エンパイアウォー⑲~侵略者は傲りしまま眠っている
●蹂躙者は嗤いもしない
安芸国は厳島。島そのものが神として信仰されてきたとも伝えられている。
厳島神社、本殿中央から海にせり出す平舞台に男が一人いた。
「下等生物の造った代物、所詮この程度か」
海に浮かぶ大鳥居を眺める男に連絡事項を伝えるため配下らしき兵が近づく。
あらん限りの侮蔑を込めた視線と共に、男は振り返える。
「いちいち野蛮人同士の争い事で私の耳を腐らすな。知的生物の話すら宝物だと勘違いする程無価値で埋め尽くされているのかこの国は」
男は足元にあったそれを足元の小石を蹴る様に踏み付ける。
宝殿に奉納された書物、絵画、兜や刀。
「猿でも帽子と棒きれ位は作れるのか。次は服でも作ってみたらどうだ?」
大きなため息をつき──あの赤い物は何かと男は配下に聞いた。
神を祀るシンボルだと理解した男は、心底呆れていた。
「くだらん。猿に大いなる神の、偉大なる王の何が分かる。麗しの姫君に捧げる宝物の美の何が分かる……価値有るモノが無いのも納得だ」
サムライエンパイアの神聖なる場所。
そこにばら撒かれた奉納された品々を男は一瞥する。
「前に皆殺しにしてやった国の神の方がまだ乗騎として使えるというのに」
なあケツァルコアトルと男は竜を引き寄せた。
「このコルテスの乗騎になれたのだ、感謝して子を作れ。偶々私達コンキスタドールに似た下等生物がここに辿り着くことなどないのだからな」
侵略渡来人『コルテス』は戦わない。
戦うという行為すら忘れる程、彼は蹂躙者としての力と傲慢の海に浮かんでいた。
●グリモアベース
「ケツァルコアトルの力を悪用していたのは侵略渡来人コルテスだったよ!」
カバンシ・サフィリーン(ギャル系宝石人形(妹分)・f10935)は集まった猟兵を前に、スクリーン一杯に映像を見せる。
「コルテスがいるのは厳島神社。本殿から大鳥居方向にせり出している平舞台で高みの見物中」
カバンシはむっとした表情を見せる。
「コルテスはサムライエンパイアの人は猿位にか考えていない。征服者としてはお手本通りの超悪役だね」
コルテスにとって今起きている戦は猿同士の喧嘩。
戦況に最初から興味はなく、価値ある物の有無を確認する事に執心している。
「完全に油断しているね。というかコルテスは『自分の戦闘の仕方』すら覚えていないみたいなんだ」
「コルテスが『自分の力だけ』で戦ったのがそれだけ昔の出来事だからみたい」
幾度も繰り返してきた侵略と略奪と虐殺。その中で産まれた慢心。
「でもこっちがコルテスに『戦う事』を思い出させたら……まずいかも」
可能性。
真正面から殴る、斬りかかる等予想が出来る攻撃を行えば。
猟兵の攻撃を一度受け、もう一度似たような攻撃をたとえ別の猟兵が行ったとしても。
「アタシの予想だけどコルテスは皆の行動から『戦う事』を思い出して反撃する。征服者としての力は本物だから……一撃でカウンターされる、かな」
征服者としての証、ケツァルコアトル。
「コルテスはケツァルコアトルに『隷属の呪い』と『コルテスが死ぬと自身も死ぬ呪い』をかけている。だからケツァルコアトルは完全にコルテスと運命を共にする。説得は通じない……ここで、倒すのが幸せかな」
カバンシは息を吐き、猟兵を見渡しニッと笑う。
「コルテスが予想もできない攻撃を当ててボコボコにすればオールオッケーだよ!……実はね」
コルテスは幾ら骸の海から蘇っても自らが撃破されたことを認識していない。
倒されて蘇る度に『戦闘の仕方を忘れて』猟兵の前に現れる。
「だから思う存分やっちゃって!」
厳島神社の平舞台は開けた場所であるが、一段高く作られた高舞台、本社本殿等隠れられる場所もある。
「今から転送ゲートを繋げるけど、丁度満潮で海の上に浮かんでいる状態。これも利用できるかも!」
硅孔雀
サムライエンパイア大戦、厳島神社での戦いです。
硅孔雀です。
征服者恐るべし。魔軍将・侵略渡来人『コルテス』との闘いです。
●構成
ボス戦:侵略渡来人『コルテス』。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●戦場状況
厳島神社。本社本殿から大鳥居へと海へとせりだした高舞台にコルテスがいます。
転送先は丁度満潮。海から奇襲もできます。その他の場所に隠れる、奇襲をかける事も可能です。
●特記事項
コルテスが「似たような攻撃」だと判断するのは『このシナリオ内で行われた攻撃』に対してのみです。
第1章 ボス戦
『侵略渡来人『コルテス』』
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POW : 古典的騎乗術
予め【大昔にやった騎馬突撃を思い出す 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : マスケット銃撃ち
【10秒間の弾籠め 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【マスケット銃】で攻撃する。
WIZ : 奴隷神使い
【ケツァルコアトルの噛みつき 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
※第二人格『昨夜』と交代中
はっはっは
今すぐ骸の海に還って下さる?
