Case1~労働者の末路
#UDCアース
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●絶望する元労働者
UDCアースにある賃貸ビルの一つから、大きく響き渡る声。
「俺が何をしたって言うんだぁぁぁぁっっ!!! うおおおおああああああああああああッッッ!!!!! がああああああああああッッッ!!!!!!!」
そして、ガンガンと揺れるビルそのもの。
声の持ち主が床を叩く事によって発生しているのだ。
絶叫とも取れるその声の持ち主……名を堀田・篤。
ブラック企業に入社してしまってから散々酷使されてリストラされた挙げ句、恋人にも振られて実家からは縁を切られ、運悪くヤクザの高級車にぶつかって……と言うかぶつけられて貯金の大半を奪われた上、僅かな金の入った財布まで落とした哀れな男。
堀田の周囲には、ガスマスクをした武装集団。
彼の悲痛な言葉に共感してしまった彼等もまた、邪神教団に操られていいようにされて来た存在。堀田と同じく怒りで手が付けられない状況……。
強力な対ブラック企業用邪神の召喚儀式を進めている。
ブラック企業の労働者達の末路。
このまま放って置けば、大変な事になるのは想像に難くない。
●グリモアベース
「あ、戦争お疲れさまでした。今日からは普通の依頼を予知していきますよ」
にこやかな表情でウィルバー・グリーズマン(入れ替わった者・f18719)がそう言った。正確にはまだ終わっていないが、もう終わったと言っても良いだろう。
それは置いといて、さっそく依頼の説明を語り出す。
「えーと……まあその、いわゆるブラック企業に努めていた結果、最終的にUDCとなってしまった堀田という男を始末して下さい。ついでにその周囲にいる武装集団も」
真面目に働いた結果がこれという、哀れな存在。
しかし放置してしまえば、その怒りからとても危険な邪神が召喚されて大変な事になってしまう。とても可哀想だが倒す以外に手はない。
……放置してブラック企業を滅ぼせば良いのでは? 等と言ってはいけない。オブリビオンなのだから確実にそれ以外にも被害が出る。
「ま、運が悪かったんですよ。それ以外に言葉にする事はできませんかね……ビルの中にいるので、侵入してから全滅させて下さい……あ、ビルを壊すとかは無しですよ」
人通りは少ないが一応は住宅街。派手にやり過ぎるのはお勧めできない。
また、堀田に対して安易に言葉を投げ掛けるのは止めた方がいい。
必ず逆ギレして凄まじい勢いで反撃して来る。
「四徹五徹とか当たり前だったらしいですよ。まあ、そうやって人間を超えた結果がアレですけども……ええと、早く楽にしてあげて下さい」
流石のウィルバーでも笑えないレベルなのか、とても真面目な表情だった。
「終わったら近くでビアガーデンやってるので是非どうぞ。お金は僕が持ちますよ」
絶望する堀田との対比が凄い。タダなので行ってみるのも良いだろう。
そうして魔本を開くと、転送を始めるのだった。
小強欲
こんにちは、小強欲と申します。
戦争がほぼ終わったので、のんびりと依頼を出します。
詳しい内容はOPの通りです。
一章では、武装兵士ヴィクティムトルーパーとの集団戦闘。
二章では、堀田・篤(堀田)とのボス戦闘。
三章では、ビアガーデンで飲みましょう。ジュースもあります。
堀田に説得は通用しません。
ビル全体を破壊するのは止めましょう。窓とかなら割ってもOKです。
では、絶望に終止符を打つプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『ヴィクティムトルーパー』
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POW : 処刑
【相手の頸椎をへし折る事】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 邪神捕獲指令。支給弾薬装填。
いま戦っている対象に有効な【特殊弾】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : &jadjg&m?!gbjgltbnl!!
【精神支配する邪神の力を解放した異形】に変形し、自身の【人間の肉体と、武器を使用する程度の知性】を代償に、自身の【精神支配する邪神に応じた能力】を強化する。
イラスト:朝野せみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
クロウ・ファンタズマ
※アドリブ共闘大歓迎
心情:世界に不満をぶつけてぇ気持ちは分からんでもないが、無関係の人間巻き込むな、うざってぇ!
あぁ、UDCアースは不便だぜ。建物ごとぶっ飛ばしてぇ……
行動:建物を倒壊させるなと言われたなら仕方ねえ、大人しく中で戦ってやる。
しかし私が直々にぶちのめすほどの実力の無さそうな奴等だ。こいつらで十分だろ。
指定UCを使用して死霊どもを召喚する。
見た目こそただのゾンビだが、強さは私と同ランクだ。
剣士の掩護射撃をするように銃持ちに指示。
もちろん最優先は私の防衛だ。私がダメージ受けたら解除されちまうからな。
そら、【怪力】を活かして【薙ぎ払え】。
寄ってくるなら【零距離射撃】でねじ伏せろ!
イリーツァ・ウーツェ
【POW】
なんというか。
大変だな、人間。
私も個人タクシーをしているが、たまに酷い客が来るからな。
まあ、そういう日は食費が浮くから助かるが。
ブラック企業というのは、そういう酷い人間に囲まれているのだろう?
それは、本当に大変だな。
だがオブリビオンになった以上は殺す。
遠くから銃弾にUCを乗せて撃ち込む。
この火は標的しか焼かない。ビルへ被害は出ない。
後は普通に杖で殴る。
背骨ごと圧し折ってしまえば死ぬだろう。
どんどん行くぞ。
空は快晴、強い太陽の光が降り注ぐUDCアースの日本。
人通りの少ない路地の中層ビルから複数の呻き声が聞こえたと思えば、一斉に叫び出したりと、兎にも角にも煩い。
そんなビルの入口にて、チッと舌打ちする音が一つ。
「無関係の人間巻き込むな、うざってぇ!」
声の持ち主、クロウ・ファンタズマ(黒焔のネクロマンサー・f21283)は非常に苛立っていた。
確かに同情できる部分はある。世界に不満をぶつけたい気持ちも分からなくはない。
だが、彼等の行う事は結果として関係のない人間を巻き込むテロ行為……当然、これを許す訳には行かない。
「建物ごとぶっ飛ばしてぇが……仕方ねえか」
クロウはムッとした表情で、やや不満気の様子。
しかし、下手にビルを破壊して一般人に知られるのはマズい。可能な限り穏便に済ませるのがベストなのだ。
正面玄関には鍵は掛かっていない。クロウは真正面から堂々と侵入を始める。
賃貸ビルの隣には、同じく空きビルが存在する。
その空きビル内部の廊下を歩いているイリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)は、隣のビルからの叫び声を聞きながら冷静な表情で。
「なんというか。大変だな、人間」
徹底的に精神を擦り減らされ、最後はオブリビオンと化す……とても大変だ。
ブラック企業に属していたという事は、人間関係も酷かったのは間違いない。数少ないまともな人間関係も縁を切られて……悲惨としか言い様がない。
個人タクシーを営むイリーツァもまた、仕事をしていると酷い客が来る事がままある。
怒鳴り散らしたり、座席を蹴って来たり、中には車内で暴れ回る者もいた。
(「まあ、そういう日は食費が浮くから助かるが」)
心の内で思った言葉は、果たしてどの様な意味があるのか……。
それは置いといて、本当に大変な人生だったのだな、と深く感じて。
「……だがオブリビオンになった以上は殺す」
過程がどうであれ、結果がこれならばやる事は一つ。
イリーツァは大口径リボルバーを取り出すと、敵を探しに歩き続ける。
正面玄関に入ってすぐ、クロウの前方に数人の兵士が見えて。
「侵入者……教団の手先かッ!? まだ我等を働かせようとするのかッッ!!!」
