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エンパイアウォー⑧~死して、果て

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●死して、果て
 悲鳴だ。それは子供の声であったり、女の声であったり。
 声色は違えども、滲む感情の色はどれも似ていた。
 恐ろしい、怖い、拒否、忌避。そこに満ちるのは負の感情ばかり。
 どうして、なぜ、なにが。疑問の気持ちもままあるが、それよりもこの現実を受け容れたくないのだ。
「いやだ、いやだいやだいやだー! はな、はなせぇ! うわあああ」
「ああああっ、ば、ばけもの!! くるなぁ!」
 逃げ惑う村人たち。彼らが逃げてきた方にはひとならざるものがいた。
 生臭い吐息を醜悪に吐き出して――それはにたりと。涎がぼたぼたと零れる口端を上げた。
 そしてふぎゃあふぎゃあと泣き叫ぶ赤子の片足を掴んで持ち上げる。
「ああああ! 坊や! やめ、やめてぇ、あ、あ、あっ、ああああああ!!」
 母親は真っ青になり泣き叫ぶ。醜悪な化け物が我が子を掴んでその柔らかな腹に容赦なく噛みついた。
 噛みつかれた赤子は甲高く、泣き叫び続ける。赤子の柔らかな肉はぶちぶちと嫌な音を立てながら食いちぎられ、それを食んだものはくちゃくちゃと咀嚼する。
 母親はあまりのことに意識失いその場に崩れ落ち、赤子は臓腑を垂れ流しびくびくと震えていたが血の気失い息絶えた。その亡骸は雑に放り捨てられ、地面に鈍い赤をまき散らした。
 これは――村で起こっている一幕に過ぎない。
 他にも凄惨な光景が広がっており、村人たちは追い立てられていた。
 村人たちを追い立てているのは水晶屍人。その身は歪に食いちぎられているかのようだ。腐り果てた肉がどうにかつながっているのか。それとも、もう肉はなく黄ばんだ骨が見えているのか。
 しかしそこを水晶が補って、一層醜悪に。そして歪に象られている。
 凄惨な死をもって果てたものたちが弄ばれて歪み、この世に留められている姿は見るに堪えぬものでもある。
 しかし、おおよそ常人が持つ心など無き水晶屍人たちは思うままに暴虐を尽くすだけなのだ。
 そして命じられたままに鳥取城へと、人々の足を向かわせながら――屍を増やしていく。

●予知
 ああ、酷いものをみたと妖狐の男、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は声に何の色も乗せずに、グリモアベースにいた猟兵達へと頼まれてはくれんかと視線を投げた。
「山陰道に向かってほしいんじゃ」
 サムライエンパイアにおける戦いは知っておろうと言って。
 山陰道の防御指揮官である安倍晴明は、奪った鳥取城を拠点として、猟兵と幕府軍を壊滅させる準備を行っているという。
 その場所である意味が、そしてあるのだと。
「鳥取城はな、『鳥取城餓え殺し』というのが行われた場所で恨みの念が強い。それを安倍晴明は利用しようとしておる。いやもう、しておる」
 この城に、近隣住民を集めた上で閉じ込め飢え死にさせることで、奥羽の戦いで遭遇した『水晶屍人』の十倍以上の戦闘力を発揮させる事が可能となるのだと。
「強化型『水晶屍人』が量産されたなら、山陰道を通る幕府軍と猟兵を殺し尽くすにはありあまる戦力となる。つまり、手が出せんなるということじゃ」
 そうなるのを、今なら防ぐことができるのだと――嵐吾は言う。
「今はまだ、その強化型『水晶屍人』の数は少ない。じゃから鳥取城へと農民たちを連れ去ろうとしておるんじゃ」
 それは、その数を増やす為に。
 そうさせない為にその一つを挫いてほしいと嵐吾は紡ぐ。今なら、まだ誰の命も失う事無く対処ができるのだと。
「今から、水晶屍人らがやってくる村の近隣へと皆を送る。開けた場所ゆえ、その姿はすぐに見つけられるじゃろ」
 村の周囲には田園が広がっている。田園の中、その道を通ってくる水晶屍人らに仕掛ければいい。
 戦いが起これば、近くに村人たちがいたとしても危険と感じてすぐに逃げるだろう。
 しかしこの水晶屍人は簡単には倒すことはできない。猟兵とも張り合う力を秘めたものだからだ。
「じゃから、油断せんようにな」
 わしは送るしかできんけど、武運をと嵐吾は紡いで。その手のグリモアを輝かせるのだった。