私と志乃の邪魔をする奴は許さないから
コールテースさん
こーれ読んでっ♪(馬鹿正直に手紙持ってく)
不穏な気配は第六感で見切りますよー
無理そうなら普通に遠くからUC発動して光の鳥が横断してる風に見せかけまーす
その手紙はラブレター
志乃が自分の大切な人に宛てたもの
とてもとても人様に見せられるような中身じゃない
UCと化すほど
頭からつま先まで茹だっちゃうような
情熱的で狂気的な愛
【精神攻撃、マヒ攻撃、全力魔法、衝撃波】
でその精神壊しちゃおう!【なぎ払い】
……あとで志乃に怒られるかなあ
でもま、こういう攻撃もアリじゃない?
上手く行くといーんだけどなっ
●反撃の手紙
「コールテースさんっ」
厳島神社。
侵略渡来人『コルテス』は今まで聞いたことのない女性の声に振り返る。そこに立っていたのは鈴木・志乃(ブラック・f12101)、猟兵が一人。
(この作戦、志乃にばれたら怒られるかな。でもま、こういう攻撃もアリじゃない?)
志乃が志乃自身を考えているのではなく、今彼女を支配しているのは『昨夜』という人格だ。
「こーれ読んでっ♪」
「……ほお」
昨夜がコルテスに正面から馬鹿正直と言われてもおかしくないように接触し手渡したのは四角い封筒、その中に紙が入っている。手紙であった。
(あらそんなに警戒していないんだ)
昨夜の第六感が手紙を受け取ったコルテスの様子、不穏な気配はないと伝える。
手紙を透かし、コルテスは呟いた。
「猿の国にこの様式の手紙があるとはな」
一歩、昨夜は下がる。
「して中身はなんだ。くだらん戦の話か?」
もう一歩、昨夜は下がり、笑顔で告げる。
「いいえ。中身はラブレターです!」
コルテスの動きが一瞬止まり──ニヤリと笑った。
「それは面白い。いいだろう、見てやろう」
びりびりと破かれ目に飛び込んできた文字。
猿の国の言葉ではない。
ただ、貴方のためだけに
『 Just for you. 』
そこから先綴られているのは愛。愛。総て愛。貴方に夢中。
「こ、これは──」
「そうだよ、ラブレター、志乃が自分の大切な人に宛てたもの。とてもとても人様に見せられるような中身じゃない」
コルテスの周りにそれは現れる。それらが生み出されていく。
「き、貴様ァ!」
ラブレターが書かれていた手紙から変化した、想いを伝える無数の光の鳩の群れが輝き動きを封じ込める。
成すすべもなく、頭から尻尾まで詰まった愛にコルテスの脳内が混乱する。
「頭からつま先まで茹だっちゃうような情熱的で狂気的な愛、お味はいかが?」
二歩三歩、コルテスに近づく昨夜は笑顔で武器を構える。
「はっはっは!今すぐ骸の海に還って下さる?」
ユーベルコード:I'm crazy for you!!(アイムクレイジーフォーユー)によってコルテスは呻くことすらできない。
「それじゃあもっともっとその精神壊しちゃおう。……私と志乃の邪魔をする奴は許さないから」
今まで受けたこともない『攻撃』がコルテスを襲い、そして武器が振り下ろされる。
大成功
🔵🔵🔵
ユリウス・リウィウス
厳島はかつて合戦の舞台になったと聞く。ならばその折りの亡者を使役させてもらおう。
