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エンパイアウォー⑥~怨霊姫はツッコミたい!

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●関が原に集うファランクス
 ファランクスという陣形をあなたはお知りだろうか?
 古代ギリシャ語でそう呼ばれる古代の戦争において用いられた重装歩兵による密集陣形で、集団が一丸となって攻撃するファランクスは会戦において威力を発揮したと言われている。
 その原型は人類文明発祥のメソポタミア文明のハゲタカの碑というものにも刻まれているぐらい昔から存在するものなのだ。

「……って命令書に書いてあるけど、これどう読んでも日の本の戦法じゃないわよね……いいの本当に…???」
 このファランクスの統括を任されたオブリビオン『怨霊姫』がちょっと遠い目をしながらツッコミを入れたそうにするのを我慢する。
 上司の弥助・アレキサンダーの事を思い出すがまあ……わかっていることだが上司は絶対だ。
 (うん、言っても無駄だ)
 ……この怨霊姫、諦めるのも早かった。
 我等オブリビオンがする事はただ一つ、一人でも多くの幕府軍を殺すことだ。
 そう自分に言い聞かせ一部隊を率いると正面から幕府軍とぶつかる平地へとあえて布陣する。
「お前達の忠心、今こそ見せるときぞ。いざ進め……隊列を乱すな、陣形を整えよ!」
 洗脳された農民達が一糸乱れぬ連携で一斉に槍を天高く掲げ”鬨の声”をあげた。
「「「「エイエイオー エイエイオー エイエイオー」」」」
「全軍全身じゃ……お前達の力、この姫に見せてみぃ!」
 怨霊姫の号令と同時に部隊が前進を始めるのだった。
(攻撃の際は横隊が崩れないように笛の音に合わせて歩調をとりながら前進っと……)
 今頃になりファランクスのやり方を慌てて読んでる怨霊姫ははたして戦場に間に合うのだろうか。
 天下分け目の関が原で両軍が対峙するまであと少しの時間しかない!

●グリモアベースにて
 『大帝の剣』の広範囲洗脳能力により集められた農民兵が、日野富子から徴収した金銭によって整えられた『長槍』と『大盾』を手に古代ヨーロッパの戦術である、右手で長槍を構え、左手の盾で自分の左隣の仲間を守る陣形『ファランクス』。
 これは、一般の幕府軍では突破は不可能な堅牢さを誇る古代最強と言われた戦術の一つ。
 猟兵の活躍が無ければ、幕府軍の半数は、関ヶ原の地で壊滅してしまうだろう。

 そう前置きしたグリモア猟兵である村雨・ベルは大きな紙に描かれた図案を猟兵達に見せた。
「関が原に布陣した『ファランクス』は16×16の256名が1部隊になります。この部隊の中央に指揮官であるオブリビオン怨霊姫がいるのですが、これこそが今回のターゲットになるのですよ!」
 密集陣形の絵の中央にいいする場所に”ボス”とマジックで書きペチペチと手で叩いた。
「このオブリビオンは大帝の剣の力を農民兵に伝達してファランクスを組ませる中継機のようなものでして……」
 要は ”指揮官のオブリビオン”さえ撃破すればその部隊のファランクスは壊滅しすぐに降伏してくると言いたいらしい。
 全員を殺すよりもよっぽど楽ということもあるが、それ以前にもう一つ大事な情報があるのだ。
「ファランクス部隊の兵士一人一人は洗脳されただけのただの農民です。この世界の未来を担う住民ですから可能な限り殺さずに、オブリビオンだけを撃破してもらえたほが後味の悪い事にならないと思いますしね」
 さらに付け加えるならと猟兵達を見渡しポンポンと胸を叩く。
「ファランクス部隊といってもですね要は一般人なので、幕府軍の兵士はともかくその程度の攻撃は猟兵に届く事はほぼありませんからそこは大丈夫心配しないでね」
 全然痛くないよとジェスチャーを付け加えるのも忘れない。
「ただ数が多いですしね突破方法などを工夫しないと、いざオブリビオンと戦う時に不利になる可能性もありますからちゃんと作戦は考えてくださいね?」
 その辺りは各自の判断で好きに判断してくれということだ。
「まだまだ先は長いかもしれませんが、ヤレる事からやっちゃいましょう!」
 そう言いながら村雨・ベルはにっこりと笑いながら皆を送り出すのだった。


轟天
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 ファランクスと聞くとテルモピュライの戦いのスパルタ兵とかレオニダス1世とか思い出してしまうますが、かっこいいですよね。
 そんな敵をどう突破(もしくは迂回)しボスとだけ戦うかが鍵ではないでしょうか?
 皆さんのご参加お待ちしています。
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第1章 ボス戦 『怨霊姫』

POW   :    怨霊乱舞
【無数の怨霊の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    怨霊傀儡
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【怨霊を憑依させることで、自らの傀儡】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    怨霊家臣団
【レベル×1体の、怨霊武者】の霊を召喚する。これは【刀や槍】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:麦島

