エンパイアウォー⑰~世捨人の戯れ
●呪詛を束ねる者
「ふうむ……これは……」
鳥取城。怨念と呪詛渦巻く城の中で、まるで涼風を浴びているかのように飄々とした態度で立つのは。
「私の居場所を突き止められましたか。猟兵とやら、なかなかにできるようです」
安倍晴明。水晶屍人たちを使役し、徳川軍を妨害する魔軍将の一人だ。
「まあ、屍人を造り続けるのも飽き飽きしていたところです。ここは、猟兵と刃を交えるのも一興でしょうか」
ふふ、と口元を綻ばせて、見えるはずのない怨念を両腕のチェーンソー剣で断ち切った。
「さてさて、私の目的はただ持ち帰るのみではございますが……私の心を動かすほどの者に見えるか……」
呪詛が、爆ぜる。
「いざ、尋常に勝負、と言ったところでしょうかね」
●陰陽師を討て
「コルテスと同じように、サムライエンパイアの情勢になんの興味もないみたいだな」
青年姿のアイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)は、予知で見た光景を集った猟兵に言い渡す。
「水晶屍人を造っていた大元、魔軍将である安倍晴明の居場所が分かった。鳥取城内の一番奥、陰陽師は……俺たちを待っている」
安倍晴明は、呪詛の集う鳥取城内にて、猟兵たちを待ち構えている。飄々とした態度が目につく魔軍将であるが……。
「他の魔軍将と大差ない……と言いたいところだけど、やはり油断はできないな。チェーンソー剣に水晶屍人、印を用いた攻撃はどれも強力だ。必ず俺たちよりも先に攻撃を仕掛けてくる。どうにかして対抗策を練って、一撃を与えてくれ」
どこか、何かを諦めているような言葉も見受けられる。世界に対して……自分に対して……どれもしっくりと来ないが、熱意に乏しいことは確かだ。
アインは杖を掲げると、猟兵たちの転移準備に取り掛かる。
「水晶屍人をこれ以上生み出すわけにもいかない、皆、頼んだぞ!」
転移先は鳥取城内。安倍晴明が待ち受ける最奥の間だ。
夕陽
一瞬キャミソール着てるのかと思いましたごめんなさい嘘です。
初めましての方は初めまして、すでにお会いしている方はこんにちはこんばんは、夕陽です。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
恐らく屍人を最も還した猟兵として
言いたいことがある
なんでそんな悲しそうなんだ?
まるで感情の一切が無いような……
怨念攻撃なら第六感で見切りやすい筈
オーラ防御常時発動しながら破魔を籠めた早業魔法を撃ち
セーマンを自身から逸らしつつ
至近距離まで急いで接近する
ように見せかける
実際は限界ギリギリまで怨霊に溢れさせた所で(力溜め)
念動力で周囲の器物を巻き上げ
晴明を背後から急襲しつつUC発動
本命はこっちだよ!!
負の感情を全て吸収し(失せ物探し第六感)自身の力と変換
念動力で光の鎖を操り晴明を一瞬捕縛
零距離から祈り、破魔を乗せた全力魔法の衝撃波で邪なる一切合切をなぎ払う
……可哀想
●呪詛を制する
晴明の眼前に転移のリングが現れる。輝きと共に現れた存在に、晴明はほう、と声をあげる。
「早速来たようですね」
口元を綻ばせて、だらり、と両腕をさげた。鈴木・志乃(オレンジ・f12101)は、飄々と身構えている晴明を見て、眉間に皺を寄せた。
「……恐らく屍人を最も還した猟兵として言いたいことがある」
「ほう、私の屍人を。なんと面白いことを」
にこやかに笑う魔軍将。だが、志乃はその姿を見て、尚更疑問に思う。
「……なんでそんなに悲しそうなんだ?まるで感情の一切が無いような……」
「おやおや、屍人のみならず、私に対して心配して頂けるとは。光栄ですね」
だが、その言葉の続きはない。
「ですが、意味無きことです。ねぇ?」
ばっ、と晴明の両手が翻った。志乃に向けて放たれたのは、無数の五芒符だ。意思を持ったかのように飛来する五芒符を、志乃は周囲に纏ったオーラの壁で隔離、次いで両腕から迸った魔弾が五芒符の軌道を逸らす。
「いくら防御したとしてもそれでは意味がありませんよ?
