エンパイアウォー㊳~魂が共鳴する、忠義の果てに
●
「弥助よ、すぐに舞い戻り、儂に憑装せよ」
秘術「魔軍転生」を利用した命がけの大博打となると、織田信長は確信している。
「信長様の命であるならば」
弥助アレキサンダーは深く頭を下げ、動かなかった。
再びの肩を並べる戦闘に、馳せる気持ちが止まらない。
――背後霊のようにあっても、俺は信長様と共に……。
●
「掴んだぜ、消えた『弥助』の足取りを」
フィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)は目の下のクマを普段より濃くしながら、集まった猟兵へ伝える。調べた情報は多くないが、伝えなければならないことだ。
「場所は、魔空安土城。俺様たちの行く手を遮る配下共は、……気にしなくていい。幕府軍の道中を護きッた事でそちらは任せろ、とのことだ。俺様たちは、やるべき事に集中していい」
関門海峡を後に姿を消していた弥助は、サムライエンパイアのオブリビオン・フォーミュラーたる第六天魔王『織田信長』のもとへ馳せ参じていた。
猟兵に足取りを察知されるより疾く、織田信長と謁見し、関門海峡で蓄えた力をそのまま信長に浸かって貰うべく、秘術を用いて存在を背後霊化し、信長が使う為の力と成ったらしい。弥助は始めから『信長のため』にしか行動していなかったのだ。
「つまり、だ。弥助が出来たメガリスの使用は、信長にも出来る。弥助が使ッた『渡来人の至宝』は信長にも扱えるんだよ、脅威の信頼関係ッてか?」
背後霊となって背後に従う弥助の意志まで剥奪されているわけではないが、会話は出来ても全ての力を信長に上乗せして預けているため、弥助が単体、猟兵に牙を向けることはない。信長の勝利を信じ、弥助は応援するだけだ。
「ただし心に留めて欲しい事があるぜ。……注意しろ、『勝つことが出来ない可能性』を視野に入れている織田信長は、幕府側について戦う俺様たちを、ひたすら全力で叩き伏せにくる。迷いはない、躊躇もない。弥助がやッた事は、信長もするんだよ、つまり…………挑んだところで先制攻撃の餌食に遭う。油断すればバッサリ、なんて事は容易く起こる」
織田信長は、城から逃げない。
サムライエンパイアに魑魅魍魎が湧く原因ともされる黒幕を討つチャンスなのだ。
「治安を安定させるため、といえば正義感だけが勝つが……村人にもそろそろ迷惑だろ、ッて俺様は思うわけだ。アンタはどうだよ?」
魔空安土城の内部がどうなっても、今の彼に関心を寄せる場所はなく。
野望の為の生か、死かの二択しか頭にない。
「幕府軍を潰す勢いで攻め立ててきた軍の親玉だぞ? 流石に甘く見るヤツはいねェか」
これが猟兵にとっても決戦、正念場だ。
「……第六天魔王『織田信長』を討ち倒せよ、絶対な」
フィッダは猟兵をテレポートで送り届ける。
待ち受ける、血戦の場である――魔空安土城へ。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
長い戦いの終わりが近づいてきましたね。セミファイナル。ジジジ。
本当に、終わるんでしょうか……それは、猟兵の活躍、次第なので、しょうが。
大帝の剣は何度も破壊される運命、タテガミ、何故だろう……知ってる。
この依頼は、既に織田信長と遭遇した所から始まっておりますので、断章を挟む予定はありません。思いの丈を、ぶつけてください。
ただし、この依頼は特殊ルールとして下記が発生します。
====================☆
第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
====================☆
また、下記の通りですので参加する人数で依頼が失敗する事があります。
ノッブの丸焼きを作ったりできるのは、貴方のアイデア次第なのです。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦
『第六天魔王『織田信長』弥助装』
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POW : 闘神の独鈷杵による決闘状態
【炎の闘気】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎の鎖】で繋ぐ。
SPD : 逆賊の十字架による肉体変異
自身の身体部位ひとつを【おぞましく肥大化した不気味な鳥】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 大帝の剣の粉砕によるメガリス破壊効果
自身の装備武器を無数の【大帝の剣型】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:UMEn人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キル・トグ
ああ…これはまずい、貧弱な獣が出る幕はないようだ。逃げよう、前に向かって。空をめざして。それしか道はないのさ。
「Riser dog!我ら地虫!卑しくも魂は一つ!」
地べたを這いずれ、敏く、低く、我らくらやみの獣。
刃と炎を恐れるな、そうだ!あの右手に喰らいつけ!剣持ち、獣狩る猟師の腕を許すな!
空を駆けろ、鋭く、敏く、その四つ脚は大気を足蹴に、やみの眼が届かぬ場所へ!我ら鳳の裁きを逃れる卑しき地虫!