志羽
 御目通しありがとうございます、志羽です。
 締め切りなどについてはマスターページの【簡易連絡】にてお知らせします。
 OP公開後より受付をします。プレイングが送れる限りは送って頂いて大丈夫ですが、全員描写するとは限りません。

●シナリオについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●敵について
 安倍晴明が鳥取城の怨霊を利用して造った『水晶屍人』10体程度が敵となります。
 わりと、強敵です。
 また、周囲に村人たちがいても勝手に逃げますので特に声かけなどは必要ありませんので避難を促すプレイングは必須ではありません。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『水晶屍人』

POW   :    屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
強化型水晶屍人……か
安倍晴明も厄介な事をするもんだね
村人も助けなきゃいけないし、何より敵をこれ以上戦力増強させる訳にはいかないからね
ま、ちょっと頑張ってお仕事しますか
じゃあ、行くよ!

まずは周囲の様子を見て敵の動向を把握
連れ去る事が目的なら、まだ噛まれたりはしてないのかな
とりあえず襲われている村人がいたら速攻で近づいて、間に入って助けよう
ほら、さっさと逃げて
こいつは私が相手するから!

●戦闘
《RE》Incarnationと空の記憶を抜剣して【雷鳴・解放】を起動
雷の擬似UDCの力を纏って一気に勝負を決めるよ
高速移動で敵を翻弄しながら両剣で『2回攻撃』
連続攻撃で一気にキメるよ!

●アドリブ等歓迎



 送られたその場所は、長閑で。
 広がる田園はまったく戦いの喧騒からは縁遠そうな場所だった。
 しかし――遠くに、敵たる水晶屍人の姿を月夜・玲(頂の探究者・f01605)は見つけていた。
「強化型水晶屍人……か」
 その身を突き破る様に水晶がはえ、鈍く輝いている。
 すでに死した者を、さらに酷使して使う――安倍晴明も厄介な事をするもんだね、と玲は呟いた。
 と――作業をしているのだろう。和気あいあいとした村人の声が玲の耳に届いた。
 彼らはまだ水晶屍人に気付いていない様子。
 彼らは助けなければいけない者達だ。玲は彼らと水晶屍人の間へと走る。
 何より、ここで村人たちを連れていかれ戦力増強させる訳には、いかないのだ。
「ま、ちょっと頑張ってお仕事しますか。じゃあ、行くよ!」
 走る速度を上げ、玲は村人たちへと声を向ける。
「ほら、さっさと逃げて」
「? 逃げる?」
 村人たちはその声に周囲を見て、そして気付いた。
「な、なんだあれ!」
「化け物だ!」
 慌てて村の方へと逃げ始める村人たち。玲はそれでいいと頷く。
「こいつは私が相手するから!」
 村人たちにまだ噛まれている者も、襲われている者もいない。
 水晶屍人は村人たちが逃げる姿に気付いて動きを少し早めた。
 しかしその前に玲が立つ。
 それはそれは再誕の為の詩であるもの、そして遠き空に思いをはせるもの――I.S.Tを利用した兵器を玲は両手に。
「雷の疑似UDC解放。我が身よ、稲妻となれ!」
 走りながらばちりと、雷が玲の周囲で爆ぜた。
 手を交差させ、水晶屍人の傍ら走り抜ける瞬間に振り払う。
 過ぎ去ったと思わせ足を止め身を翻す玲。斬撃を連続して畳みかける。
 斬りふせる、斬りつける――その攻撃を受けながら水晶屍人もまた己の得物である錆びたクワを振り上げた。
 それは大きな動き。しかし振り下ろされた一撃は――地面を抉っていく。
「さすがに喰らったら危なそう、でも」
 この速さにはついてこれないようねと高速移動で敵を翻弄しながら攻撃を重ねていく。
 水晶屍人の大ぶりの一撃からの連続攻撃。けれど一度避ければ、止まることできずもうあたらない。
 その隙に玲は水晶屍人の背面に回り込みその首筋へと刃を振り下ろした。
 跳ねる首と、無くなってもまだ動き続けていた身体は――やがて地に崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

陰陽師、は
邪を祓うものだと思っていたけれど
こんな、ひとの生命を弄ぶなんて……酷い、悲しい
もうこれ以上、苦しみも哀しみも広げないよう
彼らを解放しよう。櫻宵、おねがい

歌唱に込めるのは駆ける櫻への鼓舞
君のための『凱旋の歌』を歌おうか
より強く速く、かけれるように

鎮魂歌となればいいんだけれど
怨に満ちた屍に歌うのは『光の歌』
歌唱に力こめて、戦場中に響かせるように
意思無き空の心に注ぐように
オーラ防御の水泡を漂わせ僕を庇おうとする櫻宵ごと守るよ
彼への攻撃は、僕が防ぐ
彼の血の一滴も君たちになんて
あげないから

