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エンパイアウォー⑨～毛利女忍蠱洞

作者：あっと。

●コルテスの虐殺
　サムライエンパイアの山陽道は、侵略渡来人・コルテスの儀式の影響により、凄まじい熱気に包まれていた。
　オブリビオン・フォーミュラ『第六天魔王』こと織田信長を討たんと集結した幕府軍に対し、コルテスの考え出した迎撃手段はまさに非道。霊峰富士の力を宿せし火の霊玉を用いて熱暑をもたらし、幕府軍を茹で殺さんというのである。
　コルテスの儀式が完成すれば、進軍中の幕府軍の犠牲は避けられぬ……既に、それを阻止せんとする猟兵たちの戦いは始まっていたが、コルテスにとっては下等生物の足掻きに過ぎぬ。
「女狐どもを呼べ」
　コルテスは顔色も変えず、戦況報告にやって来た男――幕府に叛意を抱く毛利の使いに命じてみせた。“女狐”――それが毛利の抱える忍び衆、座頭衆が抱える妖狐のくノ一たちであることは明らかであった。
　次々現れ並ぶくノ一たち。するとコルテスの配下オブリビオンがそれを一瞥し……彼女らを酷く鞭で打つ！
「うああ……っ！？」
「ぐっ……！！」
　嬲られ続けるくノ一たちの苦痛と怨嗟を糧に、骸の海より魑魅魍魎が集い来る。阿鼻叫喚が辺りに満ちて、さながら地獄絵図がこの世に現れたかの如く。そして――。

　――オブリビオンがくノ一たちから全ての悲鳴を絞り取りきった時、そこには地獄の底より甦りし、魍魎の女忍衆たちの姿が立ち並んでいた。

●いざ、儀式の洞穴へ
「昨日、コルテスの手の女忍衆の儀式を止めて貰うたのじゃがの……」
　しかしヤクモ・カンナビ（スペースノイドのサイキッカー・f00100）が語るには、実は山陽道で儀式をしていた女忍衆は、昨日猟兵たちが撃破した崖の上にいた集団以外に、別働隊もいたことが判明したそうだ。

　改めて現状を説明しよう。
　コルテスは幕府軍を虐殺するため、山陽道を灼熱地獄とすべく各地で儀式を進めている。この度見つかった女忍衆もそのような儀式をしている最中で、この儀式をひとつでも多く終わらせなければ多数の犠牲者が出るだろう。
「今回の女忍衆もやはり、同様の儀式を進めておる。コルテスの野望を打ち砕くには、儀式に使われる霊玉を砕いてやらねばならん」
　そしてヤクモの予知はその女忍衆そのものが、儀式を阻止せんとする猟兵に対する防衛戦力である。数はそこまで多くはないが……彼女らは自身を喰らった魑魅魍魎に操られ、強力な力を宿しているという。
　彼女らが儀式を進めているのは……とある山中の鍾乳洞だった。内部は幾つかに分岐していて、女忍たちは儀式をする者たち以外にも、さまざまな場所に潜んで猟兵たちを待ち構えている。
　面倒な仕事になるやも知れん、と、ヤクモは難しそうな顔を作ってみせた。けれども……猟兵たちは必ずや、女忍たち全員を骸の海に還さなければならぬ。山陽が灼熱により滅ぼされるのは、まさに時間の問題なのだ。

第1章 集団戦 『魍魎に憑かれし女忍』

POW   :    魍魎呪術・狂化 【魍魎に狂わされて狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。 SPD   :    魍魎呪術・降魔化身法【偽】 【魍魎におぞましき呪いを流し込まれ】【全身の傷口から血を噴き苦しみ悶えながら】【恐るべき力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。 WIZ   :    魍魎呪術・殺戮変化 【魍魎によって強制的に高速殺戮形態】に変形し、自身の【只でさえ消耗しきっている気力・体力】を代償に、自身の【攻撃力と敏捷性即ち殺戮効率】を強化する。 イラスト：すねいる 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　奥から漂う血の匂い。それから怨嗟と苦痛の呻き。それらが洞窟の前に立ったレパル・リオン（魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574）を、恐怖で押し潰さんと欲しているかのようだった。
　彼女らが、はたしてどれだけ血まみれで苦しんでいることか？　彼女の鋭敏な獣の感覚が、女忍たちの身に降りかかったことを詳細に物語ってくる。
「かわいそう……」
　そしてコルテス、許せない……レパルの表情まで苦痛に歪みそうになるけれど、そんなものに負けてなんていられない！　何故なら彼女は正義の味方、魔法猟兵イェーガー・レパルなんだから！

