●対決は唐突に
東京都内の、老舗うどん屋『じぇにぃ』の厨房内にて──。
菜箸を手にした明渡理来(めいとりく、20歳、女、独身)と、湯切り笊をまるで武器のように構えた辺根イト(べねいと、40歳、女、バツイチ)が互いを牽制し合うように対峙していた。
「来いよ、辺根イトッ! 湯切り笊なんか捨てて、かかってこいッ!」
「てめぇなんか、てめぇなんか、怖かねぇッ! 野郎、ぶっかけてやらぁぁぁぁぁッ!」
この日、うどん屋じぇにぃの厨房長の座をかけて、ふたりの女が激突しようとしていた。
明渡理来がお客に提供するのは『大佐海老天うどん、大好物なグリーンベレー添え』である。
これに対して辺根イトが供するは『かかし風ぶっかけうどん』であった。
総支配人の蟻足(ありあし、50歳、男、既婚)が、ふたりの戦いを洗い場から楽し気に眺めている。最早、待ったなしの展開だった。
ちなみに、明渡理来と辺根イトがうどん勝負に至ったいきさつには何やかんやあったのだが、その辺の何やかんやはいずれ明らかになる──かも知れない。
余り大した経緯ではないようにも思われるのだが。
それは兎も角、果たして、このいずれがより多くの舌の肥えたお客を唸らせることが出来るのか。
●困惑の依頼
アルディンツ・セバロス(ダンピールの死霊術士・f21934)は、グリモアベースに集めた猟兵達の前で何ともいえない、微妙な表情を見せていた。
「いや、まぁ、UDCなのは間違いないんだけど」
いいながら、辺根イトの写真を一同に見せる。運転免許用の写真らしいが、撮影の瞬間に目をつぶってしまったらしく、半分寝ているような顔つきになっているのが印象的だった。
セバロスの説明では、間違いなくこの辺根イトなる中年女性はUDCのオブリビオンだということなのだが、かなり奇怪な性質を持っているらしい。
どうやら辺根イトは、うどん邪神型UDCとして何やら良からぬ影響を色々とばら撒いているようだ。
事実、彼女が作ったうどんを食した一般人はうどん以外は何も考えられなくなり、生活に支障をきたすようになっているとの由。
そして何より厄介なのが、自身の本能で負けを認めない限り、何度倒しても復活してくる厄介な相手だということだった。
「普通に物理攻撃や魔法攻撃をぶつけてもね、確かにその時には消滅するんだよ。でもしばらく経つと、まるで何事もなかったようにしれっと生き返ってるから、とても厄介というか、面倒臭い奴なんだ」
ではどうやって倒せば良いのか。
ここでセバロスは物凄く奇妙な解決法を提示した。
「うどんだね、恐らく。彼女は生前、うどん職人として物凄く高い……それこそチョモランマなんざ目じゃないよっていうぐらいの高いプライドの持ち主だったんだそうだ」
だから、うどんの味勝負で彼女を打ち負かす、或いは彼女が作ったうどんを全部平らげた上で普通に戦いを挑むことが出来たら、きっと倒せるだろう。
しかし侮ってはいけない。辺根イトは『駒うどん職人』或いは単純に『駒うどん』という称号を持つ、恐ろしい実力者なのだという。
勿論、猟兵が腕を競ってうどん勝負に持ち込んでも良いし、彼女が作るうどんを真面目に食し、完食した上で不味い不味いと面罵して普通に戦うという方法もある。
或いは、明渡理来なる女性に助太刀するという手もあるようだが──。
「辺根イトには、子飼いのUDC化職人も大勢居るみたいだから、本当に戦う場面になったら集団戦、ってことになるのかなぁ?」
自分でいいながら、本当にそんな局面が訪れるのかと首を捻るセバロス。かなり、自信が無さそうだ。
「それからこの、明渡理来さんなんだけどね、うどん屋じぇにぃの厨房長の座を賭けて辺根イトと戦う為の資格を得る試練として、格安駒うどん店『えんりけす』の裏社会向け調理場に潜入し、何とかいうレシピを密かに奪ってくるよう命じられたそうなんだ。まぁ普通に考えれば窃盗罪なんだけど、どうもこのえんりけすに関してはその辺が色々免除されてるらしいよ。嘘みたいな話だけど、裏社会ってんだから、その辺は法律も通用しないとこなんだろうね」
半ば投げやりに、セバロスは肩を竦めた。
どうやら、この件は彼にとってもかなり面倒臭いらしく、さっさと解決してしまって欲しいというのが本音のようであった。
ちなみに駒うどんというものが一体何なのか──については、セバロスもよく知らないという話だった。
一応調べてみようとはしたらしいが、色々とややこしそうな話だったから、途中で投げ出したんだとか。
「あぁそれから例の裏社会向け調理場なんだけどね、厨房に入る際には合言葉が必要なんだって。筋肉もりもりっていわれたら、マッチョマンの変態だ、って答えるんだってさ。やっぱりちょっとおかしいよねぇ」
おかしかろうが何であろうが、任務は任務だ。
だが、敵を知らなければ色々と困ることもあろう。先ずはうどん屋じぇにぃのある町に赴き、うどんと絶妙に絡み合うUDCの雰囲気を味わってきてはどうだろうとセバロスは提案した。
その後で明渡理来と共にえんりけすに潜入し、そこで辺根イトを屈服させる材料を探し出せば、きっと解決の糸口が見つかる筈だ。
革酎
こんにちは、まだ素人感満載の革酎です。
辺根イトは何か特別な親玉みたいに書いてますが、一緒に居る他のUDCと同じで、基本は雑魚みたいな戦闘力です。が、すぐに復活してしまうので、その点だけがやや特殊なのですが、倒す条件さえ整えれば集団戦の中の一体として普通に処理できます。
後は上手く、うどんで何かんや、やって下さいませ。
尚、どこかで見たことがあるような風景があるやも知れませんが、その辺は『気のせい』だと思って、割り切って頂けますと幸いです。
第1章 日常
『うどん大好きクラブ』
|
POW : 力強くうどんを食べる
SPD : 器用にうどんを食べる
WIZ : 賢くうどんを食べる
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戌吠・左(サポート)
『左は、左の道を往く。』
ヤドリガミの破戒僧 × フードファイター
年齢 19歳 男
外見 189.7cm オレンジの瞳 青髪 普通の肌
特徴 庶民派 世間知らず 眼光鋭い 人がいい 散歩好き
口調 忠犬(自分の名前、あんた、だ、だな、だろう、なのか?)
