エンパイアウォー⑩~押し寄せる鉄の津波〜
村上水軍。
瀬戸内海で海上警護と漁業、時々海賊業を行なっていた3つの村上氏を総称した呼び名である。
その高い操船技術と海上での戦闘は毛利氏や豊臣氏に高く評価され、一介の漁師から大名家にまで昇進した者達であり、今回の戦争でも兵を提供してくれている一家でもある。
「兵を提供してくれている所からそこまで徳川家と仲が悪い訳ではないことは分かっていただけると思います。しかしその技術を恐れた家康公によって、一部の者は内陸に転封されました。今回確認されているのはその家に仕えていた、すでに亡くなっている方々だそうです」
ルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)は壁に映されているスライドショーを次のページに進めた。
そこには全長200mにもなる大量の鉄甲船が瀬戸内海を覆い尽くすように進む映像が流れ始めた。
「織田軍は日野富子のありあまる財力で『超巨大鉄甲船』の大船団を建造していました。本来なら、船は建造できても、その船を自在に操る船員を全隻分用意するのは一朝一夕にはいきません。しかし織田軍は村上水軍の怨霊を呼び出したことで解決したようです」
鉄鋼船は村上水軍の怨霊の力で巨体からは想像出来ない俊敏な動きを見せるだけでなく、沈めてもすぐに復元されてしまう。さらにそれを操縦する怨霊は除霊系の攻撃だったとしても一切ダメージを受けない。
このままでは、南海道の海路を進む予定の幕府軍の船は悉く沈められ、海の藻屑と消えてしまうだろう。
ただし弱点はある。
「怨霊は帆柱に掲げられた村上家の旗を降ろすことで消滅するようです。操縦の邪魔をしたり推進部を破壊するよりも旗を降ろした方が効率的でしょう」
丸印の中に上と書かれている旗の実物を見せたルウはそれを折り畳むと机の隅に置いた。
「しかし我々が旗を狙ってくることを読んだのか、船には死者の魂を呼び戻す風鈴のオブリビオンも控えています。旗を壊して消滅させてもそいつに呼び戻されてしまったら同じ事になってしまうので、一緒に討伐してきてください」
そう言った後、ルウは非常に申し訳なさそうにしながら頭を下げた。
「ただ、一つ問題があります。今回の案件では鉄甲船に直接皆様を送り込むことはできません。村上水軍が航行している場所に最も近い港町や島にお送りしますので、そこからの移動方法は皆様にお任せする形になります。お手数ですがよろしくお願いいたします」
平岡祐樹
西に東に飛び回る猟兵達を案内する、平岡祐樹です。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
全長200m、全幅30mの巨大な鉄甲船を舞台に皆さんには暴れまわっていただきます。
ただし、相手の鉄甲船は港にはおらず、すでに航海中です。
旗を下ろす方法や敵との戦闘シーンだけでなく、海を渡る方法や巨大船に乗り込む方法なども必ずプレイングに記載してください。
第1章 集団戦
『彼岸の兜風鈴』
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POW : 風鈴の音が響き渡る
予め【風鈴の音を響かせ続ける 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 風鈴の音が共鳴する
【共鳴振動となる甲高い風鈴の音 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 風鈴の音が死者を呼ぶ
【黄泉の国 】の霊を召喚する。これは【悲鳴】や【武器】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:marou
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナザール・ウフラムル
でか!え?でっか!なんだこれ!?
…っはー、性格悪いのが金持ちだとロクなことにならねえな!
まあいいや、水の精霊に協力頼めば水上移動とか余裕だし。風で加速しながら突っ込む。船の砲で人間サイズを狙えるもんなら狙ってみやがれ。俺は避けるからな。(【見切り】)
んでもって、音は空気の振動だ。空気が無けりゃ音は聞こえない。攻撃のレベルになろうとな。【属性攻撃】(風)で自分の周囲に真空のフィールドを作って攻撃を凌ぐ。
後はまあ、煮るなり焼くなり、ってか?同じ攻撃なら【第六感】で予兆を察知して防御ができるわけだし。
「でか! え? でっか! なんだこれ!?」
水の精霊に波の流れを抑えてもらい、自分の四肢に風を纏わせることで水上を滑るように移動していたナザール・ウフラムル(草原を渡る風・f20047)は近づけば近づくほど大きくなる黒い鉄の塊を見上げながら幼い子供のような感想を上げていた。
「……っはー、性格悪いのが金持ちだとロクなことにならねえな!」
船腹から伸びる、前後に動く巨大な櫂を横目にナザールは足に纏わせた風力を強める。
そして空中へ飛び立つと、南海道を通ろうとする徳川軍を打ち払うための装備と見られる砲頭が生えている側面を越えて一気に甲板に躍り出る。
ナザールの姿に気づいたのが直前過ぎたのか、猟兵1人程度に撃ちたくないのか、そもそも砲兵がいないのか、大砲は火を噴かなかった。
しかし甲板の上に張り巡らされたロープに吊り下げられていた黒い風鈴がまるで敵襲を知らせるかのように、風が無いのに鳴り始めた。
すると近くを飛んでいた海鳥が気を失ったかのように墜落していった。しかしナザールは平然と甲板の上を歩きながら銀の装飾が施されたフィンガーレスのロンググローブを身につけていた。
「音は空気の振動だ。空気が無けりゃ音は聞こえない。攻撃のレベルになろうとな」
グローブの姿をした風の精霊、カーマルの力によって音波が遮断される中、ナザールは思いっきり体を捩じらせる。
『北風は刻むもの。この身を刃と成す』
そして腕を振り切り、ロープが繋がれている金具に向けて手刀を放つ。
片方の支えが無くなったロープはまるでターザンロープのように何の抵抗も無く落ちていき、それに繋がれていた風鈴も運命を共にして甲板に叩きつけられて割れていった。
成功
🔵🔵🔴
シル・ウィンディア
海かぁ…
水着着て泳ぐのにはいいんだけどなぁ…
・船まで
【空中浮遊】【ダッシュ】で船の真下迄たどり着くね
・船への乗り移り
【全力魔法】でUCを使用
この魔法なら、一気に近づくこともできるっ!
風翼を展開させて
【空中戦】【フェイント】【残像】を駆使して
急速上昇してから接近
・戦闘
上空から精霊電磁砲の【誘導弾】の【一斉射撃】!
いかに不意を突くかが勝負っ!
精霊電磁砲で掃射した後
急速降下して風の【属性攻撃】を付与した
風精杖で蛇を【なぎ払う】よ
ヒット時は【衝撃波】のオマケつき
敵の攻撃は【第六感】で感じて
【見切り】で高速回避っ!
・旗
周りの敵を風属性を付与した精霊電磁砲で
【なぎ払い】ってふっ飛ばします
その後降ろすね
「海かぁ……水着着て泳ぐのにはいいんだけどなぁ……」
普段着で海を滑走するシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)はどこか残念そうな顔を浮かべていた。
波に足を取られかけながらも、何とか船の近くにまでたどり着いたシルはそびえ立つ黒い壁の上の方を見ながら叫んだ。
『風の精霊、エアリアル……。わたしに力を……。さぁ、一緒に舞おうかっ!!』
風翼を展開させたシルは一気に上空へと舞った。
すると砲塔がゆっくりと動き出し、シルが飛ぶ時に残した残像目掛けて、弾を発射していく。
「よし、まだバレてない!」
自分の分身が弾の風圧で消し飛ぶ中、鉄甲船のはるか上に陣取ったシルは精霊電磁砲のエネルギーを満タンにまで充電する。
そして甲板で鳴り響き続ける風鈴目掛けて一斉に掃射した。
ロープが千切れ、風鈴自体にも当たり、甲板の上に風鈴だった物が散らばる中、シルは電磁砲を腰に戻して一気に急降下する。
すると時を同じくして下に繋がる扉からぞろぞろと甲冑姿の男達が現れた。
「いたぞ、徳川軍の進撃を許すな!」
「そうは、いかないよ!」
刀だけでなく巨大な木槌や鉈を持って攻撃してくる兵達の攻撃を見切り、スレスレでよけたシルは風精杖をまるでハンマーのように払う。
杖に込められていた風の魔力が兵の体に触れた瞬間に爆発し、シルとは何倍も体格や体重に差があるはずの相手は海へと吹き飛ばされた。
「あとはあの旗を下ろせば!」
周りに敵がいなくなった所でシルはもう一度電磁砲を構え、旗が掲げられている見張り台に向けて弾を放った。
しかしロープが風鈴が吊り下げられている物よりも強靭なのか、別の方法でくくりつけられているのか、旗は手元に落ちてはこなかった。
成功
🔵🔵🔴
落浜・語
今回の戦争はなんでもありだな。多種多様というか。今までのもそうではあるけど。
さて、ちゃきちゃき終わらせていきますか。
UC『烏の背中』で上空から鉄甲船へ。
数は多いだろうが、カラスとも連携しつつ自分は奏剣で、カラスにはド突いたりなんかで敵を攻撃。カラスの嘴や爪って案外鋭いからな。どんどんやってくれ。
互いに囲い込み少しでも効率よく倒せるように動く。
確かに今はお盆の季節だけれどな。お前らの事は、全くもってお呼びじゃないんで、さっさとしかるべき場所におかえり頂こうか。
アドリブ、連携歓迎
「今回の戦争はなんでもありだな。多種多様というか。今までのもそうではあるけど」
空を飛ぶ巨大な烏の背中に正座していた落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)はある意味お祭り騒ぎであったキマイラフューチャーでの戦争を思い返してふと呟いていた。
今回の戦争とキマイラフューチャーの戦争との違いは「人命が明確な危険に晒されているか否か」。
誰も悲しまないオチをつけるべく、気合いを入れる意味で落浜は自分の膝を閉じた高座扇子で叩いた。
「……さて、ちゃきちゃき終わらせていきますか」
鉄甲船の姿が近づくにつれて風鈴の鳴る音が聞こえてくる。しかしそれは涼しさを感じさせる物ではなく、頭をガンガンと痛ませる物だった。
「なんだこれは⁉︎ 全然風流じゃありませんね……!」
顔をひきつらせつつ落浜は甲板に飛び降りる。
身軽になった烏は一目散に風鈴をぶら下げているロープがくくりつけられた金具の近くに降り立ち、自分の硬い嘴をそこに叩きつけた。
甲高い音が何度か響いたかと思うと、ロープが千切れて甲板に落ちてくる。
それに合わせて風鈴も落ちてきて男体か割れた。すると頭の中で響いていた音が少しだけ軽くなった。
「やっぱりこの風鈴のせいだったか」
落浜は笛を模した短剣を抜くと、甲板に落ちても割れずに鳴り続ける風鈴を上から叩き壊す。
「確かに今はお盆の季節だけれどな。お前らの事は、全くもってお呼びじゃないんで、さっさとしかるべき場所におかえり頂こうか」
その頭上ではロープを切ると、黒い風鈴を一個一個壊すよりも速く音が軽くなることを実際に感じとった烏は誰に指示されることなく、独りでに次々とロープを千切りに向かっていた。
成功
🔵🔵🔴
リーキー・オルコル
いつものナイフに加えて
フック突きのロープ
膠の入った水風船の入った袋
ベルトに付けた手榴弾
を持っていく
双眼鏡で索敵しながら船に乗って敵船に近づき
マジックスナップで船の向こう側に手榴弾を投げて敵の気を引いているうちに
フック突きのロープを敵の船に引っかけてロープを伝って船に登り侵入する
(もう船に仲間が乗っている場合はこっそりフックを投げて侵入)
風鈴が鳴らないように見つけた風鈴に膠入りの水風船を投げつけてベトベトにして風鈴が振動しにくくする
動きが鈍ればなおいいんだけどな
その後は持っていった手榴弾を投げつけて攻撃
旗を落とすときはナイフを投げて旗を止めている縄を切る
「強者どもがなんとやらってやつだな」
「フック付きのロープ、水風船、手榴弾……よし」
徳川軍のために用意されていた船の一つを許可を得て借りたリーキー・オルコル(ファスト・リー・f05342)は、鉄甲船の姿が見えてきた所で自分の武器を改めて確認していた。
「オルコルさん、あんたが飛び移ったらすぐに逃げるからな!」
「ああ、分かってるよ。帰りはどこかの猟兵にでも頼むさ」
先程近くに落ちてきた大砲の流れ弾にビビっている様子の船頭に向け、オルコルは双眼鏡を覗き込んで索敵しながら飄々と返した。
巨大な櫂がいくつも船底で動くのが裸眼でも確認出来るようになるとオルコルは手元でフックが付いたワイヤーを取り出して回し始めた。
『狙うまでもない』
投じられたフックが船壁に引っかかると同時に、オルコルは船の床から離れ、壁に足をつける。
その姿を見届けた船頭は早々に鉄甲船から離れていった。
「……せめて甲板に乗るまで見届けてくれないもんかね?」
ちょっとした恨み節を吐きつつ、オルコルは船壁を蹴りつつ登りきり、甲板へとたどり着いた。
「さて、俺も混ぜさせていただきますか!」
頭の中で鳴り響く怪音に眉間に皺を寄せつつ、オルコルは水風船を投じる。
投じられた水風船は風鈴から放たれる音波で割れると、中に入った液体を辺りにばら撒かれる。
その液体を頭から被った風鈴の動きはどこか鈍い物になった。
「ベトベトになれば、振動しにくくなるだろ」
膠入りの水風船が期待通りの結果を見せていることに満足しつつ、オルコルは手榴弾のピンを口で引き抜く。
続けて投じられた手榴弾が空中で爆発すると大量の黒い硝子片が甲板の上に落ちた。
成功
🔵🔵🔴
セラフィール・キュベルト
禍々しく、そして哀しい気配を感じます。
この手を以て、お浄めせねばなりません、ね…
船までは【空中浮遊】を以て飛行し乗り込みます。
近づくまでは海面付近を飛び、接近後に高度を上げて甲板へ着地する形にて。
現れたオブリビオンに対しては聖花乱咲・浄魂霞流にて主に攻撃。
呼び出された死霊諸共巻き込んで攻撃していきます。
【破魔】も上乗せし迅速にお鎮めできればと。
残った敵には精霊様(angelus luxis)による【破魔】の攻撃を。敵数に応じて適宜【範囲攻撃】も追加にて。
一通り敵を撃破後、【空中浮遊】で帆柱へ上り、旗を奪取し脱出します。
「禍々しく、そして哀しい気配を感じます。この手を以て、お浄めせねばなりません、ね……」
空中浮遊を利用して次の鉄甲船の側にたどり着いたセラフィール・キュベルト(癒し願う聖女・f00816)は船全体から感じられる不穏な気配に目を伏せた。
周りにいる敵を狙って次々と放たれる砲弾を避けながら、猟兵達と武士達が戦い合い、風鈴の音が鳴り響く甲板に躍り出たセラフィールは首に下げていたメダリオンを手にした。
『純潔の証たる白花、貴き母の徴たる聖花。秘めたる光解き放ち、以て万物を清め癒し給え!』
メダリオンが白い百合の花びらへと姿を変え、辺りに散っていく。
するとその花びらの中に入った猟兵達の刀傷は巻き戻されるかのように治っていき、対する村上水軍の武士達の傷はどんどん増えていく。
さらに味方は癒し、敵は容赦なく切り刻む百合の花びらが舞う中で現れた、祈りに応じて姿を現し、形を変える光の精霊が弓を引き絞る。
そして放たれた破魔矢は鳴り続ける風鈴を的確に射抜いた。
大穴を開けられ、全身にヒビが入った風鈴は仲間と共鳴しようとして砕け散っていく。
突如現れた援護に村上水軍がキリキリ舞いになっている隙をつき、百合の花吹雪の中に紛れて、セラフィールは先程のシルからの一撃で半壊している見張り台の上にたどり着いた。
「これはまた、しっかりと固定されてますね……」
旗を鉄の棒に括り付けている物が、電磁砲の一撃を食らっても傷一つついていない太い鉄線であり、さらに何重にも固結びされているのを見つけたセラフィールは自分の手で無理矢理旗か鉄線を引きちぎろうとしたが、残念ながらその腕力では日野富子の財力を持って作られた特注のそれを壊すことは出来なかった。
成功
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ヴィヴィアン・ランナーウェイ
アドリブ・連携歓迎
船に乗り込むのは簡単ですわね。
UCを使います。味方が既に船にいるのなら、そこに転移出来ますわよね!
さて、船にたどり着いたのなら風鈴が相手ですか。
これだけ大きな船ならば、●ダッシュで駆け回っても問題はなさそうですわね?
音?ええ、話に聞いてたので耳栓してきましたわ!何も聞こえません!!
そこら辺は●野生の勘でカバーします。
他の方々が壊したものを放り投げつつ、それを陽動に隙を見せたところを一突き!
これを繰り返しつつ、ロープも合わせて狙っていきましょう。
一撃で壊れなくとも、叩き続ければいつか壊れるはず!(根性論)
敵をある程度潰し終われば、見張り台へと駆け上がり、槍と剣で旗を狙います。
『私を呼びましたわね?ええ、呼ばれたからには即参上。ヴィヴィアン・ランナーウェイですわ!』
甲板に似つかわしくない高笑いが聞こえてくる。猟兵と武士達の視線が集まった先には一切疲れた様子のないヴィヴィアン・ランナーウェイ(走れ悪役令嬢・f19488)が笑っていた。
「これだけ大きな船ならば、ダッシュで駆け回っても問題はなさそうですわね?」
風鈴から鳴る音の量は増していたが、ヴィヴィアンの動きは一切落ちず、船の壁を蹴って宙を舞い、風鈴を繋ぐロープを上段から真っ二つに切り落とした。
降りてきた所を狙おうとした武士の攻撃を避け、ヴィヴィアンは走り去る。その刹那、視界に入った耳には耳栓がしっかりと詰められていた。
「あの野郎、耳栓をしてやがる!」
聴覚が無いなら気づかないはずと武士が矢を放つが、真後ろからの一撃だったにもかかわらず、ヴィヴィアンはその場で屈んで避け、立つと同時に槍を突き出して頭上にあった最後の風鈴を破壊した。
そして甲板中に散らばったガラス片を掴むと、襲いかかる武士達に思いっ切り投じた。突然の目くらましに武士達が反射的に顔を守る中、高笑いと同時にヴィヴィアンの姿が消えた。
次の瞬間、ヴィヴィアンの姿は見張り台にあった。
「何を手こずってらっしゃいますの!」
セラフィールを押し退け、問題のロープを視認したヴィヴィアンは剣と槍を構えて叫んだ。
「一撃で壊れなくとも、叩き続ければいつか壊れるはず!」
まさかの脳筋な根性論にセラフィールがドン引きする中、ヴィヴィアンは躍起になってロープに刃を当て続ける。
当てるたびに刃こぼれしていくが、細い金属の糸も二本三本と千切れていく。
「これで、おしまい、ですわ!」
ヴィヴィアンは刃を隙間に噛ませて、思いっ切り引っ張るとロープがついに千切れ、旗が滑り落ちてきた。
それと同時に甲板の上にいた武士達の姿が消え、鉄甲船の動きも停止した。
「これにて、一件落着ですわー!」
ヴィヴィアンは村上水軍の旗を翳し、勝利の笑みを浮かべた。
成功
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