櫻もたまには陰陽師っぽいことを言うんだね
お眠り安らかに
苦しいのはもう終わり


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

死を弄んで駒にするだなんて
晴明も非道なことをするわねえ
これではあたしとそう変わらないじゃないの
あたしの人魚にこんな悲しそうな顔をさせるなんて……許せないわ

リルの歌声は鎮魂歌のよう
鼓舞受け微笑み刀に込めるは破魔の桜
リルを庇いながらなぎ払い、四肢から薙ぎ斬るよう2回攻撃
傷を抉り、攻撃見切り躱し際に咄嗟の一撃
組みつかれたならグラップルで引き剥がし殴りふせ、邪魔な水晶かち割る意気で斬りつけるわ
手応えある相手ならなお嬉し、楽しいわ!
踏み込み放つは怪力のせた力一杯の

絶華

敢えて言いましょう
安らかに怨なくあがれますよう…
今一度、殺してあげる!
首を頂戴

そいで、静かに眠りなさいな



 田園の中、水晶屍人が二体向かってくる。その二体はググァと喉奥から絞り出すような呻き声を零した。
 その姿にリル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)は僅かに瞳眇めて。
「陰陽師、は――邪を祓うものだと思っていたけれど」
 こんな、ひとの生命を弄ぶなんて……酷い、悲しいとリルは瞳伏せる。
 僕の知る陰陽師は、一番近くにいる陰陽師は――櫻は、違うとリルは誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)へと視線向けた。
「死を弄んで駒にするだなんて、晴明も非道なことをするわねえ」
 櫻宵も眉顰めて、ふと息を吐く。そして視線を、リルへと向けると。
「もうこれ以上、苦しみも哀しみも広げないよう――彼らを解放しよう。櫻宵、おねがい」
 その表情に瞬いて、櫻宵はええと零し、リルの目尻にそっと指を這わせた。
「これではあたしとそう変わらないじゃないの」
 向けられた言葉の意味がわからず何が、とリルは瞬く。
「櫻は全然違うよ」
 その表情にそうね、違うわと櫻宵は微笑む。
 けれど、櫻宵の心に蹲る想いがある。どんな表情だって、齎すのは自身でありたい。
 もちろんこんな顔をさせるつもりはない。だが自分以外の者の行いによってリルが浮かべたこの、表情。許せるわけがなかったのだ。
「あたしの人魚にこんな悲しそうな顔をさせるなんて……許せないわ」
 だから、任されるわと櫻宵は万の妖の血で鍛えた紅い紅い血桜の太刀を抜き放ち駆けた。
 その背中に向けてリルは歌を紡ぐ。櫻宵の為に、想いを込めて――『凱旋の歌』を。
「――君の勝利を歌おうか」
 より強く速く、心昂らせ希望、勇気を喚ぶ儚くも力強い歌声を響かせる。
 その声は水晶屍人には届かないが櫻宵の心を震わせるには十分なもの。
 リルの歌声は鎮魂歌の様と思いながら刀に破魔の桜を櫻宵は込める。
「リルには触れさせないわよ」
 昂る心のままに櫻宵は走り込み、その四肢から薙ぎ斬るよう振り払う。
 一体のその足を落とせばバランス崩れる。しかし前のめりにそれは櫻宵へと襲い掛かり歪に欠けた長い爪を振り下ろした。
「っ!」
 櫻宵の腕を掴んで、そのまま噛みつこうとしてくる。が、その腕を掴んで櫻宵は引きはがし櫻宵は殴り飛ばした。
「やってくれるじゃない!」
 けれど、簡単に折れぬ敵というのがわかる。手応えある相手と戦えることは櫻宵にとって楽しい事。
 櫻宵に掴みかかった瞬間、リルは一瞬息を飲んだ。けれどその動きにほっとして、僕は自分に出来る事をと新たに歌う。
「光あれ、光あれ。君の行く末に光明灯し 生命の静寂に 光の賛歌を添えて――ほら、お還り」
 その歌は、水晶屍人に向けたものだ。
 鎮魂歌となればいいんだけれどと、怨に満ちた屍へ光の歌を向ける。
 リルの歌声は玲瓏たる銀細工、永遠に移ろわぬ硝子の音色でありながら力あるものだ。
 戦場中に響くその声は一体どこまで広がっていくのだろうか。その端まで櫻宵は行かぬからわからないのだが、目の前の水晶屍人の動きが鈍く、落ちた。
 意思無き空の心に注ぐように――その歌を受けて水晶屍人の一体が崩れ落ちる。
 だがすぐさま立ち上がり手にしていた鎌を大きく振り上げて櫻宵へと襲い掛かった。
 もう一体と斬り結んでいた櫻宵はその攻撃を気に留めていない。
 それは知っているからだ。
 リルの歌声が響き、オーラが水泡のように姿を変えて櫻宵を守る。
 櫻宵への攻撃は――僕が防ぐ。弱く、守られるままでは決していないのだから。
「彼の血の一滴も君たちになんて、あげないから」
 リルはちょっとだけ胸を張って、攻撃の先を失いその場に伏せた水晶屍人へと向けて歌声を一層、響かせた。
 その歌声を耳に、そろそろ終わりにしましょと水晶屍人の懐へ櫻宵は踏み込む。
「敢えて言いましょう。安らかに怨なくあがれますよう……」
 怪力をのせ、力一杯の剣戟を放つ。空間ごと断ち切る不可視の剣戟が走り抜けた。
「今一度、殺してあげる!」
 その首を頂戴と紡げば、僅かの間を置いて身体より頭部がずり落ちた。
「そいで、静かに眠りなさいな」
 まだ動こうとするその身体へともう一撃を加えて眠りに導く。
 その様にリルは瞬いて。
「櫻もたまには陰陽師っぽいことを言うんだね」
 僕も導いてあげるともう一体へと視線向ける。
「お眠り安らかに、苦しいのはもう終わり」
 その歌声は水晶屍人を動かす魔を蕩かすように解いて、そして砕いていく。
 安らかに、眠る様に水晶屍人はその動きを止めて、その身を還していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アラン・サリュドュロワ
マリー(f19286)と
アレンジ追加歓迎

