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エンパイアウォー㉞~打ち砕け赤備えの残滓〜

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #オブリビオン・フォーミュラ #織田信長 #魔軍転生

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「二十四将と言われていながら全員いなかったから嫌な予感は前々からしてたんですがね……」
 頭を左手でガシガシとかいていたルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)は織田信長の背後に憑依している白い虎の映像を睨みつけながら周りに集まった猟兵達に説明を始めた。
「サムライエンパイアのオブリビオンフォーミュラ、第六天魔王『織田信長』は、秘術『魔軍転生』によって、配下の魔軍将を背後霊のように『憑装』させて戦ってくる模様です。なのでまだ交戦が続いている弥助と秀吉の力を借りてくるのは分かってはいたのですが……」
 目の前にある映像の織田信長が纏っているのは猟兵達にとっては全く見覚えがない、赤い鎧を身につけた白い虎の画像。
 しかしその虎が身につけている鎧に刻まれた家紋からその正体は余裕で判別がついた。
「甲斐の虎、『武田信玄』」
 誰かの口から漏れた言葉に、ルウの周りにある空気が歪む。関わっていた三方ヶ原の戦いで、復活する前に息の根を止めたはずの相手がそこにはいた。
「ですが、完全なオブリビオン化を阻止することには成功はしているため、あの武田信玄は虎のように唸るだけで喋りません。あくまで残滓でしかありません」
 まるで自分に言い聞かせるようにルウは早口で言葉を紡ぐ。
「ただ、織田信長が武田の力を借りて襲いかかってくることは紛れも無い事実です。そしてオブリビオンフォーミュラである彼がこちらよりも早く先手を打ってくることは確定的でしょう」
 しかし猟兵達にとっては誰を憑依してるかしてないかなど些細な問題であり、徳川軍の猛攻で強引にこじ開けた城門の先にいる織田信長の息の根を止めるのみである。
「それでは皆さま、織田信長の討伐をお願いいたします。安土城の中にはもう敵は織田信長しか残っていません。全ての軍勢を退けた徳川軍の皆様の意気に負けないよう、頑張ってきてください!」
 やる気充分な猟兵達の後ろ姿を、ルウは祈るような気持ちで見送っていった。


平岡祐樹
 三方ヶ原の戦い、実質的延長戦。内藤昌豊担当でした平岡です。
 まずはお決まりの諸注意から。
 第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
 赤備えの力を借りた織田信長の討伐、皆様よろしくお願いいたします!
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第1章 ボス戦 『第六天魔王『織田信長』信玄装』

POW   :    風林火山
【渦巻く炎の刀】【黒曜石の全身甲冑】【嵐を呼ぶ樹木の翼】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    甲斐の虎
自身の身長の2倍の【白虎状態に変身した武田信玄】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    武田騎馬軍団
レベル×5本の【武田軍】属性の【騎馬武者】を放つ。

イラスト:UMEn人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尾守・夜野
「…お前が信長か…!
無辜の民を傷つけた罪はその身で購え!」

そう啖呵を切った物のまずは先制を防ぐ

とは言ってもだ
相手がするのは純粋な強化

強化された力で一気に駆け寄り切り裂く算段かね?
そんな事させるつもりはない訳だが

転移直後にNagelの弾に利用している「火薬」を「マグネシウム」の粉末と共にやや上空に向かい投げ拡散させる【早業・時間稼ぎ】
翼によって飛ばされるならそれはそれで結構
何故なら奴が足を止めたという事なのだから

