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エンパイアウォー⑱~浮沈の軍神

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #上杉謙信

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●軍神、未だ落ちず
「サムライエンパイアでの戦いも、少しずつだけど信長に近づけている感じかしら? 魔軍将の中には、かなりの痛手を負ってるのもいるみたいだしね」
 いかに強力なオブリビオンといえど、復活する傍から叩き潰されれば蘇ることもできない。だが、中にはしぶとく抵抗を続けている者もいると、神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)はグリモアベースに集まった猟兵達に告げた。
「今回、あなた達に向かって欲しいのは、魔軍将の一人、上杉謙信のところよ。理不尽な先制攻撃はして来ないけど、軍神と呼ばれるだけあって、なかなかのしぶとさを誇っているわ」
 上杉謙信は先制攻撃能力を持たない代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいる。これを突破しない限り、彼に勝負を仕掛けることは不可能。故に、戦力を大幅に分散され、攻略が手間取ってしまっている。
「車懸かりの陣の方は、他の猟兵達が、なんとか崩してくれているわ。私もドサクサに紛れて、上様と一緒に兵士をブッ飛ばして来たしね」
 だが、肝心の謙信は未だ健在のため、こちらをなんとかしなければならない。先制攻撃を仕掛けて来ないとはいえ、軍神の異名を持つ戦国武将。その戦闘力は極めて高く、単純に正面からぶつかるだけでは猟兵の方が不利だ。
 力技で仕掛ければ、相手は合計で十二本もある毘沙門刀を使い、手数を使って押し切ろうとして来る。速さで勝負すれば、謙信自身も高速で移動を開始する上に、こちらの弱点に合わせた刀で的確に泣き所を突いて来る。ならば、知略を用いて攻略しようとすれば、人間の知恵など何の役にも立たない程に、凄まじい天変地異を引き起こして、全てを飲み込もうとするので、やってられない。
「はっきり言って、単純な真っ向勝負じゃ勝ち目はないわ。周りの兵士は他の猟兵達で押さえているから、その間に、なんとか上手いこと策を考えて、謙信を倒してちょうだい」
 力量も、使用するユーベルコードの相性も、単純に考えれば全て相手の方が各上である。謙信を倒したければ、それらを覆すような作戦や、能力の種類に捉われない柔軟かつ意外性のある戦い方が必要だ。
 先手で攻撃されないとはいえ、くれぐれも油断はしないように。最後に、そう言って念を押し、鈴音は猟兵達をサムライエンパイアへと転送した。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。

 謙信そのものも、かなりの強敵です。
 単純な真っ向勝負では、先制攻撃がなくとも力量差で押し切られてしまう可能性が高いので、それらも踏まえて作戦、共闘などを考えて下さい。
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第1章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

霧島・絶奈
◆心情
部下だけでなく、指揮官も車懸かりですか
しかもその相手は有能な指揮官なのですから…
反則も良い所です

◆行動
『暗キ獣』を使用し軍勢を展開
部下を生かして活かす貴方と、手勢の消耗すら厭わずに戦う私は対極に位置しているのでしょう
それは限られた戦力を持つ者と、消耗を厭わぬ程の補充力を持つ者の差異でしょう

私は【目立たない】事を利用し、軍勢に紛れて行動
【罠使い】の力を活かして罠を設置
戦闘しつつ罠に誘い込み追撃

ある程度設置が進んだら接近
攻撃は【二回攻撃】する【範囲攻撃】で【マヒ攻撃】

軍勢と罠と私…
この連携を以て【精神攻撃】となし【恐怖を与える】

負傷は『暗キ獣』の力と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復



●毘沙門天の怒り
 軍神、上杉謙信。『車懸かりの陣』により圧倒的なしぶとさを誇る彼は、一見して他の魔軍将と比べ、タフネス以外に取り得がないように思われがちだ。
 だが、先手を取る術こそ持ち合わせていないものの、魔軍将に名を連ねるだけあり、その実力は折り紙つき。現に、彼は合計で十二本もの毘沙門刀を操り、単独で『車懸かりの陣』を再現することもできる。軍神の二つ名は、伊達ではないのだ。
 そんな軍神へ、『車懸かりの陣』を抜けて最初に肉薄したのは霧島・絶奈(暗き獣・f20096)だった。
(「部下だけでなく、指揮官も車懸かりですか。しかも、その相手は有能な指揮官なのですから……」)
 正直、反則も良いところだと苦笑した。単独で車懸かりの陣を発動させられるにも関わらず、敢えて兵力を投入して二重の防壁を作り出す。一見、慎重過ぎるとも思える布陣だが、それは即ち目の前の男が、決して己の力量を過信して道を踏み外すような真似はしない相手であるということを物語っている。
「私の車掛かりの陣を抜けて来たか。その手並みは、称賛に値すると言えるだろうな」
 両手に二本、周囲に十本、合わせて十二本の毘沙門刀を携えて、謙信は絶奈を正面に見据えながら告げた。
 その眼光、その間合いには、一瞬の隙も感じられない。先手で仕掛けて来ることはないにしても、迂闊に懐へ飛び込もうとすれば後の先を取られ、十二本の刀で滅多斬りにされるだけだろう。
「なるほど、確かにあなたは強い。ですが、数を揃えることができるのは、自分だけだと思わないことです」
 相手の手数が平時でこちらを上回るのであれば、自分はその先を行けば良い。そう判断し、絶奈はいつもの如く、暗き獣を呼び出す呪文を紡ぎ。
「闇黒の太陽の仔、叡智と狡知を併せ持つ者。私を堕落させし内なる衝動にして私の本質。嗚呼……、此の身を焦がす憎悪でさえ『愛おしい』!」
 己の姿を異形の神へと変えながら、周囲に呼び出したのは無数の屍兵と屍獣。圧倒的な数の暴力は、彼女が今までの戦いで相対した相手を、悉く恐怖のどん底へ陥れて来た存在だ。
「部下を生かして活かす貴方と、手勢の消耗すら厭わずに戦う私は対極に位置しているのでしょう。それは限られた戦力を持つ者と、消耗を厭わぬ程の補充力を持つ者の差異でしょう」
 守りに特化した相手を倒すには、相手の3倍の戦力を要するという。ならば、ほぼ無尽蔵といっても良い戦力をぶつければ、相手は守りを捨てて攻めに出るのではないかというのが絶奈の狙いだ。
「面妖な技を使う女子よ。だが、有象無象の魑魅魍魎を集めたところで、私に届かせることができるとは思わぬことだ」
 もっとも、それだけの軍勢に囲まれても、謙信は何ら動じる様子を見せなかった。そればかりか、この程度の相手は動かずとも倒せると、襲い掛かる屍獣や屍兵を、近づく者から次々と毘沙門刀で斬り伏せて行った。
(「……同じ場所から動かない? こちらの出方を見ているのでしょうか?」)
 屍兵の集団に紛れて姿を隠しつつ、絶奈は謙信の様子を窺った。挑発に乗って前に出てくればと思っていたが、しかし謙信はその場から一歩も動かない。ともすれば防戦一方に思われるかもしれないが、個々の力量では謙信の方が屍獣や屍兵よりも上なので、殆ど意にも介していないようだ。
(「しかし、このまま戦い続ければ、必ず疲弊するはず。そこを狙って一気に叩けば……」)
 いかに強力なオブリビオンとはいえ、体力は有限。無限の増援を差し向ければ、いずれは諦めて本体である自分を攻撃しに来るはず。そう、絶奈が思った時だった。
「……なっ!?」
 次の瞬間、突如として巻き起こった氷の竜巻が、屍獣の群れを飲み込んで粉砕した。慌てて穴を埋めるよう兵力の補充をする絶奈だったが、今度は大地が大きく裂けたかと思うと、その中から猛毒を含んだ水が噴き出し、屍兵の身体を瞬く間に溶解させてしまった。
「たった一人の将だけを相手に数の暴力を差し向けるのは、確かに有効な策かもしれぬ。だが、私の毘沙門刀は、時に天変地異をも引き起こす。どれだけの兵を揃えようと、大自然の力の前には、悉く無力だと知るがいい」
 燃える旋風、氷の津波、そして大地を砕きながら隆起する巨大な樹木。もはや、その力は謙信自身にも止められない。半ば暴走に近い形だったが、それ故に絶奈の率いる軍勢は、彼女の仕掛けた罠や、果ては彼女自身さえも飲み込まれる形で、次々に戦場の藻屑となって消えて行く。
 圧倒的な数の集団で相手を蹂躙する。確かに、集団同士の混戦や、もしくは1対1にて強さを発揮する敵が相手であれば、効果的な策だった。
 だが、謙信は時に、1対多数でも渡り合えるだけの実力を持った強敵だ。そして彼自身、実際に複数の敵を同時に壊滅させるだけの、凄まじい切り札を持っていた。
「くっ……ですが、ここまで来て、引き下がるわけには……」
 幸い、異端の神としての姿になっていたことで、絶奈自身だけは天変地異による攻撃のダメージを軽減することはできていた。
 こうなれば、後は自分から仕掛けるのみ。抵抗虚しく散って行く屍の軍勢を盾にして、絶奈は一気に距離を詰めた。そのまま、手にした槍と剣で斬りかかるが、それは謙信とて気が付いていた。
「ほぅ……この私に手傷を負わせるとは、少しはできるようだな」
 まずは一撃、謙信の身体に黒き刃が突き刺さる。身を隠しながら近づいたことで、奇襲に成功した結果だ。しかし……。
「だが、そこまでだ。私を恐れさせるには、少しばかり力が足りなかったようだな」
 続く二発目を繰り出そうとしたところで、謙信の手にしていた白と黒の刀が、それぞれに絶奈の身体を貫いていた。
 当初に予定していた屍の軍勢との連携が崩壊してしまった時点で、絶奈の攻撃は予定していた半分の効果しか発揮できなかった。時間が経てば、それだけ謙信を消耗させられるかもしれないが、少なくとも今の戦いでは、これが彼女の限界だった。
「できることなら、貴公とは互いに将として戦いたかったぞ。貴公が戦にて、将としてどのような兵法を用いるのか……それを知ることができぬのは、残念だ」
 腕に軽い痺れを覚えつつも、謙信は絶奈の身体から刃を抜いて放り捨てる。敢えて止めを刺さなかったのは、彼の言葉通り、絶奈との再戦を望んでいるからだろうか。
 軍神、上杉謙信。時に天変地異さえも操る彼の力は、猟兵達の想像を、遥かに超えて強大だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヒルデガルト・アオスライセン
闇です
12よりは1の方が御しやすいと考えた為です

