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エンパイアウォー⑦~その陣の名は~

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「機だ。猟兵よ。一端の兵となる絶好の機だ」
 正に鋼めいて無機質は瞳をぼう……と前に向けて、唯・刀はそう言った。
 数多の猟兵の活躍によって多くのオブリビオンが再び黄泉へと還り、戦は激しさを増すばかり。
『織田信長』との決戦へと幕府軍を温存するためにも、居場所を掴んだ軍神『上杉謙信』をここで叩かないという手はない。……例え、どれ程に強く恐ろしかろうとだ。
「上杉謙信は優れた将にして武士。今回、みんなにはその、将たる上杉謙信を破ってもらう。……その陣の名は――車懸かり」

 次から次へと最前線の兵を入れ換えることによって回復と防御を成し、常に最大戦力をもって敵軍を討つ。
 上杉謙信の並外れた統率力と戦闘力は切り込み役の猟兵達との激戦を制しながらこの桁外れの戦術を維持し、自身を援護させている。
「はっきり言おう。……このままでは無敵だ」
 崩さなければならない。そうでなければ勝機はない。
「個の力では絶対に勝てん……ならばこちらも軍勢をもって、仲間達との連携をもってこれに当たる」
 そう、要は最前線を増やせばいい。……交代と回復が間に合わないほどの飽和攻撃によって、軍を葬り、然るのち上杉謙信を討つ。……一隊、一隊、確実削っていかなければならない。

「みんなの担当は魑魅魍魎をその身に宿した女忍者集団。……これもまた、一癖のある敵でな、女忍者達は元は徳川幕府軍であって操られているに過ぎないんだ」
 こんな迷いの生じる情報を与えることは非難さるべきだという考えもあるだろうが、どうせ行けば分かること。
「魑魅魍魎に強制されて戦っている女忍者達は、外法で本来あり得んほどの力を振るってくる。……長くは保たないが、常に回復を繰り返すが車懸かりが保たせている。……このままでは使い潰されるは必定だ」
 情け深く斬って捨てるもよし、どうにかして回復と防御を突破して速やかに魑魅魍魎のみを排除してみせるも、可能ならば天晴れだろう。
「戦だ。戦だ猟兵よ。……悔いの無いように」


影帽子
====================
 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
====================

 という決まりであることです。どうも、影帽子でございます。
 十数人程の女忍者群が相手です。えっちですね。
 歴戦の猟兵ならば、斬ることは容易でしょう。殺しきることも、容易でしょう。……救うことは難しいですが、可能です。まあ、戦です。切り捨て御免も乙なもの。
 ……悔いの無いよう、プレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『魍魎に憑かれし女忍』

POW   :    魍魎呪術・狂化
【魍魎に狂わされて狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    魍魎呪術・降魔化身法【偽】
【魍魎におぞましき呪いを流し込まれ】【全身の傷口から血を噴き苦しみ悶えながら】【恐るべき力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    魍魎呪術・殺戮変化
【魍魎によって強制的に高速殺戮形態】に変形し、自身の【只でさえ消耗しきっている気力・体力】を代償に、自身の【攻撃力と敏捷性即ち殺戮効率】を強化する。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

煌天宮・サリエス
はあ、死者への救済。
……死者の安寧を願う私にとって、魑魅魍魎も生者もあまり興味は持つ対象ではないが
……救えるのならば救う。これが聖者としての在り方でしょう。

ユーベルコード【閃光】。漏れ出る聖者の光に【破魔】の力を混ぜることで攻撃が行るようになった技。
光で魍魎が特に濃く憑りついている【部位を破壊】することで、魍魎のみを焼き尽くし魍魎からの解放を狙います。
また、『熾天使の書』を読み解き生み出す炎に【破魔】の力を混ぜて放ち、牽制兼魍魎の弱体化を狙います。
もしも、解放できないのなら速やかに倒します。苦痛が長引くことがないように

