エンパイアウォー⑧~人の宍を食い合へり
●子は親を、弟は兄を
久方ぶりの肉だ。
鉄臭い匂いも気にならない。それほどまでに肉が食える喜びが大きかった。
口に入れた肉をぐちゃぐちゃと咀嚼する。嚥下するごとに腹が満ち、喉を通るごとに涙が滲んだ。早く食べなければ。目覚めれば皆、このごちそうを奪おうと襲い掛かってくるに違いない。
ここに閉じ込められてもう三月。ただの農民だった自分に回ってくる食料は少なく。それでももらえただけよかったのだと、殿様は慈悲深かったのだと一月が過ぎたころには思い知った。
城内にもはや草木はない。みんな俺たちが食べたから。
藁の一本も落ちていない。それも全て食べたから。
あまりの飢えに土も口にしたがすぐに吐き出してしまった。人は土から栄養を摂ることができないらしい。
土を吐き出す俺の横で、兄は必死で地面を掘っていた。ついに狂ったかと最初は思ったが、しばらくして俺は、兄の博識に感謝することになる。兄が宝石でも見つけたように、地からそっと取り上げたのは白エビのように肥えて栄養を貯めた幼虫だった。
あれは美味かった! そのごちそうを当たり前にように分けてくれた兄は、前世が仏かなにかだったに違いない。他の人にばれぬよう、泣きむせびながら食べた幼虫の味は今も確かに覚えている。あれが、俺の命を今までつないでくれたに違いない。そして今度はこの肉が俺の命を伸ばすのだ。
兄は言った。「ためらわず食え」と。両親の肉を食えずにむせた俺を叱責した。そして最後に「一片も残さず食ってくれ」と呟いてこと切れた。兄になにも返せなかった俺ではそれを叶えることしかできない。
あっという間に骨が見えてきた。最後に、拾ってきた大きめの石を必死に持ち上げる。
兄が言っていた。脳みそは虫と同じく貴重な栄養だと。残さず食えと。
俺はその石を兄の顔面に叩きつけた。何度も、何度も。その頭蓋が割れるまで。
●惨劇を繰り返せ
化け物だ、と誰かが叫んだ。叫んだ者はそのまま引き倒され、執拗に頭を打たれて絶命した。頭蓋をカチ割ったその化け物は脳髄を啜り、また別の化け物はその者の肉を食い漁った。
あれを喰い終わったら、彼らはまた自分たちを追い始めるだろう。
次に食われるのは自分ではないか。そんな恐怖が農民たちを支配する。
逃げろ、逃げろ。家にこもっても意味はない。あばら屋など簡単に破られ、化け物どもの餌になる。
ではどこへ行く? 化け物に破られない場所などあるのだろうか。
あそこがいい。あの城ならば城壁もあって簡単には破られまい。
幕府軍が訪れるまでの辛抱だ。どうにかあそこで持ちこたえよう。
あの立派な、鳥取城で。
●天下の裏には影がある
「三木の干殺し、高松城の水攻め、そして鳥取の飢え殺し。聞いたことはあるかな? かの有名な秀吉公が行った三大城攻めだ」
歴史書をめくりながら、アメーラは問う。何人かの猟兵たちは頷き、そうでないものは首をかしげるであろう。
軍師黒田官兵衛が策を練り、籠城する敵軍を降伏に追い込んだその戦いはあまりにも有名だ。これらにより名を上げた秀吉はのちに天下人にまで上り詰める。しかしその栄華の裏にはたくさんの人々の犠牲が影を落としている。
この三大城攻めの中でも最も悲惨なのは鳥取の飢え殺しと呼ばれるものだろう。包囲し米を買い占めるだけではなく、周囲の村を襲い農民を城に追い立てて食い扶持を増やしたという徹底さは、おぞましいものがある。
「当然農民たちの被害は甚大。しかもなまじ四か月耐えたせいで彼らはお互いを食らいあって命をつなぎ、そして死んだ。結果あの地には並々ならぬ怨みがたまっている」
それを利用せんと動いたのが陰陽師、安倍晴明。彼はその怨みを利用し、水晶屍人を強化した。さらには鳥取城で農民を飢え死にさせることで惨劇を再現し、強化水晶屍人を量産しようとしているらしい。
「十体集まれば猟兵と渡り合える怪物。そんなものを量産された日には幕府軍にシャレにならない被害が出るだろう。その前に止めてきてほしい。姦計に巻き込まれる農民たちもあまりに哀れだ」
このままでは農民たちはいたずらに殺され、清明の屍人軍の礎とされてしまう。惨劇の再現など阻止しなくてはならない。
「安倍晴明本人も叩くべきだろうが、まずはこちらの対処だ。数はそう多くないが普段よりは強敵だよ。くれぐれも油断しないように」
