エンパイアウォー㊴~決戦・織田信長
●決戦依頼
グリモアベースの夏。
長期に渡るサムライエンパイアの戦争もいよいよ大詰め。猟兵達が次々と作戦から帰還し、休む暇無く次の作戦へと志願する。今や猟兵の刃は敵将・オブリビオンフォーミュラ『織田信長』に届こうとしていた。
「オブリビオンフォーミュラ、第六天魔王『織田信長』との決戦でございます」
ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)がそう言って戦況図を示す。
「既に戦端は開かれております。万全な状態の幕府軍は、『魔空安土城』に到達し、信長軍の主力部隊を相手取って奮闘しています」
「皆様は、第六天魔王『織田信長』を倒してください」
依頼は単純にして明快。敵将を倒すのみ。ルベルはそう言って敵将について語る。
「オブリビオンフォーミュラ、第六天魔王『織田信長』は、秘術「魔軍転生」によって、配下の魔軍将を背後霊のように「憑装」させて戦います。皆様が向かう先で待ち構える信長は、秀吉装でございます。秘術「魔軍転生」で憑装したひとりの魔軍将豊臣秀吉が、織田信長の背後に背後霊のように付き従っているのでございます」
ルベルは耳をぺたりと伏せ、警告する。
「言うまでもない事ですが、オブリビオンフォーミュラである信長は強敵でございます。城中で待つ信長は、猟兵の皆様を待ち構え、先制攻撃を放ってきます。ゆえに、先制への対策を練ってご出撃ください。まず防いで頂き、そののちに反撃、でございます。対策無ければ苦戦は免れぬことでしょう」
「僕が予知した敵の技を説明しましょう。敵は、皆様のユーベルコードに対応する技を使ってきます。powならpow、spdならspdでございます。
powの場合は、黒槍殲撃。信長は、秀吉を融合させた鋼鎧の各所から無数の黒槍を放ちます。
spdの場合は、黒粘剣戟術。信長は、秀吉の黒粘液で全身と刀を覆い、ぬるぬるつるつるして刃を滑らせたり素早くなったりします。
wizの場合は、シャドウクローニング。なんと小さな豊臣秀吉が沢山出てきます。小さな秀吉たちは、ゴムまりのように跳ね、フェンフェン言いながら攻撃してきます」
「万全に備え、策を練ってご出撃くださいませ。僕は、万策揃いし皆様を共に転移させようと思います」
ルベルはそう言って頭を下げる。
「皆様が勝利を掴むことを、僕は信じておりますし、そのための助力は惜しみませんとも」
●魔空安土城
その日、武陽照らす日の光はひときわ清らかにして、風は遠き城まで軽やかに涼気を運んだという。見下ろす戦場には猛き人の熱が篭り、両際から押し寄せる兵の波が勇ましき雄叫びと共にぶつかりあい、白の綿雲が逃げていけば空はからりとして青一色となる。
「遂に来たか、猟兵達よ。エンパイアを滅ぼし、渡来人共の「グリードオーシャン」をも侵略する道筋は、これでほぼ絶たれたか。血塗られし彼奴らの神が如何程の物か、確かめてみたかったが。さて、もはや儂に万にひとつの勝ち目も無かろうが……。億にひとつでもあるのならば、賭けてみるのも一興よ」
面長の顔が城下を視る。背後には忠臣の霊が従っていた。
「フェンフェン! フェンフェンフェン!」
「で、あるか」
「フェンフェンフェン!」
信長は笑い、刀を抜く。
「サルよ、ならば、儂に全てを賭けよ」
「フェンフェン!」
現れる猟兵団を迎え撃とうと、信長は悠然と歩き出す。
「――思へばこの世は常の住み家にあらず、草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし」
口ずさむ瞳はいつか戦いに臨んだ日のように昂然とした。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
シナリオ難易度はやや難です。
それでは、よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』秀吉装』
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POW : 黒槍殲撃
【秀吉を融合させた鋼鎧から無数の黒槍】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 黒粘剣戟術
【秀吉の黒粘液で全身から刀まで全てを覆い】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ : シャドウクローニング
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シズホ・トヒソズマ
・POW
転移前、◆武器改造で空間を確保したユングフラウ内に着用者を隠し、
リキッドメタルで形成した人型に服を着せ自身が被さる
敵UCはデザイアキメラの◆オーラ防御でマスク部分にあたる物だけ防御し、残りは避けきれなかった風に◆フェイントし、全身に受ける
串刺しで動けない、と見えた所でマスク本体だけ離れ、ユングフラウから出した着用者と合体
UCで着用者自身と交代
信長、貴方は犠牲にしようとした民に倒されるべきです
◎
私は只の村娘だ
だからこそ、この国を滅ぼそうとする貴方を絶対許さない!
シズホさんから引き継いだ◆早業と◆操縦で
ヴィアイスさんの予測演算で◆見切って、信長にヴィアイスさんの三呪剣で◆2回攻撃するよ!
須藤・莉亜
「嚙み殺して吸い殺してあげる。」
嬉しいでしょ?
敵さんの先制攻撃は、殺気を【第六感】で感じ取り、動きを【見切り】回避。それと奇剣と深紅を持たせた悪魔の見えざる手と一緒に【武器受け】で防御。秀吉に噛み付いて【吸血】するのも忘れずに。
凌いだら不死者の血統を発動。バケモノとしての僕で相手しよう。
受けた傷を回復させながら、周囲を【生命力吸収】を付与した瘴気で覆い敵さんを妨害。
んでもって、強化された戦闘能力でガンガン攻めて行こう。
もちろん【吸血】も狙って行くよ。
鎧でも猿でも、何もかも噛み砕いて血を奪ってあげる。
●開幕
待ち受ける織田信長の前に猟兵が飛んでくる。
「絡繰り人形を遣う者のようだな」
猟兵、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は紫色のマスクを顔に着用し、黄金色の大きな人形を連れていた。
「サルよ!」
「フェフェン!」
信長の鋼鎧から無数の黒槍が放たれた。
「!!」
シズホは顔に重点を置いて防御する気配を見せていた。素早く城内を駆け、槍を見切り避けていく。
「さすが一番槍だけあって素早いな。だが、避けてばかりともいくまい」
シズホへと真っ直ぐに伸びた黒槍。猟兵は大きく右へとステップを踏み回避し、しかし避けた先の足元を追撃の槍に捉えられる。悲鳴はあがらなかった。一撃が足を捉えればそれを皮切りに連続で全身が貫かれていく。
「フェンフェンフェーン!」
「よくやった、サル!」
秀吉が勝利の雄叫びをあげている。信長が労い、猟兵に近寄った。黒槍に全身を串刺しにされ、もはや動くことのない猟兵。足蹴にすればぐらりと傾いで無反応のままに床に転がる。
「まずは一勝といったところか」
血のような瞳が猟兵の体を見下ろした。
「いいえ」
「むっ!?」
金色の人形から『猟兵』が飛び出した。床で転がる『猟兵』と同じマスクを着けた――否! 床の猟兵の顔には、いつの間にかマスクがなくなっている!
