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あなたは誰も救えない

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●傲慢たる魔人
「世界を救おうとする罪人たちがいる」
 魔人は嘆く、その傲慢さに。
 それは大罪だ。すべてを救おうとするなんて、これ以上ない傲りだ。
 そして、彼にとってはかつて己が成した傲りでもある。すべてを救うと言う傲りの果てに、身を滅ぼした神父はオブリビオンとして蘇った。今度は自分が裁く番だとそのための力を宿して。
 焼け落ちた教会で魔人は悩む。かの猟兵たちを引きずり出すには事件が必要だ。できればより悲惨なものがいい。無辜の民が犠牲になるのならもっと良い。
「ああ……いい場所があったな。この村からそう遠くない……なにせこの村に嫁に来た者がいたほどだ」
 炎に巻かれて死んだ夫を見て、気が触れた彼女は先ほどからひとりで誓いの言葉を呟いている。己の意思を失い呆けている村人たちは彼女だけではない。魔人の洗脳を受けた村人たちは生きていながら死んでおり、死んでいながら生きている。
 魔人が歩めば彼らは付き従う。死ねといえば死ぬだろう。彼の支配を受けた哀れな被害者たちはどこまでも彼に従順だ。
「ここと同じようにあの村を焼き払ってやろう。阻止しに来ないようならば次の村を。それでも来なければまた次だ」
 猟兵たちが現れるまでいくらでも人々を焼こう。大罪を裁くためには必要な犠牲だ。すべてを救おうとする罪人たちはそう待たせずに現れるだろう。
 現れたならば、わからせてやろう。あなたは誰も救えない。あなたはもう戦えない。世界を救うために誰かを見捨てるか、世界を救うことがいかに残酷なことか。与えられたこの支配の力をもって、思い知らせてやる。
 嗤う魔人の背後から、咆哮を上げて紅竜が飛び立った。

●そうして絶望は生まれる
「早く逃げて!!」
 教会を預かっていたシスターが叫ぶ。崩れる家、上がる火の手、両親を失って泣き叫ぶ子供の声……。
 逃げ惑う人々を必死に誘導しながらシスターは振り返った。咆哮を上げる竜が爛々とその瞳を輝かせ、炎を噴き出す。人々を見る目は捕食者のそれであり、その口にはすでに犠牲となった村人たちの鮮血が漏れている。
 咀嚼を終えて次の獲物を探す竜は逃げる人々に襲い掛かる。何もできない。抗っていた数少ない男たちももうとっくに竜の胃へと収められてしまった。シスターにできるのはただ逃げてと叫ぶだけ……。
「おかあさん……おとうさん……おきてよう……おきて……」
 泣きつかれた子供の声がシスターの耳に入る。瓦礫の下敷きとなった両親にすがり、まだすすり泣いている。幸運にもまだ竜の視界には入っていないようだ。
「……っ! 救える、私にも……!」
 シスターは走り出していた。竜に見つかる前にあの子を連れて逃げれば、助けられる。それは亡くなった両親の願いでもあるはずだ。
 呆然と呼びかける子供を抱き上げる。子供の意識は途切れかけのようで満足な反応も返さなかった。目の前で両親が死んだのだ。その心は壊れかけているのだろう。
「大丈夫だからね、大丈夫……」
 子供をあやしながら立ち上がったシスターは違和感に気が付いた。静かすぎる。誰かの悲鳴も家が崩れる轟音も、竜の咆哮も聞こえない。炎の上がるパチパチという音は聞こえるのに。まるでジッとこちらを見つめているような……。
「________ぁ」
 恐る恐る振り返ったシスターの視界いっぱいに飛び込んできたのは、大きく口を開けた竜の牙だった。

 あなたはだれも救えない。

●罠の予知
「君たちは何を救うために世界へ赴くんだい?」
 グリモアのページをめくりながら、アメーラ・ソロモンはそう猟兵たちに問うた。唐突な問いに戸惑う者もいれば、何をいまさらと首を傾げる者もいるだろう。だが、別にアメーラはその答えを求めているわけでもない。パタンと本を閉じ、にこりと微笑んだ。
「おなじみダークセイヴァーでの事件だ。ただし、狙いは君たちだがね」
 紅茶を口に、彼女はそのようなことを言い放つ。そして猟兵たちの返答を待たずに彼女は言葉を続けた。
「そして人々の悲鳴を、猟兵たちへの呼び声にしようとしている」
 罪のない人々の虐殺の予知。それは猟兵たちをおびき寄せる撒き餌というわけだ。暴竜に蹂躙される村を、罠だからと見過ごすことなどできない。これを見逃せば多くの者が死に、そしてまた違う村が襲われるだろう。
「明らかな罠だ、飛び込むのはやめておくかい? 彼らを、見捨てるかい?」
 愚問だ。そんな猟兵たちの反応にアメーラは笑いをこぼす。そうだろうねぇ、と小さくつぶやいた。
「今回の冒険は連戦になる上、おそらく非戦闘員が巻き込まれる。心持はしっかりとね」
 どうか君たちの戦いに女神が微笑まんことを。そう言って、アメーラは転送を開始した。


夜団子
 こんにちは、マスターの夜団子です。オープニング閲覧ありがとうございます!

●今回の構成
 第一章 村を襲う竜を倒そう。倒せば村の人々は逃げ切れるので助かるぞ。
 第二章 ボスの手下が襲ってくるので迎え討とう。
 第三章 すべての元凶を倒そう。

●備考
  内容的に少し重めのシリアスなシナリオです。また戦闘中心となっております。
 第二章以降は第一章の村人たちのことは気にしないでください。戦いの間に彼らは避難します。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『紅竜の異端神ベルザード』

POW   :    炎滅の吐息
【自らすら焼き尽くさんとする爆炎の身体】に変形し、自身の【命が討たれた時に大爆発が起こる事】を代償に、自身の【放つ炎熱のドラゴンブレスの火力と範囲】を強化する。
SPD   :    熱砂を喚ぶもの
全身を【周辺を非現実的な速度で砂漠化させる熱波】で覆い、自身の【発する熱量】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    火は炎に、炎は焱に、焱は燚に
レベル×1個の【可燃物が無くとも周辺に延焼し続ける魔】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガルディエ・ワールレイドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サンディ・ノックス
…俺は救う者としては劣っている
救う対象を選り好みするし多数を救う力もない
他者を救いたい気持ちを周りに見せる気もない

村人を庇うより竜を殺すことを優先
事件を起こした者は
見ろ、守れなかった!と猟兵に見せつけたいんじゃないかな
ならば守り重視の立ち回りは裏目に出かねない
竜の関心を俺に向かせるように戦う

翼を傷つけたら飛べないね?
目が見えなければ餌が探せなくなるねぇ?
喰えるものなら喰ってみろ
【解放・夜陰】で生み出した水晶を言葉通りの部位に向けて放つ

敵の攻撃は現地にある物で防ぎ、受けたダメージは技能で軽減を試みる
たとえ大ダメージを受けても苦痛の声は上げない
常に挑戦的な笑みを浮かべ
か弱い俺も喰えないの?と嘲笑う



 炎の上がる一つの村。燃えるものがなくなってもなお上がる炎に、村人たちは逃げ惑う。そんな彼らを喰らわんと追う紅竜に、向かいゆく者たちがいた。今は惨劇の寸前。悲惨な運命を変えるべく、猟兵たちは駆けつけた。
 真っ先に村人たちを保護する者、避難を手伝う者。村人たちを彼らに任せ、一部の猟兵たちは暴れる竜を討たんと走る。
 その中のひとり、サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)は、普段から覆い隠すその心中で、ひとり出発前の問いを思い返していた。
(……俺は救う者としては劣っている)
 全てを救うなんて傲慢なこと考えられない。自分は救う対象を選り好みするし、優先順位だってつける。それは一概に、多数を救う力もないと、自分の限界を知っているから。
(まあ、他者を救いたい気持ちを周りに見せる気もないしね)
 それでも、いや、それだからこそ、この戦いは負ける気がない。黒幕が村人たちの死を猟兵たちへのあてつけにする気なら、その裏を掻いてやる。そいつの思い通りにさせるつもりはない!
「こっちだ、竜! 喰えるものなら喰ってみろ!」
 サンディの挑発に紅竜はその瞳をぐるりと巡らせた。声をあげた愚かな獲物はどこだ? 知性を無くした竜は人間を獲物としてしかみていない。故に、村人と猟兵を見分けることができなかった。
 人々を威圧する咆哮を響かせ、紅竜はその口に炎を纏わせる。異端神によって生み出された炎は全てを燃やし尽くしてもなお消えず、村を焼き野原へと変えることだろう。
 その炎が無謀な獲物へと降りかかる、その直前に。
 小さな漆黒の水晶が、キラリと炎の光を反射した。
 ―――グガァァァァッッ!?
 その瞬間、突如として竜が苦悶の声を上げた。その瞳から鮮血が飛び散り、竜は炎を放つことも躊躇う。知性がない傀儡なのならばなおさら、その反応は素直なものだ。
 次に水晶が向かうはその皮膜。鱗が守る翼の付け根ならばともかく、風を存分に受けるために薄く作られた皮膜は脆弱だ。竜の、数少ない弱点ともいえよう。
 そこへ悪意の塊である漆黒の水晶が次々と突き刺さったら? 目蓋の保護すらないそこは、炎で水晶を阻むこともできずに切り裂かれる。
「翼を傷つけたら飛べないね? 目が見えなければ餌が探せなくなるねぇ?」
 嘲笑の言葉を理解せずとも、獲物に歯向かわれたことはわかる。
 皮膜を傷つけられ一度地に落ちた紅竜はその不届きものを見渡して探しはじめた。片目でも狙いがひとりならば見つけることは難しくない。そもそもサンディは逃げ隠れする気もないのだから―――。
「くっ……!」
 ついに放たれた魔の炎を、サンディは瓦礫を壁にして防いだ。しかし紅竜の炎は瓦礫をみるみるうちに焦がしていき、甲冑越しにサンディの肌を焼く。全身に纏った魔力で軽減は試みるが、じりじりと滲む痛みは抑えきれない。
 それでもサンディは苦痛の声を上げなかった。むしろ、嗤う。先ほどと同じように、否、先ほどよりもはっきりと。
「お前、か弱い俺も喰えないの?」
 片目を失い、怒りで視野を狭めた知性無き竜に気が付けるはずがなかった。これこそがサンディの狙いだと。自らに関心を惹きつけて、村人たちを視界から完全に外させる。下手に背中でかばうより、村人たちは安全だ。
 「見ろ、守れなかった!」と。嗤えるものなら嗤ってみろ。黒幕の描いた筋書き通りに進んでやるものか。
 その熱に、痛みに、声も上げず耐えながら、サンディはせせら笑っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゼイル・パックルード
なんのため?そりゃ俺のためさ。
救うのはついで、そしてきっかけでしかない。
敵を殺し、ただ我が心を満たすため、さ。

