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エンパイアウォー⑥~戦慄の多重ファランクス

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●激突、関ヶ原!
 関ヶ原。
 かつて、徳川家康が石田三成と雌雄を決したとされる、天下分け目の大戦が行われた地。
 その関ヶ原に、再び集いし者達がいる。だが、彼らは武家の血を引く者達ではなく、その全てが近隣の村々から集められた農民だった。
「全軍、配置に付いたか。後は、幕府軍がこの地に現れるのを待つだけだな」
 大盾と槍を装備した民兵の列を、後ろから眺めるのは女武者。恐らくは、この部隊の大将であろう。
「それにしても、皮肉なものよな。かつて、兵と農を分けたことによって天下を取った豊臣は、武家同士の戦いで徳川に破れた。その徳川が、今度は再び武器を持った農民によって倒される……いつの時代も、戦に常勝の法など存在せぬということか」
 大将である女武者が、苦笑しながら呟いた。彼女の率いる軍勢は、一般の幕府軍の力では突破不可能。後は戦場に現れた時代遅れの武士どもを片付けるだけだと、幕府軍の到来を心待ちにしていた。

●驚異の突撃陣形
「サムライエンパイアでの戦争……今のところは、順調に勝ちを重ねられているかしら? まあ、相手の数が多いから、油断してると一気にひっくり返される可能性もあるけどね」
 最終目的は織田信長の居城を落とすことだが、そこに至るまでに、様々な試練が幕府軍を待ち受けている。今回も、そんな試練のひとつをなんとかして欲しいと、神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)はグリモアベースに集まった猟兵達に説明を始めた。
「今回、あなた達に向かって欲しいのは関ヶ原よ。そこに集まっている大帝剣『弥助アレキサンダー』の息が掛かった軍を、幕府軍との接触前に攻略して欲しいの」
 大帝剣の二つ名の通り、弥助アレキサンダーは 『大帝の剣』なるものを持っている。これは広範囲に渡る洗脳能力を持った剣で、この力により畿内全域の農民達が、弥助アレキサンダーに従って幕府軍を迎え撃とうとしているようだ。
「農民達に支給されているのは、日野富子から徴収した金銭によって整えられた『長槍』と『大盾』ね。これだけなら、大したことはないんだけど、それはあくまで1対1で戦った時の話よ」
 敵は右手で長槍を構え、左手の盾で自分の左隣の仲間を守る、『ファランクス』と呼ばれる陣形を組んでいる。この陣形で横一列に並び、一斉に突撃して相手を叩き潰すというのが、基本的な戦略だ。
 一般的な侍の戦い方とは異なり、数を揃えて攻防一体の突撃で相手を蹂躙するという作戦である。幕府軍にとって、これは極めて不利な条件であり、まともにぶつかれば関ヶ原の地で半数が壊滅してしまう。
「そういうわけで、あなた達には、この陣形を指揮しているオブリビオンを退治して欲しいの。『大帝の剣』の洗脳効果を村人に伝播する役割も持ってるから、こいつさえ倒せば、残りの兵士は戦意を失って引き上げるわ」
 だが、それでも真正面から挑めば、数の暴力により面倒な戦いになることは否めない。おまけに、部隊を指揮する女武者のオブリビオンは、自らの手駒を召喚するユーベルコードの使い手だ。
 ファランクスを強引に突破しようとすれば、最悪の場合、村人は死ぬ。そして、仮に強行突破に成功したとしても、その先にはオブリビオンの召喚した騎馬隊や鉄砲隊との戦闘が控えている。
「正直、真っ向から勝負を挑むのは、あまり感心しないわね。できれば、村人の部隊と戦うことを避けて、上手くオブリビオンとだけ戦えればいいんだけど……」
 接敵の工夫は、そちらに任せる。なんとかして指揮官である女武者を撃破し、幕府軍の障害を少しでも取り除いて欲しい。
 最後に、それだけ言って、鈴音は猟兵達をサムライエンパイアの関ヶ原へと転移させた。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●勝利条件
 女武者大将の撃破。
 一般人の生死は問いません。

