エンパイアウォー⑥~濃州希臘方陣
●異質なるものの行軍
関ヶ原という名は、遥か昔の天武の御代に設置された三関の一、不破関があることに由来している。畿内と東国を遮断するこの重要な関所は、千年たった今でも現役であり――そして今や、オブリビオンたちの拠点ともなっていた。
この不和関を背中にし、中山道をゆっくりを進んでいる槍兵の一団がある。三間半の長槍が幾本も掲げられているその光景は、かつて織田信長の覇業を支えた槍足軽の姿にも似ていた。しかし、よく見ればそれが槍足軽などではないことはすぐに分かるだろう。胴丸の代わりにホプリテスに身を包み、この日の本では矢を防ぐ障壁としてしか用いられてこなかった盾を左手に構えるその姿は、この世界においてはあまりに異質であった。異世界の歴史に詳しい者がいれば、すぐさまその正体を呟いただろう。「これは、ファランクスだ」と。
16列に並んだホプリタイが16段、合計256人の一団のその中心に、一台の戦車(チャリオット)があった。席に座して声を上げているのは、これまたこの集団とは異質な――逆に言えば、サムライエンパイア的な――姿をした一人の男であった。刀創の残る右目を赤く染めたその男は、かつて死したはずの大名、諸岡・裁鬼その人の姿であった。
●
「そんな訳で、皆さんにはこのファランクスを指揮している男、諸岡を討ってきてほしいわけですよ」
セラス・エーオウェンティ(f15973)は、集まった猟兵たちを前にしてそう言うと、ポーチから関ヶ原の地図を取り出してテーブルに置くと、ある一点にピンを挿した。
「敵が陣取っているのはこの街道……ナカセンドウ? の上ですね。といっても、あいつら横に広い陣形取ってるのでみんなが街道を歩いてる訳じゃないんですけど。ええとそれから、指揮官はともかく兵士の方は普通のサムライエンパイアの人なんで、できれば倒さずに諸岡だけを狙って貰えると嬉しいですねー」
次に出してきたのは敵の陣形図。16列16段の槍陣の中央に、敵指揮官たる諸岡・裁鬼を現す点が示されている。
「敵は長槍兵ですから、正面からあたりにいくと大変だと思いますよ。そもそも、ファランクスって正面から殴りあいするための陣形ですしねー。即背面に回り込むとかなんとかしないと、指揮官だけを狙うのはおろか、敵陣の突破も難しいかな。とはいえ敵の戦術は二千年以上前の地球のそれがもとになってるので、対空とか対地中とかの防御は大してないですから、そのへん突くと案外脆いかも、なんて。それじゃ、ひとつお願いしますねー」
彼女はそう言って締めくくると、転送の準備を開始した。
二条河原
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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お久しぶりです。二条河原です。
休んでいる間に真夏になっていてちょっと時間の流れ怖いですね。
それはさておき、戦争です。
三間半槍のかわりにサリッサ装備した連中をどうにかして、敵将諸岡・裁鬼を撃破してきてください。
兵士はオブリビオンではなく一般人ですので、できれば倒さずにして頂けると上様も嬉しいかなーと思います。
それではプレイングのほど、お待ち申し上げます。
第1章 ボス戦
『嗤う厭魅師』
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POW : 人を呪わば穴二つ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【召喚した対象の影姿で再現し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 呪殺符
レベル×5本の【即死】属性の【呪符】を放つ。
WIZ : 蟲術
【猛毒】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:九廸じゃく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「御狐・稲見之守」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
(ボスがオープニング執筆時に指定していたものと異なるため齟齬が生じておりますが、こちらに表示されているものを前提に取り扱います)
猟兵たちが到着したとき、そこにいたのは諸岡・裁鬼ではなく、派手な衣装を身にまとった一人の男であった。
「待っていましたよ猟兵。お前たちを我が主に捧げ、徳川左府の率いる自称幕府を打倒いたしましょうとも」
そう言って男はにやりと笑い、戦車の上で式符を構えた。
ロア・メギドレクス
GggGgrRRrrRwWwW!!
咆哮!【獄竜化】にて半身を竜と化し、威圧しながら農民たちへ【恐怖を与える】!
退くがいい、下郎どもがッ!!
余は太古の星を支配せし王竜の化身であるぞ!
王に向かって楯突くとは何事だ。頭が高い!槍を収めよ!
余の手にかかって死にたい者だけ向かってくるがいい!
