6
エンパイアウォー⑨~タコさんとの戦い

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0




●敵は、おもてなしタコさんでございます。
「敵がタコさんの軍団なのです」
 少年は重々しく口を開いた。

 グリモアベースでは猟兵が慌ただしく動き回っていた。サムライエンパイアで戦争が起きているのだ。グリモア猟兵ごとに小グループが形成され、それぞれの戦場へと飛び、戻ってくる。その一つ一つが戦況に影響を及ぼしている。今、猟兵達は団結してエンパイアの未来を切り拓こうと戦っていた。

「侵略渡来人・コルテスの事はもう皆様よくご存じかと思います。彼は、幕府に叛意を持つ長州藩の毛利一族を手駒にし、多くのオブリビオンを生み出すと、幕府軍の迎撃準備を整えています。正確には、長州藩士を生贄にして、骸の海からオブリビオンを呼び寄せたのでございます」
 少年、ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)は正座の姿勢で重々しくそう告げた。骸の海から呼び寄せたオブリビオン達、それが、タコさんなのだ。

「コルテスが幕府軍を迎撃する方法ですが、『山陽道周辺の気温を極限まで上昇させ、進軍してくる幕府軍を、熱波によって茹で殺す』という非道な作戦でございます」
 山陽道の平均気温は夜間でも35度を超えている。このままコルテスの儀式が進めば、平均気温が50度を超える殺人的な暑さとなるだろう。ルベルはそう語り、猟兵達に深刻な顔を向ける。

「また、コルテスの策略は熱波だけではございません。彼は同時に『南米原産の風土病』も蔓延させ、幕府軍に死をまき散らそうとしているのでございます。
 ですが、この風土病のウィルスは、極度の高温でなければ死滅する種類。そのため『熱波を生み出しているオブリビオン』を撃破できれば、風土病も阻止できるのでございます」

「すなわち、タコさん軍団を退治すればコルテスの策略を破ることができるのでございます。人の生命がかかっておりますゆえ、ここはなんとしても対処せねばなりますまい……! なにとぞご協力をお願い申し上げます」
 ルベルはそう締めくくり、熱中症対策にスポーツドリンクが入った水筒を持たせてくれた。
「暑い日が続いておりますが、どうぞ体調に気を付けて頑張ってきてくださいませ、頼りにしておりますゆえ」
 よろしくお願いいたします、と言ってルベルはしずしずと土下座し、猟兵を戦場に送ろうとし、ふとメモを見つけて読み上げる。
「OMOTENASIの神髄を体得したタコの妖怪達。旅路に現れてはOMOTENASIしてくれるが実は罠。毒を持つ多くの動物がするように、身も心も軟体生物のように骨抜きにして弱らせてから絞め殺そうとする……となっております」
 タコさんはそういった敵らしかった。

「それでは、よろしくお願いいたします」
 ルベルはもう一度、そう言った。


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 それでは、よろしくお願いいたします。
315




第1章 集団戦 『骨抜き妖怪『衣蛸』』

POW   :    随分と凝ってるタコ~。俺たちのようにほぐすタコ!
【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【筋肉の塊である8本の触手で相手を捕まえ、】【マッサージで弱らせてからの絞めつけ攻撃】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    カッピングもやってますタコ~。血流良くなるタコ!
【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【非常に強力な吸盤で相手を捕まえて、】【カッピングで生気を吸い取り弱らせる攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    運動不足じゃないかタコ~?ヨガは身体に良いタコ!
【再生能力を活かして非常にしぶとく接近して】から【筋肉の塊の触手と強力吸盤で相手へ捕縛攻撃】を放ち、【操り人形のように強制的にヨガをさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:まめのきなこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神羅・アマミ
ふむー、お触り大好きなR-18案件の助平蛸ときたか。
ならば敢えてその誘いに乗ってやるのも一興。
ただし妾が仕掛けるのはR-18でもG案件の方じゃがなーッ!!

コード『特機』の発動からソードビットの展開へ繋げ、妾を中心としたドームを形成するように周回させる。
これが自動センサーと防御機構を成すというわけじゃな!
敵が保護色で視認しにくかろうが、この荊棘の壁を突破せぬ限り妾に近接すること能わずと知れ!
それでも組み付いてくる執念深い蛸には、ビットを収束することでピンポイントに対応するぞ。

切り離した触手は串刺しにし、所構わず血飛沫をブチ撒けてやるがよかろう。
地面なら足跡、宙なら敵にかかり視認性が増すはずじゃ!


草野・千秋
西洋ではタコは悪魔の化身との伝承がありますが
サムライエンパイアでも人に災厄を与えようとしているのですね
それにしてもOMOTENASI……とは?
たこ焼きでしょうか、そんなまさか
アホな事を考えてる場合ではない!変身!

戦闘前にUCを発動
仲間をかばう事も考えて防御力をアップさせておく
勇気をもってしてこの戦いに挑む
戦闘序盤は2回攻撃とスナイパーと範囲攻撃をメインに当てていく
敵体力がある程度削れたら全線に出て接近戦に挑む
怪力パンチキックをお見舞いしてやるぞ
敵の攻撃は第六感でかわして
避けられない場合武器受け、盾受け、激痛耐性で耐える
仲間の皆さんが攻撃されそうならかばう
痛みに耐えて笑ってこそヒーロー!


ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
○連携ご自由に

オブリビオンでなけりゃ素直にマッサージ受けたいとこなんじゃがのぅ。
…そういや熱波出す係なのに蛸なのか?茹だっちまわねぇか?

○攻撃
全ての攻撃に【料理】技能的なアレを加えちゃうゾ!
①マッサージをしてきたら手にした「焼き尽くし刺し貫く剣〝劫火〟」を【カウンター】でぶっさして蒼炎の【属性攻撃】を注ぎ込んで見る。
②有効そうなら、【2回攻撃】、【捨て身の一撃】でそれを繰り返し、【気絶攻撃】が決まったら【選択したUC】でその蛸を振り回すぞ。
③逃げ出そうとした蛸がいたら振り回してる蛸をぶつけて、その蛸に①か再び繰り返すぞ。

①が効かなかったらとりあえず、【怪力】でUC使って暴れるわ。


ロースト・チキン
ヒャッハァーーーー!!
あ、暑いーーーこのままじゃ茹で鶏になっちまう!!

あのタコは、オレに対抗して、たこ焼き要員なのか!?
しかも、大量だ!一人じゃ捌ききれねぇぜ!!
もう世紀末の仲間を呼ぶしかねぇ!!

しかし、元から色々やられている鳥頭が暑さでいっそうやられてしまいUCの選択を間違えたのです。

自ら【鶏の丸焼き】となって、ローストプレイをしてしまうのでした。
そして、タコの群れに突っ込み暴れるます。

な、なんでだ!?
敵を倒せば温度が下がるって話じゃねーのか!?
むしろ、いっそう温度が上がって…
ま、まさか…そうえいば、OMOTENASIがどうのこうのって…やはり、オレを食材に…だ、騙したなルベルーーーーー!?