……くり抜いて、どうするおつもりですか?
呪われそうなので止めて下さい
装飾品が欲しければ私が贈りましょうか、殿下に似合いの色を

前に出て姫を守るように群れの中へ
引き付けて、さりげなく逃げる民から引き離すように誘導する
……かしこまりました、我が君
少々お待ち下さい
斧槍ジゼルで敵の攻撃を打ち払うと
大きく腕引いて構え、一閃
周囲を薙いで距離を開けさせる
──亡者といえど、御前だ。控えろ
ジゼルの魔力で創り出された氷刃をまとめて周囲へ撃ち出す
当たれば斬れ、触れれば凍る
翻す刃で主と共に命無きものを返していく

このような外道の術、神は赦されまい
彼らに慈悲があらんことを


マリークロード・バトルゥール
アラン(f19285)を伴に
アレンジ絡み歓迎

まぁまぁ。見間違える事無く化け物ね
水晶が見事なだけに朽ちた様が残念だわ
……ねえ、アラン
あの部分だけ取り出す事は出来ないかしら?
な……ち、違います!
装飾品が欲しい訳じゃないわ。もうっ!

敵の動きが厄介ね。わたくしの騎士、アレを留められて?
農具が風切る音を頼りに攻撃を見定めながら、破壊すべき部位を見定め問う
『あなたは人かしら。それとも化物かしら?』
伸ばした影で絡め拘束すれば、返答に顔を顰める
ああ、可哀想なこと
鈍らせた隙を見て地を蹴って刃を閃かせた
狙うは不浄の煌きみせる水晶を抉る
これがわたくしに出来るすべて
いま楽にしてあげるわ