逃げ損ねの村人をがいたら、村人の前の地面にに鉄塊剣でも刺しといてやるか
ブレイズキャリバーの炎に耐える大剣、巻き添えの炎くらい防いでくれるだろ

戦闘は、わざわざ火の手をあげてくれてるんだから利用させてもらう。
ダッシュで残像を発生させながら、燃えてる炎や崩れた建物を影にしながら近づいていく。

近づいたら刀を使ってユーベルコードで攻撃。飛ばれたら厄介なので、機動力を奪うたまにも翼を攻撃。
そうしたら離れて、モノの影に潜んで近づくのヒットアンドアウェイを繰り返す。



「なんのため? そりゃ俺のためさ」
 なんのために世界へ赴くのか? 投げかけられた問いをゼイル・パックルード(火裂・f02162)はただ嘲笑う。
 誰かを救うのはなにかを殺す副産物でしかない。つまりただのついで、ひいてはきっかけだ。誰かが助けてと声を上げるから自分は殺すべき相手を見定めることができる。その結果その誰かが救われようとも、ゼイルには関係のない話。敵を殺し、ただ我が心を満たすため、今回も力を振るう。
「ひ、ひぃぃぃっ!!」
 情けない声を上げて農夫のひとりが地へと転がった。恐怖のあまり足をもつれ、地を這ってからは震えで満足に立ち上がることもできない。どうにか竜から距離をとろうと地面をひっかいて前へと進む。その背後へ、紅竜の纏う炎の残滓が迫っていた。
 逃げる村人たちは皆必死だ、どんくさい者は容赦なく置いていかれる。瓦礫に足をとられ転んだ者に手を差し伸べていては、自分が逃げ遅れてしまうから。非情なようだが判断としては正しい。抗う術を持たない村人たちが動いたところで死体が増えるだけだろう。
 怒れる竜の矛先は猟兵たちへと向いている。しかしそのまき散らす炎は四方へ飛び、村の無事を許さない。そのひとつが逃げ遅れた農夫へと放たれた。
 その刹那、死を覚悟した農夫のすぐそばに大剣が突き刺さった。まるで炎との間に立ちふさがるように落ちてきたその鉄塊剣は、竜の炎さえ見事に防いだ。あまりのことに農夫は目を白黒させあっけにとられるが、すぐに我を取り戻し不格好ながらに立ち上がって一目散に逃げていった。彼にはわかり得ないことだが、地獄の炎さえ防ぐこの大剣が巻き添えの炎程度を防げないわけがない。
 鉄塊剣を放った張本人はすでに農夫のことなど頭になく、そのスピードとフィールドを生かして竜へ悟られることなく近づいていた。
 炎はゼイルにとって最もなじみ深いもの。わざわざ火の手をあげてくれるのならば好都合だ。とことん利用させてもらおう。
 炎に隠れ、その熱をものともせずゼイルは接敵した。炎を自らに従順なしもべと驕っている竜に、彼のことが気づけるはずもなく。
 ゼイルの胸の古傷に、炎の光が宿った。
「さぁ、止めてみな」
 その声に竜が気づく前に。ゼイルの刀は竜の翼へと振り下ろされた。痛みによって反射的にゼイルの方へ向いた竜は、そのもう一撃を喰らい悶え咆哮を上げる。
 サラ、とゼイルの刀の先が砂へと朽ちた。竜がその身を守るために纏ったその熱波は非現実的なスピードで周囲を砂に変える。その熱量を得たまま紅竜は空へと舞い上がろうとし……。
「させ、るかっ」
 竜の飛び立つそのスピードを、ゼイルの速さは上回った。寿命を削った残りの七連撃は、鉄塊剣を砕いて作った耐熱ダガー……鉄塊剣と同じく地獄の炎にさえ耐える剣で、放たれた。
 翼をめった刺しにされれば竜といえど飛び立つことはできない。痛みからかそれとも怒りからか、大きな咆哮を響かせて暴れまわる。
 思う存分突き刺したゼイルはその身を翻し、また炎へと紛れた。のたうち回る竜から距離を取り瓦礫へと身をひそめる。顔へと噴きかかった返り血を拭いながら、ゼイルは静かに、そしてほの暗く、笑っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

終夜・還
何を、か。俺は何を救おうとしてるのかねぇ
実際の所わかんねぇや

つーかンなの守りたいと思った奴が居れば守ろうとするモンだろ?
死後縛られるのならその想いを俺は救う為に、引き連れる
こうやってな

UCで竜を攻撃しつつ、炎も無効化。俺の舞台を構築、それでも漏れるのなら俺自身で庇おう
痛みならへーきだし耐性は色々と持ってるからね

シスターにはよく頑張ったなって言って生きる気力を与えられたら幸い


人の想いってのは死してなお生きるモノでな
強ければ強いだけ長く、強靭なモノになる
たとえ力無い者の想いでさえも

俺(死霊術士)はそんな想いを正い所に還してやりたい、それだけさね

それを捻じ曲げるオブリビオンは還さねえまと気が済まん



 自分が何を救おうとしているのか。実際のところ、その問いに答えることは難しい。そもそも順序が逆だろう、と終夜・還(終の狼・f02594)はひとりごちた。
「ンなの守りたいと思った奴が居れば守ろうとするモンだろ?」
 だからこそこうやって世界を渡りもするし、人々の盾にこの身を晒す。死んでなおその思いに縛られるのならば、死霊術士の力を使って救おう。すでに居られなくなったこの世へ冥府の死霊たちを引き連れ、その想いを完遂させてやりたい。死んでなお救われないなんて、後味が悪いだろ?
「こうやって、な」
 パチンと指を鳴らせば術式を記した“記憶の書”がひとりでにそのページを開く。書を冥府の扉として、還は彼らを呼び出す……彼ら自身を救うため、死霊たちの力を借りるのだ。
「異端神の炎だァ? 神サマのもんなら、なおさら穢れは嫌うよな?」
 死霊たちの慟哭は紅竜の咆哮さえかき消した。各々の悲しみを声高く叫ぶ彼らは、既に命が途切れた故に恐れも畏れも持ち合わさない。嘆きのままに声を上げ、求めるままに襲い掛かる。彼ら自身の想いを果たすために。
 乱舞する死霊たちと紅竜の魔の炎がぶつかり合う。ひとりひとりは大した力も持たない死霊たちだがその想いの強さだけは、知性を持たない竜などに負けるはずがない。
「……人の想いってのは死してなお生きるモノでな。強ければ強いだけ長く、強靭なモノになる。たとえそれが、力無い者の想いであったとしても」
 わかるわけねェか、異端の神ごときに。
 死霊たちの仄暗く重い、その穢れが紅竜の炎を打ち消した。あらゆるユーベルコードを無効化する死者の穢れは異端神であろうと例外なく。己の半身ともいえるそれを失った紅竜は死霊たちの乱舞を防ぐ術がなかった。
 ガァァァァッッ!!!
「俺はそんな想いを正しい所に還してやりたい、それだけさね」
 逆に、それを捻じ曲げるオブリビオンは還さねえと気が済まん。そうぽつりと呟いて還は真剣だったその表情を打ち消した。いつも通りの笑顔を貼り付け、炎を無効化する空間を盾に村人たちへ向き直った。
 近くで紅竜と死霊の戦いを見てしまった人々は腰を抜かしてしまったようだった。無理もない。あの戦い方は一般人には少し刺激が過ぎる。
 その中でも唯一、震える足で立ったままの女がいた。シスター服を纏い、背後に親子をかばうように立ちながら必死に神へ祈りを捧げる彼女は、予知で見たというあのシスターだろう。彼女は予知と同じように誰かを護ろうと立ち上がったのだ。
「よく、頑張ったな」
 それがどれだけの恐怖か、ダークセイヴァー出身の還にとっては痛いほどよくわかる。力を持たない彼女はそれでも、背中に彼らをかばったのだ。
 投げかけた言葉の返答は聞かない。もし彼女に生きる気力を与えられたのなら幸いだ。
 戦いはまだ終わっていない。還は戦場に戻るべく、また地を蹴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西条・霧華
「私にできるのは不肖の殺人剣まで…。それでも私は守護者の【覚悟】を以て皆を護るだけです。」

泣く子を助けようとしたシスターさんを愚かと嗤う人もいるのかもしれません
確かに勇気と蛮勇は違うものです
でも、その状況で誰かに手を差し伸べられる人がどれ程居るでしょうか?
私はその想いを護りたいと思います

【残像】を纏って眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『幻想華』
敵の攻撃は【見切り】、【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止め、返す刀で【カウンター】を狙います

