エンパイアウォー⑰~心、平安に過ぎて
●グリモアベースにて
「第六天魔軍将の一人、安倍晴明の居場所がわかったぞ」
グリモアベースの一角に座していたプルート・アイスマインドが、猟兵たちが集まったのを見ておもむろに立ち上がる。
「奴がいる場所は鳥取城……そこで何をしているというわけでもないが、放置すれば何をしでかすかわからん。手慰みに人の屍を弄ぶような男だからな」
だからおまえたちの手で骸の海に還してくれ――そう言わんばかりに、プルートのグリモアが輝きだす。光に覆われた猟兵たちの体が、別世界へと移されてゆく。
行先は言うまでもなく、鳥取城。
その城には、戦国の世で餓死した人々の怨念が渦巻いているという。
わざわざそんな地に身を置くとは、やはり趣味が悪いと言わざるを得ない。
「奴は強い。強いが……おまえたちならば倒せるはずだ。頼んだぞ、猟兵たちよ」
ひとつ確かに頷いて、プルートは皆を送りだした。
●飽いた男
身を隠す、には大仰な城。
その天守から、陰陽師『安倍晴明』は何の熱もこもらぬ瞳で空を見ていた。
「エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか」
そう口からこぼれる言葉も、やはり一切の色がない。
心がない。
まるで遠い国の遠い出来事を語るように、ただ淡々としていた。
「この世界はよく『似て』おりますゆえ、『業(カルマ)』の蒐集も興が乗りませぬ。……いえ、そうではありませぬな」
不死で、繁殖もできて、生存の為のエナジーも必要としない。
そんな超然とした存在になり果てた自分に、自分が飽いているのだろう。
緩慢に口端をつりあげた安倍晴明は、薄開きの瞼から鳥取の地を見下ろした。
「戯れに、山陰を屍人で埋めてみましょうか。それとも、コルテスが崇める神の偽物でもこしらえて、信長の後釜に据えましょうか」
それとも、それとも――。
しばらく戯れに思考を巡らせた男は、しかし、最後には落胆するように嘆息をつく。
「それらを全て行ったとして――」
ゆっくりと、顔を上げる。
城の周り――ぽつぽつと星の光のように、気配が現れていた。
「――猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……」
星垣えん
平安人の割には時代を先取りしすぎている……。
というわけで、星垣えんです。
今回は安倍晴明との決戦でありますよ。
それでは皆様からのプレイング、お待ちしております!
以下、本シナリオにおける注意点!
◆====================◆
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
◆====================◆
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ビスマス・テルマール
●POW
○先制対策
敵の動き
特にチェーンソー剣に細心の注意
保険に『オーラ防御』と『激痛耐性』で備え
『第六感』も頼り『見切り』『オーラ防御』で覆った『残像』を『ダッシュ』しつつ『早業』で作り撒き『地形の利用』もしつつ撹乱
攻撃回避を試み
隙を見て『早業』でUC発動
見掛けだけ真の姿になり
イカのイカスミなめろうビームファングクローを生成し『鎧無視攻撃』と『属性攻撃(聖)』を込めた『怪力・2回攻撃』で『早業』で抉り裂き
『早業』と『残像』を残した『ダッシュ』で離脱し様に『誘導弾』と『属性攻撃(聖)』併用の『一斉発射』
イカスミの黒色による牙
貴方の業にはこれで断罪した方が良い気がします
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
ハロ・シエラ
私はこのオブリビオンを知りませんが、大人しくしているとは思えません。
また屍人を使役される前に叩かなければ。
まずは先制攻撃をしのがなければ。
【第六感】を駆使して攻撃を避けながら動きを【見切り】ます。
折りを見てワイヤーを繋いだダガーを【投擲】し、片方のチェーンソーに絡めます。
ダガーを当てると見せかけた【フェイント】ですね。
本当の狙いは少しでもチェーンソーの回転を止める事。
そのまま【ロープワーク】でもう片方にも絡ませれば、追撃があっても呪詛のみとなるでしょう。
上手く行けば【怪力】と【激痛耐性】によって絡めたワイヤーを手繰って引き寄せ、安倍晴明本人にユーベルコードで一撃入れる事とします。
枯井戸・マックス
「なにか訳ありかい? 俺の店来たら悩み事くらい付き合うが…そういうキャラでもなさそうだ」
常に楽しむ事を忘れない真情の俺にとって世界に飽くなど想像もつかない心境だ。
◇戦闘
左右にステップを踏みつつどちらの獲物でどこに攻撃してくるかを【第六感】で読み当てる。
どんな攻撃でも素早く15cm動けば当たらないもんさ。
読み外したらそこまでだが、当たるも外すも人生。ほら隙ありだぜ?