●敵
 ファランクス部隊を指揮する、女武者の大将です。
 彼女を撃破すれば、大帝剣の効果は失われ、村人達も洗脳から解かれます。

●ファランクス部隊
 機内の農民を集めて洗脳することによって作られた部隊です。
 指揮官のオブリビオンを倒すまで、彼らに猟兵の言葉は届きません。
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第1章 ボス戦 『女武者大将』

POW   :    「大将を死守せよ!」
戦闘用の、自身と同じ強さの【自らを護る近衛女武者衆】と【敵を迎え撃つ女鉄砲隊】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    「騎馬隊!前へ!進め!」
【白馬に跨った女騎馬隊】の霊を召喚する。これは【薙刀を持っての騎馬突撃】や【距離を置いての馬上弓射】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    英霊達の加護と呪護
【かつて仕えた戦国大名の英霊】【自身が率いた兵士の霊】【合戦で討ち果たした敵兵の怨霊】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は鍋島・小百合子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

小さな身体を活用して地面ギリギリの超低空を飛行してファランクス部隊をすり抜けようとするね!

ファランクス隊をやりすごしたら、【ライオンライド】で呼び出した体長40cmほどの子ライオンくんに「騎乗」して駆けつけるよ!
女武者大将の呼び出した騎馬隊は、「動物と話す」「動物使い」を使ったライオンくんとのコンビネーションで蹴散らしていくね☆
薙刀や弓では狙いにくいだろうからお馬さんに踏まれないように注意するよ!

ある程度やっつけたらレイピアを構えて女武者大将に突撃するよ!
村人さんを洗脳して無理やり戦わせるなんて絶対許せないぞ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ステラ・テルキーネス
地上に敵があふれているのなら方法は2つしかないでしょう。
上か、下か…です。

●ファランクス突破
ユーベルコード:若草妖鳥物語を発動させセイレーンに変身。
空から突破します。
弓矢の攻撃が怖いので急上昇。最高度で最速でオブビリオンを探し出して向かいます。

●対オブビリオン
空からプリンセスハートを投げつけますが、誤射が怖いのですぐに地上へ着地。変身を解くと接近戦です!
<ステラ・テルキーネスの左前脚>で自慢の『怪力』で殴って『2回攻撃』で即座に<ステラ・テルキーネスの右前脚>で『串刺し』にします。
攻撃はボク自慢の<ステラ・テルキーネスの長い髪の毛>で『吹き飛ばし』て間合いを取って防ぎます。

●アドリブと連携
歓迎



●飛んで潜ってファランクス!?
 関ヶ原に集いし数多の農民。その全員が槍と盾を備え、横一列に並んでいる。
 集団戦術、ファランクス。戦いは数であることを証明し、英雄同士の一騎打ちに終わりを告げさせたという伝説の陣形。
 兵法としては、いささか古典的過ぎる代物ではある。が、不幸なのは、サムライエンパイアの歴史において、このような歩兵戦術が編み出されなかったことだ。既知の者からすれば古臭い戦い方であったとしても、未知の者からすれば、それは十分に脅威であろう。
 相手を傷つけない形での正面突破は、ほぼ不可能。だが、どれだけ攻防一体の陣形であっても、必ず穴は存在する。
「地上に敵があふれているのなら、方法は二つしかないでしょう。上か、下か……です」
「あ、同じこと考えている人、いるんだ。でも、他に方法もなさそうだよね」
 互いに何を言わんとしているかを悟り、ステラ・テルキーネス(バイオモンスターのミュータントヒーロー・f19520)とティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、それ以上は何も言わずに頷いた。彼女達の考えた策。それは、飛行してファランクスを突破するというものだ。
「これはボクの替わりに生を受ける筈だった……。IF……。居たかもしれないステラの物語!」
 まずはステラがセイレーンとしての姿を解放し、ファランクスを作っている軍勢の上を高々と飛翔した。弓による攻撃を警戒していたが、そもそもファランクスは盾と槍を以て相手を押し潰す攻撃陣形。当然、対空用の武器など装備しているはずもなく、農民軍はステラの姿を、指を咥えて眺めるだけだ。
「よ~し、それじゃボクも、今の内に……」
 そんな中、敵の視線がステラに集中している隙に、ティエルもまた敵の集団へと突撃して行く。彼女が狙うのは上空ではない。敵と敵の間に空いた、ほんの僅かな隙間である。
 小柄な妖精だからこそできる、サイズの小ささを生かした策だ。正直、隙間はかなりギリギリだったのだが、敵がステラを注視していたことで、なんとか気付かれずに抜けられた。
 とりあえず、第一関門は突破である。だが、ここで油断するわけにはいかない。敵の女武者は配下を召喚する術に長け、単体で集団を相手にすることもできるのだから。
 ファランクスを抜けた先に待つのは、騎馬隊か、それとも鉄砲隊か。敵の防御を警戒しつつ、ステラとティエルは持ち前の飛行能力を生かし、一気に女武者へと接近した。