まあ忠告は不要かな、とアメーラは笑いグリモアを開いた。その光が収まったころには猟兵たちは農村近くにテレポートしているだろう。そしてすぐに、化け物を見つけた農民の声が、その場に響き渡るはずだ。
夜団子
●初めに
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●シナリオについて
強化された水晶屍人とのバトルです! 十体ほど倒してください。数は少ないですが強化されたことで彼らは以前よりも強い力を持っております。ですが変わらず意思疎通などはできません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ソフィア・エーデルシュタイン
愛されて、守られて、救われるはずだった命が奪われて
そしてなお利用されるなど、あってはなりませんわ
返して差し上げて。その怨嗟も、抱えて死んだその人だけのものですの
傲慢でも構いません
わたくしは農民も屍人も、救いたいだけ
即座に農民の方々の傍に駆けつける
その時間がないのなら、煌矢で彼らに一番近い敵を叩きます
倒れるまで撃ち込んで、数を減らしませんと
ご安心くださいまし。わたくし共は皆様を守りに参りました
城へ向かってはなりませぬ。ここで、彼らを仕留めますので
水晶の霊には、わたくしのきょうだいをご紹介しますわ
とても健気ないい子ですのよ
いつだって、わたくしを守ってくださるの
だからわたくしは、安心して楔を打てる
西条・霧華
「…外道が。絶対に許せません。」
自分を囮とする事で農民の皆さんが避難する時間を稼ぎます
また、絶対に城に向かわない様に注意を促します
『無名・後の先』にて誘った敵の攻撃を【見切り】つつ【武器受け】
纏う【残像】で敵を乱し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて【カウンター】
【見切り】の時点で反撃が困難だと判断した場合
【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
嘗ての悲劇は覆せなくても…
過去の悲劇の怨念を利用する事も、新たな犠牲者が出る事も…絶対に防いで見せます
守護者の【覚悟】を持って、皆を護る為に尽力します
恨みも絶望も私が引き受けます
だからどうか、安らかに眠って下さい
絹を裂くような甲高い悲鳴が、農村の曇天に響く。何事かと家から出てきた農民たちはその悲鳴の持ち主を見つけることができなかった。その前に、農村へにじり寄る水晶屍人を見てしまったからだ。
「な、なんだアレは!」
「ひぃッ、化け物、化け物だァッ食われちまう!!」
次々に上がる絶叫に農村全体がパニックに陥る。恐怖にかられた人の行動など単純なもの。抗う術のない農民であればなおさらだ。彼らは千々に散り、化け物から逃れようとがむしゃらに走り出す。
「お待ちください!」
そんな彼らを引き留める、透き通った女性の声が村へ響いた。彼女の声が耳に届いた農民たちは、足をとめ不思議な輝きを持つその女性へ振り返る。柔らかな微笑みを浮かべた彼女は農民たちを安心させるように、その手を優しく取った。
「ご安心くださいまし。わたくし共は皆様を守りに参りました」
その女性……ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)はその微笑みを持って農民たちの不安を和らげ、彼らを鳥取城ではない、猟兵の用意した避難所へと誘導する。
「城へ向かってはなりませぬ。わたくしたちがここで、彼らを仕留めますので」
「ア、アンタ、幕府の協力者の、猟兵たちかっ! ありがてぇ、ありがてぇ……俺たちは助かるんだ……!」
農民たちを安堵させるべく手を握るということは、襲い来る水晶屍人に背を向けることを意味する。微笑みを浮かべる彼女の後ろで、唸り声をあげながら走りくる彼らに農民たちはまた顔を歪めた。
「させません……!」
ソフィアと屍人の間に飛び出した黒髪の剣士が、その爪を受け止めた。西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)は素早くその攻撃をいなし、蹴り飛ばして距離を取る。
「私が囮になります。早く避難を!」