オオオオオッ、と凄まじい咆哮を同時に上げると、兵士の肉体が巨大化。真っ白な怪物に変化して。
迫り来る異形の敵を見ても動じずに、クロウは微かに口元を動かして。
直後、地面から現われるのは三体のゾンビ。ただし剣を持った者が一人と銃を持った者が二人。
死霊剣士の鋭い剣撃が怪物を斬り払うと、大きく後ろに吹き飛ばされて。そこに死霊銃士の銃弾が放たれて急所に命中し、まずは一体を仕留めてしまう。
「私が直々にぶちのめす必要もねえ。こいつらで十分だ」
クロウはクイッと顔を上げると、死霊達が異形達へと攻撃を始める。
異形は非常に素早い速度と、確実な命中力。更には高い体力を以て、強靭な爪で攻め込んでくる。これが対ブラック企業用邪神の能力なのだろうか。
だが、死霊達もそれに十分に対応している。そもそもがクロウの強さと同ランクな上に、前衛後衛での連携が非常に上手い。
剣と爪で打ち合い、切り合い、競り合って、暫しの膠着状態が続く。
イリーツァが廊下を歩いていると、貸しビルの方から戦闘音が聞こえて。
すぐ近くの窓を開けて見下ろせば、下の階で戦闘が起こっているのが見える。
「あれは……味方か。つまり、あの白いのが敵だな」
標的を確認すると、即座にリボルバーを戦闘地点近くの窓に向けて連射して。
発射された銃弾は窓を透過し、着弾と同時に周囲に業火を振り撒いた。
「っと、敵の援護か? ……いや、これは」
業火は死霊達も飲み込んでしまったが、よく見てみれば死霊には燃え移っていない。
「グオオオアアアアアッッ!!」
いや、正確には壁や床も一切燃えておらず、クロウも熱さを感じていない。ただ目の前の異形のみが焼け苦しんでいた。
これこそがイリーツァの『活火激発・北焙咆』。対象だけを燃やす業火の弾丸。
炎は彼等が犯した罪に比例して高熱となる。操られていたとは言え、今までに何人もの命を奪って来た者達だ。その効果は絶大と言えよう。
「そこだ! 一気に畳み掛けろッ!」
クロウはこの隙を逃すまいと命令を出して、死霊剣士が剛剣で薙ぎ払い、死霊銃士は引き続き銃撃で攻撃を行う。
異形と化しても僅かながらの知能はある様で、窓を開けて逃げようとする怪物達。
「何処に行くつもりだ?」
しかし、窓の向こう側には戦杖を構えて降りて来るイリーツァ。グシャアッ、と怪物の頭にそれを突き付けて、首を折ってしまう。
続いて戦杖を横に叩き付ければ、別の怪物の背骨を尋常ならざる力で圧し折って。
最後に残った敵は、燃えながらもクロウのいる正面玄関から逃げようと向かって来る。
跳躍して死霊剣士の上を通過するが、二体の死霊銃士も敵と同時に跳んでおり、構えた銃器を額と心臓に向けて突き付けて。
パァンッ、と甲高い音が鳴れば、最後の怪物も仕留めてしまった。
「よし、まずは正面玄関を制圧だぜ」
「そうだな。近隣住民に気付かれる前に、どんどん行くぞ」
死霊達も使って索敵を終えると、まずは正面玄関の兵士達を片付け終えたクロウとイリーツァ。立地が幸いしたのか、まだ住民達にも気付かれてはいない様だ。
しかし制圧はまだ始まったばかり。油断せずに全ての兵士を片付けて、堀田を撃破するとしよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
尾崎・ナオ
お、今回UDCじゃーん、どんな謎解きかなーって思ったら謎解き要素一切無い!?
堀田を煽りたいのぅ。だが怒りの標的になるのは怖いなぁ。でも煽りたい。次で考えよっと。
敵SPD。ナオちゃん人型なんで普通に弾丸だけで危ないデスヨ。閃光弾、催涙弾とかあるんかにゃー。ミリオタじゃないんで判らんのよね。
敵さんの恰好、防弾や防刃かもな。ナイフがサクサク刺さるとも思えん。弾丸も弾かれるかもしれん。圧倒的な物量で倒しに行かねばなぁ。久々に出すか、ガトリングガン!
「流されるままに生きて来ただけのクズに、武器を持つ覚悟があるんですかぁ?」
【指定UC】でスピードアップして後方に回ってから早業で取り出して零距離射撃ドーン!
ビルの裏口にある窓から、素早い動きで内部に侵入する影が一つ。
「謎解きかと思ったんだけどなぁ。まさか一切無いとは……!」
小声でそう言葉にする尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)は、まさかの謎解きゼロと言うのにやや驚いていた。
今回は哀れな奴等をぶちのめす依頼だったが、それならそれで別の方法で楽しもうと考えて、すぐ近くにあった階段を昇って敵を探し始める。
四階まで昇ると、三人の武装兵士が見えて。
どうやら相手の武装は中々に整っており、防弾や防刃のアーマーを着ている様だ。
「んー……距離はある、通路は狭い。しっかりと煽れば行けるか?」
敵を挑発して正常な判断力を奪い、華麗な動きで翻弄する。彼女が得意とする戦法の一つだ。
だが、その為にはまず最初にやらなければならない事がある。
「いや、行ける行ける……! ナオちゃん速いし、絶対行ける……!」
自画自賛だ。小声で自分の事を全力で褒め称えているのだ。
自身を奮起させる事によって、身体能力……特に速度と反射神経を跳ね上げる。
ナオはヒップホルスターから黒い拳銃を引き抜くと、脚に力を込める。
三人の武装兵士は二手の通路と窓を見張っており、一見すると隙がない様にも見える。
しかしずっとそうしている訳ではなく、時折ブラック企業に対しての怒りによって、頭を抱えて呻き声を上げるという致命的な瞬間があった。
ナオの方を向いている兵士が呻いたタイミングで、凄まじい速度で駆け出し始める。
「……っ!? て、敵襲……ぐおッ!!」
その勢いのままで兵士の腹に蹴りを放てば、もう一人も巻き込んで吹き飛ばして。
すぐ横にいた三人目が機関銃を構えるが、既に目前まで迫っているナオはどうやっても撃つ事ができない。
ガスマスクのレンズに拳銃を突き付けて。タァンッ、とまずは一人目を始末した。
アーマーを着ているとは言え、全速力からのハイヒールキックは効いたのか蹴った兵士は蹲っている。
もう片方は衝撃でかなり後方まで飛ばされたが、何とか立とうとしている状況だ。
「おやおや~? 軽く蹴っただけなのにもうギブアップですかぁ?」
ニヤニヤとしてその様子を眺めるナオ。これは中々に兵士達を苛立たせるだろう。
しかしこの程度の煽りでは済まさない。畳み掛けるように挑発を続ける。
「と、こ、ろ、でぇ……こんなビルでサバゲーなんてやったら迷惑ですよぉ? ちゃんとマナーは守りましょう、大人なんですからぁ」
「サバゲーだとッ!?」
一応は教団で厳しい訓練を積んできた兵士だ。
お遊びと一緒にされるのは流石に我慢ならなかったのか、烈火の如く怒り出して。
だが、ナオはケラケラと笑いながら挑発を続ける。
「ゲームと現実の区別が付かないタイプですかぁ? 人として終わってますねぇ~!」
蹲っていた兵士がその言葉にキレて、叫びながら近付いて来る。
しかしその動きは非常に単調で、銃器も構えないお粗末なものだ。
「はい、二人目ぇー」
ナオは即座にガトリングガンを構えると、至近距離からそれを兵士に向かって放つ。
如何に防弾仕様のアーマーだろうと、あっと言う間にバラバラになってしまった。
「こんな……こんな所で我等の夢が、ブラック企業への復讐が潰えると言うのか……ッ!」
信じられないといった感じで手を震わせる兵士。
ナオはその様子を見ると、見下した感じで言葉を発する。
「流されるままに生きて来ただけのクズに、武器を持つ覚悟があるんですかぁ?」
これは挑発と言うよりも、ただの問いかけと言うべきか。
堀田の言葉を少し聞いただけで教団から鞍替えする連中だ。信念はあれども、それがどれ程のものかは容易に予想が付く。
兵士は数回と首を横に振ると、半ば諦めた感じではあるが、ナオへと向かって来る。
だがこんな状態でナオに勝てる筈もなく、敢え無くガトリングの餌食となってしまった。
サクッと三人を倒して、四階を探索し始めるナオ。
「堀田を煽りたいのぅ。だが怒りの標的になるのは怖いなぁ」
兵士は煽っても猪突猛進するだけの雑魚に過ぎなかった。
だが堀田はどうだろうか?