光と闇は表裏一体

回転轢き殺しと闇放射を
オーラ防御を黒く濁った泥炭の形態にして
態勢を低く保ち、盾捌きで受け流し
一合の際に、全ての刀に闇のオーラを付着させマーキング

エングレイブエッジで大地に潜り、地中から属性攻撃の火柱で攻撃します
狙いは先程のマーキング本数が最も多い座標
地中を徐々に深く、曲がりくねる軌道で動き回ります
娘一人が通れる閉所。地上から放射を突き立てられてもいいように泥壁と剣を上にかざして移動します

刀の挙動を注意深く感知し
闇以外の刀に持ち替え、何らかの対処をしようとした隙を狙って
身代わりを謙信に飛び掛からせて囮に、背後から魂砕き

※諸々ご自由に



●木気、土気を穿ち、火気、木気に克つ
 浮沈の軍神、上杉謙信。先手を取れないにも関わらず圧倒的な力量を誇る彼を前に、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は、敢えて単一の属性を纏いながら前に出た。
「む……その全身から溢れ出る深淵の気……。物の怪か、あるいは悪鬼羅刹の力を使う者か?」
 その外見とは正反対の暗く淀んだ気を感じ、謙信がヒルデガルドに尋ねた。
「闇です。ただ、十二本を同時に相手するよりは、一本の方が御しやすいと考えただけですわ」
 自分の本質は闇などではない。本来であれば、闇を祓う側の人間だ。それでも、敢えて闇を選んだ理由を見せてやろうと、ヒルデガルドはオーラを重ね、泥炭の如き形状へと変えて行く。
「その力で、私の毘沙門刀に対抗するつもりか? 随分と、己の力量に自信があるようだな」
 そんなヒルデガルドの姿を、謙信は実に冷静な表情のまま見据え、光輝く毘沙門刀を前に出した。
 闇には光を、光には闇を。謙信の力量を以てすれば、ヒルデガルドの生み出した壁など容易に斬り避ける。互いに相反する力が衝突した際、待っているのは対消滅。その場合、最後の勝者となるのは、より強い力を持っている方になるのだから。
「やはり、光で対抗して来るようですわね。ならば……!」
 姿勢を低く保った状態で敵の斬撃に備えつつ、ヒルデガルドは闇のオーラを飛散させた。案の定、飛翔する光の太刀によって闇の防壁は容易く破られてしまったが、それでも更に盾を構えることで、なんとか直撃だけは免れた。
「どうした? 闇雲に気を放ったところで、私には掠りもせぬぞ?」
「ええ、そうですわね。ですが、これで良いのですわ」
 ヒルデガルドが、にやりと笑う。先の攻撃は、相手の刀に闇の気を付着させて位置を探れるようにするためのものだ。その上で、削岩能力も兼ね備えた盾を使い、一気に地中へと潜って姿を消した。
「む……地潜りの術を使うか。見た目に反し、忍の技を会得しているのか?」
 一瞬で地に潜ったヒルデガルドを見て、謙信も考えを改めたようだ。
 ここから先は、全力で相手をしてやろうと身構える。とはいえ、肝心のヒルデガルドは土の中。これでは、いくら毘沙門刀であろうとも、そう簡単に彼女を突き刺すこともできない。
(「刀に付着させた闇のオーラは、一ヶ所に固まっていますわね。むしろ、そちらの方が好都合ですわ」)
 地中を複雑な軌道を描きつつ進み、ヒルデガルドは敵の居場所を探知した。先程、刀に闇の気を付着させたのは、これが目的だ。視界の限られる地中では、彼女自身も敵の居場所を特定することが難しいからだ。
 念のため、泥壁と剣を上にかざし、ヒルデガルドは慎重に謙信の真下を取れるよう進んで行った。この調子なら、相手はこちらの居場所を察知することもできず、そのまま真下から貫かれるだろう。そう思い、更に進もうとしたところで、彼女は何かが自分の足に絡みついていることに気が付いた。
「これは……木の根!?」
 なんと、突如として土中に出現した根が、まるで意思を持っているかの如く、彼女の足に絡みついていたのだ。
「くっ……は、離しさない!!」
 慌てて剣で根を斬り払うが、その間にも新たな根が、彼女の手や足、そして首にまで続々と絡みついて来る。土中であれば、反撃は受けない。闇を纏っている以上、光しか使って来ない。そう踏んでいたヒルデガルドだったが、甘かった。
 毘沙門刀を駆る上杉謙信は、相手の弱点に応じた刀を使う。では、その際に基準となる弱点とは何か。それは、相対する相手の泣き所、もしくは苦手とする戦法だ。
 属性を纏った状態で真正面から突っ込んで行けば、謙信もその属性に合わせた刀で対抗しただろう。しかし、属性を持っていない相手や、そもそも正面から来ない相手には、どうするか。
 答えは簡単。相手の最も嫌がるタイプの攻撃が可能な毘沙門刀を放射し、その力を以て相手を攻撃して来るということだ。土の中にいるということは、即ち土に対して上手を取れる刀を使えばよい。古来より、五行においても木は土を侵食し、穿つとされる。その力を以てすれば、土中の敵とて籠の鳥にできるということか。
「くぅ……で、ですが……既に、居場所は突き止めましたわ……」
 真下こそ取れていなかったが、それでもヒルデガルドは武器に炎を宿し、その力を全ての根に向けて解き放った。根が大地を侵食しているということは、即ちその根を辿ってゆけば、敵に行き付くということだからだ。
「む、これは……?」
 案の定、地上にて木気の刀を大地に突き刺していた謙信は、己の立つ地面が鳴動したことで顔を顰めた。
「……ぐぅっ!!」
 途端に噴き出す、凄まじい炎。木気の毘沙門刀が吹き飛ばされ、謙信もまた吹き出る炎に囲まれて、瞬く間に灼熱地獄へと飲み込まれて行く。
「なんとも芸が豊富な娘よ。だが、火気を操るのであれば、こちらは水を使うまで!」
 業炎に飲み込まれながらも、謙信は水の属性を持った毘沙門刀を投射して、壁の如く噴き出している炎を斬り裂いて見せた。
 その先にいたのは、他でもないヒルデガルド。頭部に深々と毘沙門刀が突き刺さり、どう見ても生きているようには見えなかったが。
「……せーの!」
 突然、後ろから声がして謙信が振り返った瞬間、彼の顔面にヒルデガルドの強烈な蹴りが炸裂した。
「くっ……今までの行動は、全てこのための布石か。……見事なり」