時々 不動(自分の名前、呼び捨て、言い捨て)
水瀬・和奏
まずは美味しいうどんを食べ……じゃなかった、情報収集と行きましょう。
……え、うどんが食べたいだけじゃないかって?
いえ、腹が減っては戦はできぬとも言いますし、ね?
それに、敵がうどん職人ならお店で何か情報が得られるかもしれません……!
(口コミサイトで美味しいうどん屋の【情報収集】をしながら必死の言い訳)
カレーうどん大盛りに……あとはコロッケとかき揚げ追加で。
カロリー?……これから戦闘になれば消費するから大丈夫ですよきっと(遠い目)
※アドリブ・連携歓迎です
うどんを供する者と食する者の間には、ある種の絆があるのではなかろうか。
少なくとも水瀬・和奏(重装型戦闘人形・f06753)には、そう思えてならなかった。
(べ、別にうどんが食べたかった訳じゃないんですからね……これは、そう、情報収集です。そ、それに腹が減っては戦は出来ぬともいいますしねッ)
この場は特にツンデレが求められている訳ではないのだが、何故かツンになりたいお年頃。それは兎も角、和奏は何故か森林迷彩色で彩られた木製の扉を押し開けた。
中からは、
「ようこそおいでやすぅ、でありますッ!」
などと、京都弁なのか軍隊調なのかよく分からない出迎えの声が飛んできた。
いささか面食らいつつ、和奏はカレーうどん大盛りにコロッケとかき揚げという針が振り切れそうな高カロリーのトッピングで、敢えて挑むことにした。
一応、口コミサイトでこのうどん屋が美味しいとの情報は掴んである。和奏に、隙は無い。
そして五分もしないうちに、注文した全ての品がカウンター席の前に並んだ。
その時、驚くべき事態が生じた。
突然和奏の耳に、コロッケが語りかけてきたのである。いや少なくとも、和奏はそのように感じた。
今、そのコロッケは和奏の箸先に捉えられ、人生の最期を迎えようとしていた。
「私を覚えているかね、和奏」
「あなたはコロッケ……っていうか、コロッケって普通、どこにでもあるから忘れる忘れない云々以前の話じゃあ……」
至極当然の正論を口にした和奏だが、しかしコロッケは更に挑戦的な台詞を放った。
「私を食せば、そのかき揚げがより高密度カロリーとなって君に襲い掛かるだろう。それでも良いのか?」
「じょ、上等ですッ!」
和奏は奥歯をぐっと噛み締めた。この時、何故語りかけているのがコロッケだけなのか。かき揚げには人権すら許されていないのか。ということを考えないのが、和奏スタイルである。
今の和奏にとって、戦うべき相手はコロッケ。カレーうどん大盛りは何も語らないが、きっと胸の内で和奏を応援してくれていることだろう。
「ならば食すが良い。だが覚えておけ。私はコロッケ四天王のうちでも最弱。残りの三人が必ずや、君を打ち倒しに参るだろう……」
ごくり──和奏は喉を鳴らして唾を呑み込んだ。
ここでふと、隣に座る長身の影に視線を送る。そこに戌吠・左(苔の咲くまで・f11843)の神妙な顔つきがあった。
「さぁ、食すならば食せ。その時、大いなる災いが君に襲い掛かるであろう」
コロッケの声かと思っていたのは、左の声だった。
どうやらフードファイターの彼は和奏に対し、コロッケと戦う為の心得を伝授しようとしていたらしい。
「あの、そういうの、結構ですから」
「あぁそうかい。じゃあそのかき揚げを……」
箸先で和奏のかき揚げをつまもうとした左だったが、和奏の猛然たるブロックで完璧に阻止された。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
刑部・理寿乃(サポート)
ドラゴニアンのサウンドソルジャー × 竜騎士
年齢 28歳 女
外見 145cm 紫の瞳 ピンクの髪 白い肌
特徴 ウェーブヘア 実は用心深い 年下に見られる 胸が大きい
口調 女性的(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)
覚醒時は 真の姿:暴竜(俺様、てめぇ、だ、だぜ、だな、だよな?)
『貴方にちからを……』
歌うことで皆に力を与えます
川咲香・忍
※アドリブ・絡み歓迎
…なんだ?この既視感。なんだか政治もやっちゃうアクションスターが丸太担いで出てきそうな…。
…とりあえずは問題のうどん屋を調査するぜ。っと、ちょっと時間が遅くなっちまったな。
おーい待ってくれ!ちょっと!おーい待ってくれ!…閉まったかと思ったぜ。
店に入ったら冷うどん特盛を注文して、待ってる間に店内と厨房の様子をそれとなく観察するぜ。(【第六感】【情報収集】を使用)
…味は普通に美味いな。つゆもちょうどいい濃さで出汁が効いてて麺にしっかり絡んでくる。けど一番気に入ってるのは…値段だ。
…ところで俺、さっきから無意識にどっかで聞いたことあるフレーズを喋ってるけど、これもUDCの仕業か?
