南瓜が集いて鮭を喚ぶ
●危ない儀式
「UDCアースで、UDC怪物を召喚しようとしてる教団の拠点が見つかったよ」
集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は、焼き鮭片手に話を切り出した。
「場所は、都会から離れた山地の川沿い。ガスはないけど、水道は通ってる。炊事場は全部かまどだね。あ、電気も通ってるって」
うん? なにそれ?
「夏季限定営業後、只今シーズンオフのキャンプ場!」
何を言っているんだろう。
UDC召喚拠点の話をしているんではなかったのだろうか。
「キャンプ場が儀式拠点になっているんだよ。勿論、それには理由があるんだ。ちょっと頭の痛くなるタイプの理由だけどね?」
それは、そこで行われている儀式に関係していた。
「拠点で行われている儀式の名は『UDC』――アン・デリシャス・クッキング」
平たく言えば、メシマズ儀式、である。
「UDC眷属が食材を冒涜するような料理を作り続ける事で、何か世界の常識的なものをなんやかんやで歪ませてUDC怪物を召喚する儀式なんだって」
いいのか。そんな儀式で。
「ちなみに何でキャンプ場を拠点に儀式してるかって言うと、異臭が出ても周囲に感づかれにくいからって理由らしいよ」
別に近所迷惑に配慮したわけではない。
「という訳で、まずはメシマズ料理を作っているカボチャ頭の集団を強襲して欲しい」
個体名、ジャック・オ・ランタン。
カボチャ頭の怪人集団である。
別にメシマズ料理を作りすぎてカボチャ頭になってしまったわけではなく、儀式を始める前からカボチャ頭らしい。
「死後の国にも入れず彷徨っている魂、と言われているUDCアースの伝承の存在と外見が似ているみたいだけど、そんな悲壮感全然ないから」
そっかー。悲壮感ないかー。
「カボチャ頭達を倒してる内に、強引に儀式が発動されてUDC怪物が召喚されるよ」
そのUDC怪物とは――。
「サーモン」
はい?
「鮭。サーモン。正式名称は、クィーンレッドサーモン」
鮭の女王ってなんぞ?
「見た目はバカみたいに巨大なベニザケだよ。たまにすごいスピードで飛んだり、ヒグマ召喚したりしてくるけど、ベニザケ」
ルシル曰く『切欠があれば割と何処にでも現れちゃうUDC』らしい。
「筋子たっぷりで、身も脂が乗っているよ」
その情報、いるのかな!?
●食べようと思えば食べられます(何が)
「クィーンレッドサーモンを倒せば、儀式は完全失敗。拠点壊滅――なんだけど」
まだなにかあるのか、と身構える猟兵達に、ルシルは笑顔で告げた。
「儀式が儀式だろう? その場所に『よくないもの』が、溜まってしまう可能性があるらしいんだけど、バーベキューで旬の食材を美味しく食べれば払えるって」
あくまで可能性の話。
日常の延長で、僅かな懸念を払えるなら、簡単なものだ。
「折角のキャンプ場だからね。帰る前にバーベキュー、どうだろ?」
確かに、出来る環境は揃っている。
食材の持ち込みは自由。
「バーベキューの段階なら、私も手伝えるよ。買い出しでもなんでもするから、必要なら言って欲しい。戦い方次第で、使える食材は残ってるかもしれないけどね」
なんて笑って言いながら、ルシルは転送の準備に入るのだった。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
そろそろ秋が近いですね。
今回は、まず1章でカボチャ頭の集団を倒し!
2章では、巨大なサーモンを倒し!
3章で、様々な旬の食材をBBQで美味しく頂きましょう!
そんな秋の味覚的なUDC依頼です。ネタ要素強めになると思います。
1、2章の戦い方次第では、3章の食材が増えるかもしれません。
何を指して食材と言っているかは、お判りの事と思います。
何しろ、様々な食材、ですから。旬ですよね?
3章の食材持ち込みは自由です。普通の食材が良い方は持ってきて下さい。
普通の食材オンリーでも、大丈夫です。
あくまで食べたければ食べられますよ、ってだけです。
なお、3章は声掛け頂いた場合のみ、ルシルも登場可能です。
※『プレイング期間について』
1章は9/20(金)の8:30以降の受付とさせて下さい。
2,3章は、日程調整が必要な場合、都度、記載いたします。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 集団戦
『ジャック・オ・ランタン』
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POW : パンプキン・パレード
【周囲のジャック・オ・ランタン】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
SPD : イグニス・ファトゥス
レベル×1個の【魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ : トリック・オア・トリート!
【決まり文句】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●アン・デリシャス・クッキング
UDCアースのとあるキャンプ場。
夏休みが終わり、営業期間外で今は封鎖されている筈のそこに、カボチャ頭の怪人の集団が、斧を片手にアウトドアクッキングしていた。
『出来たぞ!』
『お。その真っ黒なものはなんだ?』
『カボチャオムレツだ』
彼らの前のお皿の上にあるのは、オムレツ感ゼロの漆黒の物体X。
『うぉ、卵の味しねえ』
『カボチャの味もしないぞ』
『炭の味しかしないな。後なんかジャリジャリしてる』
卵を殻ごと入れて、直火高温でシュボッと焦がしたからね。
『いやあ、捗る捗る』
『トリック・オア・トリート、が決まり文句の我輩達の悪戯心が、もうぐんぐん刺激される儀式だなぁこれ』
カボチャ頭の怪人達が、この儀式に加担してる理由それだった。
『こっちも出来たぞ。鮭とカボチャとその辺で拾ったキノコのホイル焼き!』
『鮭感ゼロの刺激臭っ!』
『匂いからして毒々しいな!』
危険な匂いをプンプン漂わせる冒涜的な儀式は、誰かが止めなければ留まるところなどなく続きそうである。
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MSコメントにも記載しましたが、
1章は9/20(金)の8:30以降にお願いいたします。
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七瀬・麗治
あれか、カボチャ頭の不審な集団。
食材を冒涜することによって場の
邪気を強め、邪神を召喚するつもりか。
なんか、以前も似たようなことしてた奴らを思い出すが……
(パイで鯖を喚ぶ事件)
このオレの前で食べ物を粗末にするとは、
良い度胸してるじゃないか……!
(ぞわ、と強風が吹き、闇人格の「ロード」に交代)
「存在自体が不快な奴らよ。皆殺しにしてくれる」
ダークブルーの全身甲冑を纏い、剣を地面に突き立て呪文詠唱。
【暗黒騎士団】を召喚し、自らもサイボーグ馬に<騎乗>して
南瓜頭に襲いかかる! 剣を振るい、体当たりで<吹き飛ばし>
ダウンした所を蹄で<踏みつけ>て追い打ちだ!
「出来損ないのカボチャ共が! そこで潰れておれ」
フィーナ・ステラガーデン
BBQと聞いて私参上よ!(がちゃがちゃ背中にBBQセット一式背負いつつ)
またこの世界のオブリビオンはぶっ飛んだことしてるわね!
ってそこのカボチャども何食材を無駄にしてんのよ!?ぶちころすわよ!
次はあんたらが食材になる番よ!かぼちゃのソテーにしてやるわ!
(びしっとフライパンをかぼちゃに突きつける)
【アイテム:あんしん旅人セット】から食器を取りだし戦うわ!
フライパンで殴りつけて【吹き飛ばし】、【ジャンプ】で飛びつつ【空中戦】で翻りながらフォークを投げつけるわよ!
同じ仲間のもとへ瞬間移動するなら
纏めて焼いちゃえばいいわ!【高速詠唱】UCで丸焼きにしてやるわ!
(アレンジ、アドリブ、連携大歓迎!)
ルイーグ・ソイル
「食べ物は大事にするって…どこかで聞いた気が…するんすが…?はて?
まあそんなこんなでメシマズ集団許さんっす!カボチャ頭の集団も美味しく料理してやるっすよ…!」
他参加猟兵さんに合図して注意を促し、ユーベルコード【人狼咆哮】で範囲攻撃を試みるっす!
(連携/アドリブ歓迎です)
滝舘・穂刈
あえて不味い食事をつくるとは不届き千万!
たとえ神が許しても、このスイハンジャーが許しはせん!
炊きたてご飯ヒーロー・スイハンジャー、ただいま炊飯……もとい推参!!
(ピー、という電子音)
『ゴハン ガ タキアガリ マシタ』
登場早々、UCにより米が炊けたのでまずはご飯を食べるぞ!
パワーアップしたところでカボチャ頭たちと戦おう
武器は主に杓文字だ
叩いたり
斬りつけるように叩いたり
押しつぶすように叩いたり
掬い上げるように叩いたりするぞ!
そこに米がなかったとしても、食べ物を粗末にする、ダメ・ゼッタイ。
…ところでこの南瓜は食べられるのか?
頭部が残るなら、信念に従って調理を試みるぞ!
草野・千秋
アン・デリシャス・クッキング、暗黒物質的な何かを想起させます
メシマズ料理……ですか
努力しても料理が上手くなれないのであれば
仕方ないのかもしれませんが
あえて美味しくない料理で人様を困らせるですとか
人様と食材に失礼です!
食材の肉も魚も卵も野菜も、もとは等しく命だったのですから
そのへんで拾ってきたキノコだなんて危険な
僕からはエリンギと舞茸を
僕たちは命を頂いて生きているんです!
変身!断罪戦士ダムナーティオー推参!
UCを展開、範囲攻撃、一斉発射、スナイパーで敵体力を削る
僕の最強の武装も僕もお前たちを許さない!
特に強い個体がいたら
怪力、2回攻撃、グラップルで蹴る殴るの攻撃
敵攻撃は戦闘知識、第六感でかわす
黒木・摩那
食材の冒涜はそこまでです!
「もったいない」が泣いてますよ!!
【料理】は得意では無いですが、
彼らが作るのは食材を無駄遣いしているのはすごく良くわかります。
ヨーヨー『コメット』で攻撃します【先制攻撃】【衝撃波】。
斧を【武器落とし】で叩き落して、【念動力】で回収しつつ、
その南瓜頭にお返しします。
南瓜は刃が通りにくいのです。
斧にヨーヨーで追撃すれば、南瓜もきれいに割れるのではないでしょうか。
これからの時期に南瓜料理は良いですね。
高柳・零
WIZ
カボチャに鮭…新手のちゃんちゃん焼きでも作れと?
とりあえず、ちょっと早いハロウィン気分の怪人から倒しますか。
「そこまでです!料理を冒涜する儀式は許しませんよ!」
盾とオーラで防御を固めて、決まり文句を受け止めます!
え?文句をどうやって受け止めると?もちろん、気合いを込めたオーラでです。盾は心構え的な感じで。
更にUCを発動して、トリックオアトリートをジャックしを映します。
テレビにカボチャを映し「さて、あなたは…UCを使ってはいけません!」と言い、文句を投げつけます。
そのまま接近してカボチャをメイスの鎧砕きでぶっ叩きます。
アドリブ歓迎です。
鵜飼・章
僕は偶然にも数日前からこのあたりにいたオフの鵜飼章
あれ、皆どうしたの?
今オオカマキリの交尾シーズンなんだ
もうすぐ貴重な交尾中の共食いが見られるかもしれな…
え?オブリビオン?待って聞いてないよ
UDCがUDCなご飯を作ってるの?
そういえば観察に夢中でご飯を食べるのを忘れてたな
たぶんその辺の草よりはおいしいんでしょ?
僕にはサバイバルで培った【激痛/狂気/毒】への耐性と
大体常に空腹ゆえの【大食い】がある
片っ端からいただきます
…まずいね…
その辺の苔食べてた方がましだ
悲しいけど命への冒涜は命で償うしかないよね…
UC【模範解答】で威圧
きみが食材になるんだよ
とりあえず首を落とせばいいかな?
メスでスパッといこう
●
「こういう天気、秋晴れっていうんでしたっけ。程々暖かくて、いいっすね」
筋雲が掛かった秋の青空を眩しそうに見上げ、ルイーグ・ソイル(寒がり人狼グールドライバー・f14784)がゆるりと微笑みを浮かべる。
――が、そんな秋の爽やかな空を台無しにする匂いが、そこらに漂っていた。
「これが、アン・デリシャス・クッキングの臭い……ですか」
異臭、の一言で済ませるにはあまりにも複雑怪奇な臭いに、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)が思わず眉をしかめる。
臭いだけで、千秋は脳裏に暗黒物質的な何かを想起させられていた。
これは、早急に止めなければという気にさせられる。
「不審者――あれ、だな」
やがて、目の前に見えた橙色の頭の群れに気づいて、七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)が足を止めた。
麗治の足元で、砂利が小さな音を鳴らす。
何やら盛り上がっている様子の、橙色――カボチャ頭の集団。アレが不審者で、まず間違いないだろう。
「あんなの他にそうそういて……」
いてたまるか、と言おうとした麗治の脳裏に、以前関わったとある事件が勝手に思い起こされて浮かんでいた。あと、カサカサ動くパイも。
「食材を冒涜することによって場の邪気を強め、邪神を召喚する――あの連中とやっている事は変わらんのではないか?」
だが、あの時はパイが動きはしたが、それだけだった。此処まで異臭を放つほどヒドイ事にはなっていなかった。
既にUDC眷属が関わっている辺り、あの事件よりも――ヤバいかもしれない。
危機感を深め、麗治が再び歩き出す。
敵――ジャック・オ・ランタンは、まだこちらに気づいていないようだ。
『うお、オタマが変色したぞ』
『カボチャとぶどうとイクラ煮込んだだけなんだがなぁ』
『おお、飯盒の中が真っ黒だ』
『フヒヒ。とても口には出せないものを色々混ぜて新米を炊いたからな……!』
メシマズ儀式に盛り上がっている。
――ピキッ。
そんなカボチャ頭達の声が、2人の猟兵の怒りに火を付けた。
「またこの世界のオブリビオンは……ぶっ飛んだことしてるわね!」
背中の荷物をガチャガチャと降ろしながら呟いたフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の中で、何かがぷっつりとキレていた。
漂う異臭に我慢していた所に、聞こえてきたのがアレである。
「そこのカボチャども! 何、食材を無駄にしてんのよ!? ぶちころすわよ!」
「あえて不味い食事をつくるとは、不届き千万!」
フィーナと同時に声を張り上げていたのが、怒ったもう1人。
スイハンジャーこと滝舘・穂刈(炊きたてご飯ヒーロー・スイハンジャー・f06740)である。その炊飯器のランプは、彼の怒りを表すかのように明滅していた。
穂刈の怒りもカボチャ頭の言葉によるが、よりピンポイントである。
それは、今の季節に理由がある。
夏が終わり秋が始まるこの季節――即ち、新米が出始める季節!
そしてカボチャ頭の奴らは、確かにこう言ったのだ。
とても口には出せないものを色々混ぜて新米を炊いた――と。
あろうことか、あのカボチャ頭達。
新米もメシマズ儀式の犠牲にしてしまっていたのだ。
「新米への冒涜など、たとえ神が許しても、このスイハンジャーが許しはせん!」
ピー。ピー。ピー。
穂刈の怒りに呼応するかの様に、炊飯器が電子音を発する。
『ゴハン ガ タキアガリ マシタ』
「怒りのあまり、早炊きの時間を更新してしまったではないか!」
穂刈自身の予想以上に早くお米が炊きあがったが、何も問題はない。
炊きあがったなら、穂刈がやることは1つ。
「いただきます!」
美味しく頂く以外に、何があろうか。
おかずなど、要らない。
『ん? 人間が来たのか?』
『何故ここに――いや』
『こいつら、敵か!』
流石にカボチャ頭もオブリビオン、ジャック・オ・ランタン。
フィーナと穂刈の声に気づいて猟兵を見るなり、本能的に敵だと察して、次々と炊事場から飛び出してくる。
その手に持っているのは、物騒な斧――だけなら良かったのだが。
良く見れば数体だけ、黒いものがこびりついたまな板とか、どどめ色に変色したプラスチックオタマやら、異臭を放つ鍋とか持っているのもいた。
「そこまでです! 料理を冒涜する儀式は許しませんよ!」
「全く、『もったいない』が泣いてますよ!!」
飛び出してきたカボチャ頭たちに、高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)と黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が告げる。
『ちっ、見つかってしまったか』
『もう少しで、すんごいメシマズを作れそうな気がしていたのに邪魔しおって』
「努力しても料理が上手くなれない。そう言う方もいるでしょう。それでメシマズ料理になってしまうのであれば、まだ仕方がないかもしれません」
好き勝手なことを言い返すカボチャ頭達に、千秋が眼鏡の奥から鋭い眼光を向けた。
カボチャ頭達がやっている事は、千秋には、努力の方向からして何もかもおかしいとしか思えなかった。
「あえて美味しくない料理で世界を歪めようとか、人様と食材に失礼です! 食材の肉も魚も卵も野菜も、もとは等しく命だったのですよ!」
『それがどうした。儀式じゃなくても、その辺でキノコを拾ったら悪戯で入れてみたくなるのがジャック・オ・ランタン!』
なに言ってんだろう、このカボチャ頭達。
「その辺で拾ってきたキノコだなんて危険な。エリンギと舞茸を食べてなさい!」
千秋も、スーパーで買ってきた食材提供しないように。
『そんな普通のキノコじゃ、面白くない!』
『トリック・オア・トリート、と言いつつトリックしかないクオリティ!』
ピシッ!
ぶれないカボチャ頭に、千秋の我慢も限界が来た。
「僕たちは命を頂いて生きているんです! ――変身!」
千秋の全身が、腰のベルトから放たれた強い光に覆われる。
「断罪戦士ダムナーティオー推参!」
数秒で光が収まると、千秋の姿はサイボーグとしての完全戦闘形態へ変わっていた。
これで、3人目。
いや――もう4人目だった。カボチャ頭の言葉に、怒りに火が付いた猟兵は。
「何を言っているんですか、あなた達」
冷たい声を発した摩那である。
摩那は、それほど料理が得意なわけではない。と言うか、味覚が割と尖っている。マイ唐辛子を持ち歩いているくらいには。
そんな摩那でも、彼らが作るのは食材を無駄遣いしているのは、一目瞭然だった。
「何より許せないのが……そのキノコです」
『お前も、その辺のキノコは駄目と言うか!』
びしりと指差す摩那に、カボチャ頭が不服そうな声を上げる。
「ええ。それ椎茸じゃないですか!」
もしかして、椎茸に良く似たキノコかもしれない。だが、椎茸かもしれない。それだけで摩那には十分だった。
『…………え。そこ?』
「私には大事なことです」
カボチャの表情は変わらないけれど、多分目を丸くしてたんであろうカボチャ頭に、摩那が真顔で返す。
個人的思考によるものではあるが、摩那もカボチャ頭達に強い怒りを抱いていた。
『成程……キノコは嫌いな人間もいると』
『ならば、もっと使わねば!』
ざぁざぁと、辺りに急に風が流れる。
「全く……このオレの前で食べ物を粗末にするとは」
その中心に立っていたのは、麗治だった。
麗治がカボチャ頭達に抱いていたのは怒り――とは少し違ったかもしれない。
「存在自体が不快な奴らよ。皆殺しにしてくれる」
そう。不快感。敵愾心。
そうした感情を露わにした声は、麗治であって麗治でない存在の声だった。
麗治のもう1人の闇人格。吹いていた風が収まった時には、麗治の姿は暗蒼の全身甲冑を纏ったロードのそれになっていた。
「来い――暗黒騎士団」
スラリと抜いた黒剣を足元に突き立て、ロードが告げる。
その背後に闇のような黒が立ち昇り、幾つもの固まりに分かれていく。程なく、固まりは形を得て――漆黒の甲冑で武装した騎兵型UDCの軍団となった。
『あの騎兵は……流石に食えそうにないな?』
『そうか? 馬部分なら、食えるんじゃないか?』
麗治の喚んだ暗黒騎士団を見たカボチャ頭達が、そんな相談を始める。
「次はあんたらが食材になる番よ!」
カボチャ頭達に言い放ち、フィーナが背中から降ろした荷物の中に手を入れる。
「かぼちゃのソテーにしてやるわ!」
スラリと荷物の中から引き抜いて、フィーナがカボチャ頭達に突きつけたのは――いつもの愛用の杖ではなく、フライパンだった。
そして――。
「あれ? 炊きたてご飯の匂いがしたと思ったら……皆どうしたの?」
ガサガサと木々と葉のこすれる音を立てて、枝葉を掻き分けて、鼻腔をくすぐる匂いに釣られた鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)がひょっこりと顔を出した。
●UDCのお味は
『森の中から新手だと』
『さては伏兵か!』
「え? オブリビオン? 待って聞いてないよ」
いきなり敵認定され、流石に章も目を瞬かせてカボチャ頭達から距離を取って、他の猟兵達に駆け寄る。
「一体どういう事だろう?」
「実は――」
かくかくしかじかと、一緒にご飯を食べながら穂刈が章に事情を説明する。
「成程。UDCがUDCなご飯を作ってるのか……という事は、アレがそれか」
説明を聞いた章が視線を向けたのは、炊事場に残っていた漆黒の物体――UDC。
(「そう言えば、観察に夢中でご飯を食べるのを忘れてたな」)
空腹を思い出してしまえば、くぅと章の腹の虫が鳴き出す。
「よし。その辺の草よりは美味しいでしょ。いただきます」
そんな事を言いながら、章は迷わずUDCな産物に手を伸ばした。皿の上のものを端から口に入れていき――。
「…………不味いね…………」
一通り食べ終わって、章はいつも以上に寂しそうに、そう言っていた。
そうとしか、言えなかった。
「その辺の苔を食べてた方がましだ」
毒っぽさも舌を貫くような痺れる痛さもない。ただただ、不味かった。
こう見えて実は常に空腹で大食いで、いつぞやのラーメンストリートではその食事量で周囲の人々を驚かせた事もある章をして、手が止まるレベル。
狂気耐性のない一般人であれば、一口で気がおかしくなりかねない。
「これは食材の冒涜だ…………悲しいことだ」
ゆらりと顔を上げた章の目は、いつになく細められていた。
「大体、君たち五月蝿い」
『悪戯とは騒々しいものだ。もう諦め――』
「今オオカマキリの交尾シーズンなんだよ?」
『は――?』
五月蝿いとの章のツッコミに言い返したカボチャ頭だが、返す言葉を遮って告げられた事は、全く違う方向からの一言だった。
「もうすぐ貴重な交尾中の共食いが見られるかもしれないのに。オオカマキリに失礼じゃないか。冒涜だよ」
章が森の中にいた理由が、それだ。千葉県民にはちょっとハードな人類の生息圏外まで行ったのだからと、オフってことにしてカマキリ見に来てたのだ。
『は、はぁ……?』
一方カボチャ頭はというと、カマキリ観察を妨害したことになって混乱していた。
「命への冒涜は命で償うしかないよね……とりあえず首を落とせばいいかな?」
混乱から立ち直る暇を与えず、章の手が懐からスラリと鋭いメスを取り出す。
全く予想してない方向からツッコまれた上に、淡々と首を落とそうと迫られる恐怖。
章の【模範解答】によって倍増されて与えられた恐怖に、鬼火を放つのも忘れて固まっているカボチャ頭の首元に、閃く銀光。
カボチャ頭がゴトリと砂利の上に落ちる。
「ご飯ってまだある? 口直しに貰えないかな」
「勿論! 炊きたてだぞ!」
それに構わず振り返った章の頼みに、穂刈は二つ返事で頷く。
「おかず、いります? 駄菓子ですけど」
駄菓子屋の主でもある千秋がそれを見て、カツと思わせてかまぼこの親戚みたいな駄菓子と、カリカリの小梅を、そっと差し出していた。
●
「カボチャのくせに!」
『ぶげっ』
「カボチャを!」
『ぽぎゃ』
「無駄にしてんじゃないわよ!」
『ぱぎょ』
ひらりひらりと、舞うように跳び回りながら、フィーナはパコンッと軽い音を鳴らしてカボチャ頭達を殴り倒していた。
フライパンで、である。
しかも片手である。フライパンを握っていない反対の手は、フィーナの愛用の帽子が飛ばないよう抑えるのに使われていた。
とは言え、所詮はフライパンである。
鍛え上げられた武器ほどの威力は、流石に出ていない。
『ふははは! ジャック・オ・ランタンが普通の料理などするわけ無かろう!』
故に、中にはフライパンで叩かれても、割と元気そうにむくりと起き上がってくるカボチャ頭もいたりするわけで。
「自信満々に言う事かぁぁぁ!」
起きあがったカボチャ頭の後頭部に、フィーナが投げたフォークが突き刺さる。
「BBQの材料にしてやるわ!」
突き刺さったフォークの上に、フィーナは両手で持ったフライパンを叩きつけた。
「蒸らしたあとのお米を掬い上げてかき混ぜるように!」
『ごふっ』
「酢飯を作る時に米を斬りつけるように!」
『うぎゃっ』
「きりたんぽにする時に米を押しつぶすように!」
『ぽぎゃっ』
穂刈の振るう杓文字は黄金に輝いていた。留まる所を知らず、カボチャ頭の斧を弾き飛ばし、返す杓文字がカボチャ頭を叩き伏せる。
ピカーッ!
いいや。杓文字だけではない。
穂刈の頭、炊飯器は、黄金色の輝きを放っていた。
一粒一神・杯宿八百万神――ご飯ヒーローであるスイハンジャーは、お米を食べる事でパワーアップ出来るのだ。
お米の一粒には七人の神様が宿っていると言われている。
「そこに米があってもなくても、食べ物を粗末にする、ダメ・ゼッタイ!」
食材を冒涜していたであろうカボチャ頭に、スイハンジャーが杓文字を振り下ろす。
お米でパワーアップしたスイハンジャーの怒りの一撃が、斧を叩き壊してカボチャ頭を倒していた。
お米パワーがあれば、杓文字だってカボチャ頭の斧に勝る得物となるのである。
もう一度言おう。
フライパンと、杓文字である。
ヒュンッ!
風を切る音を立てて、回転しながら飛んできた物体がカボチャ頭を痛烈に叩く。
「南瓜は刃が通りにくいので、叩くに限りますね」
摩那の超電導ヨーヨー『コメット』だ。
『くっ! そんなもの、この斧で――』
「よっと」
カボチャ頭が斧を振り上げた瞬間、摩那の手がくんっとワイヤーを引いた。
ぐいんとヨーヨーの軌道が変わって、カボチャ頭の手首を叩く。
『しまった――斧が!』
カボチャ頭の手からこぼれ落ちる斧。
「回収させてもらいます」
だが、斧は地に落ちる前に摩那の念動力によって、ふわりと浮かびあがって摩那の手元に収まった。
『あー!』
『ず、ずるいぞ!』
『返せ!』
「言われずとも、お返しします――よっ」
口々に文句を言い出すカボチャ頭に、摩那は回収したばかりの斧をぶん投げた。
『ふっ。自分の武器だぞ。このくらい取ってみせ――』
「えい」
斧をキャッチしようとカボチャ頭が腕を伸ばした瞬間、摩那がヨーヨーを投げた。超合金のボディが柄を打ち、衝撃波が斧に勢いを与える。
『ふぁ!?』
カボチャ頭の予想以上の速度で飛んだ斧は、その指をすり抜けてカボチャ頭にグサッと突き刺さった。
「南瓜は刃が通りにくいのですが、斧にヨーヨーで追撃すればこの通り、ですね」
「ハロウィン気分には、ちょっと早すぎますよ!」
敵の斧を天霧の盾で受け止め、零は衝撃を反動にバスタードソードを振り上げる。
『何を言うか。我輩達はジャック・オ・ランタン!』
『出現すれば、いつでもハロウィン気分!』
斬られたのとは別のカボチャ頭が、零に斧を突きつけて言い放った。
しかし斬りかかるでもなく、そのまま大声でこう続ける。
『トリック・オア・トリート!』
「来い!」
カボチャ頭が言い放つと同時に放たれた謎の力に、零は天霧の盾を構えオーラを全身に纏って身構えた。
「くっ!」
予想よりは強い衝撃が零を襲う。
(「でも、この程度なら――!」)
もっと強い敵とだって、戦ってきた。
胸中で呟いた零が、手に力を込め直した瞬間。
『その剣を使ってはいけない!』
カボチャ頭の声が響き渡って、握り直そうとした零の手から、バスタードソードが零れ落ちた。
『ふ……ふははは! これでもう武器は使えないぞ!』
カボチャ頭の表情は変わらないけれど、何かドヤ顔っぽい雰囲気で零に向かってドヤるカボチャ頭。
『…………は? おい、なんだその文字は』
だが、次の瞬間、カボチャ頭の方が驚いていた。
零の頭、テレビウムが持っているモニターの中に『トリック・オア・トリート』と映っていたからだ。
「お返しです。あなたは――ユーベルコードを使ってはいけません!」
『な、何ぃ!? そんな猿真似でごはぁぁっ!?』
零が言い放った直後、カボチャ頭が苦悶の呻きを上げてカボチャ汁を吐き出した。
その周囲に漂っていた青い鬼火が消えていく。
『な、なんだと……同じ技?』
「いやー、使ってはいけないのが『剣』で助かりました」
驚愕するカボチャ頭の前に、ひょこひょこ進み出る零。その手には、バスタードソードの代わりに無骨なメイスが握られていた。
「やっぱりカボチャは切るより叩く方が楽ですね」
『ちょまー!?』
ゴシャッ!
暗黒騎士団――ナイツオブブラック。
漆黒の騎兵を従えた麗治――ロードの姿は、悪魔や魔人と言った禍々しさのあるフォルムの暗蒼色の全身甲冑と相まって、さながら君主のようだった。
『総員突撃。尽く叩き潰せ』
黒剣を掲げて指示を出せば、ますます君主のようだ。
実際、ロードの指示に、ナイツオブブラックが整然と駆け出す。
『その馬狩ったらぁぁぁ』
『馬肉でメシマズしてやる!』
漆黒の騎兵。その騎馬を狙って、一部のカボチャ頭が飛びかかり――パカンッと蹄で、或いは重たい馬体で容赦なくふっ飛ばされた。
「食べ物は大事にするって……どこかで聞いた気が……するんすが……?」
漆黒の騎兵がカボチャ頭を蹂躙するさまを横目に、ルイーグは首を傾げていた。
ルイーグには、過去の記憶がない。
それは力を得た代償。
自身の能力もよく判ってない今となっては、その代償自体、ルイーグ自身が納得してのことだったのかどうか。
それでも、過去の何もかもが失われてしまったわけではない。今の様に時折、いつか何処かの誰かの言葉がルイーグの中に蘇る事がある。
「間違って無いみたいっすね」
結局、それがいつ何処で聞いた言葉か、ルイーグは思い出せないままだったが、他の猟兵達の様子から間違い無いと確信していた。
「よし、オレもメシマズ集団許さんっす!」
きっと眦を釣り上げ、カボチャ頭達を見据え、ルイーグは呼吸を整える。
「ちょっと派手なの行くっすよ!」
「総員――敵の外周を円陣にて埋め、維持せよ!」
ルイーグが何かを狙っているのに気づいて、麗治が騎兵達に指示を出す。遠ざけるのではなく、カボチャ頭達を封じる形の布陣を取らせた。
「私の騎兵ごと――やれ!」
「っ! 了解っす!」
ロードの指示に1つ頷くと、ルイーグは肺いっぱいに息を吸い込んだ。
――オォォォォォオォォォンッ!
響渡る人狼の咆哮。
空気を震わせる音の衝撃が、辺り一帯に広がってカボチャ頭達を漆黒の騎兵達ごと吹き飛ばした。
「出来損ないのカボチャ共が! そこで潰れておれ」
そこに響く新たな音。自身のサイボーグ馬にまたがったロードが、蹄でカボチャ達を容赦なく踏み潰した。
『どうした!』
『敵か!』
そこに何処からともなく突然現れる、新たなカボチャ頭
その手に持っているあれこれからして、食材調達中だったカボチャ頭達が、テレポートで戻ってきたらしい。
「まだこんなにいたのね――纏めて焦んがりと焼いてやるわ!」
フィーナのフライパンの上に、煌々と炎が燃え上がる。フィーナはその炎を、そのまま放つのではなくフライパンの上で圧縮し始めた。
「そうですね、纏めてやりましょうか」
フィーナのやろうとしている事を察して、千秋が蒼銀に光る断罪の剣を対UDC用の銃火器『ordinis tabes』に持ち替えた。
「畳み掛けます!」
『ordinis tabes』の銃口を、千秋は空に向ける。
『一体なにを――』
「僕の最強の武装も僕も、お前たちを許さない!」
カボチャ頭達が釣られて上を見上げた瞬間、千秋の指がトリガーを引く。
ガガガガガッ!
