エンパイアウォー㉞~風林火山は魔王と共に
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「ついに織田信長の元へとたどり着いたようじゃな」
今までの苦労が報われた瞬間ではあるが、ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)の表情は晴れない。
魔空安土城には「信長軍の本隊」が存在したが、それらは万全の状態で島原に辿り着いた幕府軍が相手をしてくれている――猟兵は織田信長を相手にすればよい、そういう有利な状況が今までの努力のおかげで作れた……そのはずだ。
「じゃが、あの織田信長はこの絶対的不利な状況でもまだ諦めておらん……最後の締めを間違えれば、痛い目を見るのはこちらになるじゃろう」
有利な状況を作ってなお、オブリビオンフォーミュラである第六天魔王『織田信長』が脅威なのは違いない。その事を決して忘れてはならないだろう。
「あやつには秘術「魔軍転生」というものがある、配下の魔軍将を背後霊のように「憑装」させる術らしい」
みんなに相手をしてほしいのは、甲斐の虎『武田信玄』の力を「憑装」した織田信長だ。
「信長はこちらが使う力と同質の力を返してくる……それにどう対応するかが鍵となるじゃろう」
織田信長は猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを猟兵より先に使用、先制攻撃してくる。そのため、いかに防ぎ反撃に繋げるかが重要になる。
「何の策もなく当たれば、一方的にこちらが倒されるだけじゃ。そうなれば、今までの努力も無意味になる」
重要なのは手段と方法――それがなければ、挑んだとしても返り討ちに合うのが関の山だ。
「何、ここまでくれば一人で全てを行なう必要もない。自分の力だけで足りなくば、力を合わせ対策を練るのも手じゃろう。もうひと頑張り、頼んだぞ」
波多野志郎
人生五十年は今は昔、どうも波多野志郎です。
エンパイアウォー、ついにオブリビオンフォーミュラ第六天魔王『織田信長』との決戦となります。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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重要なのは、相手の絶対先制に対抗する手段と方法です。一人で知恵を絞るもよし、仲間と力を合わせるもよし。連携こそが猟兵の強味です、頑張っていきましょう!
それでは、魔空安土城にてお待ち致しております。
第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』信玄装』
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POW : 風林火山
【渦巻く炎の刀】【黒曜石の全身甲冑】【嵐を呼ぶ樹木の翼】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 甲斐の虎
自身の身長の2倍の【白虎状態に変身した武田信玄】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : 武田騎馬軍団
レベル×5本の【武田軍】属性の【騎馬武者】を放つ。
イラスト:UMEn人
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
梅ヶ枝・喜介
ついにその面ァ拝めたゼ!織田信長!
後ろに控えるは甲斐の虎!武田信玄か!
さすが!総大将ともなれば背負ってるモンが在るらしい!
だが引かんッ!
おれにだって背負ってるモノが在る!
この戦争で大変な苦労をして来たのはよ!
アンタを倒して天下泰平の世を取り戻すためだッ!
どんな強さだろうと!一歩だって譲る気は!ないッ!
おれァこの強大な相手を出し抜ける頭は持たん!
ぶっ飛ばされないように足を床に突き立てて!痛ぇのを覚悟して!
どんな猛攻何するものぞ!って気合で耐えるしかねえ!
満身創痍だって構わねぇ!その程度で生涯を懸けた剣が曇る事ァありえん!
全身全霊を込める!研ぎ澄まし続けた一刀を見よ!
人の世に害為す過去を断つッ!!
