友情戦線異状アリ
●どこかで少女が呟いた
……ねえ、大好きな、わたしの親友。
ずっと言えなかったけれど、本当はわたし、あなたに憧れていた。
大好きなあなたのように、なりたかった。
あなたみたいになりたいって、願っただけなのに……、
どうしてこんなことに、なっちゃったんだろう?
●二つの袋小路
「……UDCアースに、星見ヶ丘市。そう言う名前の地方都市がある」
忌塚・御門(RAIMEI・f03484)が、見るものが見ればいつもどおりに目の下に隈をべっとりと貼り付け、自らの呼びかけに応じた猟兵たちに説明をはじめた。
「だいぶ前に幾つかの町村が合併して生まれた、そこそこの大きさの都市だ。その一部地域で、奇妙な事件が連続して起きてる。現在進行系でな」
曰く、人通りの多い時間帯……昼日中、あるいは帰宅ラッシュのような頃合に、これまた人通りの多い交差点などで死体が発見される。
「そんな状況で、今まさに殺されたばかりの他殺体だってのに、目撃者が誰も居やがらねぇ。まるで『姿無き通り魔』に殺されたみてぇだってな」
その点にUDCの関与を疑って調査を進めるうち、その地域に根を張っている異常にたどり着いたのだという。
「『オマジナイ』が流行ってるらしい。それも儀式めいた奴で、願いを叶えるとかいうシロモノだ。……それが、下は小学校から上は……三十代後半。レアケースだがそれ以上もいる。そんな広範囲に「流行っている」。そんでもってもう一つ、このオマジナイが流行してんのはほぼその地域のみに絞られる」
怪しくねえ訳がねぇんだよなぁ。そう御門は陰鬱にこぼした。
「……そんな中で予知をしたんだが。これがどうにも妙でな。内容は――『二人の少女、どちらかが死ぬ』ってもんだ。どちらが死ぬのか、確定していやがらねえ。UDC組織で調べた結果、現在その二人は行方不明。つい一昨日から、行方をくらましていやがる」
二人の少女は、それぞれ「緑川美月」と「高木陽菜」。件の地域の中学校に通う、女子中学生だ。
「恐らくこの二人は一緒にいる可能性が高い。そして、このどちらかが『オマジナイ』に手を出したらしいってとこまでは絞れた。……が、UDC組織の調査じゃあ、それ以上の事ぁわからなかった」
緑川美月は成績優秀な優等生で、ピアノを得意とする大人しげな印象の、しかし西洋人形のような佇まいの少女だ。対照的に高木陽菜は学校の女子バスケットボール部で主将を務める、活発な少女。一見正反対に見える二人は、しかし家族同士のつきあいもあって非常に仲が良く、自他ともに認める親友であるという。
「女子中学生が二人、行方不明。だが俺の予知によりゃあ、この二人は一緒にいる。一緒に何かから逃げてる。何か……此処で思いつくのは、二人のどちらかが手を出したっていう「オマジナイ」か、この地域で出没してる「姿なき通り魔」のどちらかだ」
多くの人間が手を出しているという『オマジナイ』と『姿なき通り魔』。この二つは恐らくどこかで繋がっている――そう、御門は言った。
「確証は俺の予知の中にしか無い。だが、予知に出たって事は繋がってるのが正しいんだろうよ。……俺の予知じゃあ、美月か陽菜、どちらかが死ぬ。だが……ああ、そうだ。どちらも死なせない道を見つけてくれ。それが俺からの『依頼』だよ」
街への転送は自分が引き受ける、そう御門は言って。
「ああ、それからだ。この件に邪神教団が関わってる可能性も否定はできねえんだが……教団の人間、教信者。そいつがまだ人間だった場合は、殺すのは勘弁してくれるか。これは慈悲とか、奴らの為じゃねえ。UDC組織の側からしちゃあ、誰が何の情報を持ってるのか分からねえまま殺されて情報の抱え落ちされちまうのはよろしくねえんだ。全員半殺しまでってことで頼む。特にUDCアースの人間は他の世界の人間よりも平和に慣れてる分簡単に死にやすい。それを頭に入れといてくれや」
それじゃあ、よろしく頼んだぜ。準備ができたら声を掛けてくれ。
常時よりも幾分か疲れた顔をしたUDCエージェントの男は、猟兵たちに向けてそう言った。
遊津
遊津です。UDCアースのシナリオをお届けします。
こちらは一章冒険・二章集団戦・三章ボス戦の三章構成となっております。
以下に簡単な説明をいたします。
第一章・冒険「噂の深層」
「姿なき通り魔」「オマジナイ」「行方不明の少女たち」について調べることが可能です。全てについて調べるもよし、一つに絞って調べるもよしです。
3つともオープニングで説明されています。
「姿なき通り魔」…昼日中、衆人環視のもとで突然人が殺される事件です。目撃者が多数いるにも関わらず犯人の目処は立っていません。
「オマジナイ」…小学校から三十代まで、幅広い世代で「この地域だけで」流行っているおまじないです。その方法を含めて調べる事になります。
「行方不明の少女たち」…緑川美月と高木陽菜、二人の女子中学生です。2日前から同時に行方不明になっており、予知では一緒にいるようです。さらに予知では「どちらかが死ぬ」とされています。彼女たちの性格などについてはオープニングで説明したとおりです。
第二章・第三章。
それぞれの公開時に追記させていただきます。
当シナリオのプレイング受付開始日時は7/7(水)午前8:31~となっております。
時間によってはページ上部のタグやマスターページにプレイング受付中の文字がない場合がありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『噂の深層』
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POW : 現場を虱潰しに調査し、情報収集を行います。
SPD : 目撃情報の提供者などから詳しい話を聞き、情報の収集を行います。
WIZ : 新聞・書籍・ネットなどの情報媒体から、情報の収集を行います。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
木々水・サライ
【灰色】
今回は親父とエミさんと一緒に……ってあれ、エミさん、親父は?
さっきまで一緒にいたよな?
あーもう、UDCアース来るとすぐそうだ。
資金的に余裕があるからってゲーセン行くなよ……。
とりあえず俺とエミさんで探すしかねぇな……。
UC【願い叶えるチビサライ軍団】でチビ達を呼び出して、ペンダントは貰っておくか。
姿なき通り魔に襲われる可能性も考慮して、瞬時に盾作れるようにしておきたいしな。
情報をまとめるのはエミさんに任せて、俺はチビ達と一緒にネットで情報調べるぞ。
女子中学生となると、トラウマも残りやすい時期だからな。
早めの救助を心がけよう。
……誰がロリコンだコラァ!!
あと親父と同じ趣味じゃねえ!!
エーミール・アーベントロート
【灰色】
サライ君と一緒って初ですね~。
兄さんから話は聞いてましたが、兄さんより話がわかりそうで助かります。
え?兄さんですか? さっき通りがかったゲーセンにスルッと入りましたよ。
私とキミが一緒にいるから大丈夫って思ったんでしょうね~。
地道にコツコツ、頑張っていきましょ?
UC【アルジャーノンエフェクト】でサライ君が集めた情報をまとめ、事件の成り立ちから解決策を導きます。
とはいえこの力、長くは持たないので休み休みになりますが……。
それでも使えるところまで使ってみせますよ!
……サライ君、キミもしかして……。
ハッ……兄さんと同じ趣味を!?
だから親子なんて名乗って痛い痛い!!
(サライにほっぺつねられる)
●電子の海の中から情報のひとしずくを掬え
「サライ君と一緒に仕事をするのは初ですね~。兄さんから話は聞いてましたが、兄さんより話がわかりそうで助かります!」
エーミール・アーベントロート(《夕焼けに立つもう一人の殺人鬼》・f33551)がその白眼をきらめかせながらどこかほわほわとした口調で言う。
「ああ、そうだな、今回は俺と親父とエミさんと三人で……ってあれ、親父は?」
木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)もエーミールの言葉に頷き返すが、ふと周りを見て首をひねった。今回の事件に対してはサライとエーミール、そしてサライの「親父」であり、エーミールの「兄さん」である人物三人で赴いた筈だったのだ。少なくともグリモア猟兵によってこのUDCアースへと転移してきたときまではもうひとりの彼は一緒に居たはずだ。
「え? 兄さんですか? さっき通りがかったゲーセンにスルッと入っていきましたよ」
「あーもう、UDCアース来るとすぐそうだ……資金的に余裕があるからってゲーセン行くなよ……」
そうだ親父はそういう男だった、と天を仰ぐサライ。
「とりあえずそれじゃあ、俺とエミさんとで調べるしかねぇな……」
頭を抱えたのもつかの間、すぐにサライはさっくりと戦力から自身の「親父」をいなかったことにする。扱いが軽い。
「私とキミがいるから大丈夫って思ったんでしょうね~。地道にコツコツ、頑張っていきましょ?」
「ああもう、仕方ねぇなぁ……そんじゃあ、出てきやがれ、チビども!」
「「「さっらー!」」」
ユーベルコード【願い叶えるチビサライ軍団(ウィッシュ・カム・トゥルー・モノクローム)】。たちまちサライの周りに子供がぼわっとあふれだした。総勢九十六体になる
彼らはサライ自身の子供サイズの複製義体だ。
「「さら、らいらい!」」
「「「さららー!」」」
トンテンカンテン、チビサライ軍団はその場で槌を振るう。そうして差し出してきたのは純銀製の、蒼い宝石のついたペンダント。これは「創造のペンダント」。噛んでいる間だけ願いを叶えるペンダントだ。サライはそれをチビサライたちから受け取る。
(「姿なき通り魔」に襲われる可能性もあるからな……。瞬時に盾でもなんでも、作れるようにしておかねぇと)
「姿なき通り魔」の出没に警戒し、サライはエーミールとともにチビサライ軍団を連れて近場にあったカラオケ店に入店した。案内された部屋でUDC組織から支給されたノートパソコンを広げると、ネットに接続する。個室ならば姿の見えない襲撃者が襲ってきたとしても、扉を開ける際に気づけるのではないかという考えからだ。
「……情報を纏めんのはエミさんに任せるぜ」
「はい、でも私の【アルジャーノンエフェクト】は長く持ちませんから、休み休みになりますが……まぁ、それでも使えるところまで頑張っていきますよ!」
「おう、その意気だ。親父がいねぇ分、エミさんには頑張ってもらわなけりゃならねーからな」
「はい!」
「おめーらもだぞ、チビども!」
「「「さらぁ……」」」
また酷使するぅ。そんな声が聞こえた気がしたが気にしない気にしない。後でチビサライたちの社畜手帳を覗くのが怖くなったけど気にしない。チビサライたちもノートパソコンや情報端末を手に手に、情報を洗い出し始めていた。
――曰く。「オマジナイ」に特定の名前らしきものはない。
そして、「姿なき通り魔」が現れ始めたのは……即ち、衆人環視のもとでの目撃者なき他殺体、が発見され始めたのは、「オマジナイ」が流行りだしてから、少々間をおいてからのことであるらしい。
「犯行時刻……すなわち『姿なき通り魔』が殺人を行ったと思われる瞬間を収めた映像があればよかったんですが、出てきませんね。被害者が死亡直前・直後の映像は見つかりますが、雑踏に紛れて決定的瞬間が発見できません。まぁこれは、組織でも調べたことかもしれませんが」
「緑川美月と高木陽菜……二人の捜索願いは出されてねーんだな。まぁ居なくなったのが二日前で、親ぐるみの付き合いらしいもんな。もし親にお互いと一緒にいることを伝えて居なくなったんだとしたら、二日くらいは大丈夫だと思ってるのかも知れねぇ。中学生だしな。反抗期のプチ家出、だっけ? そういうもんだと思えば親御さんも大事にはしたくねぇだろ……つってもよ。女子中学生ってのは、トラウマの残りやすい時期だからな。早めの救助を心がけようぜ」
「……サライ君、キミもしかして……」
「あぁ? 何だよ」
「ハッ……兄さんと同じ趣味を!?」
「誰がロリコンだコラァ!!」
「だから親子なんて名乗って痛い痛い痛い!」
「親父と同じ趣味じゃねえよ!!」
エーミールの頬をぐにーっと両側に抓って伸ばしながら、サライは顔を赤くして叫ぶ。
「「「さっらー!らいらい!さららいらい!!」」」
そんなサライの服をチビサライが引っ張る。何かを見つけたらしい。
「きゅう……」
【アルジャーノンエフェクト】の効果時間が切れ、一分間の昏睡状態に陥ったエーミールをその場に捨てて、サライは己の小さな複製義体が示してきた映像を見る。
「こいつは……高木陽菜じゃねーか……後ろにいるのは緑川美月か……?」
地域内にあるコンビニエンスストアの防犯カメラに、グリモア猟兵から先立って見せられていた高木陽菜の写真と同じ顔をした活発そうな少女が映り込んでいる。その背後には、
西洋人形のような佇まいの少女の姿。これが緑川美月だろう。彼女らが買い込んだものはおそらくすべて食糧だ。サンドイッチ、弁当、パン、おにぎり……これだけの量があれば、二日と言わず一週間程度は保つだろう。
つまり少女たちは、自ら長期戦を覚悟して姿を消したのだ。寝床をどうしているのかはわからないが、その覚悟があれば一週間くらいは姿を隠すことは可能だろう。
――何から?
「“姿なき通り魔”から、か……?」
映像を見て唸るサライに、チビサライ軍団たちが周辺の監視カメラの映像を差し出してくる。
「……エミさん!」
「はい、今起きました。何か!」
「監視カメラの映像を渡す。美月と陽菜の足取りをまとめてくれ。上手く行けば、今二人がどこにいるのかわかるかもしれねえ!」
サライは真剣な表情で、チビサライごと彼らの持つ端末に映し出された映像をエーミールに押し付けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
加美歩・水峯
さて、「行方不明の少女たち」が心配なところだ
僕は若く夢に満ちたヒトが好きでね、友と篤い友情を育んでいるとなればなお美しい
とはいえ足で闇雲に探すのは非合理的、UC【碧水金魚に希う】により彼女らの痕跡を「失せ物探し」する
場所は彼女らの学び舎とその周辺、それから自宅とその周辺くらいで良いだろう
何か残されたものあれば、まぁなるべく人眼に付かぬよう見つけてきてくれ給え
その間「オマジナイ」とやらの調査も並行しよう
この手のまじないときたら、まあ社や寺が良い、地域にまあ少なくともひとつくらいあるだろう?