ステップに【フェイント】を織り交ぜて初撃の回避に成功したら、火薬たっぷり炸裂弾(武器改造)を命中率重視のユーベルコードで腹にぶっ放す。
「お前が何に悩んでるかなんてどうでもいいが、そんなつまらなそうな顔してる奴にゃ負ける気はしないな」
この地に渦巻く怨念が染みたように、重く垂れこめる雲。
天守閣の冷たい床板を踏みながら、晴明はその曇天を見つめていた。
「生憎の空模様、行楽にはいささか向かぬと見えますが」
二振りのチェーンソー剣を握りこんだ晴明が、空を見たまま独り言ちる。
が、違う。
それは呼びかけだ。
「ようこそと言っておきましょうか」
「アポなしの訪問を歓迎してくれるとはね。心が広くて助かる」
返事をよこしたのは――枯井戸・マックス(強欲な喫茶店主・f03382)。部屋の隅の柱にもたれかかりながら、胡散臭い喫茶店主は言葉を継ぐ。
「なにか訳ありかい? 俺の店来たら悩み事くらい付き合うが……そういうキャラでもなさそうだ」
「ええ、そのとおり」
振り向きながら床を蹴った晴明が、ものの数瞬で距離を詰める。
「おっと」
マックスの両脚が右に左に、踊るようにステップを踏む。
晴明の斬撃の瞬間を読み切り、一瞬の動きで身をかわす。その一念で集中力を高めたマックスに、おぞましく鳴動する回転刃が肉迫した。
振るわれるのは右の剣。外側から振り下ろされる。
そう読んだマックスは先んじて晴明の右側に動き、軌道から身を外した。
――と思った、瞬間、焼けるような痛みがマックスを襲う。
「……っく!?」
「この私に読み勝てると?」
人を食ったような薄笑いのまま、晴明がもう片方のチェーンソー剣を振りぬく。回転刃がマックスの依り代の肩に喰いこみ、鮮血が床板を濡らした。
だが、床に落ちるのはその血のみ。
マックスの脚は揺らぎもせず伸びたままだ。
「まあ、当たるも外すも人生だな……」
半身を血に濡らしつつも、マックスはコンバットマグナムの銃口を晴明の腹に向けていた。
「そんなつまらなそうな顔してる奴にゃ、負けるつもりはない」
「おや」
撃ち放たれた弾丸が、晴明の腹を貫く。わずか驚いたように目を見開いた晴明が、興味深そうに腹の風穴に手を当てる。
そこへ、転移して降り立った屋根を伝ってハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が窓から飛びこんできた。
(「隙……!」)
晴明の無防備な背中を見てレイピア『リトルフォックス』の柄に手をかけるハロ。
が、彼女がその剣を振るう前に、晴明はすでにこちらに斬りかかってきていた。
「あなたも、私に用でありましょうか?」
「速い……!」
勢いをつけて横薙ぎに払われるチェーンソー剣が、間一髪で飛びのいたハロの長い髪を切り飛ばす。
「簡単には逃がしません」
くすりと微笑んだ晴明が、ハロめがけて二つの回転刃を唸らせる。
対するハロは懐から抜いたダガーを投擲した。だが真っ正直な刃が当たるわけもなく、ダガーは半身になった晴明の横を過ぎ去ってゆく。
「猟兵とはこの程度ですか……面白くもありませぬ」
「あ、ぐっ……!!」
晴明の斬撃がハロの上腕を斬りつける。続けてねじ込まれた回転刃が少女の白い肌を抉り、目を背けたくなるような夥しい鮮血が噴きあがった。
ハロの体がゆっくりと崩れ落ちてゆく。
――が、突然。
「……?」
両腕を何かに引っ張られて、晴明の体勢が前のめりに崩れた。
何が、と思う必要もなく晴明は理由を知る。
自分の持つチェーンソー剣に、ワイヤーが絡まっていた。二振りを繋いで絡められたそのワイヤーは、今にも倒れんとしているハロの手中に伸びている。
「ただでは倒れませぬか」
「剣を防ぐには間に合いませんでしたが……これならあなたを逃さず叩けますね」
ワイヤーを手繰り、引っ張り寄せた晴明の腕を短剣『サーペントベイン』で斬りつけるハロ。切れ味鋭い一閃が肉を裂き、骨を断ち、晴明の前腕を分断する。
しかし、腕を落とした晴明は涼しい顔をしていた。
「この程度、と評したのは撤回するとしましょう」
チェーンソー剣を握ったままの手を掴み、腕の切断面を傷口にあてがう晴明。すると水晶が切れた部分を固定するように覆い、次の瞬間には何事もなかったかのように指が動いた。