それを目眩ましに攻撃に移り
更なる火薬と毒を撒く【鎧無視攻撃】

どんなに鎧で身を守ろうと
内臓までは守れまい

五臓六腑に至るまで溶かし尽くしてくれようぞ

いくら薄めようと
混ざる事は変わらんだろうさ



 畳敷きの小さな部屋に座していた信長は転移する時に生じる僅かな空間の揺らぎを感じ、立ち上がった。
 転移直後にNagelの弾に利用している火薬をマグネシウムの粉末と共にやや上空に向かって投げた尾守・夜野(墓守・f05352)に信長は獰猛な笑みを浮かべた。
「粉塵爆発でも狙ったか? だが儂はそのような手には乗らんぞ」
 信長は刀を抜かずに木材が複雑に絡み合って作られた、背中から伸びる翼から凄まじい風と雨の伴った嵐が吹き荒れさせる。
「……お前が信長か……! 無辜の民を傷つけた罪はその身で購え!」
 横殴りの雨を全身に浴びながら夜野は次の手を打った。
『ここから先は俺の領域だ。取り込み溶かし………奪い尽くしてやんよ!』
 更なる火薬と毒を撒く夜野だったが信長は余裕そうに両腕を組み、嵐の中で佇んでいた。
「ふん、同じことを繰り返しても同じことよ」
 自分の掌の上で転がされていることに気づいていない信長の様子に夜野は鼻で笑って呟いた。
「……いくら薄めようと混ざる事は変わらんだろうさ」
「……何?」
 大量の風によって部屋中に広げられた毒は水に溶けることなく、この場にいる者の口の中に空気と共に入る。
「どんなに鎧で身を守ろうと内臓までは守れまい」
 信長は怪訝な顔を浮かべた直後、胸を押さえて息苦しそうに咳する。
「貴様……!」
「最初のは間違ってなかったさ。だが、こっちだって一辺倒じゃねぇんだよ」
 そもそも彼の作戦は自分が転移した状況から「信長が動かない」ことが絶対の条件だった。
 もし翼から吹き荒れさせる嵐が壁を全部吹き飛ばす威力だったら、横着せずに接近戦を信長が選択してきたら、今の状況には持ち込めなかった。
「五臓六腑に至るまで溶かし尽くしてくれようぞ」
 企みに気付き、脂汗をかきながら憎しみの篭った視線で睨みつけてきた信長に夜野は口から血を流しながら笑った。

成功 🔵​🔵​🔴​

アテナ・アイリス
さあ、剣士としてどこまで行けるかやってみるわ。さあ、織田信長、勝負よ!

「ブーツ」の力で俊敏に動き回りながら、【武器受け・見切り・第六感・カウンター】を使って攻撃を躱し、
どうしても受けざるを得ない攻撃は、【オーラ防御】と「アキレウスの鎧」のダメージ半減効果で攻撃を耐えきる。

耐えた後は、反撃よ。
炎の刀には、「アーパスブレード」で、黒曜石の全身甲冑には、防御力無効の「クラウソラス」で、嵐を呼ぶ樹木の翼には
UC【ディバイン・フェザー】で対応するわよ。五分五分の条件ならわたしは絶対に負けないわよ。
とどめは、二刀流で【2回攻撃】を組み込んだ、剣技「24連撃、レギンレイヴ」をつかって、大ダメージを与えるわ。



 凄まじい音を立てて城の一角が崩れ落ちる中、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)はしっかりと踏み止まり、吹き荒れる嵐の中を逆走していた。
「さあ、剣士としてどこまで行けるかやってみるわ。さあ、織田信長、勝負よ!」
 粉塵爆発の心配が無くなったからか、燃え盛る刀を抜いた織田信長は先程の毒のせいで血走った目で叫んだ。
「ふん、真っ向勝負を挑んでくるか小娘よ! その心意気は良し、受けて立とうではないか!」
 振られた刃から放たれた炎が、まるで意思を持っているかのように風に乗り、アテナの体を焼く。
 アキレウスの鎧で軽減されているとはいえ、自らが起こした雨を蒸発して維持し続ける炎は強烈な物で、浴びたマントやスリーブが少しずつ焦げ、消失していく。
『聖なる力よ。ここに集え!』
 青白い光が歯を食いしばるアテナの体を包み、薄い羽を背中に生じさせる。
 水のように透き通った刀身がまとわりつく炎を僅かに溶かす中、アテナの前に細長い白い光が走った。
「五分五分の条件ならわたしは絶対に負けないわよ」
 その先端を握り締めた瞬間、光が舞い散る花びらのように削れていき一本の剣が姿を現した。
 わずかに残った光を振り払うと、アテナは献身の想いを乗せた足で一気に信長の懐に沈み込む。
「24連撃、レギンレイヴ」
 暴風雨の中、襲いかかる火と硬い黒曜石を物ともしない斬撃の雨あられが信長へ襲いかかった。
「この鎧を無視するか、面白い!」
 光の刃に次々と斬られているにも関わらず楽しそうに笑う信長が振り下ろした刃はアーパスブレードの冷気を間近に受けているにも関わらず燃え盛り続けている。
 防御した刃を乗り越えて襲いかかってくる炎により色白の肌が変色して引き攣るような痛みを感じさせる中、アテナは最後の一撃を信長に叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルシー・ナイン
とうとう現れましたね、第六天魔王。
アナタを倒して、天下泰平の世を取り戻して見せましょう。