●第一話『アマミで始まりミカンで終わる』

 その日、戦場は赤く染まっていた。
 猟兵達が見る前線はタコさん(衣蛸さん)で溢れていたのである。

「ヒャッハァーーーー!! あ、暑いーーーこのままじゃ茹で鶏になっちまう!!」
 最近IC芸に磨きがかかってきたロースト・チキン(チキン野郎・f03598)が到着と同時にギブアップしそうになっていた。


「ふむー、お触り大好きなR-18案件の助平蛸ときたか」
 ちまっとした箱入り娘の神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)Chanが風にそよそよと艶髪を揺らしながらタコさんにR-18の札を貼ろうとしていた。
「ならば敢えてその誘いに乗ってやるのも一興。ただし妾が仕掛けるのはR-18でもG案件の方じゃがなーッ!!」

「西洋ではタコは悪魔の化身との伝承がありますがサムライエンパイアでも人に災厄を与えようとしているのですね。……えっ、ええと、R-18? ……大丈夫ですか?」
 優しい容貌に戸惑いを色濃く浮かべ、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)が思わず声を挟む。

「オブリビオンでなけりゃ素直にマッサージ受けたいとこなんじゃがのぅ……そういや熱波出す係なのに蛸なのか? 茹だっちまわねぇか?」
 ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)が悠然とタコの群れを見る。圧倒的な数で迫りくる軍団を目に歴戦の男には気負う様子は全くない。『IZAKAYA:げんちゃん』で仲間をもてなす時同様の全くな自然体であった。

「それにしてもOMOTENASI……とは? たこ焼きでしょうか、そんなまさか」
 千秋は脳裏に美味しそうなたこ焼きを想像し、一瞬ほわほわと頬を緩めた。そして、ハッと真剣な顔になる。
「アホな事を考えてる場合ではない! 変身!」
 凛々しい声に変身ベルトが反応し、その姿が蒼銀のボディアーマーとヘルメット姿に変わる。
「断罪戦士ダムナーティオー推参! 悪を駆逐する!」
 仲間と共に前線に駆ける千秋はユーベルコードを発動させる。『Judgement you only(キミノタメダケノセイギ)』は千秋の決意の表れだ。すなわち、『仲間を護る』。優しい面差しが今は勇敢さを際立たせてキリリと前を視ていた。

 ところで、千秋の言葉を聞いていたローストはびっくりしていた。何故かって?
「あのタコは、オレに対抗して、たこ焼き要員なのか!?」
 と、言うのである。
「あ、いえ、それは単なる思いつきで」
 千秋が否定するが、ローストの耳には言葉が全く入っていかないようだった。パニック! ロースト、戦いが始まる前にプチパニック!
「しかも、大量だ! 一人じゃ捌ききれねぇぜ!! もう世紀末の仲間を呼ぶしかねぇ!!」
 必死になったニワトリさんはユーベルコードで舎弟であるモヒカン達を呼ぼうとした。
「ヒャッ、あ」
「「え?」」
 叫ぼうとしたローストの声が一瞬途切れ、次いで絶叫に変わった。
「ぎゃああああああああああああ!!」
「ロ、ローストさん!?」
 
 なんということでしょう、元から色々やられている鳥頭が暑さでいっそうやられてしまいUCの選択を間違えたのです(原文まま)――ローストは誤用したユーベルコードの炎により炎上した。毎秒寿命を削り、火だるまになったニワトリが大パニックで激走する!
「ロ、ローストさあああああああん!?」
「タ、タコオオオオオオ!? あいつはなん、こっ、こっち来るなタコオオオオオ!?」
「ぎゃああああああああああ!!!」
 心配そうな味方の声を背にローストは敵の群れの中を激走し、タコさんたちを巻き込み倒していく!
「な、なんでだ!? 敵を倒せば温度が下がるって話じゃねーのか!? むしろ、いっそう温度が上がって……」
 周りのタコさん達も燃え上がり、現場の温度は上がる一方だ!
「ま、まさか……そうえいば、OMOTENASIがどうのこうのって……やはり、オレを食材に……だ、騙したなルベルーーーーー!?」
 ニワトリの声が戦場に反響する。なんとこの戦場は味方に対する罠だった! わけはない。明るく楽しく笑顔に溢れたアットホームな普通の戦場である。

「ゲーッ! ますます暑くなったじゃねーか!」
 アマミが「ソードビットひゅんひゅんさせたら扇風機の代わりになんねーかな」と呟き、ユーベルコードを発動させた。
「味方を熱中症からしゅごる妾! これが妾の『庇うゼロ』じゃぜ」
 アマミは嘗て自身を「無垢なる人々を守る最強の守護者」と呼ばせていたのだ。誤字ではない。


 というわけで、タコさんとの戦いは始まっていた。
 太陽が中天に耀く。
「猟兵を倒すタコ!」
 タコさん軍団が赤い壁のように押し寄せてくる。地響きすら鳴らして、土煙をあげ、幾つかは茹ってる。
「茹ってるんかーい」
 にゃあお。ゲンジロウの耳にふと子猫の聲が聞こえた気がした。
「ん?」
 きょろきょろと見ると子猫がいる。幻ではない。本物だ。
「こんなところに猫ちゃんが! 危ないぞい」
「みゃ」
 慌てて後ろに逃そうとするゲンジロウ。そっと手を差し伸べれば子猫は意外な人懐こさを魅せてすり、と手に頬を寄せ。ぱっちりとした眼でゲンジロウを見上げて、鳴いた。
「みゃ……~~あ」
「かわいいのう」
 しかし、敵はそうしている間にも押し寄せてくるのだ。
「危ないから……あっ」
「マッサージ~マッサージはいらないかタコ~?」
 タコたちが触手を伸ばしてくる。
「ふぅーッ!」
「あっ、猫ちゃん!」
 子猫がびっくりして逃げていった。

「今猫って聞こえたような――こほん、今は目の前の戦いに集中しないと」
 迫りくる赤いタコさん軍団を見つめる千秋の心には熱い勇気が滾っていた。
 一足、地を蹴るごとに全身から情熱が湧きあがる。ハートは熱く鼓動を刻む。
 暑い日だ。
 敵に向かう千秋が思い出すのは、何故か子供の頃の夏休みだった。その時はなんでもなかった日が突然にふと湧いて、こころを一瞬じわりと切なくさせて、次の瞬間には千秋の勇気を何倍にも何倍にも膨らませてくれる。――覚悟。
「……僕は、負けられないんですよ!」
 ヒーローは、決して。
 後ろを振り返らず、千秋は前を向く。「秩序の崩壊」の名を持つ対UDC用自動詠唱機構付き銃火器『ordinis tabes』を前方に撃てば向かってくる赤いタコさんたちがどんどんと倒れて、後続が倒れたタコさんに躓くようにして転んでいく。

