エンパイアウォー⑧~外道死すべし慈悲は無い
●山陰道地獄絵図
伯耆国(ほうきのくに)の国境にある山中の村々では農民達が一斉に”化け物”から逃げようと一路東へ東へと逃避行を続けていた。
因幡国(いなばのくに)の久松山にある鳥取城へと逃げ込めば助かると旅の薬売りがそう言っていたのを思い出し藁をも縋る想いで着の身着のまま逃げ続けていたのだ。
「なんなんだこいつらは!?」
最初は村へと獣が紛れ込んだと思っていた農民達もそれが身体に水晶を生やした異形の動く死体だとわかれば行動は早かった。
村の若い衆が鍬などを持ち立ち向かいそして……。
「ア”ア”ア”ア”……」
「兄ちゃん、兄ちゃぁぁん」
「こらっ見るんじゃない、早くお逃げ!」
兄が化け物に食われるのも泣きながら見るしかなかった子供を隣に住む夫婦が目を隠しそのまま連れて逃げ出した。
村のあちらこちらで同じような惨状が繰り広げられているのか泣き声や犬の鳴き声がどこからとも無く響いてくる。
「俺達が何をしたって言うんだ」
そう嘆く者もいるがそれだけで状況は良くならない。
あの化け物たちはいつまでもいつまでも農民達を追いたて続け、いつしか国境を越え話しに聞く鳥取城が見えてくると一堂に歓声があがった。
「あそこまで逃げ込めば助かるぞ!」
だがそこに辿り着くということは彼らにとっては地獄の始まり。
このままでは邪悪なる外法による地獄の苦しみを彼らは味わう事になるのだ。
●グリモアベース
「皆さんに非道を止めていただきたいのです」
普段は人見知りであまり声を出さないグリモア猟兵の文車・妖はそう切り出すと集まった猟兵達に説明を始めた。
「山陰道で幕府軍を迎え撃つ安部清明は鳥取城を拠点として、人の道に外れた策を行っているというのがわかりました」
山陰の地図を出すと確かに進行する為にはこの地を無視することは出来ない位置にある城なのだが、ただたんに軍事施設として警戒しているような話ではない。
「この城にですね……近隣住民を集めた上で閉じ込め飢え死にさせることで強化型の『水晶屍人』を生み出すことが可能になるのです……」
奥羽地方で暴れた屍人の十倍は恐ろしい能力を発揮するなどと言えばわかるものにはわかるだろう。
「これを止めれなければ被害は幕府軍全滅といってもおかしくないほどになるため絶対に阻止してほしいのです」
ここですうと一息つくと視線を周囲の者に向け資料のページを見せるように広げた。
向かってほしい場所は伯耆国と因幡国の国境付近。
街道を逃げてくる農民達を無事に逃がし、追いかけてくる全部で10体ほどの水晶屍人を打ち倒しこれ以上の被害を止める事。
もしもすでに捕まっている人がいれば救出してほしいということらしい。
「ここの屍人達はかなりの超強化をされていますのでかなり注意が必要なので、皆さん油断だけはされませんよう……」
絶対に無事にお帰りくださいと一人一人に声をかけると文車・妖は皆にお辞儀をし戦場へと送り出すのだった。
轟天
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
落浜・語
どっから来たか知らねぇが、清明は随分といい趣味をお持ちのようで?