彼の恨みは兵士達とは比べ物にならない。仮に煽ってしまえば、凄まじい戦闘になるのは間違いないだろう。
挑発しても良いが覚悟をした方が良い。彼の恨みは本当にヤバいのだ。
大成功
🔵🔵🔵
槙島・未幽
目的
ヴィクティムトルーパーの拘束
持ち物
結束バンド(最長のものを大量)
知り合いのブラック企業勤め人を思い出し、他人事ではないような気がしたので参加
(確か、知り合いのあの人の勤め先もブラック企業だったような・・・。今はまあまあ生きているけど、堀田のようになるのは時間の問題ってやつなんだろうな)
30cm以内に入らない位置から『見えない射手』で敵を束縛
↓
壁に頭だけ突っ込ませる
↓
敵の両手両足を結束バンドで締め、更に隣同士で両手両足も結束バンドで締め、二人三脚のような状態にして放置
(ずらっと繋がっている)
↓
鼻唄でも歌いながら通過
「頸椎へし折ろうにも、見えなきゃ意味ないよね」
鼻唄
「命大事に堀田さ~ん」
賃貸ビル二階。
この階層は他よりも部屋が多く、探索がやや面倒そうな場所となっていた。
大量の結束バンドを手にした槙島・未幽(流星召喚(スターコール)・f20363)は、鼻唄交じりに歩いていて。
軽くリズムを取りながら、部屋の中を次々と確認している。
「ここも外れ、だね」
これで三ヶ所目だが、未だに武装兵士の姿は見えず。
しかし焦って探す必要も特にはない。未幽はマイペースに探索を続けていく。
歩きながら、そう言えば……といった表情になって。
「確か、あの人の勤め先もブラック企業だったような……」
どうやら知り合いがブラック企業に勤めている様子。
この依頼を入った理由も、その勤め人を思い出して他人事ではない気がしたからだ。
今はまだ生きている。しかし、堀田までとは行かないだろうが、あれと似た様な状況になるのは時間の問題だろう。
「大変、だねぇ」
未幽の感想としては、ブラック企業に働く人達は大変だという事だ。
さっさと退社すれば良いのだろうが、生きる為にはそう言う訳にも行かないのだろう。
まぁ堀田の場合は、頑張り続けた果てに無慈悲に首を切られたのだが。
暫く部屋の中を探索していると、数人の武装兵士が見えて。
「いたいた。じゃあ早速……一猟兵からの贈り物だ」
そう言うと、兵士が此方に気付く前にサイキックエナジーで動きを封じてしまう。
言葉を出そうにも口も封じられており、酷く困惑した様子の兵士達。
そんな兵士を操って頭を壁に叩き付けると、ゴギッと音がして。しかし壁は頑丈で壊れていない。
「ふむ、案外と固いね……まあ何度かやればいいか」
ガンガンと何度も壁に叩きつけて、やる度に酷い音が辺りに響き渡る。
暫くしてようやく壁を壊して、兵士達の頭を壁の中にすっぽりと埋まらせてしまった。
手元の結束バンドもサイキックエナジーで操作して、手足を封じて他の兵士達も二人三脚の様な状態にして封じてしまった。
「頸椎へし折ろうにも、見えなきゃ意味ないよね」
殆どが気絶していたが、喚く兵士も幾つか存在した。
しかし、しっかりと結束バンドが仕掛けられているので全く動く事が出来ない。
兵士の声は壁の中に吸い込まれてしまい、外に漏れる事もない。
完全に詰んでいる状況だった。
ずらりと兵士達が繋がっている状況は色々と面白い構図だ。
これで一切に動けないので、後で情報を聞くなり始末するなり、煮るなり焼くなり好きにすると良いだろう。
「さて、次に行こうかな」
もう一度、鼻唄を歌いながらその部屋から出ていく。
頭に浮かんだフレーズを適当に。
「命大事に堀田さ~ん」
もうじきその命も消えてしまうが、それは些細な事だろう。
未幽はマイペースに。しかし確実に兵士の動きを封じて、あっと言う間に二階の探索を終えてしまった。
大成功
🔵🔵🔵
波狼・拓哉
…いやまず対ブラック企業用邪神てなに?邪神出るだけで大体の企業は死にそうだけど何故ピンポイント?