斬り落とされた腕をいとも容易く修繕した男へ、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は睨むように凛然とした眼差しを向ける。
「さすがにオブリビオン……人間離れしているようですね」
「まあ、嗜みというところです」
挨拶でもするようにそう言った晴明の手の中で、再び回転刃が駆動した。
「さて……あなたはどんな力を見せてくれるのでありましょうか」
「もちろん、あなたを討つ力です!」
全身にオーラを張り巡らせ、身を丸めたビスマスが晴明へ吶喊する。
猪突――そう思えるような愚直な突進。だが違う。
疾走するビスマスの姿は無数に増殖を始めていた。オーラがビスマスの形を模した像となって、ひとつまたひとつと増えてゆく。
「残像での攪乱、見事な手並みです。しかし……」
辺りをゆっくりと見回した晴明が、やがて狙いを定め、回転刃を振り下ろした。
すると――ビスマスの鎧装が砕け、破片が中空に飛び散った。
「ぐっ……! 私の、居場所が……!?」
「残像は残像。動きを変える者があれば、それがあなたでありましょう」
チェーンソー剣をビスマスの体に引っかけたまま、もう一振りの回転刃を叩きつける晴明。刃から滲む呪詛が結晶の体を侵食し、耐えがたい苦しみがビスマスを蝕む。
「ぐ、くっ……!!」
「良いものでしょう。呪いが染みてゆく感覚というものは」
「そう、ですか……ならこちらからもお贈りしましょうか!」
『True Form Drago Knight Lord Bismuth!』
晴明の腕を掴んだビスマスの腰で、装着したドライバーが咆哮を放った。
結晶体が青く輝きを発し、外装が変形を始める。
全身がフォームチェンジを終えたとき、ビスマスの身体は、平時の流線形の穏やかなフォルムとはまるで違う、荒海のような野性味と力強さに満ち満ちていた。
「あなたを……破壊します!」
「なっ…………!?」
己の腕に生成した沖膾光学武装――漆黒に染まったなめろうビームファングクローが晴明の胸部を抉り、引き裂いた。
すぐに水晶が傷を覆い、出血を止める。
だがその一撃は確かに晴明にダメージを与え、彼の体をよろめかせた。
「イカスミの黒色による牙。貴方の業にはこれで断罪した方が良い気がします」
「……なるほど。少しは愉しめる、でしょうか」
ぐらりと体勢を傾がせる晴明は、しかし、いまだ笑っている。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
依神・零奈
……虚しいね清明、キミの行いには微塵も共感なんて起きないけど
その虚しさは私もどこか感じるものあるよ
でも、関係ない。私はただ現世を護る役目を果たすだけ
……屍人の召喚か、めんどくさいな
流石に清明の目の前で多勢相手に立ち回るのも分が悪いか
清明の行動に注視しながら屍人の群れから距離を取り引き寄せ
【だまし討ち】で【破魔】の力で清め、屍人の足止めと弱体化を狙う
同時に禍言で【呪詛】を放ち屍人の群れを蝕み
まともに身動きができないようにして
大勢の屍人が一か所に纏まっている状況を作り出すよ
動きさえ止めてしまえば正直に相手取る必要はないね
UCを発動し【破魔】を込めた抜刀術から斬撃を放ち
途中の屍人ごと清明を攻撃する
リダン・ムグルエギ
傍観者気取りを見たらエモい気分にさせたくなるのがキマフュ民のサガよね
アタシの作戦は盤外戦術
敵の合体を防ぎつつ防御力アップさせ
SPDの人達を補佐するわ
服飾師の布で防御に優れた衣装の数々を事前に準備
これを同行者の方々にも配るわ
弱い攻撃ならある程度防げるハズよ
「ちょ、待って!ワラワラ来るとかむーりー!
コード発動までに合体されぬよう
コミュ力を生かして演技も
実は配った衣装には数字の「1」を目立たぬ模様として無数に取り込んであるわ
これは衣装を見た屍人達にコードで「1」を流行させる事により
合体を防ぐ精神攻撃的な罠なのよ
アタシの仕事は事前に全部終わってるの
演技の後は…撮影に回るわね
さぁ、無双は任せたわよ、皆!
