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とりどり街のとりどり奇譚

#UDCアース

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#UDCアース


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●ありふれた日常の、少しばかり困った一幕
 UDCアースの日本の、とある都市の然る街の、一画。
 こじんまりとした個人経営の店舗が軒を連ねる、『とりどり街』と呼ばれる一風変わった商店街がある。
 何が一風変わっているかというと、店舗の何れも『個性』が強烈なのだ。
「ちょっと言い過ぎたかな? 単に店主さんが自分の趣味を突き詰めたお店ってだけだよ」
 着慣れたいつもの術士服ではなく、いかにもUDCアースの若者然とした格好をした連・希夜(いつかみたゆめ・f10190)は悪戯を思い付いた少年のような貌で笑う。
「最新商品から箱が残ってるのが奇跡みたいな中古品まで取り扱ってるプラモデル屋さんとか、世界津々浦々の本を集めた古書店、動物関連グッズばっかり集めた雑貨屋さんに、見るからに妖しそうな占い道具ばっかり集めた呪い屋さんとか。そこら辺の石から超高価な原石まで、石という石を扱うお店もあったよ。定番のメイド喫茶もあるし、レコード屋さんもあったかな。それからそれから――」
 一店一店説明していてはキリがない。その多彩さは百聞は一見にしかずだよ、と一先ず締め括り、「で」と希夜は話を先に進める。
「この趣味に走った『とりどり街』で、これまた趣味に走った拉麺フェスが今、催されてるんだ。全国的には知られてないけど、地元で愛されてる系のラーメン店や、採算度外視の趣味だけで営業されてる店とか、そういうところが集まってるっていうことで、ラーメン好きの心を擽るフェスなんだけど――困ったことに、この『とりどり街』は邪神教団の拠点になってるんだ……っ」
 『とりどり街』には古い店から新しい店まで色々だ。そして各店マニアに過ぎるが故に、自分の趣味以外はどうでもよいところがあり、そこを邪神教団に付け入られてしまったのだ。
「店主が教団員のところもあれば、店主に信頼されてる店員が教団員の店もあるみたい。皆には買い物を楽しむふりをしながら教団員を退治して欲しい。ちなみに店に出てるのは下っ端。でも下っ端をとっちめれば、商店街を根城にしてる首魁の居場所に関する情報は手に入ると思う」
 いずれも小さな店だ。店員の数は少ない。むしろ一人しかいない場合が殆どだろう。とは言え、いきなり襲い掛かると、地の利を活かして逃亡されてしまいかねない。だからあくまで客として店を楽しむだけ楽しみ、いざお会計、の段に至ったところで仕掛けるのが、おそらく最良。
「拉麺フェスも、客足を伸ばして教団の活動資金を稼ぐ撒き餌みたいなものだろうね――とかいえ、ラーメンには罪はないし!」
 ぐっと拳を握り締めて希夜は力説した。どうやらこの青年、ラーメン好きらしい。
 ラーメンは楽しみたい。しかし下手に食べにいけば、売り上げの一部が商店街に還元されるらしい仕組みから、教団に手を貸してしまうことになる。そんなジレンマを、断ち切りたくて仕方ないのだ。
「そんなわけで、みんな、よろしく!」


七凪臣
 お世話になります、ラーメン大好き七凪です。
 そんなこんなで、ラーメン食べたいシナリオをお届けに参上しました。

●シナリオ運営予定
 各章、冒頭部を追記次第、プレイング受付を開始致します。
 作業開始日は2/25頃より。
 作業可能日の一日の作業量は2名様程度の、ゆっくり少人数進行。
 マスターページにも詳細を記載しますので、参加を希望して下さる方はご一読下さい。

●シナリオ傾向
 ほのぼの日常系。
 戦闘は発生しますが、おまけ程度の認識で大丈夫です。

●シナリオの流れ
 【第一章】集団戦。
 …商店街巡り。どんなお店を楽しむかご指定下さい。
 余程な店でない限り、ご希望に添うお店があると思われます。
 戦闘プレは少しで大丈夫です。
 【第二章】ボス戦。
 …コミカルなノリのボス戦。
 【第三章】日常。
 …拉麺フェスを楽しめます(ラーメンを食べられるのはこの章のみです)。
 三章のみ、プレイングにてお声がけを頂いた場合、希夜が登場します。

●採用人数・その他
 書ける時に書ける分を少しずつ、のスタンスになります。
 受付を締め切っていなければ、再送も歓迎ですが、何れの場合も『必ず採用』のお約束はできません。
 どの章でも単発参加大歓迎です。
 POW/SPD/WIZはお気になさらず。

 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
 宜しくお願い申し上げます。
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第1章 集団戦 『六一六『デビルズナンバーまきびし』』

POW   :    悪魔の忍刀(デビルニンジャソード)
【忍者刀】による素早い一撃を放つ。また、【魂を削る】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    悪魔の巻物(デビルスクロール)
いま戦っている対象に有効な【忍法が記された巻物】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    悪魔の撒菱(デビルカルトロップ)
自身の身体部位ひとつを【まきびし】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●おいでませ、とりどり街
 『と』『り』『ど』『り』『街』と一文字一文字記された提灯が飾るアーチをくぐれば、そこから先がとりどり街だ。
 ちなみに提灯は、『と』が青、『り』が赤、『ど』が緑で『り』が桃、そして最後の『街』が虹色という落ち着きのない配色具合で、先行きの不確かさ――この場合、褒め言葉である――を物語ってくれている。
 車両は通行禁止の路地の両側には、主の趣味が前面に押し出された店が、およそ800mに渡ってならんでいて、拉麺フェスが催されているのは突き当りを右に折れた広場だ。
 何故かいかにもなメイドが手招きするメイドカフェを皮切りに、商品系だと、プラモデル、古書、動物愚図、石、石鹸、呪い(まじない)道具、箸、食玩、ぬいぐるみ、寝具、なんちゃて武具、他。食品系だと、揚げ物、カニカマ、豆腐、プリン、シュークリーム、駄菓子、羊羹、などなど。ガチャガチャ専門店だったり、占い屋もあったり、とにかく雑多な店がずらり並ぶ。だいたいは、外見から予想がつく店舗ばかりだ(ちなみに大事なことを念押ししておくと、公序良俗に反するようなお店はない。一店もない)。
 いずれの店もかなりこじんまりしているが、とにかく品数があるので眺めるだけで十分楽しめるだろう。
 そして肝心の邪神教団のオブリビオンは、これまたはっきりいって一目でわかる。何故か? どうやら教団のシンボルらしい『☆』マークを何処かに身に着けているからだ(エプロンだったり、イヤリングだったり、シャツの柄だったりと、店舗によって色々だが)。
 これら店員配下を締め上げれば、いずれとりどり街を拠点と定めた首魁の元へ辿り着けるに違いない。
 だが、あからさまに振る舞えば敵は用心してしまう。
 よって大事なのは、思い切りとりどり街の日常を楽しむこと!
 おいでませ、とりどり街。
 へんてこ商店街の日常は、きっと楽しいと面白いで溢れている……?
本多・陽葵
ひまりの初めてのお仕事だもん!
頑張る!!(ぐっと握りこぶし)


わー!楽しそうなお店がいっぱい!!(キョロキョロ)

駄菓子屋さん気になるけどラーメン食べたいからガマン!
ガチャガチャ屋さんも楽しそう~!

あ!動物のグッズがたくさんある!!
ネコさんリュック!
わんこペンケース!!
カエルさんがま口!!!

あ!消しゴム可愛い~!
付せんも可愛い~!
マスキングテープもどれも可愛いくて悩む~!
は~、ここはひまりの天国だよ~。
1日中でもいられるよ~。

(ホクホク笑顔で)
これ、ください!

お会計済ませてから
にっこり笑顔でオブリビオンの手を掴んで
びたーんってするよ!



●陽葵の大冒険
 びっしり並んだ建物と、張り巡らされた電線に切り取られた空は、なんだか少し窮屈そう。
 見馴染んだものとは異なる光景を本多・陽葵(狼の仔・f24305)は手を翳して見上げ、青い瞳を円くする。
 山を越えて街に出るバスは、一時間に一本だけ。自宅の周囲は田んぼと畑ばかりで、もしかしたら人間よりも案山子の方が多いかもしれない。
 そんな陽葵にとって、風変わりな商店街はちょっとした異世界だ。
 知らず、視線がキョロキョロと彷徨う。父親譲りの狼耳も、頭上でぴこぴこ動く。鼻歌交じりにスキップだってしたくなる。けれど、そこで陽葵は己が使命を思い出す。
 ――今日は、ひまりの、初めての、お仕事だもん!
(「頑張る!」)
 ぐっと力強く拳を握り込んで決意を新たにする――も、束の間。やはり陽葵の心は落ち着きなく浮き立つ。
「楽しそうなお店がいっぱい!!」
 わぁ、と感嘆の声を素直に零しつつ、一店一店を覗いて回る少女は、どこからどうみても「御上りさん」。すれ違ったメイドさんも、顔を出した店番のお兄さんだって、陽葵のことをにこにこ眺めている。
 あれこれ気になるお店たち。最初にぐぐっと引き込まれそうになったのは、駄菓子屋さん。でもでも、後に控えるラーメンの為にここは我慢の一択。
「わー! ガチャガチャ屋さんも楽しそう~!」
 ずらりカプセルトイが並ぶ店には半歩踏み入れはけたが、予算を考え、これまた我慢。田舎育ちの陽葵だけど知っている、一度始めたやめられなくなる魔法がガチャガチャにはあるってことを。
 ど、こ、に、し、よ、う、か、なっ♪
 弾むリズムで右往左往。とっておきと出会う陽葵の旅路は、うきうきわくわく。あまりの決められなさに目が回ってしまいそう。でも、楽しんだ分だけトキメキは波の勢いで押し寄せる。
「あ、あ、あ、あ、あ!」
 決め手は、壁一面に描かれた動物たち。開けると「もー」と牛が鳴く扉を潜ると、そこはまさに動物王国!
「ネコさんリュック! わんこペンケース!! カエルさんがま口!!!」
 棚に、壁に、置かれた籠に。店内は動物グッズだらけ。天井からカモメのランプシェードが吊り下がっているくらいだ。
 そんな中、女子中学生な陽葵の心をぐぐっと掴んだのは、やっぱりステーショナリーグッズ。
「消しゴム、付箋、マスキングテープ!!」
 耳の大きなフェレットに、愛敬のあるカバ、ドングリを抱えたリスに、親子のコアラ。陽葵の視界は、まるで小さな動物園。ひとつひとつ指差し確認しては、あまりの可愛らしさに陽葵は身もだえる。
 全部全部かわいくって、択べない。いや、お小遣いを考えたら全部は買えないのだけれど。
「は~、ここはひまりの天国だよ~。一日中いられるよ~」
 目移りが止まぬ少女は、グッズの間を縫って店内をくまなく探索し、顔を笑顔で蕩けさせ。そうしてようやく選んだ狼のペンケース――中に消しゴムとシャープペンシル、替え芯が入ったセット――を手にレジへ向かう。
「これ、ください!」
 ホクホク笑顔で、しっかりお会計。おまけで動物園シールもつけてもらって、更に陽葵の笑顔は向日葵のように燦燦と輝いた――ところで。
「ありがとう!」
 超にっこり、からの。お買い上げのお品を渡してくれた手をぐいと掴んで、渾身のびったーん。おまけに、もういちどびったーん。
 大丈夫。はしゃいでいたけれど、陽葵は店員がかけたエプロンに☆マークがあったのを見落としてはいなかったのだ。

「めいど……?」
 はらり。伸びた店員のポケットから滑り落ちたメモを拾い、陽葵は首を傾げる。
 どうやらボスは、メイドが関係するらしい?

大成功 🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【秋】
うお、綾華あそこにたこ焼き屋があるぜ。行かね?
ぜってー旨めぇよ、行こうぜ!

って100種類もあんのかよ!?マジか!!
スゲーじゃん
綾華、何食べんの?

おいおいおい!
なんでだよ!お前も同じ奴食おうぜ!

別にいいけどよっ

うめーうめー!
綾華これ、うめーよ!お前も食えよ!
マジか!いいなぁ!

おう!そうだな!
そーそー、俺もたこ焼きやってんだよ
え、勝負!?いや、なんでだよ!

よっしゃ、受けて立つぜ!
え、なんで知ってんだ?
まあいいか、やってやるぜ!

たこ焼きを作る
出来た!きよしスペシャル!ってちげーよ!
きよスペシャルだわ!

綾華、味見してくれ!食ってくれ!

マジかよ!
床にへたり込む

あ、なるほど…

最後はデッキブラシで攻撃


浮世・綾華
【秋】

え~…やだよ
…しょうがねーな

結構種類あるんだな
いち、に、さん…
えっ、なんかすげー種類あるんだケド…

店主さーん、きよしに一番の変わり種を
俺はフツーのやつ
いや、フツーやつ

そうか、良かったな(食わない
こっちもうまいわ(あげない

うまいし、きよし参考にしたら?
おもしろそーだからやればいいじゃん

きよしはたこ焼きになりたいくらいたこ焼きが好きなんだぜ
(えっ、冗談だったのに

たこ焼きをのんびり食べながら見守る
(きよが食ってたやつもつまみ食い…あ、確かにうめぇ

(言われるがままに審査
――えっと、店主さんの方だな
うるせーな、油断させる為だろ(小声

御馳走さん
最後は攻撃

(きよしの歯に青のり歯についてる…まあいいか



●たこやき狂騒曲
 黒のキャップを前後逆さに被り、少し前髪を上げて鉄板に向き合う砂羽風・きよ(オカン・f21482)を浮世・綾華(千日紅・f01194)はしげしげと眺めた。
 さすがは猟兵の仕事と屋台を並行させているだけのことはある。
 生地を流し込む手際は鮮やかだったし、ヘリ引の扱いだって見事なものだ。ゆらゆらと陽炎が揺れる鉄板の熱もものともせずに、未だ何物でもない小麦粉と出汁と卵とタコと天かすと紅ショウガが合わさったものが、くるりくるりと踊ってソースと青のりと鰹節とマヨネーズが待つ完成形へと近づいている。
 じわりと額に汗を浮かべたきよの顔は、真剣そのもの。
 並んでたこ焼きを作る店主も、きよの腕前には驚いているようだ。遅れをとってなるものかと、先ほどから手捌きの精度が一段あがった――ように綾華には見える。
 そろそろ頃合いだろうか?
 両者がほぼ同じタイミングでオイルディスペンサーに手が伸びた。
 一定の高さを保って、程よい分量の油が未完成のたこ焼きに降り注ぐ。途端、聞えだしたじゅうじゅうという音に、綾華の食欲も若干そそられる(若干)。
 場所はとりどり街の一角に居を構えた、たこ焼き専門店。専門店というだけあって、驚くことにメニュー数は百。当然、全部がたこ焼きだ。
 そして今現在、綾華の目の前で繰り広げられているのは、きよと店主のたこ焼き勝負。
 なんでこんなことになっているかというと、時間は少々遡り――……。

「うお、綾華あそこにたこ焼き屋があるぜ。行かね? ぜってー旨めぇよ、行こうぜ!」
 え~……やだよ。
 ……しょうがねーな。
 綾華の不承不承具合がきよに伝わったか否かが怪しいくらいの勢いで、きよはみつけたたこ焼き専門店へまっしぐら。
 大きくタコが描かれた暖簾を潜った先にずらり並んでいた鉄板は、壮観を通り越してある種の絶景。店主曰く、百ものメニューを提供するには、これくらいの数が必要なのだとか。
「スゲースゲー! なぁなぁ、綾華は何食べんの?」
 ――いや、こんなに鉄板要らなくね?
 ――だって焼く人間は一人じゃん?
 とかとか綾華の心の中がツッコミだらけなのは露とも知らず。そこそこ良いとこ育ちなきよは、偶の休みにはボランティアに精を出すという人の好さを遺憾なく発揮し――決しておつむが弱いわけではない――目をきらきら。だから綾華は先んじてオーダーしたのだ。
「店主さーん、きよしに一番の変わり種を。俺はフツーのやつ」
 ――と。
 当然、きよは首を傾げた。せっかくだ、同じ物を食べた方がいいではないかと。だが、綾華は断固拒否。おもいきり拒否。涼しい顔で、華麗に拒否。
 だってきよに供されたのは、今一推しだというアボカドキムチチョコたこ焼き。アボカドとキムチまでは良しとしよう。だがなぜそこにチョコ。チョコレート。バレンタインデーに売れ残ったから?
 引き続く綾華の心理的葛藤を他所に、きよは緑と赤と茶が入り交じったたこ焼きを、一切の迷いもなくパクっ!
 果たしてどんな惨事になるのか、と思いきや。
「うめーうめー!」
 意外な展開だった。
「とろっと食感になったアボカドはたこ焼きの生地と相性いいし。キムチの辛みと酸味を、チョコの甘さが少しマイルドにしてるのも新感覚だぜ。しかもタコは大粒……やるじゃん、あんた」
 ☆マークのバンダナを巻いた店主ときよは、完全に意気投合していた。
「綾華これ、うめーよ! お前も食えよ!」
「そうか、良かったな(食べるとはいっていない)。こっちのもうまいわ」
「えー、マジか! いいなぁ!」
「そうだな。いいな(あげるとはいっていない)」
「なぁなぁ、俺にも一個、一個。やっぱり定番も押さえておかないと――」
「よし、きよし。お前、たこ焼き勝負だ。いろいろ参考になるだろうし、おもしろそーじゃん。なぁ、店主さん。こいつ、たこ焼きになりたいくらいたこ焼きが好きなんだぜ」
「――え、なんでそれを知ってんだ!?」
「………(マジか? 冗談だったのに。え、マジ? マジ?)」
「たこ焼きはいいよなぁ。屋台の王者だよなあ」

 とかまぁ、裏にあれこれ含まれた会話とかの紆余曲折を経て始まったたこ焼き勝負。ぱっと見には互角。あまりの本気具合に、綾華は完全蚊帳の外。蚊帳の外過ぎて思わず残っていたアボカドキムチチョコたこ焼きを一つ拝借してしまったが(案外、イケた)、それなりに見応えのある勝負っぷりだったので暇というほど暇ではなく(暇ではなかったとは以下略)。
「出来た!」
「お、きよしスペシャル?」
「そうそう、きよしスペシャル……って、ちげーよ! きよスペシャルだわ!」
 鉄板の前に置かれた丸椅子に座した綾華の前へ、ふたつの舟皿が差し出されたのもほぼ同時。
「ともあれ綾華、味見を頼む! 食ってくれ!」
 期待に満ち満ちたきよの目と、語らずとも自信に満ち溢れた店主の目とを綾華は交互に見比べ、まずは店主の方をぱくり。それからきよの方をもぐ。
 眉間に皺を寄せ思案する綾華の様子を、きよと店主が固唾を飲んで見守る。
「――勝者は」
 永遠にも似た一瞬に、たこ焼き専門店の中は異様な緊張感で満たされた。
 どきどきどき。きよと店主の心臓が、ドラムロールのように早鐘を打つ。
 綾華、これみよがしにもうひとつずつ食し、暫し俯き唸って――顔を上げる。
「――えっと、店主さんの方だな」
 っしゃああ!! と。店主がガッツポーズ。対してきよは、しおしおとその場にへたりこむ。
「……マジかよ」
 きよ、ガチで凹んだ。ここに何をしに来たのか忘れて凹んだ。そう、白熱勝負に燃えるあまり、きよはすっかり忘れていたのだ。本日の目的が何で、店主が誰……というより、『何』であるかを。
 そろり。慰めるふりで綾華がきよに近付き、膝を折る。
 その耳に吹き込まれるのは猟兵としての内緒話。
「(ちゃんと気付け、油断させる為だろ)」
「(あ、なるほど!)」