 千秋が奮闘する中、アマミもきびきびと戦っていた。
「何を隠そうこのソードビットども、元はガラクタじゃ! 拾った妾まじ天使! 有効活用して華麗なる復活を遂げたソードビット達と妾に全米が泣け!」
 アマミがソードビットを召喚していた。何を隠そうこのソードビット(略)つよい!!
「死ぬことを許す!!」
 今日のアマミはいつもより慈悲がある。いつもは死ね(命令)だが今日は死んでもいい(許可)なのだ。
 そんな菩薩のようなアマミのまわりにソードビットが展開され、ドーム状に周回する。
「敵が保護色で視認しにくかろうが、この荊棘の壁を突破せぬ限り妾に近接すること能わずと知れ!」
 じゃが、もし死にたかったら近づいてきて死んでもよい。菩薩アマミはそう言ってニッとする。
 赤い瞳にはスパスパチョキチョキと斬られていくタコさんの触手が映っていた。
「タコの血って空気に触れたら透明だけど生きたままだと青いの? まじ? どれ?」
 触手を串刺しにし、アマミがブンブンと液体を撒き散らす。
「これよりG案件じゃから黙って目を瞑り許せ!」
 アマミはそう言いながらビット達を暴れさせ、タコさんを切り刻んでいく。あっお客様いけません、そんな、いけません!
 びしゃびしゃ。
「とったどーじゃぜ!」
 アマミが満面の笑顔でタコさんの串足を振り回す。ソードビットはその周りをひゅんひゅん飛び回った。風が起きる。なかなか涼しい。

「うっ、うーん……Gに入るのでしょうか? どちらかといえば料理……焼いたらそのまま食べられそうな、こほんっ」
 千秋が一瞬微妙な顔をし、すぐに気を取り直したようにパワフルな拳をタコさんに打ち付けた。
「とうっ!」
 敵の数は多い。倒した後から横から新手がどんどん千秋に襲い掛かろうと押し寄せてくる。
「随分と凝ってるタコ~。俺たちのようにほぐすタコ!」
 保護色能力で身を隠して接近したタコさんがしゅるりと触手を伸ばして千秋にマッサージを施そうとする。だが、触手が千秋を絡めとるより先に千秋の回し蹴りが旋風の如く放たれて周囲のタコさんが悲鳴をあげて蹴散らされていく。

「さっきの子猫は大丈夫かのう」
 子猫を見失ったゲンジロウ。周りは敵でいっぱいだ。いつの間にか、敵に囲まれていた。
「これがお、も、て、な、し。心をこめて、丁寧にタコ!」
 おもてなしのポーズを決めて触手を伸ばすタコさんズ。彼らはプロであった。匠なマッサージ技術は日ごろの凝りを解し、身体を軽くしてくれる。
「やるのぅ。わしも負けてられんわ」
 ゲンジロウがやはりリラックスした口調で敵に向かっていく。取り出したのは『焼き尽くし刺し貫く剣〝劫火〟』。炎のルーンが蒼く揺らめく美しき刃が蒼き光のラインを宙に残しながらタコさんたちの赤い肌に滑り込む。

 サクッ! スルッ! ザクッ!

 驚きの切れ味!
「まずは様子見じゃな」
 ゲンジロウは「どれどれ」とタコさんたちに蒼炎を注ぎ込む。ビチビチとした新鮮なタコさんに「元気のよいタコさんじゃな」と呟きながら蒼炎をしっとりと優しくタコさんに染みこませていけば、暴れていたタコさんが大人しくなった。続く連続の刃で胴体と足の間に刃をいれていけば、動きは完全に停止する。
「ほれ掴んだ! もー逃さんぞぉ、覚悟してくれや」
 ゲンジロウはタコさんを鷲掴みにし、豪腕でぶんぶんとぶん回す。何を隠そうこれがゲンジロウのユーベルコード『豪腕スイングアラウンド』である。ぶんぶんぶーん!
「海の果てからやってきた、やつらがたんとやってきた♪ 戦えわしらのゲンチャンダー♪ 今日の敵さんタコさんじゃー♪」
 料理とは愛である。
 このぶんぶんぶーんプロセスにより、漢(オトコ)ゲンジロウの熱い魂が、その愛が一振りごとにタコさんに染み渡り、結果として味に深みを齎すのである。それは例えるならば、妻が旦那へのお弁当の蓋を閉める間際に「美味しくなぁれ! だ、い、す、き、ちゅっ!」と投げキッスをするようなものであった。
「ぐぇ!」
「タ、タコー!?」
 副産物的に周囲のタコさんたちがぶんぶん中のタコさんに衝突し、さくさく倒されていた。人はこれを一石二鳥と呼ぶ。気付けば周囲には調理済みタコさんの山ができていた。

「さて、片付いたのぅ」
 ゲンジロウはそう言って走り出す。

 ふと、何かに導かれる気がして。
 千秋は周囲に集っていた敵を掻い潜り第六感が導くままに奔った。そして、敵に囲まれている子猫を見つけた。
「えっ、」
 千秋が驚きの声をあげて慌てて子猫の前に走り込む。
「危ない!」
 子猫を両腕に抱きかかえ、横跳びにする千秋を触手が追う。掠めた触手が腕に傷を負わせていた。だが、腕の中の小さな生命は無傷だ。
「千秋!」
 ゲンジロウが駆けつけたのはその時だった。
「大丈夫か!」
 先ほどまでのリラックスモードとはスイッチが入れ替わったように男臭い口調になったゲンジロウが蒼炎纏いし剣で千秋を狙う敵を鮮やかに切り刻んだ。そして、子猫に気付いて目を見開いた。

「みゃあ」
 小さな生命が弱弱しく鳴いた。見ると、小刻みに震えている。
「お前さんがこの子を助けたのか。よく守ってくれたわ。怪我しとるが大丈夫かい」
 いつものような温かな口調に戻ったゲンジロウが千秋に視線を移すと、千秋は誇らしいなような少し恥ずかしいような顔をした。なんとなくだが、父親に褒められた時のような気分に近かった。
「大丈夫ですよ」
 千秋は拳をぐっと握り、お日様のような笑顔を浮かべた。
「痛みに耐えて笑ってこそヒーロー! ですから!」


 さて、そんな出来事の最中ずっとローストは激走していた。
「ゼエ、ゼエ、あ、そろそろ限界……川が見える」
 パタリ、と地に転がり。ここまでか、と思った時、涼気が風に乗って全身の炎を揺らめかせた。

「あ……?」
 ローストは眼を瞬かせた。

 氷だ。
 真っ白に耀く冷たい氷が地表を閉ざしていた。さっきまで燃えていたタコさんたちが赤い体を氷に閉じ込められ、動きを止めると同時に息絶えている――、
「これは、一体」

 ふわり、と風が吹いた。

 視線を向けると、少女が立っている。
 慎重な距離感。敵を狙う最中に他人が危機に陥っていても構うことはないと公言している猟兵少女がそこに立っていた。

 そして、少女とローストの頭上に高笑いが響く。
「おーほっほっほ!」

「待て、ミカンが出てきたないんじゃが」
 アマミが抗議運動を開始してプラカードを掲げたところで第一話終わり!


