エンパイアウォー⑱~自在なる毘沙門刀
●天地人
白の草花が風に揺れる。天は突き抜ける程の蒼穹。白亜の草原、その中で佇む存在がいた。
「車懸りの陣が押されているとはな……流石は信玄を阻んだ者達だ」
全ての見通すような、深い海のような碧眼を眼前に向け、自身が敷いた陣が押されていることを感じ取った魔軍将―――上杉謙信は、周囲に散開する刀を翻す。
「信長たちは私達を予知する存在を知らぬ。安倍晴明でさえも、あの儀式を知らぬ」
ならば、と。
転移によって現れるだろう猟兵を待ち構えながら、白と黒、その対の剣を握り締めた。
「彼らは……私が食い止めるのが道理というものだ」
その覇気は、相対する猟兵を竦ませるほどのものだ。
「さあ来い、猟兵。私の名は上杉謙信。人軍一体……そして万物を斬り裂く12の刀、毘沙門刀にてお相手致そう」
●軍神の刃を超えろ
「まさか、俺たちグリモア猟兵の予知を……いや、それだけじゃない。信玄公復活を予知した【Q】を知ってるなんてな」
青年姿のアイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)が、そう呟いた。
本来、知ることのできないグリモアの予知を、そしてグリモア猟兵たちの儀式、【Q】を知っている。それがどれほど危険なことか。アインは杖を強く握り締めた。
「魔軍将にして軍神、上杉謙信は先制攻撃能力を持たない。でも、それを補うほどの力を持っている。毘沙門刀……あらゆる属性を持つ変幻自在の刀だ」
水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇……そして両手に構える謎の刀『アンヘルブラック』、『ディアブロホワイト』の合計12の属性で猟兵を翻弄する。相手に応じた属性に切り替えて刀を使うことで、猟兵たちを圧倒するだろう。
「軍を使役する天才、ってだけじゃない。刀にどう対処して戦うのかが重要になる。危険な相手だけど、皆ならやれるって信じてるからな」
アインは手に持った杖を掲げ、集った猟兵たちの転移を開始する。
「俺たちの存在を知ってるだけでも、十分危険な存在だ。皆、頼んだぞ!」
転移の輝きが猟兵たちを包み込む。転移先は関ヶ原、車懸りの陣を越えた先。白亜の草原の中に佇む上杉謙信の目の前だ。
夕陽
先制攻撃はないけど、属性を自在に操る軍神……魔術師……?千里眼みたいな力持ってそうですね。
OPをご覧頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして、すでにお会いしている方はこんにちはこんばんは、夕陽です。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
執筆については早め早めの執筆を心がける予定です。(目標の完結日時は19日。かなりのスピード執筆になります)
採用できる人数は絞られます。先着順となりますので、宜しくお願い致します。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
第1章 ボス戦
『軍神『上杉謙信』』
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POW : 毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
イラスト:色
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
遠呂智・景明
越後の龍、上杉謙信
相手させてもらおうか
その刀の数は厄介窮まりない
全部をまともに受けりゃ追い込まれるのは目に見えてる
で、あるならば
甲斐の虎にゃあ及ばねぇが魅せてやるよ
風林火山!
風の如く
時間をかけりゃジリ貧だ。腰から二刀を抜きつつ、迅速に攻め込む
林の如く
敵の一撃一撃を見切りいなし防ぐ
致命の一撃は躱す
刀の特性が分かりゃあ、反目し合う刀同士をぶつけることも出来ようさ
火の如く
いつまでも守ってばかりじゃらちがあかねぇ
慣れてきた敵の動きにあわせて反撃を
二刀による苛烈な攻めで敵の刀を削ぎ落とす
山の如く
あとは俺と謙信公の根比べ
手をとめず足をとめず思考を止めず
最後の最後、隙を見せたらそこを突く
喰らえや剣刃一閃!!