まずは武田騎馬軍団の突撃を凌がなければいけませんね。
騎馬軍団の動きを『見切り』、ブーストシューズの機能を最大限発揮して逃げ切りましょう。どうしても逃げ切れなければ『覚悟』を決めて『オーラ防御』で耐えきります。

騎馬軍団を凌いだら【高火力制圧用重装形態】に変形し、弓矢の届かない上空まで飛行してからガトリングガン、ブラスター、ミサイルを『範囲攻撃』で『一斉発射』です。
出し惜しみはしません。武田騎馬軍団ごと織田信長を撃ち抜きますよ。

どうです、第六天魔王に武田騎馬軍団。これがワタシの一人三段撃ちです!



「とうとう現れましたね、第六天魔王。
アナタを倒して、天下泰平の世を取り戻して見せましょう」
 エルシー・ナイン(微笑の破壊兵器・f04299)が度重なる戦闘で天井が吹き飛んだ場所から着地すると、上の階にいた信長は右手を前に出し、叫んだ。
「さぁ、武田の猛者共よ。其方の力を見せつけよ!」
 信長の背中から騎馬に乗った大量の兵士達が現れ、雪崩れ込むように階下のエルシーの元に突っ込んでくる。
「まずはこの突撃を凌がなければいけませんね」
 エルシーは騎馬軍団の動きを見切ってデータ化し、ブーストシューズの機能を最大限に発揮して逃げ切りを図る。
 しかし騎馬軍団は走れば走るほど、段差を越えれば越えるほどその動きを俊敏な物にしていく。動くたびに更新される脳内の計算結果はブーストシューズの限界値を騎馬軍団が超えたことを知らせた。
 エルシーは内心舌打ちをしながらその場で止まって振り返り、騎馬軍団の突撃を受け止めようとオーラによる防壁を築く。
 しかし騎馬兵の突き出した槍はオーラを軽々突き破るとエルシーの脇腹に刺さった。
 騎馬兵はすぐさま上に投げ飛ばそうと槍を持ち上げようとするが、見かけによらぬ重さに手が止まる。その瞬間を逃さず、エルシーは突き刺さった槍をへし折った。
『フルアーマーパーツ装着、全装備火器のリンクを確認。これより、高火力制圧モードに移行します』
 青い服に身を包んだ赤髪の少女の姿が紫と銀に彩られた鎧の中に消える。
 そして弓矢の届かない上空まで自ら飛び上がるとガトリングガンやブラスター、ミサイルの砲塔を展開させ、その全てを眼下の騎馬軍団に向けた。
「出し惜しみはしません。アナタ方ごと織田信長を撃ち抜かせていただきます」
 弾が一気に発射され、凄まじい轟音が辺りに響き渡る。弾が無くなっても代わりの銃火器が火を吹き、その間に弾の補充が自動で行われ、次の出番を待つ状況が常に展開されていく。
「どうです、第六天魔王に武田騎馬軍団。これがワタシの一人三段撃ちです!」
 煙が落ち着いて辺りが見通せるようになると、騎馬軍団だった物が安土城の廊下にばら撒かれているのが見えてきた。
 しかしその中で信長はしっかりと自分の足だけで立ち、楽しそうに笑っていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可

寛永三方ヶ原で阻止したはずなのに、ここで出るか、武田信玄!
憑装しているだけとは言え、決して侮れない!

…しかしホントに虎なんだな、信玄(素直)


騎乗状態になるのを防ぐことはできないので
最初の一撃をどう躱すかだ
【魂魄解放】を発動し高速移動が可能になった状態で
「地形の利用、見切り、残像、ダッシュ」で攻撃を見切り、高速移動で走り回りながら残像を駆使して避ける
回避不可なら「武器受け、見切り、オーラ防御、激痛耐性」でがっちり受け止め

耐えたら「カウンター、咄嗟の一撃」で反撃
「2回攻撃、怪力、鎧砕き、なぎ払い」と(UCで発動可になった)衝撃波で信玄ごと一気に叩き斬る!