襲撃時刻は満潮の夕刻。海霧に紛れさせて「生命力吸収」「精神攻撃」の死霊の霧を展開する。
コルテスが事態を把握出来ないうちに、高舞台の巡らされた下の海面から亡霊騎士団を這い上がらせ、コルテスやケツアルコアトルに取り付かせる。動きを封じるためのものだが、傷つけられるならやらせよう。
さて愚かな侵略者には十分敵意が溜まっているからな。「恐怖を与える」「呪詛」の悪意の怨霊も向かわせる。
屍人使いはこれくらいでいいか。
コルテスの注意が群がる屍人に向いている間に霧に紛れて接近し、「鎧無視攻撃」「鎧砕き」「2回攻撃」の虚空斬を放つ。
●過去の海は手を伸ばす
厳島神社への転送は満潮となる夕方に行われていた。
夕日がコルテスの──怒りに満ち、膝をついた彼の影を伸ばす。
「猿が、猿が……!」
厳島神社、そしてサムライエンパイアにすら全く興味のないコルテスは気が付いていなかった。
神社の周囲の空気が、だんだんと重くなっていることを。
ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)の緑色の瞳は厳島神社を包む水を眺めていた。
(厳島合戦といったか……かつて厳島は合戦の舞台になったと聞く)
ユリウスに見えるのは、群雄割拠の世で起きた無数の戦で散っていった将兵達の姿。
(未だに囚われているなら──屍術師として亡者を使役させてもらおう)
「苦しみのうちに斃れた死霊達よ。その怨念をもって憎き命をとり殺せ」
言葉を紡ぐ。
それより数刻、周囲の空気が重くなり、海霧が厳島神社を包み込んでいく。
がさり。コルテスの背後で音がする。先ほどの猿か、と勢いよく振り返り、高舞台へと近づく。
がさり、がさり、がさり。
舞楽が披露されてきた高舞台。
びちゃり水の音と共に現れるのは。
高舞台の巡らされた下の海面から這い上がってくるものは。
「くそっ!なんだ、纏わりつくなぁっ!」
折れた矢が刺さり、首がもげ、鎧もボロボロの亡霊騎士団が、高舞台の中央にいたコルテスに襲い掛かる。
しかし、ユリウスのユーベルコード:死霊の霧(シリョウノキリ)で作られているのは虐殺された死者の怨念をはらんだ冷たい霧。
零体で構成された霧の中から無限に生まれる霊、這い出てくる霊は無限に虐げてきた者へと襲い掛かる。
──今この厳島神社で最も虐殺を行ってきた存在。
コルテス、そしてケツアルコアトルに恨みの手が延ばされ、朧げに作られた刀が振り下ろされる。
「やめろ、やめろっ!」
コルテスは気が付かない。
屍人使いが更に悪霊を呼び、侵略者の精神を蝕んでいることを。
「動きを止められるだけは無く、愚かな侵略者を傷つけることができるとはな」
高舞台の上で無様に踊る侵略者コルテス。
霧に紛れユリウスは近づき、黒剣を抜き息を整える。
「禍太刀の一閃だ。喰らっとけ」
ユリウスの作戦により接近に気が付かず、渡来人の纏った鎧を砕くようにコルテスは舞台の上になぎ倒された。
大成功
🔵🔵🔵
ヨナルデ・パズトーリ
平舞台なんぞ奇襲を誘う立地じゃに
ほんに慢心が過ぎると言う物よ・・・ならば、その慢心後悔させてやろう
妾、テスカトリポカの怒りを叩き付けての!