余の威容にて民の戦意を失わせ、道を開かせよう。
然る後、下劣なオブリビオンめに余の爪牙を食らわせてやる。
即死の呪符だと?愚かな。
余はもとより死の先に在る者であり、この肉体も仮初の命よ!
何より――汝ごとき愚昧なオブリビオンの仕儀などで、余が死ぬものかッ!
真っ向から余の爪を叩き込んでやろう。喜べ。汝には余が直々に死を賜う。
●号砲は咆哮とともに
GggGgrRRrrRwWwW!!
戦いの火蓋は、ロア・メギドレクス(獄竜暴君・f00398)の口から放たれた方向に寄り切って落とされた。その咆哮は人類が、すべての哺乳類が身体に宿す原初の記憶。遠い遠い祖先がいまだ矮小な生き物だった頃、地上に君臨していた王者に対する畏怖すべき記憶だ。
「――ひっ」
「退くがいい、下郎どもがッ!!」
それは信長軍とて例外ではない。とりわけ、彼ら末端の兵はオブリビオンならぬ常人である。ロアの咆哮を聞いた彼らの穂先が、一瞬鈍り、乱れるのも当然であった。その隙をつき、彼は攻撃……などはしない。なぜなら、彼は王であるがゆえ。弱きものの同様に付け込むような真似はしないのである。圧倒的な余裕をもって、正面から敵陣に一歩を踏み出し――そして、その小さな身体が膨れ上がった。
「余の本性は竜」
そう高らかに宣った顔は、最早人のそれではなく、金の瞳を宿す爬虫類のもの。割れた肌のそこかしこから鮮血が噴き出すが、それすらも力に変えて無数の鱗が覆い隠っていく。
「人に畏れられ願われかくあれかしと乞われし最古にして最大の王。すなわちメギドラウディウス・レックスである!」
かくして、王竜はここに再臨した。
「余は太古の星を支配せし王竜の化身であるぞ! 王に向かって楯突くとは何事だ。頭が高い! 槍を収めよ!」
矢継ぎ早に繰り出される言葉は、その全てが自らを支配者であると高らかに誇るもの。そして、ここの住人は、こういうのにめっぽう弱いのだ。いわゆる『控えおろう!』というやつである。さすがに平伏とまではいかなかったが、それでもロアの進むべき道は拓けた。その目が見据えるのは、真正面の厭魅師の姿。
「ええい、何をしているのですか! ものども、掛かりなさい!」
厭魅師が兵士をけしかけようとするものの、その命令に従おうというものはいない。もとより、君臨するものとしての格が違うのだ。
「仕方ありませんか……」
ロアの進む道を、無数の紙が舞った。ただの紙ではない。その一枚一枚に、生命あるものを殺すための言葉が書き留められた呪符であった。それらが、ロアを仕留めんと迫る、が――。
「即死の呪符だと?愚かな」
彼は、それを鼻で笑った。
「余はもとより死の先に在る者であり、この肉体も仮初の命よ! 何より――汝ごとき愚昧なオブリビオンの仕儀などで、余が死ぬものかッ!」
すなわち、少なくともロアにとって、それはただの紙吹雪に等しかったのだ。
「私の符が効かないですって……!?」
「喜べ。汝には余が直々に死を賜う」
呪符の嵐を抜け、厭魅師の眼前にロアが姿を現した。呪符の操作に集中していた厭魅師に、既に振りかぶられていた腕を避ける手立てなどはなく。
「お、おやめなさい……!」
ロアの爪が、派手に衣を斬り裂き赤い血を宙に散らした。
成功
🔵🔵🔴
緋翠・華乃音
ファランクスを相手に真正面から衝突するのは芸が無いな。
突破自体は容易いかも知れないが、可能な限り被害を出すなというオーダーなら、俺は背面から奇襲させて貰おう。
気配や存在感、呼吸や物音を極限まで消してファランクスの背面へ移動。
奇襲時には個々の兵の挙動を"見切る"事を重視。
一手目で敵を台に空中へ駆け上がり、槍と盾を足場に稲妻の如く陣中を進む。
オブリビオン相手には優れた視力や聴力、直感を頼りにその行動を予測。
間合いとタイミングを読んでヒット&アウェイの攻撃を仕掛ける。
常に最適な行動を心掛け、無駄な動きは一切せず、体得している戦法の全てを複合して戦闘に望む。
連携・アドリブ等歓迎
●Blitzkrieg