まあ、そういう邪神もいるんだろうなぁ。いるんだよねぇ…(無理矢理納得しておいた)さてさて…ビルに被害出したらダメなんだっけ。じゃ面倒だけど一体一体確実に行くか。
地形の利用と第六感使って先手取られないのだけを意識してビルに突入。敵と出会ったら拍手でもして一瞬だけ注目を集めてー…はい化け咲きなミミック。花群のミミックに注目対象移し替えて、効果と恐怖を与えて隙を作りだそう。
後は適当に衝撃波込めたでヘッドショット決めて回ろ。動かれたら面倒だし戦闘知識から弱点見極めて早業で仕留めて回るかー
(アドリブ絡み歓迎)
「……いやまず対ブラック企業用邪神てなに?」
ご尤もな疑問だ。
波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は何故にそこまでピンポイントな邪神がいるのかが不思議で仕方がなかった。
この邪神が出るだけで、どれ程の企業が消滅するのだろう。若干気になった。
「いや……まあ、そういう邪神もいるんだろうなぁ。いるんだよねぇ……」
ここは納得するしかない。拓哉は無理矢理だが納得する事にした。
ビルに被害を出しては行けないという事で、若干面倒そうな表情な拓哉。
とは言え、依頼は依頼だ。しっかりと一体一体確実に潰して行こうと考えて。
そして、ビルを良く観察してみると、ある事に気が付いた。
「ここ、登れそうだな」
壁の出っ張り、窓の手すり、複数のパイプ。
これらと拓哉の第六感を上手く駆使すれば、先手を取られずに敵を撃破する事が可能。
問題は結構疲れると言う点だが……正面から突っ込むよりかは、ずっと安全だろう。
「正面からは……流石に目立つな、ここはビルの間から」
敵からは気付かれないだろうが、住民が気付く可能性がある。
ビルとビルの間から、上の階へと昇り始めて行く。
二階は特に見当たらず。三階に差し掛かる所で気配を感じて。
「えーと、一人だな。やるかー」
そっと窓を覗き込むと、少し離れた位置に兵士が立っている。
脚でバランスを取りながら、手と手を合わせて、パンッ! と一つ大きく拍手。
「はい、化け咲きなミミック」
その音に兵士は当然気付いて目を向けるが、廊下の先に見えたのは小さな花群。
赤、青、黄……傍目からすれば綺麗な花群にしか見えないが、その花を見てしまった兵士の動きが止まる。
少し経てば前のめりに倒れてしまって、花群を見続けるだけになってしまった。
これが拓哉のミミックの力の一つ。小さな花群に化けたそれを見れば、視覚以外の五感を奪って、正気を削り取ってしまう。
「よっと。……うーん、窓を全解放は流石に不用心だと思う」
まだ暑いとは言え、これは駄目だろうと考えながら、カラフルなモデルガンを兵士の頭に突き付けて。
カチンッと引き金を引けば凄まじい衝撃波が発生して、とても嫌な音がしたと思えば、兵士の頭が変な方向に曲がっていた。
兵士が事切れたのを確認すると、拓哉は三階の探索を始める。
「……うん、超がつくほどに楽だ」
敵の注意を引いて花を見せる。
花を見るという行動以外の五感を奪い、恐怖で精神を疲弊させてからモデルガンで頭を撃ち抜く。
ただでさえ堀田の言葉で簡単に教団を抜けてしまう程度の精神性なのだ。そんな彼らに正気を削る花を見せれば、抗う術はない。
一人、また一人。次々と兵士達を始末して、三階の部屋を探し回っていると……。
「うおっとっ!」
突如にズガンッ! と音が鳴ると同時にビルに強い揺れが発生する。
音の先はすぐそこの部屋。今の揺れを発生させた者……堀田による渾身の一撃だ。
扉の隙間からは漆黒の気配。堀田の怒りや嘆き、あらゆる負の感情がオーラとなって漏れ出している。
「人間、追い詰められるとここまでの領域に立てるんだなー……」
普段から真面目な人がキレると怖いとはよく言うが、彼もまたその一人なのだろう。
場所は分かったが、三階には他にもまだ兵士達の気配を感じる。
途中で乱入させると危険なので、拓哉はその階層全て兵士撃破し終えてから堀田との戦いに臨もうと考えて。
「さて……もう少し頑張ってもらうぜ、ミミック」
先ほどから花への擬態を続けており、割と疲れている様子。
拓哉は軽くミミックの蓋を叩いて活を入れると、残る兵士の殲滅を開始するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『堀田・篤』
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POW : 俺が何をしたって言うんだ
自身が【虚無感】を感じると、レベル×1体の【お猫様】が召喚される。お猫様は虚無感を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : 電車に積まれた社畜の群れ
【疲労】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【夜勤明けで疲れたサラリーマン達】から、高命中力の【やる気を奪う波動】を飛ばす。
WIZ : 滅びろブラック企業
【悲痛な叫び声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:Miyu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「シルマ・クインス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
堀田・篤。
今までに説明した経緯によって、全てに絶望した哀れな男。
UDC怪物化する前は猫好きで、ペットとして飼っていた様だ。
まあその猫にすら逃げられてしまった訳だが……。
そう言う訳で、風貌もそこはかとなく猫に似ている。
「ブラック企業ォ……ゴミ上司ィィ……!! 必ず、殺してやるゥゥ……ッ!!!」
一心不乱に呪詛を吐いて床を叩いており、猟兵達には気付いていない。
先制攻撃を仕掛けるチャンス、一気に畳み掛けて浄化してしまおう。
イリーツァ・ウーツェ
よし殺す。
殺した方が楽になるだろう。
歩み寄り、首を掴んでUCを叩き込む。
何だ……猫の群れ?
邪魔だ。
貴様等ただの獣はあまり害したくない。散れ。
杖から水を生み出して押し流す。
流した後に水は消す。
さて、改めて。
さようならだ元人間。
来世は良い職場に就けると良いな。
お前が何をしたか、だと?
理解していないのか。ならば答えよう。
お前はオブリビオンになった。
だから此処で殺される。
其れだけだよ。其れが全てだ。
「ウオアアアアッッ!! くたばれ社会ィィッ!!!」
堀田の叫び声が響き渡るビルの一室。
床を叩く事で発生する地響きも相まって、非常に煩い。
最初に部屋へ足を踏み入れたのは、イリーツァだ。
部屋の内部は至る場所に奇妙な文字が書かれており、邪神召喚儀式の真っ最中の様子。
「よし殺す。殺した方が楽になるだろう」
そんな言葉を口にするが、堀田は呪詛を吐いて床を叩くのに必死なのかイリーツァの存在に全く気が付いていない。
イリーツァはそんな彼を見下ろしながら、静かに歩み寄って。
素早い動作で彼の首を掴むと、凄まじい力で持ち上げた。
「うぐっ、ううう……」
締め上げられた堀田はそれほど抵抗はせずに、とても無気力だ。
このまま首を折ってしまおうかと考えるが、何処からか猫の鳴き声がして。
イリーツァは振り返ると、部屋の出入口から大量の猫が睨み付けていた。
「何だ……猫の群れ?」
出入口に身体を向けた直後、一斉に猫がイリーツァに向かって駆け出した。
それを見て片手で戦杖を構えると、それを床にカツンッと突き付けて。
「邪魔だ。貴様等ただの獣はあまり害したくない。散れ」
床より流れ出るは、大量の水。
それはあっという間に猫達を飲み込んで、そのまま部屋の外へと押し流してしまう。
「お猫様……お、俺のお猫様が……!」
堀田は後ろで流されていく猫達を見て、ようやく正気に戻って。
暴れ始める堀田だが、がっしりと掴まれたイリーツァの手から逃れる事は叶わない。
堀田は足を動かし続けており、バシャバシャと辺りに水が飛び散っている。
イリーツァは戦杖で再度床を突くと、水は一瞬にして消え去って。そのまま剛力で戦杖を床に突き刺してしまった。
「さて、改めて……さようならだ元人間。来世は良い職場に就けると良いな」
「も、元人間……? 来世……?」
言葉の意味がよく分かっていないのか、困惑した表情で。
そんな彼にもイリーツァは容赦はなく、拳を大きく振り被って。堀田はすぐにそれを防御しようと両腕を構える。
そうして放たれた拳は、堀田の腕を捉えて。
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!