どうか最期は人の身として死ね



 小国の姫――の、影たるマリークロード・バトルゥール(夜啼き鶯・f19286)にとっては、水晶屍人というのは民を脅かすものに他ならない。
 それは世界が違っても国を治める側としては、到底相容れぬものだろう。
「水晶が見事なだけに朽ちた様が残念だわ」
 水晶屍人の姿に紫色の瞳を瞬かせ、水晶は見事なだけに朽ちた様が残念とマリークロードは零す。
「……ねえ、アラン」
 あの部分だけ取り出す事は出来ないかしら? ――などという、言葉に。
「……くり抜いて、どうするおつもりですか?」
 呪われそうなので止めて下さいとアラン・サリュドュロワ(王国の鍵・f19285)は呆れのような、本気なのかと様子伺う一歩引いた声色で紡ぐ。
 そして言ってから、ああと――少しばかり、揶揄うような。けれど臣下としての言葉を贈るのだ。
「装飾品が欲しければ私が贈りましょうか、殿下に似合いの色を」
「な……ち、違います! 装飾品が欲しい訳じゃないわ。もうっ!」
 アランはそんなマリークロードの様子に笑って――けれど次には騎士の顔だ。
 それは水晶屍人との距離が詰まっているから。
 幸い村人たちはこの場にいない。
 ずるずると、農具を引きずりながらやってくる水晶屍人は、もともとは農夫であったのだろう。その様相から察することができる。
「敵の動きが厄介ね。わたくしの騎士、アレを留められて?」
 マリークロードの言葉は問い掛けの様で命令だ。
「……かしこまりました、我が君。少々お待ち下さい」
 アランはマリークロードの前に達、ジゼルと呼ぶ。
 手の内に斧槍となって収まるは薄氷を纏う優美な小型竜だ。
 大きく腕引いて構え、踏み込むと同時に一閃する。
 向かってきた水晶屍人を薙ぎ払うアラン。
「――亡者といえど、御前だ。控えろ」
 近づいてくる、それの足を止めねばならない。
 アランは己の持てる手を打つ。
「ジゼル、君の氷を少し借りるよ」
 斧槍の周囲に漂う氷刃。それを振り下ろせば、水晶屍人の周囲へと打ち出される。
 当たれば斬れ、触れれば凍るそれに水晶屍人の動きが留まる。
 それでも完全に圧し留められるわけではなく。
 鍬が振り下ろされる速さは常人よりも早く音がついてくる。
 その風切り音を頼りにマリークロードは攻撃を見定めながら、どこを攻撃すべきか――破壊すべき部分を見定めて問う。
「あなたは人かしら。それとも化物かしら?」
 問いかける――しかし、水晶屍人は答える言葉を、すでにもたないのだ。
 返答は呻き声、威嚇の声。決して言葉ではない。
 マリークロードの問いかけに応えられぬ水晶屍人は影に絡めとられ締め上げられる。
「ああ、可哀想なこと」
 鷲翼の意匠が刻まれた装飾短剣、その刃をマリークロードは閃かせる。その刃は、裏切らぬ輝きをもっている。
 影で絡めとり、動き鈍くなった隙に地を蹴って肉薄する。
 その刃が狙うのは不浄の煌めき見せる水晶。
「これがわたくしに出来るすべて――いま楽にしてあげるわ」
 そこへ追撃とばかりにアランも再び氷刃を見舞うのだ。
 水晶と肉の付け根に突き刺さる刃がその身を凍らせて――そこを砕くのは簡単な事となる。
 肉から抉って、それがその身より離れ、落ちるように。
「どうか最期は人の身として死ね」
 その言葉に憐憫は無く。ただ出来る事をする事こそ手向けと思う――そんな気持ちが滲んでいた。
 マリークロードが凍った場所を抉り、水晶落とす。それがなければ――人ではなくとも。姿だけは、元に近づくことができるのだ。
「このような外道の術、神は赦されまい」
 アランは呟いて、斧槍を振るう。
 彼らに慈悲があらんことを――その祈りを込めて水晶屍人を打ち砕いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
ここの人達を屍人になどさせぬ

