エンパイアウォー⑦~借りられてきたにゃんこ
●にゃんこの手も借りたいそうだにゃ
白に染まる関が原に、ぴょこぴょこと三毛柄の尾が揺れる。
『にゃんもいくのにゃ?』
『にゃん』
『にゃんたちは上杉軍じゃないのにゃ』
『そうにゃ、にゃんたちは信長さまの部下にゃ』
にゃんにゃん、にゃあにゃあ。
『信長さまのご命令だから仕方ないのにゃ』
『人手がたくさん要るから、にゃんたちの手も借りたいそうにゃ』
仕方ないのにゃー。口々にそう零し、異国の装いのにゃんこたちは武器を手に軍神車懸かりの陣の一角を担っていた。
●猫の語り
第六天魔王『織田信長』の居城、魔空安土城へ向かう幕府軍は、最大の難所である関ヶ原に集結した。ここからは関ヶ原で幕府軍を待ち受ける信長軍を突破し、さらに山陽道、山陰道、南海道の3手に別れて進軍することになる。
関ヶ原で待ち受ける軍勢は、魔軍将・軍神『上杉謙信』。その上杉謙信率いる上杉軍精鋭部隊が『軍神車懸かりの陣』を用いて、関ヶ原で幕府軍を蹂躙しようとしている。
軍神車懸かりの陣――上杉謙信を中心に、オブリビオンが円陣を組んで敵陣に突入。まるで全軍が風車の如く回転しながら、最前線の兵士を目まぐるしく交代させる……という、上杉謙信のずば抜けた統率力が可能にした「超防御型攻撃陣形」である。
これを用いることにより上杉軍は回復時間と防御力アップのバフを与える時間を得、上杉謙信自身も復活時間を稼ぐことを可能とした。
「上杉謙信を倒すには、上杉軍を倒さないといけないってことさ」
この陣を打破しなければ、いつまで経っても上杉謙信は復活し続けるだろう。
そして、上杉謙信の復活の連鎖を断つ為にも関が原に赴いて上杉軍と戦ってきて欲しい。――そう、グィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)が尾を揺らして告げた。
「今回、君たちに担ってもらいたい相手はね……」
ぺらり。手元の資料を捲ってから一度言葉を切る。
一瞬、言いにくそうな顔をして。
「猫、なんだ」
目を逸らして、耳を伏せる。
相手をしてもらいたいのは、猫型オブリビオン『異国のカンフーにゃんこ』。君たちの目の前にいるグィーと変わらぬ大きさで、三毛猫。そして大陸風の衣装を身に纏ったカンフー使いのにゃんこだと言う。
普段集団で出てくる彼らとは違い、『防御力アップ&自動回復(特大)』の効果を得た、最高のコンディションで襲いかかってくる。防御力が高く、例え攻撃が通ったとしても並大抵のダメージではあっという間に回復してしまうだろう。
そのため、対策が必要だとグィーは短い指をひとつ立てる。
「例えば……そうだね。強化された防御を貫いて且つ一撃で倒せるような物凄く強力な攻撃とか、回復が追いつかないくらいの連携攻撃を仕掛けるとか……撃破しようはあるよ」
君たちなら敵の策を崩せるって、信じているよ。
郵便帽子を被り直したケットシーが微笑む。
「敵は智将たる軍神の配下。君たちも、知恵と勇気を持って挑んで欲しい」
グィーの掌の上に手紙が踊る。封が開いてパッと飛び出た便箋に、何事か文字を書き込む仕草をすれば道は開かれる。
行き先はサムライエンパイア、関ヶ原。
剣戟響く、戰いの地。
壱花
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
という訳で戦争シナリオをお送りします、壱花です。
●特殊ルール
軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
●ご注意
集団戦ですが、通常の集団戦のようにバッタバッタと薙ぎ払うことは不可能です。一体一体がとても強いので、まずは一体。確実に撃破できるようなプレイングを掛けてください。一撃で撃破出来なかった場合、回復する前に連携攻撃等で撃破出来ないと元の木阿弥となることでしょう。
●その他
OP公開と同時にプレイングは受け付けております。
達成値に達した時点で締め切りとさせていただきます。
プレイングの全採用はお約束できませんのでご了承ください。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『異国のカンフーにゃんこ』
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POW : にゃんこ流一本釣りにゃ
レベル×1tまでの対象の【衣服(棒の先に引っ掛けることで)】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : これがにゃんの超速戦闘術にゃ
自身の【装備する鈴】が輝く間、【鈴の音が一切聞こえない無駄のない体術で】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : にゃんにとってはこの世の万物が武器となるのにゃ
自身からレベルm半径内の無機物を【使い捨ての自身の装備武器】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ひろしお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
白き関が原に三毛柄の尾が揺れる。
次いでぴょこんと飛び出る三角耳。
大きな瞳を爛々と輝かせ、前方に現れた猟兵たちを油断なく睨み据えるは『異国のカンフーにゃんこ』たち。
『来たにゃ』
『敵にゃ』
『にゃんたちが相手をするにゃ、猟兵!』
にゃんにゃんにゃにゃんと躍り出て、棍を構えるカンフーにゃんこたち。
阿瀬川・泰史
なるほど、これがかの軍神・上杉謙信の車懸かりの陣。
いやぁ自分で予知するのと実際に目の当たりにするのとでは大きく違いますねぇ。
相手方の可愛らしさに誘惑されないようにしませんと。えぇ。
一本釣りをされないように「残像」を残すような動きで相手を翻弄
最後は「2回攻撃」で飛び上がる前に牽制の一撃を加え、ぐっと飛び上がってから本命の山卸しで攻撃
斬馬刀『黒櫂』の重さも利用して「鎧無視攻撃」、その防御を打ち破るとしましょう
「猫がぐるぐる回る様子は可愛らしいものですが、いたずらな子にはお仕置きしないといけないですよねぇ?」
連携・アドリブ歓迎
ヴォルフガング・ディーツェ
♢♡
この一角だけ、やたらとほのぼのした空間に見えるのは気のせい…じゃないな…
罪悪感はないけどや、やり辛いな、お魚あげるから引いてくれない?無理?あ、そう…
ならば取るべき道は唯一つ、か
【抗魔の喪跡】を展開
1度は自分に向けた回避し易い雷を落として避け、本番は残り8回のルーン
護符より呼び起こすは戦士を意味するティール、車輪を意味するラド
勇猛なる戦士は戦車を駆り、君達を引き潰す…イメージだった筈なのに何かデフォルメされた自転車に乗ったわんこになった!?
ええと…引き倒…せる気がしないから八回体当たりして防御を突き破るんだ、頑張れわんこ!涙目になってるけど!