戦闘しつつ村の人達が逃げる方向とは逆の方へ誘い出します
少しでも助かる可能性があるのなら、試してみる価値はあります



 ある者はこう言うかもしれない。
 救えもしないのに手を差し伸べるのは、その人のエゴでしかない。力なき者は大人しく、強者の助けを待っていればいい。妙な手出しは彼らの足を引っ張ることになるのだから。
 だが、西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)は決してそうは思わない。親を失い泣く子を助けようとしたシスターを、愚かと嗤う人もいるだろう。
 確かに勇気と蛮勇は違うものだ。勇敢と無謀は異なるものだ。それでも、その状況で誰かに手を差し伸べられる人がどれ程居るだろうか?
 私は、その想いを護りたい―――そう覚悟を胸に、霧華は啖呵をきる。
「こっちですよ、哀れな暴竜! 暴れることしかできない、知性を失った異端神!」
 腹の底から声を張り上げる。先ほどから見ていれば、この竜はあまりにも直情的で、煽りに弱い。言葉を解しているかも怪しいので恐らく大きな声に反応しているのだろう。もしくは痛みとそれをもたらした相手に、か。
 熱き炎そのものであるような威圧感は、手傷を負った今でも健在だ。忍び寄って斬るのもいいが、霧華はそれよりも村人たちの安全を優先したかった。
 こちらの方向は村人たちの避難先とは真逆だ。こちらにならば炎でも牙でも、襲い掛かってくればいい。
 小柄な霧華を見て、紅竜は何を思ったか。威圧するように大きく翼を広げた。皮膜を傷つけられ、その鱗をめった刺しに刺されて血を噴いていても、彼はまだ飛び上がる気らしい。それはもはや翼に頼った飛翔ではなく、オブリビオンとしての力なのだろうか。
 今更紅竜の威圧程度でたじろく霧華ではない。一切の構えを崩さず、必殺の一撃を放つ瞬間を耽々と狙う。守護者の覚悟はその程度の咆哮で飛ばされてしまうほど軽くはないのだ。
 刹那、紅竜がその爪を持って霧華へと襲い掛かった。その一撃を見切り、霧華は跳びあがる。その爪が掴んだのは実在のない、霧華の残像だった。
 空を支配できるのはここまでだ。霧華はその腰の刀を軽く浮かせ、その柄をきつく握った。
「私にできるのは不肖の殺人剣まで……。それでも私は守護者の覚悟を以て、皆を護るだけです」
 強烈な熱波が肌を焼く。防御してもなお届くその熱さにも、霧華は躊躇わなかった。
 こんなもの、なんでもない。あの日の熱さと痛みに比べたら!
 疾走によって霧華は紅竜の上をとった。抜き放たれた居合は一閃を持って戦いを終わらせる。
「―――落ちなさい」
 籠釣瓶妙法村正による一撃は、紅竜の右翼を完全に叩き斬った。

成功 🔵​🔵​🔴​

宜野座・聖
何を救うため? そんなもの決まりきっているでしょうに!
悲哀に涙を流すもの! 理不尽に苛まれ号哭するもの! 己の力の無さを嘆くもの! 総ての不幸に囚われるもの一切を救うために!

──或いは、救いを誰かに託すものさえ。
私は救ってみせましょう。
ごきげんよう村の人々、幸せですか?

【指定UC】を発動します。
発動と同時に強烈な可視光を発し、その隙に『エスカトロジー』に敵の腹部に強烈な一撃を食らわせてもらいましょうか。
その後は『エスカトロジー』による肉弾戦です。殴る度にマイクロ波を打ち込み、敵の臓器を内側から沸騰させてしまいましょう。
さぁ、これが貴方の『終末』ですよ。



「何を救うため? そんなもの決まりきっているでしょうに!」
 とんだ愚問だと、宜野座・聖(不快なる聖狂人・f21682)は嘆く。この程度の問いを投げかけられたことすら理解しがたい。
 不幸を嫌う聖にとって、ダークセイヴァーはまさに地獄と形容できる。空を重い雲が覆い、闇に巣食う吸血鬼が支配するこの世界では、人々に笑顔が灯らない。
 『聖人であり、救済者である』聖には我慢ならない状況だ。そして是が非でも救わねばならぬとも。
 狂気に染まった魔眼でぐるりと紅竜を睨みつけ、その指を組んだ。神へ祈りを捧げるように。しかしその双眸は大きく開かれたまま。
「悲哀に涙を流すもの!  理不尽に苛まれ号哭するもの!  己の力の無さを嘆くもの!  総ての不幸に囚われるもの一切を救うために!」
 そのために自分はここにいる。そのための役割と力を自分は持っている。
「──或いは、救いを誰かに託すものさえ」
 ふい、と聖は村人たちへと目を向ける。竜に殺される前に、と一目散に逃げる人々。その中にも一部、逃げ遅れた者たちがいる。親とはぐれた子どもや老人、はたまた怪我を負った者。自力で逃げるにはいささか障害の大きい者たち。他の村人たちが彼らを見捨てたとは、思わない。自分たちにできない救いを猟兵たちに託しているのだ。
 ならば彼らも、託した人々も。
「私は救ってみせましょう」
 その身を投げ出し、逃げ遅れた彼らと竜の間に一人立つ。突然目の前にやってきた聖職者に残された村人たちは目を白黒させながら呆けていた。聖が救うべき彼らはその身を寄せ合って、炎がこちらに来ないことを祈っていたようで。
「ごきげんよう村の人々、幸せですか?」
 答えは求めていない。幸せでないのならば、幸福に至らせるまで。そして不幸の種をとっぱらってやるまで。
「……出番ですよ、『エスカトロジー』」
 『エスカトロジー』。それは聖自身の魂を具現化した存在であり、聖の手となり敵に終末を与える者だ。それが生まれると同時に聖から強烈な閃光が放たれ、目くらましとなる。
 眩しさに目を焼かれた紅竜は苛立ったように炎を噴き出した。しかし閃光のせいで狙いは定まらず、ただ付近に炎がばらまかれるのみ。その間に『エスカトロジー』は動く。
 轟ッ、と音を響かせ竜に肉迫した彼は、その拳を深々と竜の腹へ打ち込んだ。
 グ、ガァァッ!?
 ただの拳だったならば、竜もこれほど苦しむことはなかっただろう。しかし紅竜は炎の代わりに血を吐き出し、悶え苦しみ始めた。その隙に『エスカトロジー』はもう一撃、また一撃と拳を打ち込んだ。
 『エスカトロジー』は肉弾戦だけでなく、電磁波まで操る。拳から放たれるマイクロ波は鱗や厚い肉に阻まれることなく臓器に届き、内側からそれを沸騰させた。竜とはいえ、内臓を攻撃されてはたまらない。しかし、暴れることしかできない竜は苦しみの原因もわからず悶えるのみ。
「……さぁ、これが貴方の『終末』ですよ」
 聖のその言葉がこぼれるか否か。ついに内臓を失いすぎた竜が轟音を立てて地へと沈んでいった。その口からはドス黒い血が流れ落ち、瞳をひどく濁らせて、暴れまわった紅竜は最期を迎えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『魔術師の亡骸』

POW   :    炸裂魔弾
単純で重い【爆発性の魔術弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    事象転回
対象のユーベルコードに対し【事象の流れを巻き戻す魔術】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    邪刻禁呪
自身に【想像を絶する苦痛と引き換えに力を齎す障気】をまとい、高速移動と【命中した対象を崩壊させる暗号魔力の渦】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ―――紅竜が、沈んだ。
 村を襲っていた紅竜はその巨体を地面へ横たえ、その命を失った。脅威であった竜が討ち取られたことで村人たちはひとりまたひとりと歓声を上げ始める。
 徐々に上がっていく歓声のなか、猟兵たちは警戒を解かなかった。まだだ、まだ先がいる。竜を村にけしかけ、猟兵たちを呼んだ黒幕が、まだ―――。
「……ひとつめでノコノコやって来るとは。手間は省けましたね」
 場違いな男の声が、歓声を黙らせた。明らかに人間ではない威圧感を持つその声に、猟兵たちは警戒を強める。しかしその主は姿を現さず……代わりに現れたのは、杖を手にふらふらと歩みくる魔術師だった。
 その肌は土気色で、瞳は酷く濁っている。曖昧に開いた口からは言葉にならないたわごとが漏れており、その様子はまるで歩く屍のようだった。
 ひとりまたひとりと現れた彼女たちは竜を斃し終えた猟兵たちを取り囲み、じわりじわりと距離を詰めている。
「殺しなさい。そこにいる罪深い者たちを。世界を救わんとする愚か者たちを。罪なき人々を助けたいのでしょう」
 その言葉が彼女らに届いているようには思えない。だがその言葉のままに、彼女たちは杖を猟兵たちへ向ける。
 かつて、弱き人々を助けるため、魔術を志した魔術師たちがいた。人の身の限界を感じ、より魔術を活用できるように魔の力をその身に刻み込んだ者たちがいた。しかしそれによって死後、異端神に魂を奪われ魔術を生む体を傀儡にされた。救うために得た力を、彼女たちは猟兵たちへ向ける。
「……罪深き猟兵たち。私は傲慢な貴方がたを裁きに来ました。同じく人々を救うなどと傲慢な考えを持った魔術師たちの手に討たれて、死になさい」
 その言葉と同時に魔術師たちは猟兵たちへ一斉に襲い掛かった。
緋翠・華乃音
――そうか。彼女らにとっての救いが解放だとするのなら。


ユーベルコード"瑠璃の瞳"の範囲内で戦場を広く把握出来る場所(可能な限り遠距離且つ高所が望ましい)に気配を消して目立たぬように潜伏。
最初は敵を観察。そして情報収集をしつつ、敵の攻撃パターンや回避行動等の情報を収集・分析し、見切りを行う。
それに合わせて常に優れた視力・聴力・直感を生かして戦況を把握し、ひたすら狙撃に徹する。
なお、戦闘に有利になる技能は適宜使用。