●烈火猛攻
「……来たか」
謙信の前に転移の輝きが満ちる。紅の眼を伏せ、12刀を構える魔軍将をじっと見つめたのは、遠呂智・景明(いつか明けの景色を望むために・f00220)だ。
「越後の龍、上杉謙信。相手させてもらおうか」
黒く染った刀『黒鉄』と『懐刀 棗』を抜き、自身に相対する猟兵に、謙信はその碧眼を細める。
「この気配……まるで刃そのもの」
その本質を、謙信は見事言い当てた。良いだろう、と謙信もまた刀を構える。黒と白の刀が日の光によって鈍く輝く。
そして、景明は駆けた。
「甲斐の虎にゃあ及ばねぇが魅せてやるよ……風林火山!」
「―――何?」
恐るべき脚力、その強靭なる一歩は、たった1秒で謙信の前へと接近するほどの疾さだ。
疾風の一撃。だが、謙信はそれを顔色一つ変えることなく防ぐ。飛来したのは風の刀。圧倒的な疾さそのものに対応する迅風の毘沙門刀がその攻撃をいなした。
連撃、刃の交差。あらゆる属性を内包する刀が景明に襲いかかる。右から襲いかかる刃を弾き、頭上から振り下ろされた刀を撫でるように逸らす。二撃異なる速さで襲いかかる毘沙門刀は二刀で防御、虚空に刻まれる剣閃が拮抗する。
「なるほど、信玄の真似事か。面白い太刀筋だ」
「言っただろ、甲斐の虎にゃあ及ばねぇ……!だが俺には俺のやり方ってもんがある!」
弾く。防ぐ。前方方向から襲いかかる刀の猛攻を、二刀を以て斬り伏せる。
(連撃の合間、隙があるのは―――)
3つの毘沙門刀が襲いかかる。連撃の後―――
「ここだッ!!」
連撃のほんの僅かな隙だ。弾いた刃が周囲に散る。二刀を構え、その空いた空間に黒鉄の一撃を叩き込んだ。
「―――無駄だ」
謙信の白刀。来るはずのない攻撃が“そこに来た”。
打ち払われた攻撃の後、飛来した刀によって景明の身体が微塵に斬り裂かれる。
(なんだ、今の……!!)
地面へと倒れ伏した景明。
あり得ないものを見た。
絶対に防がれない、と思っていたその隙、その空間に、『ディアブロホワイト』の刃が“現れた”のだから。
「私の毘沙門刀は12の刃にして無敵の刀。いかに連撃で攻めようと―――」
言葉を続けようとした謙信の目が見開かれる。肩口に痛みが走った。いつの間にか、服が斬り裂かれて血が滲んでいる。
「―――油断は禁物、というわけか」
転移の輝きに包まれ消え去った猟兵に、謙信は微かに眉を顰めたのだった。
苦戦
🔵🔴🔴
上泉・祢々
12刀……確かに凄い数ですし対処も難しそうですね
なら、先手必勝といきましょう
相手の死角となる位置から陣を抜け
先制の奇襲を仕掛けましょう
狙うはその首、背後から貫手で貫いてさしあげましょう
とはいえそう簡単にいくとも思っていません
これは挨拶代りですから
迎撃される気配を感じ取ったら即座に回避
ですが蹴りの一つくらいは入れておきたいですね
防がれたとしてそのまま距離は保ち
接近戦を継続しましょう
これなら飛ぶ刀の遠距離攻撃のアドバンテージは半減
迫る刀は手刀、拳、膝、足刀
多少の傷も厭わずこちらの総てを動員して防ぎます
相手の隙が生まれるまで
刹那の隙を見逃さず
その腹部へ鎧通しの掌打をたたき込みます
いただきましたッ!!
●“刀”
肩に刻まれた傷に手を当てた謙信は周囲に目を凝らす。草が揺れ、さざなみの音のように風が凪ぐ。
―――いや。
草原を凪ぐ風の中に、何か違う音が混じっている……!
