エンパイアウォー㉑~大帝剣、渦中に鳴動す
「『エンパイアウォー』についてお伝えします」
グリモア猟兵、ユージ・スペンサー(f14224)が告げた。
「魔軍将さいごのひとり、大帝剣『弥助アレキサンダー』の所在が判明し、決戦が行われることになりました。戦場は関門海峡の海上となります。『弥助アレキサンダー』は『メガリス』と呼ばれるパワフルなアイテムを所持しており、それにより創り出したと思われる巨大な渦潮の上に浮遊しています。海上での戦いとなりますので、なんらかの手段で飛行や水上活動を可能とする必要があるでしょう」
そして、メガリスのひとつ「大帝の剣」により、同地にいた毛利水軍の一般人たちがその精神を支配され、弥助アレキサンダーを護るように周辺海域に舟を展開している。かれらを突破しなければ弥助アレキサンダーと戦うことはできない。屈強な毛利水軍といえど、一般人であるから、猟兵の能力なら撃退は容易い。しかし相手は洗脳されているだけであるため、後々のことを思えば、できれば穏当に無力化したいところだ……。
「そして、同地には隠し将『豊臣秀吉』なる、もう一体のオブリブオンがいることがわかりました。『豊臣秀吉』もまたアレキサンダーを護衛しており、アレキサンダーは渦潮のうえで所持するメガリスのパワーを高めることに集中していると見られます。放置すれば、そのパワーが解放され、どのような惨禍となるか予想できません。毛利水軍と秀吉の守りを打ち破り、魔軍将アレキサンダーを討っていただくことが任務となります」
●
「来たか……!」
漆黒の肌の偉丈夫が、カッと見開いた目の先を、水平線へと投げた。
「フェン、フェンフェン、フェーーン!」
かれに着き従う、影のかたまりのような異形のものが、奇妙な鳴き声をあげる。
「心得た。あの海賊連中を『大帝の剣』で従わせちゃいるが、やつらだけで猟兵を止めることはできんだろう。秀吉殿にすべて任せる。俺はメガリスの操作に専念するからな」
秀吉が飛び去るのを見送り、弥助アレキサンダーは視線をおとした。
にぎりしめた『闘神の独鈷杵』の力が周囲の大気に満ち、張り詰めてゆくのが感じられる。
足の下では関門海峡の荒海が巨大な渦を巻き、ごうごうと唸りをあげていた。それはすべてを呑み込み、翻弄してゆく、壮大な運命の暗示であった。この大渦に呑まれるのは、弥助か、猟兵か、それとも。
●
鬨の声をあげながら、毛利水軍の軍船の群れが押し寄せてくる。
かれらの目には苛烈な闘志と、まぎれもない敵意が宿り、煌々と燃え上がらんばかりだ。「大帝の剣」により支配されたかれらの精神は、猟兵たちを完全に敵とみなしており、説得や懐柔などできそうもなかった。
弥助アレキサンダーのもとへ向かうために、かれらといかに相対するか、覚悟を決めねばならないようだ――。
墜落星
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
戦争シナリオですが、3章構成となっています。第1章は操られている毛利水軍との遭遇です。かれらを突破し、大帝剣『弥助アレキサンダー』および隠し将『豊臣秀吉』のもとへと向かってください。
大帝剣『弥助アレキサンダー』および隠し将『豊臣秀吉』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
みなさんのプレイングをお待ちしております。よろしくお願いします!
第1章 冒険
『毛利水軍を突破せよ』
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POW : 邪魔する船をひっくり返すなど、力任せに毛利水軍を突破します。
SPD : 毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破します。
WIZ : 毛利水軍の配置、天候、潮の流れ、指揮官の作戦などを読み取り、裏をかいて突破します。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雛月・朔
【WIZ】
武器:薙刀『不香』、ヤドリガミの念動力
隠し将…ということは正真正銘の信長側の切り札ですね。
これを突破すれば信長も後がなくなるでしょう。何をしてくるかわかりませんがここで落とします。
自身の身体を【念動力】で浮かせ空を飛び、毛利水軍の頭上を飛びます。
だいたいの水軍の規模と配置を見たらUC『巫覡載霊の舞』を唱え、敵の飛び道具を【念動力】と神霊となった身体で防ぎつつ、船のない海面に向かって衝撃波をぶつけ、波を起こし船の転覆を狙います。
『操られた一般人のあなた達には恨みはありませんが、通してください』
七篠・コガネ
世界観ギャップを強く感じますね
無力化は僕には出来そうにないです…でも!サポートなら大いに可能でしょう!
という訳で仲間のサポートに回りますよ
海は得意じゃないですけど【空中戦】なら得意です
水軍からの射撃砲撃には『羽型ジェット』で飛んで空から【一斉射撃】で迎撃
仲間達には一切触れさせやしません!
余裕が見えてきたら上空から勢いよく海面へ向けてUC使用
狙いは水軍の船を転覆させる事
直接危害を加える事は考えていないです
だからこそ間接的手段は許して下さい
海に両手突っ込んでコアマシンからの電撃を放ち水軍の人達を感電させてみます
気絶しててもらいますよ
大丈夫。皆さんちゃんとお家へ帰れる筈、です
海面を、ふたつの影が滑る。
波間に影を落としているのは鳥ではない。ふたりの人、だ。
毛利水軍の武士たちが、急接近する猟兵をみとめて、素早く戦闘態勢をとった。
蒼空に射かけられた矢が、雨のように降り注ぐ。人同士の戦なら、関門海峡の海原が血に染まっていただろう。
だが、そうはならなかった。
雛月・朔(f01179)は、自身を飛行させている念動力により、矢を退け。
七篠・コガネ(f01385)は、巧みな空中戦闘機動で回避する。
もしも、コガネがその気になって熱線銃を放ったら、なすすべなく、水軍の武士たちは撃ち殺されてしまっただろう。
そうすれば難なくここを突破できようが、そうなってしまえば、たとえ信長軍が滅びたとしても、この地の人々は流された血を忘れまい。禍根となって、人々の、江戸幕府への不信につながってしまう。
ゆえに、猟兵たちは、毛利水軍を傷つけることは考えていなかった。
コガネと朔が案じた一計は、互いに謀ったわけではなのだが、理屈としては同じ作戦であった。すなわち、将を射んとする者はまず馬を射よ……海の上の水軍が脚とする駒は、すなわち船である。
念動力で浮揚する朔は、ふわふわと漂っていれば、長い髪に着物という姿もあいまって、サムライエンパイアの人々には幽霊に見えたかもしれない。だが、今日はいささか趣が異なる。薙刀を手にした、斯様に勇ましい幽霊があっただろうか。
柄の白さと、陽光を反射する金の装飾も鮮やかな薙刀の銘は『不香』。
その切っ先が夏空を切り裂けば、見えざる神秘の力がそこには宿る。
「操られた一般人のあなた達には恨みはありませんが――、ここは通してください」
気合一閃、朔は海をめがけて薙刀を振り下ろす。
武芸のごとき優雅な動きは、ユーベルコード「巫覡載霊の舞」。薙刀より放たれた衝撃波が、海を穿ったかのように海面を叩けば、当然に起きる波が放射状に広がってゆく。
その波のなかでは、甲板に立っているのも難しいほど船が揺れ、傾く。
朔が間髪入れず第二撃を放てば、ついに、バランスを崩した一艘が転覆し、甲板の武士たちを波間に放り出してしまうのだった。
コガネは羽型ジェットの出力を頼りに高速飛行すると、いちど、上空へと翔け上がり、急旋回して一気に降下する。
その、鳥か爬虫類のものに近い形状の脚部で、金属の爪が、獲物を狙う猛禽のそれのごとくに開いた。
「昔の人はこう言いました。“悪の報いは針の先”!」
猛禽脚が、一点に集中した力を叩きつけると、高々と波の柱が上がった。
近くにいた船が、波飛沫を浴びながら、横転する。
波のなかに投げ出された武士たちが、なおも果敢に刀や槍や弓を手にとり、コガネを睨んだり、罵声を浴びせたりするのへ、当のコガネは、
「戦うつもりはないです」
と言うと、その腕を波間にそっと差し入れた。
ほんのわずかに、コアマシンからの電流を海中に流せば、感電した武士たちが気絶したのを確かめ、かれらをすくいあげてやると、転覆した船の腹にしがみついている仲間のもとへ送ってやった。
「大丈夫。皆さんちゃんとお家へ帰れるはず、です」
朔とコガネが何隻かの船を転覆させていったことで、統制のとれた動きを見せていた水軍は、たちまち混乱に陥ってしまった。
そこへ、さらに何人もの猟兵が制圧に乗り出していくのを横目に、朔は、水軍の背後――遠く海流の渦巻く方角へ視線を投げる。
その先に、弥助アレキサンダーと、「豊臣秀吉」なるものがいるという。
「隠し将……ということは正真正銘の信長側の切り札ですね。かれらが倒れれば信長も後がなくなるでしょう。何をしてくるかわかりませんがここで落とします」
決意を込めた眼差しが見据えるは海の彼方。決戦の火ぶたは、切り落とされたばかりだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
天元銀河・こくう
移動はレガリアスシューズ装備で『スカイステッパー』使用
海賊を傷つけずに、猿の所まで辿りつけば良いんだろう?
