エンパイアウォー⑰~堕ち行く末は何処へ
●屍王の城にて
不気味な怨念が渦巻く城に佇む男は、戦場を眺めて笑みを浮かべながらも、その目、その立ち振る舞い、その気迫、全てが死人にも等しく見えた。
外で誰が何の為に戦っているのか、駒の事など男には微塵も興味はない。
「安倍晴明、ですか」
男は自分の名を今一度声に出し、自分に言い聞かせるのだが、
「……」
どうでもいい、と言いたげに溜め息を吐いた。
何故こんなにも熱意というものが湧かないのだろうか。その疑問が彼の心を重くさせる。
それはきっと、自分が『賽も振らずに勝つ存在』に成り果ててしまったからなのだろう。
不死である上に繁殖も出来、生存する為のエナジーも必要としない。何とも便利な身体だ。この存在に勝るものなど在りはしないだろう。
……それ故に彼は、自分で自分を飽いてしまった。
ただ一つ思うならば。今、戦場で敵対している存在『猟兵』とやらは、なかなか手応えのある相手だと聞く。
果たしてその実力は自分の心をも揺さぶってくれるものなのだろうか。
嘗て自分にも存在していた熱意というものを蘇らせてくれるのならば――それはとても有意義な暇潰しになるかもしれない。
「……戯れに、山陰を屍人で埋めてみましょうか。それとも、コルテスが崇める神の偽物でもこしらえて、信長の後釜に据えましょうか。……猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……」
●決戦安倍晴明
「さて、お主等の活躍のお陰で、第六天魔軍将の一人の居場所が分かったぞ」
柳屋・怜(千年狐・f05785)は集めた猟兵達に向けて説明を始める。
「名は安倍晴明。場所は鳥取城。戦国時代、その城で餓死した人々の怨念が渦巻いており、まさに不気味な陰陽師の潜む城……という外見であるな」
城の最上階へ進めば、安倍晴明は静かに猟兵達を迎えてくれるだろう。
「しかしな……おかしいのだ。この戦にも影響を与え、あれだけの脅威でありながら……我にはあやつから圧を感じぬ」
予兆で視た安倍晴明からは、他の強敵と違い生き生きとした雰囲気を感じられなかったという。
「やる気を感じられないが……かと言って手を抜いてくれる訳ではなさそうだ。我らにとって脅威である事には変わりないからな。何があっても良いよう、十分に準備をしておくといい」
第六天魔軍将の一人であるだけに、安倍晴明は手強い。こちらも全力で立ち向かうよう、怜は改めて猟兵達に伝える。
「一番の目標は織田信長である。その前で退く訳にはいかぬのだ。今の我には武運を祈る事しか出来ぬが……頑張って来ておくれ。こんこん」
説明が終わり、怜のグリモアは輝き出す。眩い光が消えていった先に待ち構えていたのは、怨霊彷徨う屍王の城だった。
ののん
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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お世話になります、ののんです。
●状況
サムライエンパイアが舞台となります。
上記に記載しました通り、特殊な戦闘ルールとなっておりますのでご注意下さい。
●プレイングについて
キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
同時に投稿して頂けると大変助かります。
申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。
以上、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フォーリー・セビキウス
【涙雨】
主に連れられて
我がマスターはこう見えて好戦的でな、面倒だが仕方ない。
だとさ九十九、頑張ってくれ。
過度な期待はよして貰いたいんだが…了解した、やれる事はやるさ。
だが終わったら休ませて貰うぞ。
死んでなお働かされるとは、勘弁願いたいな。
攻撃は見切り、武器で受けるか残像で躱す
ダメージは激痛耐性と気合いで耐える
パターンや隙を情報収集と見切りで見極めサユリや九十九に伝える
貴様は馬鹿か?
永遠の生など死よりも退屈だろうが。
それに無計画にも程が…いや、そもそも計画が別にあるのか?