謙信の反応速度は凄まじかった。草を割って接近してきた猟兵の一人の手刀を毘沙門刀の一つで捌き、現れた猟兵へカウンターを行う。
だが、その一撃があり得ないことに片足の蹴りによって弾かれた。
驚愕に目を見開く謙信はしかし、刀が弾かれたことを知って連撃を継続した。
火の刀がその手によっていなされる。水の刀が拳によって弾かれた。土の刀は膝で受け止められ、樹も風も光も氷もその連撃に対応し、強靭な四肢によってはたき落とされた。
「身体全てが刃のようだな……!!」
上泉・祢々(百の華を舞い散らす乙女・f17603)の流派、百華流をそう言い表した謙信は、両刀を振り上げる。
刀をいくらその四肢で防いだとて、その属性の余波を受ける。四肢は焼かれ、氷結し、毒に蝕まれ、光に焼かれ……それでも祢々の表情は得意気に勝ち誇っている。
振り下ろされた白と黒の剣。片方を躱し、片方を徒手空拳にて受け止めた。黒の刀に触れたことにより、祢々の身体からあらゆる傷が浮き彫りになり―――そして鮮血が爆ぜる。
「愚かなり!我が毘沙門刀は―――……!!」
血に塗れた祢々の表情は、それでも揺らがない。
刀を足で組み伏せ、そして謙信の懐へと。
立つ。
「いただきましたッ!!」
刃の如き四肢。その掌底が謙信の鎧へと当てられる。迸ったのは渦状に収束した力の流れ。
裂波と衝撃波が謙信の身体を内部から破壊する。
「……ご……っ!!」
口から血を吐いた謙信。自分の必殺の一撃が通ったことを確認し、祢々はその場に倒れ伏した。転移の輝きに包まれながら、小さく呟く。
「やって……やりましたよ……越後の龍……」
片膝をついた謙信のダメージは相当なものだ。確かな手応えを感じながら、百華流の少女は次に現れる猟兵に場を譲ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
多くを語る余裕もないし、向こうも話好きには見えない。
「アンタを倒しに来た」と一言あれば十分かな。
まずは竜の肺腑から吐く暴風と衝撃波で軽く牽制して、そのまま一直線に突っ込むよ。
宙に浮く十本の刀は高い視力で軌道を見切り、避けられるものは避けて、残りは斧と外骨格で受けて叩き落す。
最悪、耐性を持つ属性の刀は体の丈夫さに任せてもいいかな。
両手に持つ二刀は勘だけど受けたら不味い気がするから、
二刀の間合いに入る直前に斧を投擲して相手に二刀で受けさせるよ。
その隙に尻尾の発電器官を使って、十二本の中に無い雷属性の電撃を撃ち込む。
電撃で一瞬でも動きが止まったら、【崩天地顎】で掴んで思いっきり地面に叩きつけるよ。
ジュリア・ホワイト
軍神とはね
武人なら、相手にとって不足無しとでも言うところかな
「でもボクは一介のヒーローなのでね、こう言おう…"キミを止めに来た!"」
敵の攻撃手段は毘沙門刀に依存か
なら、そこに付け込ませてもらうよ
【安全第一!線の内側にお下がり下さい!】でルールを押し付ける
内容は「刀の使用を禁ずる」だ
これでもすぐ対応して攻撃してくる可能性は大いにあるけど
他の攻撃手段に切り換える隙が少しでもあれば十分だ
「ボクの銃器の一斉射を叩き込むのはさ!沢山武器を用意するなら、種類をばらけさせるべきだったね!」
こっちの攻撃の主力は出が早いNo.4や放水銃かな
【アドリブ歓迎】
大宝寺・朱毘
アドリブ共闘歓迎
「朱毘の『毘』って、毘沙門の毘なんだよな……だから何ってこともねーけど」
別格の敵と戦うという状況で猟兵たちが無傷で戦えるということはないと判断。
ゆえに【シンフォニック・キュア】を【歌唱】を利して持続させ、延々と周囲の味方を回復させるという戦法を採る。
歌詞は「未来を勝ち取り、自由を勝ち取るために戦うのだ!」といった内容。過去に生きるオブリビオン(謙信)に刺さらないように。
自身に攻撃が向かってきた場合、攻撃の軌道を【見切り】つつ、【衝撃波】で相殺……は無理でも、勢いを弱めたり軌道をずらすくらいのことはできるだろう、と目論見。多少の怪我は上等、シンフォニック・キュアで自力で治す。