●激突、女武者!
 ファランクスを抜け、女武者へと迫るティエル。だが、当然のことながら、相手も猟兵の接近は察知していた。
「敵が現れたぞ! 騎馬隊、前へ! 進め!」
 ライオンに乗ったティエルの姿を捉え、女武者は騎馬隊を召喚した。騎兵には騎兵という考えなのだろうが……しかし、ティエル相手に限っては、お約束通りの騎馬戦にはならなかった。
「それにしても、敵は随分と遠いな」
「ああ……もう少し近づいてくれないと、弓で狙えな……なにっ!?」
 遠くにいるが故に小さく見えていると思っていたのだろう。完全に間合いを見誤った女騎馬隊に、ティエルは一気に距離を詰めると、馬の足を狙ってレイピアを突き立てた。
「な、なんだ、この女子は!」
「まさか、獅子ではなく猫に乗って来るとは! ふ、不覚……」
 足を貫かれて暴れた馬から、女騎馬隊の面々が次々と落馬して行く。どうも、彼女達はティエルのライオンを猫か何かだと思っているようだが、まあサイズ的には仕方のない話だ。
「ライオン君! 踏まれないように、気を付けて!」
 瞬く間に混戦状態となる中、ティエルは巧みに馬の足を避けながら立ち回る。女騎馬隊も薙刀や弓で対抗しようとするが、馬の下に回り込むティエルを攻撃しようとすれば、味方まで斬り付け兼ねないので手が出せない。
「くっ……小癪な!」
 たった一人と一匹に、騎馬隊は完全に手玉に取られていた。そして、その隙を見逃さず、大将の女武者目掛けてステラが攻める!
「てぇぇぇいっ!!」
「な、何事だ!」
 上空から投げ付けられた謎のハート。さすがに総大将だけあって、女武者もぎりぎりのところで避けてみせるが。
「まだまだ! 次はこれだよ!」
 ハートが着弾した際の土煙で視界を遮り、ステラはすかさず変身を解くと、まずは左拳の強烈な一撃を叩き込み。
「お次は、こっち!」
 今度は、ギミックを搭載した右手の戦籠手で殴りつける。打撃と同時に鋭い杭が射出され、それは女武者の皮鎧を容易に貫いて突き刺さった。
「ぐっ……やるな、小娘! だが、私とて、ここで負けるわけいは行かぬ!」
 しかし、それでも女武者は倒れることなく、傷口を押さえながらもステラを睨み付ける。その背後に様々な霊魂が浮かんでは消え、女武者の背中に吸収されて行く。
「はぁぁぁぁっ!!」
 力を解放した瞬間、女武者の放った闘気で草葉が揺れた。今までとは比べ物にならない、凄まじい殺気。さすがに、この状態で戦うのは、ステラだけでは不利過ぎる。
「さあ、戦いはこれからだ。いざ、尋常に勝負!」
 薙刀を構え、女武者がステラに斬り掛かって来た。その凄まじい膂力と鋭い斬撃を前に、ステラの自慢の髪がバッサリと斬り落とされた。
「あぁっ! ボ、ボクの髪が!!」
 彼女の髪は、変幻自在に動いて敵を捕まえることのできる武器でもある。が、その力を以てしても受け止められない程に、敵の攻撃の威力が高過ぎたのだ。
「先程までの勢いはどうした? それとも……もう、息切れか?」
 続く斬撃を両腕を交差させて受け止めたが、このままではいずれやられてしまう。全身に数多の霊を宿した女武者の実力。その高さに圧倒されるステラ目掛け、止めの一撃とばかりに薙刀の先端が突き出されるが。
「させないよ! ライオンくん、止めて!」
 間一髪、女騎馬隊を退けて来たティエルが、女武者の腕にライオンを噛み付かせた。
「な、なんだと!?」
 さすがに、不意打ちに咄嗟の対処をすることはできず、女武者の手から薙刀が落ちる。そこを逃さず、ステラは残る髪を束ねると、巨大な拳のようにして、女武者の顔面を狙って打ち出した。
「……ぐはっ!!」
 髪の毛とはいえ、限界まで圧縮された塊を、高速で打ち出されれば、さすがに響く。鎧で覆えない部分であったことも災いし、女武者は殴られた反動で、そのまま後ろに吹っ飛んで行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
オーケー、承った
ファランクスをぶっ潰して、道を切り開く
では──状況開始だ