その場の者にオマジナイの情報を求めよう、そうだな……叶えたい願いがあるとでも騙るか
(アドリブ、絡み歓迎です)
●金魚はふわり空泳ぐ
「……さて……やはり、行方不明の少女たちは心配なところだね」
和邇である加美歩・水峯(碧水巫覡・f33948)は若く夢に満ちたヒトが好きだ。友と篤い友情を育んでいるとなれば、なお美しいと思う。
(とはいえ、足で闇雲に探すのはあまりに非合理的だ。ここは彼らにお出で願うとしようか)
「“さて、ゆるりと泳ぎ給えよ”――」
ユーベルコード【碧水金魚に希う】を発動させれば、水で出来た金魚がほろほろと空中にあふれだす。
「緑川美月と高木陽菜……彼女たちの痕跡を「失せ物探し」をしてくれ給え。場所は彼女たちの学び舎とその周辺。それから、自宅とその周辺くらいで良いだろう。何か残されたものあれば、まぁなるべく人眼に付かぬよう見つけてきてくれ給え」
水峯の命を受けた透明な金魚たちは、水のひれをひらひらと揺らして散っていく。七十を超える数の水の金魚たちが空中を泳ぐのは圧巻の光景であったが、色のない小さな魚たちの姿は離れれば陽の照り返しですぐに見えなくなった。日常の光景がその場に戻ってくる。
「さて――僕はその間、『オマジナイ』とやらの調査をしていようか」
オマジナイ。この町で広範囲に流行っているというそれ。どんなものなのかはUDC組織の調査でもさっぱりわかっていない。ただ、それに手を出している人間の幅が異様に広いということ。
(下は小学校から上は三十代後半、それ以上の年代もいるんだったかな……)
一般的に「おまじない」というものに手を出すのは小学生、中学生の女児が多い印象を受ける。それと比べるならば、確かにこの『オマジナイ』を求めたものは異様に広い。
水峯は携帯端末を手に、町の中を悠々と歩いていく。暫くして着いたのは、小綺麗な神社であった。境内にはちょうどアイスキャンディーを手にした学生服の少女たちが三名ほど居る。
「やあ、やあ、君たち。突然だけど――今流行っている『オマジナイ』について、知っているかい?」
「なぁに、どうしたのアンタ。オマジナイだったらアタシ達全員やったよねぇ?」
「うんうん、やったやった。美香はさぁほら、一緒にやったじゃん」
「うちらの学校だったらやってない方が少ないんじゃない? あーでもそっか、いま『材料』が足りてないらしいんっだっけ」
「……少し聞いてもいいかな。実は僕にも「叶えたい願い」があるんだ」
勿論、虚偽だ。しかし同じ頃の年代に見える水峯がそう言って見せれば、もともとそれほど高くなかった少女たちの警戒レベルは一気に下がったようだった。
「――タトゥー? それを彫らなくちゃあいけないのかい」
「シールでも良いんだよ。同じ紋様(パターン)だったらいいんだ。でも水で落ちちゃうようなチャチいのじゃあ駄目。だから皆タトゥーシールキット買ったり、持ってる子から分けてもらったりしてたんだけどさ。今は品切れになってるところ多いよねえ」
「ああ、でも通販でならまだ買えるところあるよ。フリマアプリだと値段釣り上げてる奴がいるから注意ね」
「……そういうのは、学校で禁止されてたりしないのかい?」
「貼るのはどこでも良いからさ、服で隠れる所に貼っちゃえばいいんだよ」
「そうだ、アタシの腕に貼ってるやつ撮らせてあげるよ。ほら」
かしゃり、と水峯の携帯端末のカメラが、少女の手首に貼られていたタトゥーシール――蔦を伸ばしたような紋様を写す。
「それで、本当に願いは叶ったのかな」
「ん? ああ、それね、ちょっと違う。このオマジナイはね」
――願いを「叶えられる自分」にしてくれるんだ。
そう言った少女の唇が、三日月のように弧を描いた。
成功
🔵🔵🔴
嘉納・日向
アドリブ連携歓迎
正反対の親友、どちらかが死ぬ
他人事に聞こえない
『“ひなちゃん”同士だから?』
そういう訳じゃないのー。……ちょっとその理由もあるけど
なんて、副人格になった『親友』に生前のようにツッコんで
とりま、オマジナイを重点的に調べてみますか
学校の近くで聞き込みすれば、行方不明のふたりの話にも被る情報があるかも
オマジナイの話に興味を引かれた体で、ひまりと一緒に話を聞く
ねぇ、それ。
よく聞くけれど、流行っているの?
お願いを叶えてくれるナニカのオマジナイ。詳しく教えて貰えないかな
コミュ強な『ひまり』程ではなくても〈優しさ〉滲む先輩らしく、できてたらいいけど
●太陽と月のように
高木陽菜と、緑川美月。彼女たちは正反対の、だけど親友だという。
グリモア猟兵の予知では――陽菜と美月のうちどちらかが、死ぬ。
「……他人事に、聞こえないな」
嘉納・日向(ひまわりの君よ・f27753)が七月の日差しに額の汗を拭いながらそう零すと、隣から朗らかな声がした。
『“ひなちゃん”同士だから?』
そこにいるのはかつての、否、この身のうちに抱え込んだ今でも、今だってかけがえのない親友の、ひまり。【陽炎(ヘイズブレイズ)】で呼び出した、今は己の副人格。
「そういう訳じゃないのー。……ちょっと、その理由もあるけど」
生前のようにそうツッコんで。くすりと笑う。
「とりま、『オマジナイ』を重点的に調べてみますか。……学校の近くで聞き込みすれば、行方不明のふたりの話にも被る情報があるかも」
『おっけー!二人の学校がどこにあるかは、わかってるんだよね?』
「そうだね。組織が調べた資料に載ってるよ」
日向とひまりが目をつけたのは、緑川美月と高木陽菜、二人が通う中学校のすぐそばにあるストリートバスケットコートだった。
少女たちがバスケットボールを奪い合い、その中のひとりがゴールにボールをシュートする。ガコンとゴールを揺らし、ボールがコートに戻ってくると、少女たちの中のひとりが言った。
「……それにしても、高木主将は明日も休みなんスかね?」
「わかんないよ、センセーもいつまで休むか聞いてないみたいだし」
「そもそも何で休み? 風邪とかじゃないんでしょ?」
「えー、知らないよ」
思ったとおり、高木陽菜が主将を務めているという女子バスケットボール部の部員なのだろう。手の中のボールを弄びながら、少女たちは囀るように言う。
「もしかするとアレかもよ? オマジナイ。今「材料」が手に入りにくいって話だしね」
「ええ、でも主将にオマジナイするような理由あります?」
「わっかんないよー? みんなオマジナイで強くなってるじゃん。高木だって次はスタメン取れないかも」
「……ねぇ、それ」
少女たちの会話の中に切り込んでいく。一瞬警戒するような視線を投げつけられたが、二人組の日向とひまりに敵意はなさそうだと踏んだのだろう、少女たちはすぐに警戒を解いた。
「よく聞くけれど、流行っているの? お願いを叶えてくれるナニカのオマジナイ。詳しく教えて貰えないかな」
「ええー!オマジナイ知らないヒトこの町に今いたんスか!」
「さすがに全員が知ってるわけじゃないっしょ……」
「いやー、みんなやってるからもうみんな知ってるもんかと」
「……あたし達に聞いてくるってことは、何か願い事があんの?」
「……うん、そうだね。あるよ」
その言葉が嘘だったのか、それとも本当に叶えたい願いがあるのか。本当になんでも叶うのならば、ならば――。
「言っとくけど、このオマジナイは“願い事を叶えてくれるモノ”じゃないよ。“叶えられる自分”にしてくれるの。……その分効き目は抜群、だけどね」
少女が着崩した制服をたくし上げる。そのきめ細やかな肌には、トライバル紋様――爪の先ほどの、蔦を伸ばした紋様のタトゥーシールが貼られていた。
「高校のヒトとか、もっと大人は本当に彫ってるヒトもいるみたいだけど、シールでも構わないから、これとおんなじ柄を体に入れるんだ。パターンさえ同じなら、手作りキットで作ってもいい。……アタシはこれで万年補欠から、スタメンを取れるアタシになれた」
オマジナイをして手に入れられるのは、欲しい物を手に入れられるだけの力を持った自分。
代償に失うのは、手に入れられない弱い自分。そんなのは最初から要らないものだ。要らないから、だからみんなが「なりたい自分」になるのだと、少女たちは語る。
「同じパターンならいいから、彫ってくれるヒトもたくさんいるし。手作りキットは最近店じゃあ見かけないけど、まだ通販で手に入るしね。でも、お風呂で落ちちゃうようなチャチいのじゃあ、願いなんて叶えられないよ。ちゃんともっとしっかりした奴じゃないと」
「それ、みんなはどこで手に入れたの? それとも彫った?」
「流石に彫れるお金は持ってないよー。アタシはキット持ってる子から分けてもらったけど」
「ウチもっスね」
「ああ、あたしは買えたんだったっけ。アンタにあげたんだっけ?」
「そう……なんだ。本当に、流行ってるんだね」
背中に走る薄ら寒さを耐え、優しい先輩らしい立ち居振る舞いを貫く。手にした携帯端末には、少女の肌に貼り付けられたシールを写した画像が収められている。
少女たちと別れ、彼女らが見えない場所まできて、ようやく演技をやめた日向は大きく咳き込んだ。ひまりがその背中を擦ってくれる。
『大丈夫、ひなちゃん?』
「うん、……うん、もう大丈夫……ありがとう、ひまり」
彼女らは言った。これは「叶えられる自分」に人格を変えてしまうものだと。
叶えられない自分は要らないから、それを代償にして、叶えられる自分を手に入れるものだと。
あんな、小さな欠片一つを体に刻むだけで。それも、シールで構わないのだと。
「欲しい物」があれば、それを手に入れられる自分に変わる。
「美月と陽菜……ふたりのどっちか、或いは両方は、このタトゥーを欲しがったの、かな」
或いは手に入れたのか。その体に刻みつけた後なのか。
「それで今、逃げているとしたら……?」
逃げなくちゃいけないのは、何故?
日向の声が、日が落ちて涼しくなってきた風の中に、ぽつりと消えた。
大成功
🔵🔵🔵
樹・怜惺
アドリブ連携歓迎
行方不明っつーのは放っておけねェよな。
姿なき通り魔、か。
いきなり死体が発見されるってのはどういう感じなんだ?
気になるしその方向からちィと調べてみっか。
大きめの通りで話しかけやすそーな学生さんやら、オンナノコやオネーさんのグループなんか見かけたら情報収集してみるわ。
この近くで変な事件起きてんだって?
ちょっとそーゆーの調べてんだけどさァ、なんかとっておきのネタとかあったりしねェ?
あ、ナンパとかじゃねェから、警戒しないで、頼むって。
スマホで録音とかメモったりしてる風な感じで話を聞いてみる。
頭脳労働、得意じゃねェんだけどな。そんな事言ってる場合じゃなさそーだし。
●見えない通り魔、見えない殺意。本当に?
「さて……と」
樹・怜惺(Guardiano della Dea Verde・f31737)はUDCアースの地に降り立つと、手のひらを天に掲げて体を伸ばす。
(行方不明、っつーのは放っておけねェよな。早めに見つけてやらねぇと)
人差し指を唇に当て、しばしの思案。
行方不明の二人の少女たち――そのどちらか、どちらなのかは確定していない――が死ぬと予知された。そしてこの町で異常な範囲で流行っている「オマジナイ」と、頻発しているという「姿なき通り魔」事件。
(姿なき通り魔、か……。いきなり死体が発見されるってのはどういう感じなんだ?)
スマートフォンの液晶画面を何度かタップし、怜惺は唇の端を持ち上げた。
「――気になるし、その方向からちィと調べてみっか」
夕方から夜に変わろうとする時間帯。
大通りには髪を染め制服を着崩した学生たちや、スーツ姿の大人たち、そして夜の商売と思しき露出の高い格好をした女性たちが行き交っている。怜惺は彼らの中からいかにも暇を持て余していそうなグループを見繕うと、朗らかに声を掛けた。
「よーっす。今さぁ、この近くで変な事件起きてるんだって?」
「なーにぃ、突然」
「ちょっとそーいうの調べてんだけどさァ、そこの大通りでも事件があったらしいじゃん? なんか、とっておきのネタとかあったりしねェ?」
「えぇ、新聞……じゃないよね。なんの取材? 雑誌? ネットニュース?」
「まぁまぁ、そんなトコ」
「えー、何か怪しいんですケド」
「あ、ナンパとかじゃないから。ほら、警戒しないで、頼むってぇ」
スマートフォンの音声録音機能をオンにし、怜惺はそうして幾つかのグループに声を掛けていく。
「どーも、オネーさんたち。ちょっと聞きたいんだけどさァ」
「さっきから見てたし聞いてたよ。アンタ、そこの大通りで起きた殺人事件のこと調べてるんだって?」
「そうそう!お、もしかするとなにか知ってる?」
「そーね、現場にあたしも居たし。って言っても、勿論犯人なんて見てないんだけど」
胸元の大きく開いた、露出の高い衣服に身を包んだ、気だるそうな女だった。その服にどこか似合わない蔦のような紋様のタトゥーがちらりと胸の谷間から見え隠れする。咥えていたタバコをもみ消して、女は怜惺に話し出す。
「あたしが気づいたときにはね、オバサンがスーツ姿のオッサンに「大丈夫ですか」って声を掛けてたの。オッサン、そのときにはもう死んでたんじゃない? ナイフがざっくり腹に突き立ってたらしいしさぁ」
「怪しい人物とか、そこから立ち去ろうとするようなヤツとかは……」
「あっはは!立ち去ろうとする奴だったらあたしも入ってるかなー。オバサンが警察に電話してたし、別に死体や怪我人が見たいわけじゃあナシ。それにそこの大通りだよ? さっさと行っちゃったほうが面倒なことに巻き込まれないで済むでしょ」
女が顎をしゃくった先にあるのは、交通量の多いスクランブル交差点。夜を迎えようとも人の往来など減らないような繁華街の大通りだ。ここで白昼堂々犯行が行われ、そして犯人が堂々と逃げおおせたなどと、とても信じられない。
怜惺は女に話を聞かせてもらった礼として缶コーヒーをおごると、ガードレールに寄りかかって事件が起きたという交差点を眺める。
(……うぅん……頭脳労働ってのは、得意じゃねェんだけどな……そんな事言ってる場合じゃなさそーだし……)
怜惺は頭の中でシュミレートする。自分が、殺人者であったなら。この大通りで、誰にも見つかることなくターゲットを殺し終え、そして誰にも見咎められる事なく逃げることが可能だろうか?