一瞬の隙をつき敵の死角にいる屍人と己の位置を早業とUCで瞬時に入れ替え、投影した無数の刃と共に斬り伏せる
任せろ、背後は取った。
形代・九十九
【涙雨】
主、頼れる竜の男と共に。
妖刀の氷【属性攻撃】で大気中の水分から氷の盾を作り、さゆりの赤い傘を補強(盾受け+かばう)、【激痛耐性】で踏ん張り構えた刀の【武器受け】で屍人の攻撃に耐える。
続けて【抜けば魂散る氷の刃】にて、氷の【残像】を発生させながら高速移動で屍人を振り切り、太刀風で晴明の動きを阻害し、フォーリーの攻撃を支援。
安倍晴明よ。おまえの消閑に付き合う義理はない。
かと言って、好きに狼藉を続けさせるつもりもない。
そして、おれの主に手を出すつもりなら、それを許すつもりもない。
往こうフォーリー。……おれたちの主に、疾く勝利を捧げるとしよう。
おまえの退屈も今、終わる。……せいぜい悪く思え。
四・さゆり
【涙雨】
かわいいわたしの下僕たちと。
ーーー
強敵、と聞いて奮わない手はないわ。
行くわよ、フォーリー、九十九。
あんたたちの良い男振りを、存分に見せてちょうだい。
一撃の勝負、となるのでしょう。
先は譲ってあげるわ、色男。
あら、屍体ですって、
でも纏まった方が、狙いやすくて良いわ。
【漫ろ雨】
整列なさい、わたしの赤い傘たち。
わたしの指先の儘に、盾になりなさい。
下僕たちを守って。
全ての傘が、お前の初撃の相手をしてあげる。
大丈夫よ、任せなさい。
激痛耐性。痛みには慣れているの。
けれど、
黙ってやられるほど、お淑やかでもないの。
レディに手を出した礼は、
お前たちに任せたわ。
フォーリー、九十九。
ええ、確実に潰しなさい。
ぱしゃ、ぱしゃ。水溜まりを踏む音。
いや、ここは城の中。水溜まりなどあるはずもないのに。何故かそのような音が聞こえてくるのだ。
「こんにちは、色男」
蜂蜜色の雨合羽に赤い傘。雨の少女(レディ)は待ち受けていた陰陽師、安倍晴明に向けて礼儀正しく一礼する。
自分の元へと辿り着く猟兵達を見るなり、おや、と晴明は微笑んだ。
「人ならざる者が多いと聞いていましたが……いざ目の当たりにすると愉快な光景ですね」
人の形をしているが、どうやら人ではない者も混ざっているようで。それは雨の少女、四・さゆり(夜探し・f00775)や、彼女の下僕達もそれに含まれる。
「安倍晴明よ。悪いが、おまえの消閑に付き合う義理はない。……かと言って、好きに狼藉を続けさせるつもりもない」
さゆりの後ろに立つ形代・九十九(抜けば魂散る氷の刃・f18421)は鞘から妖刀を抜き構える。おまえの戯言など聞く暇などない。そう訴えかけるようにも見えた。
「猟兵というものは、大分血の気が多い者が揃っているようですね。これは期待出来そうです」
晴明の死体の如き瞳に一瞬、光が戻る。……いや、水晶の輝きが瞳に反射しただけかもしれない。それもそのはず、彼の周囲から水晶を生やした屍人の群れが現れ始めたのだから。
「あら、屍体ですって。さぁ、フォーリー、九十九。あんたたちの良い男振りを、存分に見せてちょうだい。……まぁ、盾くらいなら作ってあげるわ」
「過度な期待はよして貰いたいんだが……了解した、やれる事はやるさ」
主の命なら仕方ない、とフォーリー・セビキウス(愚か者の鎮魂歌・f02471)は九十九と共に前へ出でる。
「往こうフォーリー。……おれたちの主に、疾く勝利を捧げるとしよう」
九十九の声を耳に入れた後、フォーリーの姿は影に紛れて消え失せた。
輝く津波のように襲い掛かって来る水晶屍人達。しかしさゆりは慌てる様子など全く見せない。
「整列なさい、わたしの赤い傘たち」
ふわり、赤い蕾がさゆり達の前を覆い始める。蕾は満開に咲き誇ると、ぴしり、突如氷に覆われ凍り付いてしまった。
「おれ達の赤い水晶と、おまえの屍の水晶。果たしてどちらが強固か勝負としよう」
水晶屍人達は赤い水晶壁を破壊せんと武器を振り上げる。外で戦った水晶屍人とは桁違いの腕力だ。水晶壁に次々とひびが入っていく。
しかしその一瞬でも耐え抜く事が出来た。
「上出来よ」