『殺気』を抑え『迷彩』で『目立たない』様にし海を『暗殺』の要領で気配を消し
『水泳』で待機
潜伏
『野生の勘』で敵の注意が逸れた隙を『見切り』『高速詠唱』
自身の司る煙の『属性攻撃』の
『範囲攻撃』で『目潰し』する『先制攻撃』
UC発動
高速飛行の『空中戦』で肉薄し『怪力』による『呪詛』を込めた斧の『鎧無視攻撃』と
その『傷をえぐる』様に『高速詠唱』による『零距離射撃』の『全力魔法』を
叩き込む『二回攻撃』
攻撃は『野生の勘』で『見切り』『残像』で回避
当たる部位は『オーラ防御』
●煙吐く鏡、黒き水面より
自分への攻撃を行っているのは誰だ?──そもそも、戦い方とはなんだったか?
乱れた髪、隙間からコルテスが睨みつける。
しかし、その視線の先にヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)の姿は無かった。
厳島神社を包む海。
自分の体から沸き立つ殺気を抑え、ヨナルデはコルテスを視界に入れながら厳島神社の造りを利用し、隠れてその隙を窺っていた。
「平舞台なんぞ奇襲を誘う立地じゃに」
コルテスはケツァルコアトルと共に平舞台の上を監視し、どこかに足を向ける。
その後ろ姿からはまるで攻撃されることを想定していない余裕さすら感じられ。
「ほんに慢心が過ぎると言う物よ……ならば、その慢心、後悔させてやろう」
ヨナルデの野生の感が、コルテスと『彼』の注意がそれた事を直感する。
(道は見えた、ならば飛ぼう)
「妾、テスカトリポカの怒りを叩き付けての!」
ざぱんと音を上げヨナルデが動く。
『力を貸して貰うぞ!妾と対なす者、戦友にして好敵手にして兄妹だった者!神である事に囚われ壊れ妾が過去へと送った伴侶!翼ある蛇よ!』
ユーベルコード:今は亡き対なす神の残り香(ナワールケツァルコアトル)の詠唱と共に、ヨナルデの体には鱗が浮かび上がる。
そして、大きく広げられ一瞬の間に生えた翼が上空に体を浮かび上がらせる。
「……なんだ、霧の次は」
煙か?とコルテスが口を開こうとしたその刹那。
シュッという空を切る音と共に轟音が神社を揺らす。
空中からの高速移動による加速、手にした黒曜石の戦斧に死の呪詛を込めた斧が振り下ろされ──コルテスを宙に浮かび上がらせる。
力をもう一度込め、床を蹴り、もう一度ヨナルデは零距離まで接近する。
その刹那、コルテスのそばにいた『彼』がコルテスを庇うように現れた。
否、咄嗟にコルテスが引き寄せ盾にしたのだ。
羽毛もつ蛇、ケツァルコアトル。
人に火と知恵を与え穏やかな世界を与えてきた神──テスカトリポカと対にあり対峙する好敵手。
緑の瞳に映る『彼』は彼ではない。それは分かっている。
「同じ名を持つ者といえど……神の尊厳を辱めた事、後悔させてやろう!」
反撃に動こうとした動きを飛空で回避し、二度目の攻撃が叩き込まれる。
闇と月を司る戦闘神の裁きが下された瞬間であった。
大成功
🔵🔵🔵
織部・樒
【GA:竜椀】
必要なら連携OK
アドリブOK
あの蛇は神様なのですね
何とも罰当たりな……
慢心は身を滅ぼしますよ
敵を視認次第次いで周囲の地形を確認し
遮蔽物に使える場所などをざっと確認
戦闘開始後は敵の動きを常に注視、言動や仕草を
よく見ておき、攻撃パターンやその威力など
気付いたことがあれば都度ザフェルさんや
周りに注意喚起します
敵攻撃は可能な限り岩や鳥居など遮蔽物に身を隠し
回避を試みます
ザフェルさんの攻撃に敵が反応したら此方も七星七縛符を
使用し妨害
必要なら【高速詠唱】にて迅速に封じます
ザフェル・エジェデルハ
【GA:竜椀】
てめぇがどんだけ偉いか知らねぇが、
人の家を土足で踏み躙るような真似はさせねぇぜ
【地形の利用】で敵の死角となる位置へ移動してUC【影視る竜】を放つ
敵がUCに気を取られたら一気に接近し【力溜め】から戦斧で攻撃する
最も攻撃が当たりやすいと感じた部分への【部位破壊】【鎧砕き】も試みる
樒のUCで敵の動きが鈍った隙などは逃さずに攻撃を加える
敵の攻撃は回避行動の他【武器受け】で防ぐ
隙があれば【カウンター】攻撃を行う
いざという時は【捨て身の一撃】も厭わない
この国には”一寸の虫にも五分の魂”って言葉があるらしいぜ
持てる力全部でてめぇをぶった斬ってやる!!
