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エンパイアウォー⑲~略奪の報い

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #コルテス

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「よく集まってくれた、猟兵」
 グリモアベースで君たちを出迎えたのは、石動・劒(剣華常刀・f06408)だ。
「サムライエンパイアでエンパイア・ウォーが始まったことは知っての通りだと思う。今回お前さんたちには厳島神社まで転移し、強敵の一人『侵略渡来人コルテス』を討伐して来て欲しい」
 侵略渡来人コルテス。いくつもの国を渡り歩いてきた彼は、滅ぼした世界の戦力を利用しては、侵略と虐殺を繰り返して来た。彼が隷属の呪いをかけたケツァルコアトルもまた、その侵略の中で奪った“戦利品”の一つだ。
「このコルテスだが、現状でかなり慢心した姿勢を見せている。侵略の中で自分は直接戦わずに、“戦利品”たちに戦わせていたことも関係してるんだろうな。自分が直接攻撃されるとは思ってもいないし、戦い方ってもんを忘れちまってるんだ」
 それゆえに、予想できないようなユーベルコードの攻撃ができれば、かなり猟兵にとって一方的に有利な戦いができるだろう。
「だが、慢心しているとはいえ強敵は強敵だ。忘れてるってことは、逆に言えば前までは知ってたことを意味する――あんまりわかりやすい攻撃をすると、戦い方の一部を思い出して手痛い反撃を食らうこともあるだろう。気を付けてくれ」
 正面切って攻撃するなどのわかりやすい攻撃はもちろん、この依頼の中ですでに似たような戦術が重複しても手痛い反撃が待っている。
 フェイントや奇襲、目眩まし、連携、演出など工夫を凝らしながら、自分ならではの攻撃方法で戦うと良いだろう。
 例えば、誰かが戦っている最中に横から攻撃する横槍戦術が行われたとして、それは二度目は反撃されてしまうだろう。だが、目眩ましなどの工夫が挟まればそれは敵にとっての“予想外”となって反撃の余地を与えず攻撃を通すことができる。
「こんな侵略者を野放しにはできねえ。今までの略奪の報いを受けさせる時だ。頼んだぜ、猟兵」


三味なずな
 お世話になっております、三味なずなです。
 こちらはエンパイアウォーの⑲決戦コルテスのシナリオとなっております。
 自分ならではの戦い方で侵略者を打ち倒しましょう!

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================

 敵からの先制攻撃は無いです。猟兵たちが、厳島神社の屋根の上で高みの見物を決め込んでるコルテスへと奇襲を仕掛けるところから始まります。

 コルテスの反撃についてですが、「他の猟兵が似たような戦術を使った」の判定はそっくりそのまま、文意通りになります。ユーベルコードの種類が被っても、敵にとってそれが「まだ思い出せていない“予想外”の攻撃」であれば通るものとして判定します。

 なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。

 あなたは略奪者に対して、どのような報いを受けさせるでしょうか? プレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『侵略渡来人『コルテス』』

POW   :    古典的騎乗術
予め【大昔にやった騎馬突撃を思い出す 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    マスケット銃撃ち
【10秒間の弾籠め 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【マスケット銃】で攻撃する。
WIZ   :    奴隷神使い
【ケツァルコアトルの噛みつき 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:シャル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

花剣・耀子


ははあ、慢心。
……良いわ、それを利用させて貰うだけよ。

屋根の上に居ると予知されていたわね。
下から行きましょう。
神社の中、コルテスの真下から、屋根ごと殴りに行くわ。
素直に落ちてはくれないかしら。
でも、下に意識を向けてくれたら充分。
崩れたら鋼糸を張って瓦礫を渡り、飛び越えて、今度は上から叩き潰すように。
ねえ、はがねの鞘って当たると痛いのよ。

周りの様子はよく見て、同じ作戦を採るひとが居たら協力を。
乗騎や敵の意識が此方に向いていると感じたら、
咄嗟に避けて致命傷だけは負わないように。
あたしに向かってくるなら、他が留守ということでしょう。
それが隙になるのなら、目的は達成できる。
誰かの刃が届けば上々よ。



 安芸国、厳島。潮風漂う対岸より見遣れば、音に聞こえし大鳥居と荘厳なる社殿が見える。
 日本三景が一、宗像三女神を祀る厳島神社だ。
「ふん、下等生物風情が無駄に抵抗などしおってからに……」
 その屋根の上に、不遜にも一人の男が座っていた。彼こそが侵略渡来人、コルテス。彼はこの神社に納められていた数々の宝を品定めしていた。
「しかし、略奪とはつくづく良いものだな。思うままに奪い、思うままに殺すを眺める。これほど気分の良いものはなかなかあるまい」
 そうだろう、と彼は過日の“戦利品”であるケツァルコアトルを一瞥する。かつて別の世界で神として崇められたその竜は、しかし今はただの乗騎としてかんばせを伏せてただ沈黙を保つのみである。
「猟兵だったか。あいつらも俺に手を出すような愚は犯すまい」
 財宝を両手に持って、上機嫌そうにコルテスが笑い声を上げる中。ふと、そのケツァルコアトルが何かを鎌首をもたげた。
 その次の瞬間、コルテスの座っていた屋根が崩れた。否、“破壊された”のだ。
「何が……クソッ、ケツァルコアトル!」
 目を剥いて驚愕するコルテスは、咄嗟にケツァルコアトルを呼んでその背に騎乗し、上空へと逃げて瓦礫を避けようとする。
 眼下で崩落していく瓦礫。もうもうと立ち上がるほこりの煙。その中で、黒い影が飛び上がった。



 黒い影は少女の形をしていた。花剣・耀子(Tempest・f12822)だ。
「落ちないか。まあ、慢心しているとはいえ、そううまくはいかないわよね」
 無表情に呟く声音は予想通りだと言わんばかりだ。彼女こそがコルテスの座っていた屋根を粉砕した張本人であった。
 彼女はその黒のセーラー服をはためかせながら、鋼糸を巧みに利用して瓦礫を足場に上空へと跳躍を繰り返す。その手に握られているのは、鞘に収まった剣だ。
 空を裂く彼女の頭に生えたる黒角は羅刹の証。外見に似合わぬ凄まじい羅刹の筋力でもって、半ば以上宙の瓦礫を蹴り落とすつもりで彼女は跳躍を繰り返す。時折補助的に使われる鋼糸は、まるで彼女が所属する対UDC組織が一、《土蜘蛛》の名の通りではないか。
 上空へと逃れたはずのコルテスへ、瞬く間に肉薄したかと思えば、耀子は剣を振るった。抜刀術――ではない。この剣は――残骸剣アメノハバキリはその刀身に封ぜられた呪詛を逃さぬように鞘で塞がれ、抜けない。抜かない。
「ねえ、はがねの鞘って当たると痛いのよ」
 だからそのまま、鞘に入れたまま扱う。切れ味などなくとも、羅刹の腕力をもってすれば鈍器はすなわち地を割りかねないほどの凶器と化すがゆえに。
「俺を庇え、ケツァルコアトルゥ――ッ!」
 空を殴りつけるかのように振るわれるアメノハバキリは、果たしてコルテスには届かず、その乗騎たるケツァルコアトルの胴体にめり込む。苦悶の悲鳴を上げてかつての太陽神が体勢を崩し、地へ墜ちていく。

     Nightfall
「まさしく 黄昏 か。皮肉なものね」
 
 己もまた自由落下に身を任せながら、眼下で墜ちゆくコルテスを眺める。ふと、墜落しながら忌々しげにこちらを見上げて睨みつけるコルテスの目が合った。
 彼女はただ、冷たく怜悧な青い瞳でそれを一瞥して、呟くのみだ。
「あなたの慢心、利用させて貰ったわ」

成功 🔵​🔵​🔴​

草野・姫子
◎連携歓迎
あれがコルテス
その言葉も行為も、もはや怒り果てた
私は、神と神を繋ぐモノとして、私がやるべきことをする――覚悟はよいか、いくぞ、友よ

太陽神の弱体化が目的
UC【龍樹の枝】を【茅の輪】の一つに差し込み透明化しておく
【指定UC】で友の幼竜に乗り、戦闘中の敵に向かい突撃に見せかける
攻撃を【見切り】友の【空中戦】で軌道を変え、すれ違う
その際に透明化と巨大化しておいた【茅の輪】にくぐらせる事で、呪い穢れを移しそのまま上空へ
茅の輪を太陽にかざし【礼儀作法】に則って【祈り】友に太陽神の力を相手から継承させ、力を削ぐ

天照の誓より生まれし厳島の三神よ!
此処に異教の太陽神の継承の儀を行うを赦し、照覧し給え!