雷鳴のような銃声が、立て続けに響き渡る。
放たれた銃弾が、カボチャ達の頭上でキラリと輝きを放ち、雷光のような速度で一気に降り注いだ。
『ぎゃぁっ』
『あ、足が……』
さながら銃弾の雨。だが、銃弾は一発も外れる事なく、カボチャ頭達の何処かを撃ち抜いていた。
千秋の見せた業の名は――冷たい雨に撃て、約束の銃弾を。
「今日は消し炭と焼け野原にしない程度にしちゃるわ!」
その後ろで、フィーナのフライパンから炎がぽんっと上げられた。
炎の玉は、フィーナが圧縮した、言わば魔力のナパーム弾丸。
パァンッ!
それは花火の様に空中で弾けて、幾つもの炎へと変わる。
撃たれて動く余力のないカボチャ頭に容赦なく降り注いで、カボチャ頭をこんがりと焼いていた。
大成功
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黎・飛藍
ルイ(f18236)が同伴
近くに居ると何となく寒いから一応判る。あと声
…南瓜だ
南瓜が何かしている。が、南瓜は動くものだったか?
まぁ、どうでもいいか
とりあえず【彼岸への誘い】を使う
蛍を炎で相殺させることを狙いつつ、相殺されなかった分の蛍が南瓜に当たれば儲けだ
そういえばこの場にはルイも居たんだったか
蛍は放ったらもう俺の手には負えないから、気合で避けろ
誰が誰かなんて正直判らない。けれど、南瓜かそれ以外かの見分けはつく
蛍を放った後、どさくさに紛れて仕込み刀で南瓜を収穫
…南瓜って、喋るものだったか?
だが食い物であれば、喋ろうがそうでなかろうが関係ないな
小夜啼・ルイ
飛藍(f16744)に同伴
うわ、何だあいつ等の料理…病院食を食う方がマシなレベルじゃねぇか…
あとフェイ。南瓜は普通動かねーぞ
紫色したホットケーキのたねの入ったボウルを、南瓜頭共に見せながら近付く(紫色の原因はブルーベリー)
これ焼くとゾンビっぽい色になる。試してみるか?…ってな
受け入れられようが、不審に思われようが。近付けたなら決まり文句を言われる前に【サイキックブラスト】で動きを封じることを狙う
で、動きが止まったならばすかさずナイフでぶっ刺す
食い物を粗末にするんじゃねぇよ
いきなりフェイから流れてきた蛍は気合避け
ふざけんな後で憶えてろ
つーかその南瓜頭共を食い物認定するな。UDCだ
霧島・ニュイ
ねえ、ひどいよー
わざとメシマズ作ってるよね?勿体ないじゃん
普通に美味しい料理を作ろうとしてるのに下手になっちゃう僕に謝れ!!>△<
(あれから分量は測るようになったけどまだ下手)
絶賛成長期
直ぐにお腹が空く!バーベキューを心待ちにしてる
食材そのいーち!!
カボチャをよこせーー!!trick or treat!
お菓子をくれてもカボチャをよこせ!
【咎力封じ】
罠を投げて、猿轡にロープのいつもの道具でちょちょっと拘束♪
麻酔使ったら味が狂うからそのままで
洗って火を通したら食べられるよね、平気平気♪
【2回攻撃】使いながら攻撃数を増やす
3分クッキング風に何か歌いながらるんるんとやってる
(ナチュラルにサイコパス
無明・緤
やべえ楽しそうな事やってる
混ざりたい…いや混ざっちゃダメだろ…
クッ、恐ろしすぎるぜこの儀式!
正気を取り戻すために
UC【鐵は血に血は鐵に】使用
…冒涜的な料理、特にレア(生)っぽいヤツに
食材の苦しみがすげえ伝わってくるんだけど…
えっなにこれ悲しい…
スナギツネみたいな顔で無心に頬張る
この後のBBQを思って心を強く保ちながら食べる
腹を壊さない程度に
そうして食材の記憶、特性から組み上げたプログラムを
からくり人形にインストールして強化
おれの悲しみがこもっている分【操縦】は容赦なく
怒りの鉄拳【カウンター】【鎧無視攻撃】を
固い南瓜頭にぶち込ませて倒す
パレード率いて逃げるなら
鉄拳撃ち出し【誘導弾】で仕留めてやる
●それぞれの視線の意味
じぃー。
動くカボチャ頭に、4人の猟兵が視線を向けていた。
猟兵も色々だ。
当然、その視線の意味も色々である。
「成程……確かに南瓜だ。南瓜が何かしている」
黎・飛藍(視界はまだらに世界を映す・f16744)は、それが自分の目でもカボチャ頭に見えるのを確かめていた。
「いや、何かしてる、じゃねえよ。大分ヤバイ事してるぞあいつ等」
後ろから聞こえた声に、飛藍は「そうか?」と首を傾げる。
振り向かずとも、それが小夜啼・ルイ(xeno・f18236)だと判っていた。声と、僅かに漂う冷気を感じて。
「フェイ。お前、人の顔は判らなくても鼻は普通に効くだろ? あいつ等の料理の臭い、おかしいぞ……病院食を食う方がマシなレベルだ」
一部のカボチャ頭が手に持っている物体Xに、ルイが流石に顔をしかめる。
「……待て。この臭いは、料理の臭いなのか? 毒ではないのか」
「生憎、料理だ。って、マジで気づいてなかったのかよ」
ぼんやりと尋ねる飛藍に、ルイは顔をしかめたまま答えた。
病院食と言うのは、基本的に患者の健康に配慮したものだ。まあ、そうではないものもあるにせよ、刺激臭のする料理が出ることはまず無いだろう。
「そうか。まあ、どうでもいいか」
「いや良くねえよ!」
そんなUDCな異物をどうでもいいの一言で片付けようとした飛藍に、すかさずルイのツッコミが飛んでいた。
「どうでもいいだろ。食い物であれば、喋ろうがそうでなかろうが関係ない」
「待て待て。あの南瓜頭共を食い物認定するな。UDCだ」
既に食材扱いな飛藍に、ルイが更にツッコミを返す。
「ところで、ルイ」
それをスルーして、飛藍はぼんやりとルイに尋ねる。
「南瓜頭以外に炊飯器とテレビが見えたんだが、あれはどっち側だ?」
過去に受けた実験の後遺症で、飛藍は他者の顔の判別がうまく出来ない。カボチャ頭と戦っているのも、多分皆、猟兵なんだろうと言うくらいだ。
そんな中でも頭の形が物理的に特殊であれば、流石に判別つくらしい。
「ああ……二人共こっち側。猟兵だ」
「そうか。判った」
「君たちさあ。ひどいよー」
メシマズ儀式を進めようとするカボチャ頭達に、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)が向けていた視線は、所謂、ジト目だった。
『よし、なんか紫色の花ゲットしたぞ!』
『ならばここはエビと川魚と混ぜてみようか!』
「わざとメシマズ作ってるよね?」
『儀式であるからな!』
ジトっと見上げるニュイに、毒々しい花を握ったカボチャ頭がドヤッと返す。
「食材、勿体ないじゃん」
『何だそんな事か』
「そんな事、じゃないよ!」
抗議の声もどこ吹く風なカボチャ頭に、ニュイが珍しく声をやや荒げる。
それはとある過日の事だ。此処ではない別の世界で、ニュイは料理に関したちょっとした失敗を経験したと言うか、挫折を味わったと言うか。
「最近は、分量を計る様になったんだ」
それを糧に、少しでも上手くなろうと努力してきたのだ。
だと言うのに、このカボチャ達ときたら。あの日のニュイの『個性的な味』を軽々と上回るものを、平然に、そして意図的に作っているではないか。
「普通に美味しい料理を作ろうとしてるのに下手になっちゃう僕に謝れ!!」
UDCなるメシマズ儀式は、ニュイの怒りにも火を付けた。
UDC――メシマズ儀式に怒りを覚える猟兵が多い中。
(「やべえ楽しそうな事やってる! 混ざりたい……」)
無明・緤(猫は猫でしかないのだから・f15942)は、好奇心で唆られる側だった。
「じゃねえ! 混ざっちゃダメだろ……」
フラフラと吸い寄せられそうになったものの、ギリギリで緤は正気に戻る。
「クッ、恐ろしすぎるぜこの儀式!」
緤は緤で、この儀式に恐ろしさを感じていた。
まだ気を抜いたら、混ざりたくなってしまう。
(「正気に戻る為には――あれしか無いな」)
「喰う!」
●それぞれの南瓜対峙
「よう、カボチャ達」
警戒されない様な声音を意識して、ルイが何かを入れたボウルを抱えてカボチャ頭達に近づいていく。
『む? お前も敵の仲間だな』
『一体何をしに――』
「まあ、まて。先ずはこれを見てみろ」
訝しむカボチャ頭達に、ルイはボウルを傾けてみせた。
紫色の中身がトロリと動く。
「こいつは紫色を付けたホットケーキのたねだ。これ焼くとゾンビっぽい色になる。試してみるか?」
紫色はブルーベリーで付けた。そのまま焼かれても、UDCになることはない。
だが――。
『ほっほう。これは中々の紫色』
『さあて、どう魔改造してやろうか』
ボウルに手を伸ばすカボチャ頭達は、そのまま使う気はないようだが。
『我輩達が手を加えなければ、UDCにならんからな』
(「そーいや、これ儀式だったか」)
カボチャ頭達の様子にルイは連中がただの愉快犯でなかったのを思い出していた。
「そうか――じゃあ、動くな」
バヂィッ!
『カボボボボボボッ!?』
ボウルを渡した直後、ルイの掌から放たれた高圧電流がカボチャ頭達の間を迸った。
『……』
「食い物を粗末にするんじゃねぇよ」
感電して痺れて喋れないカボチャ頭の前に屈んで、ルイは『stulti』の刃を容赦なく突き立てる。刃を引き抜いたルイの前に突如、青白い炎が生まれた。
「っと!」
咄嗟に飛び退いたルイのつま先を、炎が焦がす。
それは魂の炎。
この世界の伝承では、ジャック・オ・ランタンは時にウィル・ウォ・ウィスプ――鬼火のような存在とも言われている。
故にか、UDCなのジャック・オ・ランタンも炎の力を持っていた。
「――似ているな」
その炎を見た飛藍が、ぼんやりと呟く。
広げた掌からは、近い色合いの小さな光が幾つも浮かび上がっていた。
「蛍は死者の魂だという話を知っているか?」
飛藍の掌から飛び立った数多の蛍が、南瓜の鬼人ぶつかって青白い輝きを放ち――吹き散らされたのは鬼火の方だった。
物心ついた時から、飛藍はとある組織の実験体だった。
そこには、自分以外の子供もいた。
誰かが消える度に、飛藍には蛍が見えるようになっていた。
青白い炎を見て似ていると飛藍が呟いたのは、その色か、それとも――。
「って、危ねえな! オレもいるんだぞ!」
目の前から聞こえる、ルイの抗議の声。
【彼岸への誘い】の蛍は、範囲内にいるものを無差別に攻撃する。それがUDCでも猟兵でも対象になり得るのだ。
「気合で避けたから良かったものの……」
「ああ。なら方針を変えれば大丈夫だ」
だが、飛藍は事も無げに返す。
「方針?」
「ああ。蛍には、南瓜の頭を狙わせる。南瓜の頭は、お前より上に見えるからな」
飛藍のこの一言はつまり、ルイの身長が――。
「ふざけんな! 後で憶えてろ!」
ルイの声が、川原に響き渡った。
「カボチャよこせー♪」
自身の欲望に忠実なニュイの声が、川原に響き渡る。
ぶんっと投げた手枷がカボチャ頭の腕を封じて、間髪入れずに投げたロープは別のカボチャ頭にぐるぐる巻き付き動きを封じる。
『くっ、トリック・オア――』
「はい、それ禁止ー♪」
決まり文句を言おうとしたカボチャの口を、笑顔のニュイが猿轡で塞ぐ。
「食材そのいーち!! カボチャー!」
笑顔のまま、ニュイが振りかぶったのは――無骨な杭だった。
『ンー!? ンンー!?』
「活きの良いカボチャは暴れるけど、麻酔薬は使わないでおこうね。味が狂うから」
何やらクッキング番組の解説的なノリで、ニュイはカボチャ頭を蹴り倒す。ニュイの目には、カボチャ頭は完全に食材に映っているようだ。
なにせニュイは17歳。絶賛成長期。
お腹が空くのである。バーベキューが待ち遠しいのである。
「trick or treat! お菓子をくれてもカボチャをよこせ!」
決まり文句を奪いながら、ニュイは笑顔で杭を振り下ろす。無情な一撃が、ゴスッとカボチャ頭を叩いた。
「さーて、どんどん狩ろうか♪」
別のカボチャ頭へ向き直ったニュイは、鼻歌混じりに新たな手枷を振り回していた。
(「――渇く」)
そうと決めた緤の中に湧き起こる、飢えと渇き。
緤の緑の猫目が見つめていたのは、カボチャ頭達が作ったメシマズ料理。大概が真っ黒な物体Xと化している中、たまーに生なものが混ざっていた。
「これだ!」
他の猟兵の攻撃でカボチャ頭の気が逸らされている隙を突いて、緤は生な料理を皿ごと奪って木立の中に逃げ込んだ。
「そんじゃ、いただきまーす」
生っていうか、魚の形そのまま残っているものにガブリと齧りつく。
「…………」
その瞬間、緤の目が一瞬で虚ろになった。
「え、なにこれ……」
生とかそう言う次元じゃあない。ただの生であれば、刺し身も同じだ。酢で締めるなりわさびや生姜と醤油で臭みを消したりすれば、充分食べられる。
だがこの魚は――なんだろう。これ何を調味料に使っているんだろう。川魚の臭みと雑草の苦味を、謎の調味料の苦味と酸味が更に際立てている。
「かなしい……」
緤の口から、味の表現としては中々出ないであろう言葉が漏れ出ていた。
(「BBQだ……この後にはBBQがあるんだ」)
この後のお楽しみを思い、緤は心を強く持ってもそもそとソレを食べ続ける。尤も、その表情はケットシーでありながら、スナギツネのようになっていたけれど。
緤が此処まで我慢して料理を食べたのも、当然理由がある。
魚を使っていて、その姿形がそのままだったからだ。
主に魚から摂取した体液。緤はそこから得た食材の記憶、特性からプログラムを組み上げ、戦闘傀儡『法性』にインストールしていく。
鐵は血に血は鐵に――サイバネティクス・ヴァンパイア。
プログラムに込められた緤自身の怒りと悲しみも載せて、『法性』は水を得た魚のような勢いでカボチャ頭に向かって飛びかかっていった。
斧を交わしながらの拳の一撃をカボチャ頭に叩き込み、拳よりも遠くのカボチャ頭には傀儡の拳をロケットのように打ち出して殴り倒す。
「その拳は、かなしい味を食ってしまったおれの分だー!」
鐵の叫びと共に振り下ろされた傀儡の鉄拳は、不意を突かれたカボチャ頭を一撃で叩き壊していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
●POW
おう者共
ワイルドハントの起こす嵐の風は豊穣の代名詞でもあると言われるトコでしてよ
ってなワケで、収穫祭ですわ
全ての南瓜頭を狩り尽くせ!
・でっかい化猫に変化
・獲物の【追跡】に長けた狩猟本能、即ち【野生の勘】と共に【残像】を刻む程の【ダッシュ・ジャンプ】で機動、噛み付けば血と生気を啜る牙(吸血+生命力吸収)と【怪力】の四肢と尾で敵を【なぎ払い】戦う力を持つ
仲間の位置がワープ用の座標になるんスか
ならまずその利を潰してやりまさァ
・敵布陣の外縁を弧を描くように疾走
・敵集団の瞬間移動幅を絞って狭める狙いで、敵頭数を中央・内側へ寄せ集めるように、尾とネコパンチと体当たりをブチかます
雷陣・通
【ワイルドハント】
すげえな収穫祭!
カボチャから下が気になるが、俺は気にしない!
こういう奴は頭が固い、カボチャだし。
【戦闘知識】を活かして、彼らが一番テレポートしそうな仲間を【視力】で確認し【見切り】、そこに飛び込める間合いを保ちつつ【殺気】を放つ。
そしてユーベルコードを使ったところを【先制攻撃】
『手刀』と【二回攻撃】で首を刎ねて、一口大にスライスだ!
「おら! 逃げられると思うなよ!」
ユーベルコードを使ってこないときは日本刀を振り回して追撃、ちゃっかり物九郎さんのアクションに合わせて敵集団の瞬間移動幅を縮めてやる
そうすれば後は『手刀』だよな!
って、ニコリネ姉ちゃんスゲー! 俺も乗せて!
ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】秋の収穫祭!
皆でBBQが出来るなんて、悪の教団には逆に感謝しちゃうわ
ワイハン印の戦闘服に着替えて気合十分!
全力で殺っつけましょうねぇ
キャンプ場では先ず自力で食材を調達するって知ってる
私は皆が狩ってくれたカボチャを収穫していきましょう
集塵車を召喚して、戦闘不能になった個体からじゃんじゃん食材として回収していこうっと
通君、カボチャから下が気になるの? じゃ分別しておくわね
襲い来るカボチャから食材を守らないと!
集塵車を自動運転にして定点戦闘を避けながら、後部の足掛け部分に乗って防衛開始!
この乗り方、してみたかったのよねぇ
来なさい、悪い子はシャッター棒の先っちょでほじくってあげる!
ヨム・キプール
【ワイルドハント】 / 首から下は最初からなかった、いいね? ここにあったのは『オブリビオンだったモノ(ルビ:カボチャとサーモン)』です。(サツバツ!) / 僕も皆さんと同様、テレポートを敢えて誘発させることを前提にPOWで対応します! 皆さんの突撃を支援するために、高火力のレーザーによる【二回攻撃】で火力支援を行いますよ! 猟団長と同じくとにかく最も外側にいるカボチャを優先して狙い、テレポートの範囲をどんどん狭めていきます! / 接近された場合、レーザーをメスのように振り回して対処します。携帯型の【暗視】スコープによって夜の闇でもカボチャ一匹見逃しはせず、着実に囲い込み猟を行います!
煌天宮・サリエス
【ワイルドハント】●WIZ
収穫祭……つまり……これは、美味しい食材?なのです。これはもう、たくさん捕獲するしかないですね。
『呪いの武器袋』に入っているビー玉を触媒に闇の鎖を作り出す。ただ、変なルールをかけられたらたまらないので、鎖には衰弱と喋ることができない【呪詛】を流し、決まり文句が決まらないようにする対南瓜頭仕様の鎖です。
空から敵の行動を観察し、[決まり文句を決めようとしているカボチャ>敵集団から孤立してしまったカボチャ>その他カボチャ]の順で、カボチャを鎖で拘束して呪いをかけた後、中央に飛ばすのです。
リダン・ムグルエギ
【ワイルドハント】の戦い、はっじまっるわよー
アタシはデザイナー
事前準備担当
のんびり実況・撮影してるから皆頑張れー
・準備
各自の浴衣をベースに防具改造し作ったワイハン印の浴衣を皆に配るわ
とーる君は法被に黒帯、団扇も添え
ヨムくんは白地に猫足跡模様の浴衣に赤青二つの帯を
ぶっちーのは隙間にゴムを使い猫化しても伸びてフィットするように
服飾師の布で各種耐性を添えつつ
見た人の味覚と嗅覚、そして美的感覚を狂わせる【催眠】模様を柄に織り込んであるから
衣装を見た敵はコード効果で「普通の料理」ほどヤバそうに感じるハズよ
これで交戦せず儀式を進める敵の妨害も試みるの
もしメシマズ料理を作れって宣告されたら
普通の料理を作るわ
荒谷・つかさ
【ワイルドハント】
カボチャ。鮭。あと熊。
なるほど、これは狩りつくせってことね。
任せてちょうだい猟団長。
さあ、ワイルドハントのお通りよ!
斬り込み担当らしく、先行して突撃しつつ【荒谷流抜刀術・神薙の刃】発動
剣圧の刃の射程内に捉え次第、丁寧に首を狙って攻撃
一斬り一殺を心がけ、迅速に収穫を行う
テレポートを使ってきたとしても落ち着いて対応
あのコードの性質上、集まる事は出来ても散る事は出来ない
なら増えるにせよ逃げるにせよ、一ヵ所に纏まるのは変わり無い筈
そうなったら広範囲に剣圧の刃を放ち、一気に纏めて首を落とすわ(なぎ払い、範囲攻撃)
●ワイルドハント――狩りの準備
「おう、者共」
白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の周りには、揃いの印の入った色彩々の浴衣姿の旅団の仲間達がずらりと揃っていた。
「ワイルドハントの起こす嵐の風は、豊穣の代名詞でもあると言われるトコでしてよ」
ワイルドハント――その名は、時と場所によっては様々な意味合いを持つ。
時には、死者を導く狩猟団。
時には、災いの前触。
この時、この場所で、その名の意味する所は――。
「ってなワケで、収穫祭ですわ!」
あ、はい。
視線を向けるワイルドハントのメンバーの前で、物九郎は言い切った。
「収穫祭……つまり……これは、美味しい食材?なのです」
煌天宮・サリエス(光と闇の狭間で揺蕩う天使・f00836)が、やや自信なさそうに指差したのは、普通のカボチャには絶対にない部分。つまり首から下。
人間チックな胴体と手足である。
「カボチャから下があるな。確かに気になるが、俺は気にしない!」
「そうそう。 首から下は最初からなかった、いいね?」
気になると言いつつ雷の早さで気にしないと翻した雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)に、ヨム・キプール(贖罪の日・f21620)が力強く頷く。
「まずカボチャ。この後は、鮭と熊でしょ。これは狩りつくせってことよね」
荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)も、カボチャ頭を狩りの対象とすることに、特に疑いもないようだ。
「皆で秋の収穫祭してBBQが出来るなんて、悪の教団には逆に感謝しちゃうわね」
柔和な笑顔を浮かべているが、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)も狩る気満々のご様子である。
「成程……これはもう、たくさん捕獲するしかないですね」
そんなワイルドハントの仲間に当てられたか、サリエスも狩人の気分になっていた。
「皆、頑張れー」
リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は1人ゆるっとしているが、彼女は狩人ではない。デザイナーである。
「アタシは、後ろでのんびり実況・撮影してるから」
何もしない宣言とも取れるリダンの言葉を、しかし誰も否定しなかった。
6人が身を包んでいる、ワイルドハント印の浴衣を作ったのがリダンなのだから。
ただ、揃いの印を入れただけではない。
例えば通には法被に黒帯を合わせて道着風にし、団扇を添えている。
ヨムの浴衣は、白地に猫足跡模様。赤と青二色の帯は、ヨグの周囲に常に漂っている2つの水晶に合わせている。
サリエスも白地の浴衣だ。背中の黒翼との対比も相まって、実に涼しげ。
「異論は無いっすね?」
「ええ。全力で殺っつけましょうねぇ」
「任せてちょうだい猟団長。一斬り一殺で行くわ」
物九郎の確認に中々殺意高く返したつかさとニコリネの女性陣2名のの浴衣は、色合いが対象的だ。
花売りのニコリネの浴衣は、白地に満開の花模様――ガーベラだろうか――をふんだんに取り入れている。
つかさは逆に黒に近い濃色の生地。模様は曼珠沙華。裾と振り袖の花だけ赤と白の色を入れてアクセントに。
先日、各自が拵えた浴衣のデザインを流用しつつ、ちょっとした仕掛けを込めて、リダンは防具としての浴衣を拵えたのだ。
デザイナーの面目躍如である。
「それじゃ、出陣でさぁ――全ての南瓜頭を狩り尽くせ!」
号令と同時に地を蹴って飛び出した物九郎に、仲間が続く。
カボチャ狩りの、始まりだ。
カボチャにけもの偏、普通は使わないよね?
●ワイルドハント――実践、カボチャ追い込み猟
「化け猫のお出ましっスよ」
砂利の上をかける物九郎が、徐々に変わっていく。
全身が黒い体毛に覆われ、膨れ上がる。顔も体毛に覆われ、走る姿勢も変わる。
『いきなり出たー! ぶっちーの速攻! 獣撃身・黒――フルトランス!』
響くリダンの実況。
物九郎の姿は、巨大な黒い化け猫と変わっていた。
それでも浴衣が破れていないのは、リダンの仕込みだ。要所要所にゴムを使い伸びるようにした事で、化け猫化に対応したのだ。
「ははっ、いい具合っすよぉ!」
ぶんっと尾を振った物九郎に、リダンが後ろでサムズアップ。
『こ、これは――』
『く、喰われる!?』
化け猫姿の物九郎は、捕食者としての狩猟本能。即ち野生の勘を全開で駆ける。その姿と迫力に怯えるカボチャ頭に真っ直ぐ――ではなく、その大外へと。
『へ?』
『な、なんで……?』
「出力の最適化……完了。照準固定」
戸惑うカボチャ頭を遠くから眺めるヨムの傍に漂う赤と青の水晶体。
それらはキラキラと輝き明滅しながら、くるりと向きを変える。最も鋭い先端を、カボチャ頭の方へ向けた形だ。
水晶体はヨムの珪素生物型UDC――ヤヒン&ボアズの一端である。
「発射!」
『がはっ』
『ぽぎゃ』
ヨムが指差し告げると同時に、ヤヒン&ボアズから赤と青の光が同時に放たれる。
光輝――ゾハル。
ヨムが撃ち込んだ光と闇の属性を持つ光が、それぞれ固まりの大外にいるカボチャ頭を狙い違わず吹っ飛ばした。
『決まったー! ヨムくんの先制射撃! そして、その隙にぶっちーが!』
漆黒の旋風の如き勢いで、物九郎は駆けていた。
カボチャ頭の周囲に、ぐるりと、弧を描くように。残る化け猫の残像が、カボチャ頭達を取り囲む檻となるように。
「仲間の位置がワープの座標になるんスよね。其の利、潰してやりまさァ」
抜け出そうとするカボチャ頭をねこパンチで押し戻しながら、物九郎が告げる。
カボチャ頭は、他のカボチャ頭の元にテレポートする能力を持っている。散らばったままテレポートを多用されては、とてもではないが狩りにくい。
ヨムが牽制し、物九郎が取り囲む。
カボチャ頭を一塊に追い込むのは、狩りの布石だ。
「ワイルドハントのお通りよ!」
響くつかさの声。
布石の中に、小柄な影が2つ飛び込んだ。
「見るからに頭硬そうな奴だな」
カボチャだし、と通が集められたカボチャ頭の集団を見やり呟く。
「生のカボチャって、確か結構硬かったよな」
スイカとどっちが硬いだろうかと考えながら、通は利き手の五指を揃える。うっすらとした雷のような輝きが生じて、パチリと小さく爆ぜながら、通の手を覆いつくした。
「首を落とせばいいのよ」
袖の曼珠沙華を翻し、つかさの手が刀の柄にかかる。握るは大悪魔斬【暁】。大悪魔をも斬り捨てたと言われる刃であり、つかさが母より譲り受けた一振り。
「我、神をも薙ぐ刃也……!」
荒谷流抜刀術・神薙の刃。
閃く銀光。
鞘走った暁の刃が、つかさの前のカボチャ頭を斬り飛ばす。
斬りつけたカボチャ頭のみならず、斬撃の剣圧は風の刃となって、後ろのカボチャ頭も数体纏めて斬り裂いていた。
『な、なんだと』
『一撃で……』
「いまだ!」
つかさの一太刀にざわつくカボチャ頭の隙を見逃さず、通がその手を振るう。
手刀――ハンドスライサー。
己が身体を刃と成す通の斬撃が、こちらもカボチャ頭を斬り飛ばした。
『疾るソードウィンド! 迸るライトニング! 風と雷のコラボね! 観念してカボチャ頭を置いていくが良いわよー!』
方や風を切り裂き風を刃と変えるつかさの剣。
方や雷気をまとい腕を刃とした通の斬撃。
リダンの実況が響く中、斬り飛ばされたカボチャ頭がぽんぽん飛んでいた。
●ワイルドハント――収穫するまでが狩り
『しまった、散らばれ!』
『此処にいては狩られるだけだぞ!』
流石に、カボチャ頭達もワイルドハントの策に気づいていた。そうなれば、黙ってやられるだけである筈もなく。
『パンプキンパレードで――』
『だめだ、向こうも修羅場ってるってテレポート拒否られた!?』
『こうなったら斧で――
「おら! 逃げられると思うなよ!」
ならばとたカボチャ頭が振り回す斧を掻い潜って、通が輝く手刀で斬り倒す。
「おっと。カボチャ一匹、逃しはしませんよ!」
その背後で斧を振りかぶったカボチャ頭を、ヨムがヤヒン&ボアズから放った光輝のレーザーが撃ち抜いた。
「そろそろ、爪を出させて貰いまさァ!」
ヨムが牽制から狙いを変えれば、物九郎も化け猫の爪をギラリと伸ばして、カボチャ頭に腕を振るう。
パンプキンパレードで逃げる暇など与えない。
それが、ワイルドハントの7人の策の1つ。
だが、そこに新手がテレポートしてくるのは、流石に防ぎようがない。
『くっ、キノコを取りに山奥まで入っている間に――』
『良くもやってくれたな!』
何処からともなく、テレポートで現れる新たなカボチャ頭の群れ。
「予想通りです」
その場所は、淡々と呟いたつかさの目の前。
『!?』
「こうして一塊に追い込んでおけば、集まることは出来ても散らばる事は出来ない」
現れた時点で、既に集められ包囲されている。
つかさの読み通りだった。
「飛んで火に入るなんとやらね。その首、纏めて落とさせて貰うわ」
故につかさは突然の敵の増加にも驚く事なく、慌てずに刀の柄に手をかける。
居合一閃。
閃いた刃と剣風が、テレポートしてきたばかりのカボチャ頭達を、身構える暇すら与えずに斬り倒した。
次々と狩られていくカボチャ頭。
『落ち着け! こんな時こそ決まり文句でアイツラの行動を――』
「そうはさせません」
頭上から降ってきた声が、カボチャ頭の言葉を遮った。
カボチャ頭が見上げれば、漆黒の翼を広げたサリエスが見下ろしている。
「武具に宿りし無辜なる死者の怨嗟を束ね、此処に呪縛の闇鎖を織りなそう」
そう唱えながら、サリエスが呪いの武器袋から取り出したのは小さなビー玉。
サリエスの掌の上でビー玉は膨れ上がり、形を変えて行く。闇色の鎖へと。
「変なルールはかけさせませんよ!」
サリエスが振るった闇の鎖が、カボチャ頭に幾重にも巻き付いて動きを封じる。
怨呪闇縛――エラーコード・グラッジチェンド。
元々のビー玉の大きさを考えれば、闇の鎖はあり得ない長さだ。質量法則なぞ無視した埒外の変形。
『くっ、解けん――だが! トリック・オア・トリート!』
鎖を解くのが難しいと悟ったカボチャ頭が、その言葉を叫ぶ。
しかし、何も起こらなかった。
「無駄ですよ。その鎖は、喋れなくする呪詛を載せた対南瓜頭仕様の特製の鎖です」
正確に言えば、カボチャ頭は叫んでいなかったのだ。カボチャ頭は叫んだつもりだったが、その声はサリエスの呪詛で声になっていなかったのだ。
『声を封じて鎖で拘束……鎖拘束プレイってワードしか浮かばなかったわ、ゴメン』
「その実況はどうなんですか?」
リダンの実況に空からツッコミ返したサリエスの手には、ビー玉から生成した2つ目の闇の鎖が握られていた。
「私、知ってるわ。キャンプ場では先ず自力で食材を調達するって」
何ともワイルドなニコリネのキャンプの認識に、誰もツッコまなかったのだろうか。
「そろそろ、皆が狩ってくれたカボチャを収穫しましょう」
ツッコまなかったのかな。ワイルドハント、だし。食べる気満々だったし。
「今日も一日、ご安全に! ――特種用途車輌出動!」
ニコリネが告げると同時に、ざぁっと強い風が吹く。何処からか赤い花びらが飛んできて風に舞い、集まっていく。
それはさながら花の幕。風が収まり幕が上がれば、そこには――車がいた。やや大型の屋根のあるトラックと言う風ではある。
『んん? トラック――とはちょっと違うみたいね? それ何?』
「集塵車よ」
実況のリダンの声に、ニコリネが笑顔で返す。
集塵車。
もう少し噛み砕いて言えば、ゴミ収集に使われる車、である。
『まさかのゴミ扱いー!?』
カボチャ頭達から上がる驚愕の声。
「あらやだ。ゴミ扱いはしないわ。食材として、じゃんじゃん収穫させて貰うから」
にこやかに告げたニコリネは、集塵車の自動操縦をセットすると、自身は後部の足掛け部分にひらりと飛び乗った。
「この乗り方、してみたかったのよねぇ」
下が川原の砂利故に少し揺れる集塵車にしっかりと掴まって、ニコリネは集塵車後部のスイッチをポチッと押した。
ウィーンと音を立てて、開く集塵車の扉。
「ニコリネ姉ちゃんスゲー! 俺も乗せて!」
その動きと、ニコリネの乗り方に、通が興奮気味に目を輝かせる。
「さきに収穫しちゃいましょうね。通くんみたいにカボチャから下が気になる人もいるみたいだから、分別機能をオンにしておいたわよ」
「おし。それじゃどんどん行くよ!」
笑顔で告げたニコリネに頷いて、通は倒れたカボチャ頭をひっ掴んで、集塵車に向かって投げ込んだ。
「――この場は、狩り終わりっすね」
ぺしんっと最後のカボチャ頭を猫パンチで集塵車に投げ込んだ物九郎が、人の姿に戻っていく。
「皆お疲れー。ぶっちゃけ、アタシは思った以上に暇だったわ」
片手を上げて、リダンが集塵車の周りに歩いてきた。
「浴衣の効果を確かめらるまでもなかったのは、少し残念ねぇ」
リダンが仲間たちの浴衣に仕込んだ仕掛け。
それは、浴衣の模様にあった。
それはただの刺繍ではなく、ゴートリック・ファウストによる、見たものの脳と五感を狂わせる特殊な催眠模様。
今回、リダンは味覚と嗅覚、そして美的感覚を狂わせる催眠を仕込んでいた。
ワイルドハントと交戦したカボチャ頭達は、今頃は料理に関する感覚が狂っていた筈である。普通の料理をヤバイと感じるようになっていた筈である。
カボチャ頭達が、生きていたら。
ワイルドハントの何恥じぬ狩りっぷりに、カボチャ頭にそんな余裕がある筈もない。
「まあいいわ。前線に出るのは、アタシのガラじゃないし」
見ただけで、戦う前に勝負を決めるのがリダンの戦い方。
それ故に、今回はその効果を実感する前に、決着が着いていた。
「私もね。カボチャが車を襲って来るかと思ってたわ」
集塵車を停止させながら、ニコリネも少し残念そうに息を吐いた。
「悪い子はシャッター棒の先っちょで、ほじくってあげようと思ってたのよ?」
「ほじったら、後で食べにくいんじゃない?」
刃についたカボチャの欠片を落としながら、つかさがニコリネに告げる。
ともあれ、ワイルドハントの1つ目の狩りは、大成功である。
大成功
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ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】
努力の末にメシマズになってしまうのならばまだ許容しよう
だが敢えて食材を弄ぶような真似は許されぬと知るがいい
行くぞ、うさみよ
だが、食材になった分は後に少し取って置いた方が良いかも知れぬな
双剣、抜刀
【時計の針は無慈悲に刻む】、発動
うさみのUCと息を合わせ(る努力を最大限尽くし)て
怪人達の頭部を狙って鋭い斬撃を繰り出し切り刻もう
ついでに「傷口をえぐる」でカボチャの種を取っ払い
後で食べ易いように下準備をしておくとするか
ああ、案の定うさみがつまみ食いをしていると顔を覆う
まあ、食えと言われれば一口程度…
だが待て、あーんは待て、人目があるのだぞ少しは気を遣え!