自分は相手の棒や体術に捕まらないよう留意するよ
●斬馬刀とわんこ戦車の陣
『誰がいくにゃ?』
『まずはにゃんがいくにゃ!』
『にゃ!』
カンフーにゃんこの一体が、ずいっと前に出てくる。更に防御に徹するつもりなのか斜めに棍を構え、片手をくいくいと動かしてかかってこいと告げている。
(この一角だけ、やたらとほのぼのした空間に見えるのは気のせい……じゃないな……)
そんなカンフーにゃんこたちに対峙しているヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は毒気が抜かれたような顔をして。
「お魚あげるから引いてくれない?」
『いらないにゃー』
「ちぇー」
正直、お魚は欲しい。けれど信長さまはとても怖いのだ。
罪悪感はないけれどやり辛い。けれど懐柔できないならば、倒すしかない。
「――一手は地に、八手は二十四の軌跡に祝福されし勝利が為に」
ヴォルフガングは指先を輝かせ、ユーベルコード《抗魔の喪跡》を展開する。
一手は地に――詠唱通り、即座に雷が地を穿つべく落ちてくる。それはヴォルフガングの真上。
『失敗したのにゃ?』
そそっかしいにゃと目を見開くカンフーにゃんこ。
けれどそれも、全ては彼の計算の内。回避し易い雷をわざと落として回避し、それを対価としてヴォルフガングは護符より戦士を喚び起こさんとす。
戦士を意味するティール、車輪を意味するラド。
勇猛なる戦士が戦車を駆り、カンフーにゃんこたちを轢き潰す――イメージだったのだが、ふたつのルーンが輝いて、出てきたのは……。
『わんこが自転車に乗ってるのにゃー!』
「なんで!?」
カンフーにゃんこたちも驚いたが、ヴォルフガングもこれには吃驚。
その隙を見逃さずと、カンフーにゃんこの目がきらりと光る。
ちりんと鈴の音なる事もなく、無駄のない体術で息を飲む間もなく迫り、棍の突きを素早く――ひとつ、ふたつ、……ななつ、やっつ。
「……っく」
避けきれず、連打を食らうヴォルフガング。けれど、そのひとつひとつはそこまで重いものではない。
八手を使ったならば、最後の一撃は仲間へと向けられる。――そう、思った。
けれど。
『もひとつおまけにゃ!』
カンフーにゃんこが寿命を惜しむことなど、ない。少し溜めてから真っ直ぐに突き出された棍がヴォルフガングに迫り――
――カンッ!!!!
横合いから突如現れた黒鉄に弾かれた。
『なにやつにゃ!』
棍を遮った巨大な大刀――斬馬刀『黒櫂』の先、そこに居たのは着流し姿の小柄な青年。
「いいところを邪魔してしまって、すみませんねぇ」
身の丈程の斬馬刀を両手で持ち上げて肩に担ぎ、阿瀬川・泰史(酒と杯さえあればよし・f02245)は空いた片手で片頬をかき、柔和に顔をほころばせた。
『邪魔するにゃ! 痛い目見るにゃよ――《にゃんこ流一本釣りにゃ》!』
にゃ! と掛け声とともに棍を振るう。
しかし、巨大な斬馬刀を担いでいるとは思えぬ早さで泰史は避けた。
『にゃにゃ!?』
アーモンド型の目を見開くが、目が捉えるそれは、残像。
突きを繰り出すも、当たるのは矢張り残像。
残像を伴い、カンフーにゃんこへと迫る泰史。
「猫がぐるぐる回る様子は可愛らしいものですが、いたずらな子にはお仕置きしないといけないですよねぇ?」
『にゃん?』
軍神車懸かりの陣とは、謙信を中心として部隊単位で風車のように回転していく布陣だ。そのひとつの部隊に過ぎないカンフーにゃんこたちがその場でぐるぐる回っている訳ではないため、不思議そうに耳をぴぴぴっと揺らして防御に徹するべく棍を構えた。
言葉とともに斬馬刀による攻撃を二度。しかし、重たい斬馬刀を振るえばいくら何でも動きは鈍る。