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間 ~いんたーみっしょん~
「ところで姫様。質問よろしいか?」
「なんじゃ……怨霊壱号」
 怨霊の一つが未だに茶を飲みながらファランクス解説書熟読中の怨霊姫に声をかける。
「いやあのですね……先ほどの号令なんですが」
「うむ……あれがどうしたのじゃ?」
 茶を口に含みつつ姫が首をかしげる。
「全軍全身……って、全軍前進の間違いではないかと……っ」
「ブフーーーーッ!?」
 それを聞き耳まで真っ赤にした怨霊姫は口に含んでいたお茶を一気に噴出した。

「言わなければバレぬことを~~~っ」
 ファランクス陣の中央で怨霊姫は半泣きになりながら拗ね始めてしまうのだった。
加賀・琴
ふぁらんくす……詳細は存じませんが要は密集陣形なのですよね?
それを洗脳した農民兵にやらせていると
密集陣形とは高い練度が必要なはずですけど、洗脳されている農民兵にそれが出来るだけの練度があるのでしょうか?

ともあれ、農民兵に被害を出さないように立ち回らなければいけませんね
ならば、こうしましょう。【神域結界・千本鳥居】で八百万の鳥居による結界迷宮を創り出します
結界迷路の中で密集陣形を保つのは困難でしょう。更に怨霊姫と農民兵を分断も出来ますからね

結界内で農民兵に出会ったら大幣と神楽扇を持ち【神楽舞・荒魂鎮め】を舞って洗脳を祓おうとします
怨霊姫と遭遇したら【破魔幻想の矢】で190になる破魔の矢を放ちます




 関が原の地に集結した弥助・アレキサンダーの軍勢が規則正しく整列した無数のファランクス陣形への展開を終え幕府軍を今か今かと待ち構えていた。
 その中で怨霊姫の率いる一隊は姫のポンコツぶりを差し引いてもまだ大丈夫な程度には形になっている。

「うーん?」
(ふぁらんくす……詳細は存じませんが要は密集陣形なのですよね?)
 外国の事しかも軍事の事ともなると巫女である加賀・琴(羅刹の戦巫女・f02819)にとっては専門外の事だが幾つか疑問が彼女には残っていた。
(脳した農民兵にやらせていると? 密集陣形とは高い練度が必要なはずですけど、洗脳されている農民兵にそれが出来るだけの練度があるのでしょうか……?)
 そう琴が考えるのは無理ないのだが今回は大帝の剣による洗脳により意思統一が為されている琴と、統率能力は皆無だがそこにいるだけで大帝の剣よりの指令電波(のようなもの)を部隊にちゅうけいする役割を担う怨霊姫がいるからこそ、まるでリモコンで操縦するように規則正しく兵達は動くことが出来ているのだ。

「ともあれ……農民達に被害は出したくありませんしね」
 ファランクス隊が近づく草原に立ち琴は大幣と神楽扇を持ちながら近づく兵達を静かな目でみつめる。
 そして大きく片足を上げると地面を力強く踏みしめ大幣を振り場を清め始めた。
「此より先は穢れたる邪悪は立ち入れぬ神域……」
 四方に歩き神気が満ちてくるとただそれだけで凜とした雰囲気に琴は包まれクルリとその場で回転する。
「……この境界たる結界で惑い続けなさい!!」
 琴の凜とした声が響きファランクス隊を覆うように八百万の鳥居が出現すると霞や光に包まれ辺りの景色が一変していく。

「ななな、なんじゃこれは!?」
 ファランクス隊の前方に誰かがいるという報告を受けた直後、魍魎姫率いるファランクス隊は『神域結界・千本鳥居』の中へと引き込まれてしまった後だった。
 どちらを見ても鳥居鳥居鳥居、ここが通常の空間ではないなど誰も目にもあきらかで。
「ふむ……姫ごと結界に捕らえるとは考えたものよ、だがこれならばどうじゃ!」
 怨霊姫が扇子を手に舞を踊ると剣や弓を持った怨霊家臣団が次々と現れ周囲に警戒の目を向ける。

 気付けばファランクスの兵達とも逸れさせられたらしく姫の周りにいるのは怨霊家臣団のみだった。
「異国の兵を率いる姫にはお似合いの家臣団という所でしょうか?」
 どこからか琴の声が響き家臣団が武器を構えどこからでも掛かってこいとばかりに円陣を組む。

 神へと奉納する舞をさらに続ける琴が神楽扇を怨霊姫達に向け、空気を振るわせるほどの詔を言い放つ。
「遠つ御祖の神、御照覧ましませ!」
 天より飛来する破魔の矢が雨のように降り注ぎ怨霊達に突き刺さった。
「きゃあ」
「姫危ないっ!!」
 家臣団が怨霊姫を庇うように固まり盾になりその背中に次々と破魔の矢が槍衾のように突き立てられ外側から順にその姿を消していった。


 関が原に突如現れた鳥居が内側から破壊され中からファランクス隊が脱出してきたのはそれから10数分後の事。
 だがその間に怨霊家臣団はその数を半数以下に減らしてしまっていた。
 戦いは始まったばかり……だが初手よりの確実な打撃が怨霊姫達ファランクス隊に暗い影を落としているのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

星群・ヒカル
安全なところで踏ん反り返るのは番長として最低の行為だぜ
なに?別に番長じゃない?似たようなもんだろ!
この超宇宙番長が直々にてめーをシメてやる!

