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エンパイアウォー㉚～外

作者：小強欲

●グリモアベース
「熱波地獄の阻止、お疲れ様ですよ。ここで悲報です。聞いていきますか？」
　悲報などと言いながら、ニコニコとした表情でウィルバー・グリーズマン（入れ替わった者・f18719）は周囲の猟兵達を見て、早速説明を始める。

「魔軍将『コルテス』は、骸の海から渡来人を呼び寄せる為の財宝を所持していた様で、一定時間経過する度に渡来人を召喚し続ける……何かヤバいタイプのアレですね」
　これらの財宝は、コルテスが過去に侵略した文明から略奪した物。
　今も新たなる渡来人を呼び続けており、信長軍を強化している。
「これらの財宝……まぁ、『血塗れの財宝』とでも言えば良いでしょうか。破壊する事が出来れば、魔空安土城の信長軍戦力を減らせる事でしょう」
　その為に、急いでこれを破壊しなければならない。時間はあまり無いのだから。

　そして、敵も当然ながら渡来人らしき存在となる。
「財宝は山陽周辺地域の神社仏閣……いわゆるパワースポットに設置されています。そこから同種類のオブリビオンを召喚している訳ですね」
　時間経過で勝手に喚び出される。
　自分の手を掛ける必要が一切ない為、姫とやらに熱心なコルテスらしい仕掛けだ。
「財宝の周囲には常に１０～２０体のオブリビオンがいますので、確実に撃破してから財宝をぶっ壊して下さい」
　数が集まったら魔空安土城に移動を開始する。
　従って、それ以上の数のオブリビオンはまず存在しない。
　また、敵の数をある程度決められるので、最初の攻撃が肝心となる。

「数が少なければ有利になりますし、逆なら厳しい戦いになりますね。兎に角、タイミングが重要ですよ……では、頑張って下さい！」
　あまり時間はないので、すぐに転送を開始するウィルバーだった。

第1章 集団戦 『万能従者型・渡来の天使』

POW   :    天使の一撃 単純で重い【天使の斧】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。 SPD   :    くるくる回る天使の輪 自身が装備する【天使の車輪】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。 WIZ   :    兄弟の危機を見過ごせない！ 自身が戦闘で瀕死になると【新たな別の渡来の天使】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。 イラスト：つばき 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　山陽地方にある神社。
　そこには、黄金の車輪に乗る、翼が生えた天使の様な者が存在した。
「ふむ、コルテスの秘宝か……全く面倒な事をしてくれる」
　木の陰より神社の様子を伺うのはマユラ・エリアル（氷刃の行方・f01439）。風貌で言えば天使達と似ているが、その性質は真逆の物だ。
　とても真面目な顔……起伏が少ない表情からか、彼女の心中は読み取り辛い。　
「サクッと破壊してしまいたい所だな。サクサクっと美味しいクッキーの様に」
　だが、唐突に真顔でそんなジョークを言い放つ。
　笑いが取れるかどうかは置いといて、中々にお茶目な性格の様で。
「……さっさと面倒事を潰してしまおうか」
　特に良いネタを思いつかなかったのか、すぐに天使達の元に向かって戦闘を開始する。

　天使の数は十数体。
「なっ……敵だって！　そんな馬鹿な、何故ここが分かったんだッ！？」
　一人の天使がマユラを発見すると、すぐに戦闘態勢を取って、鋭い斧を構える。
　彼等が辺りに展開すれば、まずは一体の天使が向かって来て。
「警戒もせずに近付いて来るとは。……不用心だな？」
　天使を無表情で見詰めていると、マユラの周囲から冷気が発生して。
　それに気付いた天使が動きを止めるが、そこはマユラの必殺圏内。
「……氷刃の名は伊達じゃないという事だ。覚悟しろ」
　右腕のガントレットの宝石が僅かに輝くと、周囲に氷の刃が浮かび上がって、一体の天使をその内側に閉じ込めてしまう。
　その数、二百本を超える途轍もない量。それがマユラの周囲を回転し始めると、まずは目の前の天使を一瞬で氷漬けにしてしまって。
　そうして、辺りに氷刃が展開されて行く。

　周囲の気温は一気に下がって、季節は冬の様に寒い。
　一体に付き十五本の氷刃が、天使達を襲って行く。斧や車輪でそれを迎撃しようとするが、全力で放たれた強力な氷属性の刃は、簡単には打ち崩せず。
　それが一撃でも身体に触れてしまえば、追撃で氷の彫像にしてしまう。
「これで一気に仕留めるとしようか……む？」
「財宝よっ！　我等が兄弟を、今すぐに喚び起こせッ！！」
　仕留め切れなかった一体の天使が氷漬けになりながらも、大きく声を上げる。
　すぐにその天使は追撃で凍り付いてしまうが、神社内から新たな天使が現れて、マユラに向かって来る。財宝が喚び出したのだろう。
「面倒だな。……まぁ、やる事は変わらないが」
　しかしマユラは至って冷静。攻撃以外にも、防御用にも氷刃を展開している。
　天使が斧を振り被って攻撃するが、それは氷刃によって容易く防がれて。続く二人目の天使の攻撃も、マユラを護るオーラ障壁によって弾かれた。
　すぐにガントレットで天使を吹き飛ばして、それらも氷刃で氷漬けにしてしまう。