いくら強力なファランクスつったって、正面からぶつからなきゃ真価を発揮できねえだろ?
崩して惑わせばいいのさ──セット『VenomDancer』
いいね、視線で分かるぜ…俺に槍を突き刺したくて仕方ないだろ?
ついてこいよ

陣形崩して突撃してくるか、陣形を保ったまま来るか…
まあどっちでも関係ねえ、必ず乱れてるだろうからな
装備も随分取り回しが悪いだろ?引き付けてそのまま置き去りにするれば、旋回にかなり時間を使う

その間に大将にダッシュ、猛毒と鈍化のパルスを乱打
騎馬隊?関係無い、俺の高速機動に追いつけるか?
鈍化と猛毒は時間がたつほど効くぜ?


霧島・絶奈
◆心情
確かにファランクスは強「かった」
其は歴史が証明しています
この時代では規格外の戦術でしょう

…故に対策も研究されているのですが

◆行動
『暗キ獣』を使用し軍勢を展開
「鉄床戦術」を利用した軍勢運用による【範囲攻撃】で敵を殲滅
…まあ洗脳一般人に関しては【気絶攻撃】に留めておきましょう

屍兵は槍衾にて迎撃しつつ敵を止め、屍獣は側面及び背後から遊撃
これがより進化したファランクスです

一般兵による壁が薄れた所を強行突破し首級をあげます

私は【目立たない】事を活用
軍勢に紛れながら【罠使い】として罠を設置
【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】で【二回攻撃】しつつ罠に誘い込みます

