エンパイアウォー㉛~おふねをうかべてー
●水底で眠るもの
それは海の底で静かに眠っていた。
激しい戦いだった。
義がどちらにあったかなどはどうでもいい。
戦うために生み出され、戦いの中で沈んだ。それだけで満足だった。
しかし、もし、次の機会があれば。
静かな海で余生を過ごすのか、また戦いの海へと繰り出すのか。
夢を見ながらそれは眠る。
来るかどうかもわからない、その時まで。
●力のかぎり引きあげろ
「鉄甲船は穴が開いたら、沈む」
真剣な顔のウルフシャだが、言っていることはものすごく当たり前のことであった。
「いやなに、綺麗に底に穴が開いて、割といい形のまま海に沈んどる鉄甲船があるみたいでな、引っ張り上げるんを手伝おうと思うのじゃ」
敵に使われて苦戦したものも、仲間になれば心強い。
「仲間になった途端にHPが十分の一になるなどと言うこともないしの」
何かよくわからないことを遠い目でつぶやきくウルフシャだが、おそらくあまり意味はない。
「内容は至極単純、沈んでいる船を思いっきり引っ張り上げればよい」
どうやら比較的引き上げやすそうな位置にその船はあるらしい。
「無論他の場所に散らばった素材などもあるし、多少工夫をすればより引き上げやすくもなるじゃろう。じゃが一番不足しておるのは引き上げる純粋なパワーじゃな」
船体に縄をかけて引っ張り上げる、海に潜ってリフトアップする、船体に何かを取り付け、そのまま海中を移動させて浅瀬まで持っていくなど、とにかく水面まで持っていければなんでも大丈夫だのようだ。
「せっかく綺麗な形で沈んでおるようじゃから、解体して運び出すのはオススメできんがな。ということで、みんなで眠っておるお船を起こしに行こうではないか」
腕を捲って自らも引き上げに行く勢いのウルフシャが、自分自身が参加できないことに気がつくのはしばらく後のことである。
しべりあ
鉄甲船いいですよね。
某野望のゲームでは持たせるだけで遠距離で複数攻撃ができたものもあって、戦力差をどうにかするときによく頼っていました。
どうも、しょしんしゃのしべりあです。
いい感じに沈んでいる船を持って帰る、それだけですね。持って帰れるなら手段は問いません、独創的なリフトアップ方法をお待ちしてます。
え、前の人がすでに一人でもちあげちゃってたらどうするのかって?
ほら、沈んでいるのが一隻とは言っておりませんので……。
殺伐とした戦国の、息抜き的な何かとしてご参加いただければ幸いです。
第1章 冒険
『巨大鉄甲船引き上げ作戦』
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POW : 重量のある船体部分などを中心に、力任せで引き上げる
SPD : 海底を探索し、飛び散った価値のある破片などを探し出して引き上げる
WIZ : 海底の状況や海流なども計算し、最適な引き上げ計画を立てて実行する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリス・フォーサイス
鉄甲船?鉄板をはった船か。
じゃあ、アナロジーメタモルフォーゼで鉄板を浮き輪に変えたら、浮かないかな。
どのくらいの大きさの浮き輪が必要なのかな。鉄板を除いた質量を出して、必要な浮力を計算して、算出しよう。
ユーベルコードの影響範囲を考えると、潜らないとだめだな。
充分、潜水の準備をして行くよ。
うわぁ、これが鉄甲船か。すごい迫力だね。
それじゃ、いくよ。
●鬼に金棒、船に浮き輪