「……あれがコルテス」
 天を舞うケツァルコアトルに騎乗する男を見て、草野・姫子(自然を愛するモノ~野槌~・f16541)は憤慨していた。
 姫子は山の神だ。自然を愛し、獣たちを慈しんできた。その反面、山を荒らす人や、彼らに作り出された機械たちは、時に疎ましく思うこともあった。とはいえ、人の子らにも一目置くべき存在や興味深い者も多くいたし、遠回しにだが手助けすることも少なくなかった。
 だが、目の前の男は駄目だ。エンパイアの民らを下等生物と呼んで憚らないその言葉と態度、その繰り返してきた愚行。そして、神なる存在を隷属させるその涜神。いずれも姫子の逆鱗に触れるに足る理由だった。
「――私は、神と神を繋ぐモノとして、私がやるべきことをする」
 神の身にして、彼女は神と神の橋渡しとなる戦巫女でもあった。ゆえにこそ、かのケツァルコアトルをあの男の呪縛よりどのような形であれ、解放しなくてはならなかった。
「覚悟はよいか。――行くぞ、友よ」
 呼び出したるは鳥どもと、そして羽毛の生えた蛇――異教にして異境の友、幼竜ケツァルコアトルだ。
 コルテスを背に乗せたケツァルコアトルの瞳が幼竜を捉えてわずかに揺らぐ。この幼竜こそがあの霊峰富士鳴動事件の折に、コルテスが儀式のために生贄にせんとした、ケツァルコアトルの産んだ子である。神の身なれど子へ向ける親の情はあるということだろう。
「侵略には呪いを、冒涜には報いを!」
 言葉と共に、幼竜は空を駆けた。侵略者コルテスへと向かうその軌道は、一直線に上昇するものだ。
 当然、コルテスとてそれには気付く。手にした銃を構え、姫子へと狙いを付けた。
「馬鹿め、正面から来るとはな!」
 銃声。弾丸と姫子の軌道が一直線に重なろうとする、その刹那。ぐるりと幼竜は身体を傾いでその身を回す。バレルロールだ。放たれた銃弾は、その回避運動によって虚空を裂くのみに終わる。
「ちぃ、役に立て、ケツァルコアトル!」
「友よ、今こそ母君に報いる時ぞ!」
 姫子の呼びかけに、幼竜は雄叫びを上げてコルテスへ向かう。
 一瞬の交錯。子を噛み千切らんと伸ばされた母の顎から逃れ、幼竜はその身を翻した。その瞬間、姫子は何かを握った手を大きく振るう。
 ふと、枝が落ちた。それを鍵にしたかのように、姫子の手には巨大な輪が握られていた。茅の輪だ。彼女は龍樹の枝を予め輪に刺しておくことで、透明化させておいたのだ。茅の輪はコルテスを、ケツァルコアトルを通すことで、呪いと穢れを移し取る。
「――天照の誓より生まれし厳島の三神よ!」
 茅の輪を太陽へと掲げ、呼び掛ける。輪の中の太陽が、呼応するようにひときわ強く輝いた気がした。
「ここに異教の太陽神が継承の儀を行うを赦し、照覧したまえ!」
 行う儀式は“継承”――つまり、母の太陽神としての権能を、子へ引き継がせるためのものだ。
 儀式には時間がかかる。徐々に徐々に、母たるケツァルコアトルの神力が天に輝く太陽を通して、幼竜へと移されて行くのを感じる。ぐらり、とケツァルコアトルの身体が傾いで、コルテスが慌てた。
「母と子。神と神。しかと繋いだぞ、友よ」
 騎乗する幼竜の背を撫でる。神力を次第に帯び始めた幼竜は、感謝を示すかのように姫子へと一瞥を向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バレーナ・クレールドリュンヌ
◎アドリブ絡みOK

【WIZ】

容赦は必要ないわね。
貴方が掴むものは栄光でも黄金でもない事を教えてあげる。

【接敵】
タイミングは合わせるわ、ほかの猟兵の人達と一緒に行きましょう。
リザレクト・メデゥサキン、血蠍のスカルブラッド、先陣をお願い。

【戦闘】
血蠍騎士に前線をお願いするわ、そして、海月令嬢オーレリア、貴女がこの戦いの鍵。
海月令嬢に守ってもらって、敵をこちらに引きつけて海月令嬢に接近したところで、狂乱の刺胞の髪で毒を。
こちらが追い詰められているように見せて、狂乱の毒を相手に仕込みましょう。

何を慌てているの?
病を持ち込んで大勢の人を死に至らしめたじゃない?
死は平等に、貴方の番が回ってきただけよ。



「くっ……一体どうしたというのだ、この役立たずめっ!」
 弱り始めたケツァルコアトルを見て、コルテスが激昂する。強引な形なれど、必要な手順を踏んだ太陽神の権能を継承する儀式が執り行われていることなど彼には察しようがなかった。辛うじて低空飛行するケツァルコアトルの背を、八つ当たりするように銃把で殴りつける。
「あら、ダンス相手に振られてしまったの?」
 飴のように甘やかで綺麗な声が海の方からした。海面の上に建てられた大鳥居、その上に人魚が座っていた。バレーナ・クレールドリュンヌ(甘い揺蕩い・f06626)だ。白い彼女の傍らには、赤の騎士と青の令嬢が立ち並ぶ。
「それならちょうどよかったわ。血蠍のスカルブラッドは飛べないから」
 バレーナの言葉と同時に赤の騎士が跳躍し、コルテス目掛けて一直線に突撃を始める。
「ちぃっ、邪魔をするなよ下等生物風情がッ!」
 正面から来られれば対処は容易だ。盾が覆い切れていない範囲の足元を中心に銃撃し、突撃のテンポを崩す間に、ケツァルコアトルの体勢を立て直させる。機動力で翻弄しながら遠近距離からの一撃離脱戦法でじわじわと嬲ってやれば、防御に優れた騎士でもまず負けることはない。――在りし日に経験した戦場での記憶を頼りに、彼は行動を始める。
 だが、障害が一つあった。令嬢だ。
「オーレリア、癒やしてあげて」
 バレーナの呼びかけに応じてクラゲのような水色の長髪を持った令嬢が手を振ると、澄んだ水が現れる。まるでシャボン玉のようなそれは、騎士の身体に触れるやその傷をたちどころに癒やしてしまった。
「騎士の守り、令嬢の癒やし。――容赦は必要ないわね。貴方が掴むものは、栄光でも黄金でもないことを教えてあげるわ」
「戦術の基礎だけで知った口を!」
 バレーナの挑発的な言葉に対して、コルテスはケツァルコアトルを駆る。
 堅牢な騎士の守りに加えて令嬢の癒やしが合わされば、騎士は疲れ知らず傷知らずの難攻不落の人要塞と化す。ゆえにこそ、コルテスはこの人の要塞を“迂回”する必要があった。即ち、バレーナと令嬢への直接攻撃だ。
 騎士へと牽制の銃撃を与え、身の守りを固めている間にコルテスはバレーナたちの元へと飛来する。
「噛み砕け、ケツァルコアトル!」
 ケツァルコアトルの顎が大きく開かれ、令嬢とバレーナを捉えようとする。だが――
「――そう来ると思っていたわ」
 バレーナを、令嬢が庇った。
 獲った。コルテスの表情が野蛮に歪む。これであとは嬲り殺しにしてやればよいだけだ。そう考えた瞬間――ケツァルコアトルの身体が傾いだ。
「なん――ッ!?」
「ご存知なくて? 海月は毒を持っているのよ」
 侮蔑の感情すら籠もった、冷たい表情でバレーナは墜ちゆくコルテスを見下だす。普段であれば悪態の一つでも返すであろう彼には、しかし狂乱の毒に冒され、継承の儀によって弱体化したケツァルコアトルの体勢を立て直させることに必死だ。
「くそっ、この役立たず、役立たずめ!!」
「何を慌てているの? あなた、聞けば病を持ち込んで大勢の人を死に至らしめたじゃない?」
 異世界の病原菌を持ち込んで、抗体の無い世界に広めて一つの国を流行病で崩壊させた――。彼女がどこぞで小耳に挟んだ、コルテスの噂だ。
「死は平等に。――あなたの番が回ってきただけよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