 やぁやぁ、ご馳走様さん。良い勝負だったぜまたいつか。
 そんな和気藹々とした雰囲気からの、きよは隠し持っていた(隠し持っていた!)デッキブラシの一撃で、綾華は懐からしゅっと取り出した扇の一撃で店主を攻撃。
 斯くして無事に第一目的を果たした二人は、店の隅で冷えた鉄板の下から出てきたメモに目を瞠る。
 ――さり気なく最初に顔を出してるやつが、だいたいはボス。
 最初?
 最初?
 最初といえば……メイド?
 顔を見合わせ、綾華ときよは首を捻る。その際、きよの前歯に青のりがへばりついているのに綾華は気付いたが、気を利かせてそっと見ないフリを貫いたのだった(教えてあげて!)。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
ふむ…成る程
かの奇天烈揃いの地なら
我が主の気に入る品も見つかろう
UDCの若者らしい扮装で街へ

店先に綺羅と並ぶ石は
師の魔術に欠かせぬ品々
どれ、と覗き込んで
浅瀬の碧、空の青に春の花色
朝焼けのいろを手に取り
斯様に値が張るのかと目を見張れど
彩なす輝きに引き込まれるばかり
うむ、どれも良い品だ
歓喜の声を夢想し綻ぶ口許

標持つ姿あらば
…店の者か
済まぬが、もう少し下げられぬか
値段交渉は不慣れながら精一杯

…そこをその、なんとか
我が主の喜ぶ顔を見たいのだ

手を取り懇願すると見せかけて
自らの上背で周囲から隠しながら間近で【竜眼】
ついでに怪力で折れんばかりに文字通り締め上げる
店員の涙目などで意思を判断
うむ、そうでなければ



●でぃすかうんと・ぷりーず(ちからわざ)
 下は細身のジーンズに、編み上げブーツ。上は多角形の変形ネックラインが特徴的ながらシンプルなデザインのインナーに、定番のモッズコート。
 いかにも『イマドキ』な若者の形(なり)をしたジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は、風変わりな街並をそぞろ歩く。
 辺境の地でたまに出くわすマーケットと雰囲気は近しい気がする――が、物量や種類はこの街の方が明らかに多い。
(「ふむ……成る程」)
 此のような奇天烈揃いの地ならば、ジャハルの主のお眼鏡に叶うものもきっと見つかることだろう。
 どんと脳裏に居座る影(むしろ光)と街並を重ね眺めるジャハルの足取りは、軽い。
 何を贈ったら喜んでくれるだろう――そう手渡した瞬間の相手の顔を思い浮かべながらの買い物は、とても楽しいものだ。その相手が好みに五月蠅ければ五月蠅いほど、気持ちは前のめりになる。だって自分の選択が彼の人を笑顔にするやもしれぬのだ。従者として、そして弟子として、これ以上の誉れはない――と、ジャハルは思う。
 が、肝心なのは何を買い求めるかだ。妄想ばかりでは腹は膨れないのをジャハルは知るし、だからこそ最良の選択をと気持ちは急き出す。
 と、そんなジャハルの目に天然石を扱う店が、ひたりと留まる。
 街路に面したガラスのショーウインドウに行儀よく鎮座している石は、さながら地上に落ちた綺羅星の如く。同時に、ジャハルの師にとって、魔術を行使するのに必要なもの。
「――どれ」
 気付いたら、男一人。店の奥までずずいとジャハルは足を踏み入れていた。
 傍目には、煌びやかな店内にひどく不釣り合いな客だろう。しかしジャハルに、UDCの男性にとってこの手の店は一人で訪れるには若干ハードルが高い、とかいう概念はない。
 だから店員が「いらっしゃいま」で出迎えの言葉を止めたことに気も留めないし、若い先客女性が物珍しそうな視線を放りながら退店していったのも気付かない。
 然してジャハル、長身を丸めてぴかぴかに磨き上げられたショーケースに齧りつく。
 店内には他にも石はある。それこそ男児の冒険心を擽りそうな、不思議な形の石――ただし磨いても輝かない――だってあるのに、ジャハルの眼が吸い寄せられるのはお高いものばかり。
「すまぬ、これを手に取っても構わぬか?」
 しかも店主にお願いして、ケースから出してもらう事も忘れない。
 斯くして柔らかな絹の褥に並ぶのは、揃いも揃って極上の石ばかり。
 透明度の高い、浅瀬の碧。濁りを帯びた薄青は、なめらかな空。香るような春の花色、それから複雑に色移ろう朝焼けのいろ。
(「……嗚呼、どれも良い品だ」)
 いずれの色も耀きも美しく、ジャハルの裡に感嘆が溢れる。
 これらならば、稀なる貴石の師にも見合うだろう――そこではたとジャハルは『値札の零が二つほど多い』というシビアな現実を直視する。
 師へ捧げものだ。妥協は赦されぬ。とは言え、無い袖は振れない。
 ならば、どうする。
「済まぬが、もう少し下げられぬか?」
 でぃすかうんと・ぷりーず。
 大振りの☆型チャームのイヤリングをつけた男へ、ジャハルは値段交渉を試みる。こういう事は、普段は師の領分だ。口下手なジャハルには荷が重い。
「厳しいのは分かっている……そこを、その、なんとか」
 それでもジャハル、頑張った。
「我が主の喜ぶ顔を見たいのだ」
 情に訴え、頑張った――と、みせかけて。☆マークの店員を視線で威圧した。比喩表現ではなく、がちの目力で。そして相手が身を竦ませたところで、おもむろに手をむんずと掴んだ。
「頼む、後生ゆえ」
 ぎりりりりりり。捻り上げる。
「此の恩は忘れぬよう努める(あくまで『務める』)」
 ぐぎぎぎぎぎぎ。吊し上げる。

 ――この後、店内で何が起きたかは敢えて多くは語るまい。
 強いていうなら、ジャハルはそれなりに怪力であるということ(多分、弱小オブリビオンなど一ひねり☆)。
 とにもかくにも、ジャハルは目当ての石を流通価格の百分の一くらいでゲットして、ついでに『ボスに会いたければメイド』というヒントも入手したのであった。めでたしめでたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エン・ジャッカル
ほほう、拉麺フェスですか。教団が絡んでいるのは非常に残念ですが、食べ歩きは大変好きです。教団のことは注意しつつも、楽しむことにしましょう。

さて、こうにも個性的な店が並んでいると片っ端から入ってみたくなりますね。
しかし、そうすると教団から気付かれる可能性が。仕方ありません、1つの店に絞ることにしましょう。

どの店にするか…よし、ここは相棒のアヌビス号の改造案の模索も兼ねて視角に入ったジャンク屋にします。

入店して改造に使えそうな外部パーツや部品を探して手に取ったらお会計で支払う訳ですが、支払う仕草をしつつ影で練りだした手錠で教団員の腕を拘束し、格闘で意識を奪うとしましょう。

あ、勿論代金は支払います。



●律儀な風来坊
 無言で周囲を見渡し、とりどり街の入り口の横。『30分100円』と書かれた時間貸しの駐車場を目に留めたエン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)は、相棒であり、戦う時の主戦力と言っても過言ではない宇宙バイク『アヌビス号』を駐めると、改めて独特な色味のアーチ門を潜った。
(「……拉麺フェス、ですか」)
 すれ違いざまメイド喫茶の店員と思しきメイドに手渡されたチラシを、エンはしげしげと眺める。
 食べ歩きは、嫌いではない。むしろ、大好きだ。故に、教団が絡んでいるのは残念極まりない。
 とは言え、すぐさま襲ってくるような輩でもないらしい。
「注意しつつ、楽しむことにしましょうか」
 誰とはなしに呟いて、エンは並ぶ店々を右に左にと見比べながらゆったりと歩む。
 1/1スケールの戦闘機の鼻先がひさしになっているのは、プラモデル店だろう。扉以外の壁を薔薇で覆っているのが、薔薇専門店であるのは疑いようもない。
 他にも外観から奇天烈――もとい、個性的な店ばかり。自然と擽られる興味心に、つい片っ端から入店したい衝動にエンは駆られる。
 されど冷やかしてばかりでは、時間を浪費してしまい兼ねない。あと、教団員に訝しがられる可能性もないではない。
 となれば、候補は一つに絞るのがベストだ。
 幾らかの名残惜しさを高く結い上げた髪の毛先に燻らせつつ、エンはこれぞといった店を求め、なおも進み――濃い油の匂いに足を止めた。
「……ほう」
 そこは車やバイクのパーツを扱う、所謂『ジャンク屋』。ここならば、アヌビス号の新たな改造案のヒントにだって出逢えるかもしれない。
 趣味と実益を兼ねられそうな出逢いに、金の瞳にぽっと灯が点る。
 定番の外装パーツにマフラー、タンク。マニュアルなども参考になって面白い。ひとつひとつを手に取り、眺め、エンは静かに改造の構想に耽った。
 今のアヌビス号は基本一人乗りだが、シートを増やして万一に備えるのも悪くないかもしれない。
 幾らか廻った後に、色合いが最も似通ったタンデムシートを手に、エンは会計に向かう。
「すみません」
 声をかければ、大きな☆マークが染め抜かれたエプロンをした店員が対応に立った――ところで、
「――影はこういう応用もできます」
 短く唱えたエンは影で錬成した手錠を、貨幣の代わりに差し出し、問答無用でがちゃん。
 さすればあとは、瞬く間。動きを封じられた店員……というより教団下っ端を締め上げ、『ボスは誰より熱心に拉麺フェス客を募っている』という情報をゲットし、骸の海へとリリースする。
「ボスは誰より熱心に……?」
 事を終えたエンは、核心に近いようで遠いような情報を反芻し。ふと、最初にチラシを貰ったことを思い出す。
「まさか、あれが?」
 確信はまだない。けれどエンは元来た道を戻り出す。
 律儀にタンデムシートのお代をジャンク屋の棚に置いてくるのは忘れずに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
何処にでも湧くな、邪神教団
まあ忠告通り、先ずは品々の物色からよ
それ迄賊の討伐は後回しにしてやる

この足で訪れるのは古書店
UDCの知識は興味深い故、医術書等専門書の類があれば入手したい
後は…そうさな
期待こそしておらんが魔術書があれば手に入れぬ謂れはなかろう
整列した書物を逸る気持ちを抑え眺め
気になった古書を手に取り、頁を捲ってみる
ふむ、どうやら物語らしい
コミュ力で、これが如何なる話か聞くも良かろう
私の知らぬ、心躍る冒険譚ならば恐らくジジも気に入る筈
…失礼、此方も一つ頂けますか?
☆を付けた店員が居らぬかさり気なく確認
確定後、買物に満足したならば会計へ進む
代金を払った後、忍ぶよう【女王の臣僕】でトドメを



●古書店に青蝶の舞う
 ――何処にでも湧く輩だ。
 不衛生なキッチンに這い出る虫でもあるまいにと、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は邪神教団の逞しさやら図太さやら何やらを、奥歯で苦々しく噛み潰す。
 逐一潰していくのは、正直面倒だ。
 いっそ大掛かりな罠の一つや二つや構築し、大本営に殴り込んで一網打尽にする方が楽な気がしないでない。
 とは言え、さすがのアルバでもその規模の罠を考え出すには月か年単位での思索がきっと必要になる。ならば少々口惜しくはあるが、地味を優先するのも止む無しだ。
「どれ。先ずは品々の物色からよ」
 それに何より、此の地で扱われる品に非があるわけではない。然してアルバは、賊討伐は暫し棚上げし、店々を巡り始める。
 数多の世界、数多の地域を巡ったアルバをしても、なかなかに風変わりな店構えが並ぶ界隈だ。知を探求する者として、相応に興味はそそられる。中でも一番アルバの心を惹き付けたのは、店の外にまで棚を迫り出している古書店だった。
(「……ほう」)
 これまで長く買い手がつかなかったのだろう。店の奥の棚で息を静めていた医学書を手に、アルバは星の眸を細めた。
 UDCアースの知識は、アルバにとって興味深い一面がある。なかでも医学や化学分野は、複雑な魔術を行使する為の土台知識を豊かにしてくれる。
 ――まずは、一冊。
 分厚さに見合った重さのそれを、アルバは何気なく傍らへ遣った。追従する何者かへ「持っておけ」と言わんばかりの所作だ。が、そこにいつもの荷物持ちが居ない事にアルバは気付き、何食わぬ顔で抱え直す。
「後は……そうさな」
 そのままさらに、ぶらり。
 魔術書の類があれば、異なる体系を学ぶ意味でも是非に欲しい。
 既にこの世界の≪魔術≫と称されるものは絶えて久しいが、時代を遡れば類するものは存在する。
 ましてやここは邪神教団の息がかかった古書店。まさかの出逢いに恵まれる可能性はゼロではない。
 先ほどの無意識の失態を、脳の隅へと追いやり、アルバは背表紙の文字を追いかける。そんな中、黒地に銀糸で縫い取られたタイトルがアルバの目に飛び込んで来た。
 恭しくも感じる装丁に、そっと本を棚から引き出し、頁を捲る。
 少しだけ黴臭い匂いがした。同時に、不思議な懐かしさが込み上げる。
「――すみません。これはどんな話でしょう?」
 おそらくは誰かの冒険を綴った物語だ。目を走らせた中身に間違いがないか、アルバはレジの傍らに置物のように座していた店員へ尋ねる。
 あー、とか、うー、とか言いつつ、中年の男が棚の物陰にいるアルバへ歩み寄った。その胸には古書店店員には少々似つかわしくない、可愛らしい☆チャームのペンダントが揺れている。
 店内にいる店員は、彼ひとり。故にもとから目星はつけていた。
 そもそも、☆が教団を象徴するシンボルだというのが、アルバとしては若干腹立たしくもある。
 そんな、こんなで。
 ――控えよ、女王の御前であるぞ。
 密やかに響いた詠唱は、薄暗がりに青い蝶を舞わせ。教団下っ端をひっそりと骸の海へ還す。
 もちろん、事前にお支払いは済ませた。罪のない本への正当な対価として。
「で、首魁は冥途――いや、メイドであったか」
 へち潰す前に聞き出しておいた情報を反芻し、アルバはそういえば商店街の入り口に、らしき人物がいたことを思い出す。
 元来た道を戻るアルバの足取りはいつも通り。
 その手には医学書と、おそらく彼の弟子も瞳の七彩を輝かせて心弾ますだろう冒険譚が収められた紙袋が握られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルムル・ベリアクス
呪い屋…!占い師のわたしとしては気になります!

素敵な街ですね。混沌とした文化を見て、興味津々で散策します。
あ、あそこにひっそりとあるのが呪い屋かな…?

わたしの占いは、悪魔に運命を聞くことが主です。悪魔との交信を媒介するのに役立つアイテムって、こういう妖しい所にあるんですよね。
このアメジスト製のトカゲ像なんて、いかにも良さそう!これください!

あれ、あの店員の首飾り…星マーク!
UCで破片にしたカードを死角から【投擲】して当て、精神攻撃により逃げられなくします。
いいんですか?このままだとあなた…狂ってしまいますよ?
教団員を脅し、情報を聞き出します。
店主が危険に晒されそうなら【かばう】で守ります。



●呪い屋の占い師
「呪い屋……!」
 生気のないルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)の赤い目が、高揚に瞠られる。
 高揚しているのに目に耀きがないのは如何なることか――と、思うかもしれないが、ルムルの本体は反面を覆う烏の頭部を模したマスク。で、取り憑いた青年の方は瀕死の体なので、目に光がないのもさもありなんというわけだ。
 それはさておき、呪い(まじない)屋だ。
 占い師のルムルにとってはうってつけもうってつけ!
 元より商店街に足を踏み入れた瞬間から、ルムルはとりどり街に好感を抱いていた。
 主が趣味に走るだけ走った店構えが雑然と並ぶ様は、まさに混沌の坩堝。他の『商店街』ではお目にかかれぬ、この街特有の『文化』といって差し支えない。
 今まで触れたことのない文化との出逢いは、未確認生命体と遭遇するのにも似た心地を味合わせてくれる。
 此処はまさに稀有なる地。邪神教団の息がかかっていることが実に惜しい。
 などと興味津々で散策する中、ルムルの目に飛び込んできたのが、壁全面に蔦を這わせた、見るからに妖しい占い屋というわけである。
「失礼します」
 丁寧に声をかけ、黒ずんだ銀のドアノブを捻ってルムルは入店を果たす――が、暗幕に覆われた店内はひどく暗く、なかなか中が見通せない。
 その時。ぽっと紫色の光が灯った。
 炎のようにゆらぐそれは、来客に合わせて店員が点けるものなのだろう。「いらっしゃいませ」と聞こえた声にルムルは一礼を返し、再び赤い眼を見開いた。
「あああ」
 中央に髑髏マークが座した魔法陣布に、錆びた短剣。動物の頭蓋骨の標本に、血のようなものがこびり付いている紙片。
 いずれも悪魔との交信に役立ちそうなものばかりだ。いっそ店ごと買い上げられたらと、占い好きのルムルの心が騒ぐ。
 しかし資本は有限。無闇に使い果たしてよいものではない。択ぶなら一点と、ルムルは紫色の暗がりを注意深く見分し、運命の出会いを果たす。
「これは……!」
 ルムルは思わず息を呑んだ。
 彼の視線の先には、アメジスト製のトカゲ像。爪が烏のそれのように強調されているのが、また良い。
「これを、下さい!」
 黒いビロードの上に鎮座していたトカゲ像を恭しく手に取り、いざお会計と店員と向い合った瞬間。ルムルは先ほどとは違った意味で息を呑む。何故なら店員の胸元に、☆の飾りがあったからだ。
「――いいんですか?」
 一瞬前までの高揚が嘘のように低く沈められた声でルムルは店員へ語りかける。
「あなた、このままだと……狂ってしまいますよ?」
 妖しげな見てくれの男の、背筋から怖気が這い上ってくるような言い様に、☆マークの――つまりは邪神教団の下っ端が顔を引きつらせた。そこを見逃さず、ルムルは畳み込む。
「何の事か、お分かりですよね?」
 ふっと口元を慈母の如く弛めてルムルは下っ端の心を揺さぶる。

「成程、次はメイド喫茶ですか。ますます混沌としてきましたね」
 戦利品はお目当てのトカゲ像と、ここ一帯を拠点とした教団のトップの居場所に関する情報。
 恙無く一仕事を終えた――無論、下っ端はオブリビオンなので最後は骸の海へとお還り頂いた――ルムルは、街の入り口にあったメイド喫茶を目指す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
…商店街がまとめて教団の巣窟なことを嘆けばいいのか、資金調達の手段がラーメンフェスって割とまともな方法なことに呆れればいいのか…
なんというか、ものすごぉく反応に困るわねぇ…
まぁ、ほっといてもいいことないし。きっちり潰しておきましょ。
…あたしも、ラーメンちょっと興味あるし。

そーねぇ…ペンのお店見てみようかしらぁ?
ボールペンじゃなくて、羽ペンとかのインクをつけて使うペンのほう。
ガラスでできたのも見たことあるし、ちょっと気になってたのよねぇ。
こういうのって、眺めてるだけでもけっこー楽しいのよねぇ。

あ、ちゃんと〇情報収集もしておかないと。
〇クイックドロウからルーンで拘束して●絞殺で聞き出すわよぉ。



●甘い戦慄
「あらあら、まぁぁ」
 繊月にも似た細い目で街並を眺め、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は耳にした者の全身から力を奪うような極甘ロリボイスで溜め息を吐いた。
 確かに風変わりな店ばかりの商店街だ――が、問題はそこではない。
(「なんというか、ものすごぉく反応に困るわねぇ……」)
 片頬に手をあて困惑する仕草は、すれ違う男を虜にするような美女ぶりだ――しかし先述の通りの声なので、喋り出した途端に脱力される。けれど苦悩の中身は至極まともで常識的に妥当なことだ。
 何せ、商店街がまとめて教団の巣窟になっていることを嘆くべきか、それとも資金調達の手段が拉麺フェスという存外にまともな方法だったことに呆れればよいのか――というものなのだから。
 とはいえ、嘆けど呆れど、導き出す結論はただひとつ。
「まぁ、ほっといてもいいことないし」
 ――きっちり潰しておきましょ。
 爛漫の春を思わすほわほわぶりから一転、ただならぬ凄みを言葉尻にティオレンシアは滲ませる。しかしそれも一瞬。
「……あたしも、ラーメンにちょっと興味あるし」
 ふふふとご機嫌に微笑みながら、ティオレンシアはとりどり街をそぞろ歩く。
 どの店を覗こうか。ランプ専門店なら、ティオレンシアが営むバーを飾る逸品がみつかるかもしれない。或いはグラス専門店。風変わりなグラスがあれば、創作カクテルの新作案が閃く可能性もある。
 様々を思いめぐらすうちに、開いてるか閉じてるかぎりぎりラインのティオレンシアの目に、指紋一つ残らぬほど磨き上げられたショーウインドウが映り込む。
 飾られていたのは、瀟洒な羽ペンと硝子ペン。
「まああ」
 実用品でありながら鑑賞品の役目も十分に果たすそれらに、ティオレンシアの心が弾む。ボールペンや万年筆も悪くはないが、やはり綺麗で美しいものには女心が擽られてしまうのだ。
 斯くして入店を果たすと、そこは豪奢なシャンデリアの耀きにも等しい世界。
 先が淡く色付いた羽ペンは、優雅で軽やか。複雑な溝が刻まれた硝子ペンは、形状も色味も様々で、触れられる虹のようだ。虹、と言えば、インクもそう。可愛らしい小瓶から、シャープな小瓶まで。つい幾つも色を並べたくなるインク瓶に、子どもみたいな歓声をあげたくなる。
「こういうのって、眺めてるだけでもけっこー楽しいのよねぇ」
 一つ一つに顔を寄せ、それぞれをじっくり堪能していたティオレンシアは、ふと思い出した素振りで店の奥に声をかけた。
「はぁい、こんにちはぁ」
 店番は、スーツ姿の男がひとりきり。そしてスーツの袖口には、☆型のカフスボタン。
「ごめんなさいねぇ、ちょっとお話聴かせてもらってもいいかしらぁ?」
 呼びかけられた男は、ティオレンシアをただの客だと思っていただろう。それと同じくらい、彼女の言葉を普通の会話の一環として聞いたはずだ。そこにユーベルコードの罠が潜むとも知らずに――。

 かつかつかつ。
 皮靴の踵をアスファルトに高く鳴らしてティオレンシアは商店街の入り口を目指して戻る。
 きっちり締め上げ、さっくり仕留めた下っ端から齎された情報は確実。
「メイドに偽装、ねぇ――面白くなってきたわぁ」
 甘い呟きに、スリルが躍る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クリストフ・ポー
拉麺フェス
希夜の葛藤も解るよ
美味い拉麺に罪は無い!