城には近づいてはいけない。二人のその言葉を深く胸に刻んで、農民たちは走り出す。今度はがむしゃらに散るのではなく、避難先という目的地を持って皆まっすぐに。
「……外道が。絶対に許せません」
「ええ、本当に」
目の前の屍人ではなく、彼らを利用し量産せんと企んだ魔将軍、安倍清明への怒り。それに震えた霧華の声にソフィアは深くうなずき同調する。
本能のまま人々を喰らわんとする水晶屍人たちは、最も手近な二人にターゲットを絞ったようだ。言葉にならない声をあげながら彼らは霧華たちとの距離を詰めていく。
「愛されて、守られて、救われるはずだった命が奪われて……そしてなお利用されるなど、あってはなりませんわ」
ソフィアの周囲に青玉髄の楔が、ひとつまたひとつと出現する。
人々は愛されて生まれてくる。この自分のように。そしてその死が非業なものであったとしても、その思いは本人だけのもの。誰かに利用されるために生まれるのではない。
「返して差し上げて。その怨嗟も、抱えて死んだその人だけのものですの」
屍人の水晶に陰りが灯る。水晶に苦悶に歪む誰かの表情が映り、屍人が金切り声をあげた。ぬるりと水晶から出現した怨霊はおそらく、戦国時代最も悲惨な死を遂げた、かつての農民のひとり。
「……これが傲慢だというのなら、それでも構いません。わたくしは農民も屍人も、救いたいだけ」
怨霊が閃光を放ち、二人の視界を奪う前にソフィアはその楔を打ち込んだ。百を超える楔は怨霊ごと屍人を刺し貫き、地面に突き刺していく。水晶が玉髄によって砕かれ、共に削れたその破片が農村の地へと散らばっていった。
「皆さまにはわたくしのきょうだいをご紹介しますわ。とても健気ないい子ですのよ。いつだって、わたくしを守ってくださるの」
突き刺さる楔に多くの屍人は逃げる間もなく貫かれて、その場に縫いつけられる。無理に留められ死してなお利用された彼らは、解き放たれてやっと天に昇った。
「……だからわたくしは、安心して楔を打てる」
ほのかに微笑む麗人の前で、彼らは倒れ伏していった。
「……傲慢だなんて、思いません」
青玉髄の楔が降り始めたころ。霧華もまた、行動を再開した。籠釣瓶妙法村正を手に、刺さる楔を避けてその合間を縫うように駆け抜ける。大規模な技により敵の数は随分と減った。それでも生き残りは少なくない。彼らをまとめて解き放つべく、彼女はあえて彼らの視界に入るよう走るのだ。
「私も、同じように思いますから……」
守護者になると決めたあの日。すべてが焼けたあの日。霧華は己に願いと呪いをかけた。その覚悟を、忘れた日はない。
―――それでも皆が幸せであれば良い。そう思ったのは何度目か。
ザッと音を立てて止まれば、引き寄せられた生き残りが霧華へ手を伸ばし襲い来ていた。爪を、牙を剥きだしにした彼らは霧華を喰らおうと一斉に襲い掛かる。足を止めた小柄な少女は、さぞ餌として魅力的に見えただろう。
それが罠とは知らずに。
「嘗ての悲劇は覆せなくても………過去の悲劇の怨念を利用する事も、新たな犠牲者が出る事も、絶対に防いで見せます……!」
爪を受け止めたのは籠釣瓶妙法村正の鞘。力を抜くようにしていなし、霧華は地を蹴る。追撃の牙が噛み付いたのは彼女の残像であった。
カチ、と籠釣瓶妙法村正を鞘から浮かせる。その刃に覚悟と魔を破る鋭さを乗せて。彼女は必殺の一撃を放つ!
「恨みも絶望も私が引き受けます―――だからどうか、どうか。安らかに眠って下さい」
その一刀は、集った水晶屍人たちを真っ二つに斬り捌いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴木・志乃
……大丈夫、まだ私の体は動く
貴方もちゃんと、骸の海に返すから。悲しい想いのまま、行かせはしない!
※オーラ防御常時発動※
念動力で周囲の器物を巻き上げ屍人に落とし襲撃
第六感で怨念の塊である屍人の攻撃を予測し見切り、光の鎖を食ませそのまま縛り上げる(早業武器受け)
可能なら足払いして転倒させるよ
すかさず抱き締める(手をつなぐ)
自分が傷つこうと知ったことか。目の前の屍人の方がずっと、ずっと悲しい想いをしてるんだ
祈り、破魔を乗せた全力魔法UCで安倍晴明の怨念、呪詛、邪法の一切合切を消し飛ばしなぎ払う
もう食べなくていい
誰かを呪わなくていいんだよ
さぁ、思い出して大切な時間を
そしてお帰り、家族の元へ
……っ、!