●並び立つ挑戦者
ひび割れた鎧を手で押さえ、謙信はゆっくりと立ち上がる。身体の中そのものを攻撃されたような鈍痛と、口の中に残る血の味に顔を顰めた。
「……次の猟兵共か」
足に再び力を込め、現れた猟兵たちを睥睨する。
「軍神とはね……武人なら、相手にとって不足無しとでも言うところかな」
帽子のつばに手を当てながら、ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は毅然として立つ男にそう言った。
ジュリアの言葉に、謙信が不敵な笑みを浮かべた。
「お前達にとって、私と死合うことはただの使命だろう。無駄な言葉を紡ぐ必要などない。これは―――」
「ああ、そうだと思った。多くを語る余裕もこっちにはないし、そっちも話好きには見えないからね」
声が聞こえた方向に視線を向ける。四肢が様々な生き物の部位でできた猟兵、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)だった。謙信は一度目を瞑る。
二人の猟兵の言葉が、揃った。
「アンタを倒しに来た」
「倒しに来た……ボクもそう言いたいところだけど、一介のヒーローなんでね。こう言おう……“キミを止めに来た!”」
しばしの沈黙の後、謙信の周囲を廻る毘沙門刀がぎらりと輝く。
「―――毘沙門天の加護ぞ在れ。往くぞ、猟兵」
ペトの大きく身体を仰け反らせた刹那、口から迸ったのは竜の吐息に似た咆哮だ。謙信に向かって放たれた衝撃波と暴風は、指向性を伴って大地を抉り取っていく。
「風の毘沙門刀よ!」
謙信の眼前に移動したのは、風を纏った毘沙門刀。襲い来る衝撃波と暴風が、その刃の間に形成された何かによって拡散、消失する。
「風と衝撃波など、真空を造りだせばどうとでもなる……!!」
「やっぱり余裕はなさそうだねぇ……!!」
暴風が消え去った瞬間、空間に甲高い音が鳴り響いた。ジュリアが持っていたホイッスルが鳴り響いたのだ。
自分の身体に纏わりついた“罰則のユーベルコード”に、謙信の表情が曇る。
「キミの攻撃手段は毘沙門刀に依存しすぎている。なら、そこに付け込ませてもらうよ!これより、『刀の使用を禁ずる』!」
謙信の周囲に集っていた刀の軌道が鈍った。目を細め、その理不尽なルールを化した猟兵を睨みつける。
「……やるな。我が刀を封じに来たか」
「もし刀を使ったら、ボクのユーベルコードがキミに牙を剥く!隙ありだ、行くよ!」
ジュリアの持つ銃器が掲げられた。『No.4』、そして『高圧放水銃』の銃口が謙信へと向けられる。
「甘いな、猟兵。今から使用が禁じられるならば……“あらかじめ創られていた”ものを使うだけだ」
「―――!!」
「そこは、“私が先程別の猟兵と戦った場所だ”」
瞬いたのは、斬撃。ジュリアの胴がずぱり、と断ち切られ鮮血が迸る。呆然とした表情で膝をついた猟兵に、謙信はただ無表情だった。
「なん……!?」
「私の刀はすでにその場所を斬っている。すでに“起こったことだ”」
『アンヘルブラック』の刀身が鈍く光り輝いていた。その力を以てジュリアを斬り裂いたのだ。
「あたしを無視するなんてほんと余裕だね……!!」
そんな謙信の不意をつくように、ペトが謙信へと迫る。こちらへと神速の速さで肉薄する猟兵に向けて、謙信は毘沙門刀を解放した。
「!!?刀を使うのか!?」
「『刀の使用を禁ずる』。良い規則の宣告だ。だが、私にとってそのルールは曖昧となる。刀で“斬ること”を禁ずるのか、それとも刀の能力を使用することを禁ずるのか。はたまた刀を“操ること”を禁ずるのか。より曖昧なルールでは私に降りかかる痛みも軽微だろう」
連続で飛来する毘沙門刀を、ペトは常人を超えた動体視力で回避し続ける。だが、火が、水が、氷が、光が、毒が、属性の余波によってペトの身体を灼き、凍てつかせ、蝕み続ける。