雲鉢・芽在

なるほど、他の方とは違う攻撃をすればいいのですわね
しかし私が貴様に致命打を与えなければいけないわけでもないですもの
他の方がいらっしゃればそのサポートをさせていただく方が効率的ですわ

私は隠し持っていた無数の注射器を全ての指の合間に挟み、爪で空を撫ぜるように大きく腕を振るいますわ
この姿でしたら、得物を投擲するだなんて思われるかしら?
まあ、貴様がどう考えようと私は知ったことではありませんが

注射針から押し出し紡がれるのは七色の軌跡
空気中に触れると半凝固し触れたモノを腐り蝕む毒の糸
貴様は既に私の巣の中、絡めとられた蝶のよう
いいえ、もしくは私と同じく"蛾"なのかしら?

さあ、皆さま
後はお任せいたしますわ


藤塚・枢

交戦に時間をかけていい相手じゃないな
交戦前に地面や屋根の下の廊下に慎重に罠を仕込んでおく
上から戦場が移動した時用の保険だ
鋼糸による捕縛、爆破や閃光の手榴弾、PE4による爆破等、単純にならないよう地形を利用して丁寧にだまし討ちの罠を設置してから交戦に加わる

人形を矢面に立たせる形で、銃による被弾を可能な限り防御
仲間との連携を意識し、鋼糸で罠も張りつつ人形の攻撃主体で交戦
近付けた機会には煙幕or閃光手榴弾で一瞬視界を切り、UCで自分の偽物を作り出す
中身は爆薬やら手榴弾のお徳用セット
それを離れた位置から人形として操り、仲間を巻き込まない位置で爆破させてやろう
世界遺産が壊れる?
勝たなきゃ世界が壊れるさ



 墜落するケツァルコアトルを、なんとか海の上から陸上へと誘導させてコルテスは不時着させた。海に濡れれば、数少ない己の持つマスケット銃でさえも使い物にならなくなる。
 ――だから、コルテスは空中戦で敗れれば海岸に降りるだろう。藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)はそう踏んでいて、そして実際その通りになった。
「ビンゴっ……♪」
 耳をつんざくような爆音と、衝撃波。海岸に降り立ったコルテスとケツァルコアトルが地雷の爆風に呑みこまれる。だがこれはあくまで“保険”だ。その証拠に、オブリビオンたるコルテスには致命打となるダメージは入っていない。ここから先は、小細工なしの戦いが待っている。
「フォリーくん、お願い」
 のそりと枢の前に出たのは、巨大化されたからくりぬいぐるみ。彼女はその影に隠れながら、その操作に注力する。可愛らしいその見た目に騙されることなかれ。吹き矢などの内蔵されていた暗器がコルテスへと牙を剥く。
「まずは貴様からだ!」
 地に倒れ伏すケツァルコアトルを盾にして暗器の攻撃を防いだコルテスは、マスケット銃で応射する。牽制による障害物を互いに利用した銃撃戦だ。大抵、こういった状態は膠着状態に陥りやすい。
「だからそこに付け入る隙があるんだ。……出し抜かせて貰うよ」
 ピストルで二連、牽制射撃をした直後にフラッシュバンを投擲する。ぱん、と弾けるような音と共に閃光が辺りに広がった。それが合図だ。
 閃光によって白く染まった中で動く物が二つあった。枢の操る鋼糸が、コルテスの動きを制限するように張り巡らされていく。
 そしてもう一つ――雲鉢・芽在(毒女・f18550)の投擲した無数の注射器が、コルテスの頭上を通っていく。
「絡まりなさい」
 言葉と同時に、注射針から噴出したのは毒々しい七色の薬液だ。それらは空気に触れると即座に半凝固し、まるで糸のように固まりコルテスの身体に絡み付いて行く。
「な――何をっ!?」
 慌てて薬液の糸を振り解こうとするコルテス。しかし、辺りに張り巡らされた鋼糸がその動きを制限し、芽在の放った毒糸がコルテスの身体を蝕んでいく。
「膠着状態になるなら、他の猟兵と協力して打開する――うまく出し抜けたね」
「とはいえ、私は致命打を与えられるわけではありませんから、こうしてサポート程度しかできませんが」
 眠たげな目でしてやったりと笑う枢に、注射器を手に艶やかに笑む芽在。
 コルテスは今、枢の鋼糸が張り巡らされる中、芽在の毒糸に絡まれてその腐食性の毒によって身体を蝕まれていた。
「まるで蜘蛛の巣に絡め取られた蝶のよう――。いいえ、もしくは私と同じく“蛾”なのかしら?」
 蝶と言うにはあまりにも醜いですものね、と芽在はころころ笑ってみせる。もっとも、同じ蛾は蛾でもその内に蓄えた毒性の差は一目瞭然だ。彼は侵略と財宝への欲求が己をも蝕む毒となり、芽在は敵意と害意を敵を腐食する毒としていた。
「まあ、貴様がどう考えようと私の知ったところではありませんが。……では、後はお任せしますわ」
「あまり長く戦っていて良い相手じゃないからね。ここで一気に畳み掛けるよ!」
 作り出すのは精巧な己と同じ姿の人形。枢に操られるがままに一直線に鋼糸を抜けて、毒糸に絡まるコルテスへと肉薄させる。
 爆風が二人の髪を揺らして、爆音が耳をつんざいた。人形の中に入っていた、爆薬や手榴弾などの爆発物が一斉に起爆したのだ。
「おのれ……猟兵どもめ、容赦はせんぞ!」
 爆発で巻き起こった煙の中からコルテスが這い出る。さすがの枢も、敵のタフさ下限には舌を巻いた。
「世界遺産だとか国宝が壊れるだなんだって、配慮してられる余裕はなさそうだね。……勝たなきゃ世界が壊れるんだから」
 さあ、次はどう出し抜いたものか。かつての戦術家を前に、枢は次の手を考える――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トルメンタ・アンゲルス

渡来人、ですか。
他所の国って、どんな感じなんでしょうね。

に、しても。
分かりやすい攻撃、ねぇ。
俺には速さしかないんで、それで圧倒して見せますよ。

さぁ行こうか相棒!
変身!アクセルユニゾン!
『MaximumEngine――Mode:Formula』

相棒を攻撃力重視の装甲として変身合体!

さ、油断せず行きましょう。
俺のやる事は一つ。
「超光速による、対応も認識も許さない攻撃」だ。
奴がこちらに気付かない範囲で始動し、一気に光速ダッシュ!
怒涛の連撃を奴に叩き込み、地に墜とす!
そして、すぐに感知範囲外へ離脱!