攻撃はすべて蹴りで対応し、多少の手加減を
殺めてはコトだからな!
場のかく乱をするべく「バーチャルレイヤー」を迷彩軍服化
安全のライフジャケット仕様で、万が一の時も安心だ!
拡声器(サウンドウェポン)を構え
鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!
帆船であれば高所をめざし
ナイフで盛大に帆を斬り刻んでやろう
漕ぎ手付きの安宅船なら
飛び石のように櫂を踏みつけ、からかってやるのも面白そうだ
うまく足止めできれば、我々の戦争に巻きこまれることもあるまい
そら、海賊ども
命惜しくば、貴様らはここで大人しくしているがいい!
共闘可
毛利水軍の中核をなすのは、重厚な武装の安宅船と呼ばれる軍船だ。その周囲を、より小型の関船、小早船といった型の船がおり、陣容を形成している。
だがいま、先陣を切った猟兵たちが、大波を起こして小型の船を転覆させていったことで、水軍は混乱に陥っていた。
安宅船は、多数の漕ぎ手を擁することで、規模のわりには小回りがきく機動性に優れた軍船である。
飛び交う怒号のもと、船は敵とみなした猟兵へ向けて、揺れる荒波を割って進む。
「!?」
「なんだ、なぜ止まる!」
「なにか……いるぞ!!」
漕ぎ手たちから悲鳴があがった。
櫂のうえを伝わる衝撃――。
武士たちは、櫂を飛び石のように踏みつけ、駆け抜けてゆく影にぎょっとして目をみはった。
光の屈折が輪郭をつくることで、かろうじて見てとれるが、風景は透けている。姿なきなにものかがそこにいた!
「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!」
どこか楽しげな声が響いたが、それは天元銀河・こくう(f16107)が拡声器型のサウンドウェポンから発したものだ。
魂をゆさぶる声のちからに、武士たちはがくりと膝をつく。
バーチャルレイヤーの迷彩を、目をこらして見通せば、猫耳の少女のすがたが見えただろう。
こくうはユーベルコード・スカイステッパーでなにもない空中を蹴り、船から船へ、あるいは海のうえを難なく飛び回り、毛利水軍たちを攪乱していった。
ときに甲板に降り立つと、武器を手に群がる武士たちをあざやかな蹴り技で文字通り蹴散らしてゆく。
むろん死なないように手加減はしているが、少女に見えてそこは猟兵、蹴りは強烈だ。
「そら、海賊ども、命惜しくば、貴様らはここで大人しくしているがいい!」
かれらはここでとどまっていてもらう――。それがこくうの考えだ。ここから先は猟兵とオブリブオンの想像を絶する戦いの場になろう。かれらが、それに巻きまれる必要はないのだから。
成功
🔵🔵🔴
スコッティ・ドットヤード
【芋煮艇】
船を沈めるような一撃は俺には出来ねぇから陽動に回るか…。
ってことで頼むぜマイさん。間違えても海に落とさない様に頼むよ!
(マイに体を掴まれ、水軍に向けて投擲される少年の体)
そしてここで…【蜃気楼】!(空中で45体の分身を生み出し、それぞれが船に向けて落下していく)
(慌てて何体か撃ち落としてもそれは分身。無事船に着地した数十人)
さて暴れるか!破壊工作でも何でもやってやるぜぇ!
(他の味方が主力。であれば、敵の注意を引くために全員で暴れまわった)
(【早業・残像・だまし討ち・誘惑・迷彩・時間稼ぎ・逃げ足・フェイント・目潰し・破壊工作・情報収集・地形の利用・鍵開け・盗み・忍び足・水泳・罠使い】)
才堂・紅葉
【芋煮艇】にて。
「是非もないとは言え、被害は抑えたいわね」
船団を前に小さく息を吐く。
魔将軍を落せば味方に戻るとなると無理は出来ない。
【迷彩】で身を隠しつつ、仲間達が敵船団を霍乱する様子を観察し、【戦闘知識、情報収集、学習力】を発揮して敵船団の司令塔となる船を探る。
この混乱の中、一番統制が取れている船がそれだ。
特定次第、仲間達に【暗号作成、メカニック】で連絡し、マイさん(f20801)に司令船へと放り込んでもらう。
「申し訳ないけど勘弁して」
空中から舳先に向けてUC。
【封印を解く、怪力、属性攻撃】で船の先端に超重力をかけ転覆を狙う。
後は混乱に乗じて離脱し、先へ進みたい。
宮入・マイ
【芋煮艇】で協力っス。
海っス…マイちゃん海は苦手っス…カタツムリっスから。
でもお友達もいるっスからね、きっと大丈夫っス。
先ずは見晴らしのいい場所に立って…【びったんびったん】でスコッティちゃんを水軍に向けて放り投げるっス!
マイちゃんのコントロール力を信じるっス!
次に紅葉ちゃんが指令船の当たりを付けたら…マイちゃんと紅葉ちゃんを『サナダちゃん』で結んでまた【びったんびったん】で指令船に向け放り投げるっス!
今度はマイちゃんも一緒に飛んでくっス~!
そのまま指令船の上空に来たらもう一回紅葉ちゃんをつかんで…今度は叩きつけるように投げるっス!
紅葉ちゃん真多子ちゃん後は任せたっスよ!
きゃっきゃ。
明石・真多子
【芋煮艇】の皆で行くよ!
アタシは軟体魔忍、場所は海、これはやりがいがある仕事だね!
陽動工作のスコッティ君達が注意を上に向けてくれたら任務開始!
『タコの保護色能力』で身体を紺色に[迷彩]して船上から視認し難くしながら[水泳]で近付くよ!
明石ダコは激しい海流に揉まれて育ったから渦潮くらいへっちゃらなんだから!
船底に吸盤で[グラップル]したら、【軟体忍法骨抜きの術】で思いっきり揺らすよ!
手は6本もあるから一気に揺らそう!
たまに顔を水面に出して確認して、紅葉ちゃんが指令船を見つけたらアタシも加勢するよ。
それー大きく揺らして傾けちゃえ!
後は紅葉ちゃんに任せたよ!
「もう始まってるぜ!」
「船があんなに……これはやりがいある仕事だね!」
遠く、戦場となった海域を見渡す、そこは下関側のとある岸である。
小高い崖のうえに、芋煮艇の仲間たちは降り立ったのだ。
「是非もないとは言え、被害は抑えたいわね」
才堂・紅葉(f08859)は船団を見渡して、息をついた。
すでにほかの猟兵たちによって攪乱が始まっているが、すべての船を制圧するには至っていない。
ならば、やはり指揮する船を仕留めるべきだろう。
「いけそう?」
紅葉は宮入・マイ(f20801)を振り返った。
「マイちゃん海は苦手っス……カタツムリっスから。でもお友達もいるっスからね、きっと大丈夫っス」
と答える、赤いジャージ。
もとよりそのために岸に布陣したのだ。
マイが準備運動とばかりに、腕をぶんぶん振り回すのへ、スコッティ・ドットヤード(f20279)は、
「頼むぜマイさん。間違えても海に落とさない様に頼むよ!」
と念を押す。
「マイちゃんのコントロール力を信じるっス!」
柔軟体操をしながら答えるマイだ。
「はじめましょう」
紅葉の言葉に応えて、マイが、スコッティの脚をむんずと掴んだ。
「な、なるべく優し――……ッ」
できるだけソフトに、という訴えもなかば、マイは一切の遠慮斟酌なく、スコッティを持ち上げると、ユーベルコード「びったんびったん」の怪力でハンマー投げのごとくに振り回し、そのままはるか空の彼方に投擲した。
撃ち出された砲弾のように消えてゆく姿に、仲間たちはやや同情を禁じえなかったが、マイは達成感にあふれた表情に見える――渾身の一投に満足がいったようだ。
「じゃ、アタシも行ってくるね!」
明石・真多子(f00079)がそう言い置くと、崖から海へとダイブする。
そのまままっすぐ、海中へと飛沫をあげて消えたが、タコのキマイラたる真多子なら海は独壇場だ。心配はなかろう。
そしてぶん投げられたスコッティは。
青空のなかを泳ぐかのように中空にある感覚は存外に悪いものではなかった。
自らをもって描いた放物線の頂にさしかかったことを感じ取り、スコッティはユーベルコードを解放する。
蜃気楼(フェイクエフェクト)――!