本能のままに生者を喰らう水晶屍人。知性もなく彷徨う彼らが目指すのは餌のなる人間たちのみ。故に、無機物の襲来には反応することができなかった。
鈴木・志乃(オレンジ・f12101)の念動力によって浮かび上がった無機物……農民たちの相棒である農具や転がっていた大石、薪などが一斉に彼らへ殺到する。認知をしていなかったものからの襲撃に、水晶屍人たちは受け身すらとることができずに体勢を崩していった。
「戦国時代最も悲惨な死を遂げた人々……か」
志乃は思う。彼らだって被害者だ。戦略に利用され非業の死を遂げて、死してなお安倍清明に利用される。もちろん今逃げている農民たちを守る前提は変わらない。だけど目の前で苦しむ彼らも救いたいと、志乃は願ってしまう。
怨念の塊である彼らの攻撃は単純で、予測しやすい。喰らいつかんと唸りを上げながら牙を剥きだした屍人の攻撃を、志乃は光の鎖で受け止める。ガチッと大きな音を立てて噛み砕こうとする屍人を、その鎖は縛り上げた。
その後ろから襲い掛かってきた屍人たちは素早く足払いし、同じく鎖で縛りあげる。拘束を破らんと暴れる屍人たちだが、淡く輝くその光の鎖は彼らを放すことはなく抑え続けている。
ふらり、と志乃が屍人のひとりに近寄った。鎖で封じ込められているとはいえ、彼らは理性のない化け物だ。目の前の生者を喰らわんと金切り声をあげ腕を伸ばそうともがく。そんな屍人を志乃はあろうことか―――抱きしめた。
「くっ……!」
当然、そばにきた獲物に屍人が喰らいつかぬわけがない。縛られていながらわずかに動かすことのできた爪が、志乃に突き刺さる。ジワリと血が滲み、爪へ流れていく。
オーラを放ち攻撃を緩和していたとしてもその痛みは志乃を襲った。それに耐えながらもなお、彼女は屍人を抱きしめ続ける。
「……大丈夫、まだ私の体は動く。貴方もちゃんと、骸の海に返すから。悲しい想いのまま、行かせはしない!」
自分が傷つくことなんて知ったことか。目の前の屍人の方がずっと、ずっと悲しい想いをしているのだから。
彼らごと救いたい。そう祈ったときから志乃の腹は決まっていた。
「踏み躙られたその願い、私が聞き届けた!!」
眩いばかりの聖光が志乃の周囲を埋め尽くす。その輝きは安倍晴明が乗せた怨念、呪詛、邪法のすべてを吹き飛ばし、かき消した。温かいその光に包まれて、屍人たちはだんだんと、その凶暴さを失っていく。
「もう食べなくていい。誰かを呪わなくていいんだよ」
「ア……アァ……」
「さぁ、思い出して大切な時間を。そしてお帰り、家族の元へ」
理性のない屍人へ言葉は通じない。しかし思いは届けることができたのだろうか。だらりと脱力した彼らは光に包まれて昇天していった。成仏し、天の家族の元へ帰ることができたのだろう。願わくば、次の命では平穏な人生を。
「……っ、!」
耐えていた痛みが一斉に志乃を襲う。傷口を押さえ膝をつけば滲んだ血が小さな滴となって地へ落ちた。
無理したかな、と苦笑しながら志乃は撤退を選択する。ここら一帯の農民も逃げきれた、彼らも還すことができた。別の一戦にむけて体を労わらなくては。
立ち上がり、歩み出した志乃の背後では、まだ穏やかな光が残り、漂っていた。
成功
🔵🔵🔴
終夜・還
チッ、胸糞悪ィな。飢えて喰わなきゃ死ぬって状態を強いてるのも、その恨み辛みを利用してんのも気に喰わん
まー戦争って言っちまえば仕方ないこと、で終わるんだが明確にオブリビオンが引き起こしてる事だとなァ
【先制攻撃】狙いでUC発動、狙いは相手のUCの無効化
『死霊召喚』を防御面で使おうかと
視界を奪われる前に闇で塗りつぶしてやんよ
穢れが満ちたら『人狼咆哮』で周囲の敵を無差別攻撃
一応周りに敵以外が居ない事を前提に動いてから実行に移そう
……出来れば農民達を護り通したい。嘗て俺に出来なかったことだし、世界は違えど同じ人だからな
