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エンパイアウォー㉓～オペレーション　クリスタルハザード

作者：ユウキ

●グリモアベース　作戦会議室

　ユウキは猟兵たちを集め、賛辞を贈った。
「諸君、流石だな。諸君らの活躍によって、幕府軍の被害は最小限にとどめる事が出来た。よって、残すは幹部連中を叩くのみ⋯と、言いたいところなんだが⋯」
　少し間をおいて、ユウキは話を再開する。
「水晶屍人。安倍晴明が奥羽戦線に展開した雑魚共の群れが、現在奥羽諸藩の武士による掃討作戦によって数を減らしつつあるんだが⋯はっきり言って数が多すぎる。いくら彼らでも相手にできる雑魚とはいえ、彼らには接近戦はリスクが高いため、現状弓矢や投石機などの遠距離攻撃手段に頼らざるを得ない戦闘が続いている⋯そこで、諸君ら猟兵たちに、彼らの援護に向かってもらいたいわけだ」
　曰く、もし猟兵たちが加勢し水晶屍人の殲滅が進めば、奥羽の武士たちの増援を幕府の軍に回す余裕ができるらしい。
「もちろん、現状でも必要最低限どころか、最高の形で幕府軍は進行できているわけだが、相手は第六天魔王、織田信長。念には念を、完璧なんて言葉は無いと思って掛かった方がいい」
　敵将を討つためには、あらゆる角度から優位を取らねばならない。
　相手が強大であるならば、どのような対策をもってしても完璧とは言えないと語るユウキ。
「で、あるならばだ、奥羽の武士たちを少しでも幕府軍に回せるように、水晶屍人共の殲滅をすることがどれほど重要かは理解してもらえると思う」
　そう言って地図を開いて合戦場を示す。
「場所は見通しの良い平原。数時間後にここで奥羽の軍約1000名と水晶屍人がぶつかる予定なんだが、猟兵が戦線に加わる場合、彼等は戦闘には加わらず、その足で幕府軍の戦列へと加わってくれる。もちろん殲滅に失敗した場合、奥羽の武士たちが引き返してくることにはなるが、相手は本当にただの雑魚だ。よほどの事が無い限り、失敗はありえないだろう」
　そう言ってゲートを開きながらユウキは言う。
「それでは、水晶災害作戦(オペレーション　クリスタルハザード)を開始する！！　好きなだけ暴れてこいッ！！」

第1章 冒険 『水晶屍人掃討戦』

POW   :    多数の水晶屍人の群れに飛び込み、体力の続く限り暴れまくる SPD   :    群れから逃げ出そうとする水晶屍人を発見し、逃がさないように掃討する WIZ   :    策略を駆使して、多くの水晶屍人を逃がさずに殲滅できる状況を作り出す 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●　一番槍　【マヤ・ウェストウッド】

　戦場に立つ一人の獣人。
　その眼光の先に控えるは、ゾンビと言って差し支えない連中の群れ。
「なんだいなんだい、あたしが一番槍だってのかい！？」
　周囲を見回して、他に誰も猟兵が居ないことに気付いたマヤは、大きな声で叫ぶ。
「かァーっ、ほかの連中はだらしないネェ⋯こんな乙女に先陣切らせるなんてさァ⋯」
　そうは言いながらも、その耳はピコピコと小刻みに動いていた。
　それはまるで、早く遊びたくて仕方のない子犬のようである。
「まぁいいや⋯」
　止めてあったバイクにまたがると、スロットルを豪快に吹かしてにやりと笑った。
「アタシの右眼はダテじゃあないのさ⋯」
　そう言ってアクセルを全開にすると、バイクの爆音に負けぬ声量で雄たけびを上げた！
「レッツ、パーティー！ 眼ェ逸らすンじゃあないよッ！！」
　一気に加速し、土煙を上げ滑走する魔導式航宙二輪エマニュエル・チェイサー。
　魁は激しく、苛烈に、猛烈に。
　相まみえるその瞬間、巧みなハンドル操作でバイクを横滑りさせながら多数の水晶屍人を巻き込んで挽肉に変えていく！！
「アタシの目力を以ってすれば、戦艦から異性の心まで落としてみせるねッ！！　ほらっ！！」
　バイクの停止と共に右目の眼帯を引き千切り、その義眼が露わとなる。
「ほら、乙女の普段は見えない秘密を見せてやってんだ、感謝するんだねぇ⋯このくたばり損ないがッ！！」
　右眼の義眼に仕込んだ重力子射出装置が、哀れな屍人の群れを押し潰す。
「だらしない男どもだねぇ、もっとアタシを楽しませておくれよ！」


　その後は、もはや彼女の独壇場であった。
　なんとか近づいた屍人を殴る、蹴る、投げる、極める、締める、噛み付⋯こうとしてマズそうだからと引っ掻く、銃で撃つ、バイクで轢き廻す、尻に敷く……
　一度、水分補給の為に自陣に戻った彼女は血だらけの笑顔で補給のために残った武士にこう言った
「あぁ⋯美味しいねぇ、この世界の水は⋯ん？　なんだい、ひょっとして⋯アタシのカッコよさに惚れちゃったかい？」
　そう言ってウィンクした彼女を見た武士は⋯


