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エンパイアウォー⑧~ししむら~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●略奪者、到来せし
 日差しは限りなく暑く降り注ぎ、土の保温はその熱を照り返す。
 それでも彼ら農に生きる民は、田畑と向き合い土に汚れながらも戦う――国を挙げての危機、それが彼らに出来る戦いなのだから。
 そして、何より彼らの生きる仕事そのものだから。
 だがある時、農作業に勤しむ者に奇怪な音が響き、奇妙な呻き声と何やら生臭い匂いが漂ってきた。
 その出所は何かと目を向けてみれば、そこには……。
「……? ひ、ひえっ……!?」
 ――そこにいたのは、つい先ほどまで会話を交わしていた友人が、謎の屍人にその喉笛を食い千切られていた光景。
 驚く彼らの前に、同様の屍人が次々と現れれば、それは逃げ惑う彼らに容赦なく追い縋り。
「う、うあぁぁああ!?」
「逃げろ! オラ達が食い止めっから……ぎゃぁあ!!」
「うあああああん! おっとぉぉぉぉぉぉ!!」
 ……悲痛な叫びを放つ身体は、鳥取の城へ運び込まれていくのだった。

●澄み切った怒り
「……見ての通りだ」
 異界の天使スフィーエ・シエルフィートは、秘宝(グリモア)の輝きで予知の光景を映し出すと、静かな怒りの籠った低い声で集まってきた猟兵達に一言告げた。
「もう多くを語ることもないね。至急サムライエンパイアまで赴き、この水晶屍人を討って欲しい」

 信長六魔将が一人、陰陽師『安倍晴明』は奪った鳥取城を拠点に水晶屍人なる兵器を量産せんとしている。
 その材料を得る為に、近隣住民を浚い鳥取城まで連れ込もうとしているのだそうだ。
「だが今回の相手と、量産しようとしている奴はただの相手じゃあない」
 奥羽の戦いを席巻した大量の水晶屍人は記憶に新しいが、今回のそれは強化型なのだというらしく、十体程度で猟兵と真面に遣り合える強敵だ。
 そんなものが量産されたら幕府軍や猟兵は一溜りもないだろう。

 何故に今回の水晶屍人がそんなにも強化されているのかと問われれば、スフィーエはかつて起こった『鳥取城餓え殺し』に死んでいった者の無念を使っているからだと語る。
「簡単に言えば惨い兵糧攻めさ。どう足掻いても死しかない、すぐに楽にはなれない絶望と恐怖の中で死んでいった者の無念で作られてる」
 悪趣味だ、反吐が出る……と吐き捨てながら彼女は語りを続ける。
「そして、今回この農民達を連れ去ろうとしているのは、同様の絶望と恐怖の末に死なせた怨念を使うつもりだからだ……反吐を幾ら出せば良いんだろうね」
 噛み締めた下唇から血を垂らし、壁に拳を打ち付けて。
 暫くの沈黙の後にすまない、と頭を下げてから改めて語りを始める。

「状況としては、最初の被害者が喰われる直前に割って入って貰う形となる」
 そこで農民達を守りつつ、強化型水晶屍人を迎撃し守り抜いて欲しいと語る。
 ただし先ほども述べた通り、いつもの集団戦と違い十体程度で猟兵とやり合える強敵、油断はしないようにと語り。
 それと理性的な会話は行えないので、何かを聞き出そうとしても無駄だとも補足し。
 転送の結界を作り上げながら、スフィーエは最後にこう締めた。
「さ私からは以上だ。力無き民を、餓えの苦しみの末に死なせ敵の糧としてはいけないんだ。諸君ら徳川葵の力で守ってやって欲しい……頼んだよ」


裏山薬草
●注意!!
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 どうも、裏山薬草です。
 鳥取城餓え殺しについて詳しいことを知りたい方は、各自で調べてください。
 今回も張り切っていきましょう。