瞬間、スコッティの姿が「増えた」。
その数、四十五を数える分身だ。都合四十六人のスコッティが空から毛利水軍へ襲い掛かる。
気づいた船からは矢や鉄砲が射られ、幾人かは迎撃を受けたが、四十六のすべてを撃ち落とすことはできるはずもない。
スコッティたちはそれぞれが甲板に降り立つと、そこから四方八方に散って、なおも船から船へ飛び移り、縦横無尽に海の戦場を駆け巡ってゆく。
「さーて、暴れるか!」
分身のスコッティに戦闘力はないが、時間稼ぎならお手の物。残像を残すほどの素早さで、兵たちをからかうように船上を走り回り、暴れ回るのだった。
そして時を同じくし、スコッティに乗り移られなかった船は、突如、その動きが止まったり、船が大揺れに揺れたりする、別の難事に見舞われていた。
「そーれ、揺れるよ、気をつけて……!」
それは海中の真多子の仕業だ。
弥助アレキサンダーの起こす大渦により、この日の関門海峡の海は全体に波が高く荒れ模様だ。その海を、激しい海流に揉まれて育つという明石タコのキマイラ、真多子は難なく泳ぎ切り、船底に吸盤で喰らいつく。
海上でてんやわんやの水軍が、まさか海中からの攻撃に対応できるはずもなかった。
「軟体忍法、骨抜きの術!」
真多子の六つある触腕が、六隻の船をとらえて激しく揺らす。
甲板の兵たちはもちろん立ってなどいられないし、戦どころではないのだった。
スコッティと真多子が引き起こす騒動の様子を、紅葉は注意深く観察していた。
軍隊とは統率されてこその存在だ。毛利水軍もまた同じ。紅葉の狙いは指揮を担う船である。それは、この混乱のなかでも統制のとれた船だ。
「あれだわ」
紅葉の観察眼が、一隻をそうとみとめ、まっすぐに指した。
「ん~~~、了解ッス」
手でひさしをつくって、じっと水平線を睨んでいたマイが、船の位置を見定めると、再度、その怪力を発揮する。
「いってらっしゃい、ッス――!!」
ぶぅん……!と砲丸投げの要領で、紅葉を投げる。
天より降り来て、甲板に着地した女に、指揮官船の兵たちが驚き、色めき立つ。
将らしき男が刀を抜くが、紅葉はかれらと戦いに来たのではないのだ。
わっと襲い掛かってくる兵たちの刀を回避しながら、甲板を進んでゆく。彼女が目指すのは――船の舳先だった。
「申し訳ないけど勘弁して」
振り返り、そうことわりを述べるや、紅葉は甲板を蹴って跳躍する。
(コード:ハイペリア承認。高重力場限定展開ランク1実行)
解放されたユーベルコードの力が、紅葉の手へと収斂してゆく。その手の甲に、青く発光する紋章が浮かび上がり――
超重力の一撃が、船首に叩きつけられた。
それはハイペリア重殺術・落星(ラクセイ)――。落下の衝撃とともに、生じた圧倒的な重力は、船首の一点を一気に海中に沈めるに十分だった。そこを力点として、甲板がほとんど垂直になり、指揮官船に乗っていたものたちは将も兵も問わず、壁と化した甲板を滑り落ちてゆく。
指揮船が船首を真下にして関門海峡の海に沈んでゆくのを、転覆した船底にしがみついたり、すでに海に投げ出されて波間に漂ったりしていた兵たちが呆然と眺める。
いまだ沈まぬ船においても、甲板に立ち尽くすものたちに、もはや猟兵と相手どって戦う気力は残っていまい。かれらが仲間の救助にあたっている間に、猟兵たちはこの先へと進むことができるはずだった。
猟兵の本来の目的である、魔軍将が待ち受ける大渦の海域が、この海の向こうに広がっているのだから――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『隠し将『豊臣秀吉』』
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POW : 墨俣一夜城
自身の身長の2倍の【墨俣城型ロボ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : 猿玉变化
自身の肉体を【バウンドモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : グレイズビーム
【腹部のスペードマーク】から【漆黒の光線】を放ち、【麻痺】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:フジキチ
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
(やはり、時間稼ぎ程度にしかからなかったみてえだな)
猟兵が近づくのを感じ取り、弥助アレキサンダーは思う。
(あんたを信じて任せるぜ、秀吉殿。あんたはいま、このメガリス『逆賊の十字架』で強化されてる。たとえ猟兵相手でも、後れをとるはずもねえんだからな――)
豊臣秀吉――人の名を名乗ってはいるが、その姿はほかの魔軍将とも違う、あきらかな異形である。
しかも「隠し将」として、今に至るまで存在すら知られていなかった敵だった。
その異形の将が、アレキサンダーのいる海域へと迫る猟兵の前に、立ちはだかろうとしている。
奇妙な鳴き声とともに、跳ねるように移動する秀吉。ここを下さねば、さいごの将のもとへ、たどりつくことはかなわないのだ。
雛月・朔
【SPD】
(真の姿:同じ器物から先に生まれ、周囲に呪詛を振り撒く存在であった『紫苑』の外見、性格、能力の模倣)
『なんとも唐突よのぅ…よもや妾が力を奮う日が来ようとは…。死人が増えても知らぬぞ?』
【念動力】で宙を飛びながら高度を上げる。近づいてくる秀吉に対して【呪詛】【範囲攻撃】【マヒ攻撃】で金縛りの呪詛を広範囲に放つ。
『動くでない、この下郎が』
金縛りの呪詛が当たるまでは根競べ。動きを止めることが出来たらその隙にこちらのUCを唱えつつ、【念動力】で巨大な手で秀吉を鷲掴みにするイメージを飛ばしUCで付与された【生命力吸収】で全てを奪う。
『貴様のような異形の獣に生命など不要…、もう一度死ぬがよい…』
「フェーーーン!!」
真っ黒な塊が、海原を翔ける。
雛月・朔(f01179)には、かろうじて身構える程度の暇しか与えられはしない。
猿(ましら)のような黒い異形の猛スピードの突進が朔を跳ね飛ばす。秀吉の身体はゴムのような弾性を備えており、衝突のショックを受けて高らかに跳ねた。
衝き飛ばされた朔は、水切りの石のように海面に飛沫を立てて滑ったが、どうにか態勢を立て直し、再び波間に浮遊する。
その姿は、しかし、跳ね飛ばされる前とは変じていた。
艶やかな長い黒髪は白く、黒と臙脂の着物をまとったものが、ゆらりとたたずむ。
『なんとも唐突よのぅ……よもや妾が力を奮う日が来ようとは……。死人が増えても知らぬぞ?』
静かだが、その底に言い知れぬ禍々しさを秘めた声音で、そのものは言った。
これが朔の《真の姿》だというのか――。
異様な気配に、だが恐れるそぶりもなく、秀吉は再び突進してくる。
朔は念動力で自身を支え、飛び上がった。
黒い異形が追うスピードは尋常ではない。
ギリギリのところでかわしてから、力を放つ。見えざる呪詛が、空気を焦がすように海上に陽炎のゆらめきを生み出す。
常人ならば、その呪詛に囚われたら最後、指の一本さえ動かすことができなかっただろう。いわゆる金縛りだ。
しかし、相手は隠し将『秀吉』だ。もとより強力なオブリブオンが、メガリスによるさらなる強化を受けている。その反応速度とスピードを超えて、呪詛に捉えることは容易ではなかった。
『動くでない、この下郎が』
絶え間なく繰り出される、怨嗟したたる呪詛。
それを掻い潜りながら、執拗に朔を追い、ぶつかってくる秀吉。
何度も跳ね飛ばされ、逃げ躱し――、根競べのような海上の応酬が続いた。
だが秀吉にダメージを与えていない以上、不利は朔のほうである。このままではいずれ……と思われたとき、ついに好機が訪れた。
ほんのひととき、朔の呪詛が功を奏して、秀吉の動きを止めたのだ。
『捕えたり……!』
この機を逃す朔ではなかった。
(いつつ、『曰く付きの化けたんす』……)
遠くうつろに響くは、桐箪笥の数え唄・五段目。
呪いの力は巨大な手となり、秀吉をわしづかみにする。そして、
『貴様のような異形の獣に生命など不要……、もう一度死ぬがよい……』
凄まじい勢いで、その生命力が吸収されてゆく。
「フェン、フェンフェン、フェーーン!」
秀吉は鳴き声をあげながら身をよじり、金縛りを脱すると、朔を突き飛ばして、自身はまた跳ね返り、波間に漂った。
命のすべてを吸い尽くされるには至らなかったが、かなりの力を失わせることができたのは、秀吉の動きがそれまでより大きく精彩を欠いたことであきらかであった。
成功
🔵🔵🔴
七篠・コガネ
現れましたね!あれが隠し将…ちょっと可愛い感じもしますが
でも道を開けて下さいね
【空中戦】はそのままに相手の動きをまず見ましょう
…お、お城?それとも要塞?のロボです?