自身の水晶の一部を砕き、細かな砕片を床の上にばらまく晴明。
するとそれを触媒にして、水晶屍人の大群が生えるように召喚される。
「こういう趣向はいかがです?」
晴明の指示ひとつで、屍人たちがわらわらと動き出す。
リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は、億劫そうに目を細めた。
「キマフュ民のサガに突き動かされて来ちゃったけど……これは聞いてないわ」
「……屍人の召喚か、めんどくさいな」
「めんどくさいなんてレベルじゃないわ。訴訟モノよ」
横並びで行進してくる屍人たちに嘆息をついた依神・零奈(忘れ去られた信仰・f16925)に、人差し指を振るリダン。
「ま、そんなこと言ってもしょうがないんだけどね……はい、零奈さんコレ」
「……これは?」
手渡された物を見て、訝しげな瞳を返す麗那。
渡された物は服。リダンが持つ特殊な布地を使用した高耐久服である。
「弱い攻撃ならある程度防げるハズよ」
「そう。ならありがたく」
リダン謹製の防御服を羽織り、零奈は屍人たちから見て横方向に駆けだした。屍人の群れが自分を追ってくるのを確かめると、さらに走って距離を取る。
「逃げるばかり、と? それでは興ざめというものですね」
「逃げる? それは違うよ」
壁際で反転した零奈が、見物を決めこんでいる晴明を一瞥する。
「捕らえる、ため」
零奈が大量の霊符を、群がる屍人たちへ放った。
ふわりと舞った霊符は床に並び、屍人の群れを包囲する。
その刹那、霊符にこめられた零奈の破魔の力が結界となって立ち昇った。
『グ、ォォォ……!!』
神聖な気にあてられ、屍人たちが苦しげに唸る。同時に零奈の口から放たれた禍言が、呪詛で動きを縛りつける。
晴明は、両の眼を感心で見開いた。
「わざと引きつけた、ですか」
「このまま断ち切らせてもらうよ」
名もなき無垢の刃――無銘刀の鞘を掴む零奈。
しかし晴明はゆっくりとかぶりを振った。
「数の利を活かせぬなら別の利を活かすまで」
屍人たちへ向けた掌を、閉じる晴明。
すると屍人たちが緩慢ながらも互いに寄り添うように近づきあう。
「圧倒的な個で、踏み潰させてもらいましょう」
くすりと笑う晴明。
しかし、事は彼の思うようには、運ばなかった。
「もしもし。アタシがいることを、忘れてたりしない?」
「……?」
唐突な声。晴明が振り向く。
立っているのは他でもない、リダンだった。
空色の髪を退屈そうに指で弄ぶリダンが、にっこりと、あてつけに微笑む。
「合体なんてさせないわ。というか、きっと皆も合体したくないはずだしね」
「したくない、とは異なことを」
リダンの言葉を晴明は一笑に付した。召喚した水晶屍人たちに意識など、精神などありはしない。戦うための人形に過ぎないのだから。
しかし屍人たちのほうを見て、晴明の薄笑いが静かに引く。
『オォォォ……』
『ウ……ウゥゥ……』
群れのままの屍人たちが、零奈の結界の中で蠢いていた。
両肩の水晶に刻まれる数字は未だ『1』だ。
「これはまた……」
「良いデザインを見ていたんだもの。『1』に憧れたっておかしくないわ?」
リダンが零奈の着ている服へ、自分が作った防御服を指差す。
よく観察すれば、その服の模様は無数の『1』の文字で形成されていた。
そこをリダンのユーベルコード『トレンドコンダクター・GOATia』で流行操作してしまえば、『1』は屍人界隈でのトレンドに早変わり。
「零奈さん、後は任せたわ。私は……撮影に回るわね!」
「何を撮るのかよくわからないが、了解」
無銘刀の柄に手を添える零奈に後を託し、カメラ片手に隅っこに向かうリダン。
「……キミの行いには微塵も共感なんて起きないけど、その虚しさは私もどこか感じるものあるよ」
「それは奇遇。ならばあなたも、エンパイアの終末を見届けては――」
「でも、関係ない。私はただ現世を護る役目を果たすだけ」
晴明の答えを待たずして、零奈の無銘刀が鞘を滑る。
一閃。
抜き放った破魔の斬撃は、蠢く屍人のことごとくを一掃し、晴明の肉体を切り裂いた。
「……これは些か、予想を超えてきましたね」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリス・セカンドカラー
そっか、心動かされたいのね?なら、お任せあれ☆(嫌な予感的な意味で恐怖を与える)
念動力での空中浮遊、空中戦、逃げ足で五芒符から逃げ回りつつ、聖属性攻撃の破魔の誘導弾を一斉発射して符の撃ち落としを試みる。
失敗してもオーラ防御しながら喰らいヒール(念動力、医術、祈り)でダメージの軽減を試みるわ。