アテナ・アイリス
相手は騎馬で挑んでくる様ね。でも、相手の機動力を奪ってしまえばいいのよ。
騎馬武者が何人こようと、攻撃を躱して耐えきって、反撃のチャンスを待つわ。
「ブーツ」の力で俊敏に動き回りながら、【武器受け・見切り・第六感・カウンター】を使って攻撃を躱し、
どうしても受けざるを得ない攻撃は、【オーラ防御】と「アキレウスの鎧」のダメージ半減効果で攻撃を耐えきる。
耐えた後は、騎馬武者が集まった瞬間をねらって反撃よ。
UC『ニヴルヘイム・ストーム』を使って、氷属性のダメージを与えた上で氷結により対象の動きを一時的に封じる。
あとは、「アーパスブレード」と「クラウ・ソラス」の二刀流で攻撃し続けて大ダメージを与えるわ。
ルカ・ウェンズ
人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり 一度生を得て滅せぬ者のあるべきか
【行動】敵が自身を強化して攻撃してくるなら、その前に死なない程度に私の血や肉を代償に異世界の信長軍団に共に戦ってもらうわよ。間に合わないら【オーラ防御】で身を守り、それから夢幻の如くを使い反撃するわ。
私は真の姿になれば腕や足を失っても元通りになるけど、痛いのは痛いし死ぬときは死ぬから…できれば使いたくないけど死ぬまえに宇宙鉄甲船や銀河信長軍団!裏切らなかった浅井長政!!と明智光秀の強さを見てみたいからこのユーベルコードを使うわ。この世界の織田信長は驚いてくれるかしら?
陰白・幽
おー、あれ今回の黒幕の信長さんだ、うーんすごい武士っぽい、凄く強そうだけど頑張るぞー。
敵の攻撃は炎の渦だったり嵐だったら渦の中心にあたる部分が隙になるんじゃないかな……よし、そこを狙って一撃を狙うよー。
遠距離攻撃を誘うためにボクも遠距離からの鎖を使って攻撃を仕掛けていって、ボクの動きに注目させてからUC発動する準備をしたら先制攻撃を敵は仕掛けてくるはず、最初はその攻撃を見極めるためにあえて受ける、攻撃の中心を見極めたら永眠龍の刻を発動して渦と嵐の中心へ向かって
勇気を持って突っ込んでいくよ多少のダメージは覚悟の上だよ、勢いをつけてそのままキーックて感じでいくよー。
ボクの全力をうけてみろ〜
メルノ・ネッケル
そっちが虎に乗るんなら、こっちも愛馬に乗らせてもらう!
行くで「キツネビサイクル」……【騎乗】の腕、見せたるわ!
まずは向こうの先手、虎信玄に乗っての攻撃。
具体的な手までは分からへん……ならば、一番の対策は距離を離すこと!
9秒間のカウントを始めつつ、バイクで兎に角距離を取る!可能ならジグザグに逃げ回りたい所やな。
こいつで普通に相対するより攻撃を避けやすく、捌きやすくする!
敵前逃亡と罵ってもらって結構、9秒さえ稼げばどれだけ離れた状態でもまず射程の心配はいらへん。
……さて、9秒!バイクを反転しつつ止まり、二丁拳銃を構える!
信玄公、その顔に銃弾熱線叩き込む!
『九秒の狐』!信長諸共、傷受けてもらおか!
蒼焔・赫煌
可愛いボクたちは負けないよ!
何故なら、正義の味方だからねっ!
速そうで強そうだね!
でも、その大きさなら小回りはきかなそう!
ついでにお城の中じゃあ動きにくそうと見た!
そんなわけで可愛いボクと鬼ごっこ、しようぜ!
全力全開の最高速度で部屋の壁から天井まで走り回って攻撃から逃げ回る!
【野生の勘】と【第六感】を信じて、攻撃の察知を試み、攻撃は【見切り】ながら【武器受け】と【盾受け】で抑える!
トドメの大きな一撃を放とうとしたら、【勇気】と共に前へ!
ドカンとやられるのは【覚悟】の上!
狙うのは【捨て身の一撃】からの【カウンター】!
最大火力の炎を蹴りを信玄の鼻っ面にお見舞いさ!
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
チガヤ・シフレット
是空(f16461)と出陣だ!
信長に信玄が手を組んで、とは派手だな!
さーって、一気にぶっ飛ばして戦争にケリをつけるとするかぁ!
是空と組めば怖いもんなし、ってな!
虎に跨るとはイカスなぁ! しかもしれが信玄とは、っくく……!
面白過ぎるだろう!
兵装を起動、脚部のブースターも全開!
高速機動によってデカブツの虎の攻撃をかわす!
躱しきれない分は、メタルアームで受けて流す!
多少壊れてもなんとかなるさ
そのあとは【一斉発射】で撃ちまくりだ!
こんだけでかけりゃ適当に撃っても当たるなぁ!