「鉄甲船……鉄板を張った船か。すごい迫力だね」
潜水装備に身を包んだアリス・フォーサイス(f01022)は海の底で静かに眠る巨大な船と対峙していた。
鉄甲船とは現代の船のようにすべて金属で作られているわけではない。
木造の船の周囲に鉄板を張ることで強化された船。
だが当時としてはまさに最強を誇る兵器であり、だからこそアリスの介入がしやすい物体でもあった。
「各部の損傷具合……これなら耐えれそうだね。必要浮力は……よし」
アリスは無機物を作り替えることが可能だ。
すべてが鉄の船ならば元に戻すのが困難だったかもしれないが、この船に関しては基礎となる木造部分がある。
変換したとしても元に戻すのも問題なさそうだった。
アリスはこともなげに鉄を全く別の物質へと変換させていく。
無機物であれば、本来なら超新星爆発でも起こさない限り生成不可能と言われる金であろうと、アリスならば変化させることが可能だった。
奇跡としか言いようがない現象が海底で巻き起こり、船を覆う鉄は、船を浮かべる浮き輪となった。
鉄を変化させることで総重量は減少し、ゆっくりと海面へと浮き上がっていく。
「よし、大丈夫そうだね、それじゃ、次に行こうか」
沈んでいる船はまだまだある。
怨霊によって作られたからと行って物に罪はない。
少しでも多くの船を回収するため、アリスは一隻また一隻と船を浮かばせていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
海底、ですかぁ。
問題は、体型的に浮き易いことですねぇ(遠い目)。
一先ず『さらし』を巻いて潜れる様にしつつ、『ゼリー飲料』『甘味セット』等を可能な限りいただいて【指定UC】を使用、上空から『船影』を探し、発見したら一気に潜りますぅ。
海底まで到着しましたら、『FSS』を展開して『船の四隅』を支えて少し持上げて下に入り、[怪力]と【指定UC】の力を使って一気に持ち上げますねぇ。
『水の抵抗』を減らす為にも、浅瀬に向けて斜めに運びましょう。
且つ可能であれば『【豊饒現界】の[怪力]強化』『【夢鏡】の身体能力強化』等も併用致しますねぇ。
運び終えるまで、『さらし』がもつと良いのですが。
●途中で人目のつかないところまで飛んでいってことなきをえました
「海底、ですかぁ」
海底に何か嫌な思い出があるわけではない。しかし、夢ヶ枝・るこる(f10980)は遠くを見つめ悩んでいた。
浮くのだ。
るこるの誇るあらゆる人々の目線を引いてしまう『わがままボディ』は物凄く浮くのである。
対策としては密度を上昇させるしかない。
普段はつけることのない『さらし』にてその絶大な浮力を誇る胸部を圧迫して潜水能力をなんとか確保し、持ちうる超高カロリー食材をその身に詰め込んだるこるは乳白色のオーラを纏い、高速で空を行く。
比較的浅いところに沈んでいるという情報は確かだったようで、会場からも鉄甲船の船影を確認することは容易であった。
オーラをまとったまま高速で水底の船の元へと潜り、即座に浮遊盾を展開する。
水中ということもあり、時間をかけてもいられない、数多の祝福をその身に纏い一気に力を込め、持ち上げる。
水の抵抗を極力減らすように考え、浅瀬へ向けて斜めに運んでいくるこる。
——ぶちっ
祝福の力もありかなりのパワーとスピードで浮上している。
——ぶちぶちっ
このままなら、いける。なんだかものすごく調子がいい。
圧迫感が薄れ、今までにないような開放感が溢れている感じもしてくる。
——……開放感……?