「中々しぶといな……長丁場になりそうだ」
　神社内から現れた天使にも数を割いたからか、車輪の防御力が高かったからか。
　それでも幾つかの天使は氷の彫像にして、全ての個体に強い氷結のダメージを与え、飛行を封じた。

　だが、まだまだ天使達は戦闘可能な状況。一気に打ち崩せ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　別の場所から神社を見ているシェーラ・ミレディ（金と正義と・f00296）は、ダメージを受けている天使を見ながら、どうすべきかを考えている。
「また厄介なものを残してくれたなぁ」
　財宝の力は、自動で発動するという極めて厄介な物だ。
　しかも、天使達は個々の実力はそうでもないが、神社内の財宝から増援を呼ぶ。天使のユーベルコードも関係しているのだろうが、中々数が減らない。
　血濡れの財宝を破壊する為に、まずは奴等をどの様にして片付けるか。
　シェーラの導き出した答えは『数』だった。
「僕のために咲け。舞い散る花弁は諸君に捧ぐ」
　そう言うと、シェーラの後ろに現れるのは、二百を超える家事精霊……ここはメイドと言うべきか。
　耐久力は低いが、その全てが小型の戦闘用デバイスを持った掃除、と言うよりも破壊工作が得意な者達。
　幾ら相手が増援を呼ぶとは言え、この数を簡単に防ぐのはかなり厳しい。
「──さぁ、咲き誇れ」
　シェーラの言葉と共に、メイド達が天使達の元へと向かって行く。

　神社の周囲を警戒する天使達。
　何処からか現れたメイド達を見ると、すぐに迎撃を始めて。
「ど、何処から現れたお前達ッ！？」
　天使が車輪を操作してメイド達が吹き飛ばされる。非常にか弱く、簡単に倒せてしまうが……問題はその異様なまでの数だ。
　どれほど車輪が強力でも、一度動かしてしまえば無防備な身体を晒してしまう。
　それならば斧で迎撃すれば良い、と考えて。だがそれは、あまりにも危険な行為。数人のメイドが天使に詰め寄ると……。
「何を……！？」
　小型の戦闘用デバイス。それは、爆発物の事だ。
　天使は至近距離からの爆発によって、仲間を呼ぶ間もなく爆殺されてしまう。
　だが、天使達も簡単にはやられない。すぐに移動を開始して、中距離からの戦闘を始めて行った。

　現在、神社の周囲に敵は居ない。
　神社内の財宝を先に破壊してしまおうと、メイドを向かわせるが……中から車輪が現れて、精霊は吹き飛ばしてしまう。
「っ！　まだ居たのか……！」
　中から現れるのは二体の天使。
　此方にもまだメイド残っているが、彼女達だけで天使二体を正面から倒せるかどうかは、やや厳しいと言えよう。
　で、あるならば……。
「良し、僕も参戦するとしようか。覚悟は良いな？」
　複数の銃器を手にすると、メイド達も小型デバイスを構えて、天使達を睨み付ける。
　彼等を倒して、中の財宝をメイドに破壊させる……最悪、僕の手ずから銃撃で破壊すれば良い、と考えて。
　そうして、シェーラとメイド達は神社内に進攻して行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「わっ、天使さんがすっごいたくさん！」
　神社へと向かう道中、結構な量の天使を見たフィオレッタ・アネリ（春の雛鳥・f18638）は、少し驚いて歩みを止める。
　天使達はすぐにフィオレッタに気付いて、斧を構えたり、車輪を複製してばらばらに操作して動かして、一斉に向かって来る。
　しかしその動きは鈍く、既に弱っている様子で。
「んー、それだったらー……」
　ここは更に弱体化させてしまおうと、精霊魔術《クローリス》を発動して、喚び出された花精が天使達の耳元で囁いて、思考を掻き乱す。
　辺りから悲鳴が上がって、動きがかなり雑になってしまう。この状況でフィオレッタを攻撃するのは難しいだろう。