殴る音、と言うよりはまるで滝の音。
イリーツァの異様なまでの怪力を以て超絶的速度の拳が連続で打たれて、堀田の両腕を一瞬でボロボロにしてしまい、その肉体も破壊しようとするが……。
「ギャアアアアアアアアァァァッッッ!!!!」
「ちっ……」
耳を劈くような叫び声。
イリーツァはあまりにも大きなそれを間近で聞いて、堀田の首から手を離して。
慌てて床を這って逃げようとする堀田だが、両腕がボトリと千切れてしまった。
「お、俺の腕がァァァ……!! 何でこんなァァッ!! 俺が何をしたってんだよォォォッッ!!!」
堀田は千切れた自分の腕を見て泣き喚く。
そんな彼を見てもイリーツァは冷静で、確かな殺意を以て口を開いた。
「まだ理解していないのか。ならば答えよう……お前はオブリビオンになった。だから此処で殺される。其れだけだよ。其れが全てだ」
その言葉を聞いても、堀田は分かっていない様子。
縋る思いで邪神召喚の儀式をした事が関係しているのだろうかと、辺りを見回して。
「理解できないか。まあいい、そこを動くな。今直ぐに殺してやろう」
戦杖を引き抜いて拳を握り締めると、イリーツァはまたもや堀田に向けて歩き出す。
ヒイッと悲鳴を上げて、堀田はすぐに部屋から出て逃げ出してしまう……だが、最早このビルに逃げ場はない。
逃げる堀田の先には、次の猟兵が待ち構える……。
大成功
🔵🔵🔵
波狼・拓哉
今の時代ネットに晒すとか労基に駆け込むとかすればブラックなもんは大体死ぬ気がしますけど、まあ、やらなかったんでしょうねぇ。そういうのは自分で動いて堕ちてくとこちゃんと見ないと面白くないですよ?
じゃ、化け喰らいなっと。そのまま床に縛り付けておいてやろう。猫ぽいからまあ美味しいんじゃないかなぁ…行けそうなら食べていいよ。後口狙え口、喋れないようにしてやれ。
自分は衝撃波込めた弾で本体撃ったり召喚された奴撃ち倒したりしてサポートに。あ、おにーさん背景事情とかマジで知らんし、死ぬほどどうでもいいと思ってます。なんなら後のお酒のことの方が重要です。重要です!(大事なことなので(ry)
(アドリブ絡み歓迎)
死ぬ気で走る堀田の前に現れた拓哉は、狂気的な笑みで彼を見詰めて。
「今の時代ネットに晒すとか労基に駆け込むとかすればブラックなもんは大体死ぬ気がしますけど」
唐突にそんな事を言い出すと、挑発めいた態度でモデルガンを突き付けながら堀田に近付いて。
両腕を失っている堀田は痛みで何かを言う余裕はないようで、ただ狼狽えている。
「……まあ、やらなかったんでしょうねぇ。そういうのは自分で動いて堕ちてくとこちゃんと見ないと面白くないですよ?」
哀れみの視線を堀田に投げ掛ける。
その視線には耐え切れなかったようで、血を吐きながら拓哉に向けて言い返す。
「中卒の俺が他でマトモに働ける訳がないんだよ……ッ! そもそも、ネットに晒した所で影響力なんてたかが知れて」
「あ、おにーさん背景事情とかマジで知らんし、死ぬほどどうでもいいと思ってます。つーか、せめて晒してから言って下さい」
堀田の言葉を遮って、どうでも良さ気な表情でそう言い放つ。
それよりも、仕事終わりの酒だ。ビールの方がずっと大事だ。付け合せは何にしよう、やっぱり焼き肉か、ビールと合うウインナーか、チーズなんてのも良い。なんせタダなのだから少々高めの物にしても良いかも知れない……。
「うるせええェェッ!! お前に何が分かるんだよォォォッッ!!!」
堀田の大声にハッとして、戦闘中である事を思い出して。
これ以上は彼と話しても無駄だと考えて、拓哉はパチパチッと両手を合わせた。
「じゃ、化け喰らいなっと」
堀田の真横にある部屋から、狼の身体と黒く染まる影の顎を持ったミミックが現れて。
ミミックが飛び掛かって堀田を押し倒すと、ガチンッと音が鳴り響いて胸の肉を喰い千切ってしまって。
「グギャアアアアアアァァァッッ!!!!」
「うるさっ! 口狙え口! 喋れないようにしてやれッ!!」
絶叫に拓哉は思わず耳を塞いでしまうが、ミミックは迷わず堀田の口に噛み付いて。
ブチィッと音が響けば、頬や顎の肉を喰らい取ってしまう。
堀田はヘットバットや蹴りでミミックを引き剥がそうとするが、床に影で縛り付けられており、思うようには抜け出せない。
「美味しそうに食べるなぁ……いいよ、全部食べちゃって」
ガブリガブリと堀田の身体の様々な部分を食い千切るミミック。
拓哉もモデルガンで彼を撃ち抜いて、その衝撃波でダメージを蓄積させていく。
両腕を失い、身体の至る部分が千切れても尚、堀田はまだまだ動けている。
中々しぶといな……等と考えていると奥の方から大量の猫が現れて。
「おっと増援か。もう一発いいのを入れときなーッ!」
迫り来る猫を見ると、ミミックに命令を出す拓哉。
影の顎を大きく開けると堀田の頭に思いっ切り噛み掛かって、ボリッとその一部分を千切ってしまった。
すぐに猫がミミックを押し流して、拓哉は後ろに引きながらモデルガンを撃ち続ける事で猫の波を凌ぎ切る。
「あの傷でまだ動けるのか……ま、もう死ぬよな」
猫を倒している間に堀田は影を無理矢理抜けて、ボロボロの身体で逃げ出していた。
だがあの傷では長くはない。一応、止めを刺す為に拓哉とミミックも移動を始める。
口を千切られても、まだ声帯はあるので会話は可能。しかしその痛みで大声を出す事はできず、絶叫攻撃は完全に封じたと言っても良いだろう。
堀田は向かいの空きビルのガラスに映る自分の姿を見ると、そこには何故か猫のような耳がある自分がいるのに気が付いて。
その上、頭の一部分は頭蓋骨すら砕けて脳味噌まで見えている状態だ。
「……お、俺は……何でまだ生きているんだ……? 俺は何なんだ……?」
困惑しながら皮膚のない口で独り言。大量の血反吐を吐きながら逃げ続ける。
しかし何処にも逃げ場はない。このビルが彼の墓標だ。
大成功
🔵🔵🔵
尾崎・ナオ
いかなる事情があれ、飼い猫を逃がしたなど万死に値するわ。
お前のブラック勤務なんかどうでもええわ。飼い猫を逃がすってのがな、どれだけ重罪かわかってんの?家猫を外に出すってのはな、死を意味するんやぞ。そうせざるを得ない程お前は餌も水もやらんかったんか。死ね。ほんっと死ね。
【指定UC】・クイックドロウ157・早業40、持てる全ての技量で、堀田の眼球・手の甲・足の甲・膝・肘を狙う。致命傷になる場所を避け、だが身動きに制限が掛かる場所を狙う。
雑魚敵は脳天打ち抜き。やる気を奪う?怒りを奪うじゃなくてぇ?