教団の資金源だと遠からず邪神を招くしね
ならばこそいい提案だ
乗ったよ

芋系女子高生の格好で
石を扱う店が気になるから行ってみよう
もう閉山したけど
我が家の領地では紅玉が採れたんだ
だから鉱物にはそれなりの詳しいよ
唯一無二の輝きや模様
大地が生み出した美を愛でるもよし
輝きが無くて屑石に見えるのも、無価値じゃない
砕けば粘土の原料や顔料
薬、転じて毒にすらなる

好事家だろう店主と話しを盛上げながら
☆マークの奴を探ろう
それが例え眼前の店主だとしても、例外は無い
全ては拉麺の為に
目星がついたら

えぇ~凄い!お詳しいんですねっ!
個人的にお話聞かせてください♪

物陰に誘いボコる



●純朴少女と侮ることなかれ
 膝丈のプリーツスカートの裾を楚々と揺らし、その少女は風変わりな商店街をおずおずと眺めた。
(「拉麺フェス……」)
 都心の賑わいや、イマドキの機微には疎いのだろう。持って生まれた造作には目を瞠るものがありそうだが、太めの眉やそばかすが少女の印象をぼやけさせている。
(「うんうん。これは間違いなく葛藤事案だ。美味い拉麺に罪はないからね!」)
 無駄に愛想のよいメイドからチラシを手渡されそうになった少女は、必要以上に驚き、肩を跳ね上げ後退り、それから慌てて「すみませんっ」と頭を下げた。
(「が! 教団の資金源だと遠からず邪神を招いてしまう。うん、わかるわかる」)
 洗いざらしの髪は飾り気がなく、タンポポの綿毛みたいに四方にふわふわゆらゆら。
(「なればこそ、今回の提案は実にいい――乗ったよ」)
 外見は、絵に描いたような田舎の純朴女子高生だ。されど先ほどから洩れているように、頭の中身は真逆も真逆も真逆も真逆。
 何故か?
 答はとっても簡単。
 女子高生の正体が、実際は齢三桁に達する超絶童顔ダンピールことクリストフ・ポー(美食家・f02167)だからだ! 普段は美少年を装うクリストフが今日に限って芋系女子を演じているのは、周囲の油断を誘う為(年齢詐称し過ぎにも程があるともゆってはいけない。時に真実は徹底的に秘す方が世の為になることだってあるってもんだ)。
 斯くして美味い拉麺にありつくために――もとい、此の地に蔓延った邪神教団を駆逐すべく、クリストフは様々な『石』を扱う店を訪れた。
「……へぇ」
 潜った扉の先にあった風景に、思わず素の感嘆が零しかけたクリストフは、慌てて「すごぉい」と少し鼻にかけた歓声を付け足す。
 貴石のみならず、あらゆる石を商う店は、まるで巨大な標本箱のよう。一定間隔ごとに区切られたスペースには、大小さまざまな石と、その産地や組成に関する情報、更には石に纏わる逸話までもが添えられていた。
 なかなかの壮観ぶりに、クリストフの遠い記憶が柔らかく疼く。
 もう閉山してしまったが、クリストフの一族が治める山でも紅玉が採れたのだ。だからクリストフも相応に鉱物には詳しい。
「きれい」
 澄んだ琥珀色の石を眺め、少女は微笑む。
「こっちは、かわいい」
 青と茶がマーブルに交じった石には、知らず目元が和らいだ。
 輝きや模様に同じ物が二つとない石は、大地が生み出した奇跡だ。輝きのない屑石に見える者も、決して無価値ではない。
 色を持つものは、砕けば顔料になることもある。ただの土くれのようなものでも、粘土の原料になるものだってある。
 そして時には薬――転じて毒になるものだってある。
 己の持つ知識と遜色ないディスプレイに、クリストフの内側で好奇心がむくむくと育つ。
 ここの店主はなかなかの好事家らしい。惜しむらくは、雇う相手の本質を見抜く目は持ち合わせなかったらしいことだ。
(「――さて、と」)
「あの~」
 店の壁に貼られた自称研究者の店主の顔写真とは、年代も性別も異なる若い女性店員へ、クリストフはおそるおそるを装い近付く。
 彼女の胸から下がる石には、見間違えようのない☆マークが刻まれている。
「もっと詳しくお話聞かせてもらえませんか?」
 同性さえもころりと騙すとっておきの上目遣いで『お願い』して、女を店の隅までおびき寄せれば、あとはとっても簡単♪

 どす、ぼこ、べしん。
 余人のいない店内に響いた物音に気付いた者は、クリストフと教団下っ端女以外はおるまいて。
 そんなこんなで華麗に闇討ちを決めたクリストフは、首魁はメイド喫茶に関わり合いあるらしいという情報を得て、元来た道を芋系女子モードでしずしず戻る。
 ここで教訓。人を見た目で判断したら、痛い目に遭います。石の価値と一緒だね!

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
すごいねえ、いろんな店があるよ
それぞれの店主の気持ちというか、拘りを感じる
私には珍しいものばかりだ

私の出で立ちだと、外国人観光客だと思ってもらえるかな
この王子様みたいな服が珍しいかい?
私もこの服には拘りがあるんだ
そういう意味では、この街のひとびとと似てるかもね

あ!この店は気になる。おもちゃ屋かな?
古めかしいものから、ぴかぴかと新しいものまで
!!このカッコいいやつは……!?ラジコンというのかい?

す、すごい!この小さな機械で乗り物が動く……
ああっそんな機敏に
私もやってみたい!ダメかな!?(実は機械音痴なんだけど)

ところでその☆マークのシャツかっこいいね
キミの拘り?そっかあ(攻撃力を重視した腹パン)



●小さい淑女の知恵袋
 お揃いの黄色い帽子に水色スモックの幼女たちが、きゃあきゃあと歓声を上げて、頬を朱に染める。
「ねぇねぇ、どこにいくの?」
「あのねあのね、むこうにおいしいたこやきやさんがあるのよ」
「たこやき? それは食べ物かい?」
 おそらく近所の幼稚園児だろう。しかし幼くともレディはレディ。エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は恭しく膝を折って、果敢にも語り掛けてきた二人へ優雅に微笑む。
 途端、ひと際甲高い声が方々から上がる(おそらく園児の母親の声も混ざったはずだ)。
 猟兵はいずれの世界においても、姿形に関わらず、周囲に普通に受け入れられるもの。
 そう、普通に。極々、当たり前に。つまり、何処へいっても美形は美形。それが気高き美貌と来れば、目敏い女たちが放っておくわけがない――かもしれない。
 もう少し地味な服装をしていたら、エドガーだって『THE☆庶民の楽園』な商店街にさらっと紛れ込むことも不可能ではなかったはずだ。けれどエドガーにその選択肢はない。
 だってエドガーにとって、白に青と金色が映える王子様装束は、ひとかたならぬ拘りのあるもの。
「そういう意味では、この街のひとびとと似てるかもね」
 ずらりと続く、主の趣味が前面に押し出された店構えに、エドガーが己を重ねて呟くと、独り言にも関わらず、「え、なぁに?」「にてるの? にてるの?」と幼女たちが大きな瞳をくるりくるりと煌めかせた。
 絵本の登場人物みたいなエドガーに、彼女たちはハートを鷲掴みにされたらしい。そんな彼女らは、物珍しい街並みをゆるゆると歩き出したエドガーにくっついて、聞いてもいないあれこれをどんどん「おはなし」してくれる。
「あっちはパンのおみせなの」
「むこうにはかわいいぬいぐるみがあるのよ」
「あとねあとね――」
 子スズメみたいな幼女たちに、何をか思うところがあったのか、エドガーがいつも連れるツバメが、エドガーの金の髪の一房をツイと啄んだ。
 決して痛いほどではない。が、視線を誘導するには十分なそれに導かれ、エドガーの青い瞳はとある店舗に吸い寄せられた。
「この店は……おもちゃ屋かな?」
 軒先に赤いグライダーが吊り下がっている店は、男心を擽る玩具店。
 ぴかぴかと明滅するカラフルな照明も、童心を誘って止まず。エドガーも早馬の如き勢いで店内に飛び込んだ。
 ソフトビニールの人形や、ボードゲームに、小型携帯ゲーム機。ふた昔前のものから、最新のものまで揃えられたおもちゃの数々。そんな中、シャープなフォルムがかっこいいラジコンカーがエドガーの心をぐっと掴む。
「す、すごい! この小さな機械で乗り物が動く……」
「え、え、私もやってみたい! ダメかな!?」
 胸に大きく☆マークが描かれたTシャツを着た店番の青年が操るスーパーカーに、エドガーはすっかり首ったけ。
「わああ、すごい! ああ、でもそっちへ行ってはだめだよ」
 ――けれど完璧に見える王子様も、実は機械音痴。ままならぬコントロールぶりは、後をついてきた幼女たちの方がよっぽど操縦が上手いくらいだ。
 狭い店内を、ぎゅいぎゅいとスーパーカーが走る。追いかけて、幼女たちも走る。
 にぎにぎしい一時に、エドガーはにっこり。そうしておもむろに、手持無沙汰になっていた青年店員に歩み寄った。
「ところでその☆マークのシャツ、かっこいいね。キミの拘り?」
 にこやかに、親し気に。笑顔に混ぜ込まれたのは、問答無用のグーパン(しかもみぞおち)。
 結果は、推して知るべし。

『あのおにーさん、よくメイドきっさにでいりしてるのよ』
 唐突に消えた(骸の海に強制送還された)青年店員の情報をエドガーに齎したのは、まさかの幼女。幼女といえども女は女。相応に目敏いらしい。
 そんなこんなでボスに繋がる情報をゲットしたエドガーは、幼女たち(+お母さま方)と笑顔で別れ、商店街の入り口方面へ逆戻る。
「メイド喫茶……いったいどんなところなのだろう」
 王子様にとって未知なる冒険はまだまだ続く――?

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
だがしやさんだっ
ちょっとずついろんなものが買えるからたのしくて
お金の形のチョコや
みんなで遊ぶメンコにしゃぼん玉、あれこれ買ったら

ベーゴマ大会?
誘われて覗く

わあ、やったことあるよっ
わたしもさんかするっ

以前、偶然にも勝ちまくった為に
『貝独楽王』と呼ばれている――
ということは(本人も)知らないのであった

前に聞いたルール(?)のとおりに
いけーっ、とんこつらーめんおおもりばりかたあぶらましまし号っ
名前を付けてベーゴマを放つ!

名前はねえ、前にらーめんやさんで聞いたじゅもんだよ
わあ、やったっ
とんこつら(略)号、つよいっ

あれ?
相手に☆を見つけたら
ガジェットショータイム
でっかいベーゴマがふってきてぷちっと
…あっ



●見参、僕らの貝独楽王!
「だがしやさんだっ」
 虹の欠片に尾を引かせる足取りで、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は遠目にもはっきりわかる店目掛けて走った。
 店構えは外へ大きく口を開け、店内には大小さまざまな棚や、祭屋台を模したコーナーもある。そして数え切れないくらいのプラスチック容器の中には、それぞれ異なる菓子たち。
 雑多な彩も、目に楽しい。あと、何れの菓子も格安なのが、お財布にとても優しい。
「ごらん、シュネー。金貨みたいだよ」
 大事に抱えた人形の桜色の瞳の前に、オズは手にした金の包み紙に覆われたチョコレートを差し出す。
 ふくふくとした鳩が刻印されたそれは、胸に飾って勲章にするのも良さそうだ。羽搏く想像の翼に、オズの白い頬にも桜色が躍り出す。
 可愛らしいパッケージに、どんな味がするのか想像がつかないもの、もはや菓子とは思えぬものまで。駄菓子屋の中は、お菓子の万国博覧会のよう。
 ――でも。駄菓子屋にはもうひとつ、見逃せないとっておきがある。それはメンコやシャボン玉といった昔ながらのおもちゃ達だ。
 ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。
 ぴー、ひゅるると吹き戻しをご機嫌に吹き鳴らしながら、オズはあれやこれやを買い物かごへ放り込み、やがていっぱいになった茶色い紙袋をシュネーと共に抱える。
 駄菓子屋を、この上なく満喫するオズ。そんな彼へ、屋台の内側から声がかかったのは、当然の成り行きかだろう。
「お兄ちゃんも一緒にやろうよ!」
「やったことある?」
「ベーゴマ? わあ、やったことあるよっ! わたしもさんかするっ」
 口々に囀る幼い少年達が掲げた手にもつものに、オズの瞳の耀きがまた一段階増して。斯くして始まる臨時ベーゴマ大会。
「いけーっ、とんこつらーめんおおもりばりかたあぶらましまし号っ!」
 太鼓を横に倒したみたいな闘技場の上めがけ、きりきり巻いた糸を引き、オズはナルトが描かれたベーゴマを解き放つ。
 ちなみに。耳にした途端、子どもたちがオズを二度見したベーゴマの名前は、以前ラーメン屋で聞いた不思議な呪文だ。ナルト柄だけに。
 名前はさておき、オズのベーゴマはとにかくよく回った。闘技場から落ちることなく、ぎゅいぎゅい回った。回りに回って、ばちんばちんと子供たちのベーゴマを弾き飛ばしてゆく。
 実は本人さえ知らぬことだが、以前にもオズはベーゴマでめちゃくちゃ勝ちまくったことがある。結果、密かに『貝独楽王』と呼ばれるほどの腕前の持ち主なのだ……!
 称号を得るに至った戦いは、偶然の女神の加護だったのかもしれない。けれど今日のオズも強かった。
「つよいつよい、とんこつら(略)号、つよいっ」
 とってもとっても強かった。
 そんなオズに、最強の挑戦者が現れるのは、ある意味必然。
「……む、できるけはいがするよ」
 立ちはだかったただならぬ気配にオズが顔を上げると、そこには胸元にどーんと☆マークが描かれたエプロン姿の中年男性――この駄菓子屋の店主がいた。
 若造なぞに負けやしないと言わんばかりの表情で、店主がベーゴマをスタンバる。
 小さな闘技場を挟み、オズと店主が睨み合う。確かに店主のフォームには一分の隙もなかった。漲る覇気も、殺意と見紛うばかり。
「っ、わたしだって、まけない……!」
 だからだ、オズがついうっかり新たなベーゴマことガジェットを召喚してしまったのは。
 だってオズは貝独楽王。万が一にも敗北は赦されない、ベーゴマ界のレジェンド(本人未承認)なのだから――。

 コントよろしく、天井から降って来た巨大ベーゴマの直撃を受けた店主は、魔法のように姿を消した(たんに骸の海へ還っただけだが、子供たちは勝手にそう納得したモヨウ)。
 こうして今日もまた一つの悪は挫かれ、駄菓子屋には真の平和が訪れた。
 ありがとう、貝独楽王。ありがとう、とんこつらーめんおおもりばりかたあぶらましまし号。
 けれど貝独楽王の戦いはまだ終わらない。
 彼はベーゴマ闘技場の下に隠されていたメイドマークに気付いたのだ。
「いこう、シュネー。きっとボスはここにいるよ」
 ゆけ、貝独楽王。ベーゴマ界の平和は王の手に――ではなく、とりどり街の平和と拉麺フェスの成功はオズを含めた猟兵たちの手にかかっているのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
巴(f02927)と

巴に誘われて、ラーメン
教団員も地道な努力してんだね
此方は観光っぽく散策

ふと店の前で立ち止まり
巴と目が合ったら、入ってみる?