●竜が咆哮、椀を揺らす
苛立ちを隠せないコルテスが自ら晒した工芸品を踏みパリンと何かが割れる。
その光景を橙に近い金の瞳で見据える織部・樒(九鼎大呂・f10234)は眉を顰める。
「……いい気持ちはしませんね」
織部はコルテスが平舞台で乗騎するために傍にケツァルコアトルがいることを視認し、隣にいたザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)と共に近くにあった遮蔽に使える場所に身を隠す。
「樒、様子はどうだ?」
「コルテスは大分消耗しているようですが、蛇が傍に」
「蛇、ケツァルコアトルか。神ですら征服者にとっては奴隷か」
「あの蛇は神様なのですね。何とも罰当たりな……」
罰当たり、と織部の言葉に反応しザフェルが口を開く。
「他の国の神を奪い、そして今度はこの国か──てめぇがどんだけ偉いか知らねぇが、人の家を土足で踏み躙るような真似はさせねぇぜ」
言葉の端々にから感じる覚悟、それに織部も答える。
「慢心は身を滅ぼします。ザフェルさん、動くのであれば補佐と妨害は任せてください」
ああ、と張りつめた空気を少し緩やかにするようにザフェルは笑い、精神を集中させる。
『我が黒竜よ、捉えし影を曝せ』
二人が隠れていた場所に伸びる影、その影が揺らめき形となる。
「さてと、ぶっ潰してやろうかね!」
コルテスが風の向きが変わったことに振り返る。
「……猿達め、まだなにかしようというのか」
風が強くうねる。風を生み出しているのは数十の黒い幻影ドラゴン達の群れ、ザフェルのユーベルコード:影視る竜(シャドウ・ウォッチ)は一直線にこちらに向かってくる。
「ほう、そういうことか……ああ、囮に使うか。ケツァルコアトル!猿共を見つけ出して喰らい尽くせ!」
『──ゥ、ウウウウウウウ!』
コンキスタドール、征服者、コルテス。
幾度の交戦で猟兵がユーベルコードで召喚した物を囮に使う戦法は既に『見て』、その身に攻撃を『受け』、忘れかけていた『戦い方』が目覚め始める。
それは、目覚める寸前の出来事であった。
厳島神社に叫び声と空を切る武器の音が激しく響き渡る。
「ザフェルさん!ケツァルコアトルが動きます、コルテスを!」
コルテスが黒い幻影ドラゴンに視線を向け、何か手を動かしケツァルコアトルが動いたことに気が付いた織部が声をあげる。
既に床を勢いよく蹴り、戦斧を掲げたザフェルが叫ぶ。
「ああ、任された!」
二人の会話が耳に入ったコルテスは、侮蔑を込めた目線で嗤う。
「ははははは!竜も猿達も喰らいつく……な!」
『ガ、ガ、ァァァァァァ……』
「七星七縛符、こちらも既に動いているんですよ」
ザフェルと共に建屋や障害物をかいくぐり、織部も移動をしていた。
そして、安全な場所を確保しユーベルコード:七星七縛符を発動させていた。
護符がケツァルコアトルの開かれた凶悪な口を、爪を、燃え上がる鱗を抑え込む。
「何をしてる!動けぬ騎馬に何の価値がある!虫けら以下め!」
ケツァルコアトルを貫きながら、コルテスの顎を食いちぎらんばかりに黒い幻影ドラゴンと、ザフェルが勢いよく向かってくる。
罵声を浴びせるコルテス。
あと少しで浮かび上がろうとした、コルテスの『戦闘の仕方』が再び傲慢の海に沈む。
「この国には”一寸の虫にも五分の魂”って言葉があるらしいぜ」
ザフェルの声は静かに、そして虫けらという言葉に対し緑色の瞳には僅かに怒りの色が映っていた。
(大分ダメージ受けているのか。でも、容赦はしないぜ)
無防備に敵──ザフェルに真正面を向けた状態のコルテス。彼は気が付いていない。その体の彼方此方から瘴気が漏れ出し、オブビリオンとして攻撃されて傷を負っていることに。
(ならば、そこを狙うのみ!)