到着次第即、田園へ走り
一番村に近い距離にいる屍人へ向かう

相手の攻撃は牙や、武器…
近接向きのようだ

初撃は、中距離から薙ぎ払いで
相手に回避か防御をさせることで隙を狙い
踏み込み、二回攻撃で爪や武器持つ腕を落とせぬか試みる

屍人故、負傷気にせず来そうだ
反撃は、可能な限り見切りや瓜江操り防ぎ
致命傷だけは避けれるよう試み

近くで彼らの動力
操る晴明の魔力の源、流れを六感や封印解く際の要領で注視
己が血で瓜江の封印解き
風刃纏う彼で、源を斬れたら

怨み
嘆き
死して尚操られる苦悶も
声が聞こえる度に痛む胸
けれど、それは奥に

屍人は…疾く死に還そう
もう、苦しまなくて良い様に

君達をそうした晴明は
必ず斬る



 ここの人達を屍人になどさせぬと、冴島・類(公孫樹・f13398)は走る。
 人の歩み寄りいくばくか遅い動き。異質なる存在、水晶屍人の姿を類の緑色が捉えた。
 相手の得物は――農具だ。錆びた鍬だろうか。それをずるずると引き摺りながらやってくる。
 そしてその牙や、爪。近接向きの相手だと類は冷静に分析していた。
 敵のその手が届くかどうか――そんな距離を取って類は赤いから繰糸で薙ぎ払う。
 水晶屍人は、守る様子もない。そして回避という考えもないようだ。
 その攻撃を受けるまま、バランスを崩し動きが鈍る。
 それは隙となり、類は懐に踏み込んで銀杏色の組紐飾りの付いた短刀を閃かせた。
 その刃が――片腕を切り裂く。硬い骨の感触だ。けれど筋に沿ってその肉を断つように滑らせれば手に持つ鍬をとり落とす。
 けれどもう、それを気にはせず傷ついた腕を振り下ろし掴みかかろうとする。
 その負傷気にせず行動することを、類は予想していた。
 咄嗟に身を引いて、その指先を動かし濡羽色の髪持つ絡繰人、瓜江を操りその手を跳ね上げる。
 水晶屍人からの攻撃を瓜江で受けながら、類は動力を探る。
 操る生命の魔力の源、流れなどがあるのではないかと――注視してみるも、近くで操っているなどという様子はないようだ。
 それは水晶屍人の内ですべて渦巻いているのかもしれない。
 類は己の血を持って瓜江の封印を解く。瓜江は風刃をその身に纏って、水晶屍人へと向かう。
 怨み、嘆き――死して尚操られている。
 感情があるのか、ないのか。
 呻くような声を水晶屍人が零すたびに、類の胸は痛む。
 けれど、そのじわりとした痛みは胸の奥へとしまい込む。
「……疾く死に還そう」
 もう、苦しまなくて良い様にと類は願うのだ。
 そして、誓う。
「君達をそうした晴明は――必ず斬る」
 類は赤い絡繰糸を操り、瓜江を走らせる。そして水晶屍人の、その身を砕いて、壊して、風の刃で切り裂いて終わりを与える。
 地に落ちる、その骸を見詰めた後、類はその瞳に決意を乗せて伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グレ・オルジャン
陰険術者が後ろに引っ込んで出てこないのが気に食わないね
引きずり出すには目論見をぶち壊すしかないってんなら、望むところだ

集落への入口になり得る場所を背に待ち構え、手袋を叩きつける
宣告するルールは『あんたはそれ以上進めない』
UCに拘束力はないし、構わず進んで来るだろうけど
ダメージには期待し過ぎず、噛みつきや爪を号火の鞘で受け藍銀の風を呼ぶ
狼達を四方から回り込ませ、手足から噛ませ足止め
止めておやり、兄弟たち
二度目の死は長く苦しませたくないもんだね

縁ある土地じゃあないけど
弱い奴らから虐げられてくのはどこだろうと変わりないんだね
腹が減ってるならおいで
その胃袋に一発ぶち込んで、飢えを終わらせてやるからさ



 水晶屍人、その前にグレ・オルジャン(赤金の獣・f13457)は、不機嫌そうな表情で立っていた。
「陰険術者が後ろに引っ込んで出てこないのが気に食わないね」
 吐き捨てるように紡いだのは、この件を操る者への思い。
 風のように自由な女は、澱んだこの空気は吹き飛ばすもののうちだ。
「引きずり出すには目論見をぶち壊すしかないってんなら、望むところだ」
 村へ続く満ちへとグレは立つ。
 入口を背中に待ち構え、のろのろとやってきた水晶屍人へと、手袋を叩きつけた。
 水晶屍人は、何を叩きつけられたのかわかってはいない。
「――あんたはそれ以上進めない」
 そこへ、グレは凛とした声を響かせる。
 ルールを定めても水晶屍人はそれを守ることはない。拘束力もないのだから。
 けれど、その言葉には力があった。
 水晶屍人が一歩進むたびにその身に亀裂のように傷が走り、血が跳ねる。
「深い傷になるとは思ってないけどね」
 本命はこちらさとひゅっと風切る音。振り下ろされる敵の爪を、本性を暗器とする旅連れの杖、その鞘で軽く弾けば。
「兄弟たち、やるよ!」
 銀色狼の群がグレの声に応えて走る。
 四方から回りこみ、銀色狼たちはその手足へと鋭利な牙を向け噛みついた。
「止めておやり、兄弟たち」
 二度目の死は長く苦しませたくないもんだね、と――女は一瞬だけ、何とも言えぬ色を視線に含めた。
 この場所は、グレにとって縁ある土地ではない。
 けれど――どこでだって思う事はある。感じる事はあるのだ。
「弱い奴らから虐げられてくのはどこだろうと変わりないんだね」
 水晶屍人が大きく、その腐り崩れいく口を大きく開いて唸る。
 だらりとその口から涎零し醜悪な臭いをまき散らしながら。
「腹が減ってるならおいで」
 グレはその瞳に好戦的な色を乗せて、けれどそれは対する水晶屍人への礼儀のようなものでもある。
 結い上げた髪がその動きに追随する。踏み込んで、振り上げた杖の一撃が水晶屍人の腹へと痛烈な一撃を見舞う。
「その胃袋に一発ぶち込んで、飢えを終わらせてやるからさ」
 呻いて崩れ落ちる。
 その水晶屍人へと銀色狼たちが飛びかかりその身を食い破る。
 やがて動きを止めた水晶屍人の骸を静かに見遣って、僅かの祈りを向けてグレは踵を返したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
いつもの事だけども……胸糞悪ぃったらねぇな