猫グッズがあればそこを注視してみたり
謎の禍々しい置物が醸し出すシュールさを楽しんだり
無表情のまま物色していく
不細工な作りのも味があるね

音に反応して動くタイプのぬいぐるみの不意の動きに
無表情のままでちょっと驚いたり
…動くのもあるんだ

巴が見つけてきた謎のぬいぐるみ
不思議そうに眺めてみて
猫…ではない何かだけど、なんだろうね
まだ知らないことが沢山あるなぁ

ああ、仕事が早くて助かるよ
巴が示す先の敵
致命傷を与えないよう腕や脚を狙って攻撃
拠点の場所、聞いとかなくちゃな


五条・巴
アドリブ歓迎

由紀と(f05760)

ラーメンと聞いてすぐに由紀を誘って
まずは散策からだね

動物グッズの専門店?
由紀の方を見る
目が合った
入ろうと大きく頷き、扉を開ける

直ぐにそれとわかる動物からちょっと分からないものまで
動くぬいぐるみにびっくりしてそうな由紀を見てつい笑っちゃう
猫の反応とそっくりだね

ねえ由紀、これなんだと思う?
指さしたのは4本足、耳はありそうだがもさもさした毛で覆われて形がわからないぬいぐるみ

これ、なんだろう。クマ……?いやしっぽがある。
見当つかないな

あ、店員が星マークのピンを付けてるのはすぐ見えたよ。
店内の物が壊れないように攻撃

しばらくあの動物がなにか、考えちゃうな



●男二人と猫と謎動物とラーメンと
 ――ラーメン。
 耳にした単語に、五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)が真っ先に思い浮かべたのは、鹿忍・由紀(余計者・f05760)の顔だった。
 面倒ごとにはあまり首をつっこみたがらないのが由紀だ。何だったら、好きなことだけをやっていたい――と、思っている程度には。
 けれど巴の誘いに由紀は、「ふーん」と首肯した。
 一風変わった店ばかりの街並は、観光気分で歩けないこともない。あと、邪神教団員も地味な努力をしているんだと、感傷めいた感慨が浮かんだのだ。
 オブリビオンと言えど、UDCアースで社会的活動をするには、相応の資金が必要になるということか。世知辛い。巴あたりが広告塔になればあっという間に解決しそうだが、そも巴は猟兵だし、怪しげな輩からの仕事を受ける暇もないだろう。
 と、明確な解を求めるでない思考はのらりくらり。そうする間にも時は適当に流れ、とりどり街の景色もぶらぶら移ろい、はたと一つの店舗の前でようやくの定まりを得た。
 軒先に、立派な鬣を持つライオンがぶら下がっている。
「   」
「   」
 無言のまま巴と由紀の視線が絡む。
 ――入ってみる?
 くいっと顎を店側て遣った由紀に対し、
 ――うん。入ってみよう。
 巴も大きく是を頷いた。
 然して一声も発することなく意思を通じた二十歳超えの男ふたりは、並んでライオン――のぬいぐるみの腹下を潜り、いざ店内へ。そして揃って息を飲む。
 そこはサバンナもかくやの動物の楽園だった。いや、サファリパークと評する方が近いかもしれない。一目で種別が分かる動物から、地球上の生物かも怪しい動物まで。ありとあらゆる動物グッズが所狭しと陳列されているのだ。
 頭上に巡らされた枝や蔦には、極彩色の鳥や猿、げっ歯類。棚代わりに積み並べられたケージの中には、獰猛な肉食獣に、身体の大きな草食動物。とはいっても、いずれもぬいぐるみや雑貨商品だ。だのにそれっぽく見せている演出は、なかなかに凝っていて面白い。
 加湿器らしい素焼きの置物は、おそらく狸。でっぷりとしたお腹のわりに顔がシャープなアンバランスさが滑稽だ。
 人里遠い神殿で門番でも努めていそうな名もなき動物のオブジェは、「ブサかわ」狙いかもしれないが、正直不気味さが勝っている。果たしてこんな商品に買い手はつくのだろうか?
 ――そんな時だった。
 どんな出逢いにも微塵も表情は変えず。ふらりふらりと物色していた由紀の心の動きが表に現れたのは。
 目に留まったのは、猫の群れ。白に黒に、グレーに、キジトラ、サバトラ、茶トラに三毛。
 あらゆる毛色の猫に由紀は思わず足を止め、そっと手を伸ばした。触れた毛並は柔らかく――と思った途端、ただのぬいぐるみだと思った猫が顔を上げ。「え?」と由紀が発した声に、「にゃー」と鳴いた。
「……動くのも、あるんだ」
「――そうだね」
 相変わらず表情筋は僅かも動かないのに、跳ねた肩に驚きが出た由紀の所作が猫みたいで、巴は小さく笑う。
 けれど笑ってばかりなのは悪いので、すぐさま巴は違う水を向ける。
「ね、これ。なんだろう?」
 言って抱え上げたのは、四つ足で、耳らしき突起が埋もれるくらいのふかふかで、長い尻尾はあるけど、先っぽが二つに割れてるぬいぐるみ。
「クマに見えなくないけど。尻尾が違うよね」
 うーむ、と巴は首を傾げると、
「猫……ではない何かだけど――なんだろうね?」
 顔を寄せた由紀も、首を捻る。どうやら世界にはまだまだ知らないことが多いらしい。
 動物グッズ専門店に、成人男子が二人。
 絵面的にはほんのりシュールなようで、和やかな時間がゆるゆると流れてゆく。
「店員さーん、ちょっといいかい?」
 店番は年齢的には由紀と巴の間くらいの男性がひとりきり。装着された猫耳ならぬ☆耳カチューシャがあまりに特徴的で、笑い出したくなるのを堪えるのも巴は一苦労だったけれども(由紀はそういうのが一切顔に出ないので、無問題)、値段を尋ねるふりで入り口から目につかない場所へおびき寄せ、まずは巴が矢でずぶり。
「さすが巴。仕事が早くて助かるよ――絡めとれ」
 そこをすかさず、由紀が魔力の籠った視線で射抜いていい塩梅まで締め上げて。
 この街を拠点に定めた首魁の居場所を聞き出し終えたら、☆耳カチューシャ男こと教団下っ端はお役御免。
 恙無く骸の海へおかえり願い、二人は入店時と変わらぬ様子で店を出る。
「あ。あの動物、何か聞けばよかった」
「――そういえば、そうだね」
 思い付きは、たいてい忘れた頃にやってくる。巴の気付きに、再び視線を交わして由紀もとつりと是を唱えた。
 でも、たまには想像の余地が残されるのも良いかもしれない。そういう余韻を楽しめるのもまた、大人というもの。
 斯くして巴と由紀は、商店街の入り口方面へ元来た道を戻る。ただし由紀の方が半歩ほど遅れがちで。何故なら、向かう先が向かう先だから。
「でも、メイド喫茶だなんてね?」
「……」
 くすくす笑う巴に反し、由紀は無表情のまま無言(それがまたおかしくて、巴の笑みは深くなるのだけれど)。
 美味しいラーメンにありつくには、厄介事がもうひとつ。
 果たしてそれを楽しめるか楽しめないかも、心の持ちようひとつ?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『齢十四の災厄』御門・光流』

POW   :    『理想の私あるいは心的外傷の発露』
対象の攻撃を軽減する【光の戦士として前世の記憶を取り戻した自分】に変身しつつ、【レベル×7回の高速射撃&高速装填】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    『魔弾の射手あるいは逃れられぬ死』
【回避や防御が極めて困難な魔弾を撃つ 】事で【視界内の標的を撃ち抜く魔弾の射手モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    『未来視の魔眼あるいはご都合主義』
自身の【窮地を逆転の布石に変えられる未来視の能力】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。

イラスト:Nekoma

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●とりどり街の、とりどりにも程があるとりどり事変
 とりどり街の入り口で、妙に存在を主張していたメイドカフェ。
 そこへ戻って来た猟兵たちを見て、店前でチラシを配っていたメイドは低く呟いた。
「……バレてしまいましたか」
 営業スマイルが取り払われ、赤い瞳に剣呑な光が宿る。
 そして少女は魔法少女の変身シーンよろしく、その場でくるりと回転。メイド装束を脱ぎ捨てると、指ぬき手袋にアーミーコートという姿に転じた。
「私の計画を邪魔する者は赦しません」
 きらりと☆が帽章に煌めく軍帽を目深にかぶった少女は、厨二病とコミュ障を拗らせ邪神の眷属と化した者――『田中良子』。
 良子が何故メイドを装っていたのかは、わからない(多分、悪役は裏の顔と表の顔を使い分けるのがセオリーだから、とかいう発想からの飛躍だと思われる)。
 しかし良子はついに本性を明らかにした――が。
「いいのですか? この場で戦って?」
 何事かと人が集い始めた周囲を見渡し、良子は不敵に笑う。
「ご覧の通り、私は十代半ばの美少女。このまま私をボコれば、どちらが悪役と思われるでしょうね?」
 良子、なかなかの知能犯であるらしい。
「あと。そこかしこに取り付けてある防犯カメラ映像は、ネットで生配信されています。例えこの場は取り繕えたとしても、ワールドワイブウェブ越しの観客まではどうにもできない」
 くつくつと、良子は喉を鳴らす。
 確かに良子の言う通りだ。例えオブリビオンが悪しき物と認識されているとはいえ、美少女を、よってたかってぼこるのを大っぴらにするのは、あれこれ気が引ける。
 とは言え、素直にこのまま引き下がるなんて出来ない。
 ならば、どうすればよい。
 周囲の視線を猟兵に惹き付ければ良いのだ。例えば、得意の剣技や魔法を大道芸のようにして見せたり。或いは、趣味や得意のあれこれを披露してみたり。
 そうして周囲の人々や、配信画像を見ている人の視線を釘付けにできれば、その隙に一撃喰らわせたところでさして目には留まらないだろうし、気付けば良子が倒されていても不信に思われることもそうあるまい。あるまいったら、あるまい。何せ、ここは元から風変わりなとりどり街なのだから!

「大人しく手を引いて下さい。それとも、美少女の手にかかって斃れますか?」
 猟兵たちが既に対応策を思い付いているとも知らず、良子は昏く微笑む。厨二病少女は、完全に己に酔っていた。
エン・ジャッカル
確かに少女を寄ってたかって戦うのは周りから見ると卑劣極まりないでしょうね。ですが、相手はお忘れのようです。ここは個性的な店舗が並ぶ商店街。

つまり、その商店街の中で個性的なパフォーマンスをご披露すれば、周囲の人々もただの劇だと勘違いさせられます。

という訳で…相棒。すみませんが、私のパフォーマンスに付き合ってください。モードチェンジ!

「イッツショータイム!正義の機械ヒーローvs正義の魔法少女の奇妙な組み合わせの対決!果たしてどっちの正義が勝つのか!?どうぞご覧になってください!」

戦法としては、避けたら周囲に流れ弾が飛んでいってしまうので、回避を捨ててシールドガンで防御しつつカウンターを狙います。



●第一幕『正義の機械ヒーローvs正義の魔法少女』
 年の頃は、自分が教団を飛び出したのと同じくらいだろうか。
 正体を明らかにした少女を見遣るエン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)の胸に、感傷めいたものが去来する。
 エンにとっては、今の己に繋がる転換期だ。それはおそらく良子も同じ。択んだ道は、真逆であったけれど。
 思春期に自分を留め置いてしまった少女――正しくは、その姿で骸の海から蘇った――は、確かに寄って集って攻撃するに向かない相手だ。
(「周りから見ると、卑劣極まりないでしょうね」)
 何が始まるのだろうと好奇の視線を放るガヤと、良子と、自分たちと。置かれた状況を冷静に判断し、けれどエンは口の端を僅かに吊り上げる。
(「確かに向こうが有利――ですが」)
 根城にしておきながら、良子はこのとりどり街の特性を完全に理解していない、とエンは思う。
 だってここは個性的な店舗が並ぶ商店街。奇天烈具合にも耐性を備えた地。
(「つまり、ここなで個性的なパフォーマンスをご披露すれば、周囲の人々もただの劇だと勘違いさせられます」)
 不可能を可能にする原理を、エンは得た。然してエンは、唐突にくるりと反転。良子へ背を向け、商店街の外へと颯爽と駆け出す。
 傍目には、すわ敵前逃亡か!? となるやもしれぬ。
 だがエンのこれはそれにあらず。駐車場に停めてある宇宙バイクのアヌビス号を迎えに行く為の――つまりは、良子と堂々と対峙する為の予備動作。
「……相棒。すみませんが、私のパフォーマンスに付き合って下さい」
 200円の駐車代金を律儀に納め、エンはアヌビス号のボディを慈しむように撫でた。そして、変身ヒーローのように高らかに唱える。
「モードチェンジ!」
 刹那、光が溢れた。まるで目を灼く白い繭だ。そしてそこから生まれ出るのは、アヌビス号と合体を果たした鋼のヒーロー。
「イッツショータイム!」
「なっ!?」
 三メートルを超える人型ロボ――エジプト神話に記される冥府の神を思わす姿へ転じたエンは、再び良子の前へと舞い戻る。
「正義の機械ヒーローvs正義の魔法少女の奇妙な組み合わせの対決! 果たしてどっちの正義が勝つのか!?」
「え、ちょっ!?!?」
「すげー!」
「かっけー!」
「ねぇ、おかあさん。みていこうよ!」
 テンション高めの前説は、良子の困惑を他所に周囲のちびっこ達のテンションを鰻昇らせ、一帯の雰囲気をがらりと変えた。
「いけー、キカイヒーロー」
「まほうしょうじょにまけんなー!」
「わかりました。どうぞ心ゆくまでご覧になってください!」
 予想外の展開に舌打つ良子へ肉薄しながら、エンは噴かせたバーニアで更に加速する。
「――そういうことでしたら、受けてたちますよ」
 我が身を弾丸とするエンに対し、良子も負けじと光を纏って応戦した。
 未成熟な少女が身の軽さを活かした蹴りを繰り出す。それをエンは真正面から受け止めた。今の巨躯ならば、反動は小さい。何より、周囲へ万一の被害を出さぬ為にも、エンは回避を封じて良子と真正面から組み合う。
 始まった機械ヒーローと魔法少女のガチ勝負に、とりどり街の入り口は、とってもいい感じに温まり始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルムル・ベリアクス
自称美少女さんといえども、邪神の眷属であれば倒すのみ、ですが……。折角ですし、人々を楽しませながら、といきましょうか。

手を叩いて人々を注目させます。さあ、皆さん!不思議な不思議なショーの始まりですよ!

UCを使って手品や大道芸のように見せながら戦います。
カードを炎の剣にひらりひらりと変えながら、剣をジャグリングしつつ、隙を見て敵に【投擲】を決めてやりましょう。

そして次は剣技です。炎を纏った舞を披露しつつ、とどめを刺してしまいましょう。

わたしは人々を楽しませるのが大好き。皆さんの笑顔につられてわたしも笑ってしまうかもしれませんね。



●第二幕『炎の道化師vs自称美少女』
 ――そういうことですか。
 生者の息吹の感じられぬ赤眼を眠る猫のように細め、ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は思案した。
 顎に遣った指を、熱を感じぬ口元に遣る。一度、二度、と指の腹を弾ませた。同じリズムで視線を馳せる。先ずは周囲へ。それからとりどり街全体へ。そして件の≪自称≫美少女へ。
 取り巻いている人々の瞳は、ルムルのそれとは真逆なほど未知の期待に煌めいている。
 街並みは、変わらず風変わりで愉快。
 ――そして。
(「邪神の眷属であれば倒すのみ、ですが……」)
 ルムルは、意志を持ち生ける者を愛している。
 愛ゆえに、彼らを守ると誓っている。
 それならば!
「さあ、皆さん! 不思議な不思議なショーの始まりですよ!」
 羽織るローブを翻し、ルムルはパァンと高らかに両手を打ち鳴らす。
「(甦りし悪魔よ、その牙で地獄を顕現させよ!)」
 重々しい唱えの台詞は、群衆のざわつきに潜ませて。次いで吹き上げた炎でルムルは人々の視線を奪った。
 わぁ、と真っ先に声を上げたのは小さな子供だった。その子供と手を繋いだ親も、ぐっと身を乗り出す。事態についていきそびれた年頃の少年少女たちも、慌ててスマートフォンを構える。
 ルムルが宙にばら撒いたカードが、瞬時に炎の剣へと転じた。それらをくるりくるりとルムルは軽快に操る。
 投げて、受け取り。受け取っては、また投げて。
 時折、手元が逸れた風を装い、一振りを良子へ放る。
「――っへ!?」
 呆気にとられていた良子は、すっとんきょうは声を上げて飛来した得物で帽子を串刺しにされた。
「――は!?」
 続いて飛んできた剣は、辛うじて躱した。けれど卍を体現したようなポーズになってしまい、衆目の歓声を誘うことになる。
「ちょっと、わざとやっているでしょう!?」
 さすがの三投目からは、アクロバティックな体の捻りだけで逃げ、良子が吼えた――定番コントの流れだ。良子の必死さとは裏腹に、ルムルが主役のショーを眺める人らの貌は、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔。
(「あぁ、好いものですね」)
 笑顔の数だけ、ルムルの内側も湧き立つ。
 ルムルは人々を楽しませることが大好きだ。
「――ふふ」
 そしてその笑顔に、知らず表情無き男の喉が鳴る。
「ふふ……ふふ、はははははは」
 決して悪役のそれではなく、心からの快哉をルムルも笑う。笑って笑って、躍らせていた炎剣の群れを、掌を返す所作ひとつで長大な一振りへと転じさせた。
「次の演目は剣舞です。とくとご覧ください!」
 変わらず生気の宿らぬ眼を、今度はしっかと開き。良子の動きを見定めて。ルムルはオブリビオンへと斬りかかる。
 本気の斬撃だ。されど敵は格上。一閃で仕留めることは叶わない。だが、この場にいるのはルムルだけではない。
 笑いの輪は広がり続ける。
 邪神の眷属が面白おかしいショーに紛れて消え失せる時まで――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン

ワッすごい!彼女、一瞬で着替えたよ
オスカーも今の見てた?

今はそんな場合じゃない?ああ、忘れかけてた
周囲の視線を攫わなくてはならないんだ
困ったな~、策がひとつしか思いつかない

ひとつしかないから――仕方ないよね(憂い顔)

この剣に次ぐ私の第二の武器、それは……顔
あの女子高生集団のあたりにでも行こう

やあ、ご機嫌ようキミたち
この街は面白いねえ、アレは何?(良子君の居場所の反対方向を指差し)
自撮り?写真?いいね~撮ろうか
防犯カメラを見つけたらピースサイン

周囲の関心が他の猟兵に向いたとき等
隙を見て集団からスッと抜けて、良子君へ一撃

顔を使うとレディにかなり怒られるんだ
今も左腕に棘が刺さって痛い
キミのせいだ!



●第三幕『完全無欠の王子様』
 一瞬クチバシをパカッと開けたツバメが、今度は何やら忙しなく囀っている。
「オスカーも今の見てた?」
 良子の目にも留まらぬ早着替えに鼓動を跳ねさせたエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は、己が肩で翼を休めていたツバメの動向に、どうやら友も同じ心地らしいと「そうだよね」と一人得心した。
 あれが『変身』というものだろうか。
 メイド服を脱ぎ捨てた理屈は理解できる。何だったら、エドガーも同じくらいの速度でマントを脱ぐことは可能だろう。けれどそこまでだ。いったい何時、手袋――しかも革製と思しき指ぬき手袋――を嵌めたのか。さらにはどこからアーミーコートを取り出し、羽織ったのか。
 陽光よりも眩しい金の髪をさらりと流し、エドガーは首を傾げた。憂うる瞳の青が、濃さと艶を増す。
 ――けれど。
「ねぇ、オスカーはどうおも……って、わわわっ」
 思考に沈むエドガーの髪をツバメが一房、啄んでいた。針で刺すより微かな痛みに、刹那驚嘆したエドガーは、しかし顔を上げてツバメの謂わんとすることを悟る。
「ああ、そうだね。今はそんな場合じゃないね」
 どうやらエドガーよりも一足先に、ツバメのオスカーの方が現実に立ち返っていたらしい。
 そう、今は戦時。いつまでも面白事案に関する考察に耽っている場合ではないのだ。
 事は一刻を争う。
 早く手を打たなくてはならない。
 まず成さねばならないのは、周囲の視線を攫うこと。既に動き出している猟兵もいるが、彼らだけでは全てを賄うことはできない。
 エドガーも、早く、早く、早く――…………。
(「………困ったな~」)
 急きながら、エドガーは分かっていた。自分にできることは一つしかないと。同時に、その一つが唯一無二の最終手段であることを。
(「――仕方ないよね」)
 再び、エドガーの表情が憂いを帯びる。偶然、それを目に留めた若い女性が、ひゅ、と息を飲んで固まった。あまりの顔の好さに、あてられたのだ。
 これこそ、剣に次ぐエドガーの第二の武器。完全無欠の王子様な整い尽くした顔。
 わかっている。人は美形に弱いもの。特に異性への効果は抜群だ。エドガーが春の陽だまりの如く微笑んだだけで、卒倒する女性もいるだろう。つまり、視線を奪いにはもってこい!
「やあ、ご機嫌ようキミたち」
 静かに意を決したエドガーは、靴音を高らかに鳴らして女子高生と思しき集団へ歩み寄った。
「「「!!!!!」」」
「この街は面白いねえ、アレは何?」
 色めき立ったところに畳みかけるよう――何せ間をあけると、少女たちが無軌道に騒ぎ出してしまいかねないので。大事なのは最初に流れを握ること!――、エドガーは良子とは反対側を指差す。
「え? 何??」
「あ、どれ??」
「んーんー、もしかしてあのパン屋のこと?」
 エドガーの思惑に囚われたとも知らず、少女たちの目は良子から完全に離れた。だがエドガーは油断せず、更に少女たちの瞳を引き(惹き)付ける。
「どうしたの? 私の顔に何かついている?」
 我先に超絶イケメンの関心を引こうとする少女たちへ、エドガーは晴れやかな空のように笑いかけた。
「っ!!! 顔が、ヤバい」
「美形、反則」
 二人の少女が完全に仰け反って沈黙する。だが踏みとどまったうちの一人が、果敢にも一歩踏み込んだ。
「あの、よかったら一緒に写真――」
「ああ、自撮り? いいね。一緒に撮ろう」
 煌めく白い歯に、失神しかけながらも少女は慌ててスマートフォンを鞄の中から取り出す。その隙に、エドガーはおまけとばかりに防犯カメラへもピースサインと満面の笑顔を向けた(パソコンの画面越しに、のたうつ女性が無数に出たのは言うまでもない)。
 ――ズキリ。
 視線を釘付けにする度に、エドガーの左腕が痛みを訴える。
 ――ズキリ。
 そこに巻き付くのは、狂気の薔薇。嫉妬深き淑女の棘が、エドガーを責め苛む。
(「愛しのレディ、そんなに怒らないでくれ」)
 だからこの武器は使いたくなかったのだと心の内で唱えながら、エドガーは良子を一瞥する。
 全ては良子のせい。
 良子がこの騒ぎを起こさなければ、『レディ』は今日も密やかに美しく咲いているだけだったろうに。
 斯くして完全無欠の王子様は同胞が攻撃する隙を存分に作り出すことに成功し。少女たちを蕩けさせられるだけ蕩けさせた後、しっかり反撃を呉れるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【秋】


俺達が悪役ぅ?
はっはっは、言ってくれるぜ

俺達もヒーローのように登場すれば
視聴者もこっちに釘付けよ

綾華、俺にいい方法がある
俺が周囲の目を引き付けるから
そっち頼む

そこの美少女!
俺を誰だと思ってそんな口を聞いている!
きよしじゃねー!