周囲に舞い落ちた五芒符が地面に接触した瞬間、大地を裂いて業の怨霊が溢れ出した。まるで破裂した水道管のように吹き出す怨霊の束が、志乃を包み込む。
「やれやれ、猟兵の力量を見誤っていましたか。残念―――」
はっ、と晴明が真後ろへと振り向いた。飛んできたのは広間に置かれていた壺の一つだ。飛来する器物をチェーンソー剣で薙ぎ払い、その攻撃を防御する。
「本命はこっちだよ!!」
再び、晴明が目を微かに見開いて志乃の立つ場所へと振り返った。
怨霊は志乃の神の如き煌きによって正の力へと転換され、鳥取城に蔓延する呪詛と怨念が浄化の声を上げた。
「―――!!これは……!!」
片腕に纏わりついたのは光の鎖。一瞬の隙を、志乃は見逃さない。
「喰らえッ!!」
晴明の体に片腕を掲げる。刹那、迸った輝きの奔流が衝撃波となって晴明を打ち据えた。体内から撃ち放たれた聖なる魔法は、晴明の根幹を揺るがす必殺の一撃だ。
チェーンソー剣の攻撃が真上から降りかかる。志乃は距離をとって次の猟兵に場を譲る。
ぐらり、と揺らいだ体をなんとか立て直し、晴明はまた薄く微笑んだ。
「痛みなど久しい……懐かしいものです」
気にも留めないような声音で、ただそう言った。
大成功
🔵🔵🔵
刑部・理寿乃
散々エグい事したみたいですがここでお終いです!
相手がチェーンソー剣なのでキックバック現象を狙います
相手の攻撃を見切り、第六感でタイミングを見計らい、チェーンソー剣の先端の上半分で受けるようにします
チェーンソー剣の予想だにしない動きに隙が出来ると思うので、そのまま懐に入り、生命力を吸収する青き魔炎を纏わせたO・F・Bをぶち込みます
これは貴方に弄ばれた無辜の民の分だ!
●刃に立ち向かう
「……どうやら、次の者がきたようですね」
けほ、と血の匂いのする咳をして、転移によって現れた次なる刺客を晴明はじっと見つめた。
「散々エグい事したみたいですがここでお終いです!」
堂々とした態度で、刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)は人差し指を晴明に突きつけた。
(農民たちを水晶屍人になんて……絶対に許せません!)
かつては自らも、そういう者たちの一員だったが故に。畑を耕すのがどれほど大変なのかを知っている。生きていくのがどれほど大変なのかを知っている。だから。だからこそ、目の前のオブリビオンの所業を許すわけにはいかなかった。
「随分と勝ち気なお嬢さんですね。では―――早速」
「―――!!」
悠然と佇んでいたはずの晴明の姿が掻き消えたかと思うと、すでに眼前に迫っている。襲い来るチェーンソー剣に対応し、腰に提げていた剣を、同じく神速の動きで抜き放つ。
(……ここっ!!)
チェーンソーの剣。ならばそれは、チェーンソーの弱点を突くことができる。チェーンソー剣の軌道をその動体視力で見切り、その一点のみを防御するように、剣を構える。
チェーンソーの上方、斬るものが決して触れてはならない、その一点だ。
ぎゃりっ、と跳ね返ったチェーンソー剣はそのまま上向きに跳ね上がり、晴明の手から離れる。
「―――!!」
「そう、それこそが貴方の攻撃の弱点です!!行きますよ、これは貴方に弄ばれた無辜の民の分―――!!」
「……ふむ、チェーンソーの弱点。なるほど、面白い」
懐に潜り込み、ありったけの想いが光となって収束する。突き出された拳、晴明の腹部に突き刺すように穿たれる拳の一撃。
だが。
「いけませんね、私を見くびっては」
そのまま上空へと跳ね上がったチェーンソー剣を軽やかに回避して、片方のチェーンソー剣を振り上げる。纏わりつくのは、鳥取城に蔓延する呪詛を集めた必殺の一撃だ。
想いと呪詛がぶつかり合う。
光と闇の拮抗。反発しあうエネルギーが火花をあげ、そして爆炎と共に二名を弾き出した。
「……くっ……!!」
エネルギーの奔流を浴びた理寿乃が地面に膝をつく。たいして晴明は、落ちていたチェーンソー剣を手にとって、ニコリと微笑んだ。
「これが猟兵の怒りですか。良い執念です。私の心の渇きも潤うというものですよ」
苦戦
🔵🔴🔴
古上・薺
ほほぅ、あれが音に聞こえし天才陰陽師とな
…想像しておったのと少々違うが…そこはそれ、あの死人共の駆除にも飽き飽きしておったからの、大本を叩いて打ち止めとさせてもらおうかの
さて、一先ずは符術への対処からじゃな
符術である以上符を用いるのは必定
込めた呪力により多少は燃えずらいと言っても所詮は紙片
同じ呪力により生み出された焔で焼き払えぬ道理はない
ならば我が妖扇にて焔を放ち、襲い来る符をその術ごと焼き払ってくれる!