清明が怨霊の上に立ったら、怨霊をサモニング・イビルでハッキングして邪神群へ変更☆邪神達は不可説不可説転という数の暴力で先制攻撃対策を行い権能(アリスズワンダーワールド)で清明を男の娘メタモルフォーゼ♪させて薄い本みたいな酷いことをするわ♡
邪神群に弄ばれる清明を大食いで咥え込んで生命力吸収で戴きます♡
「心動かされたいのなら、わたしにお任せあれ☆」
と言いながらカメラにウインク。
などというふざけた登場をしたのはアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)だった。
「あなたは……?」
「わたしに身も心も預ければ大丈夫☆」
「何となく、ゾッとしませんね……」
にじり寄ってくるアリスへ五芒符を投げる晴明。
本能的にアカンと感じていた。(断言)
アリスは空中浮遊することで五芒符を避ける。だがかわしたそばから晴明が五芒符を放ってきた。何枚もの符が壁や床に貼られ、そのたびに怨霊が溢れだす。
「このままでは一帯に死者どもが満ちますよ?」
「うーん、さすがにそれは不味いわね」
空中で反転したアリスが、迫る五芒符へ破魔の気を発射する。
狙うは相殺だ。
だが、破魔の気は五芒符とすれ違う。
「くっ……!」
胸に貼りついた五芒符の邪気に苦しむアリス。
しかし倒れるには至らない。オーラによる防御、そしてダメージを与える邪気そのものを喰らうことで、負傷は最小限に抑えていた。
そして、反撃の手筈も整っている。
「では一気呵成に攻めさせてもらいましょう」
何枚もの五芒符により所狭しと出現した怨霊たちへ、ふわりと乗る晴明。
――異変に気付いたのは、その次の瞬間だった。
「……これは?」
「ふふ、怨霊たちはハッキングさせてもらったわ」
己が足元を見下ろす晴明へ、アリスはこともなげに告げる。
晴明の足の下にいるのは……怨霊ではない何かだった。確かに晴明が乗り上げる瞬間までは怨霊だったはずなのに、今は、得体も知れぬ形容もできぬ存在に成り代わっていた。
それは途方もなく巨大で。
途方もない数量だった。
『――』
『――』
『――』
天守閣という狭い空間の中で、無数の鳴き声が木霊する。
「いったい、何なのです……?」
眼前の存在――アリスいわく『邪神』――の異様に、後ずさる晴明。
だがそこでまたも異変。
身動きして初めて気づいたが、いつの間にか彼の体は縮んでいた。
だいたい小学生ぐらいになってた。
「わ、私が、縮んで……!」
「男の娘になった晴明たん美味しいです。うふふ♪」
「な、何をする気だ……どうして近づいてくる……!」
じりじりと迫るアリス。
じりじりと迫る邪神群。
じりじりと逃げたい晴明。
その後、薄い本みたいなことをされまくった晴明は、元の姿に戻ってもしばらく四つん這いのまま動けなかったらしい。
苦戦
🔵🔴🔴
龍泉寺・雷華
刺激を求める者の前に我参上!
究極魔術にて最高の刺激をお届けしましょう!
敵の攻撃はたとえ躱したとしてもこちらが不利になるもの
であれば、回避を試みるよりも正面から攻撃を防ぐ事で我の力を示すとしましょう!
究極魔術師たる我は先制攻撃に関する知識も当然備えています
必ずこちらに先んじて動くならば、逆に動きを読みやすいです!
相手の目線などから攻撃先を推測し、その一点に集中して魔術障壁(オーラ防御)を展開しましょう!
敵の術を凌いだら今度はこちらの手番です!
清明目掛けて煉獄の炎を放った後、清廉なる風を操る事で火力を上げて攻撃範囲も広げた煉獄炎の竜巻を形成!
我が全力の魔術にて、骨の髄まで焼き尽くしてあげましょう!
薬袋・布静
【徒然】
自分が惑わせんのはええけど…
こーも他人にやられると苛つくもんなんやなあ
ええー、500円とか安すぎん
安倍晴明の水晶ってなりゃ、もっと高く売れるやろ
俺より面のええ野郎の面ボッコボッコにして金儲けしたろーや
◆戦闘
テレポート後【潮煙】でカツオノエボシを呼び
巻き込まれぬよう飛び退き避難後【蛟竜毒蛇】展開
両方防げぬなら傷は「医学」で呪詛は「呪詛耐性」にて緩和と治癒
五芒符で強化場となった箇所に近寄らせない為にクラゲを彷徨せる
念の為に千代の作った傷をえぐるように
ウミウシを忍ばせ内からの捕食と毒の苦痛が巡り
多少なり動きが鈍く隙が出来るはず
宣言通り、その面に叩き込んだれや
って、なぁにを敵さんに求めとるん…
花邨・八千代
【徒然】
よっしぬーさん、あのスカした面ァ歪ませてやろうぜ。
なァんかあぁいうタイプ気に食わん!
その背中の水晶バキバキに砕いて風水オタクにひとつ500円で売りつけてやっから覚悟しろや!