「信長、貴方は犠牲にしようとした民に倒されるべきです」
飛び出した猟兵、シズホは体当たりするように信長にぶつかった。信長が驚愕した様子で目を限界まで見開く。
「が……ッ」
「フェーン!!」
秀吉の悲痛な声が響き渡る。信長の体を禍々しい剣が貫いていた。
「私は只の村娘だ。だからこそ、この国を滅ぼそうとする貴方を絶対許さない!」
それはシズホの着用者である『静穂』の魂の底からの聲だった。
「喝ッ!」
信長が裂帛の気合と共に娘の体ごと刃を引き抜き、払いのける。そのタイミングで猟兵の2人目が駆けつけた。
「フェンフェン!」
小さな秀吉がわらわらと湧いて城内をぽよんぽよんと飛び跳ね、猟兵から信長を守ろうとしている。
「嚙み殺して吸い殺してあげる」
――嬉しいでしょ?
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)がぼんやりとした紫水晶の眸で「敵さん」を視る。
迫る小さな敵さんたちは殺気に満ちていた。
「それじゃ、だめだよ。避けやすいもの」
莉亜はおっとりと微睡むように言い、跳ねる秀吉を避けていく。殺気が濃厚であればあるほど、読みやすい。長い髪が優雅に背に揺れ、ダンスを踊っているかのようだった。
「どんな味がするのかな?」
まだ味わったことのない秀吉へと好奇心を覚えて戯れに牙を突き立てれば、ふよんとした柔らかな弾力性の向こうからちょっと不思議な刺激のある温かな味を感じることができた。
「面白い味……」
「サルを味わうとは、変り者よ」
信長がちょっと興味深い顔をしていた。
「ケモノとしての僕で相手しよう」
不死者の血統にて全身を真祖の吸血鬼に変じた莉亜が空気を震わせる。周囲には瘴気が満ちていた。瘴気に目を奪われていれば、シズホがここぞとばかりに剣を振りかざしかかってくる。
「どこを見てるんです? 私はこっちです!」
「その剣筋はもう見切ったぞ!」
信長が刀を抜き剣を受け止める。刹那、ぞくりと背を悪寒が走り抜けた。目の前のシズホの眸が勝利を疑わず輝いている。――味方が背から信長に迫っている。
「フェーン!!」
小さな秀吉が束となり信長の背を守ろうとしていた。
「いいえっ! 邪魔はさせませんっ!!」
シズホが全力で剣を横に払い、秀吉を散らしていく。
「何ッ!!」
信長がびくりとした。
金色の吸血鬼の眸が耀き、莉亜の牙が信長に突き立てられ、軽い水音を立ててその血を啜る。
「こんな味がするんだ」
「おのれ猟兵っ!!」
信長が怒号を発して莉亜を振り払う。受けた傷を表面上繕い平静を装い――ぐらり、と一歩よろめいた体を小さな秀吉たちがおろおろと支えた。ダメージは確実に蓄積されている。
◆
「さっきのは、どういう?」
猟兵たちは距離を取りながらそっと言葉を交わした。
「転移前に、このユングフラウの中に着用者の静穂さんを隠したんですよ。最初に串刺しされたのは、リキッドメタルで作った人型です」
「なるほど、マスクが本体だから……」
「そうです」
「ところで、どんな味だったんですか?」
「言葉で説明するのは難しいかな……」
最前線、敵の城内には次々と猟兵が飛んでくる。戦いは始まったばかりであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ステラ・エヴァンズ
これが最後…気を引き締めて参りましょうか
先制攻撃に範囲攻撃で炎属性の衝撃波を
この一撃を逃れて尚も動ける者を対処
フェイントをかけては動きを見切ってなぎ払う
対処が終わり次第、巫覡載霊の舞を発動
信長公…若輩者ではございますが、お相手願いましょう
貴金属を纏っておいでなので、今度は全力で雷属性の衝撃波を
したらば懐に入り込んで下段から上へ切り上げ、刃を反して下に切り落とす二回攻撃
避けるようなら炎を纏わせて喉元への一突きへ変更
第六感で危険を察知したらすぐに後退し、距離をとって雷属性の衝撃波
機を見て再び近づいてはなぎ払います
ある程度の怪我は承知の上です
貴方の時代は終わったのです
在るべき場所へお還りください…!
グラディス・ドラモンド
アドリブ連携歓迎
その気迫……テメェこの状況を楽しんでやがるな?
……良いじゃねぇか、死地でも笑うその覚悟。俺様もその矜持に乗ったらぁ!!ガチで行くぜ
先制対策
秀吉召喚だな、数が多くて全部は受けてらんねぇ。ギリギリまで引き寄せて咆哮による爆破で範囲爆撃してやろうじゃねぇか。いくらかは食らっても良い、出来るだけここで数を減らすぞっ!
引き寄せたら影に潜り込みながら咆哮爆破、そのまま信長の方へ向かいフェイント混ぜながら影からの奇襲
外れても影のフィールドが出来りゃその分俺様の有利となる、間髪入れずに攻め込むぜぇ!
信長とはそのまま接近戦メインで行い、残ってる秀吉が居りゃあ信長盾にしながら対応だな!