行くぞ侵略者。そのまま一生慢心していろ――
『FullThrottle――』

――HyperDrive!


黒白・鈴凛
憐れ憐れ……
如何に高名な将と言えど無駄に月日を重ねればこうも錆びてしまうものカ

お前はワタシらを甘く見ているそうだナ?
ヨロシ、ならそのまま油断しとくと良いネ
窮鼠猫を噛む、くふふ、大熊猫の牙はお前の喉を咬み切るぞ

きっとワタシ以外の猟兵達が奴に傷をつけるだろう
ワタシはその傷から出た血を飲み力を覚醒させる
悪食晩餐、鬼の口となった食腕を大きく広げケッツァコアトルごと噛みつく

安心するヨロシ今は蛇食いをする気は無いネ
食らうは満身した将のみ
お前に喰らわれる側の苦しみを教えてやろう



 なんとも憐れな話だった。
 いかに名高き名将なれど、研鑽を怠り年月を経ればこうも錆びつくものなのかと、黒白・鈴凛(白黒娘々・f01262)は吐息する。時間の流れは万物を風化させる。理解してはいても、ヤドリガミたる彼女であっても複雑な思いがそこにはあった。
「これも研鑽を怠った者の末路ネ。同情はしないヨ」
 彼女が地面から指ですくい上げて舐め取るのは、コルテスの負傷から流れた血だ。腐食毒の混じったそれを口に含んで、うえ、と鈴凛は顔を顰める。血に含まれた毒の量が大して多くなかったがゆえに、彼女自身に悪影響は無いが、それでもまずいものはまずい。
「これもまた悪食。酸いも甘いも喰らえば、毒も皿まで食らってやるヨ」
 べ、と少しだけ痺れる舌を出しながら鈴凛が腕を振るう。刹那、振るわれたたおやかな腕が一気に獣の如き巨腕へと変貌した。その手の平は、鮫のような乱杭歯でできた鬼の口が形成されている。食腕だ。
 爆発。爆風によって立ち昇った煙が晴れると同時に、鈴凛はその白髪をたなびかせながら真横へ跳躍した。
「いただきます」
 ぐわ、と鬼の口が大きく広がり、肉薄したコルテスへと食らい付く。その首筋へと伸びた必殺の一撃を、左腕を犠牲に差し出すことでなんとか防ぐことができたのは、彼の悪運だろう。
「いつの間に……ッ!? この、下等生物が!」
「随分甘く見ているようネ。ヨロシ、ならそのまま甘く見てると良いヨ」
 鈴凛の咬撃を振り解きながら銃把でもって反撃しようとするが、近接戦ではコルテスに分はない。格闘術に慣れ親しむ鈴凛によってそれは軽くいなされてしまう。
「窮鼠噛猫。――くふふ、大熊猫の牙はネズミの歯の比じゃないアルヨ。お前の喉を咬み切ってやるネ」
 鈴凛が鬼の口をコルテスの左腕から引くと、ブチブチと肉と筋が引き裂かれる野蛮な音がした。男が苦悶の声を上げる。
「野蛮人……野蛮人め! ああ、俺の左腕が……!」
「毒混じりなのもあるガ、やっぱりお前の血肉はまずいヨ」
 肉が大きく欠けて、血がとめどなく溢れ出る二の腕を見て愕然とするコルテス。それを見て、鈴凛は呆れたように吐息する。鬼の口はその乱杭歯で食い破った肉をぐちゃぐちゃと咀嚼していた。
「侵略する側だと、食われるのは慣れてないようネ。これが喰われる側の苦しみアル」
「畜生、下等生物めが……!」
 脂汗を垂れ流すコルテスは、鈴凛を睨め付けながら無事な右腕だけで銃を構える。――その中で、直感的に一つの疑問を得た。
 なぜ、近接戦闘に優れる彼女が、わざわざ左腕を食らうだけで済ませて距離を取ったのだろうか。
 その答えは、直後に事実として文字通り“叩き付けられた”。
 何の脈絡もなく、コルテスが宙を舞って地に倒れ伏したのだ。



 時は少しばかり遡る。
「渡来人、ですか。よその国ってどんな感じなんでしょうね」
 エンパイアにはこの列島以外に何も無い世界とは聞き及んでいますが、と呟きながらトルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)は彼方に見える鈴凛とコルテスを見遣る。
 世界を渡り侵略を繰り替えして来たと言われる侵略渡来人。それが、どうしてかスペースシップワールドの銀河帝国軍とダブって見えてしまった。武者震いする手で、ベルトに触れる。
「……さあ、行こうか相棒! 変身、アクセルユニゾン!」
『MaximumEngine――Mode:Formula』
 ベルトの音声と共に、傍らにあった愛騎“Nochaser”が変形し、トルメンタの鎧として蒸着されていく。装甲は最低限に、鋭利で衝撃を与えやすい形に特化したフォームだ。
「俺のやることはただ一つ――」
 認識も対応も許さない、超高速攻撃。
「行くぞ侵略者。そのまま死ぬまで慢心していろ」
『FullThrottle――』
「――HyperDrive!」
 彼方の鈴凛がコルテスから距離を取ったのを認めるが早いか、トルメンタは光を超えた。
 音も光も置き去りにして、瞬きも許さぬ時間で肉薄すると、コルテスの身体へと拳で、脚で、連撃を叩き込む。その時間ですらも、コンマ一秒にも満たない、知覚の外で繰り広げられる攻撃だ。
 結果、コルテスはトルメンタの文字通り“目にも止まらぬ”連撃を受けて、宙を舞い地に伏した。一拍遅れて、音が鳴って衝撃波が周囲に巻き起こる。
「やったアルカ!?」
「――いいえ、まだです」
 鈴凛が衝撃波に飛ばされないように地面に伏せて身を守りながら叫ぶ。トルメンタは残心の構えを解かなかった。
「まだ、やつは死んでいません」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヨナルデ・パズトーリ
何処までも戯けた奴よ
ならば、奴の犠牲になった者の慰めに妾、テスカトリポカの手で恐怖を思い
出させてやろう!

厳島神社という海に近い『地形を利用』
『殺気』を抑えた上で『迷彩』で『目立たない』様にし『暗殺』の要領で
『水泳』技術を用い海に潜伏
敵の隙を『見切り』『高速詠唱』で自身の司る煙の『属性攻撃』の魔法を放ち
『目潰し』を行う『先制攻撃』

UCを発動
高速飛行による『空中戦』を発動し肉薄
『怪力』による『呪詛』を込めた『鎧無視攻撃』で傷を与え其の『傷口をえぐる』
様に『零距離射撃』による『呪詛』を込めた『全力魔法』を『高速詠唱』で
叩き込む『二回攻撃』で『恐怖を与える』