マブダチ…!?(嬉しい)
って、ちげーちげー!
お前は正真正銘の悪役だと皆に知らせてやるぜ!

変☆身!

手を動かしポーズを決めてから
屋台と自分が合体しロボットに変形

合体☆きよしロボ!
…って、ちげーよ!確かに旗はきよしだけどよ!

説明しよう!
屋台と合体したただのきよしだ!
旗が武器で手からはロケットパンチではなく
掃除機のように吸い込むぞ!

綾華、肩に乗れ!
よっしゃ、やっちまうぜ!


浮世・綾華
【秋】


成程厨二病。俺も仕事でやったことある
真面目なことを呟いていると
きよしの突然の高笑いにびくり

――いい方法?(嫌な予感しかしない
ほんとに任せてだいじょーぶか…?
心配だから傍でフォローできるように待機

誰ってきよしだろ
(つっこみも気にしない)
此方俺のまぶダチのきよしデス(紹介)
(つーかきよに前言われたから言ってみたケド
まぶダチってなんだろ)

えっ、へんし――
…は?
ロボきよしにぽかん
待ってついていけない
肩に?…乗る

おいあんまり揺らすなよ
ああ…もしかしてそれでゴミを吸って正義感をアピるってこと?
(つーかゴミどこに溜まってるんだろ…)

正義っぽい演出…んー
じゃあ花びらで、ほら(UCを使ってひらひら攻撃



●第四幕『合体ロボvs魔法少女(ここだけ日曜日の朝に時空固定)』
 浮世・綾華(千日紅・f01194)は相対する≪自称≫美少女をまじまじと眺めた。
 手足の華奢さが、彼女の幼さを十二分に物語っている。そう――彼女はまだ幼い。二十歳を超えた綾華の目には、良子が未だ発展途上中であることがよくわかった。
 発展途上。つまり、多感な年頃。おそらく、中学生くらいか。
(「中学生」)
(「ちゅうがくせい」)
 ――ちゅうに。
(「…………」)
 あまりにもどんぴしゃすぎる年代に、少女の色味とよく似た綾華の瞳がどこか遠くへ馳せられる。
 中二の頃に患いやすいが故に中二病と称される、斜め上に吹っ飛んだ言動を多発する情動。転じて厨二病。
 成程、綾華もよく知っているそれ。
「……俺も仕事でやったことがある――」
「はっはっは、言ってくれるぜ! 俺達が悪役ぅ? なぁ、聞いたか綾華? なぁ、なぁ、なぁ!」
 ――!?
 傍らから上がった唐突な大音声に、思案に耽っていた綾華の肩がびくんと跳ねた。静かに呟きかけていた口も、「る」の形のまま固まっている。
 微妙な予感が、綾華の裡に押し寄せる。いや、まさか、と思いながら、既に周囲の視線を若干集める高笑いを続けている砂羽風・きよ(末のきよし・f21482)を、綾華は平静を装った視線で見つめる。
「綾華、俺にいい方法がある」
 ――微妙な予感が、嫌な方向へ傾く。
「俺達もヒーローのように登場すれば、視聴者もこっちに釘付けよ」
 ニカリときよが笑う。この上なく痛快な笑顔だ。だがその笑顔の度合いに反比例して、綾華の心の中には暗雲が立ち込め始める。
「俺が周囲の目を引き付けるから、そっちを頼む!」
「――ぉぅ」
 作戦の概要を説明することなく≪自称≫美少女こと良子(現在の名乗りは御門・光流)目掛けてきよが走り出した。
 さしたる距離でもないのに、きよの背中がどんどん遠ざかって見えるのは何故だろう?
 そのわりに、無造作に束ねられたきよの後ろ髪はよく見えた(ご機嫌に振れるノーフォーク・テリアの尻尾のようだとか思ってしまったからかもしれない)。
 ――駄目だ。
 きよを独りにしてはいけないと、綾華も駆け出す。任せて大丈夫な気がしない。それに「そっちを頼む」と言われたからには、何時如何なる場合でもフォローできる態勢を取っておかねばなるまい。
 十数歩の距離を全力ダッシュし、綾華はきよに肩を並べた――その、瞬間。
「そこの美少女!」
 ずびしぃ、ときよが良子を指差した(きよの指先から、良子の鼻先まで、おおよそ2メートル)。
「な、何者ですか。お前は!」
 思わずたじろいだ良子に、きよは口の端を吊り上げる。
「何者? 俺を誰だと思ってそんな口をきいている!」
「いや、誰ってきよしだろ」
 ――綾華、冷静につっこんだ。
「きよしじゃねー!」
 ――そしてきよも反射でつっこみかえした(※きよの名前は「きよ」です。「きよし」ではありません)。
「きよし? え? 違うのですか?」
 ――良子は混乱した。
「いや、きよしはきよし。俺のまぶダチのきよしデス」
「まぶダチ……(ずきゅん)――いやいやだからちげーって。きよしじゃねーって!」
「だからどっちなんです!?」
 ――続・良子混乱。
 余談だが、綾華はきよに求められた通りに『フォロー』を『任された』だけのつもりだった。あと以前きよに『まぶダチ』と言われたことがあるから、それをなぞってきよを『まぶダチ』と紹介しただけで、『まぶダチ』の何たるかは理解していない。綾華に『まぶダチ』と言われて喜んじゃったきよ哀れ(察してないから無問題と言えば無問題)。
 とにもかくにも、きよのテンションはダダ上がりだった。
 そしてダダ上がりのまま、『いい方法』を実行に移す。
「――覚悟しろ。お前こそ正真正銘の悪役だと、これから俺……いや、俺たちが皆に知らせてやる――変☆身!!!!」
「「えっ、へんし――(奇跡的に綾華と良子の呟きがはもる)」」
 有耶無耶のうちに巻き込まれた、とか綾華が考える隙もなく、きよは良子に向けていた指を天に突き上げ朗々と叫んだ。でもって、良子は半歩後退った。
 がしょん。
 何か金属が蠢く音がした。
 がしょん。
 またしても音がした。
 がっしょーん。
 周囲がざわめき出した。
 がしょがしょがしょーん。
「合体☆きよしロボ!」
 この時、居合わせた人々が見た情景を端的に表現すると。予備だか準備中だったかのラーメン屋台の幾つかが飛んできた。で、きよと合体し始めた。結果、『きよし』と書かれた旗を手に持つ、きよの身長約2倍のロボが完成した。
「……は? ロボきよし?」
「ちげーよ! 確かに旗はきよしだけどよ!」
「いったい何なんです!? もう攻撃していいんです!?」
 説明しよう! 屋台と合体したただのきよしだ! 旗が武器で手からはロケットパンチではなく、掃除機のように吸い込むぞ!
「だからこの天の声も!! いったい、何なんです!!! あああああもううう――理想の私あるいは心的外傷の発露をその身に刻みなさい!!!!!」
 大勢の意見だろうツッコミを振りかざし、ついに良子がキレる。この場合、止む無しだと思わないでもない。されど彼女はオブリビオン。正義はきよしロボにある!
「綾華、肩に乗れ!」
「――え?」
「いいから早く肩に乗れ!!」
「え? え? 肩に、……乗る?」
「あー、もう! ここに、こーすんだよ!」
 きよしロボ、やおら綾華を摘まみ上げ、背中で良子の攻撃を受け止めると、巨躯に見合わぬ軽やかさで身を翻し、綾華をひょいと肩へと乗せる。
「う、うおっ。お、おいあんまし揺らすなよ」
「まぶダチにそんなヘマはしねーよ! さぁ、やっちまうぜ!」
 きよしロボ、旗を良子へ差し向けた。
「ちょ、あ、まっ」
 ぶおおおおお。巻き起こる吸引風に良子の軍帽が吹っ飛びそうになり、合わせてとりどり街の片隅に転がっていたゴミたちがぐんぐん吸い上げられてゆく。
(「なるほど。ゴミを吸って正義感をアピってるのか?」)
 合体ロボvs魔法少女。
 よくわからない展開ながら、盛り上がり始めた人々の様子を遠い目(再び)に、綾華は現状を分析し、「ま、いっか」と白菊の花弁を宙へ舞わせ始める。
 白く、そして細い花弁は、きよの術中(と言っておく)にはまった人らの目には、天の御使いが散らす光の羽に見えただろう。
 ゆけゆけ、ぼくらのきよしロボ。
 厨二病を罹患した魔法少女なんてぶっとばせー!

 ヲマケ。
 無事に良子が打倒された後。人々の目により強く焼き付いたのは、きよしロボの肩に乗っていた綾華の方でした。お約束ぅ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


…あー、そっか。ヒーロー世界と違ってこっちだとその辺まで考えないといけないのねぇ。
あっちだと「いつものこと」で済んじゃうから楽なんだけど。

…で、人目を引けばいいのよねぇ?
あたし、メインウェポンは拳銃なわけだけど…クロスレンジの嗜みとして足技主体の格闘技も齧ってるの。
〇ダンスと〇グラップルを合わせた格闘技…カポエイラ、っていうんだけど、知ってる?
中々アクロバットで見栄えするのよぉ?
更にオブシディアンのガンプレイ〇パフォーマンスも合わせれば。注目を集めるには十分じゃないかしらぁ?

いいこと教えてあげる。
あたしは「撃つ」のが得意なんじゃなくて。「命中させる(当てる)」のが得意なのよぉ?



●第五幕『POW+SPDvsWIZ』
(「……あー、そっか」)
 糸のように細く開いた目で賑やかな一帯を見渡したティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、少しばかり面倒だなと思った。
 敵は認識した。されどすぐさまドンパチ始められない。
 もしここがヒーロー世界ならば、問答無用のバトル開始でも何ら問題はなかったろう。むしろそれを娯楽にする者だって無きにしもあらずだ。
(「あっちだと『いつものこと』で済んじゃうものねぇ」)
 左手を頬に添え、砂糖を塗したような溜め息を零す。
 考えることが、一つ増えた――けれど憂うるどれも、ポーズの粋を出るものではない。
「……で、人目を引けばいいのよねぇ?」
 洒落ただけではなく、バーテンダー装束に似合いつつも、決してそれだけではない造りの靴を、こつんと石畳に打ち鳴らす。
「――?」
 他の猟兵に気取られていた良子が、ティオレンシアの気配に気付く。
 だが、気付いただけだ。
「!?」
「残念、遅いわぁ」
 ――ティオレンシアの左腕が、良子の右腕を捉えていた。そのままぐいと引き寄せ、社交ダンスのホールドの姿勢に持ち込んだかと思えば、次の瞬間、華奢な少女の体躯はくるりと宙を舞っている。
「ぐぁっ」
「あらぁ、ダメよぅ。もっと優雅に踊らなきゃ」
 捻りを入れられ不自然に曲がった腕に良子が苦痛を呻く。が、それが大衆の耳に届くことのないようティオレンシアは軽やかに嘯いた。
 ティオレンシアが最も愛用する得物は拳銃だ。とはいえ、それしか使えない、というわけではない。むしろクロスレンジを得手とする者の嗜みとして、格闘技だって齧っているのだ――主に、足技主体の。
 つまり、放り投げたのはご挨拶。
 手を離した途端、間合いを取り直した良子を、ティオレンシアは微笑ましく眺め、とんとんとんっと小さな跳躍でリズムを整える。
「じゃあ、行くわよぉ」
「っ、そう何度も!」
 今度は予告して正面から。加速は一息に。身構えられるより早く接敵し、ロングエプロンの裾を捌いて足を振り上げた。
「魔弾の射手あるいは――」
「フェイントって知ってるかしらぁ~」
 円を描くよう爪先を閃かせ、攻勢に転じようする良子の鼻先を敢えて掠めて、くるりと反転。背後に回ると、すかさず愛用のリボルバーをホルダーから抜く。
 良子が振り返る。
 その眉間にティオレンシアは銃口を突き付け――手首を返し、空を撃つ。
 ティオレンシアの妙技に、周囲から「わぁ」と歓声が上がった。観衆の誰もが、ティオレンシアと良子の遣り取りを、高度なパフォーマンスだと認識しているのだ。
 格闘技と音楽を融合させたカポエイラで、ティオレンシアは魅せて翻弄する。
 大事な一撃を呉れるのは、もっともっと皆を酔い痴れさせてから。けれどそれは決して手心を加えるという意味ではない。
「いいこと教えてあげる」
 地面に付いた掌を軸に回転しつつ、ティオレンシアは見上げる少女にうっそりと微笑む。
「あたしは『撃つ』のが得意なんじゃなくて。『命中させる(当てる)』のが得意なのよぉ?」
 最後通牒の響きを持つ囁きに、オブリビオンの貌が青褪めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ

ふふん、邪神の駒如きが良く云ったものよな
まあ良い…その自信、完膚なき迄に圧し折ってやろう

先ず可能な範囲で防犯カメラの位置を視力で確認
自称美少女に私の美が敵わぬ道理はない
見られているならば存分に魅せる迄
幾度と小さな宝石を砕き、召喚するは【宝石商の狂宴】
人懐っこげな妖精模したそれをカメラ前に散開
彼奴の魔弾に砕かせるのもまた一興
所謂『ぷろじぇくしょまっぴんぐ』なる物と思わせたら何とかなろうよ
さてさて、カメラ越しの客が気を取られている隙に私も成すべき事を成させねばなるまい
妖精を喚ぶ動作と共に、宝石を触媒とした属性魔術で娘を攻撃
一寸した目眩しとして、発光を強めにしておけば
多少攻撃が派手でも問題なかろう


ジャハル・アルムリフ

かめら…わーるどわいど…?
良く分からぬが、そこら中に観客が隠れているのだな

得手といえば真逆の裏方仕事
主を輝かせ引き立てるが我が生業
…輝かせる…
なれば、いつもの倍、十倍務めれば
この場にいる猟兵全てが輝くのではあるまいか
序でに師も喜ぶのではないか――うむ

広げた竜翼から【星屑】の光
縦横無尽に飛翔しながら
此処が舞台とばかり
猟兵の輝きを、威風堂々たる姿を余すところなく
治癒齎すとともに<限界突破>にて全身全霊、照らし出す
背の眩しさで目が開け辛いが致し方なし

細めた視界に少女を捉えれば
密やかに短剣を投げ放ち、倒せずとも妨害を

そこらに凭れ掛りつつ
…うむ
障害物多き中での飛翔と治癒の術
斯様に疲れるとは思わなかった



●第六幕『美vs美(+正真正銘ガチ黒子)』
 透ける青から燃える赤へ。遊色に移ろうアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の髪が、星屑を散りばめたように艶やかに、そして華やかに煌めく。
 ――ふふん。
 鼻を高くして、アルバは肩を聳やかし。薔薇輝石の指先で髪を一房摘まむと、水がそよぐように背へ流す。
「邪神の駒如きが良く云ったものよな」
 嘲りを隠さぬ瞳に、ひと際まぶしい星が力強く輝く。
 す、と。風の涼やかさでアルバは良子へ向けて一歩、踏み出す。まるで星の川を掻き分け進むかの如く、アルバの一挙手一投足は光に溢れている。
「っ、なっ、何よ。そういうあなたは何様だと?」
 齢十四で邪神に下った娘は、アルバに威圧されながらも怯まない。
 既にあの手この手の猟兵たちから、無視できないだけのダメージは喰らわされている良子だ。されど彼女はオブリビオン。厨二を極めて輪廻の輪から外れた者。
 果敢に口の端を吊り上げ、手で銃を模った。
「逃れられぬ死をあなたに贈るわ」
 良子の合わせられた両手の指先から放たれたのは、不可視にして超高速の弾丸。良子が望んだままに死を振り撒く凶弾――だったはずだ。
「――ふ」
 だがアルバは気紛れな春風を彷彿させるステップで、それをひらと躱した。
「強がる、か。まあ良い――その自信、完膚なき迄に圧し折ってやろう」
 くつりと喉を鳴らすアルバは更なる前身で、己が存在感を良子へ見せつける。知らず良子が半歩後退ったのは、さしたる長身でもないアルバの背丈が不意に伸びた気がしたからだ。
「ひれ伏しなさい! あなた如き若輩者は、我等が神の足元に遠く及ばないわ!」
「若輩者、か。人を見た目で判断すると痛い目に遭うと知らぬのか」
 ほぅ、と周囲から聞こえた嘆息に、アルバは伏し目がちな視線で応える。途端、「きゃあああ!」と上がった黄色い悲鳴に、アルバは泰然とした表情は崩さぬまま、内心で打ち笑む。
 良子は『美少女』として群衆を味方につけた。
(「だが良子は、『自称』美少女に過ぎない」)
 たおやかに、優し気に、神々しい微笑みを、アルバは満面へと貼り付ける。
(「なれば、私の美が良子に敵わぬ道理は――ない!」)
 ――ど・きっぱり☆
 ――ど・すっぱり☆
 この時のアルバの裡の『ドヤ顔』に気付く者は、地球上に誰一人としていなかった。

(「嗚呼、今日も我が師は美しい」)
 存在感を極限まで消したジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は、アルバの美に誰よりも深く深く感銘を受けながら、とりどり街の一角を高く低く飛翔し続けた。
 ――かめら?
 ――わーるどわいど……?
 良子が味方につけたらしい何やかんやは、ジャハルの理解の域を超えていた。超えてはいたが、まぁ、言わんとすることは、うすぼんやりとだが理解できた。
 どうやら、そこら中に観客が隠れているらしい。
 隠密に長けた観客だ、と舌を巻きそうになったのはさておき。ならば、とジャハルはすぐさま己の成すべきことを理解した。
 人の目を引き付ける事は、得手ではない(時折、突き抜けてはっちゃけることが皆無ではないが。本人無自覚なので許されて欲しい)。
 むしろ得手と言えるのは、裏方仕事。何故なら、ジャハルは己が主を輝かせ、引き立てることこそ我が生業だと自負しているからだ!
(「……輝かせる……」)
 きゅぴーん。
 その時、ジャハルの脳裏で一つの星が煌めいた。
 そうだ。そうだ。輝かせれば良いのだ。いつもの倍、いや十倍。自らの全力を以て努めたならば、この街に平穏を齎そうと集った猟兵たちの全てを輝かせることが出来るかもしれない。
 綺羅星たちの集いは、良子を圧倒するであろう。
(「――うむ」)
 脳裏に過った誰よりも輝かしい笑顔――言う間でもなく、師の笑顔だ。おそらくジャハルの献身を、師も喜んでくれるに違いない(あくまでジャハル推察)――に薫風が吹いた。
 そこから先のジャハルの動きは超速だった。
「(……行くな)」
 外野のざわめきに紛れて小さく唱え、ジャハルは加速した。その背に広げた竜翼から、星屑の光を猟兵たちへと降り注がせながら。
 光の粒は猟兵たちを、身も心も輝かせる。
(「光よ、降れ。降って、降って、オブリビオンなど圧倒しろ」)
 全霊を賭した力の行使に、ジャハルの翼は小さな恒星のようになっていた。何だったら、ジャハル自身すら振り返って確認することが出来ないくらいに(見返った瞬間、あまりの眩しさにジャハルの目が潰れてしまう)。
 されどジャハルは黒き竜。天性の黒子。どれほど眩しくても、存在を人に気付かれることは無いのだ!
 縦横無尽にジャハルは翔ける。ここぞというタイミングで師の足元へ踏み台を運んだりもした(アルバの身長が伸びた気がしたのは、実はこれのお陰)。
 師や他の猟兵に気を取られる良子へ、さり気なく短剣を投げつけたりして集中を掻き乱したりもした。
 これぞ、THE☆黒子。彼の活躍を知る者は居ない――ただ一人を除いては。