 『次回・第二話 寒くなったり暑くなったりしながら人生は』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オーキッド・シュライン
●心情
・うーん何か凄く暑そうですわねぇ。わたくしはこの左腕が生えてきてからというもの…どうもこういう温度変化に疎くて‥‥。正直炎に比べれば誤差でしかないんですよね
・所で陸上でかつ暑いらしい所にタコですか…。何かもう居るだけで死にそうな組み合わせなんですけど…大丈夫なんでしょうか。まあ敵ですし良いんですけどね
●戦闘
・UCを使い空中に飛翔しますわ。空から蘭の花弁を落としながら絨毯爆撃。姿は迷彩で隠れていようと、空の上からならば土煙の動きとかで一発で分かりますわ
・後は地面ごと周囲を焼き尽くしながら、敵を殲滅しますわね
「今からここら一帯はそれこそ地獄のように暑くなりますので嫌なら退避してくださいませ」


セルマ・エンフィールド
これ以上暑くなれば行軍は厳しいでしょうね……それに風土病も重なれば4万人が全滅というのも頷けます。そんなもの、成就させるつもりはありませんが。

『第六感』で敵の気配や視線を感じ取り、大体の距離や場所を把握します。正確な場所が分からずとも、近くにいる程度のことが分かれば問題ありません。

敵が近くにいることを感知したら【絶対氷域】を。迷彩していようとどこから来ようと同じこと。逃がしません。

何らかの要因で絶対氷域を抜けてくる敵がいるかもしれませんし、念のため警戒を。絶対氷域で敵に霜が降りたら、それに反射する光は迷彩では隠せない、『視力』でそれを捉え、接近される前に「フィンヴルヴェト」による銃撃を。



●第二話『人生はカメレオン』
「これ以上暑くなれば行軍は厳しいでしょうね……それに風土病も重なれば4万人が全滅というのも頷けます」
 世界エンパイア。
 戦争の只中にあるその世界は、今日も暑かった。否。今日はまた一段と暑かった。敵は儀式により、さらに暑さを増すつもりだという。殺人的なレベルへと。風土病が合わされば、いかほどの被害が出ることか。
「そんなもの、成就させるつもりはありませんが」
 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はひょろりと伸びた樹木に目を留め、影に身を隠す。木肌にそっと手を這わせれば、掌を焼くような熱さ。緑と土の香りが土煙と共に鼻腔を擽る。

 戦場の空は晴れていた。
 青い空の中、猟兵が一人戦場を見下ろしている。真紅の瞳をした揚羽蝶の羽根を持つ魔人に変身した紅蘭の悪魔ファレノプシス――オーキッド・シュライン(絢爛なる豪火・f15793)。飛翔しながら毎秒寿命を削るオーキッドは、地上に犇めくタコさんたちに眉を寄せた。
「うーん何か凄く暑そうですわねぇ」

「上に猟兵がいるタコ~!」
「降りてくるタコ~、マッサージしてやるタコ~」
 地上のタコさんたちがわさわさしていた。略すとタコわさである。
「おーほっほっほ! マッサージしたいのならここまでいらっしゃい!」
 オーキッドはひとまず高笑いしておいた。タコさんたちは悔しそうにしている!
「所で陸上でかつ暑いらしい所にタコですか……。何かもう居るだけで死にそうな組み合わせなんですけど……大丈夫なんでしょうか」
 高笑いの合間にふと呟きを零し、ひと呼吸おく。地上のタコさんたちは何体かが既に茹っていた。
「まあ敵ですし良いんですけどね」
 気を取り直したオーキッドは再び高笑いを披露した。タコさんたちは悔しそうに地上をぴょんぴょんしていた。

(上空に味方が)
 セルマは戦場の状況を冷静に把握した。敵軍団に対して猟兵達もまた広く散らばり、それぞれの戦域で戦っている。感覚を研ぎ澄ませれば見えにくい保護色状のタコさんの位置もすぐに感じ取ることができた。

「あがってこれないんですの?」
「空は飛べないタコ~」
 オーキッドとタコさんたちがなにやら会話を続けている。

(それでは、味方が気を引いているうちに)
 セルマは柔らかく膝を曲げ、ほんの少し背筋を丸め両肩をすぼめるようにして愛銃フィンブルヴェトを構えた。味方が気を引いてくれているなら、やりやすい。ストックを肩の付け根にあてて安定させ、頬付けをして狙いを定める。スコープの向こうにいる保護色の獲物が――わかる。
 淡々といつものように引き金を引こうとして少女はふと目を見開いた。
「っ?」
「あああああああああああ!!! あちいいいいいい!!」
 鶏の姿をした猟兵、ローストが火だるまになって走り回っていた。一体何があったのか。
「この領域では全てが凍り、」
 逡巡することなく、言葉が口を突いて出た。

「あっ……」
 ローストが倒れた。燃え上がったまま地面に倒れる鶏の目が。敵が弱った猟兵に殺到する。四方から。

「――凍りなさい」
 足が木陰から躍り出た。
 敵前に自ら姿を現し、同時にセルマはフィンブルヴェトを杖のように大きく振った。
 サア、と風が吹く。冷気が奔る。
 透明な水晶に似た美しい氷が全てを閉ざしていく。ビシリ、ビキリ。硬質な音が至るところから鳴り、氷の手が敵群に手を伸ばして呑み込んで固めていく。

 ユーベルコード『絶対氷域』の氷がローストの炎を相殺するように打ち消し、焦げて黒くなった毛に及ぶ前に消えていった。繊細な威力調整、成功率が100を超えていたからこそ可能だった神業といえよう。


 地上を涼気が渦巻いていた。

 俯瞰する世界は先ほどまで暑かった、らしい。今は、氷に閉ざされて涼しくなっているように見える。どうだろう。
 オーキッドは軽く首をかしげ、腕を摩った。何か、違うだろうか? ――否。
(わたくしはこの左腕が生えてきてからというもの……どうもこういう温度変化に疎くて……。正直炎に比べれば誤差でしかないんですよね)
 ぱちり、と瞬きひとつの間に過ぎ去りし憂愁をひと流しし、オーキッドは背の羽を大きく羽ばたかせた。ふわり、と空気を扇ぐように炎が揺らめけば、火の粉に紛れて蘭が舞う。