負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復



●強行突破!
 農民を盾に、圧倒的な数で相手を蹂躙するファランクス。敵の手の内が分かったところで、普通に考えれば、そもそも民間人と戦うことを躊躇う者の方が多いだろう。
 だが、それはあくまで、相手にそういった良心が備わっていればの話だ。幕府軍の武士達は、臣民である農民達を守る義務がある。だからこそ、彼らを洗脳して差し向けることは効果的なのだが、それが猟兵に対しても等しく通じるとは限らない。
「確かにファランクスは『強かった』。其は歴史が証明しています。この時代では規格外の戦術でしょう」
 だが、同時に研究もされ尽くしているため、対処法はいくらでもある。そして、農民を肉壁にするようなやり方で、必ずしも躊躇する者ばかりではないと、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は実に冷めた視線で軍勢を見据え。
「オーケー、承った。ファランクスをぶっ潰して、道を切り開く。では……状況開始だ」
 正面からぶつからなければ真価を発揮しない陣形なら、それを崩してしまえば早いと、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)が頷いた。
「全軍、進め! 敵は少数だ! 絶対に突破させてはならぬぞ!」
 女武者の指示により、ファランクスを組んだ農民たちが突撃して来る。一糸乱れぬ、統率の取れた動き。しかし、それらを前にしても、ヴィクティムは何ら動じない。
「ちゃんと俺を見てなきゃダメだろ? 目を離したらブスリといくぜ……あぁいや、悪い。その必要は無かったみたいだ」
 自分自身に敵からのヘイトを集めるプログラムを纏い、ヴィクティムは敢えてファランクスの正面に立った。相手がこちらを突き刺そうと一斉に向かって来れば、そこで陣形は崩れてしまう。仮に列を崩さず向かって来たとしても、精神的な面での連携は崩れるだろう。そう、踏んでのことだったのだが……。
「……陣形を崩して来ましたか。ですが、これは円陣……少々、面倒なことになりましたね」
 敵が円を組むような陣形を取って来たことで、絶奈が少しばかり顔を顰めた。
 ファランクスを組む農民達は、大帝の剣によって洗脳されている。その命令は絶対であり、中継役であるオブリビオンを撃破しない限りは解除されない。
 だが、その一方で、ヴィクティムに対する強烈なヘイトもまた効果を発揮している。そんな相反する命令を、同時に実行しようとした結果、農民達はファランクスを崩し、ヴィクティムと絶奈を取り囲むような陣形で、ぐるりと周りを囲んで来たのだ。
「ちっ……こっちに近づくにつれて数は減るが、その分、壁の枚数が増えやがったか……」
 こんなことなら、普通に吹き飛ばしてしまった方が楽だったかと、ヴィクティムが歯噛みした。
 円形の陣である以上、中心部に向かえば向かうほど、そこに到達できる兵の数は少なくなる。だが、それは即ち、中心に辿り着いた者を倒したところで、第二、第三の軍勢が、次々と襲い掛かって来ることを意味している。
 これが全てオブリビオンであったなら、大暴れして片付ければ良いだけの話だ。が、相手が農民とあっては、下手に命を奪うこともできず、どうにもやり難い状況だ。
「確かに、これは面倒ですね。では……こちらも進化したファランクスを用いて、敵の軍勢を突破させてもらいましょう」
 そう言うが早いか、絶奈は詠唱と共に、多数の屍兵と屍獣を召喚する。迫り来る敵兵を屍兵が槍衾にて迎え撃ち、その隙に屍獣が側面から攻める。敵が円を描いている以上、実際は単なる乱戦にも等しかったが、とりあえず敵の数を減らせれば、それで良い。
「う、うわぁぁぁっ!」
「ば、化け物! く、来るな……ぎゃぁぁぁっ!!」
 ヴィクティムを殺すことばかり考え、絶奈へのマークが薄くなっていたことも相俟って、農民兵達は次々と屍獣の餌食になっていった。一応、命までは奪わず、気絶させるだけにしているが、それでも襲われる側からすれば堪ったものではない。
「さあ、道が開きました。一気に突破しましょう」
 屍兵と屍獣の大乱闘の果てに、総崩れとなって行く農民兵達。彼らの相手を配下に任せ、絶奈はヴィクティムと共に、崩れたファランクスを突破した。