二人の猟兵の体力は、着実に奪われている。謙信はその姿を冷徹な目で見つめていた。
が。
静寂の帳が落ちる関ヶ原に、不可思議な音色が響き渡ったのを謙信は聞き逃さなかった。
それは、猟兵たちを称える唄。未来を掴み、自由を勝ち取るために勝利を目指す。それは、オブリビオンとは相反した理想を刻む勇気のメロディーだ。
ばっ、と後ろを振り向いた謙信は、その唄を奏でる猟兵を視認する。
南蛮渡来だろうギターを打ち鳴らし、堂々とした態度で演奏を続けているのは、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)だった。
(朱毘の『毘』って、毘沙門の毘なんだよな……だから何ってこともねーけど)
地面へと片膝をつく2人の猟兵を見ながら、朱毘はギターを引き続けた。周囲に散開する光の波動は、傷ついた猟兵たちを癒やす清浄の光だ。
「渡来の音色……他者の傷を癒やす音か……!!そうはさせん!風と土の毘沙門刀よ、砂嵐の轟音で音色を掻き消せ!!」
翻った2属性の毘沙門刀が、大気を動かし、巨大な砂嵐を形成する。
「こんなもので……あたしの音楽を消せると思ったら大間違いだ!!」
形成された砂嵐によって身を削られながらも、朱毘はその音色を止めることはしない。治癒の音色で自身を癒やしながら、砂嵐の先に見える謙信から目を離さなかった。
「―――!!」
謙信に飛んできたのはペトの斧。自身で形成した砂嵐によって視界が悪くなっているところから突然不意をついて飛来した大斧を二刀で弾いた。
「言ったよね、アンタを倒す、って……!!」
ばちり、と弾ける音。砂嵐を掻い潜り、謙信の懐に入り込んだペトが尻尾の発電器官によって雷撃を生み出す。弾け飛ぶ雷電に身を焼かれながらも、毘沙門刀で対処しようとした謙信の頭がペトの片腕に掴まれた……!
「く……らえッ!!!」
そのまま、力任せで地面へと叩きつける。超高威力の一撃は謙信の真下の地面を陥没させるだけではない。
「見えた……!!一斉掃射!!」
ペトがすぐに身を引いた。横たわる謙信に飛来するのは、数多の重火器。爆炎が砂嵐を裂き、視界が良好になった後。
「ぐ……っ……まだだ……私は……まだ……!!」
執念に満ちた双眸を猟兵たちに向ける。全身から血を流す謙信の姿が顕になったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
オブシダン・ソード
【狐剣】
あんなに剣を侍らせるのは浮気じゃないのかな
どう思ういすゞ?
器物の剣を手に、いすゞと共に前進
敵の巻き起こす天変地異にはユーベルコードで対抗しよう
炎の嵐も氷の竜巻も、発生源が刀であるならそれに剣を打ち込んで止めてみせる
届かないものはいすゞの符に任せる
一人じゃ押し負けてしまいそうだけど、二人ならどうだろうね?
間合いまで近付いたらそのまま剣で挑んであげる
多分ふつーに負けそうだけどね、まぁそれで良いんだ。所詮僕は、使い手として二流
器物を後ろの彼女の手の内へ
――でもねえ。剣としては、君の12振りにも勝てると思うんだ
後は任せたよ、相棒
いざ、今度は軍神っていう神殺しだ
その首貰った、ってやつさ
小日向・いすゞ
【狐剣】
陣から抜ける際
他の猟兵の戦いが見れるならば確り視ておくっス
相剋符の成功率が上がる筈っスから
え
そういうのはちょっとわかんないっスけれど
はーれむってヤツっスか?
全ての事象は陰陽五行の均衡っス
水には土を、光には闇を、土には木を――
属性攻撃は相剋の力で相殺しつつ進むっス!
相反する性質を制するのは陰陽師の得意技っスよ
符を撒きつつも
彼が押し負ければ、『器物』と化した彼を握って飛び込む
はぁいはい、任されたっスよ!
どうも、センセ
こういう時は名乗るのが筋っスよね
あっしは小日向の娘、いすゞっス
こっちはあっしの相棒の剣!
あっしは武器を受けるが得意で
相棒は斬るのが得意なんスよ
お命頂戴ってやつっスよォ!