 今回の依頼は罠だと聞いた。それならばこうなるだろうと、予測はできた。
 緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)はひとり、教会の鐘の傍に立っていた。村に唯一存在するこの教会は古く手入れも行き届いていないが、その高さだけは他の全てを圧倒する。ここならば存分に敵を狙える、と華乃音は思い、早々にここへやって来ていた。
(この場所からも見えないということは、黒幕はまだここには来ていないな)
 欺瞞や虚偽を許さぬ瑠璃の瞳。それをもってしても見つからないのならばそう考えるべきだろう。用心深いのか、舐められているのか、その理由はわからないが。
「俺が撃つべきは、あの魔術師たちか……」
 かつて人々を護ろうとした彼女たち。その成れの果てがこれだというのなら浮かばれない。
 元が魔術師だったゆえか、それとも屍を無理やり動かしているからか、彼女たちの動きは決して機敏ではない。負傷しようが反応しないその様子はあまりに鈍く、スナイパーにとってはいい的だ。問題は頭を吹き飛ばしたとして倒れるのかどうかということだが―――。
 せっかくの潜伏場所だ、存分に活かすとしよう。
 愛用の狙撃銃を構え、彼女たちのひとりへ狙いを定める。あとは引き金を引くだけ。彼女の頭を的確に狙いながら華乃音は不意に思う。
 生前多くを救った魔術師たち。では今の彼女たちにとっての救いとはなんなのだろうか。意思を持たない歩く屍となった彼女たちへ自分たちができることは……。
「――そうか。彼女らにとっての救いが解放だとするのなら」
 驚くほど軽く、引き金は引かれた。ひとりの頭から黒ずんだ血が噴き出し、倒れ伏す。頭を撃てば倒せるらしいとわかり、少しの安堵を覚えながら華乃音は照準をずらした。場所が特定される前に、ひとりでも多く、解放する。
 潜伏し、完全に姿を隠そうとも狙撃をし続ければ場所は特定されてしまうものだ。そうなればまた場所の移動に少しの時間を要する。この距離と瞳の優位性を活かすためにも、できるだけ多くの魔術師を撃ち抜きたい。
 次々と撃ち抜かれる魔術師たち。彼女たちの動きは鈍いが、だんだんと狙撃の脅威が倒れた魔術師たちの周囲へと伝わり、ついにそのうちのひとりが杖を構えた。……先ほど観察していた時にも見た構え。あの唇の動きはあの呪文か。
 撃ち放たれ飛来した銃弾にその魔術がかかり、じりじりと銃弾はその動きを止める。そのまままるでビデオが巻き戻されるように、銃弾が教会の方へと向かって飛び立った。
 ドンッと大きな音を立て銃弾が教会を直撃する。しかしあらかじめ攻撃の予兆を見切り把握していた華乃音はすでに教会を下っていた。静かに物陰へ隠れながら、彼は次の狙撃場所へと向かっていく……。できるだけ多くを、解放するために。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゼイル・パックルード
なんで傲慢とか人に向かって言うヤツってのは、こう傲慢なんだろうねぇ。
自分のこと客観視したことあんのかな、ああいうヤツって。

それはともかく、安心してかかってこいよ、傀儡ども。俺は生きてれば間違いなく世界や人の癌になるぜ。
そんなのわかる心なんて残っちゃいまいだろうが……お前らが最後に戦うのはれっきとした悪党さ。

鉄塊剣を持ってダッシュで敵に近づく。
攻撃に転じる前に、見切りや第六感を生かして周りの攻撃の気配を確認する。
魔術師が魔術師同士を撃つことを躊躇って何もしてこなければそのまま攻撃
躊躇わずに撃ってくれば、蹴りなどで目の前の敵の体勢を崩しつつ敵を盾にして、ジャンプやダッシュでその場を離脱。



「なんで傲慢とか人に向かって言うヤツってのは、こう傲慢なんだろうねぇ」
 自分のこと客観視したことあんのかな、とゼイル・パックルード(火裂・f02162)は笑う。その肌をピリピリと殺気が刺さるが気にしない。むしろ存分に敵意を向けられているようでなによりと、鼻を鳴らした。
「安心してかかってこいよ、傀儡ども。俺は生きてれば間違いなく世界や人の癌になるぜ」
 自分は悪人だ。その自覚は十二分にあるし、それに罪悪感を感じることもない。猟兵として世界を救ってこそいるが、実際のところ自分の欲を満たすのにちょうどいいからやっているだけだ。何かが狂えば間違いなく自分は―――
「……ま、そんなのわかる心なんて残っちゃいないか……。まあもしかしたら天から魂が見ているかもしれないし。よかったな、お前らが最後に戦うのはれっきとした悪党、さッ!」
 ダンッと音を立てて地面を蹴る。戦場を駆け抜け肉迫せんとするゼイルを迎え撃とうと魔術師たちは次々と杖を向けた。その先より次々と火球が生まれ、掲げられる。
「はっ、ちゃっちい炎だ」
 どうやら魔術師同士のフレンドリーファイアは気にする気がないらしい。容赦なく振り上げられた杖と火球は、周りごと巻き込んで爆発するだろう。そうなれば爆心地のゼイルは無事でいられない。そこまでわかっていてなお、ゼイルは笑みを浮かべた。揺れる炎のように静かに、暗く。
 目の前に迫った魔術師を容赦なく蹴り飛ばし、つんのめったその背中を踏みつける。彼女を踏み台にして宙を舞えば、直前までゼイルのいた場所は木っ端みじんに爆破されていた。
 爆風と熱気を背中に感じながら、紅竜の炎に比べたら屁でもないなと改めて思い直す。
 ザリ、と土を踏んだがいなや、すぐに次の魔術師の懐へ飛び込んだ。体を低くしたままかけこめば、魔術師同士の体が邪魔になり、彼女らの視界から一瞬隠れることができる。狙いが定まらないことで生まれるその隙をついて、ゼイルは鉄塊剣を存分に振るった。
「───死にな」
 殺気を剣に纏い、薙ぎ払うように一閃。刃に触れた脆い屍たちは一瞬で真っ二つに切り裂かれた。支えを失った上半身が、力を失った下半身が、ゴトゴトと地に落ちる。
「さァて次はどいつだ?」
 不敵に笑いながら、ゼイルは顎を上げる。まだまだ殺気は薄まらない。戦う気が尽きないのならば僥倖だ。ゼイルが膝をつくか彼女らが全滅するか、ふたつにひとつ。
 まだまだこの悪党は倒れないぞと、挑発するように鉄塊剣の血を払った。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
勝手に決めつけられるのって不愉快だな
全てを救えるなんて思っていない
思っていたら声の言うとおり、傲りだ

きっと生前は全てを救えるなんて思っていなかっただろう
オブリビオンは元の存在とは別、声の主に苛立っても元の人物には苛立たない
彼はそこもわかってないのかな
そもそもこの屍のどこが人々を救いたかった魔術師なのさ

真の姿発現(特徴は真の姿イラスト参照願います)
【青風装甲】も発動、一秒でも早く屍をあるべき状態に戻したい

基本は空に居て、敵の群れに突撃し黒剣で叩き斬ったら空に離脱
こうすれば敵の攻撃は空に向けられることが多くなる筈、それを見切って躱す
地上にいるときに攻撃されたら他の敵を盾にして極力受けないようにする



「はぁ……勝手に決めつけられるのって不愉快だな」
 声の主に聞かせるでもなく、サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)はそうぼやいた。それほど傲慢でお気楽な奴だと捉えられていたとは。心外だ。すべてを救える全てを救えるなんて思っていない。そう思っていたのならば、確かにそれは傲りだろう。
「お前らだってきっと、生前に全てを救えるなんて思っていなかっただろう?」
 サンディは魔術師たちに、否、魔術師の姿をしたオブリビオンたちにそう語りかける。一度死んだ彼女たちは言ってしまえば、とっくに消費された過去だ。オブリビオンは元となった者とは完全に別の存在。だから彼女たちをけしかけるのは猟兵たちに対するあてつけに他ならない。
「ま、生前と同一視しちゃってるのかもしれないけどね。でも、この屍のどこが人々を救いたかった魔術師なのさ」
 暗夜の剣を大地に突き刺し、サンディは大きく息を吸った。
 全身を覆う漆黒の鎧に炎のような朱が通り、その本性を露出させる。角が大きく伸びた鎧と兜はその攻撃性を表すように、鈍く鋭く光を弾いた。
 バサリ、と広げられた翼は竜がごとく。鎧と同じ鈍い光を持つ竜の尾がぶるりとその身を震わせる。金の燐光が茶髪の間からちらつき、普段のサンディからは捉えることのできない冷淡な色を見せていた。
「とっとと終わらせよう―――屍は土の下、過去は骸の海に還ることだね」
 禍々しい“真の姿”を発現させた彼を見て、魔術師たちはいっせいに杖を彼へと向けた。焦ることなくサンディが暗夜の剣を引き抜けば、魔術師たちはその杖から破壊弾を生み出す。
 手に馴染む異形と化した剣を握りサンディはニヤリと笑った。……あたるものか、そんなもの。
 破壊弾が放たれる! 同時にサンディの周囲から瑠璃色の旋風を放ち全身を覆った。赤に青。激しいコントラストを纏いながら、サンディは飛び立つ。はるか空中より魔術師たちを見下ろして剣を構えた。
「魔術師たちも黒幕も、ひとりだって逃がさないからね」
 最大スピードで地上へと襲来しながら、サンディはせせら笑う。さてどちらが獲物か。鈍重な破壊弾などで自分を捉えさせてやるつもりはない。地へ降り手近な魔術師を斬り、また空へと舞い上がる。
 一秒でも早く屍をあるべき姿に。禍々しい異形の姿とは裏腹なことを腹の底で思いつつ、サンディは黒剣を振り上げていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