「持てる力全部でてめぇをぶった斬ってやる!!」
ザフェルの叫び声と同時に、黒い幻影ドラゴンがコルテスの四肢を拘束する。
そして無防備にさらけだされた体に戦斧がめり込む。
「あああ!」
『──ァ、ガアア!!』
コルテスの絶叫に、ケツァルコアトルが無意識の内に反応しようとする。
「……神様といえど」
織部の素早く組まれた封印に、罵られてもなお動こうとする神は動けず。
厳島神社に怨嗟の声とうめき声が残る。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルード・シリウス
成程、自分が捕食し蹂躙する側の頂点であるが故に…か。
なら…『戦い』に持ち込む前の段階で仕掛けるだけだ。
◆行動
外套と靴の能力で音を消し、迷彩で周囲の風景と同化し、気配を消して身を潜めながら死角となる位置へ接近。死角となる位置を取り接近出来たら、紅刃「血狂」を(可能なら首筋等の致命を取れる箇所に)突き立てる
接近が不可なら簒奪銃「呪骸」の呪殺弾による遠距離からの狙撃に切り替え。何れの場合も、攻撃後はすぐさまその場から全力で離脱
反撃が来る、先んじて仕掛けてくる事も踏まえてそれらに対しては残像による囮と【既視流転】による回避で負傷を少しでも抑える
その命、置いていけ…侵略者。
※アドリブ、絡み歓迎
●忍び寄る刃
コルテスは未だ、自らが傷ついていることを自覚していない。
その瞳にあふれているのは憎悪、垂れ流し続けているのは。
「成程、自分が捕食し蹂躙する側の頂点であるが故に……か」
ルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)の赤い瞳の中のコルテスは、依然として苛立ちを隠せず足元に転がる工芸品を踏みつける。
癇癪を起した子とは違う、征服者が蹂躙する傲慢、慢心。
自らを焦がす凶器と憎悪、そして目の前の敵を喰らい、奪いたい。
──侵略するなら、こちらが侵略してやろう。喰ってやろう。
「俺の視界に入った時点で終わっている事を教えてやろう」
ルードは己の身を隠す幻影の外套を纏い、音無しの靴で神社へと足を踏み入れる。『戦い』に持ち込む前の段階での『仕掛け』はこうして音も気配もなく始まった。
コルテスの死角となる場所まで気配を消し、風向きから自らの匂いを消し。
肺から空気を出し、そして吸い込む。
ルードは外套から紅刃「血狂」、短剣を取り出し──風がそっと肌を撫でるように、コルテスの首元に刃がするりと突き立てられた。
ぶしゃあと噴き出すのは鮮血ではなく、漆黒。
突然の襲撃に、痛みに叫ぶよりもまずコルテスが行ったのは。
「この痛み……お前も猿達の仲間か!ああ、攻撃されているのか私は!」
・ ・ ・ ・ ・
思い出したぞ、この痛みを与える方法を。
コルテスの抱えていたマスケット銃が一瞬にして抜かれ、引き金が引かれる。
外套を漆黒に濡らし、姿を現した無言のルードに弾は正確に頭部へと向かう。
残像は鮮血を噴き出さなかった。風で空を舞う外套がただ残るのみ。
「な……なんだ!猿は何処だ!」
(マスケット銃を持っていたとはいえ、撃ってくるのは予想済みだった)
ルードのユーベルコード:既視流転(アルマ・レグナム)。
(幾度も、幾度も受けて覚え──継承された力だ)
銃弾を見てから、軌道を予測し瞬時に回避する。空を舞う外套でコルテスとルードの間が一瞬ふさがれる。
「その命、置いていけ……侵略者」