妖扇からの妖火に合わせてわし様の火術を仕込んでいければ御の字といったところかの
ナシの飛礫の如く撃ち、陣を敷くことができたなら…
霊符や呪符での攻撃も容易となろう
マクベス・メインクーン
くっそ、チェーンソー剣とかちょっとカッコいいじゃねぇか
とか言ってる場合じゃねぇけど
生きる気がねぇやつに負けるわけには行かねぇんだよ!
敵の先制攻撃は炎の【オーラ防御】で自身を守りつつ
【破魔】で五芒符を打ち破る
ダメージを食らっても【激痛耐性】で耐えるぜ
怨霊が溢れ出たら炎の【全力魔法】【範囲攻撃】で地形ごと
焼き尽くしにいく
敵が回避した所に【2回攻撃】で飛んで【空中戦】で上から
小刀2本に風【属性攻撃】を宿してUCを使用
【鎧無視攻撃】で斬りかかる
持ち帰るってのは何をだ?
つか、信長軍の魔軍将はそれぞれ目的がある感じだな
●炎熱の舞踏
「ほほぅ、あれが音に聞こえし天才陰陽師とな。……想像しておったのと少々違うが」
「くっそ、チェーンソー剣とかちょっとカッコいいじゃねぇか」
UDCアース等で訊く安倍晴明は、式神を操り、陰陽の道に精通した超人として描かれてはいるが……どちらかというと安倍晴明、というより芦屋道満の方が似合っているように見える。
古上・薺(傲岸不遜な箱入り狐娘・f03595)とマクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)は、不敵に微笑む晴明を相手にしながらも、気を緩めない。
「ああ、チェーンソー剣。最近の流行、というものを取り入れた結果ですよ。まあ、すぐに飽いてしまったのですが」
にこり、と微笑んで、晴明はチェーンソー剣を打ち鳴らす。高速回転するチェーンに2人の猟兵は眉をひそめる。
「……カッコいいだとか言ってる場合じゃねぇな。生きる気がねぇやつに負けるわけには行かねぇんだよ!」
「死人共の駆除にも飽き飽きしておったからの、大元を叩いて打ち止めとさせてもらおうかの」
ふむ、と晴明が小首をかしげる。
「生きるも何も、すでに不死である以上“生きる”事自体に意味がないでしょう?ねぇ?」
チェーンソー剣が翻る。晴明の後方から迸るのは、呪符の嵐。五芒符の奔流が、大広間を荒れ狂う。
「舐めるでないわ!呪力勝負で負けるわけにはいかんのでな!」
「呪符っていうんなら、やりようはあるってもんだよな!」
薺の両腕に構えられたのは、火術の呪符。マクベスが纏うのは、火の精霊によって励起した火炎の檻だ。
「幽鬼のごとき焔に畏れ、惑うがよいぞっ!!肆式・虚焔!」
中空へとふわりと浮かんだ薺の呪符は、刻まれた祝詞によってその力を増幅させる。刹那、束ねられた霊符から迸った白夜の如き火炎が、飛来する五芒符を焼き払う。
霊符の攻撃から逃れた五芒符が、マクベスの火炎の嵐と接触、灼き切れて塵と化した。
しかし、それでも五芒符の量は膨大だ。地に落ちた五芒符が大地を裂き、業の怨霊を召喚する。
「んなことさせねぇ!!」
だん、とマクベスの片足が踏みしめられた。足元へと伝播した魔力の渦は、火炎の奔流となって地を奔り、裂かれた地面そのものを焼き切った。
「ほう、素晴らしい火界咒です。ですが、それは防御に成功しただけのこと」
晴明が駆け出す。視認しているのは薺だ。
「呪力勝負で負けるわけにはいかない、とのことですので、是非とも私と呪力勝負をお願いしますよ?」
「ニヒルに笑いおって……!!」
薺が再び火術の符を張り巡らせる。しかし、晴明に纏わりつく呪詛によって呪符そのものが弾き飛ばされた。
「―――!!」
瞬間、沸いたのは火焔の道。マクベスの魔力は地を伝い、晴明の行動を妨害する。
視界を覆う炎熱の波に、晴明はまた薄く微笑んだ。
「無駄ですよ、この程度の炎では、ね……!!」
呪詛の籠もったチェーンソー剣によって火炎の壁が両断、沈静化する炎、その先。
「何を持ち帰るのか、ってのを訊きたかったんだけどな。やっぱ余裕なさそうだ……!」
炎熱の先、マクベスの目の前に浮遊するのは、風の精霊によって力をエンチャントされた小刀2本。炎の壁によって死角となっていたそこから、必殺の一撃は放たれる。
マクベスの碧眼が線を引く。風は炎を巻き上げ、蒼炎の小刀となって晴明の両肩を斬り裂いた。
「これはまた……やられましたね」
ぐらり、と晴明の身体が揺らいだ。両腕をだらりと下げながらも、晴明はその笑みを崩さなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
七瀬・麗治
……この先から、これまでに感じたことの無い強い業の匂いを感じる。
間違いない。奴が魔軍将・安倍晴明!