さらにミサイルぶち込んで【衝撃波】でぶっ飛ばしてやろう
乗騎ごと信長を吹っ飛ばすってな!
是空と波状攻撃で叩きのめしてやろう!
無累・是空
チガヤ(f04538)と組むぞ
強敵難敵なにするものぞ。第六天魔王、相手にとって不足なしじゃあ!!
此奴を仕留めりゃあ戦も終いか?
じゃあ出し惜しみはなしじゃろ!!
初撃の風林火山は【念動力】による斥力と【オーラ防御】による防御の重ねがけ、念動力にて自身を動かし、吹き飛ばされたとみせかけ【空中戦】も絡めてしのぐ。
『超神足通』でもって空中でUターンしてトップスピードで突っ込むぞい!マッハ3.8パンチとキックじゃあ!!
飛べんのは不便じゃのう!と煽りつつ空対地攻撃を狙ってくぞい!
わしを狙って飛び掛かるのならばそれも狙い通り。チガヤのええ的じゃあ!
それにいかに強かろうとにわか仕込みの空中戦ではわしに分がある!
リティ・オールドヴァルト
みんなと協力
信長倒す
まおうさん、なのですね…
確かに黒くて強そうなのです
白い虎さんまで背負っているのです
…でもっ!
負けるわけにはいかないのですっ!
気合い入れ
先制で強くなられるとやっかいなのですっ
炎の刀は高速詠唱の全力魔法
雨で消してしまうのです
属性攻撃で氷も付与
天候が悪かったら翼も使いにくいはずっ
嵐は呼ばれる前に咄嗟の一撃で翼をなぎ払いなのですっ!
真っ黒の甲冑は硬そうですけども
第六感で甲冑の継ぎ目を狙って串刺しするのです
ここですっ!
勝機が見えればジャンプからの串刺し
フェイントも交え
絶対に、当てるのですっ
当たればドラゴニック・エンド
リリィ、お願いっ!
過去に未来はない
ここであなたの野望は潰えるのですっ
レクス・マグヌス
【心情】
これが魔王信長か
オブリビオンフォーミュラの名は伊達じゃないか
だが、僕もエンパイアの人々のために負けられない
いざ、尋常に勝負!
「嵐よ起きろ! 戦いの時だ!」
【行動】
「地形を利用」して騎馬武者の移動阻害を狙う
「生命力吸収」で持久戦に対応
「敵を盾にする」で防御体制を築く
「残像」「オーラ防御」で距離を詰める
「吹き飛ばし」で騎馬隊の陣形が薄い箇所を作る
ある程度距離を詰めた段階で、「ウィザード・ミサイル」を叩き込む
魔王と言われていようと、王であることに変わりはない
だが、僕にも取り戻したい世界がある
そのためにも、あなたに負けるわけにはいかない
夢幻のごとく、歴史の闇に沈め!
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
お前がここのフォーミュラか
まるには悪いが、カガリは武人でないのでな
手段は選ばず、潰しに行かせてもらう
騎馬武者は【鉄門扉の盾】を【隔絶の錠前】で施錠して、
まるを扉の内に匿い世界ごと隔離することでやり過ごすぞ
まるへの先制攻撃の分もまとめて引き受けよう
新手が来なくなったら【追想城壁】で軍勢を消し去る
そのどさくさで錠前を外し、本物のまるを門の外へ
城壁はそのまま維持するぞ
この壁の内では、もう軍勢は呼べないぞ
壁の外…城の外でなら、呼べるだろうが
城の主が、城を開けるのは、敗北を受け入れる意味だと聞いたが
そうだな、まる?