 口元の血を拭い、謙信が辛うじて倒れるのを堪える。ヒルデガルドの蹴りは、猟兵達の苦戦した度合いによって威力を増す特製を持ったもの。故に、いきなり謙信に勝負を挑んだ今回の戦いでは、彼を一撃で倒すだけの威力は持っていなかった。
 しかし、それでも謙信に痛手を負わせられたことは間違いない。名将と呼ばれた男の策。その行動を逆手に取って一撃を浴びせたヒルデガルドの行動は、この後に続く猟兵達に、勝利への希望を与えるものに他ならなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雨咲・ケイ
あの高名な謙信公と戦えるとは
思ってもいませんでした。
この一戦も糧とさせて頂きましょう。
「私は雨咲ケイといいます。尋常に勝負願います」
と一礼し勝負を挑みます。

【POW】で行動します。

敵のUCは、攻撃力重視に対しては【第六感】で回避し、
命中率重視は【盾受け】と【オーラ防御】で防ぎ、
攻撃回数重視は上記の回避と防御二つを合わせて対応します。

敵に対しては【スナイパー】で盾の【投擲】を仕掛け、
続けて利用できる敵の刀を掴んで【投擲】し
【2回攻撃】を行います。
虚を突く事が出来れば、更にアリエルの盾を輝かせて
【目潰し】を行って隙を作り【魔斬りの刃】で攻撃します。

アドリブ歓迎です。



●反間苦肉の策
 軍神、上杉謙信に、辛くも一撃を浴びせることに成功した猟兵達。
 だが、戦いはこれからだ。魔軍将に数えられる謙信は、それだけで強力なオブリビオン。致命的な傷を幾度も与えて、ようやく退けることのできる危険な相手。
「あの高名な謙信公と戦えるとは、思ってもいませんでした。この一戦も糧とさせて頂きましょう」
 そんな中、続けて車懸かりの陣を抜けて来たのは雨咲・ケイ(人間のクレリック・f00882)。彼の得意とする戦い方は、耐えて返す形のカウンター。
「私は雨咲ケイといいます。尋常に勝負願います」
「正面から、臆さず私に勝負を挑むか。その心意気に免じ、私も手心を捨てて手合わせ致そう」
 一礼するケイに、謙信は両手の刃を構えて告げた。全身から発せられる、凄まじい殺気。この軍神と呼ばれる男は、未だ本気を出していなかったのかと思わせる、ともすれば気圧されしてしまいそうな程に圧倒的な威圧感。
(「あれに飲まれたら終わりですね。なんとか、こちらの攻撃を通すための隙を作らなければ……」)
 迂闊に飛び込んだが最後、容易に斬り捨てられると理解し、ケイは敢えて防御の構えを取った。謙信はこちらに対し、必ずしも先手で仕掛けて来るとは限らない。が、しかし、それで調子に乗って懐に飛び込めば、毘沙門刀の手痛い反撃が待っていることだろう。
 肉を斬らせて、骨を断つ。それを成すためであれば、敵は敢えて己を斬らせることくらい、容易にさせる男である。
 だが、それはこちらも同じこと。斬らせて返すのは、何よりもケイが得意とする戦い方だ。
「軍神、上杉謙信……参る!」
 ケイが仕掛けて来ないことを察し、謙信が先に動いた。彼の駆る毘沙門刀は、合わせて十二。その全てがケイを斬り捨てるべく、次々に攻撃を仕掛けて来る。
「くっ……さすがに、軍神と呼ばれているだけのことはありますね」
 迫り来る太刀を寸前で避け、正面からの攻撃は盾で受け止めつつ、ケイは反撃の機会を窺った。正直、全ての攻撃を避けられているわけではない。気を高めることによって致命傷こそ避けてはいたが、前後左右、あらゆる方向から斬りつけて来る多数の刀を相手にするのは、それだけで骨が折れる話だ。
「どうした? そちらから打っては来ぬのか?」
 徐々に鈍くなって行くケイの動きに合わせ、だんだんと謙信の太刀筋が、回数よりも重さを極めたものに変わって行く。まずは手数で相手を疲弊させ、その後に強烈な一撃を、絶対に避けられない状況で放とうという算段だろう。
(「このまま防戦一方では、勝機はありませんね。ならば……!」)
 敵の攻撃を受けることは承知で、ケイは敢えて持っていた盾を投げ付けた。当然、そんなことをすれば、防御が甘くなった個所を貫かれる。
「ぐっ……!!」
 案の定、謙信はケイが投げた盾を軽々と避け、代わりに炎の属性を持った毘沙門刀を投げ付けて来た。それはケイの肩を貫き、更には傷口を容赦なく焼いて来たが。
「……まだです!」
 その刀を強引に引き抜き、続けてケイは謙信目掛けて投げ付けた。もっとも、己の操る刀を投げられたところで、謙信は何ら動じない。続く二撃目も軽々と避け、再び炎の太刀の制御を取り戻して見せたのだが。
「もはや、これまでだな。……覚悟!」
 そう言って、謙信が全ての毘沙門刀をケイに差し向けようとした瞬間、凄まじい光が周囲を包み、謙信の視界を完全に奪った。
「ぬぅっ! こ、これは……!!」
 それは、先程ケイが投げ付けていた、盾の発する光だった。狙撃術を用いたとしても、最初からこんな苦し紛れの投擲が当たるとは思っていない。狙いは元より謙信ではなく、盾の放った光が的確に謙信の視界を奪えるであろう場所だ。
「邪妖を斬り裂く刃……。その身で受けてみますか?」
 敵が視力を取り戻すよりも早く、ケイは氣をのせた光輝く手刀を繰り出した。が、そこは軍神と呼ばれる上杉謙信。迫るケイの気配を察知し、咄嗟に毘沙門刀を突き立てて来た。
「……っ!!」
 思わぬ反撃を受け、ケイが顔を顰めた。脇腹が熱い。どうやら、思わぬ傷を負わされてしまったようだが、それは敵も同じこと。ケイの放った輝く手刀は、謙信の纏っていた鎧さえも貫いて、その胸元に深々と突き刺さっていたのだから。
「ぐふっ……み、見事だ……。しかし……惜しかったな。もう、数尺ほど脇であれば、私の心の臓を貫くこともできたであろうに……」
 口元から血を吐きながらも、謙信は笑っていた。ここまでの好敵手に出会えたことを、どこか喜んでいるようでもあった。
「それは、私も同じですよ。まさか、このタイミングで反撃されるとは思ってもいませんでしたから」
 同じく、鮮血の溢れ出る脇腹を押さえながら、ケイもまた手刀を引き抜き、謙信に告げた。
 勝負は相討ち、痛み分け。だが、負傷の重さでいえば、明らかに謙信の方が深手を負わされてしまったようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

