エンパイアウォー㉗~ユーベルコードを耐え抜け、徳川軍!
「ファランクス部隊撃破、お疲れ様っ! みんな頑張ったねっ!」
グリモア猟兵の蛇塚・レモン(黄金に輝く白き蛇神オロチヒメの愛娘・f05152)は、猟兵たちの活躍に諸手を挙げて喜んだ。この短期間でファランクス部隊を退けたことで、徳川軍5万人への損害の未来は回避されたのだ。
だが、レモンは苦笑いを浮かべていた。
「突破できたはいいんだけどね? 現地の徳川軍のお侍さんたちがイキっちゃって、このままだと敵陣へ突っ込んで返り討ちになりかねないんだよ……」
猟兵との合同戦線とはいえ、強大なオブリビオンたちを関ヶ原から撃滅出来たことは、徳川軍の武士たち――特に戦の経験が今まで皆無だった若い世代に大きく弾みをつけた。ただ、弾みが付きすぎて暴走寸前なのだという。
「若武者たちがね、猟兵がいなくても楽勝だったでござる~とか、この調子だと信長も大した事なさそうだとか、なんだか慢心しててね? そこで! 急遽、猟兵のみんなで徳川軍の特訓を監督することになったよっ! 特訓する面子は元服したての若武者たちだよっ! ちなみに特訓内容はあたいが決めてみたっ! その内容は! 名付けて! 『猟兵のユーベルコードをひたすら耐え抜く特訓』だよ!」
お前は何を言ってるんだ??
猟兵たちは目が点になった。
「つまり、あたいが言いたいのは……」
1つ、慢心してる若武者に組み手と称して、ユーベルコードで打ち負かす!
2つ、改心した若武者に鍛錬を積ませる!(メニュー内容は各猟兵に委任)
この2点に尽きるのだと言う。
「実際にユーベルコードを体験してもらえば、その脅威に考えが改まるだろうし、身体を鍛えなきゃって必死になるはずなんだよっ! 鍛え方はみんなに任せるから、しっかり叩き直してほしいなっ!」
体力・脚力・知力、どれを鍛えようが猟兵たちの好みでいいらしい。ただし、組手でユーベルコードをぶっ放す際は、寸止めや手加減しないと徳川軍に死傷者が出かねない。敢えて非殺傷のユーベルコードで若武者たちを翻弄してみるのも手だろう。
「という事で! みんな、よろしくねっ! あ、これ、あたいの農園で穫れたトウモロコシ! 焼いて食べると美味しいよっ! 特訓の合間に食べてねっ!」
大量のトウモロコシの差し入れに猟兵たちは困惑しつつ、グリモアに導かれていった。
七転 十五起
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
七転十五起、なぎてんはねおきです。
天狗になってイキってる若武者たちの鼻をへし折ってから鍛え上げましょう。
若武者たちは「ユーベルコード? ははっ! 我らには効かぬわ!」と慢心あり。
大怪我させないように注意しながら、性根を叩き直して下さい。
その後は、各猟兵の考えた鍛錬方法で若武者たちと特訓です。
ユーベルコードに対処できる体力・脚力・知力を養ってあげましょう。
ご自身のユーベルコードの対処法を思い浮かべると、プレイングが捗るかも?
幕府軍の訓練を行う事で、幕府軍の被害を減少させる事が出来ます。
幕府軍に被害が出た時に、このシナリオフレームの成功判定の出ていたシナリオ%だけ被害が減少し、幕府軍が生き延びる事が出来るでしょう。
それでは、皆様、プレイングをお待ちしております!
第1章 冒険
『幕府軍の大特訓』
|
POW : 腕立てや腹筋、走り込みなど、基礎体力を向上させる訓練を施します
SPD : 危険を察知する技術や、強敵からの逃走方法などを伝授します
WIZ : 戦場の状況を把握して、自分がやるべきことを見失わない知力を養います
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
マヤ・ウェストウッド
「血気盛んだねぇ。昔のアタシを見ているようだよ。後先考えないところがまるでソックリ……」
・かつて故郷を焼き払われたマヤは、祖国を守ろうと奮起する向こう見ずな若者たちに過去の自分の面影を見出し、なんとかしてあげたいと思っている
・繰り出すユーベルコードは……『なにもしない』。なにもしないを、する。反撃も回避も、防御も敢えてしない。しかし過剰な義侠心とエゴイズムが両脚を支える
・マヤは自ら剣技を受けることで若武者き生命の埒外の存在が如何に強靭であるかを、故郷と自分の命を護る為に団結する大切さを文字通り身体で教えんとする
・このふるまいによって痛覚は鈍化されないので正直結構痛い
「まだやるかい……?」
猟兵たちが幕府の陣屋に到着した。
すべての脅威の予知が阻止されたことを受けてか、この陣屋の中の雰囲気は活気に満ち溢れていた。
「このまま九州、そして島原だ! 我らに怖いものなし!」
「そのとおりでござる!」
「織田信長、何するものぞ!」
……活気に満ち溢れていたが、同時に慢心も生まれていた。
特にまだ幼さが残る元服したての若武者たちは、関ヶ原以前の戦乱の時代を知らず、今回のエンパイアウォーが初陣というものも少なくない。
だからこそ、この勝利に酔いしれ、気持ちが大きくなってしまっていた。
「血気盛んだねぇ。昔のアタシを見ているようだよ。後先考えないところがまるでソックリ……」
その様子を見て、独りごちるのはマヤ・ウェストウッド(ザ・ベネヴォレント・f03710)だ。
かつて、宇宙世界での帝国軍と解放軍との戦いの中、故郷を焼き払われたマヤは、祖国を守ろうと奮起する向こう見ずな若者たちに過去の自分の面影を見出し、なんとかしてあげたいと思っているのだ。
「……邪魔するよ。特訓の話は聞いているかい? アンタたちの面倒を見ることになった猟兵のひとり、マヤ・ウェストウッドだ。よろしく」
「「はい! お願いします、マヤ師範!」」
若武者たちの挨拶に、マヤは口元を綻ばせながらも首を横に振った。
「よしてくれ、アタシは師範なんてガラじゃないさ。……さて、早速、始めようか? 付いてきな」
介添人の案内で、陣屋内の修練場へマヤと若武者たちは向かってゆく。
「さぁ、何処からでも良いから打ち込んできなよ。アタシは……『何もしない』からさ」
修練場で仁王立ちのまま、言葉通り徒手空拳のまま何も構えずに、マヤは若武者たちに木刀で打ち込むように催促する。