…(ぱくり)
榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
お前ら雑かーー!!
あといちいちちゃんと味見してるとか真面目か!
貴重な食材を無駄にする行為、ゆ る さ ん!
大体世の中には満足に食事が出来ない子供達が沢山(うんぬん)
というわけで俺がお前らを美味しく料理して残さず食ってやる!
【かくせいのうさみっちスピリッツ】で
半数はさむらいっちゆたんぽ
もう半数はまほみっちゆたんぽを複製!
さむらいっちが狙うはもちろん頭部
スパパパーンと角切りや薄切りにしていくぜ!
まほみっちは敵の炎を水の属性魔法で消火したり
火の魔法でカボチャ頭をこんがり焼いてみたり
焼いたカボチャを合間にこっそり一口
お、程良い甘みが良い感じ!
ニコも食ってみろ!(あーん)
御剣・誉
京杜(f17071)と
すげぇ、メシマズ料理で召喚される鮭ってどんなだ!?(わくわく
エリンギはそんな顔するなよ
面白そうじゃん?
相変わらず京杜は発想が主夫だなぁ
でも京杜がやる気なのはいいことだ
よかったなーエリンギ
おい、オレのも作ってくれよな!?
オレたちも材料調達の協力はするかー
剣を構え南瓜頭たちに殴り込み…じゃなかった斬り込んでいくぞ
悪いがオレたちのために食材を分けろ!
あ、悪いと思ってないのバレた?
このカボチャ食えるかな?
南瓜頭から食材を奪ったら京杜にパス!
ほら、これ使えるんじゃね?
え?このキノコは食えないの?
なーんだ(ポイっ
なんか戦ったら腹減ってきたな
ちょうどいいや
京杜、何でもいいから早くくれ!
姫城・京杜
誉(f11407)と!
料理なら大得意だ!(どやぁ
UDCなんてしないぞ、俺の料理は超美味いからな!(またどやぁ
って、材料を冒涜するとか許せねェな
今、材料の価格も高騰してるってのによ…!(主夫
誉、まずはカボチャ頭ぶっ飛ばして材料調達だな!
美味い料理作るぞ、エリンギ!(可愛さにデレ
焔紅葉で南瓜切刻み、食材にしてやるぞ!
下拵えするべく【紅の創造】で包丁とスプーン(種取り)とタッパー準備
敵の攻撃は、天来の焔で盾受けしシールドバッシュ見舞ったり
焔連ね握る拳でぶん殴って大人しくさせる
って、そのキノコ、何か見た目からやばくね!?
嫌な予感しかしねェ…!!
おう任せろ、俺の料理の腕は伊達じゃねェぞ!(手早く下拵え
●お久しぶり
「「「「あ」」」」
見覚えのある顔とばったり鉢合わせた4人の猟兵の声が、重なった。
「おー! お前達も来たのか」
「こんにゃく藩以来だな」
指定席な銀髪の上に乗った榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)と、頭の上に仔竜を乗せた御剣・誉(焼肉王子・f11407)が顔を見合わせる。
「この様な場所で――と言っている場合でもないな。半々でいいかな?」
「ああ、そうみてェだ。いいぜ」
ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)と姫城・京杜(紅い焔神・f17071)は共に頷き、同じ方向に向き直る。
視線の先ではカボチャ頭の最後の集団が、なんかしていた。
『へい、カボチャ納豆!』
『その辺のキノコのミントポン酢和え!』
『『うわマッズ!!!』』
メシマズ料理を少しでも増やそうって魂胆である。
続々と集まる猟兵。それに反比例して、数を減らしていくジャック・オ・ランタン。
風前の灯と追い込まれ、最後の悪あがき。
火を使うのは諦めたのだろう。切ったり、和えたり、混ぜたり、超頑張って混ぜたり、でどうにかしてる雑――お手軽メシマズ儀式である。
「お前ら雑かーー!!」
そんな光景に、うさみっちは思わずニコの頭から飛び出していた。
「そんな状況でもいちいち、ちゃんと味見してるとか真面目か!」
真面目にメシマズッてる連中に、ツッコミ入れずにはいられなかったのだ。
「世の中には、満足に食事が出来ない子供達が沢山いるんだぞ。お前達がメシマズしたその一皿で、フェアリー何人分になると思ってやがる!」
『それがトリック・オア・トリート』
『メシマズだってトリートと言えるだろう!』
『ここで賞味期限切れた牛乳使った抹茶カボチャフラペチーノっぽいもの完成!』
「よし殺るぞ、うさみ」
開き直り続けるカボチャ頭が作ってしまった、うさみっちの好きな抹茶を冒涜かのようなものが、ニコの視線をいつも以上に鋭くさせる。
「材料の価格も高騰してるってのに……! どこもトリートじゃねェだろ!」」
「京杜は相変わらず発想が主夫だなぁ」
『ぎゃう』
所帯じみた事を言う京杜の切実な声を後ろで聞きながら、誉と頭の上のえりんぎは、ここだけ、のほほんとしていた。
●さむらいとまほうと時計針
「命が宿ったゆたんぽの本気! 喰らえー!!」
うさみっちの背後に、ずらりと浮かび上がるうさみっちゆたんぽ。
半分は刀を持ったさむらいっち。
半分はとんがり帽子に杖を持ったまほみっち。
合わせた数は50を超える。
これぞ、うさみっちゆたんぽシリーズを複製させる、ゆたんぽ業の1つ。かくせいのうさみっちスピリッツ!
『なんだこのちっこい群れ』
『このくらいなら、我輩達の魂の炎で』
その数を見たカボチャ頭達の周りに、青白い鬼火が灯る。
「貴重な食材を無駄にする行為! ゆ る さ ん! 焼いてしまえ、まほみっち!」
ぴぃーっ!
まほみっち軍団の杖から、何か台所で聞くような甲高い音が鳴り響き、直後放たれた杖のサイズに見合わない猛る炎が、鬼火を飲み込みカボチャを焼いていく。
『思った以上に熱い!?』
「まだまだ行くぜ、さむらいっち!」
炎の熱さに悶えるカボチャ頭に、炎の中からさむらいっちが襲いかかった。
飛行機雲のようなものが白い軌跡を残したさむいらいっちの刀が、カボチャ頭の外皮を削り落としていく。
うさみっちゆたんぽシリーズの中は、うさみっちが燃えている怒りに呼応するかのようにホッカホカの熱々になっているようだ。
『何だこの攻撃は。まるでカボチャの皮を剥くような――はっ!?』
『まさか、我輩達、ここでも食材扱い?』
「おうとも。このうさみっち様がお前らを美味しく料理して残さず食ってやる! まずは薄切りじゃー!」
うさみっちの声に、さむらいっちの目がギラリと輝いた。
ゆたんぽが無軌道に飛び交う鉄火場を、ニコが慣れた様子で進み行く。
「努力の末にメシマズになってしまうのならばまだ許容しよう」
流れ弾ながらぬ流れさむらいっちを首だけ動かして避けながら、ニコが両手でスラリと引き抜いたのは、時計の針を模した時刻みの双剣。
「だが、敢えて食材を弄ぶような真似は、許されぬと知るがいい」
炎のルーンを宿した長針と、氷のルーンを宿した短針。大小二振りの切っ先を、ニコは照準を合わせるようにカボチャ達に向けていく。
「過去は過去に、未来は我らに」
瞬間、炎と氷の刃が閃いた。
軌跡も残さぬ斬撃の数は、時計の盤に刻まれた数と同じ。
普段のニコは、この業を自身の二刀で傷を重ねる形で振るう。だが、此度はさむらいっちが付けた傷を抉る形で刃を振るっていた。
――否、それだけにあらず。
「時計の針は止まらぬのだよ」
時は止まらない。故に時計も針を止めず、時を刻み続ける。
切っ先を向けた敵がいる限り、終わらない斬撃。
ルースレス・クロックワークス――時計の針は無慈悲に刻む。
ニコが足を止めた時には、2人の周りには倒れたカボチャ頭以外いなかった。
「よし。ここからは、角切りだ」
「待てうさみよ。先に種を取ってから――」
ニコの静止は間に合わず、うさみっちの指示を受けたさむらいっちが、今度は文字通り縦横無尽に、縦と横にカボチャを斬っていく。
「くっ。俺が急ぐしかないようだな!」
小さな刀と時計の針の剣が、競い合うように振るわれる。
(「種を取ったら、後で食べやすいように下準備をして――あ、うさみに食材になった分は後に取っておいた方が良いかも知れんと、早めに言っておかねばな」)
慣れた手付きで抉るように種を取りながら、ニコは胸中で呟く。
だが――。
「おー、ニコ! このカボチャうめーぞ!」
その声に振り向いたニコが見たものは、まほみっちが杖から放つで角切りにしたカボチャを直火焼きにして頬張っているうさみっちの姿だった。
「ああ、案の定うさみがつまみ食いをしている――!」
手遅れだったと、ニコが思わず顔を手で覆う
「ニコも食ってみろ! 程良い甘みが良い感じだ!」
そんなニコの鼻腔をくすぐる、香ばしくも甘い匂い。
「ほれ、あーん!」
「待て、あーんは待て。人目があるのだぞ少しは気を遣え!」
「人目? ねーじゃん」
周りを憚り慌てたニコだが、うさみっちがあっさりと告げる。他の猟兵は少し離れたところで戦っているし、すぐ近くにいる2人も忙しそうだ。
「……」
根負けしたニコが、口を開いた。
●神の焔と王子の剣
「来たれ、我が神の手に」
京杜が掲げた手から、焔と紅葉が立ち昇る。
これこそが、京杜の神の力の一端――紅の創造。
煌々と燃え上がる紅焔の中から、京杜の手が2つのものを取り出した。
紅い焔を宿した包丁と、種取りスプーンを。
(「おお……京杜がやる気だ。料理を」)
「よかったなーエリンギ。今日はきっと美味いのが食えるぞ」
『ぎゃーっ♪』
美味の予感に、誉とエリンギが嬉しそうに顔を見合わせる。
「美味い料理作ってやるぞ、エリンギ!」
『ぎゃっ♪』
振り向いた京杜は尾と翼をパタつかせるエリンギにデレっとしそうになる表情をなんとか引き締めて、その下の誉の顔を見た。
「おい、オレのも作ってくれよな!?」
「誉、まずはカボチャ頭ぶっ飛ばして材料調達だ」
さらっとねだる誉に告げて、京杜はカボチャ頭に向かっていく。
「しゃーないな。オレたちも材料調達の協力はするかー」
その後ろで、誉も荊の剣を引き抜いた。
ガキン。
焔を纏った包丁と、無骨な斧がぶつかり、鈍いを立てる。
「無駄な抵抗をするな。食材にして、美味しく頂いてやるから」
『そう言われて抵抗しないカボチャがいると思うのかね!?』
包丁を手に詰め寄る京杜を、カボチャ頭が斧で必死に食い止めていた。
このままでは埒が明かない。
「そうか――なら仕方ないな」
京杜は包丁を一度置くと、両手の白手袋を嵌め直した。
「魚だって生きが良すぎると叩いて締めるしな。ぶん殴って大人しくさせるか」
イイ笑顔で告げる京杜が握りしめた拳から、焔の如き闘志が燃え上がる。
焔の中に紅葉も舞い上がるそれは、天来の焔。
本来は盾として使う焔であり、守護神の矜持の形。
『ちょ、ちょっと待――』
「くらえ。これが神の拳だ!」
メシマズ儀式を行うカボチャ頭相手に京杜が護りたかったのは、日々の食卓か。
紅蓮の軌跡を描いて振り上げた拳の一撃が、めぎょっとカボチャ頭を殴り飛ばして天井に叩きつけた。
「そこで見てろよ、エリンギ」
頭の上からエリンギを降ろした誉は、刃の先端を自分の指先に滑らせる。
朱い雫が剣の刃にポタリと落ちた。
ぱぁっと、誉の持つ剣が強い輝きを放ち――光が収まった時、誉の手にあるのは、御伽話に出てくる伝説の剣になっていた。
「そうだな……よし! カボチャカリバーだ!」
淡い光に包まれた剣に即興で名前をつけ、誉はカボチャ頭に飛びかかる。
「悪いがオレたちのために食材を分けろ!」
誉の血で強化されたカボチャカリバーの刃は、カボチャの鬼火も斧も物ともせずに切り裂いて、カボチャ頭を一撃で斬り伏せた。
『お、お主――全く悪いと思ってないだろう』
「あ、バレたか」
仲間をやられた事よりも、誉の迷いの無さにカボチャ頭が慄く。
「イイから食材よこせ! もっと美味い料理にしてやるから!」
キリッとした顔で言い放ち、誉は開き直ってカボチャ頭に斬りかかっていった。
「えーと……ネギ、バター、キャベツ、トマト……野菜ばっかだな」
肉が足りないと言いながら、誉はカボチャ頭達が残した食材の中から、まだ使えそうなものをかき集めていた。
「お。でっかいキノコ!」
とても大きく食べ応えのありそうなキノコを見つけ、誉が目を輝かせてそれを取る。
「ほら、これ使えるんじゃね?」
「ん。どれどれ……」
神の力で創った包丁で切り開いたカボチャから、種取りスプーンでせっせと種を取っていた京杜は、そちらに目をやり――さぁっと顔色を変えた。悪い方に。
「このキノコ、見た目からやばいじゃねェか! 嫌な予感しかしねェ…!!」
「えー? このキノコは食えないの? 大きくて食いでありそうなのに」
京杜の反応が予想外だったのか、誉は意外そうに朱色に白い斑点が出ているキノコを森へポイッと返す。
『ぎゃう』
と、誉のズボンの裾を何かが引っ張った。
誉が視線を向ければ、何かを訴えるようなエリンギが見上げている。
「そうだよな。オレも戦ったら腹減った。京杜、何でもいいから早く作ってくれ!」
『ぎゃっぷい!』
下処理を終えたばかりの京杜に、誉とエリンギがご飯を要求する。
「任せろ、俺の料理の腕は伊達じゃねェぞ!」
休む暇もない流れに、しかし京杜は笑顔でマヨネーズを手にとった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『クィーンレッドサーモン』
|
POW : 対捕食者用パワー(ノーブルレッド)
全身を【体内のタンパク質を分解して放つ真紅の輝き】で覆い、自身の【ここで喰われてなるものか、と言う意志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 鮭泳法(ワイルドスイム)
【滝も登れそうな激しい突進】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 女王は食物連鎖も利用する(ヒグマレンタル)
自身の【体内の筋子の幾つか】を代償に、【ヒグマ型眷属】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い爪や牙、巨躯】で戦う。
イラスト:井渡
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ルシル・フューラー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●鮭の女王、来たる
カボチャ。カボチャ。カボチャ。
あっちを見ても、こっちを見てもカボチャ。
一戦終えた猟兵達の周りには、大量のカボチャが残されていた。
ジャック・オ・ランタンを倒してしばらくしたら、カボチャが残ったのだ。
「このカボチャは――食べられるのか?」
「美味いぜー!」
「うむ……良いカボチャだ」
何処か不安げにカボチャを突く炊飯器の猟兵に、もう既に焼いて食べてたちっこいピンクと銀髪の猟兵が返す。
「しかしこのカボチャの量……新手のちゃんちゃん焼きでも作れと?」
この後に得られそうな食材を思い浮かべて、テレビウムの猟兵が呟く。
「持ち帰っても良いかもしれないです。これからの時期に南瓜料理は良いですから」
食べて美味しいならと、長い黒髪の猟兵も頷いた。
集まった猟兵達の脇には、集塵車も止まっていた。
その中にも、どっさりカボチャが溜まっている。
「あの……分別した胴体は一体どこへ」
「んー? 気にしないほうが良いんじゃない?」
黒翼の猟兵に、花売りが曖昧な笑みを浮かべて返す。
「首から下なんか、最初からなかった、いいね? ここに入ってるのは『オブリビオンだったモノ』です!」
水晶体を浮かべた少年が、集塵車をペチペチ叩いて力説。
その心は、オブリビオンだったモノと書いて、ただのカボチャと読む。
まあ、世の中知らないほうがいい事もあるよね。
それに、そんな事を気にしている場合でもない。
鮭が――来る。
不完全に終わったとは言え、メシマズ儀式――アン・デリシャス・クッキングは行われていたのだ。
ぞぶり。ぞわり。
突如、不自然に川が盛り上がる。
何かが、川の流れに逆らって出てこようとしている?
ザパァッ!
その勢いで川を割って、巨大な魚影が飛び出した。
ぱんぱんに膨れた真っ赤な魚体。尖った上顎。立派な――立派過ぎるベニザケだ。何しろ、集塵車よりも大きいのだから。
クィーンレッドサーモン。
儀式でもなんでも、切欠があれば乗っかって躯の海から遡上してくるという魚類UDC怪物である。
「メシマズ料理で召喚される鮭ってどんなだろうと思ってたけど――美味そうだな?」
仔龍は不安そうに『ぎゃう』と声を上げるが、黒髪の猟兵は鮭の威容、もとい脂の乗り具合に顔を輝かせている。
そんな猟兵は、彼1人ではなかった。
『…………』
何かを感じたのか、クィーンレッドサーモンは、そんな猟兵たちから距離を取るように少しだけふわりと浮き上がった。
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2章。ついに鮭が来ました。
クィーンレッドサーモンとのボス戦です。
場所は引き続き無人のキャンプ場一帯。
鮭は平然と空中を泳いでいますが、特に飛行技能はなくても攻撃する分には問題ないありません。
猟兵ならそのくらい、気合とかそんな感じのサムシングで届きますって。
鮭の上を取ったり、ピンポイントで部位を狙ったりするのなら、それなりの何かがあった方が良いです。
最後に、成否に直接関係しない部分ですが。
この2章での戦い方で、3章に鮭が残すものの美味しさが変わります。
美味しく食べたいのなら、美味しいものが残るように戦ってみて下さい。
プレイングは公開時点から受付です。
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黎・飛藍
ルイ(f18236)が同伴
…鮭だな
何時だったか。身を隠していた時に、魚を釣ろうとした川で鮭の獲り方を見せて貰ったことがある
そいつはすごい毛むくじゃらの巨体だったが、今も元気にしているんだろうか
【睡蓮は微睡む】で、短刀以外を花弁に変え鮭と眷属の視界を奪う
眷属が山で見た奴に似ているが、眷属だから違うんだろう
視界を奪ったなら。鮭の身を短刀で削ぐ
…で、ルイ。お前は冷気を操作できるんだったな
魚は鮮度が大事だ。かと言って此処で直ぐに食えるわけでもない
だから、ルイは削げた切り身を瞬間冷凍させろ
地に落ちても直ぐ拾えば3秒ルールで問題ない
アニサキス? よく噛めば大丈夫だ
小夜啼・ルイ
飛藍(f16744)に同伴
いや、何で鮭が空飛んでるんだよ
UDCだから常識なんざ通用しないのは判っているけどさ
つーかフェイ、山で見たそれ…熊じゃねぇのか…?
は? 瞬間…冷凍…?
オレの能力はその為にある訳じゃねーよ!!
それに鮭は鮭でも、UDCだろうが!
アニサキスだの3秒ルールだの、そういう問題じゃねぇんだよ!
ダメだUDCを食材認定したフェイを止められねぇ…
ああチクショウ、ヤケだヤケ!!
【Congelatio】で鮭も熊も。冷たさや痛みを感じさせる前に全部凍らせてやる
ついでに自分の感情すら凍らせる
削いだ切り身? 知るか勝手に凍ってるだろ
もう何もかも凍っちまえ
鵜飼・章
うわあ立派な鮭
僕はなぜか魚類に遭遇する運命なんだね…
美味しく焼いたりするのは苦手
そこでピグマリオン効果
所謂『褒めて伸ばす』だ
鵜飼流人間奥義の一つ
『褒め殺し』の力を見るといい
指定UCで小学生のぼくを呼ぶ
【動物と話す/言いくるめ/催眠術】で
彼女の仔鮭に錯覚させよう
ママかっこいい!がんばれ!
ニンゲンに負けるな!
親子愛的なサムシングで美味しくなあれ
僕も泳ぎを観察して突進を【見切り】つつ
彼女に美味しくなる暗示をかけるよ
なんて若々しい肌艶だ
脂が乗って美味しくて
皮も香ばしく焼けるんだろうな
いい女からはいい出汁が出る
美しいきみ、なぜ人(?)妻なの…
針の【投擲】で極力傷つけず攻撃
後でせめて綺麗に捌いてあげよう…
黒木・摩那
さぁ、いよいよ本番です。
鮭です。特大です。
鮭と言ったら、やっぱりイクラですね。
そして、切り身と合わせて、鮭親子丼とか。
今回はスイハンジャーさんも来てらっしゃるから、
ご飯については心配なし。
あとは本体だけですね。
消去法でいくと、切り身とイクラがある本体に
攻撃を当てると、中がぐしゃぐしゃになりそうだから、
頭を中心に攻撃です。
あと、体の筋子を持っていく、ヒグマ型眷属は絶対許しません!
排除します。
では、攻撃です。
ルーンソードにUC【偃月招雷】を付与して帯電。
攻撃力をUPします【属性攻撃】。
ヒグマには【衝撃波】【先制攻撃】【なぎ払い】で
容赦なく攻めていきます。
七瀬・麗治
ついに現れたな。アレが、鮭の邪神か!
……皆、あの腹を見ろ。卵でパンパンじゃないか。
あれだけ筋子が詰まっていれば、素早くは動けまい。
なんて美味そうな……いや、禍々しい。
さっそく皆で調理……いや、討伐を開始するぞ!
【寄生融合兵器】発動。体内のUDC寄生体が黒剣を融合し、
<武器改造>で片刃の巨大な「黒包丁」に形状変化させる。
「よし、これで料理に適した形になった」
命中率を強化し、まずは<鎧砕き>の要領で鮭の鱗を丹念に落とす。
ある程度鱗を落としたら、今度はえらの部分を狙って切り込みを入れ、
血抜きをしてやろう。
「血抜きは魚の心臓が止まる前に、速やかにやる……! だったよな!?」
ルーチェ・アズロ
【ワイルドハント】WIZ
普段は憎しみ満点で戦っているが今回はあくまで調理というテンションで挑む/よーし。んじゃあやっちまうかー。秋の鮭や鱒はうめえぞー
UCで空間を蹴り飛翔。UCと【怪力】でいい具合に切り身にできればいいなあと
反撃を喰らえば【気合】【激痛耐性】で我慢する
んだよ食材なんだから暴れんなって
【情報収集】で戦闘中なのにスマホ操作して「どういう料理がいいか」とかを見てみる「ガーリックホイル焼き美味そうだな…」
農作業歌をご機嫌に口ずさみながら【薙ぎ払い】で南瓜を収穫「あたし野菜あんま好きじゃねえけど他の奴は食うだろ」
「秋だなー。うめえもんいっぱいだなー…」
「だからあばれんなって食材」
ヨム・キプール
【ワイルドハント】●POW // つまりこれは、グレートオーシャン……でしたっけ? それの予行演習みたいなものですね! 赤の女王だか白の女王だかハートの女王だか知りませんが、大人しく饗宴を彩りやがれです! // ・第35ワイハン丸に同乗し、狙撃衛星を射出。他のメンバーの飛び道具が外れても反射、再度狙撃できる位置へと配置。加えて、遠隔センサーによって鮭や援軍の熊の動向をモニター。鮭の体温(≒鮮度や味)が落ちつつある場合は、速やかに乗員へと連絡。演算能力は支援へと傾注することで、援軍の熊にも飛び道具が最大限反射できるよう、未来位置修正角や弾道の算定を常に行い、最高効率のパターンを検索し続ける。
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
●WIZ
応とも、俺たちゃワイルドハント
なんとなりゃ海だって往く狩猟団
……では、あるワケですけども……コレもう狩猟団ってゆーか漁団ですわな
ま、イイですわ
俺めのコトは漁団長と呼べ
・第35ワイハン丸に同乗、空のサーモンへ仲間と共に接近
・左腕にアイシクルドライブを装填しつつ(属性攻撃・氷+力溜め)、ヒグマの布陣を観察
・【野生の勘】で敵勢が接近して来る順序/緩急を読み、船を守る形で片端から肉弾戦迎撃、左拳を当て動作封じを掛けて回る
・ヒグマが粗方対処済、かつ、船から【ダッシュ+ジャンプ】で突出したとしてサーモンへ左拳を届かせられる距離まで詰められていたら、サーモン狙いでアイシクルドライブ
雷陣・通
【ワイルドハント】
空が海になる……こりゃすげえぜ
俺は……俺は……海の男、漁師になるぜ!
第35ワイハン丸に同乗
船の舳先に身を乗り出せば構えるのは右手一本
狙うのは紅鮭ただ一匹
この身に力は足りないが船と鮭のスピードが合わされば威力はチェーンソーだって上回る
鮭が接近するタイミングを【見切り】【カウンター】で【先制攻撃】を奪い
『手刀』一閃!
返す刀で【二回攻撃】で三枚おろしだ!!
「来いよ! しっかり骨から身をそいでやる!」
失敗?
勿論あるさ
/だけど、それを恐れないのが海の男ってもんだろ?
ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
空中を泳ぐ鮭を獲るなら、漁師も空に行かないと
全てを振り絞ってFloral Fallalの封印解除!
飛行船と漁船を融合させた空飛ぶサケ釣り漁船「第35ワイハン丸」と姿を変え、仲間を乗せて漁場へ
渋くて雄々しい船影……演歌が似合いそうねぇ(歌う)
空中では操舵に集中!
移動の足場に、攻撃の足掛かりに、防御時は盾となって皆を支援
敵の挙措を具に観察しつつ、好機を見出したら幅寄せするの
これだけ距離を詰めたら精確に捌ける筈
私達が通った後にはペンペン草も生えないし、鮭なら骨も残さない
嵐の行軍、いってらっしゃーい!
皆が切り分けてくれた切身は急いで船内の冷凍室へ。鮮度大事!
ふふ、美味しそう(じゅる)
リダン・ムグルエギ
【ワイルドハント】
はい、漁団長
ご注文の白地に黒い猫足マークな大漁旗よ
後半戦も船上から実況撮影と洒落込むわ
つかささんは青、男性陣は白、ニコは淡い桜色
これならギリ通じるわね
アタシはコードの効果を乗せ
大声で仲間の衣装がいかに優れていてキレイか
そして
『ドギツイ赤は流行らないわ』
『女なら淡い色か寒色系が今のトレンドだわ』と敵に聞こえる大声で実況するわ
単純な話よ
赤が流行らぬブームを仕掛け
クイーンに真紅になるのを躊躇させるの
動画には挑発のためのコメントだよ!のテロップ入れるわ
タンパク質を分解したエネルギーが消費されなければ
旨味成分として内部に留まると予測するわ
攻撃が来そうと思ったらとーる君の後ろに退避
今よ!
荒谷・つかさ
【ワイルドハント】
猟も漁も、糧とする命を刈り取るという意味では似たような物よね。
さあ、切り身と筋子と熊肉、全部残さず狩りつくすわよ!
引き続き【荒谷流抜刀術・神薙の刃】発動
ニコリネの用意してくれた空飛ぶ船を活用し、一気呵成に攻め立てる
特に上を取られた時にはしっかり筋子の位置を見切り、真下から腹を掻っ捌いて筋子を取りに行くわ
回収は任せるわよ、ニコリネ
もし熊への対処に手が要るようなら私も向かうわ
一般人相手なら恐るべき猛獣でしょうけれど、私に……いいえ、私達ワイルドハントにかかれば単なる獲物でしかない
手際よく頭を斬り落とし、臭みが出る前に血抜きするわよ
これも回収よろしく頼むわね
無明・緤
口の中がかなしい…早く口直ししたい
獲物を【スナイパー】で狙い定め、人形の右腕を【誘導弾】として発射
おれはその上に乗って空中の鮭へ突撃、爪を立てて取り付くぜ
ネコまっしぐら!ニャーン!
魚体にしがみつけば突進も怖くない
振り落とされた場合は【逃げ足】で身を隠せる遮蔽物や
防御手段持ってそうな猟兵の下へ駆け込み安全確保を図る
力を使い果たして鮭がホッチャレになる前に
人形駆動用の丈夫な糸を包丁代わりに【操縦】して
鱗や皮を剥ぎ取り【鎧無視攻撃】、一口サイズに捌いてやる!
流石に生食はやだな…
(寄生虫問題)(蘇る冒涜的味わい)(暫く生魚食べたくない)
UC【キャットビーム】で焼き鮭にするか
いい感じに熱を通した所で一口
パルピ・ペルポル
遅ればせながら美味しい鮭とカボチャが食べられると聞いて。
えっ?首から下?私は何も知らないわー。
ともあれ、鮮度が落ちないうちにさっさと〆てさっさと調理しますか。
大丈夫よ、筋子用の漬けダレ(醤油と味醂と酒を煮詰めたもの)は用意してきたから!
雨紡ぎの風糸を捕獲網モードで展開して、火事場のなんとやらも併用して拘束するわよ。
あとは穢れを知らぬ薔薇の蕾を絡みつかせて血抜きね。
糸と薔薇を上手くつかってウロコも落としておけるといいわねぇ。
そうしたら腹かっさばいて筋子取り出しましょ。ヒグマに食わせる前に。
突進は様子が見えたら距離をとって回避するけど、すぐそばなら逆に鮭にしがみついたほうがいいかしらねぇ。
フィーナ・ステラガーデン
へははねふりょい!
(かぼちゃを大量に頬張っているので大変お聞き苦しいですが
「出たわね魚類!」と彼女は叫んでおります)
・・・ごくん!(かぼちゃ)飲んだわ!
前菜は終わりよ!さっそくメインディッシュといくわ!
出来るかぎり仲間と連携して戦うわ!
また強い意志をもって泳ぎ回ってるわね!?
魚を捕るなら追い込み漁法よ!追い込み漁法!