真っ向勝負、それだけの実力はある、と。
弱点なんて、そう考えつけるような相手じゃないさ。
高速で移動するなら、アタシも「足」を用意しないとな。
カブに『騎乗』し、『ダッシュ』で戦場を駆け巡る。
機動力が必要な奴がいたら、気軽に乗っとくれよ。

さて。
とにかくあの刀は厄介だ、
『操縦』テクを駆使して逃げ回る!
別に時間を稼ごうって訳じゃない。
アタシに刀の攻撃を『おびき寄せ』る事で、
他の奴の攻撃機会を作れるだろ。

……ま、ここまでが仕込みだな。
アンタの攻撃、その最大の弱点。
それは「アンタ自身が制御しないといけない」事さ。
【時縛る糸】が絡め取ってる間、
暴走無しに抑えきれるかね?



●刹那の際
 他のオブリビオンと一線を画す得意な力を持たないながらも、実力だけで魔軍将の一人に数えられるまでに至った上杉謙信。そんな彼の圧倒的な技量を前に、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は考えた。
 車懸かりの陣を突破されても、真っ向勝負で敵を叩き伏せるだけの力を持った相手だ。到底、弱点らしい弱点など、そう簡単に見せるはずもない。
 ならば、こちらもスピード対決に持ち込んだ上で、せめて他の猟兵が攻めるための隙を作ってやろうと、多喜は勝負に出た。
「さあ、こっちだよ! アタシを捕まえられるものなら、捕まえてごらん!」
 愛用の宇宙バイクに跨り、右に、左に、謙信の周りを走り回る。この時代、騎兵といえば馬がせいぜい。そんな中、高性能の宇宙バイクを駆る多喜の姿は、新時代の騎馬武者とも呼べるものだった。
「単独で挑んで勝てぬと踏み、風変わりな騎兵戦術で攻めるか。だが、その程度で私を翻弄できるなどとは思わないことだ」
 もっとも、相手が見たこともない武器や道具を使おうと、それで動じる謙信ではない。自身の周囲に毘沙門刀を散開させ、さながら刀による車懸かりの陣を展開すると、馬にも劣らぬ凄まじい瞬歩で一気に多喜へと肉薄した。
「ちっ……思った以上のスピードだね。まさか、アタシのカブに足で追い付いて来るやつがいるなんてさ」
 走行するバイクに脚力だけで肉薄する。およそ、人間離れした謙信の身体能力に驚愕する多喜だったが、それでも今のところ、作戦は順調だ。こうして相手を引き付けたところで、不意を突いてとっておきの一撃を叩き込めれば、それで良い。
「どうした、女よ? 逃げ回るだけで、そちらから攻める術を持たぬのか?」
 一向に攻めて来ない多喜に、謙信が訝し気な視線を向けた。その瞬間が、多喜の待っていた瞬間でもあった。
「別に、逃げ回ってるわけじゃないさ。ただ、アンタの弱点を突いて、仕掛ける間合いを測ってるだけでね」
「弱点、だと?」
 この自分に、そんな決定的な弱点などあるものか。あるとすれば、それは純粋な力量で上回る相手のみ。そう告げながら毘沙門刀を投射して来る謙信だったが、それでも多喜には勝算があった。
「アンタの攻撃、その最大の弱点。それは『アンタ自身が制御しないといけない』事さ。……ところで、今、なんどきだい?」
 唐突に時刻を尋ねるものの、その答えは謙信から返っては来なかった。答える義理がないというのではない。多喜の思念を受けた者は、その力によって体感時間を1分近く停止させられてしまうからだ。
 いかに屈強な剣豪であろうと、時間を停止させられれば抗う術は持たないはず。後は、このまま思念を飛ばし続け、他の猟兵に止めを刺させれば勝負は決まる。完全に策が成功したと思った多喜だったが……次の瞬間、唐突に宇宙バイクのハンドルが取られたことで、周囲の様子が一変していることに気が付いた。
「なっ……地面が凍ってやがるだと!?」
 この真夏に、大地が氷で覆われることなど考えられない。だが、謙信の持つ毘沙門刀の力を以てすれば、その程度は造作もないことだ。
「くっ……! ブレーキが……操縦が効かねぇ!!」
 元より、オフロードに特化した性能ではないカブ。その上、凍結した地面の上とあっては、いかに多喜の操縦技術が優れていようと関係ない。慌ててブレーキをかけるも、時既に遅し。スリップしたことによって盛大に転倒し、多喜はバイクから放り出されてしまった。
「痛ぅ……。あ、あれは……氷の毘沙門刀? まさか……さっき、アタシが話しかけた時に投げたのは……」
 大地に突き刺さり、周囲を凍らせていた元凶が何なのかを悟り、多喜の背に冷たいものが走った。
 毘沙門刀による車懸かりの陣。それを発動させた謙信は、単に俊足を誇るだけでなく、時に相手の弱点を突いて毘沙門刀を投射して来る。
 車輪を持った乗り物の弱点。その一つに、凍結した大地というものがあるのは間違いない。ほんの数秒の間でありながら、相手の使用する武器や道具の特性を瞬時に見極め、謙信はそれに応じた毘沙門刀を、実に的確なタイミングで投げつけて来たのだ。
 相手の時を止めたと思った時には、既に周囲を凍らされていた。相手を嵌めたと思ったが、敵はそれより一枚上手だった。速度ばかりに気を取られ、斬撃を直接受けなければ大丈夫だと、甘く見ていたのは多喜のミスだ。
「……どうやら、勝負あったようだな。その風変わりな戦車(いくさぐるま)がなければ、そなたの脚では今の私に追い付けまい」
 気が付くと、時間停止から解放された謙信が、多喜の背後に立っていた。慌てて思念を飛ばそうとするも、それよりも先に毘沙門刀の切っ先が、多喜の首筋に突き付けられた。
「そなたは言ったな。武器を自分で制御しなければならぬことが、私の弱点だと。その言葉、そのまま今のそなたに返そうぞ」
 そもそも、いかなる武器や道具であっても、使い手が制御せねばならぬことに変わりはない。それを弱点であると言うのであれば、それは謙信だけでなく、万人に通じる弱点となる。
 だが、そんな弱点は、ともすれば仕掛ける側にとっても弱点になるのだ。要するに、より単純かつ効果的に、相手の武器の制御を奪った方が勝ちだ。そして、時間停止などという壮大な技に頼らずとも、単に適した属性の刀を投射するだけで、後は勝手に相手の不利な地形を生み出せる謙信方が、今回は上手だったというだけの話。
「言っておくが、妙な真似は考えぬことだ。この謙信、一度受けた技を、二度も黙って受けるほど甘くはないぞ?」
 次に時間を止めようとするならば、その瞬間に、こちらは全ての毘沙門刀を投げつけることで、そちらを四方八方から串刺しにする。散開する毘沙門刀の時間を止めようとするならば、代わりに自分が直接手を下す。そう言って、謙信は多喜の周りを、多種多様な属性を持った十本の毘沙門刀で取り囲んだ。
「くっ……どうやら、ここまでみたいだね」
 歯噛みする多喜。残念ながら、今の状態では完全に相手の方がスピードでは上だ。こちらが何かを仕掛ける前に、謙信は目にも止まらぬ早業で、先手を打って仕留めに掛かって来るに違いない。
「無抵抗の女子を一方的に斬り捨てるほど、この私も落ちてはおらぬ。このまま去るというのであれば、命だけは見逃してやろう」
 次に挑む機会があるならば、真っ向から斬り合えるだけの何かを用意してから来い。最後に、それだけ言って、謙信は風の属性を持った毘沙門刀を、多喜の足元に突き立てる。
 次の瞬間、凄まじいつむじ風が巻き起こったかと思うと、多喜の身体は愛車共々に宙へと舞い上げられ、戦場の外まで放り出された。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セシル・バーナード
既に大勢は決したよ、“越後の龍”上杉・謙信。
退けと言っても骸の海に還る外無い以上、最後まで付き合おう。

