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エンパイアウォー㉚~異郷に異教の脅威在~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●濡れ手で何とやら
「諸君。世の中、効率化を図るというのは大事なことだとは思わないかね」
 異界の天使スフィーエ・シエルフィートは、突拍子もないことを口にし出した。
「一歩誤れば横着ともいうのだがね。兎にも角にも仕事だよ諸君」
 効率化は大事だが、全てが全てではないよ……と微笑みながら、彼女はゆっくりと淡い金色の輝きを浮かべ始めた。

「さぁ語ろうか。舞台はサムライエンパイア、場所は山陽方面の祠だ。君達には隠された財宝を破壊して貰いたい」

 信長軍六魔将が一人、侵略渡来人『コルテス』は骸の海より亡霊(オブリビオン)として渡来人を召喚し続ける財宝を持っていた。
 一定時間ごとに骸の海から亡霊を呼び出し続けるそれは、今も尚、山陽方面各地の神社仏閣などの霊験のある場所にて稼働しているのだという。
「当然、そんな力を持った財宝だ。常時亡霊共が警備している」
 血塗られた財宝と称されるそれは、常時十から二十の亡霊を呼び出し続け警備に当たらせており、二十になった時点でその半数を本拠地の安土城に向かわせているのだという。

「君達に行って貰いたいのは、この祠だ。戦闘には影響はないよ」
 そう言ってスフィーエは、山陽方面にある古びた祠と、その中央に祀られている南蛮仕立ての鏡を映し出す。
 祠の周囲は広い平地で、戦場を行う場には十分な広さがあり特に障害もない。
「ただし注意点がある。さっきも言ったように、最低でも十以上の亡霊が邪魔をしてくるのだが……君達は、いつ仕掛けるかを選ぶことが出来る」
 無尽蔵に亡霊を呼び出し続ける財宝の特質上、二十までならば確かに纏めて相手にできるだろうが、数が多ければ多いほど戦いは苦しくなるだろう。
 だがその分、敵の戦力を減らすことも出来るし減らせば減らすだけ、後の戦いで有利になるかもしれないと語り。
「兎に角、財宝の破壊を優先するか、敵の戦力を減らすか、或いは間を取るか。その辺りは君達に任せるよ」
 いづれにしろ、戦力に対する己の力量と慎重に向き合う必要があるだろうと十分な注意を語り、新たに敵となる亡霊の姿を映し出す。

「敵は彼女達、切支丹の女武者だ。渡来人の異教徒で、弾圧に必死に戦った背景があるそうだが……」
 映し出すのは異教の十字架を持ち、異郷の鎧を纏った女武者の姿。
 渡来人らしき彼女達が、生来ではどうだったのかは知る由もないだろうが……。
「ま、財宝の力で呼び出されるのは、意思疎通も出来ない文字通りの亡霊さ……当人そのものじゃあない。遠慮せず倒してやってくれたまえよ」
 どこかやりきれないような、そんな暗い笑顔を浮かべつつ気を取り直し。
 スフィーエは転送の結界を作り上げながら、最後に猟兵達に向かってこう締めた。
「さて、戦争も後半戦だが、引き続き頑張って欲しい。では送るから準備が出来たら声を掛けてくれたまえ」


裏山薬草
●注意!!
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 成功シナリオが2本ごとに、魔空安土城の一部の戦場の制圧に必要な成功数が1減少します。

 どうも、裏山薬草です。
 皆様の活躍で発生したボーナスシナリオをお送りしたいと思います。

 今回はですね、山陽方面の神社仏閣にある南蛮渡来の血塗れ財宝を破壊して貰います。

 種別としては「集団戦」となります。
 ですので、最初にプレイングを送られる方は10~20までの敵数を記入してください。
 それによって判定の厳しさが変わります。当然、多ければ多いほどシビアになりますのでご了承ください。
 最初に送られた方に記入が無ければ、次の方……という風にします。
 最初に人数の書かれた方を執筆しますので、続けて参加される方はその人数を参考にプレイングをお願いします。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 集団戦 『切支丹女武者』

POW   :    鉄砲三段
【鉄砲の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    部位狙撃
【鉄砲】から【トリモチ弾】を放ち、【手や足を狙う事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    聖母の慈悲
【聖母に捧げる祈り】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

草野・千秋
15仕掛けますね
敵戦力の減少を重視します

亡霊をおびき寄せる財宝……恐ろしいですね
ですがここで怯んでしまってはヒーローの恥ッ!
僕達はエンパイアに平和をもたらすんだ!
変身!ダムナーティオー出動!