カンフーにゃんこは飛び退いてそれを避けるが、その頃には既に泰史は飛び上がっている。重い斬馬刀を持っての飛び上がり。そう高くは飛べない。けれど、高さと重さを利用して逆手に持った斬馬刀を突き立てるように打ち付け――
しかし、まだ、足りない。カンフーにゃんこの防御力を上回るには、足りていない。
「――行け、わんこ!」
命じる声は高らかに。
風切る気配に、泰史が引く。
そこへ間髪入れずに突撃する自転車に乗った涙目のわんこ。
『にゃッ――』
ドンッ! カンフーにゃんこの体が、僅か、宙に浮く。
ゴッ! 地に落ちる前にまたも自転車が突っ込んできて浮かされる。
繰り返すこと、実に8回。
『にゃん、が……犬なんかに、負ける……にゃんて……』
ドサッと地に落ちたカンフーにゃんこが、悔しげな声を零して消えていく。
泰史だけでは足りていなかった。
ヴォルフガングだけでも足りていなかった。
二人の力が合わさって、やっと一体。しかし、確実に倒すことが叶ったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
尭海・有珠
♢♡
猫、可愛いのに…しかもグィーと同じ程のサイズとは、やりにくい
退いてくれないなら仕方ないし
どのみちオブリビオンでは見逃しても良しとはできんだろうし、此方も胎を決めよう
相手が攻撃を仕掛けてきた際、服を引っかけるというなら
こちらから掴めば動きは一瞬でも止まるはず
ただ不用意に引っ掛けられないよう
棒の動き、又は敵の視線の方が動きを読み易ければ其方を注視し、動きを読み予測
回避よりは杖等で棒を受け止める
動きを一瞬でも鈍らせられたら
全力魔法、属性攻撃で攻撃力に全振りした、圧縮した雷の杭を叩きこむ
高速詠唱と2回攻撃によって多段に撃ちこめれば
防御力が高くとも効かないということはないだろ
ほんと、なんか…ごめんな
●雷霆の陣
グリモア猟兵に送られてきた猟兵たちは、戦場に着くやいなや、眼前に見えるカンフーにゃんこ部隊と戦い始める。
しかし……。
(猫、可愛いのに……)
カンフーにゃんこから繰り出される棍を『澪棘』でいなしながら、尭海・有珠(殲蒼・f06286)は僅かに眉を寄せた。
相対するカンフーにゃんこは可愛いだけでなく、転送したグリモア猟兵と同じくらいのサイズで、何とも言えぬやりにくさを感じてしまう。退いてくれれば良いのにと思わぬでもないが、退けぬのはきっと此方も彼方も一緒だろう。もし退いたとしても、前線には別の部隊が出てくる上、カンフーにゃんこたちは後方でバフの掛け直しや人数を補充されて万全な状態でまた前線へ出てくることだろう。上杉謙信を中心に部隊が回る風車。『軍神車懸かりの陣』とはそういうものだ。
それを阻止するためには、ここで倒すしかない。有珠は胎を決め、杖を握る手に力を込めた。
(……右。……と見せかけて、下方からの突き)
ぐにゃん。棍の軌道が靭やかに変化すると、有珠の読み通りに下方から突き出される。幾度かの突きの度に、棍の動き、そして敵の視線へと意識を向けていた有珠は、難なく宝珠を抱く杖で防ぎ、間合いを取るように一歩分後ろへ跳ぶ。カンフーにゃんこたちは防御力は上がっているが、戦闘力を向上された訳ではない。そのため、練度が高い有珠が読み切るのには然程苦労は要さなかった。……大きなアーモンド型の瞳が、素直に次の攻撃先を教えてくれているせいでもあったのだが。
『にゃ……にゃかにゃかやるにゃ……』
悔しそうに、カンフーにゃんこが顔を歪ませる。
ならば、きっと次は――。
(正面、だな)
大振りな、けれど疾い。真っ直ぐな突きが繰り出される。
動きを読んでいた有珠には、愚直と言ってもいい真っ直ぐな一撃。
当然、躱すことができた。
――けれど、躱さなかった。
勿論、致命傷とならぬようには避けてはいるが、その一撃が服に絡むのは止めなかった。
カンフーにゃんこの瞳が喜色で煌めく。