るこるは息苦しさがなくなったことに違和感を受けて胸元へと視線を移す。
水圧に耐えられなかったのか、それとも水中に飛び込んだ時に傷ついたのか。
そこには『さらし』から解放されつつある自らの、胸部が。
「このままじゃ浮上できません〜!?」
るこるの叫びは海に溶けていった。
成功
🔵🔵🔴
ミモザ・クルセイル
●他猟兵との協力歓迎
鉄甲船も大切な資源、ですね
なんとか引き上げて…
うっパワーが足りません
ここは
【SPD】>【POW】重視で
鉄甲船が沈んでいる辺りまで「空中浮遊」で移動、仲間の引き上げ作業を手伝います
良い感じの地点でユーベルコード「鮫騒動」を使用
召喚した鮫に海中へ潜らせて
使えそうな破片等を持って来てくれるように頼みます
余力が有る様なら鮫の何匹かに船(サルベージ出来そうな中から比較的小さめorあまり壊れていない物)を海中から押し上げる作業を手伝ってもらい、「ロープワーク」で船と鮫を縛ってから港まで鮫達と輸送を試みます
流石に力仕事は一人では難しいので、力自慢の猟兵さんと協力できたら良いのですが…
●戦国鮫騒動
戦国から江戸にかけて、鉄甲船というのは強力な兵器であるとともに重要な資源であった。
それは摩訶不思議な進化や力の残るサムライエンパイアでも変わることはない。
ミモザ・クルセイル(f00333)はひとまず正面から鉄甲船に戦い(サルベージ)を挑むも一人ではパワーが足りないことを思い知ることとなっていた。
「力自慢の猟兵さんと協力できたら良かったのですが……」
思いのほか正面から『力こそがパワー』といった猟兵が見当たらない。
先程1名ほどいた気はした。
結構いいところまで行っていたはずなのだが、何か不幸なトラブルに見舞われて完全に浮上させきれていない状態である。
だが、ここまで浮き上がってくればまだやりようがあった。
他の猟兵の活躍により、比較的浅く、船体の負傷も軽い船や海面で浮かんでいる浮き輪のついた鉄甲船などがある。
侍たちはあとは自力でなんとかしようとしていたが、それでは時間がかかりすぎるだろう。
ならば、少しの混乱はあるかもしれないが、取れる手はある。
「……なんだ、なんか海に」
「……せびれのようなものが……?」
「……さ、ささささささ」
「「「さめだああああああああ!?」」」
そう、それは鮫。ミモザが呼び出した鮫の皆さんである。
サメから逃げようと侍たちは全力で漕ぎ出す。
サメはロープを口にくわえて船の牽引を補助しているのだが、侍からしてみればロープを食いちぎろうとしているように誤解してしまっていた。
「そ、そういうつもりではなかったのですが……」
困惑するミモザではあったが、結果としては、40頭を超える巨大なサメの大群と、それを見て必死に逃げようとしながらも鉄甲船を回収すると言う職務を放棄しきれなかった真面目な侍たちの火事場のバカ力により、はるかに高速で仕事が進んでいったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る
水中作業想定し水着着用
沈めたままでは勿体無いですからね
回収頑張りましょう
物が物です、お侍さんにも協力要請できるのでしょうか
《機能強化》水中潜り探査
[属性攻撃:水・風]水操り水中行動補助と酸素確保
[マキナ]海上に残しリンク、<知識>情報基に地図作成出力
船の詳細状況確認、仲間との情報共有図る
▼引き上げ
船体全体を<念動:オーラ>で包みつつ、
<属性攻撃:地>船にかかる地面に引かれる力(重力)に干渉
全体の重さを軽減、作業時の負担を減らす他縄かけ等海中作業。
引き上げ後余裕があれば破邪<破魔の呪>で浄化。
元使用者が怨霊ですからね、少しは安心材料になれば幸いです
秋山・軍犬
では、自分が引き上げた船は
幕府に方に商船として推して頂けると
これで海運が発展すればエンパイアの飯の質が
更に上がりますなあ♪
役人1「軍犬屋、お主も悪よのぉ」
役人2「現実逃避はその辺にして、アレどうにかして」
きの子「きのこ、おおうなばらにしんしゅつなのです!」
数々の戦いを経て、品種改良された水陸両用キノコ兵×44
で、これまた品種改良で作成した、強力な浮力を
持つ浮き茸(フロートマッシュルーム)を鉄甲船に沢山生やして
浮かせるのです!
鉄甲船サルベージの名目が使えるうちに海にどんどん
茸を生やしていくのです!
ちなみに、浮き茸は新鮮な物なら刺身でも美味しく
頂けるので問題ないのです!