●戦場
「フェンフェンフェーン!」
信長に手傷を負わせた猟兵へと小さな秀吉たちが怒りに満ちた声を放ち、飛び掛かる。
「フェ……ッ」
「数が多くて全部は受けてらんねぇ、爆破するぜ!」
「――燃やします!」
ゴウ、と炎波が押し寄せ、その黒い群れを焼き払った。残りの黒影が仲間の消失に半狂乱となって飛び回るが、魂を震わせる咆哮が轟けば身が爆ぜて倒れていった。
「これが最後……気を引き締めて参りましょうか」
凛然と佇むステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)が秀吉の群れを消し去り、巫覡載霊の舞にて神霊体へと変身する。淡く輝く美しい長い髪がふわりと舞い、パチリパチリと全身に纏うは神々しい雷の光。
「信長公……若輩者ではございますが、お相手願いましょう」
「その気迫……テメェこの状況を楽しんでやがるな? ……良いじゃねぇか、死地でも笑うその覚悟。俺様もその矜持に乗ったらぁ!!ガチで行くぜ」
グラディス・ドラモンド(30の軍団を統べる■■の公爵(自称)・f16416)がステラと並び、眼光鋭く敵将に吠える。
「よかろう、長い口上は不要だ。疾く来いッ」
信長が雷の衝撃波を避け、猟兵に向かって走る。
「ならば!」
ステラもまた信長に向けて駆けていた。間合いに入れば天津星の切っ先を掬い上げるように下段から上へ切り上げ、信長が刀を切り下ろして刃がかち合い、硬質な金属音が高らかに城に響く。長く押し合うことはない。ピリリと雷が信長の身に伝わり、衝撃に体が跳ねる。いかな強靭な精神といえど補い切れるものではなかった。一瞬の隙。その一瞬で弾かれたように刃を反したステラは下へと刃を斬り落とす。信長にしてみれば掴んだと思った水がするりと指から逃れていくようであった。
「こやつめ」
刃を追い手首を返して横に天津星を弾く信長の喉元へ苛烈な突きが迫る。刃は炎を纏っていた。
「貴方の時代は終わったのです、在るべき場所へお還りください……!」
喉がざくりと斬り破られ、鮮血が迸る。おのれ、と口が動きごぼりと血が溢れ。けれど信長は刀を振る。
脳が警鐘を鳴らし、意識するより速くステラの体は後ろへ退く。負傷による影響を感じさせぬ勢いで信長が追い縋る。
「おっと、俺様を忘れてもらっちゃあ困るぜ!」
影からグラディスが飛び出したのはその時だった。
「っ、っう一人、ぃたか」
「フェンフェン! フェンフェンフェン!」
血を吐き捨てながら信長が身構える。影から飛び出したグラディスは昏らき風纏いし堅牢なる爪牙にて塞ぎかけていた喉の傷を大きく裂き、ぐるりと渦のように廻って信長の背後へと移動する。
「フェンッ!?」
「ははっ、気を付けねぇと御主君に当たっちまうぜ!」
いつの間に補充されたか、再び増えた小さな秀吉がグラディスを排除しようと飛び跳ね、しかしグラディスはぐるぐると信長の周囲を回り影に潜り込んで逃げてしまう。
「フェンフェンフェン!!」
秀吉が怒り狂っていた。
「サ、ル」
よい、と信長が手で制し、傷を塞いでいく。
「儂はまだ戦える。我が身は只人で無し、多少の傷など気にするものではない」
「フェン……!」
「単純に傷を与えても倒せない……わけでは、ないですよね?」
ステラがそっと影に問いかける。
「そりゃあ勿論だぜ。あんなの強がってるだけだ」
グラディスが影から顔を出し、金の眸をぎらぎらとさせた。
「本当に傷が全く気にすることないってんなら、こっちの攻撃を防ぐ必要もないはずだろ。防ごうとしたり避けようとしてるってことは、そういうこった!」
「ええ、そうですね」
2人はそう言って周囲を見る。仲間も増えていたが、敵の小さな秀吉もまた増えていた。
「厄介な湧きっぷりだな。よし、出来るだけここで数を減らすぞっ!」
他の仲間の負担を減らすためにも。言外にそう匂わせ、グラディスが勇ましく吠える。
「はい、――任せてください!」
ステラは強き意志籠めた瞳で敵の群れを見て、最初に放ったのと同じ炎の衝撃波を創り出す。その脳裏には猟兵になりたての頃の自分が思い出されていた。嘗てはこんな風に自信満々に「私が」とはなかなか言えなかったものだ、と。
神霊体に変じた反動で体力を削られ疲労を感じながらも、ステラは疲労を感じさせぬ動きで敵の群れに対抗し続けた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
遠呂智・景明
人間五十年、オブリビオンのアンタはどこまで望む
刀を突きつけひと睨み
まあどうでもいいさ。お前の天下はもう来ない
今送り返してやるからよ。泰平の世、あの世でゆっくり楽しめや
放って来る黒槍の軌道を見切り、対応出来るものにのみ注視。
腰から抜いた二刀、斬り捨てるのは穂先と柄の中間。黒鉄で受止め俺で斬る。俺で受止め黒鉄で斬る。ずっと昔から繰り返してきたんだ、今更違えたりしない。
斬れそうにないものは回避、躱しきれず多少の傷を負うのは想定のうち。
手足と急所以外なら、刺されようが問題ねぇよ。
槍を凌ぎったらこちらの反撃。
その纏ってる猿の鎧、剥ぎ取ってやるよ。
風林火陰山雷番外 雷・火。
砕け散れ、信長ァ!
