~~~~!」
 下卑ていながらも、心底楽しそうなジンの笑い声が、青空に吸い込まれていった。

●疾風、迅雷
 また町の片隅にあっては、ひっそりと建立する小さな神社がある。
 年に数度、武を奉る神への奉納の儀として、敷地内で剣術試合が行われるとか。
 仔細はさておき、拝殿前の広々とした空間が猟兵に快く提供されたのはそんな理由。
 得物を手にして向かい合うは、雷陣・通とヴィクティム・ウィンターミュート。
 年齢にすれば小学生と高校生ほども離れているが、互いに油断はない。
 同じ猟兵という立場であればこそ。
 そして同じ戦場に立てばこそ、年齢は力を隔てる要素にならないと知っている。
「俺ぁ後方支援と妨害工作専門なんだがなぁ」
 その場で軽い跳躍を繰り返しながら、謙遜する様子を見せるのはヴィクティム。
 俊敏さには自信があれども、真正面からの一騎打ちとなればさてどうか。
 眼前の少年が、素人目に見ても武の道に秀でていると見える構えを取るのも理由だ。
「でも付き合ってくれるんだろ? 昨日は少し物足りなかったから嬉しいよ!」
「そりゃお前さん、今時『たのもー!』とか言う奴そうそう見ないしな……」
 驚愕半分、興味半分といったところか、はたまた別の理由もありか。
 ともあれ、平和になった町でわざわざ自分を対戦相手に所望、とあれば。
 ヴィクティムからすれば、わざわざこれを無下にする理由もない。
「よっしゃ、それじゃ、いざ尋常に……」
 通が改めて構え直し、ヴィクティムへ何かを期待する視線を向けたなら。
 やはりお決まりの文句、応えてやるのが世の情け。
「……勝負!」

 どこか自信に欠けた言動と裏腹に、先陣を切ったのはヴィクティム。
 機動力での翻弄こそが本分、なればじっと待ち構える道理もなし。
 一気に距離を詰め、短く間断なく連続の振り。
 相手の木剣が打刀を模した長さであればこそ、一気に距離を詰めるのが有効打。
 敵の間合いを封じ、己の有利を押し付ける……賢しく勝てればそれで良し。
 ……問題は、此度の相手が雷陣通、格闘術の使い手であることだ。
「そこっ!」
 ヴィクティムと通の得物がぶつかり合い、鍔競合いとなったわずか一瞬。
 それを見逃さず、通の繰り出した鋭い蹴りがヴィクティムの足元を捉える。
「ライトニング……」
 詠まれゆく、上の句。
 姿勢をよろめかせた途端、必殺の一撃を構えられるのは至極当然の帰結。
 続けざまに通が構えた木刀に、紫電が収束してゆく。
 ヴィクティムにとっての僥倖は、片足がまだ地を踏みしめていたこと。
 掌一つ、踵一つで街を飛び回るパルクールを積み重ねてきた。
 つま先だけでも地面につているならば、体幹を運ぶには十分!
 飛び上がり様、踊るように空中で三回転半。
「エーッジ!!」
 刹那の前まで立っていた場所に、雷刃の一撃が叩きつけられる。
 木剣なれど、まともに食らっていたら間違いなく打ち倒されていた。
「今ので決めるつもりだったんだけど……やるね!」
「お前さんもな。初っ端から危うくグリッチだ」
 短刀の間合いは、また通の格闘術の間合い。
 本分たる距離が死地ともなり得る敵。
 ……元より他の手はない。ならば徹底的に機動力で撹乱、翻弄するのみ!
 間髪入れずに駆け出し、再びの接近。
 後の先を狙い、当然、通が木剣で受けんと構えるが。
 地を蹴るや、一足飛びに、ヴィクティムはその頭上をゆく!
「!?」
 予想外の機動に通が振り返れば、上空から身を翻しざまの一撃。
 重さに欠ける短刀であれ、ここまでの勢いをつけられれば痺れるほどの衝撃が走る。
 一振り一振りが短ければこそ、着地と同時に見舞われるのはさらなる追撃。
 後方へ身を捻る一瞬の隙にさえ、急所狙いの一刀が差し込まれる。
 既のところで通がこれを防いだなら、即座に身を屈めての足払い……。
「……ラぁイトニングッ!!」
 それは気合いを入れる掛け声のようなものであったか。
 父より叩き込まれた空手あればこそ。
 肉体のぶつかり合いにおいてだけは負けぬという通の意地が、足払いに身を揺るがさない。
 生まれるはずだった致命的な隙は、転瞬、通の攻勢へ。
 姿勢を落としたヴィクティムの短刀を左手刀で打ち払い、木剣の一刀!
 肌を掠める感触はあれど、的中ならず。だが、連撃は終わらない。
 足払い狙いで姿勢を低くした好機を逃さず、繰り出すは必殺の膝蹴り!