(「ジジめ、無理をしおってからに」)
 良子を片付けた後、不肖の弟子はまともに立つこともできまい。
 文字通り、我が身を削る黒き竜の振る舞いに、誰より光を浴びてアルバは密かに眉を潜め、けれどだからこその美しさを誇る。
「さあ――宴を始めるとしよう!」
 高らかに謳い上げ、アルバは両の手に乗せた色とりどりの宝石たちを握り砕く。
 何を、と問い掛けた良子は、現れた可憐な妖精たちに瞠目した。
「こ、れは……?」
「見惚れる愛らしさであろう? 存分に愛でることを許そう」
 人懐っこ気に妖精たちはカメラというカメラに寄り付き、くすくすと笑い、くるくると躍る。
 見惚れるとりどり街の人々のみならず、画面越しに眺める人らの目にも、不意に幻想世界が広がったように見えただろう。
(「流行りの『ぷろじぇくしょんまぴんぐ』も斯くや、ぞ」)
 ――くふふふ。
 うっかり表に出かかったニンマリ笑顔を、放つ耀きで覆い隠し、アルバは美しき世界像を維持する。
 一体、二体。三体、四体。
 惜しみなく砕かれる宝石に、妖精たちが増えた。お眼鏡に叶わぬ品は、身に着けぬアルバだ。魔法の媒体である宝石も、例外ではない。
 故に誇らしく、圧倒的な美しさで、アルバは宝石を砕き。その散りゆく欠片に属性を纏わせる。アクアマリンには水を、ファイアオパール オパールには炎を、シンハライトには地を、ペリドットには風を。
 貴石を奇跡じみた美しさで操り、アルバは彩の嵐で良子を巻く。
 煌めきに、誰もが息を飲む。邪神の眷属が苦痛を呻いたとしても、気付かぬほどに。
 滲みそうな苛立ちは、注いだ光と、放つ光の眩さで覆い隠して。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀

巴(f02927)と

メイド喫茶なんて初めて行くなぁ
なんとなく気が抜ける敵だね
早くラーメンが食べたい…
面倒そうな足取りでラーメンに想いを馳せる

ああ、外に出てきてくれてたんだ
さっさと終わらせてしまおう

別に、悪役だと思われて構わないんだけど
巴がそう思われるのは多分良くないだろうな
離れて別々に戦えば良いか

なんて考えてたら周りの視線が全て巴に向いてる
見られることのプロってわけか
いつも見るゆるい姿とは別人みたいだ
感心しつつ周囲の状況を確認

任されたよ、巴。楽な仕事だ
絶影での高速の一撃
作ってくれた隙を狙って手際良く
気が引ける様子など微塵もなく躊躇いなく

大人しく手を引くのはどっちかな
冷たさを含んだ気怠い声で


五条・巴


由紀と(f05760)

僕もメイド喫茶に行ったことは無いな。どんな所なんだろう
由紀の足取りが重たい
がんばれ由紀、あとちょっとだよ由紀!

しかもメイド喫茶入らなくてよさそうだよ
よかったね由紀

さてさて、皆を釘付けに、すればいいんだね?
僕もモデルとして頑張っちゃおう

"引力"

ここはいまから僕の撮影場所
視聴者も、田中良子、君自身もまとめて僕をご覧
今日着ている服はプライベートなもの、動きやすさ重視のおろしたて、だよ
アクティブにキメようか
何百枚、何千枚と撮られるカメラを想定して、クールに、時にセクシーに

任せてごめん、隙が出来たらよろしくね、由紀
早く終わらせてラーメン食べよう



●第七幕『え? あ、ごめん。今日はプライベートなんだ(陰で蠢く影)~贅沢な適材適所』
 ――メイド喫茶。
「僕、行ったことないんだよ。由紀は?」
 並んで歩く鹿忍・由紀(余計者・f05760)の顔を見遣れば、常から気怠げな貌からいっそう生気が失われている気がして、五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)は首を傾げた。
「まぁ……初めてだよね」
 応える声にも抑揚がない。
「そっか。どんな所だと思う?」
「何とも言えないけど。気の抜ける敵だなぁ、とは」
 思うかな――と続く筈だったろう由紀の言の葉の尾が、溜め息に紛れて掠れる。見れば、足取りも非常に重い。そして。
「……早くラーメンが食べたい」
 敷き詰められた石畳から、いっそ無情なほど青い空へと視線を移した由紀の独白に、巴は友人の内心を凡そ察した。
 巴にとってはただただ未知の敵だが、由紀にとってはあまり――というより『かなり』――面倒と判断し得る相手なのだろう。
 もちろん、『メイド』が何かは巴だって知っている。家庭内の労働を請け負う、女性の使用人のことだ。衣装も独特で、今風にアレンジしたものは写真映えするのも分かる。つまりは、そういう店員が給仕をしてくれる店なのだろう。
(「――うーん」)
 想像は、してみた。けれどやはり具体的な絵は巴の脳内には浮かばない。けれどこれほどまでに由紀が億劫がっているからには、相応の理由があるに違いない。
 ならば今の巴に出来ることは。
「がんばれ由紀」
 遠い目をしている友を、巴は励ます。
「ラーメンまで、あとちょっとだよ」
 さしたる長い距離でもない、商店街の入り口までの戻り道。
 賑わいに耳を引かれて目を細めると、問題のオブリビオンと思しき少女の姿が見て取れた。すなわち、『彼女』は店内ではなく、店外にいるということ!
「由紀、よかったね。メイド喫茶には入らずに済みそうだよ」
「本当だ。外に出てきてくれてたんだ」
 巴から齎された朗報に、地に沈み込みそうだった由紀の足取りが、わずかに軽くなった。
 面倒(くさい)な相手であることには変わりない。けれど『いらっしゃいませ、御主人様☆』とか『もえもえきゅん』とか(あくまでメディア情報)やられないだけマシだ。
 すぅ、と息を吸った。
 それから、はぁ、と吐く。
「じゃあ、巴。さっさと終わらせてしまおう」
「ああ、そうだね」
 面倒ごとには早々にさよならを。美味しいラーメンを心行くまで堪能するためにも!

 ――と、戦線に加わった由紀と巴であったわけだが。
「ごめんね。今日はプライベートなんだ」
 写真はOKだけどサインは勘弁してね、と巴が微笑むたびに、相当数のスマホのシャッタがー切られている。
「え? そうだね……うん。じゃあ、こういうのはどうかな?」
 黄色い声の求めに巴の表情が、由紀が間近でみるものから、雑誌などで見かけるものへと変化した。
 巴の口元が、柔らかい微笑を描く。それだけで、年頃の女性たちから甘やかな円い息が漏れる。
「今日の服? もちろん、自分で買ったものだよ。動き易さ重視でね」
 プライベートと言いながら、投げられる声に巴は律儀に答え、同時に魅惑的な笑顔を振りまく。
「どこで売ってるのかって? それは秘密。自分で探してショップを巡るのも楽しいと思うよ。ヒントは、この夏の新作。なにせこれも今日おろしたてだからね」
 似合うでしょう? と、その場で巴がくるりとターンする。無造作になびいた髪が、陽光を反射して光を散らした。
 何百枚、何千枚と撮られるカメラを想定したプロフェッショナルな所作だった。
(「いつものゆるい姿とは、別人みたいだ」)
 巴に奪われた瞳は、由紀はおろか良子のことさえ映していない。さすがの仕事ぶりに由紀は感動にも似たものを覚えつつ、これぞ厨二な御門・光流――良子を一瞥する。
 多くの視線を味方につけようとする考えは、世間一般的には良策なのだろう。あいにくと、由紀自身は悪役と勘違いされようと痛くもかゆくもないのだが(仕事柄、巴はそうもいかないことは承知している)。
 ――で、あるなら。
(「任されたよ、巴」)
 人垣に囲まれた巴からの、刹那の視線。込められた想いを過たず受け取り、由紀は風のように、影のように動いた。
 巴が群衆ならびに防犯カメラの向こうの意識を引き付ける。その隙に、由紀が実働として動く。至極効率的で効果的な役割分担。
「適材適所ってやつだね」
 都合よく、他の猟兵に気取られていた良子の背後へ、由紀は音もなく駆ける。
「!?」
「アンタ、遅いよ」
 良子が由紀に気付いたのは、抜いたダガーを振り抜く間際。
「大人しく手を引くのはどっちかな」
「なっ」
 冷たさを含んだ抑揚のない由紀の台詞に、赤い眼が瞠目する。
 だがそこから先の反論を許す間もなく、由紀は影さえ絶つ一閃を良子の首筋めがけて繰り出す。
(「楽な仕事だ」)
 呆気なさに、色素の薄い青が緩く瞬いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー

わあ、へんしんしたっ
すごいっ

ガジェットショータイム
わたしねえ、ジャグリングできるんだよ

ピエロのともだちに教えてもらった技術
落ちればカラフルな煙を上げて爆発するボールを
ひょいひょいひょい

はいっ
彼女の方へひとつ放って
キャッチできたなら
じょうずっ
喜んでまたひとつ放る
とり落としたならもちろん爆発
きっと次は取れるよ、だいじょうぶっ

彼女にボールを投げると
手元にボールが補充

攻撃はボールを投げて武器受け(相殺)
割れたら花が舞うボールで

くるって一回転して取ったり
シュネーが周りを踊ってみたり
口笛吹いてたのしい音楽を添えて

最後は4つのボールをキャッチして
フィニッシュ!
ポーズもばっちり決めて一礼

ふふ、たのしかったっ



●終幕『スマイル・フィナーレ』
 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)が良子に対して抱いた感情は、明るく朗らかなものだった。
 だって、変身しちゃうのだ!
『わあ、すごいっ! すごいよ! ねぇ、みた? シュネーも、みた?』
 片腕に抱いた少女人形――シュネーへ声を跳ねさせれば、彼女の白い髪が爽やかな風に軽やかに踊る。きっとシュネーもびっくりして喜んでくれたのだろう。そう思うと、オズの心はますます走り出す。
 面白くて、興味深い相手。
『わたしだって、負けないよ♪』
『はぁ? 何の勝負ですか?』
 良子の赤い眼が怪訝に細められても、オズの笑顔は翳らない。周囲では他の猟兵たちはそれぞれ目を惹くパフォーマンスを始めている。
(「うん。みんな、すごい」)
(「もちろん、わたしも――」)
 高らかに、空を指差して謳い上げるショーの始まりを告げる言葉(詠唱)。

 ――ガジェットショータイム!

「はいっ」
「え、え、え、ちょっと!?」
「すごうすごい、じょうずっ」
 自分が放ったグレープフルーツサイズのボールを見事キャッチした良子に、オズは五つのボールを繰りながら拍手を送る。
 ひょい、ひょい、ひょい。
 決して地面に落とさぬよう、空へ放って、受け止めて、また放って。一回りする度に、何故かボールは一つずつ増えてゆく。
 赤に青に黄に緑。オレンジ、紫、ピンクに白。カラフルなボールの中から、不規則なタイミングで、また良子の元へひとつ。
 飛ぶ軌道も、不思議不思議。クローバーの弧を描いたり、ハートやダイヤ、スペードなんてのものまで。ピエロを思わすそれらは、きっとオズにジャグリングの何たるかを教えてくれたピエロな友達のせいだ。
「さぁ、こんどはどうかな?」
「ちょっ、だから、なんで私がこんなものに付きあ――」
 さり気なく、そして少なくないダメージを被っている良子の手元が、つんと尖った軌跡に狂う。受け取り損ねた水色のボールが地面へ落ちた。
 途端、ぴちょんと水が跳ねる音がしたかと思うと、虹色の煙がぼふりと一帯へ弾ける。
「ちょっ、なっ、煙いじゃないっ。って、煙いだけじゃないじゃない!」
「ふふふ。とっておきだもの。つぎは、はい、シュネー♪」
 オズの合図に、くるくるとワルツのリズムでオズの周囲を踊っていたシュネーが、空へ向かって両手を大きく伸ばす。その華奢な指先に触れるのは、黄色のボール。そこでトンっと弾んだそれは、お日様みたいに耀きながら良子の頭上へまっしぐら。
「え、な、何? 天から啓示が降ってくるというの!?」
「け・い・じ?」
 聞き馴染みのない言葉にオズが首を傾げるのと、「ッパー!」とラッパみたいな音を立ててボールが割れるのがほぼ同時。そして溢れた光の煙に、良子と、和やかにオズのジャグリングを見守っていた人々の視界が、刹那の白に埋め尽くされた。
「いこう、シュネー!」
 光に溶けて、オズは赤と黄、青と白のボールを一際高く投げると、追いかけるようにシュネーを空へと放る。
 ひらひら。メリーゴーラウンドみたいにスカートの裾を翻し、シュネーがボールたちと同じ高みに至り。つん、と突く仕草でボールを良子へ差し向ける。
「え、あ。な――」
「さあ、フィナーレだよ♪」
 落下してくるシュネーを抱き留めたオズは、うろたえる良子と観衆へ向け優雅に頭を垂れた。
 響き渡る終幕を告げるファンファーレ。弾けたボールたちは、それぞれの色の花吹雪を散らす。

 眩すぎる光が収まった後、世界を色取る彩に人々は喝采を上げた。
 さきほどまでいた一人の少女が場から消えたのも、マジックだと誤認したまま。
 『悪』に被れた少女のオブリビオンは、鮮やかな色の嵐に飲まれて消えた。
 賑やかな快哉に見送られた終焉は、寂しさを覚えさせることはなかっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ご当地ラーメン聖地巡礼』

POW   :    次から次へと食べられるだけ挑戦する

SPD   :    前もって目星をつけ狙いの屋台を狙う

WIZ   :    あえて人気筋ではなくレアな品を探す

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●とりどり街の、とりどり日和
「お」
 古本屋からのっそり顔を出した老翁を見止め、通りを歩いていた男が明るい声を上げた。
「じいさん、ちょっとぶりじゃないか! 臥せってるって聞いてたが……案外、元気そうだな?」
 語り掛けながら、老翁の動きが暫く寝込んでいたものには見えなかったのだろう。首を傾げた男に、身体の具合を確かめるように上体の前後屈をしていた老翁も首を傾げ返した。
「んん……、ちょっと昼寝しとっただけのつもりなんじゃが。目が覚めたら、季節が変わっとって……何がなんじゃか」
「はぁ? なんだそれ。まぁ、変わりないようで良かったよ!」
 からり、男が笑う。無事であるなら、それでよいのだ。深く考えることもあるまい。それは老翁も同じこと。不思議はあれど、喜ばれたからには悪いことではないだろう。
 人は存外タフなもので。プラスの事象はあっけらかんと受け止めがちなもの。
 ならば『不思議』にオブリビオンの介在があったことを知る必要はあるまい。
 然して正しき『日常』がとりどり街に目覚めてゆく。
 そしてその優しい波は、拉麺フェス会場にも広がる。
「お、今日は活気づいてるねぇ」
 間もなく仕込みを終えようとしていた拉麺店のスタッフが、頬を弛めた。昨日までと空気が一変した気がしたのだ。
 その実、正しく「気のせい」ではない。とはいえ、やはり語って聞かせるのは無粋というもの。せっかくの拉麺フェスなのだ。難しいことは頭の中からとっぱらって、心ゆくまで拉麺を堪能することこそ今の正義!
 フェスに出店している店は様々だ。金箔や銀箔をあしらったラーメンや、盛られたチャーシューで麺どころか丼そのものが見えにくい、などというラーメンもある。
 とにかく色々だが、中でも人気なラーメンは六品だ。

 一品目は『栗蟹ラーメン』。
 カニで出汁をとったスープに白みそベースのタレを合わせ、比較的さっぱり目に仕上げてある。麺は中太ストレート。トッピングには繊細な甘みが特徴の栗蟹の身がふんだんに盛られている。
 そしてこのラーメンには特製のカニコロッケが別皿でついてくるのだが。このコロッケには『美味』と評判のメスの内子がふんだんに使われていて、スープの中で崩すと瞬く間に超濃厚なカニスープに変わるのだ。
 おそらく蟹好きには堪らない逸品だろう。

 二品目は『絶品・春キャベツラーメン』。
 牛乳とコンソメで味を調えた春キャベツのポタージュ風のスープに、太ストレート麺を合わせてある。
 春キャベツの優しい甘さが嬉しい女性に人気の品だが、トッピングの厚切りベーコンのボリュームはなかなかなだ。すりおろしにんにくを加えるとパンチが出るので、男性にも是非食べてもらいたいとは店主の弁。

 三品目は『カツオラーメン』。
 本枯節を贅沢に使ったスープに醤油ダレを合わせ、麺は細ちぢれ。
 そこに初ガツオの漬けが乗せてある、この季節ならではのあっさり魚介系ラーメンだ。レモンと醤油ダレ、オリーブオイルでマリネした新タマネギのスライスをトッピングすると、爽やかさが増すので、カロリーを気にする人にも是非お勧めしたい。

 四品目は『山菜の汁なし担々麺』。
 定番の肉味噌に、みじん切りにした山菜を和え、ほんのり苦みのある大人味に仕上げてあるのが特徴で、素揚げして緑がより鮮やかになったワラビとゼンマイ、タラの芽も添えてある、まさに日本の初夏な一品だ。
 アクセントに柚子胡椒を使うのも良い。
 逆に辛さが苦手な人は、卵を絡めるのが良いのだとか(生卵は、店員に一言いえば貰える)。

 五品目は『アスパラの豚骨ラーメン』。
 ガツンと濃厚な豚骨スープに、豚バラアスパラ巻を組み合わせたラーメンで、麺は細いストレート。
 豚の脂がアスパラの甘さをより引き立て、しかも食感はシャキシャキ。麺のつるつる食感とのコラボレーションが実に面白い。
 トッピングの味たまが、ごま油風味と紅ショウガ風味が半分ずつというのもなかなか興味深い。
 こってり豚骨を敬遠しがちな人も、このラーメンならば美味しく完食することが出来るに違いない。

 六品目は『ぎゅ牛っとつけ麺』。
 ストレートの極太麺をスパイスを効かせた味噌ダレにくぐらせ頂く品だが、なんとA5ランクの和牛サーロインを使った牛カツがトッピングとして付いて来る。
 この牛カツを味噌ダレに絡めて食べるのが美味いのだが、つけ麺としての工夫が実は麺にも施されている。何と麺にワサビが練り込んであるのだ。
 牛肉と味噌という強い味わいを、ワサビの清涼感が中和させる。ネーミングや見た目のインパクト以上に、考えられた一品になっているのが分かるだろう。

「まー、論ずるより食すが吉ってやつじゃない?」
 ちゃっかりフェス会場にかけつけた希夜が笑う。
 お残しは厳禁だが、食べられるなら幾らでも食べてよい。連れがいる人は、シェアするのもいいだろう。
 会場内だけでなく、商店街のいたるところに飲食スペースが設けられているので、混雑を気にする心配もない。
 仕事終わりのラーメンは、呑んでいなくても格別。
 ――さぁ、心ゆくまで召し上がれ!
 
 
 ==お品書き==

 ●栗蟹ラーメン        ……¥1,000
  旬の栗蟹の旨味を全部閉じ込めた一杯!

 ●絶品・春キャベツラーメン  ……¥800
  厚さ1.5cmのベーコンは圧巻! しかも二枚乗せ!

 ●カツオラーメン       ……¥850
  新感覚・初ガツオ

 ●山菜の汁なし担々麺     ……¥850
  辛みと苦みのコラボレーションは大人味?

 ●アスパラの豚骨ラーメン   ……¥750
  ガツンくる豚に、爽やかなアスパラを

 ●ぎゅ牛っとつけ麺      ……¥1,500
  国産牛カツ200gでこのお値段!