うどん屋じぇにぃ。
その前に黙然と佇む、川咲香・忍(クズでおなじみ・f18903)は、軽い眩暈のような精神的衝撃を受けた。
(う……何だ、この既視感は……何だか政治もやっちゃうアクションスターが、丸太担いで出てきそうな雰囲気が)
件のうどん屋を調査すべく、夜の町へと繰り出してきた忍。少しばかり遅くなってしまったが、うどん屋は軒先に煌々と篝火を焚き上げていた。
いや、何故普通の街中で篝火なのか。その辺、もっと気にしても良い筈なのだが、忍は全く気にもしていなかった。
その時、店員が例の迷彩模様の扉を開けて、暖簾に手をかけた。もしや、看板なのか?
「おーい待ってくれッ! ちょっとッ! おーい、待ってくれッ!」
慌てて忍が駆け寄ると、黒人でスキンヘッドの店員が何故か妙な笑みを湛えて、忍の来着を待ち続けた。
「閉まったかと思ったよ」
「とんでもねぇ、待ってたんだ」
直後、忍は店内に引きずり込まれた。
カウンター席に通された忍は、何故無意識のうちに、あんな台詞を口にしたのか、自分でもよく分からなかった。しかも、普段なら絶対いわないような口調で。
(これもUDCの仕業なのか……恐ろしい)
その時だった。
不意に隣りの席から、何者かが映画のオープニングテーマのようなメロディーをアカペラで口ずさみ始めた。忍が慌てて振り向くと、そこには釜揚げうどんを食い終えた刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)が、ちょこんと座っていた。
「じゃらららじゃらららじゃらららじゃららら、ちゃーんちゃんちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ……」
まるで屈強な元軍人が大勢の敵を相手に廻して大立ち回りする映画の出だしのような、そんなメロディー。
この時、忍が血が沸き起こるような錯覚に捕らわれた。
気が付けば、目の前に注文した冷やしうどん特盛。
「ちゃーんちゃんちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ……」
相変わらず、理寿乃は重低音満載の迫力あるメロディーを奏で続けている。
そんな理寿乃に乗せられて、何故かカウンターの脇に置いてあった軍用双眼鏡を手に取り、妙に姿勢を低くして厨房内を観察した。バレバレなのに、超極秘且つ隠密に情報収集している気分だった。
邪神の空気が、厨房内からひしひしと伝わってくる。
近い将来、ここで激しい戦いが繰り広げられるであろうことは、忍の目には明らかだった。
そんなことを考えながら忍は一味唐辛子に手を伸ばそうとした。ところがそれは、妙な形をしている。
四連装ロケットランチャー様の危惧の中に、一味唐辛子が四本詰まっていた。
忍は隣の理寿乃を見た。理寿乃は既に、この一味唐辛子を使った後らしい。
「どこで使い方を習ったんだ?」
「説明書を読んだのよ」
そして不意に表情を改めた理寿乃が、今度は逆に忍へと問いかけた。
「何が始まるんです?」
すると忍は、何故か顔をキリッとさせて、自分でもびっくりするぐらいの渋い声で応じた。
「第三次大戦だ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 冒険
『慈善事業の陰で』
|
POW : あえて全力でボランティアに取り組む。
SPD : 気付かれないよう抜け出して周囲を調べる。
WIZ : 関係者にそれとなく聞き込みをする。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
うどん屋えんりけすは、格安駒うどんを提供することで知られており、ちょっとした慈善事業の体を成していた。
店員は全員ボランティア、という触れ込みなのだが、実際のところは分からない。
何故なら、どいつもこいつも妙に人相の悪いマッチョマンばかりなのだから。
こんな連中がボランティア?
ははは、ちゃんちゃら可笑しいぜ。
だが、明渡理来にとっては死活問題だ。何故なら、このえんりけすの裏社会向け調理場なるところに潜入に、さりーという名の妙なレシピを奪取してこなければならないからだ。
この少し前、明渡理来は敵の内情を知ろうと、客としてえんりけすのカウンターに腰かけた。
そこで食った駒うどんは、兎に角不味かった。
「こんなのはうどんじゃない。白く塗ったゴムだ」
余程に腹が立ったのか、明渡理来は料金も払わず店を出た。
当然その場で食い逃げ容疑者として追い掛け回される破目となったが、マッチョな彼女はそれらの追手を見事に振り切ったのであった。
……エエんかい、そんなんで。
ベアトリーチェ・トリフォリウム(サポート)
『私は思うのです。時代は『癒し』を求めている、と。』
キマイラの聖者 × シンフォニア
年齢 9歳 女
外見 117.7cm 紫の瞳 赤茶の髪 色白の肌
特徴 胸が大きい マイペース 実は過去の記憶が無い 天涯孤独の身 清潔な身なり
口調 女性的(私、~くん、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)
年上には 敬語(わたくし、~様、ございます、ございましょう、ございますか?)