救えたのならば。聖者の力と【医術】の知識を駆使して【救助活動】をします。


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
※アドリブ・連携歓迎

面倒なのも痛いのも好きじゃあ無いんだけどねえ。
けど、あたしには何とかする手があるからなあ。
まあ、なんとかしてみようか。

まずは仕込みとして、どうにか殺さないよう抑え込もうとしてる演技をしながら戦うよ。
で、上手くいかないふりをしながら、わざと攻撃を食らって相手に返り血を浴びせる。
性格の悪そうな魍魎だし、返り血を浴びるのは好きそうだよね。
で、十分にあたしの血を浴びせたら、【不死鳥血】でその血を不死鳥のものに変えようか。
血に宿る治癒の力で忍者の方を治癒しつつ、強力な破魔の力で魍魎だけを攻撃するよ。

無事魍魎を消滅させられたら、自分の傷もさっさと治そう。
ああ、疲れた。


ジュリア・ホワイト
ただ力で押し通るなら、他の敵軍と大差は無し
容易い仕事だろうね
だが、ボクはヒーローだからね
どうしても最善の結果というものを追求してしまう
「要救助者を発見。ヒーロー・オーヴァードライブ、これより【救助活動】を行う!」
(【明日へと繋げ命の灯!希望に向かって脱出せよ!】を発動)

「職業柄、殺さずに動きを止めるのは得意なんだ。…言うほど簡単ではないけどね!」
スコップや放水銃による【気絶攻撃】でまずは動きを止める
…と言っても、止まるのは僅かな間だろうね
すぐに魍魎が再起動させる
その僅かな時間で取り憑いている魍魎のみを破壊する
普通の武器では肉体ごとになってしまうけど
『No.4』の純魔力弾丸ならあるいは

【即興可】


流観・小夜
魑魅魍魎とは、あの纏わりつく赤きモノでしょうか?で、あるならば排除実行します。

ひとまず【目立たない】よう遠方の地形に伏して身を隠し、対象の行動を観察。
義眼の機能発動し【視力】【暗視】機能強化、対象とその魑魅魍魎の行動を観察。生きとし生けるもの全てに何らかの急所は存在します、強化された視界にて観察し続け、弱点となる呪術起点箇所を探ります。
対象が呪いを流し込む瞬間などが、それを見つけれる最大のタイミングでしょう。

対象の防御と回復を上回る様、対呪術的UDCに用いるような【傷口を抉る】特殊な弾丸を装填し、狙撃を【スナイパー】で正確に命中させ、魑魅魍魎だけを【暗殺】するように行動します。


ルパート・ブラックスミス
界立殿(f16005)と連携。

我が騎士道が重んずるは「勝利」、その為の敵の打倒。
…故に、これは自分の我儘だ。彼女達の【救助活動】、助力願います、界立殿。


相手を【おびき寄せ】、動きを【見切り】UC【命を虚ろにせし亡撃】を載せた短剣三本を【投擲】。
行動を封じ、界立殿に魍魎呪術の解呪を頼む。

急所には当てないが、このままでは操られている女忍者が堪えられないだろう。
故に、短剣を事前に「刺した相手が自分に対して【生命力吸収】する」ように【武器改造】。
生命力を供給し延命させる。

界立殿と無力化した女忍者を【かばう】ことを意識しつつ、これを繰り返す。


消えろ魍魎!忍たちの命、貴様らには…喰わせん!

【アドリブ歓迎】


界立・図書館
ルパートさんと連携(戦いに出るのは式神の司書です)
相手に魍魎が憑いているというならばそこを対処させて頂きましょう。
魍魎を火車だと推測するならばUC【2番台 先人再現】で火車退治の逸話のある松平近正を召喚して戦ってもらいます。松平近正は徳川家に仕えた武将、幕府は徳川家ですから張り切って戦ってくれるでしょう。
前衛を二人に任せている間、私は装備の魔改造サーチライトを使ってルパートさんに回復の魔法陣を倒した敵に炎の魔法陣を照射します。
(松平近正の火車退治は従兄弟の葬儀に参列した際、遺骸を盗もうとして現れた火車の腕を切り落とした話です)