一瞬の間にルードが構えた簒奪銃「呪骸」から放たれた銃弾、あるいは獣達の怨嗟と呼ばれるもの。
外套が宙を舞い、先程ルードが突き立てた傷口が抉られていた。
成功
🔵🔵🔴
天星・零
六道銭さんと連携
【戦闘知識+世界知識+情報収集+追跡+第六感】で戦況や弱点や死角を把握し警戒
防御は星天の書-零-で【オーラ防御】
同攻撃は二度と使わず、都度違った攻撃
零の攻撃武器
グレイヴ・キューブ(A)、Ø(B)、グレイヴ・ロウ(C)
Aで無数に突っ込ませ爆発、上がった爆煙を利用して、Cを敵の死角から出して一撃など、地形や武器による副効果を組み合わせて攻撃を常に変化させ攻撃
装備enigmaで別人格の夕夜が敵の背後から出現し【騙し討ち】を仕掛ける
以降夕夜は共に戦闘参加
Punishment BlasterやBで零と連携し更に攻撃の仕方を増やして攻撃
敵意が向いたら指定UCを使い敵を閉じ込め爆発
口調ステシ
六道銭・千里
零と連携
俺達が猿か…ほんなら極東の猿の意地見せたろうか
零のグレイヴ・キューブに乗って特攻
身は霊符で身を守って【盾受け】
無論、爆発直前に一反木綿に乗って爆風の流れで上に退避してさせてもらうけどな
んで、零の出すグレイヴ・ロウ
そいつに一反木綿を伸ばして巻き取って、三次元的な機動で上下左右前後
または伸ばして鞭のようにした銭貫文棒で四方八方から攻める
最後は冥銭をコルテス周辺に放って零のUCの発動に合わせて爆破
俺達の猿芸、悪くないやろ?うっきーってな…
●落陽迎える墓はなく
「猿が、猿が、猿共が……!」
「俺達が猿か……ほんなら極東の猿の意地見せたろうか」
六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)の黒い眼が、すっと細くなる。
普段ならもっと穏やかに、のんびりとした響きの声は冷たく。
隣に立つ天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は状況を確認しながら警戒を強める。
「六道銭さん。ここからなら喋っても向こうには聞こえません」
零は恐らく何人もの猟兵が戦ってきた厳島神社の平舞台に刻まれた痕を確認し、考える。
「これと、これと、これ……で、よしと」
指輪「グレイヴ・キューブ」を嵌め、十字架の墓石「グレイヴ・ロウ」を取り出し、虚空から片手刃程のダガー「Ø」がそれぞれ動くことを確認する。
武器の用意ができた零を横目に、六道銭が用意するのは空中浮遊をする一反の布。
「一反木綿ちゃんと動いてくれると嬉しいなぁ」
「それUDCなんですよね」
「まあな。俺の家じゃ妖怪っていうし人を傷つけなければ一緒にいてもええんやない?」
傷つけなければ、と冷徹な声で言い再度六道銭はコルテスを見る。
「……じゃあ始めるか」
「はい。ではいきます」
グレイヴ・キューブを嵌めた零の手がコルテスの方に向けられる。
周囲に浮かび上がる大量の墓石の上に六道銭が乗り込み、墓石は平舞台へと次々と向かっていく。
「……なんだ?石」
いしか、とまでコルテスは言えなかった。大量の墓石。
「3、2、1」
一斉に平舞台を埋め尽くした墓石が爆発した。
「猿の技か!ええい周りが見えないではないか!」
墓石は砕け、上がった爆煙の中コルテスは叫ぶ。
空中に出ようとケツァルコアトルの名を叫ぶのを、六道銭は上空から聞いていた。
ユーベルコード:霊符弾・三式(レイフダン・サンシキ)で作った破魔の力を持つ霊符が一反木綿毎六道銭を守っていた。