僕のいる世界じゃまず見ない形の建物です…
でもいいでしょう!ロボ対ロボ。上等じゃないですか!
海面に向かって全武器【一斉発射】です
ええ、海一面にプラズマ光反射で目眩まし作戦【マヒ攻撃】効くでしょうか…
敵の動きが止まったらあっちのロボも止まりますよね
【踏みつけ】でロボに横から蹴り入れます!目がけるは秀吉!
攻撃回数重視でUCを【早業】で使用
一瞬の隙を逃がしはしません!
この世界の未来を易々と手渡す気はないんですから
秀吉が生命力を奪われ、その勢いを減じたこの好機を、七篠・コガネ(f01385)が逃すことはなかった。
プラズマジェットの最大出力で急接近だ。
「フェン、フェンッ!」
しかし、秀吉の反応速度はそれでもまだ速かった。
海中に生じるあやしい影。それが海面を大きく盛り上げて迫ってくる。
「これは……!」
コガネは急旋回して避けようとしたが、海よりあらわれ出たものは予想を超えて巨大であった。とっさにガードの態勢をとり、ぶつかってくる衝撃を殺す。距離をとりながら、逆噴射でホバリングしつつ、コガネが見たものは。
「……お、お城? それとも要塞?」
城だ。
サムライエンパイアの各地に見られる城郭……を思わせる、おおざっぱには人型の、これは――機械なのだろうか。ともかく、圧倒的に巨大ななにものかが、そこに出現し、石垣と瓦と漆喰とで構成された腕にあたる部位をゆっくりと伸ばして、コガネをとらえようとする……!
「いいでしょう! ロボ対ロボ。上等じゃないですか」
すんでのところで掴まれることを回避し、コガネは城型ロボの腕に飛び乗ると、そのうえを駆けてゆく。そして肩にあたる部分をジェット噴射で飛び越えれば、ロボの死角に入る。むろんロボは身体の向きを変えてコガネを追うが、コガネも旋回してさらに回り込む。
そしてロボの背後に、秀吉の姿をみとめた。
ロボの動きは秀吉と同じだ。本体の動作をトレースしているのである。ならば。
「最大出力、一斉発射!」
コガネの全身の装備が解放され、熱線を放った。
それは攻撃のためではなかった。
海へ向けて照射さえたプラズマブラスターは、目を灼く閃光を海面に反射させ、周囲を白く呑み込んでゆく。
「フェフェフェーーン!」
眩い光に、秀吉が怯んだ。
当然に、ロボもその動きを止めた、その瞬間。
コガネの手が鋭い鉤爪をもつものに変形していた。
どう、と全体重を乗せた蹴りをロボの横腹に加えると、その反動のままに、秀吉に迫る。
逃がしはしない。
この世界の未来が、この先にあるのだから――。
鋭い一撃が秀吉を貫く。
甲高い声をあげながら、波間に消える秀吉。一方、ぐらりとバランスを崩した城型ロボが海に倒れ、巨大な波がコガネを呑み込んだ。海が、いやおうなくふたりを引き離し、隔ててゆく。
隠し将、豊臣秀吉。
仕留められはしなかったが、確実に手ごたえがあった。
荒れる海中より離脱しながら、コガネは戦況が猟兵側に傾いていることを確信していた。
成功
🔵🔵🔴
宮入・マイ
【芋煮艇】で協力っス!
かわいいっス!
秀吉ちゃんかわいいっス!
…ロボっス!
秀吉ちゃんすごいっス!
きっと面白いことしてくるっス、楽しみっス!
ロボの攻撃はスコッティちゃんをかばうように動きつつ身体が持つまで受け続けるっス、バラバラになっても大丈夫っス。
死んだふりしつつ様子をみて…秀吉ちゃん本体の動きが止まったら【友情の混合】っス、冗談は一切なしでいくっス!
強化された『サナダちゃん』をいっぱい伸ばして秀吉ちゃんを捕まえるっス!
捕まえたらそのまま寄生虫フルコースをお口にプレゼントっス!
ぽんぽん壊してもらうっス!
きゃっきゃ。
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
【芋煮艇】で出撃
◆対先制
先制攻撃はアイテム「スケープシープちゃん」で凌ぎます
◆戦闘
敵先制が終わったら
『召喚! ガジェッテスト・ギガンティア!』を発動
海中から巨大ガジェット「ガジェッテスト・ギガンティア」(通称ティアちゃん)を最大サイズの55mで召喚
搭載した「マジェット・ガジェット・ブースター」で上空へ飛翔
飛翔してからは味方を巻き込まないように
武器「バリアブル・バレット・バズーカ」から巨大投網弾
↓
武器「まじかるランチャー」から誘導ミサイルを発射することで秀吉の機動力を封じにかかります
その後味方の活躍で秀吉の足が止まり、チャンスが生じたなら
巨大化させた「スパナロッド」を叩きつけて追い打ちをかけます
スコッティ・ドットヤード
ロボだこれ!?
(先制攻撃には【残像見切り逃げ足ダッシュ】で回避)
くっ…なんてパワーだ。俺じゃ「力」にはなれないか。
…だったら「知」になるまでだ。
(【選択UC】発動。身体能力と思考能力を46倍に)
(観察洞察推察精察。凝視推測虎視刮目。敵の動きを、弱点を読む…海面を跳ね回る動きを、観る)
…着地の瞬間が隙だ。そんで次の着地点は…(敵が飛んだ。即時に計算終了、指示を出す)
…その船の横!ロボの足狙って!
(刹那、自分は本体に肉薄。一足飛び、否…八艘飛び。お返しとばかりに船や水面を足場として突撃)
(雷を纏った拳で殴り、麻痺を狙う)…限界。追撃頼む!
【早業だまし討ちマヒ攻撃咄嗟の一撃ダッシュ地形の利用】
明石・真多子
【芋煮艇】皆で行くよ!
アタシは皆の乗ってる船の底に吸盤でくっついて行くよ。
あれ?上が騒がしいね、今度は…おサル…じゃなくてロボが出た!
う~ん海上で暴れられると出ていくタイミングがないな~。
まぁその代わりに[水泳]してればロボの攻撃は届かないからいいんだけど…。
あ、スコッティ君が集中モードになってる!おっけーそこだね!
指示を貰ったら思いっきり海中を蹴って【軟体忍法人間砲弾の術】で飛び出し不意打ちの[暗殺]攻撃だ!
狙いはロボの膝裏、軟体忍法膝カックンだよ!
命中したらそのままピンボールみたいに跳ね返って、本体の方にも攻撃!
ロボ組との同時攻撃は対処しきれないだろ~覚悟してね!
何度も跳弾しちゃんだから!
才堂・紅葉
【芋煮艇】
「とんだ隠し玉ね」
船上から蒸気バイクに跨り、小さく息を吐く。
迫るロボの攻撃に対し【野生の勘、操縦】で海に飛び出す。
「マリンモードってね」
【メカニック】で変形し海上を疾走する。
自動小銃と榴弾の【援護射撃、誘導弾】で援護しつつ、仲間の合図を待つ。
後は海面への着地を狙って【封印を解く、属性攻撃、鎧無視攻撃】のUC。ロボの胴体中心への着弾で城への地形破壊狙い。
超重力による【マヒ攻撃】での阻害も狙う。
後は【地形の利用、学習力、戦闘知識】で、明石さんのUCに合せたバイク配置で跳ね返り補助。
狙えるなら反射角を調整し、リネットさんの「巨大スパナロッド」でコンボ継続を狙いたい。
「ロボだこれ!?」
スコッティ・ドットヤード(f20279)が驚きの声をあげた。
芋煮艇の面々が毛利水軍から拝借した船で海域に到達したとき、かれらがそこで見たものは、秀吉により召喚されたとおぼしき城型ロボと、猟兵の激戦の光景であった。
「ロボっス! 秀吉ちゃんすごいっス! きっと面白いことしてくるっス、楽しみっス!」
「とんだ隠し玉ね」
常識外れの展開に瞳を輝かせる宮入・マイ(f20801)に、呆れたように息をつく才堂・紅葉(f08859)。
彼女らの眼前で、先に交戦中だった猟兵の攻撃により、城ロボがバランスを崩し海に倒れる。その余波で発生した大波により、面々の乗る船は大きく揺れ、甲板が海水をかぶった。
「来るわ、気をつけて!」
紅葉は、野性の勘で、仲間たちに警告を発した。
城ロボの威容が、波間から立ち上がり、船を見下ろす。こちらに気づいたようだ。
振り上げた腕を、ロボは思いっきり、芋煮艇の船へと向けて振り下ろした――!