「あちらは、まだ敵がたくさんいますわね」
 風に導かれるように飛翔すれば背で黄金の髪が艶やかに波打った。太陽のあたたかな光を全身に感じる。

「届かないタコ~、でも、保護色になっておくタコ」
「保護色は生存する上で大事タコ」
 まだ氷に閉ざされぬ戦域にてタコさんたちが地上で保護色を纏っていた。
「お馬鹿さん達ですわね。上からなら土煙の動きで丸わかりですわよ」
「な、なんだとタコ~!?」
 上から声をかけるとタコさんたちは騒然とした。
「空を飛んだりはしないんですのね」
「飛べないタコはただのタコ……く、悔しいタコォ」 
 悔しがるタコさんたち!
 そんなタコさんたちにひらひらひらぁり、蘭の花弁が舞い降りて。
「親方! 空からきれいなお花タコ~、っ?」
 触れたタコさんがぶわわっ、ドゴォーン! と爆発する。蘭の花とは爆発するものであった。耳を劈く爆発音は連続した。地上に光と炎の花を咲かせ、タコさんたちを巻き込んで。
「こ、この花は危険タコ! 退避、退避~!!」
 ドォーン! ドドーン!
「今からここら一帯はそれこそ地獄のように暑くなりますので嫌なら退避してくださいませ」
「「タ、タコォ~~~~~!」」
 炎がタコさんたちの群れを飲み込み、煙をもうもうと上げながら舐めるように地上を這い、延焼していく。
 タコさんたちは一網打尽に焼かれていった。

 地上が火の海となっている。

 遠き景色にそれを臨む人々はその炎を怒れる火の神によるタコ焼き業火と呼んで手を合わせたという。
「いただきます」
 時刻は、ちょうどお昼時であった。

 ――ポロロン♪
 戦場にはいつの間にか清華でどこか素朴な音が鳴っていた。
「やあアリスたち! ここはお茶会の会場かな?」

 そして、茶会が始まった。

 『次回・第三話 真夏のアリスに一輪の花を』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジョン・フラワー
ハーイ! こんにちはタコさん!
ご機嫌なOMOTENASIを楽しませてくれるひとがいるって聞いたんだけど、それってキミたちのことかい?
僕の住んでたとこではお茶会がOMOTENASIの定番なんだ!
こういうのは初めてだから、優しくしてくれるかな?

僕ヨガってやつがいいなあ! なんだかかっこよさそう!
いろんなポーズがあるんだろう? オオカミのポーズはないの?
それにしてもタコさんたち、赤くてつやつやで可愛いね!
お目目もお口もとってもキュート! 僕たち仲良くなれるんじゃない?

えっ? 罠?
あっ、敵?

そっか……

ねえタコさん、最後に手を繋いでくれるかな
キミとの友情を確かめて……そしたらびったんびったんするからね


マリアドール・シュシュ
アドリブ◎
ノースリーブの青ドレス
ポニーテール

とにかくタコさん達を倒せばいいのね!
それにしても…暑いのだわ(ふぅ
マリアの体は水晶
少し熱を通しすぎてしまうかしら…(水筒の水は空

後衛
竪琴構え清凉さ感じる流水の糸絡めた旋律を奏で演奏攻撃(楽器演奏・マヒ攻撃
敵の攻撃は【透白色の奏】使用し吸盤等を攻撃(カウンター

タコさんに捕まると厄介だから距離を取っ…ふぇっ!(絡む触手に悪寒が走り変な声出て
だ、めなの!体が勝手に…(ぱたぱた
マリアで遊ばないで!

羞恥で顔真っ赤
深呼吸し敵に集中
暑さで汗が滴る
竪琴で激しい音へ一変

もう!おいたがすぎるのよ!(メッ
マリアは元から骨はないのだから骨抜きになんてならないのだわ!(ふんす



●第二話『花オオカミと銀蕾の姫君』
「とにかくタコさん達を倒せばいいのね! それにしても……暑いのだわ」
 マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)は「ふぅ」、と汗を拭うように頬に手を添えた。クリスタリアンのマリアドールは、体が水晶でできている。
「少し熱を通しすぎてしまうかしら……」
 水筒の中身は、すでに空になっていた。
「涼しい格好をしてきたのに」
 マリアドールはもう一度「ふぅ」、とため息をついた。うなじには風が感じられて、ほんの少し涼しい。長い銀髪をゆるくポニーテールにして、ノースリーブの青ドレスを纏ったマリアドールは思っていた以上の現場の暑さにほとほと参ってしまっていた。

 そこに、スッとグラスが差し出される。
「やぁアリス!」
 やわらかくも自信に溢れた青年の声がマリアドールに向けられていた。
「ふぇ……? マリアがアリス?」
「そうさ! アリス、どうしたんだい? 元気がないね。美味しい果実水を飲んで笑顔を見せて?」
 春花めいたピンク色の髪と瞳の青年がふわりと優しく微笑んだ。おずおずと受け取るグラスからは仄かな甘い果実の香りがする。
「ありがとう、マリアは暑かったの」
「アリスのことならなんでもお見通しさ!」
「マリアは、マリアというのよ?」
「そう、わかったよアリス!」
 ニコニコとした青年はジョン・フラワー(まごころ・f19496)と名乗る。愉快な仲間である彼は、どうも名前を覚える気はないようだった。
「アリス、お花のカーペットをここに敷こう。アリスの特等席だよ」
「まあ、ありがとう」
 なんと戦場に特等席が!
(美味しい)
 果実水がマリアドールに甘さと爽やかさを伝える。後味もさっぱりとして、とても美味しい。
 ジョンはそんなマリアドールに満足した様子でタコさんたちに声をかけていた。
「ハーイ! こんにちはタコさん! ご機嫌なOMOTENASIを楽しませてくれるひとがいるって聞いたんだけど、それってキミたちのことかい?」
 ピンク色の眸がご機嫌に笑う。
 そうだろう? と陽気に両手を広げ、ジョンがタコさんの群れに歩み寄る。

「ふぅ」
 マリアドールは両手でグラスを持ち、おっとりとジョンとタコさんたちを見守った。

 ジョンは喋っていた。
「僕ヨガってやつがいいなあ! なんだかかっこよさそう! いろんなポーズがあるんだろう? オオカミのポーズはないの? それにしてもタコさんたち、赤くてつやつやで可愛いね!
お目目もお口もとってもキュート! 僕たち仲良くなれるんじゃない?」
 めちゃめちゃ喋っている。マシンガントークというやつだ。有無を言わせず言葉が流れるように紡がれて、あっという間にジョンの世界に引き込まれていく。

「でも、ええと……ヨガは、敵の技なのじゃなくって?」
 マリアはぼそっと呟いた。
「えっ?」
「え、えっ?」
 ジョンが眼を丸くする。そのポーズは今、ぐるんと地面に横たえられてまっすぐに両足を天に向けて伸ばされているところだった。タコさんたちが数体がかりでヨガポーズを手伝っている……。
「え、ええと、マリアが考えるに、ヨガで動きを封じて、他の敵が攻撃してきたりするのではなくって?」
「罠? そっか……」
「罠タコ~」
「そうタコ~」
 わさわさとタコさんたちが触手攻撃に移行する。

(いけない……!)
 ――ポロロン♪

 音の雫がぽろん、ぽろんと雨垂れのように降ってきた。マリアドールがグラスを置いて、暑さにめげずに一生懸命竪琴をつま弾いているのだ。コンディションが若干悪くとも、奏者マリアの腕に鈍りはない。白く細い指が爪に咲く彩花を躍らせながら繊細に音を紡ぐ。徐々にさらさらとした流水のように音が流麗に流れて。
「音を立てるのがもったいない気がするタコ~」
「みんな、静かにするタコ~!」
 なんとタコさん達が音に魅了されてうっとりと動きを止めている。ジョンに迫っていた触手もまた、動きを止めていた。
「ああ、アリス。ありがとう」
「よくってよ。助け合うのは当たり前のことだもの」
 マリアドールはにっこりとした。美味しい飲み物のお礼ができたわ、と。