あの陣形、当然だが空からの攻撃には弱いだろう
宇宙バイク『銀翼号』に『騎乗』し急加速
ファランクス全面すれすれで『気合い』を入れて
『超宇宙・蜂雷烈加速』を発動するぞ!

空へその勢いのまま飛び出し、直接狙うは怨霊姫
無理に農民が槍でも投げて邪魔してくるんなら、彼らに当たらないように『ロープワーク』で超宇宙牽引ワイヤーを使用し遠くへ弾き飛ばす
気絶させて傀儡なんて生み出させねぇ
『視力・第六感』で敵の姿を捉えたら、変身した銀翼号……銀翼号?ごと、敵を目掛けて体当たりだッ!




 結界から脱出したファランクス隊は進軍を再開した。
 別に怨霊姫の統率能力が高いわけではない、ただたんに大帝の剣からの指令がそうさせているだけなのだがそれを猟兵達が知る術はない。
「い……いきなり結界とか、ややや……やるじゃない」
 怨霊姫が家臣団に囲まれつつようやく一息ついたのも束の間、もっと騒がしい男が戦場へと現れた。

「安全なところで踏ん反り返るのは番長として最低の行為だぜ!」
 大声で叫ぶ星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)が腕を組み宇宙バイク銀翼号のシート上に仁王立ちで行く手を遮る。
 足を止めたファランクスの奥から怨霊姫の可憐な声が返ってきたのは僥倖だったかもしれない。
「わーたーしーはー”姫”! その……バンチョーなんかじゃないじゃろが!」
「なに?別に番長じゃない? ……似たようなもんだろ!」
 豪快に笑うヒカルに悪気などあるはずがない、心底本当にそう思っているのだから。
「姫とバンチョーって一文字も被ってないじゃろ? お主……うつけじゃろ、それも相当の!!」
 姫が扇を勢いで地面に投げつけてるほどにエキサイト。
「まー細かい事気にすんなよ、この超宇宙番長が直々にてめーをシメてやる!」
「お願いだーかーらー、姫の話ちゃんと聞いてくれるー???」
 そろそろ姫、反泣きなんですけど……超番長はそんな些細な事は気にしないでっかい男なのだ。

「さーって、行くぜ銀翼号!」
 シートに飛び乗りアクセルを吹かすと急発進しヒカルはファランクスへと一直線にバイクを走らせる。
 ファランクスが一斉に盾を構え真正面からの衝撃に備えるのが見える。
 いくら銀翼号といえどあの集団に突っ込むのは死ににいくようなもの……そんな事はヒカルもわかっている。
「うぉぉぉりゃあ、いっけえええっ!!」
 気合で上体を上げた事でウィリー走行へと移行していくがこっれだけでは足りない。
 超宇宙望遠鏡「ガントバス」で観測した己の真の姿、そう……銀翼号はただの宇宙バイクではない。
 銀炎纏う怪蜂こそがその真の姿、観測された事象は現実にも影響を与えそして……。
 超宇宙・蜂雷烈加速において空飛ぶ怪蜂と化した銀翼号がファランクスに接触する直前に宙を舞う。
 眼下に見渡す兵の中心でポカンと見上げる怨霊姫。
「見っつけたぁぜぃ!」
 ヒカルの操縦テクというか慣性の法則に従い落下していく銀翼号はそのの勢いで怨霊姫へとものすごいスピードで飛び込んでいき……。
「ちょっ、ちょっとー!? ななな、なんでここにちょうど落ちてくるんじゃー!?」
 
 不幸(バッドラック)と事故(トラブ)っちまった爆音、そして舞い上がる砂埃。
 大地に突き刺さる怪蜂の前方に地面に仲良く突き刺さったヒカルと怨霊姫。
「お……お主、うつけどころか……大うつけじゃぁ……けふっ」
「へへっ……傀儡なんて、生み出させ……ねぇ……がはっ」

 関が原の戦場のど真ん中で起こった交通事故……気絶した相手を傀儡にしようにも気絶しているのは姫自身。

 ……まあ是非も無いね!