あとは任せたわ、とさゆりは九十九と姿の消えたフォーリーに言葉を告げると、
「御意」
水晶壁と床の僅かな隙間から九十九が滑り出た。冷気を纏いながら水晶屍人の脚を引き裂いていく。転がり倒れていく水晶屍人は、まるで自分を見ているかのようだ。
「気を付けろ、奴等は肩の水晶を破壊しない限り動き続ける」
九十九の元へ聞き覚えのある声が聞こえる。
「フォーリーか」
戦場の情報収集を終えたフォーリーが姿を現す。背後から水晶屍人の武器が振り下ろされても、残像を残し冷静に避けていく。
「それにこのまま突っ込んだ所で、まだ晴明の近くに三体潜んでいる」
「……この辺りの敵を防ぐだけでも手一杯だな。さて……」
このままでは晴明への攻撃が届かない。どうしたものかと水晶屍人を蹴散らしていると。
「構わないわ、確実に潰しなさい」
「……マスター」
水晶壁の向こう側、傘を操るさゆりは髪をかき上げながら二人に話し掛けた。
「大丈夫よ、痛みには慣れているの。……けれど、黙ってやられるほど、お淑やかでもないの」
あぁ、知ってる。そうフォーリーは呟いた。
「レディに手を出した礼は、お前たちに任せたわ」
「いや、おれの主に手など出させない。……フォーリー」
「あぁ、我がマスターはこう見えて好戦的だからな」
二人の会話が終わると、フォーリーは再び姿を消した。九十九は冷気を纏い水晶屍人達の間をすり抜けるように動き、その足元を、腰を、腕を狙う。先程と違うのは、縮んでいく己の寿命や傷を気にしなくなった事だ。主と頼れる竜を守る為ならば、止まった時間すら心地良く泳いでみせよう、と。
さゆりの傘と九十九の攻撃によってフォーリーは水晶屍人の群れを突破し、晴明を守る水晶屍人へ接近していく。
「――屍重なり山を成し、鮮血流れて川を生む。鵬翼の前につゆと散れ!」
瞬時に投げ付けた刃が水晶屍人の腕を抉る。直後、投影された無数の刃が水晶屍人を取り囲み切り刻んでいったと思えば。
「――おや」
晴明は声を漏らしながら手に握るチェーンソー剣を背後に向け、何かを受け止めた。先程までそこに居たはずの水晶屍人がフォーリーと入れ替わっているではないか。
「想像もつかない技を使うのですね。見ていて面白いですよ」
「どのような計画があるのか知らないが、貴様の全てを止めてやる」
「計画……計画ですか」
晴明は再び微笑み、フォーリーの身体を遠くへと振り払った。その微笑みは――独りだった時よりも『生』を帯びていたという。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヘンペル・トリックボックス
※ちょっとした因縁につき偶に敬語が崩れます
……漸く辿り着いたかと思えば、また屍人、屍人、屍人。お前はどれだけ生命を弄べば気が済むんだい、晴明。呪詛に塗れた私の炉心も、お前の心中よりはドス黒くないだろうさ──まぁ、五十歩百歩だがネ
【高速詠唱】による【早業】でUCを発動。
『四肢が/腐れ/落ちる』
【全力魔法】で言霊による呪詛を【範囲攻撃】化。全屍人を対象とし行動力を奪う。
『足場が/崩れ/落ちる』
次いで視界内の敵の足場を対象に、脆い素材に変質させ崩落させます。
晴明もろとも堕とせれば御の字、回避されても回避ルートを【見切り】、手持ちの五行符を組み合わせた【破魔】【属性攻撃】を晴明に叩き込むとしましょう。
「……漸く辿り着いたかと思えば、また屍人、屍人、屍人」
戦場でも腐るほど見た水晶屍人。その元締にやっと出会えたかと思えば、また屍人のご登場だ。
「お前はどれだけ生命を弄べば気が済むんだい、晴明」
紳士であるはずのヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)でさえ、やれやれと言わんばかりに首を横に振り、穏やかな敬語も消え失せてしまった。
嗚呼、自分の炉心に貯まる何かが酷く疼いている。己自身に飽いてしまった哀れな陰陽師の心中よりはドス黒くないだろうが。
「――まぁ、五十歩百歩という所だがネ」
