エンパイアウォー⑰~陰陽師、曰く――
「各々方の尽力により、徳川幕府軍は無事に関ヶ原へ。そして、陰陽師の姿も捕らえることに成功した」
感謝申し上げる。そう続けて、蓼科・雪鳥(雪ノ鳥ノ夢・f00402)はこうべを垂れた。
そしてただ淡々と、陰陽師『安倍清明』の居所がつかめ、決戦を挑むことが可能となった旨を伝える。
決戦の場は、因幡国。
いよいよこの戦いの舞台も山陰へと足を延ばし、あたらな局面に突入したことを予感させる。
安倍清明が拠点とした場所は、戦国の時代に兵糧攻めを行い多数の餓死者を出した鳥取城。
水晶屍人を作り出すには格好の場所であったといえよう。
城に憑く無念をそんな風に弄んでいるのか――。
雪鳥はふと目を伏せたが、すぐさま猟兵を見やる。
「陰陽師は強敵故、各々方がそれ相応の覚悟や作戦を示さない限りは――」
無表情にも雪鳥の沈黙が物語るところ。
つまり、生半可では撃破は不可能ということ。
陰陽師『安倍清明』は、各々方に先制攻撃を仕掛けてくるという。
これは、猟兵が使うユーベルコードと同じ能力のユーべルコードによる攻撃となる。
力押しを選ぶならならばチェーンソー剣の斬撃が、速さで挑もうとすれば召喚された水晶屍人の攻撃が、技で戦おうならば五芒の符が猟兵を襲うということだ。
雪鳥は続ける。
「陰陽師を攻撃するためには、この先制攻撃を『どのように防いで、反撃に繋げるか』。この作戦や行動が重要となるであろう」
すなわち、対策を用意せずに攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破される。こうなってしまうと安倍清明にダメージを与える事は不可能。
また、対策を用意した場合でもそれが不十分であれば――。
「陰陽師は強敵。しかし、陰陽師の陰謀を止めることができるのは、各々方を措いて他に居ない」
そう告げた雪鳥は、グリモアベースに映し出されたその人の言葉を聞く。
――猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……。
余裕の笑みと柔らかな声色が、彼には不気味に感じられて仕方なかった。
「――各々方、どうか、油断なきよう。そしてどうか、良き結果を――」
気持ちを立て直して祈りを込めた雪鳥。
彼の手のひらで翼型のグリモアが一回二回と力強く羽ばたけば、幻影の雪は猟兵たちを彼の地へと誘った。
朝奈ひまり
こんにちは、朝奈ひまりです。
(朝奈、セイメイと聞いて(以下略))
●
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
それではプレイングをお待ちしております。
ご武運を。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
|
POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
山梨・玄信
零殿(f3921)と参加
こやつ…見ていると無性に腹が立つのじゃ。
何か6年分くらいの怒りが溜まっているような…。
【POWを使用】
見切りと第六感で晴明の太刀筋を読み、無敵城塞を発動した零殿を持ち上げ、チェーンソー剣を受け止めるのじゃ。念のためオーラで体を覆って、衝撃を緩和するようにするぞい。
敵の攻撃の受け方は零殿の指示に従うのじゃ。
そのまま零殿を敵の顔に投げ付け視界を塞ぎ、鳩尾に灰燼拳を2連発で打ち込んでやるぞい。
「2人分の攻撃を受けられる零殿じゃから出来る芸当じゃ。それにお主、陰陽師じゃから剣の扱いが下手じゃ」
「大方、その剣も人真似で作ったんじゃろ。わしの拳を喰らうがいいわい!」
アドリブ歓迎じゃ
高柳・零
玄信さん(f6912)と参加
POW
見るからに陰険でしぶとそうな奴ですねえ。
ですが…逃さず骸の海に帰ってもらいますよ。
「玄信さん、盾を構えてください!」
盾を構えてオーラで覆い、更に無敵城塞を発動して玄信さんに自分を持ってもらいます。攻撃の受け方は盾受けが出来る自分が指示します。
チェーンソー剣は音が大きいので、普通の声なら相手にも聞こえないでしょうし。
攻撃を受け切って玄信さんが自分を投げたら、オーラを全身に張って晴明の顔にしがみつきます。攻撃されても激痛耐性で耐えて離しません。
「この状態で玄信さんに攻撃を当てるのは至難の業ですよ。自分は『盾』の役割を最後まで果たします!」
アドリブ歓迎です。
鳥取城の一室に辿り着いた山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)と高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)は、その男の姿を捕らえたなり各々の得物を構え、臨戦態勢に入った。