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●大名ラーメン        ……¥3,000
  金箔銀箔で豪勢に
 ●特盛チャーシュー麺     ……¥900
  チャーシューで器が見えません

 他にも様々、平均価格800円で取り揃えております。
         (表示価格は税込み)
エドガー・ブライトマン

ラーメン?フェス?
よくわからないけど、みんな楽しそうだね

あ!おーい、キヤく~ん
キミはラーメンとやらはスキ?
私はラーメンというもの、食べたこともなくて知らないんだけれど
こんな祭りが開かれるくらいだもの
きっと多くのひとに愛される食べ物なんだろう

キヤ君、よかったら付き合ってくれよ
一緒に食べたほうが、きっとおいしいし楽しいぜ

私はねえ、苦手な食べ物はないけど特別スキな食べ物もないんだ
みんな同じくらいスキ
だからどのラーメンを見ても、同じくらいおいしそうに見える
キヤ君はどのラーメンが食べてみたい?
私もそれにしようかな

へえ~、これがラーメン!
箸は練習したから使えるよ。これは何?レンゲ?

ワッすごくおいしい!!



●王子様、ラーメンに出逢う
 ――空が、高い。
 眼前の賑わいから天へ視線を遣ったエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は、己が瞳の青に酷似した空へ右手を差し伸べる。
 空へと至る滑走路に見立てられた白い袖。エドガーの謂わんとすることを察したツバメ――オスカーは軽く羽搏き、そして重力から解き放たれたように力強く飛び立つ。
 さぁ、と五月の風が吹き、エドガーの鼻先を掠めた。
 そこに含まれるのは、青い清涼さと、食欲をそそる香り。
 UDCとは異なる文化帯に生を受けて、正しく『王子様』として生きてきたエドガーは『ラーメン』が何なのか、更には『フェス』がどういうものなのかを知らない。
 けれど美しく整った顔に浮かぶのは、期待と高揚が色濃い笑みだ。
 オスカーを追いかけていた眼を、創意工夫が施された屋台の連なりへ向ける。皆、楽しそうにしている。それだけで、エドガーの頬は緩む。だって彼は、皆のことが大好きな王子様なのだ。
 とはいえ、わからないものは理解らない――ならば。
「あ! おーい、キヤく~ん」
 人々の中に見知った顔をみかけ、エドガーは多きく手を振る。群衆に紛れることのない、王子様全開の合図だ。即座に気付いた希夜は、ポリスチレン製の丼ぶりを手に、エドガーの元へ歩み寄る。
「おつかれさま、エドガー。どうかした?」
「おつかれさま! って……なるほど?」
 よく見ると、希夜の手元の丼ぶりは三枚ほど重なっている状態だった。つまりは既に二食は完食したということだ。
「なるほど?」
「いや。キヤ君はラーメンとやらが好きなんだと理解したところさ」
「大当たり!」
 朗らかに笑う希夜に、エドガーも白い歯を見せる。
 他を見渡しても、似たような手元の人が多い。つまりラーメンとは、多くのひとに愛されている食べ物なのだろう。こんな祭が催されるのも納得なほどに!
「キヤ君、よかったら付き合ってくれよ。一緒に食べたほうが、きっとおいしいし楽しいぜ」
 序でにおススメを教えて欲しいと言うエドガーに、希夜は「任された」と丼を抱えたまま器用に胸を叩き、そこで首を傾げた。
「何かリクエストとかある? 味が濃いのがいいとか、薄いのがいいとか。あと、食べられないものとか」
 どうせなら、より美味しく覚えるものをお勧めしたい。ラーメン好きな希夜としては至極妥当な問い掛けに、しかしエドガーは僅かに眉を下げた。
「私はねえ、苦手な食べ物はないけど特別スキな食べ物もないんだ」
 ――みんな同じくらい、スキ。
 人はそれを様々な意味を込めて『博愛』と呼ぶのだろう。
 おそらく『ひと』としては歪な在り様だ。けれどエドガーは『ひと』である前に『王子様』――博愛の化身。
 故に、どのラーメンも同じくらいに美味しそうに見えてしまう。
「そっか。ん、じゃあ。先ずはこれ、食べてみる? デビュー作としては変わり種かもだけど」
 察した風の希夜は、持ったままだった丼をエドガーに示す。
「カツオラーメン。あっさりしてるから食べやすいと思うよ。俺も同じ物を食べながら誰かと語り合いたい」
「面白そうだ」
 ふとしたタイミングで漏れる、やや男くさいエドガーの言葉遣いに、彼が真底そう思ってくれているのを垣間見た希夜は、善は急げとカツオラーメンの屋台へエドガーを誘う。

 練習したから、箸は使える。
 レンゲとは初遭遇だが、大きなスプーンだと思えば問題ない。
「ワッ、すごくおいしい!!」
「でしょ? あ、漬けにはワサビをつけてもいいんだって」
「ワサビ? この緑色の――うっ、ツーンと来たっ」
「あはははは」
 つるりとした麺をつるっと啜って、タレの風味を纏ったヅケは食感も愉しんで。美味しいスープは丼ごと煽って。
 初ラーメンを心ゆくまで味わうエドガーの頭上では、オスカーが気持ちよさそうに輪を描いて飛んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
【麺】


キヤ、キヤもいっしょにいこっ
らーめんらーめんっ

わたしとんこつにする、アスパラのっ
今回はバリカタしないでねえ、ふつうのにする
前かたくてすぐ食べられなかったからっ
アヤカはバリバリ食べてた、すごい
ごへい?(バリバリは擬音じゃなくて擬態語のつもりだった)
キヨもすきなんだっ

裏メニューっ
わくわくする響きに笑って
かっこういい
キヤはなにラーメンがすき?

わ、うんうんうまそうっ
まねっこで言って
いただきます


おいしいっ
紅ショウガ味のあじたまはじめて
わ、キヨのたべるっ
じゃあわたしのはキヤに
アスパラもたべていいよ、おいしいよ
アヤカ、次わたしねっ
カツオだ

器を横にずらしていくのが楽しくて
ふふ、プレゼント交換みたいっ


砂羽風・きよ
【麺】


希夜お疲れさん
お前も一緒にラーメンどうだ?
オズの提案で分けっこしようぜって話しててさ
色んな味が味わえるなんてぜってーお得だろ

何にするか決まったか?
お、バリカタか!俺も結構好きだぜ

俺はそうだな……

――なぁ、店主
ここに裏メニューってあるのか?
あればそれを頼む(無ければチャーシュー麺で)

うおおお、スゲー!めっちゃ旨そうだな
早く食おうぜ!
まずは自分のをひとくち食べて
額に手を当てる

……やべぇ、なんだこれ

旨くて言葉に出来なかったんだっ
次、綾華の食いたい食わせろ!
オズのも後で食べさせてくれ
そうだ、俺の食うか?希夜も食え食え

おいおい!何で強調した?!
俺にも食わせろ!

いやー、やっぱラーメンは最高だな!


浮世・綾華
【麺】


いいでしょ、希夜

あ、多分ハジメマシテだよな
俺は綾華。よろしく

待ってオズ。その言い方は語弊があるだろ
こうかんこするし、俺もフツーにしよ
んーっとねえ、決めた
カツオラーメン
さっぱりしててうまそうだケド何が新感覚なのか気になるし

へえ、裏メニューなんてあるもんなのか
流石、自分も店やってるだけあって詳しいな

…カツオぶしじゃなくて、カツオが乗ってんのこれ
ん、いただきまぁす
あ、んまい

え、きよしのその反応はなんなの
フツーに不安なんだケド?
えー、俺?じゃあ食う…

オズと希夜はカツオも食っていいよ
オズと希夜は

(聞こえないふり

ラーメンは時間との戦いだが今日はいっかと思う
皆で楽しく食べんのが一番美味しいはずだから



●Men meets 麺!
「キヤ、キヤ、キヤ!」
 聞えた賑やかな呼びかけに足を止めた希夜は、転がる勢いで駆けて来たオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)に目を丸める。
「オズ?」
「うん! あのね、らーめんらーめんらーめん!! キヤもいっしょにいこっ」
「え、あ、うん」
 誘いには当然、否やはない。が、単純にオズの勢いに負けている希夜の様子に、「そっちもお疲れさん」と転送作業などのあれこれを労った砂羽風・きよ(末のきよし・f21482)は貌を弛ませる。
「オズの提案で分けっこしようぜって話しててさ。色んな味が味わえるってぜってーお得だろ」
 からり、きよが笑う。得心した希夜も、成程、と笑う。
 確かにそれは効率的だ。むしろありったけのラーメンを堪能したい希夜にとっては、まさに渡りに船の誘いに他ならない。
「いいでしょ、希夜。あ、多分ハジメマシテだよな。俺は綾華、よろしく」
 浮世・綾華(千日紅・f01194)の律儀な自己紹介に破顔して、こちらこそよろしく、と手を差し伸べれば交渉成立。二十歳を超えた男が四人集う。言うなれば「Men meets 麺」体制の発足だ。
「あのね、あのね。わたしとんこつにする、アスパラのっ」
 どうやらオズは既にメニューを心に決めているらしい。何故なら、オズにはとんこつ一択の理由があるから。
 ――その、理由は。
「今回はバリカタしないでねえ、ふつうのにするんだ。前かたくてすぐ食べられなかったからっ。アヤカはバリバリ食べててすごかったけど!」
 どうやらリベンジマッチをしたいらしい。
 が、そこに含まれた微妙な誤解に綾華が片眉を上げる。
「待ってオズ。その言い方は語弊があるだろ」
 バリバリ食べたことは否定はしない。が、バリカタの「バリ」は「バリバリ」の「バリ」とはちょっと違うと綾華は指摘したいのだ。されどニュアンスが微妙過ぎて、当のオズは「ごへい?」と青空色の瞳をくるり。
 さながら漫才の様相を呈してきたオズと綾華の遣り取りに、ついに希夜は腹を抱えだす。
 だが笑うことばかりに終始していては、肝心のラーメンにありつけない。
「なるほど、オズはアスパラとんこつね。で、そっちの二人はどうするの?」
 向けられた水は掬わねばなるまい。というか渡りに船と綾華は並ぶ屋台を見比べる。
「んーっとねえ、決めた。カツオラーメンにする。さっぱりしててうまそうだケド何が新感覚なのか気になるし、――」
 で、きよしはどうするんだという問いを綾華は無言の視線に変えて投げた(これが声になっていたなら、ソッコーで「きよしじゃない、きよだ!」と安定の返事が真っ先に寄越されただろう)。
「――」
 然してきよの返答は、これまた無言の不敵な笑み。
(「バリカタ、俺は結構好きだけど。今日、択ぶなら――」)
 にやり。意味深に口の端を吊り上げ、きよはアスパラとんこつラーメンを饗する屋台へ歩み寄った。
「え? キヨもお揃い??」
「いや、俺は……」
 首を傾げたオズを振り向きサムズアップを決めたきよは、改めて屋台と向き合うと店主に耳打ちする。
「――なぁ、ここに裏メニューってあるのか?」

 ズズズっと勢いつけて麺を啜ったきよは、箸を握った手を額に当てて黙り込む。
「――、――、――、――ゃ」
「いや、その反応はなんなの」
 待てど暮らせど固まったまま動かぬきよに、ついに綾華がしびれを切らす。いや、裏メニューを択ぶなんて流石は自身で店をやってるだけのことはあると感心はしたのだ。
 そして勿体つけるように店主が差し出した一杯は、これでもかと餃子がトッピングされた――その名も「餃子ラーメン」。
 餃子にラーメンといえば、間違いのない組み合わせ。とはいえ、オン・ザ・ライスならいざ知らず、オン・ザ・ラーメンはどうなのか。
 スープを吸った皮がべちゃべちゃ食感に成り果てているのではないだろうか。それとも餃子の餡が斬新すぎる味わいなのだろうか!?
 押し寄せるあれこれに、綾華も息を飲む。緊張に、ごくりと喉が鳴った――その時。
「……やべぇ、なんだこれ」
 頬を紅潮させたきよが、ほうっと嘆息した。けれどまだ、決定打ではない。「やべぇ」がガチヤバ案件である可能性だってあるのだ!
 しかし。
「旨すぎて言葉に出来なかった……っ」
 ……どうやら美味だったらしい。それもそのはず、餃子の餡はチャーシューと紅ショウガを刻んだものをベースに、辛みそ風味に仕上げられており、豚骨スープとの相性は抜群すぎるほどに抜群。しかも餡をスープに溶かすと、ラーメンそのものが味変ができるというところまで計算されている。
「おい、このフェスすげぇぞ。綾華もオズも、希夜も早く食ってみろ」
「わぁい! いただきます!」
 綾華と同じく事態の推移を、固唾を飲んで見守っていたオズも、負けじと箸を進めだす。
 まずはスープを少し味わい。それから麺を啜って。次は豚バラアスパラ巻をぱくり。それから、二種の味玉を――。
「! おいしいっ! 紅ショウガ味あじたまはじめて! すごい、すごい!」
 ほんのり紅に色付いたショウガ味の味玉は、意外なくらいに爽やかで、そして美味しくて。普段から輝くようなオズの笑顔が、さらにパワーアップする。
 伝播していく美味の波。
「ねえねえ、アヤカは? アヤカのカツオはどう?」
 期待に溢れるオズの眼差しに、新タマネギのマリネに合わせてカツオの漬けを口に運んだ綾華もニコリ。
「一見、普通のカツオのタタキだけど。温かいスープに浸かってたことで半生になってるのは、確かに新食感だな。あと、ちゃんと美味い」
 とりどり街の拉麺フェスらしく、ラーメンたちは何れも味も見た目もとりどり揃い。となれば、お裾分けが捗る捗る。
 希夜が選んだ『ぎゅ牛っとつけ麺』は、麺が主役なのか肉が主役なのか、という感じだったが、そこは成人男性の胃袋だ。肉が美味けりゃ大概の問題は許される。
「キヨのギョウザ、すごくおいしい!!」
「オズのアスパラ巻もめちゃくちゃいいな」
「あ、オズと希夜はカツオも食っていいよ」
「――ぇ」
 賑わいに乗じた綾華の言い様に、ぴくりと反応したのはきよだった。いや、単なる聞き違いかもしれない。うっかりかもしれない。微かな希望を胸に、きよは敢えて言う。勇気をもって、言う。
「綾華の食いたい食わせろ!」
「もちろん。オズと希夜は」
「――おいおいおいおい! 何で、二人を、強調した!? 俺にも食わせろ! マブだちだろう!?!?」
「(きーこーえーなーい、の綾華)」
「ふふ」
「綾華ときよは仲良しこよしだねぇ、ははは」
 強引にカツオの漬けを目掛けて箸を伸ばすきよに、ひらりと踊るように躱す綾華。そんな二人のやりとりが可笑しくて、オズと希夜は顔を見合わせ吹き出す。
 けれどラーメンは時間との戦い。麺が伸びてしまっては、台無しだ。ということで、存外はやく綾華が折れて(今日はいっか、のキモチ)、漬けをきよへ進呈すれば舞台は大団円。
「いやー、やっぱラーメンは最高だな!」
 一番小さな漬けだったことは露知らず、きよはご満悦に空を仰ぎ。
 少しずつ分け合うことがプレゼント交換のようだとオズはトキメキを何時までも抱えて。
 ご相伴に与った希夜も、幸せ笑顔がはちきれる。
 そんな三人を眺めて綾華は思うのだ。
 ――ラーメンは皆で楽しく食べんのが一番美味だ、と。

 Men meets 麺。
 一番の幸せトッピングは、子供心全開の笑顔。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ

ジジ(f00995)と
らーめん…
確か…麺料理であったか?
メニューを睨めつけ、首を捻る
ジジ、ジジ
お前は多少詳しいのだろう?
師にお薦めを聞かせよ

とんこつ…こ、これか
確か此方では食前、両手を合わせるのがマナーだったな
いただきま――って何だジジ藪から棒に
厳重な準備に瞠目するも…此奴が云うのだ
細心の注意を払い箸を用いて恐る恐る口へ含む

濃厚な見目とは裏腹に、存外にさっぱりしたスープ
それが絡む細麺は存外に噛み応えがあり
アスパラも決して添え物ではなく
香ばしい卵の風味も素晴らしい
互いの持ち味を決して消さぬ逸品
斯様な贅沢が許されるUDCアース…げに恐ろしい世界よ

し、しぇあ?
何の事かさっぱりだが…無理はするなよ?


ジャハル・アルムリフ

師父(f00123)と

うむ、らーめんだ
至高の芸術であるぞ
俺としては「トンコツ」を勧めよう
しかし、このギュ…?も捨て難い
否、師には矢張り金銀の…

師父、らーめんには少々危険が伴う
素早く宝石の髪を後ろに纏め
襟元に白い布を柔く巻いて垂らす
うむ、これでよし

至福のれぽーとに頷いて箸を割り
うむ、この深み、この歯応え
思わず小さく呻くほど
アジタマは初めて見たが
なんとまろやかで味わい深い
暫し弟子入りしてこの技を
…否、我が師はこの世に一人故
舌と魂に確と刻もう
ああ――しかし
食べ終えてしまうのが惜しい