ヴィクティム・ウィンターミュート
──始めよう
どんな微細な勝率もお前には与えてやらねえ
ここで終われ、信長
まずは先制攻撃の対処
【ハッキング】で自己サイバネを全てオーバーロード
【ドーピング】で強化薬摂取、能力向上
【ダッシュ】【フェイント】【早業】【見切り】【ジャンプ】で立体高速機動、押し寄せる秀吉の群れから逃げ回りつつ
UCを起動して爆発ナイフを引き撃ちで投擲、数を減らしにかかる
一撃で消滅するなら、爆発の衝撃で一気に減らせるだろうからな
余裕ができ始めたら信長に狙いをシフト
矢継ぎ早の爆発で反撃の隙を与えない
できれば【部位破壊】で脚か腕を吹っ飛ばしてやりてえところだな
もう一度過去に沈め、第六天魔王
ここは人の世だ──テメェが入る隙間は無い
●突入
「カウント! テン、ナイン、エイト、セブン、シックス、ファイブ、フォー、スリー、トゥー、ワン! GOGO!」
後続の猟兵たちがヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)の指示により攻勢に出ている。
城内には小さな秀吉が溢れていた。
ヴィクティムはゴーグル越しにパチリと片目を閉じる。
「あぁ? 豊臣秀吉……? オイオイ、多すぎだろ」
正面戦闘よりは裏方役を得手とするヴィクティムは秀吉駆除に乗り出した。ハッキングとドーピングで事前に身体能力は大きく引き上げられている。
「フェンフェンフェーン!」
「フェンフェン!」
「フェフェン!」
「あの敵、一撃で消滅するんだってな」
天気の話でもするような調子で言ってヴィクティムは駆ける。背に黒いマントが靡いた。
「フェンフェンッ!?」
秀吉たちが驚愕の聲をあげている。いっそ優雅なほど悠々と靡くマントの端すら、捉えることができぬではないか。黒く弾む小さな影の間を器用にすり抜け、地に両手を付けて跳びあがり、壁を蹴り。ぽよんぽよんと跳ねる秀吉たちを完全に見切り無傷で逃げ回るヴィクティムは器用にも指を虚空に浮かぶ半透明のバーチャルキーボードに走らせ、周囲に青々とした半透明の電子パネルとモニターを巡らせた。0と1が流れていく映像に秀吉が不思議そうに体当たりをし、するりと後ろに抜けていく。
「フェン――!?」
ヴィクティムの指が華麗に動き、Attack Programを起動した。
「喜べ。俺がここまで精力的に攻撃することは中々ねェぞ? ──フューミゲイションスタート!」
Program『Conquer』は投擲物を爆発性物質に変える性質変換モード。ヴィクティムが学習する生体機械ナイフ『エクス・マキナ・カリバーンVer.2』を投げれば秀吉たちが悲鳴と共に爆発して消えていく。
「秀吉が押されているな」
信長が呟く。視線の先にはもう一人の猟兵がいた。静かに戦意漲らせ刀を突き付ける遠呂智・景明(いつか明けの景色を望むために・f00220)。
「人間五十年、オブリビオンのアンタはどこまで望む」
睨む眸は鬼の色。信長が幾度となく戦場で見た刀一本で生死の運命切り開く戦鬼剣鬼の濃厚な戦意の色だ。
「まあどうでもいいさ。お前の天下はもう来ない。今送り返してやるからよ。泰平の世、あの世でゆっくり楽しめや」
「で、あるか」
信長は明瞭になった声に満足した様子で頷いた。
「確かに、勝ち目の無き戦いとなりしは明らか」
鋼鎧から無数の黒槍が飛び出した。
「とはいえ、儂はあの世でゆっくり楽しむのは性に合わぬな」
「だろうな」
景明が槍の軌道を見切り、腰から抜いた二刀で対応できるもののみを斬り捨てる。黒く染った黒鉄の刀身が誇り高き音鳴らし槍を受け止め、穂先と柄の中間を大蛇切、景明自身が叩き斬る。次いで迫る槍は大蛇切の景明が受け止め、主の黒鉄が斬りはらう。
昏い月無夜の中。寒い雪景色の中。灼熱の炎の中。
――ずっと昔から繰り返してきたんだ、今更違えたりしない。
刀を振るうヤドリガミの景明は一人だ。だが、刀は。黒鉄と大蛇切が共に舞えば、対応できぬ敵はいない。
「見事であるな」
信長が唸る。
「惜しいことよ。その腕、我が配下に欲しかったが」
「ははっ、」
避け切れぬ傷が幾筋も走り、身体が血に濡れている。だが景明の動きが鈍ることはない。
「肉の体には限界もあろう」
信長が試すような眼をして刀を執る。と、そこへ。
「頭上注意だぜ。もう遅いけどな」
ナイフが上から降ってくる。ヴィクティムがナイフの標的を信長に変えたのだ。
「く……」
信長がナイフの爆発を厭い後退する。
「オイ、生きてるかよ?」
上から降るようにしてヴィクティムが景明の前に降り立った。
「躱しきれず多少の傷を負うのは想定のうち。手足と急所以外なら、刺されようが問題ねぇよ」
景明が笑ってみせる。
「フェンフェンフェン!」
「秀吉がまた増えてるじゃねぇか。骨が折れるな、まったく」
「向こうも、猟兵がまた増えてるじゃねぇかって思ってそうだけどな」
違いねぇ、と頷きひとつ。景明が澱みない滑らかな歩武と共に刀を繰り出した。
「その纏ってる猿の鎧、剥ぎ取ってやるよ」
両の手に持つ刀が眼にも止まらぬ早業で連続の鋼線を切り出し、迫る。
「──始めよう。どんな微細な勝率もお前には与えてやらねえ。ここで終われ、信長」
ヴィクティムが次々とナイフを投げる。矢継ぎ早のナイフの爆発に信長が防戦一方となっていく。
青い瞳は城の外で広がる青空のように晴れ渡っていた。
「もう一度過去に沈め、第六天魔王。ここは人の世だ──テメェが入る隙間は無い」
悲鳴があがる。景明の連続斬りに対抗しようとしていた刀が爆発の衝撃で腕ごと吹き飛ばされ、宙を舞う。
一刃、上段から真っ直ぐに。一刃、十字を切るように垂直真一文字に。一刃、掬い上げるように切り上がり。一刃、返って斜めに切り上がる。一刃、バツ印を描くように斜めに振り下ろされ。
『風林火陰山雷番外 雷・火』。怒涛の連撃は止まる所を知らぬ。
「フェンフェンフェン――ッ!?」
秀吉の悲鳴があがる。
「砕け散れ、信長ァ!」
信長の身に大きく連撃が刻まれ、鎧断ち肉を裂いて血飛沫が派手に飛び散った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アテナ・アイリス
槍はね、一撃必殺の武器なのよ、そんなにばらまいてどうするのよ。
そんな攻撃なんか、躱して耐えきればいいのよ。
「ブーツ」の力で俊敏に動き回りながら、【武器受け・見切り・第六感・カウンター】を使って攻撃を躱し、
どうしても受けざるを得ない攻撃は、【オーラ防御】と「アキレウスの鎧」のダメージ半減効果で攻撃を耐えきる。
耐えた後は、反撃よ。槍はこうやって使うのよ。
UC「神槍ケラウノス」をつかって、雷属性の槍を召喚し投擲する。
最強の威力を誇る雷霆の力、受けてごらんなさい。
直撃すれば、体を切断できるし、かすったとしても感電で動きが鈍くなるはずよ。
最後は、二刀の剣で【2回攻撃】を組み込んだ連撃技でとどめを刺すわ。
ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ歓迎
やっとここまで来たね
行くよ、メボンゴ!