UCで敵を攻撃すると共に
2回攻撃、スナイパー、範囲攻撃、勇気で敵を攻撃
これでだいぶ削れたでしょうか?
徹底的に敵を掃討する
集団戦をけしかけ敵が少なくなってきたら
接近戦に持ち込み怪力をお見舞いしましょうか
怪力パンチキックを喰らえ!
敵からの攻撃を受ける時は盾受け、武器受け、激痛耐性
かわせる攻撃は第六感、戦闘知識でかわす
仲間がいればかばう
この鋼の身なれど役に立つのなら本望……!



●何故ならば彼は英傑なのだ
 山陽地方はとある祠――元々何を祀っていたのかも最早知る者もなく。
 ただ祠に祀られた、古びた南蛮渡来の鏡は妖しく輝き亡霊を生み出し続ける――草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)はその財宝の恐ろしさを改めて思い知りつつも機を伺っていた。
(ですがここで怯んでしまってはヒーローの恥ッ!)
 亡霊生む財宝、真に恐ろしき。
 されど逃げるといふ選択肢、この英傑に無き。
「――変身!」
 南蛮具足纏いし切支丹の女武者らの数が十五に差し掛かりし時、千秋はその身に鋼の鎧を纏う英傑の姿となりて。
「ダムナーティオー、出動ッ!」
 罪断つ戦士は、嘗て迫害されし女武者達の前に立つや否や、その身に秘められし全ての武装より一斉に銃弾を解き放つ。
 英傑の決意、その勝利の約束を呼ぶに相応しき流星群が如き煌めきの銃弾が、驚愕の顔をする女武者の具足を次々と打ち砕き。
 絶え間なく反動が千秋の装甲を揺さぶりながらも、その勇気を以て躊躇わずに切支丹達の肉体を穿っていくが。
「くぅぅっ……!」
 後方に控えし女武者が次々と打ち放つ、南蛮渡来の狙撃の鉄砲は、千秋の掃射が終わると同時に放たれて彼の装甲に次々と突き刺さる。
 精強にして相応の人数を備えた女武者の掃射は、千秋の放ったそれにも劣らぬ衝撃を以て彼の装甲に次々と傷を刻む。
「この鋼の身なれど……僕は惜しくない」
 しかし彼は耐える――この痛みを。
「僕が! 僕達が! エンパイアに平和を齎す為ならばッ!!」
 躱すことも叶わぬ弾丸の嵐の中、英傑の誇りを示す盾を前面に押し出し、切支丹の猛攻を耐え切って。
 彼女らの放つ銃弾がやがては終わりを迎え、弾込めの僅かな隙が生まれるや否や。
「この身幾ら削れようと……本望ッ!!」
 強く、何処までも強く英傑は地を踏みしめて慄く切支丹へ一瞬で距離を詰めると。
 その溢れんばかりの剛力より、頑強な鎧を飴細工のように砕き散らす必殺の拳を叩き込んだ――!

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シェーラ・ミレディ
ふむ、15人の女武者か。
中々の手練れと見えるが、さて、それでも財宝は破壊せねばならぬのでな。
遠慮なく討たせてもらおうか。

数には数で対抗しよう。
『珠聯璧合』で精霊たちを呼び出すぞ。耐久力は低くとも、此方は200以上を揃えているのだ。相手が尽きる方が早かろうよ。
敵が回復しようとするのを僕が射撃で妨害し援護つつ、精霊たちに突撃させるぞ。小型デバイスは爆発物だ。やられようが距離を詰めさえすれば、跡形も残さず始末できるだろうさ。
──さぁ、敵もろとも咲き誇れ。

隙があれば財宝の破壊も狙うぞ。
精霊が残っていれば任せるが、いないようなら銃撃だ。

※アドリブ&絡み歓迎


ジズ・レオリー
相対するは安寧を揺るがす亡霊の群れ
敵意を向けるに相応しい

思考。優先すべきは敵戦力の脆弱化
【不待ノ礫】で牽制を兼ねた範囲攻撃を
過去の戦闘知識を基に敵の動きを観察・学習
攻撃は可能限り見切りと第六感で躱すかオーラ防御
負傷も想定内

徒党を組むなら敵にも相応の集団戦の心得が在ろう
傷付いた味方を治療しようとする者も在ろうが問題無い
癒しきるより早く仕留めてしまえばいい
高速詠唱でロッドの封印を解き武器改造して弓状に変形
認証。魔力全解放。属性攻撃力上昇――全力魔法展開
属性を束ねし【不避ノ雨】!