「お主が陰陽師・安倍清明じゃな」
信玄が見据え尋ねれば、
「おや、これはこれは――」
薄ら笑みを浮かべたのは、水晶の身体を持った男。
この世界のものとは思えぬ奇抜な服装に身を包み、両手に構えた得物のチェーンソー剣もなにやら異質な存在感を放っていた。
ゆらりと佇むその姿も、何もかも、もはや異質で異様。
薄く開いた目をさらに細めた晴明は薄ら笑みを浮かべると、
「如何にも。私が安倍清明にござりまする。――で、そなた達は?」
と白々しく尋ね返す。
自分の首を狩りに東奔西走し、やっとここまで辿り着いた猟兵であることくらい、理解しているくせに。だ。
「こやつ……見ているだけで無性に腹が立つのじゃ……」
この煮えたぎる感情はむしろ、腹が立つ、では言い尽くせない。信玄の歯が怒りで軋む。
そんな音を隣で聞いている零の顔の画面も真剣そのものであった。
「見るからに陰険でしぶとそうな奴ですねえ。ですが……逃さず骸の海に帰ってもらいますよ」
「ほう、この私を躯の海に帰す。と申されますか」
小首を傾げたのち、実に愉快。と口の端を上げ微笑んだ晴明。
彼の笑みと同時に、激しい爆音が部屋の空気を震わせる。
彼の得物のチェーンソー剣が回転を始めたのだ。
「この清明がお相手いたしましょう。この斬撃にお二方は耐えられますかな?」
肉を抉り血を欲さんばかりに唸りをあげる刃。それとは対照的に晴明の表情は静かであった。
「玄信さん、構えてください!」
いつ来るかもわからない第一撃に備えて零は咄嗟に盾を構えると、信玄は零を持ち上げる。
さらに零が全身を無敵要塞の如く硬くしたその直後、構えた盾を重い斬撃がずんっと圧した。
晴明のチェーンソーの刃だ。
刃はガリガリと音を立て零の盾を削らん勢いで、重低音を轟かせている。
「くっ……」
信玄は足を踏ん張らせて悟る。
オーラで防御し衝撃を緩和できたのは奇跡だったのかもしれない。そしてこの奇跡は二度はない。
なぜならば晴明は魔将軍の一人。その一撃は並のオブリビオンのそれではなく、陰陽師とは名ばかりの重厚な斬撃であった。この後一瞬でも気を抜いたら、おそらく……。
「……信玄さん……! 耐えてください!」
一方の零は無敵要塞のおかげで体への負担はゼロだ。だがしかし、自分を支える仲間を案ずるので精一杯。
これからどう動くか指示を出すことができたとしても、目の前の敵がそれを許すかは、また別の話である。
声明は表情一つ変えずにチェーンソーの刃をさらに圧し、
「寸でのところでしたね。お見事」
と、零と信玄の動きを讃えてみせて、後方へ飛んだ。
その隙に無敵要塞を解きオーラを全身に張った零を抱えた信玄が、
「ふたり分の攻撃を受けられる零殿じゃから出来る芸当じゃ……!」
と零を掴んで振りかぶり晴明目がけて投げた。
「おふたり分とは? はて、どういうことでしょう?」
甲高く鳴いたのはチェーンソーの刃。そして刃がヒュンと風を切り、畳にどさりと落ちたのは黄緑色のテレビウム。
「……零殿ーーッ!!」
友を呼ぶ信玄の叫びが虚しく響く。
零は声明のチェーンソーを盾で受けた。だがそれはすなわち、晴明の攻撃が当たったともいえる。そして、零が無防備になった隙を見事についたのだ。
晴明は零を一瞥すると、今度は信玄に向けて口を開いた。
「盾は私が砕いてしまいました。つぎは、貴方です」
と、唸るチェーンソーを振り上げた晴明。
信玄が目を細めたその時、晴明の動きが止まる。
「……っ、させませんよ……」
駆け出さんとしていた晴明の足にしがみついているのは、零。
「零殿っ!!」
「……自分は『盾』の役割を……最後まで……!」
激痛耐性のおかげでまだ意識は繋がっているし、こうして晴明の足にしがみ付き足止めをする力くらいは残っている。
だが、この状態で耐え続けるのも時間の問題だ。
「貴方はもうおやすみなさいませ」
晴明は自分の足にしがみつく零を蹴り飛ばして、今一度チェーンソーを唸らせる。それは、先のユーべルコードは一人分だったと物語る無慈悲な響きだ。
信玄は来る攻撃に備え全神経を研ぎ澄ませる。
清明が撃ってくるのは先ほどと同じユーべルコード。太刀筋も一度見ている。
しかも、零が身を挺して隙を作ってくれた。
これをもろに食らうほど、鈍ってはいないはずだ。
晴明が畳を蹴ったその瞬間、もうその唸る刃は自分の目の前。
信玄は第六感でその太刀筋を見切った。
そして振るわれたもう片方の刀も交わし、至近距離にあった晴明を睨みつけて拳を握り込むと――。
「わしの拳を、喰らえぇぇ!」