※攻撃は全て早業&二回攻撃
要するにぬるぬるしなくなればいいんだよね
土属性付与したメボンゴ波(メボンゴから出る衝撃波)を浴びせてから矢を射る
まだぬるぬるなら矢に風属性纏わせ粘液を吹き飛ばすようにして攻撃
再び土属性メボンゴ波の後、氷属性メボンゴ波で粘液を硬化させられたらワンダートリート
紙吹雪が貼り付けばもっと攻撃が当たりやすくなるでしょ
距離があれば弓、近ければナイフで攻撃
信長の攻撃は攻撃前の予備動作や太刀筋を見切り、早業でオーラ防御を展開
破られたらメボンゴ真剣白刃取り!(武器受け)
直後メボンゴ波を出し、その衝撃を利用して後ろへ跳躍し距離を取る
●戦術
突入の合図と共に猟兵たちが一斉攻勢に出ている。
「やっとここまで来たね。行くよ、メボンゴ!」
ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)が愛らしい兎のフランス人形、メボンゴに声をかけ。
『れっつ、ごー!』
裏声でメボンゴの返事を話す余裕を見せている。
「槍はね、一撃必殺の武器なのよ、そんなにばらまいてどうするのよ。そんな攻撃なんか、躱して耐えきればいいのよ」
アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)が金髪と白マントを清廉に靡かせ、俊敏に城内を走っていた。
ブーツ・オヴ・エルヴンカインドが軽やかに床を慣らし、まるで森の中にいるようだ。
「さあ、当ててごらんなさい! どうしたの、わたしはこっちよ」
「耳長娘め、はしっこく動きよる」
「フェンフェン!」
信長が黒槍を無数に放ち、アテナを狙う。アテナは優雅に微笑んだ。
「あらあら。数は多いけれど。まっすぐに飛ぶだけじゃわたしは捕まえられないわね」
エルフの耳が幽かに揺れる。まっすぐに飛んでくるものを避けるなんて、容易いわよ、と子供に言い聞かせるようにしてアテナは軽やかに槍を見切って避けていく。
「すごい、全然当たらない!」
ジュジュが眼を丸くしてその様子を見ていた。
「槍はこうやって使うのよ」
アテナが挑戦的な瞳で詠唱をする。
「天空神の雷霆よ、我が敵を粉砕する力をお貸しください」
「ぬうっ!?」
バチバチと音鳴らし閃光放つ雷が虚空に生まれ、徐々に槍の形となっていく。
「フェ、フェンフェンフェン!」
秀吉が戦慄する。
「最強の威力を誇る雷霆の力、受けてごらんなさい!」
自信に彩られた声は、勝利宣言に似て。しかしアテナは心中では、若干「命中しにくそうかしら」と危機感を抱いてもいた。
(きっと、このまま撃っても半分くらいの確率でうまくいかない。そんな気がするわ)
それは、第六感。
「力を貸して欲しいの」
アテナがちらりとジュジュを視る。ジュジュは頷いた。
「任せてね!」
『いくよー!』
ジュジュがメボンゴを喋らせながら前に出たのと、信長が秀吉に指示を出したのは同時だった。
「サルよ、儂の力となれぃっ!」
「フェンフェンッ!」
信長が猛々しく声をあげ、秀吉の黒粘液で全身をコーティングさせている。
「要するにぬるぬるしなくなればいいんだよね」
ジュジュがメボンゴを大切に抱え、兎のおててを敵に向けた。
「メボンゴ波ぁっ!」
メボンゴから土や石混じりの衝撃波が飛ぶ。
「フェンッ!?」
「なんと!」
信長秀吉の主従コンビが土塗れになっていく。
「まだぬるぬるかなあ? メボンゴ波~!」
ジュジュがメボンゴのおててをひょこひょこ動かす。今度は風がビュンビュンゴウゴウと吹いた。
「次は土、その次は氷! メボンゴ波! メボンゴ波!」
「メボンゴ波とはなんだ! くっ、猟兵め、面妖な技を!」
「フェンフェンフェン!?」
兎のメボンゴがぴょこぴょこひょこひょこするたびに手品のように衝撃波が奔り、信長を覆う秀吉の粘液が硬化させられていく。
「これもある意味ショータイム!」
ジュジュが本命の『ショー』を開始した。エンパイアの日の丸の下輝く生命力に溢れた若葉の如き瞳がきらりと煌めく。完全にジュジュのペースとなっている。当然だ。日常を歩いている人々の足を止めさせ、非日常に誘い、楽しませるのがジュジュの常なのだから。
(これくらい、簡単だよ!)
はらり、ひらり。
彩り豊かに振る花めいた紙吹雪、眺める心地は夢心地。へたりぺたりと身に貼り付けば――。
「そういうことかっ!」
「もっと攻撃が当たりやすくなるでしょ」
ジュジュが弓を構え、すぐにナイフに持ち替えた。信長が地を爆ぜさせんばかりに激しく踏み込み、接近していた。
「おっと、危ないっ」
脚の踏み込みと腕の振りから太刀筋を読みオーラ防御を展開したジュジュは、オーラに勢いを削がれた刀をメボンゴで受け止める。
「メボンゴ真剣白刃取り!」
「な、なんと!?」
愛らしいメボンゴはカッ! とメボンゴ波を放つ。衝撃を利用し、ジュジュは後ろに大きく跳ねて距離を取った。
「さあ、今度こそ!」
「――ありがとう!」
入れ替わるように前に出たアテナがとっておきの雷霆を放ち、信長を穿つ。大きな悲鳴が城内に響いた。
「やったね」
「やったわ」
2人の女性猟兵は顔を見合わせ、にこりとした。
「フェンフェンフェーン!」
「反撃が来る前に一度下がるわよ」
「うん!」
一撃を加え、次の組に繋げて下がる。
味方が多いがゆえに出来る余裕。まるで上杉謙信の軍が採ったような戦術だが、猟兵たちにはそれをする余裕があった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ソラスティベル・グラスラン
『織田信長』公、お会いできて光栄です
―――貴方を討ち、この戦を終わらせに来ました
盾を構え【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、
発動の瞬間を【見切り】、無数の黒槍を防ぎ軽減します
足りないならば【気合】で耐える!