成功 🔵​🔵​🔴​

エメラ・アーヴェスピア
…何かしら、ちょっと共感できそうな相手ね
でも残念ながら敵は敵、しっかりと撃滅しましょう
やられている事は相当に酷い訳だしね

あの陣形の攻略法はどうすべきかしら…私の兵器だと攻撃力が高すぎるのよね…
…逆にこう考えましょうか、陣形を攻略せずに敵を直接狙えば良いと
『蒼穹翔るは我が箒』
専用の狙撃砲に魔女の箒の様に【騎乗】して【操縦】よ
【空中戦】で高速で飛び回り常に位置を変えて上空より狙撃砲で狙撃するわ
飛んで来る攻撃は回避したり浮遊盾に【盾受け】ね
他に同僚さんが居るのなら【援護射撃】になるように砲撃
その陣形、小回りは聞かなかった筈よね?昔には無かった空よりの攻撃、どう対処するかしら?

※アドリブ・絡み歓迎


トリテレイア・ゼロナイン
一般人を洗脳した挙句、戦力として矢面に立たせる…
卑劣極まりないですね。一刻も早く敵将を討ち、人々を解放しなくてはなりません
狙うは怨霊姫、唯一人!

戦域から離れた場所からUCの追加機動装甲の飛行能力を活かし最大速度まで加速し上昇、ファランクス陣を無視し、怨霊姫の直上、上空からの●だまし討ちを敢行

突撃する際は追加装甲と大盾も使った●盾受けでの●シールドバッシュ=体当たりで怨霊ごと姫を攻撃

着地/着弾時の砂煙で●目潰しし、こちらはセンサーで●情報収集で位置を●見切り、装甲展開、●怪力で振るう剣で追撃

「日の本に無い戦術が」となにやら悩んでいるようですが関係ありません
卑劣な戦法を後悔させて差し上げます!




 農民兵とは思えない統率のとれた強大なファランクスの前進が再び再開された。
 とてもではないが素人の集団とは思えない統一感に違和感すら感じてしまうほどだ。
「一般人を洗脳した挙句、戦力として矢面に立たせる…卑劣極まりないですね。一刻も早く敵将を討ち、人々を解放しなくてはなりません」
 憤慨した様子でトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)がその陣形の動きを見ながらそう言葉を紡ぐ。
「えぇ……まあそれはそうなのだけど…何かしら、ちょっと共感できそうな相手ね」
 エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)が敵に対して甘さともとれる発言をしたことでトリテレイアが怪訝な顔(?)をする。
「でも残念ながら敵は敵、しっかりと撃滅しましょう」
「……その様子なら大丈夫そうですね、狙うは怨霊姫、唯一人!」
 エメラがすぐにやるべき事はやると宣言したことで安心したのかトリテレイアも大盾を構えなおすと奥に控えているだろう怨霊姫のいる方向を指差す。

「あの陣形の攻略法はどうすべきかしら…私の兵器だと攻撃力が高すぎるのよね…」
 エメラがそう口にするのもしょうがない、彼女の砲撃はほとんどが大火力であり虫を殺すのに大砲を持ってくるようなものなのだ。
 それを聞きトリテレイアが親指を立てクイクイっと上を指差す。
「なるほど…逆にこう考えるっと、陣形を攻略せずに敵を直接狙えば良いと」
 目を輝かせエメラがその策乗ったとばかり満面の笑顔で同意を示した。
「各部状態良し…発進準備完了、行くわよ!」
 さっそく狙撃砲をまるで魔女の箒のような扱いで跨り魔力が一気に高まっていく。
 それを見ながらトリテレイアの外套かと思われた追加装甲が展開されスラスターが露出しその全貌が明らかになる。
『全サ連メカニック班謹製 追加機動装甲』
 サイボーグ連盟のメカニック達の技術の結晶、これにより生身でも飛行能力を得ることが出来るのだ。
 
 

「あー、ひどい目にあったのじゃ」
 先ほどの事故で被った土埃を払いつつ怨霊姫が前方を見るのだが何というか嫌な予感がしていた。
 先ほども訳のわからない鋼の馬に轢かれたばかりなのだから注意するにこしたことはない。
 そう先ほどもこう兵士達の頭の上から……上から……。
「あれー? 何だか斜め上から何か近づいてきているような……」
 気のせいか怨霊姫の額がピクピクとヒクついている、だってこのパターンは先ほどと同じ……。

「さぁっ、そこから動かないでねお姫様♪」
 空中で狙撃砲を構えたエメラがその銃口をファランクスの中心へと向け狙いを定める。
 周りの被害を考えないのならもっと大火力の砲で一気に斉射するだけなのだが今回はそうはいかない。
「いけっ!」
 ドンという豪快な音と共に撃ち込まれた砲弾は怨霊姫が展開していた怨霊に命中し空中で爆発した。
「また空から来たの!?」
 いいかげん嫌になっている怨霊姫だったが襲ってくる敵は追い払わないと予定が狂ってしまう。
 だが来襲者の攻撃はここで終わらない、狙撃しているエメラの脇を高速で追い越し突撃してくる人影がある。
 スラスターを全力で吹かし加速する鋼の身体、大盾で身を隠したまま飛行ユニットで空中を飛翔するのはもちろんトリテレイアだ。
「騎士の戦法ではありませんが、気になさらないようにぃぃぃっ!!」
 放たれた怨霊たちが集まり壁として立ち塞がるがそこに盾ごと体当たりするとわずかに軌道がそれ怨霊姫の少し手前へと着地した。