(ユーベルコードを使えば……まぁ、可能なのか? 遠隔地から……例えばそこのビルから凶器だけを動かして……いや、それじゃあ不自然に浮かんでる凶器を見られちまうか。じゃあやっぱり、姿を透明にして襲った? あの人通りで、誰にもぶつかることなく?)
――透明な何者か。「姿なき通り魔」。その呼称は、本当に正しいのか?
「ああ、ちっくしょー……駄目だな。やっぱ頭脳労働は得意じゃねェや。思考が変な方向に行っちまう」
怜惺はそうしてガリガリと頭を掻くと、再び情報収集を行うために屯している人々を見定めるのであった。
成功
🔵🔵🔴
浅間・墨
『オマジナイ』を使用してみる方が手っ取り早いかもしれません。
こういう呪いの類は年頃の女の子が一番知っている気がします。
どの世界でも女の子はそういうことに関心を持つ気がします。
…だ…男性へのアプローチ…などに。
女子高生?という方々に…勇気を出して聞いてみたいと思います。
あ。それ相応の服装をした方がよさそうですね。怪しまれませんし。
…足がスースーして気になりますが一人ずつ聞いていきます。
何でも叶う噂を聞いたことにして『オマジナイ』を伺います。
「え、えと…わ、私も…叶え…いこと…が、あり…して…」
一人だけに聞くのではなく数人…十人程度に聞いてみます。
言葉…が通じないことが多いですが…頑張ります!
●夢見る少女はあどけなく、その呪術を行使する
膝丈までの短いスカート。足がスースーして、気になる。
浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)はいつもの和服姿を脱ぎ捨て、UDCアースの既製服に身を纏っていた。それ相応の服装をしていたほうが怪しまれないだろう、という方針からだが、とかく慣れていないために羞恥心が勝ってしまう。
墨の方針は決まっていた。「オマジナイを自分自身で試してみる」だ。墨とて年頃の少女である、こういったまじないの類は年頃の娘たちが一番知っているのだろうと考える。きっとどの世界でも、女の子はそういうことに関心を持つものなのだろう。
(た……例えば……男性へのアプローチ……などに)
そう考えるだけで重く長い前髪の下の顔が真っ赤に火照る。自分は今おかしな姿を晒しては居ないだろうか? とても恥ずかしい格好をしているのではないか? 実際にはUDCアースの町並みにしっかりと溶け込んだ可愛らしい格好なのだが、どうしてもそう考えてしまうのだった。――余談だが、猟兵は世界の人々に姿形の違和感を与えないと言う特性を持っている。故に、いつもの和装姿であっても、誰も墨を怪しむことはなかったのであるが――。
「あ……の、少……よ……か?」
「ううん? 何? なんて言った? 聞こえなかったんだけど」
墨が目をつけたのは帰宅途中の女子高生たち。彼女たちに声をかけるだけでも墨にとっては大変勇気のいることだ。そして墨の蚊の鳴くような聞き取りにくい小さな声は、まず彼女たちに聞き返される。それでもその先の会話が続けられるかは、墨がどれだけ大きな声で話せるかという努力と、そして相手の我慢強さにかかっていた。余程相手が優しくなければ、相手をしていられないと去っていってしまうのである。
最初から一人だけ話を聞いて終わりにする気はなかったが、墨の声が小さすぎることを理由に彼女を袖にする娘たちは少なくなかった。それでも墨が努力を続けた結果、十数人の女子高生たちに声を掛け続け……やっと、最後まで話を聞いてくれる娘たちに出会えたのである。
「そっか。じゃあアンタは「何でも叶う」って噂を聞いてきたわけだ」
「は……ぃ……。え、えと……わ、私も……叶え……いこと……が、あり……して……」
「そうだろうねぇ。アンタのその調子じゃあさ。うん。アンタみたいな娘がこのオマジナイをするべきなんだと思うよ」
肌を小麦色に焼き、髪を金色に脱色した濃いメイクの娘は、しかし外見とは裏腹にとても根気強くて優しいのだろう。最後まで墨の話につきあってくれた。
「私……みたい……です……か?」
「うん。でもちょっと訂正するね。このオマジナイはさ、途中で投げ出しちゃいけない。今から大事なものをアンタにあげるけど、アンタは受け取ったら絶対オマジナイをやり遂げなきゃいけない。まぁ見ててあげるからさ、下手なことにはならないと思うけど」
「……もし……遂げ……なら……どう……です、か?」
「――知らない」
「……え」
「うん、具体的にどうなるのかは知らないけどね。でも、投げ出すのだけは絶対に駄目なんだ。その覚悟、アンタにある?」
墨は少し逡巡して、頷いた。どうせ最初からオマジナイを使用するつもりで来たのだ。ここで尻込みしていては、手に入れられる情報も手に入れられないだろう。
「そう。じゃああたしが買って残ってた分、アンタに分けてあげるよ」
そう言って少女が取り出したのは、タトゥーシール。黒い蔦のような紋様の、小さな爪一枚ほどの欠片だった。
「これを貼ればいい。これで、アンタは「願い事を叶えられる自分」になれる」
近場にあった水道を使ってハンカチを濡らすと、少女は墨の手首の内側、墨の来ている長袖の服で隠れる場所にタトゥーシールを貼っていく。少しすると、黒い蔦は墨の腕にぴったりと馴染んだ。
「――願いを叶えられない、弱い自分なんて要らないでしょ? だからそれと引き換えに、そのシールは願いを叶えられる自分にしてくれるんだよ。あたしもさぁ、親が厳しくって。ちょっと前まではメイクなんて出来なかったんだけど、今じゃ全然自由だもん……ね、勇気、出てきた?」
「……う、え、ええと……」
少女は笑って言う。大人とか、もっと遊んでる子達は本物のタトゥー彫ってもらってるみたいだよ。と。でも別にシールで十分だし。服に隠れる場所に貼っちゃえばいいし。時間が経って落ちるのは大丈夫。何ならまた貼り直したっていいし、しなくてもいい。もう「願いを叶えられる自分」にはなれてるんだからね。
少女の言葉を聞きながら、墨は胸を抑えていた。
――今なら、嫌いだったこの声を好きになれそうな気さえした。
なんでもできそうな万能感が、胸の奥底からひっきりなしに湧いてくるのだ。
今なら。今なら、本当になんでもできそうな気がする――。
「あ、あのっ。……ありがとう、……ございました!」
「お、いいじゃん。その意気だよ。頑張れー」
お呪いと書いてオマジナイと読む。
墨にオマジナイを……呪術を施した少女は、本当に心から親切そうに、そう言って笑ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『意思を封じられし者達』
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POW : 人海戦術
【身体能力以上の力を無理矢理】【引き出させることにより】【超人的な力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD : 人海戦術
【対象に対して人海戦術】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 心無い声
【呻き声やつぶやき】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:にこなす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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●「姿なき通り魔」
「誰っ!」
高木陽菜と、緑川美月――その二人の少女の現在地を突き止めた猟兵によって、猟兵たちは彼女たちのもとに急いだ。
彼女たちは町外れの廃屋に食糧を持ち込んで籠城する構えだった。黒髪の少女、高木陽菜が猟兵たちに手にした木刀を向ける。
「陽菜ちゃん、誰かいるの……?」
「駄目、出てきちゃ駄目!!……誰にも、アンタを殺させやしないんだから!」
少女は毛を逆立ててまなじりをつり上げる。保護しに来たのだという猟兵たちの言葉も信じられないようだった。
「そんな事言って……どこか別の場所に連れ込んで殺す気なんでしょ!? 美月は渡さない、殺させない、オマジナイだって必要ない!美月が変わる必要なんて無い!あたしの友達は、ありのままの美月なんだから……!」
「オマジナイ」の話を聞いた猟兵たちは思い至る。緑川美月はオマジナイをやろうとしたのだ。願いを叶えられる自分に変わろうとした。けれどそれは、高木陽菜によって止められた。
それは、少女の友情だ。
美月は陽菜のようになりたかった。陽菜のような活発な自分になりたいと思って、今までの自分と引き換えに新たな自分を手に入れようとした。けれどそれは、陽菜の望むところではなかったのだ。
だって、陽菜が親友になったのは、ありのままの美月だ。オマジナイなどのようなもので変わってほしくないのだと陽菜は美月に訴えて。
だから美月はオマジナイに頼ることを止めにした。今まで通りのありのままの自分で、親友が好きになった自分でいようとした。
――けれど、オマジナイを途中で投げ出すことは許されないのだと、誰かが言っていた。
「とにかく、早くいなくなって!ここを人でいっぱいにしたら、駄目!」
少女が叫んだときには、もはや遅かった。
ぐしゃり、と草木を踏む音がする。四方八方から、うつろな目をした人々が凶器を手に手に、廃屋へと集まってきていた。
その中には神社でアイスキャンディーを齧っていた少女たちがいた。ストリートバスケットコートでボールを弄んでいた少女たちがいた。大通りで気だるげにコーヒーを飲んでいた女がいた。金髪に派手なメイクの女子高生がいた。
彼ら彼女らの肌の上で、蔦のようなタトゥーがうごめく。
――姿なき、通り魔。
衆人環視のもとの殺人事件。
そこに居合わせた人々が、被害者以外の全員が共犯者であったなら?
誰からも目撃証言など得られないはずだ。だって誰もが犯人側の人間であるのだから。
最初からその殺人事件には、犯人の集団しかいなかったのだから。
その大仕掛けを可能にしたのが、圧倒的な人数の人間に流行した「オマジナイ」。
オマジナイをした人間が、犯人に、共犯者になる。
UDCによって意思を奪われた人々によって、その犯行は成されてきたのだ。
そして被害者は、オマジナイを「途中でやめた」人間。
UDCたちは操れなくなった相手を、大量の人間を操ることによって消し去ってきたのだ。
それが、「姿なき通り魔」の正体だ。
おぞましき殺人機構が、今。二人の少女に牙を剥こうとしている。
二人の少女のうち、どちらかが死ぬ――その予知を現実にしないために。
少女たちを守らなければならない。
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第二章「意思を封じられし者達」が現れました。
おめでとうございます、猟兵たちの捜査の結果、行方不明の二人の少女は発見されました。オマジナイの謎に迫ることに成功しました。そして今、「姿なき通り魔」の謎が明かされました。
彼らは「オマジナイ」をしたことによってUDC怪物に取り憑かれた一般人です。
オマジナイを途中でやめた人間、すなわち緑川美月を殺害しようとしており、そのために大量の人数が集まっています。
しかし、UDC組織は一般人の殺害を良しとしてはおりません。何より彼らは自分が殺人に手を貸していることなど知らず、オマジナイに手を出しただけの「被害者」でもあるのです。
UDCアースの一般人は他の世界の人間よりも非常に脆く、攻撃用のユーベルコードなどを用いればたちまち死んでしまうことでしょう。
全員が見える所に(耳や腕などに実体化した)UDC怪物が取り付いており、それを無理矢理にでも引き剥がせば彼らは即座に昏倒します。
今この場で、彼らを殺さずに事態を解決する最良の方法は、彼らを昏倒させることです。
幸い取り付いているUDC怪物は非常に脆く、足で踏み潰しただけで死にます。
※第一章でオマジナイのタトゥー、あるいはタトゥーシールを体に刻んでしまった猟兵がいた場合、その部分からUDC怪物が実体化します。UDC怪物は宿主の意思を真っ先に奪おうとするため、先ずはそれに抗い自分の体からUDC怪物を取り外し、破壊して下さい。
戦場について
廃屋を前にした大きな道路です。廃屋には緑川美月が隠れており、その前には高木陽菜が木刀を構えて陣取っています。操られた人々は美月を殺害しようとしておりますが、邪魔をする陽菜に危害を加えるかも知れません。
陽菜は指示があれば、隠れる・身を守るなどしますが、その場から逃げることだけは絶対にしません。
廃屋の中、或いは昏倒させた人々から奪った凶器など、戦闘に用いることの出来るものはいくらか存在します(戦闘に用いる場合、使えるものは何でも使う、ではなく、何をどう使うかプレイングに明記してください)
屋外のため、空中戦を行うことも可能です。
種族体格差による有利不利は発生しません。(体格差を利用するようなユーベルコードを使った場合はこの限りではありません)
第二章のプレイング受付開始時間は7/14(水)午前8:31~となります。
時間によってはページ上部のタグやマスターページにプレイング受付中の文字がない場合がありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
戦闘において採用できないものなどについての注意書きがございますので、プレイング送信前にマスターページを一読下さいますようお願いいたします。
それでは、「姿なき通り魔」改め――「意思を奪われた人々」との戦闘を開始して下さい。
殺すことなき沈静化を、取り付いたUDC怪物のみを斃すことを推奨します。
木々水・サライ
【灰色】
あー、なるほどな。オマジナイをやって取り憑かれた人間か……。
……エミさん、俺、今すっげえ嫌な予感がした。
そう、どこぞのクソ闇医者がバイクでそこの連中に激突するとかそういう……。
ほらやっぱり考えてるよ、クソ親父!!
そういうのダメってUDC組織に教わったでしょ!! めっ!!
いや市中引きずり回しの刑でもダメだが!?