終夜・還
んだよ、それ単に自分が出来なかった事への妬みじゃん

守れなくて腐ってる暇あったら俺は次を溢さないようにってするんだけどなァ…
ちな、取り溢して来た物なんて数え切れないよ


UCで数多の死霊を召喚
俺を狙った暗号魔力の渦に対してぶつけ相殺
何度でも、全てをだ。

その間【情報収集】し、挙動を【見切り】、次の挙動で魔術師へ【先制攻撃】を【二回攻撃】として使い、二度目は【吹き飛ばし】をする勢いで

【ダッシュ】で一気に近付き【暗殺】の要領で首に刃を届かせよう

嗚呼、お前は誰も救えない、だっけ?そうなると当然村人狙う可能性もあるな

ま、させねぇけど

【存在感】や【殺気】、【挑発】で俺に意識を向けて村人に手なんて出させねぇからな



「んだよ、単に自分が出来なかった事への妬みかよ」
 やれやれ、と言わんばかりに終夜・還(終の狼・f02594)はため息をついた。バカバカしい、そんなことを妬んでいる暇があったら次を取りこぼさないよう努力するべきだろう。数え切れないほど取りこぼしたものがあるからこそ、還はそう考えるのだ。
「ま……それができないからオブリビオンになり果てたんだろうなぁ、黒幕さん?」
 返答はない。そりゃそうか、と還は記憶の書を開いた。
「さて……おいで、冥府の死霊ども。愉しい楽しい、現世の時間だ。暫しの刻、愉しく踊り狂うと良い」
 冥府から、骸の海から呼ばれた死霊たちは、その意思はどうであれ存在自体が生者への毒である。それは陰欝な瘴気、穢れとなって現世へもたらされ、その場に起きる事象を阻害するのだ。
 多くの死霊たちを召喚し、己の舞台を作り上げた黒狼は口端を釣り上げた。そしてその右手を魔術師たちに差し出し―――ちょい、と指を曲げる。来いよ、相手になってやる。言葉にもしなかった挑発を、知性がないながらに屍たちはしっかりと受け取った。
「ア、アアアア゛ッッ!!」
 甲高く、そして濁った悲鳴が戦場に響き渡る。魔術師たちは自ら生み出した禍々しい瘴気を纏いながら苦しみ悶えていた。ある者は頬をひっかき、ある者は髪を掻きむしって……その代償に力を得る。
「おっと、とんでもねーなァ」
 狂乱した彼女たちから放たれた暗号魔力の渦が、死霊たちの穢れによって相殺された。喰らった死霊が唸り声をあげながら崩壊していくあたり、当たれば無事では済まないことがよくわかる。なら穢れが残っているうちに叩かねばならない。
「満足いくまで撃ってイイよ。俺は受け止めてやるから。何度でも、全てをだ」
 瘴気の効果か痛みで悶える魔術師たちの挙動は読みやすい。地を駆け肉迫した還はその拳を振るい、素早く蹴りを入れる。次に襲い掛かってきた魔術師は、腹に重い一撃をいれて吹き飛ばした。
 チャキ、と懐からナイフを抜く。漆黒の石、オニキスでできたナイフは持ち主の望んだ属性を宿す。邪気を祓う鉱石は黒狼の手の中できらめいて、敵の首筋を掻き斬った。
「オイオイそんなものか? もっと一斉に来いよ、楽しもうぜ?」
 あっという間に魔術師たちの一部を崩し、還は声高々に笑う。魔術師たちの殺気が村人たちでなくこちらに向くように、あえて存在を際立たせて。
「……お前は誰も救えない、だっけ?」
 ま、させねぇけど。そう呟いて、還はまたそのナイフを構えなおした。

成功 🔵​🔵​🔴​

西条・霧華
「その想いを、これ以上穢させはしません。」

それが契約であり力の代償だったとしても!
人々を護る為にそうなる事を許容した覚悟を、想いを利用なんてさせません
私は私の【覚悟】を以て、あなた方を利用する不浄を斬ります

【残像】を纏って眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『幻想華』
敵の攻撃は【見切り】、【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止め、返す刀で【カウンター】を狙います

彼女達の姿は猟兵にとって、身につまされる教訓であるのかもしれません
私達がそうなる可能性を否定できませんから…
それでも、彼女達の生前抱いた想いや覚悟を否定なんてできません
…それだけは護ってみせます



 かつて無力な人々のために戦った魔術師たち。恐らく彼女たちは護られた村人たちによって死後は丁寧に葬られたのだろう。一度地の下へ埋められ、弔われたその体はところどころが朽ちていて、それでもなおその両の足で立っている。
 その身にかつての志が失われようとも、人々を護る意思が消え失せたとしても。彼女たちは死後の己の体を犠牲に力を求めたのだ。その生き方は気高く、そして尊い。
「その想いを、姿を、これ以上穢させはしません」
 西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)は静かに、それでいて強い覚悟を込めて、そうつぶやいた。
 彼女たちにとって、“そう”なることが契約で、力の代償だったのだろう。その決意を否定する気はないし、むしろ同調すら覚えている。
 だからこそ契約を許容したその覚悟を、想いを、利用するなんて許せない。……自分にできるのは彼女たちを倒すことだけだ。刀を振るうことで護れる想いがあるのならば、霧華は喜んでその力を振るうだろう。霧華自身の覚悟を以って、魔術師たちを利用する不浄を斬るために。
 腰を低く落とし籠釣瓶妙法村正へ手を添える。居合の構えをとりながらまっすぐに霧華は魔術師たちを見据えた。攻勢へ出ようとする霧華の様子を捉えたか、一人の魔術師が杖を掲げる―――その先に生まれるは、カチカチと音を鳴らす逆回りの秒針。
 魔術が放たれるより早く、霧華は跳んだ。まばたきをしたその一瞬の間に、跳ねる馬のごとく距離を詰め刀を抜く。魔法を放たせる前にその腕ごと斬り捨てんと居合を打ち放った。
 逆袈裟に斬られた魔術師は悲鳴にならぬうなり声をあげながらその腕ごと杖を失った。しかし同時にその魔術を完成させ、分離した杖の先からそれを行使する。己に向かう魔術の光を霧華は往なすように刀を振るい、受け止めた。
「なッ!」
 バチンッと電気が弾けるような音が刀と魔術の間から響き、霧華は後方へと吹き飛ばされた。霧華が先ほど飛び込んだ分だけ彼女は引き戻され、想像のつかない動きに地を転がる。
 事象転回。その魔術は触れたものの事象を巻き戻す。先に斬り捨てたことで倒された魔術師の体こそ巻き戻されなかったが、魔術に触れた霧華は幻想華を巻き戻され、跳躍した分だけ後ろへ弾き戻された。十分に巻き戻されたことで魔術の効力は失われたが、超常現象によって引きずられた霧華の体には擦り傷と痣ができてしまった。
「……っ」
 だが継戦には問題のないレベルだ。猟兵を、守護者を続けているうちはこのような傷が絶えることがない。即座に立ち上がった霧華は斬った魔術師が起き上がっていないことを視認して、小さく息をついた。
「……彼女たちの姿は私たちにとって、教訓であるのかもしれませんね……」
 かつて人々を救わんとした彼女たちの亡骸。それはもしかしたら、今世界や人々のため戦う猟兵たちの明日の姿かもしれない。戦いに身を投じる以上、こうなる可能性を否定しきることはできないのだから。
「それでも、私は………」
 悩んでいる時間はない。ここはまだ戦場、彼女たちを操る黒幕が未だ倒されていないのだから。
 チン、と籠釣瓶妙法村正を鞘に戻し霧華は周囲を見渡した。杖を構える屍たちはまだまだいる。次は油断しない。胸中で小さく呟き、霧華はまた地を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔴​

宜野座・聖
傲慢で結構! 誰かを『救いたい』という意志は確かに尊いものなのです!
救済が罪であるというのならば、私は喜んで罪人になりましょう!
ですが罰を受けるつもりはございません! なぜならば――。
目の前に、救わねばならないものがいるからです。

【指定UC】を発動します。
ユーベルコードを視覚されるよりも前に、私の周囲の亡骸達を屠りましょう。『ダークネスクローク』の力を借り受けて彼らの首の骨を折り、刹那の内に命を落とすように心がけましょうか。

どうかご安心を。
貴方達が為せなかった救いは、私がすべて請け負いましょう。
なぜなら私は『救済者』!聖職者ではありませんが、人を救う『聖人』なのですから。



「傲慢で結構!  しかしそれでも、誰かを『救いたい』という意志は確かに尊いものなのです!」
 人々を救う。それを傲慢というのならば甘んじてその言葉を受けよう。宜野座・聖(不快なる聖狂人・f21682)はそう高らかに告げた。
 傲慢と言われようが罪と罵られようが、聖は己の役割を貫くのみ。聖人たれ、救済者たれ―――その言葉のままに。
「救済が罪であるというのならば、私は喜んで罪人になりましょう! ですが罰を受けるつもりはございません!  なぜならば――」
 ふわ、と聖の背後で外套が広がった。知性を持つそれは主の体を包み込むようにして纏わりつき、その呪いの力で存分に強化する……主の望むがまま、その力を貸すのだ。
 先ほど守り抜いた村人たちはもうとっくに逃げきれているだろう。始めよりオブリビオンたちの目的は猟兵なのだ。聖以外にも、目立つように立ち回った猟兵が多かったことも相まって、彼女らの思考はほとんど猟兵たちのことで占められているのだろう。
 黒幕に操られ、猟兵たちに杖を向ける魔術師たちの姿は哀れそのものだ。安らかな眠りも与えられず、生前の契約によって好きに利用されるその体。そう、次に救われるべきは―――。
「目の前に、救わねばならないものがいるからです」
 パチン、と指を鳴らした音が戦場で少し、場違いに響いた。瞬間、聖の姿が掻き消え、魔術師たちの視界から失せる。魔術師たちが聖を探して視線を巡らせる前に、聖は行動を成していた。
 ゴキンッと鈍い音を立てて、魔術師の首の骨が叩き折られる。一度死を通り、朽ちつつあるその体は、普通のひとよりも格段に脆かった。
「どうかご安心を。貴方達が為せなかった救いは、私がすべて請け負いましょう」
 志半ばで倒れた魔術師たちの成れの果て。その無残な姿を一秒でも早く、痛みさえ感じぬうちに葬り去る。それが魔術師たちへの“救済”であった。
 彼女たちが果たせなかった救いは全て自分が受け継ごう。元々聖は『救済者』なのだ。聖職者でこそないが、『聖人』なのである。
 全ての人々に幸福を。そして全ての不幸に終焉を。自分は、『救済者』は、それをもたらす者である!
「今はただ、安らかに……。さて……」
 首を折られ、地に伏した魔術師たちに祈りを捧げ、聖は立ち上がった。周囲をぐるりと見渡しその気配を探す。
 さあ、猟兵を裁かんとする不届き者はどこにいる。罠を喰い破られた以上、黒幕がでてこないはずがない。
 その左目をぎょろりと回して聖はそれを探した。この世界にはびこる不幸のひとつを、排除するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『傲慢魔人プライディア』