クラウン・アンダーウッド
アドリブ・連携歓迎

苦しそうだねぇ。だったら早く楽にしてあげなくちゃね♪

複数の応援特化型人形からなる人形楽団の【楽器演奏】による【パフォーマンス】で味方を【鼓舞】し葬送曲を奏でる。

敵の【情報収集】を行い憑依している魍魎の核の位置を掌握し、【第六感】で相手の動きを読み、【武器受け】【オーラ防御】で攻撃を防ぐか回避する。

人形達と共に【怪力】をもって相手を拘束、UCの炎で魍魎の核と相手の心身を焼却する。

ボクの炎は精神と肉体に作用して心身を健常にするものだから、後付けのような憑依した魍魎なんか浄化してあげるよ♪

成功したらカバン型移動工房に収容して引き続き【救助活動】、駄目ならせめて安らかに...お眠り。


ファン・ティンタン
【SPD】ペイン・ペッカー
安芸(f03050)と

敵側に落ちた女忍を助けようだなんて、安芸も甘ちゃんだね
…ま、そーゆートコが良いんだけど

能力解放した安芸の器物:芸安を受け取って、行くよ
【終突「啄木鳥」】
私の【戦闘技能】の粋を駆使した刺突で正確に魍魎のみを【破魔】の力をもって刺し穿つ
女忍にこれ以上動かれると困る、最低限の負傷で行動不能に持ち込めるよう、腱を狙う【マヒ攻撃】で制圧していく
止めを刺さないと回復して動き出す?
じゃ、【破魔】の力を込めた【妖精の囁き】でふん縛っておこう
追加の魍魎が憑かぬよう【破魔】の【オーラ防御】で囲いながらね

女忍、あなた達も悔しくないの?こんな触手にやられたままで【鼓舞】


小烏・安芸
ファンちゃん(f07547)と共闘。

流石にこれは痛々しくて見てはおれんし見過ごせんな。元が味方いうならなおさらや。

殺さずに何とかしよう言うなら取りついとる魍魎を何とかせなあかんな。そういうことならウチの本体の短刀をファンちゃんに渡して、ウチ……いや、私の本来の力を使う。遠慮なく、存分に使ってくれな。

狙うのは身体から生えてる触手っぽいの。操られとる子に致命傷を与えんよう気を付けつつ、連携して魍魎を断ち斬ったる。

我が号は小烏丸、そして秘めし銘は【芸安】。厄災断ち、参る。

無事に魍魎だけを斬って忍びの子を救出したら、その子らと一緒に退避。重傷なことには代わりないんやし、すぐに手当てしたらんとな。



「……はぁ」
 白皙のオラトリオ、煌天宮・サリエスは誰にも聞かれぬ密やかな吐息を漏らす。
 眼前の戦場で懸命に戦っている女忍者も魑魅魍魎も、死者の安寧を願うサリエルにとってはさして興味を惹く対象ではない。
 ……ないが、だからこそ。
「死者に安寧を……そして生者に救済を」
 ……救えるのならば救う。聖者として、力ある者として、サリエルはそう謳って、戦へと実を投じる。

 うぞり、と。
 粘体を纏う触手のような魑魅魍魎達がサリエルを補足する。
 細い、軽そう、弱そう、手に持っているのは武器はと思えば分厚い洋書。均整が取れた彼に美しさなど魑魅魍魎は解するはずもない。
 戦場にそぐわぬ敵の登場に、しかし魑魅魍魎達は大いに警戒する。……白いその立ち姿に感じる、本能的な恐怖。
「ああぁ……ああああーーーー!!」
 囚われた女忍者の口から迸る絶叫。苦痛一色のそれに、次第に恍惚とした、狂暴なものが混じる。……狂わされていく。
「……っ」
 一時的に車懸かりから抜け出して、サリエルに迫る狂戦士の数は三。……左右から、そして、上から、迫る連携は早く、必殺であった。
「……確かに速い……ですが」
 サリエルは待ち受ける構え。オーラの力で身を固め、一撃を耐える覚悟で冷静に、確実に……放つ!
「――光は何よりも速い」
「――!?」
 閃光。
 攻撃を受け止めたサリエルから放たれる目映い光は、触れている女忍者を癒し……邪な異物である魑魅魍魎を清めていく。
 回避、撤退、陣に戻る。それが最善である。
 操り人形達に身を翻させる魑魅魍魎達は判断もまた素早いものではあったが、サリエルの前では一手遅い。
「……炎、が」
 か細い声が、女忍者のうち一人の口から転がった。……彼と彼女等を囲むように、清浄な炎が燃え盛っている。
 ……喉を抑えて、女忍者は本を広げたサリエルを見る程度の自由がある。……支配が弱まっているのだ。
「……う、うぅっ」
 近寄ってる彼に抵抗しようとする魑魅魍魎に抵抗する。少しだけ意外そうな顔の……天使様の顔を見る。澄んだ瞳が綺麗だった。
 額に置かれた、焼け爛れた手を受け入れる。故郷に帰ったらこの日のことをきっと語り継ごうと誓いながら、彼女は光に身を任せて、意識を手放した。
 木漏れ日の中にいるような、穏やかな顔だった。