しゃーねえ、UC【十二刺の白黒人形】で上手く親父の動きを制限しながら戦うしかねえな!!
どうせまだ戦いは残されてるんだ、親父に折檻出来るのはここしか無い!!
うまい具合に敵の攻撃も俺が引き受けるから、敵はそっちに任せたぜ、エミさん!
痛っ!? なんで蹴るの!? 蹴らなくて良くない!?
エーミール・アーベントロート
【灰色】
元は人間、取り憑いているUDC怪物を剥がせばいい……と。
ええ、ええ、間違いないですよサライ君。
兄さんはね、本当に……簡単なことを面倒にしたがる、『災厄』みたいな人ですから。
知 っ て た。
なんで兄さんって私とサライ君の胃を潰しにかかるかなぁ!もぉ!
丁度いいですし、UC【誕生する夕焼けの殺人鬼】での制約解除のための生贄になってもらいますからね、兄さん!!
市中引きずり回しの刑とかそれ1番やっちゃダメなやつー!!
UDC怪物が引き離された人から順番に、兄さんの手を叩いて外します!
また、兄さんに引きずり回しの刑にあってない人は私が順番に昏倒させます!
いや兄さん、蹴らないで! 蹴らないで!!?
金宮・燦斗
【灰色】
はー、楽しかった。
そろそろサライとエーミールが危機に陥ってる気がするので、クリムゾンウィッチーズ号で向かいましょうか。
ついでにUC【【豹変】真紅の魔女】も使っておきましょ。
んー、敵は人海戦術を使いますか。
バイクでちょっと追突事故起こしたら次々に事故しそうですね?
……あー、でもサライにめって言われたのでやめますか。
じゃあ敵の手を取って市中引きずり回しの刑にしてもいいですか!?
ということで集団の中から1人、手を引っ張って引きずり回します!
そうすることでUDCは剥がれることでしょう!
超簡単! お手軽! いやぁ、我ながらいい考え!
あ、時々サライとエーミールの横を通り過ぎて、活気づけに蹴ります。
●〔死〕特攻
――少々、時は巻き戻る。
チャリーン、ジャララララララ、ドゥルルルルルル、アリガトウゴザイマシター。
「はー、楽しかったー」
金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)は何ともほくほくした顔でゲームセンターから出てきた。なんたって今回はいつも途中で躓いていた楽曲がフルコンノーミスクリア―出来たしメダルゲーは大当たりして元手の三十倍ぐらいにしちゃったしで絶好調だった。ところで燦斗さんや、キミは自分がこの街に来た理由を覚えているかね?
「……え、今日こそフルコン出すため……?」
UDC事件を解決するためだよこんちくしょう。そう、彼こそが金宮燦斗、サライとエーミールとともにこの街にやってきたはずの三人目の男。調査もせずにスルッとゲーセンに消えたサライの「親父」にしてエーミールの「兄さん」なのであった。皆さん覚えておいてください金宮燦斗こういう事します。どうするんだこのままだとキミはグリモア猟兵のテレポートにタダ乗りしてきただけのすこぶる駄目なやつだぞ。
「はいはい、わかってますよぉー。そろそろサライとエーミールが危機に陥ってる気がしますしぃ」
はいは一回でいい。あと地の文とそんなにいっぱい会話しないでいただきたいのだが!?
「……それに、私の周りも何だかきな臭くなってきたようですし、ねぇ?」
糸目の下で赤い目が光る。いつの間にか燦斗が出てきたゲームセンターからは人が殆ど消え、客、店員までもが道をゆく人々と歩幅を揃え、どこか虚ろな目つきをしながら一様に同じ方向へと道を歩いている。彼らの目はあらぬところを見ているが、しかしその足取りは確かだった。燦斗には勿論あずかり知らないことだったが、彼らの服の下ではオマジナイのタトゥー、あるいはタトゥーシールがUDC怪物と化して彼らの意思を奪い、「姿なき通り魔」として新たな被害者を襲いに行こうとしているところであった。
「ああー……これは、ねぇ。もしかすると彼らに案内してもらったらサライとエーミールにも早く会えるかもしれないですねぇ」
そう言うと、燦斗は愛車であるオフロードバイク「クリムゾンウィッチーズ号」に跨り、星見が丘市の道を走り出すのであった。
――そして、現在。
「意思を奪われた人々」に囲まれたサライは舌打ちを一つする。
「あー、なるほどな。オマジナイをやって取り憑かれた人間か……そりゃあ数もいるだろうし、これだけの数が共犯なら白昼堂々通り魔やったってバレやしねぇよなぁ!」
「彼ら全員元は人間……いえ、体は今も普通の人間。取り憑いているUDC怪物を剥がせばいい……と……」
エーミールがグラスナイフを取り出した時だ。ブロロロロロロ……何処かから近づいてくるバイクの走行音が聞こえてきた。
「……おぉい、エミさん。俺、今すっげぇ嫌な予感がした」
サライの背中を冷たい汗が流れる。
「ほら……あれだ……どこぞのクソ闇医者がバイクでそこの連中に激突するとか……そういう……」
「……えぇ」
対するエーミールの返事は、それはもう静かなものだった。
「ええ、ええ、間違いないですよサライ君。兄さんはね、本当に……簡単なことを面倒にしたがる、『厄災』みたいな人ですから……」
「――“オラオラオラァ!!金宮燦斗様のお通りだァ!!言う事聞かなきゃ轢き殺すぞ”ォァァン!?」
燦斗のそれはそれは楽しそうな声が戦場に響き渡ったのだった。サライとエーミールは思わず高木陽菜を見た。少女も呆気にとられていた。え、何この流れ……みたいな顔をしていた。サライとエーミールは心の底から他人のふりをしたかったが、そうもいかない。だってあの男の手綱(曲りなりにでもほんのちょっとでも)取れるのきっと自分たちだけだから!!
「ふっふふふ……どうやら敵は人海戦術を使うようですね!ならばバイクでちょっと追突してあげたら次々に事故を起こしてくれそうですね? わぁい合法で人轢けるまたとないチャンスだー!!」
「バカァーーーー!!」
サライの渾身の蹴りがクリムゾンウィッチーズ号に決まった。
「バカ!バカ!何やってんだバカ親父!そういうの駄目ってUDC組織に教わったでしょ!!めっ!!」
「知ってた!知ってた!何で兄さんって私とサライくんの胃を潰しにかかるかなぁ!もぉ!」
口調が六歳児を叱るそれになっているサライとエーミール。もう一度書いておくがこの金宮燦斗とかいう三十六歳児、サライの「親父」でエーミールの「兄」なのであるが。
「もぉ……仕方ないですねぇ、じゃあ轢き潰しはやめにします……」
「当たり前だっつーの、面倒くせぇだろうが今回は一つ一つUDC怪物を引き剥がして……」
「じゃあ市中引きずり回しの刑にしてもいいですか?」
言うがいなや、燦斗はその辺にいた男の腕をひっ掴むと蹴り倒し、バイクで引きずり回す。
「アハハハハハハハハハ!これでUDCは剥がれることでしょう!超簡単!お手軽!いやぁ、我ながらいい考え!!」
「いや駄目だが!?」
「それ一番やっちゃ駄目なやつ――!!」
サライとエーミールの叫びが響き渡る。
「陽菜ちゃん、陽菜ちゃん!?ねぇ大丈夫!?一体何が起きてるの、陽菜ちゃん!?」
「出てきちゃ駄目、美月。これは美月が見たら駄目なやつ」
「陽菜ちゃんは平気なの……!?」
はしゃぐおっさん野放しの図を見せつけられている高木陽菜は木刀で人々を牽制しながら頭真っ白になっていた。何あれ怖い超怖い。でも逃げちゃ駄目だ私は美月を守るんだから。
「てぇ……やぁっ!」
エーミールが燦斗の手を引っ叩いて引きずり回されている人を離させ、グラスナイフで
燦斗を斬りつける。
「痛いなあ何するんですか!」
「私のユーベルコードには制約があるので、解除の生贄です!これくらい我慢して下さい!兄さんでしょう!」
「えぇ……なんか都合のいいときだけ兄扱いされてる気がするんですけどぉ……」
げしっ、げしげしっ。燦斗の形のいい足がエーミールを蹴りつける。
「いや兄さん、蹴らないで! 蹴らないで!?」
「サライの方にも行ってきまーす、ひゃっほう、次はお前だー」
「あががががががが」
最後のは新たに燦斗に腕をひっつかまれてバイクで引きずり回されている人の悲鳴である。正直これで死ぬか死なないかと言うと現実で言うと結構ギリギリなのだが、燦斗という問題児のせいで今此処は〔死〕に対する特攻を持つギャグ時空が侵食してきている。つまりどういうことかと言うと、ギャグ時空では人が死なない。ギャグ作品でガチの死人が出るとしたら最終回の直前くらいのものだ。死んでもああ酷い目にあったで元通りなので、こんな解決法もありなのである。
しかし、この解決法にも限りがある。この作品は純度100%のギャグではないのだ。よってエーミールは先程燦斗を切りつけた事によって制限解除が成されたユーベルコード【誕生する夕焼けの殺人鬼(バース・アーベントロート)】を発動させる。白眼を輝かせ、両手に持ったグラスナイフで人々の腕や耳に取り憑いたUDC怪物だけを細かく切り刻み、取り憑かれていた人々をその場に昏倒させていくエーミール。彼のユーベルコードは攻撃回数を増やすものだ。故に、敵対者の多い今回のような戦場では使い勝手も格段に上がる。
サライもまた数を頼りの攻撃に専念していた。
「痛っ!? 何で蹴るの!? 蹴らなくて良くない!?」
前言撤回。燦斗に時折蹴りを入れられてたりしたので専念はできていなかった。蹴られたら蹴り返せ、蹴る代わりに十二色の刃を宙へ放り投げると、落下する刃によってUDC怪物だけを――もとい、UDC怪物と燦斗だけを攻撃する。色とりどりの刀に貫かれた寄生型UDC怪物はすぐに死亡し、取り憑かれていた人々はその場に崩れ落ちる。息があるのを確かめている余裕もない。降り注ぐ刃は【十二刺の白黒人形(トゥエルブ・スタブ・モノクローム)】の効果で攻撃回数も四倍に増えている。全て命中すると敵は死んでしまう今回に至っては危険な技だが、サライは時折燦斗を巻き込むことと攻撃対象を一回一回変えることによって――元々この寄生型UDC怪物には一撃喰らえば死んでしまうほどの脆弱な生命力しか無いのだが――人々の誰ひとり殺すことなく、UDC怪物だけを破壊するに至っていた。
「こいつらの攻撃は俺が引き受けるから、そっちは任せたぜ、エミさんよぉ!」
「ええ、ですが……」
グラスナイフでUDC怪物を切り刻みながら、エーミールは戦場をかける。
「敵が、多すぎますね……!」
「っだよ、なぁ……!」
廃屋前の広いスペースに、「オマジナイ」をしたことによってUDC怪物に規制された人々は集まっている。オマジナイはとても広範囲に流行っている――つまり取り憑かれた人々の数はひどく多いのだと、サライたちは事前のグリモア猟兵の説明を聞いて知っている。
エーミールとサライは倒れた人々を足元に、押し寄せる敵を睨みつける。
取り憑かれた人々は言葉を発さない。その場所には、バイクを上機嫌に乗り回す燦斗の哄笑が響くだけだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
樹・怜惺
あらら、追いつかれちまってるのか。
あれがオマジナイの効果ってヤツ?うっわ微妙―。
仕方ねェな、ちィと頑張るかね…っても、一般人相手はきっついなー。
嬢ちゃん達は隠れてろよー。で、ヤバそうなら呼べよ。
殺させたりしねェっての。
ああ、動きを封じりゃ良いのか?