【属性攻撃】で炎なり爆破なりでばこんばこん空に向かって撃つわよ!
仲間が攻撃を用意している方向になるべく移動させていくわ!
早くても動きが予想できれば当てることが出来るというあれよ!
合図で仲間猟兵を促して、私も【全力魔法、高速詠唱】UCをぶちあててやるわ!
(アレンジアドリブ連携歓迎!)
ルイーグ・ソイル
いやあ、見事なカボチャ収穫だったっす(指グッ!
…メシマズ儀式、成功しちゃったっすか…うーん。鮭…鮭っすねえ…でっかいっすねえ…何人前くらいになるんすかねえ…楽しみっすね!(炊きたての新米の薫りに腹が鳴る)
力技で攻めていくっすよ!手持ちの棘付きメイスで頭を狙って叩きに行くっす!
相手のSPD/WIZ攻撃に対してはUC【シンフォニック・キュア】を使って、全体の攻撃力が落ちないように配慮しつつ、脳天直撃レッツゴー!っす!!
御剣・誉
京杜(f17071)と
すっげー!!!めっちゃ立派な鮭じゃん!!
秋鮭は美味いもんなぁ
やったな、エリンギ!
京杜が張り切ってるから美味いモン食えるぞー!
あれ?もしかして、クマ?
やっべ、ちょっとそれは想定外だったぜ!?
オレたちの大事な筋子を食うなー!?
大慌てで『頼れる愉快なお友達』たちを召喚
筋子とか、鮭の美味しそうな部位を守らせるために向かわせる
それは!オレの!醤油漬けになる筋子だー!!!
ん?そういえばエリンギは何を食いたいんだ?
え?鮭を食べたことがない?
そうだっけ?
んー、コイツは何でも美味そうだし
京杜オススメ料理を貰えばいいんじゃね?
もちろん、オレの分もあるよな?
ないならエリンギの分を食う!(ドヤッ
姫城・京杜
誉(f11407)と
お、活きのいい立派な紅鮭だな!
何度も言うが俺は料理大得意だ!(どやぁ
エリンギ、美味いモンもうちょい待ってな(デレ
美味しくいただけるよう倒すぞ!(超気合
【紅の創造】で出刃包丁召喚、焔紅葉とで巧みに紅鮭捌く
三枚におろして切り身にするぞ
てかクィーンってことはメスか?
筋子も醤油漬けにできるな!(わくそわ
って、まさかのクマ!?
紅鮭やクマ暴れるなら天来の焔で盾受けシールドバッシュで吹き飛ばし
拳でぶん殴って大人しくさせるぞ
エリンギはどんな鮭料理食べたい?(デレデレ
熊肉も美味いみたいだぞ(ちゃっかり
誉のも…あんだけ鮭デカけりゃあるんじゃねェかな…多分
って、エリンギの取るのはやめたげてェ!
榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
まぁUDCアースじゃ魚類が空を飛ぶなんてよくあるぜ!
前に鰯が空飛んでたこともあったし!
うわクマ呼びやがった!!
こいつらをまともに相手にしてたら時間かかっちまう!
というわけでミッションスタート!
俺がこのクマどもを引きつけるから
その間にニコは鮭本体をガッとやるのだー!
【すうこうなるうさみっちセンジュカンノン】発動!
クマの目の前で仏っちがシュバババと激しく動き回り
更に俺がその後ろからばずーかで攻撃し
注意を引くことでクマをニコの所に行かせないようにするぜ!
最後は任せろ!
さむらいっちゆたんぽの刀を俺自身が持ち
【料理】の腕前を活かして美味い部分を捌く!
ハラミ!筋子!かま!
滝舘・穂刈
うむ、なんと美味そうな紅鮭か!
焼き鮭にしても、ソテーにしてもよし
万能なりし、紅鮭よ
神妙に白米のお供につけぇい!
しかし浮いていると杓文字が届かないな…
よし、ではそこらにあった七輪で炭をおこし
メシマズ残骸を炊いて有効活用しよう
パタパタと団扇であおいて煙を上空に送り
鮭が降りてくるのをまつぞ
おりてきたら杓文字の一撃を加えよう
「案ずるな、白米の友よ。
必ずやお前を最高のおかずに仕上げてみせよう――!」
『杓文字再盛勧進帳』にてチェストだ!
「オカワリイタダキマス!」
いつもはオカワリイカガデスカと言うのだが
今回はな
おかわりいただくのが俺たちだからな
ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】
鮭とは…宙を泳ぐものであったのか…
其れにかの猛獣である羆さえも使役するとは…
実情はどうなのだろう、「動物と話す」力で
駄目元で鮭に問うてみるか
ではうさみよ、手筈通りに
そう言って【時計の針は逆さに回る】を発動させ天に舞い上がり
うさみが羆を相手取っている隙を突いて
宙を泳ぐ鮭本体の更に上を取ってから急降下で襲い掛かる
威力を増した「Bloom Star」での殴打を喰らえ
思い切り地に叩き付けてやろう
ついでに「2回攻撃」で羆も纏めて殴り倒そう
ただ殴り付けただけでは後で美味しく食べる事が出来ぬ
うさみよ、良きように頼むぞ
料理の腕はお前の方が上だからな
しかし良く斬れる刀である事だ…
霧島・ニュイ
カボチャが手に入り満足
あぁぁああ、美味しそうだね……
見事な紅色、こってりと脂が乗ってる…(じゅる)
こんなに大きいと食べ応えあるよね…
食材その2-!メインディッシュ鮭!
でも大物だから抵抗凄いよね、まーなんとかなるって!
【咎人封じ】でロープを投げる
その能力を封じさせて貰うよー
【2回攻撃】で攻撃の数を増やし、出来るだけ近づいて【スナイパー】頭を狙って弾丸を撃ち込む
味が落ちないように気を付ける
特にハラミは傷つけない
【第六感】を使いながら美味しさ残るように模索
あとは【言いくるめ】で「君は美味しい、とっても美味しいよー」って暗示かければ美味しくなるよね!
食べられてなるものかって意思?イキが良くていいねー!
高柳・零
WIZ
あの儀式で出て来た鮭…なんか不味そうな気がしてきました。
敵が筋子を出して来たら、ヒグマを庇って前に立ち、筋子をインターセプトしてユーベルジャックを発動します。
ヒグマは怒るでしょうが、代償が減っているので攻撃力はそんなに出ないはず。
盾とオーラで受けつつ、問いかけます。
「ヒグマさん、本当に筋子だけで満足ですか?大きな鮭の肉があそこにあるのに?」
そして、画面に鮭を映して相手よりも多くの筋子を差し出します。
「こちらに付けば、この筋子に加えて鮭本体も食べていいですよ。良い取引だと思いませんか?」
後の攻撃はヒグマさん達に任せます。
アドリブ、絡み歓迎です。
草野・千秋
宙に浮かぶクイーンレッドサーモンですか
(不思議そうな目で見て)
なんで浮いてるんでしょう鮭が
その名の通り、鮭の女王
筋子……いくらが美味しそうですね
こう、ふりかけ感覚でドバーっといきたいです、いくら
卵があるぶん、身は味が劣るのでしょうか?
でもサーモン親子丼食べたいです!
UCで飛翔能力を得つつ戦闘力増強
勇気をもってこの戦いに挑む
ついでに武器改造で氷の属性攻撃つけてルイベですよ!
2回攻撃、スナイパー、一斉射撃、早業で攻撃
あまり鮭の身を壊さないように鮭の急所を狙いつつ
筋子のある部分は攻撃しない
きらきら輝くいくら丼のために!
敵の攻撃は戦闘知識、第六感でかわし
激痛耐性、盾受けで耐える
冒険仲間はひたすらかばう
●気にしてはいけない
川から巨大なサーモンが出てきて、空に浮かんだ。
ありのままに言葉にすると何を言っているのか判らなくなりそうな状況に、猟兵達が見せた反応は様々だった。
「へははねふりゅい!」
フィーナ・ステラガーデンが何と言っていたのか、判った人の方が少ないだろう。
何でそんな事になっていたのかと言うと、フィーナは口いっぱいにホクホクのカボチャを頬張っている所だったからである。
リスかハムスターを連想しそうな感じだ。
しっとりとした肉厚のカボチャは、そうすぐには飲み込めない。
なお、フィーナの名誉の為に翻訳しておくと『出たわね魚類!』と言っていたので、状況はちゃんと飲み込んでいた。
「うわあ立派な鮭」
サーモンの身体から滴り落ちる水滴に当たらないよう下がりながら、鵜飼・章は平然とその事実を口にしていた。表情一つ変えちゃいない。
「僕はなぜか魚類に遭遇する運命なんだね……」
章の脳裏に浮かんでは消える、サメとか鯖とか鰯とか。
それらをひっくるめて章は運命の一言で片付けてみせたが、そうやって状況を受け入れられる猟兵ばかりではない。
「いや、何で鮭が空飛んでるんだよ」
サーモンの真っ赤なお腹を見上げ、小夜啼・ルイはツッコむように呟いていた。誰にツッコんでいるのだろうと思いながら。
「UDCだから常識なんざ通用しないのは判っているけどさ……」
答えの出ない事をブツブツと呟きながら、ルイはふと、隣の黎・飛藍がさっきから妙に静かだと気づく。
「なあ、フェイ。静かだが、状況は判ってるよな?」
「…………鮭だな」
ぼんやりとあまりにもありのままの事実を返す飛藍に、ルイの肩がガクリと落ちた。
「そう。鮭なんですよ」
二人のやり取りが聞こえた草野・千秋が、ぽつりと声を上げる。
「なんで浮いてるんでしょう鮭が」
千秋は、宙に浮かぶサーモンを不思議そうに見上げていた。
「そうさな……鮭とは……宙を泳ぐものであったのか……」
目の前で起きている現象を今ひとつ飲み込みきれない様子で、ニコ・ベルクシュタインも頭上を仰いでいる。
サーモンだろうがなんだろうが、普通、魚類は水の中にいるものだ。まあ中には一時的に陸生をするものもいなくはないが、空には浮かない。
だがここは――UDCアースだ。
「まぁUDCアースじゃ魚類が空を飛ぶなんて、よくあるぜ!」
故に、榎・うさみっちがあっさりと告げる。
「前に鰯が空飛んでたこともあったし!」
「そう言えばそんな事も……」
うさみがそう言うなら、とニコも魚類が飛ぶという珍事を受け入れた。
「鮭……鮭っすねえ……メシマズ儀式、成功しちゃったっすか……うーん」
ルイーグ・ソイルは、空中のサーモンを見上げて少し残念そうに呟いていた。
「そうなんですよね。あの儀式で出てきた鮭……なんですよね」
同じくサーモンが浮かぶ空を見上げて、高柳・零も溜息を吐くように溢す。
零のモニターに浮かんだ表情は『><』となっていた。
潰したばかりのメシマズ儀式。
目撃したおかしな料理の数々を思い出すと、あれを頭上のサーモンが直接食べたわけではないにせよ――思ってしまったのだ。何か不味そう、だと。
「ま、出てきてしまった以上、切り替えて行くっす!」
そんな時、ルイーグは組んでいた腕を解いて声を上げる。
その瞳には迷いがなく――むしろ期待の色があった。
(「あれ? もしかして――」)
そして、零は気づいて口を噤んだ。気づいてしまった。
他の多くの猟兵は、あのサーモンを――美味しい食材としか見ていないのだと。
●自分に正直になろう
「アレが、鮭の邪神か。いや、怪物の方か?」
まあどちらでも構わんか、と七瀬・麗治は浮かんだ疑問をあっさりと手放した。
そんな事より大事な事がある。
「……皆、あの腹を見ろ。卵でパンパンじゃないか」
麗治が指差したのは、ぷっくりぱんぱんなサーモンの腹。
中に何かがたっぷり詰まっているのは、特別魚類に詳しくなくても判る。
「なんて美味そうな……いや、禍々しい」
麗治は思わず出た本音を言い直すが、その必要は多分なかった。
「すげー! めっちゃ立派な鮭じゃん!!」
「活きのいい立派な紅鮭だな!」
御剣・誉も姫城・京杜も、ただただ、食材としてサーモンに目を輝かせている。
「これは料理のし甲斐があるな……腕が鳴る」
「やったな、エリンギ! また京杜が張り切ってるから美味いモン食えるぞー!」
『ぎゃぎゃっ』
得意な料理の腕の見せ所だと、口元に笑みが浮かべた京杜の表情に、誉とエリンギが無邪気に喜ぶ。
戦いの方に腕を鳴らして下さい。
「どう料理するかですか。鮭と言ったら、やっぱりイクラですね」
笑みを浮かべた黒木・摩那も、サーモンのお腹に――正確には、その中にあるであろう魚卵、イクラに注目していたのだから。
「切り身と合わせて、鮭親子丼とか……最高じゃないですか?」
「卵があると、身の味は落ちると聞いた事がありますが……」
心なしか瞳が輝いている様な摩那の言葉に、千秋が首を傾げる。
「でも、あれだけ特大なんです。大丈夫そうじゃないですか」
「見事な紅色だよ。きっと、こってりと脂が乗ってるよ」
千秋に返した摩那の言葉に同調したのは、霧島・ニュイである。
「あんなに大きいと食べ応えもあるよね……あぁぁああ、美味しそう」
ニュイの声は、何処か恍惚としている風すらある色だった。
カボチャがたっぷり手に入ってニュイが感じていた満足は、空に浮かんでいるサーモンの巨体に吹っ飛んでいるようだ。
「それに、今回はスイハンジャーさんも来てらっしゃるから。ご飯については心配なし、ですよね」
「うむ。任せて貰おう!」
摩那から話を振られた滝舘・穂刈の炊飯器が、力強く上下に動く。
「なんと美味そうな紅鮭か! あれに合う白米を炊くのが、今から楽しみだ!」
穂刈の炊飯器内――もとい脳内には、焼き鮭、ソテー、フライ、イクラ、などなど様々な鮭の料理が浮かんでは消えていた。
「そう言う事なら……いくら、ふりかけ感覚でドバーっといきたいです。サーモンの身も乗せて、親子丼も食べたいです!」
いつしか、千秋の中からも、鮭が浮かぶ事に対する疑問は消えていた。
「筋子用の漬けダレ、用意してきたわよ!」
そこに声を上げたのは、小さな猟兵。
美味しい鮭とカボチャが食べられると聞いて駆けつけたフェアリー、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)である。
そう。あれは、美味しい食材。
「食うべし……早くあれを食うべし。食わせろ!」
無明・緤のサーモンを見る目も、餌を狙う獣のそれである。
緤の瞳は黒目が大きく見開かれて、ギラギラとした欲求が浮かんでいた。
そこまで食欲を隠しきれていないのも、理由がある。
(「口の中がかなしい……早く口直ししたい」)
緤の口の中は、まだ前のカボチャ頭戦で食したかなしさが拭えていなかったのだ。
一刻も早く、美味しいものを口にしたい緤だった。
「よし。さっそく皆で調理……いや、討伐を開始するぞ!」
この様子なら食材扱いを隠すことは無いと、開き直った麗治が声高に告げる。
「そうね! 鮮度が落ちない内にさっさと〆て、さっさと調理しますか」
パルピもこの空気にあっさり馴染んで、調理する気満々である。
「そうね。前菜は終わりよ! さっさとメインディッシュといくわ!」
もきゅもきゅしていたカボチャごっくんと飲み込んで、口元も拭いたフィーナがビシッとサーモンを指差し高らかに告げた。
「万能なりし、紅鮭よ。神妙に白米のお供につけぇい!」
どう料理してやろうか――そんな期待を炊きたてご飯の香りに乗せて。
穂刈は杓文字をビシッと掲げて言い放つ。
2人の声と――猟兵達の自分を見る視線に気圧されるように、サーモンはまた少し上空へスゥッと上昇していく。
「待てー! 食材その2ー!」
『!?』
オブラートに全く包んでないニュイの声に、サーモンは更に上昇していった。
ニュイ自身には聞こえていなかったが、動物会話を持ってる猟兵には『いきなり食材扱いってどういう事!?』と驚くサーモンの思念的なものが届いていたとか。
●魚が空を泳ぐなら、船も飛べるさ
一方、その頃。
「空が海になる……こりゃすげえぜ」
一塊に集まったワイルドハントの猟兵達の中で、雷陣・通は始まる空中戦の予感に、武者震いのようなものを感じていた。
「よー、来たぞ」
そこに加わる、新たな声と姿。巨大な剣を抱えたルーチェ・アズロ(血錆の絆と呪い・f00219)である。
「秋だなー。でっけえ鮭だなー。うめえもんいっぱいだなー……」
ワイルドハントの仲間から何と聞いているのか。ルーチェも来るなりお空に浮かぶサーモンを、食材扱いであった。
「で、どーするんだ、あれ?」
「空中を泳ぐ鮭を獲るなら、漁師も空に行かないとね」
ルーチェの疑問に答えたのは、ニコリネ・ユーリカであった。
「応とも、俺たちゃワイルドハント。なんとなりゃ海だって空だって往く狩猟団」
金瞳を爛々と輝かせ、白斑・物九郎がそれに頷く。
「つーことで、頼みまさぁ」
物九郎に促され、ニコリネはひとつ頷き息を吸う。
「Fabulous? Fully Acknowledged Broadcast? Both sound good!」
そして、高らかに歌うようにそれを唱えた。
直後、ニコリネが移動販売に使っている車――Floral Fallalが変形し始めた。まずタイヤがどっかに消えて、バンパーが変形し、開いたトランクも変形し。
ものの数秒で『Floral Fallal』の形は、車体の面影の無い形に――幾つものプロペラが付いた船になっていた。
車が。船に。変形したのである。
車輌の概念を超えるどころの話ではない。質量保存とかそう言う類も軽々と超えてった埒外変形。
「空飛ぶサケ釣り漁船『第35ワイハン丸』よ!」
まさかの飛空漁船。
新ジャンルの乗り物だろうか。
これだけの埒外変形となると、代償とした『車検費用、保険料金、板金代金』が結構な額になっていそうだが――。
「空飛ぶサケ釣り漁船『第35ワイハン丸』よ!」
なんて笑顔で船の名前を決めているニコリネのお財布は、大丈夫なんだろうか。
「渋くて雄々しい船影……演歌が似合いそうねぇ」
自分で変形させた船の形で浮かんできた演歌のメロディを、ニコリネは満足そうに口ずさみだす。
「今更なんですけども……コレもう狩猟団ってゆーか漁団ですわな」
車の面影のない『第35ワイハン丸』を見上げ、流石に呆気に取られた様子で物九郎が口を開く。
「ま、イイですわ。俺めのコトは漁団長と呼べ」
「はい、漁団長」
いつもと替えた物九郎の肩書を早々に呼びながら、リダン・ムグルエギが何か長いものを差し出す。先に巻かれた布を広げれば――それは旗だ。
「ご注文の白地に黒い猫足マークな大漁旗よ」
リダンが今作ってくれました。
小さいながらも1つのファッションブランドを立ち上げているリダンだ。材料と時間さえあれば、即興で旗を作るくらいわけない。
「じゃ、後は船上から実況撮影と洒落込ませて貰うわね」
やるべき事はやったと、リダンはさっさと漁船に乗り込んだ。
「漁船ですか。つまりこれは、グレートオーシャン……でしたっけ? それの予行演習みたいなものですね!」
どっかの信長さんが口走ったと言う謎の地名と思しきものを思い浮かべながら、ヨム・キプールも、続いて漁船に乗り込む。
「猟も漁も、糧とする命を刈り取るという意味では似たような物よね」
物九郎が船の舳先に立って広げた黒い猫足印の大漁旗を眺めながら、荒谷・つかさも漁船に乗り込む。
「そんじゃまぁ――ワイハン丸、出港でさぁ!」
「おお! 俺は……俺は……海の男、漁師になるぜ!」
「切り身も筋子も、全部残さず狩りつくすわよ!」
物九郎の上げた声に、通とつかさが唱和する。
そして――『第35ワイハン丸』はふわりと浮かび上がった。
●サーモン、早くもピンチだったので
自身に食欲の滾った視線を向けて来る猟兵達。
そして、何か唐突に現れて向かってくる空飛ぶ船。
この状況で余裕でいられるとしたら、相当な大物ではなかろうか。残念ながら、クィーンレッドサーモンは、そんな余裕は抱かなかったようだ。
ポポポンっ。
サーモンのお腹から幾つかの筋子が飛び出した。
あさっての方へ向かった筋子のサイズは一抱えのボール程。その中に幾つのイクラが入っているのだろうか。と言っても、通常のイクラよりは大きそうだが――。
『グオォォ!』
『ガォゥ!』
そこに響く獣の雄叫び。飛び出す赤毛の巨体。
筋子の香りに誘われたヒグマ眷属が、筋子をキャッチし貪る。
『『ブフォー!』』
そしてヒグマ達は、猟兵達に向かって牙を剥き出し咆哮を上げた。
「……あ」
それを見た飛藍が、そんな気の抜けた声を上げた。
「どしたよ?」
「ああ……何時だったか。身を隠していた時に、魚を釣ろうとした川で鮭の獲り方を見せて貰ったことがあるんだが」
気づいたルイに促され、飛藍は記憶を探り話を続ける。
「そいつはすごい毛むくじゃらの巨体でな」
「……んん?」
何にやら飛藍の言う特徴に合う存在が目の前にいる気がして、ルイは眉を潜める。
「フェイ。山で見たそれ……熊じゃねぇのか……?」
「ああ。俺も眷属が山で見た奴に似ていると思っていたんだ。だが、眷属だからな。違うんだろう」
今も元気にしているんだろうか、などと呟く飛藍に、ルイはツッコミも忘れて只、絶句するしかなかった。
「うわクマ呼びやがった!!」
「しかもあの毛色は羆だな。かの猛獣である羆さえも使役するとは……ふむ」
赤毛の巨体に慄くうさみっちの隣で、ニコは冷静にクマの種類を分析する。
ヒグマを使役するサーモン――食物連鎖に逆らった現象の実情が気になったニコは、腕を組んだまま頭上のサーモンに意識を集中してみた。
『ほーっほっほっほっ! さあ、契約に従ってキリキリ働きなさいっ!』
「……ヒグマも大変だな……」
知らなかった方が良かった気がする現実に、ニコは秋空を遠い目で見上げた。
●まずは獲物を逃さない事が大事です
「うーむ。あの紅鮭、羆を盾に高度を稼ごうと言うつもりらしいな」
ヒグマでちょっとした騒ぎになっている内に、気づけばまた上昇していたサーモンを見上げて、穂刈が腕を組み呟く。
頑張れば、杓文字だって届かない事は無いだろうが――。
「逃げようったって、そうはいかないわよ!」
思案する穂刈の近くで、フィーナが声を上げて杖を掲げる。
パァッと杖が淡く赤い輝きを放ち、空を泳ぐサーモンに向かって火球が放たれた。
「あれだけ筋子が詰まっていれば、素早くは動けまい」
遠距離攻撃で――と言いかけた麗治の視線の先で、サーモンがすいーっと空を泳いでフィーナの火球は何も無い空にドンッと爆ぜる。
「い、意外と俊敏だな」
「構いやしないわ! どんどん行くわよ!」
予想が外れて麗治が眉根を寄せる一方で、フィーナは更に杖に魔力を込める。
充分な魔力を練る工程を省いて、代わりに数を増やす。
(「魚を捕るなら追い込み漁法よ! 追い込み漁法!」)
フィーナが立て続けに放つ火球は、ヅドンッ、ドカンッとサーモンが泳ぐ空に爆音を響かせ続けて、その行動範囲を制限していた。
「成程、追い込みですか――そう言うことなら」
フィーナが地上から撃ち続けている火球の意図を、『第35ワイハン丸』の中からヨムが察していた。
「起動、プログラム・胎児(ゴーレム)。リモートセンサー作動開始」
そしてヨムは、真理――エメトを発動した。
ヨムの周囲に、何かが現れる。
それは目には見えない、光を透過する何かが。
「イミテーションUDCを生成します――行け」
ヨムは生成した不可視の水晶体を、サーモンの周りへと配置する。
水晶体は、遠隔攻撃の支援に特化した、中継と反射性能を持っている。
その能力は、遠隔攻撃であれば対象は選ばない。
ドゴンッ!
ヨムの水晶体がフィーナの火球を、爆発の影響範囲がより限定されるよう、計算された角度で跳ね返し始める。
数秒後には、フィーナの火球の爆発が、その炎の中にサーモンを飲み込んだ。
「俺がこのクマどもを引きつける。その間にニコは鮭本体をガッとやるのだー!」
「うさみよ、手筈通りに頼むぞ」
うさみっちとニコが、背中合わせに別々の相手に向き直る。
うさみっちはヒグマ眷属に。
ニコは頭上のサーモンに。
「百年の時を経て――今此処に甦れ、我が力の根源よ!」
高らかに告げたニコの姿が、赤い光に包まれた。
時計の針は逆さに回る――リメンバランス・クロックワークス
ニコの本体である懐中時計に最も多くの魔力を込めた人物の姿を借りる術。
頭には赤いトンガリ帽子を被り、箒に跨り赤いマントを翻して空に舞い上がるニコの姿は、まさに赤い魔法使い。
「うさみっち様だぞ! あがめたてまつれ!!」
一方、うさみっちはヒグマに向けて選ぶった顔で告げていた。
うさみっちとヒグマの体格差たるや、一口で喰われてしまいかねない。
普通に考えれば、そんな体格差で勝負になる筈もない。
だが――うさみっちは猟兵だ。埒外の存在だ。
ピカーッ!
突如、うさみっちの背後から後光が指した。(※ハイカラさんではありません)
『がうっ!?』
ヒグマの目がくらむほどの光の中から、何かが飛び出す。
「――」
悟りを開いた様な顔で空中で座禅を組んだそれは、仏様うさみっちであった。光り輝くその姿は、小さな仏像と言えなくもないかも知れない。
『うがっ!』
叩き落とそうとヒグマが腕を振り上げた瞬間、仏様うさみっちがシュバッと動いた。
シュッ! シュシュシュシュッ!