 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード。通称ペト。
「面倒なのも痛いのも、好きじゃあ無いんだけどねえ」
 戦場に降り立った彼女を一言で表すならば異形。このサムライエンパイアという世界に住む民に単純に比較させたのならば、魑魅魍魎を背負う女忍者よりも、あるいは。
「けど、あたしには何とかする手があるからなあ」
 しかし、彼女にとってはそんなことは大した問題ではない。助けられる人を助けない理由になどなりはしないのだろう。
「まあ、何とかしてみようか」
 のんびりと、間延びした調子でそう言って、ペトは駆け出す。真っ直ぐ、小細工などなく、力任せ。そう見えるし、そう思わせることこそが思惑だ。
「ぐ、ぐぅ……」
 呻き声を上げたのは女忍者。青い髪を揺らして悠然と迫るキマイラを視界に捉えた彼女らを、魑魅魍魎からの呪詛が縛って動かす。……殺せ、と。
「うぉおおお!!!」
「……すっごい元気。疲れそうだねえ」
 のんきに感想を述べるペトの前で、女忍者達は変わっていく、魑魅魍魎が皮膚に突き刺さり、血と肉を吸って太くなり、鎧のように覆っていく。……動く。
「……っ」
「がぁあああ!!」
 全身に纏う魑魅魍魎はさながら外骨格にして追加筋肉。暴風のごとく迫り来る女忍者達に、ペトはこちらも正面から迎え撃った。
 敵の攻撃を受けることも構わず、強引にタックルするように捕まえる。
「が、ぐぅあぁ!」
「……沢山いるのは、ずるいね」
 だが、身体能力だけなら桁違いに強化された相手が複数相手である。背後からの攻撃で手が緩んだ隙に脱出される。
 ペトの血で輝く触手をぬらりと動かし、触手達は情報を共有する。どうやらこいつは力が強い。そして、操り人形達を助けようとしているらしい……間抜けなことだ。
 女忍者達の……魑魅魍魎達の動きが変わる。
 決して深く踏み込まず、当てては退くを繰り返してペトに出血を強いる戦術。強靭な生命力でどうにか捕まえようとする彼女を嘲笑うように、魑魅魍魎達は返り血を浴びて蠢いて……止まる。
「痛みを生むものは――」
 熱い。炎で焼かれるような感覚に、魑魅魍魎達は声無き悲鳴を上げて干からび、朽ちていく。……相反するように、操り人形達に生命が宿っていくことを、そして、もうそれに干渉できないことを悟って。
「――全て消し去ってしまおうか」
 間抜けがどちらだったかを知ったのだ。
「……疲れた」