まるへの攻撃は、【大神の神眼】でなるべく抑えるようにする
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
第六天魔王・織田信長、そして甲斐の虎・武田信玄、相対するは武人の誉れ
いざ参る
召喚された武田騎馬軍団はカガリが打ち消してくれよう
頼んだぞ、カガリ
お前の働きに応えよう
先制攻撃が終わらぬうちに【金月藤門】のフェイントと残像でカガリの後ろにいると見せかる
迷彩効果を発揮して【黒華外套】の忍び足と【黒華軍靴】のダッシュで素早く信長へ
信長に気づかれぬうちに【蒼炎氷樹】で蒼い炎を放つ敵の動きを一時止められたら【碧血竜槍】を槍投げして鎧砕きと部位破壊で信玄装を破壊
次に信長を【魔槍雷帝】で串刺し雷撃
敵の攻撃は【泉照焔】で見切り、【白檀手套】でカウンター
【黒華軍靴】でジャンプして回避
織銀・有士郎
(拙者、完全に場違いな気がするでござる……)
なに、他の猟兵の緊張を和らげる効果はあるさ……多分な。
いくぞ狸神様、狸が虎を倒す瞬間を見せてやろう。
「まずは防戦かね、気張れよ狸神様」
信長も信玄も実力が全く分からないし、まずは動きをある程度把握したい。
信長と虎の様子を伺いつつ、攻撃の軌道を【見切って】回避するか、
【野生の勘】で回避が難しいと判断した際には武器で受けて直撃だけは避けよう。
その際、狸神様から転倒しないよう踏ん張らないと。
狸神様も踏ん張れよ、転倒したら致命的だぞ。
ある程度動きが把握できたら、攻撃を【見切り】易くもなるだろ。
信長と虎の攻撃を回避し、その隙に抜刀術を叩き込んでやろう。
ヴィクティム・ウィンターミュート
いいね、最後まで勝利を諦めない姿勢は好きだぜ
だが残念なことに──この舞台じゃ、お前は主役はなれねぇ
猟兵が勝つ筋書きは変わらないのさ…さて
最終決戦といこうぜ
まずは先制攻撃の対処
武田騎馬隊による面制圧が来るか
【ダッシュ】【早業】で真っ直ぐに逃走しながらUC発動までの【時間稼ぎ】
『Sanctuary』を地面に素早く発射、地形情報を書き換え
【ハッキング】で書き換え、オブジェクト生成
障壁展開、ベクトル変更地帯展開
壁で防ぎ、ベクトルをずらして騎馬隊を捌き切る
先制攻撃を凌いだら、足元から拘束具を展開して信長を拘束
電子の槍を生成、自動銃座を生成
もうこの安土城は俺の支配下だ
盤上をお前の敵で埋め尽くし──王手だよ
セゲル・スヴェアボルグ
偶には電脳魔術士らしくやるのも悪くないか。
武装の属性でも書き換えるとしよう。
向こうさんが炎の嵐なら、こちらは水の嵐といこうじゃないか。
ついでに硬さも盛っておくとしよう。
近づく攻撃は盾でうけつつ、接近する。
重量があれば飛ばされることもなかろう。
黒曜石は一見硬そうには見えるが、鉄などに気比べればそこまで硬いものじゃない。
無論、何かしらの強化は施されているだろうが、その本質的な性質は変わらんだろう。
それを上回る硬さで叩いてやればいいだけの話よ。
割れぬのであれば割れるまで叩き続けるのみ。
そちらの刃が俺を斬り捨てるのが先か、俺がお前さんを叩き潰すのが先か、根競べといこうじゃないか。
●人生五十年――
魔空安土城、その一室で織田信長は外の喧騒を肴に盃を傾けていた。
「……はぁ、この声だけは変わらんか」
命と命、誇りと誇り、そこにあるのは等価のぶつかり合い。合戦、命のやり取りでしか輝けぬ者もいる――そんな者たちが生きた時代が、戦国時代であった。
「人生――」
「人間五十年 下天の内をくらぶれば」
信長が、盃を止める。自らの歌にかぶせた声に、視線を向けた。そこにいたのは、たどり着いた猟兵達――ルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)だ。
「……どうした? 続けよ」
信長は立ち上がり、扇を手に取る。その言葉と扇の意味に、ルカは小さくうなずいた。
「人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり 一度生を得て滅せぬ者のあるべきか――」
敦盛、それは信長が人生においてもっとも愛した舞曲だ。ルカの歌に合わせ舞い切った信長は鷹揚に言ってのけた。
「良き歌だ、褒めてつかわす」
「……お前がここのフォーミュラか」
出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)の短い問いに、扇を閉じて信長も短く答えた。
「然り」
「おー、あれ今回の黒幕の信長さんだ、うーんすごい武士っぽい」