その水晶の腹目掛けて、超弩級の灰燼拳をお見舞いする。
「……ッ!」
晴明の腹からさらさらと水晶の欠片が零れた。
「もう一発じゃ!!」
すかさず信玄は握ったままの拳を先ほどと同じところに打ち込まんと振りかぶったが、後ろに飛んだ晴明が振るったチェーンソーの刃に拳がはじかれてしまった。
「くっ……!」
歯を軋ませた信玄。
二撃目は交わされ、零もしばらくは動けないだろう。
とはいえ、拳を見事に食らわせることができた。
いまだ荒れる息を抑えられないでいる信玄に対し、晴明はまだあの薄い笑いを浮かべて腹の水晶の欠片をぱっぱと払った。
畳の上に落ちた欠片をブーツで踏みしめてぱきぱきと小さな音を響かせた晴明は、
「それにしても、見事な連携にござりましたね」
と、まるで傍観者の如くつぶやいた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
一駒・丈一
『業』の蒐集を行う者、か。
断罪人として、貴様の集めた業ごと、此処で断たせてもらうぞ。
SPD重視で立ち回る。
先手にて召喚された水晶屍人は
敵の召還行為完了後、
【咄嗟の一撃】として、【早業】にてUC【罪業罰下】にて視認範囲の敵全員を切り払う
屍人が合体する前に短期決戦で掃討する作戦だ。
上記のUCを繰り出すのと同時に、晴明との距離を詰め、
そして雑魚を掃討した直後の僅かな隙にて敵本体に剣戟を繰り出す。
なお、剣戟を繰り出す際は、
装備の「介錯刀」に、罪人を断つ為の【破魔】を宿し切り払うとしよう。
この破魔の一太刀を以て、業ごと敵を断つ。
あれが『業』のを行うを行う者――陰陽師『安倍晴明』か。
一駒・丈一(金眼の・f01005)は開け放たれた襖の奥にその姿を捕らえた。
余裕に満ちたその微笑みは底知れぬ不気味さを醸し出す。と、ちらりとこちらを向いた目が丈一の姿を捕らえた。
「猟兵様がまた一人。ようこそおいでになりました」
極小さく会釈する所作すら浮世離れして気味が悪い。
丈一は腰に収めた愛刀の柄ををぐっと握り込んだ。
「安倍晴明、断罪人として、貴様の集めた業ごと、此処で断たせてもらうぞ」
「おや、私が『業』を見す見す手放すとお思いですかな」
丈一の言葉にきょとんとしてみせる晴明は、
ご冗談を。
こう告げて口の端を上げた。
それが水晶屍人召喚の合図。
丈一の足元一面が輝きだしたかと思った刹那、浮かび上がったのは魔法陣。
沸き立つ腐臭が丈一の鼻腔を不快にさせるが、微動だにせずただその時を待つ。
そのうちに肩の水晶に1の数字を刻む無数の水晶屍人が丈一を取り囲んだ。
「さぁ、喰らいなさい」
晴明が命ずれば、水晶屍人は一斉に丈一へと襲い掛かる。
――今だ――。
丈一は全方位をぐるり見渡して推奨屍人を視野に入れると、早業で抜刀し、城の重い空気と共に薙い払った。
狙いは目視した全方位。風を切り、腐った骨肉と水晶を砕き。丈一が一回転した時には屍人はすべて床に崩れ落ちていた。
水晶屍人が合体し力を増す前に、短期決戦で掃討する作戦は功を奏した。
おや、と微かに目を丸くした晴明。
だが丈一がぐるり見渡して視界に入れていたのは、水晶屍人たちだけではない。
晴明もだ。
丈一は晴明と距離を詰めると、
「この破魔の一太刀を以て、業ごと敵を断つ」
と、愛刀・介錯刀を上段の構えから重力と共に振り下ろす。
だが、相手は魔将軍。
その一瞬にして、チェーンソーの刃を唸らせて丈一を迎え撃った。
刃と刃がぶつかる激しくも鋭い音が座敷に響く中、晴明の一撃が丈一の腹を斬る。
「くっ……!」
腹を割く熱い痛みに顔を歪める丈一であったが、弧を描いた己の刃筋に水晶の破片が煌くのを見た。
丈一の宣言通り罪人を断つための破魔の力を宿した一刀は、晴明の肩口を砕いていた。
晴明は美しい所作で肩を払うと、微かに頬を染める。
「貴方方の怒りと覚悟……愉快。実に愉快ですよ」
だがその言葉に熱は無いように思われた。
成功
🔵🔵🔴
蛇塚・レモン
連携アドリブ◎
死者を冒涜するような真似を『戯れ』だなんて酷いっ!
あたいたちがやっつけちゃうよっ!
先制対策:
五芒符をあたいの念力と蛇腹剣クサナギのなぎ払いで発生させた炎属性の衝撃波を咄嗟の一撃で放って、焼いたり吹き飛ばしたりするよ!
鏡盾とオーラ防御でダメージは極力抑えて、空中戦+第六感で回避するよっ!
次に、きっと地形に怨霊が溢れてくるから、カウンターで蛇神様召喚っ!
それはズルいから禁止だよっ!
破壊念動波でセイメイごと怨霊を攻撃してもらって、地形を浄化しながら呪詛とマヒ攻撃、セイメイの動きとユーベルコードを封じちゃうよっ!
その水晶っぽい身体は、あたいの蛇腹剣クサナギの刃の鎧無視攻撃で引き裂くよっ!