マニューバリングさ。牙で武器を持つ手を狙おう。地を駆け高速接近、獣が危機を感じたら敵の視線を切るピンボール機動での空中戦へ移行、鳥籠だね、無理のある機動制御だから鼻血で済まないのさ。後は逃げる。
●獣の詩
魔空安土城、その場所は地より高く、喧騒は遠く。天守閣の一室を目前とする部屋で、織田信長は待ち構え、猟兵を静かに見据え口を開いた。
「よくぞ、此処まで来た」
武を固める鎧をカシャリと音を立て、スッ、と刃を抜く。
「野望を潰す者共への歓迎は、勿論、刃と物語るものであるべきか」
その瞬間、部屋全体が凍るように冷気が漂う予感がした。
――凍てつく、波動のような。背筋が凍るなにか。
戦国時代を己が武勇と軍の強さで淘汰してきた猛者。
その目つきは敵対者を射殺さんばかりに睨む。
「まるで飢えた獣と同じ目だ。そして、貧弱な獣は逃げの一手を、算段を検討しなければならない」
黒い大きな獣、とそれの制御装置と言うキル・トグ(空の語り部・f20328)は語りながらも、二匹の在り方を吐露する。
――あぁ……これはまずい、貧弱な獣の出る幕はないようだ。
「此処へ来て、即座に逃げる? それには、儂も弥助も腹を抱えて笑うものだぞ」
ちらり、と背後に感じる弥助を見ると、つい、と視線を反らした。
敵対意識の在るものを、戦闘中に、弥助は笑わない。
「逃げよう、前に向かって。空をめざして。それしか道はないのさ」
トグは信長の話を聞かない。獣の凄みに当てられたキルが、畏怖し逃げ出したかっているからこそ、二匹で決めたことだ。あとはキルがそれをする為の足となる。トグはそれに同意し、ついていくだけ。
「恐れは抱き、しかし戦わぬ者共よ。では一つ、……」
弥助の所持する対象を異形強化するメガリス『逆賊の十字架』、渡来人の至宝を使い、頭部を変貌させていく。空を目指し飛び出そうとする獣たちを追う物が、まさしく異形の獣となったとして、何がおかしいことだろう。『逆賊の十字架』は信長の頭部を、知る者が見ればニワトリ主体のおぞましい程に歪な何かに。
全く知らぬ者が見れば、醜く伸びる大きな嘴と。元の顔の造形すら消失するほどの焦げ茶色と赤い羽毛がぶわぁあと顔を覆った。
恐らく悪夢の妖鳥といって総意ない。頭部だけが人を辞め、長く長く伸びる羽毛は弥助をも埋め尽くさんばかりに伸びる。
「儂は逃げる足の一つでも喰らい千切ってやろうぞ!」
嘴に歯がずらりと並んでおり、それが吠える。
信長の言う食い千切るは、伊達ではない。刃を抜きながらも、信長は嘴が先行しながら走り、キル・トグ二匹に走り寄る。
「Riser dog! 我ら地虫! 卑しくも魂は一つ!」
地べたに身を低く伏せ、キルは唸る。敏い獣はその瞳を静かに、細めた。
織田信長は使わずとも、片鱗として『闘神の独鈷杵』が齎す炎の闘気を纏っている。獣が炎を恐れるとして、それは頭脳がない場合。
しかし、キルにはトグがあるのだ。
「刃と炎を恐れるな、そうだ! あの右手に喰らいつけ!」
考える語り部は指差し、キルを鼓舞する。考えが同じであるなら、伝わる事。
この獣はそれを成し遂げる者。地を、床をべりぃと大きく捲り上げながらの急加速。高速接近に置いていかれないように、ふわふわの毛並みをトグは間一髪で掴む。
――空を駆けろ。鋭く、敏く、その四つ脚は大気を足蹴に、どこまでも。
キルはガウゥウと大きく牙を向くが、異形の鶏がにたりと笑ったのを見逃さない。
急激にその身を翻し、壁を蹴るように空を駆け、その腹部に突進を食らわせた。
衝撃で一歩、押し戻される信長。
――やみの眼が届かぬ場所へ。我ら鳳の裁きを逃れる卑しき地虫!