格安駒うどん店えんりけすの店頭で、ベアトリーチェ・トリフォリウム(不屈な詠う奇跡のキマイラ聖者・f06249)はふと考えた。
妙な雰囲気を醸しているこの店にも、癒しを求めている御仁は居るのでしょうか、と。
すると不意に、何者かがベアトリーチェの腕を掴んだ。
「一緒に来てくれ」
その女性、即ち明渡理来はベアトリーチェの返事も聞かず、強引に裏口へと足を向ける。
そこに鉄製の扉があった。明渡理来はベアトリーチェに合言葉を教え、取次の者に扉を開けさせるようにと頼み込んだ。曰く、明渡理来は顔を知られているので、そう簡単には中に入れて貰えないとの由。
「そうなのですね。明渡理来様の癒しになれるのであれば、わたくしも喜んで引き受けましょう」
ベアトリーチェは天使のような微笑みを明渡理来に返して、自ら進んで裏口の鉄製扉をノックする。
中から、合言葉を求める野太い声が響いてきた。
「筋肉もりもり」
「マッチョマンの変態だ」
すると鉄製の扉は僅かに軋んだ音を響かせつつ、地獄の底へ犠牲者を呑み込む様な薄暗い通路を覗かせた。
よし今だ、といわんばかりに明渡理来はベアトリーチェ諸共、裏口の中へと飛び込んでいった。
「あのう、わたくし空手のレッスンがあるのでお暇しようかと」
「駄目だ。一緒に来てくれ」
ここから先は明渡理来本人に任せようかと、口から出まかせで適当な逃げ口上をいい放ったベアトリーチェだったが、明渡理来は許してくれなかった。
ともあれ、潜入には成功。
秘伝のレシピサリーをゲッツするまで、あと11時間。
いや、タイムリミットには特にこれといった根拠は無いのであるが。
成功
🔵🔵🔴
水標・悠里(サポート)
『私で良ければ助太刀いたします』
『思いをその魂ごと喰らってしまいましょう』
『この身を盾として、道を切り開く』
普段は物腰柔らかく丁寧な口調で話す少年。「人を騙す嘘」が嫌い。実は孤独が嫌いでさみしがり屋。
戦闘になると死霊で「負傷を厭わない」捨て身になりがち
誰にでも丁寧に対応します
舞うように軽やかな仕草で。
【黒翅蝶】を使い蝶の姿をした死霊を召喚
【呪詛】【属性攻撃】で攻撃します
至近距離なら【朔】で斬ります
ユーベルコードは指定の中からお好きに
仲間の危機があればまずそちらの対応を
よく使う武器は【黒翅蝶】【呪扇-伊弉冉-】【朔】
一人称は「私」余裕が無くなるか親しい人がいると「僕」
あとはお任せいたします。
アニカ・エドフェルト(サポート)
『よろしく、おねがいします。』
オラトリオのサウンドソルジャー × 聖者
年齢 6歳 女
外見 103.5cm 青い瞳 ピンクの髪 色白の肌
特徴 胸が小さい 囚われていた 音楽・踊りが好き 空が好き 星空が好き
口調 読点やや多め(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
あわてた時は 読点少なめ(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
えんりけすの裏口から内部へと潜入を果たした明渡理来。
しかし、まだまだ油断は出来ない。いつどこで、彼女の正体を見破る者が現れるか分かったものではないからだ。
と、そこへ音も無く近づく影がふたつ。
中性的な顔立ちが美しい水標・悠里(魂喰らいの鬼・f18274)と、どこか華やかで、それでいてある種の翳を纏うアニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)の両者だった。
「やれやれ、無茶なお方ですね……ですが、これも猟兵の仕事。私で良ければ、助太刀致します」
穏やかに微笑む悠里の艶のある美貌に、明渡理来は変な方向に想像が弾け飛んでしまい、ごくりと喉を鳴らしている。そんな明渡理来を、アニカは乾いた笑いを漏らしながら眺めていた。
「まぁ、とにかく、よろしく、おねがいします」
悠里もアニカも、何だかんだでひとが好い。
明渡理来の目的がレシピ奪取という下らない内容であっても、決して嫌な顔ひとつ見せず、ぴったりと傍らに寄り添っていた。
ともあれ、三人は裏口からしばらく薄暗い通路を進み、やたらと大きな調理場に辿り着いた。
うどん屋なのだから、店員や調理人が大勢居てもおかしくはないのだが、何故かひとっこひとり居ない。その奇妙な光景に、悠里もアニカも顔を見合わせ、小首を傾げた。
どうやらここは、ただのうどん屋ではないらしい。
「成程……分かりましたよ。ここは、うどん邪神の職人養成所なのですね」
いいながら、悠里は壁に貼り付けてある邪神心得なる妙な張り紙を指差した。
「へんな、ところ、ですね」
アニカも思わず眉間に皺を寄せて、首を傾げた。
UDCアースとひと口にいっても色々なところがあるものだと、感心すると同時に、呆れる思いだった。
やがて、厨房奥の控室から、何故か迷彩服を纏った屈強な男が麺棒片手に、のっそりと姿を現した。要所を巡回しているといった様子なのだが、何故うどん屋の調理場にこんな男がうろうろしているのか。
やっぱりここが、うどん邪神の職人養成所だからなのか。
悠里もアニカも妙な任務だと、苦笑を漏らす回数がどんどん増えてきた。
「お……あれか」
さりーなるレシピは、簡単に見つかった。
業務用冷蔵庫の上にでかでかと目立つように、さりーというラベルが張り付けられた瓶が、普通に放置されていたのである。
「ま、ここは任せて下さい」
「さくっと、しとめるの、です」
悠里とアニカは、更に人数を増やした迷彩服の麺棒男達に対し、背後から忍び寄って当て身を喰らわせ、そのまま物陰へとずるずる引きずっていった。
その間に、明渡理来はレシピさりーをゲッツした。
残る問題は、ここからどうやって脱出するか、であろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
川咲香・忍
※アドリブ・絡み歓迎(ドンパチ賑やかに、自由に動かしちゃって下さい)
『えんりけす』、今度はこのうどん屋か。ボランティアで薄利営業?もう怪しい臭いしかしねえじゃねえか…。
まあ調査のためだ。ボランティアとして潜り込んでみるぜ。
「試してみるか?俺だって元PMCだ。」
…おいおい、またどっかで聞いたことあるフレーズが勝手に口から…。この前の『じぇにぃ』の時と言い…、全く、今日は厄日だぜ!