仏様うさみっちの腕が幾つもあるように見えるのは、残像だろうか。素早くも奇怪な動きが、ヒグマを戸惑わせる。
これぞ、すうこうなるうさみっちセンジュカンノン。
(「うおー! がんばれ、仏様うさみっち! そして早くしろニコ!!!」)
とは言え、これ敵を戸惑わせる以上の能力――要するに攻撃性能がまったくなかったりする技なので。
いざとなったら撃てるようにうさみっちバズーカを構えながら、うさみっちの内心はいつヒグマにディフェンスを破られはしないかと、あまり穏やかではないのだった。
「あの夜空へ、今!」
川砂利を蹴って跳び上がった千秋が、重力に逆らって空へ飛んでいく。
今の千秋はサイボーグに改造箇所を露わにし、全身をナノマシンで覆っている。
「空を飛べるのは、お前だけではないのですよ」
勇気を胸に、千秋は月まで届けと空を駆ける。
メシマズ儀式が何の邪魔もされずに完遂し、サーモンが万全の状態で召喚されていたとしたら、千秋がどれだけの勇気を振り絞っても届かなかったかもしれない。
だが、今のサーモンならば――千秋とサーモンの距離がぐんぐん縮んでいく。
(「イクラのある腹部は避けるべき――となると、狙うは頭部と背中!」)
間違って筋子を、イクラを傷つけないよう、千秋は狙いを絞るべくサーモンの背びれの方へ向かう。
背びれが見えた所で、千秋は青き断罪の剣『gladius damanatorius』を引き抜く。
「これで、ルイベにしてあげましょう!」
氷の魔力を宿した蒼銀の剣を振るい、千秋は斬ると同時に冷気で切り口を凍らせる。
「逃しませんよ! きらきら輝くいくら丼のために!」
上昇を続けるサーモンに追いすがり、千秋は剣を振るい続ける。
●駆け引き
「丁度いいものがあったぞ!」
その間に、穂刈はあるものを見つけていた。
「その辺にあった七輪だ!」
その辺ってどの辺だ。
七輪って、そこら辺に落ちてるものでは無い気がするが。
そんな周囲の視線を気づいているのかいないのか、穂刈は屈んで七輪に炭を入れて火を熾していた。
「そして、これだ」
炭火の上に網を置いて、穂刈が並べたのは、回収したメシマズ料理の残骸。
もわん。
もわわわっ。
紫色のいかにも危なそうな煙が立ち昇る。
「さあ、降りてこい!!」
儀式に使われたメシマズの臭いで、穂刈はサーモンを誘おうというのだ。
鮭が生まれた川に戻れるのは、臭いを嗅ぎ分けていると言う説もある。届いた臭いに反応する可能性は少なくない。
「お前をこの世界に導いた臭いだ!」
煙は色に違わぬ悪臭を放っていたが、そんな煙が周囲の猟兵に向かわないよう、穂刈は気をつけていた。
臭いは炊きたてご飯の香りで中和を試み、手はバタバタと全力で団扇を仰いで七輪に風を送る事で火勢を強め、紫煙を空のみに向けている。
まあ、空は空で、他の猟兵もいるが――地上ほどはたまらず拡散するだろう。
「こ、この臭いは……かなしい味が蘇る……」
それでも僅かに漂う臭いだけで、緤が悶絶しかかっていたりした。
「成程。まずは獲物を逃さない――檻を作るのか」
穂刈の行為の意図を察した章が、ぽんと手を打つ。
「僕は美味しく焼いたりするのは苦手だけど、そう言うことなら手伝える。鵜飼流人間奥義の一つ、『褒め殺し』の力を見るといい」
人間奥義って何。
そんな周囲の視線を気づいているのかいないのか、章は虚ろな目でサーモンが火球を避けている空を見上げて。
「僕は居ない。ぼくはここにいる――≪量子力学的多元宇宙論の証明≫」
唱えた章の隣には、章をそのまま小さくしたような少年が突如現れていた。
それもその筈。
現れたそれは、ユーベルコードで作り上げた少年期の鵜飼章なのだから。
『ママー! 置いていかないでー!』
小学生章がいきなりふわりと浮かんだ以上に、まだ声変わり前らしい高めの声で告げた内容は、割と爆弾発言の部類だった。
『ママ、ぼくがおうえんするから、がんばって! ニンゲンに負けるな!』
小学生章は、サーモンに自分を仔鮭と思い込ませようと言うのだ。
『ママ、ぼくにかっこいいところみせて!』
催眠術を乗せた声で、言いくるめてしまおうと言うのである。
(「親子愛的なサムシングで美味しくなあれ」)
そんな章の願望も混ざっていたけれど。
(「あのサーモンがクィーンって事は――仔鮭は、プリンスか?」)
サーモンを真似たように身をくねくねしながら呼びかける小学生章を見上げて、誉はそんな事を考えていた。
プリンス。つまり王子。
「――焼鮭王子?」
誉の中に、謎の親近感が生まれた。
とりあえずまだ、焼き鮭になってない。いずれなりそうだけど。
その時だ。
サーモンが上昇をピタリと止めたかと思えば、くるりと反転したのは。
鼻に付く紫煙とママと喚ぶ小さなナニカ。
それらは、サーモンに地上へ突進する決心をさせていた。
「急にその気になったわね!」
『――! ――!』
フィーナが連続で放った火球が、空で爆ぜる。その爆炎の中に、サーモンは声無き咆哮を上げながら突っ込んだ。まるで構う様子も見せずに炎に突っ込んで、突き抜けた。
ズドドドンッと
『――! ――!』
全身をくねらせて炎を掻き分けるその動きは、滝の如き急流を登る鮭の泳ぎ方に、良く似ている。
「ちっ。止ま――くぅっ!」
サーモンの急降下を止めようと、千秋がその進路に回り込む。
仲間を守るのはヒーローの誇り。
『murus lamentarius』の盾を構えた千秋とサーモンがぶつかり――ふっ飛ばされた千秋が地上に叩きつけられる。
だが、サーモンもその身体1匹分以上は、空に押し戻されていた。
千秋が押し戻したその距離の価値は、ニコリネに『第35ワイハン丸』の舵を切ってサーモンの正面に回り込むだけの時間。
「このまま真っ直ぐでいいのね?」
「うん。頼む、ニコリネ姉ちゃん。このまま突っ込んで!」
それを頼んだのは、確認するニコリネの声に背中で答えた通だ。
ワイハン丸の舳先から身を乗り出して、通は五指を揃えた右手を構える。
サーモンと通とでは、あまりにも身体のサイズが違いすぎる。ましてや右手一本で挑もうなどと、常識的に考えれば無謀の一言。
(「だけど、そう言うのを恐れないのが海の男ってもんだろ?」)
「今よっ!」
胸中で己を鼓舞する通の背を、リダンの合図が押した。
左腕一本で身体を支え、通は限界まで身を乗り出しながら右腕を振るった。
手刀一閃。
されど刃と迸った雷光の軌跡は2つ。
「重っ……」
サーモン自身の泳ぐ速度と、『第35ワイハン丸』の速度。
2つの速度を相乗させて乗せた、チェーンソーも超えると信じて通が振るった手刀の一撃は、その右腕を痺れさせていた。
サーモンの動きは止まらない。斬れなかったのか。
そう見えた。
この時は、まだ。
爆炎でも激突でも止まらないサーモン。
「ふむ。このままの速度では鮭の身が――」
その勢いに、地上では京杜が。
「――あの速度で地上に突っ込むと身が傷つきそうっすね」
空中では物九郎が、それぞれ同じ懸念を抱いていた。
「ザ・レフトハンド――【属性攻撃・氷】ON」
降っていくサーモンへ、物九郎が左腕を伸ばす。放たれた氷の力をヨムの水晶体が反射することで射程を伸ばす。
サーモンに届いた冷気が、体表面に霜を纏わせ動きを幾らか鈍らせた。
「止まって貰うぞ。お前は美味しく頂けるように倒すと決めたのだ」
迫りくるサーモンを見上げ、京杜が手袋を嵌め直す。
「主にエリンギのために!」
京杜が振り上げた拳から立ち昇る、天来の焔。
「大人しくしなさい!」
立ち昇る焔の盾の周りを飛びながら、パルピが何かを広げるような動作をした。
パルピが放ったのは、網だ。
雨紡ぎの風糸――蜘蛛の糸より細く、されど強度も備えた透明な糸で組んだ網を、パルピは京杜の焔の盾に重ねるように広げたのだ。
その2つが最後のワンクッション。
最終的にかなり勢いを減じたサーモンの巨体が、それでも地面にぶつかりはしたが。
猟兵達の間を駆け抜けたのは、穂刈の七輪を打ち壊し、小学生章を吹っ飛ばす程度の衝撃だけだった。
●反撃クッキング
サーモンの急降下で、もうもうと土煙が立ち込める。
「凄い衝撃っすねぇ。でっかい鮭っすねえ」
その中から、しみじみしたルイーグの声が聞こえる。
「何人前くらいになるんすかねえ」
さして大声でもないのに、ルイーグの声は戦場に妙に響いていた。
何故ならそれは――歌だから。
即興でメロディもふわふわと定まって無いけれど、それはルイーグの歌声だった。
「見事に収穫したカボチャもあって、炊きたてのご飯もある!」
ならば、先に嗅いだ炊きたてご飯の香りと思い出して、ルイーグのお腹がぐぅと鳴ったのは伴奏と言えるだろうか。
「これで鮭を美味しくいただけない筈が無いっす! 楽しみっすね!」
音楽的とは言えないかも知れない。
食欲を前面に押し出したルイーズの歌声は、この場でこれ以上共感を得られる歌声は他に無いであろうというものだった。
その共感と食欲が、他の猟兵を奮い立たせる。
カタリ。
小さな音を立てて、人形が起き上がる。
緤の戦闘傀儡『法性』だ。
そして、緤の姿は――その無骨な右腕の上にいた。
「発射ー!」
弾丸の如く、撃ち出される傀儡の右腕。それをサーフィンのように乗りこなし、緤は傀儡の腕からサーモンの巨体へ飛び移った。
「ネコまっしぐら! ニャーン!」
シャキンッと爪を露わに、緤はサーモンの巨躯に飛びつく。
「こうしてしがみつけば突進も怖くない! もう離すもんか!」
緤がしっかりと爪を立てた痛みを感じたか、サーモンがぐねぐねと身を捩る。
次第にその身が、真紅の輝きを放ち出していた。
「イキが良くていいねー!」
真紅に輝く魚体を見上げ、ニュイがじゅるりと舌なめずり。
先の急降下からの突進にしても、あれだけの勢いで動けるということは元気な証。
ひいては美味の証。
「でもその動き、封じさせて貰うよー」
ニュイの手元で回転するロープがヒュンヒュンと音を立てる。投げ縄の要領で、ニュイはサーモン目掛けてロープを投げ放った。
罠の全てを当ててサーモンを完全に拘束するのは、恐らく難しい。
そう予測したニュイは、敢えてロープのみに絞っていた。
これが最も、サーモンを捉えやすいと思ったのだ。
「――今だっ!」
投げたロープの輪がサーモンの尾にかかった瞬間、ニュイはロープをぐっと引いた。キュッと締まったロープが、サーモンの尾を縛る。
『っ!?』
「もうひとーつ!」
間髪入れず、ニュイが2つ目のロープを重ねてギュッと締めた。
尾に巻き付いた感触を感じたか、サーモンが激しく尾を左右に振り出す。
「ほんっとうに……イキがいいねー!」
2本の縄でも気を抜くと千切られそうになる。
ニュイは縄が千切れたり緩んで拘束が解けないよう、サーモンの動きに合わせて縄も動くように、自身も半ば振り回されて左右に動く。
「大人しくしなさい!」
「うんうん、ナイスなイキだよ。君は美味しい、とっても美味しいよー」
そんな激しく動かざるを得ない中、ニュイはサーモンに声をかけ続けていた。
褒める事で、サーモンの身を美味しくさせようというのだ。
「大人しくしよう。若々しい肌艶が傷ついてしまうから」
そこに淡々とした章の声が響く。
声と同時に章が振るった両手から放たれた標本用の針が、ニュイがかけたロープをマチ針のようにサーモンに固定する形で突き刺さっていた。
「脂が乗って美味しくて、皮も香ばしく焼けるんだろうな」
「生で食べたって美味しいよねー」
章もニュイも、2人は直感で判っていた。お互いに同じことを考えて、サーモンに暗示をかけようとしていると。全ては、サーモンの美味しさを高めるため。
「いい女からはいい出汁が出る。美しいきみ、なぜ人(?)妻なの……」
(「わお。息子捏造しといて人妻扱いって、その発想はなかったなー」)
もっとも、足並みが揃ったのは僅かな時。
色々と飛ばす章に、ニュイは内心舌を巻いた辺りまでだった。
章とニュイの暗示は、サーモンの身を美味しくさせる為だった。
そして、同じ目的の為に手段を考えている猟兵がもう1人――漁船の中にいた。
(「ウチ以外で1人赤い格好がいたのは想定外だったけど――ま、ギリ通じるわね」)
胸中で呟くと、拡声器の受話器を手にとったリダンである。
『聞きなさい、鮭!』
第35ワイハン丸の拡声器から、リダンの声が響く。
『青は静謐さ、白は凛々しさ、桜色は可愛らしく――こういうのが優れていてキレイな色合いなのよ!』
ワイルドハントの仲間の服装の色を褒めるリダンは、意図的に赤を外していた。
その声が聞こえていないのか。
『ドギツイ赤は流行らないわ!』
紅の輝きを収めないサーモンに、リダンがきっぱりと言い放つ。
リダンの目的は、サーモンに体内のタンパク質を消耗させない事。
そのために、赤が流行らないブームを仕掛けているのだ。放送中の動画には『挑発のためのコメントだよ!』とテロップを入れておくのも忘れない。
一方、サーモンにとってはその真紅の輝きは、高貴なる紅。流行ではないからと、そう簡単に諦める色でもない。
『赤がダメではないけど、真紅は濃すぎよ。光るのはもっとやり過ぎよ。女なら淡い色か寒色系が今のトレンドだわ!』
デザイナーの話術が勝つか、女王の意地が勝つか。
『クィーンなら、お腹の中の卵の為にもトレンドに乗っときなさい!』
サーモンの動きがピタリと止まり、紅の輝きが消えていく。
他の猟兵の言葉にも乗っかって、サーモンの子持ち要素を刺激したリダンの勝ちだ。
「好機ね!」
船の舵を握るニコリネは、そのチャンスにすかさず漁船を幅寄せした。
「私達が通った後にはペンペン草も生えないし、鮭なら骨も残さない。嵐の行軍、いってらっしゃーい!」
ニコリネが船の舵を操り、動きを止めたサーモンの横付けした船の上には、ワイルドハントの面々が――獲物を狙う目で立っていた。
「赤の女王だか白の女王だかハートの女王だか知りませんが、大人しく饗宴を彩りやがれです!」
サーモンに飛びかかる仲間を支援しようと、ヨムは透明な狙撃水晶をサーモンの周りに再び展開した。
惜しむらくは、ワイルドハントの仲間の多くが近接主体だったことであろう。
一方、地上からも猟兵達がサーモンの周囲へと駆けつけていた。
サーモンの下、ではない。周囲だ。
サーモンの尾に結ばれた2本のロープ。
「チャンスを待った甲斐があったな」
「これでやっと、頭部を狙って攻撃出来ますね」
ひらりとロープに飛び乗って、穂刈と摩那がその上を登っていた。2人の後ろから、麗治もロープを駆け登っていく。
たった2本のロープでも、ピンと張っていればそれは、猟兵にとっては駆け登る事が出来る『道』となり得る。
「ちょっとくらい踏み外しても大丈夫よ! 補強しといたから!」
ロープの間には、パルピが雨紡ぎの風糸を幾重にも重ねて這わせていた。透明な防護ネットの様なものだ。尤もそれを支えているのは、パルピの火事場のなんとやらだが。
「来たれ、我が神の手に」
3人を見送りながら、京杜は手に紅い焔を集める。
紅の創造――ツクルカミノテ。
神の力で紅き焔は紅葉とともに、武器となる。
京杜の手に握られたのは、マグロ解体でよく見る長い包丁だった。
「それじゃ、捌いてくる。エリンギはどんな鮭料理食べたい?」
来たれ――と言っていた表情から一転デレッデレになって、京杜は誉の頭に乗っているエリンギに声をかける。
『ぎゃう?』
「え? 鮭を食べたことがない? そうだっけ?」
ちょっと困ったような仔竜の声に、誉も首を傾げた。
「んー、コイツは何でも美味そうだし、京杜がオススメ料理を作れるようにすればいいんじゃね? もちろん、オレの分もあるよな?」
なんとなく言わないと(意図的に)忘れられそうなので、誉は自分の分もしっかりと要求しておく。
「誉のもか……あんだけ鮭デカけりゃあるんじゃねェかな……多分。あ、誉は熊肉でもどうだ? 美味いらしいぞ」
「オレの鮭ないならエリンギの分を食う!」
焦らそうとわざと曖昧に言った京杜に、誉がキリッドヤッと迷わず返す。
「エリンギの取るのはやめたげてェ!?」
「オレがそうしないで済むように、頼んだぞー」
『ぎゃう!』
一瞬で悲壮な顔になった京杜を、誉がエリンギとともに見送っていた。
●まずは鱗落としから
「全力で行くぞ、寄生体よ!」
サーモンの身体に取り付いた麗治が、そこで片腕を掲げる。手にした黒剣を寄生体が腕に取り込んでいく。
寄生融合兵器――メルティッドウェポン。
寄生体と己が腕を犠牲に強力な武器と成す麗治の業。そこに黒剣の改造も加えれば、即興で作り上げられたのは片刃の巨大な黒包丁。
もう少し言うならば、やっぱりマグロの解体で見る様なやつに似ている。
そこに、京杜が色の違う同じ様なものを持って、サーモンの背に辿り着いた。
黒と紅。色も性質も違いはあれども、麗治と京杜が創った刃は似ている。
ならば、その用途も。
「まずはその鱗――叩いて落とす」
麗治は、巨大な黒包丁の峰をサーモンの身に這わせ、そのまま背中を駆け出した。
黒包丁の峰が、ゴリゴリと鱗を削ぎ落としていく。
「ならば反対側は俺が」
麗治の目的を察した京杜も、包丁の峰をサーモンに当てて走り出した。
ドンッ!
「っと!」
「うぉっと!?」
突如、サーモンが自身の身体を大きく揺らした。
ロープで地上と結ばれたとは言え、全く動けない訳ではない。サーモンは動ける範囲で動いて、何とか猟兵を振り落とそうとしていた。
「あらら。上を取られちゃったわね」
横付けしていた船を動かそうと、ニコリネが再び舵を取る。
「待って。このまま。此処がいいのよ」
ストップをかけたのは、つかさだ。
その目は、輝かなくても紅い、サーモンの腹を見上げている。
サーモンも腹を狙われている気配を感じたのか、ぐるんと逆さまに向きを変えて、腹側を空に向けようと――。
「舞い降りる者に裁かれるんだよ」
サーモンの上から、ぶっきらぼうな声が響く。
そこには、禍々しい全身甲冑が浮いていた。中にいるのは、ルーチェだ。
ルーチェは甲冑の力で空中を跳んで、サーモンの上を取る事に成功していた。振り上げた血錆に覆われた両手剣を――刃を立てずに鎬をぶつける向きで振り下ろす。
ベチーンッ!と痛そうな音が響いた。
『!? っ!?』
「んだよ、食材なんだから暴れんなって」
背中を痛烈に打たれた衝撃と、まだ残るその痛みに身を捩るサーモンに淡々と言いながら、ルーチェはスマホぽちぽちしているいた。
「お。このガーリックホイル焼き美味そうだな……」
この余裕っぷりである。
普段は憎しみを全開に戦うルーチェだが、今日は料理気分であった。
そんなルーチェとサーモンの下で、つかさが静かに深く息を吸い込んでいた。
両手には、既に鞘から抜いた大悪魔斬【暁】を構えている。
「ふっ」
短い呼気を吐いて、甲板を蹴ったつかさが刃を横薙ぎに一閃させた。
浅すぎてもいけない。刃を深く入れすぎてもいけない。
つかさが狙ったのは、通の手刀が通った後。
既に斬り着けられていた傷をなぞる、ギリギリの線を見極めた一閃。
ピッ――。
サーモンの腹部に斬撃の線が走る。そこに血が滲み――パッカリと切り開かれたサーモンの腹から、大量の筋子が降ってきた。
一緒に降って来た血と腸が降り注ぐも構わず、つかさは暁を鞘に収める。
「回収ー!」
物九郎の声が響いて、ニコリネとリダンを除いたワイルドハントの面々は総出で筋子を回収し、漁船の冷凍室へ入れていく。
それでも、幾つかの筋子は漁船からこぼれて地上へ落ちていった。
「ああ! こぼれてるこぼれてる! 勿体ない!」
こぼれた筋子をパルピが雨紡ぎの風糸の糸で受け止めるが、重量的には幾つでもいけても範囲的に全てに手が回らない。
少なくない数の筋子が、川原に落ちていった。
●猛獣、増える
『――!』
サーモンが上げる無音の咆哮。
それは筋子が落ちた事を知らせるものだった。
同時に、周囲の茂みに突如現れる薄い影。その色が次第にはっきりしてくる。
筋子によって召喚されそうなヒグマ眷属だ。
「これ以上、筋子を持っていく気ですか……?」
それを見た摩那が『緋月絢爛』を構える。刀身に浮かんだルーンが、輝きを放つ。
「NOMOREヒグマ、ですね。全力で排除します!」
ヒグマ眷属が動き出すよりも早く、摩那が振るった刃から衝撃派を放ち、容赦なくヒグマ達を薙ぎ払った。
「げ。ここに来てクマの追加かよ。やっべ、ちょっとそれは想定外だぜ!?」
ヒグマの気配が増えた事に気づき、誉が顔色を変える。
「オレたちの大事な筋子を、これ以上食うな!」
そして誉はキリッとした顔で、言い放った。
そこですか。そっちですか。
「壊れたら責任持って直してやるから――イクラ回収、手伝ってくれよな!」
ヒグマにイクラを渡すまいと、誉は眉毛と目鼻立ちがやたら濃いブタの貯金箱と、片耳が光になったからくり仕掛けのウサギを大群で喚び出した。
「頼むぞ、カルビJrとタピオカ! アレは!オレの!醤油漬けになる筋子だー!!!」
『ぎゃうぎゃう!』
自分も食べたいと言わんばかりに、誉の言葉にエリンギが鳴き声を重ねる。
そんなエリンギの鳴き声に押されるように、シュバッと散った彼らは、辺りに転がったイクラの半分近くをクマより先に誉の元へと回収せしめた。
イクラに届かなかったクマが、悲しげな瞳で消えていく。
それでも、ヒグマ眷属は少し増えてしまっていた。
「ぎゃー! クマ増えやがった!」
仏様うさみっちで頑張ってたうさみっちが、悲鳴じみた声を上げる。
「っ!」
空でそれに気づいたニコが、箒を急発進させた。
『その色――!』
サーモンの前を横切った瞬間、ニコは聞くともなしに聞いてしまった。
サーモンが自分に向ける、嫉妬の意念を。
(「同系統の色に反応したか?」)
加えて、さっきトレンドについてのあれこれがあったのも影響しているだろうが、今更色を変えられない。
ニコのこの姿は、ただ赤い魔法使いに変身するだけのものではないのだから。
空飛ぶ箒を操り、ニコはぐんぐん空を登っていく。
『!?』
驚くサーモンの更に上まで登ったところで、一転、急降下。
「思い切り地に叩きつけてやろう――くらえ、星を墜とすが一撃!」
急降下の勢いも乗せて、ニコは柊の杖『Bloom Star』をサーモンに叩きつけた。
『!?!?』
杖の見た目にそぐわぬ衝撃が、サーモンの巨体を揺らす。赤い魔法使いに変身することで『Bloom Star』の威力が強化されているのだ。
『がうっ!?』
そのまま地上近くまで急降下を続けたニコは、返す杖でうさみっちが食い止めていたヒグマを一撃で殴り倒した。
「これ以上はさせませんよ!」
追加のヒグマの前に、零が飛び出す。
零はずっと、サーモンが放つイクラを受け止め、ジャックしようとしていた。
問題だったのは、それ自体が攻撃ではなかったという事。
ならばとクマをかばおうとしても、無軌道に筋子が放出されてから、それを代償にヒグマ型眷属は喚び出される。
イクラが出た時点では、庇う相手もいなかったのだ。
(「予定と違うけど――やってみます!」)
イクラ受け止めように展開していたオーラをそのまま、零はヒグマに向き直る。
「ヒグマさん、本当に筋子だけで満足ですか?」
そして、ヒグマに向かって呼びかけた。
「大きな鮭の肉があそこにあるのに――っ!?」
ガァンッ、と鈍い音を立てて、零の身体が大きく後ろにふっ飛ばされる。
(「オーラを纏ったままでなければ、危なかったですね」)
ヒグマの力を思い知らされた零は、それでもヒグマに向かって再び声を上げた。
「一回でもイクラを受け止めれば、私もイクラを出すことが出来ます。加えて、こちらに付けば鮭本体も食べていいですよ」
零の顔のモニターに映るサーモンの映像。
『がぁぅっ!』
それを見たヒグマが、零に向かって突っ込んでくる。
「っ! 良い取引だと思いませんか?」
咄嗟に避けながら問いかける零を、ヒグマの爪が立て続けに襲う。
「っ! くっ! 取引、駄目ですかっ!?」
零は必死に呼びかけるが――どうにも、向ける言葉がヒグマに意味のあるものとして届いている風には思えなかった。
(「あれ――もしかしてこれって?」)
だが、ヒグマの攻撃を耐え続ける零の脳裏には、ある閃きが浮かんでいた。
そう。ヒグマの攻撃を耐えていたのだ。
つまり、防御していたのだ。
零の顔のモニターに映る、クマの映像。そこから飛び出したヒグマが、零を襲い続けていたヒグマとぶつかり合う。
『がうっ!?』
『がうっ!』
零の目の前で、ヒグマとヒグマの戦いが始まった。
「漁団長。あれ」
「ああ、ヒグマ増えちまってますな」
漁船の上で、つかさと物九郎が身を乗り出して下を見下ろし――そこにいるヒグマ眷属の数を確認すると、どちらからともなく頷いていた。
「こっちは任せまさぁ」
「任された。適当に捌いとく」
振り向きもせずに返すルーチェの声に背中を押され、物九郎とつかさは『第35ワイハン丸』の甲板からヒグマ眷属の前に飛び降りた。
「ザ・レフトハンド――【属性攻撃・氷】ON」
赤毛に覆われた巨体に、物九郎が左腕を向ける。
ほんの数秒で、ヒグマは全身が凍りついていた。
先はサーモンの巨大さと、彼我の距離で動きを鈍らせるに留まっていたが、ヒグマ眷属相手ならばこの通り。
抵抗する暇も与えない、氷の力。
触れるだけで生命の熱を奪う魔の左腕。
(「次はあれで、その次はあっち――その次はこっち」)
己の野生の勘に従って、物九郎はヒグマの間を駆け抜けては、魔の左腕をとんっと軽く触れて回るのだった。
「結構な大きさね」
少し離れた所に降りたつかさが、目の前のヒグマを見上げる。
普通の人であれば、恐るべき猛獣であろう。だが。
「私に……いいえ、私達ワイルドハントにかかれば単なる獲物でしかない」
つかさの手が大悪魔斬【暁】に伸びた次の瞬間、刃は鞘走っていた。
「我、神をも薙ぐ刃也……!」
剣圧の刃がヒグマの首を斬り落とす。
「さて。臭みが出る前に血抜きするわよ」
「こっちは冷凍でさぁ」
猟兵に戻った2人にとって、ヒグマすらも獲物であった。
●後は切るだけ
血抜き。それは釣りでも狩りでも大事な工程だ。
「血抜きは魚の心臓が止まる前に、速やかにやる……! だったよな!?」
エラの部分に黒包丁を差し込んで、麗治が血抜きを試みていた。
「部位はここで良かった筈だが……」
「おー、あってるぜ」
進まない刃に首を傾げる麗治に、漁船の上から声がかかる。
声の主は全身甲冑――の中にいるルーチェだ。
その甲冑は憎しみで編まれたもので、普段のルーチェは憎しみを全開に戦う事がほとんどなのだが。
今日は片手に鮭の料理方法から捌き方を検索してたスマホを握っていて、ちょっと戦闘技術も使った調理気分だ。
「ふつーの鮭なら片方で血抜きすりゃ充分みてーだが、この巨体だからなー。反対からもやっとくか」
言うなり、ルーチェは血錆に覆われた両手剣を片手で振り上げる。
そして、麗治が刃を入れているのと反対側のエラに突き刺した。
ブシッと噴出した赤い液体が、ルーチェの甲冑を濡らす。
「ぐっ…………振り落としに来たか!」
「だからよ、暴れんなって、食材」
サーモンもやられまいと、激しく身を捩って2人を振り落とそうとする。
「案ずるな、白米の友よ!」
そこに響いた穂刈の声は、サーモンの背中から。
「必ずやお前を最高のおかずに仕上げてみせよう――!」
サーモンの上を駆けてきた穂刈が、杓文字を振り上げる。
「力技で攻めていくっすよ!」
ロープと網の足場を登ってきたルイーグも、棘付きメイスを振り上げた。
「オカワリイタダキマス!」
頂くほうだから、といつもと変えたセリフと共に穂刈が杓文字を振り下ろした。高速の一撃が、サーモンの眉間を痛烈に叩く。
「脳天直撃レッツゴー! っす!!」
少し遅れてルイーグが振り下ろしたメイスが、杓文字が残した陥没跡をもう一度鈍い音を立てて叩いた。
重なった衝撃でサーモンの何かが緩んだのか、エラに突き刺していた2人の刃がズブッと一段奥まで貫いて、大量の血が吹き出す。
「まだまだ血の気が多そうね」
サーモンの様子に、パルピが白薔薇の蕾を投じた。
蕾から伸びた茨がサーモンに絡みついて、流れる血を吸い上げて、白バラの薔薇を染めて赤い薔薇へと替えていく。
「もう、何処を狙っても大丈夫ですね」
少しずつ身を削られるサーモンを眺め、摩那が呟く。
摩那のお目当ては、ずっとお腹の中のイクラだった。
イクラをうっかり壊さない。その為に、摩那はサーモンの腹部に衝撃を与えないように戦おうとして、これまで中々攻め込めずにいた。
だが――もうその必要はない。
イクラはもう、筋子の塊として摘出されたのだから。
「これで遠慮なくいけます。ウロボロス起動」
摩那の両手首で、金と銀が輝きを放つ。
「励起。昇圧、集束を確認……帯電完了」
偃月招雷――エペ・ド・エクラ。
帯電の形に高めた2色のサイキックエナジーを搭載させる先に摩那が選んだのは、超電導ヨーヨー『コメット』だ。
摩那の手から離れたコメットがおかしな速度で飛びだして、あり得ない角度に曲がってサーモンの腹部を打ち据える。
『!?』
腹、背中、尾、顎、目元、喉。
たった1つのヨーヨーが、摩那の手で縦横に向きを換えながら、雷光の奇跡を描いてサーモンを襲い続けた。
(「流石に生食はやだな……」)
最初にサーモンに取り付いて以来。
緤は何故かまだUDC儀式の冒涜的な味わいが思い出していた。
思い出せてしまっていた。
「ええい、そんな事を思い出している場合じゃない」
浮かんでしまうそれを振り払うように、緤が頭を左右に振る。
今気にするべきは、他にある。
「この鮭がホッチャレになる前に、喰わねばならん」
緤の言う『ホッチャレ』とは、平たく言えば産卵を終えて力尽きた鮭のことだ。体力を使い果たした身体では、身はそれほどではないと言われている。
そうなる前に――この鮭が一番美味しい内に、是非食べておきたい。
だけどまだ暫く、生魚食べたい気分にはなれそうにない。
そんな緤の取るべき手は1つしかなかったのだ。
ヒュッ、ヒュンッ。
緤の手元で、糸が風を切る小さな音が鳴り響く。
本来は傀儡用の糸を上手に操り、緤はサーモンの身体から一切れ切り取った。
ギラリ、と緤の瞳が輝き、獲物を狙うそれの目つきになる。
「ニャー!」
次の瞬間、緤の瞳から本当に光が放たれた。
これぞ緤のキャットビーム。
丁度いい出力に調整した弱めのビームが、サーモンの身をこんがりと焼き上げる。
「いい感じに熱を通ったところで――!」
緤は豪快に一口、がぶりとサーモンの肉に食らいついた。
口に入れた瞬間にホロリと崩れた身は――未だ緤の脳裏に残る、あのかなしさを流してくれそうな美味だったという。
鱗を落とし、血抜きも済ませた。
後はその身を如何ようにか捌くだけだ。
「鮮度が落ち始めてますね。急いで捌いて冷凍しないと!」
「動くなよ、サーモン! しっかり骨から身をそいでやる!」
センサーから得られたサーモンの体温諸々で鮮度が落ち始めていると告げるヨムに頷いて、通もサーモンに飛びかかる。
その右手に伸びる雷光の刃が、サーモンの身をスパスパと切り落としてく。
「ガーリックホイル焼き、美味そうだな……」
ルーチェもスマホ片手にグルメ情報をチェックしながら、サーモンを幾つもの切り身へと替えていく。
「船の冷凍庫は、まだまだ入るわよー。どんどん切ってね」
美味しそうな身が度々降ってくる状況に、ニコリネの口元もちょっと緩んでいた。
短く呟いて、飛藍が和傘を掲げて投げ上げる。
「埋もれて、眠れ」
次の瞬間、空が数多の色に染まった。飛藍が放り投げた武器が無数の、そして色とりどりの睡蓮の花びらに変わったのだ。
睡蓮は微睡む――シュイリィェン。
舞い散る睡蓮を操り、飛藍はサーモンの左右の瞳を覆い隠した。
『!?』
突然視界を塞がれたサーモンが、混乱に巨体を更にくねらせる。だが飛藍の睡蓮は、サーモンにとっては慈悲であったかも知れない。
この後に起きるであろう事を、サーモンは目にしなくて済むのだから。
チクチク、ざくざく。
サーモンの紅い身体が、猟兵達の力で削られていく。切り落とされていく。
サーモンの身体から離れて落ちていく切り身は、地面に辿り着く前に凍りながら落ちていっていた。
話は少し遡る。
「ルイ。お前は冷気を操作できるんだったな」
「……出来るが、何だ?」
飛藍が唐突に尋ねてきたその声に、なにか嫌な予感の様なもの感じながら、それでもルイは聞き返す。
「魚は鮮度が大事だ。かと言って此処で戦いながら直ぐに食えるわけでもない。だから、ルイ。削げた切り身を瞬間冷凍させろ」
「は? 瞬間……冷凍……?」
予感的中。飛藍は、ルイの能力を冷凍庫か何かと思っているのだろうか。
「オレの能力はその為にある訳じゃねーよ!!」
「アニサキスとやらは凍らせれば死ぬんだろ。地面に落ちても、直ぐ拾えば3秒ルールで問題ないし」
ルイの抗議にも、飛藍は何処吹く風でサーモンの身を冷凍させる利点を並べ立てる。
「アニサキスだの3秒ルールだの、そういう問題じゃねぇんだよ!」
冷凍装置扱いはゴメンだと、ルイはサーモンの上で地団駄踏んで食い下がった。
それでも結局。
ルイは、地上に残り降ってくるサーモンの身を凍らせる準備にかかっていた。
「ダメだ……UDCを食材認定してる奴が多すぎる! フェイ1人でも、大概止められねぇってのに……」
悟ったと言うより、諦めと言うべきだろうか。
「もう何もかも凍っちまえ」
一瞬で声の温度をも下げたルイの声が告げたのは、極寒のおすすめ。
ルイの掌から溢れ出した冷気が、空気中の水分を凍らせる。
Congelatio――ルイの冷気を操る能力の、最奥点。
もう考える事をやめたルイが掌から放つ温度は、華氏-459.4度。地球上で確認されているあらゆる物質が、凍るとされている極低温まで届いていた。
「出来るじゃないか、ルイ」
飛藍の手が、古い短刀――失貌を振るって鮭の身を削ぎ落とすように斬りつける。そして削ぎ落とされた鮭肉は、川砂利に落ちる前に凍りつく。
失貌の短い刃で削いだ肉だから、ではない。
黒や紅の巨大な包丁が切り落とした塊でさえも、同じく凍りつくのだから。
いつの間にやら始まった、サーモン捌き。
「もう捌きだしているだと? うさみよ、頼む」
「よし、あとは任せろ!」
乗り遅れまいとニコに促され、うさみっちがぶーんっと飛び込んだ。
「筋子がもう出てる、ハラミとカマは頂くぜー!」
小さな身体でさむらいっち刀を振るい、うさみっちはお目当てのサーモンの身体の一部を手早く斬り落とし、ぶーんと戻っていく。
「しかし良く斬れる刀である事だ……」
二人分に充分そうな大きく切り身を受け止めながら、ニコはポツリと呟いた。
生きながら調理されるサーモン。
魚類の扱いとしては、割とあることだ。釣った魚をその場で食べるのと何が違う。
うん、何もおかしいことはない。
『!?!?!?!?』
とは言え、そんな目にあっている本魚は別だ。
まさにまな板の上の鮭、と言う状況に、サーモンは明らかに困惑していた。
まあ困惑した所で、今更出来ることもない。身の大半を斬り落とされて失った猟兵の団長では、消費するタンパク質のある身など残っていない。
もはやサーモンは、高貴なる赤い輝きを纏う事も出来なかった。
「随分と、さっぱりしたわね!」
骨と頭になったサーモンを見上げ、フィーナが声を張り上げる。
その手に既に杖はなく、たっぷり時間をかけて練り上げた魔力の炎が、両の掌で煌々と輝いていた。
「だけど、まだ調理するところが残ってるわよ! その頭が!」
フィーナの視線が、サーモンの視線とぶつかる。
「兜焼きにしてあげるわ!」
告げたフィーナの両手から、炎が同時に荒れ狂う。2つの炎は混ざり絡み合い、1つの炎の槍と化す。
――串刺ス一閃ノ槍。
「貫けええぇぇぇえええ!!」
槍投げの要領で、フィーナが力いっぱい炎の槍をぶん投げる。
その手から離れた瞬間、炎の槍は石突に当たる部分から火を吹き出した。
吹き出る火の熱で飛行機雲のような細い雲の軌跡を描いた炎槍が、サーモンの頭と骨を炎の中に飲み込む。
頭と骨までこんがり焼かれたサーモンが、ぽちゃんっと川に落ちて水音を立てた。
大成功
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第3章 日常
『旬のもの食べよう!』
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POW : がっつり食べる、いっぱい食べる、見てて気持ち良いぐらい食べまくる、気合で勝負!
SPD : 素早く食べる、新鮮なうちに食べる、機転を利かせてより美味しく!
WIZ : 食材の知識で最適な食べ方を楽しむもよし、うんちくを披露するもよし、頭を使ってより美味しく!
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●これまでのあらすじ
南瓜が豊作でした。
サーモンも大漁でした。
――以上。
もう少し詳しい情報?