まったくもって胸糞悪い。目論見はきっちり潰してやろうじゃねぇか。
UC『人形行列』で農民と敵の間に人形でもって壁を作る。敵、人形、農民の形で、逃げるために【時間稼ぎ】をしつつ鳥取城の方に行かないよう誘導の声掛けを。
必要に応じ【言いくるめ】や【演技】なんかもして、安全なほうへ。襲われそうな人がいれば、奏剣も使いつつ【かばう】
敵一体に対して、複数の人形をけしかけ、周囲も【範囲攻撃】に巻き込みつつ確実に倒していく。
悪いが、助けられるのは、生きているものだけなんでね。
アドリブ、連携歓迎
●
この峠を越えれば因幡国だと思えば農民達の足取りも重いながらも力が入ろうというもの。
だが気は抜けない、少しすれば後を追いかけてくる化け物達が最後尾の者から捕まえ殺し喰らうだろう。
それを遠めに見つつ峠で待ち構え用意している落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は苦虫を潰したような表情で不機嫌そうにそれをまだ眺めるしかできない。
どうしても農民と敵との間に入り鳥取城へは行かないように誘導するには脇道のあるこの周辺で待ち構えるしかなかったのだ。
「うわああっもうダメだああっ!」
逃げてくる最後尾を走る男の足がもつれその場へ倒れこみそこへ追いすがる水晶屍人。
もはやダメだと覚悟を決めた時、人形達が何体もその間に割り込み壁のように立ち塞がった。
「おう、逃げるんならそっちじゃねえ、同じ走るんなら安全な方ってな!」
威勢のいい啖呵を切り峠の上から見下ろす語は先に逃げてきた農民達がそれ以上鳥取城へと向かわないよう脇道を指差す。
戦闘が切迫する以上は悠長に説得などしていられない、だがこの道に反れても峠は越えられず元来た伯耆国へと戻る山道だ。
どうしようかと迷う農民達に発破を飛ばしさっさと行けとばかりに手を振った。
その時先ほどの人形のほうから爆発が起こり農民達が悲鳴をあげおびえ始める。
「ほら、さっさと行け、死にてぇか!」
「あああ、ありがとうございます、ありがとうございます」
腰を抜かしていた男もそちらへ逃げたことを確認し終えようやく語は爆発で半身が吹き飛んだ水晶屍人を睨み付けた。
「どっから来たか知らねぇが、清明は随分といい趣味をお持ちのようで?」
もちろん知能の無い彼らに言葉など通じはしない、だがわかっていても言いたくなるというのが人情だ。
「まったくもって胸糞悪い。目論見はきっちり潰してやろうじゃねぇか!」
奏剣を肩に担ぎトントンと叩く。
数は多くないが一匹一匹が強いのだと説明は受け覚悟はできている。
だが語は一人ではない……その心強い仲間はすぐ傍にいるのだ。
「派手に壊さないでくれよ?派手に壊されたら、泣く……」
語の人形行列が再び数を揃える頃目の前で繰り広げられていたのは共食い。
そう、先ほどの半身失った水晶屍人に周囲にいた屍人が群がりバリバリと食べ始めたのだ。
「くそっ……外道共め!」
人形達を嗾けようとする前に化け物達の水晶から怪しげな霊がいくつも現れ眩しい閃光を放った。
「GRRRRRRR!!」
見えはしないがこちらへと突進してくるのは見当がつく、避けられない……そう思った瞬間爆発が起こり爆風で語は後ろへと転がる。
「痛ててて……」
閃光でブラックアウトした視界が戻ってくると目の前には消し飛んだ人形達、そしてバラバラになった水晶屍人の残骸。
語の身体に問題はない、爆発からはある程度離れていたのが幸いしたらしい。
「壁にしていた人形達が閃光で”こいつにも”見えなかったんだな」
埃を払い立ち上がるとすでに農民達は脇道から遠くへと逃げていることに気付いた。
願わくば間違っても変な気を起こして山越えをしないでくれよ……そう思い語はその地を後にするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
芦谷・いろは
あらあらまぁまぁ
大変な事になっちゃってますね
追いかけっこも大変そうですが、捕まってる人が居るかもなんですね
ではでは、一気に殴り込みしちゃいましょう!
【傀儡の宴】を使用しちゃいますね
さぁ、合体して大きいヌイグルミさんになって敵さんを《なぎ払い》ボコボコにしちゃいますよ!
そうだ、捕まえた農民さん離してくれないと操作用糸で屍人さんを《暗殺》しちゃいますからね?