明渡理来がレシピさりーを超絶ゲッツしたとの情報を掴んだ川咲香・忍(クズでおなじみ・f18903)は、速攻で行動を起こした。
うどん屋えんりけすのボランティア店員として潜り込み、何とか明渡理来の脱出を手助けしてやらなければならない。
そして驚いたことに、このえんりけす、面接も採用試験も何も無く、忍が勝手に店内に潜り込んでスタッフ用の法被を着込んでも、誰ひとりとして文句をいう者は居なかった。
と、その時、スキンヘッドのいかつい黒人店員がそっと近づいてきた。
「さりーが必要だ。あれはどこだ」
「キッチンルームだ」
黒人店員に応じながら、忍はふふっと不敵というか、変に妖艶な笑みを浮かべた。
「……お前は?」
「ルームサービスだ」
え、何故自分はこんな台詞を口にしたのだ。何だかよく分からないが、今日は厄日だぜ、と心の中でぶつぶつと愚痴を漏らす忍。
すると黒人店員は妙に品定めするような目つきで、忍をじろじろと無遠慮に眺め始めた。
「ここのボランティアは、ちょっとやそっとじゃ、務まらねぇ。怖いかクソったれ。当然だぜ」
「試してみるか? 俺だって元PMCだ」
何でこの黒人店員はこんなにも挑発的なのだろう。
それに何より、何故自分はこんなにも、どっかで聞いたことがあるフレーズが次から次へと口を衝いて出てくるののか──何となく、戦慄のようなものが忍の背中を走り抜けた。
だが黒人店員はそれ以上、忍に注目することなく奥へと引っ込んでいった。
この時、忍は表側厨房の流しの脇に、さりーとラベルが貼られた瓶を見つけた。まさかここにも、同じさりーがあるなんて。
しかも聞いていた話では、さりーはレシピだった筈だ。瓶に入っているとは一体、どういうことなのか。
忍は思い切って、瓶の蓋を開けた。
すると中から、ちっこいおっさん型の超弱小邪神が飛び出してきた。
逃がしてはならぬと、忍はちっこいおっさん型超弱小邪神の片足を掴み、そのまま頭を流しの真上に持っていく形で逆さにぶら下げてやった。
「本物のレシピはどこだ?」
「このクソったれ。誰が喋るかよ。くたばれッ!」
ちっこいおっさん型超弱小邪神は、やけに強気だ。
だが忍も負けてはいない。
「見上げた忠誠心だ。だがな、頭を冷やしてよく考えてみろ。支えてんのは左手だ。利き腕じゃないんだぜ」
ふふふと不敵に笑う忍。
ちっこいおっさん型超弱小邪神が何かをいおうとした時、裏口から店内へと入ってきた明渡理来が、忍にサムズアップの笑みを送る。もう大丈夫だ、の合図だ。
明渡理来がOKというのだから、もうちっこいおっさん型超弱小邪神など、どうでも良かった。
「お前は最後に殺すと約束したな。あれは嘘だ」
ちっこいおっさん型超弱小邪神が何か叫ぼうとしたが、その前に、その小さな体躯は流しの水流の中へと吸い込まれていった。
というか、そんな約束したっけな、と自分で自分に突っ込む忍。まぁこの際、どうでも良いかとあっさり気分を切り替えていた。
それは兎も角、さぁこれからどうやって、このえんりけすを脱出しようかと悩んでいる明渡理来の傍らを、他人同士に成りすましてすれ違う忍。
この時、明渡理来が訊いた。
「あいつはどうした?」
「放してやった」
答えながら、忍はもう訳が分からない。
こんなカオスな気分は、初めてかも知れなかった。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜(サポート)
「君の血はどんな味かな?」
「良いね、もっと楽しく殺し合おうか。」
敵さんの血を奪う事が最優先。幽霊や無機物などの血の流れていない敵さんは苦手。というか嫌い。
武器は大鎌の血飲み子、悪魔の見えざる手を使用。
UCはSPDとWIZのものを適当に。
敵さんの攻撃は【見切り】や【武器受け】で防御。
チャンスがあれば【吸血】も狙って行く。
フクス・クルーガー(サポート)
ヤドリガミのスターライダー × ガジェッティア
年齢 20歳 女
外見 163cm
特徴
口調 女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)
怒った時は 無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)
長年使われてきたトラックを核にして生まれたヤドリガミ。その持ち主に影響されたのか彼女自身も何かを届けることがやりたいことになっている。その為、サポート能力は高めだけど直接戦闘力は低め。
ある程度は許容できるけど時間にルーズなのは嫌い。
必要なものは手に入れた。
後はこの意味不明な店を脱出するだけだ。明渡理来は最初、店の表口から出ようと考えたが、妙にガードが固く、人相の悪い連中がびっちり隙間無く警戒している為、諦めざるを得なかった。
矢張り、レシピさりーが奪われたことに、連中も気づいているのか?