 さながら古き善き――といってもこの世界では未だ萌芽すらない――蒸気機関車が停車するかのように、ゆっくりと、薄青の髪と白い肌、橙色の瞳を持つ少女が戦場に姿を表した。
 ……奇妙なことだ。体躯だけ見ても、魑魅魍魎達を差し引いたとしても女忍者達よりも小柄な少女が実に大きな力を感じさせる。……物質とは違う領域に生きる魑魅魍魎達はその脅威を感じ取った。
「な、に、もの……だ?」
「ボクかい?」
 その疑問は、魑魅魍魎のものか、それとも女忍者本人のものか。戦場にそぐわぬ明るい笑みを浮かべた少女は待ってましたとばかりに軽やかに応えた。
「ボクはオーヴァードライブ!通りすがりのヒーローさ!……安心して!君達を助けに来た!」
 ただ力で押し通るなら、ジュリア・ホワイト……オーヴァードライヴにとっては列車が進路上の障害物を弾くがごとく容易い仕事だが、ヒーローたるもの、最善を目指すは当然のこと。
「要救助者を発見。ヒーロー・オーヴァードライブ、これより救助活動を行う!」
 ヒーロー・オーヴァードライヴの前に、救いを求める者があり、彼女らを捕らえて離さない災害がある。……やるべきことは決まっている。
「……撃ち砕く!」
「うぁ……あぁっ……――がぁあああ!!」
 女忍者達は口から苦悶を漏らし、そして全身から血の滴を溢しながらオーヴァードライヴへと駆け出した。
 ――あいつを殺せ。お前の苦しみはあいつの所為だ。解放されたいなら殺せ。ただ殺せ。
「この線路は――」
 意識までをも呪いに支配された女忍者達の動作は鋭く一切の躊躇もない。常識で考えれば全く絶望的な状況。
「――皆の希望に向かって続いているのさ!」
 絶望に風穴を開け、希望を見出だしてこそヒーロー。
「職業柄、殺さずに動きを止めるのは得意なんだ。……言うほど簡単ではないけどね!」
 だが、簡単であるかのようにやってのける。
 ……二人、女忍者が迫る。右手に握ったスコップと、左手の放水銃で牽制。オーヴァードライヴには見えているのだ。目的地への線路のように。
「……ここだ!」
 ――それを辿る。
 スコップは後頭部をとらえ、水圧がもう一人を留める。抜くは黒き精霊銃。
 銃声は重なり、一つの音となった。放たれた二つの弾丸は女忍者達を通過しながら魑魅魍魎達を選んで殺す、神秘の魔弾だ。
「……よし」
 オーヴァードライヴは二人を安全圏に輸送する。……次の要救助者を救うべく。





 流観・小夜は他の猟兵達とは二つほど桁が違う遠方、戦場の端へと出現する。……瞬間、伏せ、周囲の状況確認、対象確認、起伏の視認、匍匐前進で移動して身を隠し……観測の開始。ここまでの全てのアクションを滑らかに淀みなく数秒の内に行う――そう、彼女はスナイパー。
 赤黒く、ぬらぬらと怪しい輝きを帯びて、女忍者達の肌を這ってその生命を吸う魑魅魍魎……狙撃の対象にして排除の対象をよく見る。
 鋭い小夜の視線の先で、猟兵達と哀れな女忍者達がぶつかり合う。あるものが光と炎をもって、またあるものは己が血をもって、また別のものなどは恐るべき拳銃の早撃ちで……各々が恐るべき業をもって、一人の犠牲者も出さず魑魅魍魎を屠っていく。
 ゴーグルと義眼によって強化拡張された視界はその恐ろしさと見事さを同時平行かつ子細に映し出して分析していく。
 ここが劇場だったならポップコーンと炭酸を伴に感嘆を漏らすところだが、彼女の自制心は呼吸と脈拍を一定に保ち周囲に溶け込ませ時を待つ。
「――排除、実行します」
 ポツリと、爆発音に併せて呟いたのは、だから、十分に解り、意識を切り換えるため。
 おおよその行動のパターン、選択の傾向、依り代されている女忍者達の心身の状態や……魑魅魍魎の急所までをも把握し……実行可能と踏んだ。
 スナイパーライフルを構える。スコープを通して対象を狙う。
 そうするとあらゆる雑音や不必要な体性感覚……余分な情報がカットされる。極限の集中の世界で一点を見詰め……待つ。引き延ばされた感覚の中では、一秒がまるで永遠のように長い。
 待つ……待つ……放つ。
 ――気付いたら放っていた、というくらいに自然に、銃弾が空間を疾駆した。それが小夜には遅く感じる。
 ゆっくりと進む銃弾と時間。スコープの中で、一体の魑魅魍魎が能力を行使する。……小夜の読み通りだ。
 3
 魑魅魍魎が弛緩する
 2
 脈打ち、女忍者達へと呪いが流れ込み。
 1
 わずかに、循環呪力が極端に弱まった呪術起点箇所――魑魅魍魎の急所へと――着弾。
 超々音速で飛来した対呪術生命用特殊弾頭は狙い過たず抵抗すら許さず貫通。
「……?……?」
 脈打つ魑魅魍魎はそのまま自身が生きていると勘違いしたまま消滅し、女忍者はなにがなにやら分からぬまま昏倒した。
「……」
 再装填確認。
 待つ……待つ……。