凄く強そうだけど頑張るぞー、と陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)がこぼす。
(「まおうさん、なのですね……確かに黒くて強そうなのです。白い虎さんまで背負っているのです」)
リティ・オールドヴァルト(天上の蒼・f11245)の視線は信長だけではなく、その背後に立つ甲斐の虎にも向けられていた。比喩でなく、本当に虎だった。
織田信長と武田信玄――戦国の世に名を轟かせたビッグネームの揃い踏みに、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は静かに告げた。
「第六天魔王・織田信長、そして甲斐の虎・武田信玄、相対するは武人の誉れ」
「で、あろう? 戦国の世でも皆無であった。せいぜい励むがよい」
ガシャン、と盃を踏み砕き、信長が一歩前に出た。それだけで足元から全てを焼き尽くすような覇気に襲われる。たった一歩、されど一歩。それだけ死地へ近づいたのだという証明だ。
「脆ければ即座に噛み砕く。覚悟はよいな?」
口の端を笑みの形に持ち上げる信長に、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)も自然とこぼれる笑みと共に言った。
「いいね、最後まで勝利を諦めない姿勢は好きだぜ。だが残念なことに──この舞台じゃ、お前は主役はなれねぇ」
「ほう、ならば誰が主役とやらだ?」
ヴィクティムの軽口に、信長は乗る。ヴィクティムは、自分の両手を広げ仲間達を指し示した。
「猟兵、主役が勝つ筋書きは変わらないのさ……さて、最終決戦といこうぜ」
「良い、許す」
信長が二歩目を踏み出した瞬間、猟兵達が動いた。
●下天の内をくらぶれば――
「ついにその面ァ拝めたゼ! 織田信長! 後ろに控えるは甲斐の虎! 武田信玄か! さすが! 総大将ともなれば背負ってるモンが在るらしい!」
身震いに襲われながら、梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)が前に出る。振り上げるのは木刀、渾身の力を込めて畳を蹴ると信長へと迫った。
「だが引かんッ! おれにだって背負ってるモノが在る! この戦争で大変な苦労をして来たのはよ! アンタを倒して天下泰平の世を取り戻すためだッ! どんな強さだろうと! 一歩だって譲る気は! ないッ!」
恐れはない、ただ踏み込む度に腹の底から熱くなる、それだけだ。喜介の木刀が、眼前までたどり着いた信長へと振り下ろされた。
「気迫は良い――が、その一歩足りぬぞ?」
直後、喜介が全身を衝撃に襲われて宙を舞った。信玄の背後から疾走した騎馬武者に、吹き飛ばされたのだ。
「ぐ、お!?」
「気概だけでは越えられぬ一歩があるとしれ、小童……儂は、嫌いでないがな」
むしろその愚直さを愛でるように、信長は笑う。疾走する武田騎馬軍団に、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)は舞うようにステップを刻み、掻い潜っていった。
「相手は騎馬で挑んでくる様ね。でも、相手の機動力を奪ってしまえばいいのよ」
騎馬軍団の中心で、アテナは言い放つ。
「エーリヴァーガルの流れよ!我が敵の動きを止め、ギンヌンガガプへと押し流せ!」
ガギン! とニヴルヘイム・ストームが、武田騎馬軍団を凍てつかせた。それに合わせ、信長が白虎となった信玄の背に乗って跳んだ。
「夏にはよい見世物だ」
甲斐の虎を乗りこなし、信長は両腕を組んで胸を張ってのける。そこへ立ち向かったのは、メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)だ。
「そっちが虎に乗るんなら、こっちも愛馬に乗らせてもらう! 行くで「キツネビサイクル」……【騎乗】の腕、見せたるわ!」
狐火を動力とする呪法改造宇宙二輪を駆ると、メルノはアサルトリボルバーの引き金を引く。しかし、その銃弾を白虎となった信玄は左右に跳んで掻い潜った。
「儂も三段撃ちせねばならんかったからな、懐かしき」
直後、無累・是空(アカシャ・f16461)とチガヤ・シフレット(バッドメタル・f04538)が左右から挟撃した。
「虎に跨るとはイカスなぁ! しかもそれが信玄とは、っくく……! 面白過ぎるだろう!」
兵装を起動、脚部のブースターを全開にしてチガヤがメタルアームを振るった。それを信長が一瞥、ゴォ!! と渦巻く炎の刀を振るう!