●戦いに王道なし
 洗脳により意思を奪われ、機械の如き連携を誇るファランクス。その部隊が脆くも崩れ去って行く様に、大将である女武者は、驚きを隠し切れなかった。
「おのれ……彼奴等め、我が陣を崩すためであれば、相手が誰であれ容赦はせんということか……」
 相手が農民であろうと、情け容赦なく襲い掛かる屍獣。命こそ奪っていないが、しかし気絶させるにしても、まったくの無傷というわけにはいかない。
 頭を殴り、体当たりで吹き飛ばし、およそ意識を奪うために必要なことは何でもやる。それが、洗脳されただけの農民であろうと、彼らはまったく気にも留めない。
「迂闊でしたね。我々の誰もが、聖人君子であると思わないことです」
 女武者の前に現れた絶奈が痛烈に告げる。猟兵は数多の世界を救うために集った能力者ではあるが、しかしその思想、信条は決して一枚岩ではない。それは、時に組織力という面での弱点を残すが、しかし思い切りの良さや策の多さという点では、むしろ有利に働くこともある。
 誰も傷つけないことを信条とする者もいれば、最低限の犠牲は仕方がないと割り切る者もいる。無論、救える限りは救いたいというのは共通しているが、結果として命さえ助かるのであれば、過程を問わない者がいるのも、また事実。
 農民を盾に使えば、彼らを傷つけることを躊躇うはず。そんなオブリビオン達の思惑は見事に外れ、ファランクスは総崩れにされてしまった。未だ兵力は残っているものの、それが全て失われるのも、もはや時間の問題だろう。
「さあ、もう後がないぜ。観念しな」
 ここまで来たら、早々に終わりにしてやろう。挑発するかの如く告げるヴィクティムだったが、しかし女武者とて退けない理由はある。
「小癪な! 我が軍勢は、あの農民達だけではないぞ!」
 咄嗟に、騎馬隊を呼び出して、女武者はヴィクティムへと向かわせた。が、そこは読んでいたのか、ヴィクティムも持ち前の高速移動で、敵が動き出すよりも早く騎馬隊の懐へ飛び込んだ。
「くっ……は、速い!」
「慌てるな! 落ち着いて狙えば……うぐっ!?」
 ヴィクティムの放つ猛毒のパルスを受けて、途端に苦しみだす女騎馬隊。確かに、騎兵は強力な駒だが、それでも完全無欠というわけではない。
 騎兵の武器は、機動力と突進力。しかし、それらが有利に働くのは、あくまで騎馬より機動力が劣る相手のみ。
 人の身でありながら、騎兵以上の高速移動が可能なヴィクティムにとって、女騎馬隊など翻弄するのは容易だった。ならば、自分が直々に相手をしてやろうと、今度は女武者が怨念を纏って前に出るが、そこは絶奈がさせなかった。
「あなたの相手は私です。まさか、あの程度の兵を片付けるのに、全戦力を投入するとでも?」
 屍兵と屍獣の一部を連れて、絶奈はそれらを全て女武者へと差し向ける。だが、女武者とて負けてはいない。自ら戦うのであればと、その身に数多の霊魂を宿し、凄まじい力で絶奈へと迫る。
「どうした! 己の配下を差し向けるだけで、貴様自身では戦えぬか!」
 己の負傷も厭わず、その身を超絶に強化して迫る女武者の前には、さすがに絶奈の屍兵や屍獣といえど、苦戦は免れない。農民兵の時とは違い、ひとつ、またひとつと撃破され、もはや足止めにもなっていない。
「やはり、力の差が大き過ぎますか……。遺憾ですが、そろそろ潮時のようですね」
 騎馬武者を翻弄するヴィクティムを横目に、絶奈が呟いた。自分の火力だけでは女武者を仕留めることは難しく、持久戦に持ち込んだ場合、ヴィクティムへの肉体の負担も増す。だが、少なくともこちらのやりたいことは、殆どやり尽くしたと言っても良い。
「おのれ……逃げる気か!」
 撤退を阻もうと女武者がなおも迫るが、そこは絶奈の仕掛けた罠が張ってあった場所。盛大に罠を踏み抜いた女武者の足元から、土を巻き上げて凄まじい爆発が巻き起こる。
「くっ……罠か!」
 女武者が思わず視界を庇った時には、既に絶奈達の姿は戦場から消えていた。罠の一発程度では肉体を強化した女武者に与えられる傷も知れていたが、撤退するだけなら十分だった。
 後のことは、続く他の猟兵達がやってくれるはず。毒や麻痺を与えるという、こちらの仕事は既に終わった。ここから先は、時間が長引けば長引いただけ、敵の方が不利になる。
 女武者の予想に反した猟兵達の行動により、ファランクスは今や烏合の衆。最大の切り札を失った今、もはや女武者に残された道は、戦いの先に散り果てる運命以外に残されてはいなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フォーネリアス・スカーレット
 オブリビオンは皆殺しだ。農民? 知らん。相手にする価値が無いのは確かだが。
「……サップーケイ!」
 両手で印を組み迷宮を形成。ファランクスだと? 迷宮内で何の意味がある。床、壁、天井にフックロープを撃ち込んでとっとと抜けさせてもらう。