嘗て本当に聖母に捧げた祈りかもしれない
その行為を否定はすまい
ジズは貴殿らよりもずっと強く祈るのみだ
この地に平和を齎すことを



●千年の人形達の
 切支丹の女武者は数を減じたといへど、未だその勢い衰えず。
 ただ絡繰り仕掛けのように表情の起伏も無く、生身の人間らしからぬ規則正しき動きを以て鉄砲を構える。
 その女武者達の前に、新たに相対するのは二人の千年人形達であった。
「ふむ、中々の手練れと見えるが、遠慮なく討たせてもらおうか」
 渡来の具足鳴らす彼女達の前に、渡来のどことなく高貴な雰囲気を漂わす千年人形シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は彼女達が群れて守る鏡と彼女らを交互に見やり。
「……」
 その横で同じく、切支丹達を見据える、同様に南蛮渡来の豪奢な青い服を纏うジズ・レオリー(加護有れかしと事有れかしと・f13355)がいた。
 戦意も実力も十分、戦争に使われる力量であれば個々の実力も相応、増してそれが何体も来るならば千切っては投げという訳にはいくまい。
 実時間にして僅かなれど、思案に思案を重ねられて導き出した結論は。
「論証付与。――此の礫は雨垂のごと、待たず」
 切支丹達が銃の引き金に指を掛けたのと同時、色を異にする双眸の微かな険を伺わせ盛大に飛び散る光の砂礫が、切支丹達の一手を先んじて潰し。
「僕のために咲け。舞い散る花弁は諸君に捧ぐ」
 同様にシェーラも考えていた……数に対抗するには数と。
 この牽制によって動きを止められた際に乗じ、嗾けるは家事を得意とする精霊達。
 南蛮渡来の異教徒に向かうのは、同様に南蛮渡来の西洋女中の姿を模した精霊達――その悉くが、その手に『掃除』の為の道具を携える。
 ……そう、掃除と書いて、敵の始末と読む一つのお約束であるが。
 一撃で文字通り吹けば飛ぶようなか弱き存在なれど、その総数は優に二百を超える女中達。
 正に蟻の群れが象の部隊を食い荒らしてしまうかのごとき群衆が、切支丹達の脚に纏わりつき動きを封じていく。
 流石に切支丹達も帝国に伝わりし有名な戦法で代わる代わるに射的を以て女中を迎撃していくが、その数は十倍以上、すぐに纏わりつかれて次第に動きも封じられていく。
 初手の牽制による射的の封印が無ければ、ここまで押し切られることは無かっただろうが――それは、場に居合わせたジズとシェーラの奇跡的な連携というものだろう。
「――此の矢は驟雨のごと、避けられず」
 そしてその苦戦中ならば、一気に回復される前に仕留めるまで。
 試案を重ね、錫杖を瞬きにも満たぬ速度を以て祝詞を紡ぎ一つの大弓に変化させ。
 ジズの保有する全ての魔力を振り絞るが如き色とりどりの魔力の矢――数えるのすらも馬鹿げた無数の矢が降り注ぐ。
 それは回避すらも許さぬ圧倒的な、神罰をも思わせる矢が突き立てられるごとに。
 炎と雷が爆ぜ。土石流が具足を砕き身体を押し流し。砂礫と業火孕む突風が跡形もなく身を消し炭と化し。
「──さぁ、雨の後は敵もろとも咲き誇れ」
 魔力矢が着弾すると同時、女中の携える爆弾も同時に爆ぜれば。
 相乗効果か、切支丹達を更に更にと巻き込み容赦なくその部隊を壊滅へと導いていく。
 それでも体制を立て直さんと祈る姿も僅かにあれど。
「……思考」
 祈りを捧げんと掌を合わす姿を見、ジズはこの切支丹のことを思う。
 この祈りはかつて本当に信じる聖母の為に捧げられた祈りであるのかもしれない。
 しかし今となっては感情も何も無く、ただ己が傷を癒す為だけの、目的も何もかもとうに忘れ去られた祈り。それを否定まではしないが。
「ジズは貴殿らよりもずっと強く祈るのみだ。この地に平和を齎すことを」
「どの道厄介な財宝を残してはおけぬのでな。破壊させて貰うぞ」
 祈りが発動する前よりも早く、城すらも傾けると銘打たれたシェーラの銃が切支丹の肩を掠め祈りを強引に留め。
 続き放たれるジズの千紫万紅の魔力の矢が、祈り届かなかった切支丹の身体を天に還すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アレンジ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