 今回は安倍晴明の計画を阻止する為、農民を守って強化型水晶屍人と戦うシナリオとなっております。
 状況はOPの通り、最初の犠牲者が喰われる前に突入し割って入る形となります。
 周辺は遮蔽物とかは特にないそれなりに広い畑です。
 多少の作物に被害は出てしまうかもしれませんが、水晶屍人の撃破を優先してください。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 集団戦 『水晶屍人』

POW   :    屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

峰谷・恵
「ほっといたらそのうち猟兵も屍人にして使おうとするんじゃないかな、安倍晴明は」

空在渾で飛行し可能な限り急いで村へと向かう。
到着したら飛行速度を維持したまま最初の犠牲者に襲いかかっている屍人を遅すぎた収穫期で斬り飛ばす(怪力)。
その後は再び飛行しながら屍人が居ない方へ逃げるよう村人へ指示し、村人を襲う屍人をアームドフォートとMCフォートの砲撃で阻止。
屍人の注意がこちらに集中したら一体ずつ熱線銃とアームドフォートで撃破し、屍人が呼び出す霊はMCフォートで処理(射撃は全て誘導弾技能使用)していく。
霊が発する閃光はダークミストシールドを眼前にかざして防御。

「空を抑えた以上一人もお前達には渡さない」


月凪・ハルマ
やらせるか……!

◆SPD
まずは農民の命優先
という訳で、【魔導機兵連隊】発動!

とはいえ流石に、こんな大量の機械兵がいきなり周囲に出てきたら
農民が余計に混乱しかねないとも思うので、まずは彼らが自分の
呼び出したもの(味方)である事を伝えておこう

その後はゴーレム達に守ってもらいつつ、
一緒に安全圏まで逃げてもらえればいい
そうすれば、後は俺や他の猟兵が水晶屍人を仕留めるだけだ


【早業】【武器改造】【属性攻撃】で手持ちの武器全てに
破魔の力を付与した後、【見切り】【残像】【武器受け】で
敵の攻撃を回避しながらヒット&アウェイ

実際の所は、この屍人も被害者なんだろうな……

これ以上苦しむ必要は無い——もう、楽になりなよ


ヘンペル・トリックボックス
また性懲りもなく悪辣な……アレの振り撒く災厄を一片残らず摘み取るのが我らの役目。えぇ、参りましょう──

手持ちの木行符と土行符で屍人と村人の間に簡易的なバリケードを生成。村人の退路を確保してから戦闘に入ります。
避難が完了次第UCを展開、【全力魔法】で【範囲攻撃】化した【破魔】【属性攻撃】を屍人たちへ叩き込むとしましょう。
敵の反撃は極力【見切り】回避するよう努めますが、万一閃光に目をやられた場合は【暗視】と【第六感】で補いながら戦闘を続行します。
悲劇の再録などさせてなるものですか。同情は禁じ得ませんが──なればこそ、一刻も早い救済を……!