これが僕の…意地だ!



「さて、儂も一駆けするとしよう。行くぞ信玄!」
 信長の後ろに2倍ほどの大きさの白虎が唸りながら現れる。その頭には四つ割菱と呼ばれる特徴的な家紋が彫られた金属製の輪がかかっていた。
 その家紋と白虎から発せられる威圧感に館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は剣を構えながら目を険しくした。
「三方ヶ原で阻止したはずなのに、ここで出るか、武田信玄!」
 鞍無しの信玄に飛び乗った信長は思いっ切りその尻を叩く。すると信玄はその場で吠えて館野に向かって突っ込んできた。
『喰らった魂を、力に替えて』
 黒みがかった銀色の刀身から漏れ始めた霊体が館野の体にまとわりつく。霊体の力で自身の力を底上げした館野は城の残骸が転がる廊下を走ってくる信玄の動きを見切りながら後進した。
 館野の走った後に残る影を信玄の突進が消し飛ばす。
「どうした黒き武者よ、逃げ惑うだけでは儂は止められぬぞ!」
 信玄が近くの壁を爪で引っ掻いて壊したことで連鎖的に崩れ落ちてきた天井が館野の行く手を阻む。
 落ちてきた大量の建材の前で急停止した館野の元に信長と信玄が迫る。館野は身を翻し、剣の刃と柄をそれぞれ手にして防御の姿勢を取った。
 しかしあまりの体格差に館野の体は軽々と吹っ飛ばされ、回避した建材の山の中に叩き込まれた。
「ふん……この程度か。やはり儂に直接来るのは腕に自信のある者か」
 あっさりと決してしまった戦いを鼻で笑う信長に対し、信玄は唸り続ける。
 すると土煙が舞う建材の山だった物から大量の斬撃が飛んできた。斬撃による衝撃波が信玄の毛並みを削り、信長の体勢を崩させる。
 不意の一撃に1人と1匹の視線が集まる中、煙の中から現れた館野は口から出た血を拭いながら信長を睨み返した。
「これが僕の……意地だ!」
「やはりそうでなくてはな……。もっと足掻いてみせよ、 猟兵よ!」
 突貫してくる館野に信玄の爪が迫る。館野の振るった刃は信玄の爪を斬りとばすと、返す刀を開かれていた信玄の口の中に突き刺した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

遠呂智・景明
ここに至ったら余計な問答は必要ねぇ。
ただてめぇを斬る、それだけよ。

でけぇ虎になった信玄公をどうするかだが。
まずは受け手に回ろうか。
腰から二刀を抜き放ち、敵の攻撃を見切りつつ、こちらに届きそうなものは受け流す。
受け流した勢いは周囲の壁や床に逃がそう。
とはいえ、その全部を受けとめきれないだろうよ。だが多少の傷なんぞ無視だ無視。

仕込みは上々。
そのデカい巨体でこの木造かつ狭い室内、動きまわりゃどうなる?
丁寧に床にはお前らの攻撃を受けた跡がたくさん残ってるだろう。
上手いことハマりゃこっちのもん。
それが無理でも動きが鈍ればこっちの一撃が届くだろう。
跳躍して信玄公ごとぶった斬る。
風林火陰山雷番外 風・林!