その一室に駆け込んでくるなり蛇塚・レモン(黄金に輝く白き蛇神オロチヒメの愛娘・f05152)は、水晶の体を持つ陰陽師をビシッと指さした。
「あなたが安倍清明だねっ!」
「如何にも。私が安倍晴明にござりまするが」
対する晴明は静かに答えると、レモンは眉間にしわを寄せ、
「山陰地方に屍人を埋める計画をしてるの、あたいたち知ってるんだよっ! 死者を冒涜するような真似を『戯れ』だなんて酷いっ!」
と、目前の敵を睨みつけた。
「酷い……さようですか、貴女方はそうお感じになられるのですか。ですが貴女方と私はそもそも違う『個』、私は目的のためには手段は選びませぬ」
それに、と晴明はさらに続ける。
「愉快でなければ戦ではありませぬ」
命すら自分の愉しみの道具とする。
腸が煮えくり返るとは、まさにこのこと。
「……もう怒った! あたいたちがやっつけちゃうよっ!」
得物の『蛇腹剣クサナギ』を構えたレモンはさらに強く晴明を睨みつける。
「私を撃破するとおっしゃりまするか。いいでしょう、お相手いたしましょう」
ニィッと笑んだ晴明はどこからともなく出現させた五芒符を指先にて弾くと、レモンへ向けて放出した。
対するレモンは自分に符が命中するより先に蛇腹剣を振るい、炎の衝撃波でそれらを焼いた。
ぼっぼと炎を灯して消えていく符。けれど、符自体の力は残る。
部屋の畳を斬り裂き現れたのは業の怨霊。アレを放置すれば晴明の戦闘力が上がってしまう。
レモンは飛び跳ねて怨霊に向け手をかざすと、現れたのは巨大な白蛇神。
「それはズルいから禁止だよ!」
白蛇神は体を大きくうねらせて呪詛と麻痺の力を宿す破壊念動波を放出すると、まず怨霊を消し去り、咄嗟に防御態勢に入った晴明の体を後ろへ後ろへ圧す。
「……神を召喚されましたか」
こんな芸当ができるのも猟兵ならではなのでしょう。
そう独り言ちて、晴明は畳を蹴って上へ飛んだ。
「あ、逃さないよ!」
地面に着地したレモンももう一度飛び跳ねたが、蛇腹剣を振るうと同時に体の重さを感じて思わず顔をしかめ地面へと着地する。。
その一瞬の隙、晴明はレモンの蛇腹剣をわざと喰らい、レモンの懐に入り込むなり唸らせたチェーンソーの切っ先を彼女の喉元に向ける。
「っ!」
晴明は切り裂かれた胸を気にもせず、レモンに不気味な笑みを向けた。
「神の召喚は寿命を削る技……貴女に選ぶ権利を差し上げましょう。このまま神に食われ私に倒されるか、否か……」
「……っ!」
さすがは魔将軍が一人。この狡猾さはおそらく魔将軍随一であろう。
晴明に一太刀浴びせたレモンではあったが――。
目の前の敵を力いっぱいにらみつけて、レモンは歯をぎりりと軋ませた。
成功
🔵🔵🔴
月夜・玲
嫌らしい感じ
やる気が無いなら、何もしないでくれれば良いのに
安倍晴明の名前が泣いているよ?
いや、勝手なイメージだったのかなこれは
●戦闘
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜剣
迫りくる屍人を可能な限り引き付けつつ、引き付けている間は二振りの剣で『なぎ払い』ったり『串刺し』にして時間を稼ぐよ
耐えている間は『武器受け』や『オーラ防御』で攻撃をガードしていくね
十分屍人を引き付けたら、【エナジー開放】を使用して一気に屍人の数を減らしていこう
屍人を殲滅したら『2回攻撃』、両剣に再度エネルギーをチャージして晴明
に突撃
再度【エナジー開放】を使用してダメージを与えていくよ
●アドリブ等歓迎
ヘンペル・トリックボックス
……外の屍人は誰も彼も苦しみに充ちていた。遍くどの世界においても、お前は気紛れと知識欲の欲するままに災厄を振りまくのだろうな、晴明。
お前が確立・発展させた魔術体系ではあるが──退屈に塗れた魂を仕留めるだけの牙には仕上げたつもりだ。数百年かけてな。
五芒符は直撃のダメージもさることながら、地形効果による超強化が厄介。なれば──五芒符の射出タイミングと軌道を【見切り】、【高速詠唱】による【早業】で命中率の高いこのUCを発動。音の440倍の速度を誇る雷を以て、五芒符が効果を発揮する前にその全て、悉く撃ち落としましょう。
隙を見計らい晴明本人にもUC発動、【破魔】【属性攻撃】の【全力魔法】を叩き込みます。
「嫌らしい感じ」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はその男を視界にとらえるなり吐き捨てた。
男――安倍晴明は小首をかしげ、
「はて、その言葉の真意は――」
と、とぼける。
解っているくせに。つくづく不愉快な男だ。
「――やる気が無いなら、何もしないでくれれば良いのに」
「おや、やる気は十分、いや、十二分にござりまする」
そう言って薄ら笑んだ晴明に、玲は眉を顰める。
『戯れ』に対するやる気は十二分であろう。
現に、晴明の『戯れ』の犠牲者は城の周り――いや、山陰地方にに多く犇めいていた。ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)の脳裏には、屍人たちの哀れにも惨たらしい姿が鮮明にこびりついている。
「……外の屍人は誰も彼も苦しみに充ちていた」