何であろうと天秤にかけた所で分からないか、とヘンペルは帽子を深く被り直した。
ここに召喚された水晶屍人は、外で見た水晶屍人よりもレベルが格段に違うという事は一目見ただけで把握出来た。まず動きが違う。個体ごとの大きさも違う。流石は安倍晴明直々に召喚された兵隊というべきか。
水晶屍人達は様々な武器を持ち(中にはこの世界には存在しないであろう武器を持つ者も居た)、ヘンペルに襲い掛かって来る。
ヘンペルは自身の胸に手を当てると、
「──これより我が言の葉は万象を穢し侵し捻じ伏せよう」
どくんと、ドス黒い何かが手のひらから溢れ出した。彼の内に溜まった呪詛という呪詛が開放され、具現化され、今まさに水晶屍人達を襲おうとしている。
武器を振り上げた水晶屍人に、す、とヘンペルが人差し指を向ける。
「『四肢が』『腐れ』『落ちる』」
真黒なシャボン玉のような言霊が吸い付くように水晶屍人の元へ飛んで行くと、ぱちん、と弾けた。弾けたと同時に、ぼろり、腐った水晶屍人の四肢が身体から離れていった。
手足を失った水晶屍人は武器も持てず、身体を動かし支える事も出来ない。だとするなら、次に行う事は。
「『足場が』『崩れ』『落ちる』」
一つ一つの言の葉をはっきりと。床に手のひらを当て、呪いを這わせていく。視界に広がっていく呪いは床をみしりと腐らせていき、水晶屍人の体重を支える力を失わせた。巨大な音と共に出来上がる穴。水晶屍人達は奈落の底へと吸い込まれていった。
「……随分と壊れてしまいましたね、私の部屋」
そっと後ろへ下がり、呪われた床を踏まずに済んだ晴明だったが、
「おやおや、いけませんね。足元は最後まで注意しないと」
紳士らしくやんわりと注意を呼び掛けるが、時すでに遅し。
既に仕組まれていた五行符が晴明の足を捉え、破魔を纏った光が彼の背に生える水晶を貫き砕いた。
「失礼。大事な水晶に傷を付けてしまったようですね」
成功
🔵🔵🔴
出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と
死ぬ理由が無いから死を拒み、生きて戯れに悪を為す
そういう相手を全力で殺さねばならんのが、堪らなく口惜しい
…神殺し、などという性質さえ無ければ…
ステラに突出してもらい、先制攻撃を受けてもらう
盾でありながらこのような手に出ざるを得ないのは、心底不本意なのだが
…これは、己への呪詛
『あの刃がこの身を砕くことは無い』
『この身は絶対不落』
ステラがこの手に戻るまでに可能な限り防御を上げた上(全力魔法・オーラ防御・盾受け・【不落の傷跡】【拒絶の隔壁】)で、【異装城壁】で城の素材を鎧として纏う
ステラ(剣)を受け取ったら、質量で圧倒して薙ぎ倒す
…ステラ、ステラ
大丈夫か
ごめんな、ごめんな…
ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と
叶いすぎて目的を
意味を失ったか
なんであれ貴様は倒すべき相手だ
さっさと骸の海に帰ってもらおう
先制攻撃を防ぐ為に【存在感】を持って私が前へ
双神殺…神を殺すならカガリと相性が悪いからな
【流星剣】に【オーラ防御】【呪詛耐性】を【全力魔法】で掛けて保護し、敵の剣を【武器受け】する
剣でも防げないなら身を挺して敵の攻撃を【かばう】
本体を壊されるより仮初の体を壊したほうがいい
防御したら剣の状態となりカガリの元へ風【属性攻撃】を用いて飛んでいこう
彼の手に収まったなら【希望の剣】を発動
【祈り】を剣に込めて彼の力となろう
願いなき者に今の願いを踏み躙らせたくはないからな
……大丈夫、大丈夫だから
これが、願いが叶い過ぎて目的や意味を失った者の末路か。
哀れなものだとステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は呟いた。かと言って敵に同情などはしない。
「なんであれ貴様は倒すべき相手だ。さっさと骸の海に帰ってもらおう」
勇ましき騎士は輝く剣を構える。しかし、その後ろに立つ出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)の表情は曇っていた。