「日の本がどうこう以前になんで誰も彼も空から来るのじゃー!?」
 思わず愚痴ってしまう怨霊姫だったが機械騎士の返答はシンプルだった。
「それはもちろん、日の本関係んしにそれが有効だからですよ!」
 抜刀し怪力をもって振るわれる儀礼用長剣が怨霊姫の僅か手前を通過し前髪が何本かはらりと落ちる。
「私も忘れてもらっては困るわね♪」
 さらに空中に留まったままのエメラからの狙撃が何発も撃ち込まれ次第に二人の連携に怨霊姫は後ろへと追いやられていく。
「その陣形、小回りは聞かなかった筈よね?昔には無かった空よりの攻撃、どう対処するかしら?」
 そう、紀元前の時代にすでに速度の速い相手には対応できないことが実証済である上、古代の2次元で構築された戦法に現代の3次元の戦法を封じる手立てはない。
 
「私が頑張るしかないじゃろがーっ!!」
 思わずツッコミを入れながら怨霊の群れをぶつける姫と、懐に入り怪力で暴れる機械騎士、そして敵の射程外だからと好き放題の合法ロリ。
 入り乱れての乱戦にファランクスの中央部で大きな爆発が起こるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

テラ・ウィンディア
古代の戦術か
其処に挑むのも悪くはない(300って映画見た

【戦闘知識】で兵士達の陣形と布陣と武装の把握
そして対空武装の薄い部分の把握

よし!いくか!(ユベコ発動

更に【空中戦】で空中機動強化

対空攻撃きたら【残像・見切り・第六感】も駆使して怨霊姫の元へと突撃だ!

よっ!(しゅたっと手をあげて挨拶

軍隊戦だと確かにいいんだろうけどその戦術…空飛ぶ相手を想定してないんじゃねーかな?

つーわけで…いくぞ!
【属性攻撃】で剣槍太刀に炎を付与


【一斉放射】でグラビティバスターの砲撃で怨霊武者とかは薙ぎ払い

槍で【串刺し】
更に【早業】で剣太刀に切り替え切り裂き
回避は前述技能を使用

そのまま飛び回りながら大暴れをさせて貰うぞー!




「ファランクスか~古代の戦術、其処に挑むのも悪くはない!」
 最近スパルタ王がムキムキにカッコいい映画を見たばかりで、戦場でえへんと張るテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が小さな胸を逸らしつつ迫りくる軍勢を眺める。
 先ほどから幾人かの猟兵が突っ込んだのか煙や怒号が広がっているのだが不思議なことに隊列には全くの乱れというものがなかった。
「あれって洗脳ってやつのせいなんだろなー」
 普通であれば逃げ出すであろう恐怖にただの農民達が耐えれるとは思えない。
 洗脳とはこのような身の危険すらも無視して動きを縛る非道の技なのだとテラは実感することができた。
 
「うーん、なるほど」
 ファランクスの兵達をよく観察すると見えてくることがある。
 まずこれは初期型の縦横整列しただけの密集陣形であるということ、そして長槍と丸盾という定番の装備。
 均一化されたその風貌はテラが最近観た映画に出てきた兵士達にそっくりだ。
 対空武装の薄い場所と思ったがそもそも彼らの時代に対空という概念は無い。
 となれば当然テラの行動は一つだった。
「グランディアよ…全ての存在がもつ原初の力よ。我が身に宿り力と成せ…!グラビティフィールド…展開!」
 重力制御がテラの身体をゆっくりと宙へ浮かせた。
「よし! いくか!」
 唐突に勢いよく射出されたテラが一気に空中へ舞い上がった、そして急ターンすると一気にファランクス中央にいる怨霊姫を目指し突撃する。
 懸念していた対空攻撃もそもそも無いらしく回避の必要すらなかった。
 

「えっ……また空からじゃと~? もぅ~やだ~」
 土埃どころか所々焦げてる怨霊姫がげっそりとした表情で目の前に降り立ったお子様エルフを見てうな垂れる。
「よっ!」
 しかも緊張感の欠片もなく片手をさっと上げて挨拶してくるなど舐められているというかなんというか……。
「なんでせっかく陣形組んでるのに空から来ちゃうかなぁ~やってられないのじゃ」
「……えっ、いやだってさぁ」
 とうとう泣き言まで言い出したよこの姫。