まず南瓜だ。持ってみるとずっしりと重たい。皮はゴツゴツと硬くなっている。割ってみれば鮮やかな山吹色の実。種もワタもぎっしり詰まっている。食べたものによると、吹かしただけでも仄かな甘みがあったと言う。
良い南瓜だ。
網で焼いて軽く塩を振るだけでも美味しいだろうし、和風に煮付けや天ぷらにしても良いだろう。甘みもあるので、スイーツだっていけるのではないか。
次にサーモンだ。
鮮やかなサーモン色の身。ほど良くサシが入っているが、包丁を入れてみればすっと切れる。脂の乗りはその身を見れば判る。タンパク質もしっかり摂れそうだ。
鱗は既に戦い――もとい、漁の合間にキレイに落とされている。新鮮なので、よく焼けば皮だって食べられるだろう。
刺し身にして良し、焼いて良し。一部の切り身は冷凍されているので、そのままルイベでいただいても良さそうだ。
サーモンの頭だが、既にこんがりと焼かれている。兜焼き!
なんかこう、サーモンの頭ってこんな大きさだっけっていう見上げるほどの大きさなのは些細なことだ。
骨もこんがりと焼かれている。バラせば良い出汁が取れそうだ。
そしてサーモンと言えば忘れてはいけないのが、筋子。
サーモンが大漁だったので、筋子もたっぷりある。
朱い魚卵の一つ一つは、通常の筋子よりも少し大きめだ。ツヤツヤの綺麗な卵だが弾力もあり、指で摘んだ程度ではまだ潰れないと来ている。
取れた筋子の一部は、とある猟兵が持ち込んだ醤油系の合わせダレに漬けこまれているが、まだ手つかずの筋子もたっぷりだ。
そのままでも良し、ばらしてイクラにしても良し。
――以上。
南瓜の下とか空飛んでた魚類とかは、1,2章をご確認下さい。
今、ここで大事な事は。
猟兵達には、このキャンプ場の空気を清める為に、美味しく楽しくバーベキューをして貰うという事だ。その為食材は、2種類ではあるが充分過ぎるほどにある。
まあ肉とか葉物とか鶏卵とかないものも多いので、自由に持ち込めばいいんじゃないかな。
========================
3章です。旬の食材を美味しく頂きましょう。
バーベキューを楽しめば、それでOKです。
1,2章の頑張りのお陰で、美味しい食材があります。
食材・道具、持ち込み、追加も自由です。
費用? UDC組織とか何処かのエルフの奢りで何とかなるよ。
なお、今回はUDCアースですので、UDCアース基準での未成年キャラの飲酒と喫煙はほんのりマスタリングさせて頂きます。
プレイング受付は
10/5(土)8:30~とさせて頂きます。
(それ以前に頂いても構わないのですが、その場合は再送をお願いする可能性が高くなりますので、ご了承下さい)
あとMSコメントにも記載しましたが、3章はルシル登場可能です。
話し相手、パシリ、毒味役。何かありましたらどうぞ。OPで「なんでもする」って言ってたしね!
それでは、良きバーベキューを。
========================
草野・千秋
大豊作でした!
まずは南瓜はパイにしましょう
南瓜をすり潰して砂糖やスパイスやバターを足してひと口パイに
こんがり焼けていい香り!
手作りですし流石にハロウィンまでは日持ちしないですが
これなら家で待ってる彼氏さんのお土産にも出来ます
南瓜といえば天ぷらもいいですね、あまじょっぱい
さっき持ち込んだエリンギ舞茸とか
人参やコーンのかき揚げとかえび天とかも
あと鮭!サーモン親子丼食べたかったんですよ!
う〜このプチプチして瑞々しくて
口の中で弾けるイクラに
自然なしつこくないちょうどいい脂の鮭のお刺身!
最高です!秋限定ビールが進みます!
サイボーグで酩酊しないはずなのに
雰囲気酔いでルシルさんに絡み酒
美味しいです何もかもが
●誰の為の秋の味覚
「さて、まずは南瓜からですね」
押さえきれぬ笑みを浮かべた草野・千秋の前には、既にワタと種を落として皮も剥いて薄めにスライスされた南瓜が幾つも転がっていた。
千秋は南瓜をラップで包むと、耐熱皿ごとダッヂオーブンへ。
「電子レンジがあればもっと手軽なんですけどね」
そこはアウトドアならではの不便さだ。
串が通るくらいまで南瓜に熱が通ったら、ボウルに移してすり潰していく。
南瓜の素材の味を良く残せるよう、加えるのは砂糖、バター、スパイス程度。それらを南瓜によく混ぜながら、更に細かく潰し、練り込んでいく。
あとは小さく切ったパイシートで包んで、ダッヂオーブンで焼くだけだ。
千秋がまず手を付けたのは、一口大のパンプキンパイだった。
駄菓子屋を営む千秋らしいと言うべきか。
(「流石にハロウィンまで日持ちはしないけど……これならお土産に出来ますね」)
家で待つ人の顔を思い浮かべ、千秋の浮かべた笑みの形が変わる。
さて、パイは後は焼き上がりを待つだけなのだが。
千秋の前には、まだまだ南瓜が残っていた。
「……そう言えば、まだアレも残っていますね」
千秋の言う『アレ』とは、エリンギと舞茸である。カボチャ頭は、これすらもメシマズに変えようとしていたが――。
「よし。アレにしましょう」
千秋は別の鍋にたっぷりの油を張って火にかける。
薄力粉と塩と卵で衣を作って、氷――はないので、再び氷の力を付与した断罪の剣の上に器を置いて冷やしておく。
箸先に付けた衣を油に落として、浮いてきたらOK。
「南瓜とキノコ、と来たら天ぷらですよね」
●念願かなって
「これです! これが、食べたかったんです!」
念願の鮭親子丼を前に、千秋の緑瞳も愉悦に輝く。
脂の乗ったサーモンピンクの身を彩る、イクラの赤。その上からわさび醤油を軽くかけて、千秋は鮭とイクラとご飯を一緒に口に頬張った。
瑞々しいイクラが、歯の上を踊る。
プチリと噛みしめればイクラが弾け、魚卵の甘みが舌に広がる。
更に噛めば続くのは鮭の旨味。脂がしつこすぎないので、醤油漬けにされたイクラの甘しょっぱさが丁度いい。
自分で揚げた南瓜の天ぷらは、塩を付けて。
サクっとした歯ごたえの後に広がる南瓜の甘み。塩との甘じょっぱさがまた良い。
食が進むという事は、飲む方も進む。
「最高です! 秋限定ビールが進みます!」
ぷはっと息を吐いて、千秋は紅葉のイラストが描かれた缶を置いた。
周りを見れば、秋の味覚に舌鼓を打ちながら、同じようにアルコールを摂取している猟兵は1人ではない。
サイボーグの千秋の身体は、もう酩酊などしない筈だけれども。
戦いとは違う場の空気と熱に当てられた千秋の顔は心做しか、赤みを帯びていた。いわゆる、場酔いである。
千秋の気分が、酒に酔ったようにふわふわと浮き上がる。
そこにふと目についた、銀髪のエルフ。
「どうしました、ルシルさん? 飲まないんですかぁ?」
新しいビール缶を手に、千秋はルシルに絡みだしていた。
「お酒かい? あまり強くないからね。まだ私は役目も残っているし」
ルシルは絡む千秋の手をやんわり降ろし――その目が鋭く輝いた。
「それより、美味しかったかい? 鮭」
あ、気になってたんだ。
「――ええ。美味しいです。何もかも」
ルシルの真顔に思わず笑いながら、千秋は少し酔いの覚めた頭で返していた。
大成功
🔵🔵🔵
滝舘・穂刈
遂にご飯の出番だな!
人数も多いし、追加で炊いたほかほか炊きたてご飯を振る舞おう
いつも通り、自分の炊飯器(頭部)からも勿論振る舞うが
一度に炊ける量には限りが有るからな
せっかくバーベキューなのだし、飯ごう炊飯で不足分を補おう
このスイハンジャー、自分の炊飯器に固執するほど狭量ではないぞ!
まぁ炊飯器のご飯も食べて欲しいが…
米を美味しく食べてもらうことが第一だからな!
イクラ丼にして食べるもよし
焼き鮭をオカズに白米で食べるもよし
醤油や味噌を塗って焼きおにぎりにするもよし
うむ、どれも美味い!
南瓜と紅鮭に感謝しなければ
オブリビオンだが、また出てきてもらいたいと思ってしまうな!(食材として)
●初めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな
ピコーン!
「再びご飯の出番だな!」
滝舘・穂刈の炊飯器頭のランプが、力強く輝く。
聞かなくても穂刈には――スイハンジャーには判る。
炊きたてご飯、きっと求められていると。
「折角のバーベキューだ! 追加で炊いた炊きたてご飯を用意するべきだろう。今度は早炊きではなく、じっくりと炊くぞ!」
とは言え、穂刈の炊飯器1つでは炊けるご飯の量には限界がある。
そして居合わせた猟兵の数はゆうに20人以上。
つまり、炊飯器で一度に炊ける量の限界を超えてしまっている。
ならばどうすれば良いか。
「ここは飯盒炊爨だな!」
そう。道具が足りないならば、あるものを使うまで。
「炊飯器のご飯も食べて欲しいが……このスイハンジャー、自分の炊飯器に固執するほど狭量ではないぞ! こんな事もあろうかと、飯盒は持っている!」
スイハンジャーとしての第一は、美味しい炊きたてご飯を食べてもらう事。
「とは言え、もう少し飯盒があると良いのだが……」
飯盒は2つあるが、1つで4合。
自身の炊飯器と合わせても、まだ十数合である。
呟いた穂刈の耳に、ガチャガチャと物音が届く。
音のした方を見やると、黒いとんがり帽子を被った少女の猟兵が、が大きな荷物から道具を取り出していた。
「飯盒はあるかな? 貸してもらいたいのだが」
「へ? あ、あるけど……いいの?」
「うむ。この恩は、ご飯で返そう!」
赤い目を丸くした猟兵から、穂刈は飯盒を借りると、穂刈はまず水を汲みに川へ駆けていった。
シャカシャカシャカ。
両手で包むようにし、丁寧にお米を研いだ穂刈は、まず飯盒にお米を等分した。1つ当たりは4合だ。米を入れたら、中の目盛りより僅かに下まで水を入れる。
そのまま30分ほど置いて寝かせてから、いよいよ火を熾す。
「ここからは火に気をつけねばならないな!」
穂刈は飯盒3つを吊るした棒を自ら抱えて、焚き火と向かい合っていた。
鉄網の下で燃える焚き火が、飯盒の底に触れない程度の高さに持ち上げる。
つまり穂刈は、炎と飯盒の距離で火力を調整しているのである。
ぷしゅっ、と飯盒の蓋から沸騰した水が噴出し始めたところで、穂刈は飯盒を鉄網の上に置いて、その蓋の上に大きめの石を乗せた。
吹きこぼれる量が少なくなってきたら、再び飯盒を持ち上げる。
「……! ……うむ。香ばしい匂いがしてきたな」
穂刈の鼻(どこにあるんだろう)をついた香ばしい匂いは、飯盒ならではの炊きあがりの合図。
それは炊飯器ではほとんど出ないもの――お焦げである。
「ここで蓋を落とさないように――」
穂刈が飯盒をひっくり返し終えた時、頭の炊飯器がピーッと炊きあがり音が鳴った。
●炊きたてご飯三昧
「では、俺も頂くとしよう」
欲しい所へご飯を配り終え、穂刈も川原に座り込む。
その前には、3つの茶碗が並んでいた。
1つは醤油漬けにしたイクラたっぷり乗せた茶碗。
もう1つは、ご飯の前に塩を振って焼いた鮭。
最後の1つの茶碗にあるのは、先に焼いた鮭の身を解して混ぜてから、もう一度網で焼いた焼鮭おにぎり。
「うむ、どれも美味い!」
穂刈の口の中で、炊きたてご飯とイクラと鮭が互いに引き立て合う。
掻き込む箸は止まらず、茶碗3つはあっという間に空になった。
「南瓜と紅鮭に感謝しなければ……」
手を合わせながら、穂刈は思う。
思ってしまっていた。
こんな美味しい食材になるオブリビオンなら、また出てきてもらいたい、と。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
【POW】
ついに来ました、南瓜尽くし&鮭尽くし!
イクラもお刺身も綺麗に獲れて。素晴らしいです
ここは南瓜は普通に煮物でいただきたいですね。
ご飯の共に。
そして、メインはもちろん鮭親子丼。
ほかほかご飯に、たっぷりイクラと鮭刺身。
ご飯もおいしいですから、何杯でもいけます。
それに【呪詛耐性】あるしね。
●ご飯のお供に和の味を
トン、トンと、包丁がまな板を叩く音が響く。
種とワタをとった南瓜を、黒木・摩那は手早く切り分けていた。
南瓜の皮は硬い事が多く、身も重い為、生の南瓜を切るのは難しいと言われるが、猟兵ならばそのくらいなんのその。
丁度いい大きさに切り分けた南瓜を鍋に入れた所で、摩那は川から水を汲んでくる。
南瓜を入れた鍋に、南瓜が浸るくらいの水を入れたら鍋を火にかける。
醤油、砂糖、酒、みりんで味を整えつつ、アクセントに刻んだ唐辛子を少し、あとはぐつぐつ煮込んでいけば、摩那好みの南瓜の煮物の完成だ。
「やはり南瓜は煮物が一番、ご飯に合いますよね」
シンプルながら、南瓜をご飯のお供にするには一番。
「鮭ですが、イクラもお刺身も綺麗に獲れていて、素晴らしいですね」
南瓜の煮物を作り終えた摩那は、もう1つの食材に向き直る。
とは言え、ほとんど手を加える必要はなさそうだ。
鮭の身の方は煮物に使ったあまりの水にさっとくぐらせ表面を洗ってから、軽く料理酒を塗って塩を振って、十分ほど放置しておく。
こうすることで、身の内にある水分と共に臭みを抜けるのだ。
イクラの方は、他の猟兵が持ってきた漬けダレをそのまま使わせて貰おう。
摩那の調理も、着々と進んでいた。
●その美味は呪詛に非ず
「ついに来ました、この時が!」
摩那の目の前にあるのは、炊きたてご飯の上にわさび醤油を塗った鮭の刺し身をぐるりと並べて、イクラをこれでもかと敷き詰めた鮭親子丼。
南瓜の煮物も、箸を入れればすっと切れるほど柔らかく煮込めた。
まさに南瓜尽くし&鮭尽くし。
「ご飯も美味しいし……これは何杯でもいけますね」
手ずから料理を前に、摩那が珍しくうっとりした様な表情を浮かべて、茶碗片手に箸を動かす。
美味は時に人を狂わせる。
調理している内から、摩那には珍しく、少しテンションが高めだった。
ついに料理を前にして、いつも摩那の冷静沈着な部分が鳴りを潜めてしまったのも仕方ないという物であろう。
とは言え、この鮭にも南瓜にも、UDCの痕跡はない。それは明らかである。
(「心配はないでしょうけど、私、呪詛耐性ありますしね」)
それでも、心の底では冷静さを見失わう事はない摩那であった。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
ちゃんとばらしてイクラ漬けも作ったわ。
身は気持ち薄切りにしてこれも同じくタレに漬けておいて。
炊きたてご飯も用意してもらえるのだからここは贅沢にたっぷり乗せ親子丼しないとよね!
はー、このつやつやのご飯に煌くイクラの輝き…たまらないわねぇ…。
薄切りにした身の残りは燻してソフトスモークサーモンにしましょ。
(簡易スモーカーをさくっと作り上げる)
身の塊は皮つきのまま塩漬けにしておいて、これは後日乾燥させて保存食に…食材余るとつい保存食作っちゃうのは冒険者の性かしらねぇ。
丸ごとカボチャだし、皮を器にした丸ごとカボチャプリン作りたいわね。
せっかくの恵み(?)ですからなるべく綺麗に頂かないとよね。
●下町育ちのフェアリー
ゴッスン、ゴスンッ。
何かが、一斗缶を内側から突き破って飛び出している。
パルピ・ペルポルの持つ短剣『リュンクス』である。
そんなモノを持ち出してパルピが何をしているのかと言えば、簡易スモーカー、つまり燻製用の設備を作っていた。
「こんな所、かしらね?」
缶の上部に開けた穴から鉄棒を通し、パルピは缶の中に針金を引っ掛ける。
針金に引っ掛けるのは、薄くスライスして塩をした鮭の刺し身だ。
「よいしょ、っと」
中に鮭の身を吊るせるだけ吊るした一斗缶。パルピ自身よりも大きなそれを、パルピはひょいと持ち上げた。
もう1つ、あらかじめ穴を開けておいて中に炭を入れてある一斗缶の上に乗せる。
パルピが作ろうとしているものは、スモークサーモンであった。
「ま、この時間じゃソフトスモークね。あとは皮付きの身を塩漬けにしてあるから、このまま持ち帰って乾燥させて――」
そこまで言いかけて、ふとパルピは気づく。
どちらも保存食ではないかと。
「つい保存食を作っちゃうのは冒険者の性かしらねぇ」
或いは、下町育ちの手習いのようなものか。
「保存食ばかりも芸がないし――デザートでも作ろうかしら」
という事で、パルピは今度は南瓜に取り掛かり始めた。
リュンクスを突き立て、ヘタを中心にぐるりと大きく皮を切る。
蓋を外すように取れた皮を置いておいて、パルピは中の身をくり抜いていく。
「ま、わたしが普通にやったら日が暮れても終わらないからね」
パルピは『雨紡ぎの風糸』を束ねて広げ、球体に編み込んでいく。
「ふっふん。フェアリーなめたらあかんぜよ!」
何をしようとしているのか察して手伝おうかと申し出た猟兵をやんわり断って、パルピは風糸の球を南瓜の中にぐぐっと押し込んだ。
そのまま引き抜けば、南瓜の実がごそっと引き抜かれて出てきた。
こうして刳り抜いた南瓜を、パルピは更に潰してから、牛乳と砂糖と卵を入れて、力の限りひたすら混ぜ続ける。
ダマもなくなりトロリとなった卵液を、さっき刳り抜いた南瓜の中へと戻して、後は南瓜ごとダッチオーブンで蒸せば――皮を器にした丸ごとカボチャプリンの完成である。
●やっぱり鮭親子丼
「はー、このつやつやのご飯に煌くイクラの輝き……たまらないわねぇ……」
パルピの掬った朱い魚卵が、器の中に落ちて飛び跳ねる。
陽光受けて煌めくそれは、パルピが丁寧に筋子からばらして、持参した漬けダレに漬け込んでおいたイクラだ。
イクラの下には、同じ漬けダレに漬けておいた薄切りの鮭。
「炊きたてご飯も用意して貰えたのだから、ここは贅沢に、たっぷり乗せ鮭親子丼しないとね!」
まず鮭の身を白米の上に並べて、漬けたイクラをたっぷり。
パルピの用意したのは、似たようなものは他にも多くの猟兵が作っているが――仕方のないことだろう。
こんな新鮮な身と筋子があるのだ。
「鮭もイクラもご飯でって思ったら、こうなるわよね」
鮭を焼くか生で食べるかくらいの違いだろう。
「そんな事より、せっかくの恵みですから。なるべく綺麗に頂かないとね」
今大事な事は、目の前のたっぷり乗せ鮭親子丼を攻略することである。
パルピは小さな手を合わせると、小さな身体で大きな茶碗に挑み始めた。
大成功
🔵🔵🔵
七瀬・麗治
さて、仕事も終わったし、少し遅いがランチを楽しむか。
ジャケットを脱ぎ、ネクタイも外してリラックス。
クイーンレッドサーモンの切り身を網に乗せれば、
煙と一緒に香ばしい匂いが。いい焼き加減になったら、
醤油でいただくぜ。
「おいハウンド、飯にするぞ。お前もどうだ?」
足元の影の中から、猟犬型UDCを呼び出す。そして、
カルマハウンドの鼻先にサーモンの切り身をそっと近づけてみる。
「お座り。そのまま待て。…………よし、いいぞ」
餌を与えるときは、これがお決まりの儀式なのだ。
ドリンクはビールが欲しいところだが、今日はバイクで来たんで
コーラにしておくぜ。
食事が終わったら広い場所でハウンドとフリスビーで遊ぶぞ。
●エージェントがネクタイを外す時
「さて。少し遅いランチを楽しむとしようか」
呟いた七瀬・麗治の喉元で、ネクタイがシュルリと衣擦れの音が鳴る。
首元を締めていたネクタイを外すのは、仕事が終わったと告げる合図の様なものだろうか。自身の身体に――そして自身の精神に。ロードに。
麗治はジャケットも脱いで、畳んで石の上に置いて。
川原の石を組み上げ竈を作り、薪を組み上げ火を熾す。
すぐに麗治の手元で、パタパタと小さな音が鳴り始めた。仰いで風を送り、敢えて火勢を強める。上に置いた網を温めながら、薪を燃やして炭とする為に。
炭火になったらいよいよだ。
「ここまで分厚い鮭の身は、そうそう出回らんだろうな」
ステーキ並の厚さの鮭の切り身を2つ、網に並べる。
炭から僅かに上がる火が鮭に熱を伝え、その身を焼いていく。
遠火でじっくりと。鮭の身が焼けるに連れて香ばしい匂いが漂い、身から滴り落ちた脂が炭に落ちて、ジュウッと音を立てた。
ゴクリと喉が鳴った事に、麗治は気づいていただろうか。
「さて、あとは最後の仕上げだ」
上の面にやや濃い目の醤油を塗ってひっくり返す。
数十秒炙っている間に、返した面にも醤油を塗って、ひっくり返して炙る。
「――出来た」
最後に塗った醤油と鮭自身の脂で表面が僅かに照りかえる焼鮭の出来栄えに、麗治は満足げに1つ頷いた。
●ハウンドとルーティン
「おいハウンド、飯にするぞ」
麗治が告げた直後、その足元から黒い影がするりと姿を現した。
猟犬型の黒いUDC――カルマハウンド、である。
「お前もどうだ?」
喚び出されたカルマハウンドは、麗治の問いに首を縦に振る。
「お座り」
それを見た麗治はハウンドを座らせると、その鼻先に焼きたての鮭を近づけた。
「そのまま待て」
麗治に言われるがまま、ハウンドは身じろぎせずに固まっている。
――その視線は、鮭に注がれていたけれど。
これは麗治がいつもハウンドに対して行っている儀式。ハウンドは犬型UDCであって犬そのものではないが、それでもだ。
「…………よし、いいぞ」
ガツガツと鮭を食べ始めたハウンドの様子に小さな笑みを浮かべ、麗治は自身も焼き鮭に箸を伸ばす。
表面はカリッと。だが箸を少し入れればホロリと崩れる。
口に入れれば醤油と脂の焦げた香ばしさに、鮭の甘みが追随してくる。肉厚の身を噛みしめれば、旨味はさらに広がった。
実に美味い鮭だ。
ああ、だからこそ。
「これは……ビールが欲しくなるな」
少し残念そうに、麗治は溢していた。傍らにあるのはコーラの缶である。実際問題、他の猟兵の中にはビールを開けている者がいるのは、音と匂いで判る。
「だが、帰りもバイクだからな」
それで来た以上、帰りもバイクを使わなければならない。
そんな麗治の肩を、黒い動物の手が、ぽんっと叩く。
見れば鮭を食べ終えたハウンドが、じっと麗治を見ていた。
――遊べ。
目がものを言っている。
「そうだな。食後の運動も必要だ」
麗治は自身の鮭を平らげると、皿の代わりにフリスビーを手に取る。
「さあ、行って来い!」
麗治が投げた円盤を追って飛び出したハウンドの足が、川の水を跳ね上げた。
大成功
🔵🔵🔵
雷陣・通
【ワイルドハント】●POW
鮭だ!
飯だ!
食べるぜ!
うるせー!
早い者勝ちだ!!
(『紫電の空手』と先制攻撃の無駄遣いにより、速攻で鮭の切り身や熊肉を確保に走る)
うぎゃ!
生焼けじゃねーか……では改めて
(待機から)頂きます!
流石に未成年なので飲み物はソフトドリンク
一通り食べたら年少達の分をよそって渡したりする
「ほら、食べねえと大きくならねえぞ!」
そう言えば紅鮭だから刺身は……やばいか、ルイベも食べてみようぜ!
うん! サクッと美味い!
また、こうやって行けたらいいな!
ヨム・キプール
【ワイルドハント】●POW 実際のところ、僕はサイボーグなので 普通の食べ物はあんまり受け付けないのですケド、そこら辺は気合です気合! 味覚は正常に機能していますから娯楽として楽しませて貰います、ハイ! //・あ、僕はスモークサーモンとかサーモンのスープとかも大好きなので皆さんじゃんじゃん作って下さいね! 僕はもちろん食べることに専念……冗談です、ハイ。(ヨムが作るのはクリームスープ。手に入れたサーモンとカボチャをたっぷり使い、チーズを使ってパンチの効いた味に仕上げた、蕩けるように滑らかなオードブルだ。胃袋のテンションを上げてメインディッシュに備えよう!)//・未成年なのでソフトドリンク組。
白斑・物九郎
【ワイルドハント】
●POW
気ィ遣っただけあって、結構な食材が揃ったモンじゃニャーですか
・BBQ
聞け者共
ココは砂嵐の王の治める不可侵の領土
手ェ出そうってんなら嵐の軍勢が相手になりますでよ
(あれこれ喰う傍ら、自分専用に鮭の切り身を包み蒸し焼くアルミホイルの領土を形成
バターと醤油を垂らしておいしく頂く
焼け加減&食べ頃の察知に野生の勘を無駄に傾注)
(怪盗ニコリネの対抗には狩猟の魔眼で判定希望)
・未成年組はソフトドリンク
リダンのねーさんは、まあ普段ッから一人で宅飲みしてそうな雰囲気ありますわな
そういやニコリネのねーさんと荒谷のねーさんはハタチになったばっかでしたよな
どんな呑み方酔い方するんでしょうかや
ニコリネ・ユーリカ
【ワイルドハント】
皆お疲れさま! 近くの小川で飲み物を冷やしてきたの
大人組にはビールを、未成年組には炭酸飲料を多めにしたから
どちらもゲップが出るまで飲みましょ。かんぱーい!
お酒の飲み方はリダンさんに教わったの
大人の女性は料理と一緒に少しずつ、じっくり味わんンー美味スィー!
疲れた体をこんな風に癒せるなんて、大人になって良かった(ほよん)
ハイ漁団長。不可侵の領土は全力で侵しに来いと!
では怪盗ニコリネは【Santuario Segreto】で姿を消し、お箸とお皿を持ってアルミホイルが開いた瞬間を狙います。ちぇすとー!
ぐわあぁぁぁぁあああ!!!
私達が去った後は骨ひとつ残らない
綺麗にお片付けして帰ります
リダン・ムグルエギ
【ワイルドハント】
先に生ものですぐ食べれるのだけ作っちゃいましょっか
サクサクと寄生虫対策に超薄く切ったサーモンの切り身と筋子をコンビニで買ってきたゴハンの上に乗っけるだけの超簡単親子丼よ
焼いたりが終わるまではコレで我慢なさい、とーる君もつかささんも
というわけで、アタシの仕事、終わり!
さぁ後は飲むわ食うわー
南瓜焼いたの美味しいわよね
アルミホイル領土を囲むように南瓜配置したりして遊びつつ
遊び半分に盗ったりしながら色々食べつつ飲むわ
宅飲みならカクテル作るんだけど今日はビールでがーまんっと
ニコとは前に飲んだけどつかさんは初めてよね
さぁ、好きな人とか吐いてもらおうかしら?
…あ、別の何かを吐くのはダメよ?
荒谷・つかさ
【ワイルドハント】
さて、バーベキューとなれば私の出番よね。
【斬り込み兼焼き肉担当】の看板が伊達ではないこと、見せてあげるわ。
……あ、鮭親子丼は頂くわね。
いつの間にか割烹着姿に着替えつつ【焼肉担当の本気】発動
持ち前の料理技能もそれ以外の技能も活かし、全力で焼いて喰って配膳よ
血抜きした熊肉はよーく殴って柔らかく下ごしらえ(怪力、衝撃波、鎧砕き)
鉄板上の私の手の届く範囲は私の調理領域、生肉に手出しはさせないわ(残像、範囲攻撃、なぎ払い、武器受け)
お酒も遠慮なく頂くわね。
好きな人……気になる人が居ないでもないけど、まだ内緒。
で、リダンさんの方こそどうなのよ?
(あまり酔わず、多少饒舌になる程度)
ルーチェ・アズロ
ワイルドハント/POW
むっちゃ食べる。普段あんまり食べないけどこういう時は食べる。だって祭りじゃん(勘違い
あ。クマ食うならちゃんと下茹でしろよ。じゃねーとくさくって仕方ねーぞ(と調理班へ口出しする狩猟っ子
おう。食うぞ。焼けるまで手持ち無沙汰…あ。リダンどんぶりくれよー(まんまと食べる野良犬
あ、りょだんちょーそれホイル焼き?いい感じじゃん、食わせてよ(すでにハムスターの頬袋
UCとか技能とか特別なこととかは一切ない。只々食べるのだ
お腹ポンポンになって動けなくなっても今は戦いを終えたのだからいい
故に秋の味覚いっぱいいただきます
…きっとこの後お腹まんまるで転がっているだろう
●ワイルドハント流調理
「皆お疲れさま!」
ニコリネ・ユーリカが笑顔で指を鳴らすと、車と漁船に積み込まれていた【ワイルドハント】の狩りの成果が開放された。
規格外に大きな鮭の紅色の身。
通常よりも粒が大きな筋子。
ゴツゴツとした皮を持つ大きな南瓜。
獲りたての熊肉。
揃えようとしても、そう簡単に揃うものではない食材ばかりだ。
「気ィ遣っただけあって、結構な食材が揃ったモンじゃニャーですか」
猟団長、白斑・物九郎はさして表情を変えずそれらを眺めていたが、内心では眼前に並んだ狩りの成果に満足している。
「さて、バーベキューとなれば私の出番よね」
いつの間にやら割烹着姿になっていた荒谷・つかさが、束ね纏めた黒髪の上から三角巾を撒きながら食材に近づく。
「【斬り込み兼焼き肉担当】の看板が伊達ではないこと、見せてあげるわ」
そう言うと、つかさは自ら斬って捌いた熊肉を抱えて少し離れていった。
「熊肉もいいですけど、僕はスモークサーモンとか、サーモンのスープとかも大好きなのです」
その背中を見送りながら、ヨム・キプールが笑顔で口を開く。
「皆さんじゃんじゃん作って下さいね!」
「まあ、サーモンは切って上げるけど……何か作りなさいな」
イイ笑顔でのたまうヨムにそう言い残し、リダン・ムグルエギも鮭の身の塊を幾つか取って調理場へ。
「いやいや。僕はもちろん食べることに専念……」
言いかけたところで、ヨムが笑顔のまま固まった。
「……」
物九郎がじぃっとこっちを見ていた。
その視線に何を感じたか。
「冗談です、ハイ」
ヨムは幾つかの野菜と鍋を抱えて、調理場へ向かっていった。
川原に見つけた大きな岩の上に熊肉を置いて、つかさはぐっと拳を握る。
割烹着姿でありながら、鉄火場で刀を手にした時と変わらぬ表情。
「ふっ!」
そして熊肉に、つかさの右拳が叩き込まれた。
「ふっ! っ!」
ドスッ! ゴスッ!
つかさの左右の拳が交互に、熊肉を殴り続ける。肉を叩いて柔らかくしているのだ。
拳撃が肉の筋を断ち、広がる衝撃が僅かに残る血を吹き出させる。
そんなやり方をしていれば、当然色々と飛び散るという物。つまり、つかさの割烹着はこのワイルドな調理法に似合っているのだ。多分。
ジュゥッ!