逆巻く怒りを抑え込んで。ため息を一つついたヘンペルはさらに続ける。
「遍くどの世界においても、お前は気紛れと知識欲の欲するままに災厄を振りまくのだろうな、晴明」
問答しても無駄な存在だ。
玲とヘンペルは各々得物を構えると、対する晴明も開戦の合図とばかりにチェーンソーの刃を唸らせる。
「厄災……大いに結構ではござりませぬか。何事も愉しくなければ存在する意味等ござりませぬ。その上で私の存在が厄災であるならば、大いに結構なこと」
自虐なのか、それとも……。
理解に苦しむ二人に抑揚のない声と変わらず微笑みを乗せて。さらに口角を上げれば玲と自分の前に魔法陣を出現させた晴明。
腐臭を漂わせて魔法陣から現れたのは、肩の水晶に数字を刻む水晶屍人であった。
玲は愛刀である二本の剣を構えると後ろに跳ねながら、自分を見つけ迫ってくる屍人をひきつける。もちろん、合体を行う予兆のある個体の撃破も怠らない。剣を振るって薙ぎ払い、突き立てて串刺しにして沈めてゆく。
「あちらは放っておいて良い感じでしょうか」
呟いた晴明。今度はヘンペルに向き直ると五芒符を構えた。
この五芒符、当たってしまえばダメージが、避けても後の超強化が非常に厄介な代物だ。消し去ってしまうにも効果を発揮する前に消し去らないとならない。
呪符を構えたヘンペルは神経を解き澄ませ、晴明のわずかな動きから符の起動と投擲タイミングを見定めた。
それは真っ直ぐ自分に向かう軌道。
「遍く帝釈天に帰命し支え奉る! 其の権威を以て悪しきを尽く焼き滅ぼしたまへ!」
ヘンペルが符を向け高速で詠唱したその瞬間――いや、唱え終わる前に、激しい閃光と轟音が部屋中を揺らした。
音の440倍もの速さの雷が、晴明の手を離れた瞬間の符を焼き尽くし、奇しくも晴明をも焼いていた。ヘンペルが向けた呪符は確実に晴明にも向いていたのだ。
「お前が確立・発展させた魔術体系ではあるが──退屈に塗れた魂を仕留めるだけの牙には仕上げたつもりだ。数百年かけてな」
ヘンペルのそんな言葉を聞き。
「それは如何でしょうか」
と、水晶の破片が落ちるのも厭わずチェーンソーを唸らせながら畳を蹴った晴明は、ヘンペルとの間合いを詰めると一気に彼を薙ぎ倒した。
「……っ」
やはり魔将軍、一筋縄ではいかないか……。
そう感じながらヘンペルが見上げたその微笑みには、先ほどまでは感じられなかった僅かな感情が見えた。
一方、玲はいよいよ部屋の隅まで屍人に追い詰められていた。
玲を食まんと唸る屍人。その腐り落ちようとしている手がいよ入り彼女の体に差し掛かったその時、彼女は口角を上げる。
「この時を待っていたよ」
構えたの剣から放たれる高威力のエネルギーを感じながら、玲は足を一歩踏み込んだ。
「――エネルギー解放、広域放射!」
あとは足の赴くまま、体が踊るがまま。黒剣『《RE》Incarnation』は叩き斬った屍人の肉を食み、フォースセイバー『Blue Bird』の光は一瞬にして屍人を消し去って行く。
玲は屍人に追いつめられていたわけではない。屍人をひきつけていたのだ。
限界までひきつけ、その時を待っていたのだ。
そして屍人を全滅させたのち、攻撃圏内にいた晴明に襲い掛かった。
チェーンソーの唸る音とともに玲の腕から鮮血が飛び、畳の上の鮮血の花が咲く。
だが、玲の刃も負けてはない。晴明の肩の水晶を砕いていた。
「……安倍晴明の名前が泣いているよ? ……いや、勝手なイメージだったのかなこれは」
痛みをこらえて玲がつぶやくと、晴明もまた、自分の胸の傷を見。
「……これが猟兵の怒りですか……愉快になってまいりましたよ」
晴明の笑顔に二人の猟兵が見たものは、明らかにともった感情の灯であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
香神乃・饗
鳴北・誉人f02030と共闘
香神写しで武器増やす
後手上等っす出来るだけ急ぎ発動
屍人の召喚
一番最初に襲いくる屍人を剛糸で絡めとり敵を盾にして防ぎ
暴れる前に離すかそのまま締め落とすっす
苦無投げフェイントかけ屍人の群れを混乱させ誉人に襲いかからぬよう引き付けるっす
壁の一番薄い所狙い暗殺したり剛糸で縛り突破を狙う
綻びを一気に駆け抜けセイメイの死角から力溜めた苦無で暗殺を狙い最強の切れ味の一撃を叩込む
誉人が気をひいてくれてるっす
相棒に預け覚悟決め駆ける
誉人が追い込まれた時邪魔にならぬよう支える
苦無投げ盾受けしたり屍人を盾にして庇うっす
心を揺らしてやる義理は無いっす
お前が奪った命の重みを
思い知るが良いっす
鳴北・誉人
饗f00169と
双神殺対策
初撃は残像残すぐらいダッシュして見切って躱す
それでも無理ならオーラ纏って覚悟決めて武器受けで威力軽減
躱せるなら躱してえが力を溜めたUCで相殺する
二回攻撃で剣刃一閃斬りつける
出し惜しみしない
脇差も刀もぜんぶ使って立ちまわる
隙がねえなら最悪懐刀も投げてみる
「それ痺れるらしいぜ
雷の属性攻撃だ、チェーンソー感電して壊れりゃいいけど…ま、無理だわな
饗が好きに動けるよう安倍の意識が向かないように
攻撃の手は絶対緩めない
殺気を噴き恫喝して負傷するのも恐れない勇気をもって