「軍隊戦だと確かにいいんだろうけどその戦術…空飛ぶ相手を想定してないんじゃねーかな?」

「あ……っ」

 テラの些細な一言が沈黙を呼んでしまった、ちょっと目元に光るモノを姫が拭いたのは黙っていてあげよう。
 さすがに揃いも揃って空中から来るだなんて思わないって本当。

「や……」
「や?」

 姫の漏らす呟きに反応すると潤んだ瞳でプルプル震える怨霊姫の堪忍袋の緒が切れた。
「やーっておしまいっ!」
「「「はっ 姫様!」」」

 怨霊達の群れがテラへと殺到し取り囲むが、テラにとってはそんなのは障害にもなりはしない。
 グラビティバスターでそれらを一気に薙ぎ払うと目の前にいるのはひ弱なも怨霊姫ただ一人。
「うっ……嘘っ!?」
 燃える剣と槍を構えると踏み込み最速の槍を繰り出した。
 テラの槍は姫の脇部分へと突き刺さり地面に縫い付ける、感触的に単の布地だけを貫通したためにダメージは無いだろうがとにかく動きは封じた。
「くっらえー!!」
 さらに剣に切り替え衣装の上からだが確かに一撃を加えテラは上空へと離脱する。
(危なかった、あのままあの場所に留まれば怨霊武者に囲まれていたかもしれないな)
 内心ほっと一息つくとテラは次はどう攻めるかを思案し始めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
ファランクスですかー… マスケット銃がありますのに、テルシオではありませんのね?
…農民の方ですし、銃兵に仕立てるのも無理がありますか

ともあれ、所詮は地上戦限定の対平面機動戦術
三次元機動においては然程の意味もない陣形かと?

上空から陣形の中心、怨霊姫へ向けてピンポイントでの全速急降下を

相手がこちらの接近に気付くかどうかというタイミングでUCのワイヤーアンカーを射出
怨霊姫を不可視の爆導索で簀巻きにし、同時に急速離脱のマニューバの勢いで盛大に空へと引っこ抜いて差し上げましょう

簀巻きのまま空高く放り出された怨霊姫と目が合えば…
「…戦場に咲く花火って、風流ですよね?」
にっこりと微笑みかけて一斉起爆、ですね




「ファランクスですかー… マスケット銃がありますのに、テルシオではありませんのね?」
 古代ギリシャで確立された戦法ではなく本来の戦国時代と同時期にスペインで確立された『テルシオ』という編成をフランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は思い描くがそれは酷というもので、怨霊姫は戦いに関してはど素人であり外国の戦法など知りはしない。
 それに用意された武具は槍と盾のみでありこの時期マスケット銃はまだこの地には出回っていない。
(…農民の方ですし、銃兵に仕立てるのも無理がありますか)
 などと思いもするが逆に言えば引き金さえ引けば熟練の兵士さえ農民が殺すことの出来る武器である。
 もしもそれが実行されていれば幕府軍の損害はさらに増え猟兵達の苦労も増すだろう。

 それに正面から対峙したファランクスほど手堅い戦法も騎兵の自由が利かない土地であればあるほど有効性を増す。
 このような平原よりももっと狭い峠などで布陣すれば損害はもっともっと増えたことだろう。

 とはいえそれは地上戦に限っての話であり……。
(対平面機動戦術、三次元機動においては然程の意味もない陣形かと?

 そうフランチェスカはこの戦法の最大の弱点を突くべくその身体は遥か上空を飛び眼下にいくつもの方陣を組んだ隊列が目に入る。
 目的の怨霊姫はその中心に、それを確認すると一気に舞い降りどこかの世界のシュトゥーカによる全速急降下並の勢いで突撃した。
 目標との距離を正確に測りワイヤーアンカーの準備をした。


「あー、なんか嫌な予感がするのじゃー」
 汚れた煤を手ぬぐいで拭きどうにか怨霊姫がやる気を取り戻すが先ほどからなんだか背筋に寒いものが奔る。
 こんな時はたいてい碌なことが起きないものなのだが、今更この持ち場を離れるわけにもいかない。
 だいたいにして敵は陣を無視して空から攻めてきてばかり、これでは一人だけ貧乏くじでも引いている気分だ。
(ん? なんじゃあれ?)
 真上を見上げ現実逃避しようとした怨霊姫の視線の先に何か瞬く物がある。
(あー、一番星じゃなー いい事あるといいんじゃがなー なー)
 なんかもう投げやりなのだが容赦してあげてほしい、本当に今回碌な目にあっていないのだ。
 だがそれは少しずつ大きく、いや近づいてきている。
(……近づいて?)
 そう思った瞬間何かが伸びてきて怨霊姫にそれっが飛び込んできた。

「準備は少々手間ですけれど、と。――アンカービット、射出…!」
 急降下から急速に逆噴射でブレーキをかけながら下に向けてワイヤーアンカーが撃ち込まれそれは正確に怨霊姫に巻きつくと、急速離脱の勢いに引っ張られ怨霊姫の身体は一気に遥か上空までバンジージャンプのようにすっぽ抜かれていた。