◆戦闘
テレポート後、すぐに床を殴りつけて浮いた畳を引っぺがすぞ。
それをぶん投げて目くらましにしつつぬーさんの攻撃の隙間を縫って一気にセイメイに近付くぜ。
「怪力」「殺気」「鎧砕き」「捨て身の一撃」、全部乗っけて【破拳】だ!
間近な距離でもう一発「2回攻撃」で「傷口をえぐる」!
中々良い男だけど、ちっとヤクザみが足りてねーか。
まぁ出直してこいとは言わねーさ、ここでバキバキに砕くんだからな!
クリスティアーネ・アステローペ
(戦闘時の瞳は真紅色)
「アステローペが"朧月の魔"。クリスティアーネより陰陽師、安倍晴明へ。剣と月の祝福を」
さあ、一時の間、暇潰しに付き合いましょう
双神殺の初撃を《見切り》斧槍での《武器受け》に《衝撃波》を乗せて弾いて体勢を崩させましょう
追撃は《破魔》と《呪詛耐性》で呪詛を軽減、《オーラ防御》で備えるわ
流石に次の一撃よりは私の方が早いでしょう
受けなさい、これこそは我等の血潮にして彼等が祈り、顕世を侵す過去への呪詛憤怒
【咎を穿て、赫き杭】!
縫い止め動きを封じれば《残像》残して背後に周り
首筋に口付けるように牙を立て《吸血》
ごめんなさいね?渇くのよ、貴方を見ていると
※アドリブその他諸々歓迎
リヴェンティア・モーヴェマーレ
アドリブ、他の方との連携大歓迎です
▼WIZ
先制攻撃をされると言うのは少々厄介ですガ、上手く切り抜けていきたい気持ち
戦闘力を高められると言うのはいただけませんのデ…ここは私の打たれ強さ[激痛耐性]で何とか耐え凌ぎたい気持ち(五芒符に自ら当たりに行く)
命中したのを皮切りに[全力魔法]コミコミパックで炎の竜巻をお見舞いしてあげマス
隙あらば[二回攻撃]デス
1発目以降は[オーラ防御]や[盾受け]等でダメージを軽減させつつ、倒れないように体力管理はしっかりとしまス
考え無しのような行動にならないように慎重に駒を進める感じデ晴明さんに少しでも攻撃を当てられる事を常時考えながら行動します
●貴方に、牙を
「猟兵、私の予想を超えたことまでやってきますか……」
憔悴した感じでふらふらと立ち上がる晴明。
しかしその頼りなさもわずかな時間。すぐに元の死人のような笑みを取り戻す。
彼の前に堂々と躍り出たクリスティアーネ・アステローペ(朧月の魔・f04288)は、断頭斧槍"救済者フランツィスカ"で宙をひと払いした。
「アステローペが"朧月の魔"。クリスティアーネより陰陽師、安倍晴明へ。剣と月の祝福を」
「祝福、ですか。どれほど心躍るものか、少し期待させてもらいましょう」
クリスティアーネに微笑みかける晴明。
――次の瞬間には、唸るチェーンソー剣を彼女の繊細な肌へ振りかぶっていた。
咄嗟に振り上げたフランツィスカの刃で受け止めたクリスティアーネは、衝撃波を乗せた一撃で喰らいつく回転刃を弾き飛ばす。
遠ざかるチェーンソー剣に引っ張られ、晴明の体勢が崩れる。
「そんな踏みこみでは、私は倒せないわよ」
「そうですか。ではもっと踏み込んでみましょうか」
剣が引っ張る方向へ、ぐるりと体を回転させる晴明。
クリスティアーネに弾かれた力を利用してその場で一回転すると、初撃よりもはるかに勢いづけた呪詛の一撃で彼女の上腕を斬りつけた。
駆動する刃が、肌を裂き、肉を喰らう。
しかし回転刃は骨に届かず止まる。
全霊をこめたオーラの防壁が、最後の一線を守り切っていた。
「見かけによらず、頑丈な方ですね……」
「お褒めの言葉と受け取るわ」
晴明の腹を蹴りつけ、腕からチェーンソー剣を引き抜かせるクリスティアーネ。
斧槍を床に突き立てると、彼女は咆哮した。
「受けなさい、これこそは我等の血潮にして彼等が祈り、顕世を侵す過去への呪詛憤怒!