水晶屍人の攻撃は受けたとしても激痛耐性で堪えて、なんならカウンター叩き込んでやろう
「チッ、胸糞悪ィな」
未だ悲鳴の上がる農村。その一か所で終夜・還(一匹狼・f02594)はただ低く唸った。
「飢えて喰わなきゃ死ぬって状態を強いてるのも、その恨み辛みを利用してんのも気に喰わん」
前者は戦略。籠城する敵を倒すのは非常に難しく、長期戦になりがちだ。そして長期戦になれば双方に大きな負担がかかり、兵士の死者も増える。軍師としては如何に短時間で籠城している者たちに音をあげさせるか、を考えることだろう。
「まー戦争って言っちまえば仕方ないこと、で終わるんだが明確にオブリビオンが引き起こしてる事だとなァ」
しかし後者は違う。過去に滅びたオブリビオンが未来を害そうと暗躍している。過去に大きな苦しみを抱いた者を利用して。
「……ま、怨みっていうのはつよーい力になるからな」
死者の怨みを宿した水晶屍人。ならばこちらも死者の穢れで対抗しよう。
開かれた記憶の書より死霊たちが次々と召喚される。口々に怨みをつぶやく彼らはひとつの群となって乱れ舞い、水晶屍人たちへと襲い掛かった! 怨みが怨みに飲まれ、直撃した屍人たちはいとも簡単にひき潰される。死霊たちが暴れまわったことでここ一帯には淀んだ穢れが満ちてしまった。重苦しい空気が村の一部を支配する。
「さすがに全員は無理だァな」
だがそれでよかった。今回の技の目的は倒すことではなく、穢れをばらまくことなのだから。
穢れが闇を呼ぶ。還にとっては心地よいそれは、死者であっても水晶屍人には受け入れがたいものだったようで。閃光をばらまかんと現れた水晶の霊は、苦悶の声をあげて水晶の中へと戻ってしまった。
「時間稼ぎは済んだか」
体になじむ闇。それにより強化された自身の戦闘能力を存分に発揮する時が来た。
このあたりにいた農民たちはとっくに避難済み。逃げ遅れた者たちも、今の時間稼ぎで逃げ切れただろう。
「…………」
農民たちは護り通したい。それはかつて還にできなかったことだ。世界は異なれど人は人。今度こそ、彼らを護るのだ。
息を吸い込み、人狼の力を一部開放する。腹の底から響き荒れるその咆哮は周囲のものを吹き飛ばし、それを聞いた屍人たちを粉々に砕いた。
音というものは、防ぎようがない。耐えようと抗う屍人ができたのは、無我夢中で農具を振り回すことだった。
「高速で動いてたって一度避けちまえばただの振り回しだな」
ガッと農具の柄を掴み、還は拳を握る。いい加減成仏しろよ、と呟いて、黒狼は笑った。
その拳が深々と水晶屍人の顔へとめり込んだ。
成功
🔵🔵🔴
落浜・語
こう、何でもかんでも巻き込むの本当やめてくんねぇかな、胸糞悪い。
UC『人形行列』で農民と敵の間に人形でもって壁を作る。敵、人形、農民の形で、逃げるために【時間稼ぎ】をしつつ誘導の声掛けを。
必要に応じ【言いくるめ】や【演技】なんかもして、安全なほうへ。襲われそうな人がいれば、奏剣も使いつつ【かばう】
敵一体に対して、複数の人形をけしかけ、周囲も【範囲攻撃】に巻き込みつつ確実に倒していく。
悪いが、ただの高座扇子の俺が助けられるのは、生きているものだけなんでね。誰も殺させねぇよ。
アドリブ連携歓迎 、🔵過多なら不採用可
アリス・イングランギニョル
さてさてさて
別にこういう手管はボクも嫌いではないのだけれどね
今回は敵同士
しっかりと邪魔させてもらおうじゃないか
ところで気になることがあるのだけれどね
知性はなくとも、幻影に心を奪われたりすることはあるのかな、キミたちは
気になるから検証にお付き合い願おうか
ボクは適当に物陰に隠れながら、呼び出したマッチ売りの少女に炎をばら撒いてもらおうか
あ、民家や畑に火を付いた分は消すようにするよ
首尾よく火が付いたら、幻惑の炎で【属性攻撃】に【精神攻撃】
屍人の諸君にはたっぷりとお腹が膨らむまで飢えを満たす幻を見てもらおう
イイ夢は見れたかい?