 館野が切り落とした信玄の爪が、深々と切った口の中の数がまるで巻き戻される映像のように元通りの姿へと戻っていく。
 しかし治ったとはいえ、自らの体を傷つけられた怒りは治らず、信玄は騎乗する信長のことを全く気にせずに館野の体を前足で叩き飛ばした。
「ここに至ったら余計な問答は必要ねぇ。ただてめぇを斬る、それだけよ」
 仲間の姿が城外に消える中、遠呂智・景明(いつか明けの景色を望むために・f00220)は一切動揺せずに自らの本体と相棒を抜いて構えた。
 怒り狂う信玄が景明の姿を目に捉え、凄まじい勢いで突っ込んできた。
 景明はその巨体から繰り出される爪を両の刀で切り返し周囲の壁や床に逃がそうとする。
 とはいえその全部を受けとめきれるはずもなく、景明は長い廊下を何度か転がされる。景明は回転する中で手を伸ばし、無理矢理体勢を立て直した。
 両足で勢いを殺しきれずに滑る中、景明の視点は勇ましく吠える信玄に集中していた。
「仕込みは上々、か」
 信玄の周りは先程の館野との戦闘と今の戦闘で見る影もなくボロボロになっている。
『風林火陰山雷番外』
 次はこちらの番、とばかりに景明が信玄に向かって突進する。
 信玄が向かい打とうと一歩踏み出した瞬間、前足のついた床板が折れ、信玄は前につんのめった。
『神速の一撃。臆せぬものだけ前に立て』
 防御の構えが出来なかった信玄の頭部に音速を超える斬撃が何十発も叩き込まれる。
 噴水のように頭部から血を発した信玄が崩れ落ちる中、ゆっくりとした拍手が送られた。
「お見事と言っておこうではないか」
 その音が聞こえる方を向くと見た目は無傷の信長が余裕そうな笑みを浮かべていた。
「とっくのとうに下りていたってか……通りで背中にいなかったわけだ」
「暴れ馬は外で乗るに限るのでな……いや、あれは暴れ虎だったか」
 景明の剣筋を見てもなお、冗談を言う信長はゆっくりと刀を抜いた。
「次は儂と手合わせ願おうではないか。其方、人ならざる者であろう? この程度の連戦はお茶の子さいさいだろう」
「勘弁してくれよ……」
 口では嫌そうにしながらも景明は不敵な笑みを浮かべながら両の刀を構え直した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

氏神・鹿糸
鷲穂(f02320)と

可愛らしいトラを従えて…魔王にはペットを可愛がる心もあるのね。
私だって可愛いヤギを連れているのよ。
ねぇ、鷲穂。

先制攻撃に対しては、魔法の豆の木を[ロープワーク]で操って馬の足を引っ掛けて撹乱。
そのまま豆の木に雷[属性攻撃]を流して追い討ちよ。
豆の木が捉えきれなかった騎馬軍に対しては、万が一の[オーラ防御]を展開しつつ[早業・空中浮遊]で躱すわ。

反撃には縛霊手。
縛霊手から[全力魔法]と炎[属性攻撃]を込めて放つわ。
―花を召しませ。
私の故郷を、世界を、過去が脅かすことなんてあってはならないの。
さようなら、ステキなあなた。


明石・鷲穂
鹿糸(f00815)と来たぞ。

ペットのヤギ……え、俺か。
一緒にされるのは心外だが…故郷の為に身を呈するぞ。

降魔杵を装備。
召喚した山羊の巨人から【オーラ防御】を展開しつつ、炎へは氷の【属性攻撃】を放つことで軽減。
武器で防げるものは【武器受け】
翼で飛んで躱しつつ、防げないものへは【激痛耐性】だ。