　しかし、そう簡単に倒されるほどに天使は弱くはない。
「ぐっ、落ち着け兄弟……！　冷静に術者を倒すんだっ！！」
　精神攻撃を免れた天使が車輪をフィオレッタに放って攻撃を行う。だがその攻撃も、別の精霊魔術によって防がれてしまう。
　まずは《ファヴォーニオ》。フィオレッタに纏われた風精の力が車輪の動きを封じると、それを上空へと跳ね飛ばして。
　続けて《メリアデス》。空に現れた樹精の蔦で受け止めると、その勢いのままに天使に向けて射出。念動力で軌道を修正し、強烈なカウンターで敵を吹き飛ばしてしまう。
「今の内にっ！」
　花を司るフィオレッタの神性で辺りに花を咲かせれば、その中に入った彼女の姿は消えてしまって。
　精神攻撃を免れて車輪のカウンターから逃れた天使も、何処に攻撃すれば良いのか分からずに、無防備となってしまう。

　花群の中に逃げ込んで、静かに天使達の状態を見るフィオレッタ。
「チャンスだね……花よ、森よ、風よ――春と豊穣の恵みあれ」
　彼女の神性で、花精、風精、樹精を祝福し、その力を増幅。
　辺りに暴風が巻き起こって、天使達の周囲に太い枝が現れて動きを封じてしまって、花精の囁きは更に効果範囲を広げる。
「逃げろ兄弟！　ここにいたら死ぬぞッ！！」
　一人の天使がそう言うが、周囲は蔦に囲まれて、精神攻撃で殆どが動けない状況だ。
　そうこうしている内に、暴風が近付いてきて。
「う、おおおおおッッ！！！」
　真空の渦は天使達を飲み込んでしまい、あっと言う間にバラバラに斬り裂いてしまった。

　先に進むと、先行させていた精霊竜ゼフィールが、天使を吐息の衝撃波で倒していた。
「あっ、ゼフィール。財宝は見付かった？」
　ふるふると首を横に振るゼフィール。どうやらまだ天使達が神社に居て進めないらしい。
　分かった、それじゃあ一緒に行こう！　とフィオレッタが言うと、二人は先にある神社へと進んで行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　神社一帯では戦闘が始まっており、あちらこちらで戦闘音が鳴り響く。
　それは斬撃だったり銃撃だったり、更には冷気や風圧も感じる大騒動だ。
　そんな中、神社への道を歩く愛久山・清綱（飛真蛇・f16956）は、考え込んでいて。
「血塗れの財宝……一体、何処から持ち込んだお宝なのだろうなぁ」
　ケツァルコアトルを従えていたコルテスの財宝。
　彼が奪ったとすればアステカ文明の宝か、それともマヤかサポテカか？
　果たして一体どの様な宝なのか。非常に興味深く、清綱はその事で頭が一杯な様子で、周囲の戦闘音などは気になっていない。
　だが、流石に目の前に敵が現れたら話は別だ。
「天使か、魔王に従うというのも妙な話よな」
　そうして、数体の天使達は斧を構えて清綱へと向かって来る

　清綱は既に居合の構えに入っており、後はタイミングを測るのみ。
　限界ギリギリまで引き付けて、間合いに入った瞬間に放たれるのは、超高速の抜刀。
　それは距離を無視して天使達に飛来し、彼等を容易にバラバラにしてしまって。
「天使らしく愚直な攻め方だな。奇襲でもしてきたらどうだ？」
　清綱がそう言った瞬間、彼の斜め横の茂みから現れる新たな天使。
「お望み通りに……ッ！！」
　振り被った斧は清綱の頭を目掛けて放たれて。
　その攻撃は清綱を捉えたと思われたが、斧は空を切って地面に当たって、ズガァッ、と音を立てて破壊してしまう。
　清綱の勘は凄まじく、死角からの攻撃をバックステップでいとも容易く躱してしまった。
　消えた清綱を探して右左と顔を動かすが、見当たらず。　
「残念、後ろだ」
　その声を聞いて天使は振り向こうとするが、それよりも速く清綱の居合がその首を斬り裂いており、それは静かにポトンっと地面に落ちた。

　道中の天使を全て屠って神社の前まで来ると、そこはどうやら裏口の様で。
「ふむ、敵の気配は感じないな」
　中に侵入すれば、すぐに目に入る黄金の輝き。
　非常に大きな……大きな仏像だ。
「これは予想外、だな……しかし、なんと巨大な」
　外に置いたら観光名所になるのではないか、と思われる程に巨大な仏像。
　何故に仏像なのだろう、と考えるが、深くは気にしない方が良いのだろう。
　先ほど様に空間を斬り続ければ壊れるか？　と考えて、刀を握って。
　不意に、カツカツと高く聞こえる音。
「……む？　これは足音……敵意は感じないな、味方か」
　どうやら他の味方も天使達を倒して、神社内へと向かって来た様だ。これならば全員の総攻撃で破壊できるだろう。
　清綱は場所を移動して、味方が来るのを待つのだった。


●仏像の破壊
　程なくして財宝である黄金仏像は破壊され、天使達が現れる事はなくなった。
　亜空安土城による増援は大きく減って、此方側に大きく戦況は傾いただろう。

　戦争も終わりが近い。
　もう少しで勝利を掴める、頑張って走り抜けよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月19日