「反撃も回避も、防御も敢えてしない。アンタたちは好きなだけアタシに、その剣技を叩き込んでくれて構わないよ。それでアタシが倒れたら合格だ」
これに若武者たちは困惑する。そのうちの1人がマヤに尋ねた。
「ユーベルコードを、使わないのでございますか?」
「いいや、もう発動しているよ。『何もしない』のが、アタシのユーベルコードさ」
マヤのユーベルコード『防弱武人のふるまい(ヴァンガード・スタンス)』はマヤのラディカルなエゴイズムと義侠心のために敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する効果を持つ。
その証拠に、今のマヤの両足を支えているのは、陽炎めいて景色が揺らぐように錯覚するほど、溢れ出る過剰な義侠心とエゴイズムだ。
「別に、アンタの為なんかじゃないよ。アンタがこの特訓で得られるものはきっと大きい。それを思うと、アタシの気分がいいからそうするのさ!」
身体の耐久力が大幅に向上し、鋼のような肉体となって若武者たちの前にマヤは立ちはだかる。
その異様な覇気に気圧されながらも、若武者たちは意を決する。
「よく判りませぬが、我らの剣技を御所望ならば披露するのが礼節でござる!」
「マヤ師範! お覚悟!!」
「イヤーッ!!」
若武者たちは、我先にとこぞって飛び出すと、マヤの身体に木刀を何度も奮って打ち据えてみせた。
鈍い打撲音が数発響くが、マヤの表情は至って涼しい。
「……もう終わりかい? あまりに当たりが弱いから、全身マッサージか何かかと思っちまったねぇ?」
若武者たちは愕然とする。
「効いてない!?」
「馬鹿な、奥義を叩き込んだのですぞ!?」
「なんて硬い身体なんだ……」
彼らの手に伝わったとんでもない硬度と衝撃は、今までの鍛錬では味わったことのない体験だった。
「オブリビオンには、攻撃を無効化するやつだっているのさ。アタシ程度で音を上げてちゃ……大したことないんじゃないかねぇ?」
「……っ!? 我らを愚弄するおつもりか!?」
「猟兵とはいえ、口が過ぎますぞ!」
「ならば今度こそ、全力を持ってお相手仕る!」
若武者たちはしっちゃかめっちゃかにマヤを殴りつけ始めた。
しかし、一向にマヤは倒れず、むしろ殴れば殴るほど若武者たちの木刀を握る手が疲弊していった。
「……まだやるかい?」
マヤは打撲痕ひとつなく、超然と立ち尽くしていた。
「はぁ……はぁ……、もう、斬り掛かれませぬ……」
「お見事でございます……。これが攻撃を無効化するユーベルコード……」
「我らの剣技……まったく、歯が立ちませぬな……」
へばる若武者たちに、マヤはようやく口を開いた。
「……正確に言えば、アタシのユーベルコードは身体能力の強化であって、攻撃を無効化するわけじゃない。アンタたちの放った剣技で受けた痛みは、しっかり伝わってるさ。正直、結構痛かったよ」
若武者たちの顔色がサッ……と青くなった。
マヤはここで初めて笑顔を見せる。
「心配しなくてもいい。アタシら猟兵……つまり生命の埒外の存在が如何に強靭であるか、判っただろう?」
若武者たちは戸惑いながらも頷いた。
マヤは言葉を継いだ。
「故郷と自分の命を護る為に、団結する大切さを文字通り身体で教えたかったのさ。さっきだってそうだ。てんでばらばらに攻撃を仕掛けちゃ意味がない。普段から互いの連携を取り合って、ここぞという時に力を合わせるんだ。いいね?」
「「はいっ!!」」
マヤの言葉を受け、目が醒めたのだろう、顔付きが急に引き締まった若武者たち。
若武者たちは互いの技で自主的に連携の訓練に取り組み始めた。
「さて、他の奴らは順調かねぇ?」
その光景を監督しつつ、マヤは他の猟兵の鍛錬の様子を気にしていた。
成功
🔵🔵🔴
ルード・シリウス
ク…ククク、ハハハハッ、面白い事言うな。猟兵が居なくとも勝てるか。
そうか…。なら、その実力…存分に見せて貰おうか
◆行動
若武者達相手に組手
暴食剣・呪詛剣を傍に突き立て、若武者達に好きなだけ攻撃して構わないと挑発。攻撃を敢えて打ち込ませる。攻撃に対しては致命傷になりえるもの以外は回避せず敢えて受ける
ひとしきり若武者達が攻撃を終えたら、突き立てていた二刀を引き抜いて【鮮血暴食の魔剣】発動。若武者達を一撃で叩き伏せていく。無論、命を取らない様に加減しつつ受けた傷を癒す分の攻撃は入れる
力量差を見せつけた後は鍛錬
内容は攻撃・防御時における動きの無駄を指摘改善していく。それだけでも体力の消耗は抑えられる筈だ
陣屋の一角で、唐突に青年の高笑いが響き渡った。
「ク……ククク、ハハハハッ、面白い事言うな。猟兵が居なくとも勝てるか」
ダンピールの青年、ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)が、目の前の若武者たちを笑い飛ばした。
若武者たちは特訓の監督にやってきたルードを突っぱねたのだ。
『我らに猟兵の手助けは不要! 今の我らの実力ならばオブリビオンなど一太刀で斬り伏せてご覧にれましょうぞ!』
そんな大層なことを自信満々に口にしたのだから、ルードは思わず声を上げて笑ってしまった。
「そうか……。なら、その実力…存分に見せて貰おうか。表に出ろ。組み手の相手をしてやろう。お前たちは猟兵の俺より強いんだよな? 遠慮することはないぞ?」
若武者たちを挑発しながら、ルードは暴食剣「神喰」と呪詛剣「無愧」を乱暴に外の地面に放り投げ、その切っ先を突き刺した。
その傍らにルードは腕を組んで棒立ち、若武者たちの攻撃を誘う。
「ほら、どうした? 怖気付いたか?」
「……我らを愚弄するとは、怪我を覚悟していただくほかござらぬぞ!」
若武者の一団の年長者(リーダー格)が立ちあがると、他の若武者たちも木刀を握って立ち上がった。
それをみたルードは心底つまらなそうに、彼らの獲物を指差した。
「何故、木刀なんだ? 真剣で斬りかかってこい。そのほうが面白いからな」
「……っ!?」
絶句する若武者たち。
目の前の猟兵の異様な闘争心に威圧されながらも、彼らは腰に差していた真剣を抜き払った。
「どうなっても知りませんぞ……!?」
「どうもならないと思うがな? さぁ、こい……!」
ルードの挑発に、若武者たちは遂に刃を向けて飛び出してきた!