「ドーモ、オブリビオンスレイヤーです」
 軍団指揮型なら迷宮形成に成功した時点でほぼ無力化出来ている。油断も加減もしてやらないが。一撃離脱で電磁居合斬りを叩き込み、迷宮に紛れる。別角度から短剣を投擲、同時に手榴弾を投げ込む。体制を崩したら盾を投擲。再び迷宮に隠れ、電磁居合斬りによる強襲。
「貴様は間抜けだ」


三池・悠仁
だけど、俺だって猟兵なんだから
……めっちゃ弱いけど

なので弱いは弱いなりに頑張らせてもらう
陣形を崩しゃいいんだろう
密集じゃなきゃ意味ねー陣形なんだから
【ガラスのラビリンス】を使う
その集団陣形を分断してやんよ!

攻撃力皆無なただの迷路だからな!《時間稼ぎ》にしかならないけど
その分しっかり稼ぐんで、その間に女大将の所まで走って叩いてくれると嬉しい
槍とかの長物とかは室内じゃ扱いにくいみたいだし
集団じゃない一般人相手なら、先輩猟兵方なら何とか農民を傷つけずに行けると信じたい……です
俺、本当戦闘苦手なんで本当お願いします。頑張りはしますけど、時間稼ぎぐらいしか出来ないんですよ!