空へ、の言葉はどこへやら。
一貫しない行動は、信長と付き従う弥助を困惑させる。
「……剣持ち、獣狩る猟師の腕を許すな!」
よろめき、一歩でもたたらを踏ませた事で、トグは追撃を手に加えようと、動く。
機動制御たるトグから若干の鼻血が溢れたが、キルは攻撃の意志を崩さない。
「グアアァアウ!」
獣は大きな体と鋭い牙で、織田信長の辺のない人の腕を捕らえる。
がぶりと何度も牙を立てれば、愛刀は取り落とされ、無造作に足元へ転がった。
血の溢れる匂い。誰とは判断付かぬ、苦悶の音。
羽まみれで見えない表情は、今はない唇を噛み、悔しがっている事だろう。
「価値ある確かな牙は届いた。その顔では空を疾走ることはできないだろう? では逃げる」
ごぼりと派手に口から溢れた鮮血を隠すこともなく、キル・トグは宙を奔り空へ、と逃げる。駆けて駆け抜けて、部屋の最奥まで至ると、そのまま気にせず壁をぶち抜き、空へと逃走。
キルの毛並みはトグの鼻血と吐血で大分汚れてしまったが。
――二匹はどうも、満足そうであった。
成功
🔵🔵🔴
黒鵺・瑞樹
アレンジ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
相手の先制、噛みつきには胡で対応。【第六感】【見切り】で攻撃筋をよみ、胡を逆に噛ませる。可能なら口内めがけて刺す。
防御というより逆に武器を噛ませることで肉体及び本体にダメージを受けないようにだ。
噛ませたらUC五月雨を至近距離でくらわせる。
その隙に【存在感】を消し【目立たない】様に死角に回り本体をもっての【奇襲】【暗殺】攻撃も行う。
確殺できなくとも動きの制限狙いで【マヒ攻撃】、かつ【傷口をえぐる】でよりダメージ増を狙う。
基本相手の攻撃は【第六感】で感知、【見切り】で回避。
それでも喰らってしまうものは【激痛耐性】【オーラ防御】で耐える。
●Collector
「一撃にて必殺の一撃。見事……しかし」
獣に牙を突き立てられた腕で落とした刀を拾う織田信長。
不気味な妖鳥と化した頭部をそのままに、羽を無造作にむしり、次の相手を冷静に値踏みする。足音、気配。討伐に動く者は直ぐ側に近づいている予感。
「貰うた分の礼は……はてさて、誰へと返すが妥当なものか。のぅ? 弥助」
弥助は首を振り、応える身分ではないと返答を辞する。
過去に消せぬ程の恩と敬意はあれど、信長の戦いに口は挟まない。
力として振るわれる事以外に、応える術は持たない……故の、武将。
「そうよな、お前は昔もそういう奴だ。よい、お前ならそれを選ぶと……」
裂けんばかりに大きく嘴を開き、声色は大笑いを齎すような楽しげな声色で。
「思っていた! !」
振り向きざまに口を閉ざすと、喰んで捕らえたのは……煌めく刃の打刀。
黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は初撃の予感を感じ、右と左に二つの刃を構えて闇を潜み此処までやってきた。
例え初撃前に姿を目視されずとも、相対するはただの鳥頭ではなく、天下に轟く名を持つ男。直感に近い動作だけで、予想を飛び越え赤い眼を怪しく光らせて、瑞樹の姿を認識した。
「胡の味はどうだい?」
「良い刀だ……儂の所有した事のある義元の名を冠する太刀に引けを取らぬ……」
ガリガリガリ、と噛み砕かんばかりにかじる織田信長は刀好きも講じて値踏みする。収集家としても有名だった者の憧憬。没後に躯の海より来る身では、思い出にありこそすれ、それは無し崩し……手放した刀(もの)。
「そんな有名な刀と比べられたら……流石に胡でも苦笑い、だ!」
胡は横薙ぎの状態から上下の嘴に押さえつけられていたが、再度喰み直す瞬間を見切り、口内目掛けて刃を滑らせた。期待と願いに応えるように、胡は口内に入り込み、鳥の頭部と変わっていても嘴の内部は人と変わらぬ口内。切り裂き、刺して貫くまで至ろうとすれば、強く喰まれて押しても引いても胡は動かない。
――これを、防御、という風に思われてる感じはないな。
――しかし、……攻撃という風にも、見られてない。
しかしそれでも、口内の大火事に、嗚咽のひとつも零れ落ちる。
「ぐぅ……! しかし、儂の目利きは、誰もが…………認めたものだぞ」
刺さろうが切られようが、織田信長は敵対を止めない。うつけが夢見る渡来人の見た夢の先、敵わぬ願いと諦めようとも、今の『生』をまだ諦められないからだ。
――『本体』と俺に被害が最小限になればこっちのもんだ。ここからが、本番だ。
「少なくとも、アンタに認められてもなぁ……?」
左手に持つ、刃が黒い大振りなナイフ……『黒鵺』が大量に瑞樹の傍に展開され、一斉に掃射される。胡を喰む信長は勿論モロで突き刺されていく。打刀を離せば逃げる算段はいくらでも思いついたのだ。
――見事な刀を無意識にでも欲したのか、儂は?
54のナイフが瑞樹の制御のもと踊り狂わん限りに生身の体を貫き続ければ、鎧はボロボロになり防具の役割を一切果たさない代物となる。
「……どこへ、消えた?」
いつの間にか瑞樹の姿が掻き消えているのだ。
――打刀はある。儂が直に口に咥えているのだ、これを置いて逃げたのか?