猛毒を毒使い40でナイフに塗り、首を狙って投擲46で投げる。
楽に死ねると思うな。悔いて謝れ。クソが。
必死に猟兵達から逃げ続ける堀田。
両腕は千切れ、口元はグシャグシャに爆ぜて、頭の一部から脳味噌が見えている大怪我を負っている。
どうにか生き延びようと足を動かしているが、曲がり角からナオが現れて。
堀田が何かを言い掛けるよりも早く、引き抜いた拳銃によるクイック・ショットが堀田の膝を撃ち抜いて。
「ガァ……!」
叫ぼうにも口元の痛みで叫べず、片膝を付いてしまう。
致命傷にはならないが動きを封じる部位への射撃。主に足元を重点した容赦のない連射が堀田に襲い掛かる。
煽りも無ければ笑みも無い。ナオはただ純粋な怒りを以て、堀田の前に立って。
「いかなる事情があれ、飼い猫を逃がしたなど万死に値するわ」
堀田の顔面に渾身の前蹴り。
割れた頭蓋骨が更に砕けて、ゴロゴロと後ろへ吹き飛んで。
無様に倒れた彼の脚に向けて、続けて放たれる銃弾。執拗に撃たれるそれは堀田の脚を穴だらけにしてしまって。
そんな脚でも無理矢理立ち上がって移動する堀田。前方に階段があるのに気付いて、その場まで歩いて行く。
しかしナオがそれを簡単に許す筈もない。
「逃がすと思ってんの、なぁ?」
よろよろと移動する堀田の両太腿に向けて、二丁の拳銃による射撃。
弾丸は見事に腱を居抜いて、バランスを崩した堀田は階段を転げ落ちてしまった。
「ううう……こ、こんな……」
下まで転げ落ちた堀田は見るも無残な姿で、身体のあらゆる部分がボロボロ。半分近くが人の形を成していない。
静かにカツンカツンと、階段からナオが降りて来て。
「お前のブラック勤務なんかどうでもええわ。飼い猫を逃がすってのがな、どれだけ重罪かわかってんの?」
家猫を外に出す。それは即ち、死を意味する。
運が良ければ誰かに拾われる事もあるだろうが、生き抜く術を知らない動物を外に出せばどうなるかなどは子供でも分かる。
当然、この事を猫を飼っていた堀田が知らない筈もない。
「そうせざるを得ない程お前は餌も水もやらんかったんか。死ね。ほんっと死ね」
家猫が外に逃げ出すという事は、相当な理由がなければまずあり得ない。
一応、堀田本人にとっては相当な理由があったのだが……それはナオに関係ない。
『猫を逃した』。ただこの一点のみが、ナオの最大限にまで怒らせたのだ。
弾を撃ち尽くしてはリロード。致命傷を避けて、ただ痛め付ける射撃を続ける。
「楽に死ねると思うな。悔いて謝れ。クソが」
ギラギラと憤怒の眼差しが堀田に向けられるが、そこに複数の足音が聞こえて来る。
何だと思って歩みを止めると、堀田のいる左右の通路からくたびれたサラリーマン達が現れて。ナオの方向へ鞄や傘を持って襲い掛かって来る。
どうやら彼らも堀田に共感した者達で、兵士達ほどの力はないが高い忠誠心で彼を守っていた。
「はぁ……そいつを守る価値なんてねーよ。邪魔すんなら死ね」
深い溜息をつくと、微塵の迷いもない銃撃がサラリーマンの頭を撃ち抜いて。
波動のような力を掌に溜めている敵も、それを放つよりも速く超高速の早撃ちで仕留めてしまう。
カチンッ。弾薬が切れてリロードをしようとするが、怒りで何時の間にか全ての弾丸を使い切ってしまって。
その隙を狙って、二人のサラリーマンに肩を支えられて逃げようとする堀田。
「もがき苦しんで死ね……この、大馬鹿野郎が……ッ!」
ただひたすらに苦しめる様に努めてきたナオだったが、遂に殺意が溢れ出て来て。
お気に入りの黒いナイフに、人体に最も有効な猛毒を全て振りかけると、それを堀田の首元にシュッと投擲。
「ゴボッ……グ……ガ……ッ!」
ナイフが彼の首を抉ると、壁に突き刺さって。
そして堀田の全身に猛毒が回り始める。
猛毒を受けた堀田の残りの命は僅か。
放って置いても死ぬが、それでも哀れな男は生き足掻き続ける。
大成功
🔵🔵🔵
槙島・未幽
目的
堀田を床に沈めて(犬神家のスケキヨ状態)殺す
スッキリしたいから、思ったことを言わせてくれ。
「知り合いにブラック企業勤めの人がいるんだけど、先輩として何かアドバイスある?」
「ブラック企業撲滅のゆるキャラとして売れそうな姿してるね。使っていい?」
これだけ言ったら、堀田の顔面に机や椅子を念力でブン投げてのけぞらせる。のけぞった隙に接近して背負い投げて、頭を床に沈めて、心臓に一撃。
「これでいい。これ以上、苦しまなくてもいい。眠るように終わらせてやるからな。せめて、今からは安らかな眠りでありますように」
猫にはマタタビで対応。
「ほーれ猫たちとってこーい」
クロウ・ファンタズマ
※アドリブ共闘大歓迎
心情:泣くな喚くな男だろうが!
ブラックが嫌なら辞めろ。
中卒でも農業漁業などの自営業がある。
儲けは期待できなくとも気楽に生きてくだけの金は手にはいる。
それに挑戦しようという勇気がなかった時点でテメェは敗北者なんだよ!
行動:こういう奴は口で言っても変わらねぇ。
挑発して自分から攻め込ませる。
猫は【戦闘知識】をフル活用しつつ【怪力】を使って、肉断ち包丁で蹴散らす。
歩きつつ近づき、焦って攻撃を仕掛けてくるなら【カウンター】だ。
指定UCを【鎧無視攻撃】で顔面に叩き込みつつ、地面に叩き付ける。
止めに馬乗りになってから【2回攻撃】でもう一発、指定UCを顔面に打ち込んでやる。
身体のあらゆる部分を欠損して猛毒を受けた堀田は、サラリーマンに肩を支えられながらも急いで移動していて。
しかし当然ながら逃げる先には猟兵が待ち構えている。
「ま、まだいるのか……うぅ」
堀田は自力で立つのも困難な状態だ。
こんな身体になってしまえば、自然と涙も出て来るという物だ。
「泣くな喚くな男だろうが!」
そこにクロウの言葉が響き渡る。
例えどんな無惨な姿になろうとも、彼がやろうとしていた事は許し難い悪行。泣いて済ませられる問題ではない。
しかし堀田にとっては見知らぬ者に散々暴力を振るわれているだけだ。涙が余計に流れて来て。
「チッ、鬱陶しい……ブラックが嫌なら辞めろ」
「嫌だと言った、覚えはないが」
酷使された末のリストラだが、そこは大して重要ではない。
「中卒でも農業漁業などの自営業がある。金額は兎も角、十分に生きて行けるぜ」
多くの場合は土地や資産が必要ではあるが、それを必要としない方法もある。
儲けは貧相な物だが、ブラック企業に勤め続けるよりは遥かに良い暮らしを期待できるだろう。
「それに挑戦しようという勇気がなかった時点でテメェは敗北者なんだよ!」
ボロボロの肉体に続いて、精神までもを砕こうとするクロウ。
突如として突き付けられる事実に堀田も逆ギレする……筈だったが、もうまともに動けないからか怒りもそう強くはない。
しかしダメージはあった様で、何かブツブツとうわ言を繰り返していた。
「知り合いにブラック企業勤めの人がいるんだけど、先輩として何かアドバイスある?」
唐突な未幽の言葉にうわ言を止める堀田。
「…………人がいる時は真面目にやって、いない時は手を抜け。本気でやろうが適当にやろうが、給料も仕事量も変わらん,、からな」
どれだけ頑張っても損をするだけだ。それならば本気でやる事に何の意義があろうか。
これだけ聞けば堀田にも悪い点はある様にも聞こえるが、本人は至って真面目に仕事をしていた。
リストラされた後、万年平社員だった彼なりに考え抜いた結論だ。