あとは出来うる限りの力を使って 農民さんの救出の手助けを
《情報収集》や《コミュ力》を使って近隣の大まかな地形(地図)を把握し
なるべく他の猟兵に周知
避難ルートの確保及び農民さんの保護に走りますよ
●
因幡国への峠道を駆け上がってくる人々を見ながら芦谷・いろは(傀儡使い・f04958)はいつもと変わらぬマイペースで手を合わせ首をかしげた。
「あらあらまぁまぁ、大変な事になっちゃってますね~」
それはもう大変だろう、追いつかれたら殺されるわ喰われるわ大変なんて言葉で片付けるのももったいない酷さなのだ。
よく観察するとその想像は少しだけ外れていた事に気付く事ができた。
殺されずに捕まり担ぎ上げられてしまった人もいるようで、よくよく観察すれば微妙に追いつくようで追いつかないそんなペースで追い立てているのだろう。
水晶屍人自身にはそのような思考能力はないはずなので、そのように指示され最終的には鳥取城へと追い込むだろうという出発前に聞いた説明とも合致する。
(捕まってる人もいるようだし……)
「ではでは、一気に殴り込みしちゃいましょ~!」
いろはの呼び出した数十体のヌイグルミ達が次々と組み合わさり大きな大きなヌイグルミへと”合体”した。
腹に44と書かれたそのヌイグルミはすでに屍人と戦うにも十分な大きさで、合体するなり逃げてくる村人の頭上を飛び越え屍人へと痛烈な一撃を打ち込んだ。
「今のうちにこっちこっちです~」
手を振り逃げてくる村人に声をかけると手に持った紙を先頭を走っていた男に手渡した。
「お、お嬢ちゃん危ないよあんたもお逃げ!」
「この子達がいるから大丈夫です~。皆さんその地図に書いてある道を急いでください~」
手渡した紙には下調べした地形や逃げ道などが記され鳥取城へは近づかないように色々と工夫がこらされたものだった。
ドゴォォッ!!
と背後で音がする、まだ完全に安全を確保できたわけではない、早く早くと急かし村人達は説明もそのままに教えられた道へ向け再び走り始めた。
ヌイグルミの大きな腕が横に払われ追いかけてきた別の屍人がその場に転んだ。
そこへマウントを取るように巨体で乗りかかり顔面へと何発もパンチを打ち込んでいく。
グシャリという嫌な音と共にまず一体が動きを止め活動停止した、だがそこに横から脇に捕らえた村人を抱いたままもう片方の手で鎌を振り回す屍人が襲い掛かる。
ヌイグルミの肩が引き裂かれ詰め物の綿が飛び散った、だが慌てず操作しヌイグルミが屍人とがっちりと組み合い取っ組み合いになる。
「農民さんは……帰してもらいますよ~!」
いろはが複雑な腕と指の動きをすると突然屍人の腕が根元から断たれ人質の身体が宙を舞った。
それを巨大ヌイグルミから分離した小さなヌイグルミがキャッチしそのままいろはの元へと運び無事に収容することができた。
「よーし、もう遠慮はいらないから、やっちゃえ~~っ!!」
ヌイグルミの目が輝き腕をブンブンと振り回してからまるでアンダースローの投手のように低姿勢から横薙ぎにパンチを繰り出し……。
片腕になった水晶屍人の身体はバラバラになりながら宙を舞うのだった。
成功
🔵🔵🔴
リサ・ムーンリッド
●神秘の力による遺体の保持と構造に関する研究
【世界知識】で世界に合わせた身分を名乗り【演技】と【医術】で農民達を安心させ避難誘導や応急手当をするよ
仲間が戦いやすいよう速やかな避難になる様にしたい
可能なら【レプリカクラフト(錬金術)】を活用して飲み水と、砂糖とカフェインを混合したドリンクも配ろう、疲れがマシになるはずだ
あとは前線を抜けてきた敵が居ればデータ採取でも
元より倒す相手、乱暴に扱っても構わんのだろう?
敵には【知識を得るための犠牲】になってもらう
酸やアルカリへの耐性は?神経毒への反応は?五感の有無は?通電性は?可燃性は?