【咎を穿て、赫き杭】(カズィクル・ベグザーディー)!」
詠唱が終わるや、無数の杭が床板を突き破る。
針山のように生え出たそれらは晴明の足を穿ち、腿を突き刺し、肩まで貫いてその場に縫い留めた。
「磔は趣味ではないのですが――」
クリスティアーネへ言いかけた晴明が、彼女を見て口を止める。
目の前にいるのはもう彼女ではなかった。
彼女が残した、像に過ぎない。
本当の彼女は――。
「ごめんなさいね? 渇くのよ、貴方を見ていると」
「っ!!」
影のように近づいた背後から、吸血の牙を陰陽師の首筋に突き立てていた。
●スカした野郎に一発を
「やれやれ。猟兵とは野蛮な者が、多い……」
首筋を押さえ、青白くなった顔に一筋の汗を浮かべる晴明。
そこへ――。
どんっ。
と、床板を踏んで、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)が転移してきた。
まるで駆けこんできたかのようにつんのめった体勢から、振り返る。
赤い瞳に捉えたのは――。
「……まったく。今日は来客が多いですね」
チェーンソー剣を振りかぶる、晴明だ。
「よっし、このスカした面ァ歪ませてやろうぜ! ぬーさん!」
「りょーかい、っと」
迫るチェーンソー剣にも構わずに八千代が呼び掛けたのは、晴明の後方に転移してきていた薬袋・布静(毒喰み・f04350)。
背後を取られた晴明が剣を止め、反転する。
「これは危ない。奇襲をくらうところでしたか」
晴明の手から五芒符が布静へと放たれる。
対して、布静は手にした煙管をくるりと回した。揺らいだ煙が膨れたビニール袋のような海洋生物――カツオノエボシに変容し、五芒符を受け止める。
床が裂け、その亀裂から怨霊が溢れだすのを見ながら、晴明は笑った。
「見事なお手並み」
「自分が惑わせんのはええけど……こーも他人にやられると苛つくもんなんやなあ」
飛びのきながら、煙管『潮煙』を振るう布静。火皿から召喚された大量のアオミノウミウシが、宙を泳いで晴明へと殺到する。
「こいつはおまけや」
さらに潮煙を一振りすれば、怨霊ひしめく空間に防波堤のようにクラゲが漂う。
「それで私を遠ざけるというわけですか……だが」
晴明が自らにまとわりつく水晶を砕き、礫のようにばらまいた。硬い水晶で浮遊するクラゲを射抜いて落とすと、晴明はアオミノウミウシの群れの中をすり抜け、悠々と怨念たちこめる床板を踏みしめる。
「それしきでは止まりませんね」
「厄介な奴やな……!」
戦闘力を高めた晴明の蹴りが、布静の体を吹き飛ばし、壁に叩きつける。
「何してくれてんだァ、このスカし野郎!!」
さながら鉄砲玉のように、八千代は飛び出していた。
「直情的な方のようだ。動きが読めて助かりますね」
一直線に向かってくる女羅刹へ、晴明は舞うような所作でチェーンソー剣を繰り出した。八千代の強靭な脚力が生む速度のせいで、瞬く間に回転刃と八千代の距離が縮まってゆく。
だが、不意を打たれてはいない。
「必殺、畳返し!!」
その言とは裏腹に、八千代の脚が踏み抜いたのは床板。破砕した木材が中空に散乱し、目くらましとなる。おかげでチェーンソー剣の狙いはわずかに乱れた。
しかし完全ではない。
「っが……あああ!!」
「おやおや、これは痛いでしょうね」
回転刃が八千代の体に喰いこむ感触を手に感じながら、嗤う晴明。
対して八千代は――こちらもにやりと笑っていた。
「あぁ、痛ェ。これはやり返さなきゃ気が済まねェぜ!」
「……!?」
晴明の体が、くの字に折れた。
八千代の拳がどてっ腹にぶちこまれていた。怪力を乗せた一撃、八千代のユーベルコードが晴明の薄ら笑いを苦痛に歪ませる。
「相討ち、ですか……」
「相討ちィ? んなわけあるか!」
拳を晴明の腹にめりこませたまま、八千代が豪快に一笑する。
「だろ? ぬーさん!」
「おぅ、そーやな」
激突した壁のそばでよろりと立ち上がった布静が、煙管を咥えた口から煙を吐いた。
途端、体の内から裂けるような痛みが晴明を襲う。
「これは、いったい……?」
「ウミウシにハラワタでも喰われてるんちゃうか?」
白々しくそっぽを向く布静。八千代のボディブローに紛れさせて、アオミノウミウシを密かに晴明の体に侵入させていたのだ。
次第に、体の動きが鈍るのを感じる晴明。
ウミウシの毒が全身を巡っていた。
だから、八千代がもう一度拳を握りこんでいることに気づいても、反応が遅れた。
「その背中の水晶バキバキに砕いて風水オタクにひとつ500円で売りつけてやっから覚悟しろや!」
「500円って……安倍晴明の水晶ってなりゃ、もっと高く売れるやろ」
「じゃあ1000円!」
布静にそう返した八千代の拳が、晴明の腹を突き抜け、背部の水晶を打ち砕いた。