ヨムが鍋に入れたバターが、あっという間に溶けて音を立てる。
ヨムはその鍋の底半分に南瓜を並べ、もう半分に刻んだ玉ねぎを入れた。
南瓜にじっくり熱を通しつつ玉ねぎを炒め、玉ねぎの色が飴色に変わってきたら、キノコを加えて更に炒める。
野菜に火が通ったら鍋に水を張り、灰汁を取りつつ煮立たせる。
沸騰しかけた所で、ヨムはサーモンの切り身を惜しげもなく投入。続けてホワイトソースと少量の生クリーム、さらにチーズも加えて、さらに煮こむ。
「……もう少しチーズを足した方が、味にパンチが付きますかね」
ヨムは味を見ながら、鍋の中身にとろみが付きすぎないよう、少量ずつチーズを足して味を整えていく。
――トッ。
リダンの持つ包丁が、まな板と当たって僅かに音を立てる。
その音が鳴る度に、鮭の身がミリ単位の薄さに切りわけられていた。
ここまで薄く切っているのは、寄生虫対策である。もっとも、こんな切り身になる前の鮭の姿を考えれば、そんなものが付いている可能性は低いのだが。
「さすがリダンのねーさん。器用なもんですな」
「まーね。そうじゃなきゃデザイナーやってられないわよ」
鮭の切り身をアルミホイルで包む物九郎に返しながら、リダンの手は止まらない。
「うん。熊肉はこれだけ叩けば充分ね」
つかさが巻いていた三角巾を取る。
「クマは下茹でもしろよー。じゃねーと」
「大丈夫。判ってるわ」
ルーチェ・アズロが挟んだ口に、つかさが頷き大鍋を手に取る。
着々と進行する料理。
そんな中、ぐぎゅるるるるるっ、と言う音が全員の耳に聞こえた。
「腹減ったー! 鮭だ! 飯だ!」
特にヨムの鍋から漂う匂いに空腹を刺激され、すでにテンションMAXな雷陣・通の腹の虫の音である。
その毛先からは、僅かに漏れ出た生体電流がパチパチと小さく爆ぜている。
「腹減りすぎだ! 俺は食べるぜ!」
通の視線が向けられていたのは、たった今、叩き終わった熊肉。
「おい、クマは下茹でがまだ――」
「とーる君。すぐ食べられるの出してあげるから、待ちなさい」
「うるせー! 早い者勝ちだ!!」
待てと告げるルーチェとリダンの声に、しかし通は止まらない。
パチッ――パチリッ――。
通は己の身体を流れる電流を意識する。
人間の体とは、1つの大きな回路の様なものだという説もある。
静止電位。
脱分極。
再分極。
過分極。
神経細胞による伝達にて生じる活動電位の過程。常人ならば知覚など出来よう筈もないその過程を感じ取り、通はそれを制御してのける。
そんなもの、特異体質の一言では済まされない。
これを埒外の芸当と言わずして、何を埒外と言うのか。
踏み込んだ足で川原の石を跳ね上げて、通が取ったのは空手の構え。
紫電の空手――ライトニングファクター。
「この熊肉は、俺のだ! 生でも良く噛めば大丈夫!」
雷光が閃く。次の瞬間には、通の手には熊肉の塊が1つ握られていた。
その早さ、まさに紫電が如し。
いかに【ワイルドハント】の猟兵達でも止められなかったか。
いいや。違う。
止める必要がなかっただけだ。
「うぎゃ! 生臭えー!?」
「……クマはちゃんと下茹でしねーと、くさくって仕方ねーんだぞ」
良く噛むとか言う以前の問題に目を白黒させる通に、狩猟っ子なルーチェが少し呆れた様な視線を向けていた。
「全く。焼いたりが終わるまではコレで我慢なさい、とーる君」
リダンが小さな丼を差し出したのは、薄切りの鮭の刺し身をぐるりと華のように並べ、醤油に軽く漬けた筋子を散りばめた、簡単鮭親子丼である。(ご飯は他の猟兵からわけて貰いました)
「そう言えば紅鮭だから刺身は……やばい可能性もあるのか」
薄切りの刺し身の理由に気づける程度に、通は落ち着きを取り戻していた。
「頂きます!」
まあ、すぐに目を輝かせて丼をかっこみ始めたのだけれど。
「リダン、あたしにもどんぶりくれよー」
「そう言うと思ったわよ」
ルーチェが請うのを予想していたリダンは、2つ目の丼を差し出す。
「はい、つかさんも。熊と格闘して疲れたんじゃない?」
「……頂くわね」
リダンの差し出した3つ目の丼を、つかさが受け取る。
「はい、スープも出来ましたよ」
そこに、ヨムが軽々抱えてきた大鍋の中身は、蕩けるように滑らかなオードブル。
――サーモンと南瓜のチーズクリームスープ。
「さあ。胃袋のテンションを上げて、メインディッシュに備えましょう!」
ヨムの前に、早々に空になった丼を持った通とルーチェが無言で並ぶ。
「ふふ。丁度いいタイミングみたいね」
そこに、ニコリネが水が滴るビニール袋を両手に戻ってきた。
袋の中身は、川の水で冷やしてきた飲み物だ。
「はい、未成年組みはこっち。炭酸飲料多めにしたわ。私達は勿論、ビールよ」
物九郎達に片方の袋を渡し、ニコリネはリダンとつかさにもう1つの袋を見せる。
「アタシの仕事、終わり! さぁ後は飲むわ食うわー」
中に見えた地ビールの缶は、リダンをやり遂げた気分にさせた。
「鮭の刺身はたっぷり切っておいたから、あとはセルフでどーぞ」
実際、リダンは充分仕事したと言っていいだろう。
「それじゃ、皆、良い?」
自身も缶ビール片手に、ニコリネは【ワイルドハント】の面々を見回す。
「ゲップが出るまで飲みましょ。かんぱーい!」
ニコリネが掲げた缶に、6つの缶がぶつかり、コンッと乾いた音を立てた。
飲みすぎないで下さい。
●飲んでも飲まれるな
「宅飲みならカクテル作るんだけど。今日はビールでがーまんっと」
「私も遠慮なく頂くわ」
リダンとつかさの手元で、ほとんど同時に2本目の缶ビールがぷしゅっと音を立てて開けられる。
「リダンのねーさんは、まあ普段ッから一人で宅飲みしてそうな雰囲気ありますわな」
「深くは追求しないどくわ」
ジンジャーベースの炭酸を手にした物九郎の声に、リダンは軽く肩を竦める。
「ニコリネのねーさんと荒谷のねーさんはハタチになったばっかでしたよな」
「お酒の飲み方はリダンさんに教わったの」
矛先を変えた物九郎に、ニコリネは笑顔で返して、ヨムのスープの中の南瓜と鮭を一緒に一口。そしてビール缶に手を伸ばす。
「大人の女性は料理と一緒に少しずつ、じっくり味わ――」
ビールを煽るニコリネの喉が、コク、コクッと何度も鳴る。
「んンー美味スィー!」
カンッと空になった缶が、ニコリネの手元で乾いた音を立てた。
「……じっくり?」
「疲れた体をこんな風に癒せるなんて、大人になって良かった」
やや頬を紅くしたニコリネは、物九郎のツッコミが耳に入っていない様子で、迷わず2本目のビールを開けていた。
一方その頃。
「さぁ、いい機会だし、好きな人とか吐いてもらおうかしら?」
ニッと笑みを浮かべたリダンが、熊肉茹でつつ飲んでいるつかさに詰め寄っていた。
「……なんで?」
「何でもよ。あ、別の何かを吐くのはダメよ?」
若干困惑した様子のつかさに、リダンは更に詰め寄る。
「大丈夫。私、多分あまり酔わないから」
そう返した所で、リダンが引き下がらないのはつかさも判っていた。
「好きな人、ね。……気になる人が居ないでもないけど、まだ内緒」
だから、そうとだけ返して、逆にリダンの方につかさが少し身を乗り出す。
「で、リダンさんの方こそどうなのよ?」
「アタシ? さあ、どうかしらねー」
リダンは少し悪戯めいた小さな笑みを浮かべて――こう返した。
「デザイナーはね、誰かの『好き/嫌い』を変えられるのよ?」
●板上ワイルドハント
「聞け者共」
狩りの時と変わらぬ表情と声音で物九郎が口を開く。
その前にあるのは、煙を上げる黒い戦場。
焚き火の上に置かれた鉄板である。
どうしようもなく、文字通りに鉄火場である。
「ココは砂嵐の王の治める不可侵の領土」
物九郎が『ココ』と指したのは、自身の前の鉄板。
ずらりと並ぶは銀色。鮭の切り身を包んで蒸し焼きにしているアルミホイルである。
「手ェ出そうってんなら嵐の軍勢が相手になりますでよ」
鮭を包んだアルミホイルは、いずれも、物九郎自分用に包んだものだ。
各自、食べたいものはそれぞれの領域で。
領域を侵すのならば、容赦しないと。
物九郎のそれは宣戦布告であった。
「そう言うことなら、猟団長。同盟といかない?」
しっかり臭みを抜いて一口大にした熊肉を並べながら、つかさがそう提案する。
「鉄板上の私の手の届く範囲は私の調理領域。肉に手出しはさせないわ」
じっくりと焼いて育てている肉を盗らせはしないと、つかさの目が告げている。
「では、俺めと荒谷のねーさんは互いに不可侵ってぇ事で――」
物九郎がつかさに頷いた、その時だ。
「ハイ漁団長。不可侵の領土は全力で侵しに来いと!」
何だかほわんとした顔になってるニコリネが、笑顔でそんな事を言い出したのは。
「あー……俺めの言ったこと聞いてましたかい?」
「ええ、怪盗ニコリネがお相手するわ!」
半眼で呻く物九郎に、ニコリネがキリッと返す。
「私とあなたの秘密の聖域。繋いだ小指はチョップでしか切られないの」
Santuario Segreto。
ニコリネ自身と装備を透明化する、まさに怪盗の業。
「また見事に酔ってるわねー」
ニコリネの姿が、風景に溶け込むように消えていくのを笑顔で眺めながら、リダンが南瓜を物九郎のアルミホイルの周りに並べていく。
「ちょっとした遊びよ、遊び。あわよくば盗ってやろうとか思ってないわよ」
何か言われる前に、リダンは笑って告げていた。
「僕のこっちの身体、普通の食べ物はあんまり受け付けないのです」
物九郎の視線を感じて口を開いたヨムは、サイボーグである。
少年の様な姿は本体ではなく、その周囲に漂う二色の水晶体こそが、ヨムの本体である珪素生物型のUDCだ。
「そうは言っても、味覚がないわけではないです。むしろ正常に機能してます」
味覚が正常なのは、ヨムが作ったチーズクリームスープの味でも明らかだ。
味覚がおかしい物に作れる料理ではない。
「まあそこら辺は、気合です気合!」
「成程! 気合なら何とかなるな!」
急に精神論になったヨムの言い分をあっさり信じ込んで、通が頷いている。
「今回のバーベキューは娯楽として、食材の奪い合いには加担せずに見守って楽しませて貰います、ハイ!」
ヨムはいい笑顔で、言い切っていた。
食べる方に気合を使っていては、奪い合う気合などない、という事か。
「俺もいーや」
まだ準備中に生体電流コントロールなんてしてた通だが、今となってはお腹も満たされて来たのもあって、すっかり大人しい。
「ルイベ食べてみたら、サクッと美味いし!」
半ば凍った身は、噛めばサクリと砕ける。氷を含んだ様な冷たさが通の舌に伝わるが、身はすぐに溶けて鮭の脂の甘みが舌に広がった。
「それに、つかさねーちゃんに勝てる気がしねーから」
ぽつりと告げた通の視線の先で。
「…………」
つかさは黙々と熊肉を食べていた。1つ肉を食べる度に、つかさの放つ無言のプレッシャーが強くなっていく。
肉を食べれば食べるほど強くなる。
それが、つかさの焼肉担当の本気。
どうやら籠城を決め込むつもりらしい。
こうなると物九郎とニコリネの一騎打ち。
「ザミエルシステム、起動」
そう悟った物九郎は、とある電脳魔術を遠隔受領した。
その超高度な情報分析と状況予測をフルに使い、結果を自身の視界・意識内にフィードバックする。
今の物九郎は一時的に遠隔受理した電脳魔術を使用した様なものだ。
そうして高めた能力で察知するのは。
アルミホイルの中身の鮭の焼け加減と、姿を消したままのリダン。
流れる沈黙。
肉が焼ける音だけが、時折じゅぅっと響く。
(「よし、そろそろ――」)
鮭の焼き加減が食べ頃に近い。
そう察した物九郎が手を伸ばし――。
(「――そこ! ちぇすとー!」)
その瞬間を狙っていたニコリネが、箸を持った腕を伸ばす。
ぱしっ。
透明化しているはずのニコリネの腕が、物九郎の手に掴まれ投げられる。
「ぐわあぁぁぁぁあああ!!!」
酔ってなければ、ね。
「ふぅ。何とか死守したっす……?」
ニコリネをぶん投げた物九郎がアルミホイルを開き、バターを乗せて醤油を垂らす。あっという間に立ち昇るバターの香り。
ふと気づくと、こちらをじっと見ているルーチェと目があった。
「りょだんちょーそれホイル焼き?」
ルーチェの左右の頬は、主に南瓜でいっぱいになって膨れていた。ほとんどリスかハムスターと言ったところだ。
「俺めの領土に手を出すなら」
「いひ感じじゃん、食わへてよ」
「……少しだけっすよ」
それは領土侵攻ではなく開放。
その食いっぷりと視線に負けて、物九郎の領土が崩壊する。その隙に、リダンもささっとアルミの中のサーモンを一つまみ奪っていた。
「そっちの肉も食わせてよ」
鮭を堪能したルーチェは、今度は籠城決め込むつかさの元へ。
「今日は、随分とよく食べるのね?」
そんなに食べられるのかと言外に問うつかさ。
「普段あんまり食べないけど、こういう時は食べる。だって祭りじゃん」
多分に勘違いが含まれたルーチェの言葉だが、全く間違っているわけでもない。
ある意味、祭りと言えなくもないだろう。
発端は儀式なのだから。
「もう戦いも終わってるんだ。お腹ポンポンになって動けなくなってもいいだろ!」
いつもの憎悪は何処へやら。
ルーチェの頭には、秋の味覚を味わうことしかなかった。他の猟兵達のように、無駄にユーベルコードを使うことすら、ルーチェは考えていない。
「そこまでの食べ過ぎはやめときなさい」
ルーチェの言葉と食欲に軽く嘆息し、つかさは皿に熊肉を少し乗せていた
どれだけ多い食材でも、無尽蔵ではない。
時に奪い奪われ、いつの間にかワイルドハントの面々の前にある鉄板に乗せるものは何もなくなっていた。
ヨムのスープも空っぽである。
食べた、食べ尽くした。
「食った、食ったー」
それは本当にお腹まんまるぽんぽんで転がっているルーチェを見れば明らかだ。
やるべき事。場の空気も入れ替わった筈だ。
だが――後もう一つだけ、やることが残っている。
「私達はワイルドハント。私達が去った後は骨ひとつ残らない――でしょ?」
酔いが抜けたニコリネの言葉を、(食べすぎて動けないルーチェを除く)全員がはっきりと首肯した。
立つ鳥跡を濁さず。
綺麗にお片付けして帰るまでが、バーベキュー。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霧島・ニュイ
【華座敷】
狩りも終わって準備万端!
肉と野菜持ち込み
二人とも来てくれてありがとう!
味付け期待してるよクロトさん!(他力本願)
網の上にお肉を乗せてわくわく
お腹すいたので生でキャベツ頬張りつつ野菜も焼く
乗せるだけなら僕だって出来るからねー!!
…兄さん菜食なんだねー
わーい、兄さんに褒められた!
筋子はばらしていくらに
んー!!大粒いくら最高!!
鮭の身も食べなきゃ(ダンダンと切る)
あぁ贅沢ぅうう!!分厚い!おいしー!!
キノコも野菜も最高だねーやっぱり狩りからやらなきゃね(マジの目)
スパイスカレーかー。ルーで作るのさえ超ドライカレーだけど覚えたいなー
教えてー
四苦八苦しながらも教え方が上手
この時間が楽しくて大切
佐那・千之助
【華座敷】
UDCアースのオブリビオンを見るのは初めて
この世界の敵って全部食材なん?
南瓜パプリカ芋栗太ネギ…
メインは鮭じゃ、肉は無い
形の不揃いなそれらを所狭しと串にぶっ刺し
大丈夫、燃やせば食える
え、着火だけ?
生野菜齧りながら焼けるの待つ時間って良いの
ニュイに倣いクロトに味付けを委ね
そなたは秘密が多い、普段食すものの味くらい教えよ
ああ、使い方を教われたなら
料理のたび今を思い出してきっと私が嬉しい
スパイスからカレー?
…上級者向けでは??
日頃敵の血を啜る身。鮭を食べるのに抵抗は無く
ニュイよ、これは大手柄じゃ
こぼれイクラに鮭ハラミ
私の腹から躯の海へお還り
網に乗った茸も肉も浚げては焼いて
贅沢な美味で腹一杯
クロト・ラトキエ
【華座敷】
食を愚弄する儀式など潰えて良かった。
飢えの、渇きの味は知らぬでも無いから。
…けど。
ニュイが頑張り得たのだと解ってはいても…
緊急時以外でUDCを食すのは遠慮したく!
という事で持参しました旬の味。
椎茸、舞茸、ぶなしめじ、
人参、馬鈴薯、あと林檎。
他は香辛料を幾つか。
キャンプ場なら設備に困らず幸い。
千之助の炎も実に頼もし――
え…竃に着火だけで大丈夫ですよ?
燃やさなくて良いんですよ!?
え…味付け、僕?
只のバーベキューなのに?
困惑しきり、ちゃちゃっと焼いて、UDC以外を摘み食いつつ…
二人共楽しそうだし、まぁ良いか。
折角です。ニュイもスパイスの使い方、覚えてみます?
食材は十分。作れるのは…
カレー?
●華座敷
「ほう。中々良い場所ではないか」
川原を吹き抜ける風に煽られ陽炎のように揺らめく髪を押さえながら、佐那・千之助(火輪・f00454)が周囲を見回し微笑を浮かべる。
「無粋な儀式には似合わぬ地であるな」
「まったくですね。食を愚弄する儀式など潰えて良かったですよ」
千之助の続けた言葉を、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)が首肯する。
共に旅団『華座敷』に属する猟兵である。
「して、ニュイは何処じゃ?」
「この辺りの筈ですが――」
2人の視線が、人を探して彷徨う。
「おーい、こっちこっち!」
見覚えのある茶色の跳ね髪を見つけるのとほぼ同時に、向こうも2人の顔を見つけ、霧島・ニュイが大きく手を振った。
「2人とも来てくれてありがとう!」
ニュイの後ろにあるのは、鮭の身と筋子、そして南瓜。どれもこれも、常識的なサイズを上回っているどころではなく、規格外の大きさだ。
「これは見事な。ニュイよ、これは大手柄じゃ」
「わーい、兄さんに褒められた!」
鮭の身の脂の乗り具合を間近で確かめ千之助の評に、ニュイが無邪気に喜ぶ。
「…………」
その一方で、クロトは珍しく眉間を寄せていた。
クロトは傭兵だ。勝っても命を落とせば無意味。生き残る事こそを勝利としてきた。それ故に、飢えの、渇きの味は知らぬでも無い。
けれど――だからこそ、と言うべきか。
「判ってはいるのですよ。ニュイが頑張り得たのだと……それでも、緊急時以外でUDCを食すのは遠慮したいですね」
「うん、クロトさんはそう言うと思ったから、食材、買い足してあるよ」
幾許かの逡巡を秘めたクロトの言葉に、ニュイがあっさりと返す。
「キャベツ、パプリカ、芋、栗、太ネギ……野菜が多いな。クロトよ。そなたも何か持ってきておるだろう」
ニュイの手元の袋の中を物色した千之助は、野菜多めで肉が少ないと少し残念そうに顔を上げて、クロトに話を向ける。
「え? ああ、旬の味を持参してますよ。椎茸、舞茸、ぶなしめじ、人参、馬鈴薯、あと林檎と……香辛料を幾つか」
UDC食に抵抗があったゆえにクロトも食材を持ち込んでいた。
何だか野菜に偏っているような気もするが、これで味と料理のバリエーションはグッと広がったろう。
「という事で、味付け期待してるよクロトさん!」
食材を押し付けて、ニュイが笑顔で告げる。
「え……味付け、僕? 只のバーベキューなのに?」
「そなたは秘密が多い、普段食すものの味くらい教えよ」
戸惑うクロトに、千之助も笑って押し付け――もとい味付けを任せるのだった。
「千之助の炎は当てにさせて貰いますよ」
2人の顔に苦笑を浮かべ、クロトは食材を手に炊事場へ向かっていった。
「味付け、と言われても調味料は限られてますね」
クロトの手元にあるのは、塩と幾つかのスパイス。
「まあ何とかしましょう」
クロトはまず塩を、やや多めに全ての食材に振りかける。
肉はそのまま放置し、中の水を抜いておく。
その間に、クロトは野菜の下拵えにかかった。舞茸としめじは石突を切ってばらし、椎茸は傘と柄を分けて、傘に十字の切込みを。
人参と馬鈴薯は、皮を剥いて輪切りにしておく。
「生でも結構美味しいねー」
「生野菜齧りながら待つ時間って良いの」
後ろでは、ニュイと千之助は生キャベツを齧りながら談笑している。
「のう、ニュイよ。UDCアースのオブリビオンを見るのは初めてなんだが、この世界の敵って全部食材なん?」
「んー……前に、トマトもいたよー」
「トマトじゃと?」
聞こえて来る話を気にしないよう努めて、クロトは素材に合わせたスパイスの組み合わせを選んで、それぞれに適量をかけていく。
特に肉には、ふりかけたスパイスを刷り込んで馴染ませて。
それが終われば、スパイスがケンカしない組み合わせに分けておいて、焼くだけだ。
「千之助。そろそろ炎をお願いします」
「うむ、出番か。心得た」
クロトに促された千之助が、腰を上げる。
「1つ盛大に燃やすとするか」
「……竃に着火だけで大丈夫ですよ?」
その物言いに引っかかるものを覚えたクロトが、炎を放とうとしていた千之助の肩に手をおいて待ったをかける。
「大丈夫、燃やせば食える」
千之助は獄炎すら操る炎使い。
なれば食材を燃やす程度の炎を出すことくらい、造作もなかろう。
「燃やさなくて良いんですよ!? 着火してくれればそれで良いんですよ!?」
「黒焦げは僕も遠慮したいなー」
「え、着火だけ?」
クロトとニュイの言葉に目を丸くしながら、千之助は威力を絞った炎で2つの竈に火を灯す。
「では、こちらはUDCあり。こちらはUDCなしでお願いします」
クロトが左右の竈に網を載せながら告げる。2つ火を灯したのは、この為か。
「ニュイ、任せたのじゃ。私は火を付けたからの」
「任せて、兄さん! 乗せるだけなら僕だって出来るからねー!!
千之助の言葉に頷いて、ニュイはUDCありの食材を並べていく。
「では私はこちらを」
クロトは反対の網の上に、肉厚の椎茸を並べ始めた。
●贅沢で大切な時間
「んー!! 大粒いくら最高!!」
炊きたてご飯をたっぷりのイクラと共に頬張り、その触感と濃厚な味にニュイが足をパタパタさせる。
その動きで流れた空気に、パチパチと爆ぜる焚き火は2つ。
「あぁ贅沢ぅうう!! 分厚い鮭! おいしー!!」
「うむ。贅沢な美味だ。此処まで肉厚の鮭は初めてやもしれぬ」
UDCアリの焼き網から取った分厚い鮭の切り身に、ニュイと千之助が舌鼓を打つ。
塩をして焼いただけだが、分厚い身は噛めば肉のように脂が溢れて来る。
「兄さんは菜食なのかと思ったけど、鮭もいけるんだねー」
「さっきは焼けるのを待ってたからじゃ。鮭を食べるのに抵抗はない」
日頃から敵の血を啜る身じゃ、と千之助は笑って言いながら、鮭のハラミにイクラを合わせ頬張る。
(「急な味付け役には困惑したけど、二人共楽しそうだし、まぁ良いか」)
美味しそうに食べる2人を眺めながら、クロトも肉厚の椎茸を頬張る。自分で効かせたスパイスながら、素材の味を引き立てているのを感じる。
「キノコも野菜も最高だねー。やっぱり素材の狩りからやらなきゃね」
「おい、目がマジであるぞ」
そんな事を話していたニュイと千之助が、急にクロトに視線を向けた。
「クロトさんの味付けのお陰もあるよー。ありがとう!」
「スパイスの使い分けで、よくこうも味に違いが出るものだ」
2人の素直な、そして不意を付いた賛辞にクロトが眼鏡の奥で僅かに目を丸くして、それはどうも、と笑って返す。
「折角です。ニュイもスパイスの使い方、覚えてみます? まだ食材は十分あります」
「いいの? 教えてー!」
クロトの提案に、ニュイが目を輝かせて頷く。
「私も良いか?使い方を教われたなら、料理のたび今を思い出してきっと私が嬉しい」
「構いませんよ」
理由まで素直に口にした千之助に、クロトも笑って頷く。
「この食材なら……作るのは、カレー、でしょうか」
そしてしばし思案したクロトは、そのメニューを告げた。
大人数用を作りやすく。バーベキューの定番の1つである。
ルゥがあれば。
「え? スパイスからカレー? ……いきなり上級者向けでは??」
「僕、ルゥから作るのでさえ、超ドライカレーになっちゃうけど、頑張るよ!」
大丈夫かと不安そうな千之助の横で、ニュイがぐっと拳を握る。
ニュイだって判っている。スパイスからカレーを作るとなると、恐らく四苦八苦することになるであろうことくらい。
それでもいいのだ。
そんな苦労の時間すら、この3人なら楽しくて大切なのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黎・飛藍
ルイ(f18236)が同伴
何処ぞのお伽話には南瓜が馬車とか蛙が王子になったとかある。今回はその逆だな
魔法が解けて、元の姿に戻ったんだろ。大豊作だ
何がいいかと聞かれて、鮭はルイベと返す
そう言ったら何故か、ルイがあからさまに嫌そうな声を出したからホイル焼に変更
火を通すものが良いんだろう。おそらく
南瓜は字の如く適当にしてくれていい
出来上がったらそれを食すのみ
バター醤油の香りが食欲の扉を叩いているのがわかる
食後のデザートはホットケーキか…
ルイが苺牛乳と思しきものを飲んでいたものだから、味覚が子供っぽいんだなと、つい
キレたら鮭には骨の成長に必要な栄養素が詰まっているらしいぞと、適当に話を逸らす
小夜啼・ルイ
飛藍(f16744)に同伴
もうオレは只管に調理に没頭することにする
現実逃避だよ。そうでもしていないとツッコミ疲れちまう…
つーわけでフェイ、作るなら何がいい
は? ルイベ?(名前的に嫌)
…よし、ホイル焼だな。分かった
茸と鮭の切り身を醤油とバターで味付けして、鉄板に
それと紫色のホットケーキのたねは放置しっぱだと拙いから、ここで焼く
ついでにもう一ボウルたねを作って、ふかした南瓜を練り込む
色合い的にはこの時期にピッタリだ
焼きあがったならもう食うのみだけど
オレは苺牛乳を飲んで一息入れることにする
入院中のディストピア飯だった頃に比べれば、かなりまともな飯を食えるようになったな…
ぁあ?! 誰がガキだコラァ!!
●常識人は苦労する
「何処ぞのお伽話には、南瓜が馬車とか蛙が王子になったとかあるよな」
何やら語り始めた黎・飛藍が見ているのは、大きな鮭の身と南瓜――UDCだった様な気がする食材である。
「今回はその逆だな。魔法が解けて、元の姿に戻ったんだろ。大豊作だ」
「……」
そんな謎理論を、小夜啼・ルイは黙って聞いていた。
飛藍の理論で言うならば、南瓜はともかく鮭の切り身がおかしいのだ。
空に浮かんでいたサーモンの方は、そのサイズも、鮭であることも、何も変わっていないではないか。
――と思っても、ルイはそれを口には出さなかった。
「どうした。静かだな」
「ああ……いや、大丈夫だ」
言うほどに、大丈夫ではない。
ルイは疲れかかっていた――ツッコミ役に。
これ以上(特に飛藍に)ツッコミに回っていたら、ツッコミ疲れてしまう。
「少し疲れたが、料理にゃ問題ない。つーわけでフェイ、作るなら何がいい?」
そんな内心を凍らせて、ルイはいつもと変わらぬ声で飛藍に問う。
そうだ。
もうツッコまない。
(「もうオレは只管に調理に没頭することにする」)
そうすれば、これ以上疲れない――ルイが選んだそれは現実逃避と言えばそうであったが、ルイ自身もその点を理解しながら選んだ答えでもあった。
「鮭はルイベ」
「は? ルイベ?」
そんなルイの決意を、飛藍の答えが無情にも突き崩す。
ルイとルイベ。似ている料理名が飛藍の口から出たのは、偶然。
「ルイベはダメか? なら――ホイル焼き」
飛藍自身、そう言う事だと気づいていなかったが、ルイの声が不機嫌なモノに変わったのを聞き取って希望の料理を言い直していた。
(「まあ、多分冷凍だとダメな事があって、火を通すものが良いんだろう。多分」)
飛藍は理由を盛大に勘違いしたままだったけれど。
(「判ったようで判ってなさそうだが……まあいいか」)
「……よし、ホイル焼だな。分かった」
「おう。南瓜は字の如く、適当にしてくれていい」
ひとまず、収まる所には収まっていた。
●銀と紫と山吹色
「さて……やるか」
ルイは『stulti』を抜くと、まずは鮭の切り身を切り分け始めた。
元々がでかい為、そのままでは食べにくい。
切り分けたら軽く料理酒をかけてから塩を振って、水気と臭みを取っておく。
適当な大きさのアルミホイルを敷いて、茸を並べて軽く塩コショウ。
醤油を塗った鮭を茸の上に。最後に鮭の上に固形バターを載せたら、アルミホイルを折り畳んで、火を入れた鉄板の上に。
「鮭はこれで焼き上がりを待てばよし。で……あとはデザートだ」
鉄板の空いたスペースに、ルイは何やら紫色と山吹色のモノを円形に注いでいく。
それは、ホットケーキのたね。
紫色の方は、色の元はブルーベリー。戦いの中、ジャック・オ・ランタンの手に渡った気もするが、魔改造される前に取り戻したので焼いても大丈夫な筈である。
もう一つの山吹色は、蒸して裏ごしした南瓜混ぜて作った色だ。
こちらは完全に戦いが終わってから、今さっき作ったので安全そのものである。
「紫だけだとなんだし、こっちの方が色合い的にもこの時期にピッタリだ」
ルイは片面が焼き上がりつつあるホットケーキの上に、少量のたねを輪を描くように注いでいく。こうする事で、後でひっくり返した時に下に空気を入れてふわっとした焼き上がりになるのだ。
あとはどちらも、焼き上がりを待つばかり。
数分で、アルミホイルからはバター醤油の匂いが、ひっくり返したホットケーキからも甘い匂いが漂い始める。
●(ツッコミの)運命
「いい匂いがする。そろそろか?」
黙って待っていた飛藍が、その匂いに釣られて腰を上げた。
「バター醤油の香りが、食欲の扉を叩いているのがわかる。デザートは……この匂いは、ホットケーキだな」
(「犬か……」)
喉元まで出かかったツッコミを、ルイは胸中にとどめる。
とは言え、バターが溶けて醤油と混ざった香ばしい匂いと、焼き上がったホットケーキから漂う甘いバターの香りは、飛藍でなくても食欲を唆られるというものだ。
「ああ。鮭のホイル焼きと、ブルーベリーと南瓜のホットケーキだ」
どっちも熱いぞ、と言いながらルイは取り分けた皿を飛藍に渡す。
そうした所で、ずっと鉄板の前にいたからだろうか。
ルイは自分がひどく喉が乾いている事に気づいた。
(「自分の分を取る前に、一息入れるか」)
焼きすぎないように焚き火を凍らせ消しておいて、ルイはコップに苺牛乳を注いだ。一気に飲み干したルイの喉が、ゴクリと鳴る。
(「入院中の飯に比べたら、随分とマシなもの作って食えるようになったな」)
栄養補給のためだけの見た目の色合いなど無視した様な料理を思い浮かべながら、ルイはもう一度、苺牛乳をコップに注ぐ。
「この匂い……苺牛乳か」
アルミホイルを開こうとしていた飛藍は、その匂いに気づいた。
そして、つい。
「味覚が子供っぽいんだな」
本当に、つい。飛藍は悪気なく思ったことをそのまま口にしてしまったのだ。
「ぁあ?! 誰がガキだコラァ!!」
飛藍が口走ったその一言は、ルイに『今日はもうツッコまない』の決意を破らせるのに充分過ぎる威力を持っていた。
「お? おぉ、まあ落ち着け」
何故かは判らずとも、ルイが怒っているのは判る。
だから飛藍は宥めようとしたのだ。
「ルイ。鮭を食え。鮭には骨の成長に必要な栄養素が詰まっているらしいぞ」
「オレがチビってことかコラァッ!!!
その結果が、火にガソリンを注いだ様なものだったとしても。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
宴よ!宴の始まりよ!
バーベキューセットを鞄から出して南瓜とサーモンを焼いていくわ!
お頭も残さないわよ!
あとお酒ね!べろんべろんになるまで飲むわ!
歯止めはきかないわ!
いわば今の私は暴走機関車!
一匹の野獣!
止めるものはないわ!食い散らかすわよ!
・この子は飲むと笑い上戸の絡み酒になります
・特別酒に強いわけではなく、体調管理も下手なので吐くまで飲んで倒れる
・赤ワインが好き。ビールも好き
(アレンジ、アドリブ自由にフリーダムにお願いします。吐くなどの汚れシーン、ギャグ、他者への絡み歓迎!)