「スケープシープちゃん!」
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク(f01528)の声。
彼女の投げたぬいぐるみが、魔法的な力で衝撃を吸収するなか、紅葉は蒸気バイクで船外へ飛び出す。
「くっ……なんてパワーだ」
船が揺れ、坂と化す甲板のうえをスコッティがダッシュするが、城ロボから無慈悲な第二撃が繰り出されようとしていた。
「任せるッス……!」
「マイさん!」
マイが、スコッティのまえに躍り出た。
城ロボの攻撃を受け止め、その身体が宙に投げ出される。
「マイさん……!」
甲板のうえを何度かバウンドし、滑ってゆくマイへ、名を呼びながらスコッティが駆けよった。
「し、しっかり」
「大丈夫……ッス」
声に力がない。まともに攻撃を受け止めて、ノーダメージということはあるまい。
ふっ、とふたりのうえに影が落ちる。
なおも、城ロボの追撃が行われようとしていた。ぐったりしていたマイが跳ね起きて、再び攻撃を受け止めた。そして、がくりと崩れ落ちる。
その数秒前――
船を飛び出した紅葉の蒸気バイクは着水の瞬間、変型すると、海面を走行し始めた。
「マリンモードってね」
装備された自動操縦の銃口を、ロボへと向けると、牽制の射撃を浴びせた。
ロボは甲板のマイたちを攻撃しているようだ。
何度目かの攻撃が振り下ろされる。危険だ。紅葉が飛び出しかけた、そのとき――
生白い、紐状のものが、宙を翔けた。
それは凄まじいスピードで城ロボにからみつき、這いうねりながら、頭部にあたる箇所までたどりつくと、その開口部から強引に内部に侵入していく。
それはマイのユーベルコード「友情の混合(フレンド・ブレンド)」により活性化し、攻勢に出た寄生虫――マイいわく「サナダちゃん」。
「ぽんぽん壊してもらうっス!」
城ロボは、ぎくしゃくした動きで、暴れ始める。内部からサナダちゃんの攻撃を受けているのだろう。
「好機ですわね。……ギアライザー! コール・ギガンティア! ライズ、アップ!」
リネットの高らかな詠唱とともに、海面に光り輝く魔法円が描かれる。
波飛沫とともに、そこから巨大なガジェットロボが出現した。
「さあ、いきますよ、ティアちゃん。マジェット・ガジェット・ブースター、起動!」
ガジェットロボ――「ガジェッテスト・ギガンティア」にリネットが搭乗すると、それはまっすぐ上空へと飛翔する。
「そーれ♪」
上空に位置したところから、バズーカ状のガジェットでリネットが撃ち出したものが、城ロボに命中する。それは網になって広がり、ロボに絡んでその動きを阻害する。
間髪入れず、「まじかるランチャー」から発射されたミサイルは、海面を跳ねまわる秀吉本体を狙って追跡し、敵の機動力を封じるのが彼女の狙いと知れた。
(俺じゃ「力」にはなれないか。……だったら「知」になるまでだ)
スコッティは、すう――、と心を静めた。
彼をかばいつつ敵の攻撃を受け止め、死んだふりから逆転で、体内からの攻撃を仕掛けたマイ。
相手に匹敵する巨大なガジェットロボを召喚し、あやつるリネット。
眼前で繰り広げられるのは圧倒的な大規模ユーベルコードの応酬である。
スコッティは、このスケールの戦いに介入するにふさわしい能力は持ち合わせていない。だが、かれにはかれの戦い方があったのだ。
(観察洞察推察精察。凝視推測虎視刮目。敵の動きを、弱点を――読む)
ユーベルコード「限界突破(ブレイブ・オーバーリミッツ)」。
サイキック能力をフルパワーで解放し、スコッティの身体能力と思考能力は瞬間的に四十六倍となる。
敵の動きは、これまで見たパターンを分析して推測、それに影響を与えうる周囲のあらゆる情報を統合。一切を、一連の物理現象・化学反応と考えるなら、ひとつの答は導き出せる。
かつて、ラプラスの魔として夢想されたような、神のごとき所業が、この瞬間、スコッティによってなされようとしていた。
「……そこだ! ロボの足狙って!」
計算完了――その一点を告げる。スコッティに応えて、彼女が波間から飛び出した。
「おっけーそこだね!」
明石・真多子(f00079)だ。
彼女は船の底にはりついて皆に同道し、ずっと海中で機会をうかがっていた。
今こそ、その時である。
ユーベルコード「軟体忍法人間砲弾の術(アサルタコ)」により、海を蹴って飛び出した真多子は、まさしく砲弾である。
マイのサナダちゃんによる内側からの浸食に苛まれながら、リネットの投網弾に掴まって動きが制限されている城ロボの、脚部へと死角から襲い掛かった。
「軟体忍法膝カックン!!」
膝裏の一点にすべてのパワーが集約して叩き込まれる。膝を折って、城ロボが頭から海に突っ伏していくのへ、機を同じくして舞い降りたリネットのガジェットロボは、武器であるスパナロッドを巨大化させたものでとどめとばかりにロボをぶっ叩いた。
そして、人間砲弾と化した真多子は勢いよく跳ね返ると、高らかに放物線を描きながら、次なる標的へと向かう。
すなわち、本体・豊臣秀吉!
「逃がさないよ、おサル……! 覚悟してね!」
「フェーンッ!」
頼みの城ロボはついに力尽き、崩壊しながら関門海峡の海に沈みつつあった。
秀吉はギリギリのところで真多子を回避した。
しかし、追い詰めていることを、猟兵たちは確信する。
「真多子さん!」
秀吉に回避されたことで、真っすぐ海に突っ込もうとする真多子の前へ、紅葉のバイクが滑り込んでくる。
飛沫をあげながらの、海面でのドリフト。真多子は紅葉のバイクに跳ね返って再び秀吉を追う。紅葉が瞬時に判断した反射角は適切だ。見事、秀吉の異形に追突する。
「フェー……ーン……ッ……」
秀吉が落下してゆく。
その真下に――スコッティが待ち受けていた。
「よし、計算通り」
まさかここまでのプロセスをすべて計算し、予測していたというのか。
気合の声とともに、繰り出された拳にはまとうは雷光。
波間に閃く雷撃とともに、うちのめされて宙に舞う秀吉は、もはやただ慣性のままに浮かぶに過ぎない。
「……限界。追撃――、頼む」
その一撃にすべてを込めたか、ぐらりと崩れたスコッティは、バイクで走り込んできた紅葉が回収する。
「よーし、もういっちょ……!」
「承知しましたわ!」
空舞う真多子を、リネットの巨大スパナロッドが、ホームランのように打ち返す。
そして渾身の人間砲弾が、秀吉を正面からとらえ、そのまま大きな水柱をあげて海中へと消えてゆく。
「おかえりッス~」
サナダちゃんを回収したマイは、船べりから海をのぞきこむ。
秀吉とともに真多子は海中に没した。
やがて、そこに浮かび上がってきたのは――
真多子ひとりだ。
笑顔が、すべてを物語っている。
隠し将「豊臣秀吉」――骸の海へと帰す。
魔軍将の一角が、崩れ去った瞬間だった。
成功
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第3章 ボス戦
『大帝剣『弥助アレキサンダー』』
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POW : 大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:みやこなぎ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大渦は、いまだとどまる気配がない。
そのうえに待つ男は、ゆっくりと、背に負うていた巨大な剣を構えた。
「見事だぜ、猟兵。まさか秀吉殿を破るとはな。この大帝の剣の相手に不足はなしということか。だが俺も決して引くことはできないんだ。すべては信長様のために。あんたたちも、譲れないものがあるんだろう。そいつを賭けて、勝負といこうか」
七篠・コガネ
先制攻撃対策
(【空中戦】使用)
【早業】で白刃取りを試してみます!なんとか【怪力】で耐えてみますが…
抑えるだけで精一杯でしょうか…
でも両手剣なら相手の手も塞がっているのでは?