 放つ。





「レディース&モンスターズ……ってとこかな♪」
 奇妙な足音を響かせて、空を歩いて現れたのはクラウン・アンダーウッド。奇抜な……些か傾いた衣装を身に纏った陽気な彼は、否応なく戦場の視線を集めてしまう。
「……あ、あ」
「ううぅ……」
「……ちぇ」
 普段ならば、そのことにテンションを上げて余分な芸の一つも繰りだしてやろうというものであろうが……対峙する女忍者……彼女達のその瞳が苦痛と絶望に曇っているようでは悦びも半減というものだろう。
 道化師を観る瞳というものは、やはり笑顔が一番だ。敵意や害意、恐怖だって乙なモノだが、これはいけない。
「苦しそうだねぇ。だったら早く楽にしてあげなくちゃね♪」
 そのクラウンの言葉が、魑魅魍魎に巣食われた女忍者達にどう響いたものか。
 魑魅魍魎が急き立てるのを待つまでもなく、彼女らはクラウンへと駆け出した。……ひとえに救いのみを求めて、あまりに切実に。
「……さあ、仕事だよ♪」
 クラウンが手に持つ大きなカバンが応えて開く。ポトリ、ポトリとそこから人形が降ってくる。主人に負けない道化師らしさを宿した人形達は手に手に思い思いの楽器を取って、調和の取れた演奏を始めた。
 クラウンは女忍者達をからかうように、またコミカルに逃げるように宙を舞う。その挙動の度にカバンから新たな道化人形が現れるので、戦場には直ぐに立派で小さな楽団が生まれた形だ。
 心を掻き立て高揚させる……葬送曲を奏でる道化人形の楽団が。
「……次は、これだ♪」
 白く滑らかな、美しいガントレットから伸びる無数の細い糸。……それに繰られて登場するは、総勢十体のからくり人形。……皆一様に美しい金髪の少年少女を模している。
 まるで生きているかのような精緻な動作であるが――葬送曲で活性化した女忍者達にとって、それは明白な障害だ。撃ち砕くべき壁だ。
「が、がぁあああ!!」
 自発的に生命力を魑魅魍魎へと譲渡。培った技術まで使って人形を砕こうとする……ただただ「  」してもらうため――
「ダメだね♪」
 風に靡く旗のように、人形達は受け流し、潜り抜け、ヒラリと躱す。
 クラウンにとって、それは分かりやす過ぎる。
 女忍者達は糸に絡め取られるように、気づけば人形に拘束されていた。
「安らかに…...お眠り」
 その炎は優しく、癒すかのように彼女らを焼く。心地よい暖かさに身を委ね、ようやく笑顔を溢した彼女らに、人形の演奏がまた聴こえてきた。
 ……どうやら大一番。