サイコキネシスで身体を宙に浮かせて固定、実体化した怪物を剥がすか。
あんま触りたかねェけど、無理だよなー。
抑え込んで、剝がして、踏みつぶす。地味ーな感じだけど他に出来る事無ェし。
昏倒させたのは、邪魔にならない位置に移動して寝かしとくか。
オマジナイなんてモンで願いが叶えようってのがちっと甘かったかねェ。
●人を呪わば穴二つ。それが自分自身でも。
「あーらら、追いつかれちまってるのか」
怜惺は寄生型UDC怪物に取り憑かれ、意思を奪われた人々の群れを見て肩をすくめ、ため息を吐いた。その唇からこぼれる言葉は緊迫した雰囲気の中にあって、どこか軽い。
「あれがオマジナイの効果ってヤツ? うっわ、微妙ー」
殺人事件について調べていた怜惺は、オマジナイの話を人々から詳しく聞き出してはいない。彼ら彼女らがどんな思いでオマジナイに手を出したかを推し量る事はできないかも知れない。否、そんなことはしなくていいのだ。どう呼ばれようとも、それは結局「お呪い」。呪う者の思いなど、知らなければ知らないままでいい。
「仕方ねぇな、ちィと頑張るかね……」
拳を天に突き上げて伸びをした怜惺は、背後で木刀を構えたままの高木陽菜を見る。その健康的な肌には暑さからくるものとは違う汗が浮かんでいる。彼女はバスケットボール部の主将と聞いた。ならば木刀を握ることなどこれが初めてなのかも知れない。
「嬢ちゃん達は隠れてろよー」
「っ、あたしは!」
「で、ヤバそうなら呼べよ。……大丈夫だ。殺させたりしねェっての」
「…………その言葉、信じたからね!」
高木陽菜は木刀を手にしたまま廃屋の中へと入ってゆく。きっと彼女は、信頼する友の傍らにあってもその唯一の武器を手放しはしないのだろう、他でもない友を、守るために。
「さァって……っても、一般人相手はきっついなー」
少女を見送った怜惺の背後で鉄パイプを手にした男がそれをゆっくりと振り上げる。
『ア……アァ……アアア……』
男の口からうめき声が漏れる。それは男が意図したものではない。寄生型UDC怪物によって無理やり限界以上の力を引きずり出され、肉体が悲鳴を上げているのだ。声帯が吐息で震え、喉から絞り出されている声だ。その限界以上まで引き上げられた力で鉄パイプが怜惺に向かって振り下ろされる――しかしそれは、怜惺に触れる直前でぴたりと止まった。
「ああ。動きを封じりゃいいのか?」
男の体が何かに吊り上げられるように宙に浮かんでいく。怜惺のサイコキネシスの力によるものだった。操るべき男が意図しない動きをしたことで、男の耳に取り憑いているUDC怪物が焦ったような動きをする。そのまま男は空中でぴたりと止まり、UDC怪物は怜惺の目にまじまじと晒される。
「はぁ、あんま触りたかねェけど、無理だよなー」
サイキックエナジーによって抑え込んだ男の耳から、怜惺は寄生型UDC怪物をべりべりと剥ぎとる。それはあっけないほど手応えなく男の体から外れた。それと同時に、男が白目を剥く。怜惺は手にしたUDC怪物をべしゃりと地面に投げ捨て、グシャリと靴底で踏み潰した。それと同時にサイコキネシスを解き、男を邪魔にならない場所に転がしておく。
「はぁ、地味ーな感じだけど他に出来る事も無ェし……と、んん?」
怜惺を脅威とみなして彼をターゲットとして襲ってくる人々の中に、見たことのある女を見つけた。見覚えのある、豊満な胸元に彫り込まれた蔦のようなタトゥーの女。怜惺が大通りで情報提供の見返りにコーヒーをおごってやった女に間違いなかった、その胸に寄生型UDC怪物が取り憑き、アイスピックを手にして近づいてくる。
――彼女は通り魔事件に行きあったと言っていた。面倒だったからそのまま道を急いだ、とも。通り魔事件にはエキストラなどいない、全てが共犯者の殺人事件。ならば彼女がここにいるのは至極自然なことなのだろう。彼女の胸のタトゥーが、オマジナイに手を出した証拠であった。
「オマジナイなんてモンで願いを叶えようってのが、ちっと甘かったかねェ」
彼女の動きをサイコキネシスで封じ、失礼しますよ、と一言囁いて、胸のUDC怪物を引き剥がし、踏み潰す。そのままサイコキネシスで転がしてやれば、彼女は意識を失い先の男の傍らに倒れ込んだ。
「さて、そんじゃ、続きといこうか……!」
怜惺はぺろりと唇をなめ、めいめいに武器を手にした意思を奪われた人々の前に立つのであった。
成功
🔵🔵🔴
加美歩・水峯
少女たちよ、素晴らしいじゃないか…
たとえ力を持たずとも、異形の異能に立ち向かわんとする気概
ありのままの友の姿を愛し、護らんとする篤き想い
美しい、本当に美しいとは思わないか?
だからこそ、この僕が傷つけさせやしないさ
彼らの攻撃には「流麗なる碧鱗」にて「受け流し」つつ、僕のやることはひとつに決まっている
UC【碧夜揺籃に誘う】、これは無力化について実におあつらえ向きだ
僕の周囲の、その操られた人々を眠らせる
それから「儀式用の短刀」の持つ「浄化」する力によって引きはがし、一匹一匹斬って刻んで潰していこう
(アドリブ、絡み歓迎です)
●彼はそれを美しいと言う
「――少女たちよ、素晴らしいじゃないか……」
感極まった声でそう言ったのは、水峯だった。
「たとえ力を持たずとも、異形の異能に立ち向かわんとする気概!ありのままの友の姿を愛し、護らんとする篤き想い……!美しい、本当に美しいとは思わないか?」
「えっ、あの、うん……えっ……ハイ……?」
その「尊い!」という感情を向けられた高木陽菜はとんでもなく困惑していた。敵ではない、このひとは。だけどなぜだろう、この木刀を放しちゃあいけない気がする。
捲し立てるだけ捲し立てると、水峯はくるりと陽菜を背にしてシニカルな笑みを浮かべる。
「――だからこそ。この僕が、傷つけさせやしないさ」
大ぶりのカッターナイフを手にした複数の少女たちが水峯の前に立つ。それは水峯にオマジナイの事を教えてくれた、神社の境内でアイスキャンディーを齧っていた少女たちだった。
「やぁ、久しぶりじゃあないか。まぁ、聞こえていないのだろうけれどもね」
水峯の言葉には全く反応せず、彼女らはカッターナイフを出鱈目に振り回し、切りつけようとしてくる。けれどその刃は和邇としての外皮、和邇としての本来の身体、水峯の「流麗なる碧鱗」には通らない。否、刃は水を切ったようにすり抜ける。
「ふふふ、どうだ便利だろう僕の身体は」
攻撃を無力化する肉体。両手を掲げるようにしながら、水峯は己のユーベルコードを発動させる。即ち、【碧夜揺籃に誘う(へきやようらんにいざなう)】――
「さぁ、“夢見る海にて、また逢おう”」
無数の泡がシャボン玉のように、水峯を中心に広がっていく。それは深海の夢を見せる泡。もしここにいる寄生型UDC怪物に取り憑かれた人々が意識を持っていたのならば深い深い海の底を垣間見たことだろう、けれど彼らはUDC怪物によって意思を奪われている。だからその美しいものをみることはなく、ただ――ばたばたと倒れていく。
「な……に……?」
高木陽菜が困惑した声を出した。それに背中を向けたまま応える水峯。
「心配することはないさ、少し眠ってもらっているだけだとも」
泡の効果範囲は八十二メートル半径内の指定した全対象に及ぶ。広範囲の対象を無力化するユーベルコードとしては、非常におあつらえ向きのものだった。そのまま水峯は片手に無銘の刃――儀式用の短刀を手にして、先ずは倒れている少女たちの腕に取り憑いている寄生型UDC怪物を切り取っていく。カニやらエビやらを切ったときよりももっと柔らかいような感触がして、UDC怪物は短刀の浄化の力もあって少女たちから引き剥がすことが簡単にできた。それを丁寧に刻んで潰し、水峯は新たな少女の腕に取り憑いたUDC怪物に手をかける。
「地道な作業になるのが厄介だけれど、仕方ない。幸い彼ら彼女らに怪我はない、例えあったとしても眠っている間に癒えてしまうだろうからね、じっくりと腰を据えてやっていくとしようか」
そうして水峯は、儀式用の短刀で寄生型UDC怪物の外殻をざっくりと切り裂いた――。
成功
🔵🔵🔴
浅間・墨
「…貴…は、緑…さ…の傍…居て…げて…だ…い…」
戦う前に緑川さんのもとへ…と高木さんに伝えます。
彼女は緑川さんの身がとても心配だと思うので。
「!?」
先程貼って戴いた手首のシールから熱さを感じました。
これはUDCの化け物?!不味…!
考えるよりも早く『国綱』の鯉口を切り【閻魔】を自分へ。
この技は負傷せずに邪を払うだけなので問題ないはずです。
怪物を斬り伏せてからシールを斬ります。…残念です…。
次は被害者さん達への対応をします。
えと。【閻魔】でも悪影響を与えかねませんね。これは。
ならば…と。刀をしっかりと鞘に納めます。
そしてダッシュで相手の懐へ飛び込んで柄を鳩尾へ。
昏倒したらシールを剥がしましょう。
●身の内に巣食った呪術を斬り裂いて
緑川美月が隠れている廃屋の前には、高木陽菜がずっと木刀を構えたままで立っている。グリモア猟兵の説明によれば、彼女は剣道部などではなく女子バスケットボール部の主将であるらしい。ならば、木刀など握ったことも初めてなのかも知れない。
陽菜の元へ、墨は駆け寄る。自身の手首の内側に貼り付けられたタトゥーシールを隠すようにして、墨は声を振り絞って陽菜へと話しかける。
「……貴……は、緑……さ……の傍……居て……げて……だ……い……」
どうか、美月のそばにいてあげてほしいと。墨の言葉に、陽菜は難色を示した。
「そういうワケにはいかない!あたしが、美月を守らなきゃ……!」
「……え……ぃぃえ……!」
どうか二人で。貴女が緑川さんを心配なように、緑川さんだって貴女が心配だと思うのです。小さな小さな声は、けれど陽菜には聞こえた、そして、廃屋の中にいる美月にも聞こえたようだった。
「――陽菜ちゃん。一緒にいて? ……ここに一人は、さみしいよ」
「……うぅぅ~っ……仕方ないなぁ、美月はぁ!」
陽菜は木刀を手にしたまま、廃屋の中へと入っていった。墨とすれ違いざま、照れたように彼女は言う。ありがと、と。
そのまま少女を見送り、押し寄せる寄生型UDC怪物に取り憑かれて意思を封じられた人々に向き直ったときだった。
「……!?」
手首が燃えるように熱い。その熱は、先程女子高生に貼ってもらったタトゥーシールから感じる。爪の先ほどの小さな蔦の模様の欠片から、寄生型UDC怪物が実体化し、墨の意思を奪おうとしていた。
(――これはUDCの化け物!? 不味……!)
咄嗟に。考えるよりも早く、墨は手にした「国綱」の鯉口を切り、巫力を籠めて刃を抜く。肉体を傷つけずに邪心だけを切り払う【閻魔】の太刀は、墨の白い手首を切り裂くことなく実体化したUDCの怪物だけを斬り祓って落とす。それを一刀のもとに斬り伏せ、墨は自分に貼り付けられたタトゥーシールを斬る。邪悪だけを斬る閻魔の一刀がなければ、墨の手首を傷つけずに肌に貼られたタトゥーシールを「斬る」ことは不可能だっただろう。
(……残念、です……)
――折角貼って戴いたのに。そうして前を向く墨の目に飛び込んできたのは、一人の女子高生。小麦色に焼けた肌、金色に脱色した髪、派手なメイク――知っている、覚えている。だって彼女こそが、何人もの人に声が聞き取りにくいからと袖にされていた墨の言葉を唯一最後まで辛抱して聞き取ってくれたからだ。そう、彼女もまた「オマジナイをして自分は変われた」と言っていた、ならばこの場にいるのは……当然で、仕方ないことだ。
(【閻魔】でも悪影響を与えかねませんね。これは……ならば……)
抜身の大刀をしっかりと鞘に収める。そして地面を蹴ると、細身のカッターナイフを手にした女学生の懐へと飛び込み、そのまま柄を鳩尾へと叩き込む。
ぐらりと女学生の身体が揺らぐ。墨はそのまま手を伸ばし、彼女の首に貼り付いていた寄生型UDC怪物を叩き落とす。べしゃりと道に落ちたUDC怪物は、墨の靴底で潰されて粉々になった。それで漸く、女学生の身体からは力が抜け、墨の腕の中に力なく倒れ込んだ。
(……あ、そうです、このシールも、落としておきませんと……)
墨はタトゥーシールなど自分でつけたこともない、今倒れている彼女につけてもらったものだ。だからタトゥーシールの仕組みについてあまりにも知らないことが多すぎた。タトゥーシールは普通のシールとは違い、特殊なインクと糊だけが肌に貼り付いたもので。水や湯もなしに剥がすのは困難だ。それが玩具のような物であれば擦り落とすのも簡単であったかも知れないが――今回使われているタトゥーシールは、そんなふうに擦り落とされるものではなかった。何より、墨は知らないことだが、この場にいる人々の中にはシールではなく本物のタトゥーを彫り込んでいる者もいる。彼らからタトゥーを取り除くことは実質不可能であった。
何度か倒れている女学生の首元を擦り、タトゥーシールが落とせないのを認識した墨は落胆の息を吐くと、彼女を寝かせて立ち上がる。
他の猟兵の手によってかなり減らされたとはいえ、UDC怪物に寄生された人々はまだまだこの場にいるのだから――。
成功
🔵🔵🔴
嘉納・日向
*アドリブ連携歓迎
あぁ、そういうこと。
『えげつないねぇ』
……ろくでもないわね。理想の自分になりたい思いを、利用して。
ぞくりとした怖気を、溜息にのせて零す
二人とも死なせないし、操られている人達にこれ以上の殺人も、させない
ひまりの姿が崩れ、影(暗条)の帯へと変わる
操られた人を取り囲むように視界を奪い、私はその闇に紛れて移動。囁く助言と動く闇を頼りにタトゥーへ狙いを定め、拘束の後UDCを引き剥がす
殺さないように。……もう殺すの、嫌だしな
余裕があれば武器も落としておきたいかも
なりたい自分になれるのは望んでたかもだけど
……知らないうちにこうなってんのは、嫌でしょ
友達のようになれたら
私も、思ってたなぁ
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
あー、成程ねぇ。アケチやキンダイチかと思ったらポアロの筋だった、と。そりゃ見つからないはずだわねぇ。
…だけど、ま。「見つけた」以上、後はきっちり「処理」するだけねぇ。
さぁて、やること自体はシンプルになったワケだし。●圧殺で○気絶攻撃の乱れ射ちバラ撒くわぁ。お二人さん、危ないからちょぉっと目と耳塞いでくれるかしらぁ?