ルイーグ・ソイル
ひゃ~!なんか色々大変だったっすけど、これは「大漁」って言っていいんすかね…?
BBQ大会バンザイっす、お疲れ様でした乾杯ー!!
食事はパワー!がっつりサーモンイクラ丼をがっつりいただいて、兜焼きをつつき、南瓜を焼いたものも頬張って最後に南瓜スイーツをいただいてシメるっす!
折角なので他の人と色々お話出来ると嬉しいっすね!(連携アドリブ歓迎です!)
無明・緤
鮭!鮭!
道具を借りてバーベキューを楽しむぜ
美味しく食べてやるのが何よりの供養だ
メシマズ料理の悲しみを繰り返してはならない
大きな切身を貰い、シンプルに焼いて食べる
焼き上がりを待つ間も尻尾揺らし
マタタビをキメた猫みたいにまだー?まだー?と地面をゴロゴロ
良い匂いが堪らない
火が通ったらふーふー冷ましてガブリ
レーザーで焼いたのも美味かったが
やっぱ炭火は違う
美味そうな料理食ってる猟兵が居たら
【猫をこころに、ニャンと唱えよ】で飛び入りして
一口貰いにいくぜ
ちなみに猫が食べちゃいけない物は色々あるが
おれはケットシー、猫のようで猫ではない不思議生命体
香辛料やタマネギ・一部の海鮮もやや苦手なだけで問題なく食べられる
高柳・零
WIZ
最初の宣言通り、ちゃんちゃん焼きを作りますよ!
キマイラフューチャーでコンコンして取って来たキャベツと人参に南瓜を添えて、真ん中に大きな鮭の切り身を置いて料理します。
バターも塩胡椒も醤油もキマイラフューチャー産なので、材料費はタダです。
「皆さん、どんどん食べてください。何しろ、元手が掛かってないので」
完成したら皆さんに振る舞い、自分では食べません。
……何しろ、熊に食わせようとしましたから。
鵜飼・章
鵜飼流人間奥義には
『空気を読む』という高難度技がある
カマキリの観察に戻りたいけど(多分)読めた
これは何もせず食べて帰ると怒られる空気…
何となく炊きたてのお米がある気がするし
偶然にも味噌を持っていたので
僕は鮭のあらと余った南瓜で贅沢なあら汁を作って皆にふるまう
来る途中で見つけたシメジも入れよう
食べられる種類だから心配ないよ
鮭の出汁が染みた汁とほくほくの甘い南瓜
ご飯を入れれば〆の雑炊にもなるよ
残りのいくらも乗せてあったまろう
焼き鮭にはやっぱりお米と味噌汁
これって日本人特有か
所でルシルさんと魚類の因縁が気になる…
聞いてもいい?
つっこんだりしながら楽しく食事したいな
秋の恵みに感謝して
ごちそうさまでした
●道具屋さんが出来そう
「なんか色々大変だったっすけど、これは「大漁」って言っていいんすかね……?」
「良いのよ! 大漁よ! 宴よ!」
何だか自信なさそうに首を傾げるルイーグ・ソイルに、フィーナ・ステラガーデンが高らかに告げる。
「宴の始まりよ! 道具ならあるわ!」
紅い瞳をキラリと輝かせたフィーナの前には、フライパンやら鉄板やらダッチオーブンやら焼き網やら火バサミやらと言った、BBQセットがずらーっと並んでいた。
何処から出てきたって?
ちゃんとフィーナが背負って来たものだ。1章冒頭参照。
「にゃ? この焼き網借りても?」
「鉄板、いいですか? 作ったものは振る舞いますので」
「いいわよ!」
その道具の量に驚きながら、無明・緤と高柳・零がそれぞれに、二つ返事で頷くフィーナから必要な道具をレンタルしていく。
「飯盒はあるかな? 貸してもらいたいのだが」
そこに、新たな声がかかった。
振り向いたフィーナが、少し驚き目を丸くする。
「へ? あ、あるけど……(炊飯器の人が飯盒使って)いいの?」
「うむ。この恩は、ご飯で返そう!」
炊飯器のランプを光らせ、炊飯器の人は颯爽と米を炊きに去っていく。
「これは、美味しいご飯が食べられそうっすねぇ」
その背中を見送り、美味しいご飯の予感にルイーグの尾がゆらりと揺れた。
そんな光景を、鵜飼・章は少し離れて眺めていた。
殺人鬼コスプレの衣装の裾が風にはためいても、章自身は微動だにしない。
章はこの時、とっても集中していたのだ。
(「鵜飼流人間奥義――空気を読む」)
空気を読むと書いて、エア・リード。
章はこの場の空気を読んでいたのだ。本音を言えばさっさとカマキリの卵の観察に戻りたかったのだけれど。
「読めた。これは何もせず食べて帰ると怒られる空気……」
多分、と胸中で付け足して章はフィーナに鍋を借りにいった。
●どれもご飯に良く合いそう
――ジュウッ。
零の前の鉄板の上を、バターが滑って溶けていく。
ざっと木べらでバターを伸ばすと、零は食べやすい大きさに切って塩コショウしておいた鮭の切り身を、皮を下にして並べていく。
鮭の周りにぐるりと囲む形で並べるのは勿論、やや厚めにスライスした南瓜だ。更にざっくりと刻んだキャベツと輪切りにした人参を重ねていく。
野菜の上に固形バターを置いて、醤油をぐるりと一回し。鮭にも醤油をかけて、蓋をしてそのまま蒸し焼きに。
そして、待つこと数分。
「うん。良い感じに焼き上がりましたね」
漂うバターと醤油の香り。零が木べらを入れれば、鮭の身も南瓜もホロリと崩れる。鮭の身と野菜を混ぜつつ軽く炒めれば、鮭と南瓜のちゃんちゃん焼きは完成だ。
「炊きたてご飯は、ある空気だね」
飯盒を焚き火にかけようとしている炊飯器頭を遠目に見ながら、章は思案していた。
「そして僕は、偶然にも味噌を持っている」
味噌とは偶然持っているものだっただろうか。
だが生憎、そこにツッコむツッコミ役が足りない。
「誰も鮭のアラを使っていないんだね、勿体ない」
章が目をつけたのは『こんがりと焼かれて良く乾燥した』鮭の骨。
『人間失格』から拳銃の持ち手にも似た柄を持つ解剖用の骨鋸を取り出すと、章は鮭の骨をゴリゴリと解体していく。
「何か手伝うことは、あるっすか?」
そこに手持ち無沙汰だったルイーグが、何かないかと顔を出す。
「丁度いい所に来てくれた。確か、鈍器持っていたよね?」
「鈍器? これっすか?」
章に問われてルイーグが見せたのは、サーモンもぶっ叩いた棘付きメイス。
「うん。骨を砕いて鍋に入れて欲しい」
「力仕事ならお任せっす!」
ゴスンッ、ガツンッとメイスを振り下ろし、ルイーグは章が解体した鮭の骨を更に細かく砕いて鍋に入れていく。
その間に、章は骨鋸でそのまま南瓜を解体していた。
「あとは山の中で見つけたシメジも入れよう」
思い出したシメジは、メスで石突を落としてサクッとバラバラに。
中骨を中心とした鮭のアラ、南瓜とシメジ。
それらを鍋で煮込んで、味噌で味を整えればアラ汁の完成だ。
「美味しく食べてやるのが何よりの供養だ」
焼き網に挟めるサイズに切った鮭の身に、緤が塩を振る。
猫の指で塩を刷り込んで、焼き網にセット。
「メシマズ料理の悲しみを繰り返してはならない。鮭よ、美味しく頂いてやるぜ」
そのままかまどにセットして、傀儡『法性』に持たせて固定させる。
緤が作っているのは、シンプルな鮭の塩焼きだった。
恐らく、誰よりも早く出来上がるだろう。
とは言え、それなりにじっくり焼かなければならない。
「まだかな~」
緤は緑瞳の中の黒目を丸く見開いて、尾はゆらゆらと揺れている。
「まだー?」
待ち遠しいのか、緤はついには地面に伏せてしまった。
「まだかなー?」
漂う香ばしい匂いに耐えきれず、ゴロゴロ転がる緤。
こうなるともう、ケットシーと言うか、ほとんど猫である。
ピピッと傀儡から電子音。
「焼けた!」
ガバッと身を起こした緤は、焼き網を見ると、こんがり焼けた鮭の表面では身から染み出した脂が艷やかな輝きを放っていた。
「間違いなく美味いやつ……」
ゴクリと喉を鳴らし、切り身を皿の上へ置く。
「フーッ! フーッ!」
ビジュアル的に緤が焼き鮭を威嚇してるように見えなくもない風に冷まして、緤はそのままガブリと焼鮭に齧りついた。
脂の乗った身が、緤の中でホロリと崩れる。それだけならば、あの時、サーモンの背中の上でレーザーで焼いて齧ったのと同じだが。
あの時にはなかった香ばしさと旨味。
噛めば滲み出す、ギュッと詰まった魚の旨味。
「やっぱ炭火は違うな……」
しみじみと呟いた緤の耳に、小さな爆発音が響いた。
「これを残すのなんて勿体ないわよね!」
フィーナの前にあるのは、炎槍でこんがり焼いてやった、鮭の頭。
とは言え、あれから時間も立ってちょっと冷めている。
「外から焼いただけだしね――中からもっかい、焼いてあげるわ!」
ルビーをつけた杖を手に、フィーナはふわりと浮き上がる。
鮭の頭の上まで上昇すると、その口の中に掌を向ける。
弱めに放った炎の魔力が、鮭の頭の中で小さく爆ぜた。
●秋の恵みの宴
「にゃんっ!」
可愛らしい猫の鳴き声と共に転移してきた緤が見たのは、中から再加熱されて煙を上げる鮭のお頭(でかい)だった。
「ちゃんちゃん焼もできましたよー」
「アラ汁もあるよ」
そこに、零と章もそれぞれ完成した鮭料理を鉄板と鍋ごと持って来た。
「飯盒も預かってきたよ」
章に呼ばれたルシルが、飯盒を手に付いてきていた。
「宴らしく乾杯でもする? ビールと赤ワイン、あるわよ! 私は飲むわよ!!」
「僕はジャスミン茶があるから」
「あ、私もそれを貰えるかい? 帰りの転移がいる人もいるからね」
ちゃっかり飲む気満々のフィーナを筆頭に、銘々に飲み物を手にする猟兵達。
「BBQ大会バンザイっす! お疲れ様でした! 乾杯ー!!」
漂う白米の香りにやっぱり尾を揺らしたルイーグの温度で、杯が掲げられた。
「皆さん、熱い内にどんどん食べてください。何しろ、元手が掛かってないので」
醤油とバターの焦げた香ばしい匂いを漂わせる鉄板を前に、零は自身は一切食べずに周りにちゃんちゃん焼きをひたすら振る舞っていた。
「元手ゼロとな?」
「鮭と南瓜は現地調達。それ以外はバターに至るまで、全部キマイラフューチャーでコンコンして出てきたものなので、材料費、タダみたいなものなんですよ」
首を傾げた緤に、零が事情を説明する。
「コスパ良し、味も良し。素晴らしいな!」
黒い尾をゆらりと揺らして、緤は取り分けてもらったちゃんちゃん焼きに舌鼓。
だが――零は1つ、言っていない事があった。
自分でまったく食べない理由。
(「鮭は熊に食わせようとしましたからね」)
やっぱり、あの儀式で出てきたUDC食材にはまだ抵抗がある零だった。
こんがり焼けた鮭の頭から削ぎ落とした身を、ルイーグは丼に入れる。
その上からたっぷりとイクラを乗せれば、鮭イクラ丼である。
「食事はパワーと聞いたっす! ガッツリ行くっす!」
ガバっと取って、白米と鮭とイクラを口に入れる。
「おお……頭の身は背や腹の胴体の身とは異なる味っすね! これはこれで!」
なんでそんな事を知っているかと言うと、ルイーグの丼は、2杯目だった。
「焼鮭にご飯にお味噌汁。やっぱり、このセットだね」
これは日本人特有だろうか、と思いながらも章は割と満足していた。
アラ汁も、骨をたっぷり使ったお陰で良い出汁が出ている。
「これは……何とも深い、良い味じゃないか」
「後でご飯を入れれば、〆の雑炊になるよ」
隣に座ったルシルも、口元を緩ませアラ汁に舌鼓を打っていた。
とは言え、章はただアラ汁を振る舞うだけで彼を呼んだのではない。
「所でルシルさん。魚類との因縁が気になるんだけど……聞いてもいい?」
そう。章には聞きたい事があったからだ。
「ああ、それを聞かれてしまったか」
章に問われたルシルはお椀を置いて、何処から話したものか、と少し思案する。
「そうだね。あれは今を去ること約30年前。私が初めてこの世界に来て、まだ間もなかった頃だ。その時、私はアトランティスという失われた古代都市の話を知ってしまい、それを調べたくて海に出ていて、便乗した船の上で魚粉の作り方を習っていた」
おい、なんかのたまい出したぞこのエルフ。
しかも決定的におかしな点がある。
「……待って、ルシルさん。その話――ホラ話だよね?」
「ははは。バレたか」
あっさりと章に看破され、ルシルは笑って誤魔化していた。
「あ、ちょいとお話中、いいですか?」
そんな2人に、零が声をかける。
「彼女――大丈夫でしょうか」
「ひっく」
零が指した先には、顔を真っ赤にしたフィーナの姿があった。
「うふっ、ふふふふっ!」
頬を染め含み笑いを浮かべるフィーナの姿は、妖艶さも――幾らかあったかも知れないが、特徴的なしゃっくりと、抱えたワインの瓶が割と台無しにしていた。
フィーナの足元の少し先に転がっている赤ワインの瓶が、大体原因だろう。
1本1人で丸っと、飲んじゃったようだ。
「らににょー! わらしはよっへはいはほー!」
多分、私は酔ってない、と言っているんだろうが、フィーナは既に呂律も怪しいほどにべろんべろんである。
「ううむ……どうしたものか」
その様子に、緤も手を出しかねていた。
「ごちそうさまでした。じゃあ僕はこれで。カマキリの卵の観察に戻――」
「ははは、逃さないよ」
フィーナの酔いっぷりに迷わず回れ右した章の首根っ子を、ルシルがひっ掴む。
「あんははひ! はへはひらひゅえ! のひははいひょー!」
「うーん。『さてはシラフね。飲みなさい』とか言ってる。絡み酒っぽいよ?」
「え? なんて言ってるか判るんっすか?」
呂律が大分怪しいフィーナの言葉を何故か平然と解読して見せた章に、ルイーグが目を丸くする。しかも当たってるんだこれが。
「ふふん! ひはのわらしはろーほーひきゃんひゃ! いっひひのやひゅー!」
今の私は暴走機関車、一匹の野獣。
そう言っているつもりで、もう誰にも止められないつもりで。フィーナが一歩、踏み出した足は――転がっていた空き瓶を踏んだ。
「はえ?」
「「「「あ」」」」
ツルッと滑る瓶。宙に浮くフィーナの身体。
フィーナ自身は何が起きたか、恐らく判っていなかっただろう。
そして他の誰にも止める暇もなく。ごっちんっ、と痛そうな音を立ててコケたフィーナは、そのまま目を回して気絶していた。
大成功
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ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)】と
ニコと!うさみの!3分クッキング…!(照れが入る)
因みに俺が助手でうさみが先生だ、どうぞよろしく
先生、今日は鮭のホイル焼きですね
一つ一つ読み上げられる食材を復唱しながら
えのきに差し掛かった時点で耐え切れずに…
「榎だけに、えのきか…」と呟いてしまったが
大丈夫だ、きっとさりげ無さすぎて気付いておるまい
作り方は…ほう、確かに簡単で有難い
待つ事暫し、良く火が通った鮭のホイル焼きの完成だ
ゲスト…?と思ったら、此れが噂のドラみっちか
初めましてと礼儀正しく一礼するが、崇め奉った訳では無いぞ
うさみとドラみっちの仲睦まじい様子を微笑ましく眺めていれば
…分かった分かった、少し分けてやる
榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
ニコと!うさみの!3分クッキング~!
3分で出来るかはともかく!
今日はこちらの新鮮ピチピチな鮭のホイル焼きを作るぜ!
材料は鮭の切り身、えのき、塩コショウとか調味料色々!
…ん?今ニコくん何か言ったかね?←えのき・うさみっち
作り方は簡単、アルミホイルの上に鮭とえのきを敷く!
調味料系をかける!ホイルを包む!
BBQコンロで焼く!ほい完成!
ホイルを開けた時のこの湯気と香りがたまらないぜ!
そうだ、ゲストにこいつもお呼びするぜ!
俺の相棒、ドラみっちだ!(装備欄参照)
俺と同じくらい崇め奉れよニコ!
どうだドラみっち美味いだろ~良い食いっぷりだな!
さて俺も自分の分を食べ…って無いー!?
●ここNGシーン
「……ニ、ニコと!」
「うさみの!」
「「3分クッキング~!」」
そんな声を重ねたニコ・ベルクシュタインと榎・うさみっちは同時に手を掲げ、サイズの違う2人の掌が合わさ――。
「照れが残ってる! やり直し!」
合わさらず、うさみっちの掌がニコの額をぺちっと叩いた。
「……うさみよ。何故に監督モードに」
「ちっちっち。監督ってのは、魂でなるものなんだぜ」
やきゅみっちも出していないのに、と呻くニコに、うさみっちは立てた指をふりふりしながら、なんかそれっぽい言葉を返す。
「というわけで、Take2!」
撮り直しになりました。
●企画に無理があった
「ニコと!」
「うさみの!」
「「3分クッキング~!」」
ニコが頑張って照れを押さえた声はうさみっちの声ときれいに重なり、今度は掌もパチンと合わさる。
「よし! でも時間押してるので巻いていくぞ!」
「誰のせいだ誰の」
どっちもどっちだと思います。
気を取り直して、2人は番組風に料理に取り掛かる。
「うさみ先生、今日は鮭のホイル焼きですね」
「うむ、今日は新鮮ピチピチな鮭が手に入ったからな!」
どうやらニコが助手役で、うさみっちが先生ポジションのようだ。
「というわけで、材料はまず鮭! メインだ!」
「鮭の切り身です。臭みが気になる場合は、事前に料理酒と塩を軽く振って5分強置いてから、キッチンペーパーなどで水気を取っておくと良いでしょう」
うさみっち先生の掲げた材料を、ニコ助手がついでにワンポイントも押さえながら復唱していく。
「そしてえのき!」
「えのきです。えのきは石突を切って……」
そこまで言ったニコが、ふっと顔を背けて片手で口元を抑えて小声で呟いた。
――榎だけにえのきか。
うさみっちの名字の『榎』は『えのき』と読むのだ。
なお、榎一文字ではニレ科の樹木の事を指すが、その樹の枯れたものや切り株に良く生える茸なので『えのき茸』と呼ばれるのである。
閑話休題。
「……ん? 今ニコくん何か言ったかね?」
「いや、何でもない。巻きでいくのだろう?」
ニコが思わず呟いた声は、うさみっちにはよく聞こえていなかったようで、その一言で調理は粛々と進んでいく。
「あとは塩コショウとか調味料色々!」
「固形バターとコンソメはかかせません。醤油やマヨネーズはお好みで――では先生、早速、調理の方をお願いします」
調味料はサクッと済ませて、うさみっち手動の調理はどんどん進む。
「作り方は簡単。まずアルミホイルを敷く! ニコくん、そっち押さえて」
うさみっちの小さな手がアルミホイルの端を掴んで、そのままバックでブーンと飛んでアルミホイルを引っ張り出して行く。
ニコがケースを押さえてくいっとひねって、アルミホイルを正方形に切った。
「そして鮭とえのきを敷く!」
アルミ上に鮮やかな紅色の鮭の切り身を置いて、ばらしたえのき茸を載せていく。
ニコの手が。
「調味料系をかける!」
ここはうさみっちが自分の手で塩コショウをぱぱっと振りかけ、固形バターを載せて、砕いた固形コンソメを散らす。
「ホイルを包む!」
ここはやっぱりニコの手が。
「BBQコンロで焼く! 待てば完成! 簡単!」
「ほう、確かに簡単で有難い」
説明を終えてドヤるうさみっちに、思わず素に戻ってニコが頷く。
そして2人は、どちらともなく沈黙したまま、焼き上がりを待ち始めた。
――1分経過。
「……」
「……」
――2分経過。
「……」
「……」
――3分経過。
「ところで先生。焼き時間は何分ほどで?」
「大体、15分くらい?」
3分で終わるわけがなかった。
●焼けました
ガサガサとアルミがこすれる音を立てて開かれる。
ふわりと漂うバターの香り。
「この湯気と香りがたまらないぜ!」
「良く火の通っている。これは簡単で美味いな」
溶けたバターには、アルミで封じ込められた鮭とえのき茸の旨味が凝縮されている。解した鮭をバターに絡めてえのきと一緒に口に入れれば、まさに絶妙。
ここに醤油漬けにしたイクラを乗せるのもまた美味だ。
「醤油を足しても良さそうだな」
「マヨも行けるらし――あ、そうだ」
鮭のアレンジについて話す中、うさみっちが何かを思い出した。
「ゲストにこいつもお呼びするぜ!」
「ゲスト? 2人分しか作ってないが?」
誰のことかと、ニコが首を傾げる。
「俺の相棒、ドラみっちだ!」
うさみっちの後ろで、ピンク色の翼が広がる。
「ほう……此れが噂のドラみっちか」
初めて見るうさみっちの倍はあるピンク色の小さなドラゴン――ドラみっちに、ニコは少し感嘆の混ざった声を上げる。
「そうだ、ドラみっちだ!」
『ふぎゃー!』
その感嘆を感じてドヤるうさみっちに釣られるように、ドラみっちも竜の翼を大きく広げて羽ばたき、テーブルに降り立つ。
「ドラみっち、食っていいぞ。美味いぜ~」
『ふぎゃっ』
うさみっちに促され、ドラみっちは熱々のサーモンに勢い良く齧りついた。
「よしよし。良い食いっぷりだな!」
ドラみっちに相好を崩すうさみっちに釣られるように微笑を浮かべながら、ニコは椅子から腰を上げた。
「初めまして、ドラみっち」
「そうそう。俺と同じくらい崇め奉れよニコ!」
ニコの丁寧な一礼に、何故かドラみっちより満足げにうさみっちがドヤる。
「挨拶をしただけで、崇め奉った訳では無――」
言いかけたニコの言葉が、うさみっちの前の皿を見て固まった。
アルミホイルしか残っていない。
中の溶けたバターまで、きれいになめ尽くされている。ドラみっちに。
「……仕方ないな。少し分けてやる」
「ん? 何言って――って、俺の分が無いー!?」
『ふぎゃ?』
溜息混じりのニコの言葉で、皿が空な事に気づいたうさみっちの悲鳴が、秋の空に響き渡った。
――なお、少し分ける、で済まなかったのは言うまでもない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
姫城・京杜
誉(f11407)と
料理は食材との戦闘だからな(強引
【紅の創造】でアウトドア料理の万能選手・ダッチオーブン召喚
南瓜の中身?よしきた!(必要器具召喚し綺麗にくり抜き
まずは、ちゃんちゃん焼きを
だが俺のは一味違うぞ!(超手際良く作りつつ
仕上げにたっぷりチーズかけて少し蓋して、とろーりとろけさせる!
デザートに南瓜プリンも作るぞ
あとイクラと鮭で海鮮親子丼!
醤油と山葵は勿論、だしかけて上品にもいただけるぞ(どや
エリンギ!おまたせ!!(デレ
あ、ルシルもよかったらどうぞだ!
誉は…トリックオアトリート!
…ん?俺があげる方??
仕方ねェな、神の力で創造したクィーンレッドサーモンのミニフィギュアでいいか?(渾身の力作
御剣・誉
京杜(f17071)と
ふーむ
南瓜といえばハロウィン
よし!エリンギのためにジャック・オ・ランタンでも作るか
あ、でもこの南瓜まだ中身あるじゃん
オレには必要ないしなぁ
京杜ー、この南瓜(の中身)どうしよ?
それから…
ルシル、なんかいい道具ない?
中身がくり抜かれた南瓜を器用に削って
南瓜ランタンを作る
んー、こんな感じの顔か?
お、なんかイイ匂いもするぞ?
腹減ったなー
よし、エリンギ
これ持って「トリックオアトリート」って言ってみな?
京杜やルシルは何をくれるかなー?
あ、なんか貰ったらオレにも分けてくれよ!
うぉぉぉぉ!
なんだそれマジかっけー!(キラキラ
ダーメだ、エリンギ!
その鮭はオレのものだっ!
絶対にやらねぇぇっ!
●料理とは食材との戦い
「来たれ、我が神の手に」
姫城・京杜の掲げた掌の先に紅い焔が立ち昇り、欠片が紅葉と舞い上がる。
焔が消えた時、京杜の手にはカービングキットが握られていた。
「まずは穴を開けないとな」
京杜はキットの中から鋸に似た波打つ刃を持つナイフを選び、南瓜に突き立てる。
ゴリゴリと丸く斬り込みを入れ、ヘタを掴んでぐっと引き上げる。
「誉、それを切ってくれ」
「おう!」
ヘタと繋がっているワタを、御剣・誉がラヴィアンローズで切り落とした。繋がったまま引き抜くよりも、一度ワタを切ってワタはワタでくり抜く方が楽なのだ。
後はワタを抜いた空間から、くり抜きスプーンを入れて南瓜の実をゴリゴリと身を削り取って行くだけである。
「すげえ……何やってるのか判らないけど、京杜がすげえの判る」
あっという間に南瓜を空っぽにした京杜の手際を、誉はぽかんと目を丸くして眺めるばかりだ。
「こんなもんでいいか?」
「おう。後はオレがやってみるぜ」
随分と軽くなった南瓜を受け取り、誉が頷く。
これで仔竜エリンギに、ジャック・オ・ランタン作ってやろうと言うのだ。
「さて……ここからが本番だ。来たれ、我が神の手に」
南瓜を抱えて川原に向かう誉を見送って、京杜は次はダッチオーブンを召喚しようと、再び腕を伸ばした。
くり抜いた南瓜の実は、潰して裏ごし。
そこに卵と牛乳、砂糖を混ぜ合わせて卵液を作る。
焼き上がるのを待つ間に、鮭の身と野菜を適当な大きさに切り分け、ホワイトソースと味噌を混ぜ合わせておく。
「南瓜プリンは――よし、あとは冷やすだけだ。というわけで、ルシル、頼む」
「任された。冷やすのは得意だよ」
ルシルに南瓜プリンを冷やすのを任せて、京杜はざっと洗ったダッチオーブンを、再び焚き火の上に乗せた。
余分な水気が飛んだらバターを入れて、切った野菜と鮭を並べる。
鮭と野菜が浸るくらいに、少量の酒で伸ばして味噌と合わせたホワイトソースを注いで蓋をしたら、しばし蒸し焼きに。
湯気が立ち始めたら、仕上げにたっぷりのチーズを入れて、もう一度蓋をする。
数分後、鮭をほぐすようにしつつ、とろーりとろけたチーズを混ぜ合わせれば、グラタン風のちゃんちゃん焼きの完成だ。
一方その頃、誉は南瓜と格闘していた。
「んー、確かこんな感じだったよな?」
斜めに傾けた半円で、つり上がった左右の目。
口は一度三日月型に切ってから、ギザギザの切込みを入れて歯を表現。
川原に胡座をかいた誉は、記憶に新しいカボチャ頭を思い浮かべながら、器用にナイフを扱い南瓜を顔へ変えていく。
「お? なんかイイ匂いしてきたなー」
誉の鼻腔をくすぐった匂いは、チーズだろうか。
「きっともうすぐだぞ、エリンギ――って、あれ? どこ行った?」
誉が視線を戻すと、傍で見ていた筈の仔竜の姿が見当たらなかった。
『ぎゃっ♪ ぎゃっ♪』
だけど楽しげなエリンギの声は聞こえる。
目の前の南瓜から。
「んー?」
誉が覗き込むと、いつの間に入り込んだのか、エリンギが楽しそうに南瓜の中でコロコロと転がっていた。
●ハロウィンには少し早い
「待たせたな、誉、エリンギ! ――って、エリンギは何処だ?」
完成した料理を運んできた京杜が、誉と南瓜しか見当たらずに首を傾げる。
『ぎゃぅー』
「かっわ…………!」
そして、南瓜の中から顔を出したエリンギに、京杜の何かが撃ち抜かれた。
「そー言うもんじゃないんだけど……ま、エリンギが楽しいならいいかなって」
「そうか。エリンギ、良かったなぁ……」
さておき、食事である。
「グラタン風ちゃんちゃん焼きと、イクラと鮭の海鮮親子丼だ!」
「おお! エリンギー、出てこい。美味そうな飯だぞ!」
『ぎゃっ』
京杜がドヤ顔で並べた料理に、1人と1匹が目を輝かせる。
「海鮮親子丼は山葵醤油をかけるのもいいが、出汁をかけても上品な味わいになるぞ」
「オレは半分ずつかな。エリンギは――山葵ダメかもしれないから、出汁だな」
「出汁かけ? それは他の人達もやっていなかったね」
京杜が並べた淡い色合いの出しが入った瓶を見て、誉もルシルも、思い思いに丼にかけていく。
グラタン風ちゃんちゃん焼きは、見た目は一見洋風ながら、口当たりは和風に近い。
チーズも醤油とも出汁ともよく合うので、どちらをかけていても海鮮丼ともピッタリのおかずである。
「エリンギー、食ってるか? 食ってるな?」
『ぎゃぎゃっ』
「これは本当に美味いねぇ」
箸と口が止まらない誉とエリンギとルシルの様子に、京杜は満足げな笑みを浮かべ、自分も丼にかけようと出汁に手を伸ばした。
●譲れぬものがある
「あ、そうだ。エリンギ。あれやるぞ」
デザートの南瓜プリンまで食べ終わって、誉が何かを思い出す。
満腹になってコロコロしていたエリンギが、その一言に顔を上げて頷くと、何をするのかと見守る2人の前で、また南瓜の中へと入っていった。
「トリックオアトリート」
『ぎゃぎゃっぎゃ、ぎゃーう』
どうやら誉に合わせて、エリンギも「トリックオアトリート」と鳴いてたらしい。
「さーて、京杜やルシルは何をくれるかなー?」
「トリックオアトリート……ん? これはもしや俺があげる方??」
「え? 私もかい?」
ハロウィンには大分早い誉の不意打ちに、京杜とルシルが顔を見合わせる。
「こんなものしかないよ」
そう言いながら、ルシルは『fupark』の上で、おむすびを焼き始めた。
「仕方ねェな。神の力を思い知らせてやろう!」
後で、とは言えなくなった流れに、京杜は拳を固めた腕を掲げる。
「来たれ! 我が神の手に!!」
調理器具を作った時以上の京杜の気合に、紅い焔も猛り狂う。
轟と燃え上がった焔は、十数秒かけて徐々に小さく、凝縮されていく。
「クィーンレッドサーモンのミニフィギュア……渾身の……力作だ」
どんだけ全力使ったのか、肩を大きく上下させた京杜の手にあったのは、少し前まで空にいたのをぎゅっと小さくしたような、リアルなベニサケフィギュアだった。
「うぉぉぉぉ! なんだそれマジかっけー!」
精緻でリアルな出来栄えに、誉がキラキラと目を輝かせる。
後ろでエルフも「欲しい」と顔に出ているけれど、まあそれは置いといて。
『ぎゃぅっ♪』
「ダーメだ、エリンギ!」
あらたな友達と思ったか、飛びつこうとしたエリンギを、誉の手が制する。
「分けられるものじゃない以上、その鮭はオレのものだっ!」
『ぎゃぎゃー!』
「ダメだ、絶対にやらねぇぇっ!」
抗議する様にエリンギが鳴くも、誉に譲る気はない。
だが――その声は、京杜には届いていた。
「ふんっ!」
突如後ろから伸びた京杜の手が、誉をぶん投げる。
ずっとエリンギにデレデレしていた京杜が、誉かエリンギかでどちらを取るかなど、迷う筈もなかった。
「エリンギが欲しいと言っているんだぞ、誉!」
「ダメだ、絶対にやらねぇぇっ!」
「もう一つ創ればいいだけだと思うんだけどなぁ……あ、おむすび焼けたよ」
『ぎゃっ』
本気バトルを始めそうな2人を、エルフと仔竜はちょっと離れて眺めていた。
●日常の終わり
思う存分、美味いものを食べたり、美味い酒に酔い潰れたり。
何かを巡って無駄に本気を出したり。
仲間との大切な時間を過ごしたり。
思い思いに、初秋のある日を過ごした猟兵達は、それぞれの場所へ去っていく。
――誰もいなくなったその川原に、異臭漂う儀式が行われていたような名残など、僅かにも残ってはいなかった。
大成功
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