背後の弥助がいち早く気がつく。しかし、口には出さない。それは消えたのではなく、――認識外に存在を溶け込ませているに、過ぎない、と。
「生憎だがそれは俺が譲られたものでな、……誰にも譲る気はないから!」
声と共に、信長の背後に周り込み、人な背中を狙い、『黒鵺』で穿つ。
確かに刺さった『黒鵺』越しに、ぐり、とダメ押しに傷口を刳り、歴戦の武将に血反吐を履かせた。
「それになぁ、戦闘中に打刀を噛んだり、大量の『黒鵺』浴びるなんて、収集家としては身に余る光栄だろ?」
「く、くく……確かに。人であったならば出来ぬことだった。愉快、愉快な気分だ」
血を吐いた鳥頭が、元の織田信長のものへと戻っていく。
満足げな表情で零した口元の血を拭い、血だらけの口の事など一切を無視する。
「命を賭ける戦いは、やはり、常にこうでなくてはならぬ!」
大声でそう言い放ち、大声で笑い出す。
――何度も、何度も、血を吐きながらも。
強者の来訪を喜ぶ、やんちゃな吉法師だったころを思い出すように。
大成功
🔵🔵🔵
アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)
最後の戦い!負けられないね
わたし達もお手伝いしなきゃ!
まずは炎対策。事前に水分を含ませた苔植物で身体を覆って熱を防ぐ(属性攻撃、オーラ防御)
相手の闘気は必ず真正面から受け止めるよ!爆発は…きっと我慢できる
炎の鎖で繋がれたら、背中で守るように隠しておいたエンキドゥを飛び出させて【蛮戦技巧・剣刃掃射】で攻撃させる。避けようとしても鎖を引っ張って邪魔するよ(怪力)(空中浮遊、串刺し、援護射撃)
わたしが倒れても、エンキドゥは勝手に動ける
だから気にせずやっちゃって。エンキドゥ。わたしは頑張って邪魔をするから
(エンキドゥ:大きさ140無い程度。無口、無表情)
●少女は魔王の心知らず(Duel weapon)
「強者どもよ、ここへ来たれ!えぇい順なぞに構うな、各々が勝手に捨て身で挑み、猛きに吼えよ!」
織田信長は、戦いすら楽しみだす始末。
この先の未来を見れぬ可能性を大きく見据えて、死闘を楽しもうというのだ。
――最後の戦い、負けられないね。
「わたし達もお手伝いしなきゃ!」
アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)の体格では少し狭い室内を若干破壊しながら、やってきた。城はわりと、半壊に等しいが、魔空安土城なのでそういうこともあるのである。
ぎしぎしと、丁度真上に位置する天守閣の部屋の床がひび割れじわじわと崩れる。
「……『たち』?お前は一人であろう。しかしそれも構わない。儂も…………そろそろ――本気の闘志を、見せてやろう」
メガリス『闘神の独鈷杵(スカンダのどっこしょ)』を所持することで後光のように背で燃えていた炎がゴウ、と沸き立つ。
「命を燃やす対価を、儂が払わぬわけがない。此度の敦盛に盛大な火を焚べよ」
両手に背の闘気から齎される炎を纏い、アウルの出方を伺う。
ぱちぱちと燃える音は幻想ではなく、本物の炎は部屋全体の燃えそうなものを、そして信長自身を燃料に燃え続ける。
「『達』だよ、あってるもん!」
――わたし達は相当燃えそうと思われたのかな?