 消える重力、消える接地感。
「あぁ~天にも昇る気分じゃ~って 本当に姫ってば飛んでおるではないか!?」
 見えない爆導索に簀巻きにされ空中に投げ出された怨霊姫は先ほど見えたであろう空を飛ぶ物体、フランチェスカとちょうどスピードがシンクロし目があった。

「な……なんじゃお主 ここで何を?」
「ええと怨霊姫さですよね♡」
 にっこりと天使のような外見で微笑むフランチェスカ。
「いかにも私こそが怨霊姫じゃ よっく眼に焼き付けるがよい!」
 縛られたままで何でこんな偉そうなのこの姫。
「…戦場に咲く花火って、風流ですよね?」
「……花火かや? 夏に見るのは好きじゃぞー?」
 意味はわからないが花火は確かに綺麗だしとうっかり返事してから怨霊姫は何が言いたいかようやく理解した。
「ちょっ……待ってその花火ってまさか!?」
「お好きで良かったですわ えい……点火♡」

 爽やかな笑顔でわざわざ見えるように握っていたボタンを大げさに押すとファランクス隊の遥か上空で汚い花火(爆導索)が大爆発を起こした。
 避ける事もできないその爆炎から人影が降下していき大きな叫び声が聞こえる。
「おーぼーえーてーるが~よいのじゃ~~」
 真っ黒焦げに焦げアフロのように髪を焦がしつつ怨霊姫は墜落していき、地面に人型の跡を残しめり込んでしまった。

 なんというか姫の扱いたぶんこの戦場で一番悪い……ような気がする。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で参戦

罪も無い一般人を操るとは……
おのれっ……
志乃、力を貸して

UC発動
怨霊姫の思念を増幅し、第六感で読み取り無理やりにでも痕跡を辿ります
空飛んで行きましょう
大体の攻撃は空を飛べば防げるはずです
弓矢も当てる技量がなければ痛くも痒くもないというもの

見つけだしたら農民の方の思念を増幅し
破魔、祈りも籠めて歌唱の衝撃波で怨霊姫にぶつけましょう
まったく、ドジっ子だからって
何でも許されると思ったら大間違いですよ

敵攻撃は第六感で見切り、光の鎖で早業武器からのカウンターなぎ払い
オーラ防御常時発動
全攻撃、防御、行動に祈り、破魔、呪詛耐性を付与
怨霊相手にはよく効くはずです!

骸の海へ還れ、オブリビオン


月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る

武器を整え、洗脳故に恐怖もなく意識統一された軍
元が農民であること含め、
徳川軍にとって平原でぶつかる相手としては厄介でしょうね
軍には戦争中親交を深めた相手もいます、
犠牲減らす為にも助力しましょう

[ステラ+ケイオス]剣槍形態:増殖変形で二刀流や投擲も
<生命力吸収の呪詛>込め強化。
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
《縛鎖》召喚
<早業・ロープワーク>
矢と違い絡みつく鎖は槍で払うのも難しく盾ごと包める
上空より召喚した鎖で縛り、上まで釣り上げそのまま拘束。
これなら後に傀儡に変えられても何もできないでしょう
姫様も縛り上げて私の槍で貫いてあげる




 関が原に展開されたファランクス陣を率いる怨霊姫は次々と”空中から襲い来る猟兵達”にそれはそれはもう手も足も出ずにピンポイントで怨霊姫だけがボコボコにされていた。
 可憐な単(ひとえ)の袖に刺さった槍を引き抜きその辺りに転がすと天を仰いだ。
「どーせまた空から来るんでしょ……姫、知ってる……」
 ぷぅと頬を膨らませ見上げる視線の先に確かに新たな猟兵が現れていた。

「罪の無い一般人を操るとは……おのれっ」
 画一化され洗脳により見事すぎる統一感を出す農民達を哀しみを纏った赤い瞳で見ながら鈴木・志乃(オレンジ・f12101)が可憐な白髪を揺らした。
 本来は黒髪金目のオラトリオである彼女がこの状態のとき、もう一人の人格”昨夜”が表に出てきているときなのだ。
 だからこそ出てくる言葉が「志乃、力を貸して……」なのである。
 空中から思念を追いそして怨霊姫の正確な位置を割り出すと”昨夜”は羽根を羽ばたかせ悠々とファランクス陣の真上へと飛ぶのだった。

「武器を整え洗脳故に恐怖も無く意識統一された軍ですか……」
 一人ファランクス陣の側面からその規律正しい進軍を観察していた月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)は反対方向から進軍してくる幕府軍とこれがぶつかり合えばどれほどの損害が出るのかと思案を巡らす。
(元が農民であること含め、徳川軍にとって平原でぶつかる相手としては厄介でしょうね)
 そう、オブリビオンはともかくここの農民達は近畿圏の罪の無い農民達、民を殺せば殺すほど国としては自ら首を絞めるようなものなのだ。
 ユイにとって戦争中に絆を深めた者達も少なくは無い、犠牲は出来るだけ減らしておきたいのだ。