んーまぁそこそこ数は多いが確実に倒していこうか。
倒しきれなくてもマヒ乗せれば他の猟兵が楽になるだろうし。

【存在感】を消し【目立たない】ように移動、そのままオブリビオンに【先制攻撃】で【奇襲】【暗殺】を乗せたUC菊花で攻撃。代償は寿命。
さらに動きの制限【マヒ攻撃】、かつ【傷口をえぐる】でよりダメージ増を狙う。
遠距離だし先制されたらたまったもんじゃないからな、先手必勝だ。
相手の物理攻撃は【第六感】【見切り】で回避。
回避しきれなものは黒鵺で【武器受け】からの【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らってしまうものは【激痛耐性】でこらえる。


上野・修介
※アドリブ、連携OK
もとより常在戦場。
「向こうの得物は銃か」
だが、やることは変わらない。

呼吸を整え、無駄な力を抜き、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
目付は広く、敵と配置、周囲の地形を把握。

敵の殲滅を最優先。

UCは攻撃強化。
地面を叩き粉塵を巻き上げ煙幕とし、敵陣に飛び込む。

姿勢を低く【フェイント】を掛けながら狙いを付けらないよう常に動き回る【ダッシュ】か、近くの敵を盾【地形の利用】にして出来る限り被弾を減らし、相手の懐に肉薄し一体ずつ確実に倒す。
擒拿術と柔術を主眼にした超至近戦闘【グラップル+戦闘知識】で攻める。

撃たれることは【覚悟】の上。弾丸を恐れず【勇気+激痛耐性】推して参る。


榛・琴莉
嫌な置き土産ですねぇ、あのオッサンめ。

この人数相手に飛び込める程、耐久性に自信はありませんので。
守りに重点を置くとして…どなたかと共闘できる状況であれば、是非に。
攻撃に比重を置く方であれば、私はいっそ防御に徹しましょうか。

敵が鉄砲を撃つのに合わせてUCを使用、
【武器改造】で分散させたHaroldで【武器受け】します。
トリモチは厄介ですが…くっつくんですかね、Harold…
くっついた場合はその部分を分離して防御を続行。
それに加えて弾の軌道を【見切り】回避。