高度な仕掛けの産物は【情報収集】のしがいがあるなあ
アドリブアレンジok
月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る
屍人に加え、飢え死にですか
随分な手を使いますね
これ以上の犠牲を防ぎ、敵戦力の増加も阻止しましょう
[ステラ+ケイオス]剣槍形態:増殖変形、二刀流や投擲も
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習>
<念動:オーラに破邪破魔の呪>込め纏い行動補助と耐性
《捕食樹界》出口で方向誘導
取り込む際出来るだけ拘束弾き間に壁を作る
農民達には迷路壁に花や蔓等使い出口方向指示する
また喰らった敵の力で植物より癒しの水生成。
救出が必要な相手探査し救出に向かう
<属性攻撃:風・炎に破魔の呪>込め、
風で体勢崩し炎宿す剣槍で水晶狙い壊す。
眠りなさい
<怪力の呪>動けない人は抱え上げ救助
フランチェスカ・ヴァレンタイン
立て続けに、よくもまあ… 清明なる方はずいぶんと、性根がお腐りになられているようで?
上空から俯瞰してより緊急度の高い農民のところへ全速機動で急行し、氷結の属性砲撃で屍人の足止めを
農民へ避難誘導しつつ行き違い、そのまま降下の勢いで屍人を真っ二つに
再び上空へと上がったところで、子供が転んで追い付かれそうな親子の姿が
「させま――せん…ッ! お出でなさい、エーテライト…!」
急行しながらUCを発動、親子へバリアフィールドの展開を
結界に阻まれて退く屍人へと、無数の水晶の槍を浴びせて差し上げましょう
水晶は水晶でも、こちらは星の息吹たるエーテルの結晶体。穢れた邪法の水晶などとは、モノが格段に違いましてよ?
●
因幡国へと続く街道上空で遠くを見張っていたフランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は目標を発見し急ぎ急行する事にした。
下にいて避難民の救助と誘導の準備をしている月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)とリサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)の二人にその旨だけ伝え翼を羽ばたかせた。
(立て続けに、よくもまあ… 清明なる方はずいぶんと、性根がお腐りになられているようで?)
そう思うのも不思議ではない、ここ数日でフランチェスカが向かった戦場は一つや二つではない。
それだけ事態は切迫しているということだ、低空飛行へと移行し逃げてくる避難民とすれ違いながら声をかけるのも忘れない。
「もう少ししたら仲間がおりますわ、そこへ逃げ込んでくださいませ!」
「助かった、天狗様じゃ天狗様が助けに来てくださった!」
(この世界には天使……って言葉あまり聞かないでしょうししょうがないですわね)
少し口元を緩め正面から追いかけてくる水晶屍人に第一射を撃ち込んだ。
少し先ではユイが避難民達を安全に誘導し守るための準備を始めていた。
(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。無限連環増幅術式起動。共有同調、対象・効果指定。樹界形成)
「迷宮……展開っ!」
街道に草木で出来た迷宮が競りあがってき、街道沿いに入り口が開かれる。
ユイとリサがその入り口で手を振り避難民達をその入り口への呼び込みを始め受け入れの準備は整った。
「早く早くこちらへー!」
「ほら大丈夫かい? ここなら安全だよ」
上空からの砲撃で追跡の足が鈍ったのか少し差が開いた所で次々と迷宮へと駆け込む避難民。
だが逃げ遅れる者ももちろん出てくるわけであり、それらを放置することなどもちろん二人には出来ない。
「屍人に加え、飢え死などという随分な手を許すつもりはありません!」
ユイ声に呼応して吹き付ける風が屍人の体勢を崩し切りやすい高さへと降りてきた首に使い慣れた剣槍が炎を纏い一閃する。
身体から生えた水晶ごと首を飛ばされ屍人が崩れ落ちその場へと崩れ落ちた。
悲鳴が横で聞こえ次はそちらにと振り返った目の前に無数のホムンクルス達が現れ次々と屍人へと飛び掛っていく。
「お前達は敵、つまりは乱暴に扱っても構わんのだろう?」
それらホムンクルスを指揮するリサの表情は愉悦に満ちとても避難民に見せれた物ではないのだが、今回は背を向け殿(しんがり)を勤めているということで問題はない。
ちょっと横でユイちゃんがドン引きしてるのを隠して無表情になってる程度の被害は必要経費としておこう。
ホムンクルス達は拘束具で次々と屍人を固定し怪しい注射を打ち込むと見る見る水晶が砕け屍人の身体が腐敗を始めた。
(酸やアルカリへの耐性は?神経毒への反応は?五感の有無は?通電性は?可燃性は?)