「成程ねぇー、じゃあもう一つ。ブラック企業撲滅のゆるキャラとして売れそうな姿してるね。使っていい?」
現状ボロボロなのは置いといて、こうなる前の姿はマスコット的な風貌だった。
何に使うのかは本人にしか分からないが、一応許可を取ろうとして。
「……いいんじゃないか?」
「おっ、本当に? 良かったー」
堀田は本気でどうでも良いのか、投げやりな口調でそう告げて。
二つの回答を聞いて未幽はスッキリしたのか、僅かに微笑むと廊下に転がっていた椅子にサイキックエナジーを放って。
ふよふよと浮き上がる椅子を見ると、堀田はもう嫌な予感しか感じていなかった。
サラリーマンが堀田の前に出て、椅子による攻撃を防ごうとするが……。
――ズガンッ。
高速で飛ばされた椅子がサラリーマンに当たると、通路の向こう側まで吹き飛んで。
もう一方のサラリーマンが堀田を逃がす為に後ろへ投げ飛ばすと、一番近いクロウに向けて殴り掛かって来る。
「扱いが随分と雑だな……どけっ!」
クロウは呪術で強化した拳に漆黒の炎を纏わせると、サラリーマンの動きを観察して。
ダッキングで敵の拳を躱すとカウンターのアッパーを放って。拳が顔面に当たると同時に爆発が発生して顔を吹き飛ばしてしまう。
サラリーマンが足止めしている隙に、床を這いずりながら堀田は逃げようとする。
しかし時間稼ぎにもならなかった様で、すぐに追い付かれてしまって。
「お、お猫様……俺に慈悲を……!」
縋り付くような声を上げると、向こうの通路から現れる大量の猫。
堀田を助ける為に一斉に此方に向かって来るが……。
「これが最後の悪足掻きか? それなら終わりだよ、お前」
クロウはそう言うと、巨大な肉断ち包丁を引き抜いて、猫達に向かって。
その間に未幽は何処からか幾つかのマタタビを取り出した。
「ほーれ猫たちとってこーい」
念力でマタタビを操ると、猫の進路方向にある横通路に向けて飛ばしてしまって、約半数はそちらに移動して行く。
迫り来る残り半分を、クロウが肉断ち包丁を大きく振り回す事で、その刀身と発生する風圧で吹き飛ばしてしまった。
猫が倒されても尚、逃げようと動き続ける堀田。
クロウは肉断ち包丁を床に突き刺して、俯せで逃げる堀田の身体を起こして地面に叩き付けて仰向けに。そのまま馬乗りになって。
「もういいだろ? 男なら最期くらいは潔く逝きな」
「や、やめろ……」
既にこの身体で生活する事は不可能。全身に猛毒も回っており、後は死を待つのみだ。
しかし、堀田はこの期に及んでもまだ生き足掻こうとする。
メラメラと燃える黒い炎がクロウの拳を包み込んで、堀田の顔面を狙って大きく振りかぶって、解き放つが……。
「――ゴギャアアッッ!!」
「くっ……!」
正真正銘、最期の足掻き。
声帯を犠牲にして血反吐と共に一瞬の絶叫が放たれると、至近距離でそれを受けたクロウは仰け反って。
しかし放たれた拳は止まらず。堀田の腹部を強打して、――ドゴォッ、と強い爆発が発生すると、上半身と下半身に真っ二つにして致命傷を与えた。
吹き飛んだ堀田の上半身を未幽が掴むと、それを背負投げで床に叩き付ける。
床に沈められて頭が潰れても、堀田はまだ生きていて。
直後に未幽の心臓への手刀が突き刺さる。ガタガタと身体を震わせると、堀田はスッと眠るように動かなくなった。
苦しみから解放されたのは彼にとって幸いだったかどうかは不明だが、これでようやく息の根を止めた。
オブリビオン堀田篤。労働者の末路は、この場所で自分が墓になる事だった。
「……せめて、今からは安らかな眠りでありますように」
未幽は静かにそう呟くと、胸の前で十字を切った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『ビアガーデンで乾杯!』
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POW : おつまみを食べる
SPD : ビールを飲む
WIZ : ……ソフトドリンクください
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それから少し時間が経って、UDCエージェント数人がビルに着く。
ビル内部を見ると、何をどうやったらこの様な状況になるのか不思議そうな顔だ。
特に堀田の遺体は凄まじく、エージェント達は困惑を隠し切れない様子だった。
後始末はUDCエージェントが全てやる様だ。
自分達は酒やジュースで仕事終わりの一杯と行こう。
何か他にやりたい事があれば、好きに行うと良いだろう。
波狼・拓哉
悲しい事件でしたね…邪教に手を出すと遺体もまともに残らないとは…(目を反らす)
まあ、そこの話は置いておいて…酒だー!あ、しまったなぁ…ここに来るまでに付け合わせ決めんの忘れてた…肉…いやチーズ……んんんん。逆に酒だけという選択肢…?
んーでもビアガーデンだしビールだし…あ、刺身食いてぇ。刺身にしよう。…というか刺身あるのかな。
まあ、食べる前に色々考えたけど食べ始めたらあるもの色々一杯頂きます。財布のこととか考えなくていいし飲みまくるぞー!酔いにも強いからお酒全種制覇でも目指そうかな。
(アドリブ絡み歓迎)
「悲しい、事件でしたね……」
見る者が見れば卒倒しそうな酷い状態。拓哉も全力で目を逸しており、邪教に手を出すと碌な事にならないと再認識していた。
死ぬにしても、せめてまともな形で死にたいものだ。
その場は全てエージェントに任せる事にして、拓哉は急ぎビアガーデンへと向かって行った。
そして、ビアガーデンまで来た拓哉だが、ここで一つのミスに気が付いて。
「あ、しまったなぁ……。ここに来るまでに付け合わせ決めんの忘れてた……」
ぼんやりと考えてはいたが、明確には決めていなかった。
肉、チーズ……敢えてお酒のみという選択肢もあるが、戦闘後というのもあってそれだけだと物足りない感もある。
しかし、ビアガーデンと言えばメインはビールだ。これに合う物と言えば……。
「あ、刺身食いてぇ。刺身にしよう」
それがあるのかどうか分からないが、取り敢えず歩いて回る事に決める拓哉だった。
結論から言えば刺身はあった。
だが食べ始めてしまえば、あれやこれやと色々な物を食べたくなってしまうのが人間の心情。少々重いが味は絶品の唐揚げやソーセージ、軽くつまめるチーズやポテト、魚介類も豊富で箸が進む。
とは言え、メインは酒だ。拓哉は兎にも角にも酒を飲みまくっていた。
なんせ財布の事情を気にする必要はないのだ。更に拓哉は酔いに強い為、ここぞとばかりに大量の酒をガンガン飲みまくる。
「よーしっ! 全種類制覇、目指すぞーっ!」
やはり仕事終わりのお酒というのは最高だ。
口の中に広がるビール独特の清涼感。
地酒の種類も豊富で、普段見かけない珍しい物も味わえる数少ない機会だ。
度数の高いジンやテキーラの蒸留酒は、スカッとして美味しいが喉が渇く。
そこにカクテルで追い酒をして、拓哉は素晴らしいまでの酒祭りを堪能して行った。
「…………。の、飲み過ぎたかな……?」
あまりにも大量に飲んだからか、酔いが強くとも流石に頭痛がする。
そんな状態になっても酒の魔力とは恐ろしいもので、完全制覇を目指して次の場所へ。
若干歩きもフラフラしていたが、酒を飲み尽くすという強い心で踏ん張って、しっかりと歩き出す。
だが、まだまだ飲むべき酒は残っている。
ここからが勝負だ、酒に負けずに頑張れ拓哉!!