ムカつくんだよそのスカした態度
くらえよ、俺の一番信頼する一撃だ
てめえの軽い一刀なんざいくらでもねじ伏せてやる
思い知れ
「次から次へと……そんなに私の命が欲しいのですか?」
呟いて晴明は、そちらを振り向かずに手を掲げると、破、と発する。
階段を駆け上がってきた鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)と香神乃・饗(東風・f00169)の足元に現れたのは、あの水晶屍人を召喚する魔方陣。
誉人は舌打ちし、
「姿見せる前にこれかよ! ったく、トンだご挨拶だなァ!」
と顔をしかめると、
「マジ性格悪いっす」
饗も嫌悪の視線を声明に向けた。
そんな二人を見、晴明は静かに嗤っている。
ちかちかときらめく水晶とは裏腹に漂う屍人の腐臭に――あるいは、後手であるもどかしさに顔を顰めながらそれを睨み付けた饗。一方の誉人は強烈な腐臭に対し腕で鼻を覆う。
「……後手上等っす!」
肩に数字が刻まれた水晶屍人に囲まれた饗は愛用の糸を複製する。その数50弱。
それでも水晶屍人の方が圧倒的に数が多い。だけど、屈するわけにはいかない。
さぁ、真っ先に襲い掛かってくる個体は、どれだ。
注意深く屍人を見据える刹那、目の前の個体が激しい呻き声をあげて襲い掛かってきた。
その一体を糸で縛り上げた饗はその個体を他の屍人からの攻撃の盾にする。
飛び散る腐肉もそのままに。饗は屍人数体の攻撃を屍人の盾で交わし、崩れ落ちた盾を捨てる。
そして忍ばせておいた苦無を縦横無尽に放つと、或いは屍人を混乱させ或いは屍人を討ち払い、自分たちの目前に一本の道を作った。
道は晴明に向かい真っ直ぐ開いている。
先に行くっす。
任せろ。
ふたりはアイコンタクトを取り頷きあうと饗はそのまま屍人を相手取り、誉人は板張りの床を蹴り走り出した。
その頼もしい後姿を見送るでもなく。
饗は水晶屍人撃破すべく糸を振るう。
ダッシュで駆け出した誉人は、晴明がチェーンソーを構えたのを確かめると、刀筋から外れる軌道を取る。
だが、相手は魔将軍。本能で避けきれないことを悟ると、自身の体にオーラを纏わせながらも愛刀である『絶花蒼天』の柄に手をかけた。
抜刀して直後、晴明から振り下ろされた刃を仄青い刀身で受ける。
晴明が興味深げに目を開き、歯を見せ嗤った。
おそらくこの笑みは、もう片方の攻撃も当てられると確信を得た笑みなのだろう。
誉人は晴明をきつく睨みつけると、チェーンソーの刃を払いのける。後、間髪入れずに振るわれるチェーンソー目がけて斬りつけた。
刹那、凄まじい衝撃に誉人の脇差が飛ばされ畳に刺さり、誉人の肩を裂いた。
「……っ!」
畳に鮮血が飛ぶ。
相殺失敗か。
そう顔をしかめた誉人の足元にじゃらりと落ちたのはチェーンソーの鎖。
あの禍々しい刃を切断する気満々で振るった力は、鎖を断ち切るにとどまっていた。
誉人は歯を軋ませる。
このまま体勢を立て直す間に、屍人を相手取る相棒――饗に晴明の意識が向いたら……。
思案している時間も出し惜しみをしている余裕もない。
誉人は『唯華月代』の柄をぐっと握り今一度『剣刃一閃』を決めにかかるが、刃を喪ったチェーンソーに防がれてしまう。
生唾を呑みこむ誉人を晴明は見下し目を細めると、
「……なかなかの太刀筋でしたよ。さすがは猟兵様ですねぇ」
その挑発が切欠。
「……ムカつくんだよそのスカした態度……俺を……俺たちをナメるなよ……!」
誉人は後ろへ飛んで晴明との間合いを開けると、次の瞬間、何かを晴明の腹へと投げ飛ばした。
晴明は衝撃で、声にならない声を微かにあげ、腹を見る。
そこに突き刺さっていたのは、電気を帯びた懐刀『イカヅチのカケラ』。
「それ痺れるらしいぜ」
誉人の声に呼応した懐刀は、バチバチと音を立てて一気に放電を開始した。
晴明は睨みつけるでも笑うでもなく。何とも言い難い表情で身を屈めて痺れに耐えていたが、震える手で誉人の懐刀を抜き、畳に上に放り投げた。
肩で息をする晴明は、ぎろりと誉人を見据えた。
「……さすがですよ、この私に熱を与えてくださるなん――」
晴明の言葉を途絶えさせたのは、背に刺さった苦無。
屍人をすべて駆逐した饗が突き立てたものだ。
「そう、それが俺の一番信頼する一撃だ」
誉人が強気に笑んで見せる。
「……っ」
体を乱暴に振るい、チェーンソーを唸らせながら饗を振り払う晴明。
饗はそれを交わし、誉人の隣に立った。
「誉人、大丈夫っすか?」
「ったく、おっせーよ!」
いつも通りのやり取りで、相手の無事を確かめあい。
ふたりは並ぶと、饗は苦無を、誉人は愛刀を構え、晴明を見据えた。
「心を揺らしてやる義理は無いっす。お前が奪った命の重みを思い知るが良いっす!」
「てめえの軽い一刀なんざいくらでもねじ伏せてやる、思い知れ!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鈍・小太刀
【かんさつにっき】
安倍晴明ね
飽きたってんなら素直に骸の海で寝てればいいのに
全く厄介ったらありゃしない
犠牲になった人の為にも
これ以上被害を増やさない為にも
絶対倒してやるんだから!