攻撃は『野生の勘』で『見切り』『残像』で回避



「どこまでも戯けたやつよ」
 ヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)は海面から戦闘の様子を眺め、憤慨していた。かのケツァルコアトルを貶め隷属させる侵略者を見て、彼女は怒りを抑えきれそうになかった。
 ヨナルデもまた、神の一柱だ。遥かメキシコで信仰されてきた古き死神、ジャガーの化身にして闇と月を司る戦闘神、煙る鏡――テスカトリポカ。それが彼女の正体の一つの側面だった。そしてまた、彼女はケツァルコアトルの妹神、ケツァルペトラトルでもあった。
「慢心せし人間め……。己の行いを悔い改めぬどころか、死を、神を冒涜するなどと!」
 戦闘神たる彼女からしてみれば、侵略自体は別に構わぬことだった。だが、オブリビオンという死を否定する、蘇りし存在は到底許すことはできなかった。それに加えて、かのケツァルコアトルを隷属させるなどという蛮行はすなわち殺意の対象になることに他ならなかった。
「ケツァルコアトルへの慰めだ。妾が、テスカトリポカがこの手でやつに恐怖を思い出させてやろう!」
 しゅう、と胸元の黒曜石の鏡から煙が立ち昇る。煙はたちまち海面を渡り、まとわりつくようにコルテスを包んで周囲一帯に充満し始めた。
「力を貸して貰うぞ! 妾と対なす者、戦友にして好敵手にして、兄妹だった者! 神である事に囚われ、壊れ、妾が過去へと送った伴侶! ――翼ある蛇よ!」
 天高く、太陽へ向けて宣言するように呪文を唱える。すると、ヨナルデの身体が蛇のような鱗によって覆われ、その背に翼が現れた。その特徴こそが、【今は亡き対なす神の残り香】に違いない。
 海面より飛び立った彼女は、煙に乗じてコルテスへと肉薄する。ぶおん、と煙を裂いて、黒曜石の戦斧が振るわれた。コルテスの悲鳴と共に、手応えが返って来る。
「ケツァルコアトルを隷属させた涜神の報い、今ここで受けて貰うぞ!」
 戦斧の刃を更に押し込み、握り込んで傷口を開くようにえぐる。
 あのケツァルコアトルが、彼女の知るケツァルコアトルとは違う異世界のものかもしれないことは、ヨナルデ自身承知していた。だが、仮にそうだったとしても、彼女はコルテスを到底生かしてはおけなかっただろう。彼女とケツァルコアトルは戦友で、好敵手で、そして兄妹だったのだ。彼女の胸の中には、並々ならぬ感情が渦巻いていたに違いなかった
「我が斧の音を聞け。我ら神を畏れのだ。――その涜神の代償、高くつくぞ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ヨハン・グレイン

オルハさん/f00497 と

慢心は油断に繋がりますよね
それならば大いに結構だ
横っ面を張ってやりましょう

『焔喚紅』から黒炎を喚び、<呪詛>と<全力魔法>で強化
竜巻めいて派手に燃え上がらせよう
目的は陽動、敵の目を惹き付ける

かかって来いよ。燃やし尽くしてやろう
それとも獣めいて火が怖いとでも言うか?

挑発はするがあくまで防御に徹する
こちらに向かう攻撃に対し魔力を集中させ火力を高め、
炎壁を抜けて攻撃を届かせぬよう立ち回る
その間に見た目だけは派手に黒炎をぶつけてやろう

俺は独りで此処に来たわけではないんですよ

彼女の動きに合わせて黒炎を消し、不意打ちの手助けを
【蠢く混沌】で足止める


オルハ・オランシュ

ヨハン(f05367)と

慢心は強者の証なのかも
でもそうだね、今こそ好機だよ
行こう!
慢心してたって後悔させてあげるんだから

敵に勘付かれないように死角に回って
ヨハンが喚ばった黒炎に飛び込んで、その竜巻の中に身を隠す
熱……っ、
流石に怖くないなんて言ったら嘘になるけど、不安はないや
しっかりコントロールしてくれてるのがわかるから

姿が隠れているうちに【力溜め】
私達は独りじゃない――!
彼の言葉を合図に三叉槍を構え、穿つ
そのタイミングで黒炎を消してくれると信じて
【鎧砕き】【捨て身の一撃】の順に【2回攻撃】
見切られないように【早業】で



 もうもうと立ち込める煙が晴れた後に、炎が渦巻いた。まるで雲を突き抜け天を支える柱のように立ち昇る黒い炎の主は、ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)だ。逆巻く炎で起きる暴風によってページがまくられていく魔導書を片手に、彼はコルテスをまっすぐに見る。
「次は俺が相手になる。どこからなりとかかって来いよ。燃やし尽くしてやろう」
「真正面からかかって来るとはな。まるで灯火に誘われて自ら炎に身を投げる虫けらのようではないか」
 身体を毒に冒され、負傷して血を流しながらなお、コルテスはせせら笑う。対するヨハンの表情は嘲笑に対して何の感慨も抱かず、炎渦のすぐ傍に立っていながらも常と変わらぬ顔だ。彼の怜悧な視線は、コルテスが炎渦を警戒して身構えているのを見逃さなかった。
「文明は火と共に起きたと言う。文明人を自称しておきながら、獣めいて火を怖れるのか?」
「フン、火を扱えただけで文明人気取りとはつくづく下等な奴らよ。笑わせてくれる!」
 コルテスがマスケット銃の引き金を引く。銃声。ヨハンがそれに合わせて手をかざすと、指輪のルビーが揺らめくように輝いて、炎の壁を作り上げる。炎の壁は迎えた銃弾を燃やし尽くし、あるいはその行き先を捻じ曲げる。舌打ちしながら、コルテスが弾込めに移る。そして、その機を逃すヨハンではなかった。
「言ったはずだ、『燃やし尽くす』と」
 紅石の輝きが増したかと思うと、呪詛と魔力が込められた炎の渦がまるで巨人の足ようにコルテスへと向かっていく。だが、コルテスに焦った様子はない。
「馬鹿め。――ケツァルコアトル!」
 侵略者の呼びかけに応じて、ケツァルコアトルがコルテスに覆い被さるように飛び入って来る。ケツァルコアトルは一説には太陽神であり、また人類に火をもたらしたとも伝わる存在だ。火炎に対する耐性があってもおかしくはない。
 そんなこと、ヨハンは当然予測の上だった。
「その言葉、お返ししましょう。――俺は独りでここに来たわけではないんですよ!」
 火勢に負けぬほどの大声で叫ぶ。
 その言葉は合図のために。彼が手を握り込むと、黒炎の渦が解かれる――。



 時計の針は遡る。
「私たちらしく、かぁ……」
 グリモアベースにて。説明を聞き終えたオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は難しい顔をしていた。眉間にシワを寄せて、むむむと考え込む。
 その様子を見かねてか、ヨハンが口開いた。
「そう難しいことではありませんよ。敵の慢心は油断に繋がります。その油断をいかにこちらが利用できるか、という話ですよ」
「わかってるけどさ。他の人たちと被らない、私たちらしい戦術ってなんだろうなぁ、って……」
 普段はぴんと立った獣の耳を伏せ、わさわさと腰の翼を動かしながら、落ち着かない様子でオルハはヨハンを見上げた。ふむ、とヨハンは眼鏡の位置を調整する。
「多くの猟兵は個人戦力で戦いに挑みます。協力するにしても、臨時的なケースが多いです」
「えっ? あ、うん。そうだね。スタンドプレーが重なってチームワークになる、みたいな……」
「ですが、俺たちは個人ではありません。二人います」
「って、ことは……二人ならなんとかなる!?」
「そこは『なんとかなる』で済ませて欲しくはありませんでしたね……」
 ぱっと顔を明るくさせるオルハを見て、ヨハンが呆れたように溜息をつく。「ごめんごめん」と彼女が謝ると、気を取り直したかのように彼は視線を合わせて、それから逸らした。
「……他の猟兵たちが臨時でチームを組んだ時には得られないものが、俺たちは持っています。それが“信頼”です」
「信頼……」
 ぽつりと呟きながら、顔を逸らすヨハンを見る。それから「あ」とオルハは声を上げた。ヨハンがどうして顔を逸らしたのか、遅ればせながら気付いたのだろう。
「そういうわけです。……慢心した敵、大いに結構。横っ面を張ってやりましょう」
「……うんっ、慢心してたこと、後悔させてあげよう!」