スタングレネードに催涙弾、弾丸にはイサ(停滞)・ソーン(障害)・ニイド(欠乏)に帝釈天印。〇目潰し・足止め・捕縛にマヒ攻撃、逃亡阻止に武器落とし。ちょっとリミッター外れた程度の連中相手なら手札はいくらでもあるわぁ。片っ端から○薙ぎ払って蹂躙しちゃいましょ。
●夜は月を優しく包む
「あぁ……そういうこと」
『えげつないねぇ』
(……ろくでもないわね。理想の自分になりたい思いを、利用して)
姿なき通り魔のカラクリ、殺人機構のシステムに気づいた日向は、ぞくりとした怖気を溜息に乗せて零した。
「あー、成程ねぇ。アケチやキンダイチかと思ったらポアロの筋だった、と。そりゃ見つからない筈だわねぇ」
日向の後ろで、脳が溶けるような甘い声が聞こえた。ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)だ。彼女もまた殺人のカラクリについて思い至ったのだろう。
「でも、ま。「見つけた」以上、後はきっちり「処理」するだけねぇ……ね、お二人さん。危ないから、ちょぉっと目と耳塞いどいてくれるかしらぁ?」
「……どういう……」
体を固くし、警戒した様子で問い返そうとする高木陽菜に、日向は出来る限りの優しい声音で言った。
「大丈夫。二人とも死なせないし、操られている人達にこれ以上の殺人も、させない」
「……陽菜ちゃん。言うとおりにしよう」
「……美月が、そう言うなら」
陽菜が木刀を手にしたまま廃屋の中へと入っていく。日向の隣りにいたひまりの姿が崩れ、影の帯へと変わったのと、ティオレンシアが「アンダラ」――スタングレネードを括り付けたクレィンクイン・クロスボウを構えたのは同時だった。
スタングレネードの閃光が迸り、UDC怪物に取り憑かれた人々の目を潰す。そして催涙弾の弾丸には三種類のルーン、停滞のイサ・障害のソーン・欠乏のニイドと、更に帝釈天印までもが刻まれている。
「ちょっとリミッター外れた程度の連中相手なら手札はいくらでもあるわぁ、片っ端から薙ぎ払って蹂躙しちゃいましょ」
ぶちまけられた弾丸、グレネード、そのどれもがティオレンシアのユーベルコード【圧殺(アレスト)】によって肉体を傷つけない仕様になっている。寄生型UDC怪物に取り憑かれたれた人々の身体を拘束し、UDC怪物の五感、精神を攻撃する。最も、寄生型UDC怪物に互換や精神と言った高尚なものが備わっているかどうかは定かではなかったが――。
「さて、これからUDCを剥がしていけばいいのねぇ。自然に剥がれないなんてちょっと面倒だけどぉ、しょうがないかしらぁ」
派手なティオレンシアの攻撃とは対称的に、日向の行動は静かだった。
意思を奪われた人々を取り囲むように先程までひまりであった影の帯が彼らの視界を奪い、その闇に紛れて移動する。闇の中にあっても、日向の動きが鈍ることはない、囁き声が絶えず日向を導いてくれるからだ。その声と蠢く闇を頼りに人々のタトゥー、そこから実体化した寄生型UDC怪物に狙いを定め、一瞬で拘束し、そしてUDC怪物を引き剥がす。アスファルトの道路に落とされたUDC怪物は日向の靴底で踏み躙られ、ぐしゃぐしゃになって息絶えた。
(殺さないように、殺さないように――……もう殺すの、嫌だしな)
抑え込んだ少女――つい先程までストリートバスケットコートでボールを弄んでいた女子中学生だ――その手に持った鋭利な鋏を落とし、そして首筋にしがみついていたUDC怪物を剥がして踏み潰す。
「なりたい自分になれるのは望んでたかもだけど。……知らないうちにこうなってんのは、嫌でしょ」
それはオマジナイの事を語ってくれた少女への、日向からの今更の言の葉だ。
そのまま日向とティオレンシアの二人は、無力化させた人々からUDC怪物を引き剥がし、破壊していく。昏倒した人々が、道に積み重なっていった。
「……友達のようになれたら。私も――、思ってたなぁ」
日向のぽつりとこぼした言葉が。七月のまだ暑い夕暮れの空に少しだけとどまって、消えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『敬虔なる邪神官』
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POW : 不信神者に救いの一撃を
【手に持つ大鎌の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 出でよ私の信じる愛しき神よ
いま戦っている対象に有効な【信奉する邪神の肉片】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 神よ彼方の信徒に微笑みを
戦闘力のない【邪神の儀式像】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【邪神の加護】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:星野はるく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠天通・ジン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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●少女の執着
オマジナイによって人々に刻まれたタトゥー、或いはタトゥーシールに紛れて人々を操っていた寄生型UDC怪物は、猟兵たちの手によって全て破壊された。
七月の夕暮れはまだまだ暑く、大通りには、操られていた人々が昏倒したままでそこかしこに積み重なっている。
そこに、小さな足音がこつり、と響いた。
『あーあ。全員やられちゃった。折角うまくいくと思ったのに』
長い髪の少女だった。前髪は少し重く、けれど可憐な印象を抱かせる。けれど猟兵たちはその容姿に惑わされるものなどいない。彼女はUDC。オブリビオン。決して自分たちとは相容れぬものだと、本能が悟っていた。
『せっかく、美月ちゃんに高木さんを殺してもらうとびっきりのチャンスだったのに!美月ちゃんはシールを要らないって言うし、みんなにどさくさに紛れて高木さんを殺してもらおうとも思ってたのに、全員やられちゃうし!!本当にもう、信じられない、信じられない、信じられない!――せっかく……せっかく、“オマジナイ”で、美月ちゃんみたいになったのに!』
その少女の装いは、そう。グリモア猟兵から見せられた資料にあった、緑川美月の姿に、よく似ていた。
「あ、あんた……宮司真夜……? 美月があたしを殺すって、どういう事……?」
「真夜ちゃん……? 不登校になったって、心配してたのに……どうしてこんなところにいるの?」
廃屋の前で怪訝そうな声を漏らす高木陽菜。
廃屋の中から、不安に揺れる声を漏らす緑川美月。
真夜と呼ばれた少女は、軽々とした足取りで歌うように言った。
「ふふふ。優しい美月ちゃん。嘘つきな美月ちゃん。ほんとは私のことなんて心配してなかったでしょう? 美月ちゃんはいつもそう。誰にでも優しいの。誰にでも。……高木さん以外は。高木さんが特別で、他はどうでもいいから、誰にでも優しく出来るんでしょ?」
「ち、違う、わたし、わたしは……!」
「黙ってて、美月!アンタなんなの、突然出てきて、変なことばっかり言って……!」
「――高木陽菜。アナタは嫌い。私から美月ちゃんを取ったアナタは嫌い。親同士の付き合いだかなんだか知らないけど……美月ちゃんと会ったのは、私のほうが先だったのに」
「そんな事知らない!そんな事関係ないでしょ、友達に出会った早さなんて関係ない……!」
「そうやって断言できる貴女が嫌いよ。ずっと死んじゃえばいいと思ってた。美月ちゃんがオマジナイをしたがってるって聞いた時、私はすごく嬉しかったのに。これで美月ちゃんも、私と同じところに堕ちてきてくれるんだって!ふふ、うふふふふ、なのにあなたが全部台無しにしたの――死んじゃえばいいんだ、お前なんか!!!!!!」
しゃきん……少女は軽々と、自らの影から大鎌を取り出す。陽菜へ振り下ろされんとするその一撃を止めたのは、猟兵たちだった。
「そう。邪魔するのね。嫌い嫌い、猟兵、貴方達が全部邪魔をしたのね。大嫌いよ。あなた達も全部……死んじゃえばいい!!」
少女が咆哮を上げた。
殺意が形となって、猟兵たちに襲いかかってくる――!!
========================================
第三章 ボス戦 「敬虔なる邪神官」
おめでとうございます。猟兵たちの手によって、寄生型UDC怪物に操られた人々をすべて無力化、昏倒させることに成功しました。
それにより、オマジナイの儀式を行っていた邪神官が姿を表しました。
以下に詳細の説明をいたします。
「敬虔なる邪神官について」
この街でオマジナイの儀式を執り行っていた邪神官です。
緑川美月に憧れ、高木陽菜を疎ましく思い、オマジナイを用いて緑川美月のように「変われる自分になった」代償としてそれまでの「人間」である自分を失い、UDCとなっています。
彼女は宮司真夜という名を持っていた少女ですが、既に邪神の神官となっており、UDC――オブリビオンです。彼女は猟兵にとって斃さなければ、殺さなければならない対象です。
彼女は高木陽菜の殺害を第一目的として行動します。上手く陽菜から彼女を引き剥がして戦って下さい。なお、緑川美月が生きている以上、彼女が美月に手を出すことは絶対にありません。
ただし、高木陽菜が遠くまで逃げるなどした場合、猟兵との交戦を一旦停止して彼女を追い、殺害しようとする可能性があるため注意してください。
対応するユーベルコードの他、大鎌や邪神の肉片を用いて戦います。
戦場について
第二章と変わることなく、町外れの廃屋前の大通りです。
廃屋の中には緑川美月が、廃屋の前には高木陽菜がいます。
また、第二章の直後のため、操られた末に昏倒した人々がそこかしこに倒れています。邪神官が積極的に彼らに手を出すことはありませんが、無力化されている彼らをうっかり殺してしまう・殺させてしまうことがないよう、極力彼らを巻き込まないように戦うことを推奨します。
倒れている人々が持っていた武器などを調達することは可能ですが、その場合「使えるものは何でも使う」といった曖昧で広範囲な表現ではなく、「何をどの様に使うのか」明記してください。
倒れた人々が第三章の間に起き上がることはありません、安心して戦って下さい。
また、寄生型UDC怪物を全て駆除したため、オマジナイにより人を操る効果は失われています。
開けた場所のため空中戦は可能ですが、道に操られていた人々が倒れているため広範囲の攻撃には向きません。
種族体格差による有利不利は、その有利性を活かすユーベルコードを用いない限り発生しません。
第三章のプレイング受付開始日時は7/21(水)午前8:31~となります。
それ以前に送られてきたプレイングは申し訳ありませんが一旦流させていただきます。
時間によってはページ上部のタグやマスターページにプレイング受付中の文字がない場合がありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
戦闘において採用できないものなどについての注意書きがございますので、プレイング送信前にマスターページを一読下さいますようお願いいたします。
それでは、友情を手に入れられなかった哀れな執着の少女、もとい――邪神官を斃し、美月と陽菜、二人の少女のどちらも殺されないよう、戦って下さい。
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加美歩・水峯
結ばれず果たされず、抱え続けた想いは終ぞ歪みきってしまったか
そして人の身すら捨ててしまっては、もう二度と実らないだろうに
それもまた美しいと思うよ、だからその美しさに免じて、痛ましい最期を見届けるさ
UC【烈々濁流に溶く】を即時に発動し、「淤加美の鉄矛」を装備して接近戦に持ち込む
このUCにより僕の四肢は碧い鱗が生えそろった獣に、そして空を泳ぐ尾が具現化する
浮遊しつつ翻弄するように軌道を描き、彼女の攻撃が地面の人々へ向かないよう臨む
攻撃は爪や尾、そして矛による「なぎ払い」をしつつ相手の攻撃は「受け流し」を狙う
それから、奴が何かを使役するようなら、そちらの排除を優先しよう
(アドリブ、絡み歓迎です)
●朽ち果てた想いを、それでも
(結ばれず、果たされず……抱え続けた想いは、終ぞ歪みきってしまった、か)
水峯の姿が変わる。召喚獣である彼の生きた歴史では、和邇とは水の霊獣だ。四肢が碧い鱗で覆われ、空を泳ぐ尾が具現化する。
(そして、人の身すら捨ててしまっては、もう二度と実らないだろうに――)
ああ、それでも。それでも水峯は、それを。
「……それもまた、美しいと思うよ。だから。その美しさに免じて、痛ましい最期を……見届けるさ」
ふうわりと浮遊し邪神官の少女の前まで行くと、手にした「淤加美の鉄矛」を少女の心臓へと向かって突きつける。その一撃は少女の手にした大鎌によって弾かれた。
『くぅ……ッ、猟兵、猟兵、邪魔をするなぁぁぁ!!』
激昂した少女が水峯を追う。水峯は空を泳ぎ、少し開けた場所まで少女を誘導した。それでいい。彼女をあそこにいさせたままではいつまた高木陽菜が斬りかかられるかわからなかったし――流れた血を、あの友情篤き二人の少女に浴びせるわけには行かない。
『あなたたちがいらない邪魔なんかするからっ……!』
大鎌を水峯に振り下ろしながら、少女は叫んだ。と、彼女の足元に木製の像が生える。黒い蔦のびっしりとからまった、人のようにも見えるそれ。その両目と思しき部分に嵌め込まれた黒い鉱石が輝くたび、少女の鎌の冴えが鋭くなり、研ぎ澄まされていくようだった。ひらりと靡いた狩衣の裾を、斬り裂かれる。
(ふぅむ……アレは、良くないな)
宙を舞い、踊るようにして一瞬にして少女と位置を交換した。浄化と破魔の加護を矛に与え、木像にそれを突き立てる。ビシリと一気に木像に罅が入り、蔦に絡め取られた人間を模したような木像が割れ砕ける。それを足で踏み潰し、水峯は更に木像へと矛を立て。転がり落ちた黒い鉱石を、だんと突いて割った。
(この紋様、人々の肌に刻まれていたシールと刺青の紋様にも似ているけれど……さて。この木像が真実「オマジナイ」の儀式になにか関わっていたとして、こんなに簡単に壊れるものかな。彼女の力を増幅するだけの装置のように思えるね)
ぶん、と振り回された大鎌はその冴えを些か精細さを欠いているようにも思えた。まるで、木像が生えてくる前に戻ったかのように。水峯は大鎌の刃を矛で受け、いなし、少女を突き放すと同時に、その巨大な尾で薙ぎ払い――空を泳いで少女の背面に回ると、背中から矛で貫いた。柔らかい肉を穿く感触が、矛を通して伝わってくる。
『か……はッ……』
血の塊を道路に吐いて、少女はその糸を口端から滴らせたまま水峯を睨みつける。
『……痛い、痛い、痛い……大嫌いだわ、あなた。高木さんの次にしてあげてもいいくらい』
「それは光栄かな。僕は、君のその赤に彩られた姿も美しいとは思うけどね」
それが水峯の本心かどうかはともかく。否。きっと本心なんかではない。彼が美しいと言ってきたのは、いつも人の心の動きであったのだから―ーそれは、真っ赤な虚偽だ。嘘だらけの舌をちろりと出し、水峯は眼鏡の下で不敵に笑ってみせるのだった。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
まったく、痴話喧嘩なら三人でもっと健全にやってほしかったんだけどなぁ。…どうやらもう遅いようだけれど。
さぁて、相互理解が不可能とお互い確信したとこで。それじゃあ潰しましょうか。
煙幕や閃光弾で〇目潰しと足止めしつつ●縊殺を叩き込むわぁ。
使うルーンはカノとソーン。その肉片、「使い方を理解できれば」強いのよねぇ?
鉄火場の素人な元一般人の学生が「叡智」を「阻害」された上に心理的な択を削られた状況で、それでも「効果的な使い方」ができるかしらぁ?