反撃するならこの瞬間、【怪力】で槍を掴みこちらに引き寄せます!
わたしは『勇者』
出来ることは、いつだってただ一つ!
【勇気】を持って、前進あるのみッ!!
この世界での一戦、貴方も知るようにすでに決着は見えました!
ですが!
眼前に立つは戦国の大英雄『織田信長』
歴史書に載る、時代の開拓者
ああ、昂りが収まりません――!
わたしは嬉しい!貴方と刃を交えられることが!
時を超え、貴方と共に在れる現在(いま)が!!
トリテレイア・ゼロナイン
億が一の勝機
今を生きる人々の為、貴方に掴ませるわけにはいきません
信長公、ここで主従共々討たせて頂きます!
●防具改造●破壊工作で、大盾に爆発反応装甲を装備
鎧の表面の変化をセンサーで●情報収集し●見切り、黒槍の発生タイミングに合わせ●盾受けで防御しつつ、指向性を持たせた爆発で槍を吹き飛ばします
盾を放棄し接近
槍に●スナイパー技能での格納銃器でのUCを炸裂させ薬剤を浴びせ凍結。●怪力での●武器受けで砕きつつ接近戦の間合いに迫ります
そのまま切り結ぶ…ように見せかけ●ワイヤーアンカーでのロープワークで●だまし討ち
儀礼剣と刀を絡め使用不能に
超重フレームの貫手を繰り出し●串刺し
形振り構わぬ戦法 ご容赦を
●名は神鳴り
「『織田信長』公、お会いできて光栄です。―――貴方を討ち、この戦を終わらせに来ました」
満身創痍の信長の前に太陽が身の内に宿ったかのように眸を輝かせる勇敢な少女ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が戦意猛き瞳を向け、凛然と立ち塞がる。
「フェンフェン! フェンフェンフェーン!」
秀吉が必死に声を放っていた。
「サルよ、まだ儂の勝利を信じるか」
「フェンフェン!」
「ならば、儂を勝たせてみせよ!」
鋼鎧から黒槍が放たれる。ソラスティベルが蒸気吐くスチームシールドを果敢に構え、槍を防ぐ。
「サル! その程度か!」
「フェンフェンフェンッ!」
敵将にも後がない。秀吉は主がため全力で槍を伸ばし、頑丈なシールドを打ち破ろうとした。鋭き槍の先端を見切ったソラスティベルはその瞬間漆黒のバックラーに持ち替えた。竜の翼が高き蒼穹に誇らしげに羽ばたくが如く小さなバックラーが重い一撃を阻む。
「絶対に、」
ソラスティベルが飛竜のブーツをじりじりと床に沈むほど踏みしめた。一歩引けば、きっと負けてしまう――少女の青の瞳が夏色に輝く。
「わたしは、下がりません!」
心に燃える勇気。気迫。それは世界への宣言に似て、天運を引き寄せる。
「わたしは『勇者』。出来ることは、いつだってただ一つ! 勇気を持って、前進あるのみッ!!」
「ならば背後から穿たれよ」
信長が瞳に冷徹な色を宿し、激戦で欠けた鎧の欠片を放る。ソラスティベルの背後に跳んだ欠片から黒き槍が迸り――爆発した。
「ぬっ!?」
爆風の中佇むは大盾構えし巨躯頑健なる騎士姿、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
「億が一の勝機」
くるりと踵を返して信長へと駆ければ、迎撃に黒槍押し寄せる。だが、あれはどうしたことか。当たるごと槍が爆発し、吹き飛ばされ。
「フェンフェン!」
秀吉が慄いている。驚愕の視線の先で大盾は頓着なく爆発と共に信長目掛けて投げられる。
「ぬぅっ!? これも猟兵の技か」
「いいえ」
緑のセンサーが心外そうに瞬いた――ユーベルコードは使っていない。盾に仕掛けた爆発反応装甲が黒き槍を吹き飛ばしていく。
「今を生きる人々の為、貴方に掴ませるわけにはいきません。信長公、ここで主従共々討たせて頂きます!」
トリテレイアが接近する後ろをソラスティベルが共駆けする。少女の見つめる前方で、長身の騎士は迫る黒槍に全身の至る処から機動した銃器で薬剤を浴びせて凍結させている。
「これも、ユーベルコードではありませんね」
「超常の力ではありません」
人が自然から学び、研究し開発した技術。ウォーマシンのトリテレイアが戦いに用いるは主に「非超常」の力。人の手によって作られし彼は其の存在自体が奇跡にて、揮う力は魔法でもなんでもない兵器である。
超常の力を持たざる非猟兵でも機械と薬剤を用いれば同じ対策の再現が可能だろう――ただし、この騎士と同等の機動性能と研鑽と度胸を備えていれば!
「信長公、この世界での一戦、貴方も知るようにすでに決着は見えました! ですが!」
(眼前に立つは戦国の大英雄『織田信長』。歴史書に載る、時代の開拓者。ああ、昂りが収まりません――!)