余裕があれば、氷の【属性攻撃】で銃撃。
【スナイパー】らしく、頭や心臓狙いで一撃必殺…
なんて、出来たら良いんですが。



●仕掛けてくるのは誰かの何か
 殆どが半死半生の体――切支丹の女武者達の様相を一言でいえばそうなる。
 それでも線香花火の最後の瞬きが激しく見えるが如く、女達の目は血走り猟兵達へと激しい戦意を向ける。
 その血走った眼を柳のように穏やかに、そして氷のように冷たく、流れ水のように清らかに見据える六つの眼があった。
「嫌な置き土産ですねぇ、あのオッサンめ」
 あの鏡の向こうに何を繋げているのか。
 楽をして、言い方を限りなく悪くすれば存在自体が災害そのものである亡霊という存在を呼び出し続ける。
 以前に首謀者自体を討ったことはあるが、屑という言葉以外出てこない渡来人に呆れの混じった怒りを覚え、榛・琴莉(ブライニクル・f01205)はぼやいた。
 自らは神社に潜み、かつ神社仏閣に負の財産を仕込む……全く、あの時も感じたが何とも罰当たり極まりない。
「向こうの得物は銃か」
 その彼女の前に立つ上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は鷹のように鋭く女武者達の一挙手一投足を映す。
 相応に減じたといへど、未だ相応に在る女武者達の鉄砲を視野広く、静かな呼吸で思考を研ぎ澄まし見据えていた。
「でもって……んー、まぁそこそこ数は多いが確実に倒していこうか」
「私は防御に徹しますので」
「行きましょう」
 その隣にいる宿神、黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は、何処までも澄んだ眼で先を見据える。
 倒し切れずとも、動きの一つや二つを止めてしまえば、隣にいる仲間も幾許か楽になろう――瑞樹は嘗ての前身にして本体である黒き大振りな短刀を左手に、右手に奇しくも今回の財宝と似たり神鏡の宿神より譲られし打刀を構え。
 琴莉は懐より水銀の如き身を持つ、邪神の世界に住まう謎の化生を僅かに蠢かせ。
 二人の言葉に頷いた修介が、女武者達が一斉に鉄砲を構えんとした刹那、大きく息を吸い。
「――力は溜めず――息は止めず」
 十分に戦場の形、敵の数、特質は見極めた――力は抜き、意志だけを強く。
 力を抜きつつ、それでいて技の冴えは何処までも破壊力を極める様に。
「――意地は貫く」
 叩き付けられる拳が地面を盛大に砕き、その砂礫が大波の如く女武者達の視界を封じ、まずは一手、女武者達の発砲を防ぐと。
 修介の拳が叩き付けられ、砂礫が発生すると同時に瑞樹は駆ける――砂礫を壁とすれば、実に忍び易きこと。
 血走った眼の女武者達が戸惑いを見せる間に、刀と短刀の二刀流が砂塵の煙幕の中、何処か燦然と煌めく――が。
「はっ!」
 輝いたのは刃だけに非ず。
 瑞樹自身の瞳も、砂塵の中に於いても宝石は宝石の格言が如く煌めき、その存在を主張する――その存在に気付き、女武者達が引き金に指を掛け銃口を向けても。
 発砲という攻撃に至るよりも早く、阿修羅宿したかの如く走る二つの刃が、手始めに銃口を向けた女武者の銃と、その具足の繋ぎ目を悉く切り落とし。
 がらり、がらりと音を立てて崩れていく具足と、甲はがれていく身に、吸い込ませていくようにすんなりと刃を斬り込む。
 それが宿した刃の性質は毒――神経の流れを乱し、身体の動きを強制的に阻む毒が、切支丹の身体を縛り付ける。
 その縛り付けられた切支丹目掛け、地を踏み砕く勢いで踊り込んだは修介――身動き一つ取れぬその女の手首を引っ掴むと、遠心力を大きく付けた一本背負いを以てその地に更に埋め込むように身体を叩き付ける。
 轟音と礫が吹き上がり、浮かんだ礫が重力の掟に従い切支丹の身体に次々と打ち据えられるようにその身体を埋もれさせ、その命を断つ。
 だが切支丹らも反撃に移らぬ訳ではない――初手の鮮やかな斬撃からなる連携攻撃が女武者の一人を落した刹那、別の女武者がその銃口を向ける。
 決死の勢いで引き金が引かれ、解き放たれる粘着質なる弾丸が瑞樹を意趣返しのように縛り付けんとしたが。
「Harold」
 刹那よりも速く、琴莉の袖や裾より次々と放たれていく水銀の如き化生。
 名状しがたきといふほかに無きその身体は、強いていふなれば鳥であろうか――流動する身体と、歪に曲がった翼と足は、出来の悪い玩具のようではあるが。
 群れ為すそれは、粘着質なるその弾丸を次々と受け止める――流石に流動体の身体といへど、濃密な粘着の前には動きを封じられるようであったが。
「くっつくんですね……ですが」
 しかし流れる身体は、それを洗い落すように削ぎ落し、再び放たれる粘着弾を封殺す。
 そして攻撃を封じられてしまへば、前線に立つ修介と瑞樹にとって彼女らは敵に非ず。
 殺生の為の弾丸を一斉に切支丹が放とうとすれば、それよりも早く――仮に撃たれても真っ向から受け切る覚悟を持っているが――懐に潜り込み、胸倉を引っ掴み。
 背面より倒れる勢いでその切支丹を投げ飛ばせば、それとすれ違うように駆ける瑞樹の二刀が閃く。
 擦れ違う刹那、黒々とした具足に光る刃の軌跡は菊花細工の如く細かに且つ幾度となく。
 具足を刻まれ肌を斬刻まれる中に、更に抉るように刃を滑り込ませ深く、深く抉りつつ。
 反撃に再び捕縛の為の弾丸が解き放たれても、それよりも早く水銀の化生は流動する身体で受け止め、捕縛された身体を流動を切り離しては流し、群れてはまた放たれる捕縛弾を受け止めて。
 そこへ弾丸の装填より早く、修羅の如き瑞樹の剣閃が走り……再び麻痺毒の捕縛が切支丹の動きを封ずれば。
 修介が再びそれを掴み、巴投げを以て宙に放り出して。
「……一撃必殺」
 放られた切支丹の心の臓へと、何処までも冷たく走った狙撃銃からの一つの弾丸。
 氷の心臓とは誰がいふたか、琴莉の放った弾丸に射抜かれた切支丹は、虚ろな瞳で地面に叩き付けられると、その身凍てつかせ散っていくように骸の海へ還っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