●炎、天さえも貫いて
胴を貫いた痛打に悶え、よろよろと崩れかける晴明。
そこへ、間髪入れず追撃が現れる。
「刺激を求める者の前に我参上! 究極魔術にて最高の刺激をお届けしましょう!」
外から転がりこんでくるなり、ぶかぶかめのロングコート『永劫夢幻』をはためかせるのは龍泉寺・雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)である。
目元に被せた指の隙間から、金の左眼を覗かせている。
お察しのとおり、彼女はどこに出しても恥ずかしくない患者だった。
何の病とは言わない。
「これはまた奇矯な……」
「ふっ! 私の溢れ出る魔力に恐れをなしたようですね! 無理もありませんが!」
晴明の眼が憐れみで細められるけど、雷華は胸を張っている。
お察しのとおり、彼女は突き抜けたポジティブだった。
「雷華さんに恐れをナシた、とは違ウ気がしますが……」
「何を言うんです、リヴェンティア! そんなはずありません!」
そろりそろりと歩いてきて雷華の隣へ行き、ビシッとツッコミを受けたのはリヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)。
これたぶん何言っても折れない鉄の心の人だ、と察したリヴェンティアは色々諦めた。
そして晴明もとりあえず五芒符を取り出した。
「賑やかなものは嫌いではありませんが……うるさいのは好きではありません」
しなやかな手つきで放られた五芒符は、二枚。
雷華とリヴェンティアへ、晴明のユーベルコードは同時に襲いかかった。
「来ましたね!」
「あの符は少々厄介ですが……上手く切り抜けていきたい気持ち」
敵の攻撃が迫るなり、二人はそれまでのどこか抜けた空気から一転。
オブリビオンを葬る者の顔へと変わる。
しかも、取った行動も大体同じであった。
「敵の攻撃はたとえ躱したとしてもこちらが不利になるもの! であれば!」
「ここはあえて打たれて、何とか耐え凌ぎたい気持ち」
「……おや」
晴明の口端が、愉しげに吊り上がる。
避けるのではなく、あえて五芒符を受ける。
それが雷華とリヴェンティア、二人の猟兵が期せずして導いた答えだった。
「究極魔術師たる我は先制攻撃に関する知識も当然備えています。はーっ!」
「打たれ強さで、乗り切ってみせマス……!」
雷華が(雰囲気作りで)魔術書『アルヴァルイエ』をひらいて障壁を展開、リヴェンティアが小細工なしの受けきりますモードで両腕を交差させる。
だが、見通しが甘かった。
「ぐくっ! これは……!」
「厳しい、ですネ……!」
五芒符に生命力を蝕まれた二人が、苦しげに唸る。
符は雷華の障壁でやや鈍りはしたものの、遮られるには至らなかった。無理くり押しとおる形ですり抜けると、二人にぴたりと貼りついたのだ。
「避けもしないとは面白い。倒れれば愚行ですが、ね」
苦悶する猟兵たちを、美術品でも見るような眼で眺める晴明。
障壁でいけるいけるとか思っていた雷華はもちろん、痛みを覚悟していたリヴェンティアですらも五芒符のダメージは堪えた。
けれど、堪えただけだ。
それだけだ。
雷華が、リヴェンティアが、ニッとその顔を綻ばせる。
「耐えきれたノなら……!」
「今度はこちらの手番です!」
その眼に煌々と光を燃やして、鏡合わせの二人の魔術師が手をかざす。
雷華の右手に生まれ出るは炎。
リヴェンティアの左手に生まれ出るは、また炎。
二人の掌中から解き放たれた炎は中空で絡み合い、ひとつの巨大な火球となって、晴明の体を真正面から呑みこんだ。
「こ、れは手厳しい……ですがこの程度の炎ならば……!」
「我が究極魔術がこれで終わるわけがないでしょう!」
「もっとお見舞いしてあげマス!」
雷華とリヴェンティアの魔力が高まり、その場に迸る。
巡るのは、風だ。
地を這うようにぐるぐると吹き、風が回る。回る。回る。
やがてそれは大嵐と化し、晴明を巻き上げた。
凄まじい風量が酸素を送りこみ、燃焼した炎が竜巻となって瓦屋根さえも吹き飛ばす!
「こ、この火力は……!」
「我が全力の魔術にて、骨の髄まで焼き尽くしてあげましょう!」
「真っ白く、灰にシテあげたい気持ち!」
「……ふふっ、これが猟兵。猟兵ですか……」
火に巻かれながら、気味悪く笑う晴明。
その肉体は、業火によって、数秒後には塵ひとつ残さず消滅していた。
激闘を終えた天守閣に、天空から陽が差しこむ。
雷華とリヴェンティアが灯した正義の炎は、鳥取城の重い曇天までも切り裂いていた。
苦戦
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