背から『code-Nobody』を出し【一斉発射】です!
UC発動!貴方のように忠実に主君に仕える人は嫌いじゃないです
僕もそうでしたし、そうプログラムされてる以上今もそうですから…
だからこれは“衝突” 僕達は未来を守りたい!
過去に呑まれやしないからッ!僕達はこれからも続いてくんだからッ!!
飛行速度を上げて突撃!…と見せかけて敵へ向けてブラスター発射
その隙に上昇 頭上から『Heartless Left』撃ち込んでやります!
そのひと振りで世界をまっぷたつにできるのだ、と言われても納得できる鉄塊のごとき巨大剣――「大帝の剣」。
弥助アレキサンダーが、大木の幹のような腕でもって振り下ろしたその一撃を、七篠・コガネ(f01385)は、なんと真剣白刃取りの要領で受け止めて見せたのだ。
人ならざる反応速度の早業と、怪力がなければなしえないことだった。
弥助もこれには驚いたように見えた。
だがすぐに、その両腕の筋肉にいっそうの力がみなぎり、隆々と盛り上がる。
コガネが歯を食いしばった。弥助のそれも人外の膂力だ。恐ろしい力で圧し勝とうとしてくる。
コガネの両手は刃を止めるのにせいいっぱい。しかし、弥助もまた、剣を両手で使っている以上、ふさがっている。
コガネの背のパーツが、翼のように広がった。展開したアームドフォートの砲が一斉発射される……!
弥助の体躯が後方へ吹き飛んだ。
瞬間――、稲妻のようなエネルギーが閃き、コガネの身体の表面を紫電が走る。
「貴方のように忠実に主君に仕える人は嫌いじゃないです。僕もそうでした――」
いや、今もそうなのだ。そのようにプログラムされた存在なのだから。
弥助が態勢を立て直し、剣を構えなおして、再び斬り込んでくる。
それは主のために恐れを知らず戦う武士(もののふ)以外のなにものでもなく……コガネはウォーマシンである自分と、かれが本質的に同じ部分を持っていることを感じ取っていた。
だからこれは憎み合っての戦いではない。異なるものに仕えるもの同士が、ただ異なる側にいるがゆえにそこに生じた衝突なのだ。
ユーベルコード「ライトニングフュリオス」。内蔵コアマシンから発生させた電気エネルギーを全身にみなぎらせたコガネは、その戦闘力と飛翔能力が大幅に高まっている。
(僕達は未来を守りたい!)
その原動力は、コガネの思いである。
(過去に呑まれやしないからッ! 僕達はこれからも続いてくんだからッ!!)
コガネは飛翔する。
過去より舞い戻り、現在を喰らわんとするオブリビオンへ、より疾(はや)く未来へ向かうことで立ち向かおうとするかのように。
弥助がコガネを追う。
この世界を欲した主君のために、今ここで、敵はすべて滅ぼすという誓いのままに。
コガネが素早くその身を反転させた。
弥助は突撃を警戒し、防御姿勢をとって速度を落とす。
だがそこに繰り出されたのは、距離をとったままのブラスター発射だった。
熱線は、巨大剣の刀身に反射して、弥助の髪をかすめ焦がした。
そのワンテンポを置いて、コガネは距離を詰めていた。
もしすぐに近接していたら、弥助に攻撃をガードされ、肉薄した状態から、今度はカウンター攻撃を受けていただろう。遠距離攻撃を防御したあとだったからこそ、弥助はコガネの次の一手に対応し切れなかった。
すなわち、上空から叩き込まれた、パイルバンカーの一撃を。
「ぐおお……ッ……!」
怒りと、悔しさと、痛みのまじった、獣の怒号を吐きながら、血飛沫の尾を引いて弥助は墜ちた。
猟兵が、さいごの魔軍将との戦いにおいて、初手を獲った瞬間であった。
成功
🔵🔵🔴
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
【芋煮艇第二班】で参加
◆対先制
「スケープシープちゃん」による防御からの
船首に伸縮自在の「スパナロッド」を避雷針として立て、その根元に待機する数宮・多喜さんへ雷を誘導します
◆戦闘
弥助の動きを直接止めに向かうスコッティさんの武運を祈りつつ見送り、
魔導障壁【マジカル・ディフレクシオン】で船を守りつつ追撃の雷を防ぎ、
雷を自身の力として制御できる数宮さんへ向けて反射することで
数宮さんの一撃の威力をより高め、トドメを援護します
作戦が成功したらお二人を船で迎えに行きます
スコッティ・ドットヤード
【芋煮艇第二班】【WIZ】
さっきの戦いで消耗してるからな…出来る限り囮の仕事を。
初撃の雷は自分の左掌で受ける。電気使いだし多少は軽減できるはず。
(覚悟・電撃耐性・激痛耐性)
…つっても腕は痺れる。いてー。死にそう。
さて相手と距離があるが…姿を見せたら多分またあの雷が来る。
丁度二人がド派手に雷を引き受けてくれてるから…(【選択UC】発動。透明になってひっそり近づく)
渦潮まみれの船の上だ、多少の足音はばれないはず。
近づいたら羽交い絞め、両腕の炎と雷で時間稼ぎだ!
トドメが放たれたら「俺ごとやれ!」…と叫びつつ、寸前で逃げる。卑怯とは言うまいね。
(早業迷彩だまし討ちフェイント逃げ足時間稼ぎ目立たない)
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
【芋煮艇第二班】として参上さ。
真打ちは遅れてやってくるってね!
荒れ狂う渦潮の中、
自身を『念動力』で浮かせ。
リネットさんのスパナを手に取って、
飛び交う雷霆をアタシに『おびき寄せ』る。
……雷で、アタシと張り合おうってんだね。
いいだろう、相手になってやんよ。
降り注ぐ稲妻を『オーラ防御』を介して、
自らのサイキックの『属性攻撃』に合わせて増幅させる。
もしも弥助が突っ込んでくるなら、
『衝撃波』で吹き飛ばして準備が終わるまで近付けさせない。
そうして神鳴る力を貯めこんで、
リネットさんからのダメ押し込みで【嵐裂く稲妻】となる!
スコッティ、離れろ!
叫ぶか叫ばないかのうちにぶちかます!
墜ちた弥助が強かに身体を打ち、転がったのは、スコッティ・ドットヤード(f20279)たちの乗る船の甲板だった。
痛みに呻いたのもほんのわずかのこと、跳ねるように身を起こした弥助は、傍らに猟兵の姿をみとめる。すぐさま、かれらは互いに、戦闘態勢へと移行した。
甲板を蹴り、バックステップで後方へ飛翔しながら、弥助が掲げたのはメガリス「闘神の独鈷杵」。
短い柄の両側に刃がついた、祭具でもあるはずの道具は、弥助に応えてその秘めたる力を呼び起こす。
「闘神の雷槌を受けろ!」
雷鳴――!