時折天井に刺さるアウルの頭部の樹角を見て、派手に燃えると思われたのか、と問われればいいや、それは必然であった。
背後に控える弥助は思うのだ――織田様は、死の経緯から炎に縁がありすぎる。
独鈷杵の齎す炎はその手によく馴染み、戦いの意欲を情緒が不安定と思われるレベルまで煽った。まるでメガリスの齎す恩恵であり、……呪いのように。
「でも残念、簡単に燃える為にここへ来たのではないんだよ~、えっへん」
まるで森林のような彼女が、ほぼ燃えていない。
それどころか、アウルは多少暑い空間が嫌だな、という顔すらしていた。
「…………っ、まさか、この匂い…………!!」
アウルの体を覆う緑。それはアウルが存分に水分を含ませて身体を覆った植物だ。つまり、苔植物。彼女の体表に勝手に自生しているものであるので多少の火災が起きても、そのうちもとに戻ることだろう。
「儂はその香りと似たモノを、育てていた事がある……」
渡来人の持ち込んだ薬草を栽培するための土地を貸し与えた、等と言われる信長である。持ち込まれた情報は、楽しく勉学に励み愉快にその生育を見守ってきたのだ。
「……しかし、何だというのか!」
闘気を込めた炎の拳を、水気すら蒸発させん勢いで、アウルの身体に叩き込む。
「なにって、対策だよ?熱いものは熱いからね!」
アウルは一切避けなかった。熱いのは我慢できたが、苔の一部がその後の爆発で大きく吹き飛んだ。
「しかしどうした、儂の鎖に繋がれて。それではそこから熱かろう。まるで獣の戦いではないか」
殴られた部位……つまり、アウルの腹回りに強固に鎖は繋がれ、反対に、信長の手にそれは繋がれている。決闘という意味で、勝たねば断ち切れぬ鎖だ。
「ふぅん?よくわかんないよ。でも……やっちゃって!エンキドゥ!」
アウルよりも大分小さな人型が背後から飛び出して、燃える信長に勇ましく突っ込む。エンキドゥは何も言わない。兵器であるからこそ、無。
何の表情も持ち得ず、同様になにも恐れない。片腕は光の刃となり、嵐のように風を巻き起こし、逆巻く炎として闘気を信長に叩き返すのだ。
「ぬぅう、おそらく……絡繰。奇妙に儂の気を引くものばかりだしおって……!」
風に煽られて、自身の放つ炎よりも更に火力が上がった物理的な闘気が体全体を焼く。逃げ切れなければ、両手に灯った闘気以外も、全てが己自身が発した炎で焼き尽くされる。
信長は勿論、それに気がついており、素早く逃げの算段を考えて始めているのだ。
「そうなんだ。でも、そういう口車なんでしょ?」
逃げようとする気配を察して、ぐっ、と燃える鎖を引っ張ると信長は呆気なく退路を断たれて転倒した。
あの魔王が策に溺れかけて、遊ばれている。これには弥助も驚きを隠せない。
「これ、一対一ならそれなりだけど、もうひとり居たら勝ちだよね」
一本背負いの要領でアウルは信長を釣り上げ、床に叩きつけて、視界が明暗するところをエンキドゥが刺し貫く。
弥助の声に後押しされて、致命傷は避けるものの。
信長も玩具にされてはたまらないと独鈷杵を放る始末。
「えぇー、もう終わり?」
「……高ぶる儂の頭も、ようやく冷えたところだ。その連携、褒めて使わそう」
全身に大きくやけどを負った織田信長は、『高き森の怪物のお話』にまた一つ、逸話の類を遺したのだとか。
エンキドゥの見ていた記録曰く。
――燃える尾張のうつけが、大きな少女と熱盛を興じたのだ、と。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・クロセ
世界を破壊しようとする信長。絶対にそうはさせない。
行くよ!
炎の闘気が届く前にUC【無敵城塞】。
炎の鎖でつながれようとお構いなし。
いや、鎖でつながったなら相手も逃げられないのはアタシにとってチャンスだよ。
鎖で繋がったら無敵城塞を解除、炎のサイキックエナジーを二つの武器に展開する。
小細工は無し。【属性攻撃】【2回攻撃】で攻撃、防御面は【武器受け】【見切り】を駆使して純粋な斬り合いを挑む。
信長に隙ができたら、炎のサイキックエナジーを全力全開、胴を【なぎ払い】でぶったぎる。
「アタシの炎で焼き尽くす!灰となって、ここからいなくなれ!!」
※アドリブ・連携など歓迎です!
●Honno-ji dream
死を予感して放り投げたメガリス『闘神の独鈷杵(スカンダのどっこしょ)』は、そう遠い場所に転がったわけではなく。数歩歩けば回収は容易であった。
信長は一度は手放した独鈷杵を拾いながら、威圧的に猟兵を嗤う。
「どうした、城が例え半壊に追い込まれていこうとも。全てが燃え尽きるまでは儂の独壇場だぞ」
――世界を破壊しようとする信長、……絶対そうはさせない。
野望の未だ夢見て君臨し続ける魔王に、ステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)は強い思いで、正面から信長の視界に飛び込み、行く手を遮るように立ち塞がった。燃える様な真紅の瞳の少女と視線がぶつかると、信長はボロボロの手甲で口を隠して、笑いを隠す。