「――俺は独りでここに来たわけではないんですよ!」

 時計の針は元に戻る。
 ごうごうと音を上げる黒い火炎の壁向こうから、合図の声が聞こえてきた。頼もしい、あの人の声。
 その合図と同時に、オルハは三又槍を手に全身をバネのように利用して、黒炎の壁へと突撃した。
 怖くないと言えば嘘になる。けれど、不安は心配はなかった。代わりに、オルハの胸の内には確かな“信頼”があったのだから。

「私たちは独りじゃない――!」

 突撃に呼応するかのように消散していく黒炎の渦の中から飛び出したオルハは、熱とそれによって生じた気流を感じながら、コルテスへと肉薄する。
 一撃目はケツァルコアトルを穿ち、その覆い隠しているものを曝け出させるために。ヨハンがそれに合わせて、黒闇でもってこじ開けるのを手伝う。
 二撃目は、露出したコルテスの肉体を刺し穿つために。
 全ては一瞬。対応する暇もなく、ケツァルコアトルという壁に覆われていたコルテスには何が起きているのかもわからぬままに。三叉がコルテスに深々と刺さる。
「あなたの慢心、利用させて貰いました」
「これが私たち、二人の力だよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリアンネ・アーベントロート
◎シアラちゃん(f04820)と同行
むー、なんか感じ悪いなぁ。
油断してるみたいだし、少し痛い目見せてあげないとね。
『催眠・傀儡の躍動』を当てるためにちょっと一工夫しようか。
使うのは持ち込んだ『幻惑のアロマオイル』。
これを風上からいい感じに香らせて……そう、その香りを嗅いだなら、相手はもう大なり小なり催眠術の術中だよ。
一瞬でも隙を作れれば、そこに催眠光線銃から『催眠・傀儡の躍動』を発射。
命じる動作は……そうだね、サムライエンパイアに伝わる『ドジョースクイ』の動きにしようか。
コルテスは知らないかもだけど、動作を教えればそう動かざるを得なくなるからね。
これで仕込みはOK。――出番だよ、シアラちゃんっ


浅葱・シアラ
◎マリアンネ(f00623)と参加するよ
許さない……シアは怒ってる
コルテスは侵略を繰り返しながら人々を馬鹿にしてる
あなたが侮ったシアたちは、こんな奇策を持ってるんだよ!

使用するユーベルコードは「胡蝶閃」
お母さんからもらった光の蝶蝶
でもこの紫光の蝶々達はまだ、攻撃させない
シアは【地形の利用】【迷彩】【目立たない】で隠れて、蝶々達は静かに風に乗るように辺りを飛ばせて普通の蝶々を装うよ
相手は虫だと侮って気にしないはず

マリアンネの術が効いて来て、もし相手の動きに隙が生まれた瞬間が好機だよ!
隠れてたシアも飛び出して、【高速詠唱】で沢山の蝶々を召喚、事前に召喚した蝶々達と一緒に一斉に攻撃だー!



 炎の渦が晴れると同時に風の流れが正常化するのを、マリアンネ・アーベントロート(ゼーブスタスの催眠術師・f00623)は感じた。
「今なら――」
 長い銀髪の流れる方向とは逆、風上へと向かって行く。風下に位置させるのは当然、コルテスだ。
 彼女は風の具合を確かめながら小瓶を開ける。風に載せるのはアロマオイルの香り。芳しく甘く蕩けるかのようなそれが、風下のコルテスへと届く。
「さあ、幻惑のアロマオイルの香りを嗅いで……」
 催眠術師たるマリアンネが数多く持つ催眠導入用アイテムの一つ、アロマオイル。幻惑と名の付くものの、直接幻覚の類を見せるわけではなく、この香りによって思考を鈍らせ、遅らせ、蕩かせる。これはそういった品物だった。
「シアラちゃん、準備は良い?」
「うん、シアは大丈夫だよ」
 マリアンネの呼びかけに、浅葱・シアラ(幸せの蝶々・f04820)はむっとした表情をコルテスへ向けていた。
 彼女は怒っていた。コルテスが侵略と虐殺を繰り返して来たことにも怒っていたし、その上で他の人々を馬鹿にしているのは我慢ならなかった。
 それも無理からぬことだろう、とマリアンネはシアラの横顔を一瞥する。自分もこの小さな妖精ほど大きな怒りを持っているわけではないが、何となく「感じの悪い人だな」という印象は抱いていた。それはきっと、こちらのことを軽蔑してかかっているからだろう、とわかるまでに、そう時間はかからなかった。
 だったらそれでも良い。マリアンネはそう割り切った。軽蔑されて嫌な気分になったとしても、敵の油断を利用してやれば良いだけなのだから。
「痛い目見せてあげないとね、シアラちゃん」
「うんっ! 侮ったシアたちが、こんな作戦を用意してきたんだって見せつけてあげなきゃ!」
 小さく二人で頷き合って、最初に行動に移ったのはマリアンネだった。彼女は風上からコルテスの注意がこちらに向いていないことを確認すると、催眠光線銃を向けて引き金を引く。やや抽象的で勢いに欠ける光線が銃口から放たれ、軌道は怪しいながらもコルテスに命中した。それを確認すると、マリアンネは振り返るコルテスの目の前へと踊り出る。
「はーい、催眠の調子はオッケーかな? それじゃあまずはこの動きからっ!」
 後に続いて真似してね、とマリアンネがコルテスへと見せた動きはドジョウすくいの動作だ。隙だらけで陽動にもならないその動作を見て、コルテスは顔をしかめる。
「下等生物の中にもピエロがいるのか。戦場の中でなければ少しは上等――」
 だろう、と言いかけて。コルテスは己の動きにハッと気付かされた。今、目の前で行われているマリアンネのドジョウすくいの動作を、いつの間にかに自分も真似ていたのだ。
「なっ――!? なぜだ、どうして止まらん!? 俺は一体何をされたのだ!」
 マリアンネが動作を中断しても、コルテスの動きは止まらない。ぎこちない動作のまま、何度も何度もドジョウすくいを繰り返す。
「エンパイアの伝統的な踊りはどうかなっ? ――さあ、シアラちゃん、出番だよ!」
「ありがとう、マリアンネ」
 ざあ、と。まるで吹雪のように紫光の蝶の群れが飛んで行く。その中から現れるのは、同じく紫色の蝶の翅を持つシアラだ。
 紫光の蝶は、母親から受け継いだもの。シアラの母もまた、侵略者へと抗い、戦う蝶の騎士だった。
「それなら、シアだって――」
 目の前の侵略渡来人を睨めつけながら、シアラは天へと手を伸ばす。それを合図にするように、蝶の群れが集まっていく。
 自分もまた、母のようにこの侵略者と戦おう。臆病な自分でも、きっと母のように護れるものがあると信じて。
「――お母さん、借りるね!」
 微笑む母の顔を脳裏に。シアラは蝶たちと共にコルテスへと突撃して行った――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朧・紅

表人格のお嬢様が《紅》
裏人格の殺人鬼が《朧》

慢心でも子供には油断してくださらないでしょか?
若い猟兵さん多いですもんねぇ
ま…(切替)…楽しめりャ俺はイイがなァ?

絡め手、ねェ
殺し愛のお相手のご要望には応えねェとな?
その顔が歪むのが楽しみでならねェ!

これ見よがしに輸血パックぶちまいて
「血液を操る」と印象付け紅い血の刃で【範囲攻撃】赤い花を咲かせ【フェイント】

単調な攻撃と侮るかィ?

俺の血糸は「見えないようにも出来る」んでなァ
範囲攻撃に穴を作り【だまし討ち】で粘着度を上げた「透明な血糸」を絡め動きを封じる

なァ…てめェの腕を、足を、首を殺ぎ落させろヨ…!