蛇のようにうねり宙を奔った雷撃が、スコッティを撃った。
「……ってぇえ――っ……!」
衝撃に甲板の上を滑りながらも、スコッティは踏みとどまる。
スコッティは雷撃を左の掌で受け止めたのだ。かれは電気を操るサイキッカー。ゆえに電撃耐性を備えていたのがさいわいした。それでも衝撃に腕は痺れており、もし追撃を受けたら――と思うと肝が冷える。まして、ここまでの戦いで消耗が蓄積しているのだ。
スコッティをかばうように、リネットヒロコ・マギアウィゼルーク(f01528)と、数宮・多喜(f03004)が進み出る。
船は右に左に大きく傾ぎ、風が唸りをあげていた。
リネットは、海域全体が巨大な渦をなしていることに気づく――これが「闘神の独鈷杵」の効果だというのか。雷は、海から迸り、縦横無尽に空を駆けていた。
弥助が指揮するがごとくに独鈷杵を持つ手を振るえば、雷のひとつが軌道を変えてリネットたちに襲い掛かった。
リネットは「スケープシープちゃん」にその雷撃を肩代わりさせると、間髪入れず、スパナロッドを取り出して放った。
「多喜さん!」
「任せな!」
それを受け取った多喜は、避雷針のロッドを掲げ、船首に立った。
「雷で、アタシと張り合おうってんだね。いいだろう、相手になってやんよ」
周囲を飛びかう雷が、複雑な弧を描きながら、いっせいに多喜へと向かった。誘き寄せられた蛇のように、避雷針がわりのスパナロッドに次々と「落雷」し、それを掴む多喜を電撃で苛んだが、多喜の身にまとうオーラのようなものの防御により、雷が彼女を黒焦げにすることはないようだ。
弥助は多喜自身を狙って飛来し、独鈷杵の刃を振るったが、多喜は念動力で自身を浮かせながら、衝撃波で応戦する。
「こんなもんかい? もっと来な!」
まるで喰らおうとでもいうように、雷を引き付けてゆく。
その後方でリネットは、
「マジカル・マギアル・リバリアル! 術式広域展開! 魔導障壁、発動っ!」
魔法障壁を展開し、足場であり、移動手段でもある船を、海域全体に満ちた雷撃のダメージから護っていた。
あらゆる攻撃を魔法の力で反射することのできるリネットの障壁は、流れ弾のように飛来する雷撃から彼女自身を護るのにもむろん役立っていた。
そしてもし、弥助がもっと注意深ければ――
このリネットの動きには二重三重の意味があったことに気づけたかもしれない。
一見して、自分や船を、雷撃から防御していることは誰の目にもわかる。だが、リネットは、防いだ雷撃は必ず、多喜に向けて反射しているのだ。
多喜のもとに集まった雷撃は、オーラ防御によって彼女を傷つけることなく、しかし、その周囲にエネルギーとして滞留したままだ。雷鳴が轟くたび、雷光が閃くたびに、多喜を囲む雷の層が厚くなってゆく。
そして。
多喜とリネットが動いたあと、もといたスコッティはどうしただろう。
(俺はお前に、見つからない)
ユーベルコード「陽炎(インビジブル・ディストーション)」を発動したことにより、スコッティの姿は誰の視界からも消えていた。
荒れ狂う嵐のなかで、誰も気づかぬうちに、そっと忍び寄り、機をうかがう――
「今だ!」
それは、何度目かに多喜の衝撃波を受け止めた弥助が、甲板に足をついたほんの一瞬のことだった。
姿をあらわしたスコッティが、不意打ちで弥助の背後から、かれを羽交い絞めにしたのだ。
「なんだと!」
弥助が振りほどこうとするのへ、スコッティは両腕にに炎と雷を生み出す。力だけで抵抗するのは難しい。もてるサイキックを最大限に生かしての時間稼ぎだ。
そう――。これはあくまでも時間稼ぎだった。弥助がそのことに気づいていたかどうか。
弥助はスコッティにしがみつかれたまま、空中に飛来する。
独鈷杵で雷撃を呼んだ。しかしその軌道は大きく曲がって、多喜のもとへ。
はっ、と弥助は息を呑んだ。
雷は、多喜のもとに集い、爆発寸前の危険さで、圧縮されていることに。
「俺ごとやれ!」
スコッティが叫んだ。そしていっそう強く、弥助を抑え込もうとし。
「バカなことを……!」
弥助が次に動くより早く――
「スコッティ、離れろ!」
多喜の声が、嵐を貫いた。
多喜は、その叫びが終わるか終わらないかというときには、すでに動いていた。
同時に、スコッティは弥助を離して身を投げ出している――ということは、「俺ごとやれ!」とは、ブラフだったか。
なんにせよ、多喜のユーベルコードはすでに発動している。
嵐裂く稲妻(ストレガ・オーバードライブ)。
電撃を伴う球状サイキックバリアをまとったまま、自身を弾丸としたように体当たりをする荒業だ。極限までためこまれた雷のエネルギーは、そのまま、多喜のバリアに上乗せされ、圧倒的な破壊力のまま、彼女は弥助にぶつかっていった。
自身が行使した「闘神の独鈷杵」の効果が巡り巡って弥助自身にはねかえり、土をつけたのだ――。
吹き飛ばされた弥助が、大きく水柱を上げて海中に没すると、空気に充満していた雷が、パチパチと弾けて最後の名残を残して消えてゆく。
海面の揺れも収まりつつあるようだ。
リネットは海をのぞきこみ、そこにただようスコッティと多喜を確認する。
「ご無事ですか~?」
ふたりがそれに応えるのを見て、リネットはかれらを回収すべく、船を動かし始めた。
成功
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宮入・マイ
【芋煮POW】っス!
あれが弥助ちゃんっスね、真面目な感じっス!
…UCを見る感じ船は壊れちゃいそうっスね。
マイちゃん海は苦手っスから…本体だけ真多子ちゃんに持ってもらうっス!
残った身体には『ロイコちゃん』をつめて…壊れた時に弥助ちゃんに飛びかかるようにするっス!
幻覚で真多子ちゃんのデコイをお手伝いっス!
真多子ちゃんが隠れられたらちょっと齧って【細部破綻の物知り】っス〜、マイタコちゃんっス!
これで海でも大丈夫っス!
後はみんなのサポートしつつ海中からタイミングを見て飛び出すっス!
そして弥助ちゃんと一緒に落ちてくる真多子ちゃんをガツーンと受け止めるっス!
海面にぶつけるより威力あるはずっス!
きゃっきゃ。
明石・真多子
【芋煮POW】の皆で行くよ!
なんかヤバそうな雰囲気がビンビンだね!
真正面から行くのはやめとこうかな~。
よし!ここはタコ墨を人型の霧状に吹いて『タコスミデコイ』で攻撃を[おびき寄せ]よう。
アタシも『タコの保護色能力』で黒く[迷彩]すれば見分けなんてつかないはず!
ついでにマイちゃんの抜け殻も黒く塗って本体は回収!
マイちゃんボディと遊んでてね!
あとは吸盤を使って[忍び足]で死角から一気に組み付くよ!
いっけ~軟体魔忍の伝家の宝刀、【軟体忍法阿修羅落としの術】だ~!!
行くよマイちゃん!
相手が人型なら全身の関節がボロボロになって軟体生物の仲間入りだね!
これがアタシ達のコンビネーションアタックだよ!
才堂・紅葉
【芋煮POW】
「あの一本気な御仁、どうしてオブリビオンなんぞをやってるのかしらね」
小さく息を吐くと六尺棒を構え、ブーツのガジェットで海面に爪先立つ。
「来なさい!」
【気合】を前面に攻勢を誘う。
先制の一撃は、【野生の勘、見切り】で三節にした六尺棒を重ねて受ける。
狙いは奴の剣圧と海の【地形を利用】して海底へと沈み、地形破壊を【迷彩】に自身に重力を足して姿を消す事。
勝機を見極め、真の姿になるUCで海底を蹴って浮上し、奇襲【しのび足、暗殺、吹き飛ばし】で空中へかち上げ。
更に飛行能力による【二回攻撃、属性攻撃、マヒ攻撃】で、超重力を帯びた空中関節技による追撃と束縛を狙う。
「仕上げはお願い、明石さん!!」
海に沈んだ。
いつもは軽々と振り回していた大帝の剣が今は重い。
猟兵とはここまでの敵か。弥助アレキサンダーは戦慄をおぼえざるをえなかった。
しかし、それでも――。
(信長様)
まだだ。あのお方のために、生ある限り、抗おうではないか。
骸の海ならぬ、関門海峡の海から、ふたたび弥助は浮上する。
波を割って、海面に立つと、大帝の剣を抜き放った。迷いがなくば、その鉄塊は手になじみ、自らの一部のようだった。
「なんかヤバそうな雰囲気がビンビンだね!」
明石・真多子(f00079)は、弥助がいまだ闘志を捨てていないこと、余力を残していることを察して、ぶるりと武者ぶるいを感じた。あのような敵に真正面からぶつかるのは得策ではないだろう。
「真面目な感じっス!」
「あの一本気な御仁、どうしてオブリビオンなんぞをやってるのかしらね」
弥助の強さの背景には、その強い信念がある。
そのことを宮入・マイ(f20801)と才堂・紅葉(f08859)は感じ取っていた。
どうあれ、闘わねばならない相手だ。
紅葉は、ガジェットブーツで海面に爪先立つと、六尺棒を構えた。
「来なさい!」
凛、と張った声が波間の空気さえ引き締める。
みなぎる気合に引き寄せられるかのように、弥助は挑んできた。
巨大剣を振りかぶるその動きは、決して洗練されたものではない。だが、その剣の一撃がとてつもなく重いことは明らかだった。技ではなく、力ですべてを圧し斬る――それが弥助の剣だった。
ならば紅葉は技で受ける。
襲い来る剣撃を前に、六尺棒は軽い音を立ててみっつのパーツに分かれ、瞬時に折りたたまれてひとつにまとまる。サムライエンパイアの故事にいわく、一本では容易く折れる矢も、三本束ねれば折るのは難しい。3つに束ねた棒で、紅葉は大帝の剣を見事に受けた。
斬られることこそ免れたが、凄まじい剣圧は、周囲の海水をまきあげ、飛沫の壁をつくりだす。
だが、それさえも、紅葉の狙いのうちだった。
剣を受け止めた力を利用するようにして、紅葉は自ら海に沈み、海中に姿を消す。弥助はすぐさま剣を引き、切り返して第二撃を放ったが、それは波下の紅葉をとらえることなく、ただいたずらに海を割って波をつくっただけだった。
「……何?」
自らがまきあげた波を浴びて濡れながら、弥助は周囲に頭をめぐらす。
波間にはいくつもの黒い人影がぷかり、ぷかりと浮かびあがってきていた。
それは、紅葉の傍らに控えていた、仲間の猟兵だ、と弥助は思った。その黒い姿の理由はわからぬ。弥助は頭を使うほうではない。あやしいものは叩き切るのが性分だった。
大帝の剣で、手近な一体を斬り伏せる。
「!?」
まっぷたつになった、その斬り口から、なにかがあふれ、弥助に襲いかかった――!