 清凉さ感じる流水の糸絡めた旋律。
 『透白色の奏』。

 場にいた皆が音に聞き惚れ――、しかし。
「この音はどこからタコ? あ、あの猟兵タコ」
 音楽に理解を示さぬ一体のタコさんが奏者を見て場違いな声をあげる。
 少し暑そうにくったりしながら、懸命に指を動かして演奏している可憐な少女。
「ヨガは身体に良いタコ!」
 タコさんが一体接近し、マリアドールに触手を伸ばす。
 THE・KY。
 皆がそう思う暴挙であった。
「ふぇっ!」
 ザワッ、唐突な悪寒に声が漏れる。
 しゅるりと絡んだ触手に竪琴の音が止まり、マリアドールが身を竦めた。
「ヨガを教えてあげるタコ~♪」
「だ、めなの! 体が勝手に……」
 ぱたぱたと暴れるマリアドール。だが、華奢な少女の抵抗をものともせずタコさんは少女の腕を取り、両手を肩の高さに水平にキープして足をしっかりと立たせ、顔と目線をつま先の向きにキリリと向かせた戦士のポーズを創り上げる。
「疲労回復の効果が期待できるタコ」

「せっかくの音楽が!」
 暴挙にブーイングをしていたタコさんたちがヨガポーズを見て再度ブーイングをする。
「もっと色気のあるポーズにするタコ~」
「そうは言ってもタコー」

「マリアで遊ばないで!」
 羞恥で全身を真っ赤に染めたマリアドールは深呼吸して敵に集中しなおした。ぽたり、と透明な滴が頬をつたって地面を濡らす。暑さと羞恥で汗が止まらない。

「もう! おいたがすぎるのよ!」
 マリアドールは再び竪琴を掻き鳴らした。感情をありありと伝えるメロディは愛らしいながらも激しい音を戦場に響かせる。
「マリアは元から骨はないのだから骨抜きになんてならないのだわ!」

「怒ってるタコ」
「怒らせたタコ」
 タコさんたちが烈しい音にしょんぼりと動きを止めていた。黄昏色に眩くハープが感情を乗せれば、姫君の勘気に皆が首を垂れずにいられない。
「マリアは怒っていてよ! ふんすふんす」
 ぷんぷんと頬を膨らませる姫君は、可愛らしく眼尻を怒らせてタコさんたちを見る。タコさんたちは皆気まずそうに目を逸らすのであった。

「ねえタコさん、」
 そんなタコさん達にふわりと声がかけられる。
「最後に手を繋いでくれるかな」
 ジョンがハッピーウェルカムな笑顔で手を向けていた。
「タ、タコ?」
 タコさんたちがしゅるっと手を伸ばす。
「キミとの友情を確かめて……そしたらびったんびったんするからね」
 ニコッと春花の咲き誇るような笑顔を浮かべて、ジョンが握った触手をぐいっと振り上げた。
「タコォッ!!??」
 力持ちさんなジョン・フラワーは愉快愉快とタコのからだを持ち上げて。ぐわっと振り上げずしんと落とす。手はまだ放してあげないよ――ぐぇっと苦悶するタコをぶんっと振り回し、横にぐるぐる身ごと廻れば面白可笑しな独楽のよう。世界が廻って万華鏡。ああ、たのしいね! アリス、愉しいね。
 びったんびったん、ぶんぶんひゅーん、びったんびったん。

 清らかなアリス(マリアドール)の伴奏を耳に、
 その日、愉しい茶会はしばらく続いたのさ。 


 しばし、楽しいひとときを過ごし――、
「さてと、それじゃあ行こう」
 茶会に神器が降り注ぐ。

 ――言葉は虚ろ。
 声は静謐に場を支配する。

「形を成さない。

 言葉は力。
 唱えれば世界を変える。

 何がそれを分けるのか?
 願うものの心の強さ。
 虚ろな入れ物に息吹を込めて。

 紡ぐ言葉が力を持つなら
 それは紡ぐものの命そのもの。
 願い歩み続けた意思が
 この場にある全てのものの意思が
 言葉に力を乗せる」


 ――猟兵の聲が、聞こえるか。


 『次回・第四話 斬ろうか語ろうか』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


※第二話じゃなくて第三話だった。
月夜・玲
タコ…
タコだ
このあっつい中タコが居る…茹ったりしないのかな
まあオブリビオンだしね…
正直、マッサージしてくれるんなら是非ともほぐして貰いたい気もするけど、そうも言ってられないか
やってる事は酷いんだし、何よりお仕事お仕事
さてと、それじゃあ行こう

●戦闘
《RE》Incarnationを抜剣して【神器複製】を使用
50本の複製神器をまずは精製するよ
そしてそれらを『念動力』でそれぞれバラバラに動かしてタコ達を切り刻んでいこうか

タコが保護色で近付いてくるなら、五感と『第六感』を研ぎ澄ませてそれを察知
吸盤を『オーラ防御』や『武器受け』で弾いて回避しよう

こんなOMOTENASIはノーサンキューだよ!

アドリブ等歓迎


紫谷・康行
おもてなしされたらお礼が必要だよね
今は熱いから冷たい風を吹かせてあげようかな

【イーゴーの見えざる刃】を使い戦う
細かい風の刃をいくつも作り
タコの筋繊維を切断して動きを鈍らせたり
相手の足の付け根や目を狙い、動きを止めてながら仲間をサポートしつつ大きな魔術を使うための時間を稼ぐ

その間に大きな風を呼ぶための魔力と言葉を練り
気が満ちたら力ある言葉を唱えて風を呼ぶ
周囲に冷気をはらんだ世界の果てから吹く風を竜巻状に吹かせ
周りの熱い空気を巻き込むことで竜巻を作り
近くの敵を竜巻の刃で一掃しようとする

「俺は芯がある方が好きかな
誰かを助けるためにはね
弱いものから倒していくようなやり方は好きにはなれない」



●第四話『夜よ、冬と躍れ』
「タコか」
 紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)がぼんやりとした瞳を静かに戦場に向けていた。
「思う。お前たちはここにはいない存在ではないかと、ここはお前たちに最も不向きな場所ではないかと」
「……タコ」
 タコが周りを見る。そして、幾つかはそれだけで茹ってしまった。戦場はとても暑かった。
「眼には真実が映りて、肌には真実の熱が刺す。頭上には何がある? 虚構に躍る亡霊たち――お前たちは鉄板の上で踊っているのではないか。思い出せ、世界を」
 太陽がギラギラと照り付けていた。タコたちは次々と茹っていく。
 ――線の細い癖毛の男だった。