　山陽道を地獄にせぬために、彼女は一路、鍾乳洞の奥へと駆ける！　ほぼゼロに等しい光量の中でも、野生の力が零れた血の跡を探し当ててくれる……そして物音！
　少し先の鍾乳石の陰に、何かがいる様子が手に取るように判った。それは今も不気味に蠢いている……ニンジャに憑いたカイブツが、今もニンジャを苦しめているのだ！　魍魎らにより強化された忍術は、さぞかし厄介に違いない……だからレパルの選択は、自身の力を遺憾なく発揮して、苦しむ間もなく一撃で仕留めることだ。
　彼女の野性――感覚も、速度も、その腕力も――を知る由もない女忍は、レパルの動きを見誤り、呆気なく首を１８０度折れ曲げられ果てた。
（こんなやり方しかできなくて、ごめんね……）
　心の内で謝りながら、けれども彼女はすぐに前を向く。
　前方には、まだまだ多くの身じろぎが聞こえる。だから魔法少女は進む……その全てに引導を渡すため！

大成功 🔵​🔵​🔵​

　もっとも悪趣味な術を使うコルテスを憎み、女忍らに同情する者が、決してひとりであるはずもなかった。
「しかし、同情すれども相手は既にオブリビオンじゃ。哀れじゃが滅してやる他ないのう」
　対照的にのんびりと進むのは山梨・玄信（ドワーフの破戒僧・f06912）。しかし……それゆえ与しやすい相手と女忍らが錯覚するようならば、すぐにそれが間違いだったと気付くだろう。
　玄信の手のひらの中には密かに小石。一旦……自身は息を潜めて、通路の奥を凝視する。
　次の瞬間……小石を放つ！　闘気にて静かに加速した小石は離れた場所に命中し、大きな物音で女忍を反応させる！
『あああアアアＡＡＡＧＨ！！！』
　奇声を上げた女忍が物陰から飛び出して、その物音の鳴ったほうへと跳び掛かっていった。しかし……当然ながらその先に倒すべき敵はない！
「……戦いで理性を失くすとは、愚かじゃの」
　そんな玄信の声は女忍の腰の辺りから聞こえ、女忍の体はくの字に折れ曲がって吹き飛んでいった。だが……永劫の苦難に囚われた女忍にとっては、それすらも身を苛む苦痛のひとつにしかならぬ。
　立ち上がって構えを取る女忍。再び小石が意識を逸らし……更なる打撃が女忍を襲う！
「理性を失くしては学習も出来んか。本当に哀れじゃのう……」

　３度めともなれば女忍に憑いた魑魅魍魎どもも、本能を御する方法を覚えたらしかった。最早、玄信の小石に反応はせぬ……いや、もしかしたら玄信に２度も拳を打たれ、足が動かぬだけやも知れないが。
「……零殿。後は任せて良いかの？」
　玄信は後方の闇の中へと問いかけた。そして……少しでも多くの敵に打撃を与えんと、さらに先へと身を躍らせる！
『ぐあ……アアアッ……！』
　女忍の全身が鳥肌に覆われて、その姿が半ば魔獣じみたものへと変化した。彼女の爪は禍々しく伸びて、玄信を一撃にて貫かんとして……しかしひとつの輝きが、その爪を弾いて半ばより断った！

　高柳・零（テレビウムのパラディン・f03921）の構えた盾には、傷ひとつついていなかった。
　ブラウン管が哀れみの表情へと変わる。
「正直、スピードタイプの相手は苦手だったのですが……どうやら自信がつきそうです」
　全身を瘴気に締め上げられて、搾り出すような悲鳴とともに獣化する女忍！　限界を超えた疲労は肉体を痛めつけることで補って、零を叩き潰さんと闇雲に荒れ狂う！