ソラスティベルがオーラをトリテレイアに纏わせ、その進撃を支える。駆ける脚速め、隣に立てばちらりとセンサーが見下ろす気配。少女はコクリと頷いてみせた。
オーラ纏いし儀礼剣と信長の刀が火花散らし鍔競り合いをする。オーラごと斬り裂かんとする意気吐くは刀そのもののように思える――それはそんな刀であった。
「わたしは嬉しい! 貴方と刃を交えられることが! 時を超え、貴方と共に在れる現在(いま)が!!」
ソラスティベルが同時に蒼雷を纏う大斧を低い位置から横に走らせている。
「フェンフェン!」
「く!」
信長が身を捩り逃れようとして――目を見開く。硬いワイヤーが剣と刀を絡め、自由を奪っていた。大斧が深く横一閃、鎧を裂き砕いて血を噴かせた。
「搦め手かッ」
「形振り構わぬ戦法、ご容赦を」
トリテレイアは僅かに申し訳なさそうな声色を見せ、超重フレームの貫手を繰り出し鋼鎧を刺し貫いた。敵に向けたセンサー光には冷徹な気配が濃く滲む。申し訳なさそうな声は、つまり味方に向けられたものであった。ずるりと手を抜き、道を譲るようにしてみせればソラスティベルが旋風のように身ごと回転させ、斧を揮う。
「フェフェフェン!」
「は、ッ……」
秀吉の声は無力に響くのみであった。黒槍が血濡れたままに放たれても、控える騎士が冷静に凍結させていく。
「刀で! 刀で、ぜひ勝負を!」
ソラスティベルが大斧を振り下ろせば信長が血反吐を吐きながらも触発された様子で刀で受け止める。
(……!)
大威力の斧を刀は折れることなく受け止めた。一振り、それ自体が耀くようなオーラ持つ静かなる刃。紛れもない名刀が今斧とかち合っている。それがソラスティベルに伝わり、頬から耳にかけて薔薇が咲く――高揚。
少女は自然と笑顔を浮かべた。
「光栄です、光栄です……、そして」
苛烈に斧が音を鳴らせる。刀を弾き、信長を押す音だ。
「――負けませんッ!!」
そうですよね、と少女が『後ろに』声を放つ。騎士は凍結させた黒槍を怪力でぐしゃりと砕き、信長に手を伸ばす――『手を繋ぐ』。
「データベースで」
ぎりぎりと信長の腕を捻り上げながら機械騎士が声を放つ。
「貴方の事は調べました。所説あるようですが、革新的で有能な方であったと――、」
「そうです!」
ソラスティベルが高揚の斧を振り上げた。少女の斧へと敵将の前を差し出すようにしながらトリテレイアは冷徹に言い放つ。
「私が調べた貴方は過去。今を生きる人々に今を譲り、未来から立ち去りなさい」
斧が深々と身を貫き、信長が苦痛の声と共に膝を折る。秀吉が怒りの声をあげ、信長を案じるように鳴いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
◆幕間
猟兵がまた一組、一撃を加えて消え後続が転送されてくる。
「フェンフェン!」
秀吉が叫んでいる。
信長は薄く笑った。もはや表面的に傷を繕うことすらせぬ。血塗れのまま、信長は秀吉に笑いかけた。
「サルよ、何を騒いでおるか。このうつけめ」
もはや永く戦うことは叶わぬと全身が訴える。蘇りの身とて限界はある。此度はこれにて最期と思われた。――賭けに負けたか。元々分の悪い賭けであった。信長はそう思い、口の端を歪める。
「フェンフェン! フェンフェン!」
「で、あるか」
次なる猟兵の気配が見える。ならば、戦おうぞ。「戦おう」その一言のなんと心奮い立たせることだろう。生とは戦いであった。世は常に乱れ、人は争っていた。秀吉は常に信長の信頼に応え、邪気なくフェンフェンと言っていたように思う。故に、信長は秀吉を気に入っていたのだ。
「では、往くぞ」
「――フェン!」
笑えば力が湧き出るようだった。
オブシダン・ソード
【狐剣】
器物はいすゞの手に
先制攻撃に際していすゞの前へ
オーラ防御を駆使して彼女の盾になるように立つ。せめて槍の到着を少しでも遅らせよう
穴だらけにされようともUCの発動が間に合えば良い
――たまには僕が守ってあげるよ
剣戟になるならその太刀筋からアドバイスを、槍が飛んでくるなら警句を飛ばして鼓舞
緊急時にはオーラ防御使用で彼女を援護
ああ、ハラハラするねえこれ
仲間を装備するんだってさ、いすゞ
知ってるかい、こういうのは絆が強い方が勝つんだよ
…うん、適当に言ってるけど
負けるのは癪だよね。あの鋼鎧、斬り裂いてあげる
彼女のUCに合わせて攻撃!
君の勝利のために力を尽くそう
敵将、魔王、討ち取ったり! なーんてねぇ
小日向・いすゞ
【狐剣】
センセの器物を握り
仮初の肉体とは言え少しでも彼の傷が減れば良いと祈る様
彼のオーラ防御に符で防御重ね
…余り無茶されたく無いンスけれどね
彼のUCが発動すれば
あっしはセンセ自身で槍を受けるっス
武器で攻撃を受ける鍛錬は繰り返して来たンスよ
逃げる訳じゃ無いスが
逃げ足にゃちょいと自信があるっス
立派な鎧じゃァ、早くは走れないでしょう
走れないって事にして欲しいっス
はぁいはい
センセの言葉には従う
装備品の矜持っスか?
センセの軽口はいつもの事っスが
センセが今祈って良い事は、あっしの勝利だけっスよ
アンタが信じりゃあっしだって頑張れるっスから
さあさ、触ったばかりでかように斬れる
鋼鎧も、尾張のうつけも、まっ二つ!