アドリブ連携歓迎です。



●まことのくるしみは
 日差し照り付ける中、偶然に友人から少々用を足す為に離れたが不幸だったか。
 用を足し終えた後に感じる、排泄のそれとは違う奇妙な匂い。
「……?」
 村の若者がその匂いの元に気付けば、そこにあったのは肩より水晶を生やした屍生人……呻き声をあげてその牙を向ければ。
「! う、うぁぁっ!!」
 突如として現れた謎の怪物に牙を向けられ尻餅をつく他ない若者は、このまま哀れに食べられてしまう……そうなれば予知の凄惨な光景となるだろう。
 屍人の牙が若者の喉笛を掻き切らんとしたその時――
「飛ッ!」
 白と黒の奔流を宙に残影として描き、神殺しの力を極限まで強めた剣は、その飛来の勢いも相俟って屍人に途轍もなく重い一撃となって。
 峰谷・恵(神葬騎・f03180)の一撃は、並の相手ならばこのまま一刀の元に斬り飛ばすどころか跡形もなく消し去るほどの剛剣だろうが、流石に強化の為されたそれを倒すことは難しい。
 起き上がるそれと同時に、また新たに現れた水晶屍人がわらわらとその牙を村人へ向けようとしたその時。
「やらせるか……! 皆、出番だ!!」
 村人を庇うように一斉に現れたのは、蒸気を噴き上げながら金属の鳴る音響かせて、屍人と村人の間に割って入る機械人形達。
 危害を加えてきそうに無いとはいえ、村人にしてみれば異形の存在に変わりなきそれに腰を抜かしたまま怯えるが。
「ひ、ひぃっ……!!」
「安心してくれ。こういうものだ。こいつらは俺の術で呼び出した」
 それを呼び出した月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は、懐から天下自在符を取り出して村人に示せば合点がいったかのように村人は安堵の溜息を洩らし。
「そ、そうだ! 早く、他の奴らにも知らせねえと!」
「あっちだよ! あっちならこいつらがいないから!!」
 ハルマの呼び出した機械人形が蒸気を噴き上げ、迫りくる屍人を抑えつつ、飛翔しつつ安全な道筋を示す恵。
 恵が指し示すまま、若者は他の村人に伝えに行かんとすれば、水晶屍人は機械人形の横をすり抜けて若者を狙い追っていく。
 だが屍人の前に舞うは幾つかの符――風に乗って舞い散る羽根が如き陰陽の符。
 土行と木行の術式が込められた符が飛び交い、屍人の眼前の土を烈しく隆起させると同時、生み出された土の壁を樹木の強固な蔦が多い補強し。
「ここは私達が抑えます。あなた方は早く避難を!」
 防壁を生み出し屍人のそれ以上の進軍を防いだ、ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)の激に恵と若者が頷けば、ハルマは呼び出した機械人形を村人の護衛に着かせ。
 ヘンペルの符による防壁が食い止め、空中を先導する恵が防壁を擦り抜けてやってきた屍人を携行砲台で迎撃し、ハルマの機械人形がその余波から身体を張って護る。
 見事な三人の連携が、村人達を守り抜いている今、彼らの思いは一つ――この目の前の水晶屍人を完全に撃破することだ。
「空を抑えた以上一人もお前達には渡さない」
 若者が他の村人を避難させているのを確認した恵は、改めて屍人に目を向ける。
 獲物を奪われ、不愉快そうに牙を打ち鳴らす様はまるで獣と変わりない――猟兵達を完全に敵と見做し、排除をしに掛かるだろう。
 その獰猛なまでの戦意に、空中から携行砲台の弾丸で屍人を吹き飛ばし恵が呆れたように声を放った。
「ほっといたらそのうち猟兵も屍人にして使おうとするんじゃないかな、安倍晴明は」
「無きにしも非ず、ですな……全く性懲りもなく悪辣な……!」
 その言葉に同意を示し、ヘンペルは企てた陰陽師のさぞや悪辣な嘲笑を思い浮かべた。
 だが、あれの振りまく災厄を一つ残らず摘み取るが役目――だから。
「えぇ、参りましょう──対象認識。解析開始。属性定義。弱点把握」
 千年人形の瞳に映すは水晶屍人の呻く姿、腐れた肉体の禍々しき瘴気――破るには、怨念を払う破邪と癒し。
 腐れた肉体を焼く炎、そして肩の水晶から放たれる閃光を相殺せしめる闇影の力。
「霊符連続展開完了──!」
「させないよ!」
 次々に繰り広げられていく符の乱れ具合、正に百鬼夜行が如く――屍人がそれを潰さんと水晶より放つ閃光を闇影の属性符が靄で覆い。
 それと同じくして、空中より咄嗟に舞い降りた恵が突き出す掌、そこから放たれる闇霧の盾が、閃光の牽制を完全に封じ込め。
 ヘンペルの符の残りからなる、癒しの霊力が怨念に突き動かされし身体を解き放つように包み。
 続け様に放たれる炎符が、腐れた肉体を灼いて塵に変えていかんとしたが――だが、屍人の怨念、あまりにも悍ましく。
 炎に包まれゆく身体を引っ張り出したかと思えば、別の屍人はその身体を次々に喰らい糧と為していく。
「うわっ……」
 その光景を顔を顰めつつ、恵が携行砲台からの砲弾で纏めて吹き飛ばし。
 宙に舞い上げられていった、炎に纏わりつかれかつての同胞に噛み付かれた屍人を目掛け、次々と熱線銃の光を放つ。
 もうこれ以上は――引き金を次々と引き、放たれる熱線は舞い上げられた屍人を完全に塵に帰し。
「実際の所は、この屍人も被害者なんだろうな……」
 同時にハルマが帽子を目深にかぶり唇を噛み締めて。
「同情は禁じ得ませんが──なればこそ、一刻も早い救済を……!」
「ああ」
 ヘンペルの言葉にハルマが呼応し、駆け出す――全てに破壊の為の改造を施し完全に滅する為に。
 破邪と炎で弱った相手が破れかぶれに農具を振り回し、手裏剣を落しても、それを旋棍で回し受けして流し。
 振り上げた静かな魔導の錨が、農具を弾かれ浮足立つ屍人を絡め取っては、それを盛大に振り回し遠心力とその重量を以て別の屍人の体へと叩き付け。
 更に続け様にヘンペルの放つ符が、ハルマの背後から迫る屍人の動きを強制的に縛り付け。
 その屍人を、微塵の躊躇いも見えぬ鋭き恵の眼が見据え――携行砲台と熱線の、烈しき熱が水晶ごと塵に還すのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