役人2「問題大ありなのです」
●深海船団と不思議の国
「沈めたままでは勿体無いですからね」
海底の鉄甲船の前に麗しい水着姿の少女、月宮・ユイ(f02933)はいた。
海に水着の少女がいるというのはなんらおかしいことはない。
だが、そこはかなりの、深海といっても過言ではない深い位置である。
本来ならば名状しがたきものに連れ去られでもしない限り水着の女性が来られるような場所ではなかったが、その体の機能を水中活動、それも潜水探査に特化した状態へと変えたユイはその限りではなかった。
そんな深海へとたどり着いた成果は目の前にあった。空からでは確認が困難な、より深くに沈んでいた船団を発見したのだ。
会場の上に残してきた端末を通じて結構な数の鉄甲船の位置情報を仲間へと共有しつつ、自らも船へのアプローチを開始する。
「さて、それでは回収頑張りましょう」
船を自らの力で包み込み、かかっている重力に一時的に干渉していく。
海水による浮力もあり、巨大な船体ではあったが、思いのほか楽に浮き上がっていた。
そうしてしまえば、あとは仲間が縄をかける手はずになって……なって……。
「……ここ、アリスラビリンスだったかしら……?」
ロープを持って潜水する愉快な仲間たち……きのこの小隊が、そこにいた。
●海上キノコ会場
「では、自分が引き上げた船は幕府方に商船として推して頂けると……」
「全てというわけにはいきませんがいくつかはそのように……」
「これで海運が発展すればこの国の飯の質が更に上がりますなあ♪」
「軍犬屋、お主も悪よのぉ」
秋山・軍犬(f06631)は役人の一人と悪巧み……というわけではないが、完全に己が利益を得るための根回しを着実に進めていた。
はずなのだが、その瞳は青く広がる青空を、そのさらに向こうの遥か遠くを見ていた。
とてもとても遠く、虚空を見つめるとはまさにこのことか。
「現実逃避はその辺にして、アレどうにかして」
しかし真面目なもう一人の役人は彼らを現実へと引き戻す。
「きのこ、おおうなばらにしんしゅつなのです!」
異世界からやってきた一人の愉快な仲間が、そこにいた。
彼女の名前は『きの子』。
気がついた時には軍犬のユーベルコードへと潜り込み、異世界へと侵略を開始した侵略渡来人もびっくりな侵略菌糸類である。
きの子は様々な戦いを経て進化(品種改良)を繰り返し、数多の配下を着実に増やしていた。
今潜水している44の水陸両用キノコ兵もその成果の一つである。
「そちらのしょうたいは、なかまのもちあげたふねにろーぷをかけるのです。あとは、こうきどうがただいきのこでけんいんするのです」
水中で活動しているユイをはじめとした猟兵たちと連携を取り、空に浮かぶ巨大なキノコの上に『きの子』はいた。
「ふふふ……きのこのすばらしさをよにしらしめるためにはこれぐらいのぱふぉーまんすはひつようなのです」
そして、さらには他の鉄甲船へも手をつけていく。
「のこりのしょうたいは、れいのぶつをおみまいするのです」
れいのぶつ、と呼ばれた代物。
それは『浮き茸(フロートマッシュルーム)』と呼ばれる海面に浮かぶ恐ろしい茸の胞子である。
海中であろうと育成が可能で、ある程度大きくなってくると絶大な浮力をもって海面を侵略してくるのだ。苗床となっているものへの吸着力も恐ろしく強いため、今回の引き上げ作業にはこうかできであろう。無論育成にはある程度の時間はかかる。しかし、一度蔓延してしまえば後は全世界へと侵略を開始するのも秒読み段階であった。
「すでにきのこりょくをしゅうちゅうさせて、ふじょうできることもかくにんずみなのです。それにしんせんなままならさしみにしても、おいしくいただけるのです。だから、なんのもんだいもないのです!」
「問題しかないのです!」
真面目な役人が叫び、軍犬は現実から、きのこから目をそらし続けていた。
「うまいなら……食べないといけないっすね」
「……何か嫌な予感というか気配が……、食べない方がいい気がしますぞ……?」
●邪悪なきのこにご用心
「ああああああ、きのこが、きのこがじょうかされてしまったのですうううう!?」