紅葉が弥助をひきつけていた一瞬に、真多子はスミを霧のように噴き、その黒い人型「タコスミデコイ」を創っていたのだった。そして自身も保護色能力で黒く色を変えることで、見分けのつかない黒いオブジェが波間にいくつも漂うことになった。
そしてそのうちの一体は、やはりタコスミで黒く塗られたマイだった。
正確には、マイの表面……彼女の外形をかたちづくる「殻」の部分である。マイの本体である中身は真多子のふところだ。そうでなくては、海水が苦手なマイがそこにいられるはずもなかった。
そして、弥助が最初に斬りつけたのが、彼にとっては不運なことに、マイの抜け殻だった。そのなかには触れたものの精神を惑わすマイの寄生虫「ロイコちゃん」が詰まっていたのである。
「なんだ……、クソッ……!」
弥助はむちゃくちゃに剣を振り回した。
視界のなかでは、波間にゆらゆら揺れながら、黒い影がくすくすと笑い、あざけるように踊る。
ロイコちゃんに触れられたがための幻覚症状だ。
「かかったね! マイちゃんボディと遊んでてね……って、あっぶな……!!」
うまく幻惑したかと思ったが、大帝の剣のパワー自体は健在なのであり、周囲の地形さえ破壊する斬撃を周囲に放たれていては意図せずとも巻き込まれる危険が高い。
すんでのところでかわしたものの、デコイたちは次々に破壊され、爆発のような水柱があがってゆく。
このままではデコイが全滅だ。急がなくては。
慎重かつすみやかに、真多子は潜行する。
同時に、マイ(本体)も、するりと真多子のふところを抜け出していた。ユーベルコード「細部破綻の物知り(パーティー・ヘブン)」により、真多子の細胞から彼女の特質をコピーして変異した、海中に適応したマイである。奇妙なり、宮入マイ。
『コード:ハイペリア承認。出力限定解除ランク100』
弥助は、海中に気配を感じた。
なにか大きな力が浮上してこようとしている。
大帝の剣を叩きつけた。……が、それさえ圧しのけるほどの力で、波を割ってあらわれたのは。
髪と瞳が赤く変じ、その背に輝く紋章を負った、紅葉の《真の姿》であった。
「おおおおおっ!?」
紅葉のまとう超重力の力場が弥助を押し返す。
その力場を自ら裂くかのように、紅葉が鋭い蹴りを入れた。弥助の大柄の身体が、やすやすと空中でかちあげられるのへ、マッハの飛翔で追いついた紅葉が、空中で関節を極める。
ごきり、と人体が立ててはいけない音と、絞り出すような弥助の呻き。
「仕上げはお願い、明石さん!!」
「おまかせーーー!」
力なく落下してゆく弥助を、海中から飛び出してきた真多子が抱き留め――いや、絡めとった。
「いっけ~軟体魔忍の伝家の宝刀、軟体忍法阿修羅落としの術だ~!!」
真多子のやらかな身体がすばやく弥助の身体に寄り添い、触手をからめてホールドする。そのまま跳躍すると、海面に助けを叩きつける角度で降下する――さながら海上のプロレスだ。
「行くよマイちゃん!」
弥助を待ち受けるのは、リングのマットでもなければ、海面ですらなかった。
「ガツーンと受け止めるっス!」
マイだ。
落下の衝撃を反射して上下から挟みつぶされるような格好で、弥助は全身にダメージを受けるのだった。
「これがアタシ達のコンビネーションアタックだよ!」
骨折箇所はひとつやふたつではすまぬだろう、満身創痍の弥助が、荒海へと投げされた。
成功
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雛月・朔
【POW】
(真の姿:引き続き『紫苑』の模倣)
『ふむ…どうやら…先の獣のことを見くびっていたようじゃな…あれほどの強さとは思わなんだ…。しかるに、それと同等の貴様も油断ならぬ存在、ということかのぉ…』
引き続き【念動力】で身体を浮かせ海上を飛び弥助のいる場所へ。
秀吉の身体能力から逆賊の十字架の加護で弥助も海上での戦闘に支障はないと思われるが動きは直線的になるだろう。
それを念頭におき、弥助の攻撃を回避しつつ弥助の利き腕であろう右手首を【念動力】で捻じ曲げる念を飛ばし右手を潰す。
右手首を折ることが出来ればUCを唱え纏った『万物に死を与える呪詛』を弥助に飛ばす。
『貴様の命、メガリスとやら、全て『死』ね』
「……か、はッ……」
波間から顔を出し、空気を求めて喘ぐ口から、弥助は血を吐く。肋骨が折れてしまったか。だがかまうものか。腕がもがれるまでは剣を持てる。腕がなくとも、くわえることだってできる。俺は大帝剣・弥助アレキサンダー。信長様の最後の剣。
最後に残された闘志と矜持を込めて、今いちど弥助は海上へと浮揚し、眼前の敵を見据えた。
雛月・朔(f01179)――いや、その髪はいまだ白いままなびく、幽鬼めいた姿だ。
『妾は先の獣のことを見くびっていたようじゃな……あれほどの強さとは思わなんだ……』
獣とは秀吉のことだ。
朔は秀吉の生命を吸い尽くそうとしたが、すべてを奪い切ることはできなかった。
『しかるに、それと同等の貴様も油断ならぬ存在、ということかのぉ……』
相対する弥助を見つめる。
ここまでの戦いで、弥助は相当に消耗し、追い詰められている。
それでも、決して油断のならぬ相手だと、朔は考えていた。もとよりオブリビオンは捨てられた過去が舞い戻った存在。侮れば一気に盤面をひっくりかえされかねない。
「ひとりでも構わねえ。ひとりだけでも猟兵の首を信長様に献上する。そうでなくては、秀吉殿にも申し訳がたたないから、な……!」
仕掛けたのは弥助だ。
大帝の剣が海を割った。
高く上がる波の壁のはざまを、自身の念動力により朔は飛ぶ。予測したとおり、弥助は強いがその動きは直線的だ。
もういちど振るわれた斬撃を、朔はかわしたが、距離を詰めていたぶん、回避はギリギリになり、髪の先がはらりと散った。
そして三度。今度もまた寸前で回避すると、念動力の射程に弥助をとらえ、朔が攻勢に転じる。
「……!? ぐ、ぁあああああっ……!」
弥助が悲鳴をあげた。
剣を持つ右手首を、誰かが掴んでいるかのような痕が浮かびあがり、ぎりぎりと締め上げてゆく。朔の念動力のすべてがそこに集中し、手首を締め付け、ねじり上げ、そして――潰した。骨が砕け、腱のちぎれる音が無残にひびく。
大帝の剣が、手を離れ、海に落ちる。
「しまった……!」
『終いじゃ』
朔は告げた。
弥助が目を見開く。彼は何を見ただろう。
たおやかな死神が最後通牒を突きつける姿か。その彼方の空が昏く翳るまぼろしか。そこに昇った、つめたい月か――。
『貴様の命、メガリスとやら、全て『死』ね』
それは万物が等しく『死』を迎える呪詛であった。
蝋燭の火が、消える瞬間には煌と燃え盛るように、せつなの激情をあらわにすれど、次の瞬間、灯火は消え、かすかな煙の残るのみ。
魔軍将、大帝剣・弥助アレキサンダーは、関門海峡の海に消えた大帝の剣のあとを追うように、彼自身もまた、海の底へと消えていくのだった。
猟兵たちは、エンパイアウォーの棋譜に、ひとつの勝ち星を、ここに刻んだのである。
成功
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