防御は【武器受け】血糸の【医術】で繋ぎ合わせ止血


鹿忍・由紀

慢心してくれてるなら助かる
さっさと骸の海に帰ってくれると
もっと助かるんだけどなぁ

乱戦状態の戦場に乗じて出来るだけ目立たないように接近
ケツァルコアトルの身体を足場に尻尾側から一気に駆け上がり
コルテスに向かって体重をかけて
ダガーを突き刺せるように飛び掛かる
こっちだよ、と気怠い声
これはコルテスの意識を此方に向けるためのブラフ

飛び掛かったのはコルテスを見下ろせる位置を確保する為
影を見ることを気付かせないよう
影ごと相手を見下ろす為の位置取り
此方を見るコルテスをケツァルコアトルごと
影繰の鋭利な棘で下から串刺しに

慢心してるなんて冗談かと思ったけど、本当だったんだ
自分は棘の側部を蹴って離れ、敵から距離を取る



「慢心するなら、子供にも油断して下さらないんでしょうか?」
『いやァ無理だろ。猟兵ってほら、色々いるし』
「若い猟兵さん、多いですもんねぇ……」
 朧に否定されて、紅が溜息をつく。
 二つの人格で一人の猟兵。それが彼女、朧・紅(朧と紅・f01176)だった。むぅ、と思い悩むような彼女の表情が、その幼い外見に似合わぬ残忍な笑顔へと一変する。朧の人格が表に出てきたのだ。
「ま……楽しめりャ俺はイイんだけどなァ?」
 にたりと笑いながら彼は思考を巡らす。今回は搦め手が要求される戦いだ。普段とは一風変わった“ダンス”が踊れそうで、それだけで彼は心が踊りそうになっていた。
「せっかくの殺し愛のお相手なんだ、ご要望にはお応えしねェとなァ?」
 歯で噛み裂いて、輸血パックの中身をコルテス目掛けてぶちまける。降り注ぐ血に反応して、コルテスが振り返った。
「次は餓鬼か。目眩ましか何かのつもりか?」
「そんな無粋なもんじャァねェさ」
 まァ見てなって。朧がそう呟くと同時に、宙に舞っていた紅い血の花が、糸状に変形する。
「血に踊りなァ!」
「血を使った攻撃か。単調だな。――ケツァルコアトル!」
 ひゅん、と襲いかかる朧の血糸を避けながらコルテスが叫ぶと、力を削がれて地に伏していたケツァルコアトルが隷属の呪いに従って駆けつける。
 血糸は広範囲を攻撃する。だが、逆を言えばその範囲しか攻撃はできない。ゆえに上空へ逃げれば良いとばかりに、乗騎の背に乗った彼は血糸の見える範囲外へと飛び立とうとする。だが――
「オイオイ、ツレねェことは言いっこナシだぜ?」
 ケツァルコアトルの上昇は見えない何かに阻まれた。見えない何かは騎手と乗騎を縛り付けるように絡まって行く。鉄っぽい臭いが不意に鼻についた。見えざるそれは、極度に透過された血の糸に違いなかった。
「この……俺を謀ったな!?」
「あァ~~……そう、それだよその表情! その顔が歪むのが楽しみで仕方なかったんだ! 単調だと侮っていた攻撃に一杯食わされた気分は最低に最悪だよなァ? エェ、オイ!?」
 血の糸で宙吊りにされたまま激昂するコルテスを見て、朧は嗜虐的な笑みを浮かべる。手指を使って血糸を操り、束縛されたコルテスの皮を削ぎ取り肉を斬る。
「なァ、なァなァなァなァ! もっとテメェの腕を、足を、首筋を削ぎ落とさせろヨ! もっと良い声で啼いてくれヨ!」
「こ、の……ッ!」
 コルテスが殺意の籠もった視線を向けるが、それはむしろ朧を愉しませるだけだ。笑みをますます濃くした彼は、愉快げに笑ってますますその攻撃の苛烈さを増す。
 ふと、コルテスの頭上から影が落ちた。太陽が翳ったわけでも、鳥が通り過ぎたわけでもない。
「こっちだよ」
 気怠げな声と共に飛んで来たのは鹿忍・由紀(余計者・f05760)だった。彼の背負う逆光が、きらりとその手に握られたダガーの刃を光らせる。
「舐め……るなァ!」
 コルテスが叫びとともに、襲いかかる由紀へと銃口を向ける。血糸による攻撃でいくらか拘束が緩んでいたのだ。
 だが、元よりこのダガーはコルテスの意識を集中させるためのブラフだ。
 ダガーの刃が届くよりも早く、銃の引き金に指がかかるよりも先に。由紀の魔力の籠もった視線は、すでにコルテスとケツァルコアトルの影を見ていた。
「絡め取れ」
 言葉と同時に、騎手と乗騎の影から無数の棘が現れた。影から錬成された棘たちは、まるで槍のように下から伸びて、血糸で宙吊りになったコルテスを串刺しにする。
「よォ、テメェもなかなかの踊りっぷりだな。惚れ惚れするじャあねェの」
「助かったよ。慢心してるなんて冗談だと思ってたから、機会に便乗させて貰った」
「構いやしねェさ。俺とコイツのランデヴーってわけでもねェんだ、一緒に愉しもうぜ」
 きひひと笑う朧に対して、由紀は「そういうシュミはないんだけどね」と胸中で吐息する。
 血糸に縛られ、棘に串刺しにされたコルテスを二人は見上げる。
「まだまだ先は長いんだ、もっともっと愉しもうぜ」
「俺はさっさと骸の海に還ってくれると助かるんだけどなぁ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

千桜・エリシャ

私達エンパイアの民を下等生物だなんて
へぇ…そう…
ならば、下等生物らしく暴力で解決しても構いませんわよね?

奇襲らしく物陰に隠れ
死角から風に桜の花弁を乗せてケツァルコアトルを魅了
私の配下にしてしまいましょう
あなたに隷属という屈辱を強いていたのはあいつ
さあ、本来の己を思い出して
偽りの主人に噛み付き牙を向きなさい

――ああ、戦利品の戦い方など心得ている?
そこまで想定済みですの
ケツァルコアトルの対処で混乱している隙に
呪詛を籠めた斬撃の二回攻撃をお見舞い

ねぇ、この呪詛はこの戦争で命を散らした方々の怨念が
沢山詰まっていましてよ
あなたの首なんていりませんけれど
下等生物に首を狩られる屈辱を味わうといいですわ


パーム・アンテルシオ
あなたは、私たちが…エンパイア人が、嫌いなんだよね。
ふふふ。奇遇だね。
私も、あなたの事は…好きにはなれないから。

奪って、自分のものにしてきたんだよね。
物も、命も、魂も。
無理やりにでも、従わせて。

ユーベルコード…山茶禍。
狙うのは…あの人の乗る生き物。
「あなたは今日、反旗を翻す」
あなたが、あの人を憎んでいても、そうじゃなくても。
この運命は、定められる。
私の狙う不意打ちは…「造反」だよ。

あとは…呪詛そのものを、当てる方法。
私の【誘惑】の力を、声に乗せて、語りかける。
「避けないで」
私が語りかけるのは、あなた達の、無意識。
きっと、私の力を理解していない、最初だけに効く語りかけ。
だから、後は…あなた次第。