 そんな二人が攻め込む先では怨霊姫が機先を制しようと怨霊の群れ、怨霊家臣団と呼べるだけの怨霊を呼び出し守りを固めていた。
 あれだけ何回も空中からこられたので弓隊が多く用意され対空対策もとるあたりさすがに用心深くなっている。
「むむ、しょうこりもなく空から来るとは飛んで火に入るなんとやらじゃ! 弓隊撃てぇぇっ!」
「姫! まだ早すぎですぞ!」
 怨霊壱号がそう忠告するがすでに命令は下されている、次々と放たれる弓は天高く打ち上げられるが今”昨夜”が飛んでいるのはファランクス隊の真上……つまりそんな所に矢を放ってしまうとどうなるかといえば……。
「そもそも技量が無ければ痛くも痒くもないというものですし……ね?」
 ただ高度を高めにとっているというだけで回避すら必要なく矢は途中で勢いを失いそして……。

「って矢が降ってきたのじゃー!?」
「だーかーらー姫ぇぇぇっ!!」
 怨霊たちが重なり合いファランクス兵達も一斉に盾を天に掲げ傘のように上空から降り注ぐ矢へと対応する。

「もしかしてアホの子なのかしら……」
 半ば呆れたような視線を送りユイは頭を抱えるが今がチャンスであることに変わりは無い。
 ファランクス兵達の注意は全て天頂方向へと向いているのだから。
((共鳴・保管庫接続正常、能力強化。概念制御、情報収集、縛鎖強化更新最適化)
 体内で処理が淡々と為されていく。
「永久の縛りを……っ」
 降り注ぐ矢と同時にファランクス陣の真上から次々と3種の鎖が召還され兵達に向け降り注ぐと同時に縛り上げていく。
「今度は何なのじゃー!」
 兵達のどよめきに混ざり怨霊姫の悲鳴まで聞こえてきたがユイは容赦なくさらなる鎖を召還し続ける。

「下は下で派手にやっていますね、おかげでゆっくりと歌えそうでなによりです」
 ちょうど誰かの鎖が兵達を縛り持ち上げたおかげで隙が生じている、”昨夜”の力を使うにはちょうどよい頃合だろうと大きく息を吸い……そして静かに歌い始めた。
 天使のような歌声が戦場へと響き怨霊が兵士達が皆それを見上げ聞き入る事となる。

「夢の中で空を歩く 真下に広がる命数えて 今日を明日をひたすら生きてる その顔に微笑み浮かばせたい♪」

 女神のような調べはいつしか周囲の残留思念を集め増幅しそして怨霊たちが苦しみ始め少しずつ浄化されるかのようにその姿が掻き消え始めた。

「くっ、何なのだこの歌は……我が怨霊達が……消えてい……く……」
 家臣団や周囲に漂っていた怨霊たちが次々と天より聞こえる歌の前にその存在を維持できずに消え始めてしまう。
 気絶した兵達を傀儡にしようとするも鎖で天に吊り上げられていればもはや戦力には数えれない有象無象でしかない。
 それになにより……。
「まだ何もしてないのにもう縛られちゃってるんじゃがー 私の活躍とかお色気シーンとかまだやってないんじゃがー!」
 鎖で雁字搦めに身動きの取れないぐらいに縛られ転がっている怨霊姫が大声で文句を言っていると静かな足音と舞い降りる羽ばたきが耳に入った。
「まったく、ドジっ子だからって何でも許されると思ったら大間違いですよ」
「私が言うのもなんですが……もうちょっと怨霊たちをバランス良く配置とか出来なかったかしら?」
 縛られた怨霊姫の前に昨夜(志乃)とユイが到着しその頬を突く。
「え……ええと、姫とここでかっこよく決着付け直すとかどうじゃな? ……な?」
 悶えながらおそるおそる二人に伺いをたてる怨霊姫。

「ダ・メ♡」
「骸の海へ還れ、オブリビオン!」
 いい笑顔のユイと、コホンと気を取り直し凜とした声で答える昨夜(志乃)。
 容赦なく心の臓へと槍と光の鎖を突き立てられ怨霊姫は消滅を始めた。
「無念じゃ……なんか今回いいとこ無しなのじゃ……」
 もはやツッコミ疲れたのか遠い目をする怨霊姫。
 慣れない異国の戦法も己の怨霊を生かしやすい戦場もここには無かった。
 というかユイ以外全員空から飛んでくるとかもう災難なんてもんじゃない。

 悲しい呟きを最期の言葉にし怨霊姫は躯の海へと還っていった。
 ファランクス兵にされていた農民達も次々に正気を取り戻し辺りが騒がしくなる。
 さぁ……後始末こそが大変だ、そう二人は思いながら晴れた空を見上げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月11日


挿絵イラスト