「飛べんのは不便じゃのう!」
超神足通(スーパージンソクツウ)によって飛翔した是空が煽りながら炎の刀による軌道を、強引に念動力で逸した。
「ほう、神仏の類……か? 奇遇ぞ、儂も第六天魔王と呼ばれておってな」
「わしを拝んでもご利益はないぞい!」
軽口を叩き合い、信長は再び武田騎馬軍団を開放する。矢や弾と同じだ、便利よな、と信長が笑う。
「強敵難敵なにするものぞ。第六天魔王、相手にとって不足なしじゃあ!! 此奴を仕留めりゃあ戦も終いか? じゃあ出し惜しみはなしじゃろ!!」
「おう、一気にぶっ飛ばして戦争にケリをつけるとするかぁ! 是空と組めば怖いもんなし、ってな!」
「イチャつくのならば、外でやれい」
テンションを上げる是空とチガヤに、信長は炎の嵐で応える。ゴォ!! と吹き荒れる灼熱の暴風を、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が言った。
「偶には電脳魔術士らしくやるのも悪くないか」
重盾【スィタデル】を構えると、セゲルは電脳航空眼鏡【オロクスフロッタ】を起動。
「向こうさんが炎の嵐なら、こちらは水の嵐といこうじゃないか。ついでに硬さも盛っておくとしよう」
付与と同時、炎と水の嵐が激突した。膨れ上がるはずだった炎の嵐が、セゲルの重盾【スィタデル】に付与された水の嵐と拮抗する――!
「負けるわけにはいかないのですっ!」
そこに雨を追加したのが、リティだ。嵐に乗り、一粒一粒が銃弾にも等しい勢いを得た雨が信長の炎の嵐を相殺した。
「ほう」
信長が、素直に感嘆の声を漏らす。炎が掻き消された事だけではない、その間隙に幽が渦の中心を狙って跳んでいたからだ。
「キーック」
ドォ! と幽の跳び蹴りが、信長を捉えた。ギシリ、と信長は黒鉄の甲冑を軋ませがら言った。
「見事」
払うような裏拳が、幽を吹き飛ばす。幽は空中で身をひねると、ズサァと畳の上に着地した。
「速そうで強そうだね! でも、その大きさなら小回りはきかなそう! ついでにお城の中じゃあ動きにくそうと見た!」
蒼焔・赫煌(ブレイズオブヒロイック・f00749)が、ぐっと屈伸する――そして、満面の笑顔で言ってのけた。
「そんなわけで可愛いボクと鬼ごっこ、しようぜ!」
「自分で言うか」
信長のツッコミはスルーされる、赫煌は一気に駆け出した。全力全開の最高速度で部屋の壁から天井まで走り回る赫煌に、信長は白虎の腹を一度踵で叩く。
そして、白虎が疾走する。その巨体から想像もできない敏捷な動きで、赫煌へと迫った。
「いざ参る」
その眼前に、突如としてマレークが現れた。信長は、わずかに目を細め――得心する。
「詐術か」
金月藤門ののフェイントと残像でカガリの後ろにいる、そう見せかけての黒華外套の忍び足と黒華軍靴によるダッシュの併用。その結果として、一気に間合いを詰めたのだ。
「小癪な」
だが、それを武田騎馬軍団で迎撃しようとした刹那――。
「頼んだぞ、カガリ。お前の働きに応えよう」
「ああ。まるには悪いが、カガリは武人でないのでな――手段は選ばず、潰しに行かせてもらう」
ガシャン! という音が、部屋に響いた。鉄門扉の盾を隔絶の錠前で施錠、追想城壁(ロストウォール)――カガリの生み出した城壁の幻影が武田騎馬軍団の突進を防いだのだ。
「この壁の内では、もう軍勢は呼べないぞ。壁の外……城の外でなら、呼べるだろうが。城の主が、城を開けるのは、敗北を受け入れる意味だと聞いたが――そうだな、まる?」
「そうだな」
そして、マレークの白い手袋に仕込んだビームシールドの一撃が信長に放たれた。信長はその一撃を掌で受け止め、歯を剥くように言ってのけた。
「……だ、そうだぞ? 武田の」