真正面からファランクスのど真ん中を悠然と歩くロアを横目に、緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は敵の側面を進んでいた。駆ける姿は存在感が極限まで殺されていた上、兵たちの意識しやすい槍を持つ右手側ではなく、盾を持つ左手側を進んでいたために気が付くものは誰一人として存在しない。
(ファランクスを相手に真正面から衝突か。突破はともかく可能な限り被害を出すなというオーダーなら、俺は俺は背面から奇襲させて貰おう)
十六段の敵陣の後背に回った華乃音の視界には、無防備で柔らかい背面が晒されていた。ファランクスに限らず、密集陣形というものは確かに正面からの衝突には滅法強い。しかし、それ以外の方向、とりわけ背面に対しては常に弱点を晒しているのに等しい。針鼠のように四方に槍を向けた方陣ならばともかく、少なくともこのマケドニア式重装歩兵はそのような陣形は取っていなかった。
「これなら、楽に突破できそうだ」
華乃音はそう言うと、最後尾の兵の背中に向かって駆け出した。
最初の兵士は何が起こったのか全く気付けなかった。あるいは、気付いたときにはすべてが遅かった。彼の肩を、何者かが足で蹴ったのだ。視線を背後に向けてもそこには誰もおらず、ただ黒い風が吹き抜けたのみ。
「一、二、三……指揮官はあそこか」
密集する人の海の上を、華乃音が軽やかに進んでいく。槍を、あるいは盾を足場に進んでいくその姿は、あたかも九郎冠者の八艘跳びのようでもあった。
「前の次は後ろですか。全く、面倒ですね!」
衣を爪の形にざっくりと裂かれた厭魅師が、忌々しげな表情で振り向いた。その顔面に向かって、華乃音が亡霊の名を持つ短剣を投擲した。艶やかな黒が厭魅師の眉間を直撃しそうになり、彼は慌てて首を竦めて回避した。だが、華乃音の攻撃はそれで終わりではない。短剣に続いて厭魅師に突撃していた彼が、右手に構えていた剣を薙いだのだ。蝶の牙のごとき繊細な刃は首を刈るには至らなかったものの、首筋に赤い筋をつけ、
「ぐっ……。ですが――」
「まだだ」
厭魅師が上げかけた苦悶の声を、二桁に迫る銃声が掻き消した。音の主は、華乃音が左手に持っていた一丁の自動拳銃。息を付かせぬ間もない連撃に、厭魅師は翻弄されていた。
「ならば……人を呪わば穴二つ。アナタには自分自身の攻撃で倒れて頂きましょう」
苦し紛れだろうか。厭魅師が一枚の呪符を宙に投げると、それが黒い影となった。よく見れば、それが華乃音の姿を模していたことに気が付くだろう。影は音もなく動くと、連撃を華乃音に向かって繰り出していく。短剣の投擲、それを影に潜り込んでの黒剣での斬撃、飛び退ってからの自動拳銃の連射。その全ては、傍目には彼自身と全く遜色ないものにも見えた。
「遅い。俺が自分の模倣に負ける道理がないだろう」
しかし、倒れたのは影であった。全く同じ術理で動く以上、未知の敵よりもよほど相手取りやすい。すなわち、影の攻撃全てを紙一重で回避して、それにカウンターを合わせることによってこちらから攻めることなく打ち倒したのだ。
「馬鹿な……こちらは強化した式神だったというのに」
「関係ないな」
冷たく吐き捨てると、華乃音は既に構えていた狙撃銃の引金を引いた。相手の白目すら見えるような至近の距離で、狙撃手が射撃を違える訳もなく、厭魅師の脇腹を吹き飛ばしてそこに大穴を開けた。
大成功
🔵🔵🔵
雛月・朔
【SPD】
武器:ヤドリガミの念動力
エンパイアの戦争も佳境ですね、思ったよりも信長軍はユニークな幹部と戦い方に富んでいるようです。
自身の身体を【念動力】で浮かし、空から攻め入ります。
敵の呪符はUCで作った私の器物の複製の桐箪笥を盾にして防ぎます。直線にしか投げられないでしょうし、下からの攻撃に注意を払っていれば直撃することはないでしょう。
『でも複製といえど、盾にするのは嫌なんだけどなー。早く終わらせよう。』
空から敵軍の指揮官を見つけたら【念動力】で槍だけを取り上げるイメージを作り、眼下の軍勢に【範囲攻撃】を行い、奪いとった槍を全て指揮官目掛けて投げます。倒れるまで何度も槍の雨を降らせます。