●落陽
蕭蕭として、何れの處よりか風至る。
戦場に転送される影一つを察知した瞬間に信長は黒槍を放つ。今や外貌を取り繕う事も無く血濡れた鋼鎧から放たれた槍。血を滴らせながら刃が『猟兵』の身を斬り裂かんとした刹那、何かが衝突して進行を妨げた。暑気満ちる城内に高く響くは金属音。邪気と正面から接触して火花散らす黒曜の光。圧されがちに受け止める黒曜には何故か(センセって意外と細腕で可愛いっスね)という言葉が蘇り、その瞬間、光は増大して邪気を頑なに跳ね返した。
衝突時の音が悲鳴に似るのをぴくりと狐耳が聞き留め、戦場にぽっくり下駄の狐音鳴らしつつ腕が伸びる。
「……余り無茶されたく無いンスけれどね」
小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)が薄桜咲く爪先でつつと柄を撫で握り。振る。荒く削り出し尖るがままに鋭い破断面をそのまま刃と銘打ったような原始の剣は煌々とした光を脈動させ、黒槍の波を受け止めた。
――――たまには僕が守ってあげるよ、相棒。
それは、剣の本懐。ただ一振りの剣として相棒の手に収まるオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が純然たる硬度を増して。迫る信長の掌中に収まる相手を視る。身幅広く重ね薄く反りは比較的浅く。
「フェンフェンフェン!」
背後の秀吉が信長に警告を放っている。
「ほう、猟兵の技。堅牢なるは天下に並ぶものなし、か。ならば嘗て茶坊主を成敗した時のようにその刃ごと圧し切ってやろう」
『困ったなぁ』
刃交わる瞬間、オブシダンが笑う気配が手を通していすゞに伝わる。剣を扱うは真面目な使い手。刀を扱いは勝利のためならば型に拘らぬ破天荒な使い手。相性はどうだろうか、と懸念しながら声には滲ませぬ。
『僕の刃もまた箔がついてしまうねぇ』
「はぁいはい」
一撃受け止めれば如何にも重い。斬り結ぶ鎧から黒槍が伸びていすゞは後ろへ大きく跳ねた。ひらり、ふわり、いっそ優美な弧を描き重力を感じさせぬ軽やかさ。
「立派な鎧じゃァ、早くは走れないでしょう」
コーン、ぽっくり下駄が音立てて空中に迫る槍はオブシダンが受け止めてくれる。身を削るような高い音一つ。狐の尾がぶわりとなる。
「センセ!」
『――跳ばずに右へ』
転がれ、と導かれるままいすゞが身を床に投じれば全身をあたたかな気が包んでくれている。左に峻烈な殺気が奔り床が抉れて破片が飛び、身を包む護気が破片を頑なに拒んでいた。
『上へ切り上げて後ろに。跳んではいけないよ』
次手の選択肢が狭まるから――そっと付け足された声に返事をする余裕もない。だが、余裕がないとは悟らせたくない。狐の矜持だ――逃げ足にゃちょいと自信がある。
「はぁいはい」
いすゞはふわりと応えながらオブシダンを斬り上げた。ガツリと手を痺れさせるほどの衝撃。刃の戦う音がまた一つ。光は確りと一撃をしのぎ、妖狐の娘は跳ばすに下がる。
(ああ、ハラハラするねえこれ)
一撃。やわらかな小躯は只一撃で戦闘不能に追い込まれることだろう。ほんの一瞬反応が遅れ、読み違え、駆け引きに負ければ命取り――紙一重の舞踏が続いている。けれど。黙っていた方が鼓舞になると言われたこともあれど。その口はやはり滑らかとなる。性なのだ。
『仲間を装備するんだってさ、いすゞ。知ってるかい、こういうのは絆が強い方が勝つんだよ』
へし切りが迫っていた。使い手信長の背後では忠臣が鼓舞するように声をあげている。
いすゞの脳にふと声が蘇る――『僕は君の斬れないものを斬れるし、届かないものだって斬れる。時には盾にもなれるし……すこーしだけ、君の退屈を紛らわす事ができると思う』。
狐の娘は、陰陽師であった。剣の名手とは名乗れぬ。だが。
「武器で攻撃を受ける鍛錬は繰り返して来たンスよ!」
(あっしは武器受けの良いオンナっスから)
――受けてみせる。狐音高く鳴らし足を踏み込めば様になる。型なれば気流正しく心通らば一刀なお滑らかに柔らかし。
「装備品の矜持っスか? センセの軽口はいつもの事っスがセンセが今祈って良い事は、あっしの勝利だけっスよ」
上から振り下ろされた重い一刀を柔軟にいなし、狐尾をゆらり、ゆらしてみせて。
「アンタが信じりゃあっしだって頑張れるっスから」
今は、複雑な事は何もない。単純極まりない依頼の只中に2人はいた。ただ、目の前の敵にぶつかり、倒すのだ。沫雪越しに体温が伝わる。熱。慣れた熱だ。
『……うん、適当に言ってるけど負けるのは癪だよね。あの鋼鎧、斬り裂いてあげる』
ふわり、鳥の子の尾が揺れて揃いの髪が後ろへ流れる。空気と一緒に城内の景色も後ろへ流れていく。ひと蹴りごとに高く鳴る音は誇り高く。全身を優しい護気が包んでいる。だから、いすゞは真っ直ぐに駆けた。低く。
「フェンフェン!」
秀吉が叫んでいる。
「さあ行くっスよ、相棒」
弾丸めいて突っ込み身ごと突き刺さるように差し出したるはいすゞの無敵の剣――、
『君が私の剣になる』。
「さあさ、触ったばかりでかように斬れる! 鋼鎧も、尾張のうつけも、まっ二つ!」
声は魅せるが如く。嗚呼、その言のなんと擽ったく誇らしいことか。
『君の勝利のために力を尽くそう』
身を沈める瞬間、黒曜は一切の護りを捨てて燃える心を刃の鋭さに変えた。地中で眠っていれば得られなかったであろう敵を貫くという本来の役目――望み叶えるという本懐。
――『呪いの装備さん』。
そう言いながらも彼に触れてくれた娘の手に勝利を握らせよう。刃は煌めき、脈打ち、鎧を破りて敵の生命を断ち切った。
その瞬間いすゞの心の内には彼の告げた『絶対に』という言葉が蘇っていた。肉を断ち骨を断つ。随分と刺激的だ。退屈どころではなかった。生命が絶えていく。己の身には傷ひとつ負っていなかった――、
断末魔さえも許さず、静寂のまま敵将が脱力しやがて地に崩れ落ちる。悲痛な叫びをあげた秀吉も主の後を追い、為すすべなく消えゆくのみとなり。
コーン、
澄んだ音ひとつ慣る。
いつものように。いつものように。嗚呼、その音のなんと安らぐことだろう? オブシダンが穏やかに勝利を宣言する。だって、言うべき使い手が黙っているからね。
「敵将、魔王、討ち取ったり! なーんてねぇ」
いすゞは剣の無事を確認し、にこり、いつもみたいに瞳を細めて笑った。
城下では幕府軍もまた敵軍勢相手に勝利を収めていることだろう。それは、密やかな予知に似せた願望であった。
やがて日は傾き空が色をうつろわせ、人々の歓声が風に乗り草木揺らし花を楽しませた。茜に染まる世界の中、金色の雲が穏やかに薄くたなびいた。
――この日、蘇りし信長は再度、魔空安土城にて討取られたのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