 コルテスは見るからに満身創痍だった。様々な形での奇襲に晒され、毒に冒され負傷を受けていた。それが、彼には我慢ならぬことだったのだろう。
「おのれ……下等生物如きがッ! この俺に歯向かってただで済むとは思うなよ!」
 己を奮起させるように激昂の叫びを上げながら、マスケット銃を杖代わりにして地に膝をつきながらも、なんとかコルテスは立ち上がろうとする。
 その様を岩陰から見る者が二人いた。その内の一人、千桜・エリシャ(春宵・f02565)は目を細める。
「私たちエンパイアの民を下等生物呼ばわりだなんて……」
 へえ、そう。底冷えするような口調で彼女は呟く。
 彼女は誇り高き羅刹だった。彼女はエンパイアに生を受けて育った人だった。それだけに、コルテスの下等生物呼ばわりだけは許してはならないとエリシャは強い怒りをその内心で抱いていた。
「彼はどうやら私たちが……エンパイアの人たちが、嫌いみたいだね」
 同じく岩陰に隠れていたパーム・アンテルシオ(写し世・f06758)が目を伏せる。
 パームもまた、エンパイアの生まれだった。人界に慣れ親しんだのはここ最近だが、それでも世界を渡り歩く中で触れてきた、エンパイアの民たちの優しさや心の暖かさは彼女には忘れられなかった。そんな彼らを下等と貶めるコルテスを岩間より見ながら、パームは吐息する。
「……でも、良かったよ」
「あら、彼に嫌われて何か良いことでもあったのかしら?」
「ううん、奇遇だなぁって。……私も彼のことは、好きになれないから」
 パームの視線の行き先は、コルテスから地に伏せるケツァルコアトルへと向かう。
 コルテスは侵略を繰り返して来た。略奪を行い、欲しいモノを全て自分のものにしてきた。物も、命も、魂も。あのケツァルコアトルのように、無理矢理にでも従わせてきた。それを許せないと、許したくないと、妖狐は思ったのだろうか。
 二人は顔を見合わせて、頷き合う。それを合図にしたかのように、桜の花がエリシャの周囲に舞い始め、、桃色の“気”がパームの尻尾から放たれ始めた。
「蕩けて、溺れて、夢の涯――」
「――陰の下、火の下、生命の運命を動かそう」
 ひゅう、と吹いた海風よりも早く。桜の花びらと、不可視の呪詛がコルテスへと――否、コルテスの傍で地に伏せるケツァルコアトルへと向かった。
「なに――っ!?」
 突如として現れた花の嵐にコルテスが浮足立ち、しかし自分には向かわずケツァルコアトルへと襲いかかって行くのを見て不審そうに眉根を寄せた。だが、それが敵の攻撃であることに変わりはないだろうと彼は考えて、即座に切り替えてケツァルコアトルへと指示を出す。
「ケツァルコアトル、振り払って避けろ!」
「――避けないで」
 コルテスから言い放たれる隷属される主人としての言葉へと、被せるようにパームが言葉を紡ぐ。コルテスの言葉はケツァルコアトルへと刻み込まれた隷属の証へと届き、パームの言葉は――ケツァルコアトルの無意識へと届いた。
 そして乗騎は果たして、パームの放った呪詛を避けずにその身に負った。続けざまに、桜の花嵐がその細長い体表を覆う。
 エリシャの桜花は魅了の桜花。触れた者を、彼女の言いなりにさせる花。
 パームの呪詛は運命を縛る呪詛。冒されし者がとる行動を強制する呪い。
 それら二つが合わさり、コルテスにかけられた隷属の呪いを凌駕した。
 魅了されて運命を縛られたケツァルコアトルが、二人によって取らされる行動はただ一つ。
「あなたは今日、反旗を翻す」
「ほら、本来の己を思い出して。あなたに隷属という屈辱を強いてきたのはあいつ」
「あなたがあの人を憎んでいても、そうじゃなくても。あなたが造反する“運命”は変わらない」
「さあ、偽りの主人に牙を剥きなさい」
 ケツァルコアトルが嘶き、コルテスへとその顎を向け――しかし倒れて、そのまま動かなくなってしまった。隷属の呪いが造反に反応して、ケツァルコアトルに致命量の呪詛を流したのだ。この場にいた誰しもに、一瞬の動揺が走る。エリシャ然り、パーム然り、そしてコルテス然り。
「この、役立たずがぁ……!!」
 ケツァルコアトルの死体を見てコルテスは歯軋りする。慟哭にも似た彼の叫びは、どこまでも自分本位だった。
 その叫びを聞いて動揺が収まったのだろうか。エリシャは桜の花嵐へと手を伸ばして一振りの大太刀を掴み取る。
「あなたがいたずらに散らしてきた命たちの怨念が聞こえましてよ。今しがた亡くなってしまったケツァルコアトルも、ほら」
 ゆらり、ふわり。白いモヤのような霊魂が、いくつもエリシャの周りで舞う。墨染の黒い刀身がぬらりと光を反射したように輝いて、その霊魂たちを吸収していく。その闇夜の如き刃はまるで、この世ならざる者たちの怨讐や怨恨という墨で染め上げられたかのようだ。
「あなたの首なんていりませんけれど。――下等生物に殺される屈辱を味わうと良いですわ」
 普段は横へと振られる大太刀が、首級などいらぬとばかりに唐竹割りに縦に振られる。
 空を裂いた音の直後に、肉と骨を断つ音がした。
 ぼとりと斬り飛ばされたコルテスの左腕が地に落ちる。男の叫喚が響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート

──気に食わねえな
征服者気取ってるテメェ心底気に食わねぇ
所詮は信長の駒だろ?自分を誰より上等だと思ってる割には…結局は魔王に死従ってる
ちぐはぐだな、実に。生き様がダセェ。
テメェは支配者なんかじゃねえよ──ただの詐欺師、あるいは気取り屋さ

…よし、【挑発】でマスケット銃を向けた
弾籠めに10秒かかるなら、俺の方が速い──サーチ開始
対象の滅亡要因を特定、抽出──
再現性100%──実行

悪いねコルテス、射程圏内だ…起動『Destroy』
いくら強くても所詮はオブリビオン、一度滅んだ存在さ
なぁコルテス?まさか自分の滅びがもう一度襲ってくるなんて、想像できるかい?
さよならだ──骸の海の底に沈んで、朽ちてくれ



 気に食わなかった。
 征服者を気取っているあの侵略渡来人を見ていると、どうしても故郷のクズどもを思い出してしまって、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は心底気に食わなかった。
 あれは略奪を主収入源にしていた傭兵だっただろうか。あるいは、マッチポンプで多額の借金を背負わせて、絞り殺す金貸しだったか。目の前の侵略者と記憶の中の人々がダブついて見えて来る。他人のことなどどうとも思っていないその精神性も、所詮は駒に過ぎないことを忘れて自分が誰よりも上等だと勘違いしているところまでもが似ていた。
「実にチグハグだな。生き様がダセェ」
 まるでストリートチルドレンたちが纏うボロ布のようなパッチワークだ。あくまで信長に従っておきながら、侵略によって自分が支配者になったと思い違いをしている。
「テメェは支配者なんかじゃねえよ──ただの詐欺師、あるいは気取り屋だ」
 斬り飛ばされて肩と泣き別れした左腕を抱えるコルテスを一瞥して、ヴィクティムはフェアライト・チャリオットからウィルス・プログラムを起動する。
「悪いねコルテス。射程圏内だ」
 急激に彼の顔色が青褪めていく。生命力というものが、彼の身体から流出していく。
 ウィルス、『Destroy』。己の生命力を大量に消費することによって発動するそれは、目の前にいるオブリビオンが滅んだ要因を再現するものだ。
「なぁ、コルテス。まさか自分に来た滅びがもう一度襲ってくるなんて、想像もできねえだろ?」
 突如として、爆発するかのような暴風の奔流が巻き起こった。霞む視界の中で、コルテスが吹き飛ばされるのが見える。その身体からは無数の鎖が突き出ていた。
 なんだ、とヴィクティムは青褪めた頬を無理やり笑みの形に歪める。自分が参加した、他の作戦の時と同じ死に様だった。
 暴風に引き裂かれ、鎖によって身体を内から破壊されたコルテスは絶命していた。さらり、とその身体が黒い塵へと変わって、海へと散って行く。
 略奪の報い、それは死に他ならぬのだろう。
「さよならだ。――骸の海の底に沈んで、朽ちてくれ」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月20日


挿絵イラスト