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
信長のからかいに、白虎の怒りの咆哮が轟く。その怒りに応え、幻の城壁を飛び越えた武田騎馬軍団が疾走していった。
「人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり 一度生を得て滅せぬ者のあるべきか」
そこへルカが己の血肉を代償に、ソレを呼び出した。裏切らなかった浅井長政と明智光秀、宇宙鉄甲船や銀河信長軍団だ。
「私は真の姿になれば腕や足を失っても元通りになるけど、痛いのは痛いし死ぬときは死ぬから……できれば使いたくなかったけど死ぬ前に一度見てみたかったのよね」
所狭しと展開される銀河信長軍を満足気に見上げ、この世界の織田信長は驚いてくれるかしら? とルカは信長に視線を送る。
信長はその自分のものであって自分のものではない軍勢を前に――ハッ、と笑みを漏らした。
「織田信長と名付ければ、何でも通ると思うな! 行け、織田騎馬軍団!」
『がるる!!』
一文字違いで奪われた武田信玄が唸る。騎馬軍団と銀河信長軍――そのB級映画でも躊躇う両軍の激突を前に、レクス・マグヌス(嵐をもたらすもの・f07818)が呟いた。
「これが魔王信長か。オブリビオンフォーミュラの名は伊達じゃないか」
強さだけではない。覇気もある、威風も、時に人懐っこささえある。人たらしと言えば秀吉と言われるが……織田信長もまた、多くの綺羅星がごとき武将を従えていた名将なのだと思い知らされる光景だ。
そして、それこそがレクスや猟兵達の敵なのだ。
「だが、僕もエンパイアの人々のために負けられない。いざ、尋常に勝負! 嵐よ起きろ! 戦いの時だ!」
「拙者、場違いでもなかったかもしれないでござる! いくぞ狸神様、狸が虎を倒す瞬間を見せてやろう」
目の前の色物大決戦に、織銀・有士郎(織りなす銀の一振り・f17872)もワクワクしながら参戦する。
「ハハハハハ! 来い! 貴様らの敵は本能寺にあらず! ここにいるぞ!」
あれこれ考えるのも馬鹿らしくなってきたらしい。織田信長が、吹っ切れた笑みと共に猟兵達へと言い放った。
●夢幻の如くなり――
敦盛の一節、織田信長が愛した歌の意味はこうである。
――天人にとっては、人の五十年の一生など一睡の夢と同じものだ。
ならば、その夢を駆けぬば嘘だ。どうせ、人は死ぬ――いつしか、終わるのだから。
「おう、おう! そうであった、そうであったな!」
だから、信長はこの一瞬一瞬に思い出す。血の滾りを、駆け抜けた一睡の夢を、五十年を。
「だが、まだ終わらせぬ! 夢であるのならば、また新たな夢を見るだけよ!」
「狸神様も踏ん張れよ、転倒したら致命的だぞ」
有士郎が必死に踏ん張る狸神様に、そう言った。それほどの圧力であった。気を緩めれば一気に押し流される、まさに急流のような男であった。
まさに、一睡の夢の如き楽しい戦いだった。それでも、夢はいつしか醒める……必ず、醒めるのだ。
「一、二、三、四、五、六、七、八……九秒きっかり、撃ち抜くで!」
九秒の狐(ナインカウント・フォックス)――カウントダンが終わったと同時、メルノの二丁拳銃が火を吹いた。銃弾と熱光線、信長はそれを嵐を呼ぶ樹木の翼で受け止め――られない!
「魔王と言われていようと、王であることに変わりはない。だが、僕にも取り戻したい世界がある――そのためにも、あなたに負けるわけにはいかない! 夢幻のごとく、歴史の闇に沈め!」
一気に駆け込んだレクスが放つ、零距離でのウィザード・ミサイルが樹木の翼へ叩き込まれたのだ。ガガガガガガガガガガガガガガガ! と大量の火の粉が、嵐に阻まれる。しかし、レクスの渾身の全力が嵐を突き抜け――翼を砕く!