話してる人とは目を合わせて遣り取りするものだよね。じゃ、突然で悪いけど、黄金魔眼でしばし動きを封じるよ。
ただ、刀は動かせるだろうから、油断せず空間裁断で十二刀ごと範囲の破壊攻撃を仕掛ける。これで何本折れるか?

しばらくは空間断裂を謙信本人に、刀ごと巻き込む時は空間裁断で削りを入れていく。
謙信がぼくの攻撃に慣れてきたところで、空間転移で謙信の死角に回って、手刀で一撃を。
その直後に再転移して離脱。

以後、空間裁断と空間断裂をメインに、隙を見ては空間転移で一撃離脱を仕掛ける。

謙信の攻撃は次元装甲で防御。



●天地鳴動
 関ヶ原での戦いは、既に猟兵と幕府軍が完全なる優勢となっている。後は幕府軍を信長の居城に送り届けるだけだが、それでも未だ抵抗を続ける上杉謙信。
 仮にも軍神と呼ばれた男。彼なりの意地もあるのだろう。しかし、そんな戦いは既にナンセンスであると、セシル・バーナード(セイレーン・f01207)は謙信に告げた。
「既に大勢は決したよ、“越後の龍”上杉・謙信。じゃ、突然で悪いけど、少しだけ動きを封じさせてもらうよ」
 敵に何かをさせるよりも早く、セシルは先手で切り札を切った。
 ユーベルコード、黄金魔眼。相手の時間を停止させることで、石化にも似た状態をもたらし、いかなる強敵であっても動きを止めることのできるセシルの奥義。
「これで終わりだね。ただ、刀は動かせるだろうから、全部折らせてもらうけど」
 続けて、セシルは防御無視の空間断裂を放ち、謙信の武器を全て破壊する策に出た。が、彼が次なるユーベルコードを発動させるよりも早く、唐突に周囲の大地が雄叫びを上げ、凄まじい竜巻や津波が一斉にセシルへと襲い掛かった。
「うわっ!? ちょっ……な、なに、これ!?」
 予想だにしない反撃を食らい、セシルは受け身を取るだけで精一杯だった。
 全てを凍て付かせる氷の竜巻。あらゆる存在を溶かし尽くす猛毒の津波。それらは時に形を、そして属性までをも変えながら、戦場を縦横無尽に駆け巡る。大地が揺れ、亀裂から闇の炎が噴き出したかと思えば、灼熱の陽光に混ざって鋭い木の枝が燃えながらセシルの身体に降り注いで来る。
 毘沙門刀天変地異。謙信の周囲を浮遊する十本の刀は、それぞれの持つ属性を多重に組み合わせることで、天災でさえも引き起こすことができるのだ。
 有象無象の名もなきオブリビオンであればまだしも、魔軍将であり軍神とも呼ばれた上杉謙信を相手に、立て続けにユーベルコードを使用する暇など存在していなかった。先制攻撃を仕掛けてこないとはいえ、こちらがユーベルコードを使うのに合わせ、反撃でユーベルコードを使う程度の力は謙信とて持ち合わせているからだ。
 時間を止められたことで一部の制御を失っているのか、もはや荒れ狂う災害は、謙信本人でさえも満足に操れていないようだった。だが、それは同時に、敵の攻撃が全く読めず、次に何が起こるかさえも分からないことを意味してもいた。
「くっ……このままじゃ……」
 さすがに、天災を相手に真っ向から戦う気は起きなかったのか、セシルは慌てて自分の身体を次元断層で覆い、外部からの干渉を遮断した。
 とりあえず、これで自分が倒される心配はない。こちらからも攻撃できないのは欠点だが、この天変地異が収まるまでは、守りを固めなければ勝機はない。
 せめて、最後に一本でも多く、謙信の毘沙門刀を圧し折ってやろう。仕掛けるタイミングは、天変地異が収まった瞬間だ。そう考えて、機械を窺うセシルだったが、ふと自分の腹に、なにやら冷たいものが突き刺さっているのに気が付いた。
「え……あ……がはっ……」
 最初に痛みが、続けて熱さが襲い掛かって来た。見れば、いつの間にか時間停止から解放された謙信が、後ろから黒い毘沙門刀で、セシルの腹を貫いていた。
「な……なん……で……」
 次元断層に覆われた状態の自分を、攻撃できるなど在り得ない。しかし、傷口を押さえながら驚愕するセシルとは対照的に、謙信は実に冷静な表情で、己の刀の力を紡いで聞かせ。
「どうやら、そなたも時を操るようだな。だが、それだけでこの私に勝てると思うなど、笑止千万!」
 そして、何よりも時を統べる方法ならば、自分も多少は持ち合わせていると、謙信は黒き太刀をセシルの身体から引き抜き告げる。この太刀の名は、アンヘルブラック。纏う属性は過去。よって、そちらが『次元断層を纏ったという過去』を斬り捨て、直接攻撃を仕掛けたのだと。
「そ、そんな……。そんなの……反則……だよ……」
 同じ時間操作でも、限定的とはいえ過去を斬るなどチートも良いところ。十の属性を誇る毘沙門刀だけでも厄介なのに、まさか最後の最後で、そのような隠し玉を持っていたとは。
 こうなったら、少しでも相手に痛手を与えてから出なければ退くに退けない。屑口を押さえつつも、セシルは空間を跳躍し、謙信の背後に回り込んだ。そのまま、手刀で一撃をお見舞いしてやろうと腕を振り上げたが、しかし今度も謙信の方が上手だった。
「……最後の一刀、其の名はディアボロホワイト。未来を統べ、未来を断つ毘沙門刀なり」
 次元断層を纏った手刀を振り下ろすも、それが削れたのは謙信の具足のみ。本体に攻撃が届くより先に繰り出された白き太刀は、威力こそ黒き太刀に劣っていたものの、セシルを横薙ぎに斬り捨てた。
「そなたの技、強力無比なことは認めよう。しかし、その力のみに頼っていては、技に使われているも同じこと」
 もはや興味もないといった様子で、謙信は静かに刃を納めた。
 強敵相手に、強力なユーベルコードの乱発だけで対処しようとするのは悪手である。こちらがユーベルコードをひとつ使用する度に、相手もそれに準じた能力で、ユーベルコードによる反撃を行って来るのが常だからだ。
 それらを考慮に入れず、自分だけがユーベルコードを時間差なしで乱発できるという前提は、あまりに浅いと言わざるを得なかった。後ろから空間の断裂で斬り掛かろうとするセシルだったが、既に彼には、それを成すだけの力さえも残されてはいなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シル・ウィンディア
天変地異…
わたしも属性魔法使うけどそこまで大型系は使えないなぁ…
でも、それでも、出来ることはあるっ!