●鎗林
「思ったよりも信長軍はユニークな幹部と戦い方に富んでいるようです」
雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)が自らの身体を宙に浮かせつつ、戦場を睥睨して呟いた。戦いが行われているのはここだけではない。この地、関ヶ原のそこかしこにて、信長軍に属するファランクス部隊や或いは上杉家の部隊と猟兵たちが鎬を削っていた。まさに、天下分け目の地における決戦は、佳境を迎えようとしていたのだ。そしてそれは、サムライエンパイアにおける戦争の佳境とも言えた。
槍兵たちを眼下に見据えたまま、朔の身体がふわふわと移動を開始した。念動力によるそれは、飛行というよりは浮遊に近いと言えた。頭上を移動する朔に対し、槍兵らの持つ三間半槍……もといサリッサが、朔の姿を認めるや高々と上向きに掲げられた。あからさまな対空姿勢である。しかしながら、地上から10メートルあまり上を移動する朔に対し、全長6メートル程度槍では逆立ちしても届くことはない。いくら精神を修養したところで、竹槍で飛行機を落とせる訳もないのだ。指揮官である厭魅師の所在はすぐに知れた。方陣の中央で、ひときわ目立つ戦車に搭乗していた上、そこは既に激しい戦いの場となっていたからだ。
「無防備に飛んでいるだけですか……ならばやりようは幾らでも――」
先手を打ったのは厭魅師のほうであった。懐から呪符の束を引き抜くと、それを一斉に放ったのだ。一枚一枚が致死の魔力を帯びた紙の群れが、朔に向かって殺到する。しかし、それが朔にまで届くことはなかった。突如として空中に出現した幾棹かの桐箪笥によって、呪符の軌道が遮られていたからだ。
「複製といえど、盾にするのは嫌なんだけどなー」
その箪笥たちは、ヤドリガミたる朔自身の本体と寸分違わぬ複製であった。呪殺の札は、生命ある者を彼岸に送るために放たれたもの。人間どころか生命ですらない箪笥が相手では、その必殺の威力は僅かすら発揮できないのだ。それでも、朔の表情は晴れない。たとえ分身であったとはいえ、自分自身ともいえる桐箪笥を盾に取るような戦法を取ったことに対する感情である。あるいは、効かないと分かっていても、敵の攻撃に分身を晒したことに対するものか。
「早く終わらせよう」
朔のその言葉と同時に、敵兵の持つ槍が幾本も浮かび上がった。破れかぶれに敵が投擲した訳ではない。そんなことをするにはこの槍は長すぎるし、また投擲のフォームを取るにはファランクスの陣形は密集しすぎていた。では何が起きたのか。その答えは、槍の穂先が厭魅師を向けたことで間もなく知れた。自身の身体を浮かせたのと同様に、朔が槍を浮遊させていたのだ。浮遊、というにはあまりにも鋭い風切り音を立て、槍が地面を穿った。直撃すれば浅い傷では済まされない。その予感に厭魅師の額に汗が滲んだ。
そこからは、一方的な勝負であった。回避の合間に破れかぶれに厭魅師が投げる呪符を朔が余裕をもって箪笥で防ぎ、間断なく槍の雨を降らせ続ける。回避したところで地面には槍が林立していき、それが厭魅師の安全地帯を減らしていく。間もなく、槍が厭魅師の身体を抉った。一本、二本――。致命傷こそ避けるものの、瞬く間に厭魅師に傷が増えていく。
蹂躙劇は、槍を掲げていた敵兵がいなくなるまで続いた。
成功
🔵🔵🔴
ユェン・ウェイ
アドリブ連携歓迎
一般人の兵士を沢山用意するなんて卑怯だよ!
でもそれならこっちはオブリビオンだけさくっと倒すよ!
敵陣の近くまで着いたなら全力【ダッシュ】で陣の右側を目指すね
そして一気に【スカイステッパー】で彼らの上を跳んでいこう
目指すはオブリビオンが乗る戦車の元へ!一直線!
上手く戦車まで辿り着いたなら早速攻撃していこう
足場はそんなに広くないかな?
ここでも【ダッシュ・ジャンプ】を使って相手の攻撃を避けられるように動き回るね
特に即死属性の呪符とか怖すぎ!
【野生の勘】も働かせてしっかりと避けていくね
チャンスが生まれたならすかさず槍で【串刺し】だ!