しかし。
「……ごめんな」
わざとなんだ。
伸ばした手でカンフーにゃんこを掴み、残る片手で杖を掲げる。
パンッと、何かが弾けた様な音を大きな三角耳が拾った。
空気が破裂するような、本能が何かを恐れて総毛立つ。喜色に煌めいた瞳が大きく見開かれ――視認出来るようになった輝きが映し出された。
それも、一瞬。
周囲の大気中全ての静電気と有珠の魔力を圧縮した雷の杭が空気を焼きながらカンフーにゃんこへと打ち込まれる。
足りぬならばと即座に詠唱して次の杭を喚び出していた有珠だったが、その杭が打ち込まれる事は無かった。
カンフーにゃんこは断末魔の声を上げることもなく、強力な一撃で焼け焦げ、光の粒になって消えていく。
「ほんと、なんか……ごめんな」
グリモア猟兵の姿が脳裏に浮かんだのだろうか。
消え行く光の粒を見つめながら、有珠は小さく零すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
クロヌ・ノーブル
イクス(f01775)と
この世界の危機など知ったことではないが
大切なものが壊される想いは分かる
だから、相手が猫だろうと容赦はしない
「きさまらをたおして、わたしはつよくなる」
名を呼ばれても振り返ることすらしないのは
だってお前はついてくるのだろうと分かるから
接近しようとするが攻撃からを守られ
「イクスっ、じゃまを」
するな。言いかけるも真剣な眼差しに息をのみ
背を向ける
お前になら任せてもいいと――
「足、ひっぱるなよ」
彼の使役の間を進みもう一度接近
掴まれても幾望で自分と敵を繋ぐ
叩きつけられる前に太陽の剣を地に刺し回避
「――のがれられるとおもうなよ」
ほとんど間合いがない状態から放つ斬撃
月華の刃、捨て身の一撃
イクス・ヴェルデュール
クロヌ(f14818)と
例え相手が可愛い猫だろうと
世界の危機を招くってなら見過ごすわけにはいかねぇ
こっちにも譲れないもんがあるんでな
いざ尋常にお相手願うぜ!
……ってクロヌー!
お前ひとりで突っ走んなーッ!!
急ぎエレクトロレギオンを召喚してクロヌの援護に
アイツの盾にでもなれば一旦はそれでいい
いいか?
あのにゃんこ戦士はお前だけじゃ倒せない
勿論俺だけでも無理だ
だけど、二人でなら絶対に倒せる
俺が先に仕掛けて隙を作ってみせる
その隙に全力の一撃を叩き込んでくれ
一気に、畳みかけるぞ!
再度機械兵器の群れを召喚
傷も厭わずに接近し深森の牙を突き刺し動きを封じて
悪いが此処までだ
行けクロヌ!お前の全力ぶつけてやれ!!
●陽光の陣
カンフーにゃんこ部隊との戦いの火蓋が切られた頃、時を同じくして、一体のカンフーにゃんこと対峙する一組の猟兵たちが居た。
眼前のカンフーにゃんこはとても可愛い。しかし、世界の危機は見過ごせない。敵方には相応の譲れないものがあるのかもしれないが、此方とて譲れぬものがある。
「いざ尋常にお相手願うぜ!」
翠のハルバードを構え、イクス・ヴェルデュール(春告のひかり・f01775)はカンフーにゃんこと相対す。
アーモンド型の大きな目と若葉色が真っ直ぐに見つめ合い、互いに長物を構えながらお互いに気を抜くこと無く、じわり、一歩前に進めようとした。
――その時。白い関が原に陽を宿す金糸が躍り出る。イクスが静止を駆ける間もなく、あっという間のことだった。
鞘から抜き放った《太陽の剣》を手に駆ける小さき背中。その背中に、イクスは一呼吸遅れて静止の声を掛ける。
「……ってクロヌー! お前ひとりで突っ走んなーッ!!」
しかし、駆け出した少年は止まらない。
「きさまらをたおして、わたしはつよくなる」
大剣を手にした少年――クロヌ・ノーブル(亡国に華綵を・f14818)は真っ直ぐにカンフーにゃんこを見据え、駆ける。