「うおおおぉぉっ!」
まずは年長者の若武者が上段から刀を振り下ろす。大振りな剣筋は軌道がまっすぐで、ルードは半歩身体を横に逸らすだけで軽々と回避できてしまう。
続けて3人の若武者が立て続けに斬りかかってきた。先程と違って、突きや小手打ちのような小細工ばかりで致命傷を与える気がまるでない。やはり真剣を他人へ向けるのは気がひけるのだろう。
(やれやれだ。これは思っていた以上に評価ダウンだな)
敢えてルードは二の腕を相手の切っ先で斬らせると、滴り落ちる自身の血液を地面に突き刺さった2本の剣へ攻撃を回避する動作で振り撒き、付着させてゆく。
相変わらず大振りな一撃しかしてこない猪武者と、臆病に小技しか出さない腰巾着に、ルードはストレスが溜まる一方だ。
次第に2本の剣の刃がルードの血液で濡れたことを彼が確認すると、一気に形勢逆転。
「こいつを抜かせた以上、飢えが満たされるまで存分に喰わせて貰うぜ。ユーベルコード……鮮血暴君の魔剣(ダインスレイフ)!」
2本の魔剣の剣身がおびただしい量の血で濡れた大剣に変化させると、ルードは素早く地面から剣を抜いて交差するように振り抜いた。
すると、一撃で若武者たちは斬り伏せられ、後方へ吹き飛んでいった!
「安心しろ。腕の傷を癒やすために、お前たちの命に別条はない部分を斬らせてもらった」
「ひ、ひぃ!? 血が!? 斬られた……!? きゅう……」
年長者は血を見て気絶してしまった。
「情けないな。お前たちはこうなるなよ?」
白目を剥いて気絶している年長者を指差しながら、ルードは他の若武者たちを諭した。
彼らは唖然しながらも気絶している無様な姿を晒す年長者に軽蔑の目線を送った。
「よし、ここからは鍛錬だ。先程の動きを見て思ったが、お前たちには無駄な動きが多すぎる。ひとつひとつ指摘をしてゆくから、今日中に全て矯正してみせろ」
「「アッハイ」」
実力の彼岸を見せたルードの言葉は、若武者たちの耳へすんなりと入ってゆく。
先程の斜に構えて侮るような態度はなくなり、ルードの教えをものにしようと彼らは必死になっていた。
「……そうだ、なにも力を込めずとも刀の重さで振り下ろせば敵は斬れる。力みすぎるな、流れるように、無駄な力と動作は今から捨ててゆけ。それだけでも体力の消耗は抑えられる筈だ」
意外にも親切丁寧な指導を行うルード。
この指導は夕方まで続いたという。
成功
🔵🔵🔴
ペイル・ビビッド
(大袈裟に芝居ぶって)
やーやー幕府軍のみなさんっ!戦争お疲れさまでございます
(こら、子供だって見下すな!)
けれどもオブリビオンの使う技は
並の人間には対応が難しいもの
一つここであたしからも
試練を出してみましょうか
使用UCはスパッタリングスター
けがの防止として威力は弱くするけれど…
今からあたしが放つ光弾をどれだけ避けられるかなっ!?
一振りで【範囲攻撃】【二回攻撃】を使い
ありったけの弾数をたたき込む
ネズミを捕まえる猫だって
五感を働かせて動くんだって聞いてるよ
弾を避けつつ
あたしが筆を振り下ろした直後
次の攻撃へ構える時の隙を狙って来れるか…
さあ勝負!
リード・ユースレス
敢えて言います。僕は他の猟兵に比べればはるかに弱い。だからといって非力ではありませんよ。
まずは手合せといきましょう。相手の動きを見つつ、縄や枷で転かして拘束。仕上げに手近な岩でも潰して「アナタの頭でなくて良かったですね」と圧をかけましょう。【怪力・鎧砕き】
安心してください。僕はアナタがたを鍛えるために来ました。潰さないよう頑張りますので、アナタも潰されないよう頑張ってください。
それでは特訓です。鬼ごっこしましょう。僕が割と本気で追いますので、頑張って逃げてください。周りをちゃんと見て、焦らず迅速にいけば大丈夫です。
ああそれと、差し入れを頂いてますので、後で皆で食べましょう。
エメラ・アーヴェスピア
あら、随分と勇猛なのね
でも、猟兵やオブリビオンに対しては無謀と言わざるを得ないわ
まぁ、わかりやすく示してあげましょうか…
…と、いっても私のUCの大部分は、ぶつけてはいけない物なのよね…
まぁ、判り易く脅しになるものでいいでしょう
集団戦を挑んで『戦陣穿つは我が砲雷』
当たらないけれど程ほどに近い場所にそれなりに撃ち込みましょうか
まぁ爆風で吹き飛ぶ位はするでしょう…さ、さすがに死なないわよ、ね?
これを真面目に当ててたら…どうなるかはわかるわね?
教える内容は…情報収集の大切さと連携、そして実践かしら?