星群・ヒカル
※アドリブ・連携歓迎

この超宇宙番長、星群ヒカルが来たからにはもう安心だ!
超宇宙バイク『銀翼号』に『騎乗』し、勢いよく敵にダイレクトアタック
その隙に農民には逃げてもらおう

怨霊めいたやつらには、おとなしく安らかに寝ていてもらおうかッ!
『地形の利用』でバイクの動かしやすい硬い地面へ誘導しつつ戦うぞ
敵の攻撃は『視力・第六感』で見切って回避
敵に隙が出来たら『ロープワーク・早業』でバイク上から首めがけて、超宇宙牽引ワイヤーを絡ませる
複数人まとめたら地面に叩きつけ、引きずり回せばそれなりにダメージが与えられるだろう

周囲に農民がいないことを『視力』で確認したら
『超宇宙・真眼光波動』で一気に纏めて焼き尽くすぞ!


シーザー・ゴールドマン
【POW】
鳥取の飢え殺し、日本史には珍しい籠城戦の末路だね。
エンパイア史というべきかもしれないが。

オド(オーラ防御)を活性化して戦闘態勢へ。
オーラセイバーに『ラハブの割断』の魔力を纏わせて戦います。
(大規模破壊を選択して農作物への甚大な被害を避けた)
振るわれる剣術は剛柔自在、そしてラハブの割断の効力で一撃一撃が必殺の威力を持つ。
(先制攻撃×怪力×鎧砕き)(フェイント×2回攻撃×鎧無視攻撃)
(先制攻撃×衝撃波×なぎ払い)などなど
敵POWUCは直感で受け流し又は回避してカウンターを放つ。
(第六感×見切り×カウンター)