秋月・信子
・SPD
切支丹の亡霊…ですか
歴史を知っている身としては…あのように祈りを捧げる姿を見ると撃つのが躊躇って…
『(何また甘っちょろい感傷に浸ってるのよ?あいつらは単なる意思疎通も出来ない文字通りの亡霊、ただのカカシじゃない)』
ボルトアクションライフルを構え【スナイパー】として身を潜めながら彼女達をスコープ越しに観察する中、私の影が頭の中で語りかける
『(異教徒として弾圧された恨みがあるでしょうけど…その恨みを利用されてオブリビオンとして蘇っているだけ、考えを変えればあいつらも被害者ね)』
…自身の迷いを払うかのような影の言葉により引き金を引くのに躊躇ってた人差し指が動くようになり…徐々に力を込めた



●黙示録
 離れた箇所に居て尚、少女の耳に響くのは切支丹の切なる祈り。
 既にほぼ全ての同胞を斃され、嘗ての志を忘れているにも関わらず、機械的に消耗を癒す為に祈る姿。
「……ッ!」
 撃たなければいけない。
 それは分かっている――しかし秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は撃てないのだ。
 何故ならば、その姿が……多少なりと歴史を知っていれば、彼女らの受けたであろう弾圧と、その祈りが引き金にかけた指を振るわせる。
 躊躇う信子の脳裏に、邪法を以て生み出した影法師が語り掛けてくる。
(何また甘っちょろい感傷に浸ってるのよ? あいつらは単なる意思疎通も出来ない文字通りの亡霊、ただのカカシじゃない)
 狙撃銃の照準越しに覗く切支丹は、祈りを捧げていれど、それは機械的に消耗を癒す為だけのそれ。
 飽く迄呼び出した者は戦力以上を求めず、また現れた存在も意志を消されている。
(まぁ確かに異教徒として弾圧された恨みがあるでしょうけど……)
 それでも躊躇う信子の理由を察しないわけではない。
 躊躇う理由に理解を示し、それでもやらねばならぬ理由を諭す。
(その恨みを利用されてオブリビオンとして蘇っているだけ、考えを変えればあいつらも被害者ね)
 ――それに、亡霊として出てきた所で歴史の当人ではない。
 ただ、骸の海の過去が、そうした姿をとり、その姿に準じた記憶と力を持っているだけ……本当に救うべき者を影は諭す。
 言葉が響くたびに、信子の指に震えが止まり、力が入り、やがては――音一つ解き放たれた銃弾が。
 祈る切支丹の頭部を静かに打ち抜き、残滓一つ残らぬ骸の海に霧散させていき。
「……私は」
(祈ってあげるなら、本物の方にしてあげなさい)
 ……それでも、どこかやり切れぬ感情に狙撃銃を仕舞う信子に影は諭す。
「……ええ」
 嘗て存在していた元来の切支丹の女武者達に祈る様に十字を切り。
 別の猟兵が宝鏡を壊す音を背後に、信子は静かに場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月20日


挿絵イラスト