 遠く、グリモアベースから、二人の猟兵が戦場に降り立つ。……便宜上二人とさせていただく。
 鎧……甲冑というべき男はルパート・ブラックスミス。そんな彼は実は鎧なのである。
「騎士道を志す者として必ず勝つ。これは、自分の我儘だ。……救助活動へ助力願います界立殿」
「もちろんです。人は大切にしませんと、ね」
 応じる女性は界立・図書館……の現身というべき存在。白い髪の小柄な女性であり、穏やかな笑みを浮かべている。
 そんな二人に対して女忍者達は不意討ちのように襲いかかる。血液を搾られて、その代わりに呪いが体内を循環し、死にたいのに死ねず、殺したくないのに殺す。
 そんな状態の女忍者達は絶望を目に浮かべて、魑魅魍魎にしたがって手を、拳を叩きつけてくる。
「掛かったな……我望むは命満ちる未来――」
 一体の女忍者の攻撃を自ら受けてルパートは図書館を庇いながら、もう一方で別の女忍者へと短剣を立て続けに投げて牽制する。
「――されど我示すは命尽きる末路」
 その狙いは正確であるが、魑魅魍魎は驚異を感じなかった。……短剣では殺しきれず、操り人形が多少傷つこうが知らず、回復すれば問題ない。……故に。
 図書館に向けて触腕を振りかざして迫りながら、女忍者は短剣を避けない。腕で振り払おうと短剣を受けて……呪いに自由を奪われる。
「……!?」
「殺されることはあっても、封じられることは無いと思ってたんでしょうか?」
 想像力が足りてませんね。と、呟きながら図書館はUCを行使する。……ルパートがいる以上、自分に攻撃が来ないことは分かっていた。短い間だが、読めたこともある。
「読み込み完了……発動!」
 図書館の要請に応え、現世に読み込まれ現れたるは鎧武者。といってもルパートのような西洋甲冑でなく、サムライエンパイア風のものである。
『松平近正、罷り越した』
 言うが早いか袈裟斬りを見舞う鎧武者。鋭い太刀筋は攻め気の触手を見事に捉え、切り落とす。
「……っ……!?」
「お願いしますね」
『心得た。徳川の世を乱さんとする化生……疾く斬るべし……』
 次々と魑魅魍魎を切り刻む彼の名は松平近正。弟の亡骸を奪おうとする妖怪・火車の腕を切り落とした逸話を持つ猛将にして、徳川初代の時代に主に活躍した故人である。
 徳川の守護者にして怪異殺し。そんな彼は仮初の命を与えた図書館に従って彼女を守り、魑魅魍魎を斬る……何故本体を斬って捨てないのだろうかと訝しみながら。
「がぁあああ!!……あぁ!?」
「自分を忘れてもらっては困る……」
 無論、そうならそうで都合がいいルパートである。一体の女忍者に三本、深々と短剣を投げ入れながらもう一体の女忍者へと飛びかかる。
「うおぉお!!」
「が、がぁ!?」
 女忍者を強引に質量と怪力で押さえ込み、魑魅魍魎の呪いを受けようが頓着せず。
「図書館殿!……解呪を!自分ごと!」
『無茶をする……』
「ですねえ」
 踏み込んだ松平近正が触腕を切り刻んで援護して、図書館はその手に魔法のサーチライトを輝かせて間に陣を敷く。……範囲内の命を癒す陣。そして炎の魔方陣。
「……燃やしましょう」
 女忍者と鎧武者とそして甲冑と共に火をかけられ焼かれる魑魅魍魎達が声なく苦悶を上げた。……唯一苦しむその姿は、覚悟のなさか、単なる生存本能の強さであろうか。
 回復の魔方陣が、そして何よりその身に突きたった短剣から流れる生命力で、炎に巻かれる女忍者達の命は辛うじて繋がれている。
 ルパートは立ち上がる。守護すべき者を庇いながら、炎より尚熱い炎を宿して。
「――消えろ魍魎!忍たちの命、貴様らには…喰わせん!」
 切り捨て御免。
 鉛の滴る異形の大剣は容赦無く魑魅魍魎を斬って捨てたのだった。