上手く【フェイント】も交えて刺しに行きたいな
御手洗・花子
「ほれほれこっちじゃよ~、じゃあサヨウナラじゃ」
ファランクス部隊はある程度引き寄せてから、UCの飛翔能力で槍の射程外まで飛んで頭上から突破し、そのまま諸岡に一直線に向かっていく。
引き寄せたのは、諸岡との戦いの邪魔をさせないのと、相手のUCに巻き込まれるのを成るべく防ぐため。
蟲術による【猛毒】は『衝撃波』で可能な限り吹き飛ばし、残りは『万能胃薬・改』と『医術』『激痛耐性』『毒耐性』で凌ぐ。
格闘の間合いまで接近し、体内に『衝撃波』を叩き込む『御手洗式マーシャルアーツ』で殴る、心臓に『衝撃波』を叩き込み動きを止めた後、両掌で頭を挟む様に打ち据えると同時に耳の穴へ『衝撃波』を放ち鼓膜や脳を破壊する。
●そして死
槍の雨が降り注ぐ一方的な光景を、ユェン・ウェイ(M.Y.W・f00349)もまた見ていた。
「一般人の兵士を沢山用意するなんて卑怯だ、と思ったけど……まだ死んでないよね?」
「無事のようじゃぞ。オブリビオンとはいえ、頑丈なことじゃな」
卑怯なことには変わりないが、ああも攻撃を受け続けたら自分の出番はないのでは、なんて少しは思ったが、それも杞憂のようだった。土煙の中から厭魅師の姿をいち早く見つけた御手洗・花子(人間のUDCエージェント・f10495)が、敵の健在を示していた。その衣は散々に千切れ、体中傷を負っていない場所もない厭魅師であったが、それでもまだ戦意を失ってはいなかったのだ。
「でもそれなら、こっちはさくっと倒すよ!」
ウェイが猛然と駆け出した。目指すのは敵陣の右側面。敵の槍が届きにくい盾を持つ側である。そしてそこから、ウェイの身体が大きく跳ねた。彼女の身に宿るカンガルーの血のなせる技だったのだろうか。あるいはスカイダンサーとしての技量だったのか。いずれにせよ、その跳躍は惚れ惚れとするもの。まるで空中に足場があるかのように、槍の間合いに入る前に宙を蹴って再び高度を確保。一直線に厭魅師のもとまで向かっていった。
「ほれほれこっちじゃよ~」
一方、花子は敵陣の前で、兵士たちを挑発していた。いかに見た目が幼い娘であるとはいえ、真正面からあからさまな挑発を受けて平静でいられる兵士たちでもない。これが、本場本職のホプリタイならば話も違ったのかもしれないが……残念ながら、彼らは急造の槍兵にすぎなかった。花子の挑発につられるように、一人また一人と目を怒らせた敵兵が前進を開始した。本来ならば後方の指揮官、すなわち厭魅師からの制止が入ってしかるべきなのだが、それもない。恐らく、ウェイがうまい具合に戦闘を初めてくれたのだろう。
「そろそろ頃合いじゃな。じゃあ、サヨウナラじゃ」
そうして十分な距離を取ったところで、花子がぽつりとつぶやいた。敵前衛と厭魅師との距離は既に十メートル以上開いており、陣の中央はがら空きの状態であった。衝撃波が地面を叩き、彼女の姿が掻き消えた。一瞬で姿を消した花子に対し、兵たちは混乱を隠せない。陰に隠れて奇襲するつもりでは、と誰かが小さく言った。それがありそうな話である。それが事実なら、一瞬たりとも背中を見せる訳にはいかない。そうして、彼らは厭魅師の救援に駆け付ける機会を永遠に失った。
「イェーガー……! 何度も何度も、忌々しい! なぜそこまでして、私の――いえ、右府様の覇業を阻もうというのですか」
「その果てに、世界を滅ぼすんだよね? 楽しいものを壊すのは許せない、それだけ」
猟兵たちがなぜ右府、すなわち信長の侵略を邪魔するのか。その忠実な信奉者である厭魅師には理解できなかった。顔を歪め、思わず問うたその言葉を、ウェイはばっさりと切り捨てる。世界とは楽しいものであるべきなのだ。かつての信長がいかなる存在であったとしても、今現在の彼がオブリビオンである以上、その支配を肯定すれば最終的に世界は滅亡する。それだけは、許すわけにはいなかった。
「全く、解せない存在だ。ならば、死んでもらいましょう……!」
溜息を吐いた厭魅師が憎々し気に言えば、みたび死をもたらす呪符が空を舞った。当たれば必殺のそれは、しかしウェイを捉えることはできない。前後左右に加えて上下方向にもランダムに動くその機動を読み切れないのだ。フラットシューズが地面を、大気を蹴りつけるたび、圧縮された空気が風を引き起こしていた。
そんななか、ウェイは敵陣に起きた異変に気が付いた。前衛の兵士たちが、何者かに引っ張られるかのように前へ前へと進んでいたのだ。
「お、おやめなさい。止まりなさい!!」
ちらりと後背を見れば、花子が兵たちを誘導しているのが見えた。厭魅師の声も、もはや敵兵には届いていないようだった。
「『長谷川さん』、ちょっと返してもらうのじゃ……」
向こう側でそんな声が聞こえたかと思うと、ごう、と空気が震えた。衝撃波の音である。間を置かずして、ウェイの隣に和装の美女が立った。ユーベルコードの力で、本来ありうべき姿となった花子であった。
「また一人、増えたというわけですか……」
「そろそろ観念したらどうじゃ?」
「はい、と言うとでも?」
厭魅師が応えると同時に、そこかしこの地面から無数の蟲が現れた。蜈蚣に蠍、蜂に毒蜘蛛。いずれも猛毒を持つとされるものである。ファランクスが崩れ、自身以外に周囲にいるものが猟兵しかいないからこそ扱えた、起死回生の無差別攻撃。
「この日のために研鑽を重ねた蟲毒、これならばいかに猟兵とて」
「『それだけ』かの?」
花子の拳が地面を抉った。陥没する街道だった路面と、そこから広がる衝撃波。いくら強力な毒を有していたとしても、蟲はしょせん蟲。圧倒的暴力の前では叩き落とされる無力な存在にすぎない。それでも数が数だ。花子の手足に噛み付き、あるいは毒針を刺した蟲もいたのではあるが、
「この程度の毒なら、胃薬で十分じゃな」
薬包に入った粉末を口に流し込むと、それもたちどころに癒えていった。万能薬を胃薬というのもなかなか独特のセンスではあるが、そういうものなのだろう。多分。
「我が毒を癒す薬だと。そんなものこの世界には――」
「そこ、隙あり!」
必勝を期した一撃をあっさりと対処され、動揺を隠せない厭魅師の上からウェイが降ってきた。先ほどの毒蟲を、多段ジャンプで空中に逃れることで防いでいたのだ。そして、高度を取ったことによる位置エネルギーを運動エネルギーに変えての飛び蹴り。したたかに腹を蹴り飛ばされ、厭魅師が地面に転がった。
「だが、まだ」
「だがもデモもストもありゃせぬよ」
ふらふらと立ち上がった厭魅師に、音もなく近寄った花子の掌底が突き刺さった。衝撃波を体内に叩き込む御手洗式マーシャルアーツである。インパクトの位置はちょうど胸の、心臓の真上。いかにオブリビオンとはいえ、身体構造は人間のそれと同じである。心臓の鼓動と動きが一瞬止まった。さらに、両掌が頭を挟んで打ち据える。耳から衝撃波を叩き込んだのだ。凄まじい衝撃に、厭魅師が絶叫をあげた。
「む、これは拙いのう」
それでも、彼はまだ生きていた。ただ生きているだけでなく、戦う気力も能力も残していた。頭を挟まれた瞬間、僅かに残していた蟲で花子を襲わせていたのだ。薬を飲めば毒は回復するが、その隙が厭魅師の撤退を許す――ことにもならなかった。なんとなれば、この場にいるのは二人。
「どこまでも、読んでいたという訳ですか……」
「逃がさないから」
厭魅師が逃げ出そうとした先、不破関に続く街道の上にウェイが立っていた。ドラゴンランスを構えての突進に、厭魅師が最後の呪符を構えて応戦する。投げつけた死の符は、鋭い槍捌きにより一瞬で両断され。
「これで、終わり!」
首筋を狙った横薙ぎを防ぐため、左腕を掲げて防御しようとする。腕一本くらい、命を失う事に比べれば安いものだ。そう思ったのだ。そこで、槍の軌道が唐突に変化した。薙ぐ動きから、突きこむ動きへ。フェイントに引っかかり、がら空きになった心臓めがけ、槍の一突きが加えられた。
どさり、という鈍い音は、この場での戦闘が終わった合図であった。
成功
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