戦闘バイク・ブレードラプターに<騎乗>し、戦場に乱入
猛スピードで体当たりし、晴明を轢き殺そうとする。
当然奴がその程度でくたばる筈もないし、無謀に突っ込んでくる
オレにユーベルコードをブチ当てて返り討ちにしようとするだろう。
奴の攻撃を<オーラ防御><呪詛耐性>で耐えて、敢えて攻撃を受ける。
その際に【模倣と解析】を発動、体内の寄生体が<学習力>で
晴明の技をコピーする! 喰らった攻撃を、<だまし討ち>でそのまま返すぜ。
奴が怯んだ隙にすかさず黒剣を抜き、<怪力>の斬撃で追い打ちだ。
月夜・玲
世捨て人を気取るなら、それらしくして欲しいんだけどね
じゃなきゃ迷惑なんだよ、とまあそんな事君に言っても仕方がない…か
●戦闘
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜剣
迫りくる屍人を可能な限り引き付けつつ、引き付けている間は二振りの剣で『なぎ払い』ったり『串刺し』にして時間を稼ぐよ
耐えている間は『武器受け』や『オーラ防御』で攻撃をガードしていくね
十分屍人を引き付けたら、【エナジー開放】を使用して一気に屍人の数を減らしていこう
屍人を殲滅したら『2回攻撃』、両剣に再度エネルギーをチャージして晴明に突撃
射程範囲に入ったら再度【エナジー開放】を使用してダメージを与えていくよ
●アドリブ等歓迎
緋翠・華乃音
……詰まらないな、陰陽師。
もう少し本気を出したらどうだ?
必ず先手を取られると分かっているのなら対策は立てられる。
攻撃方法まで予測が可能なら尚のこと。
況してや晴明本人が直接攻撃を仕掛けてくるのならまだしも、配下を召喚するだけならば案外何とかなるかも知れないな。
俺が行使するUCは攻撃を行う為のものではない。
後の先――必撃のカウンターを狙う為のものだ。
UCに加え優れた視力、聴力、直感を生かして敵の攻撃を全て見切って躱そう。
屍人の攻撃を掻い潜り、肉薄した晴明に一撃を喰らわせたなら俺の出番は終了。深追いは禁物。
攻撃は後に続く猟兵達に託そう。
●拘泥の対価
血が静かに、ただゆっくりと地面へ滴り落ちていた。
ふぅ、と大きく息を吐いて、晴明は現れる猟兵にため息混じりに肩を竦める。
「やれやれ、息もつかせぬ攻勢、というものですかね」
「……世捨人を気取るなら、それらしくして欲しいんだけどね」
じゃなきゃ迷惑なんだよ、と。二刀の刃を掲げながら、月夜・玲(頂の探究者・f01605)はその鋭い眼光を晴明に向けた。
あらゆることに意味など無い、と口にしたのに、他者を犠牲にして異形を生み出す。あり方の根幹が明らかに矛盾しているのだ。
「これはまた手厳しいですね。何、ちょっとした戯れですよ。世捨人というのは、退屈の渦中を彷徨う存在ですからね」
「―――詰まらないな」
転移の輝きが収束する。次いで現れた猟兵、緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は、晴明の言葉は明確に遮った。
「要は、心を動かすものが存在しないから、子供みたいにおもちゃ箱をひっくり返したいだけなんだろう?」
ほう、と晴明の瞳が揺れ動く。
「もう少し本気を出したらどうだ?そうしたら、その心も満足するはずだ」
静寂が大広間を覆い尽くす。チェーンソーの音が、微かに―――。
「なるほど、そう言われてみれば確かにその通りです。ああ、最初からそうしていれば―――この心のヒビから零れ落ちる水を、堰き止めることができたかもしれませんね」
殺気の変化を敏感に感じ取ったのは、両名。大広間の地面が“泡立つ”。出てきたのは、100体を超える水晶屍人の群れだ。
「では私の本気を―――ほんの少しだけ。この傷ですし、ご期待に添えるかどうかは別ですよ」
大広間を埋め尽くす程の水晶屍人たちが、猟兵たちに襲いかかる。
強化型の水晶屍人なのだろう、本来なら緩慢な動きの水晶屍人であるが、そのスピードは野犬の速さを超えている。