不殺装備の『出撃の時だ我が精兵達よ』なら、実践演習にもなると思うわ
※アドリブ・絡み歓迎
ところ変わって、この辺りの徳川軍陣屋で最大規模を誇る区画に集まった大勢の若武者たちを前に、3人の猟兵たちが監督役として現れた。
しかし、若武者たちは現れた猟兵たちの姿に困惑の声や落胆の声を上げていた。
「やーやー幕府軍のみなさんっ! 戦争お疲れさまでございますっ! あたしはドワーフっていう種族のペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)ですよ! 今年で10歳になりました! 今日はでっかーんとゴーカイに特訓しましょうー!」
歌舞伎役者の口上の如き、芝居がかった口調で元気よく桃髪のショートカットを揺らして、壇上の上で若武者たちに告げるペイル。
しかし、若武者たちは不安そうに顔をしかめた。
「10歳とは、猟兵は子供を戦に駆り出すのでござるか……?」
「我らよりも背丈も年齢も低いものが、武術の稽古を付けられるものか?」
湧き上がる不満の声に、ペイルは堪らず激怒した。
「こら、子供だって見下すな! 誰だ、今、背が小さいって言った奴!? 確かにドワーフは小柄な種族だけどバカにしないでよね!?」
「まぁまぁ、ペイルさん、クールダウンしましょう?」
1mにも満たないペイルよりかは目線が上のエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)が宥める。だが、エメラも通常の人間規格だと低身長の部類に入る。
エメラは壇上から若武者たちを見定めるように視線を隅々まで行き渡らせる。
「エメラ・アーヴェスピアよ。あなたたち、見た目で相手の実力を図るなんて、随分と勇猛で自分の腕に自身があるのね。でも、猟兵やオブリビオンに対しては無謀と言わざるを得ないわ」
「そうですよ。猟兵やオブリビオンの実力は、外見とは無関係です。敢えて言います。僕はここにいるペイルさんとエメラさんよりも、いえ、恐らくこの陣屋でみなさんの特訓の監督役を行っている他の猟兵に比べれば遥かに弱い」
そう断言するミレナリィドールのリード・ユースレス(案山子になれなかった人形・f16147)の姿はこの中で最も高く、最年長であった。
だが、彼の言葉通り、今回の特訓に携わる猟兵の中で一番経験が浅かった。
そして、リードの格好が非戦闘員っぽい感じを強調させていた。
「実力の低い僕が農夫の出で立ちだからって軽んじてはいけません。だからといって非力ではありませんよ」
それを静かに嘲笑う者、あからさまにやる気を無くす者など、集まった若武者たちは猟兵たちをナメてかかっていた。
だが、リードは声を荒げなどしなかった。
「でしたら、組み手で証明してみせましょう。そこのあなた、前へどうぞ」
リードが指名したのは巨漢の若武者。いかにも力持ちそうな体格は、リードと比べればその差は歴然である。
「ふははは! 某の腕力で組み伏せてくれましょうぞ!」
「御託は無用です。どうぞ、掛かってきてください」
リードが手招きをしてみせた。
若武者は自尊心を傷付けられ、顔を真っ赤にして身構える。
「多少の怪我は覚悟してくだされ! ぬおおぉぉっ!!」
野生の熊めいた突進でリードに組み付かんと腕を伸ばす若武者。
だが、リードはひらりと身をかわすと、若武者にガチャリガチャリと手枷、猿轡、拘束ロープを装着させて地面に転がしてしまう。
この間、僅か1秒!
傍観していた若武者たちは目を丸くして、目の前で起きた事に理解が追い付かないようで口をぽかんと開けていた。
巨漢の若武者に至っては、恐怖で芋虫のように地面をのたうち回っていた。
「ンンーッ!! ンーンーッ!?」
猿轡で言葉を発せない巨漢の若武者が涙を流しながら何かを訴えかけるが、リードは容赦なく彼の顔の真横へ愛用の大鉈と鉄鎖『Harvest』を突き立てた。
その重量とリードの怪力で、地面に小規模のクレーターが生じてしまう。
「アナタの頭でなくて良かったですね」
「ンアーッ!?」
巨漢の若武者はしめやかに失禁!
脳内感情処理の限界を遥かに超えた恐怖の渦に叩き落された巨漢の若武者は、敢えなく白目を剥いて意識をシャットダウンさせてしまった。
リードは『Harvest』を引き抜くと、もう一度、若武者たちに向き直った。
「安心してください。僕はアナタがたを鍛えるために来ました。僕はアナタたち潰さないよう頑張りますので、アナタたちも僕に潰されないよう頑張ってください」
ざわ……っと若武者たちの身の毛がよだつ。
それって、リードの手元が狂ったら殺される事を意味する。
「まぁ、そう堅くならずに。では、わかりやすく示してあげましょうか……」
エメラはユーベルコードを発動させようとしたが、自身の脳内で待ったをかけた。
(……と、いっても私のUCの大部分は、生身の人間相手にぶつけてはいけない物なのよね……)
エメラのユーベルコードは魔導蒸気兵器。その効果は対人ではなく対軍への運用が好ましい。
(まぁ、分かりやすい物を見せてあげましょうか)
エメラの傍らに浮遊型魔導蒸気グレネード砲が出現する。
「これが私のユーベルコードのひとつの『戦陣穿つは我が砲雷(テレインディストラクション)』よ。強力な榴弾でオブリビオンを地形ごと吹き飛ばす事ができるわ」
浮き上がる大砲を珍しげにしげしげと眺める若武者たち。
そこへリードが提案を投げかけた。
「これからみなさんには鬼ごっこをしてもらいます。僕らは本気で追いかけますので、みなさんも本気で頑張って逃げてください。周りをちゃんと見て、焦らず迅速にいけば大丈夫です。隙を見て猟兵側へ反撃を仕掛けてみてもいいですよ。反撃できた人は、グリモア猟兵から差し入れとして大量のトウモロコシを預かっていますので、先に特訓を切り上げて焼いて食べていいですよ」
陣屋の片隅に山積みにされたトウモロコシを指差しながらリードが言えば、若武者たちは全員参加の意思を表した。
「オブリビオンの使う技は並の人間には対応が難しいもの。ひとつここで、あたしからも試練を出してみましょうか」
ペイルはペイルが父親から譲り受けた、長さ100cmの大きな平筆を構えた。
「あたしのユーベルコードはスパッタリングスター! 絵筆から飛ばした塗料が光弾に変化して攻撃するんですよ。けがの防止として威力は弱くするけれど……今からあたしが放つ光弾をどれだけ避けられるかなっ!?」
鬼ごっこしながら弾幕を回避して、猟兵たちから一本取ることを強いられた若武者たち。
一気にクリア難易度が跳ね上がった。
「それでは、3つ数えている間に逃げなさい? 死にたくないのならね!?」
エメラの号令で、若武者たちは陣屋を飛び出して野原を駆け回り始めた。
3カウント終えた猟兵たちが、彼らを全力で追い回し始める。
「直撃させないように気を付けないとよね……」
エメラは浮遊型魔導蒸気グレネード砲から強力な榴弾を発射!