そんなことを考えながら裏口方面に薄暗い通路を歩いてゆくと、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)とフクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)が何食わぬ顔で、裏口へ抜ける廊下の端に佇んでいた。
「さぁ行こうか。君の血を味わってみたいけど、今はそんなことをいっていられないしね」
「あなたはきっちり、うどん屋じぇにぃに送り届けるわよ。時間通り、ご指定の場所まで安心安全のクルーガー運送よッ!」
莉亜とフクスという強力な助っ人を得た為か、明渡理来は急に強気になった。
このまま堂々と、裏口を突破してやろうと考えたのである。その豹変ぶりに、莉亜は苦笑を禁じ得ない。
裏口の外は、相変わらず人目が少ない──と思ったのも束の間、どこから湧いて出てきたのか、えんりけすの従業員と思しき迷彩服姿の屈強な男達が、わらわらと色んなところから駆け出してきて、三人を包囲した。
明渡理来は来れるものなら来てみろと挑発してから、莉亜に場所を譲った。
こういう変なところでちゃっかりしている明渡理来に、莉亜はやれやれと呆れてかぶりを振った。が、頼りにされるのは決して悪い気はしない。
迷彩服の男達は、それぞれ手に得物を持っていた。しかしいずれも武器ではなく、あっつあつのうどんを湯がいたばかりの湯切り笊とか、からしを塗りたくった菜箸とか、そんなのばっかりである。
流石にこんな連中相手に殺し合うのは如何なものかと、莉亜は大鎌の柄の部分を前に突き出すような格好で身構えた。
「まぁ、良いけどね……せめて楽しく、殴り合おうか」
莉亜の挑発を合図に、迷彩服の男達が次々と襲い掛かる。でもって、次々と返り討ちに遭う。莉亜の実力を考えれば、当然といえば当然の結果なのだが。
幾ら相手が血の気の多い連中でも、これでは流血シーンなど望める筈もない。莉亜にしても、興ざめな戦闘に正直飽き飽きしてきそうだった。
一方、フクスは明渡理来を無事にうどん屋じぇにぃまで定刻で送り届けることが出来れば、それで良い。敵を蹴散らすことなど全く考えず、大通りに停めてあった全環境対応型大型トラックの助手席に明渡理来を招き入れた。
ここでフクスは無線機のマイクを手に取り、うどん屋じぇにぃに通信を繋いだ。
「駒うどん、ガースー、コード・レッド、〇〇四丁目」
いい終えてから、フクスは不思議そうな顔で明渡理来に顔を向けた。
「ガースーって誰?」
「顔がとっても黒光りしている、うちの常連の菅さんだ」
そんな応えに、フクスはふぅんと曖昧な返事を返しつつ、ギアを入れてアクセルを踏んだ。
後方では相変わらず莉亜が迷彩服の男達をばったばったと薙ぎ倒しているが、フクスは構わずトラックを発進させた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 集団戦
『不純原器』
|
POW : 力で解決
対象のユーベルコードに対し【ドロップキック】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD : 質量返し
いま戦っている対象に有効な【攻撃対象とまったく同じ質量の金属塊】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 多重複製
【熱い想い】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【自身の複製】から、高命中力の【筋肉による一撃】を飛ばす。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
格安駒うどん屋えんりけすから、無事にレシピさりーを持ち帰った明渡理来。
これでいよいよ、うどん屋じぇにぃの厨房長の座を賭けて、辺根イトと戦う資格を得た訳だ。
辺根イトは、じぇにぃの裏手の駐車場の特設うどん調理場で明渡理来を待っている。一応手には湯切り笊を握り締めているが、果たして明渡理来とまともに戦うつもりがあるのかどうか。
その証拠に、辺根イトの周囲には子飼いのうどん職人達が、その本来の正体──即ち、不純原器としての姿を見せて、どいつもこいつもマッチョな姿勢で円陣を組んでいたのである。
さぁ猟兵達よ、戦え。
辺根イトの色んな意味の超絶なうどんを食い尽くし、彼女のプライドをずたずたに引き裂いて、引導を渡してやるのだ。
パル・オールドシェル(サポート)
二人称は「戦友」「〇〇さん」(〇〇は日本の表記ならば姓、西洋表記なら名)
僕ことパル・オールドシェルは解放軍の多目的汎用型ドロイドを自称する機体です。
自身での戦闘はあまり得意ではないので、解放軍系の兵器を召喚して使役します。
一人称は「僕」で、口調はこんな感じでしょうか。
ヒトの生命を最優先し、ウォーマシンやヤドリガミ等非生物系の戦友以上に生きた戦友や民間人の保護に熱心です。これはアイテム「四則」系に定められた運用原則ゆえのもの。
ヒト(知的生命体)>>>非生物系の民間人>非生物系の戦闘員>>>>自分>指揮下の自動兵器 の順に優先します。
艦隊やドロイド兵を用いた味方の補助、背景の賑やかしが得意です。
水心子・静柄(サポート)
本差の姉に劣等感を持っていてい、表面上は邪険にしているが姉妹仲は良い方、所謂ツンデレ。考え方は知的、でも面倒になってくると脳筋的な解決法に傾く。感が鋭いが如何にも知的に導いたように振舞う。知的にグラウンドクラッシャーを使いこなす。脳筋ぽいけど実は知的。武器は鞘に入ったままの脇差(本体)