「なんとまぁ猟兵達のほうがよっぽど温度差があるではないか。愉快な気分も最高潮。この場にサルめが居たならば、奴を蹴鞠代わりに激しく蹴りあげていた所だ」
フェンフェン語る、豊臣秀吉のバウンドモードは派手に跳ねてそりゃあもういいボールとなることだろう。この場にその存在が無いことが、実に悔やまれる。
「……だが、しかしだ。儂より燃える赤の炎の瞳を見たともなれば、もう一度舞い踊る事も余興となろうか。それは君臨する者の眼差しだ。二人も要らぬだろう」
背中に炎の闘気を再び宿し、冷ました頭に再び燃料とも言える自分を焚べる。
崩れ落ちる防具も、徐々に炭化していく手足も一切を無視して、両手に具現化した炎を纏い、ステラに初撃を打ち込むように走り出す。
「真っ向勝負なら、アタシも全力で……行くよ!」
炎の闘気を纏った織田信長が至近距離に迫りその手がステラを焼く瞬間。
「アタシは、騎士道を大事にしたいから絶対に避けなーい!」
炎のサイキックエナジーで編まれたNow or Neverの名を冠した刀と、ステラの家系、『黒瀬家』の蔵に存在したという太刀……を改造した新焔・関勝大刀。
その二対の武器をステラは体の前でクロス十字に構え、加えて身体に炎のサイキックエナジーを纏い全身への攻撃を拒む。
「逃げぬが騎士の誉れと謳うか!しかし、捕らわれ逃げられぬ事は果たして誉れか、否か!」
振りかぶられた拳は、二対の武器、そのど真ん中……丁度どちらも受けられる場所を狙い定めて繰り出された。接触点を起点に、瞬間的に爆発が起きるがそれの余波を受けるは背後霊化した弥助の最高にキマっている髪型くらいか。
炎のサイキックエナジーは爆発の余波での怪我を最小限に抑え、無敵城塞と化したステラには致命的なダメージは一切無い。じゃらり、と燃える炎の鎖が武器に絡みつくように信長の手首と結ばれて、遠距離に離れる事が出来なくなる。
「アタシは褒められたいから戦うんじゃないよ?」
狂うように燃える鎖の熱さを覚悟しつつ、その場より動けなくなるデメリットを解除し、ステラは鎖が絡まる武器を手に薄く微笑んだ。
刀と大刀の刀身にも炎のサイキックエナジーを纏わせて、展開。
「『必要とされた』から、戦うんだ!」
小細工などの一切ない、右と左の刃物が信長を斬り付けていく。
闘気で燃える炎は体を強化する事は一切無く、切られた分だけ炎より赤い鮮血を散らし、砕けた床を信長の血で紅く染めた。
「ほお、小娘が良く咆えよるわ。弥助よ、よく見ておくがいい。敵対する若獅子の武勇を。コレは信念を貫く覚悟ある者であると、儂が認めよう」
信長は自身の刀を抜く。炎を纏っても決して燃えぬ、強い鋼の器物を。
この戦いが始まって、未だ標的を斬ることの敵わなかった刀が振るわれる。
傷ついた体と、手首の鎖が邪魔をしようとも。魔王の意志は、体の無茶を圧し斬り、切り結ぶ刀に力を込めるのだ。それをステラに思い切り振り下ろす。
策を一切講じない、真っ直ぐに棍棒を下ろすような単純な攻撃動作だった。
「その刃には迷い、無いんだね。受けてみて分かったよ。……でも」
受けた刀を両手の得物で、押し返すと容易く魔王は、隙を生み出してしまう。
彼は正々堂々に弱く。
また、奇策に弱く、軽んじてる訳ではないが、遊んでしまう男である為だ。
「アタシの炎で焼き尽くす!灰となって、ここからいなくなれ!!」
全力で展開された炎のサイキックエナジーは爆発的な勢いで火力を増し、吹き上がる。それを纏った二対で同時に放つ一撃の胸狙いは、正確に彼の意表を突いた。
……ぼとりと二つの音がある。
生々しい、ぼたぼたと連続して何かが垂れて濡れる音と共に。
……カラン、カラン。
「ここより儂が居なくなるには火力が足りぬ。本能寺は、もっと過激で息の根も止まるほどであったぞ」
胴を裂き、切り落とすまでには至らなかったが。だがしかし。
織田信長から一文字で斬り結んだ太刀筋は両腕を切り落として刀を、独鈷杵を、触れる事を不可能にさせた。
此度の彼は、彼はもう。闘気の炎で、全てを焚べて延焼出来ず。
――刀を握る、手を手段を、喪った。
成功
🔵🔵🔴
依神・零奈
……敵でもオブリビオンでもなく人として見るなら
羨ましいな、キミ達のそのお互いを信じるその想い
……今はそんな事考えてる場合じゃないか
ただでさえ強烈な攻撃が無数に襲い掛かってくるなんてね……
信長の武器が花びらに変化してるうちに【破魔】の力を込めた
還矢を禍々しき安土城の天井に打ち込こんで一部を崩し
落下した瓦礫を防壁として利用する
その上で霊符を放ち向かってくる花びらの撃墜を狙い
手頃な大きさの瓦礫を正面に構えUCを発動し禍言による【呪詛】を
信長に放ち蝕み、動作の抑制を狙いつつ突撃
攻撃範囲内に入ったら瓦礫を信長の正面に投げ込みつつ【フェイント】で
側面に回り【破魔】の力を込めた無銘刀と禍言を併用して攻めるよ
メテオラ・エルダーナ
とうとう出ましたね、オブリビオン・フォーミュラ!