榴弾は若武者たちの集団の後方へ着弾、そのまま爆裂!
「グワーッ!?」
若武者たちが爆風で前方へ吹っ飛ばされた!
「し、死んでないわよね!? 大丈夫!?」
思わず安否確認の為に彼らに近付くエメラ。すかさず彼らの怪我や脈の有無を確認する。
「……ほっ、無事のようね。完全に気絶しているけども」
若武者の数名がこれで脱落。
他の若武者たちの集団が戦々恐々と、地面が抉れた着弾点を眺めていた。
「これを真面目に当ててたら……どうなるかはわかるわね?」
砲口を向けられた若武者たちは、顔を真っ青にして逃げていった。
エメラは溜息交じりに落胆の声を漏らした。
「まったく、さっきまでの威勢の良さは何処へ行ったのかしら? でも流石にこれはやりすぎたわね……。だったら……さぁ出番よ、私の勝利の為に出撃なさい。ただし不殺武装仕様よ。『出撃の時だ我が精兵達よ(メイクアサリー)』!」
エメラは肩に1と刻印された52体の魔導蒸気兵を召喚させると、エメラの代わりに若武者たちを追い立てるように指示した。
「魔導蒸気兵を打倒して、私の所まで来たら合格よ。それまで逃げ回るか、迎え撃つか、仲間と情報を取り合いなさい。戦場で重要なのは、情報収集の大切さと連携、そして実践よ!」
若武者たちが異形の兵士に追い回されるのを眺めながら、エメラの特訓プログラムは続く。
ペイルが平筆を2度振るう度に、無数の光弾が若武者たちを打ち付けていた。
「遅い遅い! ネズミを捕まえる猫だって五感を働かせて動くんだって聞いてるよ! もっと光弾の軌跡を見極めて!」
ビシビシと後ろから追い立てるペイルのスパルタ式の鍛錬は過酷だ。
「ユーベルコードを回避できれば生存率が跳ね上がるよ! あたしが本気を出してたら、あなたたちはもう30回は死んじゃってるんだからね!?」
「グワーッ!?」
またひとり、光弾を背中に喰らって吹っ飛ばされた。脱落である。
「そこ、遅いですよ」
リードが『咎力封じ』でまたひとり拘束して地面に転がしてしまう。
次々と脱落してゆく若武者たちも、このままではいけないと反撃に転じる者が現れ始めた。
「これでどう!?」
ペイルの放った光弾を掻い潜り、若武者数名がペイルへ迫りくる!
だがペイルの平筆は2度振るわれる。右に振った平筆を左に振らないわけがないのだ。
「さぁ勝負!!」
光弾の波状攻撃に大部分の若武者が吹き飛ばされるも、立ち上がって向かってくるではないか。
そして2度の光弾を掻い潜った若武者のひとりが、遂にペイルに木刀の切っ先を突き立てた!
「次の攻撃へ構える時の隙を狙って来きたね……お見事、合格だよ! みなさんもお疲れ様でした! 攻撃を食らっても立ち上がれるほど、耐久力が身についたようですね!」
拍手で若武者たちの健闘を湛えるペイル。
「では、私はトウモロコシを焼く準備をしてきます。仲良く食べましょう」
ひと足早くリードが陣屋に戻る頃、エメラもペイルと合流して陣屋へ帰還することにした。
「まさか全ての蒸気魔導兵が突破されるなんて思ってもいなかったわ。って、いい匂いね? 香ばしいお醤油の匂いとトウモロコシの甘い香りだわ。お腹が空くわね?」
「エメラさん、早く行きましょう! 焼きもろこしが待ってますよ! みなさんも一緒に食べましょう!」
ペイルが陣屋へ駆け出すと、腹を空かせた若武者たちも一緒に駆けてゆく。
それを見送るエメラがしみじみと呟く。
「青春ね……」
実はアラフォーの大人の女性であるエメラは、彼らを眩しそうに見詰めるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
郁芽・瑞莉
初めての戦いを乗り越えると、
実は自分って強いんじゃないって思っちゃいますよね……。
訓練で挫折というか、身の程を知る機会があるのは良い事です。
きちんと理解して貰って、地力を少しでも上げて貰いましょう!
慢心している若武者たちに分身体と苦無で襲い掛かりますよ。
勿論、寸止めにはしますが。
「自分の力を正しく知ることはとても大事ですよ?」
それでも実感が足りない方は、
符で精神攻撃やマヒ攻撃で身体で実感して貰って。
訓練は分身体に対する陣形や飽和攻撃に対する対処を
実戦形式で効果があると分かって貰ったり。
個々で力を高めたい方にも分身体も駆使して組手にお付き合い。
最後はトウモロコシを焼いて食べて連帯感アップです!!
レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
無理して亡くにゃったら祟るにゃよ?死人操るヤツもいるからにゃあ。
体調は万全に、にゃね。どうしてもというのにゃら…26代目様の【百物語】でも体験してもらうにゃ。
僕は子猫に変身して、主役となる怪談化物を呼ぶにゃ。そして怪談化物が登場する、怪談由来の怪奇現象で気絶攻撃。さあ存分に脅かしていくにゃあ。
キミ(怪談化物)が主役として輝く間の「一般人を遠ざける人払いの力」は不要そうかにゃ?組み込むなら「誰かを1人にする」ために使うぐらいかにゃあ。
……髭感知で動きを見切り、肉球や爪で受け捌いて出来る限り逃げるにゃ。
(怪談化物の味方攻撃に自身が捉われた際は、ご自由に弄ってください。)
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
あ―…たまーにいるのよねぇ、なんかみょーな自信つけちゃって調子に乗るやつ。
自滅して他に迷惑かけられても困るし、いっぺん鼻っ柱ヘシ折っときましょ。
むこうは慢心してナメきってるわけだし、多分隊列も何もなく一塊でワーッと来るわよねぇ。
…それじゃ、射程に入り次第●鏖殺で片っ端から潰しましょうか。
非殺傷〇属性攻撃で○マヒ攻撃とか○気絶攻撃とか撃ちまくるわぁ。
で、崩れたら○ダッシュで突っ込んでボコすわねぇ。
…とりあえず。我先に突っこんでくるってのがまず論外ねぇ。
ってことで。足並み揃える訓練として、隊列組んだまま走りこみしましょ。
大丈夫よぉ。まずはほんの…10キロくらいだから。
龍ヶ崎・紅音
アドリブ・絡み歓迎
【SPD】
…まぁ、一口にユーベルコードっと言っても色々あるわけで…
「黒焔竜剣」で一つ組手しながら、後ろで立てかけてあった焔槍形態のホムラを『焔竜化身』(これ以外のUCは演出)。
気を取られた相手には寸止めはしたけど、実戦だったら『煉獄黒焔斬』で燃やされたり(そこらへんの樹を斬りつけて燃やして消す)、防御しようものなら『地裂岩断撃』で叩き割ってたかもね(そこらへんの大岩を叩き割る)
つまり、私が言いたいことは「オブリビオンを見つけても功を焦らず、まずこのことを猟兵たちに伝えるためにその場から離れること」だね
そのために必要な持久力を鍛えるためにあの丘まで走りこむよ!
ファイト、おぉー!
陣屋の外の野原では、かなり大規模な人数での訓練が行われていた。
だが、参加する若武者たちのやる気は低い。
「こんな事をせずとも、数で押せば織田軍など蹴散らせるというのに」
「左様でござる。時間の無駄でござるなぁ」
「もはや我らは向かうところ敵なし! はっはっは!」
これに監督役の4人の猟兵が互いに顔を見合わせて肩を竦めていた。
郁芽・瑞莉(陽炎の戦巫女・f00305)はポニーテールに結わえた長い黒髪と豊満な胸元を揺らしながら、緩みきった若武者の態度に顔をしかめてしまう。
「初めての戦いを乗り越えると、実は自分って強いんじゃないって思っちゃいますよね……」
「あぁ……たまーにいるのよねぇ、なんかみょーな自信つけちゃって調子に乗るやつ」
三編みの髪が特徴的な、ギャルソン服姿のティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、見かけによらず幼く甘ったるい声で同意を表した。
「自滅して他に迷惑かけられても困るし、いっぺん鼻っ柱ヘシ折っときましょ」
「そうですね、訓練で挫折というか、身の程を知る機会があるのは良い事です。きちんと理解して貰って、地力を少しでも上げて貰いましょう!」
ティオレンシアの不穏な言葉に頷く郁芽。
この場の特訓は荒れそうな予感だ。
特訓を開始する前に、左利きのフェアリーにして子猫、というレフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)から訓示を若武者たちへ贈る。
猫のような手足と緑色に染まった猫のような耳。一見、キマイラにも見えるが、背中の薄緑色の大きな一対の翅とその小柄さはまさにフェアリーそのものである。
お尻からは尻尾も生えているので、完全に猫っぽい妖精だ。実は代々、彼は猫化の呪いに苛まれてきた家系なのだという。
そんな彼は、端的に若武者たちへ告げる内容はシンプルだった。
「死んじゃダメにゃ。無理して亡くにゃったら祟るにゃよ? オブリビオンには死人操るヤツもいるからにゃあ。体調は万全に、にゃね」
レフティの言葉に、若武者たちの顔色が急変する。
「し、死んでも傀儡にされるとか、聞いておらぬぞ!?」
「……はんっ、死ななければ問題ない! そのような妖術に掛かる前に腹を切ってしまえば……」
「いやいや、そういうことじゃないから!」
若武者たちの会話に思わず龍ヶ崎・紅音(天真爛漫竜娘・f08944)が思わずツッコミを入れた。
「えっと、……まぁ、一口にユーベルコードっと言っても色々あるわけで……なんて言えばいいんだろう?」
龍ヶ崎の言葉通り、ユーベルコードも千差万別だ。
それを一言でまとめるて若武者たちに意図を伝えるのは、意外と難しい。
「とりあえず、集団組手をしてみませんか? 実戦のように乱戦形式で?」
郁芽の提案に、ティオレンシアも頷いて賛同を示す。
龍ヶ崎もそのほうが手っ取り早いと胸元の黒龍焔の呪印から漆黒の炎を迸らせると、炎を握って無骨な大剣……黒焔竜剣壱式『禍焔の大剣』へと具現化させた。
「どうしてもというのにゃら……26代目様の『百物語』でも体験してもらうにゃ」
レフティの姿が地面に降り立つと、その姿を子猫に変えていった。
若武者たちも木刀を構えて戦意は充分。
ここに、実戦形式の組手が開始される。
まずはレフティのユーベルコードが真っ先に発動される。