●せめてものじひ
 半数以上の水晶屍人が猟兵達の奮戦によって倒された――否、正確にいうならば、あれだけの奮戦を以てしても半数を少し上回る程度か。
 それだけ純粋に、この強化型が強力に過ぎるということであるが――だが、形勢は確実に猟兵のものにある。
 星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)は、農具を振り回しはぐれていた村人を手に掛けんとしていた水晶屍人を横から盛大に殴りつけた――彼の騎乗する単車を以て。
「この超宇宙番長、星群ヒカルが来たからにはもう安心だ!」
 制動機器の摩擦音響かせ、華麗に決める彼の背後を、また新たな水晶屍人がその鋭く饐えた匂いの爪を以て斬り裂かんとした刹那。
 颯爽と真紅の影を残し、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)の持つ光の剣が、颯爽とその腕を斬り飛ばす。
「そして赤公爵、シーザー・ゴールドマンも来た」
「ここは俺達に任せな! おめぇらで最後みてェだから、早く逃げな!!」
 不運にも逸れていた幾人かの村人達に声を掛ければ、礼もそこそこに彼らは逃げ出す。
 それを見送り、屍人の往く手を阻みつつその饐えた匂いと、血肉破られ呻く姿を見、ヒカルは歯噛みする。
「にしてもひでえ……!」
「鳥取の飢え殺し、この国の歴史には珍しい籠城戦の末路だね」
「怨霊めいた奴らだな……おとなしく安らかに寝ていてもらおうかッ!」
 末路の悲惨さに於いて、並ぶもののない戦の末の怨念を利用されて出来た屍人達に、ヒカルは熱い戦意を向ける。
 だが思考は飽く迄冷静に、戦場を見渡し屍人の数に当たりをつける。
「数はこれで全部か?」
「ああ。だが程よく散らばっているね。各個撃破は時間が掛かりそうだ」
「なら俺が纏めてやる!」
 全身に奔流を纏うシーザーに、単車の駆動を吹かしヒカルが答え。
 一瞬、目を合わせて彼らは駆けだす――ヒカルは単車で駆けるに相応しき硬い地面を賭け、及ばぬ場所はシーザーが引き付ける。
「こっちへ来な!」
 屍人の振り回す農具を単車で擦れ違うように躱し、騎乗しながらヒカルが振り回すのは丈夫な鋼線――鉤の付けられたそれを逆に引っ掛けて。
 反撃がやってくる前に勢いよく駆動を吹かし、車輪が強く地面を抉り――その勢いで、単車の駆動が活かせる地面の敵を纏めて絡め取っていく。
 その一方で、纏う奔流で身を守りながらシーザーは屍人を光剣で引き付けて――ヒカルの単車が迫れば、その鋼線の巻き添えにせんと、その剛剣を叩き付け纏めて単車の元へ吹き飛ばせば。
 急速なヒカルの旋回は、鋼線を更に渦巻かせ吹き飛ばされた屍人を絡め取り、更なる加速が身動きのとれぬ屍人を固い地面に叩き付けていく。
「おっと。折角一塊になったのだ。逃げるなどと無粋な真似は止してくれたまえ」
 ――全て断ち切る。
 しかし一纏めにされた屍人が一斉にその歯で鋼線を噛み千切ろうとすれば、閃くかの如きシーザーの光剣が走る。
 振るう剛き勢いは、柔(しなや)かに巧みに屍人の隙間に潜り込み、その上顎を斬り飛ばし噛み千切る動きを無に変えて。
 返す刃で飛散した上顎を、次々と駆けながら擦れ違い様に両断し完全に歯の威力を削ぎ殺し。
「……よし! 農民達はいねぇ。そしてこいつらもこれで全部みてぇだな!」
 そうしてシーザーの華麗なる剣技が屍人の攻撃能力を無効化している間、ヒカルは冷静に戦場を見渡していた。
 今から放つ技は威力は申し分ないが巻き添えを喰らわせてしまう可能性があるし、やるなら一撃でやった方がいい――シーザーに目で下がれと訴えれば、狙いに気付いたシーザーもすぐに下がり。
「その目に焼き付けろ。これが……超宇宙番長の輝きだッ!」
 ヒカルの星映す魔眼より放たれる莫大な魔力の閃光が煌めき、無力化された屍人を次々と光の中に帰していき。
 破れかぶれに水晶の怨霊が抗わんとしても、眩き恒星の如き魔力の波動は、それすらも容易く掻き消して――哀れな水晶の死人を、天に還していくのだった。

●ししむらの果て
 ――かつての怨念に突き動かされた屍人との戦いは終わった。
 屍人を動かす怨念の元……餓えによる絶望と苦しみしかない終焉を、今を生きる民が味わうことは無くなった。
 猟兵達は、徳川葵達は無事に民を守り抜くことが出来たのだ。
 そして、怨念に突き動かされた哀れな死人も、これで解き放たれたことだろう。
 だが戦争はまだまだ続く……この作戦も、場所を変え未だ多く繰り広げられることだろう。
 そしてその首謀者は、それを嗤って見ているかもしれない。
 ……それでも、悲劇を一つ食い止めた成果を胸に、猟兵達は次なる戦場へ行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月12日


挿絵イラスト