安倍晴明と同じく、熱意が湧いてこない。――という訳ではない。
「……」
彼はあえて黙っていた。目を閉じていた。この先に起こるであろう事態を予知していたから。
その事態とは……自分にとって心底不本意であり、そして心苦しい出来事になるであろう、と。
「……来い。この流星剣は決して折れない」
「受け止められると思っているのですか?」
やめた方が身の為ですよ、と晴明は告げるのだが、ステラは一歩も身を引く事はない。
「二度も言わせるな、これは決して折れない」
聖なるオーラを纏った剣は何にも穢れぬ事はないだろう。
不動の心を感じ取った晴明は一つ溜め息を吐くと、とん、と床を蹴った。一度床を蹴っただけであるのに、晴明の体は瞬時にステラの目の前まで移動した。
振り上げるは左腕。チェーンソー剣が唸りながら刃を回転させ、ステラの剣を纏うオーラを削る。いくら陰陽師とて力がない訳ではない。それは騎士として鍛えているステラでさえ、ずず、と踏ん張る体が後方へ押されてしまう程だ。
次に動いたのは右腕。魑魅魍魎の呪詛を纏ったチェーンソー剣が下方から襲い掛かって来る。
その時、ステラは一瞬、ふと微笑んだかのように見えた。
「――カガリ」
その名を呟きながら、くるりと体を回転させ、晴明へ背を向ける。
剣を守る様にチェーンソー剣から離し、自らの体を前へ前進させたステラ。チェーンソー剣は彼女の体を引き裂き、呪詛がその体へ喰らい付く。
手から離れる流星剣。最後の力を振り絞って投げられた先にあったのは、彼女が心から守りたいと願ったもの。
聖なる剣は不思議な風に身を託し、カガリの元へと飛んで行く。
「あの刃がこの身を砕くことは無い」
みしり。門の硬度が増していく。
「この身は絶対不落」
みしり。戦闘によってばら撒かれた瓦礫がひとりでに動き、集合する。
「人には至れぬ、異装の城壁。この扉より、形を成せ」
城の瓦礫がカガリの全身を覆い尽くす。やがてそれらは、城壁の鎧を纏った巨大な人型へと姿を変えていく。
最後にふわりと飛んで来たのは流星剣。カガリは優しくそれを握り締め、迎え入れた。
「――我は剣にして星。汝が望みし未来を斬り開き、願いを叶える剣なり」
傷一つ付いていない剣から、聞き覚えのある凛々しい声が聞こえた。剣は温かい光を発しながら、カガリに力を託し、その願いを叶えようとする。
カガリは口を開かなかった。剣を構え、ステラの体を葬り去った晴明へ接近し、剣を横へ一振り。大きく薙ぎ払ってやった。
チェーンソー剣を交差させ防御の体勢を取っていた晴明だったが、その威力と衝撃波に耐えきれなかったのか、体から生える水晶はひび割れ輝きながら散っていく。
ずずん。みしり。地響きを立てながら一歩、二歩進むカガリ。そして剣をもう一振り。頭上から叩き付けるように振り落とした。
晴明のチェーンソー剣に受け止められてしまったが、地響きが効いたのだろうか。みしり、晴明の立つ床は歪み、大きな音を立てて巨大な穴を作った。先の戦いで生成した、腐った床がまだ残っていたのだ。
強固なガラスを破壊したかのような衝動がカガリと剣に伝わった。きらきらと空気を輝かせる破片は星の様にも見えた。
奈落の底から精気や殺気は感じられない。そして、凍り付いていた空間は徐々に和らいでいく。
終わった。一先ず勝利を収める事が出来た。猟兵達は胸を撫で下ろした。
しかしカガリだけは流星剣を握り締めたまま、剣にそっと語り掛けていた。
「……ステラ、ステラ。大丈夫か」
呪詛に飲み込まれた体は、既にそこには残っていない。
「ごめんな、ごめんな……」
盾でありながらこのような戦略を実行してしまった。分かっていながらも快く出来るものではない。
嗚呼、この感情はきっと、仮初の体を手に入れてしまったからこそ生まれてしまったのだろう。
「……大丈夫、大丈夫だから」
流星剣ステラは優しくカガリに答えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