(まずは上空、お、ここからだと丸見えやな)
「零ーこっちやー」
その声に反応し、騎乗しようとするコルテスの死角から十字架の墓石が勢いよく殴りつけられる。
「かはっ!」
ケツァルコアトルの手綱から手を放し、転がるコルテス。
タイミングをずらして爆破させた墓石が降り注ぎ、足止めとなる。
「ええと、六道銭さんのいる場所まで……よいしょ、よいしょ」
爆発し変形した地、墓石の残骸を利用し零は攻撃を受けることなくグレイヴ・ロウを六道銭のいる方に掲げる。
「おっけーや、よーし一反木綿。あれに伸びて」
するりと伸びた一反木綿がグレイヴ・ロウと繋がる。
「振り回してええでー」
零がコントロール役となり銭貫文棒を構えた六道銭がコルテスを攻撃する。
視界も足元もわからず、何とか避けようとしても空中から三次元的な機動で鞭状の攻撃を避ける。
それは例えコンキスタドール、コルテスが戦い方を思い出したであったとしても予測不可能な攻撃であった。
しかし、幾度も襲撃、そして自らが高みの見物を決めていた場所で翻弄されていることへの怒りはコルテスを動かす。
零が攻撃の要になるのなら、先に殺してしまえばいい。
「はは、猿らしい浅知恵だ、な──がっ!」
それは零と彼二人の深層心理「Enigma」が生み出す存在。
『手も足も出ずになりふり構わずか。なりふり構わず強襲って所だな?』
「そうだね……『夕夜』」
『騙し討ちは俺の勝ちだな』
頭身程の大きさとなったØがコルテスを背後から貫く。
零の中のもう一人、夕夜は零をコルテス越しに見つめていた。
上空からは六道銭が、地上では零と夕夜が連携し、秒単位で攻撃の手段を変え攻撃が行われる。
絶え間なく続く攻撃はコルテス、コルテスと運命を共にするケツァルコアトルを斬り、撃ち、周囲に黒い瘴気をばら撒く。
「──許さん、許さんぞ下等生物が猿が猿共が!蹂躙する抹殺する殺すコロスコロス!!!」
明確なる殺意、悪意がコルテスを包み込む。
その様子を見ていた零は唄う。
『おいで……僕のお友達。壊れた時計塔の主が示すのは心音の刻。全ての秒針は狂い、破綻し、地は真紅に染まる』
シルクハットを被った巨大な眼球のような霊が、じろりとコルテスを睨む。
ユーベルコード:壊れた時計塔の死合わせ帽子屋(バベル・クローバー・オブ・デッドハッター)の発動。
その場で動けなくなるコルテス。
まるで、見えない壁に阻まれているかのように。
「もう無駄やで──俺達の猿芸、悪くないやろ?うっきーってな……」
地上に降りてきた六道銭が、懐から冥銭を周囲に放つ。
「き、貴様ら下等生物がぁ!」
黒い血を吐き全身から黒い血を垂れ流すコルテスを前にする3人の猟兵。
零のゴールドとワインレッドの瞳は静かにそれを見つめ、口をゆっくりと動かした。
『バーストアウト』
見えない壁、バリアの中が爆発する。それと共に六道銭の投げた冥銭の力が重なり
侵略渡来人コルテスの姿は塵となって消えた。
『ガ。ガァ……』
六道銭は声のするほうに振り返る。異国の神、ケツァルコアトル。
「あんたも本当なら……祀られるんやけどな」
呪いは最後まで猟兵達に牙を向ける。
六道銭の黒い瞳に写るのはもがきながらも爪を立てようとする姿。
「……そうだな」
「終わりにしてあげましょう」
3人の猟兵が、最後に武器を突き立てる。
墓標のように影を伸ばすそれは、戦いの終わりを静かに告げた。
大成功
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