(何だか色々と面倒臭そうだな)
パル・オールドシェル(古き戦友・f10995)が辺根イトとその子飼いのうどん職人らをじろりと一瞥すると、同じように思っていたのか、水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)も鞘入りの脇差を手にしたまま、何ともいえない表情でその場をじーっと眺めていた。
ふたりの前では今まさに、明渡理来が駐車場の特設うどん調理場で特製駒うどんを湯がこうとしているところだった。
パルにしても静柄にしても、うどんを湯がくか食うかして相手を叩き伏せるという任務は、余り想定したことが無かった。
というか、普通はそんな面倒臭い戦闘は誰しもが避けるだろう。
「で、ルールはどうなってるの?」
やれやれと小さくかぶりを振ってから、静柄が問いかけた。彼女もパルと同様、この場の空気をどう扱って良いのか持て余し気味であった。
「お前達には、辺根イトのうどんに耐えて貰いたい」
明渡理来が駒うどんを湯がきながら、意味不明な台詞を吐いてきた。
パルも静柄も、全然分からない。明渡理来は、一体何をいっているのだろうか。ふたりは顔を見合わせてからもう一度、明渡理来に訊いた。
するとどうやら、辺根イトのうどんの美味さに屈する事無く、不味いだの何だの罵詈雑言を並べ立ててくれればそれで良い、というのである。
そうなると今度は辺根イトの子飼いのうどん職人共が正体を現してマッチョな不純原器に変貌して襲い掛かってくるだろうから、適当に蹴散らしてやれば良いとのこと。
ますます意味が分からなかった。少なくともパルと静柄は、この状況を理解するのに小一時間ぐらいかかるんじゃないかと本気で失敗になってきた。
とりあえず、会議用の長卓とパイプ椅子が置かれてあるので、マッチョなうどん職人らに勧められるまま、席に就く。すると──。
「野郎ッ! ぶっかけてやらぁーッ!」
突然辺根イトが訳の分からぬ奇声を発して、ふたりの前にかかし風ぶっかけうどんを並べてきた。
「えぇと……これ、食べたら良いんでしょうか……っていうか、僕、戦闘指揮の為にやってきたドロイドなんですけど……」
「いや、私もヤドリガミなのだが」
どう考えてもうどんに舌鼓を打つような組み合わせの猟兵ではない。
だが、辺根イトだけではなく明渡理来も兎に角食えといって聞かない。ふたりは仕方なく割り箸を手にして、かかし風ぶっかけうどんをすすり始めた。
噂に名高い──のか、どうなのか、よく分からない駒うどん。さて、お味の方は。
「御免なさい、ちょっとよく分かんないです」
「まぁ、可もなく不可も無く、というところかしら」
パルと静柄が微妙な表情で小首を捻っていると、突然マッチョなうどん職人達が、これまた意味不明な奇声を叫び散らしながら襲い掛かってきた。
何だかよく分からないが、倒せば良いのだろうか。
最初から最後まで本当に意味不明だったが、パルも静柄も、さくっと敵を蹴散らした。
パルは肉弾戦が得意な方では無かった筈だが、それでも簡単にマッチョなうどん職人を数人退け、静柄に至っては割り箸でビシビシと叩き伏せる有様である。
「よくやったッ!」
明渡理来が汗を迸らせながら、爽やかにサムズアップ。
どう応えて良いか分からないパルと静柄も、取り敢えずサムズアップで応じた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鞠丘・麻陽
■方針
・同行者:鞠丘 月麻(f13599)/双子の妹
・アド/絡◎
■行動
何か珍しい食べ物みたいだし、月麻ちゃんと一緒に「駒うどん」っていうのを食べに来てみたんだよ。
この「ぶっかけ饂飩」でいいのかな、だよ?
(もぐもぐ→小首を傾げて)
何だろう、不味いとは言わないんだけど、例えば『同じお店、同じ値段で「讃岐饂飩」や「稲庭饂飩」と一緒に並んでたら、多分其方を選ぶ』と思うんだよ。
そこまで知名度が広がらなかったのは『何か一つ足りない』から、っていう気がするんだけど、一体何が足りないのかな、だよ?
あ、襲い掛かって来るなら、遠慮なく【指定UC】と『アームドフォート』で纏めて攻撃するんだよ。
御馳走様でした、だよ。
鞠丘・月麻
■方針
・同行者:鞠丘 麻陽(f13598)/双子の姉
・アド/絡◎
■行動
「駒うどん」ですか。
「讃岐饂飩」や「稲庭饂飩」は、専門店でいただいたことも有りますが、とても美味しかったですし、楽しみです。
麻陽ちゃんと一緒にいただきますね。
(もぐもぐ→小首を傾げて)
う~ん。
何かが不足している様な気がしますね。
例えるなら、「廉価版」か「劣化コピー品」の様な印象を受けます。
「料理は愛情」と言いますが、それが無いのでしょうか?
純粋に素材や技術的な理由でしょうか?
暴れ始めたら【指定UC】で跳躍、麻陽ちゃんの攻撃の邪魔にならない様退避した上で、撃ち漏らした相手の上に飛び降りて『蹴り』で攻撃しますね。
御馳走様でした。
川咲香・忍
※アドリブ・絡み歓迎
あーもう訳わかんねえ。この前からどっかで聞いたことあるフレーズが勝手に口から出てくるし。もうどうにでもなれ!とりあえずこのうどんを食えばいいんだな?
(ズルズル…まずくはねえけど)…中身は何だ?
(微妙な表情をしながらエナジードリンクを合間に飲んで【ドーピング】しつつ完食、辺根イトと不純原器を見回しながら)…口だけは達者なトーシロばかり、よく揃えたもんだぜ。まったくお笑いだ。
マッチョマンの変態どもに【Maschinenpistole IDZ】を腰だめで掃射。今日は7時半にナイター競馬があるんだ。もう付き合ってらんねえぜ!