いくらあなたが強かろうとも!
「その企み、ぜーんぶ壊しますっ!!!」
飛び交う無数の剣には【ダッシュ】で対抗!取り囲まれないよう手薄な方へ走り続けましょう!
さらに、炎と風の【属性攻撃】と【オーラ防御】を組み合わせ、
熱風のオーラで「花びら」を燃やしちゃいます!
攻撃の切れ目は見逃しませんよ!
攻撃の猶予があれば、精一杯の【範囲攻撃】『虚空剣』で虚無領域を展開、
少しでも私に有利な状況を作り出します!
あとは小細工なしのガチンコ勝負!
少しでも隙を見せたら【ダッシュ】【ジャンプ】で飛び掛かり、
【全力魔法】を乗せた魔法剣で一刀両断!です!
(アドリブ連携歓迎です)
●As fantastic.
執念で人はそこに立つ。魔空安土城にも、それはあった。
無論、二つの足がある限り膝を折らない『織田信長』がそれに該当する。
両手を喪っても、敵対者の数だけその場に居座り続ける。
それ故に、魔王と呼ばれた。
「……敵でもオブリビオンでもなく人として見るなら」
依神・零奈(忘れ去られた信仰・f16925)は、悲しいだけの生を今を戦に染める男にぽつりと言葉を告げる。
信長と、背後に従うの弥助をそれぞれに静かな動作で指さして。
「羨ましいな、キミ達のそのお互いを信じるその想い」
言うか言わないかは迷った零奈だったが、近く迫る別れを考えれば言うべき言葉である、と口にした。
躯の海に消えても戻ってきて尚喪われない物に、多少の羨ましさは過ぎるものの。
「信頼を指して語るのであれば、儂と弥助だけを見るからそう言える。信頼と刃は預け合えようともふとした拍子に違え切り合う物。完璧とは、ありはしない」
両手剣型メガリス『大帝の剣』は、無造作に瓦礫と化した不安定な床の上で転がっていた。それに向かい、歩きながら否と語る信長。大帝の剣をガッ、と足で踏みつけて、零奈に顔を向ける。
「儂がこれを無視していた事すら『信頼』と呼べるのであれば、儂は人よりも『武器』の方こそ信じるものぞ」
秘術「魔軍転生」により弥助を憑装していることにより、それぞれのメガリスの所有者は弥助でありながら、信長はその力を使って見せていた。
つまり、弥助を憑装している限り、それは装備しているも同一。
そんな織田信長のねじ曲がった捻くれ特性すらも、反映した『渡来人の至宝』を、信長は迷い無く踏み砕く。
瞬間、大帝の剣は砕け折れると同時に折れて散らばった数だけ、触れれば切れる元の大帝の剣の姿を写した花びらを周囲に這わせて、滞空させる。
手など無くとも、武器を砕いた分だけ増える花びら。
「一つの踏み砕きで、この程度。何度も砕き粉砕しきったとき、さぁどうなるものか」
「驚いた。そんな剣って、……あり?」
「なんでもありあり!いくらあなたが強かろうとも!」
メテオラ・エルダーナ(まほうつかいキャット・f05337)は零奈の呟きに答えて飛び跳ねる。信長軍の行動開始時からずっとある暗い雰囲気に、キマイラの気質が痺れを切らしたのだ。
「その企み、ぜーんぶ壊しますっ!!!」
大剣の属性が反映された花びらの光を反射するキラキラとした色合いに目を奪われるが、そういう場合ではない。
「ではやってみせよ。咆えるだけの獣ではない証明を儂に見せてみるが良い!」
顎をしゃくる動作で大帝の花びら剣は猟兵に向かって花吹雪と降り注ぐ。
「失礼ですねっ、そのレベルの速さでは私を捕らえられませんよ!」
身軽な動作で足場の悪い床を流星のように跳び、メテオラのいる場所目掛けて飛んでくる蛇のような動きをする剣の群れは尽く狙いを外した。
――足場は……この辺りなら、綻びとかなさそうですね。皆さん壊し過ぎです。
場所を選び、攻撃から逃げながら信長を誘導するように跳び続けるメテオラの考えを察してか、零奈は打ち崩す天井の最適なタイミングを待つ。
天井にも穴と歪みと、亀裂ばかり。
どのような攻撃でも、零奈の狙いは外れないだろう。
「猫のように逃げるだけか?従順な虎の方が、まだ可愛げがあるな……いや前言を撤回する。虎なら牙を剥け。勇め、吼えよ」
「じゃあ盛大に、やってみましょうか!」
逃げる道中に溜めた延焼を誘う風の属性と、ごうごう燃える炎の属性を織り交ぜて……それを身の周りのオーラに編み込んで。
最大に展開すれば、それは熱風のオーラと変じて、攻撃手段となる。
「がおーっ!」