「……?」
 ファン・ティンタンと小烏・安芸。
 その二人……否、二振りが戦場へと現れた時、魑魅魍魎達は不思議とざわついた。
 否、否、否。
 正しく彼等だけでは無いだろう。魑魅魍魎達は震えたし、依り代にして食い物とされている女忍者達は、彼女等は居竦み、狼狽えた。……意識を保つことも儘ならない程に弱っていても、この国に生きるものならば分かることもある。
 ――これは尊いカミだと。
「敵側に落ちた女忍を助けようだなんて、安芸も甘ちゃんだね」
「流石にこれは痛々しくて見てはおれんし見過ごせんしな。元が味方いうならなおさらや」
「……ま、そーゆートコが良いんだけど」
 奇妙で簡素な羽織を纏った黒い少女と、清廉な印象の、大陸風の白い少女。
 戦場を往く歩みには恐れも迷いもない。……隙の無い自然体である。
「……けったいな」
「まったく」
 刀身の如く磨かれた二者の目に映るは此度の敵。……絶望に囚われた女忍者達と、彼女達の上を我が物のように這い回る粘体じみた魑魅魍魎。……行けば分かるとはよく言ったもの。
 安芸はファンにあるものを手渡した。……片手に握れる、命にして魂。……己自身。
「手筈通りに」
「ああ……来るで!」
 女忍者達、正確には魑魅魍魎達は駆け出した。如何に得体の知れぬ使い手とて地と数の利がある。……車輪の如く引き潰してしまえばいいと。
「我が号は小烏丸――」
 呪力を回す。操り人形どもから滴る血を浴びて更に回す。一、二、三。
 収奪した業と同族同士の同期による連携は蟻も通さぬほどのもの。
「そして秘めし銘は【芸安】」
 瞬時に練り上げた必殺を、一切の躊躇なく叩きつけ。
「――厄災断ち、参る」
 光った。
 そう魑魅魍魎達が認識した時には既に、必殺であったはずのものに大穴が空いていた。
「終突【啄木鳥】」
 突いたのだ。それは、単なる、しかし、瞠目せざるを得ない突き技なのだと。
 残心とるファン姿を見て、そしてその傍で一人の女忍者の様子を看ている安芸の姿を見て魑魅魍魎達はようやく悟った。
 強化を施した女忍者達、それでもなお捉えられぬ速度の突き……それを受けた同胞は溶け落ちて、残ったカスがあそこに残った。そういうことだ。
 退くか。……退けぬ。
 この女の業も、刀の破魔の力も全く恐ろしい、恐ろしいが……軍神とて恐ろしいのだ。
「逃げないね。……好都合」
「まったく、や」
 女忍者達の苦痛の声がより大きくなる。端から魑魅魍魎にとっては道具に過ぎない。……自身が危うくなれば無理な使い方もする。
 ――逃がすわけにはいかない。
 こちらも必殺の覚悟を秘めて、肉厚の鉈を持った安芸と芸安を持ったファンが駆ける。
 魑魅魍魎達はこれに対するべく、更に更に女忍者達から血液を収奪したのであろう。……もはや彼女等は青いを通り越して白い顔で、死相を纏いながらも陣からの回復術で死ぬことすらできない地獄を味わう。
 そんな操り人形をこれ見よがしに前に押し出して、魑魅魍魎は下がった間合いで必殺の機会を待っているのだ。
「……安芸!」
「おう!」
 ファンが出る。安芸が追う。
 神速の突きに、今度は女忍者どうにか反応し――
「舐めるなよ」
 ――無抵抗も同然に腱を、次々と断たれていく。
 例えるならば猛禽か。素早い刺突は迅速であり、それ以上に精妙であった。
 巧みな虚実を織り混ぜられた小烏丸・芸安の前に倒れ伏す女忍者。……彼女等を殺し潰してでも状況を打破しようと呪力を高める魑魅魍魎達へと。
「はあぁっ!」
 鉈が叩き込まれた。
 大質量の攻撃と高められた破魔と前に溶ける魑魅魍魎……あと一つ!
 最後の魑魅魍魎は、もはやこれまでと悟っていた。……だから、ならば、殺せるものを殺すことにした。
「頑張れ……そのまま負けて悔しくないのか!」
「せや!もうちょい気張ったらんかい!……絶対断ち斬ったる!」
 戯れ言を。
 如何に車懸かりとて無抵抗の獲物ならば一瞬あれば事足りる。
「……や……だ……たく……なぃ」
 死に体の筈の操り人形の筋肉が絞まる。出血が一瞬に満たない時間遅れる。……眼球を持たない魑魅魍魎には分かりようもないが、女忍者の眼は微かに開かれ、自身へと駆け寄る二振りの刀を見ていた。……それは神々しいものだった。
 一閃、二閃。
 消え行く魑魅魍魎には、分からなかった。





 此処に車懸かりの陣が一輪が砕け散る。……人は、唯の一人も死ななかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト