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エンパイアウォー⑩~怨宿す鉄塞

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 風に波立つ海原に、無数の巨影が浮かんでいた。
 陽炎の中を進軍するそれは、鋭い程の流線を持った鉄甲の船。全貌を仰ぎ見ることすら叶わぬ程の巨大さを有した、動く要塞。
 波に揺れても風に煽られても鉄塊はびくともしない。
 その船に宿るは、大海賊の怨霊。
 その力で沈まぬ船と成ったかのように──それは悠々と、揺ら揺らと。斃すべき敵を求めて海を揺蕩い続けていく。

「お集まり頂き有難うございます。本日はサムライエンパイアで継続中の戦争の一端を担う作戦となります」
 千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は集まった猟兵達へと語りかけていた。
 戦乱が続いて暫く。幕府軍はオブリビオンの抵抗を受けながらも、怒涛の進軍で関ケ原へと集結している。
 ここからはさらに山陽道、山陰道、南海道の3方から進軍を続けることになるだろう。
「ただ、どの道も容易に、とは行きません」
 南海道では海路を進む幕府軍が居るが──海上においても、オブリビオンは強力な戦力を有しているようだった。
「それが超巨大鉄甲船の大船団です」
 かの大悪災『日野富子』が有り余る財力によって建造したもので──そこに戦国時代瀬戸内海を席巻した大海賊『村上水軍』の怨霊を呼び出すことで、最強の水軍に仕立て上げたのだという。
「このままでは、南海道の海路を進む幕府軍の船は悉く沈められてしまうでしょう」
 その船団を倒せるのは、やはり、猟兵だ。
「皆様にはこの鉄甲船を攻略して頂きたく思います」

「まずはじめに、皆様には鉄甲船の一隻に乗り込んで頂きます」
 鉄甲船は強固で、外から沈めることはできまい。何らかの手段で乗り込んで、そこにいる敵と戦いながら対処することが必要だ。
「とは言え、船を動かしている船員を攻撃しても、意味はないでしょう」
 船員は怨霊そのもので、こちらからダメージを与えることは不可能なのだという。
「怨霊を消し去る方法は、帆柱に掲げられた村上水軍旗を引きずり降ろす事、となります」
 〇の中に上と書かれている旗で、見目にはわかりにくいものではない。甲板を見て回れば確実に発見できるだろう。
「なので、この旗を落とすのが最終的な目標となりますが──」
 当然、船にはそれを阻止するオブリビオンが乗っている。
 その集団が『鬼百足』だ。
 羅刹が妖怪へと化けた成れの果てだというその存在は、獰猛にして凶暴だという。
「こちらを見つければ即座に攻撃してくることでしょう。警戒を以て当たって下さい」
 この敵を退ければ帆柱までたどり着くことができるはずだ。
 怨霊が消えれば自然と船は沈むだろう。
「少しでも、戦乱による人々の被害が少なく済みますように──」
 その為にも、作戦を成功できるように。
 参りましょう、とレオンはグリモアを輝かせた。


崎田航輝
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●現場状況
 海に浮かぶ巨大鉄甲船。
 全長約200m、全幅約30m。帆柱はおおよそ敵群の中心に位置し、たどり着くには敵を退けていく必要があります。
 こちらは海上、もしくは味方側の船上からスタートします。

●リプレイ
 集団戦で、敵は『鬼百足』となります。
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第1章 集団戦 『鬼百足』

POW   :    懊悩の苦鳴
【激しい苦鳴】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    蟲尾
【百足の尾】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    火炎鎖
【自身が繰り出した炎】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎が変化した溶岩色の鎖】で繋ぐ。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アルトリウス・セレスタイト
効率よく行くか

視認可能な距離まで接近後、回廊で転移し乗り込む

その後は破天で掃討
高速詠唱と2回攻撃で限りなく間隔を無とし、全力魔法と鎧無視攻撃で損害を最大化
爆ぜる魔弾の嵐で蹂躙する面制圧飽和攻撃

周囲一帯を纏めて吹き飛ばし回避の余地を与えず、攻撃の密度速度で反撃の機を与えず

纏う原理――顕理輝光『再帰』で一連の手順を循環させ一切の中断無しに攻撃を継続
必要な魔力は『超克』にて“外”から汲み上げ供給

敵群の動きや無理矢理に向けられる攻撃は『天光』にて見切り諸共に攻撃で飲み込んで対処

攻撃の物量で全て圧殺する

仮に船が沈んでも猟兵達は問題ないだろうし結果として旗は落ちる
その際は自身はやはり回廊で離脱する



 波間に濃灰色の塊が浮かぶ。
 その数は十か、或いは百か。一つ一つの巨影が視界を埋めて、海を覆ってしまう程の大きさを持つそれは、正しく動く要塞に違いなかった。
 さりとて、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の海より深い瞳に感情の変化は些かも窺えない。 
 軍の出す船上に転移して短時間、ただ真っ直ぐにその巨大なシルエットを見据えているだけ。
 海風にも揺らがず。
 着々と近づく、無数の妖怪の殺気にも表情を変えず。
「──効率よく行くか」
 静かな声音で呟くと、ひらりと跳ぶように木船の縁を蹴った。
 そのまま、アルトリウスの体は海上の空中で淡青色に輝く粒子に包まれる。
 眩く明滅したそれは回廊(カイロウ)──原理の力を用いて知覚する如何な場への移動も可能にする能力。
 一瞬後、アルトリウスは木船の上から見ていた鉄甲船上の空中へ顕れていた。
 微かにだけ銀髪を風に揺らしながら、甲板に着地。焦るでもなく、静謐の色を崩さぬままに周囲を見回した。
 妖気が渦巻き、殺意が跋扈する。
 呻きと、怨嗟に似た声が反響する。
 そこは蠢き這う、妖怪の牙城だった。
 船を護るは鬼百足。がしり、がしりと足を咬ませる耳障りな音を立てながら、喰らうべき獲物を探している異形の群。
 こちらの姿を見つければ、すぐに波打つ体で接近してきていた。 
 アルトリウスは事ここに至っても怯みも焦燥もない。敵の群れの陰に隠れているのか、甲板の端にも近いこの位置からでははっきりと旗が望めないことを確認していた。
 ひとまずは敵の数が多すぎるといった所。
 故にアルトリウスは手を前方に伸ばす。
 瞬間、眼前に迫っていた一体の鬼百足が千々に四散した。
 周囲の個体は何が起きたか、一瞬理解しかねているようだ。けれどその間にまた別の個体が爆ぜるように消滅して、確実に数を減らしていく。
 それは超高速で飛来する青い光だった。
 破天(ハテン)。
 死の原理を用いて溜めた魔力を解放し、魔弾として放つ衝撃。
 凄まじい数によって弾幕を形成するそれは、そのひとつひとつが存在根源を直に砕く力を持っていた。
 それでいて、連続攻撃と高速詠唱を併せる事により感覚は無に近い。
 一弾で一体の百足が死にゆけば、即時にその後方、横合い、斜めに居る個体も別の魔弾に撃ち抜かれて消えていく。
 点ではなく面で敵勢力を破壊していくように。
 アルトリウスが歩めばその前方の範囲の敵が綺麗に壊滅していった。
 巨大兵器の如き破壊力を維持して、火力に一切の減退がないのは、創生の原理『超克』によって常に“外”から魔力を組み上げているため。
 同時に『再帰』を常に纏った状態で、手順を循環させているために攻撃の途切れすら生まれないのだ。
 遠方から無理矢理に焔を撃ってこようとする個体もいる。だがその動きは既に、万象を照らす原理『天光』が察知していた。
 なればそこに魔弾を撃つだけ。
 青の輝きが巡り、妖怪が朽ちていく。
 アルトリウスは何者も寄せ付けず、ただ原理で世の理から外れた存在を蹂躙していくように、旗までの路を歩んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

忍冬・氷鷺
待ち受ける敵に嘗ての同族が居ても
情け容赦は一切かけぬ
生在る罪無き人々を奪わせはせん
この力この命。全ては彼等を守る為に

視認出来る範囲で船を確認
縄や苦無が引っ掛かる場所が無いかを探す
あれば縄を括り付けた大苦無を投擲し
それを伝って侵入出来ぬか試みる

同士とは積極的に協力を
妙案があれば其方に乗ろう


侵入が叶えば迅速に旗護りの排除に
同士の同行を確認しつつ、
一番手近な敵へと氷蝕楔を放つ
好き勝手動き回られては面倒なのでな
後は黒爪で鎧の如き装甲を抉りながら攻撃を

懊悩の声に身を裂かれても歩みは止めん
生命力吸収で僅かに命を継ぎながら
揺るがぬ覚悟を以て力を奮う

己が選んだ道、その末路だ
大人しく受け入れろ
引導は渡してやる



 爽やかな海風の吹く海上も、今はひどく空気が重い気がした。 
 それはあの怨霊の塊と化した船から、ひしめく無数の妖気が零れてきているからだろうか。
 怪異の気配を確かにそこに感じながら、忍冬・氷鷺(春喰・f09328)は水面を掻き分けて巨大な鉄塞に近づいてゆく。
 海に入っていても、不思議と温度を感じない。
 まるでこの船上で滾る異形の殺意が、水まで熱してしまっているかのようだ。
「──この、上か」
 それでも氷鷺は迷わず、船体に凹凸を見つけると縄を括り付けた大苦無を投擲。その部位に引っ掛ける形で結びつけ、縄を伝い登攀した。
 そこまで行けば、後は同様に船べりまで登っていくだけ。注意深く手をかけ、それでいて素早く──氷鷺は甲板に滑り込んでいた。
「……これは」
 氷鷺はほんの僅かにだけ目元を動かす。
 そこにいたのは異形の群れ。
 鬼百足──いつか羅刹として生きていた、その成れの果て。
 大きな一つ眼には無方向の殺意を浮かべ、蟲に変じた半身は絶えず蠢く。ただ頭に残る角だけが、元の存在の残滓を感じさせるのみだった。
「妖怪、か」
 氷鷺は一度だけ瞳を伏せた。
 変わり果てたとしても、それは確かに羅刹だったのだと氷鷺には本能で判る。何かが一つずれていれば、何かが違っていれば、共に同じ時代を生きていたかも知れないと。
 それでも、氷鷺はその手に鋭い氷気を湛えていた。
 それは戦意の証。
 矛先にいるのが嘗ての同族だったとしても。
「情け容赦は一切かけぬ」
 刹那、世界が凍りつく程の冷気が招来される。それは毒を含んだ鋭き細氷となり、煌めきを伴って宙を舞い始めた。
 氷蝕楔(ヒョウショクセツ)。
 膚を穿ち、削り、抉る威力を持ったそれは、内に秘めた凍気の圧力を拡散させ、氷色の爆発を巻き起こす。 
 だけに留まらず、飛散した冷風そのものが凍りついて零下の鎖となり、敵の集団を纏めて繋ぎ、縛り上げていた。
「好き勝手動き回られては面倒なのでな」
 声音も視線も、怜悧に、冷静に。
 討つと決めれば容赦はない。
 直後、一足飛びに肉迫した氷鷺は黒爪で連閃。百足の鎧の如き装甲すら抉ってみせながらその体を切り裂いていく。
 響く懊悩の声に心を蝕まれても、苦鳴の響きに身を裂かれても、歩みは決して止めない。
「生在る罪無き人々を奪わせはせん」
 この力この命。全ては彼等を守る為に。
 揺るがぬ覚悟を以て。
 死の音が反響する中、下がらずに更に敵の渦中に跳び込み、爪を踊らせることで生命力を喰らいながら自身の命を保っていた。
 ただ真っ直ぐに攻めること。それが目的を成す唯一の方法だから。
 足を断たれ、体を抉られ、鬼百足は憎悪の面持ちで這いずる。氷鷺はそれを見据えて尚迷わず、爪を振りかざしていた。
 何を恨んだか、何を呪ったか。
 如何な生き様、死に様がその身を妖怪変化に堕としたか。
 どんな存在であったとしても、異形として立ちはだかった事実が全てだから。
「己が選んだ道、その末路だ、大人しく受け入れろ」
 引導は渡してやる、と。
 氷鷺は氷晶棚引かす斬撃を振るう。その揺るぎなき一閃が、心が、視界を拓くように妖怪を消滅させていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
財を投じて作っただけあるぜ。なかなか良い船だ。…化け物連中の船じゃ無けりゃ完璧だったんだが。そこだけ惜しいな。

旗を降ろす為にはあの百足お化けをどうにかしねぇとな。派手に害虫駆除と行こうじゃねぇか。
遠距離からの銃撃をメインにするぜ。UCに紫雷を纏わせた【属性攻撃】と【二回攻撃】。集団でうじゃうじゃ気持ち悪いからな。敵集団狙いで【範囲攻撃】に銃弾全てをぶっ放す【一斉射撃】で纏めて吹き飛ばすぜ。
【早業】でリロードだ。隙は作らねぇよ。
百足の尾による一撃は紙一重を【見切り】、【残像】で対処。こんだけ広けりゃ、駆けまわるのにも困らねぇだろ。
脱皮するんだっけ?…気色悪ぃな。【第六感】で察知出来りゃ良いが。



 海原に巨大な影を落とす鉄塊。
 それは世界を我が物にせんとするように、広き一帯を睥睨しているように見える。
 事実、それは相応の力を持つ船だろう。
 継ぎ目のない鉄甲はつややかにして堅固で、およそ隙と呼べるものがない。造形は頑強にして優美で、一つの船としても戦力と価値は計り知れなかった。
「財を投じて作っただけあるぜ。なかなか良い船だ」
 幕府軍の船の一端で、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は暫しそれを遠目にしている。
「……化け物連中の船じゃ無けりゃ完璧だったんだが。そこだけ惜しいな」
 近づけば容赦はしないとでも言うような、不穏な気配を湛えていることだけはカイムにしても褒められたものではなかった。
 ま、いいか、と呟き。
 あとは水面に出て接近。錨に鎖に、利用できる出っ張りを跳びつつ、仲間の協力も利用して甲板の端にまでたどり着く。
 如何な船であれ、敵対することになったのならこちらも容赦してはいられない。
 だから可能な限り迅速に。
 カイムはもう必要な仕事を遂行する心に移っていた。
「さて」
 と、樽の影から甲板を見渡す。
 と言っても、視界に映るのは妖怪が殆どだ。
 旗を護るためであろう。また、単純に戦力を詰め込んでいるためでもあろう。一見して数え切れぬほどの異形がそこにはいた。
 ここから出れば、ろくに隠れる場所はない。
「旗を降ろす為には結局、あの百足お化けをどうにかしねぇと、ってことだな」
 ならば迷いはない。
 カイムはホルスターから二丁の銃──オルトロスを抜くとくるりと一回転。グリップを握ると引き金に指を当て、臨戦態勢を取った。
 それから軽く息を吐いて。
「うじゃうじゃいて気持ち悪いからな。派手に害虫駆除と行こうじゃねぇか」
 瞬間、床を蹴って甲板の端から飛び出し、船べりに背を預けて敵から間合いを取る。
 そうして妖怪──鬼百足がこちらに気づくと同時。カイムは敵の攻撃よりも早く引き金を引いていた。
 紫の光が閃き、明滅する輝きがばちりと音を慣らす。
 刹那、飛んだ弾丸が一番近くの百足を貫いて、雷が弾ける衝撃で体を爆散させていった。
 その至近の一体は、驚きに啼き声を零す。だが直後には反撃する暇もなく、連射された弾丸に命を奪われていた。
 銃撃の協奏曲(ガンズ・コンチェルト)。
 その隣の一体も、また横の一体も。
 カイムは扇形に腕を薙がせ、秒間数十発という離れ業で連射を敢行することで、まるで雷そのものを撃ち出しているかの如き範囲攻撃を実現していた。
 僅か一瞬の内に、カイムの近くにいた個体群は吹き飛ばされて跡形も残らない。早業を以て、二丁を交互にリロードすることで隙も作らなかった。
「……ま、これで終わりじゃないだろうけどな」
 呟きの通り、すぐ後には殺意の声を上げ、後続の百足が這い寄ってくる。
 人を捨てた化生は、その能力で人を遥かに凌ぐ。信じられぬ速度でカイムに近づいたかと思うと、そのまま体を捻って尾撃を放とうとしてきた。
 が、その一撃が打ち据えたのはカイムの残像。一直線に突き進んでくるだけならば、見切るのも難しくはないのだ。
 無論、囲まれればその限りではないが──そこまで事態を放置するつもりは無い。カイムはひらりと着地すると、そのまま駆け回るようにして敵を周囲に固めさせなかった。
 百足はそれでも脱皮して身軽になり、追いすがろうとしてくる。ただ、それもカイムは第六感でいち早く察知していた。
「……ったく、気色悪ぃな」
 敵が高速で奔り寄る前に照準を合わせ発砲。二丁から弾丸を叩き込むことで一瞬で四散させていく。
 群れを排除し、囲ませず。追いつかれそうになればその前に先手を打つ。
 そうして距離を保ち、敵数を減らすことで──確実に帆柱への活路を開いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユノ・フィリーゼ
この先には行かせない
貴方達の征くべき海は、
骸の眠るあの場所だけなのだから

空中浮遊やジャンプ、地形を利用し船へ
乗船できても直ぐの単独行動は控え、
先ずは他の猟兵が内部へ乗り込める様に手を貸すわ
第六感を働かせ、利用できる物がないか探してみるよ

(一人一人ではかなわなくとも、皆でなら
この戦だって、きっと)

船内では慎重に歩を進め
敵に先手を取られぬ様に細心の注意を
物音や足音、影など
異変を察知したら皆に伝えるよ

鋼鳥を喚び仲間が狙った百足目掛けて嗾ける
素早い尾の一撃は見切りや残像で回避に努め、
剣や蹴撃にてお返しを
お生憎様。速さなら負けないわ

傷深い仲間がいれば敵の視界を奪うよう鋼鳥を舞わせ
少しでも時間を稼ぐわ



 蒼空に昇る赤色。
 海風を染める陽炎。
 鉄の船から、焔が瞬いている。
 この世ならざるものたちの営み。快いはずの自然の空気には、それがとてもそぐわないものに思えたから。
 ユノ・フィリーゼ(碧霄・f01409)はそれを止めるために、空へと跳んでその船に近づいていた。
 柔い風を蹴って、くるりと小さく回転して。
 前方への風の流れがあれば、それに乗るように身を任せて。
 静かに、けれど何処か踊るように。宙を渡って船の後ろから甲板を目指す。
 鉄甲船の後尾は、守りが堅いわけではなかった。そこならば敵の集団もあまり居らず、静かに降り立つことができる。
 故にユノはふわり、と。蒼穹色の髪をほんのり揺らしながら、気流に紛れるように着地。音もなく甲板の最後方へとたどり着いていた。
 それから敵に見つかっていないことを確認すると、うんと一つ頷いて。
(次は──)
 すぐに交戦には入らずに、先ずは他の猟兵が乗り込めるように手を貸すことにする。
 ふっと深空の瞳を閉じると、心を風と、風に揺れる波音に溶け込ませるようにして。精神を集中すると、次に見回して何か利用できるものが無いかと勘を働かせた。
 そこで見つけたのは、ロープ。
 敵の目が届いていないと見ると、素早く回収。それを船べりから垂らすようにして下方からの登攀の足がかりになるようにする。
 と、早速甲板を登ってきていたカイムがそれを利用し上がってきた。ありがとな、と声をかけられると、ユノはしかと頷いて答えた。
 見渡せば、最後尾以外でも複数人の猟兵が船へと登ってきている。
 ユノはその姿に心強さを覚えた。
 そっと胸元で自身の手を握り。
(一人一人ではかなわなくとも、皆でなら──この戦だって、きっと)
 船の上に居るのは怨嗟を抱く妖怪。
 化生へと身を堕としてしまった異形の群れ。 
 それは、余りに多くの敵意と殺意が闊歩する景色。きっと楽な戦いでは済まないはず。それでも仲間が力を合わせれば、乗り越えられる気だってするのだ。
 だからユノは凪に風を吹かすよう、ゆっくりと歩を進め出した。
 敵の只中に一気に踏み込んだり、敢えて危険に身を晒しはしない。
 一歩一歩、慎重に歩を進めて。敵に先手を取られぬように、仲間の行動を阻害しないように注意を払って前進する。
 仲間と敵の交戦が始まり、乱戦の様相を呈してきたら──そこで素早く助力へ。カイムや氷鷺が鬼百足と撃ち、斬り合うところへ、そっと唇で旋律を紡ぎ始めた。
『──』
 優しくも麗しく。楽しくも麗らかに。
 奏でる盟約の唄は、そこに美しく鋭い鋼鳥を呼び寄せていた。
 ──遊んで、おいで?
 鋼鳥の戯れ(カプリス・ルードゥス)。
 ユノの声音に応えるかのように、鳥達は風を切って飛翔。四方から囲い込むように翔び、そのまま鋭利な羽で以て敵を切り裂いてしまう。
 文字通りに游ぶように、囀りながら。鋼鳥は次の敵を見つければ再び飛来し斃していった。
 鬼百足はユノのことを脅威だと認識したのだろう。這い寄るように、脚を床に咬ませて接近してくる。
 そのまま繰り出してくるのは体を回しての尾撃。
 まるで疾風のような一撃。尋常のものであれば、敵が近づいてきたことも気づかぬままに打ち据えられて終わりだろう。
 けれど。
「お生憎様。速さなら負けないわ」
 ユノは宙返りするように後方に翻り、既に躱していた。
 敵が疾風に似た速度を持っていようとも、ユノは疾風そのものを味方にする。
 風の流れに踊るよう、マストの一つを蹴ると更に跳躍。曲線の軌道を描いて、吹き下ろすかのような蹴撃を返していた。
 直上からの攻撃に、倒れ込む百足。
 それでも這いずるように突進を目論む──が。
 その頃には着地したユノが、すらりと美しい銀色の長剣を抜き放って一閃。怜悧なる剣撃でその躰を両断していた。
「この先には行かせない。貴方達の征くべき海は、骸の眠るあの場所だけなのだから」
 現れる他の百足にも、霊魂と化した船乗りに対しても。
 語気は強くなく、それでも凛然と。
 ユノは言ってみせながら前へ歩む。その先に、船を沈めるための手段があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

重松・八雲
【花守】
まだまだ隠居には戻れそうに無いのう
こうなればとことん老骨に鞭打ち、一花でも二花でも咲かせようぞ!

★共通
移動時からUC使い機動・戦闘力強化
怪力で龍殿の手を取り、高速飛翔で一気に敵船へ
※両者遵守

◆戦
主らも船も悉く沈めてくれよう!
と気合や覚悟や勇気を目一杯込め、いざ!

高速の勢いと怪力の威力乗せた金剛で
先ずは手近な敵へ気絶攻撃

以降も金剛で殴り気絶狙いつつ吹き飛ばし
包囲や死角への回込みを警戒
上記問題無くば、破魔の一太刀にて苦鳴上げる喉を断ちに

守りはオーラ防御で耳や急所を中心に補強
野生の勘と見切りで次手読めるよう敵動作観察
隙や癖を掴めばカウンターを狙う

元は僧の身、怨霊相手は十八番でな!
観念せい!


柳楽・龍之丞
【花守】
そう言いながら、貴殿は生涯現役であろう――等という横槍は野暮か

ともあれ、老いぼれと侮られては剣も泣く
道開くべく尽力を

★共通
移動は八雲殿の手を借り、此方も落ちぬよう怪力で掴まる

着地時は強襲受けぬよう注意
比較的敵影薄く背を取られ難い場所より攻め入る
※両者遵守

■戦
敵に動きを掴まれる前に、同じく高速の勢い活かし一撃
降下と怪力の重みを乗せUC
以降も見切られぬよう残像交えつつ、UCで喉や尾を両断に

護りはオーラ防御で補強
動作観察し見切りや武器受けで痛手を防ぐ
最悪でも“命も道も絶たせぬ”という覚悟と激痛耐性で堪える

元同族であろうとも――人と国に害為す鬼と成り果てたならば、無心で討つのみ
水泡に帰すが良い



 幕府軍の出す船は、遠方にそびえる巨塊に比べれば高さもなく小さな木舟と言っていい。
 故にそこから仰ぐ鉄塞は、まるで海上の大山の如き峻厳なものに見えた。
 単純に考えればあれに挑むなど無謀。
 あの威容を見れば、近寄ることさえ躊躇われるのが尋常の心。
 にも拘わらず、二人の剣豪はまるで心を掻き乱した様子無く。寧ろ迫る戦場を何処か心待ちにすらしてみせるように航海を過ごしていた。
「見ろ、あの一艘がわしらの乗り込む船のようだ」
 鉄甲船をまじまじと見やるのは、重松・八雲(児爺・f14006)。木船の縁に緩く肘をついて、瞳に浮かぶのは好奇心でもあったろうか。
「差詰め、死戦場か。まだまだ隠居には戻れそうに無いのう」
「そう言いながら、貴殿は生涯現役であろう」
 ──等という横槍は野暮か、と。
 船べりに背を預け、小さく声を零すのは柳楽・龍之丞(臥龍・f08299)。
 戯れてみせずとも、隣に立つその剣士が今尚その鉄腕を振るい続けているのは知っている。隠居などと言いながら、この男は数多の異形を斬っては飄々としているのだ。
 尤もそれは、龍之丞とて変わらぬことだ。
「老いぼれと侮られては剣も泣くからな」
 そっと、佩いた刃の柄に手をかけて。
 ──道開くべく尽力を。
 一定程度鉄甲船に近づいたところで、軍の船は停止。それを機に二人は視線を交わし、行動を始めることにした。
 先ずは八雲が衝天(ガッツ)──守護の氣で自身を覆い、その膂力を強化。浮世離れするほどの機動力もその身に宿し、隣の手を掴む。
 龍之丞もその手を掴み返し、互いに怪力でしかと握り合った。
 二人が力を込め合えば、その頑強さは鉄鎖も同じ。瞬間、八雲が空に踊り出ると、龍之丞もそれに引かれて宙へと昇っていく。
 八雲の得た飛翔の能力は、風をも置き去りにするほど高速。僅か一呼吸の内に距離を詰め、気づけば二人は鉄甲船の甲板を見下ろしていた。
 目標は船尾にもほど近い船べりの傍。
 そこが敵影が少ない──とはいえそれも周囲に比してのこと。
 降下点にすら敵がいるのが垣間見えたから──八雲は連珠を握り、降下の勢いと速度を活かす形で一撃、殴り下ろすようにその妖怪の意識を奪っていた。
 龍之丞もまた同時に抜刀。慣性のままに刃を振り下ろし、その一体を両断してみせる。
 船上に降り立った二人は油断せず、すぐに背中を合わせる形で布陣。周囲に警戒の視線を奔らせていた。
 視界に映るのは、無数の妖怪変化だ。
 元は羅刹であったという化生。
 今はただ殺意に飲まれ、歪んだ本能に蝕まれるばかりの、蟲にも似た姿。
 しかし哀れと情は抱かず。龍之丞は迷いを浮かべず刀を構え直す。
 八雲も同じ。斬る道しかなければ、斬るより他にないのだから。
「征くぞ。こうなればとことん老骨に鞭打ち、一花でも二花でも咲かせようぞ!」
「老骨とはな」
 嘯いてくれるものだ、と。
 龍之丞は八雲に対しそう思う。
 連珠を構えた彼の姿は、背に気配を感じるだけでも文字通りの歴戦の士そのものだ。仮に八雲が衰えた翁だというのなら、世の侍の多くは単なる赤子だ。
 甲板に現れた二人に、別の百足の一体が気づいたその瞬間。龍之丞の思いを証明するかのように、八雲は陣風の速度で連珠を振るっていた。
「主らも船も悉く沈めてくれよう!」
 刹那、命中した一撃は力と速度、そして的確な狙いでその一体の意識を奪う。
 そのまま八雲は気合、覚悟、勇気を籠めて。二撃、三撃。近場の百足を殴り、薙いで吹き飛ばしていった。
 龍之丞の眼前へもまた新たな百足が迫りくる。
 だが僅かの惑いもなく、龍之丞は剣閃を滑らせて一刀、掬い上げるように喉を断ち、返す刀で尾を切り裂き連撃。苛烈なる剣撃の応酬で四散させた。
 次は複数体が同時に突撃してくるが、それでも譲りはしない。
 龍之丞は素早く跳ぶと、残像にだけ攻撃を受けさせて自身は横合いへ。着地と共に刃を踊らせ、無防備な百足を刀の錆にしてみせる。
 八雲もその間に、気絶した敵群を斬って捨てていた。
 後続の個体は苦鳴を上げてこちらを蝕もうと目論む──が、遅い。更に踏み込んだ八雲が破魔の一太刀。その喉を断ち抵抗を許さない。
 一瞬後には、二人の至近にいた敵影は一掃されていた。
 ここまで僅か数呼吸。
 多少離れた敵には、未だ二人が降り立ったことすら察知していないものもいる。
 それに比して、二人は尚速度を緩めず。進軍を開始しながら八雲が連珠で体を穿ち、龍之丞の刀がその生命を寸断していった。
 二人が見せるのは、豪放な戦気と静謐の戦意。
 老いて尚鋭い眼光は、異形の群れに対し怖じ気を知らぬというように。
 刻まれた皺は刃紋、痩けた頬は余分な照りが落ちた刃先。年経て一層研がれたように、老齢の剣士の気力は刃そのものだった。
 気づけば甲板も中程。
 先刻に比べ、より四方を囲まれる可能性も高まるだろう。
 それでも二人は互いの死角を補いつつ隙を見せない。
 敵の突撃を避けると後ろに被害が及ぶと思えば──八雲も龍之丞も、同時に気を纏い自身の体を盾にしてみせた。
 無論敵の攻撃は鋭く、体に痛みを運ぶ。
 だが“命も道も絶たせぬ”とその覚悟を持てば耐えきれぬものではないと。龍之丞は即時に剣撃を返して百足を散らせていった。
 八雲もまた、突撃によって生まれた敵の隙を突くように。不利を好機へ転じさせ、至近から百足を斬り捌いていく。
 旗を護る敵の陣にたどり着くのも、程なくのことだった。
 そこに座する敵は無論、数多い。だが仲間の猟兵も既に交戦を始めており、その牙城も崩れ始めている。
 ならばこちらも攻めるだけ。八雲と龍之丞はそこで一度だけ視線を合わす。
「退かず、攻めるぞ!」
「無論だ」
 八雲が踏み込めば、龍之丞も同時に床を蹴った。
 啼くような声を上げながら、百足は躍りかかる。だが微かに体をずらしてよけた八雲は、その首元を珠で打つ。
 まるで鬼火のように揺らめく船の怨霊。その姿を見つけても怯むことはなく。
「元は僧の身、怨霊相手は十八番でな! 観念せい」
 霊魂をすり抜け、そのまま意識を失った百足を切り裂いて、進軍を続けていった。
 敵も逃げることを知らぬのか、ただ獰猛な本能に任せて喰らいついてくる。龍之丞はそれに慈悲を与えはしない。
 元同族であろうとも──人と国に害為す鬼と成り果てたならば、無心で討つのみ。
「水泡に帰すが良い」
 濁りの無い剣技が、化生を斬って霧散させる。見れば遠くからでは窺えなかった旗への道が、確かに拓かれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラビット・ビット
【凸凹】
アドリブ◎
ビットくんはねぇ、村上水軍大好きなんですよ
特別です
だから正面から勝ちに行きます!
【推しを守る伝説の武器】でクロウさんが乗るための船を用意
見た目もかっこよく豪華に行きましょう
船に乗るんだからもっと形から入ってくださいよぉ
斬れるし殴れる巨大な錨with鎖もクロウさんに押し付けて
さぁさぁ全速前進

ビットくんかわいいうさちゃんなんで
戦闘はクロウさんとろくろうさんに任せます
水の属性をセット
操縦をオート戦闘モードで
ろくろうさんGO!
チャンスが来るまで目立たない様にうちわふりふり
煩い音は耳を塞いで
時が来たらろくろうさんの怪力でビットくんを旗まで投げ飛ばして貰います
この旗は図書館に飾るんです!


杜鬼・クロウ
【凸凹】
アドリブ◎

ふぅん?詳しく聞いてる暇はねェが思い入れがあるンだなァ
手ェ足りてねェンだろクソウサギ
俺も付き合ってヤる
旗奪ってこい

用意された船に俄然殺る気が
船首で片足を前に出し敵の船を見据え

確かにロマンは大事だわ
錨で戦うのは初だが、使いこなせねェ俺じゃァないぜ!
可愛い(笑)どこが?

ろくろうと連携
剣は背負った儘
錨で戦闘
武器振り回し感触確かめ不敵の笑み

【トリニティ・エンハンス】使用
攻撃力up
敵の攻撃は錨を回転させ風起こし防御+相殺(武器受け・かばう
敵の足狙いドミノ倒しの様に薙ぎ倒す(2回攻撃・部位破壊
派手に暴れ注意引く(挑発・威厳

ウサギの為に旗強奪の道を作る
敵の船沈む前にウサギの首根っこ掴み脱出



 波音は不思議なリズムを持っている。
 寄せては返す、その間隔は一定ではないけれど、快い拍を刻む音楽にも聞こえた。
 故にこそ巨大な鉄塊が揺らめく海はいつもとは違い──どこか奇怪な旋律を耳朶に感じさせるようだ。
「何とも、でけェ船なこった」
 グリモアベースから軍の木船の一端に転移してきた杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は、そこから鉄甲船を遠巻きに見ていた。
 この世界には不似合いな程頑強な船。
 だからこそ目にも、耳にも。そこに異質なものを感じないでいられない。
 とはいえ、隣に立つラビット・ビット(中の人等いない!・f14052)は少々わくわした面持ちを浮かべている。
「とても立派じゃないですか。凄いなぁ」
「何だ、楽しそうじゃねェか」
 クロウがちらと二彩の瞳を向けると、ラビットは可憐な相貌でこくりと頷いた。
「ビットくんはねぇ、村上水軍大好きなんですよ」
 ふぅん? とクロウは片眉を上げた。
「詳しく聞いてる暇はねェが、思い入れがあるンだなァ」
「ええ!」
 特別です、と上機嫌に応えて。
「だから正面から勝ちに行きますよ!」
 ぐっと自身の手を握るラビット。
 そこに平素以上の気合を感じて、クロウは些か感心の面持ちだ。
 だからだろうか、幾分かの助力ならしてもいいという気分になっている。
「なら、俺も付き合ってヤる。手ェ足りてねェンだろ、クソウサギ」
「おや、いいんですか?」
 ラビットが瞳を輝かすと、クロウはあァと頷いて、切れ長の視線を巨大な鉄塊にやる。
 旗を奪ってこい、と。
「はい! では早速準備をしましょう!」
 嬉しげな様相を見せたラビットは、そそくさと木船の縁へ歩んだ。
 はて何をするつもりか、とクロウが見守っていると──ラビットはその場の空気をきらきらと煌かせ、無から形を作り出していた。
 推しを守る伝説の武器(ラブ・イズ・パワー)。 
 それは想像力が生み出したものを具現させ、世に顕す超常の力。出現したのは、今乗っている木船を軽く凌駕するほどの大きさを持つ船だ。
「へェ、コイツは……」
「どうですか、クロウさんが乗るための船ですよ!」
 えっへんと胸を張るラビット。
 思わずクロウが仰いでしまうのもさもあろう。それは黒を基調に赤と青の美しい色合いを持った一艘であった。
 流線型が美しく、複数階建ての船室を完備。無論強度も十分だ。
「豪華でしょう、かなりかっこよく仕上がりましたよ」
「見事なモンだ」
 自分の船と言われれば、クロウも俄然殺る気が湧いてくる。
 すたりと跳んで乗り込むと、バランスも安定していて少々の波では揺らがなかった。
 ラビットはそんなクロウを船首に招く。
「ほら、船に乗るんだからもっと形から入ってくださいよぉ。ロマンですよロマン」
「まァ、確かにロマンは大事だわ」
 船首で片足を前に出し敵の船を見据え、クロウもそれには同意だった。
 ラビットはそこへ更に巨大な錨を持たせた。長い鎖が特徴的で、斬れるし殴れる優れものの武器だ。
 クロウはそれを軽く振りつつ、悪くねェと呟く。
「錨で戦うのは初だが、使いこなせねェ俺じゃァねェからな」
「さぁさぁ、全速前進しますよ!」
 そうして僅かな慣性が後ろ向きの力を体に伝えてきた後──船は高速で鉄甲船へと進水し始めた。
 速度はぐんぐん上がり、程なく至近へ。
 そのまま速度を落とさず、船は先端を鉄甲船に軽くぶつける形で接触。妖怪の群れが直ぐ側に見える位置に着いた。
「さァて、戦いの始まりだな」
 クロウがそれを見て錨を手にとっていると、ラビットは後方で待機だ。
 船に水の属性をセット。操縦はオート戦闘モードで……自分の代わりに継ぎ接ぎのガジェット人形を前に出す。
「ビットくん、かわいいうさちゃんなんで、戦闘はクロウさんとろくろうさんに任せますね」
「可愛い──どこが?」
 半笑いでクロウは返すが、そりゃあ全体的にですとラビットは譲らぬ構え。ともかく体躯を誇るその人形をクロウに同伴させ、自身は機を待つこととした。
「いいさ。やるだけやってやる」
 クロウは剣は背負ったまま前に向き直る。 
 するとこちらの船に侵入しようとしてか妖怪──鬼百足が船首に近づきつつあった。ハッ、とひとつ息を零したクロウは錨を握り直して。
「させるかよ」
 瞬間、一歩前に踏み出て大ぶりに錨を振り回す。
 巨大な刃であり、同時に質量の塊であるそれは、まるで嵐のごとき力を生み出して。三体ほどの百足を切り裂きながら消滅させていた。
 クロウはその錨の感触を今一度確かめ──不敵な笑み。
「コイツは思ったよりいけそうだ」
 船は一度鉄甲船から離れ、位置をずらした別の船縁へ。そのまま同じことを数度繰り返し、鉄甲船の外郭側の敵数が多少減ったところで──。
「乗り込むぜ」
 クロウは船首を蹴って鉄甲船の甲板へ。
「ではろくろうさんも、GO!」
 と、後ろから声を受けてろくろうさんもクロウに続く。こちら側の船への道を守りながら、同時にクロウとも連携する役割だ。
 甲板には無論、数え切れぬ程の百足がいる。
 怨嗟を纏い、歪んだ生命力を殺意に注ぐ異形の群れ。
 クロウは僅かに目を細め、疾駆。
「堕ちちまったヤツに、容赦はできねェぜ?」
 声と共に錨を横薙ぎに、目の前にいる敵を切り裂き撃破していった。
 程なくこちらを狙い複数の百足が集中してくるが、それも予測済み。クロウは魔力を纏わせた錨を高速で回転させ、風を巻き起こして攻撃を相殺。そのまま踏み込んで勢いのままに横一閃を見舞い、敵をドミノ倒しのように薙ぎ倒していく。
 背を狙ってくる敵がいれば、そこにはろくろうさん。その体で攻撃をしかと受け止めてみせると──膂力を活かして敵を持ち上げ、捩じ切ってみせた。
「頼りになるじゃねェか」
 クロウが振り返って労っていると、鉄甲船から離れていたこちらの船で、ラビットがうちわをふりふり、応援をしているのが見える。
 それに軽く眉を動かして応えると……クロウは前に向き直ったところでそれを発見した。
「あれが例の旗か」
 高所ではないにしろ、確かに掲げられているといっていい位置に、村上水軍旗はあった。
 帆柱の前後に一枚ずつ。一枚でも引きずり下ろせれば、船はおそらく力を保てず沈むことだろう。
「そうとなったら、あとは道を作るだけだな」
 クロウは躊躇わずそこへ前進。敵が道を塞ごうとしてくれば寧ろ幸いとばかり、派手に錨を振り回して暴れ回った。
「船沈められたくねェなら、かかってこいよ。纏めて相手してやるぜ!」
 百足は脚を蠢かせ、踊りかかってくる。クロウはそれを薙ぎ、潰し、切り裂き、退けてみせていた。
 こうすることで、帆柱の付近の敵数は減る。
 そしてこの間に、ろくろうさんは横付けしていたラビットの船へ疾走。素早く乗り込むと──ラビットの体を掴み上げていた。
「さぁろくろうさん、今です!」
 声に従って、ろくろうさんは振りかぶり、その怪力を活かしてラビットの体を投擲。猛烈な速度で帆柱まで飛ばしていた。
 少しばかり空中でくるくる回転しながらも、しっかり体勢を保って。
「捕まえました──この旗は図書館に飾るんです!」
 ラビットはクロウの頭上を通り抜けると──そのまま水軍旗をむんずと握っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

法月・志蓮
【むにー】
シノギはお頭、フェリスはフェリと呼ぶ

折角海賊やってんだ。こういう砲撃戦、やってみたかったんだよな

お頭が召喚し、アリスティアーが強化した【海賊船シャニムニー】に乗り込み、その砲台を使うぞ
敵船は無敵ならどれだけ撃ち込んでも沈まないってことだよな。なら撃ちすぎて沈ませる心配はいらないってことだ
UC【流れ断つ点撃】で大砲弾による『範囲攻撃』を遠慮なく甲板に撃ち込み、百足どもを片っ端から『吹き飛ばし』てやろう
位置情報や弾道予測はフェリがサポートしてくれる。なら『スナイパー』の俺に出来ないことはない
例えこっちの船に敵が乗り込んできても、味方を信頼して撃ち続けてやるよ


アリスティアー・ツーハンドソード
【むにー】
船と戦う機会なんて滅多にないからね、派手に行くよ!
ユーベルコードを使用してシノギの召喚した船と融合。志蓮が使いやすいように砲台を配置し、衝角を巨大な刃に変えて突進攻撃の威力をあげる
大百足に対しては【戦乙女モリガン】に【ハートスイーツ・パティシエイション】で作り出したお菓子を相手の口に【投擲】させて苦鳴を封じ、【アリスランス・クリエイション】の槍を射出して迎撃
戦闘能力を持たないフェリスと狙撃に集中する必要がある志蓮、そして旗を取るわんこをカバーするようにしよう


シノギ・リンダリンダリンダ
【むにー】
村上水軍…古の海賊対最新の海賊勝負と行きましょう!

【幽玄な溟海の蝗害】で海賊船シャニムニーを召喚
ガレオン船に皆を乗せて出航です
召喚口上後、【キャプテンコード:ドラコ】で皆を鼓舞します

運転技能はまだ拙いですががんばります
船と融合し、船首からその剣先を出したアリスティアーさんを相手の船に刺すように突撃!
攻撃ではありません。相手の船とこちらの船との間に橋を作るのが目的です
心強いクルーと生まれ育ったシャニムニー
疑問を感じる隙間がないほどに無敵です!

その後は手持ちのラッパ銃で主に戦場のかく乱
挑発、フェイント、だまし討ち
様々な手で場をかく乱させます
軍旗は仲間がなんとかしてくれます
そう信じています


野良・わんこ
【むにー】
「わんこ一番乗り!!」
激突後、船首から真っ先に敵の船へと乗り移る。
「船は燃えてナンボでしょ!」
飛び移る際に「吹き飛ばし」「衝撃波」「属性攻撃」でダイナマイトをばらまいて撹乱する。
乗り込んだら百足をあしらいつつ船の各所にダイナマイトを放り込んで延焼させます。
狙いは煙でこちらの姿を見えなくすることです
その後はマストを登りつつサイコキネシスで旗を引き寄せます
旗のあるマストである必要はありません
間違えたフリをしつつ別のマストからサイコキネシスで旗を狙いますよ
サイコキネシスにモーションはいらないのでマストを登るふりをしつつ、追いかけてきた敵の相手をして時間稼ぎです。
旗を手に入れたら自船へ退避。


法月・フェリス
【むにー】
志蓮だけ呼び捨て、シノギはキャプテン呼び

乗り込みの際は上空から旗あるいは敵の集団を見つけ、仲間たちにどこへ向かえば良いかを教えるよ。一気に攻め込んで、敵の意表をついてやろう。

優れた狙撃手には優れた観測手がいる。観測と演算はぼくに任せて。Virtual net goggleに見えないものはない。
仮に船から目視できない位置に鬼百足がいてもぼくには翼がある。上空からその位置を確認して志蓮に狙いを伝えよう。味方を巻き込まない砲撃をするためにも、UCでしっかり乗り込んだ仲間たちと連絡を取り合わないとね。
どうすれば戦いやすいか、状況はどうなっているか、戦わないぼくだからこそ考えられることがある。


トウキ・ウィンター
【むにー】で参加
なんかこの船が海賊船っぽいことしてるの、初めてみた気がするわアタシ。

衝突前は特にする事がないのでドラかゴングでも鳴らすか法螺貝吹いてるわ。なんか戦いっぽくない?そうでもない?

衝突後、旗を取るわんこを護り、援護する様に動く

アンタの援護は任せなさい!指一本足りとも触れさせはしないわ。
殴って看板を割ることで足止めしたり、アリスティアーが作り出した槍を持って行って、相手を振り回したり槍で薙ぎ払ったり、恫喝して精神攻撃をして恐怖を与えたり、主に敵の足止め・撹乱役に徹する
攻撃は覚悟と気合いと激痛耐性で耐える

ーーー他は頼んだわよ、アンタ達!



 波が岩肌にぶつかり、白い飛沫を上げて砕けていく。
 雄大な海原は蒼空の下で潮風を吹かせ、快い波音を響かせては静けさを交え、炎天に清涼さを感じさせていた。
 尤も、今ではその景色は無数の鉄塊によって染まっている。
 遠目に望む鉄甲の船団──その無骨が灰色が海を覆い、水平線をも隠していた。
「なんか、ああいうのを見ると悪い海賊って感じ、するよな」
 海を直ぐ側に望む岩礁地帯。
 法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)は顎に手を当て、その敵軍を見据えていた。
 ひらりと隣に降り立ったシノギ・リンダリンダリンダ(ロイヤルドレッドノート船長・f03214)は──同じく遠方を眺めつつも、虹色抱く瞳をちらりと向ける。
「海賊にも良悪というものがあるのですね」
「勿論ですっ!」
 とん、とんと岩を昇って来た野良・わんこ(灼滅者・f01856)はこくこく頷くように言ってみせる。
「わんこ達はいつも楽しく雑談とかしてますからねっ! いい海賊ですっ!」
「寧ろそれは海賊として正しいのかな……?」
 その側の岩礁に突き立っている、美しくも鋭利な両手剣──アリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)は僅かにだけ体をゆらゆらさせつつ呟いていた。
 優美な翼をはためかせ、空を降りてくる法月・フェリス(ムーンドロップ・スポッチャー・f02380)は、そんな皆に目を向けつつ柔らかい声音を聴かせる。
「海賊にも、いろいろあるから。ぼくたちはオブリビオンみたいなことはしない海賊、ってだけでしょ?」
「そうね。少なくとも悪戯な破壊活動はしてないしね」
 トウキ・ウィンター(桃鬼・f01434)は指先に軽く髪をくるくるさせ、仄かに小首をかしげる。ならば『しゃにむにー』とあの軍艦は骨の髄まで別物だと。
 無論、それでも真っ向からぶつかれば、こちらとて負けるつもりはない。
 故にこそ、大海原に漕ぎ出せるここに降り立ったのだ。
 志蓮は拳をぐっと握り、シノギに向き直る。
「お頭、早速始めよう」
「ええ」
 こくりと頷くシノギは、そっと瞳を閉じた。
 そして眼前の海と遥か彼方にあるその場所を、創造の力を以て接続。同期させて空間をぶれさせていく。
 すると水面が揺蕩い、波打って、何かの風にさらされたかのように大きく渦巻いた。
 次の瞬間、空から大きな影がかかると──そこに巨大なシルエットが召喚され始める。
 ──さぁ海賊の時間です!
 それこそ、我らが牙城。
 ──36の海を駆けましょう、略奪の限りを尽くしましょう!
 幽玄な溟海の蝗害(ウェイクアップ・シャニ・ムニー)に寄ってシノギが喚び出した、超弩級電脳蒸気複合動力式死滅回遊海賊幽霊船『シャニムニー』。
 ──海賊団しゃにむにー、出航です!
 海原に着水し、大波に一つ、大きな体を揺らがせたガレオン船。
 冷たく心地良い水しぶきを志蓮達の頬に数滴浴びせながら、その優美な船体をこの世界に顕にしていた。
 志蓮は快活に仰ぐ。
「海があるなら、この船がなきゃな」
「早速乗り込みましょうっ!」
 わんこはたたたっと駆けて乗船。志蓮もフェリスの手を握り船に降り立ち、トウキも、んしょっ、とジャンプして乗り込んでいた。
 シノギは運転を担い、皆を運ぶ役割。
 そしてアリスティアーは──その体を薄めていって一時消失。
 涙刃連結技(ティアーエッジ・コネクション)。強化と融合を実現する力で船と融合。甲板の台から自由の利く角度で砲台を伸ばしていた。
『これで上手く戦えるね』
「ああ、理想的だ」
 操作を確認しつつ志蓮が頷く。
 皆も甲板の前面に位置して、航海の準備は万全だ。
 シノギは舵を切り、その船首を一路鉄甲船へ。
「さぁ、お前達。海賊の時間ですよ」
 鼓舞する声音が海賊達の心を浮き立たせ、そして強めていく。
 海を奪おうとする輩がいるのなら。
 海賊として黙っていられようか。
「村上水軍……古の海賊対最新の海賊勝負と行きましょう!」
 シノギの声に応と応えるシャニムニーの構成員。
 波を越え、風を捕らえ、蒼い海に漕ぎ出して。
 海賊船は真っ直ぐに、異形の船団へと突き進んでいった。

 速度を上げて、海賊船が波間を切ってゆく。
「舵は問題なさそうか?」
「ええ、今の所良好です。操作の技能は拙いですが──」
 がんばります、と。
 シャニムニーの船上。シノギは顔をのぞかせてきた志蓮に答えていた。
 船はこの海にもよく馴染むのか、スムーズに海上を奔っている。標的の鉄甲船はぐんぐんと近づき、もう程なく近距離に迫ろうというところだ。
 視界を占めてくる鉄の船は巨大にして頑強。一見して質量の塊という印象で、外部から傷がつかぬというのも頷ける。
 無数の敵を乗せているからでもあろう、漂わす気配は不穏で、重い圧迫感さえあった。
 ただ、船上の誰もがそれに怖じけず、退くつもりはない。
 どころか緊張を浮かべているものさえ船員にはいなかった。
「なんかこの船が海賊船っぽいことしてるの、初めてみた気がするわアタシ」
 トウキは呟きながら、手持ち無沙汰に法螺貝など鳴らしていた。理由は戦いっぽい感じがするから。
「微妙かしら」
「いや、いいんじゃないか?」
 と、志蓮が答えたので、暫しその音色と共に進軍。全速前進で、一気に鉄甲船の間近にまで迫っていく。
 鉄甲船はそれを確認してか、わずかに船首の角度を変えてそれに対応しようとした。
 けれど敏捷性ならこちらのほうが遥かに上。
「よし、まずは一発、阻害してやろう」 
 志蓮はアリスティアーによって設えられた砲台に着き、着火。強烈な振動音と共に砲弾を撃ち出して、敵船体の側面に撃ち当てた。
 無論、その衝撃で鉄甲に傷はつかない。
 けれど生まれた慣性によって鉄甲船の挙動が僅かに淀むのだ。
 その隙に、シャニムニーは真っ直ぐ鉄甲船の腹へ。
 敵の船員も、その行動は予測しきらなかったことだろう。
 シノギはそれきり船体の角度を変えず──速度を落とさずゼロ距離に入る。
 桿を動かす心に迷いはない。
 心強いクルーと生まれ育ったシャニムニー。
 ──疑問を感じる隙間がないほどに無敵です!
「行きますよ」
『うん、船と戦う機会なんて滅多にないからね、派手に行くよ!』
 応えるのはアリスティアー。衝角を鋭利にして剣先を突き出し、真っ直ぐの方向に伸ばしていた。
 シノギはそのまま、突撃。剛速でアリスティアーを鉄甲船に突き刺した。
 低い轟音と、巨大な震動。シャニムニーの船上を前方に襲う、強烈な慣性力が生まれてくる。
 だが乗っている面々は全員がそれを予測済み。
 既に行動を始め、素早く鉄甲船へ向かっていた。
 元より突撃は攻撃ではなく、橋を作るのが目的。物理的に繋がった船首から前進するように──まずはわんこが鉄甲船へと飛び込んでいた。

 鉄甲船上。
 妖怪変化──鬼百足が無数に闊歩するそこは、俄な騒乱が生まれようとしていた。
 そこに激突してきた海賊船から、猟兵が舞い込んできたのだから。
「わんこ一番乗り!!」
 甲板に飛び出たのはわんこ。
 とにかく船上が敵に満ちていることだけを確認すると、無数のダイナマイトを携えていた。
「船は燃えてナンボでしょ!」
 それから左方、前方、右方と目につく各所にそれをばら撒き発火。強烈な爆炎を上げさせながら、まずは周囲の敵を燃やし撹乱していく。
 その隙に甲板に降り立って進み始めわんこは、道中もダイナマイトを目につく場所へ放り込んでいく。
 爆炎、粉塵。
 衝撃音と共に甲板が破砕され、鬼百足も同時に散っていく。
 無論、それをかいくぐりわんこへと攻め込んでくる敵も皆無ではなかったが──。
「アンタの援護は任せなさい!」
 指一本足りとも触れさせはしないわ、と。
 後方より駆け、敵の横合いまで疾駆するのはトウキ。
 気合十分、拳に力を込めて床へ打突を繰り出し、板を砕くように甲板を割れば──鬼百足はバランスを崩し藻掻く。
 その一瞬の隙があれば、通り抜けるには十分。
 折しもわんこの狙い通り、爆破の煙によって敵からの視界も悪くなっている。素早く駆けて敵から離れることも難しくはなかった。
 それでも進むほどに敵はいるし、煙による視界の悪さはこちらにとっても変わらない。
 けれど、それを導く翼が空に、ふわり。
「二人共。まずは右側へ。そっちの方が安全だから」
 耳朶を打つのは優しくも芯のある声音。
 上方へ飛んだフェリスがつぶさに船上を見渡してその道筋をしかと示していた。
 Virtual net goggle──そのゴーグルが視界をクリアにし、短期的な敵の動線予測を兼ね、演算と分析を手助けしてくれる。
 同時に俯瞰から見下ろせば、敵の集団も見えやすい。
 それを避けるように、或いはトウキとわんこが強襲できるように。敵の意表をついて且つ最短で前進できるよう、そのルートを引いていく。
 どの方向にも百足の群が立ちはだかっていると見れば──。
『志蓮、中心十五度を除いて扇形に砲撃を』
 すぅと息を吸って、遠方よりの打開の声(ウェーブ・オブ・コマンド)。
 声音に伝達属性を伝え、後方の海賊船に電波として声を飛ばすことで素早く連絡を図っていた。
「──了解!」
 同時、シャニムニーの船上ではその声を受け取った志蓮が砲口を向けていた。
 装填から発火、発射まで迅速に、流れ断つ点撃(インタラプト・ポイント)。連続で砲弾を撃ち込み、煙の向こうに居る百足を散り散りに吹き飛ばしていく。
 元より敵船が無敵だというなら、撃ちすぎて沈ませる心配はいらないということ。ならば遠慮もいらないわけで、好都合でもあった。
「フェリがサポートしてくれるんなら不安もないしな──」
『次は四十五度で中心を。雪崩で敵を斃すよ』
「おっと、すぐにやるぜ」
 続く連絡にも迅速に対応して。船室となっている部分を破壊することで、わんこ達を阻む百足を瓦礫で埋めてしまう。
「折角海賊やってんだ。こういう砲撃戦、やってみたかったんだよな。……それにしても、流石だな、フェリ」
『優れた狙撃手には優れた観測手がいるものでしょ?』
 だから観測と演算はぼくに任せて、と。
 フェリスが返すのは信頼の言葉。皆もね、というと海賊達はそれにも応えて進軍を続けていく。
 志蓮は砲撃を繰り返しながら声を返す。
「先行組の背中側は平気か?」
『問題ないよ。キャプテンがいる』
 と、フェリスが視線を下ろす先。
 海賊船の船首前方、甲板からこちらのメンバーを狙おうとする敵にはシノギが対応していた。
 小型のラッパ銃を機敏に向けて、弾丸をばら撒いて敵を貫いては撹乱していく。
 勿論眼前に迫る敵は拳で殴り倒し、鳴き声を上げる個体には死霊をけしかけて黙らせながら。とにかく敵に仲間の邪魔をさせぬよう立ち回っていた。
「ええ、こちらは心配ありませんので。砲撃は前方を」
 視界の利かぬ中で、絶え間なく言葉を交わし状況を把握する。
 それを聞くと志蓮はまた了解、と砲身を向けた。
「前方に敵がとにかく沢山いる場所があるみたいだ。旗を守ってる所だろう」
『じゃあ、そこを突き崩していこうか』
 応えるアリスティアーは、そのままでは体の自由は利かぬが──代わりにゴーレム兵の戦乙女モリガンを船上へ解き放っていく。
 素早く煙の間を駆け抜けるモリガンは、アリスティアーの魔法──ハートスイーツ・パティシエイションによるお菓子を携えていた。
 カラフルで甘い芳香を持つそれは、敵の口に投擲されることで美味を感じさせ、自然と咀嚼を催させる。
 その一瞬、敵が苦鳴を放つことを封じられれば、そのタイミングで船のアリスティアーはアリスランス・クリエイションを行使。船上の宙に耀く槍の群を創り出し、雨のように注がせた。
 眩い衝撃の奔流は違わず百足を貫いて絶命させてゆく。
 同時、その槍を事前に所持していたトウキも前線で百足を切り裂き、道を切り開いていた。
「あれが海軍旗ってやつね」
 と、視線を向けたのは帆柱にかかっている旗を見つけたからだ。上方のフェリスも皆に声を伝える。
『わんこ君が突っ切って。後はそれを皆で護ろう』
「わかりましたっ!」
 最前のわんこは真っ直ぐに駆けてマストを目指す。その間も百足達が追いすがろうとしてくるが──すかさずトウキが切り払って退けた。
「──他は頼んだわよ、アンタ達!」
 トウキが声を上げれば、多方向から迫ってくる敵に志蓮、アリスティアー、シノギが対応し敵を押し留めていく。
 その隙にわんこは追っ手から逃れて柱に登っていた。
 それは旗のあるマストとは別の柱、だがサイキッカーのわんこにとってはそれは些細な違いでしか無い。
 寧ろ、敵に針路を外れたと思わせながら──同時にサイコキネシスで旗の回収を目論める得策でもあった。
 それでも追ってくる敵はいる。だがその相手をしながらでも念を働かせるのは造作ない。
 次の瞬間には、ゆらゆらと動いた海軍旗が宙を翔び──しかとわんこの手中に収まっていた。
「取りましたー!」

●海へ
 帆柱の前後に掲げられた旗は同時に落とされた。
 一枚を失っただけでも船は沈む。当然、それを境に水軍の怨霊達は消え去って、鉄甲船が大きく鳴動し始めていた。
 旗のひとつを持ったラビットは嬉しげにそれをふりふりしていた。
「やりましたよ、クロウさん!」
「あァ。判ったから逃げるぞ。このままじゃ沈ンじまうからな」
 クロウは言うと、ラビットの首根っこを掴み跳躍。素早く進路を引き返し、ろくろうさんの待つ船へと戻っていく。
 その頃には、轟音と共に鉄甲船が崩れ始めていた。 
 船体が、自身の破損をようやく思い出したかのように。亀裂が深まり、地鳴りの如き揺れが襲い、大きく傾き始めていく。
「終わったか」
 その中にあっても、アルトリウスはただ静謐の表情を崩さず。原理の力を以て転移。一瞬の内に船上から姿を消した。
 砕けゆく床。ひび割れる鉄甲。
 沈むまで猶予はないだろう。
 ただ、そうでなくとも既に船上に鬼百足の姿は無かった。最後まで猟兵達が奮闘を続けたことにより、その全てを撃破していたのだ。
「残滓もなく、か」
 氷鷺はただの瓦礫となりつつある鉄甲船を静かに見つめ──そうして海に舞い戻っていく。
 八雲と龍之丞も、潜入時と同じく空に翔び脱出していた。
「何とか生き長らえたようだのう!」
「ああ」
 元より此処で朽ちるつもりでもあるまい、と龍之丞は呟きつつ、手を握り海を渡っていく。
 鉄甲船は波間に沈みゆく。
「船だけでも残りゃ、とは思ったが。ま、化け物連中が全滅しただけでもいいか」
 カイムは海上に浮かぶ木片を渡って帰路に向かいつつ、そんな声を零していた。
 その内に残っていた瓦礫も、何もかもが蒼海に浚われていく。
(全てが還ってゆく──)
 きっとそれが正しい輪廻。
 だからユノは短い時間、それを見届けると──後は空を翔んで、その場を去っていった。

 シャニムニーの面々も無事に戻っていた。
 既に海の上を滑り出している海賊船上で──わんこは旗を掲げている。
「この旗、どうしましょうか。船に飾りますか?」
「一応、別の海賊船のものだからなぁ……まあ、戦果として置いておいてもいいかも知れないけどな」
 志蓮が一息ついて船べりに寄りかかって答えた。
 その隣に歩んできたフェリスは、皆を見回す。
「そのことはまた考えるとしても。今はとりあえず、無事に済んだことを喜ぼう」
「そうだね。皆、怪我がなくて良かった」
 応えるのはアリスティアー。今は元の姿に戻り、木板の間に自身を固定していた。
 トウキも頷く。
「海賊らしいところを見れたいい機会だったわ」
 中々出来ない経験だったわよ、と。
 ほんのり笑んで見せると、シノギもそれに頷き皆へ視線を巡らせた。
「全員のお力です。村上水軍とシャニムニーの勝負、こちらの勝ちで飾ることが出来ましたね」
 勝利を掴み取れたこと。
 そしてこうして皆が健常でいること。それに確かな成果を感じるように。
「お疲れ様でした」
 シノギはそう言って、ぺこりと皆に一つお辞儀をしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月17日


挿絵イラスト