止まらない知識への欲求に怪しく息をしながら目はグルグルと狂気を孕み実験を続行する。
二人が壁になることで大半の避難民は迷宮へと逃げ込んだが、それでもまだ後ろに逃げ遅れた人がいる。
一匹の手が逃げ遅れた子供に伸びかけた時、天から一陣の風が駆け抜けた。
「させま――せん…ッ! お出でなさい、エーテライト…!」
『九天揺蕩う 根源たるもの』により作り出したエーテル結晶体が倒れた我が子を庇う親ごと包み込み屍人の手はそれに弾かれ届かなかった。
「GRRRR?」
「さ・せ・ま・せ・んと言ったでしょう!」
大上段から振り下ろされた斧槍が一刀両断、屍人を真っ二つしに勢いを殺さずそのまま横回転に振り回すと周囲に群がっていた者達を弾き飛ばしフランチェスカは親子の前で敵を睨み付ける。
水晶の結界に阻まれ近づけず退く屍人に侮蔑の表情を向け斧槍の穂先を向ける。
水晶の結界から次々と水晶の槍が撃ちだされ屍人が一匹また一匹と串刺しにされその屍を野に晒す。
「水晶は水晶でも、こちらは星の息吹たるエーテルの結晶体。穢れた邪法の水晶などとは、モノが格段に違いましてよ?」
そう言い捨て次なる獲物を求めフランチェスカは再び飛び上がっていく……。
一方その頃、迷宮の中で座り込んだ人々にリサは救援活動に当たっていた。
先ほどまでの狂気はなりを潜めというか、途中で素に返りちょっとやるせない表情をした所でユイと目が合い、ものすごーーーーーーく気を使われた表情をされ赤面しながら迷宮内へ走ってきたのは黙っておいてあげよう。
うん、ここに記さなければ誰も気付かない気付かない。
「さあ、これを飲んで、ゆっくりゆっくりだよ」
錬金術で生み出したドリンクを配り避難民に配っていく、ここまで飲まず喰わずで逃げてきた彼らにとってそれはまさに命の水。
「ありがとうございます」
と無数の声に包まれ人々の顔に笑顔が戻っていく。
しばらくして表で大きな爆発音などがしていたのが止み、ユイとフランチェスカが戻ってきた。
「外はどうにか片付きましたわ」
「周囲に敵対勢力の存在は認められません、もう大丈夫かと」
どうやら水晶屍人達の撃退には成功したようで二人もさすがに疲れたのか片隅へと座り込む。
「お疲れ様」
リサの差し出したドリンクを受け取り飲み込む二人、ようやく一息ついた所で3人は避難民達に鳥取城ではない安全な方向へと避難することを勧め説明を始めた。
最初は鳥取城へ行こうと固辞する者もいたが助けてくれた3人にそれ以上食い下がる者もなく違う方向への避難を了承してくれる事となった。
ようやく肩の荷が下りほっとした表情の3人が迷宮の外に出た頃、外は満天の星空が輝く夏の山中。
しばしそれを見上げていた3人は迎えの転送の気配を感じそっと目を閉じた。
こうして安部清明が仕組んだ邪悪な策謀の一つを潰すことはできた。
だがまだまだサムライエンパイアの戦争は終わることを知らない、戦いはまだ中盤戦にすぎないのだ。
だが一歩一歩確実に終わらせることで救える命もある、そう願い猟兵達の戦いはこれからも続いていくのだろう……。
一筋の流れ星が落ち山陰地方の夜は暮れていき、ここに一つの戦いが終わりを告げるのだった。
大成功
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