「ぐ、ぬ!?」
そして、嵐の盾を失いメルノの銃弾と熱光線が信長を捉えた。白虎の上で体勢を崩した信長へ、ヴィクティムが右手をかざした。
「電子の槍を生成、自動銃座を生成。もうこの安土城は俺の支配下だ、盤上をお前の敵で埋め尽くし──王手だよ」
信長をヴィクティムの拘束具に動きを封じられていく。それでもなお、信長は足掻く――白虎が、吠えた。
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「頼むぞ、相棒!」
だが、その白虎を愛らしいまめだぬきが立ちふさがり手四つで受け止める。狸神様からここは自分に任せて先にいけ、というアイコンタクトを受けて、有士郎が跳んだ。
「信長、覚悟!」
有士郎の『涼鳴』による居合の一閃が、信長へ迫る。それを信長は黒曜石の鎧で受け止める――その、はずだった。
「黒曜石は一見硬そうには見えるが、鉄などに気比べればそこまで硬いものじゃない。無論、何かしらの強化は施されているだろうが、その本質的な性質は変わらんだろう。それを上回る硬さで叩いてやればいいだけの話よ」
タイミングを合わせたセゲルの錨斧【イースヴィーグ】の一撃、狂飆の王(クンイェン・アブ・ストルム)の暴風が黒曜石の鎧を粉砕した。その間隙に、有士郎の抜刀術が信長の脇腹を切り裂いた。
「ぐ、ぬ……!」
この戦いで、初めて信長がよろめいた。しかし、その顔には壮絶な笑みが浮かぶ。
「負けて――やらぬ!」
放たれる武田だか織田だかもうわからない騎馬軍団、そこへ銀河信長軍の一斉放火が叩き込まれた。
「今よ」
ルカの言葉に応えて跳んだのは、幽と赫煌だ。同時に空中で前転、落下の勢いを乗せてダブルキックが放たれる!
「ボクの全力をうけてみろ〜」
「可愛いボクたちは負けないよ! 何故なら、正義の味方だからねっ!」
鋭い蹴りと炎をともなう豪快な蹴りが、同時に繰り出された。顔面狙うその蹴りを、信長は両腕で受け止め、言い放った。
「この信長の顔を、なんと心得る!?」
だが、連撃はそこで終わらない――リティが大きく振りかぶった刃に白百合の刻印の入った白銀のドラゴンランスを、全力で投擲した。
「過去に未来はない、ここであなたの野望は潰えるのですっ! リリィ、お願いっ!」
リティのドラゴニック・エンドの一撃に、リリィのよって信長が吹き飛ばされる! それでも空中体勢を立て直した信長は、着地に成功した。
「ハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! これよ、これが戦よ!」
「本当、元気が良すぎるのよ」
そこへ、アテナがアーパスブレードとクラウ・ソラスの二刀流で斬撃を放つ。黒鉄の鎧に✕の字が深々と切り刻まれる。それでもなお、信長は前に出た。
「戦を前に、誰が退く!?」
炎に燃える刀を信長が振りかぶる。それに応じて木刀を振り上げたのは、喜介だ。
「猟兵いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「満身創痍だって構わねぇ! その程度で生涯を懸けた剣が曇る事ァありえん! 全身全霊を込める! 研ぎ澄まし続けた一刀を見よ! 人の世に害為す過去を断つッ!!」
信長の炎の刀と、喜介の渾身の木刀――激突し、砕け散ったのは信長の刀であった。
「は、はははははははははははははははははははは!!!」
呵々大笑する信長を中心に、騎馬軍団が溢れ出す。それをカガリの追想城壁(ロストウォール)が食い止め、チガヤの縦横無尽の悪機(バッドランペイジ)による一斉発射が吹き飛ばしていった。
「まる!」
「是空ゥ!!」
カガリとチガヤの呼びかけに、同時に信長へ飛び込んだのはマレークと是空だ。
「お覚悟を」
「これがわしの本気の本気じゃあ!!」
マレークの魔槍雷帝と是空の音速を越えた拳が、信長を捉えた。それが、止めとなる。第六天魔王織田信長は、満足げに笑って消えた。
「此度の夢も……胸躍る、良い、夢であった……」
人間五十年 下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり 一度生を得て滅せぬ者のあるべきか
織田信長は、その歌のごとく戦い、そして消滅した……。
大成功
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