「……えっ!?」
 確かに捉えたと思ったヴィクティムの頭部が眼前から消え失せ、通が驚愕する。
 然り、即座の反応により、さらに姿勢を屈め……地面に〝倒れ込んだ〟のだ。
 より正確に表現するならば、そこに身体を地面に擦り付けながらの滑走が加わる。
 蛇のようにするりと通の足元をすり抜け、再び背後を取り。
 掌を支柱に、独楽のような回転を伴って姿勢を整え直す。
「ウィズ! まさか今のを防ぎ切られるとは思わなかったぜ!」
「うぃず……? そっちこそ、ライトニングだね!」
 ヴィクティムの扱うスラングを理解しきれない通であるが。
 お互いへと向けられた感情が賞賛であることは、紛れもなく通じたはずだ。
「そういや、名前聞いてなかったな」
「俺は雷陣通。普通のライトニングな小学生さ!」
「ヴィクティム・ウィンターミュート。ヒーローを支える、普通の端役さ」
 互いの意趣を交わし合っての自己紹介。
 ふと気づけば拝殿前に白いワンピースを着た女が座り込み、試合を見学している。
 ……本当にまったく気づかぬ間に現れてたので、深く考えると少し怖いが。
 背筋を伝う冷や汗は、戦いの緊張感としておいた方が良いのだろう。
 ギャラリーがいるならば、いっそう格好いいところを見せ甲斐があるというものだ。
「ライトニングに行くよ、ヴィクティム!」
「オーケイ。燃え尽きるまでやり切ろうじゃねえか、通!」

●操ちゃんが見ている
 拳と刀をと交わし合うに夢中な少年二人を、拝殿前の階段に腰掛けて眺める女。
 すなわち、八坂・操もまたそこにいた。
「いけいけー! ごーごー!」
 無邪気な歓声を送りながら、一歩も譲らぬ両者の攻防を見守り続ける。
 やはりどうせなら映画のごとく、見る立場の方が楽しいというもの。
 血糊が少しばかり足りないのだけは不満もあるが、こればっかりはご愛嬌。
 ……寺への道中、他にも多くの猟兵が刃を交える様を見た。
 ちらりと覗いた道場では、幼い師弟がその絆を深め合っていたし。
 林の方から聞こえた咆哮も、おそらくは猟兵のもの。
 町外れの広場にあっては、戦場さながらの気迫で打ち合う男女。
 操も、そしてあの戦さ場に立っていた者は全員理解しているはずだ。
 どんなに気高くあろうが、本物の戦はどうしようもなく血生臭く、汚れていて。
 志ばっかり美しくても、そこに広がる景色は、決して綺麗なものじゃあない。
「ご覧。今を生きるあの子たちは、あんなに見事な花を咲かせてる」
 そっと語りかけるような操の言葉は、果たして誰に向けたものであったか。
 刀を振るうたびに少年たちが散らす火花は、瞬く間に弾けて消える。
 命の輝きそのものにも似る、一瞬の煌めき。
 先の戦さ場に負けじと全力で、けれど、あまりに美しく愛おしい、爽やかな一瞬。
「夏草や 兵どもが 夢の跡 然れどその血は 未だ途絶えず」
 ――なんてね。
 この町に、もう鬨の声が届くことはない。
 けれども、先駆けるばかり、前のめりに散るばかりの無数の命が咲かせたのは。
 きっと、夜空に散っては消える花火でもなければ、また、徒花でもないのだ。
 あちらこちらで剣を交える者どもは、最後は誰しも笑顔で勝負を終えたに違いない。
 眩しいばかりの表情で打ち合う少年たちが、きっとその証明。
 謳歌すべきは愛しき平和、いつかは桜花も咲き乱れ。
 数多くの屍が眠りについたあの平野にも、一輪二輪と、小さな花が咲いてゆくのだ。
「うーん、なんだかいい気分だ。あとでお団子でも食べに行こっかな☆」
 陽気な――そしてちょっぴり怖い――笑みを浮かべて、操はこの時を噛みしめる。
 怪異が恐れられるもまた、穏やかな時間があればこそ。
 声を張り上げて、また、少年たちへ高らかな声援を送るのであった。

 ……鍛錬を終えた猟兵たちが揃いも揃って同じ店で出くわすのは、また別の話。




 猟兵たちの戦いが終わってより、いくらかの時が流れた頃。
 彼の戦いが行われた平野を臨む小高い丘に、一つに慰霊碑が建てられた。
 戦さに生き、戦さに死んだ武士どもの生前の汚名を晴らし。
 またその魂を鎮める、ささやかな祈り。
 やがて、戦いの後に刃を交え合った猟兵たちに倣ってのことなのだろうか。
 時折、近隣の町から、未来の剣豪を目指す少年少女や、腕自慢どもが慰霊碑の前に集い。
 まるで誰かに披露するかのように、定期的に練習試合を行う慣習が生まれたという。
 ぶつかり合っては響き合う、木剣の音。
 それは遠く臨む夢の跡に捧ぐ、調子外れの葬送歌。
 『先駆け』どもへの、挽歌。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月14日


挿絵イラスト