師父よ
あれと、あれと、それから
あのらーめんも気になるのだが
「しぇあ」の準備は万端であろうか
さあ、共に次へ参るとしよう



●師父と弟子の拉麺奇譚
 数多の知識を修めたアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の眉間に皺が寄る。
 険しい視線が落とされているのは、先ほど威勢のよい青年から手渡された紙きれだ。
 『お品書き』と銘打たれたその紙切れは、所謂メニュー表であるのだろう。品名と価格、そして売り文句らしきものが並んでいる。
「らーめん……」
 違和感を拭えぬ字面に、アルバは首を傾げた。
(「確か……麺料理の一種であったか?」)
 世界を渡り歩き、叡智を貪るアルバを以てしても、未知なるものはある。むしろ、だからこそ『貪り続けて』いけるわけだが――つまり、アルバにとって『ラーメン』とは、輪郭が朧な未知の領域。おかげで模倣画のない簡素なメニュー表では、イメージが湧かずに何が何やらサッパリだ。
 行き交う人の手には、大振りの碗と箸が握られている。成程パスタなどとは違い、箸で食すのが慣わしの麺料理なのだろう。
 漂う香りも悪くない。悪くはないが、様々が入り交じっているおかげで、食欲をそそりはするものの、「これ!」という決め手に欠く。
 ふむ、とアルバは指で顎を撫でる。そしておもむろに傍らの弟子を眺め遣る。
「ジジ、ジジ。お前は多少、詳しいのだろう?」
 軽く抱き上げられた時代は遥か彼方。育ち過ぎた弟子と視線を合わせるには、振り仰ぐより他になく。傾げていた首を更に傾げ、アルバは「師にお薦めを聞かせよ」と言い放つ。
 ともすれば――ともしなくても――尊大な言い様だ。けれども弟子たるジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)にとっては、福音も似て耳に響く。
「うむ、らーめんだ。至高の芸術であるぞ」
 だって師に頼られているのだ。
「俺としては「トンコツ」を勧めよう」
「ほほう」
 師の役に立てるのだ……っ!!!
「しかし、この『ギュ…?』も捨て難い 否、師には矢張り金銀の……」
 ジャハル、大いに苦悩した。知る限りだと、トンコツがお勧めではある。だが輝かしい師には高級肉こそ相応しいだろうか。いや、そういう意味では金銀をあしらった稀有なるラーメンの方がと、苦悩に苦悩を重ね――気付き損ねに気付いた。
「――師父?」
 いつの間にか傍らからアルバが消えていた。そういえば、トンコツを推した直後に「ほほう」とか聞こえた気がする。
「すみません。このスパラの豚骨ラーメンを頂いても宜しいでしょうか? はい、二人分で」
 慌てて視線を巡らすと、アルバは他所行き顔で既にオーダー中。しかもぱぱっと受け取り、ささっと座席を確保してしまったではないか。
「ジジ、何を呆っとしておる」
「!!!」
「確か此方では食前に両手を合わせるのがマナーだったな。いただきま――」
「師父、待つのだ!!」
 横に長い木製ベンチの真ん中に丼を置き、律儀に両手を合わせたアルバの背後へ、ジャハルは黒き疾風となって滑り込む。その剣幕に、さすがのアルバの動きが止まった。
「な、何だジジ。藪から棒に大きな声を出して……」
「師父、らーめんには少々危険が伴う」
 言うが早いか、ジャハルはアルバの眩くも美しい宝石の髪を、後ろで一つに纏めあげると、襟元に白い布を柔らかく巻き、そっと垂らした。
「うむ、これでよし」
 納得のいく仕事を終え、ジャハルは額を拭う。随分と厳重な仕度だ。喩えるならば、幼子に食事を与える前準備のような。だが、アルバは『知らぬ』が故に納得した。郷に入っては郷に従えと先人は語った。『らーめん』が何を識るジャハルが云うのだ、これがラーメンを食す時の正しい装備なのだろう。
(「らーめんとは、斯くなる物か」)
 ぶっちゃけ、麗しい師に汁跳ねの一つもあってはならないというジャハルの判断だったのだが、そうとは知らぬアルバは最新の注意を払って箸を繰り、恐る恐るラーメンを口に運ぶ。
 まずは、スープを少し。
 そして麺を、つるりと数本。
 それからゆっくり、豚バラアスパラ巻を咀嚼して。紅と二種の味玉へ――……。
「!」
 アルバ自身の耀きでもある瞳の星が、瑞々しく煌めいた。
「確かに、これは美味だ」
 白い頬をほんのり薔薇色に色付かせたアルバの感嘆に、ジャハルは無言で頷く。
「濃厚な見目とは裏腹に、存外にさっぱりしたスープ。それが絡む細麺は存外に噛み応えがあり、食感でも楽しませてくれている。そこにアスパラ巻だ。決して添え物ではないと主張する歯ごたえ、清涼感、全てが完璧。その上での、味わいの異なる二種の卵。香ばしさと風味が相まった味のハーモニーは素晴らしいと称するより他にない」
 朗々と、滔々とアルバの口から紡ぎ出される至福のレポートに胸を躍らせえいたジャハルは、次は自分の番だと割り箸を口に咥えて器用に割り(先ほど、粋でいなせな風貌のご老体がやっていたのを見た)、アルバと同じ順序でラーメンを堪能する。
「――くう」
 スープの深みのあるコクと、芯の通った麺の歯応えに、堪らず小さな呻きを漏らした。
 ジャハルも初遭遇となった『アジタマ』の、まろやかであり深い味わいには、知らず視線を遠くへ馳せていた。
「互いの持ち味を決して消さぬ逸品。斯様な贅沢が許されるUDCアース……げに恐ろしい世界よ」
 ――嗚呼、まさに師父の言う通り!
 感嘆を超え畏怖に転じたアルバの弁に、ジャハルは胸裡でひたすらの追随を頷き、同時に思う。
 この絶品のらーめんを、我が手で師へ饗することが出来たらどんなに良いだろう。
 店主に暫し弟子入りして、技の伝授を乞うてみたい――。
(「……否」)
 ずずず。残り少なくなった麺を啜り上げ、ジャハルは自らの希求を否定する。
 師事することは即ち、師を得るということ。だがジャハルには既にアルバという師がいる。
(「我が師は、この世に一人故」)
 揺らぐことのない真理は、ジャハルの心に燦然と輝く一番星。ならば、今は。この至福の味を舌と魂に刻み付けるべきだ。
(「ああ――しかし。食べ終えてしまうのが惜しい」)
 目前に迫った別れを前に、ジャハルは粛々と豚骨ラーメンを終いまで平らげる。そしてスープの一滴までをも飲み干して、簡易の丼ぶりの底に『完食ありがとうございました』の文字を発見し、感激に打ち震えた。
 これほどの美味を饗しながらも、決して奢らず。他人への感謝を忘れない料理人の、何と優れたことか……!!!
「師父よ――」
「ん?」
 厳かに箸を起き、やおら立ち上がった弟子の表情は、逆光になってアルバからは伺いすることは出来なかった。出来なかったが、アルバは察した。弟子に、妙なスイッチが入ってしまったことを。
「俺は、あれと、あれと、それからあのらーめんも気になるのだが」
「んんん?」
「『しぇあ』の準備は万端であろうか?」
「し、しぇあ???」
 この時アルバは、ジャハルの全身から陽炎のようなオーラが立ち昇っているのを視た。
 弟子が鬼気迫っている。果たして何に? らーめんに?
「さあ、共に次へ参るとしよう」
 問い掛ける間もなく、ジャハルはラーメン屋台の群れへ歩み出して征く。何のことだかアルバにはさっぱり分からなかった。分からなかったが、慌てて背を追う。
 ――無理はするなよ?
 困惑しつつもそれだけは言えたのは、もしかするとこの後にアルバが巻き込まれることになるあれこれを予見していたからかもしれなかった。

 余談。
 周囲の『大人』が前掛けをしていないことにアルバが察するのは、ラーメンを食べさせられるだけ食べさせられた後の出来事である。
 汚れを事前に防いだ弟子を褒めたか、それともいつかの逆襲を心に誓ったかは、まぁ、本人たちのみぞ知るってことで、めでたし、めでたし??

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


(カン、と靴を鳴らしパフォーマンスを終了。観客へボウ・アンド・スクレープで一礼)
紳士淑女の皆々様、暫しのご観覧ありがとうございました…と。

さぁて、お楽しみの時間ねぇ。一通り全部試すのは確定として…どこから回ろうかしらねぇ?
(実はこの女、細い見た目に似合わず中々の健啖なのである)

んー…初手からキツいのいっても後のほうの味が分からなくなりそうだし。春キャベツのから当たろうかしらねぇ。
トッピングは当然全部入りで。折角のお祭りだもの、あるものは試さないと損よねぇ?
ちゃんとケア用品も用意したもの、ニンニクとかも気にしないわぁ。その辺気にして楽しめないんじゃ、本末転倒でしょ?



●情熱と熱量の狭間
 カン! と甲高く響いた靴音に、とりどり街の人々は惜しみない喝采を送った。
 ついぞ一瞬前まであれほど激しく動いていたにも関わらず、両足を揃えたティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)の息は僅かも上がっていなかったからだ。
 驚嘆を含んだ数多の視線に、ティオレンシアは柔らかな弧を唇で描き、右足をすっと引くと、優雅に頭を垂れる。
 ――紳士淑女の皆々様、暫しのご観覧ありがとうございました。
 言葉に変えて舞台上の演者(ティオレンシア)が観客へ向けて感謝を表するボウ・アンド・スクレープは、まるで波のようなしなやかさと無駄のなさ。
 斯くして終いまで皆々を魅了し尽くした女はその後、如何に過ごしているかというと――……。

「……どこから回ろうかしらねぇ?」
 並ぶラーメン屋台を見比べて、ティオレンシアは軽く握った拳を顎へやり苦悩していた。
 ようやくのお楽しみの時間だ。ラーメンというラーメンを味わい尽くさないという手はない。
 そう――味わい尽くす。全てのラーメンを、尽く。メニューに上がっているもののみならず、今日という日に準備された全てを。とどのつまりが、コンプリート。
 当然、相応の量だ。15杯は下らないだろう。ラーメン一杯が約450キロカロリーと仮定して、トータル7000キロカロリーに及ぶことが見込まれる。平均的な生活を送る成人女性の一日の推奨摂取カロリーが2200+αということを鑑みると、まぁ、以下略。
 されど見た目の細さに反して、ティオレンシアは中々の健啖家なのだ。あと、先ほどまでの動きっぷりを見たら、平均摂取量で足りるはずもないのはさもありなん。さもありなん(強調)!
 そんなこんなで、しつこいようだが。ティオレンシアは全ラーメン制覇を目論んでいる。にも関わらず、何を悩む必要があるのかというと。
「……どこから回ろうかしらぁ」
 ――これである。
 いや、とても重要なことだ。回らないお寿司屋のカウンターに座ってお任せでお願いすると、繊細な味わいのものから始まり、大トロなどの濃厚なものはコース終盤に饗される事が多いように。
「蟹は意外にインパクト強いわよねぇ……担々麺と牛カツは後半確定でしょお? アスパラとはいえ豚骨は豚骨だし……春キャベツか、カツオか……迷うわぁ」
 脂の乗った戻りカツオなら、ティオレンシアは迷わなかった筈だ(春キャベツ一択)。さっぱり初カツオを使ったラーメンは、春キャベツの甘味にひけをとらない繊細な味わいだろう。
 が。動いた後は、なんだかんだで、やはり、肉だ。
「――そうね。えぇ、春キャベツにしましょお~」
 “パフォーマンス”で見せたものと遜色ない軽やかな足取りで、ティオレンシアは一番手と決めた屋台を目指し、「へいらっしゃい!」と愛想のよい大将めがけて、細い目を更に細める。
「春キャベツラーメンを一杯、お願いねぇ。ベーコンは強めに焙って貰えると嬉しいわぁ。あ、すりおろしにんにくも増し増しでぇ」
「え? にんにく増し増し?」
 脳みそ蕩かす激甘ヴォイスに誤魔化されそうになった大将の二度見に、ティオレンシアはくふふと笑う。
 折角のお祭なのだ。あるものは全部試さないと損。
「そう、にんにくも増し増しでぇ」
 それにティオレンシアは大人の女。ケア用品の準備もばっちりだ!
(「匂いとか、気にしてラーメン楽しめないとかぁ――本末転倒、でしょ?」)
 健啖家にて策略家でもあるティオレンシアの準備は万端。こうして彼女はこの日の『祭女王』の称号を手にするのだった――……。ごちそうさまでした!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルムル・ベリアクス
とっても賑やかでいい雰囲気ですね!どれも変わったラーメンで目移りしてしまいます……。
平和になったとりどり街の様子に頬をほころばせながら、あちこちの店を覗きます。
ん、このお店は……「山菜の汁なし担々麺」?山菜って普段殆ど食べないから気になります!
なんていうか、ラーメンと向き合う時間って格別ですよね。いただきます!
おお、これは……。辛さの中に、いい香りとほのかな苦み!
結構辛い!汗がだらだら出てしまいますが、食べる手が止まらない……。
柚子胡椒と卵を加えると、また違う味わいですね!
夢中で食べ進め、完食!
今日の出来事は、良い思い出になりそうです。



●刺激的で幸せな一日
「とっても賑やかでいい雰囲気ですね!」
 血色の悪さが嘘のように、ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)の足取りは弾むように軽い。
 表情に乏しい顔にも、ほんのり喜色が浮かぶ。だって平和になったとりどり街は、世界平和の象徴のようで、ルムルの頬も綻んでしまう。
 それに何より、お待ちかねのラーメンだ。
 きょろりきょろりと、生気のない赤い瞳が屋台の群れをいったりきたり。
 あれにしようか、これにしようか――なかなか、決められない。いや、事は既に終わったのだ。此処から先は急ぐこともない。ゆるり冷やかしてまわるのも乙なもの。
「へぇ、カツオラーメンですか」
 最初に目に留まったのは、刺身を具に使うというラーメン。切り身のヅケが熱々のスープに浸かって半生になっているのが傍目にも見て取れて、心が疼いた。
 しかし決め手に欠いて、ふらりと次へ。
「ぎゅ牛っとつけ麺? ダジャレでしょうか」
 程よく揚がった牛カツの、色鮮やかなミディアムぶりは胃袋を直撃待ったなし。とはいえ、今日の主役はラーメン。もっと麺が主役のものが好ましい。
 ――と、その時。
「山菜の汁なし担々麺……?」
 鳥の嘴が獲物へ向けられるよう、ルムルの琴線に触れたのは『山菜』という単語。慣れ親しんだ食材ではない。むしろ日頃は殆ど口にしないものだ。
 しかもベースは汁なし担々麺。時折、強い刺激を欲するところのあるルムルには、まさにうってつけ。
「ご店主、一杯お願いします」
「あいよ! 柚子胡椒と卵はどうするかい?」
「両方、別添えで」
「――にーちゃん、わかってるねぇ」
 フェスらしく、素早く差し出された盆を手に、ルムルは端のベンチを確保して、いざ逸品と対峙する。
 このラーメンと向き合う時間の格別さを知るルムルは、「いただきます」と両手を合わせてから、箸を構えた。
 まずは味に濃淡が出るよう軽く掻き混ぜ、それからずずっと啜る。
「おお、これは……!」
 尖る辛みの中に香る爽やかさと忍ぶほのかな苦みが絶品だった。
「結構、辛いですね!」
 じわり、と額に浮かんだ汗が全身へ伝播して、見る間にだらだらと流れ始める。だのに、食べる手は止められない!
 次なる段階へ進むべく、ルムルは無言で柚子胡椒を投入した。当然、辛みが増す。けれど柑橘系の爽やかさが山菜の苦みと合う。
 溶き卵を絡めるのは、整理運動のようなものか。一気にまろやかになり、心も汗も凪ぐ。
 気付けば完食していた。
「……ふぅ」
 酷く幸せな心地で、ルムルは額に残る汗を拭う。今日の出来事は、良い思い出になりそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
巴と

やっとラーメン
俺は普通の醤油が好き
だけど今回は変わったのに挑戦してみようかな
巴は豚骨も好きなんだ、じゃあたまには豚骨に

巴が頼み慣れてる…
俺は豚骨ラーメン、アスパラのやつ
麺の硬さ…? オススメで
ラーメンを目の前にしてやっとホッとする、ここまで長かった
うん、どっちも美味そう
見た目も変わってて面白いね

割り箸を割ったらすごい斜めに割れた
これってなんかコツとかあるのかな
まあいいや、伸びないうちに
巴に続いていただきます

すごく熱い、でも美味い
疲れた身体に染みるなぁ
アスパラも美味いし豚骨にしてみて良かったな

あれ、まだ考えてたんだ
気になるならこの後買いに戻ってみる?
そういえば店員いるのかな、倒しちゃったけど


五条・巴
由紀(f05760)と

ラーメン!
ラーメン食べよう由紀、由紀は何系が好き?
僕は豚骨も好きだけど魚粉系も好きでね。

カツオ、(麺)かため、野菜増しで
届いたラーメンは自分の前に置かれるといい香りでいっぱいになる
あ、アスパラの豚骨もいいね。美味しそう

箸を割って手を合わせ、待ちに待ったラーメンに…
由紀の箸が凶器に変わってる
食べる時気をつけてね
上手く割る方法は、うん、僕にも分からないな。

とりあえず、いただきます!

はあ、仕事終わりのラーメン最高
うまあ
香るカツオ、僕の口の中でカツオが泳いでる

結局最初に行った店のイキモノ何だったんだろうね?
いっていい?なんだか忘れられないんだよね



●由紀と巴の、とりどり街とりどり奇譚
 ちら、と視線を遣れば、不自然に姿勢を正して目を反らす少女たちがいる。
(「これなら……大丈夫そう?」)
 気にはしているが、相応にTPOを弁えているらしい。不躾な突撃を受ける心配はなさそうだと、鹿忍・由紀(余計者・f05760)は密かに胸を撫でおろす。
 ――しかし。
「ラーメン! ラーメン食べよう、由紀!」
 彼女たちの心を奪っている当の本人、五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)はというと。
「ねぇ、由紀は何系が好き?」
 語尾の軽やかな跳ね具合で察せられるように、既にすっかりラーメンに夢中な様子。
 この巴のテンションならば、憧れの人に嫌われたくない――空気を読める、ともいう――女子たちは遠巻きにするより他はあるまい。そう改めて由紀は確信し、ようやく精神を弛緩させる。
「ん、俺は普通の醤油が好き」
 まさに『やっと』の思いで辿り着いたラーメンだ。他に気を遣っている暇なんてない。
「へぇ、そうなんだ! 僕は豚骨も好きだけど、魚粉系も好きでね」
「豚骨……魚粉……、じゃあたまには豚骨にしてみようかな」
 折角の機会だからいつもと違うものに挑戦するのもいいかもしれないと思いつつも、決め手に欠いていた由紀は、巴の好みに便乗してみることにする。
 確か豚骨系は『アスパラの豚骨ラーメン』という品があったはずだ。
「で、巴はどうす――」
「すみませーん。カツオラーメンを一杯! 麺はかためでタマネギ増し増しで!」
「あいよっ!」
「巴……」
 少し目を離した隙に、ささっとオーダーを終えている巴の『手慣れ』っぷりに由紀は脱帽する。
「見て見て由紀。本当にカツオの漬けが乗ってるよ。それにカツオ出汁のいい香り」
 しかもフェスだから注文から提供されるまでが頗る早く、あっという間に簡易の丼ぶりを乗せた盆を手に、由紀の元へと戻って来た。
「由紀は豚骨にするんだったよね。屋台は奥から二番目みたいだよ」
 更に由紀の屋台までチェック済み。
「ありがとう、ちょっと行ってくるよ」
 仕事柄、人混みの泳ぎ方が上手いのかもしれない――なんて他愛もないことを思いつつ、由紀もお目当てのラーメンのオーダーに挑戦する。が、巴ほど熟れぬ由紀は麺の硬さ含めて諸々店主にお任せだ。困った時には、作った当人のオススメが一番。此れ、美食の法則也。
「おかえりー。あ、アスパラ豚骨もいいね。美味しそう」
 斯くして、バリカタ麺の豚骨ラーメンと共に由紀が戻ると、巴はちゃっかりテーブル付の座席の確保を終えているという用意周到さを発揮し、準備万端。
 椅子を引き、腰を下ろす。
 立ち昇る湯気は、食欲をそそる香気を放つ。
 ようやくだ。
「ここまで長かった」
 ほっと息を吐いて、由紀は割り箸に手をかける。バリ、っと変に硬い音がした。真ん中から綺麗に割れず、斜めに裂ける割り箸あるあるだ。
「凶器に変わったね。食べるとき、気を付けて?」
 巴の進言に由紀は頷く。巴の方は、スパンと気持ちよく割れていた。果たして、割り箸の割り方にもコツがあるのだろうか? 訊ねてみるも、そこは流石の巴も首を横へ振る。
「とりあえず、食べようか」
 促す巴に、由紀は再び頷く。
 ラーメンは時間も命。麺がのびないうちに食べなくては。
「いただきます!」
「いただきます」
 両手を合わせた友に、由紀も続く。見た目からして風変わりなラーメンの、お味は如何に。
「うまあ」
 グラビア以上の笑顔で巴が、天を仰いだ。
「やっぱり、仕事終わりのラーメン最高」
 口の中でカツオが泳いでいるみたいだ、と巴は美味に酔い痴れる。全身が海に飲み込まれたようだ。それがシャキシャキ食感が楽しいタマネギのマリネを頬張った途端、初夏の野に変わる。そして再び初ガツオの泳ぐ海へと繰り出すのだ。
「ねぇ、そっちは?」
「うん、美味い。すごく熱いけど、でも美味い」
 海面から顔を上げた巴の問いに、由紀も気怠い表情に歓喜を描く。
 濃厚な豚骨スープが、疲れた体にじんわりと染み渡る。まるで温泉に浸かっているようだ。そこへ豚の旨味を吸ったアスパラ巻の爽やかな変化球が心地よい。
「豚骨にしてみて良かったよ」
「それはよかった」
 待ちに待ったラーメンは、青年男児の腹と心を満たしてゆく。
 ここまで長いようで短い、短いようで長い道のりだった。そもそも出逢いからして風変わりな――。
「結局、最初に行ったお店のイキモノ、何だったんだろうね?」
 啜る麺にとりどり街でのあれこれを投影していた巴の脳裏に過ったのは、アレ。四つ足で、耳らしき突起が埋もれるくらいのふかふかで、長い尻尾はあるけど、先っぽが二つに割れてる、アレ。
「あれ、まだ考えてたんだ」
 瞬く由紀に、思い出したら忘れられなくって、と巴は目尻を下げる。よほど印象に残っているらしい。アレのインパクトは、由紀にとっても相当だ。
「この後、買いに戻ってみる?」
「いいの? このままだと夢に出てきそうだったんだよね」
「そんなに?」
 忘れ難き出逢いに、二人は笑い、ラーメンを食すペースをやや上げる。
 倒してしまったけれど、店員はいるのだろうか?
 誰かが戻って来ているとしたら、その人ならばアレが何か知っているだろうか?
 尽きぬ興味に、心が逸った。
 幸い、時間はまだある。相変わらず気が効いている女性陣は、巴のプライベートを邪魔することもないだろう。

 由紀と巴のとりどり街のとりどり奇譚はまだまだ続く。
 もしかしたら、もっと不思議な出逢いを齎すかもしれない希望を秘めて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月11日


挿絵イラスト