●秘策、迷宮封じの陣!
 洗脳された農民たちの、負傷さえ辞さない強引な作戦。命こそ奪ってはいないものの、それでもあまりにも情け容赦のない有様に、三池・悠仁(幻想世界の迷子・f20144)はドン引きだった。
「先輩猟兵方なら、何とか農民を傷つけずに行けると信じたかったのに……なんなんだよ! いったい、どうなってるんだよ、これ!!」
 屍獣に襲われ、失神させられて行く農民兵達が、隊列を崩したまま狂乱する、阿鼻叫喚の地獄絵図。いざ戦いとなれば仕方のないこととはいえ、猟兵経験の浅い悠仁には、これはあまりに刺激が強過ぎた。
「オブリビオンは皆殺しだ。農民? 知らん。相手にする価値が無いのは確かだが」
 そんな中、フォーネリアス・スカーレット(復讐の殺戮者・f03411)は目の前の光景など何の興味もないと、悠仁の隣でバッサリと切り捨てた。
 彼女にとって、猟兵家業とはオブリビオンに対する復讐を遂げるための手段でしかない。その結果、誰かが救われれば、それで良し。しかし、自分の復讐の邪魔になるのであれば、一般人のことなど二の次だ。
「ああ、もう! だったら、俺があの農民を足止めしますから、後は頼みますよ!」
 誰も彼も、操られた農民に対する心配をしていないことで、ついに悠仁はヤケクソになった。
 こうなったら、あの農民達を救えるのは自分しかいない。どうせ、敵将との戦いでは、戦力的に厳しくなるのだ。ならば、ここは少しでも農民達が酷い目に遭わないよう、戦いが終わるまで閉じ込めてしまおう。
「俺、本当戦闘苦手なんで本当お願いします。頑張りはしますけど、時間稼ぎぐらいしか出来ないんですよ!」
 そう言うが早いか、悠仁は戦場全体に、透明なガラスで作られた迷路を出現させた。特に何の変哲もない迷宮だが、強度だけは折り紙付きだ。
 とりあえず、これで農民達を閉じ込め、分断してしまえば、彼らは陣形を崩されて動きさえ取れない。その間に、早く敵の大将を倒してくれと頼む悠仁だったが、フォーネリアスは直ぐには動かなかった。
「なるほど、考えることは同じか。だが……こうも透き通っていては、身を隠す場所もなさそうだな」
 有象無象の動きを止めてくれたことには感謝する。しかし、それだけでは敵将を落とすには足りないと、フォーネリアスもまた悠仁の呼び出した迷宮に重ねる形で、新たな迷宮を呼び出した。
「……サップーケイ!」
 次の瞬間、ガラスの迷宮に重なる形で現れたのは、墨絵の描かれた鋼鉄襖と祝儀敷の畳で作られた迷宮だった。これならば、どこにだって身を隠せる。内部構造を把握しているのは術者のみ。単に敵を閉じ込めるだけでなく、奇襲を仕掛けるのにも利用できる。
「くっ……な、なんだ、この得体の知れない壁は! これもまた、猟兵とやらの使う術の類か!」
 戦場の地形を強引に変えられたことで、女武者は明らかに戸惑っていた。先程までの戦いで、少なからず手傷も負っている。まだ戦闘に支障が出るほどではないが、それでも周囲と分断されれば戦い難いことに変わりはない。
「ドーモ、オブリビオンスレイヤーです」
 突然、迷宮の死角から現れたフォーネリアスが、電磁加速する居合の一撃で斬り付けた。反撃しようと武器を構える女武者だったが、次の瞬間には、フォーネリアスは彼女の視界から消えていた。
「くそっ! 近衛兵、大将を死守せよ!」
 このまま弄ばれては堪らないと、女武者は近衛兵と鉄砲隊を召喚する。指揮に集中せねばならなくなるが故、自分は戦えなくなるものの、呼び出した兵士達の戦闘力は確かなものだ。
 来るなら来い。周りを兵士で囲わせ、防御の構えを取る女武者。だが、フォーネリアスにとっては、むしろ密集陣形を取ってくれたことは都合が良かった。
「……貴様は間抜けだ」
 再び迷宮の死角から現れ、フォーネリアスは短剣を投擲した。もっとも、それは見せ技に過ぎず、本当の本命は敵の足元に転がした手榴弾だ。
「「なんだ、これは……うわぁぁぁぁっ!!」」
 逃げ場のない迷宮内で固まっていたことが災いし、近衛兵や鉄砲隊は、まとめて爆風に飲み込まれた。それだけでなく、女武者自身も爆風に飲まれてしまったことで、彼女の呼び出した衛兵達は、全員が姿を消してしまった。
「うぅ……な、なんという奴等だ……。こんな回廊で爆薬を使うとは、貴様、正気か!?」
 一歩間違えれば自分も巻き添えを食らい兼ねないフォーネリアスの戦い方に、女武者は驚愕する他にない。もはや、肉体は限界の一歩手前。次なる攻撃を避けるための手段は、今の彼女には残されておらず。
「お前はもうどこにも行けはしない、ここで死ね」
 再び抜かれたフォーネリアスの刃が、女武者を正面から斬り捨てる。それと同時に、周囲に展開されていた迷宮も消滅し、周りには倒れている農民達だけが残された。
「うぅ……な、なんだべ、ここは? オラ達、今までなにをして……?」
 洗脳から解放された農民達が、頭を振るって立ち上がる。その後、辺りに怪我をして倒れている村の仲間がいたことで、彼らに動揺が走ったが、それはそれ。
 説明に関しては、適当に済ませておけば良いだろう。今は有事。物の怪の妖術に惑わされ、戦場に駆り立てられていたとでも言っておけば良いはずだ。
 敵の指揮官を倒したことで、幕府軍を壊滅させるはずだったファランクスの一団は、これにて完全に崩壊した。未だ、関ヶ原にはいくつもの集団が残っているようだが、それが倒されるのも、もはや時間の問題かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月17日


挿絵イラスト