●2つの剣
姿を消していく猟兵たち。吐血しながらも背筋を伸ばし、次に来るであろう猟兵を待ち構える謙信。
その様子を少し離れた場所で見ていた二つの影が、草を掻き分けながら謙信の眼前に立ちふさがる。
「……次の、刺客か」
その言葉に、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は深く被ったフードから顕になっている口元を綻ばせる。
「あんなに剣を侍らせるのは浮気じゃないのかな。どう思ういすゞ?」
そう訊かれた片割れの少女が、はて、と首をかしげる。
「え……そういうのはちょっとわかんないっスけれどはーれむってヤツっスか?」
小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)はヤドリガミの貞操観念を知らない。オブシダンが言う通り、剣のヤドリガミからすればそういう風に見えるのかもしれない。
「全く……猟兵というものは……」
ふぅ、と深く息を吐いた謙信が、二振りの刀と周囲に舞う刀、その全てを励起させる。震えるような殺気と威圧感は、満身創痍とは思えない程に強烈だ。
「無駄話をしている場合ではないようだね。それじゃ、行くとしようか」
「了解っス!手加減なんてしないっスよー!」
地を蹴ったのはオブシダンだ。謙信に肉薄すると、『黒耀石の剣』を振り下ろす。ユーベルコードの力が宿った自分自身は、謙信の力を封じ込める力を持つ神秘の剣となっていた。
だが、それは謙信も想定済だ。
「火の毘沙門刀、剣を灼き尽くせ……!」
武器を受けたのは黒の刀。そしてオブシダンの眼前に飛来したのは、火炎を纏う火の毘沙門刀だ。それはあらゆる熱量を吸収し、全てを薙ぎ払う天変地異へと形を変える。
轟!と横向きに生み出されたのは炎熱の嵐だ。関ヶ原の草花を焼き尽くす超熱の嵐が大地を抉り、2人の猟兵を飲み込んでいく。
「……ほう」
嵐の中、いすゞが放った符によって炎を遮断する結界が張られていた。その精度は素晴らしいものだが……。
「……くっ……これは、ちょっときついかな」
謙信と刃を交えているオブシダンには、その符の力は弱々しい。嫌な臭気が立ち込め、全身を焼かれていく猟兵に謙信は無言を貫いていた。
「私の12の刀に勝とうと刃を交え、無事である者はいなかった。それはお前も同じだ、剣の化身よ」
「はは……まあ、勝てるだなんて思ってないさ。ふつーに負ける、そう思ってたけどね」
にやり、と口元を釣り上げる。
「それで良いんだ。所詮僕は、“使い手”として二流だからね」
その言葉に含まれた意味に、謙信の眉がぴくりと動いた。
「―――でもねえ。“剣”としては、君の12振りにも勝てると思うんだ」
存在が消失していく。そのまま光となって消え失せた猟兵、その後ろから、飛び出してきた少女に、謙信は飛び退いた。
火に焼かれながらも、黒色に輝く刀身。それを握ったいすゞが、にっ、と笑う。
―――後は任せたよ、相棒。いざ―――
「はぁいはい、任されたっスよ!」
炎熱の嵐が、オブシダン・ソードの一振りによって真一文字に斬り裂かれた。沈静化した災禍。謙信は再び二刀を構え、眼前の少女へと向き直る。
「どうも、センセ。こういう時は名乗るのが筋っスよね」
ちゃきり、と構えるのは黒耀石の剣。長い前髪から除く眼が、謙信を静かに射抜く。
「あっしは小日向の娘、いすゞっス。そしてこっちはあっしの相棒の剣。相棒が言ってた通り、いざ―――」
謙信はその身を以て体験しただろう。覚悟と信頼、そして、絶対に葬るという“二つの剣”が、自身に襲いかかってくる、その恐怖を。
軍神を殺す―――神殺しの業を。
柔らかな、それでいて鋭い。中空に舞った剣閃は、謙信の12の刀を超え、その首を捉える。
両断できなかったのは、謙信がその攻撃を視ることはできたが、“見切る”ことができなかったからだろう。
首を斬り裂かれ、骸の海に還るその最中。漏れ出るような吐息と共に謙信が小さく呟いた。
―――見事。
成功
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