メテオラに向けて飛んでいた大帝の花びら剣を向かってくるものから触れた瞬間燃やし尽くす。それでもメテオラの死角から飛んでくる大帝の花びら剣は存在した。破片達は群れと固まって、別の角度から命を狙う。
「……はい、残念」
破魔の力を放つ還矢を、淀んだ魔の巣食う安土城の天井に打ち込こむと効果絶大。
天井は過敏なほど迅速に崩壊し、大帝の花びら剣の大半を彼の城が押しつぶした。
「ほう。ではこれはどうか」
燃やされ、天井の瓦礫で潰され、まだまだあるぞと言わんばかりに大帝の花びら剣を間を縫って、猟兵に届かせる。
だいぶ少量の、集めたとしても弥助の頭程の質量があるか分からない花びら。
「ふぅん……『魔王』というのはその程度なんだね。私は『神』なんだけど」
零奈は霊符を利用し、撃墜を狙うが何をしてもほんの少しが攻撃を阻みきれない。
それもそのハズ、それは零奈の狙いではない。
「それ、でいいかな……」
瓦礫の大きさを冷静に見定めて、正面に構える。
「帰依の御霊、倦む惰性を絶て」
攻撃を軽減する守護神霊に姿を変えつつも、霊符が信長本人に届いた事を確信して『貼り付ける』。
びりりと痺れる感覚。炭化した体の部位が、じわじわと灰と消えるような消失感を信長に植え付ける呪詛の札。猟兵が使えば幻覚ではなく、齎されるのは現実というところが、『呪』の恐ろしいところだ。
「それは、決して剥がれない符。呪詛がびっしり書いてあるんだよね……」
「ひぇえそれは怖いですね!でも、攻撃の切れ目……作って、しまいましたね?」
メテオラと零奈は急激に接近を試みる。
大帝の花びら剣を操られない限り、今の信長に脅威の欠片は毛ほどにも無かった。
「ではでは私もすこーし本気を出しましょう!出し惜しみは無しです!」
精一杯の範囲を選び、戦神の火を手にするメテオラは虚空を切り裂く虎と化す。
「誰がなんと言おうと、ここからは!私の独壇場ですからね!!」
魔法剣の斬撃を崩れかけた信長の足に射つ。
……が削ぎ落とすには至らず、信長を中心に、虚無領域は形成される。確かに足は切り裂かれた。切り裂かれた部位を起点に……空間の裂け目が現れて、異空間との領域が繋がる。煌めく色は、流星よりも綺羅びやかで、静かなものばかりだった。
エンパイアの空に視える色ではない。
「儂も知らぬ光景。……ほう、ほぉう」
感慨深げに目を奪われる信長。
負傷部位に思う事は一切ないらしく、落ちようが血を吹こうが叫ばない。
「呆けてるとこゴメン。でも……」
初めてのものを見て動きを止めた信長の顔面に容赦なく、瓦礫をパイ投げの要領で直接ぶつけて。零奈は破魔の力を込めた無銘刀で体を薙ぐ。
守護神としての依代が扱う日本刀。
それが、破魔の力を集めての一撃を、そして口撃を放つのだ。
「願い星は、落ちるんだ。願ったところで、キミの願いはどこにも届かないよ」
禍言を零しながら、腹部を両断する。
『魔』王である以上、彼は邪悪であるがゆえに。神秘の力を防ぎ抜くだけの力を持たなかった。巡る力が断ち切られ膝が勝手に折れて、上と下が別れて床を舐める。もう、直立する術もない。
「星の、色は……何色か。弥助、お前には何色と、視える…………?」
メテオラの虚無領域の色を尋ねる信長の問に、弥助は決して答えなかった。
それは、表現し難い色であり、言葉で表せない色である、という答えでも在る。
信長はそれを理解し、弥助は伝わっていると確信している、信頼はどこまでも途絶えない。
「もうおしまいですか?隙だらけさんですねぇ……」
バラバラとなった織田・信長に飛び掛かるようにして、メテオラは全力で切り裂く。
光の軌道を描いて、上と下がばらばらになっただけじゃ飽き足らず、思考する頭諸共、砕き斬る。背中に共に在った忠義の魂ごと、ばっさりと。
「よい働きであったぞ、弥助……。そして、見事だ、猟兵達。今の者共に興味は、まっこと尽きぬものだ…………」
満身創痍の織田信長は、ようやく執念と夢見る理想を手放して。
安土城の崩壊を待たずして、――躯の海に沈み込むように消え去った。
「まさしく、『夢幻の如くなり』……」
確かに彼は、笑っていた。
邪悪に満ちた嗤いでは全くなく。
確かに負かされたと強者を、弥助と共に、――認めて。
大成功
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