　ただただひきつった笑顔であったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　度重なる戦いに疲れ、それでも彼女は止まろうとしない。
「すぅ⋯」
　大きく息を吸い込むと、
　手を合わせ静かに跪き、頭を垂れた。
　女は歌う。静かな鎮魂の歌を。
　彼らだけは見過ごせないと。
　望まずに意志も奪われただ人を襲う化生と化した人々を⋯水晶屍人は皆、骸の海に還すと決めたから。
　安倍晴明の邪法から解き放って、必ず全員を安息の眠りへと誘うことを決めたから。
　だから彼女は、自身の疲れた体に鞭を打ち、その詩を歌い続けるのだ。
　慈悲深く、優しき眠りへと誘うために。
　怨嗟の呪いに焼かれ、その苦しみからから逃れようと新たな犠牲者を生む。
　そんな、晴明の放った悲しき邪法の犠牲者達をただの一人も見捨てやしない。
　ただ、安らかに眠れ。
　祈りは破魔の力となり、それは歌にのせて戦場へと響き渡る。
　優しい歌は屍人たちの怨嗟を癒し、その呪いに晒された哀れな肉体を打ち砕く。
　そして、魂は在るべき場所へと還るのだ。
　彼岸へと⋯優しきゆりかごへと、魂は還る。


「彼らの魂に救いあれ⋯」
　それは彼女⋯鈴木・志乃の、小さくも大きな優しさであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●　人狼無双

　高所に陣取り戦場を見渡す。
　すでに各地で猟兵が暴れたのだろう痕跡と、いまだに残る屍人の群れ。
　その中から幾何かのグループが戦列を離れ、撤退し始めているのが見えた。
　ここで取り逃がせば、各地で別の被害が出る。
「狩らせてもらうぞ⋯」
　群れから逸れるのは愚の骨頂。捕食者に命を差し出したも同然。
　大神・零児は、彼らの逃走を阻止せんと、その瞳を光らせる。
　哀れな被食者狩りの時間だ。

　撤退する屍人の群れは、気の抜けるような
　ポンッ
　という音に足を止めた。
　直後、彼らが向かっていた先で、小規模の爆発。
　逃走先を変更しようとすれば、先程の気の抜けるような音と小規模の爆発が、行く手を阻む。
「逃げ出そうったって無駄だッ！」
　不意に響く声に気付いた屍人の一体は、その声の主を視認することなく叩き伏せられる。
　一匹、また一匹と仲間を殺され、恐慌状態へと陥る屍人達。

　そこに誰が居る？
　誰が仲間を殺している？

　足を止めた数匹の群れの首が、一瞬の後に体と別れを告げて地面に落ちた。






　その首が、意識を無くす一瞬の合間に見たのは、二足歩行の黒い獣だったという。
　刀を持った黒い捕食者を⋯屍人は最後に見たのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●　憐れみの白き騎士

　屍人の群れ。
　安倍晴明の邪法により傀儡と化した、哀れで悲しい被害者たち。
　だが、トリテレイア・ゼロナインは理解している。
　この哀れな被害者たちを悼む暇もないほどエンパイアの戦況は一進一退の状態だ。
　故に、せめてもの慈悲を白き騎士は彼らに与えんと行動を開始する。
　死んだ者よりも、今を生きる人々を優先する。その為に彼は、慈悲を与える。

　殲滅⋯蹂躙という名の慈悲を。

　UC『システム・マルチウェポンマスタリー』
　持ち込んだ大型のレーザーキャノンをハッキングする、
『システムエラー！！　リミッターが機能していません！　砲身溶解、破損の可能性あり！　直ちに製造元へ⋯ブツッ！！』
　耳障りな機械音声のアラートをシャットダウンし、エネルギーを収束する。

『収束率70％』

『97％』

『エラー！！　121％』

『エラー！！　185％』

『エラー！！　250％』

「薙ぎ払いなさいッ！！」
　以上に収束されたエネルギーが、砲身から解放される！
　大出力の光の奔流が、トリテレイアの持つキャノン砲から伸び、大地を⋯そして屍人の群れを飲み込んでいく！！
　薙ぎ払うように放ったそれは、戦場を一瞬のうちに焦土へと変化させ、屍人の群れを消滅させた。
「まだ⋯残っているようですねッ！！」
　それでも僅かに残る屍人に、トリテレイアは突貫する。
　砲身が溶解して使い物にならなくなったキャノンを放り投げ、機械白馬「ロシナンテⅡ」と共に突貫する！！
　内臓兵器のバルカン砲で牽制しつつ、本命のランスや大盾の必殺の一撃を叩き込むのだ！！

　全てが終わり、最後に残っていたのは、ただ一人の騎士と、その愛馬のみ。
「エンパイアの人々の為、速やかに次の戦場に向かわなくては……」
　そう一言呟くと、白き騎士は次の戦場へと向かう。










　そこに、一切の迷いは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月11日