キミたちが見れるかは知らないけれどさ
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
「さてさてさて……」
書き手たるアリス・イングランギニョル(グランギニョルの書き手・f03145)は村を襲う水晶屍人を眺めながら薄ら笑う。この力、このやり方。猟兵によっては憤慨するだろうが、自分はそこまでの怒りを感じない。
「別にこういう手管はボクも嫌いではないのだけれどね。今回は敵同士、しっかりと邪魔させてもらおうじゃないか」
こそこそと隠れながら童話魔法を放つべく本を開いたアリスの目の前を深緑色の影が通った。アリスと同じくヤドリガミであるその猟兵は、農民と屍人たちの間に素早く体を滑りこませる。
農民を狙って振り上げられた爪。柄が笛になっている奇妙な短剣で、彼はその爪を受け止めた。
「こう、何でもかんでも巻き込むの本当やめてくんねぇかな、胸糞悪い」
深緑の猟兵こと、落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)はぼそりとそうつぶやき、その場に二百を超える人形を召喚する。人形の行列はまるで壁のように水晶屍人たちの前に並び、農民たちへの道を遮った。眩い閃光も、人形たちによって阻まれ農民たちには届かない。
「今のうちに避難してくれ。あなたがたを逃がし切るまでは十分に時間を……」
「た、たすかった……! みんな! 俺たちは今のうちに鳥取城へ……」
その言葉に語は眉をピクリと寄せた。走り出そうとしたその農民の腕を握り、引き留める。
「城は駄目だ。それこそ魔将軍、安倍清明の狙い……あちらの方向に俺たちの用意した避難所がある。強固な塀は無いが、猟兵たちがしっかり警護しているから安全だ。……そちらに逃げてくれ。わかったか?」
語の言葉に言いくるめられた農民はコクコクと首を振る。恐怖で視野が狭まった人々は冷静な判断をすることができない。多少強引でも、避難所へ行くよう誘導した方がいいだろう。鳥取城に行ってしまっては、オブリビオンの思惑通りなのだから。
「いやぁ素晴らしい説得だったね。おかげで彼らを気にすることなく童話魔法が放つことができる」
「……だれか見ているとは思ったが。そんな茂みで何をしていたんだ?」
ガサガサと隠れ場所から出てきたアリスを見て語は怪訝そうに首を傾げる。童話魔法、という聞き覚えのない魔法にも戸惑う語に、アリスはくつくつと小さく笑った。
「ところで気になることがあるのだけれどね。彼らは見たところ本能のまま動くようだが……知性はなくとも、幻影に心を奪われたりすることはあるのかな?」
答えの求めていない問い。それと同時にアリスは童話魔法を顕現した。
ぼろぼろの服に使い古されたバスケット。その中には炎を宿すマッチたちが所狭しとひしめき合っている。
「マッチ売りの少女の炎は、死の直前に幸せな幻影を見せる。農民たちが巻き込まれたら申し訳ないからね」
「幸せな幻影……飢えで死んだ人々なら、腹を膨らませる夢になるのだろうか」
人形の壁の向こうで、屍人たちの唸り声が変わっていく。威嚇するような唸り声や金切り声は消え、咽ぶようなくぐもった声が響き始めた。
「ふぅん、どうやら見えるようだね。泣きながら飢えを満たしているんだろうか」
語が覗いてみれば、確かに彼らはなにかを食べるように手を口へ運んでいた。涙を流しながら空虚を貪る様は、死者といえども痛ましいものがある。
「彼らはイイ夢を見れているかい?」
「……ああ」
逸らそうとした語の目が、不意に屍人のひとりと合った。今まで夢心地だったその屍人は語を見たことで目が覚めたのか、徐々にその凶暴性を思い出し始める。歪み、喰らわんと走り出す姿を見て語は人形の壁からそっと距離を取った。
己を阻む壁へ本能のままに斬りかかった屍人の、大きな絶叫が一帯に響き渡る。ひとつの人形が屍人の爪で真っ二つに切り裂かれ、即座に消滅した。
壊されたことをトリガーに、派手な連鎖爆発を起こして。
「あーあ、ずいぶんと派手にやるじゃないか。粉々だよ、彼ら」
轟音と巻き上がった炎の中、それが農家に燃え移らないようにしながらアリスはぼやいた。それを手伝うべくバケツを拾い上げた語はひとり静かに呟く。