 彼は、ただそれだけでタコたちの大半を機能停止に追い込んだのだった。

「今のはユーベルコード?」
 味方の鮮やかな仕業に舌を巻き、黒髪の猟兵が前線に向かう。近くに同時に転送された味方は術者タイプか。ならば前は受けもとう、と。

 それにしても、タコ。
 一面の、タコであった。戦う前から茹って動かなくなっている者までいる。とにかく、タコであった。
「タコ~」
「タコタコ」
 保護色だったり保護色じゃなかったりするタコが世界よ染まれとばかりにタコタコしていた。
 ここは地上である。とても暑い日中である。地上にタコが溢れかえろうとオブリビオンが何を企もうと太陽は容赦なく世界を熱し続けていた。
「タコ……タコだ。このあっつい中タコが居る……茹ったりしないのかな。まあオブリビオンだしね……」
 黒髪の猟兵――月夜・玲(頂の探究者・f01605)が大地を踏みしめる。じゃり、と音がして風が一迅、艶やかな黒髪を弄ぶ。
「あ、あの猟兵はレアな猟兵タコ」
「知っているタコ?」
 敵がざわりとしていた。
「猟兵名鑑によると、とても気儘に行動していて居場所がなかなか掴めないレア猟兵らしいタコ」
 なんと、戦場にレア猟兵が! タコさんたちは騒然としてレアキャラに殺到した。
「マッサージするタコ~カッピングもやってますタコ~。血流良くなるタコ!」
「正直、マッサージしてくれるんなら是非ともほぐして貰いたい気もするけど、そうも言ってられないか。やってる事は酷いんだし、何よりお仕事お仕事」
 スラリ、と冴えやかに玲は『《RE》Incarnation』を抜剣した。扱う武器、模造神器は彼女の特製品。UDCの力を限定的に再現する事を目指した物である。

「さてと、それじゃあ行こう」
 玲が眼光鋭くユーベルコードを発動させれば、周囲にずらり50本、複製された神器が精製される。念動力でゆらりふわりと操ってみせればタコさんたちが目に見えて警戒した。しかし、警戒が無意味とばかりに神器は苛烈にタコさんに斬りかかり次々と捌いていく。

「保護色で忍び寄るタコ~」
「タコの屍を越えていけタコ~!」
 一体が囮になる様子で猛進し、周囲のタコたちが保護色となり。ぬるりと放たれた触腕の吸盤を玲の神器が一瞬で間に割り込んで防ぐ。よく見るとうっすらとオーラの光が耀き、ただでさえ強固な守りをさらに補強していた。鉄壁、である。
「こんなOMOTENASIはノーサンキューだよ!」

「星空も見えぬ世界の果て、辿り着くこと叶わぬイーゴーに吹く無慈悲な風よ。全ての因果を絶つ決別の刃よ。我が言葉に導かれ今ここに吹け」
 後方で詠唱が為されている。風に乗り、玲の耳にそれは届いていた。

「く、数で押すタコ」
「負けるなタコ~~!!」
 タコたちが数に物言わせて仲間の死体を乗り越え、殺到する。触手が斬られても斬られても押し寄せて。

「おもてなしされたらお礼が必要だよね。今は熱いから冷たい風を吹かせてあげようかな」
 ひゅ、と風が鳴ったのはその時だった。
 玲はハッとして一瞬だけ後ろの仲間に視線を向ける。線の細い青年の癖のある髪と灰色のローブが風に揺れていた。魔術師然とした青年は古い杖を高く掲げている。

「ありがとう!!」
 声をあげると、青年はうっそりと頷いたようだった。
(魔術を使うなら集中してたりするかな、邪魔しないようにしないとね)
 玲は背後に頼もしさを感じながら一層苛烈に神器を奔らせる。
「絶対、後ろには通さないから」
 それが自分の役目なのだと定めれば、心の奥底に火山の焔よりも熱い炎が燈る。

 ――前を受け持つ手練れの猟兵が舞踏のように華麗に敵を斬り刻んでいく。

 康行はしばらくサポートに徹していた。
 定まらぬ者の衣がはためいていた。芽吹くものの杖は魔力に満ちた。
 音もなき風の刃で精密にタコの筋繊維を切断していく。足の付け根や目を狙えば、玲の戦いやすさが格段に増す。

 同時に、康行は本命の魔術を準備していた。
 密やかに穏やかに雪が降り積もるがごとく魔力が練られていた。幸い、優秀な前衛・玲が全ての敵を前で食い止めてくれている。完全にフリーの状態での魔術の行使は若干のユーベルコードの相性の悪さを充分にカバーしてくれた。勿論、康行自身の熟達の技能あってこその成功でもある。

 気は満ちた。

 ――冬。
 波誘い、塞がれた世界を彷徨い惑う気流。
 無慈悲なる風よ。




 吹け。



 ゴウ、と。
 あるいは、シュルルル、と。
 世界が唸る。唸り、嗤い、啼いて、躍る。

 大気がぐるりと渦を巻く。
 世界の果てから吹く風が喚ばれていた。青年の眸が静謐にそれを見つめる。
 冷気をはらんだ風は竜巻状となりて、熱い空気を巻き込んで勢力を増し、敵を一掃していく。

「俺は芯がある方が好きかな」

 玲の耳には青年の聲が聞こえていた。

「誰かを助けるためにはね。
 弱いものから倒していくようなやり方は好きにはなれない」
 風は、躍る。



 『次回・第五話 ぽんぽこ狸合戦メボンゴと境界線上のタコさんズ』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
ジュジュf01079とメボちゃんと


「タコさん、結構居てる、ね…?」
普通にメボちゃんと会話しつつ周囲を見渡し
「ん。三人でかかれば、楽勝、だね」

『早業・先制攻撃』トンッと足踏み鳴らせば
足元よりわらわらと出でて飛び掛かる炎の仔狐
【燐火】の『範囲攻撃』
討ち洩らしは『2回攻撃』<雷火>の雷撃を落とす

敵の攻撃『見切り』躱し
ジュジュやメボちゃんに向かうと知れば『かばう』
「俺の大切な淑女達に、お手を触れないで、くれる?」
瞬時に『早業・カウンター』掌から『全力魔法』【燐火】

『オーラ防御』を盾の様に展開し防ぎ
『激痛耐性』にて耐える


メボちゃんとのハイタッチは狐姿に変化して
そのままジャンプしてジュジュともハイタッチ!