杏と祭莉と声かけ連携
注意すべきは初撃よね
【視力】【第六感】も活用し【情報収集】
攻撃動作を【見切り】
『片時雨で【武器受け】すると見せかける』けどそれは【フェイント】
刀と【残像】を残して【早業】で後方に退き回避する
【カウンター】でチェーンソーにワイヤー絡ませ回転を止めつつ
刀を回収して戦うよ
必要に応じ庇うも使いダメージコントロール
祭莉んの歌に頷きつつ杏と連携し前へ
片時雨を構え【破魔】の力と【祈り】を込めて
渾身の『剣刃一閃』を!
木元・祭莉
【かんさつにっき】
【WIZ】
待の先を取る!
動き回って敵群を「牽制」、狙いを散らす。
如意の棒を振り「範囲」の「気絶攻撃」を多用、屍人を無力化。
五芒業蝕符が来たら、近くの屍人を「盾にして」「盾受け」。
呪詛の余波は「覚悟」の上、「呪詛耐性」で限界まで耐える。
双神殺の初撃が命中した人がいたら、次撃から庇い、ダメージ分散に努めるよ。
傷付いても、心は折れない。
アンちゃんとコダちゃんがいるから。
『集い花』で、眩しい生命の輝きを歌う。
仲間がいるから、喜怒哀楽がある。
絆があるから、何度でも立ち上がれる。
……骨身に沁みて、わかってるでしょ?
ダッシュからのジャンプで肉薄、カウンターで拳を叩き込む!
バイバイ。またね?
木元・杏
【かんさつにっき】
まつりん、小太刀と手を繋ぎ
勇気と気合いを入れて
一番手の名乗りを挙げる
村にいた水晶屍人達に約束した
鳥取城を取り戻して、おいも、お供えに行くって
だから貴方をここで倒す
灯る陽光は大鎌型
水晶屍人の両肩の数字を狙い
横斬りに数体纏めて攻撃
数字の足し算で強くなるなら
数字を壊せば強くなれない
うさみみメイドさんも手伝って?
第六感で屍人達の動きを察知
早業でカウンター、鎧無視攻撃
数字を減らす事最優先
でも可能な限り一撃で倒す
数字が20程になればUC発動
晴明へと高速で駆け抜けジャンプ
大鎌を横振り光の衝撃波放つ
けどこれはフェイント
着地の勢いつけ脳天から叩き斬る
小太刀へ晴明の二擊目来たら大鎌で弾き庇う
【かんさつにっき】の木元・祭莉(サムシングライクテンダネスハーフ・f16554)と木元・杏(ぷろでゅーさー・あん・f16565)の兄妹、そして鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)の足元には無数に散らばる水晶の欠片がきらきらと輝いている。
それを踏みしめて、ようやくその部屋へとたどり着いた。
おそらく開戦と同時に幾人もの猟兵と対峙し負った傷が今になって響いているのだろう、仄暗い部屋の奥では晴明が体を屈めて三人を見据え嗤っている。
無意識にお互いの手を握り合い、お互いの存在に勇気をもらいあう三人。
それは目の前の強敵に向かう気合いとなる。
「アンタが安倍晴明ね?」
腰に手を置いて目前の男を見据えた小太刀。
「如何にも、私が晴明にござります。……また猟兵様方ですか……私の命運も、ここまでですかな……」
彼女の問いに飄々と答える晴明。ゆらりと諦め事とは裏腹に、得物のチェーンソーを激しく唸らせ始めた。
「そのカラダに飽きたってんなら、素直に骸の海で寝てればいいのに。全く厄介ったらありゃしない! 犠牲になった人の為にもこれ以上被害を増やさない為にも、絶対倒してやるんだから!」
アンタの墓場はここよ! と告げて、小太刀はびしっと指差してやる。
その間、杏は真っすぐ晴明を見つめていた。
目の前の陰陽師が、山陰の地や人を苦しめた張本人。
あの地獄絵図は今でも脳裏に焼き付いている。思い出すだけで、杏の心の炎は逆巻いてゆく。
「……村にいた水晶屍人達に約束した。鳥取城を取り戻して、おいも、お供えに行くって……」
両脇の二人と繋いでいた手を解いて。
大鎌仕様の『灯る陽光』を構えた杏は、峰を晴明に向けた。
「だから貴方をここで倒す。一番手はわたしよ」
「……おやおや、威勢のいいお嬢様方ですね。だがしかし、簡単に平伏す気は毛頭ありませんよ」
腹からの発声とともに三人の足元に現れたのは、水晶屍人を召喚する魔方陣。
瞬く間に湧き上がってきたのは、肩に水晶を生やした屍人たちだった。
杏は真正面の屍人目掛けて大鎌を一気に振い落して道を作ると、振り向くことなく後ろに声をかけた。