「悪いが、ただの高座扇子の俺が助けられるのは、生きているものだけなんでね。……せめて、誰も殺させねぇよ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セラフィール・キュベルト
斯様に惨い死の連鎖、続けさせる訳には参りません。
何より、彼らとて望まぬ行為でありましょうから…
村へ到着次第、農民の方々へ助けに来た旨を伝え、逃げ遅れた人がいる等最も危険な状況にある方角を訊ね、そちらへ急行。
屍人を発見次第、神威転身・熾焔光臨を発動。
それが農民の方々に迫っているなら、【気合い】と【覚悟】を以てその間へ割って入り、この身を包む焔と【オーラ防御】で食い止めます。
その後は水晶からの光を警戒しつつ、この身より放つ光の波動に【破魔】の力を上乗せし攻撃。
確実にここで食い止め、そして皆様を…眼前の、死して尚弄ばれし方をお救いするという意志のもと、撃破にかかります。
「――せめて、安らかに…」
「ええ、ええ……私たちが来たからにはもう大丈夫です。さあ、避難所はすぐ先ですよ」
柔らかで優しい声、人々を安心させる無垢な微笑み。それを湛えたセラフィール・キュベルト(癒し願う聖女・f00816)に導かれ、農民たちは涙を流した。あの方は天使か聖女か―――そんなことを口々に呟きながら。
「斯様に惨い死の連鎖、続けさせる訳には参りません。何より、彼らとて望まぬ行為でありましょうから……」
その慈愛は農民たちだけでなく、水晶屍人たちにも平等に向けられる。だからこそ聖女と呼ばれた少年は急ぐのだ。屍人たちに農民を喰い殺させるという惨い真似をさせないためにも。
「お願いします、お願いします……まだ私たちの子が、家に、家に……!」
「わかりました、必ずお救いします。ですから皆様は先に避難所へ向かっていてください」
泣き崩れる母を父が立ち上がらせ、深々とセラフィールへ頭を下げる。教えられた方角へ急ぎ足を向けながら、セラフィールは地を蹴った。
(どうか、間に合ってください……っ!)
はたしてその祈りが届いたか。セラフィールが教わった家の前までたどり着いたとき、小さな男の子が必死で水晶屍人から逃れようと走り出していた。その足がもつれ、男の子は地面へ倒れ伏す。獲物の隙を逃さんと、屍人が彼へ襲い掛かった!
「やらせません……!」
―――神威転身・熾焔光臨。眩い光と共に六つの羽根がセラフィールの背中より出現する。白金に輝く焔は彼を護るように周囲へ纏わり、その神々しさをより引き立てていた。
「この先の避難所に、あなたのお父様とお母様がいらっしゃいます。早く行って、安心させてあげてください」
文字通り、天使の微笑みを受けた男の子はその小さな頬を赤く染めて、うなずいた。そして言われた通り避難所の方へと一目散に駆けだした。その背中を見てくすりと笑い、セラフィールは水晶屍人たちへ向き直る。
「私は皆様を……眼前の、死して尚弄ばれしあなた方を、お救いするためにやって来ました」
彼らに言葉は通じない。その慈愛も感じることができない。
水晶が瞬き、苦悶の声を上げる死霊がゆらりと出現した。その怨みは深く、セラフィールを害さんと視覚を奪う閃光を放つ。
「光は、常に私と共に。光では私を傷つけることは叶いません」
その小さな口でセラフィールは主へと語り掛ける。その指を組み、祈りを捧げながら言葉を天へと捧げた。
「貴き御方、我が身篝と為して闇祓う光を此処に――!!」
広げられた六つの翼。神々しく輝く光の波動。セラフィールから放たれたそれは薄暗い曇天の空を裂き、水晶屍人たちを包み込んだ。
「―――ァ」
悲鳴も金切り声も、上がらなかった。屍人たちに苦痛は訪れなかったからだ。ただ彼らは、天へと導かれるのみ。安倍清明によって地へと縛り付けられていた彼らは、ついに永遠の平穏を得たのだった。
「――せめて、安らかに……」
セラフィールは祈る。悲惨な運命を遂げた人々のため。その眠りが安らかであることを。
光が収まったとき、その場所に立っている水晶屍人は、ただのひとりもいなかった。
成功
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