POW   :    あなたは誰を殺しますか?
【今にも死にそうな子供】【戦えば家族が救えると信じている青年】【死に場所を求めている老人】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    あなたは誰も救えない。
【洗脳した戦う力のない人々を盾にする事で】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    救うべき者達を殺して世界を救って下さい。
【猟兵を憎むよう洗脳された戦う力のない人々】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は須藤・莉亜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ああ……そのまま屍の手で朽ちていればよかったものを」
 最後の魔術師が倒れ、罠を喰い破った猟兵たちの耳へその声が届く。憐れむようで、蔑むようで、また怒りさえも湛えて……その声の主は戦場へ現れた。白き衣に十字架を背負い、かつては神に仕えた名残を持って。
 オブリビオン、傲慢魔人プライディアは現れた。
「そうすれば、ここで苦しまずに済んだでしょうに。仕方ありません。これがあなたがたの選択です」
 ある猟兵が、プライディアのさらに後方より、複数の足音を聞きつけた。増援か、と緊張が走った猟兵たちの瞳には想像を絶した光景が映りこむ。
 子ども、青年、老人―――オブリビオンには到底見えない人々が、白い顔をしてこちらへ歩いてくる。プライディアに付き従うように歩む彼らの顔は蒼白で、瞳は酷く濁っていた。しかし猟兵たちは直感する。彼らはまだ生きている。恐らくこことは違う村の村人たちはプライディアの襲撃に遭い、生き残りは全て洗脳されてしまったのだと。
「さあ、選びなさい―――世界のために人々を殺すか、ここで無残に殺されるか!」
 村人たちはプライディアの背後で足を止めた。魔人の一言で彼らは脅威となって猟兵たちに襲い掛かるだろう。
 さあ、猟兵たちよ、選択せよ。魔人の言う通り世界のために彼らを殺すか、彼らの凶刃の元倒れるか、それとも―――

 ―――三つめの選択肢を、自ら切り開くか。
終夜・還
俺は誰に憎まれようと別に構わねぇよ

UCを洗脳された村人の"足元"や"周囲"に放って無力化を狙おう
俺への恨み言は俺の背負った恨み辛みの中で言っててネ

ま、あんま同郷の人間を無駄に殺したくねぇんだ
あとこうも人質取られてるとちょーっとだけカチンと来るよねぇ…

それに俺、愛する人が居るから大人しく殺されてやる訳には行かねぇの
5、6年前なら自分が……って考えたんだろうけどそれだと悲しむ奴が居るからさ

で、お前が出来る事って弱い者の洗脳だけ?竜や魔術師や村人をけしかけてなんになるの?バーカ、ンなの強者に効くかよ(挑発)

黒幕はダメージを負わせる系技能フルに使って沈めてやる
その腐った様なツラブッ潰してやっからな



 戦場に転がる魔術師たちの屍。二度目の死を迎え、プライディアの呪縛から逃れた彼女たちはもうピクリとも動かない。とっくに死した彼女たちを倒すことは彼女たちを“救う”ことと捉えることもできた。だが、今の状況は……
「こうも人質取られてるとちょーっとだけカチンと来るよねぇ……」
 はあ、と大袈裟に肩をすくめる終夜・還(終の狼・f02594)。顔色こそ悪いがふらふらと歩く村人たちからは死臭がしない。死霊術士である還からしたら近寄って確かめるまでもなくそれは明らかで、だからこそやりにくい。
「どうしました、貴方がたは世界を救うのでしょう? ならば早く……救うべき者達を殺して世界を救って下さい。それとも有象無象から憎まれるのが恐ろしいですか」
 鼻を鳴らしてプライディアは還へ微笑んだ。その勝ち誇ったような笑みに、わかってねぇな、と還は口を開く。
「俺は誰に憎まれようと別に構わねぇよ。今更ひとつやふたつ、変わらねぇ。あんま同郷の人間を無駄に殺したくねぇんだ」
 いい思い出が多いのか、と問われたら還は答えないだろう。だがそれで彼らを見捨てる気はさらさらない。
 還の言葉に呼応するように、記憶の書から死霊たちが召喚される。禍々しい空気を纏った彼らを連れる還と洗脳した村人たちを連れるプライディア。対となった二人。だが還にはプライディアにはない勝つための強い動機があった。
「それに俺、愛する人が居るから大人しく殺されてやる訳には行かねぇの」
 自分が依頼に参加する姿を、複雑な表情で見送った黒髪の恋人。還が傷つくことをなにより悲しむ彼女のためにも無事に生還しなければならない。五、六年前ならばもしかしたら、自分を犠牲にする選択肢を選んでいたかもしれないが。
 植え付けられた憎しみの感情を刃に乗せて、村人たちが走り出す。暴徒と化した彼らは洗脳によって恐れを失っており、農具を、包丁を、なりふり構わず振り回していた。そんな彼らに死霊たちは舞い踊りながら向かっていって。彼らに触れる前に、まるで幻だったかのように掻き消えた。
「あ、れ…………?」
 目の前の障害が消えたことでより勢いを増して還に襲い掛かろうとしていた村人たちはその一歩で足を止めた。その表情から憎しみの色は失せており、憑き物が落ちたように呆けている。
「なっ!?」
「で、お前が出来る事って弱い者の洗脳だけ?」
 洗脳を解かれたことにプライディアが気を取られたその一瞬。還は一直線に地を駆け魔人の元へ肉迫していた。握りしめた拳がプライディアの顔面を捉える。
「竜や魔術師や村人をけしかけてなんになるの? バーカ、ンなの強者に効くかよ」
 あえて自分たちを強者だと、魔人の能力をくだらないと還は笑った。どうして洗脳が解けたのか、プライディアに分析されないために。
「ぐッ、き、さまッ」
「自分ひとりじゃなにもできないってか?」
 二発目の拳は一発目よりも腰を入れて。全力で振りかぶりながら怪力のままにその拳を顔面に叩き込んだ。一発目の不意打ちによろけていたプライディアでは全く太刀打ちできず。
「ゴフッ!」
 口の中を切ったか、血を吐き出してプライディアは後ろへ跳んだ。吹き飛んだというよりは回避のためだったようだが、ダメージはかなり入ったことだろう。
 死霊の穢れが生者を救うとはねぇ、と還は口端を釣り上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゼイル・パックルード
───なるほど。確かにお前じゃ全てを救うなんて無理だったろうな
できなくて、諦めた自分を認めたくないのか?
絶対無理、やるヤツは傲慢……か?やれてしまうヤツがいると自分を否定されてる気分になるのかい?
今は周りを利用してばっかだものな
そんなヤツにはなにも成せない。救えないのはお前の方だよ

得物はまず鉄塊剣で、ダッシュで敵に近づいて行く。
UCを、なぎ払いと吹き飛ばしをしながら使って鉄塊剣でまとめて吹き飛ばす。"なるべく"住民は殺さないように。
生死は気にしないが、思い通りになるのも腹が立つし

邪魔がなくなったら残りの連撃を魔人に叩き込む。
新しい壁に防がれないよう、残像を残して縦横無尽に動き、ナイフで切り刻む



 口元を汚した血を拭いながら、忌々しそうに猟兵たちを見下すプライディア。その表情には「まだ抵抗するか」とでも言いたげな様子がありありと浮かんでいた。
「全てを救う、など傲慢かつ実現のできない願いを持つだけ無駄です。なんと救われない方々なのか」
 その言葉や表情には、猟兵たちを憐れみ蔑んでいることがありありと浮かんでいる。そんなプライディアの前にある男が立った。
「───なるほど。確かにお前じゃ全てを救うなんて無理だったろうな」
 不敵な笑みを浮かべたままそうつぶやいたのはゼイル・パックルード(火裂・f02162)だ。その得物を地面に突き刺し、腕を組む。逃げも隠れもしない、とでもいうように。
「できなくて、諦めた自分を認めたくないのか? やれてしまうヤツがいると自分を否定されてる気分になるのかい?」
 プライディアを守るように、村人たちが二人の間に立ち入る。ふらふらとしたままとはいえ大勢で壁になるように立たれてしまえば彼らを避けてプライディアを斬るのは難しい。―――どうせ、なりふり構わず斬りに行っても、あいつらに庇わせるのだろうな、とゼイルは冷静に分析していた。
「何を戯言を……」
「違うか? 現に今は周りを利用してばかりだろ。そんなヤツにはなにも成せない。救えないのはお前の方だよ」
 突き刺した鉄塊剣の柄を握る。攻撃の意思を見せたゼイルを見て、プライディアはせせら笑った。所詮は虚勢、結局のところ村人たちを害さずには攻撃は通らない。どれだけ偉そうな言葉を吐いてもその前提は覆らないのだ。
「したり顔しているところ悪ィが」
 無骨な巨大剣を易々と持ち上げ、ゼイルは走り出す。普段は片手で持つそれを両手で握り、力を込めて踏み込んだ。
「俺は善人でも英雄でもねぇ。どちらかというと悪党なんでね」
 胆力をこめた薙ぎ払いが目の前の村人たちを一掃する。刃をむけることなく掃われた鉄塊剣は、彼らを切り裂くことなく吹き飛ばした。ゴッ、という重い手ごたえが次々と腕へ伝わる。
 悲鳴もあげられずに村人たちはほうぼうに散らされた。大地に転がされ唸り声をあげる者もいればそのまま気絶したのかピクリとも動かない者もいる。なるべく殺さないよう、加減はしたがそれでも怪我は免れないだろう。
 依然、炎の光によって古傷が輝く。素早くナイフに持ち替えたゼイルは新しい壁が生み出される前に、めった刺しにそれを振るった。今度はきちんと刃を立てて、防がれることのないよう縦横無尽に駆け巡りながらその神父服を赤に染める。
「っ、ははッ、世界を救うためなら手段は選びませんかッ!」
「残念だったな、こちとら世界を救うために刃を振るってはいないんでねッ!」
 心臓を狙った最後の一撃はすんでで躱されてしまった。光を失うのを感じながらゼイルは後方へ跳ぶ。返り血を拭ったその笑顔は、罪悪感や後悔とはかけ離れた喜々としたものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋翠・華乃音
……猟兵になる前の俺だったら彼等ごと皆殺しにしてたかも知れないな。