「小太刀、道を作るから行って?」
小太刀は杏の作った道をかけてゆく。
彼女の後姿を見送って、杏は横斬りで屍人の水晶をまとめて破壊してゆく。
数字を壊せば合体はされても数字は合計されることはない。よって強さが増すこともないと考えたのだ。
「うさみみメイドさんも手伝って?」
と十指の糸を操れば、ウサミミメイド人形も水晶を攻撃する。
次々と水晶が砕けて空中へ飛び散る中、『如意みたいな棒』をカチョっと構えた祭莉は動き回って屍人の狙いを逸らしていた。
晴明はその様子を見、符を構える。
「おや、子ザルだと思ったら、狼でしたか。……目障りですね」
祭莉はその小さなつぶやきも一挙手一投足も見逃してはいなかった。
符が投じられるモーションを読み切り、符が手から離れたその瞬間に屍人を盾に符を交わす。
盾となった屍人は、符の呪いによってどろどろと崩れ去った。
自分に当たりさえしなければ、ダメージを負うことはなく、符の持ち主も強化されない。
待の先を取り、技の特性を読み切ったのだ。
「……ッ」
悔しそうに小さく舌打ちした晴明に、焦りの色が見える。
祭莉と杏が作った道の先では、小太刀が敵の目前で足を止め『片時雨』を構えていた。
後ろでは、水晶が砕ける音と、屍人の唸り声が響く。
「おや、あなた一人出てきたのですか」
「悪い? ふたりが行かせてくれたの。このチャンスは無駄にしないわよ!」
目を細める晴明に対し、小太刀は目前の敵を睨んでいる。
「ならば私が直々にお相手いたしましょうか」
声と同時に畳を蹴った晴明は、あっという間に小太刀の目前。
小太刀は愛刀でチェーンソーの刃を武器受けする――と見せかけて、刀と残像を残して後ろに飛んだ。
だが晴明の刃はその先を突いていた。
第六感を駆使し交わしはしたが、わき腹に微かな痛みが生じ、血が飛んだ。
これは初撃が当たったということになるであろう。小太刀は来る次の一撃に思わず体を強張らせた。
硬質なものと硬質なものがぶつかり合う衝撃音が、和室いっぱいに響く。
「……いかせないよ!」
「……小太刀、大丈夫?」
晴明の刃のないチェーンソーの一撃を、屍人をすべて片付けた祭莉と杏が各々の得物を盾に防いだのだ。
だが呪いは防がれたわけではない。
双子が次々に膝をつく。
「……二人とも……っ」
小太刀が二人を心配し小さく声を上げたつかの間、苛々とした晴明がチェーンソーを振り上げた。祭莉と杏を斬るつもりだ。
「小賢しい真似を……」
「させないわよ!」
気を取り直した小太刀は『糸雨』を放ちチェーンソーの動きを封じると、畳の上に落ちた愛刀を手に取った。
晴明は使い物にならなくなったチェーンソーを投げ捨て、もう片方を激しく唸らせ後ろへ飛んだ。それは晴明の心にいつの間にか吹き荒れる嵐のような響きだった。
「……何故です? 何故……!」
わからない。なぜ仲間をかばうのか。
よろめきながら立ち上がった祭莉の目は穏やかであった。
「……傷付いても、心は折れない。アンちゃんとコダちゃんがいるから」
集い花、咲き誇りて、憩う庭、想い溢れ。
眩しい生命の輝きを歌えば、自分と杏の呪いも小太刀の傷も、すべてを癒しきる。
「なっ……」
その様子にあっけにとられた晴明の懐まで走り込んで、強烈な一撃をお見舞いする祭莉。
「仲間がいるから、喜怒哀楽がある。絆があるから、何度でも立ち上がれる。……骨身に沁みて、わかってるでしょ?」
祭莉の拳によって水晶の体からたくさんの欠片をこぼす晴明。
並んだ杏と小太刀は並んで駆けだした。
途中、杏が飛び跳ねて大鎌を横に振って光の衝撃波を放つ。
息も荒い晴明は寸でのところでそれを避ける。
しかし、少女たちは深手を負った魔将軍を欺いていた。
「霊導へ還れ」
白銀のオーラをまとった杏は着地と同時に大鎌を、小太刀は破魔と祈りを込めて『片時雨』を上段に構え――。
見開いた目に最後に写ったものは、少女たちの怒り。
晴明は二つの刃に脳天から裂かれ、辞世の言葉も残さずにキラキラと崩れ去った。
沈黙した鳥取城に残るは、水晶の欠片。
踏めばぱきぱきと微かな音とともに塵になる。
「バイバイ。またね?」
少年がそっと別れを告げたその魂は、もう二度と還らない――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