イクスの声は、聞こえている。けれど、振り返らない。いつだって怒鳴りながらも彼がついてくることを、クロヌは知っているから。
敵が愛らしい猫だろうと容赦はしない。剣の腕を磨くと誓った少年にとって、経験を詰むことは力となる。ひとつでも多く経験を積み、いっときでも早く目的の成就を。少年は太陽の剣を光らせ、真っ直ぐにカンフーにゃんこへと突っ込んでいく。
誠実に。しかし、愚直とも言える。
『甘いのにゃ』
カンフーにゃんこの間合いに入ったその瞬間。
真っ直ぐに、鋭く。棍の先がクロヌの眼前へと迫る。
駆ける膝から力抜かし、転がる。
しかし、巧みな棒術が逃しはしない。
「――ッ」
体勢を整えようとするクロヌへと棍が迫る――はずだった。
クロヌの眼前で、小型の機械兵器がいくつも連なってその攻撃を受け、破壊される。バラリと崩れ消えていく《エレクトロレギオン》。
攻撃が結果的に失敗に終わったカンフーにゃんこは素早く身を翻し、二転三転とバク転をして距離を取り棍を構える。深追いは、しない。防御を固め、部隊としての役割を果たすのが最優先だからだ。
誰が、何をしたか。瞬時に理解したクロヌは、傍らに駆け寄ってきたイクスへとキッと強い眼差しを向けて。
「クロヌ――」
「イクスっ、じゃまを」
するな――とは、言えなかった。
春のような若葉色が、真剣に、真っ直ぐに。射抜くその眼差しに、息とともに言葉は喉奥へ。
「あのにゃんこ戦士はお前だけじゃ倒せない」
諭すように、静かに。言葉が紡がれる。
勿論俺だけでも無理だ。と、眼差しと同じ、真っ直ぐな言葉が耳朶に届く。
――だけど、
「お前と俺の二人でなら絶対に倒せる」
そう、信じてやまぬ声。
そこに疑う気持ちはひとつもなく、ただ何処までも真っ直ぐに。
それを遂げる手段もあると告げる声に、藍宝石と橄欖石が真っ直ぐに絡んで。
そして、外される。
「足、ひっぱるなよ」
イクスに背を向けたクロヌ。そしてぶっきらぼうに告げた言葉。それは、お前になら任せてもいい――そう告げているのだと正しく受け止めたイクスは笑みを浮かべる。
「よし! 一気に、畳みかけるぞ!」
再度、クロヌが駆け出す。
クロヌの剣が届くよりも先にイクスが仕掛けて隙きを作る。
――はずだった。
イクスの小型の機械兵器は再度の召喚は成されなかった。敵との練度差もあったのかもしれない。けれど、単純にユーベルコードの発動に失敗したのだ。
苦い物を噛み潰すような顔を、一瞬。けれど考える暇などない。クロヌは既に駆けている。
「すまん、クロヌ!」
援護が出来ない。
振り返る事無く、真っ直ぐに駆けるクロヌ。けれど、僅かに顎が引かれ、イクスも小さな背中を追いかけて駆け出す。
突き出された棍が、クロヌの衣服に絡む。持ち上げられるまでの、その一瞬。クロヌは《幾望》を発動させてカンフーにゃんこを引き寄せ地に剣を刺し、持ち上げられる事すら阻止をして。
膠着するクロヌとカンフーにゃんこ。
そこに届くのは春の風。
翠纏いし『深森の牙』がカンフーにゃんこの足を穿ち。
「行けクロヌ! お前の全力ぶつけてやれ!!」
地に刺した剣から手を離したクロヌの手に、光が生まれる。
世界の危機を見逃せぬイクスに反し、クロヌにはこの世界の危機など知ったことではない。けれど、大切なものが壊される想いは分かるから――クロヌは剣を取る。
「――のがれられるとおもうなよ」
光は、剣となり。
隣接した状態から振り抜かれる、『月華の刃』。
眩い光がクロヌとイクスを包んで――収まる頃には、カンフーにゃんこの姿は跡形もなく消えていた。部隊最後のカンフーにゃんこを倒し終え、手の甲と甲を打ち付け合う二人の姿だけが関ヶ原に残ったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