大成功
🔵🔵🔵
尾崎・ナオ
ウィルバーさん居る~?居るなら飲もう~。(居ないなら一人のんびり物思いにふける)
いやあ、堀田を煽るかどうしようか悩んでたけど、猫逃がしたって聞いて全部吹っ飛んでしまったよ。やっぱ同族が絡むとカチンと来るもんだね。久々に怒った気がする。
生中ゴクゴク、枝豆パクパク。揚げ物よりあっさりした物の方が好き。冷ややっこいいよね。いや~、真の姿では食べられない玉ねぎだって、今じゃ美味しくいただけますよ。生タマネギのサラダ美味しいね。この辺は、人間って好きよ。猫より自由で、何より意思疎通が出来る言葉がある。
しかし残念。ナオちゃん、お酒は酔わないみたい。ほろ酔いのナオちゃん、可愛かっただろうになぁ。ざぁんねん。
「いやぁ、久々に怒ったなぁ」
堀田を煽るかどうかで悩んでいたのが嘘だったかの様に、ナオは彼との戦闘中は最初から最後までずっとキレていた。
やはり同族……ナオの真の姿も猫だが、それを逃してしまった事は許せなかったか。
まあそれは置いといて、今はビールだ食べ物だ。
ついでにウィルバーも誘おうと思ったが今回もグリモアベースで待機中の様だ。
あちらも今頃はインスタント食品等を食べているので、遠慮せずに楽しむとしよう。
まず手にしたのは中ジョッキに注がれたビールだ。
元は猫でも、仕事終わりの一杯というものは素晴らしいもので。
「ん、美味しいっ!」
ビールを半分近く飲み干すと、次に手を付けるのは料理。
揚げ物などの油系は控えて、枝豆や冷や奴などのあっさりした物を食べ始める。
煎られた焼き枝豆は小さいながらも良く味が染み込んで、ビールのお供にピッタリ。
冷や奴もまた、薬味と辛口の醤油が見事に調和しており、此方も同じくビールに合う。
料理の相性とは凄まじいもので、箸やビールを飲む手が止まらない。
「いや~、やっぱり人間って良いなぁ」
猫の時ならば食べられないものは多く存在する。
例えばチョコレート。今ここにある物ならば、冷や奴の薬味のネギもそうだし、一緒に運んできた生タマネギのサラダもそうだ。
シャキッとした食感にツンと来る辛味。これを味わえるのだから人間というのは良い。
特に食べ物に関しては猫よりも自由で、極めて強欲。
そして何よりも意思疎通できる言葉があるのだから、ナオは人間のこの辺りが好きな様子だ。
ナオはのんびりと物思いにふけながら、お酒と料理を堪能する。
しかし、お酒に関しては飲んでも飲んでも酔う事はないようで。
(「ざぁんねん、酔えないか~」)
どうやら純粋な人間とは違うのか、幾ら飲んでも酔う気配はない。
勿論、ビールは美味しいし何故これが人気なのかは飲めばよく分かる。
しかし酔えないと言うのは少し残念だと思っている。その理由は……。
(「ほろ酔いのナオちゃん、可愛かっただろうになぁ」)
やはりと言うか、自分の可愛さについてだった。
軽く酔うと女性の魅力が跳ね上がるという『ほろ酔い』。
元が良ければ当然それだけ効果が上がり、彼女がそうなれば……推して知るべし。
「酔う……マタタビとかどうだろ?」
ふとそんな事を口に出す。
猫に効果のあるマタタビを自分に使ってみるとどうなるのだろうか。
人間と猫の酔うという感覚はまた別の物なのかも知れないが、何らかの効果を得られる気もする。
そんな事を考えながら、ナオはビアガーデンを最大限に楽しんで行くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
イリーツァ・ウーツェ
酒は要らん。この程度の酒精では酔えん。
肴を貰う。肉が良い。
皿に盛った分は全て食べるから安心してくれ。
とはいえ、あまり食いすぎても金が掛かるだろう。
程々で切り上げるさ。
己が大食いである自覚はある。
酒を一本買って、UDCエージェントに渡す。
お疲れ様です。此れを。
哀れなニンゲンの墓に捧げるなり、貴方方で飲むなりして下さい。
ニンゲンは弱いから、追いつめられると逃げられないのだと、
烏鵠……私の兄は教えてくれた。
ニンゲンの理屈も、情動も。私には理解できない。
しかし、兄なら。
ニンゲンにずっと寄り添って生きてきた、彼奴であれば。
きっと、あの男の死を悼むだろう。
さようなら、堀田篤。
次の生では猫になれたら良いな。
ビアガーデンは辺りが暗くなり始めた今でも、かなりの人間で溢れ返っている。
イリーツァは大皿を手にして、適当な席に腰掛けて。
「さて、食べるか」
大皿の上には、焼き肉や唐揚げ、ステーキやハンバーグ……大量の肉が乗っている。
野菜などがない訳ではないが、圧倒的に肉料理の比率が多い。
今回は酒を飲まない。と言うよりも、この場にある酒では酔えないと肴のみを頂く事にしていた。
まずは、塩胡椒とスパイスのみの味付けだが中々の大きさのステーキに目を付ける。
早速、分厚いステーキにフォークを突き刺し、ナイフで切って。
それを口元へと運んで。
――ガツリッ。
気持ちの良い程に豪快な一口。しっかりと噛む事でステーキを味わう。
じゅっと弾ける肉汁がスパイスと混じり合い、肉の旨みを引き立たせて。
「これは、中々いけるな」
固すぎず柔すぎず、食感も良し。
それでいて然程高くはなく、庶民にも手が出せる価格だ。
ビアガーデンには酒だけではなく料理も良質な場合が多いので、中々に侮れない。
「……しかし、あまり食いすぎるのもな」
己が大食いである自覚はある。
限界まで食べれば、相当な金額が掛かる事は間違いない。
皿に盛った分の料理を食べ終えると、良さげな酒を一本買って切り上げる事にした。
続いてイリーツァが向かった場所は、先程の賃貸ビルだ。
「……っと、猟兵さんですか。何かお忘れ物でも?」
入口前にいたUDCエージェントがイリーツァを見ると、話し掛けて来て。
ビルの中に視線を移せば、遺体収納袋が見える。恐らくは堀田の遺体もあの中だろう。
「お疲れ様です。此れを」
エージェントに酒を渡すと、哀れなニンゲンの墓に捧げるなり、貴方達で飲むなりして欲しいとだけ言って、その場から去って行く。
周囲はすっかり暗くなって、辺り一面は暗闇に染まっている。
ポツリポツリと街灯が光り輝き、人通りの少ない道をイリーツァは歩いていて。
「ニンゲン……か」
思い浮かべるのは彼の兄、烏鵠の言葉。
『ニンゲンは弱いから、追いつめられると逃げられない』
まさに堀田の様な状況と言えよう。
イリーツァは姿形は人に見えるが、その本体も思考回路も人外のもの。
ニンゲンの常識も、理屈も、情動も、彼には理解できない。しかし兄ならば。
長き年月を積み重ねて、ニンゲンに寄り添って生きてきた彼奴であれば、堀田の死を悼む筈だ。
だからこそ。せめてもの弔いを。
「さようなら、堀田篤。……次の生では猫になれたら良いな」
大成功
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