裏をかかれることは承知の上
それなら…
【空中戦】で空中から仕掛けるね
【フェイント】【残像】も駆使してジグザグ機動で
速度を上げて接敵っ!
裏を取りたいけど読まれてると思うから…

敵側面につけて
二刀流の光刃剣で【フェイント】をいれた【二回攻撃】を仕掛けるよ

敵の攻撃は【第六感】を信じて【見切り】で回避
致命的部分は【オーラ防御】で防御するよ

相手が動きを止めた時が勝負
【高速詠唱】で隙を減らして【全力魔法】で限界突破の
UCをお見舞いするよ

UCと連動して精霊電磁砲を展開して
【一斉発射】と【誘導弾】のオマケつきだよ



●起死回生の一発!
 水や炎から始まって、果ては過去や未来までも統べることができる、恐るべし十二本の毘沙門刀。直接の斬撃も強力だが、しかし中でも厄介なのは、やはり天変地異さえも引き起こす属性と属性の合わせ技だ。
(「天変地異……。わたしも属性魔法使うけど、そこまで大型系は使えないなぁ……」)
 物陰から今までの戦いの様子を覗いていたシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は、謙信の繰り出すあまりに凄まじい大災害に、思わず引け目を感じていた。
 正直、あんな技と正面からぶつかって、勝てる見込みは殆どない。竜巻にしろ、地震にしろ、人知を超えた自然現象。そんなものを相手に力で捻じ伏せられる者がいるとすれば、それこそ高位の神か創造主でもなければ考えられない。
 こんな相手に、果たして自分ができることはあるのか。そう考え、仕掛けるタイミングを思案するシルだったが、残念ながら謙信は彼女に時間を与えてはくれなかった。
「……そこにいるのは判っている。さあ、出て来るが良い」
(「……バレてる!?」)
 謙信は、シルが様子を窺っていることなど、当に見通していたようだ。このまま隠れていても、埒が明かない。仕方なく、シルが前に出たところで、謙信は改めて十二本の毘沙門刀を構え、シルに告げた。
「異国の女子か? そちらの獲物は、その輝く剣だと見受けたが……」
 果たして、その剣捌きは如何ほどか。黒と白、二振りの毘沙門刀を握って構える謙信の気迫に、シルは思わず気圧されしそうになった。
「うっ……す、凄い威圧感……。で。でも、それでも、出来ることはあるっ!」
 まともに剣で勝負を仕掛けたところで、残念だが結果は見えている。相手の方が、剣の本数が多いから負けるのではない。仮に、周囲を浮遊する毘沙門刀がなかったとしても、謙信は二振りの刃だけで、シルを討ち倒すだけの実力を持っている。
 だが、それを承知で、シルは敢えて光剣を武器に謙信へと斬り込んだ。当然、真正面から斬り掛かれば即座に倒されてしまうことは知っていたので、地上からではなく空中から攻める。
「なるほど、天を飛翔する術を持っているのか。確かに、私との力の差を考えた場合、速度で攻めるのは有効な手立てだ……」
 空中を激しく動き回りながら、徐々に距離を詰めて来るシルを、謙信は冷静に見据えていた。残像を生み出し、あたかも己が複数存在するかのように見せかけながら迫るシルだったが、なにしろ、相手は軍神の異名を持つ越後の龍。
 並のオブリビオンであれば誤魔化せても、謙信の目までは誤魔化せないだろう。左右に激しく振れながら動いたところで、その程度は謙信も見切って来る。
 しかし、それで相手がこちらに仕掛けて来た時こそ、最大のチャンス。攻撃に集中し、動きが止まったところに、遠距離からユーベルコードを叩きつけてやろう。そう、シルは企んでいたのだが。
「見え透いた手だが、捉えることは難しそうだな。ならば、私も森羅万象の力を拝借し、お相手致そう」
 謙信の周囲を旋回していた毘沙門方の内、風と闇の属性を纏ったものが、互いの柄の尻を重ねるような型を取った。それらは謙信の意のままに激しく回転し、周囲に凄まじい風の渦を巻き起こす。ただの竜巻ではない。飲み込んだ相手を深淵に落とし、一切の光の力を断つ、闇の属性を持った竜巻だ。
「ちょっ……な、なにそれ、聞いてな……きゃぁぁぁっ!!」
 あまりに広い攻撃範囲に、避ける間もなくシルの身体が舞い上げられる。直撃こそ避けたものの、それでも余波だけで巨木さえも圧し折り兼ねない凄まじい風圧だ。おまけに風と共に身体を蝕む暗黒の気が、彼女の周囲に展開されている気の防壁さえも、情け容赦なく削って来る。
「勝負あったな。いかに天駆ける術を持とうと、翼も持たぬそなたに、この風の渦の中を飛び回る力はあるまい」
 バランスを崩し、真っ逆さまに落下するシルの姿を見て、謙信は勝利を確信していた。この間合いでは、シルの手にした光剣の刃も届かない。誰がどう見ても、シルに反撃する手立ては残されていないように思われたが……それでも、彼女は諦めていなかった。
(「う、動きが止まった!? よ、よし、今だ!」)
 謙信が風と闇の毘沙門刀を、再び自分の周囲に戻した際に生じた一瞬の隙。そこを見逃さず、シルは落下しながらも高速で詠唱しながら魔力を紡いだ。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ……。我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
 次の瞬間、彼女の手から放たれたのは、二百を超える数の魔力砲撃。火、水、土、風の四属性。謙信の毘沙門刀ほどの汎用性は持たないが、それでもこれだけの数を叩き込まれれば、咄嗟に全ての属性攻撃に対応することは難しい。
「……なんと! この状況で、敢えて打って出るというのか!?」
 受け身を取ることさえ捨てて攻撃を仕掛けて来たシルの気概に、さしもの謙信も反応が一瞬だけ遅れた。それぞれの魔力弾に向け、対応する属性の毘沙門刀を差し向けるが、それだけでは全てを防ぎ切れない。なにより、四つの属性が無秩序に混合した状態で襲い掛かって来るため、どう足掻いても防げない弾が出てしまう。
「まだまだ! これはオマケだよ!」
 一転して防戦一方となった謙信へ、シルは最後に精霊電磁砲の一撃をお見舞いした。魔導の力を乗せたレールガン。プラズマ化する寸前の高速で射出される弾頭を防ぐ術など、このサムライエンパイア世界においては存在せず。
「……ぐっ!? まさか、石火矢まで隠し持っていたというのか。……最後の最後まで、侮れぬ娘よ……」
 肩を貫かれ、ついに謙信が膝を折った。対するシルは、頭から地面に突っ込んでしまったようだが、それはそれ。
「痛ぅ……。で、でも、勝負はわたしの勝ち……だよね?」
 泥だらけの顔を拭いつつ、シルは誰に尋ねるともなく口にした。それに答える者はいなかったが、代わりに目の前の謙信だけは、どこか満足そうな表情でシルに向けて意味深な笑みを浮かべていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧島・絶奈
◆心情
実力だけでなく、心意気でも格の違いを見せられました
…本当に、敵であるのが惜しい人物です
『愛して』しまいそうな程に好ましい