ジュジュ・ブランロジエ
アドリブ歓迎
さつまさん(f03797)と
メボンゴは『たぬちゃ』と呼ぶ
メボンゴ=からくり人形名

『たぬちゃ、タコさんがいる!』
裏声でメボンゴの台詞
ぴょんぴょん跳ねるメボンゴ

タコさんにマッサージされたりするのはなんか嫌だなぁ
そうなる前に倒しちゃお!
『私とたぬちゃのマブダチコンビネーションを見せようね!』

白薔薇舞刃(花弁に変えるのはメボンゴ以外の武器)に炎属性付与+二回攻撃
タコの捕縛攻撃はダッシュで距離をとりながらオーラ防御を展開
やだー!絶対捕まりたくない!
庇われたらありがとう!とお礼
メボンゴも『たぬちゃ、かっこいい!』と称賛

倒した後はさつまさんとハイタッチ
『やったね、たぬちゃ!』
メボンゴの次は私もね



●第五話『ひとつの夏』
 その戦場に、猟兵たちがいた。
 各所に散らばり、猟兵たちは戦っていた。

『たぬちゃ、タコさんがいる!』
 ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)が裏声でメボンゴを喋らせていた。白兎頭のフランス人形、メボンゴは真っ白なうさみみをひょこひょこさせ、ぴょんぴょんと跳ねている。
「タコさん、結構居てる、ね……?」
 グリモアベースからジュジュとメボンゴと共に現地に飛んだ火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は耳をピンと立て、前を視る。ふわふわの尻尾は後ろでゆらゆら。
「タコさんにマッサージされたりするのはなんか嫌だなぁ。そうなる前に倒しちゃお!」
 ジュジュは若干、敵に対しての生理的嫌悪感を感じながらもいつものように明るい声をあげた。
『私とたぬちゃのマブダチコンビネーションを見せようね!』
 メボンゴも元気よく耳を揺らし、小さなおててでシュッ、シュッとパンチするような仕草を見せる。やる気まんまんだ。
「ん。三人でかかれば、楽勝、だね」
 トンッ、と軽やかな音を立ててさつまが足を踏み鳴らせば、足元からコンコンわらわらと炎の仔狐達が躍り出る。

「コーン!」
 くるり、ふわふわの尾を膨らませて仔狐達が元気よく鳴く。ほんわか温かな焔宿して揺らめかせ、さつまへと宝石のようなくりくりとした瞳を向け、コンと鳴く。
 コン、コン。遊ぼうか。
「ちょいと、遊ぼうか」
 青色の炎がゆぅらり、揺れて。さつまがゆぅるく言の葉紡げばコンコン達が尻尾ぶんぶか、炎ぶんぶんぶわりと敵陣を燃やしていく。
「タ、タコぉ~~~~!」
「逃げるタコー!」
 タコさんたちがわさわさと炎から逃げていく。それを見つめる仔狐たちとさつまは揃って尻尾をぶんぶか振った。

『たぬちゃ、頑張ってる!』
 うん、とメボンゴに頷きながらジュジュもまた戦っていた。
「ご覧あれ、白薔薇の華麗なるイリュージョンをっ!」
 さらりと髪を風になびかせて、ショータイムとばかりに緑の瞳が煌めいて。メボンゴがぴんっとお耳をたてれば白い薔薇の花びらが戦場に舞い上がる。赤い兎の眸が見つめる世界で、ユーベルコードによる花びらはふわりひらりと戦場に優雅に舞い踊り、タコさんたちを倒していく。
「順調、順調!」
『やったー!』
「っと、わわっ」
 ジュジュはメボンゴと一緒に俊敏に前線を駆ける。触手が後を追ってくる。しゅるしゅる、しゅるり。ぬるぅり。
「やだー! 絶対捕まりたくない!」
 おぞぞぞ、と背筋に悪寒が走る。
「ジュジュ、メボちゃん!」
 タコさんの触腕が視えない壁に阻まれた。さつまのオーラが盾状に展開されている。
 ぶわわ、と尻尾を膨らませたさつまは颯爽と前に出てタコさんの触手を防いだ。ぎり、と触腕を掴んで黒の眸が凄むように圧を増す。
「俺の大切な淑女達に、お手を触れないで、くれる?」
 ゴウッ、とさつまの背から迸るようにして全力の燐火が敵を灼き切った。守ってくれた。
 ジュジュはほっと息を吐く。

 ――今のは、怖かった。
 けれど、守ってくれたさつまの尻尾がぶわわと膨れていて、心配そうに振り返る顔が一瞬でジュジュの怖かったハートをほんわか安心させてくれる。だから、ジュジュはいつものような笑顔になれた。にっこり、前向き、溌溂と。
「ありがとう!」
 元気いっぱいの笑顔。
 ――さつまさんを心配させちゃ、いけない。さつまさんのおかげで大丈夫だよって全身で教えるんだ、と。
『たぬちゃ、かっこいい!』
 一拍遅れてメボンゴがさつまを称賛した。尻尾がふんわりして、さつまの顔が安心した様子で。だからジュジュはえへへ、と笑った。
「さつまさんのおかげ!」
「よかった」
 さつまがゆるく尻尾を振る。背には、大きなおそらを背負ってた。からりと晴れたおそらは戦いなんて知らないよって言うように青々として、のんびりのんびり、真っ白な綿ぐもを流していく。

「終わりに、しよ」
「うん」
 さつまとジュジュが一緒になって大地を蹴る。熱した大地が足元でじゃりりと音を立てる。駆ける速度を徐々に増せば、景色がぐんと後ろに流れる様と前から後ろに流れる風が心地よい。さつまは深い色の眸を一瞬和らげた。ジュジュが楽しそうに笑っている、それがわかる。

 前方には、タコさんの残党がいる。あれが最後だ。
 狐の和装束がはたはたと音を立てる。
「タコさん、待て」
『待て待てー!』
 カッ、
 戦場が刹那峻烈に光る。
「タッ……、」
 敵陣が沈黙する。
 ぷす、ぷすと地から煙があがっていた。それも炎に飲まれてすぐに紛れてしまう。
 だが、その場にいた者たちにはその一瞬が鮮明な記憶として脳に刻まれた。黒き雷が苛烈に落ちて討ち漏らしを葬ったのだ。
「討ち漏らし、あかん、から」
 さつまが尻尾に文様を拡げて黒き雷を放ったのである。

『たぬちゃ、すごーい!』
 メボンゴが愛らしく左右に揺れながら称賛した。称賛しながらジュジュも技を放っていた。
「メボンゴ波~~ッ!」
 ゴウッと衝撃波が放たれて、残るタコさんをお掃除したのであった。

 戦場がすっきりとしていた。
 敵が綺麗に倒されている。猟兵たちの戦いは勝利を収めたのである。

「「おつかれ!!」」
 狸にも似た愛らしい狐姿に変化したさつまは前足をひょいっとあげてメボンゴとハイタッチをする。次いで、ぴょこんっと跳ねた。空中でくるり一回転し、ジュジュとも華麗なハイタッチ!
 空は、のんびりとそれを観ていた。

「タイムリミットはもう少し……、他の戦場にも行かないとね」
 猟兵たちは次の戦場へと向かう。それぞれの胸に決意と覚悟を抱いて。

 虫がジリジリと鳴いていた。
 戦っている最中には、不思議と気付かなかった。その小さな生命もまた、儀式が成功すれば本来のみじかい寿命を前にして失われることだろう。


 彼らが守っているもの――その季節の名を、夏と言う。
 二度とない夏。
 それを守れるのは、今だけなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月13日


挿絵イラスト