拘束術使用
敵が射程に入ったら拘束術で先制攻撃
俺自身はダッシュで近接して華焔刀でのなぎ払い
刃先返しての2回攻撃からの範囲攻撃

以降はフェイントも交えながら
攻撃がワンパターンにならねぇよう注意し
拘束術も併用しつつ攻撃

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防ぎ
カウンターで咄嗟の一撃

どちらも間に合わない場合は左手を犠牲にしとく
右手が無事ならどーかなんだろ

可能な限り戦場の状況は掌握
同戦場に居る他の猟兵へのフォローも
拘束術で可能な限り行う

こいつらが誰かの大切な奴だったとか
そーゆーんを考えンのは後だな

倒さねぇと被害が増すだけだってんなら、仕舞いにしようぜ



 田園を歩んで向かってくる、水晶屍人。
「いつもの事だけども……胸糞悪ぃったらねぇな」
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は呟いて、水晶屍人の、その姿を見定めていた。
 周囲に村人はおらず、特に心を向ける必要はなさそうだ。
 戦いに集中できて良いと、水晶屍人が射程に入ると同時に倫太郎は災いを縛る見えない鎖を放ち縛り上げる。
 そして、倫太郎は水晶屍人の元へと走り込んだ。
 朱で描かれた焔が舞い踊る黒塗りの柄に、美しい刃紋が映える薙刀を構え薙ぎ払う。
 水晶屍人の身を斬る感覚は重い。振り払った刃を再び返してもう一撃入れる。
 身を斬られながらもその爪振り下ろしてくる水晶屍人。
 その攻撃を、どうにか回避するが薄皮一枚、その爪が引っ掻いていく。
 空を斬る鋭い音に、まともに喰らえば危なそうだと倫太郎は視て。
「右手が無事ならどーかなんだろ」
 もし攻撃受けるなら左手を犠牲にするかと最悪をもえる。
 呻き声を上げながら迫る水晶屍人を鎖で拘束して、その姿を正面から見つめ。
「誰かの大切な奴だった……のかも、しれないんだよな」
 そう、零すもののそれを考えるのは今ではなく。
「仕舞いにしようぜ」
 水晶屍人の過去を、倫太郎は知るわけでもない。
 放っておけば、いずれ誰かを――この近隣の村を襲うというのなら倒さねばならないのだ。
 それはよくよく、解っていると胸に抱いた想いは仕舞い込んで、倫太郎は薙刀の刃で水晶屍人を切り裂きその歩みを止めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

郁芽・瑞莉
安倍晴明が陰陽術で陰……、怨嗟をばら撒き人々を苦しめるのなら。
私達猟兵が陽となり、人々を怨念から守り、清め祓いましょう!!

ユーベルコードを発動し、力を高めると一気にダッシュし間合いを詰めて。
先制攻撃の鎧砕きの一撃でなぎ払って。
相手の反撃には攻撃を第六感も併せて見切り、
残像と迷彩で感覚をずらして。
フェイントやジャンプ、スライディングの身体能力に、
空中浮遊を組み合わせて回避していきますよ。
そうしてカウンターの2回攻撃で、
溜めていた破魔の力の封印を解いて力を開放。
防御を砕いた所を狙い一回目で串刺しにし、
二回目で衝撃波を叩き込み傷を抉りますよ!
「怨念は地の底へ。鎮魂の祈りを以って天へと導きますよ!!」