さっきのように殺す事でしか救えないのなら仕方無いが、今回はそうでも無いだろう? 為すべき事は明確だ。故に俺は迷わない。


最も重視するのは先読みと見切り。
スナイパーとして培った観察眼、生まれながらにしての異能――瑠璃の瞳。
罪無き者達の行動を全てを予測、回避してオブリビオンに接近。
限界まで気配や物音を消して不意討ちの一撃を喰らわせる。
建物や地形を利用して身を隠しつつ素早く立ち回り、ヒット&アウェイの戦法を心掛ける。
UCは適宜使用。

……君の背負った十字架は単なる飾りみたいだな。



 赤く染まった神父服。プライディアが背負う十字架を一瞥して、緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は物陰から狙撃銃を向けた。隠密行動はスナイパーの基本。皆に視線が向かっているうちに撃ち殺せればと思ったが……。
「……だめか」
 その瞳に映る先は、あまりにも障害が多かった。生きる障害、操られた村人たち。彼らがプライディアの傍に侍っているうちは不意打ちも通らない。もちろん彼らごと撃ち抜くことはできないわけではないが―――
「……猟兵になる前の俺だったら彼等ごと皆殺しにしてたかも知れないな」
 今はもう、その手は取らないと決めている。
 先ほどの戦い、魔術師たちのように殺すことでしか救えないのだとしたら、華乃音は迷いなく引き金を引いていただろう。彼女らはすでに死者であったのだから、迷う理由も必要もない。ただ操られた哀れな姿から解放するまで。
 だが、今回はそうではない。彼ら村人たちは生きていて、まだやり直せる命だ。彼らをオブリビオンと心中させる選択肢はない。そうわかっていれば、為すべき事は明確だ。故に、華乃音は迷わない。
 瑠璃の瞳が輝く。大切なのは先読みと見切りだ。スナイパーとして培った経験と生まれながらの能力をフルに活かし、村人たちの動きを読む―――盾にされた罪なき人々に気づかれず、一切の傷もつけずプライディアを倒す。それが華乃音の取った第三の選択肢だった。
 踏み出した足音の一切が無に。地形から死角を読み、暗視を活かして暗闇に溶け込む。村人たちの視界の動きを見て、彼らすべての視線がたまたま通らない場所……そこを突いて、華乃音は踏み出した。
 理不尽に、不条理に、そして一切無条件に。村人たちの体の合間をすり抜け華乃音はプライディアへと近づいていく。彼らの死角に隠れ殺気と気配を内に隠して……。
 ―――華乃音はプライディアの背後へと立った。
「…………ッ!!」
 華乃音のナイフが首に突き刺さる直前に、プライディアはその殺気に気が付いたらしい。咄嗟に振り返ろうとしたことで狙いはズレたが、その黒艶の刀身はプライディアの肩の肉を裂いた。深々と突き刺さったそれを引き抜いて、華乃音は後ろへ跳ぶ。
「いつの間に……ッ」
「……君の、背負った十字架は」
 単なる飾りみたいだな。
 空中で素早く持ち替えた白銀の拳銃から銃弾が放たれた。一撃で殺すのは無理と判断し放たれたその銃弾は、プライディアの胴に三弾命中して命を削った。すぐに村人で見えなくなった魔人から距離を取り、華乃音はまた姿を隠す。
 今は殺し切れずとも。
 次の不意打ちの機会を伺いながら、華乃音は暗闇を駆け抜けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

西条・霧華
「この手で誰かを救えるなんて思っていません。私は唯、守護者として護るだけです。」

<真の姿を開放>し右腕と武器に蒼炎を纏います

【視力】で盾にされた方々と敵を【見切り】、最も相手が油断している方向から肉迫
また人質に対しては不殺を貫き、【破魔】の力で洗脳の解除を試みます

【残像】を纏って眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『幻想華』
敵の攻撃は【見切り】、【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止め、返す刀で【カウンター】を狙います

私には、誰かの救いになれる力なんてありません
それでも私は、守護者として「皆が幸せな世界」を護りたいと思います
それが私の誓いと【覚悟】です



「っ、愚かな方々ですッ! どれほどきれいごとを語ろうが現実は見えているでしょう! 人々は救われず、この世界は闇に覆われたまま。あなたたちは誰も救えない!」
「……この手で誰かを救えるなんて思っていません。私は唯、守護者として護るだけです」
 手傷を負ってなお吠えるプライディアに、西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)は静かに答えた。その目に覚悟の光を宿し、彼女は魔人の目前に立つ。
 霧華の手に握られた刀を一瞥しプライディアは眉を寄せた。彼を守るように村人たちは壁となり、二人の間に立ちはだかる。
「その刀で私を斬り世界を救いますか? 守護者が、護るべき人々を犠牲にして?」
 愚弄するようなプライディアの言葉に、霧華は一度目を閉じる。
 彼女が手にするのは殺人剣。人を殺すためだけに研ぎ澄まされた技だ。……矛盾なのはわかっている。だがそれでも霧華は「守護者」でありたいのだ。それが己の心を支えているのだから。
「私には、誰かの救いになれる力なんてありません」
 ボワ、とその右腕へほのかに光が宿る。ゆらりゆらりと揺れるごとに光を増すそれは、右腕に纏った蒼炎だ。まるで守護者たる覚悟が形になったように、その炎は霧華の腕を、刀を包み込む。
「それでも私は、守護者として『皆が幸せな世界』を護りたい」
 籠釣瓶妙法村正が蒼炎を得て輝きを宿した。刀身に宿る輝きは鞘から漏れ出し、それをみたプライディアは思わず息を飲む。
 居合の構えを持ち、霧華は地を蹴った。プライディアを守らんとする村人たちの間を縫い、魔人へと肉迫する。洗脳を解くことができないかと探ったが、それは霧華では難しいようだ。ならば残像で惑わすまで。村人に対して、霧華は不殺を誓ったのだから。
「それを傲慢だというのならばそう言えばいい。それでも私はその願いを貫きます!」
 幻惑され残像の霧華を捕えんと村人たちは明後日の方向へ離れていく。その隙をついて霧華は一気にプライディアとの距離を詰めた。そしてようやく、その手の籠釣瓶妙法村正を抜き放つ!
「―――それが私の誓いと、覚悟です」
 霧華の居合刀がプライディアを斬りあげる。逆袈裟に斬りつけられた魔人の体からは鮮血が噴き出し、霧華を汚した。村人たちが完全にこちらへ気が付いてしまう前に、霧華は後退し距離を取る。
 ……蒼い炎はゆらゆらと震える。まるで彼女の想いに答えるように。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラジュラム・ナグ
おじさん登場だ、盛り上がってるか?
折角だ、お前さんの命も住民の命も全て「奪って」やろう。
おじさんは欲張りなんだ。

大剣を左手に持ち替え、右手に装備アイテム<全てを奪う闇>を剣の形状で握るぞ。
大剣は持ち前の[怪力]で[武器受け]用にも活用だ。
UC《強奪時間》を発動させて状況開始だ、大いに暴れてやろうか!

村人さんからは闇で洗脳状態を奪えれば重畳、駄目そうなら移動力を奪い無力化させようか。
この者達の命をお前さんの手中から奪ってやろう。
・・・そして必ず生かしてみせる!

仕上げの魔人さんは大剣を振るう遠心力を活かした連撃で[生命力吸収]しつつ一気に畳みかけようか!
お前さんの命も頂戴させて頂くぞ!