―是れ開悟に至りて、天魔に乞う。
攻撃を受けて隙が見えたら、【カウンター】だ。
巨人共々、【捨て身の一撃】で【怪力】を込めた降魔杵で【串刺し】をしよう。

これは憎悪だ。
俺も鹿糸も…育った古里を荒らされて情けをかけるほど慈悲は無い。
過去は現在の礎だがな。過去に干渉される必要は無い。
お帰り願うってやつだなあ。



「可愛らしいトラを従えて……魔王にはペットを可愛がる心もあるのね。私だって可愛いヤギを連れているのよ。ねぇ、鷲穂」
「可愛いヤギ……え、俺か。一緒にされるのは心外だが……」
 ペット扱いされたことに気づいた明石・鷲穂(門前の山羊・f02320)は氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)に抗議しようとしたが、頬に手を当てて微笑んでいる姿に気をそがれた。
 なお、信長は「可愛らしいトラ」を今まさに見捨てたばかりだったのだが、それを指摘するのは野暮という物だった。
「……まぁいい、故郷の為に身を呈するぞ」
「其方ら、儂は今この者と果し合いをしているのだ。邪魔をしないでもらえるか?」
 信長は影明との斬り合いの合間に二人を一瞥して呟くと遠くから複数の馬の蹄が木の板を叩く音が上から聞こえてきた。
「あらあら、お馬さんもいましたか」
 鹿糸は困ったように首を傾げながら、蹄の音が聞こえてくる方向に茶色い豆の粒を転がした。すると土や水が無いにもかかわらず豆は発芽し、みるみる大きく成長していった。
「ちっ、この程度の段差!」
 突如馬の脚を引っ掛けるように現れた豆の蔦に全速力で駆け込んできた武田の騎馬軍団の武士は咄嗟に手綱を引き、飛び越えさせる。
 しかし豆の木を通じて放たれた雷撃がその体を貫いた。
 悲鳴を上げさせる余裕すらも与えられずに馬ごと絶命した同胞が豆の蔦の向こうで倒れ伏したのを見て、後ろに続いていた武士が躊躇して馬の脚を止める。すると急激に太くなっていった蔦が騎馬軍団がいる通路の入り口を完全に塞いでしまった。
「くそっ、猟兵め! この道を開けろ!」
「どけ、我が斬り落と」
「……これでお馬さんの部隊はこちらに来れませんわね」
 豆の蔦を切ろうと刃物を持ち出した武士が感電したとみられる音をバックに信長は一太刀を浴びせ、襖ごと景明を部屋の中に叩き込んでいた。
「ふん、それなりに研鑽は積んでいたようだが……所詮は人に使われる側だった物だったか」
 余韻に浸る信長に、召喚した山羊の巨人を背に空を舞って無言で襲い掛かった鷲穂に向けてすさまじい暴風が吹く。
「待たせてすまなかったな。次は其方の番だ」
 鷲穂は巨人から発せられる防壁と自分が放つ氷の魔法で、風に乗ってくる炎を弱めようとした。しかしオブリビオンの最高峰である存在が放つ炎はその程度では抑えきれず、全く弱まった気がしない炎に焼かれながら歯を食いしばった。
『花以外何も残らせないわよ』
 完全にノーマークだった鹿糸の縛霊手から放たれた炎が信長の体を直撃する。吹き荒れる嵐を乗り越えた炎に囲まれながらも平然とし、鹿糸に視線を移した信長に向けて鷲穂は吠えた。
『―是れ開悟に至りて、天魔に乞う』
 鷲穂と巨人は無骨な鉄塊のようにみえる降魔杵を炎にまかれながらも、こちらに一切視線を向けようとしない信長に向かって叩きつける。
 しかし信長は一切顔色を変えずに振り返ると、狙いすましていたかのように炎を纏った刀で山羊の巨人の腕を切り落としてから、鷲穂の剥き出しになっていた腹を思いっきり蹴り飛ばした。
 両手を失った山羊の巨人の姿が揺らいで消えていく中、鷲穂は廊下に着地して踏みとどまると、廊下中に咲き誇った花を踏み潰しながら二撃目を浴びせようと近づいてくる信長に向けて杵を突き出した。
 自分の身を顧みない剛腕から放たれた一撃は信長の振るった刀を弾き返すと、そのままこれまでの連戦の中で一切傷ついていなかった黒曜石の鎧を砕き、その奥にある信長の体まで貫いた。
「これは、憎悪だ」
 蹴られた腹部と炎が消えてもなお残る火傷の痛みに、鷲穂は荒い息を吐きながら膝に手をつき、床に串刺しとなって倒れ伏した信長を睨みつけた。
「俺も鹿糸も……育った古里を荒らされて情けをかけるほど慈悲は無い」
「私の故郷を、世界を、過去が脅かすことなんてあってはならないの」
 僅かに残った天井からポタポタと落ちる水滴に傘をさした鹿糸は鷲穂の隣に歩み寄り、息を吐いた。
「―花を召しませ」
 鎧がはがれ、度重なる戦闘で血だらけになっていた体を露わにした信長は乾いた笑いを浮かべながら血を吐いた。
「は、ははっ。見事なり。……炎ではなく花に囲まれて死ぬというのも、悪くはない、か」
 沢山の花に彩られた、かつてサムライエンパイアに君臨した魔王はそう言い残して消え、後には床に突き刺さった1本の鉄塊が残された。
「さようなら、ステキなあなた」
「過去は現在の礎だがな。過去に干渉される必要は無い。お帰り願うってやつだなあ」
 信長の姿がなくなったのを見届け、ピリピリとした雰囲気を解いて杵を抜こうと鷲穂は手を伸ばしたが、先ほどの炎による熱は未だに抜けておらず、触れた瞬間に素早く手を引っ込めた。
 そのどことなく間抜けで、愛らしい姿に鹿糸は口元に手を当てて控え目に笑った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月27日


挿絵イラスト