「怨霊を浄化しようとしたのだけれど、きのこも全部消えてしまったようね。……怨霊が混ざっていたのかしら」
こうして、ある一人の英雄のお陰で、人知れず、世界が『きのこエンパイア』へと変貌を遂げる危機は防がれたのである。
……きのこが沈んだ船から溢れ出そうとした怨霊をその身に封じ込め、まるごと浄化をすることができたという点では、きのこも世界を救った英雄ではあったのかもしれない。
「おぶりびおん、ゆるすまじなのです!」
大成功
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大神・零児
近海を漁場にしている漁師に今日の海の状態(海流など)を聞き込み
ホワイトランス(よく調教されたイカ妖獣)にはライト付き水中カメラを持たせ海底の状況と沈没船の場所を調べてさせ撮影させる
情報収集の結果を集積し場所に当たりをつけ
激しい海流を避けて通る引き上げ経路を算出
あらかじめ潜るための周辺機器を用意し最適に調整
自分も海底作業用のダイバースーツに着替えホワイトランスと共に沈没船まで潜る
辿り着いたら船に腕8本を絡ませての保持を指示
海面までの浮上が無理であれば途中まで浮かせ長い触腕2本を使い這う様に進ませる
自分は進行方向を指示し逸れない様に船か胴体にしがみ付く
追跡
動物と話す
水泳
怪力
コミュ力
学習力
失せ物探し
●総天然色、深海の大決戦
船が浮き輪で浮かび、さらしの残骸が漂い、鮫が泳いでキノコが漂う……。
そんな混沌とした海の側に大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)の姿はあった。
漁師たちから海の様子を伺いながらも、彼の鋭い視線は一箇所を見つめている。
その先に見える、一つの影。
しなやかな体、滑らかな肌、時折見える腹黒さもまた人々を惑わせる、悪魔。
そう、イカである。
ホワイトランスと呼ばれるイカ妖獣——名前的に元はヤリイカだろうか——はその腕にライト付きの水中カメラを携えて海底の様子を捉えていた。
仲間の活躍もありほぼほぼ引き上げは終わっている。
しかしそんな中に、まだ手の付いてない大物が不自然に一つ残っていたのである。
零児は疑問に思いながらもそれまでの海底での情報を分析した上で、水中装備を整え、ホワイトランスを伴い水底へ繰り出した。
近づくとひしひしと感じるほどに、あきらかに目立つ存在、なのになぜ今まで放置されていたのか?
ゆっくりと近寄ると、船に動く何かの気配。
そう、イカである。(2回目)
かなりの巨体であった。
どうやらこの船が沈んで早々に寝ぐらに定めたのだろう。オブリビオンだけが怪物ではなかった。
他の猟兵が後回しにしていたのもこのイカがいたからかもしれない。
ホワイトランスは零児をじっと見つめる。
やらせて欲しいと、如実に語るその瞳に、零児は静かに頷く。
——そこから巻き起こったのは今戦争最大の大スペクタクル。
現地イカVS異界イカ。
魂の奥底でホワイトランスの心が体が滾るのだ。
難破船は俺の領域だと。特に後方甲板は渡せないと。
絡み合う腕と腕まさに海獣大決戦。
葛飾北斎も思わず大興奮な触手祭りの始まりであった。
●戦いの果てにあるものは
ゆっくりと海原に沈没船が浮き上がる。
先導する零児とそれを追う船。いや、よく見れば支えるのは二匹のイカである。
激しい戦いの末イカしたライバルとして互いに認め合うことになった彼らは何故か零児にも協力的となり、こうして手伝いまでしてくれることとなったのだ。
「……そんなこともある、のか?」
気にしてはいけないとは思いながらも、どうしてこうなったのかと考えずにはいられない零児であった。
●船の見る夢
様々な問題を抱えながらも、予想以上に多くの鉄甲船が引き上げられたのは間違いなく猟兵たちの活躍の賜物であった。
この鉄甲船は戦の後、様々な形で幕府の今後に貢献することになるだろう。
今はただ、真に目覚める修理の終わりを待ち続ける……。
大成功
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