「百の灯を以て、子猫と共に『怪談』を始めよう。百の怪談を以て、全ての灯が消えた時、世界は『怪奇』に包まれる――それが子猫の怪談使い」
彼のユーベルコードは、百物語の主役……つまり怪異譚の怪談化物そのものを召喚する事ができる。
当然、百物語故に、怪談化物も100体出現することになる。
突如現れたモノノケたちに、若武者たちは思わず腰を抜かした。
「め、面妖な!?」
「バケモノだー!?」
怪談化物の物語通りの怪奇現象が若武者たちに襲いかかり、いつの間にか集団は散り散りになっていた。
しかも怪談化物の攻撃は9倍となって若武者たちを攻撃し続ける。
「ええい! 今更、魑魅魍魎が怖くていられるか……!?」
「待てよ? あの妖怪共、術者を襲っていないか?」
よく見れば、レフティも怪談化物の攻撃に巻き込まれていた。
「にゃぁ~!? 寿命を縮めにゃいためだけど、100体分はきついにゃあ!?」
レフティの呼び出した怪談化物たちは、味方を攻撃しないとレフティの寿命を削ってしまう。
故にレフティは自身を襲わせるように敢えて仕向けているのだが、先程から必死の形相で小さな身体をくねらせて回避しまくっている。
「な、なんか、助けてやらないと、我らが悪いことをしているようでござる!」
「如何にも! 猟兵殿が体を張っているのなら、我らも特訓に身を入れねば!」
という事で、若武者たちは自然とレフティから怪談化物の攻撃を庇うよう立ち回り始める。
「もののけめ! いたいけな子猫をいじめるとは外道なり!」
「我らが成敗してくれる! それと後で撫でてもよいか、猟兵殿!?」
猫好きたちの奮戦により、レフティの呼び出した100体の怪談化物は若武者たちに制圧されてゆく。
郁芽は戦巫女と陰陽師のハイブリットだ。しかしどことなく忍者を思わせる出で立ちだ。ハイネックでハイレグのレオタード型インナー『黒鳥』がクノイチ感はんぱない。あと個人的に赤いマフラーがカッコいいぞ。
「では、みなさんは私がお相手します。一人、千に当たるが如く、私の持てる力のすべて以って。行きますよ! ユーベルコード『一人当千』!!」
すると、郁芽が次々に分身してゆくではないか!
48人の分身と本体が、一斉に陰陽術が組み込まれた『飛苦無 飛燕』をショットガンめいて面制圧で先制一斉投擲!
240本の苦無が若武者たちの身体を掠めてゆき、鎧甲冑の結び目を斬り裂く。すると、彼らの装備は重量に従ってガシャガシャと地面に転がってしまった!
羽織姿になった若武者たちは一歩も動けずに硬直してしまった。
「な……なにが、一体、どうなって……?」
一瞬で武装解除させられてしまった若武者たちは、この早業に大半の者がユーベルコードの脅威を悟って降参を申し出てしまう。
だが、郁芽はそれを決して咎めない。
「自分の力を正しく知ることはとても大事ですよ? そして、相手の実力を読み取って、逃げることも大事です。生きてこその物種です!」
……しかし、それでも強情な輩はいるのが困りものだ。
「拙者は刀が折れるまで戦い続ける!」
「まぁ……血気盛んなのは評価しますが、無謀ですよ?」
「鎧甲冑が壊れたくらいでは、拙者は止まらぬぞ!」
そのまま木刀を振り上げてくる猪武者に郁芽は溜息をひとつ。
「……忠告はしましたからね?」
独りごちると、郁芽は胸元から陰陽道に基づいた十色の霊符である合一霊符を取り出す。
その中から青と黄色を両手で持つと地面を蹴って縮地めいた急発進!
猪武者の額と身体に2枚の霊符を素早く貼り付けてしまう。
「身体は痺れて、頭は冷やしてくださいね?」
「ヌワーッ!?」
猪武者の身体に張られた黄色の霊符が微弱な電気を発生させて麻痺させ、額に張られた青い霊符が精神攻撃によって体の熱を奪い凍えさせる錯覚を見せるのだった。
「さぁ、せっかくですから、陣形や飽和攻撃への対処を学んでゆきましょう。個別で組手をしたい場合は、私の分身体がお相手しますよ?」
こうして、郁芽は若武者たちの技能と知識の双方を育ててゆく。
ティオレンシアと龍ヶ崎は、以前に別の依頼で顔を合わせている。
今回もその縁ということで、2人は協力して特訓メニューを組み上げた。
「さて、何処からでも掛かってくるといいわぁ? 慢心してナメきってるあなたたちの剣先が、あたしに届くかしらぁ?」
愛銃オブシディアンを手の中で弄びながら、若武者たちの攻撃を誘う。
対して龍ヶ崎は黒焔竜剣を構えて真っ向から若武者たちを迎え撃たんと試みる。
「ユーベルコードのなんたるか、その身で味わってもらうよ!」
黒く燃え盛る大剣の傍らには、相棒の仔龍ホムラが変身した焔槍が地面に突き刺さっている。
「我ら徳川軍の益荒男なり! いざ、勝負ーっ!!」
「うおおぉぉっ!!」
若武者たちは堰を切ったように、猟兵2人へ雪崩込んでゆく!
だが、ティオレンシアはそれをとうに予見していたようで落胆の声を漏らす。
「本当に隊列も何もなく一塊でワーッと来るなんてねぇ……」
すぐに射程内に入った若武者たちへ、ティオレンシアは神速のファニングショット6連発!
弾丸は非殺傷の特殊ゴム弾だ。貫通をしないように弾丸へ細工が施されている。
とはいえ、命中した際の衝撃は本物だ。若武者たちは銃撃であっという間に6人がその場に倒れ込んだ。
的確に銃弾で人体の急所を撃ち抜けば、非殺傷とはいえ一時的に身体をマヒさせたり気絶させることが可能なのだ。
しかし、弾切れゆえにティオレンシアはリロードを行わねばならない。
それに勘付いたひとりの若武者が突っ込んできた。
「もう弾切れか! 一本、いただきましたぞー!」
勝利を確信して踏み込んだ若武者の眼前に、オブシディアンの重厚が突き付けられた。
「6発撃ったら終わり? そんなこと、誰が決めたのかしらぁ?」
既にリロード済みの拳銃から、ほぼ同時に6発の銃弾が撃ち込まれた!
「アバーッ!!」
零距離からのユーベルコード『鏖殺(アサルト)』!