◆行動
<真の姿を開放>し[異端の神の一柱]の姿を顕します

併せて『二つの三日月』を召喚
一つにして全、死の根源にして無限の宇宙を抱擁する者です
今度はお相手に不足は無いでしょう?

私は懲りずに【目立たない】事を活用
巨人の影に隠れつつ【罠使い】の力を活かして罠を設置

ある程度設置が進んだら接近
【二回攻撃】する【範囲攻撃】で【マヒ攻撃】を行いつつ、徐々に罠に誘い込みます

負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復

私はしつこいのです
貴方に【恐怖を与える】まで喰い下がってみせましょう


黒鵺・瑞樹
アレンジ連携OK

再戦を挑む。
前と同じ戦い方だけどそれに意味がある。

右手に胡、左手に黒鵺の二刀流。
効果があるかはわからんが、【存在感】を消し【目立たない】ように移動、【先制攻撃】【奇襲】【暗殺】のUC菊花で攻撃。ついでに【マヒ攻撃】【傷口をえぐる】でダメージ増と動きを制限を狙う。UCの代償は寿命。
【第六感】【見切り】で二刀流×9連撃で12本の刀をしのぐ。最低限軌道をそらすだけでいい。
単純な計算だし確実に力量も向こうが上。でももう一太刀多く入れたい。