「おうおう、盛り上がってるな?」
 おじさん登場だ、とラジュラム・ナグ(略奪の黒獅子・f20315)は大剣を握りプライディアの前へ現れた。ずしりと重みのある大剣を左手で悠々と担ぎ、プライディアに対し不敵な笑みを向ける。その右手には輝ける“全てを奪う闇”がふわりと浮かんでおり、みるみるうちに形を剣へと変えていった。
「支配者、なんて面だなぁ、兄ちゃん。折角だ、お前さんの命も住民の命も全て『奪って』やろう」
「ほう……罪なき人々ごと私の命を奪って世界を救うと?」
「おじさんは欲張りなんでね、お前さんの命だけじゃあ足りねぇな」
「それならば、どうぞ存分に?」
 嘲笑うように口端を吊り上げたプライディアの背後から三つの人影が現れた。酷くやつれた三人の村人は、よろよろとラジュラムの前へそのおぼつかない足を進める。
 ひとりは少年。酷くやせ細り骨と皮しかないような手で小さなナイフを握っている。その目はうつろでなにかを小さくブツブツとつぶやき続けているようだ。
 次は青年。錆び付いて欠けた剣を握り、憎悪の光を瞳に宿している。いたるところに膿んだ傷があり、お前を倒せば、殺せば、とラジュラムへ殺気を向け続けていた。
 最後は老人。その歩みは最も不安定で立っているのもやっとなのだろう。震える足は杖で支えられておりもう楽になりたいのだと弱弱しく笑った。
「さあどうぞ、あなたは誰を殺しますか?」
 さあ殺せ、できなくば死ね。まるでそう言うようにプライディアはラジュラムへ笑いかけた。その言葉を肯定するように三人はラジュラムへふらふらと、しかし確実に迫る。
「言っただろう? おじさんは欲張りなんだ。全部だ。この者達の命をお前さんの手中から全て、奪ってやろう」
 そう、言うが早いか、ラジュラムは剣の形に変わった闇を握り、存分に振るった。近寄ってくるのならば“奪う”のはたやすい。プライディアが支配する彼らを奪ってやろう。
 少年からはナイフと洗脳を。極限まで追い詰められ無理やり戦場へ連れ出されていた少年はそこで崩れるように眠った。
 青年からは妄信と殺意を。ラジュラムを倒したところで母親が救われるとは限らないのではないか、という疑惑を得て、彼は立ち止まった。
 老人からは死への渇望とその苦痛を。座り込んだ彼は「死にたくない」と呟いて涙を流した。
 奪われた彼らは戦意を失い、プライディアからの支配から放たれた。そんな彼らの横をラジュラムは駆け抜ける!
「そして必ず、生かしてみせる!」
 大きく振るった大剣はその重量に遠心力を乗せて、プライディアへ襲い掛かった。怪力に任せた一撃は鉄の十字架で受け止められこそしたが衝撃を彼へと叩き込む。勢いを殺すことができなかったプライディアはあっけなく後方へと吹き飛ばされた。
「まずは一撃。さぁて、お前さんの命も頂戴させてもらうぞ!」
 ガハハと略奪者は笑う。その背後に座り込む村人たちは、奪われることで確かに救われたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
俺たちが選択したなんて、まるで俺たちが悪いみたいじゃないか
人々を操ってるお前が悪い
事前に人質を見せて屍に倒されれば彼らを悪用しないと言っていたわけでもない
みっともないよ?

真の姿のまま戦闘継続
村人からの攻撃は自前の全身鎧とオーラで軽減
敵への進路上にいる村人へ朔を投擲、ワイヤーで絡めて転倒させる
別の村人で穴埋めされるより早く飛び敵に接敵を試みる

それが間に合わないなら仕方ない
黒騎士の、異形の怪物の力を使う(極力使いたくない)
朔も同化している武具のひとつ
敵に向け投擲、敵に到達したらフックの形状を大口に変化させて喰らいついてワイヤーを引き接敵

接敵したら攻撃力重視の解放・宵をありったけの力を込めて叩き込む



「俺たちが選択したなんて、まるで俺たちが悪いみたいじゃないか」
「……っ、その、通りでしょう?」
「どう考えても人々を操ってるお前が悪い。事前に人質を見せて屍に殺されろ、とでも言ったならともかくさ」
 空より竜人が来たる。否、彼は竜人に似た姿と鎧を纏う、サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)だ。普段の姿からは想像もできないほどその纏うオーラは鋭く、金の瞳には侮蔑の色が宿っている。
「みっともないよ?」
 鼻で笑ったサンディの挑発に、プライディアは歯を軋ませる。悠々と空から地へと降り立つサンディと、瓦礫からやっと這い出して血だらけのプライディア。この差がなんと惨めなことか。そしてサンディはこの状況の差を明らかにせせら笑っていた。なにせ彼の趣味はこういう高慢な敵を屈辱に染めることなのだから。
「ふ、ふふ……ならば、ならば今度こそ選ばせて差し上げましょうか、そんなに望むのならば!」
 そのプライディアの言葉と同時に三つの影がサンディの前へ立ちはだかった。
 小さな人形を抱えた少女。刃こぼれした斧を構える女性。うつろなまま神へ祈る老婆。プライディアをかばうように立つ彼女たち。サンディが歩み寄ることを躊躇えば、一歩、また一歩と近づいてくる。
「望むならば、なんてまた君は俺らのせいにするんだね。本当、自分じゃなにもできないらしい」
 確かに、共に進む三人のうち誰かを排除すればプライディアへ攻撃は届くだろう。全員を殺す必要は別になく、だからこそ選べと魔人はのたまうのだ。……これにしたって、一人を選んだところでそのまま素直に攻撃を受けてくれるとは限らない。普通に考えて、人質を入れ替えてより村人を殺すよう仕向けてくるだろう。
 そうは言っても、このまま彼女たちに捕まれば動きを封じられるのは目に見えているのだ。ならば、少し強引にいかせてもらおう。
「ああああッッ!!」
 声を上げて女性が襲い掛かってくる。斧を振りかざした動きは鋭かったものの、猟兵からしたら止まっているようなものだ。一般人が目を血走らせて襲い掛かったところで猟兵にはかなわない。
 サンディは女性の斧を見切り、受け止める。どうにかして押し切ろうと彼女は力を乗せるが斧はサンディの鎧に傷ひとつ付けられない。その間に、サンディは朔を少女へ投げつけた。
 斧を受け止め動かなかったサンディに近寄ってきていた少女はワイヤーに足を取られてあっけなく転んだ。その瞬間サンディは受け止めていた力を抜き、女性の斧を受け流す。……唐突に反動を失った女性は自らの身を支えることができず、前へ倒れこんだ。その手にあった斧は一応取り上げて飛び上がると同時に地面へ叩きつけておく。
「ああもう、しようもない!」
 嘲笑の声を上げてサンディは飛翔する。次の人質を出されるより速く、プライディアとの距離を詰めていった。
「もう君にも飽きたから―――死んで?」
 嗤いながらサンディは黒剣を振り上げた。それにプライディアが反応するよりも速く、その言葉を発する間も持たせず。サンディはその力を、悪意を解放した。
 黒剣によって斬り裂かれたプライディアはもう、満身創痍だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

終夜・還
※真の姿使用※

お前はちと気に入らねぇし一度二度殴っただけじゃ気が済ま無いからワンモア

そういえば俺は人狼なんだけどさ?実は本来はヒトだしどうにもオラトリオに覚醒する筈だったらしいんですよ

まるで天使が堕ちたような翼に死霊術を操るオラトリオ…とか珍しいだろ?
俺は生者より死者を救いたくてね
生きてる人間を救う奴らはゴマンと居るからさ

俺の背負った人々の恨みつらみ、解消してやってよ

ほら、聴こえるだろ?『オブリビオンが憎い』、『大事な人を奪ったオブリビオンが憎い』って

救済出来なかったお前が最期に少しは救済出来るんだ
お前も少しは救われてくれよな

UCでこの世界の亡者を召喚
同郷の護るべき村人は素通りして攻撃させるぜ



 無数の傷を受けたプライディアに、猟兵たちを侮る色は最早ない。その神父服を真っ赤に染め上げ、よろめきながらも村人たちを操る様は哀れですらあった。
 もう彼にはそれしかないのだ。オブリビオンと化した彼には、その支配の力しか。
「救い難いやつだなァお前も」
「……次は、何者、ですか……っ」
 プライディアの前に降り立つは黒翼を持つ男。堕ちた天使のような姿でありながら死霊を侍る姿は実に奇妙で。プライディアは一瞬、彼の姿に魅入られた。
「ひでぇなァ、さっきも戦っただろ? ま、人狼からオラトリオになってたらそりゃわからないか」
 その言葉で、プライディアに殺気が灯る。人狼、と言われ気が付いたようだった。彼が、終夜・還(終の狼・f02594)が、己へ真っ先に歯向かい、村人たちの洗脳を解いて見せた男であることに。
「おーおー怖ェ怖ェ。俺もお前のことはちと気に入らなくてな」
 そう言った還の手にあるのは先ほどとは違う本―――“嘆きの書”だ。過去への嘆きと呪詛で埋め尽くされたその書物からは、並々ならぬ気配を感じる。恐らくは還が抑え込んでいなければ手を付けられないほど暴れまわるような……猟兵に討伐されるような、危険書だ。
「それに……俺は生者より死者を救いたくてね。生きてる人間を救う奴らはゴマンと居るからさ。俺ぐらいは、死者の味方で居たいんだよ」
 それはあまりに多くを背負った男の言葉。プライディアはその言葉の重さを理解し、そして憎んだ。プライディアにとってはそれはあまりにも傲慢な志。
「なんて、なんて傲慢なのか……っ! あなたは、すべてどころか過去さえ救おうというのか……」
「そんな大層なことは言ってねぇよ。ただまァ、お前も含め救える奴は救っていきたいよな。できるかは別として」
 しぃ、と還が唇に指をあてる。思わず押し黙ったプライディアの耳に小さな声が聞こえた。村人の物ではない。ましてや猟兵たちの物でもない。それは言葉にもならない、死霊たちの怨嗟の声。
「ほら、聞こえるだろ?」
 “嘆きの書”より、かつてプライディアに殺され、彼を恨む死霊たちが一斉に解き放たれた。慟哭の声と共にこの世へ訪れた彼らは血走った眼で獲物を探す。
 ―――どこだ。俺たちを殺した奴は、どこにいる―――!
「っ! 私を守りなさい、あなたたち!」
 死霊たちを目にしてなおプライディアは村人を盾にすることを選択した。しかし、死霊たちの目的はただ一点、プライディアのみ。実体のない死霊たちは生者である村人たちを通り抜け一直線でプライディアへ襲い掛かる。
 ……死霊たちの中に一人の男がいた。全身を焼かれ苦悶のままに殺された男……彼が最も悔やんだのは、最愛の妻を守れずに死んだこと。この村から自分の村へ、自分と一緒になるために嫁いできてくれた最愛の彼女が操られるのを、冥府から眺めることしかできなかったこと。
 ―――ヨクモ彼女ヲ壁ニシタナァァァッ!
「あな、たは……」
 多くの死霊に掴みかかれたプライディアの体が貪り喰われていく。人々を支配し命を愚弄した魔人は、死者に食われて最期を迎えた。怨みを満たした死霊は天に召されるように、消えていく。
「……救済出来なかったお前が最期に少しは救えたんだ。お前も少しは、救われてくれよな」
 還の言葉は、魔人のいた場所に投げかけられた。その場所にはもう、何も残っていない。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年09月16日


挿絵イラスト