…ああ、帰って来てくれ俺の元の口調。
うどん屋じぇにぃの駐車場に近づくにつれ、美味そうな濃口出汁の香りが風に乗って漂ってくる。
しかし、鞠丘・麻陽(豊饒の使徒・陽・f13598)と鞠丘・月麻(豊饒の使徒・月・f13599)に理解出来ないのは、何故アスファルトの路面のそこかしこにうどん玉がぽいぽいと放り捨てられているのか、ということだ。
一体ここで、何があったのだろうか。
いや、最初から妙なことが起きているという話は既に聞いてはいたのだが、ちょっとこの光景は麻陽にも月麻にも理解が及ばないというのが正直なところであった。
ふたりを先導するような格好で、少し前を川咲香・忍(クズでおなじみ・f18903)がのっしのっしと力強い歩調で足を進めていた。忍はいよいよ最後だ、あぁ長かったと、鞠丘姉妹には意味不明な台詞を漏らしていた。
「どうかしたのかな、だよ?」
「どうかしたのですか?」
鞠丘姉妹がお揃いの声で僅かに調子の異なる口調で訊いた。
忍はやれやれと小さくかぶりを振り、何故か変にアメリカンな大袈裟過ぎる程の溜息と肩を竦めるジェスチャーで苦笑を返した。
「何だかな、もう訳分かんねぇんだ。この前からどっかで聞いたことあるフレーズが勝手に口から出てくるし、例えばそこに停まってる車だ。車はアメリカで生まれました。日本の発明品じゃありません。米国のオリジナルです。しばし後れを取りましたが、今や巻き返しの時です……ほら、また何か出てきたぞ」
自分でも最早、口の動きが止められないといわんばかりに悲し気な表情を見せる忍。
鞠丘姉妹も忍が少し可哀そうに思えてきたが、かといって何か良い妙案がある訳でもない。
ところで、と忍は周囲を見渡す。駐車場までもう少しだが、見えるのは放り捨てられているうどん玉ばかりである。
「明渡理来はまだ戦っているのか」
忍の問いかけに、まず麻陽が応じる。
「うーん、みっつのうどん玉だけだよ」
「まだ他にもあると?」
麻陽の言葉を継いで月麻が問いかける。忍は何故か、したり顔で答えた。
「奴が生きていれば、まだうどん玉は増える筈だ」
麻陽と月麻は、同時に思った。忍はどうも、何かに精神を侵されているのでないか、と。
そうこうするうちに、じぇにぃの駐車場に辿り着いた。
明渡理来と辺根イトがせっせとうどんを湯がいている脇を通り抜け、マッチョなうどん職人達が用意した椅子に腰を下ろす。
早速、かかし風ぶっかけうどんが供された。
「これが、駒うどん、なんだよ」
「讃岐うどんや稲庭うどんは専門店で頂いたこともありますが、とても美味しかったですし、こちらのうどんも楽しみですね」
麻陽も月麻も、爽やかな程に前向きだった。忍だけは、いや、このうどん作ってんのオブリビオンなんだが──とひとりで微妙な表情を浮かべている。
ともあれ、食べないことには始まらない。三人は揃って割り箸の先をうどん玉に突っ込んだ。
数分後、麻陽と月麻は何ともいえぬ顔で口元をもぐもぐさせつつ、小首を傾げながら顔を見合わせた。
「何だろう……不味いとはいわないんだけど、例えば同じお店、同じ値段で讃岐うどんや稲庭うどんと一緒に並んでたら、多分そっちを選ぶ、と思うんだよ。そこまで知名度が広がらなかったのは、何か一つ足りない、からっていう気がするんだけど、一体何が足りないのかな、だよ?」
「う~ん……何かが不足している様な気がしますね。そう、例えるなら、廉価版か劣化コピー品の様な印象を受けます。料理は愛情といいますが、それが無いのでしょうか? それとも、純粋に素材や技術的な理由でしょうか?」
ふたりの総評を耳にしながら、忍はエナジードリンクをがぶがぶやっている。
これ見よがしに、食う為にドーピングしていますよ、という姿勢を強調していた。
ずるずるずるずるずる。一応、音だけは盛大に立ててみた。良い音だ。余裕の音だ。馬力が違う。それでも忍は不機嫌そうに辺根イトをじろりと睨んだ。
「……口だけは達者なトーシロばかり、よく揃えたもんだぜ。まったくお笑いだ」
挑発しながら、忍は考えた。オブリビオンが湯がいたうどんなんて食っちまった。不味くはないのだが、中身は一体何なのだと。
ふと気づくと、周囲をマッチョなうどん職人、そして本性を剥き出しにした凶悪人相の辺根イトが戦闘陣形で取り囲んでいた。
最初に、白薔薇柄の紅いアオザイを翻して、麻陽が動いた。跳躍すると同時にアームドフォートから砲弾をばら撒く。マッチョ職人共は、これで三分の一ぐらいが一気に叩き伏せられた。
続いて月麻が、アームドフォートの砲弾を逃れたマッチョ職人の頭上に舞い上がり、蒼い弾丸と化して蹴り足が炸裂。マッチョ職人共は月麻の豊満過ぎる程に豊満な体型で、これ程の機敏さを見せるとは思っても見なかったのだろう。月麻の蹴り足そのものよりも、高い機動性に倒されたといった方が適切かも知れない。
そして忍は、未来の歩兵と銘打たれた銃身を腰だめに構えて掃射。敵は、辺根イトを除いてひとり残らず倒された。
「ちくしょおッ! 眉間なんか撃ってやるもんかッ! ボールを吹っ飛ばしてやるッ!」
よく分からない台詞を吐きながら、辺根イトが湯切り笊を手に襲い掛かってきた。ここで忍は割り箸を手に取り、力いっぱいぶん投げる。
割り箸は辺根イトの胸板を貫いた。と同時に、オブリビオンうどん型邪神の正体を現した。
辺根イトは、奇妙な悲鳴を漏らしつつ、その場に崩れ落ちた。
「蒸気抜きしな」
忍が最後に、びしっと決めた。今日は七時半にナイター競馬があるから、さっさと終わらせたかったのだ。
「……もう付き合ってらんねぇぜ」
辺根イトが倒されたことで、明渡理来は晴れてうどん屋じぇにぃの支配権を得た。
しかし、彼女が用意したうどんは誰も食っていない。つまり、うどん勝負で勝利した訳ではなく、猟兵達の頑張りで棚ぼた式に勝利しただけに過ぎない。
「こんなので……」
「良かったんでしょうか?」
鞠丘姉妹は本当にこれで大丈夫なのかと露骨に不安げな顔を見せた。
忍は、もうこれ以上は関わるまいと、さっさと踵を返して駐車場を後にしている。
駒うどん屋じぇにぃが三日足らずで廃業したという噂を聞いたのは、グリモアベースに戻ってしばらく経ってからの話であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