喰らったら【気合い】と【激痛耐性】【火炎耐性】【氷結耐性】【毒耐性】【電撃耐性】でこらえる。



●再戦、そして……
 軍神、上杉謙信との戦いは、正に佳境へと突入していた。
 恐るべきは、十二本の毘沙門刀。だが、それ以上に凄まじいのは、謙信の持つ卓越した技量と戦略眼。
 同時に十二の刀を操るだけでなく、相手の特性を的確に見切り、己の技のみで迎え撃つ。それこそが、彼が軍神と崇められ、越後の龍と恐れられる所以なのだ。
 今までの戦いで、既に謙信は満身創痍だった。しかし、それでも心は死んでおらず、むしろこの状況下において、猛者との戦いを楽しんでいるようにも思われた。
「実力だけでなく、心意気でも格の違いを見せられました。……本当に、敵であるのが惜しい人物です」
 それこそ、本気で『愛して』しまいそうな程に。異端の神としての姿を晒し、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は再び謙信の前に現れた。
「ほぅ、また貴公か。初手からその姿を晒すとは、私と本気で勝負をするつもりになったということか?」
 雑兵の犠牲の上に得る勝利を欲するのであれば、今度は容赦なく斬り捨てる。毘沙門刀を構える謙信に対し、しかし絶奈は肯定の意も否定の意も示すことなく。
「其は宇宙開闢の理、無限の宇宙を抱擁する者。永遠の停滞にして久遠の静謐。死の根源にして宇宙新生の福音……。顕現せよ『二つの三日月』」
 詠唱と共に、天を貫かんばかりの巨体を誇る、光の巨人を呼び出した。
「一つにして全、死の根源にして無限の宇宙を抱擁する者です。今度はお相手に不足は無いでしょう?」
「あくまで、己の手を下さずに戦うつもりか。貴公はやはり、兵ではなく軍師なのであろうな」
 圧倒的な体躯を誇る巨人を前にしても、謙信は身じろぎ一つしなかった。既に体力は限界であり、肉体的にも負傷が目立っているというにも関わらず、彼に撤退の二文字はないようだった。
「軍神、上杉謙信、推して参る……」
 巨人の脚目掛け、謙信は十二本の毘沙門刀を全て展開して斬り掛かる。相手の大きさからして、外すことの方が難しい。手数よりも威力を重視した斬撃を繰り出し、恐るべきことに真っ向から巨人と渡り合っている。
 やはり、あの男は只者ではないと、絶奈は改めて理解した。巨人の脚に蹴飛ばされても直ぐ様に態勢を立て直し、ともすれば腱の部分を狙って斬撃を繰り出し、巨人の急所を抉ろうとするのだ。
 このまま戦っていては、どうにもならない。ならば、第二の手を用いて翻弄しようと、絶奈は巨人に無数の小さな三日月を召喚させた。
「なるほど、伏兵を呼ぶか。だが、それは通用せぬと言ったはずだ」
 毘沙門刀を展開し、謙信は呼び出された小さな三日月を次々と薙ぎ払って行く。その間、三日月の影に隠れて罠を仕掛ける絶奈だったが、しかし謙信はやはり彼女の誘い通りには動こうとしない。
「それも、先程と同じだな。罠があると知って、自ら飛び込むほど愚かだと思われていたのであれば、心外だ」
 先の戦いで天変地異を巻き起こした際、謙信は絶奈や屍兵だけでなく、地形に設置された罠までも吹き飛ばしていた。それ故に、絶奈の手の内は全てお見通し。身を隠し、目立たぬように行動していようと、謙信は彼女の思惑を全て読んでいる。
「貴公の姿が見えぬとも、私には手数がある。有象無象の三日月共々、全て斬り捨ててくれようぞ!」
 毘沙門刀を回転させながら、謙信は周囲の小さな三日月諸共、絶奈を攻撃しようと動き出した。元より、彼はその場から動かずとも、毘沙門刀を投げることによって相手を攻撃する術を持つ。狙いこそ定められないものの、一撃でも刺突を食らってしまったが最後、そこから切り崩される可能性は極めて高い。
 だが、それでも絶奈には勝機があった。確かに、戦い方の大半は先の戦法と大差がない。それ故に、謙信に全てを読まれてしまうことも承知の上だったが、しかし絶奈は一つだけ、謙信に告げていないことがあった。
「……はぁぁぁっ!!」
 突然、三日月の群れを押し退けて、その中から剣士が飛び出して来た。
 黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)。異界の暗殺者が用いた短剣より顕現せし、刀剣使いのヤドリガミ。
「む……貴公は……?」
「再戦を望むぜ、上杉謙信!」
 そう言うが早いか、瑞樹は凄まじい速度で斬撃を繰り出し、謙信へと果敢に斬り掛かって行く。単身で飛び込めば、満足に身を隠す場所もなく討ち取られていたであろう瑞樹だったが、絶奈の操る巨人が呼び出した三日月の群れに紛れることで、今の今まで気づかれることなく謙信の懐に飛び込めたのだ。
 激突する刀と刀。目の前の謙信に、瑞樹が勝負を挑むのは初めてだ。が、そこは不滅に近い蘇りを行えるオブリビオン。以前、彼の戦った謙信が倒されたとて、この場にいる謙信も倒されない限り、真の意味で上杉謙信を討ち取ったことにはならないのだから。
「……微かばかりだが、記憶にある。貴公は私に、その手数で迫った出羽の剣士か……」
 己の寿命が削られることも顧みずに攻め続ける瑞樹の刃を、謙信は毘沙門刀を己の周囲に散開させつつ、それを高速で回転させることで受け流した。瑞樹が一度に繰り出せる刃は、合わせて十八。数だけであれば、謙信の毘沙門刀を上回るが、絶え間なく謙信の周囲を回転する毘沙門刀が、斬撃を通すことを許さない。
 力量差を考慮していない単純計算。それでは勝てぬと謙信は告げるも、しかし謙信もまた瑞樹のことを攻めあぐねていた。火炎、氷、そして猛毒。謙信の駆る毘沙門刀の能力に対し、瑞樹は悉く耐性を持っている。それらを突破し、更には瑞樹の弱点と成り得る毘沙門刀は、十二本の中でも極めて限られたものしかない。
「貴公の技、己の寿命を削るものと見受けたり。ならば、私はこの未来を断つ毘沙門刀……ディアボロホワイトで、お相手致そう」
 寿命が削られている状態で、更に未来まで穿たれれば、肉体の負担も加速度的に増加する。残りの十一本を全て牽制に用いた上で、左手に握られた一刀を投射して来る謙信だったが……それこそが、彼の見せた最大の隙だった。
「捉えましたよ、上杉謙信」
 気が付くと、いつの間にか側面に回り込んでいた絶奈が、謙信の身体に深々と槍と剣を突き立てていた。
「……そうか、貴公がいたな。巨人と、そして目の前の男でさえ囮にし、私に近づく……。その執念、見事としか言いようがない」
「私はしつこいのです。貴方に恐怖を与えるまで喰い下がってみせましょう」
 絶奈が、にやりと笑う。彼女にしても、瑞樹にしても、戦い方は以前と同じ。確かに、軍神と呼ばれた男を相手に、単独で仕掛けた場合は悪手になってしまっただろう。
 だが、今回に限っては、敢えて同じ方法で仕掛けることに意味があった。全く同じ戦い方を仕掛けたとあれば、当然のことながら、謙信はそれに対してより効果的な策を講じてくるはず。それを踏まえた上で、互いの死角を補い合い、互いの技の効果を利用し合うように仕掛ければ、さしもの軍神とて出し抜ける。
「これで終わりだ! 上杉謙信、その命、貰い受けるぜ!」
 再び繰り出される瑞樹の連撃。深手を負った謙信に、その全てを防ぐだけの力は残っていない。徐々に押され、思わず後退したところで、彼は絶奈の仕掛けていた罠を踏んだ。
「……くっ、ぬかった!!」
 予想だにしなかった事態に、謙信の態勢が一瞬だけ揺らぐ。そこを逃さず、絶奈の呼び出した巨人が脚を振り上げ、力任せに謙信のことを蹴り飛ばした。
「やったか!?」
「……さあ、どうでしょうね?」
 ボロ雑巾の如く吹き飛んで行った謙信の姿を見て、瑞樹が勝利を確信し、叫んだ。が、その一方で、絶奈は未だ油断することなく、鋭い視線を向けていた。
 果たして、そんな絶奈の予想は正しく、謙信は毘沙門刀を杖のように大地へ突き立てると、最後の力を振り絞って立ち上がった。
「な、なんてやつだ……」
 せめて、もう一太刀浴びせられていれば、少しは状況が違ったか。敵の執念に、思わず気圧され思想になる瑞樹だったが、それは杞憂というものだった。
「……見事だ、猟兵よ。この謙信、まさかここまで追い込まれるとは、思ってもいなかったぞ」
 戦いに負けたにも関わらず、謙信はどこか満足そうだった。軍神と呼ばれる彼が、戦場で出会った久々の強敵。オブリビオンに堕ち、世界を破滅させる存在になりながらも、彼の中に残された武人としての誇りは穢されていなかったのかもしれない。
「貴公らを敵に回したこと……今さらながらに、恐ろしく思う。もしかせずとも、私は絶対に敵に回してはならぬ者達に、勝負を挑んでしまったのかもしれぬな……」
 軍神として、それは致命的な失態だ。どこか皮肉気な笑みを浮かべながらも、謙信は最後の力を振り絞って猟兵達に告げた。
 願わくは、共に肩を並べて戦ってもみたかった。軍神である自分に、聡明な軍師と勇猛なる剣士が加われば、果たしてどのような戦を展開することができたであろうかと。
 それら全て、今は儚き夏の夢。人の身を捨て、黄泉より戻りし存在になった今、全ては叶わぬ願いである。
 見果てぬ夢を胸に抱き、軍神は関ヶ原の地に散った。戦いに負けた謙信の身体は崩れ落ち、骸の海へと戻され、消えて行く。
 天下分け目の大決戦。関ヶ原での戦いは、猟兵と幕府軍に軍配が上がる形で終幕を迎えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月21日


挿絵イラスト