なりたいものになろうとして安易に縋った結果、何物にもなれなくなった。
呪う者は呪われるモノ、人を呪わば穴二つ…その情念、返しの風が吹くには十分だったみたいねぇ。
●女フィクサーは蕩けるように笑う
「……はぁ、まったく」
脳が蕩けるほどの甘い声で、ティオレンシアはため息を吐き出すと、肩を竦めてみせた。
「痴話喧嘩なら三人でもっと健全にやってほしかったんだけどなぁ」
健全な痴話喧嘩とは。
「まぁ、……どうやら、もう遅いようだけれど」
道路に立ち、血を流す少女の前にティオレンシアは立った。少女は背中から心臓に穴を穿たれ、白かったブラウスを真っ赤に染めながらそれでも尚平気な様子で大鎌をティオレンシアへと向ける。――そう、彼女はもう遅い。踏み留まって逃げ出した二人の少女とは違って、この少女は既に、彼岸へと渡ってしまった。猟兵たちが狩らなければならぬもの、UDC――オブリビオンになってしまった。決して手に入ることのなかった友情を羨み、朽ち果てた想いを抱えながら過去から彷徨い出たその様子はさながら、七月の暑い日に焼き付いた夏の陽炎にも似ている。けれど目の前に立つ少女は現実だ。これが悪い夢などでないことを、誰あろうティオレンシアは知っている。その狩り方も――熟知している。
「さぁて、相互理解が不可能とお互い確信したとこで、それじゃあ潰しましょうか」
ティオレンシアの放ったスモークグレネードの煙幕がその場の視界を潰す。刻むルーンは「カノ」と「ソーン」。足元のアスファルトに弾丸を叩きこんで動きを封じ、そのままシングルアクション式六連装リボルバーで弾丸をぶちこむ。六発の銃声がその場に響く。
「あら、あら、その傷でまだ立ってるのねぇ……本当に、人間やめちゃって」
『うるっさいなぁぁぁ!それの何がいけないことなの!!私だって!私だって美月ちゃんの「親友」になりたかった!願いを叶えるために私が差し出せるものなんて、人であることくらいしかなかったんだから――……!!!』
少女の絶叫と同時、その足元から邪神のものと思しきてらてらと濡れ光る褐色の肉片が現れる。
『死んじゃえばいい、猟兵なんて!!死んでしまえばッ……』
「友情のためにそんなものを代償にしてしまえたから、あなたはお馬鹿さんなのよ。ねぇ。その肉片……「使い方を理解できれば」強い、のよねぇ?」
『……!? ……!そんなっ……なんで!』
「わからないでしょう? 『使い方』。鉄火場のド素人な元一般人の学生が。ルーンで「叡智」を「阻害」された上に心理的な択を削られた状況で……それでも「効果的な使い方」なんて考えられるかしらぁ?」
――そう。ティオレンシアの放った弾丸も、スモークグレネードもそれ自体が彼女のユーベルコード【縊殺(ルイン)】の手順の一つに過ぎない。弾丸とグレネードによる攻撃が命中した敵の「心理的な選択肢を削る」――それが【縊殺】の真の脅威だ。知らず知らずのうちに、対象は自身が取るべき最良の手段へ至る方法を、その思考の中から失ってしまう、奪われていく。邪神の肉片の「効果的な使い方」が今の少女には出来ず、召喚された肉片はただ意味もなくぐねぐねとのたうっているだけだ。
『う……あぁぁっ、ぁぁぁ……!!』
「なりたいものになろうとして安易に縋った結果、何者にもなれなくなった。……呪う者は呪われるモノ、人を呪わば穴二つ……その情念、返しの風がには十分だったみたいねぇ」
――あなたは何者にもなれてやしないのよ、と。そう甘く冷たい声で言って。ティオレンシアは再装填したリボルバーの弾丸を、少女へと叩き込むのだった。
成功
🔵🔵🔴
木々水・サライ
【灰色】
あー、友情のもつれがこうなったわけね……。
そこのおっさん共は首かしげてんじゃねえよ。わかるだろこんなん。
……まあ、男と女で友情の価値観が違うとは聞くけどよ。
UC【無邪気なチビ軍団、出動!】でチビ共に一般人達を運んでもらう。
1人につき3体。運ぶのに2体、ちまこい黒鉄刀を持った1体で護衛。
残った1体は俺と一緒に少女達を守るか。
代赭&褐返と12の刀を交互に使いながら、なるべく少女達のそばから離れないようにする。
敵に近づかれたら刀、親父達と相手してる時は銃、って感じ。
親父のドン引き原因はどう考えたってさっきのバイク事故だろ。
事故だろあんなん!! 事故じゃなかったらなんだってんだよ!!
エーミール・アーベントロート
【灰色】
友情のもつれ……??
(首をかしげる)(そんなものあるのかという顔)
えー、わかるって言われても私は友達いませんでしたし。
UC【【執行】終わりなき殺戮】発動させて、相手の動きに合わせてナイフ投げ。
代償効果でサライ君の呼び出した子達を攻撃しないよう、なるべく兄さんを視界に入れながら戦います。
速く動く物を無差別攻撃し続ける、ですからね……。
何かあったら捨て身の一撃で殴りかかります。少女といえどUDC、慈悲はありません。
救助対象の子達は、うーん。
さっきの兄さんの暴走が原因なのか兄さん見るとドン引きしてます。
まあアレだけ暴走したらそうなりますか。
合法的に人を轢き殺せるって喜びながら行ったし……。
金宮・燦斗
【灰色】
友情……??
いや、理解はしてますよ。解せぬってだけで。
そんなことでこんな馬鹿げた事をやるんだなぁ、と思って。
じゃあ私はしばらく普通に戦いましょう。
サライのちびっこ達が襲われそうになったところでそれをかばって、無理矢理自分を瀕死にさせた上でUC【傲慢なる影】を発動。
エーミールの投げるナイフに合わせ、私と影の黒鉄刀で切りかかりますよ。
可能な限り、素早く動いてエーミールの補助を。
相手は大鎌ですからねえ。黒鉄刀で弾ければいいんですが……。
えー、私って怖がられてるんです?? なんで??
だってバイクで人を轢き殺したら違法になって捕まっちゃうじゃないですかぁ。
またとないチャンスなんですよ? アレ。
●傲慢な殺戮とイノセント
「あー。友情のもつれがこうなったわけね……」
まったくつきあってられねぇな、そんな風情でサライが呟く。一方、おっさんたちはそれぞれ頭の上にハテナマークを浮かべていた。
「友情のもつれ……?」
「友情……?」
エーミールはそんなモノあるのかという顔で首を傾げている。
「いや、そこのおっさん共は首かしげてんじゃねぇよ。わかるだろこんなん」
「えー、わかるって言われても私は友達いませんでしたし」
こんな時にそんな悲しいことカミングアウトするのよくなくない?
「いや、理解はしてますよ、理解は。解せぬってだけで。――そんなことでこんな馬鹿げた事をやるんだなぁ、と思って」
「……まぁ、男と女で友情の価値観は違うとは聞くけどよ……」
――なにはともあれ、彼らが邪神官の少女に抱いた感想はそこで終わりだった。
「よっし、それじゃあ始めますかねぇ!来いよ、チビども!」
「「「さっらー!」」」
小さなサライの複製義体たちが大量に現れる、その中には脇差サイズの黒い刀を持った個体もいる。
「チビども、ぶっ倒れてる一般人を避難させろ!運ぶのに二体、黒鉄刀持ったやつ一体で護衛!えーと、そんで、一人に付き三体だから……残った一体は俺と一緒にあの子らを守っとけ!」
「「「らいらーい!」」」
「よう、こっからは俺がアンタらを守る番だ。しばらくの間つきあってもらうぜ」
「え……この子はいいけど……」
高木陽菜はチビサライのことは見た目の可愛らしさから受け入れたようだったが、サライ自身に対しては目を泳がせて拒否の姿勢を示していた。心当たりが無いとは言えない、とても言えない。
(親父のせいで俺まで警戒されてるじゃねぇかっ!!)
「……まぁ、少しの間我慢してくれや」
「……わかった……」
「陽菜ちゃん、陽菜ちゃんその人本当に大丈夫なの?」
心から親友を心配している緑川美月の声が、今のサライにはとても痛かった。
一般人たちをチビサライたちが安全な場所へと運んでいく傍らで、既に高木陽菜と緑川美月の二人から引き離された邪神官の少女は、先の猟兵との戦闘により白いブラウスを真っ赤に染めてエーミールと燦斗との戦いを始めていた。
『ああ、もう!鬱陶しい、鬱陶しい、鬱陶しいなあ!死んで……よねっ!』
「お生憎様、私達は殺人鬼でしてね……そうそう簡単には死なない、ご存知でしょう?」
『殺人鬼だって言うなら、高木さんを殺してよ!?』
「えぇー、私達にだって選ぶ権利がありますからぁ。ですよねぇエーミール?」
「あんまり話しかけないでください兄さん、今代償をサライくんの呼び出した子たちにしないように兄さんを見るので必死なんです」
エーミールが発動させているユーベルコード【【執行】終わりなき殺戮(エンドレス・キリング)】は、彼をナイフ投げに特化した殺人鬼に変貌させる代償として「速く動くものを無差別攻撃し続け」てしまう。チビサライたち複製義体を誤って攻撃するならまだしも、彼らが運んでいる一般人を傷つけてしまうのは最大限避けたいことだった。
「えぇ……私なら死んでもいいんですかぁー……?」
「何を言ってるんですか兄さん、その時の準備はしてきている癖に」
「えぇ、はい。まぁそうなんですけどね?」
少女が振り下ろす大鎌を手にした黒鉄刀で燦斗が受け止め、力を入れて拮抗させたところで弾き返し、その隙にエーミールがグラスナイフを投擲する。もう赤くないところなど無いほどに血を流した少女は、その服の下もズタズタだろう、けれど何の負担もない様子で大鎌を振り回してみせる。
『痛い、痛い、痛い、こんなに痛いのも……っ、高木さんのせい……!』
「そんなわけないでしょう、私たちのせいですよ」
「ええ、私たち殺人鬼ですから!」
エーミールのグラスナイフが首に刺さり、びしゃりと真っ赤な血を噴き出させる、少女はぐらりと頭を傾がせ、大鎌の軌道はふらりと揺らいで――
「……あ、ぶない!!」
「――兄さん!!」
彼女の足元で運ばれていた一般人へと向いた鎌の切っ先から燦斗が庇い、その下腹を大きく斬り裂かれる。
「ぐ……っうぅ……!」
「あら、こんな奴らを庇うなんて優しいのね殺人鬼さん。それともそろそろ退場する時間なの?」
せせら笑った少女に、燦斗はそれ以上に悪辣な笑みを見せつけた。
「いいぇぇ……むしろ、これからが本番というやつですよぉ……?」
現れたのは【傲慢なる影(ソンブラ・アロガンシア)】。燦斗が瀕死になった時にのみ召喚される、傲慢な殺人鬼の影、殺人鬼エーミールの兄、エーリッヒ・アーベントロート!エーミールの投げるナイフに合わせ、二振りの黒鉄刀を分け持った燦斗とエーリッヒとが少女に斬りかかる。彼らが素早く動けば動いた分だけエーミールのナイフは彼らを標的にしてしまうが、それも狙いだ。軽々と避け、そのナイフを少女へと向けて逸らさせる。
時折銃声がして、それはサライが高木陽菜を守りながら二色の二挺拳銃で少女を撃ち抜く音だった。
「ご教授しましょうかお嬢さん。鎌っていうのは振り下ろすだけじゃなく薙ぎ払う事もできるんですよ?」
『そんなの……知ってる……んだからっ……!』
「が、っ!!」
斬り裂かれた下腹を大きく蹴り飛ばされ、燦斗が廃屋の前まで吹き飛ばされる。エーミールとエーリッヒがカバーに回った。燦斗が頭を上げると、ちょうどそこは息子の隣、高木陽菜が木刀を手に立っていた。
「おや、ここまで吹き飛ばされてしまうとは……」
「――来ないで」
「はぃ?」
「早く行って!戦うなら戦うでいいけど、アンタはあたしたちのそばに、っていうか美月の側に近づかないで!お願いだから!」
「陽菜ちゃん?どうしたの、陽菜ちゃん!?」
「いいから行って!」
「えぇー……何なんでしょうねぇ、ねぇサライ」
「いいから行けっつってんだろ!原因はどう考えたってさっきのバイク事故だよ!あんなん事故だろ事故!事故じゃなかったら何だってんだよ!!」
「まぁ……あれだけ暴走すればそうなりますか……合法的に人轢き殺せるって喜びながら行ったし……」
「話に混ざってくるんじゃねぇよエミさんはぁ!」
「え、私って怖がられてるんです?? なんで?? だってバイクで人を轢き殺したら違法になって捕まっちゃうじゃないですか。またとないチャンスなんですよ? アレ」
「もう黙ってぇ!?」
『私を除け者に……するなぁぁぁ……!!』
「ぐっ……急に、力が強く……!? 兄さん!早く戻ってきてください兄さん!」
「ほら男子!怒っちゃったじゃん!っていうかこっち来させんなよ!!頼むから!」
「はいはい、仕方ないですねぇ……」
少女が廃屋へ近づかないよう二挺拳銃で牽制するサライ。燦斗は黒鉄刀を手にエーミールと己の影のもとに戻っていく。無理矢理に引き止められた少女はエーミールとエーリッヒ、燦斗相手に大鎌を振り回す。
「はぁ……大丈夫か?」
「私に話しかけんな」
高木陽菜はすげなくサライにそう言ってチビサライを抱きしめた。この子だけはまともなような気がした。
あんぽんたんをこれ以上美月に近づけさせてはいけない、そう彼女は誓ったのだった。
大成功
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浅間・墨
え…と。つまり三人とも知り合い…だったのですね。
リミッター解除と限界突破し鎧砕きと破魔を付与したUCを使用。
宮司さんの身体ごと彼女の歪んだ意思を『国綱』で断ち斬ります。
緑川さんと高木さんを護るように宮司さんの前に立ちます。
私には断って解放することしかできませんから。
意識を失って道に倒れている方々に危害が及ばないよう攻めます。
宮司さんとの間合いを詰めて他猟兵の方々と連携協力で斬ります。
斬れ味が鈍ることはないと思います。屠ると決めましたから。
…それでも…少しキツイですね。これは…。
常に宮司さんの挙動に注意を払っておきます。
昏倒した方達や緑川さん高木さんの危険回避ができるように。
樹・怜惺
アノ子らの知り合いだったんか。
まあ、逆恨みに怯える必要も、同情の余地も無ェけど。
真の姿に近付いたって事で、髪が伸びて目も髪も色味が濃くなり動きを遮らない程度の光の鎧が体を覆って。
さァて、どうすっかね。
周りに迷惑が掛からねェようにってのが難しいなァ。
見えないチカラでまず大鎌を止めて。後は全力でぶん殴るしか出来ねェかも。
そんなに振り被っちまったら止めるしかねェだろ?