若武者は体中に銃弾を浴びて地面に転がっていった。
続く若武者の集団へ向けて、ティオレンシアは慈悲深いブッダめいた笑顔を振りまいた。
「……それじゃ、射程に入り次第、片っ端から潰すわぁ?」
彼女は有言実行だった。
射程内に一歩でも踏み込んだ若武者は、いつの間にかファニングショットから放たれた特殊ゴム弾を浴びせられ、神速のリロードゆえに拳銃なのに機関銃のような連射速度と殲滅力を遺憾なく発揮。
しかもティオレンシアがダッシュで移動することで、彼女の意思で標的を射程内へ収めることも可能とあれば、もはや若武者たちは逃げるほかない。
「ひぃ!? もはやあれに近付くな! 撃たれるぞ!?」
「失礼しちゃうわねぇ! 逃げるばかりじゃなくて、どう防ぐかを考えるのも必要よぉ?」
そんな事を言いつつも、情け容赦なく若武者を特殊ゴム弾で蜂の巣にしてゆくティオレンシアの姿は、もはや武神か何かであった。
逃げ惑う若武者たちを尻目に、龍ヶ崎は大剣で若武者たちの波状攻撃を何度も払い除けていた。
「そろそろ頃合いかな? 行くよ! ホムラ!」
龍ヶ崎が地面に突き刺さった焔槍形態の相棒の名を呼んだ。
すると、ガウッとひと吠えするやいなや、焔槍はたちまち3mの焔竜形態へと変身!
これが彼女のユーベルコードのひとつ、『焔竜化身』なのだ。
突如として出現した巨大な竜の姿に、若武者たちは思わず後退った。
「なんたる……!」
「迂闊に近付くと喰われるんじゃないか!?」
もたもたしている若武者たちへ、龍ヶ崎は燃える大剣の切っ先を彼らの眼前に突き付けた。
「はい、おしまい。今回は寸止めだったけど、実戦だったら、私は黒焔の大斬撃を放つユーベルコードの『煉獄黒焔斬』であなたたちをまとめて斬り伏せて、骨の髄まで焼き尽くしていたよ」
龍ヶ崎は、手近な樹木へ向けて『煉獄黒焔斬』を放った。
すると、樹木は熱した飴のように容易く刃を通し、真っ二つになって地面に燃えながら倒れてゆく。
「あと、防御しても無駄だよ。単純で重い武器と私の怪力による鎧砕きの一撃のユーベルコード、地裂岩断撃で防御ごと叩き割っていたかもね?」
今度は大岩へ大剣を振り下ろせば、一撃で大岩は粉々になって砕け散った。
その場にいる若武者たちは、目の前の現実を理解できず、時が止まったかのように身じろぎひとつしない。
龍ヶ崎は、そんな彼らを諭す。
「つまり、私が言いたいことは『オブリビオンを見つけても功を焦らず、まずこのことを猟兵たちに伝えるためにその場から離れること』だね。逃げても良いんだよ。情報を持ち帰ることも戦争ではとても大事だからね。でも、そのためにも……」
龍ヶ崎は、丘の向こうに生えた大樹を指差した。
「あの丘の木まで走り込むよ! 持久力を鍛えるためにね!」
「あらぁ? それじゃ足りないわよぉ?」
若武者たちをボコボコにしてきたティオレンシアがにこやかに合流。
彼女の後ろには、ボロボロの若武者たちが虚ろな目で集合していた。
「ティオレンシアさん、足りないって、どういう事……?」
「言葉の意味そのままよぉ? ……とりあえず。我先に突っこんでくるってのがまず論外ねぇ。ってことで。足並み揃える訓練として、鎧を着込んで隊列組んだまま走りこみしましょ。大丈夫よぉ。まずはほんの……三里だから」
若武者たちは顔面蒼白になった。
一里が約4kmなので、三里は約12kmだ。それを自分の体重とほぼ等しい装備を身に着けたまま走破するのだから、地獄でしかない。
若武者たちは龍ヶ崎がきっと反対してくれると思い、期待の眼差しを向ける。
あの丘までなら、装備込みでも何とか走り抜けそうだからだ。
龍ヶ崎が口を開いた。
「いいですねぇ!」
「アァーッ!!」
若武者たちが絶望した。
頭を抱える若武者の様子を龍ヶ崎は不思議そうに首を傾げた。
「ほら、一緒に頑張ろう? ティオレンシアさんに続けーっ!」
「お、おう……」
「元気ないよ!? 全員、声出して! ♪とーっくがーわ! ファイっ!」
「「オッ……!」」
「ファイっ!」
「「オッ……!」」
「ファイっ!」
「「オッ……」」
「ファイっ!」
「「オッ……!」」
「ふぁいっとー♪」
「「うぇーい……!」」
若武者たちは疲労困憊だ。
「元気がない子には、後ろから銃弾で発破かけてあ・げ・る♪」
ティオレンシアが走りながらリロード作業を行うと、彼らの態度は一変!
「「トークガーワ! ファイオッファイオッファイオッファイオッガンバルゾー!」」
かくして、隣の宿場町を折り返して陣屋に帰還することには、日が傾き始めていた。
「さぁ! 差し入れのトウモロコシを食べて、連帯感をアップしましょう!」
郁芽の掛け声とともに、腹を透かした若武者たちが焼きもろこしにかぶりつく。
醤油とトウモロコシが焼けた香ばしい匂いに、猟兵たちも思わず手が伸びる。
「はふはふっ! 走った後のご馳走は格別だね、ホムラ!」
相棒に短めの焼きもろこしを与えて、一緒に龍ヶ崎は舌鼓を打つ。
「トウモロコシの甘みと醤油の塩気が相性抜群ねぇ!」
ティオレンシアも熱々のまま勢いよく丸かぶり。
レフティは猫舌なので、しばらく冷ましたものを食べるので、今は傍観に徹している。
猟兵たちも若武者たちも、決戦の前の平和なひと時を満喫。
こうして、明日には島原に到着する見込みの徳川軍は、猟兵たちのおかげで技術と英気を養うことに成功したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