 世界は美しい。その世界の美しさに魅了された郁芽・瑞莉(陽炎の戦巫女・f00305)は己の戦闘以外の記憶を失っても、守るための力添えを惜しまない。
「安倍晴明が陰陽術で陰……、怨嗟をばら撒き人々を苦しめるのなら」
 そしてここにも己の力を奮い、守るためにやってきたのだ。
「私達猟兵が陽となり、人々を怨念から守り、清め祓いましょう!!」
 水晶屍人へと駆けながら、瑞莉は紡ぐ。
「昔の私、申し訳ありませんが今一度お力を借りますね」
 その言葉に美しい装飾の長剣――十束剣に残滓としてある過去の己が、その身に宿る。
「……良いんだよ私。謝らなくて。選ばれし者の力、ご覧あれ……ってね!!」
 駆ける力は一層速く、間合いを詰め振り払った一刀が水晶屍人をなぎ払う。
 咄嗟に己を守ったか、構えた農具のその柄を刃は砕いた。
 水晶屍人は壊れた農具放りすてて、瑞莉へ爪を向ける。大きな挙動に、外側に回り込むように滑り込んで、瑞莉は横脇を取って。
「怨念は地の底へ。鎮魂の祈りを以って天へと導きますよ!!」
 破魔の力を、封印を解いて解放し横脇の柔そうな場所から串刺しにするように刃を突き入れた。鈍く重い肉の感触が伝ってくる。
 そしてそのまま衝撃波を叩き込み傷をさらに抉って広げた。
 水晶屍人は腹の一部を吹き飛ばされてその場に崩れ落ちる。
 まだ動けるのなら、もう一撃を構えるがやがて水晶屍人はその動きを止めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
水晶屍人とはあちこちで相対して来たからこそ、力量の程は良く見るように。
油断しないようにと忠告を貰ったもの。
ここで足を止めるわけにはいかないのよ。

姿が見えたら、ゆきましょう。
機動力を削ぐことに重点を置くわ。
この期に及んでは、なるべく傷付けないようになんて心は二の次よ。

狙いは関節。
移動する足。爪のある手。噛みつく首。
いきていない相手だもの。止まるまで斬るわ。
核のようなものはあるのかしら。
斬って動きを止める箇所があれば憶えて、早く片付けましょう。

早く。もう生きなくても良いように。
あたしにできるのは、それだけよ。

随分とえげつない手を使ってくれること。
――この糸を引いている手を、引き摺り下ろしてやる。



 花剣・耀子(Tempest・f12822)は眼鏡の奥底から冷えた青眼を、水晶屍人へと向けていた。
 周囲にある戦いの喧騒。そして、倒れていく姿も見える。
 己の目の前にいる一体が――おそらく最後の一体だろう。
 水晶屍人とは――あちこちで相対してきた。
「油断しないように、だったわね」
 確かに油断する余地のない相手と耀子は紡ぐ。動きはゆるやかなくせに、どことなく感じる不穏さがあるのだから。
 力量の程は良く見るように、決して倒れる気は耀子にはない。
 ここで足を止めるわけにはいかないのよと、少女は強い意志を以て対するのだ。
 とんと地面を蹴って、耀子は走り始めた。
 動きは緩慢そう、けれど足を止めてしまったほうがイイだろう。
 まずその機動力を削ぐことに力傾ける。
 元は――無辜の民だったのだろう。けれど、今はもうそうではない。
 なるべく傷つけないようにと思う心がないわけではない。けれど、この期に及んでそれは二の次だ。
 花を散らし唸る機械剣《クサナギ》を構え、耀子は駆け抜け様にその膝関節を砕くように斬り足を止める。
 水晶屍人はバランスを崩し、けれど耀子を攻撃せんとその手を、爪を振り下ろす。
 そう来るのは――なんとなく予想できていた。
 回転する刃向ければその爪を巻き込み砕く。そのまま、腐臭を撒くその口を、頭を切り離せたらいい。
 振り払った刃。しかし身をかがめて水晶屍人はかわした。
 呻き声は人の言葉ではない。何も、そこに感情は燈っておらず耀子はそうだったわね、と呟いた。
「いきていない相手だもの。止まるまで斬るわ」
 核のようなものがあるなら、そこを砕けば終わりだろう。
 しかしそういったものは目に見えない。
「やっぱりその足を落してしまうのが一番よさそうね」
 早く片付けましょう、と耀子は水晶屍人へと踏み込んだ。
 早く。もう生きなくても良いように。
 あたしにできるのは、それだけよ、と。
 耀子は己がここで出来る事を知っていた。水晶屍人はまっとうな生の中にはいないのだ。
 嵐のように、花を散らして耀子は水晶屍の身を斬り裂く。
 斬って、斬って――その動きを止めるまで。
 何に迷いも見せぬ剣の軌跡はやがて、斬る先を無くし動きを止めた。
 耀子はざらりと。朽ちるように消えていく水晶屍人を見下ろしてきゅっと表情を強める。
「随分とえげつない手を使ってくれること」
 それは倒した水晶屍人へ向けたものではなく。
「――この糸を引いている手を、引き摺り下ろしてやる」
 鳥取城でもって命を弄ぼうとしている者への言葉だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月12日


挿絵イラスト