動きを止めてる間に間合いを詰めて、余り苦しむ姿を見せたくねェから、一撃で終わる様に力を込めて。
なあ、まず言葉にすれば良かっただろ。
仲良くなりたかった、って。あの子を恨むのは間違ってるぜ。
恨まなきゃならねェのは、度胸の無ねェ自分だよ。
●その赤色で執着を殺して
(え……と。つまり三人とも知り合い……だったのですね)
墨にはそんな、複雑な友情に苛まれた経験はない。だから理解できたのは、新たに現れた少女――宮司真夜が高木陽菜・緑川美月の知り合いだということと。真夜が、少女が、もはや戻れない――UDC、オブリビオンと化してしまっているということだけだった。
(アノ子らの知り合いだったんか……まあ、逆恨みに怯える必要も、同情の余地も無ェけど)
そう考える怜惺の体は真の姿に近づいたためか、サイキックエナジーで編まれた光の鎧を纏っていた。また、髪は伸び、そして瞳と髪の色味が濃く変色している。
(さァて、どうすっかね……周りに迷惑が掛からねェようにってのが難しいなァ……)
他の猟兵たちとの戦いの中で、少女の白いブラウスは彼女自身の内側から流れ出た真紅にぐっしょりと濡れ、その下の体もずたずたに傷ついている。それでも彼女は平気な顔で誰かの血に濡れた大鎌を引きずりながら高木陽菜の元へと一歩一歩近づいてくる。――彼女を、殺すために。
墨は国綱の一刀を手にして、少女の前に出た。一歩遅れて、怜惺は少女の後ろに立つ。
『邪魔をしないで。猟兵。私はあの子を殺すの。そうすればそうすれば、美月ちゃんの「親友」はいなくなるよね? 私が美月ちゃんの「親友」に成れるよね?』
「…………!」
狂いきったその言葉に陽菜は肩を竦ませ、けれどキッと少女を睨みつける。その様を知ってか知らずか、少女は歌うような声で廃屋の中の美月に声をかける。
『そう、そう!だったら美月ちゃんが高木さんになって、私が美月ちゃんの親友になればいいんだよ!美月ちゃんは高木さんになりたかったんでしょう?』
「ち、ちがうの、私はもう、そんなこと……思ってない……!」
美月の悲痛な声が廃屋の中から返る。けれど少女にはその声は聞こえてない様子で。
『そうだよ、今からでもオマジナイしてなっちゃえばいいんだ。シールもタトゥーもなくたって、私がいればオマジナイはできるんだから、そう、だから……美月ちゃんが高木さんになって、私が美月ちゃんの親友になったら……もう高木さんは、要らないよね?』
少女の目が殺意の赤に染まった、その刹那。
「ンな道理が通る訳がねェだろうがよ」
怜惺の声が少女の殺意に水を差す。
「い……ら……高木さ……を……ても、緑川さんは……緑川さん、……宮司さん……は……出来、ません」
いくら陽菜を殺したところで、美月は美月だ。少女が、その関係性に取って代わることなど出来やしないと、小さな小さな声で墨が、それでも断言する。
『……なんなの、猟兵……!貴方達は……ずっとずっとずっとさっきから、私の否定ばかりして……!!』
「ンなの、お前が否定以外しようの無ェことしか言わねえからだろォが。もう美月はオマジナイはしねェっつってんだ。いい加減諦めろよ」
こくりと墨も頷く。少女の、血を流しすぎて白くなった頬が再び怒りの赤に染まる。
『もういい……もういい、もういい!貴方達の言うことなんか聞かない!今からでも遅くない、高木さん、あなたは殺すと決まったんだから――……!』
「…………!」
少女が大鎌を振り上げる。陽菜の目がぎゅっと閉じられた。けれどいつまで経っても、彼女の体に鎌の刃が食い込む痛みは襲ってこない。陽菜が目を開けた先では、怜惺によるサイコキネシスによって大鎌が空中に縫い止められ、動きを止められた少女の姿だった。
「そんなに振りかぶっちまったら、止めるしかねェだろ?」
『ぐ、ぅ、ぅぅぅっ……!!』
大鎌を振りかぶったまま、少女の動きは止まっている。墨は国綱の刃を抜き放った。
この少女は屠ると決めた。墨には剣技しか無い、【黄泉送り『彼岸花』】――無敵の、森羅万象の物質を断つことができるその剣。これでならば、少女の肉体ごとその歪んだ意思を断ち斬ることが出来るだろう――
「"散れ……"」
墨の刃が少女の体を断つ直前。少女のブラウスからまろび出た玉虫色の肉片が周囲に撒き散らされる。それは怜惺の視界をも奪い、一瞬の隙を与える。
『くっ……こん、のぉ……!!』
僅かに体の制御権を取り戻した少女が、大鎌を握りしめ振り回す。それは墨の刃を跳ね返し、彼女に体制を崩させるには十分だった。
「……んっ……!!」
『あははははははっ、死ね、死んじゃえ高木――!!』
天意を得たとばかりに笑顔を貼り付けた少女が、鎌を今度こそ陽菜へと叩き込む。それよりも先に、怜惺のサイコキネシスが発動し直すのが瞬きの間だけ先だった。突き飛ばすように、少女を車道の側へと弾き飛ばす。それは怜惺に出来た、一瞬の行動だった。墨はそれを追う。――屠ると決めた、だからこの刃は彼女を断ち斬る。国綱の大刀が、背中から少女を貫き、斬り払った。
『がぁぁっ……!!』
少女は斬られて道にべしゃりと崩れ落ちる。背中の傷跡だけではなく、口から大きな血の塊を吐き出し、げほげほと咳き込んでいる。怜惺はその背中に向かって言葉をかけた。
「なあ、まず言葉にすれば良かっただろ。……仲良くなりたかった、って。あの子を恨むのは間違ってるぜ。――恨まなきゃならねェのは、度胸の無かった、自分だよ」
墨は再び国綱の刃を握りしめた。黒髪が翻り、刃が再び振り下ろされる――。
大成功
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嘉納・日向
*アドリブ連携歓迎
死なせないっつってんでしょ
目の前で親友が死ぬの、結構引きずるもんだよ
他が見えなくなるくらいにさ
シャベルを大鎌に打ちつけ、体勢崩しを試みつつ
陽菜ちゃん達を隠すように暗条の帯(ひまり)が動いたのを見て
がつん、と一つ切り込んで
自分の姿も隠せるタイミングで日蝕発動
真夜ちゃんさ、邪魔してるヤツが死ねばって言うけど……
そーいう手段、『マジないから』ね
帯──ぶわりと広がったバロックレギオンを目眩しに、焼却の炎を纏わせたシャベルでなぎ払い
結構大振りな動作だから、もーし飛び込んでこられたら……ハサミ借りたやつで不意打ちとかかなぁ
儀式像は壊せりゃ御の字だけど、暗闇で見えなくは……どうだろ……?
●零れ堕ちた夜
『……ふふ、うふふ。ふふふ……ああ、ああ、大嫌いよ高木さん。こんなに私が貴女を殺したくて殺せないでいるのに……貴女はまだ美月ちゃんを守ろうとしてるんだもの』
真夜、と呼ばれた邪神官の少女は他の猟兵との戦闘の結果、もはや血塗れだった。ズタズタになった白いブラウスは跡形もなくずぶりと濡れた真紅に染まり、スカートすらも染め上げている。その服に隠された肌ももはやボロボロで、唇から血の筋を引いている。それでも彼女は軽々と大鎌を振り回すのだ。
それに対して、高木陽菜の態度は毅然としていた。人智を超えた現象を存在を前にして、いっそ空恐ろしいほどに堂々と胸を張って言い返す。
「……あたしは、美月と一緒にいるって決めたんだ。逃げないよ」
『本当に嫌いだなぁ。どうして? もう殺されるのは美月ちゃんじゃなくて、貴女なのに……嫌い、嫌い……もう死んで、私と美月ちゃんの前から、永遠にいなくなって……!』
振り下ろされた鎌をがしゃん、と受け止めたのは、日向の手にしたシャベルだった。
「死なせない……っつってん……でしょ……!」
『邪魔しないで!邪魔するならあなたも死んでよ!!』
地面から、かろうじて人を象ったと伺える木像が生える。そこには日向がもはや何度も見た黒い蔓の紋様が幾重にも絡みついていた。これがオマジナイの裏で用いられていた儀式像だとでもいうのか――否、そうであったら容易くここには出てくるまい、子機のようなものかと日向は当たりをつける。
(そういうのは、あとでUDC組織がみっちり探すとして……!)
「……目の前で親友が死ぬの、結構引きずるもんだよ。他が見えなくなるくらいにさ」
ひまりであった暗条の帯が陽菜たちを覆い隠す。それを確認して日向はシャベルで切り込んでいく。がきぃん、と重い金属同士がぶつかり合う音が響いた。
日向のユーベルコード【日蝕(エクリプス)】が発動する。ぶわりと広がった暗闇。
「"あたしの親友に、手を出すな……!"」
ひまりの声をした闇――バロックレギオンは、日向の姿を少女から隠した。
がきん、がきぃん。暗闇の中でシャベルと大鎌とがぶつかり合う音がする。日向の姿は完全に少女から隠れている。それでも少女は鋭敏に日向の位置を感じ取って、攻撃に合わせて大鎌をぶつけてくるのだ。
(これは……やっぱり、あの儀式像が力を貸してる……の、かなっ……!)
そうであるならば、放置し続けるわけにもいくまい。日向は喉の奥から極めて冷静な声を少女にかける。
「真夜ちゃんさ、邪魔してるヤツが死ねばって言うけど……そーいう手段、『マジないから』ね」
『ふふっ、うふふ……それは、貴方達にとって、でしょう? 私にとっては違うもの!』
言葉が。通じているようで通じていない。否、少女の立場からは日向の立場も過去も何もかもわかり得ないから。実らぬ友情に盲目となってしまった少女からは。もっと腹を割って話し合える機会があれば日向の言葉も通じたかもしれない。けれど、それにはもう遅すぎる――少女は、もうUDCになってしまったのだから。
(硬すぎる……やっぱり、儀式像を壊すしかない、か……!)
シャベルに炎を乗せ、木製の儀式像を薙ぎ払う。焼却の炎によって、儀式像は燃え上がり、焦げた木炭となって朽ちる。やはりコレが本物の儀式像ではないのだろう。本物であったならば、ここまで簡単に燃え落ちはしまい。けれど像が燃えた影響は、明らかに少女の方に出ていた。
『くっ……んっ……んぅっ……!!』
大鎌を振り回す速さが絶対的に遅くなっている。日蝕の暗闇を纏った日向のシャベルにもついていけなくなったようで、金属同士がぶつかり合う音の合間に骨を、肉を削る音と感触とが伝わってきていた。
(もう少しっ……だけど、これじゃあ決定打が無い……っ……何か、なにか……!)
日向の腿が倒れている人の体に当たる。傷つけさせないようにしなければと思った時、暗闇の中で光るそれを見つけた。
少女が大鎌を振り回し飛び込んでくる――その瞬間、日向はシャベルを投げ捨てる。直後に上がったのは大鎌によって肉が裂ける音、ではなく。
『あ……ぇ……?』
少女の眼球にハサミが突き刺さっていた。それは倒れている人々の中のひとりが襲撃してきた時に持っていたもの。そしてそれは、少女の眼窩に刺さったままで燃え上がる。
『あ、あ、ぁぁ、ぁあぁあぁぁ……嫌、いやぁ……!』
少女の体が燃えていく。ハサミの突き立てられた部分から、そして末端から黒い灰になって、風にさらわれて消えていく。炭のように黒く醜く変色した白かったかんばせ。涙が、もう一つの眼窩から零れる。
『いや、嫌、嫌よ、消えたくない、助けて美月ちゃん、私、私……!!』
「…………」
緑川美月の名を呼ぶ少女。美月は答えない。廃屋の中で、沈黙を貫いたままだ。最後までただの一度も姿を見せなかった少女が今どんな顔をしているのか。日向には、掴み取れそうな気がして……彼女の代わりに少女に告げる。
「諦めて、真夜ちゃん。あなたはもうそういう物に変わってしまった。だから、そうやって消えるの」
『嫌、いや、嫌ぁぁ……だって、私、私ぃっ……』
――まだ、願いを叶えていないのにぃぃぃぃぃっ………………
長く細い断末魔を残して、少女はその全身を黒い灰に変えて消え去った。
「陽菜ちゃん……」
「……大丈夫。もう大丈夫だよ、美月」
最後まで親友を守り続けた少女は、陽菜は、木刀をからんと落としてそう笑った。
廃屋から美月が駆け出してくる。抱き合って泣く少女たちの前を、猟兵たちは静かに立ち去ろうとしていた。
斯くして、この街に蔓延っていた二つの怪異事件はこうして幕を閉じた。
これより先はUDC組織の仕事。猟兵の仕事ではない。
全ては、やがて組織の調査資料の中に纏められていく話だ。
少女たちの友情戦線は、異状の回復に至ったのである。
彼女たちは、明日も親友だ。明日も、明後日も。
大成功
🔵🔵🔵