　ガァン、という重い金属音とともに、女忍の右腕が零の『天霧の盾』を捥ぎ取った。赫々と憎悪に燃えた瞳は、ぎろりと零を睨めつける……それから、反動で左腕を振り下ろす。
　爪は……零の右肩を貫いていた。けれども……それに沿うように伸ばされる５本の右手の指。
「この瞬間を、待っていました」
　零のブラウン管が微笑みの表情に変わって、天より５つの光が舞い降りた。それらは触れたる邪悪を尽く灼き、哀れなる女忍に浄化の救いをもたらさん。
「さて……玄信さんを追うとしましょうか」
　かくして零も立ち去ってゆく……コルテスの目論見を頓挫さすために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　……願わくば、この鍾乳洞の女忍らも、彼女らと同じであるように。
　随所で繰り広げられる戦いの中、他にも似たような者たちが戦わされていた光景を、久遠・翔（性別迷子・f00042）は思い出していた。
　ここにいる者たちも同じである保証なんてない。けれども……だからって何も試さずにいるなんてこと、翔にはできようはずもない。
　苦しむような息遣い。瘴気の混ざった血の匂い。洞窟は奥にゆくほどそれらが濃密になって、翔の存在を隠してしまう。
　都合がいい。その中でも特に身悶えする声に翔は意識を集中し、しめやかにそちらに身を躍らした。その女忍は特に苦痛に意識を奪われているらしく、翔の存在に気付かない……だから彼女はその隙を狙い、女忍の背を取りナイフを突きつける！
「……助かりたいか？」
　女忍は苦痛に呻いてばかりだったが、そんな翔の問いに微かに頷いたように見えた。
「助かりたければ……意識を強く持て」
　ならばと翔が囁いたのならば、安らぎが女忍を支配する。
『アア……ああ……」
　女忍はまるで小動物のように身を丸め――いや、実際に彼女は小動物となって、翔に全てを委ねんとするのだ。今の女忍は苦痛を代償に命を永らえる哀れな娘ではなくて、何もかもが完全に満ち足りている。

　糧とする苦痛を失った魑魅魍魎は、もはや力を失ったのも同然だった。ゆえに……容易くそれのみを“殺す”。
　今後女忍が助かるか否かは、彼女自身にかかっているだろう。今は彼女を休むままにさせ……翔は、さらなる奥を目指すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　もしかして……彼女らを救えたりするっぽい？
　そんな可能性が示されたとあれば、露木・鬼燈（竜喰・f01316）としては試さぬわけにはゆかなかった。
　かつて戦った女忍たちの姿を思い浮かべて、彼女らを蝕んでいた呪詛の波長を探ってみる。感じる……あの時のものとほぼ同質のものを。瞳に宿す『大百足』の妖力が、共鳴し、鬼燈の進むべき方向を示してくれる。
　幼い頃から修練してきた体術に身を委ねれば、邪気の主まではほとんど空を舞うようだ。すぐに、悶え苦しむ女忍の姿が見えてくる。彼女は苦悶の表情を浮かべたままで、妖気に冒された瞳を空ろに宙に向け……それが直後赫く輝いて、鬼燈に向けて憎悪を放つ！
「……でも、遅いです」
　鬼燈が印を結んだならば、影から無数の鎖が放たれた。女忍はそれをあしらわんとするが……接近に気付いたのが僅かに遅い。両手両足をあられもなく縛り上げられて、思わずくぐもった呻き声を上げる。

　その肌は傷だらけのままであることには変わりなかったが、よく見れば傷口から噴き出す瘴気が、鎖を避けるように身じろぎしていた。
　そこへと……次なる鎖束。魍魎どもは堪らず悲鳴を上げて、女忍の肉体より飛び出さんとす！
「イケルイケル！」
　それを鬼燈の手が鷲掴み……そして気功を流し込んでみせた。魍魎どもは破裂して、骸の海へと還りゆく。

　鬼燈は鎖をそっと解き、治療のために女忍を横たわらせた。するとその懐から火の霊玉が転がり出……それを鎖は絞め壊す。



　辺りに幾つもあった呪詛の共鳴も、次第に残り少なくなってゆき。かくしてコルテスの陰謀は、またひとつ打ち砕かれたと言えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月16日