襲い来る屍人たちを、玲は二振りの剣、『《RE》Incarnation』と『Blue Bird』を翻して応戦する。胴を裂かれ、腕を裂かれ……それでもなお屍人たちは猟兵たちに殺到する。
「私自身が造る屍人たちは、どれも最高傑作。その足掻き、どこまで続くでしょうか」
が、晴明はそこで微かに目を見開いた。
剣で屍人たちを斬り伏せる玲と違い、華乃音はその合間をなんの抵抗もないかのように―――“屍人など存在しないかのように”回避し、晴明の前へと突き進んできたのだ。
黒く、鈍く輝くツインダガーを構え、晴明に突き立てる。防御姿勢に入った晴明は、チェーンソー剣で受け止めると、刃を回転させる。
「素晴らしいですね。私の屍人たちなど眼中にないかのように、私の前に立つとは。ですが、そんな攻撃で私に傷をつけられると思いですか?」
「―――俺はただの牽制だ。俺たち2人だけだとでも思ってたのか?」
呟かれた言葉に、晴明は眉を顰める。大広間へと続く長廊下、その先から、けたたましい……何か鋭い音が打ち鳴らされている。
晴明が屍人たちの群れるその先、長廊下へと目を向け。
その正体が、バイクのエンジン音だと知った。
●
この先から、これまでに感じたことの無い強い業の匂いを感じる。これは。
七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)は、長廊下の先に見える光景に目を細めた。群れているのは屍人たち。その先。猟兵の一人が、その者と肉薄している。
エンジンを鳴らす。アクセルをきる。
このままの速度で突っ込めば、屍人たちに激突する。それを超えたとしても、猟兵の一人が巻き添えを喰らうだろう。
だが、確信していた。
「どうにか……してくれるよな!!」
それは、無謀の突進だった。屍人の群れが迫る。あと数十メートル。激突と共に、自身はバイクの横転に巻き込まれる。
否。
「エネルギー解放、広域放射!」
玲の武装が輝きを放ち、エネルギーの奔流がその内側へと収束する。極限まで高められたエネルギーの塊は、周囲に存在する屍人全てを薙ぎ払うほどの熱量となって迸る。
掻き消えた屍人たち。その道を進むと同時、すれ違いざま。
「頼んだよ」
「ああ」
そんな、些細な言葉の掛け合い。猟兵の“共通認識”を、間違うはずなど無い。
「正気ですか―――!!」
華乃音が不敵に微笑む。このままでは、晴明もろとも轢かれてしまう。その不敵な笑みに、初めて晴明の顔が歪んだ。
「たとえ剣を交えていようと、私の一声で五芒符は拡散します!行きなさい!!」
晴明の懐から五芒符の束が迸る。それは接近する麗治を阻むように配置され、業の怨霊の壁がバイクを呑み込んだ。
「やっと本気を出したな、晴明……だからこそ、有り難い」
「―――何……です?」
「俺はただの牽制役だ。さっきからそう言ってるだろう。だから、お別れだ、晴明」
転移の輝きに包まれる華乃音。刃を交えていたその力が消え失せ、晴明は呆然と立ち尽くす。
業の怨霊の嵐、その中。
嵐を裂くように、業の怨霊がまるで津波の奔流のように晴明に襲いかかる。
「これ、は―――!!」
「貴様の能力はいただいた。怨霊たちに少し喰われたけどな」
業の怨霊の嵐が収まっていく。体中を黒色に汚染された麗治が顔をのぞかせる。服の隙間から寄生体の一部が這い出していた。
「私の……怨霊をコピー……仲間の猟兵は早々に転移させて避難……なるほど……これは……」
怨霊たちに汚染される身体が、ボロ炭のように朽ちていく。
晴明は笑っていた。それは、戦いの中、初めて見せた本当の笑みだ。
「ああ、惜しいですね……もう少し……楽しみたかったのですが……」
塵へと還る身体。口元をなんとか動かしながら、晴明は消えていく。
「世界の行く末よりも……やはり……こちらです……ね……」
五体全てを塵へと帰し。屍人を率いた邪悪なる陰陽師は、骸の海へと還っていったのだった。
大成功
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